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特表2024-539971リチウムイオン充電式電池用正極活物質を製造するための金属酸化物生成物
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  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質を製造するための金属酸化物生成物 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウムイオン充電式電池用正極活物質を製造するための金属酸化物生成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524708
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022079270
(87)【国際公開番号】W WO2023072734
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204484.6
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ネリス
(72)【発明者】
【氏名】カスペル・ランブライ
(72)【発明者】
【氏名】ランディ・デ・パルマ
(72)【発明者】
【氏名】リアン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ウォン・シン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE06
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA02
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
リチウムイオン充電式電池用正極活物質を製造するための金属酸化物生成物であって、金属酸化物生成物が、1つ以上の金属M’の1つ以上の酸化物を含み、M’が:-M’に対して20.0mol%~100.0mol%の含有量xのNiと、-M’に対して0.0mol%~60.0mol%の含有量yのCoと、-M’に対して0.0mol%~80.0mol%の含有量zのMnと、-M’の総原子含有量に対して0.0mol%~5.0mol%の含有量aのDであって、Dは、Al、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、W、Zn、及びZrからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む、Dと、を含み、x、y、z、及びaが、ICPによって測定され、x+y+z+a=100.0mol%であり、金属酸化物生成物が、複数の一次粒子を各々含む二次粒子を含み、当該一次粒子が、CS-SEMによって撮られた画像分析によって決定される第1の粒子径分布を有し、当該第1の粒子径分布が、最大で0.10μmの第1のD50及び最大で0.30μmの第1のD99を有する、金属酸化物生成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン充電式電池用の正極活物質を製造するための金属酸化物生成物であって、前記金属酸化物生成物が、1つ以上の金属M’の1つ以上の酸化物を含み、M’が:
M’に対して20.0mol%~100.0mol%の含有量xのNiと、
M’に対して0.0mol%~60.0mol%の含有量yのCoと、
M’に対して0.0mol%~80.0mol%の含有量zのMnと、
M’の総原子含有量に対して0.0mol%~5.0mol%の含有量aのDであって、Dは、Al、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、W、Zn、及びZrからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む、Dと、を含み、
x、y、z、及びaが、ICPによって測定され、x+y+z+a=100.0mol%であり、前記金属酸化物生成物が、複数の一次粒子を各々含む二次粒子を含み、
前記一次粒子が、第1の粒子径分布を有し、
前記第1の粒子径分布が、最大で0.10μmの第1のD50及び最大で0.30μmの第1のD99を有する、金属酸化物生成物。
【請求項2】
前記第1のD50が、少なくとも0.05μmであり、前記第1のD99が、少なくとも0.15μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項3】
前記第1のD50が、少なくとも0.06μmかつ最大で0.09μmである、請求項1又は2に記載の金属酸化物生成物。
【請求項4】
前記第1のD99が、少なくとも0.17μmかつ最大で0.28μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項5】
x≦95.0mol%及びy≧5.0mol%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項6】
50.0mol%≦x≦80.0mol%及び10.0mol%≦y≦40.0mol%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項7】
前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物が、前記金属酸化物生成物の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項8】
前記一次粒子が、前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項9】
x<100mol%であり、前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物が、混合金属酸化物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項10】
前記金属酸化物生成物が、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、前記第2の粒子径分布が、第2のD50を有し、前記第2のD50が、少なくとも2μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項11】
前記金属酸化物生成物が、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、前記第2の粒子径分布が第2のD50を有し、前記第2のD50が最大で15μmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項12】
前記二次粒子が、球状である、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物。
【請求項13】
リチウムイオン充電式電池用の正極活物質を製造するための方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物が、前記1つ以上の金属M’の供給源として使用される、方法。
【請求項14】
前記金属酸化物生成物が、Liの供給源と混合され、500℃以上で熱処理される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン充電式電池用正極活物質の製造に適用可能な金属酸化物に関する。特に、本発明は、正極活物質の前駆体として適用可能なニッケル系遷移金属酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような正極活物質の製造において、所望の遷移金属元素を含有する水酸化物、炭酸塩又は酸化物などの前駆体は、通常は、Li供給源と混合され、次いで熱処理に供されて、固相反応に係わり、リチオ化遷移金属酸化物をもたらす。
【0003】
0.4μmの平均サイズを有する一次粒子を含む非常に微細なニッケル系遷移金属酸化物は、米国特許出願第2010196761号から既知である。しかしながら、それから製造される最終的な正極活物質の特性に対して、前駆体の特性は影響を及ぼす。例えば、米国特許出願公開第2010196761号の一次粒子を含む金属酸化物は、第1の放電容量DQ1が低く、容量低下QFが大きい。高いDQ1及びQFは、(ハイブリッド)電気自動車用途に好適な充電式リチウムイオン電池における正極活物質の使用にとって重要である。
【0004】
本発明の目的は、第1の放電容量及び容量低下が改善された正極活物質を製造することができる、正極活物質を製造するための金属酸化物を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、リチウムイオン充電式電池の正極活物質を製造するための金属酸化物生成物であって、金属酸化物生成物が、1つ以上の金属M’の1つ以上の酸化物を含み、M’は:
M’に対して20.0mol%~100.0mol%の含有量xのNiと、
M’に対して0.0mol%~60.0mol%の含有量yのCoと、
M’に対して0.0mol%~80.0mol%の含有量zのMnと、
M’の総原子含有量に対して0.0mol%~5.0mol%の含有量aのDであって、Dは、Al、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、W、Zn、及びZrからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む、Dと、を含み、
x、y、z、及びaは、ICPによって測定され、x+y+z+a=100.0mol%であり、金属酸化物生成物は、複数の一次粒子を各々含む二次粒子を含み、
当該一次粒子は、第1の粒子径分布を有し、第1の粒子径分布が、最大で0.10μmの第1のD50及び最大で0.30μmの第1のD99を有する、金属酸化物生成物によって達成される。
【0006】
第1の粒子径分布は、この場合、断面SEM画像分析によって決定される。第1の粒子径分布は、累積粒子径分布として決定される。これは、画像分析ソフトウェアによって自動化された仕方で行われ得るが、手動でも行うことができる。十分な精度を得るために、第1の粒子径分布は、少なくとも1000個の一次粒子について決定される。
【0007】
第1の粒子径分布のD50及びD99を計算するには、一次粒子の明確なエッジを示す、金属酸化物生成物に含まれる遷移金属酸化物前駆体粒子の断面SEM画像が参照されるべきである。一次粒子は、フレームによって切り捨てられる粒子を回避しながら画像から選択される。個々の一次粒子のエッジによって囲まれた面積は、等価直径を計算するために使用され、その等価直径は、面積が粒子の面積に等しいディスクの直径として定義される。
【0008】
D50は、累積粒子径分布の50%数分布における等価直径として定義される。同様に、D99は、累積粒子径分布の99%における等価直径として定義される。
【0009】
一次粒子がより大きな二次粒子の一部であるという事実により、この酸化物生成物は、そのような一次粒子のみを有する酸化物生成物と比較して、はるかに良好な流動性を有する。結果として、本発明による酸化物生成物は、凝集性が低く、その結果、かさ密度が高くなる。これには、酸化物生成物が、プロセス装置、特に上述の熱処理を実施するための装置において占める空間が少なくなり、その結果、このプロセス装置がより高い処理能力を有するという利点がある。
【0010】
本発明による様々な実施形態は、特許請求の範囲及び明細書において開示される。特許請求の範囲及び明細書に記載された実施形態及び実施例は、明示的に別段の定めがない限り、互いに自由に組み合わせることができる。本明細書全体を通して、何らかの数値範囲が提供されている場合、明示的に別段の定めがない限り、範囲は終点値も含む。
【0011】
好ましい実施形態では、当該第1のD50は、最大で0.10μmである。
【0012】
好ましい実施形態では、当該第1のD99は、最大で0.30μmである。
【0013】
好ましい実施形態では、当該第1のD50は、少なくとも0.05μm、好ましくは少なくとも0.06μmである。
【0014】
好ましい実施形態では、当該第1のD50は、最大で0.09μmである。
【0015】
好ましい実施形態では、当該第1のD99は、少なくとも0.15μm、好ましくは少なくとも0.17μmである。
【0016】
好ましい実施形態では、当該第1のD50は、最大で0.27μmである。
【0017】
上述したように、金属酸化物生成物の金属元素含有量は、上で定義したようにx、y、z、aとして表され、x+y+z+a=100.0mol%を満たす。これは、本明細書に記載される全ての実施形態に当てはまる。
【0018】
好ましい実施形態では、x≦99.0mol%、例えば、85.0mol%≦x≦99.0mol%である。
【0019】
好ましい実施形態では、x≦95.0mol%及びy≧5.0mol%である。
【0020】
好ましい実施形態では、75.0mol%≦x≦85.0mol%、及び5.0mol%≦y≦15.0mol%であり、より好ましくは更に、5.0mol%≦z≦15.0mol%である。
【0021】
好ましい実施形態では、50.0mol%≦x≦80.0mol%であり、例えば、xは、55.0、60.0、65.0、70.0、又は75.0mol%であり、及び10.0mol%≦y≦40.0mol%であり、例えば、yは、15.0、20.0、25.0、30.0、又は35.0mol%である。
【0022】
好ましい実施形態では、20.0mol%≦x≦45.0mol%であり、例えば、xは、25.0、30.0、35.0、又は40.0mol%である。
【0023】
好ましい実施形態では、0.0mol%≦y≦5.0mol%であり、例えば、yは、1.0、2.0、3.0、又は4.0mol%である。
【0024】
好ましい実施形態では、20.0mol%≦x≦25.0mol%、及び1.0mol%≦y≦3.0mol%であり、より好ましくは更に、70.0mol%≦z≦80.0mol%である。
【0025】
好ましい実施形態では、当該1つ以上の金属M’の当該1つ以上の酸化物は、当該金属酸化物生成物の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を構成する。
【0026】
好ましい実施形態では、当該一次粒子は、当該1つ以上の金属M’の当該1つ以上の酸化物からなる。
【0027】
好ましい実施形態では、x<100mol%であり、当該1つ以上の金属M’の当該1つ以上の酸化物は、混合金属酸化物である。
【0028】
本明細書では、単一金属酸化物の混合物は、混合金属酸化物とはみなされず、2つ以上の異なる金属元素のカチオンを含有する酸化物化合物のみが混合金属酸化物とみなされる。
【0029】
あるいは、混合金属酸化物は、金属元素が原子レベルにて混合状態で存在する金属酸化物として定義され得る。
【0030】
あるいは、混合金属酸化物は、金属酸化物の各粒子が、金属酸化物中に存在する金属元素の全てを含有する金属酸化物として定義され得る。
【0031】
塩の混合溶液とは、明確な混合工程が行われたかどうかにかかわらず、異なる金属元素の塩が同じ溶媒中に存在する溶液を意味する。
【0032】
好ましい実施形態では、当該金属酸化物生成物は、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、当該第2の粒子径分布は、第2のD50を有し、当該第2のD50は、少なくとも2.0μm、好ましくは少なくとも3.5μmである。
【0033】
この値が尊重される場合、金属酸化物生成物の流動性が、高いかさ密度を得るのに十分に良好であることが確保される。
【0034】
好ましい実施形態では、当該金属酸化物生成物は、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、当該第2の粒子径分布は、第2のD50を有し、当該第2のD50は、最大で20μm、好ましくは最大で15μm、より好ましくは最大最大で12.5μmである。
【0035】
これにより、その後の熱処理においては十分に良好なリチオ化が確保され、そうでない場合、Liの拡散距離が長いことにより問題となり得る。
【0036】
完全を期すために、D50は、累積体積粒子径分布として表される場合、第2の粒子径分布の50%における等価直径として定義されることに留意されたい。同様に、D99は、その第2の粒子径分布の99%における等価直径として定義される。
【0037】
好ましい実施形態では、当該二次粒子は、球状である。これは更に、良好な流動性を得るのに役立つ。
【0038】
本発明は更に、リチウムイオン充電式電池用の正極活物質を製造するための方法であって、本発明による金属酸化物生成物が当該正極活物質中の当該1つ以上の金属M’の供給源として使用される、方法に関する。
【0039】
好ましくは、当該方法において、金属酸化物生成物はLiの供給源と混合され、その混合物は500℃以上で熱処理される。
【0040】
本発明は更に、リチウムイオン充電式電池用の正極活物質の製造における、本発明による金属酸化物生成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1a】実施例1(EX1)のCS-SEM画像である。
図1b】比較例1(CEX1)のCS-SEM画像である。
図1c】実施例4(EX4)のCS-SEM画像である。
図1d】実施例5(EX5)のCS-SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の詳細な説明では、本発明の実施を可能にするために、好ましい実施形態を記載している。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態を参照して記載されているが、本発明は、これらの好ましい実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明は、以下の詳細な説明及び付随する図面の考察から明らかである多くの代替、改変、及び均等物を含む。
【0043】
A)ICP分析
前駆体中、すなわち、金属酸化物生成物中の金属元素、例えば、Ni、Mn、及びCoの量は、Agillent ICP 720-ES(Agilent Technologies)を使用することによって誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)法で測定される。2グラムの粉末試料を、三角フラスコ中で10mLの高純度塩酸(溶液の総重量に対して少なくとも37重量%のHCl)に溶解する。前駆体を完全に溶解させるまで、フラスコをグラスでカバーし、380℃のホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコの溶液を250mLメスフラスコに注ぐ。その後、メスフラスコを250mLの標線まで脱イオン水で満たし、続いて、完全に均一化する。ピペットで適切な量の溶液を取り出し、2回目の希釈のために250mLメスフラスコに移し、メスフラスコを250mLの標線まで、内部標準物質及び10%塩酸で満たし、次いで均一化する。最後に、この50mL溶液をICP測定に使用する。
【0044】
B)粒子径
B1)二次粒子径分析
遷移金属酸化物前駆体粉末、すなわち、金属酸化物生成物の粒子径分布(particle size distribution、PSD)は、各々の粉末試料を水性媒体中に分散させた後、Hydro MV湿式分散付属品を備えたMalvern Mastersizer3000を使用してレーザー回折粒子径分析により測定される。粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を適用し、適切な界面活性剤を導入する。メジアン径、すなわち、D50は、Hydro MVによる測定でMalvern Mastersizer 3000から得られた累積体積%分布の50%における粒子径として定義される。同様に、この粒子径分布のD99は、この累積粒子径分布の99%における等価直径として定義される。
【0045】
この粒子径分布は、本明細書では第2の粒子径分布とも呼ばれる。
【0046】
B2)一次粒子径分析
一次粒子の直径は、以下の工程に従って、MountainsLab(登録商標)Expert Version 8.0.9286(Digital Surf)を用いることによって計算される:
工程1)CS-SEM(断面走査型電子顕微鏡)分析を行う:
本明細書に記載の遷移金属酸化物前駆体の断面は、イオンビーム断面研磨(CP)機器JEOL(IB-0920CP)によって、調製する。この機器は、ビーム源としてアルゴンガスを使用する。試験片を調製するために、少量の遷移金属酸化物前駆体粉末を、樹脂及び硬化剤と混合し、次いで、その混合物をホットプレート上で10分間加熱する。加熱後、これを切断用のイオンビーム機器内に置き、3時間の持続時間にわたる6.5kVの電圧という標準的な手順に、設定を調節する。
正極活物質の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)技術によって分析する。この測定は、25℃の9.6×10-5Paの高真空環境下で、JEOL JSM7100Fを用いて行われる。
工程2)工程1)から得られた10,000倍の倍率による遷移金属酸化物前駆体の断面SEM画像を含むファイルをロードする。画像は、一次粒子のエッジが明確に観察されるように、好適なコントラスト及び輝度を有するものとする。
工程3)SEM倍率に応じて縮尺を設定する。
工程4)位置を左及び下25%、右及び上75%に設定することによって二次粒子の中心部の面積を抜き出す。
工程5)粒子分析においてエッジ検出を設定し、次いで、前処理及び高さプルーニング(Height pruning)<5%ではフィルターなしに設定する。
工程6)エッジ上の粒子のRemove(除去)を選択し、それによってフレームラインによって切り捨てられた粒子を除去することによって、検出を精緻化する。
工程7)統計結果を選択し、等価直径パラメーターを選択することによって、一次粒子径を得る。
【0047】
粒子がCS-SEM画像において多孔質に見えるとき、0.40μmより大きい等価直径を有する細孔は測定から除かれ、細孔が粒子として計算される機械限界を判別する。
【0048】
ここで、一次粒子の累積一次粒子径分布は、少なくとも1つの二次粒子からの少なくとも1000個の一次粒子の個々の直径に基づいて得られる。
【0049】
この粒子径分布は、本明細書では第1の粒子径分布とも呼ばれる。
【0050】
この粒子径分布のD50は、この累積粒子径分布の50%における等価直径として定義される。同様に、この粒子径分布のD99は、この累積粒子径分布の99%における等価直径として定義される。
【0051】
C)コインセル試験
C1)コインセルの作製
正極の調製では、正極活物質粉末、導電剤(Super P、Timcal)、バインダー(KF#9305、クレハ)を重量比90:5:5の配合で含有し、また溶媒(NMP,Mitsubishi)を含有するスラリーを、高速ホモジナイザーを使用することによって、調製する。均質化したスラリーを、ギャップが230μmであるドクターブレードコータを使用して、アルミニウム箔の片面上に塗り広げる。スラリーでコーティングした箔を、120℃のオーブン内で乾燥させ、次いで、カレンダー加工工具を使用してプレスする。次いで、これを真空オーブン内で再び乾燥させて、電極フィルム中の残留溶媒を完全に除去する。コインセルは、アルゴンで満たしたグローブボックス内にて組み立てる。セパレータ(Celgard 2320)を、正極と、負極として使用する1片のリチウム箔との間に配置する。EC:DMC(1:2)中1MのLiPFを、電解質として使用し、セパレータと電極との間に滴下する。次いで、コインセルを完全に密封して、電解質の漏れを防止する。
【0052】
C2)試験方法
各コインセルを、Toscat-3100コンピュータ制御ガルバノスタティックサイクリングステーション(Toyo製)を使用して、25℃でサイクルする。試料を評価するために使用したコインセル試験スケジュールを、表1に詳述する。1C電流の定義は、160mA/gである。
【0053】
第1の放電容量DQ1を、定電流モード(constant current mode、CC)で測定する。容量低下率(QF)は、以下の式によって求められる。
【数1】
式中、DQ8は、8サイクル目の放電容量であり、DQ35は、35サイクル目の放電容量である。
【表1】
【0054】
D)かさ密度
前駆体材料粉末の、すなわち、金属酸化物生成物のかさ密度は、特定の容積を有するメスシリンダーに流入した粉末の質量を測定することによって決定される。前駆体かさ密度は、以下の式に従って計算される:
【数2】
【0055】
本発明を以下の(非限定的な)実施例によって更に説明する。
【0056】
比較例1
CEX1は、以下のように行われる噴霧熱分解及び噴霧乾燥プロセスによって得た。
1)供給溶液の調製:0.6:0.2:0.2のNi:Mn:Co比でNi、Mn、及びCoを有する110グラム/Lの総濃度のNiCl、MnCl、及びCoCl溶液を含む供給溶液を調製した。
2)噴霧熱分解:工程1)から調製された供給溶液を、650℃で加熱チャンバ内に噴霧することで、塩を酸化し、混合金属酸化物粉末を形成した。チャンバ容積は約8.8mであり、供給速度は30L/時であった。
3)洗浄:工程2)からの混合金属酸化物粉末を水で洗浄して(固形分25重量%)、Cl残留物などの不純物を除去した。
4)スラリー配合物:水中で70重量%の固形分及び2重量%の分散剤を有するように、工程3)からの洗浄した粉末を分散剤(Dolapix CA,Zschimmer&Schwarz,DE)と混合することによってスラリーを調製した。
5)湿式ビーズミル:工程4)で調製されたスラリーを、200kWh/Tの比粉砕エネルギーによって水中で湿式ビーズミル粉砕した。ミル粉砕媒体は、直径1mmのY安定化ZrOビーズ(YSZ)であった。レーザー回折法により得られたミル粉砕粉末粒子のメジアン径は0.71μmであった。
6)噴霧乾燥:工程5)で調製したミル粉砕スラリーを、入口温度170℃及び出口温度100℃の2つの流体ノズルによって噴霧乾燥した。
7)加熱:工程6)から得られた噴霧乾燥粉末を、酸素雰囲気下、500℃の炉内で、5時間加熱した。この工程の結果は、比較例1と標識した加熱前駆体粉末であった。
【0057】
比較例1は、複数の一次粒子を有する二次粒子から構成され、一次粒子径分析において記載される方法に従って決定された一次粒子径(第1の粒子径分布)D50は0.11μmであり、D99は0.35μmであった。二次粒子(第2の粒子径分布)D50は15.1μm、かさ密度は0.8gr/cmであった。
【0058】
CEX1は、本発明によらない。
【0059】
実施例1
EX1は、工程5)において湿式ビーズミル比粉砕エネルギーが1300kWh/Tであったことを除いて、CEX1と同じ方法に従って調製した。レーザー回折法によって得られた、工程5の後のスラリー中のミル粉砕された粉末粒子のメジアン径は、0.28μmであった。
【0060】
EX1は、複数の一次粒子を有する二次粒子からなり、一次粒子径分析において記載される方法に従って決定された一次粒子径(第1の粒子径分布)D50は、0.08μmであり、D99は、0.20μmであった。二次粒子(第2の粒子径分布)D50は12.6μm、かさ密度は1.5gr/cmであった。
【0061】
比較例2
CEX2.1は、以下のように行われる、リチウム源と遷移金属系前駆体との間の固相反応によって得た。
1)混合:前駆体粉末CEX1と、リチウム源としてのLiOHとを、工業用ブレンド装置において、1.05のリチウム対金属Me(Li/Me)比で均質に混合し、混合物を得た(Me=Ni、Mn、Co)。
2)加熱:工程1)からの混合物を、酸素雰囲気下で840℃にて15時間加熱した。加熱した粉末を、破砕し、分級し、篩い分けすることで、リチオ化された生成物、すなわち、正極活物質粉末を得た。
【0062】
CEX2.2は、工程1)におけるLi/Me比が1.03であり、工程2)における加熱温度が860℃であったことを除いて、CEX2.1と同じ方法に従って調製した。
【0063】
CEX2.1及びCEX2.2は、本発明によらない。
【0064】
実施例2
本発明によるEX2.1は、工程1)で使用した前駆体粉末が、CEX1の代わりにEX1であったことを除いて、CEX2.1と同じ手順に従って調製した。
【0065】
本発明によるEX2.2は、工程1)で使用した前駆体粉末が、CEX1の代わりにEX1であったことを除いて、CEX2.2と同じ手順に従って調製した。
【0066】
実施例3
EX3は、工程1)における供給溶液がNiClのみを含むことを除いて、EX1と同じ方法に従って調製した。EX3は、1.5g/cmのかさ密度を有するNiO前駆体である。
【0067】
実施例4
EX4は、以下のように行われる噴霧熱分解及び噴霧乾燥プロセスによって得た。
1)供給溶液の調製:0.8:0.1:0.1のNi:Mn:Co比でNi、Mn、及びCoを有する110グラム/Lの総濃度のNiCI、MnCl、及びCoCl溶液を含む供給溶液を調製した。
2)噴霧熱分解:工程1)から調製された供給溶液を、680℃で加熱チャンバ内に噴霧することで、塩を酸化し、混合金属酸化物粉末を形成した。チャンバ容積は約8.8mであり、供給速度は30L/時であった。
3)洗浄:工程2)からの混合金属酸化物粉末を水で洗浄して(固形分25重量%)、Cl残留物などの不純物を除去した。
4)スラリー配合物:水中で60重量%の固形分及び2重量%の分散剤を有するように、工程3)からの洗浄した粉末を分散剤(Dolapix CA,Zschimmer&Schwarz,DE)と混合することによってスラリーを調製した。
5)湿式ビーズミル:工程4)で調製されたスラリーを、1500kWh/Tの比粉砕エネルギーによって水中で湿式ビーズミル粉砕した。ミル粉砕媒体は、直径0.3mmのY安定化ZrOビーズ(YSZ)であった。レーザー回折法により得られたミル粉砕粉末粒子のメジアン径は0.25μmであった。
6)噴霧乾燥:工程5)で調製したミル粉砕スラリーを、250℃の入口温度及び100℃の出口温度で回転噴霧器によって、噴霧乾燥した。
7)加熱:工程6)から得られた噴霧乾燥粉末を、酸素雰囲気下、500℃の炉内で、5時間加熱した。この工程の結果は、EX4と標識した加熱前駆体粉末であった。
【0068】
EX4は、複数の一次粒子を有する二次粒子から構成され、一次粒子径分析において記載される方法に従って決定された一次粒子径(第1の粒子径分布)D50は0.05μmであり、D99は0.28μmであった。二次粒子(第2の粒子径分布)D50は12.4μm、かさ密度は1.4gr/cmであった。
【0069】
実施例5
EX5は、以下のように行われる噴霧熱分解及び噴霧乾燥プロセスによって得た。
1)供給溶液の調製:0.22:0.76:0.02のNi:Mn:Co比でNi、Mn、及びCoを有する110グラム/Lの総濃度のNiCI、MnCl、及びCoCl溶液を含む供給溶液を調製した。
2)噴霧熱分解:工程1)から調製された供給溶液を、600℃で加熱チャンバ内に噴霧することで、塩を酸化し、混合金属酸化物粉末を形成した。チャンバ容積は約8.8mであり、供給速度は30L/時であった。
3)洗浄:工程2)からの混合金属酸化物粉末を水で洗浄して(固形分25重量%)、Cl残留物などの不純物を除去した。
4)スラリー配合物:水中で67重量%の固形分及び2重量%の分散剤を有するように、工程3)からの洗浄した粉末を分散剤(Dolapix CA,Zschimmer&Schwarz,DE)と混合することによってスラリーを調製した。
5)湿式ビーズミル:工程4)で調製されたスラリーを、2130kWh/Tの比粉砕エネルギーによって水中で湿式ビーズミル粉砕した。ミル粉砕媒体は、直径0.3mmのY安定化ZrOビーズ(YSZ)であった。レーザー回折法により得られたミル粉砕粉末粒子のメジアン径は0.22μmであった。
6)噴霧乾燥:工程5)で調製したミル粉砕スラリーを、入口温度250℃及び出口温度100℃の高圧ノズルによって噴霧乾燥した。
7)加熱:工程6)から得られた噴霧乾燥粉末を、酸素雰囲気下、500℃の炉内で、5時間加熱した。この工程の結果は、EX5と標識した加熱前駆体粉末であった。
【0070】
EX5は、複数の一次粒子を有する二次粒子から構成され、一次粒子径分析において記載される方法に従って決定された一次粒子径(第1の粒子径分布)D50は、0.067μmであり、D99は、0.159μmであった。二次粒子(第2の粒子径分布)D50は、7.6μmであり、かさ密度は、0.8gr/cmであった。
【表2】
【0071】
表2に、前駆体CEX1及びEX1の第1の粒子径分布、並びにCEX2.1、CEX2.2、EX2.1、及びEX2.2の調製条件及び電気化学的特性を要約する。EX1の平均第1の粒子径分布D50は0.08μmであり、0.11μmであるCEX1の平均第1の粒子径分布より小さい。EX1及びCEX1の一次粒子SEM画像を、それぞれ図1b及び図1aに示す。
【0072】
前駆体EX1から製造されている正極活物質EX2.1及びEX2.2は、前駆体CEX1から製造されている正極活物質CEX2.1及びCEX2.2と比較して、高いDQ1及び低いQFを示す。少なくとも0.05μmかつ最大で0.10μmの第1の粒子径分布D50と、少なくとも0.15μmかつ最大で0.30μmのD99とを有する前駆体は、本発明の目的を達成するのに好適であり、少なくとも174mAh/gの改善された第1の放電容量及び最大で17%/100サイクルの容量低下を有する正極活物質を提供する。
図1a
図1b
図1c
図1d
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン充電式電池用の正極活物質を製造するための金属酸化物生成物であって、前記金属酸化物生成物が、1つ以上の金属M’の1つ以上の酸化物を含み、M’が:
M’に対して20.0mol%~100.0mol%の含有量xのNiと、
M’に対して0.0mol%~60.0mol%の含有量yのCoと、
M’に対して0.0mol%~80.0mol%の含有量zのMnと、
M’の総原子含有量に対して0.0mol%~5.0mol%の含有量aのDであって、Dは、Al、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、W、Zn、及びZrからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む、Dと、を含み、
x、y、z、及びaが、ICPによって測定され、x+y+z+a=100.0mol%であり、前記金属酸化物生成物が、複数の一次粒子を各々含む二次粒子を含み、
前記一次粒子が、第1の粒子径分布を有し、
前記第1の粒子径分布が、最大で0.10μmの第1のD50及び最大で0.30μmの第1のD99を有する、金属酸化物生成物。
【請求項2】
前記第1のD50が、少なくとも0.05μmであり、前記第1のD99が、少なくとも0.15μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項3】
前記第1のD50が、少なくとも0.06μmかつ最大で0.09μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項4】
前記第1のD99が、少なくとも0.17μmかつ最大で0.28μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項5】
x≦95.0mol%及びy≧5.0mol%である、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項6】
50.0mol%≦x≦80.0mol%及び10.0mol%≦y≦40.0mol%である、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項7】
前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物が、前記金属酸化物生成物の少なくとも80重量%を構成する、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項8】
前記一次粒子が、前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物からなる、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項9】
x<100mol%であり、前記1つ以上の金属M’の前記1つ以上の酸化物が、混合金属酸化物である、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項10】
前記金属酸化物生成物が、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、前記第2の粒子径分布が、第2のD50を有し、前記第2のD50が、少なくとも2μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項11】
前記金属酸化物生成物が、レーザー回折粒子径分析によって決定される第2の粒子径分布を有し、前記第2の粒子径分布が第2のD50を有し、前記第2のD50が最大で15μmである、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項12】
前記二次粒子が、球状である、請求項1に記載の金属酸化物生成物。
【請求項13】
リチウムイオン充電式電池用の正極活物質を製造するための方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属酸化物生成物が、前記1つ以上の金属M’の供給源として使用される、方法。
【請求項14】
前記金属酸化物生成物が、Liの供給源と混合され、500℃以上で熱処理される、請求項13に記載の方法。
【国際調査報告】