(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを含むハイブリッド多価インフルエンザワクチン及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20241024BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20241024BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241024BHJP
C07K 14/11 20060101ALI20241024BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20241024BHJP
C12N 7/04 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K39/145
A61P37/04
A61K39/39
A61K9/127
A61K47/34
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/18
A61P31/16
C07K14/11 ZNA
C12N9/24
C12N15/44
C12N15/56
C12N7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526564
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022080875
(87)【国際公開番号】W WO2023079113
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・アレファンティス
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・バロ
(72)【発明者】
【氏名】サランヤ・シュリダー
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ヴォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ワレン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB10
4B065AC20
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4C076AA19
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4C076DD70
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4C085AA04
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4C085FF30
4C085GG02
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4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
(i)1種類以上のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)タンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むハイブリッド多価ワクチン又は免疫原性組成物が本明細書中で開示される。また、本ワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1種類以上のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)タンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質と、
(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする、1種類以上のリボ核酸分子と、
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、組み換えインフルエンザウイルスタンパク質である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、不活性化インフルエンザウイルス(IIV)中に存在する、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記1種類以上のリボ核酸分子がmRNA分子である、請求項1~3の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
8種類を超えない(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質と、8種類を超えないインフルエンザウイルスタンパク質をコードする(ii)におけるリボ核酸分子と、を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
(i)の前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質を含み;
(ii)の前記1種類以上のリボ核酸分子が、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする、
請求項1~5の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
4種類を超えない(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)における4種類を超えないインフルエンザウイルスタンパク質をコードするリボ核酸分子と、を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
8価の免疫原性組成物である、請求項1~7の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が4種類の組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質を含み;
前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする、
請求項1~8の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が4種類の組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み;
前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類のインフルエンザウイルスHAタンパク質をコードする、
請求項1~8の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
16価免疫原性組成物である、請求項1~6の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
(c)前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、
第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH1 HAである);
第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質
を含み;
(d)前記1種類以上のリボ核酸分子が、
第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);
第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質
をコードする、
請求項1~6の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記H1 HAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、前記H3 HAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来であり、前記N1 NAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記N2 NAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記H1 HA及び前記N1 NAが、同じH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HA及びN2 NAが、同じH3N2インフルエンザウイルス株由来である、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれが、組み換えインフルエンザウイルスHAである、請求項12~14の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類の全長インフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする、請求項1~9又は11~15の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
(c)前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、
第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);
第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質
を含み;
(d)前記1種類以上のリボ核酸分子が、
第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH1 HAである);
第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質
をコードする、
請求項1~6の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記N1 NAがH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、前記N2 NAがH3N2インフルエンザウイルス株由来であり、前記H1 HAがH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HAがH3N2インフルエンザウイルス株由来である、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記H1 HA及び前記N1 NAが、同じH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HA及び前記N2 NAが、同じH3N2インフルエンザウイルス株由来である、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれが、組み換えインフルエンザウイルスNAである、請求項17~19の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれが、4個の修飾された組み換え単量体NA分子を含む修飾された組み換え四量体インフルエンザウイルスNAであり、前記修飾された組み換え単量体NA分子のそれぞれが、前記インフルエンザウイルスNAの頭部領域及び異種四量体化ドメインを含むが、前記インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを欠き、宿主細胞で発現される場合に、前記4個の修飾された組み換え単量体NA分子が、修飾された組み換え四量体NAを形成する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記異種四量体化ドメインが、スタフィロテルムス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラチオン(tetrabrachion)四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質からの四量体化ドメイン又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質が、4種類の修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2を含む修飾された組み換え四量体N2 NAであり、前記修飾された単量体インフルエンザウイルスN2のそれぞれが、
インフルエンザウイルスN2の頭部領域を含み、
前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2が、インフルエンザウイルスN2の、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを含有せず、前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2が、異種オリゴマー化ドメインを含まない、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2が、前記インフルエンザウイルスN2の、アミノ酸1~70、1~71、1~72、1~73、1~74、1~75、1~76、1~77、1~78、1~79、1~80、1~81、1~82、1~83又は1~84を欠く、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質のうち少なくとも1つが、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有するインフルエンザウイルスHAタンパク質及び/又はインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み、及び/又は前記1種類以上のリボ核酸分子の少なくとも1つが、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有する1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする、請求項1~24の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
アジュバントをさらに含む、請求項1~25の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記アジュバントが、水中スクアレンアジュバント又はリポソームベースのアジュバントを含む、請求項26に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記1種類以上のリボ核酸分子が、少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドを含む、請求項1~27の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドが、シュードウリジン、任意選択的にN1-メチルシュードウリジン、2’-フルオロリボヌクレオチド、2’-メトキシリボヌクレオチド及び/又はホスホロチオエート結合を含む、請求項28に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質が、培養される昆虫細胞においてバキュロウイルス発現系により産生される組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質である、請求項1~29の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記インフルエンザウイルスNAタンパク質の1つ以上が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において産生される組み換えインフルエンザウイルスNAである、請求項1~30の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記1種類以上のリボ核酸分子が、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入される、請求項1~31の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
LNP中に前記1種類以上のリボ核酸分子が封入され、アジュバントをさらに含まない、請求項1~32の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
同じLNP中に封入される少なくとも2種類のリボ核酸分子を含む、請求項1~33の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
同じLNP中に封入される少なくとも4種類のリボ核酸分子を含む、請求項1~34の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
(i)における前記インフルエンザウイルスタンパク質及び/又は(ii)における前記リボ核酸分子が、標準治療インフルエンザ株由来である、請求項1~35の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
前記LNPが、陽イオン性脂質、ポリエチレングリコール複合化(PEG化)脂質、コレステロールに基づく脂質及びヘルパー脂質を含む、請求項32~36の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
前記LNPが、
35%~45%のモル比の陽イオン性脂質、
0.25%~2.75%のモル比のPEG化脂質、
25%~35%のモル比のコレステロールに基づく脂質及び
25%~35%のモル比のヘルパー脂質
を含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記LNPが、
40%のモル比の陽イオン性脂質、
1.5%のモル比のPEG化脂質、
28.5%のモル比のコレステロールに基づく脂質及び
30%のモル比のヘルパー脂質
を含む、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記陽イオン性脂質が、OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10及びGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14を含む群から選択される、請求項37~39の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
前記陽イオン性脂質がcKK-E10である、請求項37~40の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
前記PEG化脂質がジミリストイル-PEG2000である、請求項37~41の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
前記コレステロールに基づく脂質がコレステロールである、請求項37~42の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
前記ヘルパー脂質がジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンである、請求項37~43の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項45】
前記LNPが、
40%のモル比のcKK-E10;
1.5%のモル比のジミリストイル-PEG2000;
28.5%のモル比のコレステロール;及び
30%のモル比のジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン
を含む、請求項37~44の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項46】
前記LNPが、(i)陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール、(iii)ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)コレステロールを含む、請求項32~37の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項47】
前記LNPが、(i)約25%~約65%のモル比の陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)約0.5%~約2.6%のモル比のPEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール、(iii)約5%~約15%のモル比のヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)約20%~約60%のモル比のコレステロール、例えばi)約46.3%のモル比の陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)約1.6%のモル比のPEG化脂質としてのALC-0159、iii)約9.4%のモル比のヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)約42.7%のモル比のコレステロールなどを含む、請求項32~37又は46の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項48】
(i)における前記インフルエンザウイルスタンパク質のそれぞれが、前記免疫原性組成物中に、約0.1μg~約90μgの範囲の量、任意選択的に約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgなどの量で存在する、請求項1~47の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項49】
前記リボ核酸分子のそれぞれが、約0.1μg~約150μg、任意選択的に約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量で前記免疫原性組成物中に存在する、請求項1~48の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項50】
筋肉内注射用に処方される、実施形態1~49の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項51】
請求項1~50の何れか1項に記載の免疫原性組成物と、医薬担体と、を含む、ワクチン。
【請求項52】
請求項51に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む、インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与する方法。
【請求項53】
前記対象におけるインフルエンザウイルス感染を予防する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象において防御免疫反応を生じさせる、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記防御免疫反応が、HA抗体応答及び/又はNA抗体応答を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、ヒトである、請求項52~55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記ワクチンが、筋肉内に、皮内に、皮下に、静脈内に、鼻腔内に、吸入により、又は腹腔内に、投与される、請求項52~56の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株の何れか又は両方によって引き起こされる疾患を処置又は予防する、請求項52~57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象がヒトであり、前記ヒトが、6カ月齢以上、18歳未満、少なくとも6カ月齢及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも6カ月齢及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳又は少なくとも65歳である、請求項52~58の何れか1項に記載の方法。
【請求項60】
請求項51に記載のワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む、インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法。
【請求項61】
対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法であって、請求項51に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含み、前記ワクチンが、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を約5%~約100%の範囲、例えば少なくとも約20%などの量、向上させる、方法。
【請求項62】
前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物が、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統からの不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物が、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統からの組み換えインフルエンザウイルスHAを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
2~6週間、任意選択的に4週間の間隔で、2用量の前記ワクチンを前記対象に投与することを含む、請求項52~63の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体の内容が本明細書中で参照により組み込まれる2021年11月5日提出の米国仮出願第63/276,247号明細書の優先権を主張し、その提出日に依存する
【0002】
配列リスト
本願は、XML方式で電子提出された配列リストを含有し、これはその全体において参照により本明細書によって組み込まれる。2022年10月14日作成の前記XMLのコピーの名称は、0171_0068_PCT_Sequence_Listing.xmlであり、サイズは2,408バイトである。
【0003】
本開示の分野
インフルエンザウイルス抗原及びインフルエンザウイルス抗原をコードするリボ核酸分子の両方を含むインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)及びインフルエンザノイラミニダーゼ(NA)の両方に対する免疫を誘導するためのハイブリッド多価インフルエンザワクチン又は免疫原性組成物並びにハイブリッド多価インフルエンザワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法が本明細書中で開示される。
【背景技術】
【0004】
本開示の背景
インフルエンザは、主に鼻、咽喉及び気管支を含む上気道を攻撃し、稀に肺も攻撃するウイルスによって引き起こされる。感染は通常、約1週間続く。それは、高熱、筋肉痛、頭痛及び重度の倦怠感、乾性咳嗽、咽頭痛及び鼻炎の突然の発症を特徴とする。殆どの者が、如何なる医学的処置も必要とせずに、1~2週間以内に回復する。しかしながら、幼い子供、高齢者及び肺疾患、糖尿病、癌、腎臓又は心臓の問題などの医学的状態に罹患している者においては、インフルエンザは深刻なリスクをもたらす。これらの者では、感染が基礎疾患、肺炎及び死亡の重度の合併症をもたらし得るが、健康な成人及び年長の小児であっても同様に影響を受け得る。毎年の季節性インフルエンザの流行により、世界中で毎年、300万~500万人が重症化し、250,000~500,000人が死亡すると考えられている。
【0005】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバーである。インフルエンザウイルスには、インフルエンザA型、インフルエンザB型及びインフルエンザC型と呼ばれる3つの主なサブタイプがある。インフルエンザビリオンは、以下のタンパク質をコードするセグメント化されたマイナスセンスRNAゲノムを含有する:ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリクス(M1)、プロトンイオンチャネルタンパク質(M2)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質1(PB1)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質2(PB2)、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)及び非構造タンパク質2(NS2)。HA、NA、M1及びM2は膜結合型であるが、一方でNP、PB1、PB2、PA及びNS2はヌクレオカプシド結合型タンパク質である。HA及びNAタンパク質はエンベロープ糖タンパク質であり、それぞれ、細胞へのウイルスの付着及びウイルス粒子の侵入、並びに細胞からの放出に主に関与している。
【0006】
特定の既知の認可されたインフルエンザワクチン組成物は、全ビリオン、若しくは脂質を溶解する薬剤で処理したビリオン(「スプリット」ワクチン)、細胞培養において発現された糖タンパク質の精製物(「サブユニットワクチン」)を含有する不活性化ワクチン又は弱毒生ワクチンである。RNA/DNAに基づくもの、ウイルスベクターに基づくものなどの他のタイプのワクチンが開発されている。これらのワクチンは、一部、HAなどのインフルエンザ抗原に対する抗体の産生を誘導することによって防御をもたらす。抗原ドリフトとも呼ばれる突然変異によるインフルエンザウイルスの抗原進化の結果、HA及び、比較的規模は小さいがNAにおいて修飾が起こる。従って、HA及びNAを含むインフルエンザの主要な抗原のアミノ酸配列は、特定の群、サブタイプ及び/又は株にわたって変動性が大きい。
【0007】
従って、利用可能なワクチンは、同一又は交差反応性エピトープを含む表面糖タンパク質を有する株のみを防御し得る。より広範な抗原スペクトルを提供するために、従来のワクチンは、A型及びB型インフルエンザの両方からの株を含む、いくつかの異なるウイルス株からの構成成分を含む。現在の季節性インフルエンザワクチンでの使用のための株の選択は、抗原ドリフトを把握し、急速に進化するウイルス株に対抗するために毎年見直され、世界保健機構(WHO)の推奨に基づいている。これらの推奨は国際的な疫学的観察を反映している。
【0008】
製造用に使用される多収性ウイルス株を作製するために使用される再集合手順ゆえに、ワクチン産生のための現在のインフルエンザウイルスシードは、適切なHA抗原を有することが示されなければならな。しかし、現在、インフルエンザワクチン中のNA含量に対する要件又は制限はない。ワクチン中のNAレベルが非常にばらついていることを示す証拠がある。Kendal et al.,Further Studies of Neuraminidase Content of Inactivated Influenza Vaccines and the Neuraminidase Antibody Responses After Vaccination of Immunologically Primed and Unprimed Populations,INFECTION AND IMMUNITY1980;29(3):966-971は、異なるロットについて、NA特異的な活性がおよそ40倍の範囲で変動し得ることを報告した。Kendal et al.も、6カ月の保管中のNA活性の急速な低下に言及した。結果として、HA応答と比較して(抗体陽転率64%)、NAに対する抗体応答の頻度は低かった(平均抗体陽転率18%)。
【0009】
さらに、NA特異的な抗体がヒトにおける疾患に対する抵抗性と相関することを示す証拠が増えているものの、現在のワクチン接種ストラテジーは、組み換えHAタンパク質を含むFLUBLOK(登録商標)4価ワクチンの場合のように、ほぼ完全にHA抗原に又は完全にHA抗原に焦点を当てている。さらに、特にHAに対するデータと比較した場合、インフルエンザ感染中のNAに対する免疫学的応答に関して利用可能なデータは限られている(Wong et al.,Hemagglutinin and Neuraminidase Antibodies Are Induced in Age- and Subtype-Dependent Manner after Influenza Virus Infection,JOURNAL OF VIROLOGY 2020;94(7):e01385-19)。インフルエンザウイルスは天然に、HAと比較して、ウイルス表面上に含有するNAが約10分の1であり、HA抗原を濃縮するための確立された工程は、その酵素活性のある及び四量体の立体構造でNAを維持するのに適していない可能性がある。従って、現在利用可能な不活性化インフルエンザウイルスワクチンがNAを含有し得る一方で、量及び質が広く変動し、均一ではない。さらに、NAは、HAと一緒に免疫系に提示された場合に、免疫的にサブドミナント(immunosubdominant)であることが記載されている(Krammer,The human antibody response to influenza A virus infection and vaccination,NATURE REVIEWS IMMUNOLOGY 2019;19:383-397)。言い換えれば、HAは、NAを上回り免疫優勢であることが知られている。同文献。従来のインフルエンザワクチンで観察されるこの免疫優勢の現象は、依然として、特にHAなどの免疫優勢のタンパク質を含有する多価ワクチンについて、及び/又はワクチンにおける価数が増加する場合、複数の抗原又はエピトープに対する多価免疫反応を首尾よく達成し得る多価ワクチンの開発に対する障害になっている。Woodruff et al.,B Cell Competition for Restricted T Cell Help Suppresses Rare-Epitope Responses,CELL REPORTS 2018;25:321~27。
【0010】
従って、HA及びNAの両方に対するロバストな免疫反応を誘導することにより循環するインフルエンザ株に対する防御増強及び/又は防御のより広い幅を付与し得るインフルエンザウイルスHA又はインフルエンザウイルスNAをコードする少なくとも1種類のmRNA分子を含むさらなる抗原でワクチン中の標準治療インフルエンザ株を補う能力が所望される。しかし、インフルエンザタンパク質及びそれをコードするリボ核酸の両方を含む、及びNA及び/又はHA免疫反応を強化し、特に現在利用可能な標準治療インフルエンザワクチンと比較した場合に、循環するインフルエンザ株に対する防御増強及び/又は防御のより広い幅を付与するハイブリッド多価ワクチン組成物になるようにインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAを組み合わせることは、挑戦的な課題であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)タンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチン又は免疫原性組成物を提供する。
【0012】
特定の実施形態では、この1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質は、組み換えインフルエンザウイルスタンパク質であり、特定の実施形態では、この1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質は、不活性化インフルエンザウイルス(IIV)において存在する。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子はmRNA分子である。従って、特定の実施形態では、(i)組み換えHAタンパク質、組み換えNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上の組み換えインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)HAタンパク質、NAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のmRNA分子と、を含むワクチン又は免疫原性組成物が本明細書中で開示される。
【0013】
本開示の一態様では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、(i)における8種類を超えない、例えば8種類など、又は4種類を超えない、例えば4種類など、のインフルエンザウイルスタンパク質と、8種類を超えない、例えば8種類など、又は4種類を超えない、例えば4種類など、のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする(ii)におけるリボ核酸分子と、を含む。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、8価ワクチン又は免疫原性組成物であり、特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、16価ワクチン又は免疫原性組成物である。他の多価ワクチン又は免疫原性組成物も本明細書中に記載される。
【0014】
本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物の様々な実施形態では、(i)の1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質は、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする(ii)の1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。
【0015】
特定の実施形態では、(i)における1種類以上のインフルエンザタンパク質は、4種類の組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質を含み、1種類以上のリボ核酸分子は、4種類のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、4種類の全長インフルエンザウイルスNAタンパク質(例えば野生型又は機械学習NA)をコードする。特定の実施形態では、(i)における1種類以上のインフルエンザタンパク質は、4種類の組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み、1種類以上のリボ核酸分子は、4種類のインフルエンザウイルスHAタンパク質をコードする。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、4種類の全長インフルエンザウイルスHAタンパク質(例えば、野生型又は機械学習NA)をコードする。
【0016】
特定の実施形態では、(i)における1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質は、第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(ここで第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質は、H1 HAである);第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(ここで第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及びB/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質を含み、特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(ここで第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(ここで第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;及びB/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする。特定の実施形態では、第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質のそれぞれは、組み換えインフルエンザウイルスHAである。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、4種類の全長インフルエンザウイルスNAタンパク質(例えば、野生型又は機械学習NA)をコードする。
【0017】
(i)における1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(ここで、第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(ここで、第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;及びB/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質を含む実施形態も本明細書中で開示され、特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸が、第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(ここで第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH1 HAである);第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(ここで第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及びB/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質をコードする。
【0018】
特定の実施形態では、第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれは、組み換えインフルエンザウイルスNAである。特定の実施形態では、第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれは、修飾された組み換えインフルエンザウイルスNAである。
【0019】
本明細書中で開示される特定の実施形態では、1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質の少なくとも1つは、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有するインフルエンザウイルスHAタンパク質及び/又はインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み、特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子の少なくとも1つは、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有する1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする。
【0020】
特定の実施形態では、H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来であり、N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又はN2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来である。特定の実施形態では、H1 HA及びN1 NAは、同じH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又はH3 HA及びN2 NAは、同じH3N2インフルエンザウイルス株由来である。
【0021】
特定の実施形態によれば、本ワクチン又は免疫原性組成物は、アジュバント、例えば水中スクアレンアジュバント又はリポソームに基づくアジュバントをさらに含む。特定の実施形態では、この1種類以上のリボ核酸分子は、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入され、本ワクチン又は免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含まない。
【0022】
特定の実施形態では、この1種類以上のリボ核酸分子は、少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドを含み、特定の実施形態では、この少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドは、シュードウリジン、特にN1-メチルシュードウリジン、2’-フルオロリボヌクレオチド、2’-メトキシリボヌクレオチド及び/又はホスホロチオエート結合を含む。
【0023】
1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質が組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質である特定の実施形態では、組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質は、培養される昆虫細胞においてバキュロウイルス発現系により産生され、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質が組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質である特定の実施形態では、組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において産生される。
【0024】
特定の実施形態では、(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質及び/又は(ii)におけるリボ核酸分子は、標準治療インフルエンザ株由来である。
【0025】
本明細書中で開示される様々な実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、LNP中に封入され、特定の実施形態では、LNPは、陽イオン性脂質、ポリエチレングリコール複合化(PEG化)脂質、コレステロールに基づく脂質及びヘルパー脂質を含む。特定の態様では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、少なくとも2種類、例えば少なくとも4種類の、同じLNP中に封入されるリボ核酸分子を含む。特定の実施形態では、LNPは、35%~45%のモル比の、例えば40%などのモル比の陽イオン性脂質;0.25%~2.75%のモル比の、例えば1.5%などのモル比のPEG化脂質;25%~35%のモル比の、例えば28.5%などのモル比のコレステロールに基づく脂質;及び25%~35%のモル比の、例えば30%などのモル比のヘルパー脂質を含み、これらのモル比は全て、LNPの総脂質含量に対するものである。
【0026】
特定の実施形態では、陽イオン性脂質は、OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10及びGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14を含む群から選択され、例えばcKK-E10などであり、特定の実施形態では、PEG化脂質はジミリストイル-PEG2000である。特定の実施形態では、コレステロールに基づく脂質は、コレステロールであり、ヘルパー脂質は、ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンである。本明細書中で開示される特定の実施形態では、LNPは、例えば40%のモル比のcKK-E10、例えば1.5%のモル比のジミリストイル-PEG2000、例えば28.5%のモル比のコレステロール及び例えば30%のモル比のジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む。
【0027】
特定の実施形態では、LNPは(i)陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えばALC-0159)、(iii)ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)コレステロールを含む。特定の実施形態では、LNPは、(i)約25%~約65%、例えば約46.3%のモル比の、陽イオン性脂質としてのALC-0315;(ii)約0.5%~約2.6%、例えば1.6%のモル比の、PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えばALC-0159);(iii)約5%~約15%、例えば9.4%のモル比の、ヘルパー脂質としてのDSPC;及び(iv)約20%~約60%、例えば42.7%のモル比のコレステロールを含む。
【0028】
本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定の実施形態では、(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質のそれぞれは、約0.1μg~約90μg、例えば約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgなどの範囲の量で本組成物中に存在し、特定の実施形態では、リボ核酸分子のそれぞれは、約0.1μg~約150μg、例えば約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgなどの範囲の量で本組成物中に存在する。特定の実施形態では、本組成物は、筋肉内注射用に処方される。
【0029】
別の態様では、本明細書中で開示される免疫原性組成物と、医薬担体と、を含むワクチンが本明細書中で開示される。
【0030】
本開示の別の態様は、対象にインフルエンザウイルスに対して免疫付与する方法を対象とし、この方法は、本明細書中で開示されるようなワクチンの免疫学的有効量を対象に投与することを含む。インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与する方法での使用のための本明細書中で開示されるようなワクチンも本明細書中で開示される。インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与する方法での使用のためのワクチンの製造のための本明細書中で開示されるような免疫原性組成物も本明細書中で開示される。特定の実施形態では、本方法又は使用は、対象におけるインフルエンザウイルス感染を予防し、特定の実施形態では、本方法又は使用は、対象において防御免疫反応、例えばHA抗体応答及び/又はNA抗体応答などを生じさせる。特定の実施形態では、対象はヒトであり、特定の実施形態では、ワクチンは、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、鼻腔内、吸入により、又は腹腔内に投与されるか又は投与されるように調製される。
【0031】
本開示の別の態様は、インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法を対象とし、本方法は、本明細書中で開示されるワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む。インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法での使用のための本明細書中で開示されるようなワクチンも開示される。インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法での使用のためのワクチンの製造のための本明細書中で開示されるような免疫原性組成物も開示される。
【0032】
本開示の別の態様は、対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法を対象とし、本方法は、本明細書中で開示されるワクチンの免疫学的有効量を対象に投与することを含み、本ワクチンは、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を約5%~約100%、例えば少なくとも約20%など又は約40%~約80%、例えば約40%~約60%などの範囲の量、向上させる。対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法での使用のための本明細書中で開示されるようなワクチンも開示され、この方法は、本明細書中で開示されるワクチンの免疫学的有効量を対象に投与することを含み、このワクチンは、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を約5%~約100%、例えば少なくとも約20%など又は約40%~約80%、例えば約40%~約60%などの範囲の量、向上させる。対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法での使用のためのワクチンの製造のための本明細書中で開示されるような免疫原性組成物も開示され、この方法は、本明細書中で開示されるワクチンの免疫学的有効量を対象に投与することを含み、このワクチンは、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を、約5%~約100%、例えば少なくとも約20%など又は約40%~約80%、例えば約40%~約60%などの範囲の量、向上させる。特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統からの不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である。特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統からの組み換えインフルエンザウイルスHAを含む。
【0033】
様々な実施形態では、本明細書中で開示される方法又は使用及び組成物は、季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株の何れか又は両方によって引き起こされる疾患を処置又は予防する。本明細書中で開示される方法又は使用の特定の実施形態では、対象はヒトであり、ヒトは、6カ月齢以上、18歳未満、少なくとも6カ月齢及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも6カ月齢及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳又は少なくとも65歳である。特定の実施形態では、本明細書中で開示される方法又は使用は、2~6週間の間隔、例えば4週間の間隔などで、2用量のワクチンを対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】
図1Aは、実施例3に記載のようなハイブリッド8価ワクチン組成物の投与後の、N1インフルエンザウイルス株及びTet標準物に対する第42日でのフェレット血清におけるN1異種パネル結合レベルを示すグラフである。
【
図1B】
図1Bは、実施例3に記載のようなハイブリッド8価ワクチン組成物の投与後の、NBインフルエンザウイルス株及びTet標準物に対する第42日でのフェレット血清におけるNB相同パネル結合レベルを示すグラフである。
【
図1C】
図1Cは、実施例3に記載のようなハイブリッド8価ワクチン組成物の投与後の、N2インフルエンザウイルス株及びTet標準物に対する第42日でのフェレット血清におけるN2異種パネル結合レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
いくつかのウイルスは、それらのエンベロープ糖タンパク質成分の構造を実質的に変化させ得る。例えば、インフルエンザウイルスは、そのエンベロープ糖タンパク質のアミノ酸配列を絶えず変化させる。主要なアミノ酸変異(抗原シフト)又は軽微な変異(抗原ドリフト)の何れかが、新しいエピトープを生じさせ得、ウイルスが免疫系を回避することを可能にする。抗原変異は、インフルエンザの流行が繰り返されることが主な原因である。サブタイプ(例えばH1又はH3)内の抗原変異体が出現し、優勢なウイルスとして徐々に選択される一方で、先行するウイルスは、集団において生じる特異的抗体によって抑制される。一般に、1つの変異体に対する抗体の中和は、連続的に変異体が生じるにつれて、効果が次第に低下する。サブタイプ内の変異体に対する免疫反応は、宿主の以前の経験に依存し得る。
【0036】
HA及びNAはかなり異なって進化する。例えば、HAに対する遺伝子を含む、インフルエンザウイルスの全ての遺伝子に対して、サイレントヌクレオチド置換の速度は、コードヌクレオチド置換の速度よりも速いことが示されている(Webster,R. G.,et al.,Evolution and ecology of influenza A viruses,MICROBIOL REVS.1992;56(1):152-179)。しかし、HAは、内部タンパク質よりもはるかに高いコード変化速度を有する。他の遺伝子と比較した場合にHA遺伝子におけるコードヌクレオチド変化の速度が速いことは、免疫選択がその進化における重要な因子であるという証拠として採用されている(Palese,P.,et al.,Variation of Influenza A,B,and C Viruses,SCIENCE1982;215(4539):1468-74)。あらゆる非特異的立体障害を排除するために再集合抗原を用いて、Kilbourneらは、10年間にわたってヒトから単離した疫学的に重要なHA及びNA抗原の進化速度を研究し、HAがNAよりも急速に進化することを見出した(Kilbourne,E.D.,et al.,Independent and disparate evolution in nature of influenza virus A hemagglutinin and neuraminidase glycoproteins,PNAS 1990;87(2):786-790)。これは、A型H1N1及びH3N2ウイルスの両方で示され、より最近の株を用いたその後の実験によって確認されている。進化速度が明らかに異なる理由は不明であるが、HAに対する抗体がウイルスを中和し、感染を防ぐという事実に起因し得る。これにより、部分的に免疫性の集団においてそれ自身維持されるように、HAにより大きな選択圧がかかり得る。従って、NAは、HAと比較した場合、より緩やかな抗原ドリフトを受けるので、HA及びNAの両方を含むワクチン又は免疫原性組成物は、抗原ドリフトされたHA抗原を含有するインフルエンザの株に対する(NA抗体の形態での)より広範な防御をもたらし得る。
【0037】
インフルエンザウイルスは天然に、HAと比較して、ウイルス表面上に含有するNAが約10分の1であるので、及びHA抗原を濃縮するための確立された工程はその酵素的に活性のある及び四量体の立体構造でNAを維持することに適していない可能性があるので、不活性化ウイルスワクチンなどのワクチン組成物中で検出可能なNAの量は、かなりばらつきがあり得る。従って、本明細書中で開示されるようなワクチン又は免疫原性組成物への組み換えNA又はNAをコードするmRNAの添加により、ワクチン又は免疫原性組成物中に含有されるNAの量を超えてより良好な制御が可能になり得る。組み換えによるか又はNAをコードするmRNAを通じた安定なNAの作製及びそれをHA抗原、例えば組み換えにより産生されたHA抗原又はHA抗原をコードするmRNAなど、に添加することによって、現在利用可能なワクチンと比較した場合、本ワクチン又は免疫原性組成物を受容する対象においてHA及びNA免疫反応の両方のより良好な釣り合わせが可能になり、次に、循環するインフルエンザ株に対して、防御が増強され得、及び/又は防御の幅が広がり得る。
【0038】
従って、例えばインフルエンザウイルスHA(例えば、組み換えHA)及び1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸(例えばmRNA)分子を含むハイブリッド多価インフルエンザワクチン組成物を含め、1種類以上のインフルエンザウイルスHA又はNAをコードする1種類以上のリボ核酸に加えてインフルエンザウイルスHA又はNAを含むハイブリッド多価インフルエンザワクチン又は免疫原性組成物が本明細書中で開示される。
【0039】
定義
本開示をより容易に理解するために、ある一定の用語を最初に以下で定義する。本明細書を通して、以下の用語及び他の用語のさらなる定義を記載し得る。以下に記載する用語の定義が、参照により組み込まれる出願又は特許中の定義と矛盾する場合、その用語の意味は、本出願に記載の定義を使用して理解されるべきである。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかに別段示されない限り、複数の参照物を含む。従って、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載されるタイプの1つ以上の方法及び/又は段階を含み、及び/又はそれは本開示などを読めば当業者にとって明らかになるであろう。
【0041】
請求項の要素を変更するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体、1つの請求項要素の別の請求項要素に対する重要度、優先度若しくは順序、又は方法の操作が実行される時間的順序を意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、ある名称を有するある1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の請求項要素から区別する(但し、序数用語の使用のための)ラベルとして使用される。
【0042】
アジュバント:本明細書中で使用される場合、「アジュバント」という用語は、ワクチン又は免疫原性組成物の抗原成分に対する免疫反応を増強するために使用され得る物質又は物質の組み合わせを指す。
【0043】
抗原:本明細書中で使用される場合、「抗原」という用語は、生物に曝露又は投与された場合に、免疫反応を誘発する薬剤;及び/又は(ii)T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示された場合)又は抗体(例えば、B細胞によって産生された)に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、液性反応(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発し;代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、細胞性反応(例えば、受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞が関与する)を誘発する。当業者であれば、特定の抗原が、標的生物(例えば、マウス、フェレット、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つ以上のメンバーにおいて免疫反応を誘発し得るが、標的生物種の全てのメンバーで誘発し得るわけではないことは、理解されよう。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫反応を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、生物において特定の生理学的反応を誘導することもあれば又は誘導しないこともある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原はインビトロで抗体及び/又はT細胞受容体に結合し得、これは、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらない。いくつかの実施形態では、抗原は、特定の液性又は細胞性免疫の産物と反応し、そのような産物には異種免疫原によって誘導されるものも含まれる。抗原は、本明細書中に記載のようなNA及びHAの形態を含む。
【0044】
およそ:本明細書中で使用される場合、1つ以上の対象の値に適用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。いくつかの実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、記載された基準値のどちらの方向でも(それより大きい、又はそれより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満に入る値の範囲を指す(そのような数があり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0045】
担体:本明細書中で使用される場合、「担体」という用語は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体には、例えば、水及び油、例えば石油、動物油、植物油又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの滅菌液体が含まれ得る。いくつかの実施形態では、担体は、1つ以上の固体成分であるか、又はそれを含む。
【0046】
エピトープ:本明細書中で使用される場合、「エピトープ」という用語には、免疫グロブリン(例えば、抗体又は受容体)結合成分によって、全体的又は部分的に、特異的に認識される何らかの部分が含まれる。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学原子又は化学基から構成される。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原が関連する三次元構造をとるときに表面に露出される。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原がそのような構造をとるとき、空間内で物理的に互いに近接する。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのそのような化学原子又は化学基は、抗原が代替的構造をとる(例えば、線状化される)とき、互いから物理的に離される。
【0047】
賦形剤:本明細書中で使用される場合、「賦形剤」という用語は、例えば、所望の一貫性又は安定化効果を付与するか、又はそれに寄与するために、医薬組成物に含まれ得る非治療薬を指す。好適な医薬品賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ソルビトール、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0048】
H1:本明細書中で使用される場合、「H1」は、インフルエンザウイルスサブタイプ1 ヘマグルチニン(HA)を指す。A型インフルエンザウイルスは、群1及び2にさらに分けられる。群1及び2はさらに、ウイルス表面の2つのタンパク質HA及びノイラミニダーゼ(NA)の配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分類される。現在、18種類のHAサブタイプ(H1~H18)が認められている。従って、H1は、H2~H18を含む他のHAサブタイプとは異なる。
【0049】
H3:本明細書中で使用される場合、「H3」は、インフルエンザウイルスサブタイプ3HAを指す。従って、H3は、H1、H2及びH4~H18を含め、他のHAサブタイプとは異なる。
【0050】
免疫反応:本明細書中で使用される場合、「免疫反応」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ又は多形核球などの免疫系の細胞の、抗原、免疫原又はワクチンなどの刺激に対する反応を指す。免疫反応は、例えば、インターフェロン又はサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御反応に関与する身体のあらゆる細胞を含み得る。免疫反応としては、自然免疫反応及び/又は適応免疫反応が挙げられるが限定されない。免疫反応を測定する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、リンパ球(B細胞又はT細胞など)の増殖及び/又は活性の測定、サイトカイン又はケモカインの分泌の測定、炎症の測定、抗体産生の測定などが挙げられる。抗体反応又は液性反応は、抗体が産生される免疫反応である。「細胞性免疫反応」は、T細胞及び/又は他の白血球が介在するものである。
【0051】
免疫原:本明細書中で使用される場合、「免疫原」又は「免疫原性」という用語は、適切な条件下で、動物に注入又は吸収される組成物を含む、動物における抗体の産生又はT細胞反応などの免疫反応を刺激することが可能な、化合物、組成物又は物質を指す。本明細書中で使用される場合、「免疫原性組成物」という用語は、防御免疫反応であってもよいし又はなくてもよい免疫反応を生じる組成物を指す。本明細書中で使用される場合、「免疫する」とは、感染性疾患(例えばインフルエンザ)に対する防御免疫反応を対象に誘導することを意味する。
【0052】
免疫学的有効量:本明細書中で使用される場合、「免疫学的有効量」という用語は、対象に免疫付与するのに十分な量を意味する。
【0053】
いくつかの実施形態では:本明細書中で使用される場合、「いくつかの実施形態では」という用語は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、本開示の全ての態様の実施形態を指す。
【0054】
機械学習:本明細書中で使用される場合、「機械学習」という用語は、経験を通して及び/又はデータの使用によって自動的に改善するアルゴリズムの使用を指す。機械学習は、予測モデルを通して候補抗原を選択するように設計されたアルゴリズムの使用を含む、データの予測を可能にするためのインフルエンザ抗原性のモデルなどの予測モデルの構築を含み得る。標的株を同定し得、次に選択アルゴリズムを構築し得る。機械学習アルゴリズム及び方法の例は、例えば、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)及び国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)に見出すことができ、これらの両文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。機械学習にはまた、本明細書中で使用される場合、データを分析し解釈するための計算ツール、例えば、系統発生解析などのバイオインフォマティクス解析の適用も含まれ得る。同様に、「機械学習インフルエンザウイルスHA」は、機械学習により同定されたか又は設計されたインフルエンザウイルスHAを示し、「機械学習インフルエンザウイルスNA」は、機械学習により同定されたか又は設計されたインフルエンザウイルスNAを示す。「機械学習モデル」は、候補抗原などのデータを予測するために、経験を通して、及び/又はデータの使用によって、自動的に改善するアルゴリズムを使用するモデルを示す。
【0055】
修飾される:本明細書中で使用される場合、修飾されたHA又はNAなどの「修飾された」という用語は、タンパク質又は核酸の野生型形態と比較した場合に異なるアミノ酸又は核酸配列を有する何らかのHA又はNAタンパク質又は核酸を指す。例えば、修飾されたインフルエンザNAは、野生型NAタンパク質又は核酸配列とは異なるアミノ酸又は核酸配列を有するインフルエンザNAを指す。修飾されたインフルエンザNAは、野生型インフルエンザNAと比較して、1個以上のアミノ酸欠失及び/又は置換を含み得る。
【0056】
単量体のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ:野生型インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)は、4個の同一である単量体の四量体である。野生型インフルエンザNAにおける各NA単量体は、4個の異なる構造ドメイン:酵素性頭部領域、ストーク領域、膜貫通領域及び細胞質尾部からなる。本明細書中で使用される場合、「単量体インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ」という用語は、四量体NAを形成するために3個の他のNA単量体と組み合わせ得るNA単量体を指す。本明細書中に記載のように、修飾された単量体インフルエンザウイルスノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスNAの頭部領域を含み得るが、異種四量体化ドメイン又はその分画を含み、及び/又細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域のうち1つ以上の少なくとも一部を欠く。
【0057】
N1:本明細書中で使用される場合、「N1」は、インフルエンザウイルスサブタイプ1ノイラミニダーゼ(NA)を指す。A型インフルエンザウイルスは、群1及び2に分類される。群1及び2はさらにサブタイプに分類され、これは、ウイルスの表面上の2つのタンパク質、HA及びノイラミニダーゼ(NA)の配列に基づくウイルスの分類を指す。現在、11種類のNAサブタイプ(N1~N11)が認められている。従って、N1は、N2~N11を含む他のNAサブタイプとは異なる。N2:本明細書中で使用される場合、「N2」は、インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(NA)を指す。従って、N2は、N1及びN3~N11を含む他のNAサブタイプとは異なる。
【0058】
インフルエンザB株は、2つの系統:B/Yamagata(山形)及びB/Victoria(ビクトリア)に分類される。
【0059】
パンデミック株:「パンデミック」インフルエンザ株は、ヒト集団などの対象集団のパンデミック感染を引き起こしたか、又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、パンデミック株は、パンデミック感染を引き起こしている。いくつかの実施形態では、そのようなパンデミック感染は、複数の地域にわたるエピデミック感染を含み、いくつかの実施形態では、パンデミック感染は、感染が通常それらの間で伝わることがないように、(例えば、山によって、水域によって、別個の大陸の一部としてなど)互いに離れている地域にわたる感染を含む。
【0060】
予防:「予防」という用語は、本明細書中で使用される場合、特定の疾患、障害又は状態(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の1つ以上の症状の、予防、疾患発現の回避、発症の遅延、及び/又は頻度及び/若しくは重症度の低減を指す。いくつかの実施形態では、予防は、集団ベースで評価され、疾患、障害又は状態の1つ以上の症状の発生、頻度及び/又は強度の統計学的に有意な減少が疾患、障害又は状態に罹りやすい集団において観察される場合、薬剤が特定の疾患、障害又は状態を「予防する」と見なされる。
【0061】
組み換え体:本明細書中で使用される場合、「組み換え体」という用語は、組み換え手段によって設計され、操作され、調製され、発現され、作製され又は単離されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載のHA及び/又はNAポリペプチド)、例えば、宿主細胞に遺伝子移入された組み換え発現ベクターを使用して発現されるポリペプチド、組み換え、コンビナトリアルポリペプチドライブラリから単離されるポリペプチド、又は選択された配列要素を互いにスプライシングすることを含む何らかの他の手段によって調製され、発現され、作製され又は単離されるポリペプチドを指すことが意図されている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ以上は天然で見出される。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ以上はインシリコで設計される。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ以上は、既知の配列要素の突然変異誘発(例えば、インビボ又はインビトロで)から、例えば天然又は合成源から生じる。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ以上は、同じポリペプチドに天然には存在しない複数の(例えば2つ以上の)既知の配列要素(例えば、2つの別々のHA又はNAポリペプチドからの2つのエピトープ)の組み合わせから生じる。組み換えHAは、rHAであり、組み換えNAはrNAである。
【0062】
季節性株:「季節性」インフルエンザ株は、ヒト集団などの対象集団の季節性感染(例えば、毎年のエピデミック)を引き起こしたか、又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、季節性株は、季節性感染を引き起こしている。
【0063】
配列同一性:アミノ酸又は核酸の配列間の類似性は、配列間の類似性の観点から表され、それ以外の場合、配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、同一性(又は類似性若しくは相同性)のパーセンテージの観点から測定されることが多く;パーセンテージが大きいほど、2つの配列はより類似している。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。所与の遺伝子又はタンパク質の相同体又は変異体は、標準的な方法を用いてアラインさせた場合、比較的高度の配列同一性を有する。
【0064】
「%同一の」、「%同一性」という用語又は類似の用語は特に、比較しようとする配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。前記パーセンテージは純粋に統計学的であり、2つの配列間の差異は、比較しようとする配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしも分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に、セグメント又は「比較の窓」に関して、前記配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアライメントは、手動で、又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて行い得る。
【0065】
同一性パーセンテージは、比較しようとする配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除し、この結果に100を乗ずることによって得られる。
【0066】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180又は約200個のヌクレオチドについて、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドで、与えられる。いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0067】
所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対してそれぞれ特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列の少なくとも1つの機能的及び/又は構造的特性を有し得、例えば、いくつかの例では、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。
【0068】
標準治療株:世界保健機関(WHO)は、毎年、集中的なサーベイランスの試みに基づいて、季節性ワクチン製剤に含まれるべきインフルエンザ株を選択する。本明細書中で使用される場合、「標準治療株」又は「SOC株」という用語は、季節性ワクチン製剤に含まれるように、世界保健機関(WHO)によって選択されるインフルエンザ株を指す。標準治療株には、過去の標準治療株、現在の標準治療株又は将来の標準治療株が含まれ得る。
【0069】
対象:本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、動物界のあらゆるメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒトを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、対象に、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類及び/又は蠕虫が含まれるが限定されない。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物及び/又はクローンであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、成人、青年又は乳幼児である。いくつかの実施形態では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と交換可能であるものとする。
【0070】
四量体NA分子:本明細書中で使用される場合、「四量体NA分子」という用語は、4個のNA単量体のポリペプチド単位を含む化合物を指す。いくつかの実施形態では、ある種の四量体NA化合物における各単量体NA分子は、球状の頭部ドメイン、ストーク領域、疎水性膜貫通ドメイン及び短いN末端細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態では、所与の単量体NA分子のこれらのドメイン又は領域の1つ以上は、参照野生型単量体NA分子と比較して、短縮されるか、全く存在しないか又は修飾される。
【0071】
四量体化ドメイン:本明細書中で使用される場合、「四量体化ドメイン」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質の四量体アセンブリを生じさせるドメインをコードするアミノ酸配列を指す。特定のタンパク質にとってネイティブではない四量体化ドメインは、人工的又は異種の四量体化ドメインと呼ばれ得る。代表的な四量体化ドメインは、テトラブラチオン(Tetrabrachion)からの配列、GCN4ロイシンジッパー又は血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)を含むが限定されない。
【0072】
ワクチン組成物:本明細書中で使用される場合、「ワクチン組成物」又は「ワクチン」という用語は、対象において防御免疫反応を生じさせる組成物を指す。本明細書中で使用される場合、「防御免疫反応」は、感染から対象を保護する(感染を予防するか、又は感染に関連する疾患の発症を予防する)か、又は感染(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の症状を軽減する免疫反応を指す。ワクチンは、予防(防止)反応及び治療反応の両方を誘発し得る。投与方法はワクチンによって異なるが、接種、摂取、吸入又は他の投与形態が含まれ得る。接種は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、鼻腔内、吸入による、又は筋肉内などの非経口を含む多くの経路の何れかによって送達され得る。ワクチンは、免疫反応を増強するためにアジュバントと共に投与され得る。
【0073】
ワクチン接種:本明細書中で使用される場合、「ワクチン接種する」などの用語は、対象における防御免疫反応、例えばインフルエンザウイルスなどの疾患を引き起こす病原体に対する反応を生成するためのワクチン組成物の投与を指す。ワクチン接種は、疾患を引き起こす病原体への曝露の前、曝露中及び/又は曝露後に、及び/又は1つ以上の症状の発現の前、発現中及び/又は発現後に、いくつかの実施形態では、病原体への曝露前、曝露中及び/又は曝露直後に行われ得る。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン組成物の適切な時間間隔を置いた複数回の投与を含む。
【0074】
ワクチン効力:本明細書中で使用される場合、「ワクチン効力」又は「ワクチン有効性」という用語は、ワクチン組成物を投与された対象間での疾患のエビデンスの減少のパーセンテージに関する目安を指す。例えば、50%のワクチン効力は、非ワクチン接種対象の群又は異なるワクチンを投与された対象の群と比較した場合に、ワクチン接種された対象の群の間での疾患症例数が50%減少することを示す。
【0075】
野生型(WT):当技術分野で理解されているように、「野生型」という用語は一般に、天然に見出されるような、正常な形態のタンパク質又は核酸を指す。例えば、野生型HA及びNAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然単離株中で見出される。NCBIインフルエンザウイルス配列データベースにおいて様々な異なる野生型HA及びNA配列が見出され得る。
【0076】
インフルエンザウイルスに対する命名法
インフルエンザウイルスを分類するために使用される全ての命名法は、当業者によって一般的に使用されるものである。従って、インフルエンザウイルスのタイプ又は群は、次の3つの主要なタイプのインフルエンザを指す:ヒトに感染する、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ又はC型インフルエンザ。インフルエンザA及びBは、毎年、かなりの罹患率及び死亡率を引き起こす。特定のタイプとしてのウイルスの指定が、それぞれのMl(マトリクス)タンパク質又はP(核タンパク質)における配列の違いに関連することは、当業者に理解される。A型インフルエンザウイルスは、群1及び群2にさらに分けられる。これらのグループはさらに、ウイルス表面の2つのタンパク質、HA及びNAの配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分類される。現在、18の認識されたHAサブタイプ(H1~H18)及び11の認識されたNAサブタイプ(N1~N11)が存在する。群1は、N1、N4、N5及びN8と、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17及びH18とを含有する。群2は、N2、N3、N6、N7及びN9と、H3、H4、H7、H10、H14及びH15とを含有する。N10及びN11は、コウモリから単離されたインフルエンザ様ゲノムにおいて同定されている(Wu et al.,Trends in Microbiology,2014,22(4):183-91)。潜在的に198の異なるインフルエンザAサブタイプの組み合わせが存在するが、自然界では約131のサブタイプしか検出されていない。季節的な大流行を引き起こす、ヒト集団において一般的に循環しているA型インフルエンザウイルスの現在のサブタイプとしては、A(H1N1)及びA(H3N2)が挙げられる。
【0077】
インフルエンザAサブタイプはさらに、異なる遺伝的「クレード」及び「サブクレード」に分類され得る。例えば、AサブタイプA(H1N1)は、クレード6B.1及びサブクレード6B.1Aを含む。AサブタイプのA(H3N2)は、クレード3C.2A及び3C.3A、並びにサブクレード3C.2A1、3C.2A2、3C2A3及び3C.2A4を含有する。同様に、BサブタイプVictoria(ビクトリア)はクレードV1A及びサブクレードV1A.1、V1A.2及びV1A.3を含有し、一方、BサブタイプYamagata(山形)はクレードY1、Y2及びY3を含有する。最後に、株という用語は、それらのゲノムに小さな遺伝的変異を有するという点で互いに異なるサブタイプ内のウイルスを指す。
【0078】
便宜上、本明細書中に記載のタンパク質コンストラクト及びその一部を指すために、特定の略語を使用し得る。例えば、HAは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質を指し得る。H1は、インフルエンザサブタイプ1株由来のHAを指す。H3は、インフルエンザサブタイプ3株由来のHAを指す。同様に、NAは、インフルエンザノイラミニダーゼタンパク質又はその一部を指し得る。N2は、インフルエンザサブタイプ2株由来のノイラミニダーゼを指す。tet-NA又はrTET-NAという用語は、細胞中で発現される場合、四量体NAを形成する異種四量体化ドメインを含む組み換えNAを指す。HAは、ヘマグルチニン又はその一部を指す。
【0079】
ヘマグルチニン(HA)
ヘマグルチニン(HA)は、NAとともに、2つの主要なインフルエンザ表面タンパク質のうちの1つである。NA及びHAの両方の機能には、細胞の表面上で発現される糖タンパク質又は糖脂質上の糖部分に結合する末端分子であるシアル酸との相互作用が含まれる。細胞表面のシアル酸にHAが結合することにより、細胞によるウイルスのエンドサイトーシスが誘導され、ウイルスが細胞に侵入し、感染することが可能になる。シアル酸はまた、感染細胞内で起こるグリコシル化過程の一部としてHA及びNAに付加される。
【0080】
HAは、宿主細胞へのインフルエンザウイルスの付着、及び細胞へのウイルスの浸透の間のウイルス-細胞膜融合に介在すると考えられている。HA分子における抗原性の変異は、インフルエンザの頻繁な流行及び免疫付与による感染の制御が限定的であることの原因である。
【0081】
HAは、成熟インフルエンザウイルス中に三量体として存在する。各HA単量体は、ジスルフィド結合によって連結された2つのポリペプチド(HA1及びHA2)からなる。これらのポリペプチドは、インフルエンザウイルスの成熟中の単一前駆体タンパク質HA0の開裂によって誘導される。一部には、これらの分子はしっかりと折り畳まれているので、HA0並びに成熟HA1及びHA2は、立体構造及び抗原の特徴が僅かに異なる。さらに、HA0はより安定であり、変性及びタンパク質分解に対して耐性がある。
【0082】
所望のHA遺伝子をクローニングするためのインフルエンザウイルス株の単離、増殖及び精製は、当技術分野で公知の何れかの方法、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,939号明細書に開示されている方法などによって行われ得る。
【0083】
本開示の方法及び組成物は、野生型HA、修飾された非野生型HA、季節性又はパンデミックインフルエンザウイルス株由来のHA、組み換えHA、不活性化インフルエンザウイルス(IIV)及び/又は再集合ウイルス中に存在するHA、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有するHA、リボ核酸分子によりコードされるHA及び/又は当技術分野で公知の何れかの他の形態のHAを含む何れかの形態のHAの使用を含み得る。
【0084】
一次HA遺伝子産物は、プロセシングされていない全長HA(rHA0)であり、分泌されないが、感染細胞の周辺膜と結合したままである。昆虫細胞において、このrHA0は、N結合高マンノース型グリカンでグリコシル化されており、rHA0が翻訳後に三量体を形成し、次に細胞質細胞膜に蓄積している証拠がある。
【0085】
rHA0は、非変性非イオン性界面活性剤を用いて、又は細胞、例えば昆虫細胞から組み換えタンパク質を精製するための当技術分野で公知の他の方法、例えばアフィニティー若しくはゲルクロマトグラフィー、抗原結合、DEAEイオン交換又はレンチルレクチンアフィニティークロマトグラフィーなど、を用いて、周辺膜から選択的に抽出され得る。次いで、精製rHA0を等張の緩衝溶液中で再懸濁し得る。特定の実施形態では、rHA0は、少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%まで精製される。
【0086】
本明細書中で開示されるインフルエンザウイルスHAタンパク質は、不活性化されたビリオン中に存在するインフルエンザウイルスHAを含む。特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHAタンパク質は、再集合ウイルス中に存在する。特定の実施形態では、不活性化及び/又は再集合ウイルスは、スプリット不活性化ウイルスである。特定の実施形態では、不活性化及び/又は再集合ウイルス中に存在するインフルエンザウイルスHAが本明細書中で開示され、ここで、HAは、標準治療インフルエンザウイルス由来のH1 HA、標準治療インフルエンザウイルス由来のH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA、又はB/Yamagata(山形)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス由来のHAから選択される。
【0087】
本明細書中で開示される特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHAは、1種類以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、例えば、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有する組み換え機械学習インフルエンザウイルスHAなどである。特定の実施形態では、機械学習組み換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのHA、B/Yamagata(山形)系統からのHA又はそれらの組み合わせのうち1つ以上から選択され得る。1種類以上の機械学習インフルエンザウイルスHAを選択する際、例えば本明細書中に記載のようなものを含め、何れかの機械学習アルゴリズム又はモデルが使用され得る。
【0088】
本明細書中で開示されるインフルエンザウイルスHAは、単独で又は他のインフルエンザウイルスHA抗原と及び/又は以下で論じられるようなインフルエンザウイルスNAと組み合わせて、処方され、包装され得る。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8種類又はそれを超えるインフルエンザウイルスHA抗原を含む。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、4価ワクチン又は免疫原性組成物を作製するために4種類のインフルエンザウイルスHAを含む。特定の実施形態では、4種類のインフルエンザウイルスHAは、8価ワクチン又は免疫原性組成物を作製するために、4種類のインフルエンザウイルスNA抗原とともに処方される。特定の実施形態では、4種類の組み換えインフルエンザウイルスHA抗原などの4種類のインフルエンザウイルスHA抗原は、8価ワクチン又は免疫原性組成物を作製するために4種類のインフルエンザウイルスNA抗原をコードするリボ核酸分子とともに処方される。
【0089】
本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在するインフルエンザウイルスHAは、標準治療インフルエンザウイルス株からのインフルエンザウイルスHA及び/又は本明細書中で開示されるような機械学習インフルエンザウイルスHAの何れかの組み合わせを含み得る。例えば、特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHAは、野生型インフルエンザHA、非野生型インフルエンザHA、季節性又はパンデミックインフルエンザウイルス株由来のHA及び/又は当技術分野で公知の何れかの他の形態のインフルエンザHAであり得る。特定の実施形態では、組み換えインフルエンザウイルスHAが本明細書中で開示され、HAは、標準治療インフルエンザウイルス由来のH1 HA、標準治療インフルエンザウイルス由来のH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA又はB/Yamagata(山形)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス由来のHAから選択される。
【0090】
本明細書中で開示される特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHAは、例えば、H1、H2、H3、H5、H7、H9及び/又はH10を含む、パンデミック株又はパンデミック潜在性を有する株由来である。
【0091】
ヘマグルチニン活性は、例えばヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)を含め、当技術分野で公知の技術を使用して測定され得る。HAIは、赤血球(RBC)表面のシアル酸受容体がインフルエンザウイルス(及びいくつかの他のウイルス)の表面で見出されるヘマグルチニン糖タンパク質に結合し、ウイルス粒子に濃度依存的に生じる、相互接続されたRBC及びウイルス粒子のネットワーク又は格子構造を作り出す、赤血球凝集反応と呼ばれる赤血球凝集反応の過程を適用する。これは、体内の病原体を標的とする細胞上の類似のシアル酸受容体に結合するウイルスの機能に関する代用として取られる物理的測定である。別のウイルス(アッセイにおいてRBCに結合するために使用されるウイルスと遺伝的に類似又は異なり得る)に対するヒト又は動物の免疫反応において生じた抗ウイルス抗体の導入は、ウイルス-RBC相互作用を妨害し、アッセイにおいて赤血球凝集が観察される濃度を変えるのに十分なウイルスの濃度を変化させる。HAIの1つの目標は、アッセイにおいて赤血球凝集を阻害するそれらの能力と比較して、抗体を含有する抗血清又は他の試料中の抗体の濃度を特徴付けることであり得る。赤血球凝集を防止する抗体の最も高い希釈はHAI力価(即ち、測定された反応)と呼ばれる。
【0092】
HA抗体応答を測定するための別のアプローチは、ヒト又は動物の免疫反応によって誘発される抗体の潜在的により大きいセットを測定することであり、これらは、HAIアッセイにおいて赤血球凝集に必ずしも影響を及ぼし得ない。このための一般的なアプローチは、ELISA技術を利用するものであり、ウイルス抗原(例えばヘマグルチニン)を固体表面に固定化し、次いで、抗血清由来の抗体を抗原に結合させる。読み取りは、抗血清由来の抗体、又はそれ自体が抗血清の抗体に結合する他の抗体の何れかに複合化された外因性酵素の基質の触媒作用を測定する。基質の触媒作用によって、容易に検出可能な生成物が生じる。この種のインビトロアッセイには多くのバリエーションがある。そのようなバリエーションの1つは、抗体法医学(AF)と呼ばれ、これは多くの抗原に対して同時に単一の血清試料を測定することを可能にする多重ビーズアレイ技術である。これらの測定は、HAI力価と比較した場合、濃度及び総抗体認識を特徴付けるものであり、これらはヘマグルチニン分子によるシアル酸結合の干渉とより特異的に関連すると考えられている。従って、抗血清の抗体は、いくつかの場合において、別のウイルスのヘマグルチニン分子と比較して、1つのウイルスのヘマグルチニン分子について対応するHAI力価よりも比例的に高いか又は低い測定値を有し得;言い換えれば、これらの2つの測定値、AF及びHAIは、線形的に相関し得ない。
【0093】
HA抗体応答を測定する別の方法は、ウイルス中和アッセイ(例えば、マイクロ中和アッセイ)を含み、この場合、ウイルスを抗体/血清試料の連続希釈物とインキュベートした後の許容培養細胞において、特異的中和アッセイ技術に依存して、プラーク、フォーカス及び/又は蛍光シグナルの減少により、抗体力価が測定される。
【0094】
各インフルエンザウイルスHAは、本明細書中で開示される組成物中に、組成物が投与される対象において免疫反応を誘導するのに有効な量で含まれ得る。特定の実施形態では、各インフルエンザウイルスHAは、例えば、約0.1μg~約500μg、例えば約5μg~約120μg、約1μg~約60μg、約10μg~約60μg、約15μg~約60μg、約40μg~約50μg、約42μg~約47μg、約5μg~約45μg、約15μg~約45μg、約0.1μg~約90μg、約5μg~約90μg、約10μg~約90μg又は約15μg~約90μgなどの範囲の量で本明細書中に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在する。特定の実施形態では、各組み換えHAは、約5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg又は約90μgの量で本明細書中に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在し得る。
【0095】
ノイラミニダーゼ(NA)
HAとともに、ノイラミニダーゼ(NA)は、第2の主要なインフルエンザ表面タンパク質である。NAは、新生ビリオン上で、細胞性糖タンパク質及び糖脂質から及び新規合成HA及びNAからシアル酸を除去する。NAによるシアル酸の除去は、ウイルス粒子の凝集を防ぐことによって、感染細胞の表面からのウイルス粒子の効果的な放出を促進する。これは、ウイルス感染のさらなる拡大を促進する、既に感染した死んだ細胞へのHAを介したウイルスの結合も防ぐ。NAが、従来のワクチンにおけるか又はインタクトなビリオン上での何れかで、免疫原性形態で存在する場合、これは少数の成分であり、従って免疫優勢HAとの抗原競合の継続に対して従属的である。競合的な機序ゆえに、NAに対する免疫原性応答は、より頻繁に生じるHA抗原に有利に、部分的に抑制されると思われる(Johanssen et al.,Immunologic response to influenza virus neuraminidase is influenced by prior experience with the associated viral hemagglutinin,J.IMMUNOL. 1987;139(6):2010-2014;及びKilbourne,Comparative Efficacy of Neuraminidase-Specific and Conventional Influenza Virus Vaccines in Induction of Antibody to Neuraminidase in Humans,J.INFECT.DIS.1976;134(4):384-94)。結果として、NA免疫の効果は一般に、中和HA抗体によって目立たなくされ得る。
【0096】
本開示の方法及び組成物は、野生型NA、修飾された、非野生型NA、季節性又はパンデミックインフルエンザウイルス株由来のNA、組み換えNA、IIV及び/又は再集合ウイルス中に存在するNA、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有するNA、リボ核酸分子によりコードされるNA及び/又は当技術分野で公知の何れかの他の形態のNAを含め、あらゆる形態のNAの使用を含み得る。
【0097】
a.野生型インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ
本明細書中で開示される組成物及び方法は、特定の実施形態では、4個の野生型単量体NA分子を含む四量体NAポリペプチドの使用を含み得る。NAは、4個の同一である単量体の四量体としてウイルス表面上で集合するII型膜貫通糖タンパク質である。野生型単量体の分子量は一般的に、インフルエンザのサブタイプに依存して約55~72kDaであり;この四量体の分子量は一般的に、インフルエンザサブタイプに依存して約240~260kDaである。各単量体は、4つの異なる構造ドメイン:酵素性頭部領域、ストーク領域、膜貫通領域及び細胞質尾部からなる。最大ドメインは頭部領域であり、これは、膜貫通領域及び最終的にN末端細胞質ドメインに連結されるストーク領域によってウイルス膜に係留される。
【0098】
N1及びN2を含む異なるインフルエンザAウイルスサブタイプの間のストーク領域は、大きさ及びアミノ酸構造が顕著に変動し得る(Blok et al.,Variation in the membrane-insertion and’stalk’ sequences in eight subtypes of influenza type A virus neuraminidase,BIOCHEMISTRY 1982、21(17):4001-4007)。ストークの長さの差は、酵素性頭部領域の距離を調節し、細胞表面受容体上のシアル酸にNAが接近する能力に影響を与えると考えられ、ストーク領域が短いことは、シアリダーゼ活性が低いことと相関する(Da Silva et al.,Assembly of Subtype 1 Influenza Neuraminidase is Driven by Both the Transmembrane and Head Domains,J BIOL CHEM 2013,288(1):644-53;及びMcAuley et al.,Influenza Virus Neuraminidase Structure and Functions,FRONTIERS IN MICROBIOLOGY 2019,10(39))。異なるサブタイプのストーク領域間での変動性にもかかわらず、NAストーク領域は、少なくとも1つのシステイン残基及び潜在的なグリコシル化部位を含め、いくつかの構造特性も共有する。システイン残基は、NA単量体間のジスルフィド結合の形成に関与し得、安定化されたNA四量体の形成に役立ち、一方でグリコシル化部位は、四量体安定化に寄与し得る(McAuley et al.,2019)。例えば、N2 NAのアミノ酸位置78の保存されたシステイン残基は、四量体組み立て機序に関与すると考えられる(Shtyrya et al.,Influenza virus neuraminidase:structure and function,ACTA NATURAE 2009;1(2):26-32)。
【0099】
酵素性頭部領域は、4個の単量体から構成される。頭部の各単量体は、保存された6枚ブレード型プロペラ構造を形成する。各ブレードは、ジスルフィド結合により安定化され、様々な長さのループによって連結される4枚の逆平行β-シートを有する。McAuley et al.,2019。単量体の四量体化は、活性部位の形成及び酵素活性のあるNAの合成に重要である。Dai et al.,Identification of Residues That Affect Oligomerization and/or Enzymatic Activity of Influenza Virus H5N1 Neuraminidase Proteins,J.VIROLOGY 2016,90(20):9457-70。
【0100】
N1及びN2など、異なるインフルエンザAウイルスNAサブタイプの間で、及び特に異なるインフルエンザAウイルスNAサブタイプのNAストーク領域の間で、NAのアミノ酸配列及び長さが顕著に変動し得るにもかかわらず、異なるインフルエンザ株由来のN2のアミノ酸配列の長さは一般的に約469アミノ酸であり、いくつかの株は、一般的には頭部領域において約1又は2個(又はそれを超える)アミノ酸挿入又は欠失を有する。野生型N2における特異的なアミノ酸残基に言及する場合、特異的なアミノ酸残基番号は、当技術分野で理解される場合、N2付番に基づく。N末端細胞質尾部は一般的に、野生型N2配列のアミノ酸1~6に相当し、一方で膜貫通ドメインは一般的に野生型N2配列のアミノ酸7~35に相当する。例えば、株A/PERTH(パース)/16/2009(配列番号1)の野生型NA配列において、細胞質領域は、配列番号1のアミノ酸1~6に対応し、一方で膜貫通領域は、配列番号1のアミノ酸7~35に対応する。N2ストーク領域の長さは一般的に約46アミノ酸長であり、野生型N2配列の、アミノ酸36前後で始まり、アミノ酸82前後で終わる。例えば、株A/PERTH(パース)/16/2009の野生型NA配列(配列番号1)において、ストーク領域は、配列番号1のアミノ酸36~アミノ酸82前後に対応する。しかし、N2ストーク領域の最後とN2頭部領域の始めとの間の正確な境界は、X線結晶学により解決されていない。
【0101】
b.組み換え及び/又は修飾インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ
本開示の方法及び組成物は、修飾組み換えNA、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有する修飾NA及び/又はリボ核酸分子によりコードされる修飾NAを含む、修飾形態のインフルエンザウイルスNAの使用を含み得る。
【0102】
特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAは、宿主細胞で発現される場合、可溶性の四量体NAを形成する4個の修飾単量体NA分子を含む。一態様では、修飾された単量体NA分子は、インフルエンザウイルスNAの頭部領域及び異種オリゴマー化ドメインを含むが、インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の1つ以上の少なくとも一部を欠く。
【0103】
例えば、修飾された単量体NAは、インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の1つ以上を置換するか又はインフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て若しくは実質的に全てを置換する異種四量体化ドメインを含み得る。特定の実施形態では、異種四量体化ドメインは、例えば、その全体において参照により本明細書によって組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0034578号明細書で開示されるような四量体化ドメインである。Schmidt et al.,PLos ONE,2011,6(2):e16284;Da Silva et al.,J Biol Chem,2013,288(1):644-53;Dai et al.,2016,J.Virology,90(20):9457-70;Bosch et al.,2010,J.Virology,84(19):10366-74;Prevato et al.,2015,PLos ONE,10(8):e0135474も参照のこと。他の実施形態では、異種四量体化ドメインは、その全体において参照により本明細書によって組み込まれる国際公開第2016/097769号パンフレットに記載のような、ヤツメウナギVLR-B抗体の極端なC末端(即ち、その全体において参照により本明細書によって組み込まれる国際公開第2008/016854号パンフレットの
図11Cで「C-TERM」と呼ばれるドメイン)で見出されるペプチド、例えば国際公開第2016/097769号パンフレットの配列番号1又は配列番号2など、である。
【0104】
特定の実施形態では、修飾された単量体インフルエンザウイルスNAは、インフルエンザウイルスNAの、シグナルペプチド、異種四量体化ドメイン及び頭部領域を含み、宿主細胞における修飾された単量体インフルエンザウイルスNAの発現の結果、四量体NAの分泌が起こる。
【0105】
野生型NAタンパク質は、膜貫通ドメインを含む膜結合性タンパク質である。可溶性NAタンパク質を作製するために、膜貫通ドメインを欠失させ、シグナルペプチドを付加することが可能である。シグナルペプチドは、組み換えNAタンパク質を分泌経路に標的化して、組み換えNAが発現される宿主細胞から組み換えNAタンパク質が分泌されるようにする。修飾された単量体NA核酸が宿主細胞の内部でポリペプチドに翻訳される場合、ポリペプチドは、シグナルペプチドを含有する。しかし、翻訳後プロセシング中、シグナルペプチドが切断され、分泌されたポリペプチドがもはやシグナルペプチドを含有しないようになる。それ自体、修飾された単量体NAが修飾された単量体NAを分泌経路に標的化するために翻訳後にシグナルペプチドを含み得るにもかかわらず、翻訳後プロセシングを通じてシグナルペプチドが除去され、修飾された単量体NAを発現する宿主細胞から得られる可溶性四量体NAがシグナルペプチドをもはや含有しない4個の修飾されたNA単量体から構成されるようになる。
【0106】
特定の実施形態では、例えば、四量体NAは、4個の修飾された単量体インフルエンザウイルスNAを含み、この修飾された単量体インフルエンザウイルスNAは、インフルエンザウイルスNAの頭部領域及び異種四量体化ドメインを含む。
【0107】
特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAの、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを、シグナルペプチド及び異種四量体化ドメインにより置き換え得る。異種四量体化ドメインを含む修飾NAは、NAストーク領域全体を欠き得るか、又はこれは、NAストーク領域の実質的に全てを欠き得、即ち修飾されたNAコンストラクトは、NAストーク領域のC末端部分を含み得る。例えば、異種四量体化ドメインを含む修飾NAは、NAストーク領域の最もC末端のアミノ酸の約1~13を含み得る。当技術分野で理解されるように、ストーク領域の最もC末端のアミノ酸は、NA頭部領域にすぐに隣接する残基である。さらなる例として、異種四量体化ドメインコンストラクトを含む修飾されたNAは、NAストーク領域の最もC末端のアミノ酸の1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2を含み得る。さらなる例として、異種四量体化ドメインコンストラクトを含む修飾されたNAは、NAストーク領域の最もC末端のアミノ酸の約8個を含み得る。
【0108】
特定の実施形態では、異種四量体化ドメインは、スタフィロテルムス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラチオン(tetrabrachion)四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質の四量体化ドメイン又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである。
【0109】
さらなる例として、その全体において参照により本明細書によって組み込まれるPCT国際出願第PCT/US2022/039980号明細書で開示されるように、異種四量体化ドメインの付加なしでも、細胞において発現される場合、ストークドメインの全て又は実質的に全てを欠く修飾された単量体インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(N2)が可溶性四量体NAを形成し得ることが発見された。ストークドメインの全て又は実質的に全てを欠く全てのN2株が検出可能な量の可溶性四量体NAを産生するわけではないものの、試験したN2株の殆どが検出可能な量の可溶性四量体NAを産生し、短縮されたストーク設計ストラテジーが様々なN2インフルエンザ株由来のNAタンパク質へと広く適用され得ることが示される。使用されるN2株に依存して、この修飾された単量体NA設計ストラテジーの結果、宿主細胞で発現される場合に、優勢的に四量体NA又は単量体NA及び四量体の混合物の産生が起こり得る。従って、ある特定のN2株及び特異的なN2株のある特定のストーク欠失変異体は、細胞で発現される場合、可溶性の四量体NAのより高い収率を生じさせる。何れかの例において、宿主細胞においてこのような修飾されたNAコンストラクトが発現される場合、産生される四量体NAを精製することが所望され得る。
【0110】
本明細書中で使用される場合、インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(N2)の「ストーク領域の実質的に全て」は、インフルエンザウイルスN2のストーク領域のアミノ酸36~少なくともアミノ酸69を指す。従って、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の実質的に全てを欠く修飾N2は、インフルエンザウイルスサブタイプ2NAのアミノ酸1~70、1~71、1~72、1~73、1~74、1~75、1~76、1~77、1~78、1~79、1~80又は1~81を欠き得る。言い換えれば、本明細書中に記載の修飾N2は、インフルエンザウイルスサブタイプ2NAのストーク領域の最もC末端のアミノ酸の最大13個を含み得、ストーク領域の最もC末端のアミノ酸は一般的にN2のアミノ酸70~82を指す。特定の実施形態では、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域全体(例えばアミノ酸1~82)が修飾N2から除去されている。
【0111】
いくつかの実施形態では、例えば四量体NAは、4個の修飾されたインフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ分子を含み、ここで修飾されたインフルエンザウイルスノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの頭部領域を含み、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを欠き、ここで四量体NAは異種四量体化ドメインを含有しない。これらの実施形態のいくつかでは、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てが、シグナルペプチドにより置換されている。シグナルペプチドは通常、翻訳後プロセシング中に正常に切断されて、分泌されたNAポリペプチドは一般的にシグナルペプチドを含有しないようになる。これらの実施形態のいくつかでは、例えば、野生型N2インフルエンザウイルスNAのアミノ酸1から少なくともアミノ酸70~82までがシグナルペプチドにより置き換えられ得る。細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン及びストーク領域の全て又は実質的に全てがシグナルペプチドにより置換され、細胞で発現される場合に四量体NAを形成するこれらの修飾N2コンストラクトはまた、その全体において参照により本明細書によって組み込まれるPCT国際出願第PCT/US2022/039980号明細書でさらに詳述される。
【0112】
これらの修飾された単量体NAにより形成される四量体NA分子は一般に、流体試料中で実質的に可溶性であり、一般的に触媒として活性でもある(例えば、ノイラミン酸のグリコシド結合を酵素的に切断可能である)。しかし、四量体NA分子はまた、例えば突然変異ゆえに触媒的に不活性でもあり得る。
【0113】
例えば、MUNANAアッセイ、ELLAアッセイ又はNA-Star(登録商標)アッセイ(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を含め、当技術分野で公知の技術を使用してノイラミニダーゼ活性を測定し得る。MUNANAアッセイにおいて、2’-(4-メチルウンベリフェリル)-アルファ-D-N-アセチルノイラミン酸(MUNANA)が基質として使用される。試料中に含有される何れの酵素活性ノイラミニダーゼも、MUNANA基質を切断し、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)、蛍光化合物を放出する。従って、試験試料中のノイラミニダーゼ活性の量は、放出される4-MUの量と相関し、これは、蛍光強度(RFU、相対的蛍光単位)を使用して測定され得る。
【0114】
本開示の可溶性四量体NAのノイラミニダーゼ活性を決定する目的のために、次の条件を使用してMUNANAアッセイが行われるべきである:可溶性四量体NAを緩衝液[33.3mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES、pH6.5)、4mM CaCl2、50mM BSA]及び基質(100μM MUNANA)と混合し、振盪しながら37℃で1hインキュベートし;アルカリpH溶液(0.2M Na2CO3)を添加することにより反応を停止させ;それぞれ355及び460nmの励起及び発光波長を使用して蛍光強度を測定し;4MU参照物に対する酵素活性を計算する。必要に応じて、ノイラミニダーゼ酵素活性を測定するために、同等のアッセイを使用し得る。
【0115】
組み換え機械学習インフルエンザウイルスNAを含め、本明細書中に記載のように、機械学習モデルを使用して同定又は設計される1種類以上のインフルエンザウイルスNA(「機械学習インフルエンザウイルスNA」)も本明細書中で開示される。特定の実施形態では、機械学習インフルエンザウイルスNAは、N1 NA、N2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのNA、B/Yamagata(山形)系統からのNA又はその組み合わせの1つ以上から選択され得る。例えば本明細書中で記載のようなものを含め、1種類以上の機械学習インフルエンザウイルスNAを選択する場合、あらゆる機械学習アルゴリズム又はモデルが使用され得る。
【0116】
本明細書中で論じられるように、単独で又は他のインフルエンザウイルスNA抗原と及び/又はインフルエンザウイルスHAと組み合わせて、本明細書中で開示されるインフルエンザウイルスNAが、処方され得、包装され得る。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8種類又はそれを超えるインフルエンザウイルスNA抗原を含む。特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAを3種類のさらなるインフルエンザウイルスNA抗原とともに処方して、4価ワクチン又は免疫原性組成物を作製する。特定の実施形態では、4種類のインフルエンザウイルスNAを4種類のインフルエンザウイルスHA抗原とともに処方して、8価ワクチン又は免疫原性組成物を作製する。特定の実施形態では、4種類のインフルエンザウイルスNA抗原をコードするリボ核酸分子を4種類のインフルエンザウイルスHA抗原、例えば4種類の組み換えインフルエンザウイルスHA抗原などとともに処方して、8価ワクチン又は免疫原性組成物を作製する。
【0117】
本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物に存在するインフルエンザウイルスNAは、標準治療インフルエンザウイルス株からのインフルエンザウイルスNA及び/又は本明細書中で開示されるような機械学習インフルエンザウイルスNAの何れかの組み合わせを含み得る。例えば、特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAは、野生型インフルエンザNA、非野生型インフルエンザNA、季節性又はパンデミックインフルエンザウイルス株からのNA及び/又は当技術分野で公知の何れかの他の形態のインフルエンザNAであり得る。特定の実施形態では、組み換えインフルエンザウイルスNAが本明細書中で開示され、ここでNAは、標準治療インフルエンザウイルスからのN1 NA、標準治療インフルエンザウイルスからのN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス株由来のNA又はB/Yamagata(山形)系統由来の標準治療インフルエンザウイルス由来のNAから選択される。
【0118】
本明細書で開示される特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAは、例えば、N1、N2、N7及び/又はN9を含む、パンデミック株又はパンデミック潜在性を有する株由来である。
【0119】
各インフルエンザウイルスNAは、本明細書中で開示される組成物中に、組成物が投与される対象において免疫反応を誘導するのに有効な量で存在し得る。特定の実施形態では、各インフルエンザウイルスNAは、例えば1μg~約500μg、例えば約5μg~約120μg、約1μg~約60μg、約10μg~約60μg、約15μg~約60μg、約5μg~約45μg、約15μg~約45μg、約0.1μg~約90μg、約5μg~約90μg、約10μg~約90μg、約15μg~約90μg、約5μg~約25μg又は約10μg~約20μg又は約12μg~18μgの範囲の量で本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在し得る。特定の実施形態では、各組み換えNAは、約5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg又は約90μgの量で本明細書中に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在し得る。
【0120】
HA又はNAをコードするリボ核酸
本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、本明細書中で開示される、1種類以上のインフルエンザウイルスHA又は1種類以上のインフルエンザウイルスNAをコードする、1種類以上のリボ核酸分子、例えばmRNA分子を含む。特定の実施形態では、mRNAなどのリボ核酸分子は、インフルエンザウイルスNA、例えばN1 NA、N2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのNA又はB/Yamagata(山形)系統からのNAの組み合わせの何れか1つをコードし得る。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、N1 NA、N2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのNA及びB/Yamagata(山形)系統からのNAをコードする。一般的には、mRNAなどのリボ核酸分子は、全長NA(例えば、野生型又は機械学習NA)をコードするが、これらは、修飾されたNAもコードし得る。
【0121】
特定の実施形態では、mRNAなどのリボ核酸分子は、インフルエンザウイルスHA、例えばH1 HA、H3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのHA又はB/Yamagata(山形)系統からのHAの組み合わせの何れか1つなどをコードし得る。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、H1 HA、H3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統からのHA及びB/Yamagata(山形)系統からのHAをコードする。一般的には、mRNAなどのリボ核酸分子は、全長HA(例えば、野生型又は機械学習NA)をコードするが、これらは修飾されたHAもコードし得る。
【0122】
特定の実施形態では、リボ核酸分子は、脂質-ナノ粒子(LNP)に封入される。
【0123】
代表的なmRNA及びLNPは、例えば、その全体の内容が本明細書中で参照により組み込まれる、「Lipid Nanoparticles for Delivering mRNA Vaccines」という題名のPCT出願である国際公開第2022/099003号パンフレットで開示される。
【0124】
あらゆる公知のLNP製剤が、本明細書中で開示される実施形態において使用され得る。特定の実施形態では、LNPは以下の4種類の脂質の混合物を含む:イオン化(例えば、陽イオン性)脂質、ポリエチレングリコール(PEG)複合化脂質、コレステロールに基づく脂質、及びリン脂質などのヘルパー脂質。LNPはリボ核酸分子(例えば、mRNA)を封入するために使用される。封入されたmRNA分子は、天然のリボヌクレオチド、化学修飾されたヌクレオチド又はこれらの組み合わせから構成され得、1種類以上のタンパク質をそれぞれ又は集合的にコードし得る。
【0125】
イオン化脂質はmRNA封入を促進し、陽イオン性脂質であり得る。陽イオン性脂質は、低pHで正に荷電した環境を与え、負に荷電したmRNA製剤原料の効率的なカプセル化を促進する。
【0126】
企図されるPEG化脂質としては、誘導体化セラミド(例えば、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)](C8 PEGセラミド))などの、C6~C20(例えば、8、C10、C12、C14、C16又はC18)長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した、最大5kDa長のポリエチレングリコール(PEG)鎖が挙げられるが限定されない。いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DLPE-PEG);1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-ポリエチレングリコール(DSG-PEG);N,N-ジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えば、ALC-0159);又は1-モノメトキシポリエチレングリコール-2,3-ジミリスチルグリセロール(例えば、PEG2000-DMG)である。
【0127】
PEGは、好ましくは高分子量、例えば2000~2400g/molを有する。いくつかの実施形態では、PEGは、PEG2000(又はPEG-2K)である。特定の実施形態では、本明細書中のPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DLPE-PEG2000、DSG-PEG2000又はC8 PEG2000である。PEG化脂質成分は、ナノ粒子の粒径及び安定性に対する制御を提供する。このような成分を添加することにより、複雑な凝集が防止され、循環寿命を延ばし、標的組織への脂質-核酸医薬組成物の送達を増大させるための手段を提供し得る(Klibanov et al.,FEBS Letters(1990)268(1):235-7)。これらの成分は、インビボで医薬組成物から迅速に交換されるように選択され得る(例えば、米国特許第5,885,613号明細書を参照されたい)。
【0128】
コレステロール成分は、ナノ粒子内の脂質二重層構造に安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、LNPは、1つ以上のコレステロールに基づく脂質を含む。適切なコレステロールに基づく脂質としては、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao et al.,Biochem Biophys Res Comm.(1991)179:280;Wolf et al.,BioTechniques(1997)23:139;米国特許第5,744,335号明細書)、イミダゾールコレステロールエステル(「ICE」;国際公開第2011/068810号パンフレット)、β-シトステロール、フコステロール、スチグマステロール及びコレステロールの他の修飾形態が挙げられる。いくつかの実施形態では、LNPで使用されるコレステロールに基づく脂質は、コレステロールである。
【0129】
ヘルパー脂質は、LNPの構造的安定性を増強し、エンドソーム脱出におけるLNPを助ける。それは、mRNA薬物ペイロードの取り込み及び放出を改善する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、薬物ペイロードの取り込み及び放出を増強するための融合特性を有する双性イオン脂質である。特定の実施形態では、ヘルパー脂質は、リン脂質である。ヘルパー脂質の例は、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS);1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE);及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPOC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)及び1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE)である。
【0130】
他の例示的なヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(phosphatidyethanolamine)(SOPE)又はこれらの組み合わせである。
【0131】
本明細書中で開示される特定の実施形態では、LNPは、(i)OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10、GL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14、ALC-0315又はSM-102から選択される陽イオン性脂質;(ii)DMG-PEG2000;(iii)コレステロール;及び(iv)DOPEを含む。
【0132】
本明細書中で開示される特定の実施形態では、LNPは(i)陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えば、ALC-0159)、(iii)ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)コレステロールを含む。特定の実施形態では、LNPは、(i)約25%~約65%、例えば約46.3%のモル比の陽イオン性脂質としてのALC-0315;(ii)約0.5%~約2.6%、例えば1.6%のモル比のPEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えばALC-0159);(iii)約5%~約15%、例えば9.4%のモル比のヘルパー脂質としてのDSPC;及び(iv)約20%~約60%、例えば42.7%のモル比のコレステロールを含む。
【0133】
上記のLNP成分のモル比は、mRNAの送達におけるLNPの有効性を高め得る。陽イオン性脂質、PEG化脂質、コレステロールに基づく脂質及びヘルパー脂質のモル比は、A:B:C:D(ここで、A+B+C+D=100%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するLNP中の陽イオン性脂質のモル比(即ちA)は、35~50%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するPEG化脂質成分のモル比(即ちB)は、0.25~2.75%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するコレステロールに基づく脂質のモル比(即ちC)は、20~50%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するヘルパー脂質のモル比(即ちD)は、5~35%である。いくつかの実施形態では、(PEG化脂質+コレステロール)成分は、ヘルパー脂質と同じモル量を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質に対する陽イオン性脂質のモル比は、1超である。
【0134】
LNP製剤中に含まれる各脂質の実際の量を計算するために、最初に、陽イオン性脂質のモル量を、所望のN/P比(ここで、Nは陽イオン性脂質中の窒素原子の数であり、Pは、LNPによって輸送しようとするmRNA中のリン酸基の数である)に基づいて決定する。次に、陽イオン性脂質のモル量及び選択したモル比に基づいて、他の脂質のそれぞれのモル量を計算する。次いで、これらのモル量を、各脂質の分子量を用いて重量に変換する。
【0135】
特定の実施形態では、LNPは、陽イオン性脂質、PEG化脂質、コレステロールに基づく脂質及びヘルパー脂質を、40:1.5:28.5:30のモル比で含有する。さらなる特定の実施形態では、LNPは、(i)OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10又はGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14、(ii)DMG-PEG2000;(iii)コレステロール;及び(iv)DOPEを、40:1.5:28.5:30で含有する。
【0136】
所望であれば、LNP又はLNP製剤は多価であり得る。いくつかの実施形態では、LNPは、同じ又は異なる病原体由来の2種類以上の抗原、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10種類又はそれを超える抗原をコードするリボ核酸分子(例えばmRNA)を保有し得る。例えば、LNPは、それぞれが異なる抗原をコードする複数のリボ核酸分子(例えばmRNA)を保有し得るか;又は2種類以上の抗原に翻訳され得るポリシストロン性mRNAを保有し得る(例えば、各抗原コード配列は、2Aペプチドなどの自己開裂ペプチドをコードするヌクレオチドリンカーによって分離される)。異なるリボ核酸分子(例えばmRNA)を保有するLNPは、典型的には各mRNA分子の複数のコピーを含む(封入する)。例えば、2種類の異なるリボ核酸分子(例えばmRNA)を保有又は封入するLNPは、典型的には2種類の異なるリボ核酸分子(例えばmRNA)のそれぞれの複数のコピーを保有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、単一のLNP製剤は、複数種(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える)のLNPを含み得、各種は異なるリボ核酸分子(例えばmRNA)を保有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、H1 HA、H3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA、及び/又はB/Yamagata(山形)系統由来のHAから選択される1種類以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10種類)のインフルエンザウイルスタンパク質に由来するポリペプチドをコードするリボ核酸分子を含む。さらなる実施形態では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、4種類のリボ核酸分子(例えばmRNA)を含有し、第1のリボ核酸分子は第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAをコードし、第2のリボ核酸分子は第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAをコードし、第3のリボ核酸分子はB/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードし、第4のリボ核酸分子はB/Yamagata(山形)系統由来の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードする。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、N1 HA、N2 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA及び/又はB/Yamagata(山形)系統由来のHAから選択される1種類以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10種類)のインフルエンザウイルスタンパク質に由来するポリペプチドをコードするリボ核酸分子を含む。さらなる実施形態では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、4種類のリボ核酸分子(例えばmRNA)を含有し、第1のリボ核酸分子は第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のN1 HAをコードし、第2のリボ核酸分子は第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のN2 HAをコードし、第3のリボ核酸分子はB/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードし、第4のリボ核酸分子はB/Yamagata(山形)系統由来の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードする。
【0140】
特定の実施形態では、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスHAをコードする1種類以上の自己増幅mRNAなどの1種類以上の自己増幅リボ核酸又はインフルエンザウイルスNAをコードする1種類以上の自己増幅mRNAを含み得る。従来のmRNAからの抗原発現は、ワクチン又は免疫原性組成物から対象に首尾よく送達されるmRNA分子の数に比例する。しかしながら、自己増幅mRNAは、自己複製ウイルスに由来する遺伝子操作されたレプリコンを含み、従って、同等の結果を達成しながら、従来のmRNAよりも低用量でワクチン又は免疫原性組成物に添加され得る。
【0141】
自己増幅mRNAは、例えばH3 HA、H1 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA及び/又はB/Yamagata(山形)系統由来のHAを含め、本明細書中で開示されるインフルエンザウイルスHAの何れかをコードし得る。特定の実施形態では、自己増幅mRNAは、例えばN1 NA、N2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のNA及び/又はB/Yamagata(山形)系統由来のNAを含め、本明細書中で開示されるインフルエンザウイルスNAの何れかをコードし得る。
【0142】
本リボ核酸分子(例えばmRNA)は、非修飾(即ち、ホスホジエステル結合によって連結された天然リボヌクレオチドA、U、C、及び/又はGのみを含有する)であってもよいし、又は化学修飾(例えば、シュードウリジン(例えば、N-1-メチルシュードウリジン)、2’-フルオロリボヌクレオチド、及び2’-メトキシリボヌクレオチド、及び/又はホスホロチオエート結合)などのヌクレオチド類似体を含む)されていてもよい。本リボ核酸分子(例えばmRNA)は、5’キャップ及びポリAテールを含み得る。特定の実施形態では、1種類以上のリボ核酸分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み、特定の実施形態では、1つ以上の修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン、メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオシュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メトキシウリジン及び2’-O-メチルウリジンから選択される。特定の実施形態では、リボ核酸分子中の全てのウリジンは、シュードウリジン、例えばメチルシュードウリジン、例えば1N-メチルシュードウリジンによって置き換えられる。
【0143】
各リボ核酸分子は、本明細書中で開示される組成物中において、組成物が投与される対象に免疫反応を誘導するのに有効な量で存在し得る。特定の実施形態では、各リボ核酸分子は、本明細書中で開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約0.1μg~約150μg、例えば約5μg~約120μg、約10μg~約60μg、又は約15μg~約45μgの範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、各リボ核酸分子は、ワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約5μg~約120μg、例えば約10μg~約60μg、又は約15μg~約45μgなどのインフルエンザウイルスHA又はNAをコードするのに十分な量で存在する。
【0144】
核酸及び/又はLNPを安定化するために(例えば、ワクチン又は免疫原性組成物の貯蔵寿命を延長するために)、LNP医薬組成物の投与を容易にするために、及び/又は核酸のインビボ発現を増強するために、核酸及び/又はLNPは、1つ以上の担体、標的指向性リガンド、安定化試薬(例えば、保存剤及び抗酸化剤)及び/又は他の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて処方され得る。そのような賦形剤の例は、パラベン、チメロサール、チオマーサル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム及びキレート剤(例えばEDTA)である。
【0145】
本開示のLNP組成物は、凍結液体形態又は凍結乾燥形態として提供され得る。様々な凍結保護剤、例えば、スクロース、トレハロース、グルコース、マンニトール、マンノース、デキストロースなどを含むが限定されないものを使用し得る。凍結保護剤は、LNP組成物の5~30%(w/v)を構成し得る。いくつかの実施形態では、LNP組成物は、トレハロース、例えば5~30%(例えば10%)(w/v)を含む。凍結保護剤と共に処方されたら、LNP組成物は、-20℃~-80℃で凍結(又は凍結乾燥及び凍結保存)され得る。LNP組成物は、緩衝水溶液で患者に提供され得る(予め凍結されている場合には解凍され、又は予め凍結乾燥されている場合にはベッドサイドにて緩衝水溶液中で再構成され得る)。緩衝液は等張であることが好ましく、例えば筋肉内又は皮内注射に適している。いくつかの実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0146】
ワクチン又は免疫原性組成物
特定の実施形態では、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチン又は免疫原性組成物が本明細書中で開示される。
【0147】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスHAタンパク質、インフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類など)のインフルエンザウイルスタンパク質と、1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類など)のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類など)のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類)のリボ核酸分子と、を含むか、又は特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、5価ワクチン、例えば4種類のインフルエンザウイルスHAタンパク質と、インフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする1種類のリボ核酸分子と、を含む、又は4種類のインフルエンザウイルスNAタンパク質と、インフルエンザウイルスHAタンパク質をコードする1種類のリボ核酸分子と、を含む、5価ワクチン又は免疫原性組成物である。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、6価ワクチン又は免疫原性組成物である。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、7価ワクチン又は免疫原性組成物である。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、8価ワクチン又は免疫原性組成物である。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、9価ワクチン若しくは免疫原性組成物、10価ワクチン若しくは免疫原性組成物、11価ワクチン若しくは免疫原性組成物、12価ワクチン若しくは免疫原性組成物、13価ワクチン若しくは免疫原性組成物、14価ワクチン若しくは免疫原性組成物、15価ワクチン若しくは免疫原性組成物又は16価ワクチン若しくは免疫原性組成物である。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、16種類を超える異なるインフルエンザウイルスHAタンパク質、インフルエンザウイルスNAタンパク質及び/又はインフルエンザウイルスHA及び/又はインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードするリボ核酸分子を含む多価ワクチン又は免疫原性組成物である。
【0148】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類など)のインフルエンザウイルスタンパク質を含む。特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類(1、2、3、4、5、6、7又は8種類など)のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子を含む。
【0149】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される、少なくとも4種類、例えば4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類を超えない、例えば4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0150】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHAから選択される、少なくとも4種類、例えば4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類を超えない、例えば4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、本インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0151】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0152】
さらなる実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)組み換えインフルエンザウイルスH1 HA、組み換えインフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来の組み換えインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来の組み換えインフルエンザウイルスHAから選択される4種類の組み換えインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、本インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0153】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)IIV中に存在するインフルエンザウイルスH1 HA、IIV中に存在するインフルエンザウイルスH3 HA、IIV中に存在するB/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びIIV中に存在するB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、本インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0154】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、本インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0155】
さらなる実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)組み換えインフルエンザウイルスN1 NA、組み換えインフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来の組み換えインフルエンザウイルスNA及びB/Yamagata(山形)系統由来の組み換えインフルエンザウイルスNAから選択される4種類の組み換えインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0156】
特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、(i)IIV中に存在するインフルエンザウイルスN1 NA、IIV中に存在するインフルエンザウイルスN2 NA、IIV中に存在するB/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA及びIIV中に存在するB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質と、(ii)インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHAから選択される4種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む。他の箇所に記載のように、インフルエンザウイルスHA及びNAは、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及びNAを含むが限定されない。
【0157】
特定の態様では、本明細書中に記載のワクチン又は免疫原性組成物は、1種類以上のインフルエンザウイルスHA及び/又はNAタンパク質及び/又は1種類以上のインフルエンザウイルスHA及び/又はNAタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子をさらに含む。特定の実施形態では、1種類以上のインフルエンザウイルスHA及び/又はNAタンパク質は、機械学習モデルを使用して同定されるか又は設計される。
【0158】
本ワクチン又は免疫原性組成物はまた、アジュバントもさらに含み得る。本明細書中で使用される場合、「アジュバント」という用語は、抗原への免疫反応を非特異的に増強する物質又はビヒクルを指す。アジュバントとしては、抗原が吸着される、鉱物の懸濁液(ミョウバン、アルミニウム塩(例えば水酸化アルミニウム/オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)、リン酸アルミニウム(AlPO4)、アルミニウムヒドロキシホスファート硫酸塩(AAHS)及び/又は硫酸アルミニウムカリウムを含む));又は抗原溶液が鉱油中で乳化された油中水型エマルション(フロイント不完全アジュバント)(抗原性をさらに増強するために、死んだマイコバクテリアが含まれることもある(フロイント完全アジュバント))が挙げられ得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むものなど)もアジュバントとして使用され得る(例えば、米国特許第6,194,388号明細書;同第6,207,646号明細書;同第6,214,806号明細書;同第6,218,371号明細書;同第6,239,116号明細書;同第6,339,068号明細書;同第6,406,705号明細書;及び同第6,429,199号明細書を参照)。アジュバントとしてはまた、脂質及び共刺激分子などの生体分子も挙げられる。代表的な生物学的アジュバントとしては、AS04(Didierlaurent,A.M.et al,AS04,an Aluminum Salt-and TLR4 Agonist-Based Adjuvant System,Induces a Transient Localized Innate Immune Response Leading to Enhanced Adaptive Immunity,J.IMMUNOL.2009,183:6186-6197)、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L及び41 BBLが挙げられる。
【0159】
特定の実施形態では、アジュバントは、少なくとも:スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤及び疎水性非イオン性界面活性剤を含む水中油型アジュバントエマルションを含むスクアレンに基づくアジュバントである。特定の実施形態では、エマルションは熱可逆性であり、任意選択的に、油滴の体積基準で集団の90%が200nm未満のサイズを有する。
【0160】
特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、式CH3-(CH2)x-(O-CH2-CH2)n-OH(式中、nは10~60の整数であり、xは11~17の整数である)のものである。特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤は、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテルである。
【0161】
特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の90%が160nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の90%が150nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の50%が100nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の50%が90nm未満のサイズを有する。
【0162】
特定の実施形態では、アジュバントは、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含むが限定されない、少なくとも1つのアルジトールをさらに含む。
【0163】
特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)は10以上である。特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは9未満である。特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤のHLBは10以上であり、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは9未満である。
【0164】
特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤は、ソルビタンモノオレアートなどのソルビタンエステル、又はマンニドエステル界面活性剤である。特定の実施形態では、スクアレンの量は5~45%である。特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤の量は、0.9~9%である。特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤の量は、0.7~7%である。特定の実施形態では、アジュバントは、i)32.5%スクアレン、ii)6.18%ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル、iii)4.82%ソルビタンモノオレアート、及びiv)6%マンニトールを含む。
【0165】
特定の実施形態では、アジュバントは、アルキルポリグリコシド及び/又は凍結保護剤、例えば糖、特にドデシルマルトシド及び/又はスクロースをさらに含む。
【0166】
特定の実施形態では、アジュバントは、Klucker et al.,AF03,an alternative squalene emulsion-based vaccine adjuvant prepared by a phase inversion temperature method,J.PHARM.Sci.2012,101(12):4490-4500(その全体において参照により本明細書によって組み込まれる)に記載のようなAF03を含む。特定の実施形態では、アジュバントは、例えば、国際公開第2022/090359号パンフレット(この文献はその全体において参照により本明細書によって組み込まれる)に記載のようなSPA14などのリポソームに基づくアジュバントを含む。SPA14は、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト(E6020)及びサポニン(QS21)を含有するリポソームに基づくアジュバントである。
【0167】
1種類以上の核酸がLNP中に封入される特定の実施形態を含む特定の実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、アジュバントを含まない。特定の実施形態では、1種類以上のmRNA分子などの1種類以上のリボ核酸分子は、本組成物中のインフルエンザウイルスタンパク質の1種類以上を補助するために働き得るLNP中に封入される。例えば、Shirai et al,Lipid Nanoparticle Acts as a Potential Adjuvant for Influenza Split Vaccine without Inducing Inflammatory Responses,VACCINES 2020,8(433):1-18を参照のこと。
【0168】
NA、HA又はNA及び/又はHAをコードするmRNA及び任意選択的なアジュバントに加えて、本ワクチン又は免疫原性組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤もさらに含み得る。一般に、賦形剤の性質は、使用される特定の投与方式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的に及び生理学的に許容可能な流体を含む注入可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤又はカプセル形態)に対して、従来の非毒性固体担体として、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン又はステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与しようとするワクチン又は免疫原性組成物は、少量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、浸透圧を調整するための薬学的に許容可能な塩、保存剤、安定化剤、緩衝剤、糖、アミノ酸及びpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0169】
典型的には、本ワクチン又は免疫原性組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内又は筋肉内などの非経口投与用に処方された無菌の液体溶液である。本ワクチン又は免疫原性組成物はまた、鼻腔内又は吸入投与用に処方され得る。本ワクチン又は免疫原性組成物はまた、何らかの他の意図される投与経路のために処方され得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、皮内注射、鼻腔内投与又は筋肉内注射用に処方される。いくつかの実施形態では、注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、注射前に液体の溶液若しくは懸濁液とするのに適した固体形態として、又はエマルションとしての何れかで、従来の形態で調製される。いくつかの実施形態では、注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末又は顆粒から調製される。これらの経路による投与のための医薬品の処方及び製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995(参照により本明細書中に組み込まれる)で見出され得る。現在、経口又は経鼻スプレー又はエアロゾル経路(例えば、吸入による)は、治療薬を肺及び呼吸器系に直接送達するために最も一般的に使用される。いくつかの実施形態では、本ワクチン又は免疫原性組成物は、ワクチン組成物を定量送達する装置を使用して投与される。本明細書中に記載の皮内用医薬組成物の送達に使用するのに好適な装置としては、短針装置、例えば米国特許第4,886,499号明細書、米国特許第5,190,521号明細書、米国特許第5,328,483号明細書、米国特許第5,527,288号明細書、米国特許第4,270,537号明細書、米国特許第5,015,235号明細書、米国特許第5,141,496号明細書、米国特許第5,417,662号明細書(これらは全て参照により本明細書中に組み込まれる)に記載のものなどが挙げられる。皮内用組成物はまた、皮膚への針の有効な貫入長を制限する装置、例えば国際公開第1999/34850号パンフレット(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されるもの、及びその機能的等価物によっても投与され得る。また、液体ジェット式注射器を介して、又は角質層を穿孔し、真皮に到達するジェットを生成する針を介して、液体ワクチンを真皮に送達するジェット式注射装置も好適である。ジェット式注射装置は、例えば、米国特許第5,480,381号明細書、米国特許第5,599,302号明細書、米国特許第5,334,144号明細書、米国特許第5,993,412号明細書、米国特許第5,649,912号明細書、米国特許第5,569,189号明細書、米国特許第5,704,911号明細書、米国特許第5,383,851号明細書、米国特許第5,893,397号明細書、米国特許第5,466,220号明細書、米国特許第5,339,163号明細書、米国特許第5,312,335号明細書、米国特許第5,503,627号明細書、米国特許第5,064,413号明細書、米国特許第5,520,639号明細書、米国特許第4,596,556号明細書、米国特許第4,790,824号明細書、米国特許第4,941,880号明細書、米国特許第4,940,460号明細書、国際公開第1997/37705号パンフレット及び国際公開第1997/13537号パンフレット(これらは全て参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。また、皮膚の外層を通って真皮まで粉末形態のワクチンを加速するための圧縮ガスを使用する弾道粉末/粒子送達装置も好適である。さらに、皮内投与の古典的なマントー法において、従来のシリンジが使用され得る。
【0171】
非経口投与のための製剤には、典型的には滅菌した水性又は非水性の溶液、懸濁液及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール性/水性の溶液、エマルション又は懸濁液、例えば生理食塩水、緩衝媒体など、が挙げられる。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は不揮発性油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、流体及び栄養補充物、電解質補充物(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなども存在し得る。
【0172】
キット
本明細書中で開示されるようなワクチン又は免疫原性組成物のためのキットが本明細書中でさらに開示される。キットには、ワクチン組成物を含む適切な容器又は、本ワクチン組成物の異なる構成成分を含む複数の容器が、任意選択的に使用説明書と共に含まれ得る。
【0173】
特定の実施形態では、本キットは、例えば、本明細書中で開示されるような1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせを含む第1の容器と、1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子を含む第2の容器と、を含む、複数の容器を含み得る。
【0174】
例えば、特定の実施形態では、(i)H1 HAである第1のインフルエンザウイルスHA;H3 HAである第2のインフルエンザウイルスHA;B/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3のインフルエンザウイルスHA;B/Yamagata(山形)系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAを含む第1の容器と、(ii)N1 NAである第1のインフルエンザウイルスNA;N2 NAである第2のインフルエンザウイルスNA;B/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3のインフルエンザウイルスNA;及びB/Yamagata(山形)系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAをコードする1種類以上のリボ核酸分子を含む第2の容器と、を含むキットが本明細書中で開示される。特定の実施形態では、本キットは、任意選択的なアジュバントを含む第3の容器をさらに含み得、特定の実施形態では、第1の容器は、組み換えインフルエンザウイルス抗原に加えて任意選択的なアジュバントを含み得る。
【0175】
特定の実施形態では、本キットは、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又は本明細書中で開示されるようなそれらの組み合わせのそれぞれと、(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又は本明細書中で開示されるようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子のそれぞれと、を含む単一の容器を含み得る。例えば、特定の実施形態では、本キットは、H1 HAである第1のインフルエンザウイルスHA;H3 HAである第2のインフルエンザウイルスHA;B/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3のインフルエンザウイルスHA;B/Yamagata(山形)系統由来の第4のインフルエンザウイルスHA;及びN1 NAである第1のインフルエンザウイルスNA;N2 NAである第2のインフルエンザウイルスNA;B/Victoria(ビクトリア)系統由来の第3のインフルエンザウイルスNA;及びB/Yamagata(山形)系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAをコードする1種類以上のリボ核酸分子を含む単一容器を含み得る。単一容器は、任意選択的なアジュバントも含み得る。
【0176】
使用説明書は、第1及び第2の容器の内容が投与前に合わせられ得ること又は第1及び第2の容器の内容が合わせられず、個別に投与されることを指示し得る。
【0177】
核酸、クローニング及び発現系
本開示は、開示されるインフルエンザウイルスHA及びNAをコードする人工核酸分子をさらに提供する。核酸は、DNA又はRNAを含み得、全体又は部分的に合成であってもよいし又は組み換えであってもよい。本明細書中に記載のヌクレオチド配列への言及は、文脈上別段の要求がない限り、特定の配列を有するDNA分子を包含し、UがT、又はシュードウリジン、特にN1-メチルシュードウリジンなどのその誘導体又は類似体に置換されている特定の配列を有するRNA分子を包含する。他のヌクレオチド誘導体又は修飾ヌクレオチドが、開示されるHA及びNAをコードする核酸分子に組み込まれ得る。
【0178】
本開示はまた、本明細書中で開示されるようなHA又はNAをコードする核酸分子を含むベクター(例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、転写又は発現カセット、人工染色体など)の形態のコンストラクトを提供する。本開示はさらに、上記のような1つ以上のコンストラクトを含む宿主細胞を提供する。
【0179】
また、これらの核酸分子によってコードされるHA又はNAを作製する方法も提供する。HA又はNAポリペプチドは、組み換え技術を用いて作製され得る。組み換えタンパク質の作製及び発現は当技術分野で周知であり、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th Ed.2012),Cold Spring Harbor Pressに開示されているような従来の手順を用いて行われ得る。例えば、HA又はNAポリペプチドの発現は、本明細書中で開示されるようなHA又はNAをコードする人工核酸分子を含有する宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成され得る。例えば、組み換えHA又はNAポリペプチドの発現は、本明細書中で開示されるようなHA又はNAをコードする核酸分子を含有する宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成され得る。発現による産生後、何れかの適切な技術を用いてHA又はNAを単離及び/又は精製し、次いで、必要に応じて使用し得る。
【0180】
様々な異なる宿主細胞におけるクローニング及びポリペプチド発現のための系は、当技術分野で周知である。本明細書中で開示されるコンストラクトに適合する何れかのタンパク質発現系(例えば、安定又は一過性)を使用して、本明細書中に記載のHA又はNAを作製し得る。
【0181】
好適なベクターは、適切な調節配列、例えばプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び必要に応じて他の配列を含有するように選択又は構築され得る。
【0182】
組み換えHA又はNAを発現させるために、HA又はNAをコードする核酸を宿主細胞に導入し得る。導入は、あらゆる利用可能な技術を使用し得る。真核細胞については、好適な技術として、リン酸カルシウム遺伝子移入、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介遺伝子移入及びレトロウイルス若しくは他のウイルス、例えばワクシニア、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを使用する形質導入を挙げ得る。細菌細胞については、好適な技術として、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション及びバクテリオファージを用いた遺伝子移入が挙げられ得る。これらの技術は当技術分野で周知である。(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,2010を参照)。DNA導入に続いて、ベクターを含有する細胞を選択するための選択方法(例えば、抗生物質耐性)を行い得る。
【0183】
宿主細胞は、植物細胞、酵母細胞又は動物細胞であり得る。動物細胞は、無脊椎動物細胞(例えば、昆虫細胞)、非哺乳類脊椎動物細胞(例えば、鳥類、爬虫類及び両生類)及び哺乳動物細胞を包含する。一実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の例としては、COS-7細胞、HEK293細胞;ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;マウスセルトリ細胞;アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO);ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HeLa);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK)などが挙げられるが限定されない。一実施形態では、宿主細胞はCHO細胞である。
【0184】
特定の実施形態では、宿主細胞は植物細胞である。例えば、組み換えHA又はNAは、その全体において参照により本明細書によって組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189228号明細書で開示されるように、微細藻類細胞中で発現され得る。
【0185】
特定の実施形態では、宿主細胞は昆虫細胞である。さらなる例として、組み換えHA又はNAは、例えばその全体において参照により本明細書によって組み込まれる米国特許第5,976,552号明細書で開示されるように、ウイルス-HA ベクター、例えばバキュロウイルスベクターなどを感染させた昆虫細胞中で発現され得る。バキュロウイルスは、バキュロウイルス科(Baculoviridae)のDNAウイルスである。これらのウイルスは、主に鱗翅目(Lepidopteran)の昆虫種(例えば、チョウ及びガ)に限定される狭い宿主範囲を有することが知られている。例えば、バキュロウイルスオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)は、感受性培養昆虫細胞において効率的に複製する。AcNPVは、約130,000塩基対の二本鎖閉鎖環状DNAゲノムを有し、宿主範囲、分子生物学及び遺伝学に関して十分に特徴付けられている。
【0186】
AcNPVを含む多くのバキュロウイルスは、感染細胞の核内に大きなタンパク質結晶性閉塞を形成する。ポリヘドリンと呼ばれる単一のポリペプチドは、これらの閉塞体のタンパク質の質量のおよそ95%を占める。ポリヘドリンの遺伝子は、AcNPVウイルスゲノム中に単一コピーとして存在する。ポリヘドリン遺伝子は、培養細胞におけるウイルス複製に必要とされないので、これは外来遺伝子を発現するように容易に修飾され得る。ポリヘドリンプロモーターの転写制御下に存在するように、外来遺伝子配列を、AcNPV遺伝子のポリヘドリンプロモーター配列のちょうど3’に挿入し得る。組み換えHA又はNAタンパク質をコードする、組み換えバキュロウイルスを含む組み換えバキュロウイルスを、次いで、様々な昆虫細胞株において複製し得る。組み換えHA又はNAタンパク質はまた、例えばエントモポックスウイルス(昆虫のポックスウイルス)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)及び組み換えHA遺伝子による昆虫細胞の形質転換を含め、他の発現ベクターにおいて発現され得る。
【0187】
不活性化/再集合インフルエンザウイルス
本明細書中で開示される特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHA及び/又はNAは、不活性化インフルエンザウイルス中に存在する。特定の認可されたインフルエンザワクチンは、例えばインフルエンザAサブタイプH1N1、インフルエンザA H3N2、インフルエンザB/Victoria、及び/又はインフルエンザB/Yamagataを含む、複数のインフルエンザサブタイプからのホルマリン不活化全サブユニット調製物又は化学的に分割されたサブユニット調製物を含み得る。このようなインフルエンザA及びBワクチンのためのシードウイルスは、ニワトリ卵の尿膜腔又は培養細胞において高力価に複製する天然の株(即ち野生型株)であり得る。
【0188】
或いは、株は正しい表面抗原遺伝子を有する再集合体ウイルスであり得る。再集合体ウイルスは、ウイルスゲノムのセグメント化により、各親株の特徴を有するものである。2種類以上のインフルエンザウイルス株が細胞に感染する場合、これらのウイルスセグメントは混合されて、両方の親由来の様々な種類の遺伝子を含有する子孫ビリオンを作る。感染性の再集合ウイルスを作製するために使用される逆遺伝学法は、当業者にとって周知であり、Neuman et al,Generation of influenza A viruses entirely from cloned cDNA、PROC NATL ACAD SCI USA 1999,96(16):9345-9350;Neumann et al,An improved reverse genetics system for influenza A virus generation and its implications for vaccine production,PROC NATL ACAD SCI USA 2005,102(46):16825-16829;Zhang et al,A One-Plasmid System To Generate Influenza Virus in Cultured Chicken Cells for Potential Use in Influenza Vaccine,J VIROL 2009,83(18):9296-9303;Massin et al,Cloning of the Chicken RNA Polymerase I Promoter and Use for Reverse Genetics of Influenza A Viruses in Avian Cells,J VIROL 2005,79(21):13811-13816;Murakami et al,Establishment of Canine RNA Polymerase I-Driven Reverse Genetics for Influenza A Virus: Its Application for H5N1 Vaccine Production,J VIROL 2008,82(3):1605-1609に記載のプラスミド;及び/又はNeuman et al,1999;Neumann et al,2005;Zhang et al,2009;Massin et al、2005;Murakami et al,2008;Koudstaal et al,-Suitability of PER.C6 cells to generate epidemic and pandemic influenza vaccine strains by reverse genetics,VACCINE 2009,27(19):2588-2593;Schickli et al,Plasmid-only rescue of influenza A virus vaccine candidates,PHILOS TRANS R SOC LOND BIOL SCI 2001,356(1416):1965-1973;Nicolson et al,Generation of influenza vaccine viruses on Vero cells by reverse genetics:an H5N1 candidate vaccine strains produced under a quality system,VACCINE 2005,23(22):2943-2952;Legastelois et al,Preparation of genetically engineered A/H5N1 and A/H7N1 pandemic vaccine viruses by reverse genetics in a mixture of Vero and chicken embryo cells,INFLUENZA OTHER RESPIR VIRUSES 2007,1(3):95-104;Whiteley et al,Generation of candidate human influenza vaccine strains in cell culture - rehearsing the European response to an H7N1 pandemic threat,INFLUENZA OTHER RESPIR VIRUSES 2007,1(4):157-166に記載の細胞を使用する方法が挙げられるが限定されない。
【0189】
機械学習
1種類以上の機械学習インフルエンザウイルスHA及び/又はNAを選択する際、あらゆる機械学習アルゴリズムが使用され得る。例えば、本明細書においては、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)及び国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)、米国仮特許出願第63/319,692号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)及び米国仮特許出願第63/319,700号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)(これらは全てその全体において参照により本明細書に組み込まれる)で開示されるあらゆる機械学習アルゴリズム及び方法が想定される。
【0190】
特定の実施形態では、インフルエンザ抗原性の予測機械学習モデルを構築して、動物モデル及び/又はヒトにおける抗体力価の予測を可能にし得る。特定の実施形態では、機械学習モデルは、トレーニングセットの入力データから特徴値を抽出し得、特徴は入力データ項目が関連する特性を有するか否かにかかわらず、潜在的に関連すると見なされる変数である。入力データのための特徴の順序付きリストは、入力データのための特徴ベクトルと呼ばれ得る。特定の実施形態では、機械学習モデルは、次元削減を(例えば、線形判別分析(LDA)、主成分分析(PCA)、ニューラルネットワークからの学習された深層特徴などを介して)適用して、入力データに対する特徴ベクトルにおけるデータの量を、より小さく、より代表的なデータのセットに削減する。次いで、防御しようとする一連のインフルエンザ配列(例えば、標的株)を同定し、選択アルゴリズムを構築し得る。
【0191】
特定の実施形態では、ワクチンを設計するためのシステムが提供される。システムは、1つ以上のプロセッサを含む。システムは、1つ以上のプロセッサによって実行される場合、1つ以上のプロセッサに1つ以上の操作を実行させる、実行可能なコンピュータ命令を保存するコンピュータストレージを含む。1つ以上の操作は、1つ以上の分子配列を表す出力データを生成するように構成された複数のドライバモデルを第1の時系列データセットに適用することを含み、第1の時系列データセットは、1つ以上の分子配列、及び1つ以上の分子配列のそれぞれについて、その分子配列を天然抗原として含む病原性株の1回以上の循環を示す。1つ以上の操作は、複数のドライバモデルのそれぞれについて、以下によってドライバモデルを訓練することを含む:i)ドライバモデルから、受け取った第1の時系列データセットに基づく1つ以上の予測分子配列を表す出力データを受け取り;ii)予測された1つ以上の分子配列を表す出力データに、複数の並進軸についての分子配列に対する生物学的反応を予測するように構成された並進モデルを適用して、出力データの1つ以上の予測分子配列に基づいて複数の並進軸の特定の並進軸に対応する1つ以上の第1の並進応答を表す第1の並進応答データを生成させ;iii)第1の並進応答データに基づいてドライバモデルの1つ以上のパラメータを調整し;iv)段階i~iiiを多数回繰り返して、特定の並進軸に対応する1つ以上の訓練された並進応答を表す訓練された並進応答データを生成させる。1つ以上の操作は、1つ以上の訓練された並進応答に基づいて、複数のドライバモデルのうちの訓練されたドライバモデルのセットを選択することを含む。1つ以上の操作は、訓練されたドライバモデルのセットの各訓練されたドライバモデルについて、特定の季節のための1つ以上の予測分子配列を表す訓練された出力データを生成させるために、訓練されたドライバモデルを第2の時系列データセットに適用し;複数の並進軸の各並進軸について、1つ以上の第2の並進応答を表す第2の並進応答データを生成させるために、並進モデルを最終出力データに適用し;第2の並進応答データに基づいて、訓練されたドライバモデルのセットの訓練されたドライバモデルのサブセットを選択することを含む。
【0192】
複数のドライバモデルのうち少なくとも1つは、リカレントニューラルネットワークを含み得る。複数のドライバモデルのうちの少なくとも1つは、長・短期記憶リカレントニューラルネットワークを含む。
【0193】
受信された第1の時系列データセットに基づく1つ以上の予測分子配列を表す出力データは、複数の発病シーズン(pathogenic season)のそれぞれについての抗原を表す出力データを含み得る。複数の発病シーズン(pathogenic season)のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節に対する循環中の全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する分子配列を予測することによって決定される抗原を含み得る。複数の発病シーズン(pathogenic season)のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節の循環中のウイルスの最大数に対して効果的に免疫付与する反応を生成させる分子配列を予測することによって決定される抗原を含み得る。
【0194】
複数の並進軸は、フェレット抗体法医学(AF)軸、フェレット赤血球凝集阻害アッセイ(HAI)軸、マウスAF軸、マウスHAI軸、ヒトレプリカAF軸、ヒトAF軸又はヒトHAI軸のうちの少なくとも1つを含み得る。反復回数は、所定の反復回数に基づき得る。反復回数は、所定の誤差値に基づき得る。1つ以上の第1の並進応答は、予測フェレットHAI力価、予測フェレットAF力価、予測マウスAF力価、予測マウスHAI力価、予測ヒトレプリカAF力価、予測ヒトAF力価又は予測ヒトHAI力価のうち少なくとも1つを含み得る。
【0195】
複数のドライバモデルのうちの訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルの各ドライバモデルをドライバモデルのクラスに割り当てることを含み得、各クラスはそのドライバモデルを訓練するために使用される複数の並進軸の特定の並進軸に関連付けられる。複数のドライバモデルの訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルの各ドライバモデルについて、そのドライバモデルのうち1つ以上の訓練された並進応答を、そのドライバモデルと同じクラスに割り当てられた少なくとも1つの他のドライバモデルのうち1つ以上の訓練された並進応答と比較することを含み得る。
【0196】
操作は、訓練されたドライバモデルのサブセットの各訓練されたドライバモデルについて、その訓練されたドライバモデルに対応する第2の並進応答データを、観察された実験応答データと比較することによって、その訓練されたドライバモデルを検証し;その訓練されたドライバモデルの検証に応答して、その訓練されたドライバモデルに対応する訓練された出力データによって表される1つ以上の分子配列を含むワクチンを生成させることをさらに含み得る。
【0197】
一態様では、システムが提供される。システムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。システムは、1つ以上の分子配列を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行しているとき、少なくとも1つのプロセッサは、1つ以上の操作を実行するように構成されている。1つ以上の操作は、1つ以上の分子配列を示す時系列データを受信すること、及び1つ以上の分子配列のそれぞれについて、天然抗原としてその分子配列を含む病原性株の1回以上の循環を受信することを含む。1つ以上の操作は、機械学習モデルに含まれる実行可能ロジックの1つ以上の部分を保存する1つ以上のデータ構造を通して時系列データを処理し、この時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することを含む。
【0198】
時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、予測された1つ以上の分子配列が将来の使用に与える1つ以上の免疫学的特性を予測することを含み得る。時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、時系列データの全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する1つ以上の分子配列を予測することを含み得る。時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、時系列データの最大数の病原性株を効果的にカバーする生物学的反応を生成する1つ以上の分子配列を予測することを含み得る。予測された1つ以上の分子配列を使用して、時系列データの1回以上の循環の後の時間に循環する病原性株のためのワクチンを設計し得る。
【0199】
機械学習モデルは、リカレントニューラルネットワークを含み得る。
【0200】
特定の実施形態では、生物学的反応を予測するためのデータ処理システムが提供される。システムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。このシステムは、生物学的反応を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行しているとき、少なくとも1つのプロセッサは、1つ以上の操作を実行する。1つ以上の操作は、第1の分子配列の第1の配列データを受信することを含む。1つ以上の操作は、第2の分子配列の第2の配列データを受信することを含む。1つ以上の操作は、受信した第1及び第2の配列データに少なくとも部分的に基づいて、第2の分子配列に対する生物学的反応を予測することを含む。
【0201】
1つ以上の操作は、第1の分子配列及び第2の分子配列に対応する非ヒト生物学的反応データを受信することを含み得る。1つ以上の操作は、さらに非ヒト生物学的反応データに少なくとも部分的に基づいて生物学的反応を予測することを含み得る。1つ以上の操作は、第1の配列データ及び第2の配列データをアミノ酸ミスマッチとしてコードすることを含み得る。
【0202】
第1の分子配列は、候補抗原を含み得る。第2の分子配列は、既知のウイルス株を含み得る。
【0203】
生物学的反応を予測することは、ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応を予測することは、少なくとも1つのヒト生物学的反応、及び少なくとも1つの非ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応は、抗体力価を含み得る。機械学習モデルは、深層ニューラルネットワークを含み得る。
【0204】
機械学習技術は、偽陽性及び偽陰性の発生率が低下するように、生物学的反応を予測する機械学習モデルを訓練するために使用し得る。記載のシステム及び方法のうちの少なくともいくつかは、従来の手法と比較した場合、例えば、データの次元を削減することによって、本質的に疎なデータを効率的に処理するために使用し得る。記載のシステム及び方法の少なくともいくつかは、従来の手法と比較して予測精度を高めるために、受信データにおける非線形関係を利用し得る。記載のシステム及び記載の方法の少なくともいくつかは、ヒト生物学的反応及び非ヒト生物学的反応を同時に予測するために使用し得る。記載のシステム及び方法の少なくともいくつかは、実験的に観察されない結果を予測するために使用し得る。
【0205】
特定の実施形態では、1つ以上のコンピュータのシステムは、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成され得る。1つ以上のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると、装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成され得る。一般的な一態様には、連続データアルゴリズムを使用することによってワクチンを製造するための方法が含まれる。本方法は、複数の第1の離散値を含み得る離散データオブジェクトを受信することを含み、離散データオブジェクトは、1つ以上のアミノ酸配列を含み得る。本方法はまた、離散データオブジェクトを、複数の第1の連続値を含み得る連続データオブジェクトに変換することを含む。本方法はまた、連続データオブジェクトに、連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含み得る連続結果オブジェクトを生成させることを含む。本方法はまた、連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含み得る離散結果オブジェクトに変換することを含む。本方法はまた、i)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な核酸及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの少なくとも1つを含み得るワクチンを製造することを含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれが方法の動作を実行するように構成されている。
【0206】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る方法であって、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む、方法。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成させること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す);各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成させること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す);及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成させることを含み得る。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうち1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。本方法はさらに、複数の候補離散結果オブジェクトを生成させること;及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成させるための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットにおいて見出されないサブ配列についての損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。記載される技術の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0207】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成させるためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。このシステムはまた、1つ以上のプロセッサも含み得る。このシステムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を保存するコンピュータメモリも含み得、その操作には、複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは1つ以上のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成させること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること;及びi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルのうち少なくとも1つを含むワクチンを製造することが含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0208】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む、システムがある。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成させること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す);各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成させること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す);及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成させることを含み得る。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。操作はさらに:複数の候補離散結果オブジェクトを生成させること;及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成させるための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットに見出されないサブ配列の損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0209】
一般的な一態様は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに、以下を含み得る操作を実行させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは1つ以上のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成させること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること、及びi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義定されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルのうち少なくとも1つを含むワクチンを製造することが含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0210】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る媒体(第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれは、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む)。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成させること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成させること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す);及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成させることを含む。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。記載される技術の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0211】
特定の実施形態では、ワクチンとして使用するためのインフルエンザ抗原を生成させ得るアルゴリズムが本明細書中で開示される。一実装形態では、これには以下が含まれ得る:1)次の2つの段階を使用する機械学習(例えば、変分オートエンコーダアーキテクチャ)を通じて、全ての野生型ヘマグルチニン配列に対する削減次元空間を生成させること:
a)削減された空間に可変的に埋め込むこと(例えば、モデルが予測された平均及び分散を有する正規分布から選択された埋め込まれた座標を用いて、入力配列から平均及び分散を予測する);
b)次いで、削減された空間位置「オートエンコーダ」損失関数から元の配列にデコードし、入力及び出力配列の類似性によって削減すること。
2)削減次元空間における抗原(ワクチン候補)及びリードアウト株(標的配列)の位置に基づく免疫反応予測モデルを訓練すること[入力:段階1のモデルにより埋め込まれた抗原及びリードアウト、出力:抗体力価などの免疫反応の尺度]。
3)削減空間から候補ワクチン成分表現をサンプリングし、段階2に記載のモデルを用いて標的配列に対する予測性能によって候補ワクチン成分表現をランク付けし、上位候補を特定すること。
4)上位候補表現をデコードして[段階1bからのモデルを使用する]、元の野生型セットで観察された可能性又は観察されなかった可能性のあるヘマグルチニン配列を放出すること。
【0212】
1つ以上のコンピュータからなるシステムは、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成され得る。1つ以上のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成され得る。一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するための次元削減方法が含まれ、この方法は、1つ以上のコンピュータからなるシステムによって実行される。本方法は、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信することを含む。本方法はまた、1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間内の複数の削減次元配列を生成させることを含み、各削減次元配列は野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含有し、削減次元空間は野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する。本方法はまた、複数の削減次元配列を使用して、削減次元空間内に複数の候補配列を生成させることを含む。本方法はまた、ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信することを含む。本方法はまた、削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成させることを含む。本方法はまた、力価予測因子への入力として、候補配列のそれぞれ及び少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を提供することも含む。本方法はまた、力価予測因子からの出力として、候補配列のそれぞれについての候補スコアを受信することも含む。本方法はまた、候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択することも含む。本方法はまた、選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成させることを含む。本方法はまた、生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供することも含む。この方法はまた、生成されたアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれのワクチンを製造するのに適している操作も含み、ワクチンは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの少なくとも1つを含み得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0213】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。本方法は、複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る操作を含む。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値の群を含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し;出力として、候補スコアとしての力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。本方法は、単一の候補配列が選択されるように、nが1の値である操作を含む。本方法は、複数の候補配列が選択されるように、nが1より大きい値である操作を含む。少なくとも1つの候補配列を選択された候補配列として選択することは、それぞれの候補スコアが閾値よりも大きい候補配列を選択することを含み得る。生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、野生型アミノ酸配列の何れとも異なる。候補配列のうちの少なくとも1つは、複数の削減次元配列内にある。記載される技術の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0214】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成させるためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。このシステムはまた、1つ以上のプロセッサも含む。このシステムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を記憶するコンピュータメモリも含み、その操作には、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;その1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成させること(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含有し、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する)、複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成させること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成させること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列のうちの少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれに対する候補スコアを力価予測子から出力として受信すること;候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成させること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)が含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0215】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得るシステム。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し;出力として、候補スコアとしての力価スコアを提供するように構成され、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義する。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。記載される技術の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0216】
一般的な一態様は、1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、1つ以上のプロセッサに、以下を含む操作を実行させる、命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;その1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成させ(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含有し、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する)、複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成させること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成させること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列のうちの少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれに対する候補スコアを力価予測子から出力として受信すること;候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成させること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)が含まれる。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置及び1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0217】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る媒体。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値の群を含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し;出力として、候補スコアとしての力価スコアを提供するように構成され、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義する。記載される技術の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0218】
これら及び他の態様、特徴及び実装形態は、方法、装置、システム、構成要素、プログラム製品、ビジネスを行う方法、機能を実行するための手段又は段階として、及び他の方法で表され得、特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになるであろう。
【0219】
本開示の実装形態は、以下の利点を提供し得る。従来の技術と比較した場合、ワクチンを将来の発病シーズン(pathogenic season)に向けて設計し、その将来の発病シーズン(pathogenic season)の少なくとも1つの病原性株に対する生物学的反応量の観点から、より多くの防御を付与し得る。従来の手法と比較した場合、ワクチンを将来の発病シーズン(pathogenic season)に向けて設計し、将来の発病シーズン(pathogenic season)の複数の病原性株を有効にカバーする範囲の広さ(即ち、将来の発病シーズン(pathogenic season)において多くの病原性株に対し有効な免疫学的反応を誘発する)の観点から、より多くの防御を付与し得る。従来の技術とは異なり、頻繁に観察される株よりも多くの株と交差反応するので、「より多くの防御」を与え得る、稀にしか観察されない株が評価され得、それらのワクチン接種の有効性が予測され得る。
【0220】
使用方法
本開示は、本明細書中に記載のワクチンを対象に投与する方法を提供する。本方法は、対象にインフルエンザウイルスに対してワクチン接種するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ワクチン接種方法は、インフルエンザウイルスに対して対象にワクチン接種するために有効な量で、ワクチン接種を必要とする対象に、例えば(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含む、本明細書中に記載のワクチンの何れかを投与することを含む。同様に、本開示は、例えば、インフルエンザウイルスに対する対象へのワクチン接種における使用のための、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含む、インフルエンザウイルスに対する対象へのワクチン接種における使用のための本明細書中に記載のワクチンの何れかを提供する。インフルエンザウイルスに対する対象へのワクチン接種における使用のためのワクチンの製造のための、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む免疫原性組成物も本明細書中で開示される。
【0221】
本開示はまた、例えば、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含む、本明細書中に記載のワクチンの何れかの免疫学的有効量を対象に投与することを含む、インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与する方法も提供する。同様に、本開示は、インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与することにおける使用のための、例えば、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含む、インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与することにおける使用のための、本明細書中に記載のワクチンの何れかを提供する。また、インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与することにおける使用のためのワクチンの製造のための、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む免疫原性組成物も本明細書中で開示される。
【0222】
いくつかの実施形態では、本方法又は使用は、対象におけるインフルエンザウイルス感染又は疾患を予防する。いくつかの実施形態では、本方法又は使用は、対象において防御免疫反応を引き起こす。いくつかの実施形態では、防御免疫反応は、抗体反応である。
【0223】
本明細書で提供される免疫付与の方法(又は関連する使用)は、1種類以上のインフルエンザウイルスに対する中和免疫反応を広く誘発し得る。従って、様々な実施形態では、本明細書中に記載の組成物は、様々なタイプのインフルエンザウイルスに対して広範な交差防御を提供し得る。いくつかの実施形態では、本組成物は、トリ、ブタ、季節性及び/又はパンデミックインフルエンザウイルスに対する交差防御を提供する。いくつかの実施形態では、免疫付与の方法(又は関連する使用)は、1種類以上の季節性インフルエンザ株(例えば標準治療株)に対し、改善された免疫反応を誘発可能である。例えば、改善された免疫反応は、改善された液性免疫反応であり得る。いくつかの実施形態では、免疫付与の方法(又は関連する使用)は、1種類以上のパンデミックインフルエンザ株に対し、改善された免疫反応を誘発し得る。いくつかの実施形態では、免疫付与の方法(又は関連する使用)は、1種類以上のブタインフルエンザ株に対する改善された免疫反応を誘発可能である。いくつかの実施形態では、免疫付与の方法(又は関連する使用)は、1種類以上のトリインフルエンザ株に対する改善された免疫反応を誘発可能である。
【0224】
特定の実施形態では、対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法が本明細書中で提供され、この方法は、免疫学的有効量の本明細書中で開示されるワクチンの何れかを対象に投与することを含む。同様に、本開示は、例えば(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子とを含むワクチンを含む、対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化することにおける使用のための本明細書中に記載のワクチンの何れかを提供する。対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化することにおける使用のためのワクチンの製造のための、本明細書中に記載のような免疫原性組成物も本明細書中で開示される。特定の実施形態では、本明細書中で開示されるワクチンは、約5%~約100%、例えば約10%~約25%、約20%~約100%、約15%~約75%、約15%~約50%、約20%~約75%、約20%~約50%又は約40%~約80%など、例えば約40%~約60%又は約60%~約80%などの範囲の量で、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を向上させる。特定の実施形態では、本明細書中で開示されるワクチンは、標準治療インフルエンザウイルスワクチンのワクチン効力よりも少なくとも5%大きいワクチン効力、例えば、標準治療インフルエンザウイルスワクチンのワクチン効力よりも少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%大きいワクチン効力を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるワクチンは、標準治療インフルエンザウイルスワクチンのワクチン効力と少なくとも等しいワクチン効力を有する。
【0225】
特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチンは、不活性化インフルエンザワクチン(IIV)、例えば3価又は4価IIVであり得る。一般的には、標準治療、不活性化インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統からの不活性化されたインフルエンザウイルスを含む。特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチンは、組み換えインフルエンザウイルスHAを含み得、例えば組み換えインフルエンザウイルスHAを含む3価又は4価ワクチン組成物などである。一般的には、標準治療、組み換えHAワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統由来の組み換えHAを含む。ワクチン効力は、ワクチン接種した集団と非ワクチン接種集団又は異なるワクチンが投与された集団との間での疾患の軽減の割合として表され得る。特定の実施形態では、ワクチン効力は、次の式に従い、ワクチン接種した集団における疾患症例の比率を非ワクチン接種での疾患症例の比率から差し引き、非接種集団での疾患症例の比率によって除することによって計算され得る:[(非接種集団における疾患の比率)-(接種集団における疾患の比率)/(非接種集団における疾患の比率)×100]。
【0226】
対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防するための有効量で、例えば(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含め、本明細書中に記載のワクチンの何れかを対象に投与することを含む、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防する方法も提供される。同様に、本開示は、例えば、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含むワクチンを含め、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防することにおける使用のための本明細書中に記載のワクチンの何れかを提供する。対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防することにおける使用のためのワクチンの製造のための、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む免疫原性組成物も本明細書中で開示される。
【0227】
また、例えば(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子とを含むワクチンを含む本明細書中に記載のワクチンの何れかを対象に投与することを含む、対象においてインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAに対する免疫反応を誘導する方法も提供される。同様に、本開示は、例えば(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせと(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又はそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子とを含むワクチン組成物を含む、対象においてインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAに対して免疫反応を誘導することにおける使用のための本明細書中に記載のワクチンの何れかを提供する。また、対象においてインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAに対する免疫反応を誘導することにおける使用のためのワクチンの製造のための、(i)1種類以上のインフルエンザウイルスHA、1種類以上のインフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせと、(ii)インフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA又は本明細書中に記載のようなそれらの組み合わせをコードする1種類以上のリボ核酸分子と、を含む免疫原性組成物も本明細書中で開示される。
【0228】
本明細書中に記載のようなHA、NA及び/又はリボ核酸分子及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンは、インフルエンザ感染の1つ以上の症状の発症前又は発症後に投与され得る。即ち、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のワクチンは、インフルエンザ感染を予防するか又は可能性があるインフルエンザ感染の症状を改善するために、予防的に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象が季節性又はパンデミックインフルエンザウイルスに感染していることが知られているか又は疑われる他の個体又は家畜(例えばブタ)と接触する場合、及び/又はインフルエンザ感染が知られているか又は流行している若しくはエンデミックであると考えられる地域に対象が存在している場合、対象はインフルエンザウイルス感染のリスクがある。いくつかの実施形態では、本ワクチンは、インフルエンザ感染に罹患している対象に投与されるか、又は対象は、インフルエンザ感染に一般に関連する1つ以上の症状を示している。いくつかの実施形態では、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されていると分かっているか又は曝露されていると考えられている。いくつかの実施形態では、対象がインフルエンザウイルスに曝露されていると分かっているか又は曝露されていると考えられている場合、対象はインフルエンザに感染するリスクがあるか又は感染し易い。いくつかの実施形態では、パンデミックインフルエンザウイルスに感染していると分かっているか又は疑われる他の個体又は家畜(例えばブタ)と対象が接触している場合、及び/又はインフルエンザ感染が流行している若しくはエンデミックであることが知られているか又はそのように考えられる地域に対象が存在するか若しくは存在したことがある場合、対象はインフルエンザウイルスに曝露されていることが分かっているか又は曝露されていると考えられる。本明細書中で開示されるワクチンは、季節性及びパンデミックインフルエンザ株の何れか又は両方によって引き起こされる疾患を処置又は予防するために使用され得る。
【0229】
本開示によるワクチンは、所望の転帰を達成するのに適切な何れかの量又は用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、所望の転帰は、季節性株及びパンデミック株の両方を含む広範囲のインフルエンザ株に対する持続的な適応免疫反応の誘導である。いくつかの実施形態では、所望の転帰は、インフルエンザ感染の1つ以上の症状の強度、重症度及び/又は頻度の低下及び/又は発症の遅延である。必要とされる用量は、対象の種、年齢、体重及び全身状態、処置される感染症の重症度、使用される特定の組成物及びその投与方法に応じて、対象ごとに変動し得る。
【0230】
様々な実施形態では、本明細書中に記載のワクチンが対象に投与され、対象は動物界のあらゆるメンバーであり得る。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、鳥類(例えば、ニワトリ又はトリ)、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、及び/又は蠕虫である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、フェレット、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類及び/又はブタ)である。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のワクチンは、ヒト対象に投与される。特定の実施形態では、ヒト対象は、6カ月齢以上、6カ月齢~35カ月齢、少なくとも2歳、少なくとも3歳、36カ月齢~8歳、9歳以上、少なくとも6カ月齢及び5歳未満、少なくとも6カ月齢及び18歳未満又は少なくとも3歳及び18歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、乳幼児(36カ月未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、小児又は青年(18歳未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも6カ月齢及び5歳未満の小児である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも5歳及び60歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも5歳及び65歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、高齢者(少なくとも60歳又は少なくとも65歳)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、非高齢成人(少なくとも18歳及び65歳未満又は少なくとも18歳及び60歳未満)である。
【0232】
一般的には、本明細書中に記載の方法及びワクチンの使用は、対象への単回投与を含む(即ちブースター投与なし)。しかし、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法及びワクチンの使用は、プライムブーストワクチン接種ストラテジーを含む。プライムブーストワクチン接種は、プライムワクチンを投与し、その後、ある期間が経過した後、ブーストワクチンを対象に投与することを含む。免疫反応は、プライムワクチンの投与時に「予備刺激」され、ブーストワクチンの投与時に「強化」される。プライムワクチンは、本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA及び/又はリボ核酸分子と任意選択的なアジュバントとを含むワクチンを含み得る。同様に、ブーストワクチンは、本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA及び/又はリボ核酸分子と任意選択的なアジュバントとを含むワクチンを含み得る。プライムワクチンはブーストワクチンと同じであり得るが、同じである必要はない。ブーストワクチンの投与は一般に、プライム組成物の投与から数週間又は数カ月後、好ましくは約2~3週間後、又は4週間後、又は8週間後、又は16週間後、又は20週間後、又は24週間後、又は28週間後、又は32週間後である。特定の実施形態では、プライムブーストワクチン接種のレシピエントは、無感作の対象、一般的には無感作の乳幼児又は小児である。
【0233】
本ワクチンは、上記で論じるように、例えば非経口送達を含む、何らかの適切な投与経路を用いて投与され得る。
【0234】
一般的には、本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA及び/又はリボ核酸分子並びに任意選択的なアジュバントは、同じワクチン組成物の構成成分として一緒に投与される。しかし、本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA及び/又はリボ核酸分子は、同じワクチン組成物の一部として投与される必要はない。即ち、必要に応じて、本明細書中に記載のようなインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスNA、リボ核酸分子及び/又は任意選択的なアジュバントは、対象に個別に投与され得る。例えば、少なくとも4種類のインフルエンザウイルスHAタンパク質、例えば4種類の組み換えインフルエンザウイルスHAなどを含む第1のワクチンは、1種類以上の、例えば4種類のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸を含む第2のワクチンとは別個に対象に投与され得る。第1及び第2のワクチンが別個に投与される場合、第1及び第2のワクチンは、異なる部位で対象に投与され得る。
【0235】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより深く理解されるであろう。
【0236】
本開示の代表的な実施形態
1.
(i)1種類以上のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)タンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質と、
(ii)1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質、1種類以上のインフルエンザウイルスNAタンパク質又はそれらの組み合わせから選択される1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする1種類以上のリボ核酸分子と、
を含む、免疫原性組成物。
2.(i)における1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が組み換えインフルエンザウイルスタンパク質である、実施形態1に記載の免疫原性組成物。
3.(i)における1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が不活性化インフルエンザウイルス(IIV)中に存在する、実施形態1又は2に記載の免疫原性組成物。
4.前記1種類以上のリボ核酸分子がmRNA分子である、実施形態1~3の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
5.前記免疫原性組成物が、8種類を超えない(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質と、8種類を超えないインフルエンザウイルスタンパク質をコードする(ii)におけるリボ核酸分子と、を含む、実施形態1~4の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
6.実施形態1~5の何れか1つに記載の免疫原性組成物であって、
(i)の前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質を含み;
(ii)の1種類以上のリボ核酸分子が、インフルエンザウイルスH1 HA、インフルエンザウイルスH3 HA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスHA、B/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスHA、インフルエンザウイルスN1 NA、インフルエンザウイルスN2 NA、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のインフルエンザウイルスNA又はB/Yamagata(山形)系統由来のインフルエンザウイルスNAから選択される1~8種類のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする、免疫原性組成物。
7.4種類を超えない(i)におけるインフルエンザウイルスタンパク質と、4種類を超えないインフルエンザウイルスタンパク質をコードする(ii)におけるリボ核酸分子と、を含む、実施形態1~6の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
8.8価免疫原性組成物である、実施形態1~7の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
9.(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が4種類の組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質を含み;前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類のインフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする、実施形態1~8の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
10.(i)における前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、4種類の組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み;前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類のインフルエンザウイルスHAタンパク質をコードする、実施形態1~8の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
11.16価免疫原性組成物である、実施形態1~6の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
12.実施形態1~6の何れか1つに記載の免疫原性組成物であって、
(a)前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、
第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH1 HAである);
第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質
を含み;
(b)前記1種類以上のリボ核酸分子が、
第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);
第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質
をコードする、免疫原性組成物。
13.前記H1 HAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、前記H3 HAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来であり、前記N1 NAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記N2 NAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来である、実施形態12に記載の免疫原性組成物。
14.前記H1 HA及び前記N1 NAが同じH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HA及びN2 NAが同じH3N2インフルエンザウイルス株由来である、実施形態13に記載の免疫原性組成物。
15.前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質のそれぞれが組み換えインフルエンザウイルスHAである、実施形態12~14の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
16.前記1種類以上のリボ核酸分子が、4種類の全長インフルエンザウイルスNAタンパク質をコードする、実施形態1~9又は11~15の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
17.実施形態1~6の何れか1つに記載の免疫原性組成物であって、
(a)前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質が、
第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN1 NAである);
第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質はN2 NAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスNAタンパク質;
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質
を含み;
(b)前記1種類以上のリボ核酸分子が、
第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第1のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH1 HAである);
第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質(前記第2のインフルエンザウイルスHAタンパク質はH3 HAである);
B/Victoria(ビクトリア)インフルエンザウイルス系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAタンパク質;及び
B/Yamagata(山形)インフルエンザウイルス系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAタンパク質
をコードする、免疫原性組成物。
18.前記N1 NAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、前記N2 NAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来であり、前記H1 HAが、H1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HAが、H3N2インフルエンザウイルス株由来である、実施形態17に記載の免疫原性組成物。
19.前記H1 HA及び前記N1 NAが、同じH1N1インフルエンザウイルス株由来であり、及び/又は前記H3 HA及び前記N2 NAが、同じH3N2インフルエンザウイルス株由来である、実施形態18に記載の免疫原性組成物。
20.前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれが組み換えインフルエンザウイルスNAである、実施形態17~19の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
21.前記第1、第2、第3及び第4のインフルエンザウイルスNAタンパク質のそれぞれが、4個の修飾された組み換え単量体NA分子を含む修飾された組み換え四量体インフルエンザウイルスNAであり、前記修飾された組み換え単量体NA分子のそれぞれが前記インフルエンザウイルスNAの頭部領域及び異種四量体化ドメインを含むが、前記インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを欠き、宿主細胞で発現される場合に前記4個の修飾された組み換え単量体NA分子が修飾された組み換え四量体NAを形成する、実施形態20に記載の免疫原性組成物。
22.前記異種四量体化ドメインが、スタフィロテルムス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラチオン(tetrabrachion)四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質からの四量体化ドメイン又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである、実施形態21に記載の免疫原性組成物。
23.前記第2のインフルエンザウイルスNAタンパク質が、4個の修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2を含む修飾された組み換え四量体N2 NAであり、前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2のそれぞれが、
インフルエンザウイルスN2の頭部領域を含み、
前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2のそれぞれが、前記インフルエンザウイルスN2の、細胞質尾部、膜貫通領域及びストーク領域の全て又は実質的に全てを含有せず、前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2のそれぞれが異種オリゴマー化ドメインを含有しない、実施形態20に記載の免疫原性組成物。
24.前記修飾された組み換え単量体インフルエンザウイルスN2が、前記インフルエンザウイルスN2のアミノ酸1~70、1~71、1~72、1~73、1~74、1~75、1~76、1~77、1~78、1~79、1~80、1~81、1~82、1~83又は1~84を欠く、実施形態23に記載の免疫原性組成物。
25.前記1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質の少なくとも1つが、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有するインフルエンザウイルスHAタンパク質及び/又はインフルエンザウイルスNAタンパク質を含み、及び/又は前記1種類以上のリボ核酸分子の少なくとも1つが、機械学習モデルから同定されるか又は設計される分子配列を有する1種類以上のインフルエンザウイルスタンパク質をコードする、実施形態1~24の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
26.アジュバントをさらに含む、実施形態1~25の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
27.前記アジュバントが、水中スクアレンアジュバント又はリポソームに基づくアジュバントを含む、実施形態26に記載の免疫原性組成物。
28.前記1種類以上のリボ核酸分子が少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドを含む、実施形態1~27の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
29.前記少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドが、シュードウリジン、任意選択的にN1-メチルシュードウリジン、2’-フルオロリボヌクレオチド、2’-メトキシリボヌクレオチド及び/又はホスホロチオエート結合を含む、実施形態28に記載の免疫原性組成物。
30.前記1種類以上のインフルエンザウイルスHAタンパク質が、培養される昆虫細胞においてバキュロウイルス発現系により産生される組み換えインフルエンザウイルスHAタンパク質である、実施形態1~29の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
31.前記インフルエンザウイルスNAタンパク質の1つ以上が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生される組み換えインフルエンザウイルスNAタンパク質である、実施形態1~30の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
32.前記1種類以上のリボ核酸分子が脂質ナノ粒子(LNP)中に封入される、実施形態1~31の何れか1つ記載の免疫原性組成物。
33.LNP中に前記1種類以上のリボ核酸分子が封入されており、アジュバントをさらに含まない、実施形態1~32の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
34.同じLNP中に封入される少なくとも2種類のリボ核酸分子を含む、実施形態1~33の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
35.同じLNP中に封入される少なくとも4種類のリボ核酸分子を含む、実施形態1~34の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
36.(i)における前記インフルエンザウイルスタンパク質及び/又は(ii)における前記リボ核酸分子が、標準治療インフルエンザ株由来である、実施形態1~35の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
37.前記LNPが、陽イオン性脂質、ポリエチレングリコール複合化(PEG化)脂質、コレステロールに基づく脂質及びヘルパー脂質を含む、実施形態32~36の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
38.前記LNPが、
35%~45%のモル比の陽イオン性脂質、
0.25%~2.75%のモル比のPEG化脂質、
25%~35%のモル比のコレステロールに基づく脂質、及び
25%~35%のモル比のヘルパー脂質
を含む、実施形態37に記載の免疫原性組成物。
39.前記LNPが、
40%のモル比の陽イオン性脂質、
1.5%のモル比のPEG化脂質、
28.5%のモル比のコレステロールに基づく脂質及び
30%のモル比のヘルパー脂質
を含む、実施形態38に記載の免疫原性組成物。
40.前記陽イオン性脂質が、OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10及びGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14を含む群から選択される、実施形態37~39の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
41.前記陽イオン性脂質がcKK-E10である、実施形態37~40の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
42.前記PEG化脂質がジミリストイル-PEG2000である、実施形態37~41の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
43.前記コレステロールに基づく脂質がコレステロールである、実施形態37~42の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
44.前記ヘルパー脂質がジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンである、実施形態37~43の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
45.前記LNPが、40%のモル比のcKK-E10;1.5%のモル比のジミリストイル-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール;及び30%のモル比のジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む、実施形態37~44の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
46.前記LNPが、(i)前記陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール、(iii)前記ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)コレステロールを含む、実施形態32~37の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
47.前記LNPが、(i)約25%~約65%のモル比の前記陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)約0.5%~約2.6%のモル比の前記PEG化脂質としてのN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール、(iii)約5%~約15%のモル比の前記ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)約20%~約60%のモル比のコレステロール、例えばi)約46.3%のモル比の前記陽イオン性脂質としてのALC-0315、(ii)約1.6%のモル比のPEG化脂質としてのALC-0159、iii)約9.4%のモル比の前記ヘルパー脂質としてのDSPC及び(iv)約42.7%のモル比のコレステロールなど、を含む、実施形態32~37又は46の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
48.(i)における前記インフルエンザウイルスタンパク質のそれぞれが、約0.1μg~約90μg、任意選択的に約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量で前記免疫原性組成物中に存在する、実施形態1~47の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
49.前記リボ核酸分子のそれぞれが、約0.1μg~約150μg、任意選択的に約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量で前記免疫原性組成物中に存在する、実施形態1~48の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
50.筋肉内注射用に処方される、実施形態1~49の何れか1つに記載の免疫原性組成物。
51.請求項1~50の何れか1つに記載の免疫原性組成物と、医薬担体と、を含むワクチン。
52.インフルエンザウイルスに対して対象に免疫付与する方法であって、実施形態51に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
53.前記対象においてインフルエンザウイルス感染を予防する、実施形態52に記載の方法。
54.前記対象において防御免疫反応を生じさせる、実施形態52又は53に記載の方法。
55.前記防御免疫反応が、HA抗体応答及び/又はNA抗体応答を含む、実施形態54に記載の方法。
56.前記対象がヒトである、請求項52~55の何れか1つに記載の方法。
57.前記ワクチンが、筋肉内に、皮内に、皮下に、静脈内に、鼻腔内に、吸入により、又は腹腔内に投与される、実施形態52~56の何れか1つに記載の方法。
58.季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株の何れか又は両方によって引き起こされる疾患を処置又は予防する、実施形態52~57の何れか1つに記載の方法。
59.前記対象がヒトであり、前記ヒトが、6カ月齢以上、18歳未満、少なくとも6カ月齢及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも6カ月齢及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳又は少なくとも65歳である、実施形態52~58の何れか1つに記載の方法。
60.実施形態51に記載のワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む、インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法。
61.対象において防御的免疫反応を増強するか又は広幅化する方法であって、実施形態51に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含み、前記ワクチンが標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン効力を、約5%~約100%の範囲の量、例えば少なくとも約20%など、向上させる、方法。
62.前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物が、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統由来の不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である、実施形態61に記載の方法。
63.前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物が、H1N1株、H3N2株、B/Victoria(ビクトリア)系統及びB/Yamagata(山形)系統由来の組み換えインフルエンザウイルスHAを含む、実施形態61に記載の方法。
64.2~6週間、任意選択的に4週間の間隔で、前記ワクチンの2回分を前記対象に投与することを含む、実施形態52~63の何れか1つに記載の方法。
【実施例】
【0237】
以下の実施例は例示的なものと見なされるべきであり、上記の開示の範囲を限定するものではない。
【0238】
動物実験は、実験動物の人道的管理と使用(Humane Care and Use of Laboratory Animals)に関する公衆衛生局(Public Health Service)(PHS)規範、及び実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に準拠して行い、Sanofi動物実験委員会(Institutional animal Care and Use Committee)(IACUC)からの承認された動物プロトコールで実施した。動物は全て、特定の病原体を含まない条件下で、餌及び水を自由に与えて飼育した。
【0239】
インフルエンザウイルス:逆遺伝学によって、酵素連結レクチンアッセイ(ELLA)で使用される再集合H6ウイルスを作製し、各再集合物は、標的とされるNA抗原、A/mallard(マガモ)/Sweden(スウェーデン)/81/2002 H6N1由来のHA及びA/Puerto Rico(プエルトリコ)/8/1934 H1N1由来の内部遺伝子(「PR8」)を発現した。非コード領域を含むHA及びNAセグメントは、カスタム遺伝子合成(Geneart AG)によって作製され、PR8セグメントは、ウイルス単離株由来であった。ポリメラーゼ(Pol)I及びPol IIプロモーターの組み込みにより、pUC57(Genscript)に由来する二方向性転写プラスミドへと全てのセグメントをクローニングした。簡潔に述べると、Lipofectamine 2000 CD(Thermo Fisher Scientific)を使用して、293FT細胞(Thermo Fisher Scientific)に、各インフルエンザウイルスセグメントに相当する全部で8種類のプラスミドを遺伝子移入した。24時間後に、TPCK処理したトリプシン(Sigma)の存在下で、遺伝子移入した細胞にMDCK-ATL細胞(ATCC)を添加して、インフルエンザウイルスが増殖するようにした。MDCK添加の7日後にインフルエンザウイルスを含有する細胞培養上清を回収し、8~10日齢の有胚ニワトリ卵において継代した(Charles River Laboratories,Inc.)。接種を行った卵を37℃にて48時間インキュベートし、次いで4℃に12時間冷却し、回収し、低速遠心分離(3,000rpm、20min)によって清澄化した。MDCK細胞上でプラークアッセイによってウイルス力価を決定した。
【0240】
HAI検査に含まれたA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)、A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)、B/Colorado(コロラド)/06/2017(Victoria(ビクトリア)系統)、B/Maryland(メリーランド)/15/2016(Victoria(ビクトリア)系統)及びB/Phuket(プーケット)/3073/2013(Yamagata(山形)系統)の、卵で増殖させたストックは、Sanofi Paster Global Clinical Immunology(Swiftwater、PA)により提供された。フェレットでの試験で使用された野生型インフルエンザA/Perth(パース)/16/2009(H3N2)は、IIT Research Institute(Chicago、IL)により提供された。ウイルスは全て、使用まで-65℃未満で保管した。
【0241】
ワクチン抗原:組み換え、可溶性インフルエンザNAの発現のために、コンストラクトを設計した。四量体及び単量体の両方のNAコンストラクト設計には、N末端CD5分泌シグナルペプチド、任意選択的な6HISタグ(精製のため)及び球状ノイラミニダーゼ頭部ドメインが含まれる。四量体設計(rTET-NA)は、多量体化のためにHISタグと球状頭部との間にテトラブラチオン(tetrabrachion)ドメインも含有する。定められたアミノ酸配列を使用して、オリゴヌクレオチド及び/又はPCR産物からコドン最適化された合成遺伝子を組み立て、pcDNA3.4-TOPO(ThermoFisher)に断片を挿入した。形質転換された細菌からプラスミドDNAを精製し、遺伝子移入に適切な濃度を達成するために調整した。ExpiCHO(商標)発現系Max Titer Protocol(ThermoFisher)を使用して、CHO-S細胞においてタンパク質発現を行った。分泌されたタンパク質を細胞から分離するために清澄化段階を行った。アフィニティー(HisTrap(商標)HPカラム-GEHealthcare)、続いて陰イオン交換クロマトグラフィー(HiTrap(商標)Q HP-GE HealthCare)、10mMリン酸緩衝食塩水(pH7.2)への透析及び0.2μm滅菌ろ過によって、宿主細胞タンパク質からNAタンパク質を精製した。カレント・グッド・リサーチ・プラクティシーズ(current good research practices)(cGRP)に従って、NAワクチン調製物を作製した。
【0242】
NAI応答の酵素連結レクチンアッセイ(ELLA)評価:Couzens,An optimized enzyme-linked lectin assay to measure influenza A virus neuraminidase inhibition antibody titers in human sera,J.Virological Methods 2014,210:7-14において以前記載されたようなELLAによって、関心対象の株由来のNAを含有するH6再集合ウイルスに対してNAI抗体応答を測定した。簡潔に述べると、最大NA酵素活性の70%を提供するウイルスの標準量を決定するために、フェチュインでコーティングされた96ウェルプレート中で関心対象の株由来のNAを含有するH6再集合ウイルスを滴定した。熱不活性化血清の2倍連続希釈を行うことによって、血清中に存在するNAI抗体の滴定を達成した。次に、フェチュインコーティングしたプレート中で50μLの、最大NA酵素活性の70%に対応する希釈したウイルスに、全部で50μLの希釈血清を添加した。血清-ウイルス混合物を37℃で一晩インキュベートした。プレートを4回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ-(HRP-)複合化ピーナツアグルチニン(PNA)とともにインキュベートし、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)の添加による発色前に再び洗浄した。ウイルス対照と比較した低シグナル又はシグナルなしは、NA特異的な抗体が存在することによるNA活性の阻害を示す。GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形4パラメータロジスティック(4PL)曲線を用いてNAI力価を近似し、50%最大阻害濃度(IC50)を計算した。
【0243】
ヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイ:HAIアッセイの前に、血清を受容体破壊酵素(RDE;Denka Seiken,Co.,Japan)で処理して、非特異的阻害剤を不活性化した。v底マイクロタイタープレート中で、RDE処理した血清を連続希釈した(2倍希釈)。HAIリードアウトパネルからの各ウイルスの等量を各ウェルに添加した(1ウェル当たり4赤血球凝集単位(HAU))。本実施例に対して、別段示されない限り、相同ウイルスパネルには、卵において増殖させたA/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1N1)、A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)、B/Colorado(コロラド)/06/2017又はB/Maryland(メリーランド)/15/2016(Victoria(ビクトリア)系統)及びB/Phuket(プーケット)/3073/2013(Yamagata(山形)系統)ウイルスが含まれた。プレートを被覆し、室温で20分間(又は45~60分間)インキュベートし、続いて、PBS中の、ニワトリ赤血球(赤血球(red blood cell);CRBC)の1%混合物又はシチメンチョウ赤血球(TRBC)(Lampire Biologicals)の0.5%混合物を添加した。プレートを撹拌によって混合し、被覆し、RBCを室温でおよそ30分~1時間静置した。HAI力価は、非凝集RBCを含有する最後のウェルの希釈率の逆数によって決定した。
【0244】
HINT mNTインフルエンザプロトコール:インフルエンザ株に対する中和力価は、Jorquera,P.A.et al,Insights into the antigenic advancement of influenza A (H3N2) viruses,2011-2018,Sci.Reports 9,2676(2019)に記載のように測定した。簡潔に記載すると、RDE処理した血清の1:20~1:2,560の連続2倍希釈物を、等体積のウイルス、約1000フォーカス形成単位(FFU)と混合し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、MDCK-SIAT1細胞懸濁液をウイルス:血清混合物に添加し、約22時間インキュベートした。単層をメタノールで固定し、染色用に調製した。次いで、核タンパク質(NP)に対する抗インフルエンザモノクローナル抗体、続いて、ALEXA FLUOR(登録商標)488コンジュゲート二次抗体と共にウェルをインキュベートした細胞を洗浄し、CTL ImmunoSpot(登録商標)Cell Imaging v2上でプレートをスキャンした。プレートからのカウントをGraphpad Prismソフトウェアに移して、シグモイド曲線から50%のフォーカスの減少を達成する中和力価を計算した。このアッセイは、トリプシンを含まず、血清不含ウイルス投入対照ウェルと比較した場合のウイルス侵入の阻害を測定する。カウントは個々の感染細胞であり、このアッセイは、H1、H3、BVic及びBYamを含む全ての生ウイルスサブタイプに適切である。
【0245】
続く実施例に対して、組み換えHAタンパク質はProtein Sciencesから得た。簡潔に述べると、Sf9細胞由来であり、血清不含培地中で増殖させた連続継代性の昆虫細胞株(EXPRESSF+(登録商標))において精製HAタンパク質を作製した。有胚ニワトリ卵において増殖させたインフルエンザウイルスからIIVを調製し、ホルムアルデヒドで不活性化し、濃縮し、スクロース勾配上でのゾーン遠心分離法によって精製し、Triton(登録商標)X-100で分離し、さらに精製し、次いでリン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液中で懸濁した。0.2μmシリンジフィルターを用いて調製物を滅菌ろ過した。生インフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼ(LVNA)を有胚ニワトリ卵中で増殖させたインフルエンザウイルスから単離した。スクロース勾配超遠心分離によってウイルスを精製し、界面活性剤可溶化によってNAを抽出し、カラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液中で懸濁した。0.2μmシリンジフィルターを用いて調製物を滅菌ろ過した。
【0246】
実施例1-マウスにおける多価HA及びNA免疫原性の評価
第0日にマウスにプライムワクチンを注射し、第21日に同じ投与量のブースターワクチンを注射した。第1、20、22及び35日に血液を回収した。
【0247】
HA抗原をコードするmRNAを含有する1価組成物に対して、次のもののそれぞれをコードするmRNAを個々に使用した:H1、H3、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のHA(具体的に株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)。N1、N2、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のNA及びB/Yamagata(山形)系統由来のNA(具体的に株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)のそれぞれをコードするmRNAを含有する4価ワクチン組成物を調製し、4価ワクチンとして又はハイブリッド8価ワクチンを作製するために4価rHAワクチン組成物と組み合わせて投与した。以下の表1を参照のこと。さらに、H1、H3、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のHAのそれぞれをコードするmRNAを含有する4価ワクチン組成物を調製し、以下表1で示されるように、4価ワクチンとして投与した。1価及び4価組成物の両方に対する各mRNAは、0.4μg/株の量で添加した。対照として、2018/2019標準治療インフルエンザ株を含有する不活性化インフルエンザワクチン(IIV)を使用した(QIV(2018/2019))。
【0248】
組み換え抗原について、以下表1で示されるように、H1、H3、B/Victoria(ビクトリア)系統由来のHA及びB/Yamagata(山形)系統由来のHAのそれぞれとともにrHAを含有する4価ワクチン組成物を使用した(具体的に株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)。以下表1で示されるように、0.1μg/株又は1μg/株の何れかの量で、及びアジュバント(AF03)あり又はなしで、各組み換えHAを組成物に添加した。
【0249】
各群に対して、n=6匹のマウス。次のインフルエンザウイルス株に対してHAI力価を測定した:A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013(卵で増殖)。脂質ナノ粒子希釈剤を陰性対照として使用した。結果を以下の表1で報告する。
【0250】
【0251】
4価の応答と8価の応答との間で干渉は観察されなかった。上で示されるように、4価NA mRNA及び4価組み換えHAの8価ハイブリッド組み合わせ(1μg/株及びAF03)(列12)は、4価組み換えHA(1μg/株及び-AF03)単独(列7)を超えるHAIの顕著な改善を示した。従って、4価NAワクチン及び4価rHAの組み合わせは予想外にHAI反応を増強した。8価ハイブリッド組み合わせは、評価した全ての4種類のインフルエンザ株に対して、4価組み換えHAの4倍以内であった。
【0252】
同様に、次の4種類のインフルエンザウイルス株を用いてマウスにおいてNAI力価を同じように評価した:A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013。結果を以下の表2で示す。
【0253】
【0254】
表2で示されるように、4種類のNAをコードするmRNA及び4種類の組み換えHAの8価のワクチン組み合わせでのワクチン接種は、4価NA mRNAで観察されたNAI力価と同等のNAI力価を示した。従って、表1及び2からのデータから、ハイブリッド8価ワクチンがロバストなHA及びNA免疫反応を誘導可能であったこと及び4種類の異なるインフルエンザ株由来の免疫優勢HAの存在が抗NA免疫反応を抑制しないか又は妨害しないと思われることが明らかになる。例えば、表2の列6を列9及び10と比較する。さらに、標準治療IIVワクチン(2018/2019から)と比較した場合、H1N1、H3N2、B Victoria(ビクトリア)及びB Yamagata(山形)株に対する8価ワクチン(0.1μg/株)により誘導されるNA力価は上昇した。
【0255】
実施例2-フェレットにおける多価HA及びNA免疫原性の評価
多価ハイブリッドワクチン免疫原性を評価するために使用されたフェレットに、以下表3で示されるように、(1)NA抗原(N1、N2、BvNA及びByNA)をコードする4種類のmRNAの混合物(具体的に株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)、(2)HA抗原(H1、H3、BvHA及びByHA)をコードする4種類のmRNAの混合物(具体的に株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)、(3)4種類の組み換えHA抗原(H1、H3、BvHA及びByHA)の混合物又は(4)NA抗原(N1、N2、BvNA及びByNA)をコードする4種類のmRNAの混合物を4種類の組み換えHA抗原(H1、H3、BvHA及びByHA)の混合物と組み合わせたものを、21日あけて2回ワクチン接種した。各HAは、次の4種類の株のうち1つ由来のHAを含む:A/Michigan(ミシガン)/45/2015(H1);A/Singapore(シンガポール)/Infimh-16-0019/2016(H3);B/Maryland(メリーランド)/15/2016(B/Victoria(ビクトリア)系統);及びB/Phuket(プーケット)/3073/2013(B/Yamagata(山形)系統)。全抗原を1:1比で、アジュバントなしで投与した。
【0256】
フェレットは全て、ベースライン、ブースターの1日前又は直前、ブースターワクチン接種時及び必要に応じて免疫負荷の2週間後に鎮静下で採血した。ELLAによって血清試料(必要になるまで-20℃で保管)を試験してNAI活性を評価した。さらに、多価ワクチン接種後にヘマグルチニン抗原に対する抗体応答を評価するために、HINT mNTアッセイを試みた。
【0257】
各群に対してn=6匹のフェレット。次のインフルエンザウイルス株に対してHINT力価を測定した:A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Iowa(アイオワ)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013(A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016リードアウト株は卵において増殖させ、他の3種類の株は細胞増殖させたウイルスであった)。結果を以下の表3で報告する。第0日にフェレットにプライムワクチンを注射し、第21日に同じ投与量のワクチンをブースト注射した。第-7、1、20、22及び42日に血液を回収した。
【0258】
【0259】
上で示されるように、4価NA mRNA及び4価組み換えHAの8価ハイブリッド組み合わせは、4価組み換えHAと比較して顕著な力価の上昇を示し、A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016(330.2v.90)、B/Iowa(アイオワ)/06/2017(108.3v.11.7)及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013(275.2v.77.9)に対して4倍を超える上昇が見られた。実際に、4価NA mRNA及び4価組み換えHAの8価ハイブリッド組み合わせは、4価NA mRNA及び4価組み換えHAが個々に投与された場合に観察されるHAI力価と比較した場合、相乗性を示した。
【0260】
同様に、インフルエンザウイルスの次の4種類の株を用いてフェレットにおいてNA力価を同じように評価した:A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013。結果を以下の表4(第20日)及び表5(第42日)で示す。
【0261】
【0262】
【0263】
上の表4で示されるように、単回プライム投与後、4価NA mRNA及び4価組み換えHAの8価ハイブリッド組み合わせでのワクチン接種は、4価NA mRNAでのワクチン接種と同様のNAI力価を誘導した。表5で示されるように、4価NA mRNA及び4価組み換えHAの8価ハイブリッド組み合わせのブースター投与は、単回プライム投与(35.4)を超える全体的なNAI力価(37.4)の上昇を示した。従って、表3~5からのデータは、ハイブリッド8価ワクチンがロバストなHA及びNA免疫反応を誘導可能であったこと及び4種類の異なるインフルエンザ株由来の免疫優勢HAの存在は抗NA免疫反応を抑制しないか又は妨害しないと思われることを示す。
【0264】
実施例3-フェレットにおける多価HA及びNAワクチンのイメージ(images)を用いた幅広いNAI免疫原性の評価
ハイブリッド8価ワクチンを作製するために、以下の表6で示されるように、N1、N2、B/Victoria(ビクトリア)NA及びB/Yamagata(山形)NA(具体的には株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)のそれぞれでのNA mRNAを含有する4価ワクチン組成物を、H1、H3、B/Victoria(ビクトリア)HA及びB/Yamagata(山形)HA(具体的には株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)のそれぞれでのrHAを含有する4価ワクチン組成物と組み合わせた。第0日にフェレットにプライムワクチンを注射し、第21日に同じ投与量のブーストワクチンを注射した。第0日及び第21日に、対照フェレットにPBS又はNA mRNAを含有しない組み換えHA4価ワクチンの何れかを投与した。全群に対して、第1、20、22及び42日に血液を回収した。次のインフルエンザウイルス株に対して、NAI力価を測定した:A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;A/Hatay(ハタイ)/4990/2016;A/Sweden(スウェーデン)/3/2017;A/Louisiana(ルイジアナ)/13/2017;A/Townsville(タウンズビル)51/2016;A/Aksaray(アクサライ)/4048/2016;A/Perth(パース)/16/2009;及びA/Ohio(オハイオ)13/2017。結果を以下の表6で報告する。
【0265】
【0266】
上で示されるように、ハイブリッドワクチン組み合わせの投与後、株にわたって幅広いNAI反応が明らかになった。
【0267】
Multiplex Serology ELISAチップを介して、NA異種幅(NA heterologous breadth)の評価を行い、ここで、16種類のTetNA及びTET-HAへの結合について1つの希釈で第42日からのフェレット血清プールを評価した。N1/NB及びN2異種パネルを以下の表7に示すように相同株(N1 A/Michigan/45/2015又はN2 A/Singapore/Infimh/160019/2016)からのアミノ酸距離により選別した。
【0268】
【0269】
N1異種パネル及びNB相同株に対する1:4000希釈での結合を
図1A及び
図1Bでそれぞれ示す。N2相同パネルに対する1:1000希釈での結合を
図1Cで示す。
図1Cで示されるように、N2異種結合レベルは、異種株がより遠くなる(即ち、よりアミノ酸の相違が大きくなる)につれて低下し、最も遠い株(即ち、63アミノ酸の距離のA/Michigan(ミシガン)/84/2916)は最低のN2結合を示す。
【0270】
実施例4-免疫前フェレットモデルにおける多価HA及びNAワクチンのイメージ(images)
flu陰性HAI状態の確認後、次のウイルスインプリンティング株[1×105ffu/株;0.5mL/鼻孔(全部で1mL)]:A/NewCaledonia(ニューカレドニア)/20/1999;A/Perth(パース)/16/2009;B/HongKong(香港)330/2001;及びB/Florida(フロリダ)/4/2006を用いて、免疫前フェレットに第0日に鼻腔内感染させた。第21日に、以下の表8で示されるように、H1、H3、B/Victoria(ビクトリア)HA及びB/Yamagata(山形)HA(具体的には、株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Maryland(メリーランド)/15/2016;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)のそれぞれでのrHAを含有する4価ワクチン組成物と組み合わせたN1、N2、B/Victoria(ビクトリア)NA及びB/Yamagata(山形)NA(具体的には、株A/Michigan(ミシガン)/45/2015;A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016;B/Colorado(コロラド)/06/2017;及びB/Phuket(プーケット)/3037/2013由来)のそれぞれでのNA mRNAを含有するハイブリッド8価ワクチン組成物の免疫付与物をフェレットに投与した。PBS、NA mRNAを含有しない組み換えHA4価ワクチン(35μg/株)又はIIV HA4価ワクチン(15μg/株)の何れかを対照フェレットに投与した。ベースライン力価(ウイルス鼻腔内予備免疫の後)を確立するために第20日に血液を採取し、免疫付与後にELLA抗体応答を測定するために第42日に血液を再び採取した。結果を以下の表8で示し、各群に対する平均IC50比を以下の表9で示す。
【0271】
【0272】
【0273】
上の表8及び9で示されるように、ハイブリッド8価ワクチン組成物は、SOC2018/2019株の殆どに対して強いELLA反応を誘導した。
【0274】
さらに、HINT mNTプロトコールを使用して、HA中和力価を測定した。結果を以下の表10で示す。
【0275】
【0276】
表10で示されるように、第20日~第42日に、免疫付与後の全群において同様のHINT力価が観察され、A/Singapore(シンガポール)/Infimh160019/2016に対するHINT応答が見られた。
【0277】
また、本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。任意選択の又は任意選択により、は、後に記載される事象又は状況が起こることも起こらないこともあることを意味し、説明は、事象又は状況が起こる場合も起こらない場合も含むことを意味する。例えば、組成物が任意選択的に組み合わせを含み得る、という句は、説明が組み合わせ及び組み合わせの非存在(即ち、組み合わせの個々のメンバー)の両方を含むように、組成物が異なる分子の組み合わせを含むことも、組み合わせを含まないこともあることを意味する。範囲は、本明細書においては、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。範囲のそれぞれの両端点が、他方の端点と関連して、及び他方の端点とは独立して、の両方の意味を有していることがさらに理解されよう。本開示で引用される全ての参照文献は、その全体において本明細書によって本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】