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特表2024-540352安定性が強化された有機スズフォトレジスト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】安定性が強化された有機スズフォトレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/22 20060101AFI20241024BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07F7/22 H
G03F7/004
G03F7/004 531
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526814
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 US2022049094
(87)【国際公開番号】W WO2023081442
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,749
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511130955
【氏名又は名称】インプリア・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Inpria Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,カイ
(72)【発明者】
【氏名】テレッキー,アラン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,スティーブン ティ-
【テーマコード(参考)】
2H225
4H049
【Fターム(参考)】
2H225AB03
2H225AN11P
2H225AN80P
2H225BA01P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC01
2H225CC12
2H225CD05
4H049VN03
4H049VP01
4H049VP10
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU24
4H049VV05
4H049VV08
4H049VW01
(57)【要約】
有機溶媒と、任意選択的な添加剤と、式RSnL(式中、各Rは独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子であり、各Lは独立して、加水分解性配位子である)で表される1つ又は複数の有機スズ化合物で表される有機スズ組成物とを含む有機スズ前駆体溶液が記載されており、ここでSnの総濃度は、約0.001M~約0.5Mである。溶媒は、1~6個の炭素原子を有する線状アルコールを含むことができ、有機スズ前駆体溶液は、約100ppm~約10,000ppmの初期含水量を有することができ、ここで、有機スズ前駆体溶液は、4-メチル-2-ペンタノールを用いて形成された等価の有機スズ前駆体溶液と比べて、水の放散速度が低下されている。有機前駆体溶液は、線状短鎖アルコールであり得る適切な安定化化合物と、適切な添加剤とを選択することによって調製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、式RSnL(式中、各Rは独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子であり、各Lは独立して、加水分解性配位子である)で表される1つ又は複数の有機スズ化合物で表される有機スズ組成物とを含む有機スズ前駆体溶液であって、前記Snの総濃度は、約0.001M~約0.5Mであり、前記溶媒は、1~6個の炭素原子を有する線状アルコールを含み、前記有機スズ前駆体溶液は、約100ppm~約10,000ppmの初期含水量を有し、前記有機スズ前駆体溶液は、4-メチル-2-ペンタノールを用いて形成された等価の有機スズ前駆体溶液と比べて、水の放散速度が低下されている、有機スズ前駆体溶液。
【請求項2】
前記有機溶媒は、溶媒ブレンドを含み、前記線状アルコールは、全溶媒に対して約5vol%~約75vol%の濃度で存在する共溶媒であり、前記溶液は、約0.5cP~約20cPの室温粘度を有する、請求項1に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項3】
前記共溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、1-ペンタノール、又はこれらの混合物を含む、請求項2に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項4】
前記共溶媒は、全溶媒に対して約25vol%~55vol%の濃度で存在する、請求項2又は3に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項5】
前記共溶媒の少なくとも一部は、配位子としてRSnLに配位する、請求項2~4のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項6】
前記溶媒は、式R’OH(式中、R’は、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子を含む)で表される第1級アルコールを含み、前記溶液は、式RSnL([H]OR’)(式中、xは1若しくは2又はこれらの組合せであり、OR’は、脱プロトン化されていてもいなくてもよく、yは、荷電平衡に応じて決定される)で表される組成物を含む、請求項5に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項7】
前記初期含水量は、約100ppm~約5,000ppmに規格化される、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項8】
調製の1週間後に、測定可能な含水量は、少なくとも約100ppmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項9】
前記有機溶媒は、第2級若しくは第3級アルコール又はこれらの組合せを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項10】
前記有機溶媒は、4-メチル-2-ペンタノールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項11】
前記有機溶媒は、2つの第1級アルコールのブレンドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項12】
前記有機スズ前駆体溶液は、密封容器内で貯蔵したときに少なくとも1週間、観察可能な沈殿を有しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項13】
前記ヒドロカルビル配位子は、線状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、これらのヘテロ原子誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項14】
前記有機スズ組成物は、t-アミル、t-ブチル、イソプロピル、n-ブチル、メチル、又はこれらの組合せから選択される1つ又は複数のR配位子を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項15】
前記有機スズ組成物は、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドを含むR配位子を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項16】
前記非線状アルキル配位子は、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を含む、請求項15に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項17】
前記有機スズ組成物は、メチル配位子及びt-ブチル配位子を含むR配位子を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項18】
前記有機スズ組成物は、ジアルキルアミド、アルキルシリルアミド、アルコキシド、アルキルアセチリド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項19】
前記有機スズ組成物は、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項20】
SnL’(式中、L’は、Lと同じであるか又は異なる加水分解性配位子である)をさらに含み、前記SnL’の濃度は、全Snの20モル%までである、請求項1~19のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項21】
添加剤をさらに含み、前記添加剤は、Sn1モル当たり約0.01モル~約3モルの濃度で存在する、請求項1~20のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項22】
前記添加剤は、ジオール、トリオール、アミノアルコール、アミド、又は1,3-ジケトンを含む、請求項21に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項23】
前記添加剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、グリセロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチル尿素、又はアセチルアセトンを含む、請求項21に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項24】
前記添加剤は、式R”COOHで表されるカルボン酸を含む、請求項21に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項25】
前記前駆体溶液は、式(RSn)1214(OH)8-n(OCR”)で表される可溶性組成物を含む、請求項24に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項26】
加水分解性配位子の加水分解を可能にする条件下で請求項1~25のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液から形成されるオキソ-ヒドロキソネットワークを有する有機スズ組成物を含む、放射線パターニング可能なフィルム。
【請求項27】
前記フィルムは、完全に加水分解されたときに、式RSnO(1.5-(x/2))(OH)(式中、0<x≦3である)で表すことが可能である、請求項26に記載のフィルム。
【請求項28】
請求項21に記載の有機スズ前駆体溶液から形成される放射線パターニング可能なフィルムであって、添加剤配位子を含む、放射線パターニング可能なフィルム。
【請求項29】
有機溶媒と、添加剤と、式RSnL(式中、各Rは独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子であり、各Lは、加水分解性配位子である)で表される1つ又は複数の有機スズ化合物で表される有機スズ組成物とのブレンドを含む有機スズ前駆体溶液であって、前記Snの総濃度は、約0.001M~約0.5Mであり、前記添加剤は、Sn1モル当たり約0.01モル~約6モルの濃度で存在し、単官能性アルコールではなく、且つSn+4に配位する、有機スズ前駆体溶液。
【請求項30】
初期含水量は、約10,000ppm以下である、請求項29に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項31】
初期含水量は、約100ppm~約10,000ppmであり、前記有機スズ前駆体溶液は、密封容器内で貯蔵したときに、前記添加剤を含まない同等の有機スズ前駆体溶液よりも少なくとも1週間長い平均安定性を有する、請求項29に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項32】
調製の1週間後に、測定可能な含水量は、少なくとも約100ppmである、請求項29~31のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項33】
前記有機溶媒は、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール又はこれらの組合せを含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項34】
前記有機溶媒は、線状アルコールを含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項35】
前記添加剤は、Sn1モル当たり約0.01モル~約0.5モルの濃度で存在する、請求項29~34のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項36】
前記添加剤は、Sn1モル当たり約0.5モル~約6モルの濃度で存在する、請求項29~34のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項37】
前記添加剤の少なくとも一部は、配位子としてRSnLに配位する、請求項29~36のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項38】
前記添加剤は、ジオール、トリオール、アミノアルコール、ジケトン、又はこれらの混合物を含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項39】
前記添加剤は、1~6個の炭素原子を有する線状化合物、分枝状化合物、又は環状化合物である、請求項29~37のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項40】
前記添加剤は、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸又はこれらの組合せを含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項41】
前記添加剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、グリセロール、トリエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチル尿素、又はアセチルアセトンを含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項42】
前記ヒドロカルビル配位子は、線状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、これらのヘテロ原子誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項29~41のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項43】
前記有機スズ組成物は、t-アミル、t-ブチル、イソプロピル、n-ブチル、メチル、又はこれらの組合せから選択されるR配位子を含む、請求項29~41のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項44】
前記有機スズ組成物は、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドを含むR配位子を有する、請求項29~41のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項45】
前記非線状アルキル配位子は、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を含む、請求項44に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項46】
前記有機スズ組成物は、メチル配位子及びt-ブチル配位子のブレンドを含むR配位子を有する、請求項29~41のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項47】
前記有機スズ組成物は、ジアルキルアミド、アルキルシリルアミド、アルキルオキシド、アルキルアセチリド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項29~46のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項48】
前記有機スズ組成物は、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項29~46のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項49】
SnL’(式中、L’は、Lと同じであるか又は異なる加水分解性配位子である)をさらに含み、前記SnL’の濃度は、全Snの20モル%までである、請求項29~48のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液。
【請求項50】
請求項29~49のいずれか一項に記載の有機スズ前駆体溶液から形成される放射線パターニング可能なフィルムであって、オキソ-ヒドロキソネットワークを含む、放射線パターニング可能なフィルム。
【請求項51】
前記オキソ-ヒドロキソネットワークは、加水分解によって形成される、請求項50に記載のフィルム。
【請求項52】
前記フィルムは、完全に加水分解されたときに、式RSnO(1.5-(x/2))(OH)(式中、0<x≦3である)で表すことが可能である、請求項50又は51に記載のフィルム。
【請求項53】
安定化された有機スズ前駆体溶液を調製するための方法であって、有機スズ前駆体組成物を有機溶媒及び安定化化合物と混合して、約0.001M~約0.5Mのスズ濃度を有する有機スズ前駆体溶液を形成することを含み、前記有機スズ前駆体組成物は、式RSnL(式中、各Rは独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子であり、各Lは、加水分解性配位子である)で表される1つ又は複数の有機スズ化合物を含み、前記有機溶媒は、有機化合物を含み、且つ混合前に約10,000ppm以下の含水量を有し、前記安定化化合物は、全溶媒に対して少なくとも約5vol.%の濃度の1~6個の炭素原子を有する線状アルコールと、単官能性アルコールではなく、且つSn+4に配位する、Sn1モル当たり約0.01モル~約6モルの濃度の添加剤と、又はこれらの組合せを含む、方法。
【請求項54】
前記安定化化合物は、前記安定化化合物を含まずに4-メチル-2-ペンタノール溶媒を用いて形成される等価の溶液と比べて、より遅い水の消費速度をもたらす、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記有機溶媒は、第2級若しくは第3級アルコール又はこれらの組合せを含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記安定化化合物は、ジオール、トリオール、アミノアルコール、アミド、又は1,3-ジケトンを含む、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記添加剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、グリセロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチル尿素、又はアセチルアセトンを含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記添加剤は、カルボン酸を含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒドロカルビル配位子は、線状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、これらのヘテロ原子誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記有機スズ前駆体組成物は、t-アミル、t-ブチル、イソプロピル、n-ブチル、メチル、又はこれらの組合せから選択されるR配位子を含む、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記有機スズ前駆体組成物は、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドを含むR配位子を有する、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記有機スズ前駆体組成物は、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項53~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記有機スズ前駆体組成物を混合の前に精製することをさらに含む、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記精製は、分別蒸留及び/又は限外ろ過を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記有機溶媒の含水量を混合の前に約10,000ppm以下に規格化することをさらに含む、請求項53~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記有機溶媒は、約100ppm~約5000ppmの規格化された含水量を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記有機溶媒は、約100ppm~約1000ppmの規格化された含水量を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記安定化された有機スズ前駆体溶液の測定可能な含水量は、混合の1週間後に少なくとも約100ppmである、請求項53~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記安定化された有機スズ前駆体溶液の室温粘度は、約0.5cP~約50cPである、請求項53~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記安定化された有機スズ前駆体溶液は、密封容器内で貯蔵したときに、前記安定化化合物を含まない同等の有機スズ前駆体溶液よりも少なくとも1週間長い平均安定性を有する、請求項53~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
有機スズ前駆体溶液を形成するための方法であって、溶媒組成物と、式RSnL(式中、各Rは独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子であり、各Lは独立して、加水分解性配位子である)で表される1つ又は複数の有機スズ化合物で表される有機スズ組成物とを混合することを含み、前記Snの総濃度は、約0.001M~約0.5Mであり、前記溶媒組成物は、1~6個の炭素原子を有する線状アルコール、添加剤又はその両方を含み、前記溶媒組成物は、Sn+4とのより効果的な配位子形成に起因して、4-メチル-2-ペンタノール溶媒を用いて形成された等価の有機スズ前駆体溶液と比べて微量水分からの加水分解を低減するように選択される、方法。
【請求項72】
より遅い水の消費速度は、前記Sn+4とのより効果的な配位子形成に起因するものである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記有機スズ前駆体溶液は、約100ppm~約10,000ppmの初期含水量を有する、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記初期含水量は、規格化されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記選択された溶媒組成物は、第2級若しくは第3級アルコール又はこれらの組合せをさらに含む、請求項71~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記混合は、前記第2級若しくは第3級アルコール又はこれらの組合せと、前記有機スズ組成物とを混合して第1の混合物を形成することと、続いて、前記第1の混合物と、線状アルコール、添加剤、又はその両方とを混合することとを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記添加剤は、ジオール、トリオール、アミノアルコール、アミド、又は1,3-ジケトンを含む、請求項71~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記添加剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、グリセロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチル尿素、又はアセチルアセトンを含む、請求項71~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記添加剤は、カルボン酸を含む、請求項71~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記ヒドロカルビル配位子は、線状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、これらのヘテロ原子誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項71~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記有機スズ組成物は、t-アミル、t-ブチル、イソプロピル、n-ブチル、メチル、又はこれらの組合せから選択されるR配位子を含む、請求項71~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記有機スズ組成物は、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドを含むR配位子を有する、請求項71~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記有機スズ組成物は、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する、請求項71~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記有機スズ組成物を混合の前に精製することをさらに含む、請求項71~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記精製は、分別蒸留及び/又は限外ろ過を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記選択された溶媒組成物の含水量を混合の前に約10,000ppm以下に規格化することをさらに含む、請求項71~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記選択された溶媒組成物は、約100ppm~約5000ppmの規格化された含水量を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記選択された溶媒組成物は、約100ppm~約1000ppmの規格化された含水量を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記有機スズ前駆体溶液の測定可能な含水量は、混合の1週間後に少なくとも約100ppmである、請求項71~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記有機スズ前駆体溶液の室温粘度は、約0.5cP~約50cPである、請求項71~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記有機スズ前駆体溶液は、密封容器内で貯蔵したときに、前記安定化化合物を含まない同等の有機スズ前駆体溶液よりも少なくとも1週間長い平均安定性を有する、請求項71~90のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Additive-Enhanced Organotin Photoresist Compositions」という表題のJiangらの2021年11月8日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第63/276,749号(参照によって本明細書中に援用される)に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、リソグラフィパターニングのための放射線パターニング可能な材料を形成するのに適した有機スズ前駆体溶液に関し、この溶液は、安定化化合物、共溶媒及び/又は添加剤を含み、配位子の加水分解を低減して溶液を安定化させる。
【背景技術】
【0003】
半導体製造プロセスは一般に、デバイスを製造するために、多数の異なる材料層を繰り返し処理してパターニングすることを含む。フォトレジストと呼ばれる感光性材料を用いて初期パターンが形成され、次にそれが下側の基板に転写されるフォトリソグラフィーの使用により、各層及び材料の初期パターニングが可能になる。このプロセスは一般に、所望のデバイス構造が実現されるまで何度も繰り返される。したがって、フォトレジストは、半導体デバイスの製造で使用される重要な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】4-メチル-2-ペンタノール溶媒及び種々の割合のn-プロパノール共溶媒を用いて調製された有機スズ溶液の一連の119Snスペクトルであり、各溶媒組成物は、300ppmの水に規格化される。
図2】室温で30日間貯蔵した後の図1の有機スズ溶液の一連の119スペクトルである。
図3】4-メチル-2-ペンタノール溶媒及び種々の割合のn-プロパノール共溶媒を用いて調製された一式の有機スズ溶液について、配合後の日数に対する測定含水量のプロットであり、各溶媒組成物は、300ppmの水に規格化される。
図4】4-メチル-2-ペンタノー溶媒及び種々の割合のn-プロパノール共溶媒を用いて調製された一式の有機スズ溶液について、配合後の日数に対する測定含水量のプロットであり、各溶媒組成物は、1000ppmの水に規格化される。
図5】1000ppmの水に規格化された4-メチル-2-ペンタノール溶媒及び種々の濃度のエチレングリコール添加剤を用いて調製された一式の有機スズ溶液について、配合後の日数に対する測定含水量のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
貯蔵寿命を改善するため、そして放射線パターニング組成物としての一貫した使用を容易にするために有機スズ化合物の溶液を安定化する、添加剤及び/又は溶媒組成物、例えば、任意選択的に別の溶媒成分と共に第1級アルコールを含む溶媒が発見された。含水量は、微量水分の結果として起こる加水分解の程度を示し得るので、有機スズ前駆体溶液の特性は、初期含水量に対する溶液の含水量の経時的な変化に関して評価することができる。有機スズ組成物は、高解像度パターニング組成物として機能することが実証されており、パターニング組成物の安定性のさらなる改善は、生産性の高い組成物の有用な範囲をさらに拡張する見込みがある。フォトパターニング組成物の層の形成は、有機スズフォトレジスト前駆体溶液を使用する溶液コーティングプロセスを用いて形成することができる。適切に選択された溶媒及び添加剤はいずれも、望ましい組成物の貯蔵寿命を改善するため、そして十分な安定性によりフォトパターニングに利用され得る実用的な前駆体組成物の範囲を拡張するために有用であることが見出された。溶媒ブレンドは、粘度などの他の溶液パラメータを設定する柔軟性を有しながら、安定化機能を引き出すために特に望ましいことがある。本明細書で使用される場合、溶媒ブレンド中の共溶媒は一般に、溶媒和した有機スズ(IV)化合物のクラスター形成を阻害するために望ましい配位子を提供する液体である。非分枝状第1級アルコール(線状アルコール)は、溶媒又は共溶媒としてこの目的を果たすことが見出されている。添加剤は一般に、より少ない量、例えば有機スズ前駆体により提供されるスズイオンと同じ桁のモル数で添加されるが、添加剤はモル当たりの基準で大幅に高い倍数であってもよい。添加剤は、溶液中の有機スズ化合物を安定化するために溶媒配位子と競合する代替の配位子を提供することができる。安定化プロセスの提唱されるメカニズムは以下で議論されるが、理論によって限定されることは望まれない。メカニズムにかかわらず、安定化化合物、(共)溶媒及び/又は添加剤は、処理された放射線感受性コーティングの組成にも影響を与える可能性があり、潜在的に、コーティングの照射部分と非照射部分との間のパターニングのためのコントラストを増大させると共に、欠陥を減少させ得る。安定化化合物の分子は、配位子としてスズに配位すると考えられる。具体的には、共溶媒及び/又は添加剤分子は、配位子としてスズ(IV)イオンの周りに配位して、加水分解に対して化合物を安定化することができる。一般に、処理及び現像は、変更することなく行うことができる。
【0006】
(共)溶媒又は添加剤の機能は本質的に同等であると考えられるが、メカニズムは一般に、具体的には解明されていない。濃度は一般に、配位子の平衡に影響を与えるだけであり、一般に基本的なメカニズムを変更しないと考えられる。スズIV(Sn+4)は、6個までの配位子を受容できると考えらえる。1つの炭素-スズ結合及び3つの負に帯電した配位子を有する場合、その基本構造は、2つのさらなる配位子を受容する能力を示唆する。溶媒は、1つ又は2つのさらなる配位子に対応するいくらかの配位子強度を提供できる可能性がある。本明細書に記載されるように、微量水分による水和を阻害するための共溶媒は、線状アルコール、n-HOR(式中、R=(CHCH、n=0~5)である。本明細書に記載される前駆体溶液において、線状アルコールは、水配位子のSnへの結合を遅延又は阻害することができ、この結果、有利に、水酸化物配位子を形成するためのアルコキシ配位子の加水分解が遅延され得る。基板上で溶液をパターニング組成物に処理するための所望のレオロジーを提供するために、線状アルコールは、第2級又は第3級アルコールなどの別の溶媒とブレンドすることができる。実施例では、n-プロパノールとブレンドした4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール又はMIBCとしても知られている)が使用される。4-メチル-2-ペンタノールは、半導体処理に便利な特徴のために、本出願人の有機スズ製品開発で選択された溶媒である。この理由から、4-メチル-2-ペンタノールは、安定化関連の特性を評価するための基準溶媒として使用される。
【0007】
添加剤は、スズ配位子殻を完成させ、恐らくより強力な配位子結合強度で溶媒配位子を置換するために、代替の配位子を提供することができる。適切な添加剤には、カルボン酸及びそのハロゲン化誘導体が含まれ、これらは、ある程度の安定化を提供することが示されている。いくつかの実施形態では、複数の官能基を有する多座配位子添加剤を添加することが望ましいこともある。各多座配位子はスズとの複数の結合を形成して、配位子の追加の安定性を提供することができる。二座配位子には、例えば、ジオール、トリオール、ジケトン、アミノアルコール、及びアミド(例えば、ジメチル尿素)が含まれる。以下の実施例の結果は、これらの添加剤が、微量水分による加水分解を阻害することによって溶液の安定性を増大させ得ることを実証する。溶媒和したスズ部分は錯体形成を起こしやすいので、より強力な配位子結合を有することにより、加水分解並びにそれに対応する錯体形成及び錯体凝集からの沈殿の可能性が制限され得る。
【0008】
しかしながら、有機スズ組成物は溶液中で加水分解及び縮合する性向があるため、溶液中の望まれない微粒子及び関連のコーティング欠陥が時間と共に形成され得る。例えば、4配位Sn原子を有する表面上は単量体の(溶媒和)モノ有機スズ前駆体の加水分解は、一般に、5配位及び6配位Sn原子を有するオキソ/ヒドロキソクラスター、例えば式[(RSn)1214(OH)](OH)で表される周知の12量体「フットボール」クラスターの形成を引き起こし得る。このようなクラスターは、加水分解及び縮合プロセスを経てオリゴマー化し、大量の沈殿物及び固体を形成し続けることができる。したがって、有機スズフォトレジスト溶液中の加水分解及び縮合プロセスを妨害することが望ましい。有機溶媒中の有機スズ組成物の加水分解は、適切な安定化化合物の存在下で妨害され得ることが発見された。溶液中での水との反応は、有機スズ種の重合を引き起こしてより大きいクラスターを形成するので一般に望ましくなく、このクラスターは、溶液中で凝集及び/又は沈殿する可能性があり、前駆体組成物の使用中に、ウェハトラックにおける固体形成、又はウェハ上若しくはレジストコーティング内の欠陥を引き起こし得る。沈殿物を形成しない溶液中で形成された粒子(懸濁粒子など)は、それでもなお、その後のコーティングに移行される可能性があり、次に、コーティング欠陥及び/又はパターニング欠陥をもたらし得る。
【0009】
理論によって制限されることは望まないが、適切な安定化化合物は、Sn原子と配位及び/又は錯体形成して、加水分解抵抗性種を形成することができるが、これが起こるメカニズムは様々であり得ると考えられる。さらに、二座配位添加剤は、Snと、添加剤分子の2つ以上の反応基(例えば、ジオールの2つの-OH基)との間の結合を形成することによって加水分解を阻害し、それにより、加水分解を妨害するエネルギー的利点及びエントロピー的利点の両方を提供することができると考えられる。一般に、安定化化合物は、加水分解性配位子の代わりになることができ、及び/又は追加の配位子を形成して5配位又は6配位Snをもたらすことができる。
【0010】
より高い配位数を形成するためのRSn部分の反応性及び性向は一般に、R配位子の同一性によっても影響され得る。例えば、より大きくより嵩高いR基は、嵩高いアルコール及び他の種がSn原子と反応する、錯体形成する、及び/又は配位することを立体的に妨害することができる。以下の実施例に示されるように、4-メチル-2-ペンタノールなどの嵩高い第2級アルコールによって溶媒和された有機スズ前駆体は一般に、水、メタノール、又はn-プロパノールなどの小分子反応物との反応及び置換を受けやすい4配位Sn原子を含む。しかしながら、水以外の分子がクラスターを形成し、6配位Sn環境を有する種を形成する場合、結果として得られる種は可溶性のままである。理論によって制限されることは望まないが、適切な非水分子、例えば、Snの配位数を満たすことができるものと、RSn部分との配位及び/又は錯体形成は、有機スズ種の縮合及びオリゴマー化する性向を妨害すると考えられる。縮合に対する有機スズ種の性向を妨害することにより、フォトレジスト溶液及びそれから得られるコーティングの均質性を改善することができる。したがって、単量体有機スズ前駆体と配位及び/又は錯体形成して、5配位又は6配位Sn環境を有する可溶性生成物を形成することができる添加剤及び溶媒が望ましいと考えられる。
【0011】
調合物全体は一般に、配位子の同一性、配位子の配置、配位子の何らかの架橋の可能性、及び一時的又は非一時的なクラスタリングによって区別され得る広範囲の潜在的な種間の平衡を含み得る。溶液中で、任意の特定の時点の種は、特定の種の様々な平衡のバランスに依存し、これは、極めて複雑な関係をもたらす相互接続を含むことができる。一般に、これらの複雑さは、前駆体溶液の意図される目的のための機能性に関する以外は重要ではない。したがって、有機スズ部分の沈殿により組成物は処理不可能になり得るので、主要な問題は、溶液中にこれらの部分を維持することである。結果が以下に示すように、前駆体溶液の経時的な変化の測定可能な兆候があり得る。特に、たとえ阻害されたとしても、ある程度の緩やかな水和が起こり得る。一部の系は非常に長い期間安定しているが、他の系は、より短い期間で沈殿し得る。適切な溶媒及び添加剤を選択する目的は、適切な商業的貯蔵寿命を超えるように、不安定期間を十分に将来まで引き延ばすことである。
【0012】
水は、前駆体溶液を不安定化させる水和をもたらす可能性があり、水を低レベルまで低減することは可能であるが、実質的にゼロの量に低減することは実際的ではない。微量の水は、種々の潜在的な供給源から導入され得るので、水の問題に対処するための効果的な方法は、水を低レベルに制御すること、そしてゼロでない低レベルの水に対して組成物を強靭にすることである。本発明の目的は、合理的な商業的使用の下で所望の貯蔵寿命を提供するためにこの強靭性を支持することである。本出願人は以前に、一貫した結果のために水分レベルを調整することを検討した。この水の調整は、参照によって本明細書中に援用される「Stable Solutions of Monoalkyl Tin Alkoxides and Their Hydrolysis and Condensation Products」という表題のJiangらの米国特許第11,300,876号明細書(以下、第’876号特許)に記載されている。一般に、本明細書に記載される安定化化合物で強化された有機スズ前駆体溶液を形成するために使用される溶媒の含水量を調整(すなわち、規格化)することが望ましいことがある。以下にさらに記載されるように、第’876号特許の教示は、本明細書に記載される安定性のための添加剤及び共溶媒の使用と組み合わせることができる。
【0013】
製造コストを削減するため、そして半導体デバイス製造の歩留まりを改善するために、フォトレジスト性能を改善することが所望される。有機金属材料、特に有機スズ組成物に基づく材料は、高解像度且つ及び高忠実度パターンのパターニングを可能にする高性能フォトレジストであることが示されている。有機スズフォトレジストは、「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions」という表題のMeyersらの米国特許第9,310,684B2号明細書(以下、第’684号特許)、「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions and Corresponding Methods」という表題のMeyersらの米国特許第10,642,153B2号明細書、及び「Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions,Precursors,and Patterning」という表題の米国特許第10,228,618B2号明細書(これらは全て、参照によって本明細書中に援用される)に広く記載されている。一般に、これらの有機スズフォトレジスト材料は、無傷のSn-C結合と共に、Sn-OH及びSn-O-Sn結合を介してSn原子がオキソ-ヒドロキソネットワークに結合されたコーティングとして堆積される。無傷のSn-C結合は、拡張された高密度のネットワーク形成を防止し、したがって現像液中での適切な溶解度を維持する。有機スズコーティングを極端紫外線(EUV)、紫外線(UV)、電子ビームなどの適切な放射線源に曝露すると、Sn-C結合の切断が起こり、曝露領域のさらなる高密度化が可能になり、それにより、曝露領域と非曝露領域との間の溶解度コントラストが増大される。このようにして、現像後にコーティングのパターニングを実現することができる。
【0014】
様々な有機スズ組成物が効果的な放射線パターニング材料であり得るが、単一の炭素-スズ結合を有する化合物は、商業的な状況でパターニングのために望ましい処理を提供することが分かっており、以下の議論では、これらのモノ有機スズ組成物に焦点が合わせられる。したがって、有機スズ前駆体組成物は、適切な条件下で水又は他の適切な試薬により加水分解されてモノヒドロカルビルスズオキソ-ヒドロキソパターニング組成物を形成することができる組成物の群(RSnL)を含むことができ、これは、完全に加水分解されたときに、式RSnO(1.5-(x/2))(OH)(式中、0<x≦3である)で表すことができる。一般に、以下にさらに記載されるように、Rはヒドロカルビル配位子であり、Lは加水分解性配位子である。加水分解を実施して、その場で、例えば堆積中及び/又は最初のコーティング形成後に、オキソ-ヒドロキソ組成物を形成することは便利であり得る。特に、トリアミド(L=アミド)及びトリアルコキシド(L=アルコキシド)は、パターニングのための放射線感受性コーティングを形成するために加水分解条件下で使用することができ、現在の市販の製品は、トリアルコキシドなどのトリヒドロカルビルオキシドに基づいている。用語は加水分解性配位子の慣習に従うが、これらは、潜在的な不飽和結合又はヘテロ原子置換による種々の置換の有機置換基を含み得ることに注意すべきである。加水分解性配位子を有する種々の前駆体化合物は一般に、前照射プロセスを通してR配位子をスズに運び、この観点で合成される。加水分解性配位子には、例えば、アルコキシド(ヒドロカルビルオキシド)、アセチリド又はアミド部分が含まれる。これらの組成物は、広範囲のR配位子を用いて合成することができる。例えば、参照によって本明細書中に援用される「Methods to Produce Organotin Compositions with Convenient Ligand Providing Reactants」という表題のEdsonらの米国特許出願公開第2022/0064192号明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態では、参照によって本明細書中に援用される「Monoalkyl Tin Trialkoxides and/or Monoalkyl Tin Triamides With Low Metal Contamination and/or Particulate Contamination,and Corresponding Methods」という表題のClarkらの米国特許出願公開第2020/0241413号明細書に記載されるように、有機スズ前駆体化合物は、分別蒸留などの適切な技術によって合成後に精製することができる。
【0015】
Rは炭素-スズ結合を形成し、ここで、スズに結合した炭素はsp又はsp混成であり、Rは、炭素でも水素でもないヘテロ原子を含むことができる。上記のように、便宜上、そして当該技術分野における一貫性のために、Rは互換的に、アルキル配位子、有機配位子又はヒドロカルビル配位子と呼ぶことができる。配位子の特性に基づいて、スズに結合するsp混成炭素はアセチリド配位子を形成し、これは、L配位子に分類されるが、Rヒドロカルビル配位子には分類されない。いくつかの実施形態では、アルキル配位子は、一部のパターニング組成物にとって望ましいことがあり、ここで、化合物は一般に、RCSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)(式中、R、R及びRは独立して、水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)として表すことができる。同様に、アルキル配位子Rのこの表示は、一般にRCSn(L)を有する他の実施形態にも同様に適用可能であり、Lは、アルコキシド(ヒドロカルビルオキシド)、アセチリド又はアミド部分などの加水分解性配位子に対応する。いくつかの実施形態では、R及びRは、環状アルキル部分を形成することができ、Rも環状部分の他の基に結合し得る。適切な分枝状アルキル配位子は、例えば、イソプロピル(R及びRはメチルであり、Rは水素である)、tert-ブチル(R、R及びRはメチルである)、tert-アミル(R及びRはメチルであり、Rは-CHCHである)、sec-ブチル(Rはメチルであり、Rは-CHCHであり、Rは水素である)、ネオペンチル(R及びRは水素であり、Rは-C(CHである)、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、及びシクロプロピルであり得る。適切な環状基の例としては、例えば、1-アダマンチル(第3級炭素において金属に結合した-C(CH(CH)(CH又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)及び2-アダマンチル(第2級炭素において金属に結合した-CH(CH)(CH(CH)(CH)又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)が挙げられる。他の実施形態では、ヒドロカルビル基は、アリール若しくはアルケニル基、例えば、ベンジル若しくはアリル、又はアルキニル基を含み得る。他の実施形態では、ヒドロカルビル配位子Rは、C及びHのみからなり、1~31個の炭素原子を含有する任意の基を含み得る。要約すると、スズに結合した適切なアルキル基のいくつかの例としては、例えば、線状若しくは分枝状アルキル基(i-Pr((CHCH-)、t-Bu((CHC-)、Me(CH-)、n-Bu(CHCHCHCH-))、シクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル)、オレフィン基(アルケニル、アリール、アリル)、又はアルキニル基、又はこれらの組合せが挙げられる。さらなる実施形態では、適切なR基は、シアノ、チオ、シリル(及びゲルマニウム類似体)、エーテル、ケト、エステル、若しくはハロゲン化基、又はこれらの組合せを含むヘテロ原子官能基で置換されたヒドロカルビル基を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、有機スズ組成物は、異なるR基を有し、それに応じて同じ及び/又は異なるL基が結合した有機スズ化合物の混合物を含む。いくつかの実施形態では、有機スズ組成物は、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドを含むR配位子を有する。いくつかの実施形態では、線状アルキル配位子及び非線状アルキル配位子のブレンドは、分枝状アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を含む。いくつかの実施形態では、有機スズ組成物は、メチル配位子及びt-ブチル配位子をそれぞれ有する別個の有機スズ化合物の混合物である。いくつかの実施形態では、前駆体組成物は、同じ及び/又は異なるL基を有する有機スズ化合物のブレンドを含む。いくつかの実施形態では、有機スズ組成物は、ジアルキルアミド、アルキルシリルアミド、アルキルオキシド、アルキルアセチリド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する別個の有機スズ化合物を含む。他の実施形態では、有機スズ組成物は、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、ジメチルアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、トリメチルシリルアミド、又はこれらの組合せを含むL配位子を有する別個の有機スズ化合物を含む。異なる有機スズ化合物のブレンドが使用される実施形態において、別個の有機スズ化合物のいずれか1つは、いくつかの実施形態では全有機スズモル数の約1モル%~約99モル%、他の実施形態では全有機スズモル数の約5モル%~約95モル%、他の実施形態では全有機スズモル数の約10モル%~約90モル%、さらなる実施形態では全有機スズモル数の約15モル%~約85モル%を構成することができる。以下の実施例において、2つの別個のアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物の混合物を含む有機スズ前駆体溶液が実証される。本技術分野において慣習的であるように、ヒドロカルビル基は不飽和結合、アリール基、ヘテロ原子などを有し得るにもかかわらず、この基をアルキル基と称することもある。
【0017】
いくつかの実施形態では、前駆体組成物は、ヒドロカルビル配位子を有するR-Sn部分と、SnL’化合物、すなわち、金属に直接結合したアルキル配位子を持たず、加水分解性配位子に対応するL’を有するスズ化合物との混合物を含む。いくつかの実施形態では、L’は、上記のようにLと同じであり得る。本明細書に記載される添加剤及び/又は溶媒ブレンドは、SnL’化合物のスズ(IV)イオンに配位して、SnL’化合物を加水分解に対して安定化することもできる。一般に、これらの混合物は、少なくとも約0.5モルパーセントのSnL’成分、いくつかの実施形態では少なくとも約1モルパーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約10モルパーセント、さらなる実施形態では少なくとも約25モルパーセントのSnL’成分を含む。他の実施形態では、前駆体組成物は、式RSnLで表される1つ又は複数の有機スズ化合物と、全Snに対して約30モルパーセントまで、約20モルパーセントまで、約10モルパーセントまで、又は約1モルパーセントまでのSnL’とを含む。当業者は、上記の明示的な範囲内の混合物成分のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、前駆体組成物の成分は、例えばコーティングの形成の前に、溶液中で混ぜ合わせることができ、固体ブレンドとして別々に形成されなくてもよい。他の実施形態では、前駆体組成物の成分は、前駆体溶液を形成するために、溶解前に固体として混合されてもよい。以下の実施例において、アルキルスズ(alkytin)トリアルコキシド及びスズテトラアルコキシドの混合物を含む有機スズ前駆体溶液が実証される。
【0018】
対象となる有機スズ前駆体化合物のほとんどは室温で液体であるが、可溶性固体も同様に処理することができる。以下に記載されるように、堆積及び溶媒の除去の際に、前駆体は加水分解されて、乾燥固体材料になることができる。有機スズ前駆体は液体中に溶解されて、前駆体溶液を形成する。一般に、溶媒は溶質と相互作用して溶質を溶液中に維持し、イオン性金属種の場合、一般に、錯体相互作用が利用可能である。スズ+4(Sn+4又はSnIV)は、配位子形成のために6配座であり得る。精製された(純粋な)化合物は一般に4配位子を有するが、潜在的にいくつかの配位子は架橋することができる。いずれかの配位子を置換しなくても、前駆体化合物は、溶媒に結合することができる2つの自由な配位子結合位置を有し得る。適切な共溶媒が存在する場合、共溶媒、例えば線状アルコールは、これらの配位子部位に効果的に結合し得ない代替の共溶媒と、これらの配位子結合位置を競合することができる。線状アルコールは一般に、溶液の安定化を提供するために水を含む他の共溶媒と競合するのに効果的である。
【0019】
また、架橋配位子が利用可能であれば、スズ部分は溶液中でクラスターを形成することができ、したがって、錯体形成は、溶液の安定性に関して、別の複雑な問題であり得る。いくつかの安定な3量体クラスターは、「Organotin Clusters,Solutions of Organotin Clusters,and Application to High Resolution Patterning」という表題のCardineauらの米国特許第11,098,070号明細書に記載されており、安定な12量体クラスターは、「Tin Dodecamers and Radiation Patternable Coatings with Strong EUV Absorption」という表題のCardineauらの米国特許第11,392,028号明細書に記載されており、これらはいずれも参照によって本明細書中に援用される。これらのクラスターは、酸素原子、水酸化物イオン及び/又はカルボン酸イオンを架橋配位子として有することができる。これら及び他の既知の安定スズクラスターの特定により、前駆体溶液中で、溶液の安定性に影響を与え得る一時的なクラスターを形成する可能性が指摘される。例えば、クラスターの凝集は、微粒子の核形成をもたらし得る。
【0020】
一般に、有機金属溶液は非常に複雑であり、種々の平衡を含み得る。既知の化学現象のいくつかを使用して、観察された特性を推定することができる。溶液構造の詳細を調べる能力に制約があることは、描写が必然的に不完全であることを暗示する。この不完全さは、前駆体溶液を安定化するために本明細書に記載される添加剤及び/又は共溶媒を使用して達成された、プロセスをかなりの程度まで制御する能力又は成功を損なうことはない。
【0021】
溶液中のスズ組成物の望ましくない縮合は一般に水に関連するが、水が不安定性の唯一の原因ではない可能性がある。水は、処理中に低レベルに保たれるように設計され得るが、大気、設備、反応物中の汚染物などを含み得る周囲環境からの吸収のために、水を完全に除去することは極めて困難であるか、又は不可能であろう。商業的な処理における一貫性のために、低水分レベルにおいて達成可能な範囲内で安定しているシステムを設計することが有利である。いくらかの水の存在は、配位子を加水分解して、スズ原子間を架橋することができる水酸化物又は酸素配位子を導入する傾向を促進する。潜在的に架橋する配位子の存在は、クラスター形成と、クラスター凝集による潜在的な縮合とを促進し得る。これらの溶液における錯体平衡のために、上記のように、存在する水の量は平衡をシフトさせる傾向があり得る。本明細書に記載される添加剤及び/又は共溶媒は、加水分解から平衡をシフトさせ、溶液を安定化させる傾向がある。安定性の尺度は、水との反応に対する抵抗性に関して見出されており、これは、溶液中に残存する測定可能な遊離水の量によって推定することができるが、平衡の複雑さのために、存在する種の詳細については説明されない。溶液中の測定可能な遊離水の消費の減少又は停止は、適切な溶媒及び/又は添加剤の使用によって達成することができ、水消費量の経時的な変化は、初期スズ種の組成及び濃度が同じである4-メチル-2-ペンタノール溶媒基準に対して評価することができる。
【0022】
上記のように、単量体RSnL種と水との反応、すなわち加水分解は一般に、時間と共にオリゴマー有機スズオキソ-ヒドロキソクラスターを引き起こす。したがって、有機スズオキソ-ヒドロキソ種は溶液中でうまく処理されて、第’684号特許に記載されるような放射線パターニング材料を形成することができるが、多くのオキソ-ヒドロキソ有機スズクラスターは溶解度が低く、したがって、溶液中の有機スズ前駆体と水との制御されない反応は、微粒子形成及び不溶性種の沈殿/凝集を引き起こし得る。水は一般に、細心の注意を払わない限り、ほとんどの溶媒中にある程度の濃度で存在する。溶媒による水分吸収は、製造、ろ過及び他の処理中、並びに通常の使用中に空気にさらされると、周囲条件下で生じ得る。周囲空気からの水はまた容器壁を浸透し、溶媒の含水量の増大につながり得る。ウェハトラックなどのコーティング装置に設置される場合、有機スズフォトレジスト溶液は一般に、水浸透の影響を受けやすい可能性がある構成材料の種々のライン、チューブ、タンク、ポンプ、及び他の設備を通して配管される。したがって、溶液中での不利な加水分解に対して抵抗性又は耐性がある有機スズフォトレジスト溶液を調製することが望ましい。
【0023】
一貫した処理結果を達成するために、処理に使用される溶媒の含水量が比較的低いレベルであったとしても、その含水量を制御するのが有益であることが分かった。いくつかの実施形態では、有機スズレジスト溶液は水規格化(water-normalized)される、例えば、上記で言及された第876号特許に記載されるように特定の量の水を含むことが望ましいことがある。有機スズトリアルコキシド及びトリアミドなどの一般的な有機スズ前駆体は容易に加水分解し、異なる量の水との反応により、可変的な種の分布が得られる。したがって、特定の濃度の水を有機スズレジスト溶液組成物に添加すると、加水分解種及び非加水分解種の同様の分布の形成を促進することにより、バッチ間再現性を改善することができる。しかしながら、このような水規格化された有機スズレジスト溶液の沈殿、凝集、及び/又は微粒子形成に関して溶液の安定性を可能にする、及び/又は強化することが望ましい。適切な安定化化合物は、水規格化有機スズレジスト溶液中で、継続的な加水分解及び/又は縮合が起こることを効果的に防止することができる。以下の実施例において、適切な量の添加剤又は共溶媒の添加により、有機スズレジスト溶液の貯蔵寿命の改善及び高水分レベルでの沈殿に対する抵抗性が実証される。
【0024】
原則として、サンプルの含水量を評価するために種々の方法を使用することができるが、カールフィッシャー滴定は効果的で実用的なアプローチである。カールフィッシャー(KF)滴定装置は、迅速且つ自動化された評価のために市販されている。KF滴定装置は一般に、Mettler-Toledo LLC(OH,USA)、Metrohm AG(Switzerland)、及びCSC Scientific Company(VA,USA)などの商業的な供給業者から入手可能である。サンプルの遊離水の評価は、安定化化合物で強化された組成物と、同様の有機スズ濃度を有する非安定化化合物強化組成物とにおいて遊離水の濃度を比較することによって、所与の安定化化合物の有効性を評価するのに有用であり得る。理論によって制限されることは望まないが、一般に、適切な安定化化合物を含む有機スズ溶液組成物の場合、非安定化化合物強化組成物と比較して、対応する安定化化合物強化組成物中により多くの遊離水が一般に存在すると考えられる。水は加水分解中に消費されるので、所与の有機スズ前駆体の場合、より多くの遊離水を有する安定化化合物強化有機スズ溶液は、非安定化化合物強化有機スズ溶液と比較して、より少ない加水分解が生じたことを意味する。サンプル中の遊離水の濃度は、測定含水量とも称される。加水分解中に消費された水の量は、初期含水量から測定含水量を差し引いた値として計算することができる。
【0025】
溶液中の有機スズ組成物の制御されない加水分解を妨害することが一般に望ましいが、堆積中及び/又はコーティング処理中に有機スズ組成物を加水分解及び縮合させることも一般的に望ましい。例えば、有機スズオキシド/ヒドロキシドコーティングの形成は一般に、スピンコーティング及び/又は蒸着プロセス中に、RSn(OR)、RSn(NR、及び/又は関連の有機スズクラスターなどの加水分解性有機スズ組成物の加水分解を含む。スピンコーティング中、溶媒は基板から急速に蒸発し、有機スズ組成物は、急速に加水分解して、有機スズオキソ/ヒドロキソネットワークが得られる。したがって、加水分解を妨害する安定化化合物は、有機スズオキソ/ヒドロキソネットワークを実現するのに十分な有機スズ前駆体の加水分解及び縮合を可能にすることが望ましい。溶液の安定性及び処理可能性のこの達成は、所望の段階で、使用前に過度に加水分解することなく、加水分解を可能にするために配位子形成と強度とのバランスを必要とする。
【0026】
急速な堆積プロセスは、有機スズオキソ/ヒドロキソネットワークに捕捉及び/又は取り込まれた様々な種をもたらすことができ、微粒子などの望ましくない種が、有機スズオキソ/ヒドロキソネットワークに取り込まれる又は埋め込まれる可能性がある。粒子の取込みはコーティング内の不均質性につながり、コーティング欠陥として現れることができる。このようなコーティング欠陥は、欠陥がさらなる層に移行し、さらに半導体製造プロセスに伝わることにより、その後の基板の処理に影響を与え得る。コーティングの不均質性はパターニング欠陥にもつながり得る。微粒子及び他の不純物などの不均質性は、パターニングされた放射線への曝露中にパターン形成を妨げる可能性があり、画像変換不良をもたらし得る。ナノスケールのパターニング、すなわち数十ナノメートルスケールでの特徴のパターニングは、同様のスケールでの特徴の解像度を必要とし、さもなければ、より小さい不均質性の存在により中断され得る。例えば、望ましくない粒子は、特徴の粗さの著しい増大、マイクロブリッジングの増大、層間剥離及び/又はラインの揺れ、並びに所望のパターンの欠損部分(例えば、コンタクトの欠損)などの様々な有害な挙動をもたらし得る。
【0027】
ろ過は、有機スズレジスト溶液から粒子などの不均質性を除去するのに効果的である可能性があり、このような方法は、参照によって本明細書中に援用される「Monoalkyl Tin Trialkoxides And/Or Monoalkyl Tin Triamides With Particulate Contamination And Corresponding Methods」という表題の米国特許出願公開第2020/0239498号明細書(以下、第’498号出願)においてClarkらにより記載されている。しかしながら、上記のようなメカニズム及び水との反応を通して、最初のろ過後にさらなる加水分解/縮合生成物及び粒子の形成が起こり得る。したがって、さらなる粒子形成の防止が望ましく、有機スズフォトレジスト溶液は、本明細書に記載されるように、エージング及び取扱い中に制御されない加水分解を妨害するために、適切な安定化化合物を含むことができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、適切な安定化化合物は、以下の反応に従って有機スズ前駆体種上の配位子の完全な置換を駆動する分子を含むことができる:
RSnL+3HA → RSnA+3HL
【0029】
他の実施形態では、適切な安定化化合物は、以下の反応に従って有機スズ前駆体種上の配位子を部分的に置換する分子を含むことができる:
RSnL+nHA → RSnL3-n(A)+nHL (0≦n<3)
【0030】
一部の安定化化合物は、配位子を中和するために水素原子を移行させることなくL配位子を置換し得る。静電荷によって、L配位子は主にスズカチオンの近くに留まる可能性が高いが、適切に溶媒和され得ることが示唆される。以下にこのような可能性が記載される:
RSnL+nA→RSnL3-n(A)+nL(0≦n<3)
【0031】
さらなる実施形態では、適切な安定化化合物は、初期配位子を置換することなく、第5及び恐らく第6の配位子結合位置においてSnへの配位子を形成することができる:
RSnL+nA→RSnL(A)(0<n≦2)
【0032】
さらに、適切な安定化化合物は、添加した添加剤の量と、以下の反応に従う平衡とによって決定されるように、これらの官能基のブレンドの配位子を形成することができる:
RSnL+nHA→RSnL3-m(A)+mHL(0<n≦5、0≦m≦3、n≧m)
【0033】
これらの式において、任意の特定の分子について形成される種が整数(integer)を表すとしても、n及びmは、整数(integer)ではなく正の整数(whole number)であるとみなされる。上記のように、溶液中では、錯体平衡により様々な種の混合物が生じる。
【0034】
線状アルコールはHA添加剤とみなすことができるが、これらは、一般により高濃度で存在するので、本明細書では共溶媒として別に特定される。適切な添加剤には、カルボン酸、ポリオール、アミド、アミノアルコール、ジケトン、これらの混合物、及びこれらのフッ素化誘導体が含まれる。
【0035】
前駆体溶液
前駆体溶液は一般に、1つ又は複数の溶媒、有機スズ組成物、及び任意選択的な添加剤を含む。曖昧さを回避するために、スズ成分の濃度は、結合構造に関係なく、スズイオンに対して言及される。溶媒は、線状アルコール共溶媒との溶媒ブレンドであり得る。一般に、本明細書に記載される安定化溶液の場合、前駆体溶液は、線状アルコール共溶媒、添加剤、又はこれらの組合せを含む。
【0036】
有機スズ前駆体溶液に関して、組成物への言及は一般に、溶液を形成するために組み合わせられる種に関する。上記で主張されるように、ブレンドに起因する潜在的な再配列は、一般に、錯体の相互に関係する平衡を含み、これは、溶媒和部分の比較的静的な定常状態の混合物になることもあるし、或いはゆっくりと変化し、潜在的に、最終的に不安定化することもある。したがって、溶液中の種の正確な特徴付けは一般に知られていない。
【0037】
前駆体溶液の濃度は、スズイオンのモル濃度に基づいて都合よく特定することができ、任意の他の金属の濃度は、それに応じて、その金属のスズに対するモル分率値によって特定することができる。一般に、前駆体溶液は、約0.0005M~約1Mのスズカチオン、さらなる実施形態では、約0.001M~約0.8M、約0.001M~約0.5M、約0.01M~約0.5M、約0.025M~約0.5Mのスズカチオンを含み、そして置き換えられた上限及び下限を有する範囲並びに部分範囲も含む。金属汚染物が非常に少ない高度に精製された前駆体溶液は、参照によって本明細書中に援用される「Monoalkyl Tin Trialkoxides and/or Monoalkyl Tin Triamides With Low Metal Contamination and/or Particulate Contamination,and Corresponding Methods」という表題のClarkらの米国特許出願公開第2020/0241413号明細書に記載されている。当業者は、上記の明示的な範囲内のスズ/金属カチオン濃度のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0038】
安定性は、前駆体溶液の外観によって評価され得る。一般に、有機スズ組成物は、長期間にわたる十分な安定性、例えば、貯蔵寿命及び性能の一貫性に関して十分な安定性を有することが望ましい。本明細書に記載されるように、前駆体溶液の安定性は、共溶媒及び/又は添加剤の使用によって効果的に高めることができる。アルキル配位子の選択及び/又は溶液の含水量の制御などの組成物の他の態様も、安定性に影響を与えることができる。溶液の安定性の確立と共に、安定化された有機スズ前駆体溶液は、コーティング処理及びパターニング結果の信頼できる再現性を提供することが予想される。以下の実施例で記載されるように、線状アルコール又は添加剤のいずれかを、モノアルキルスズトリアルコキシドを含む溶液と混合すると、フォトレジストのパターニング性能に対する有機スズレジスト前駆体溶液のエージングの影響が軽減されることが示された。クラスター形成を評価するための別の方法は、遊離水の濃度を経時的に調べることである。加水分解が減速又は阻害されると、それに応じて水分取込みも減速又は阻害され得る。以下の実施例での結果はこれと一致する。したがって、混合時の遊離水の初期値からの経時的な変化は、クラスター形成に関する情報を提供することができる。これは、4-メチル-2-ペンタノール溶媒を使用し、安定化化合物を使用しない現在の市販のレジストに対する参照であり得る。
【0039】
また、安定性は、溶液から沈殿する目に見える固体が観察されるまでの時間に関して評価することもできる。本出願人は、場合によっては6ヶ月を超える、或いは1年よりも長いかなりの時間、安定であるように配合された有機スズ組成物を開発した。本明細書に記載されるさらなる安定化アプローチは、より広範囲の配位子により有機スズ組成物を安定化することを可能にし、したがって、パターニング組成物のためにより広範囲の利用可能な配位子を用いてパターニングを改善することができる。本明細書に記載される安定化化合物を使用すると、目に見える固体の観察に関して、安定化前駆体溶液の平均安定性を増大させることができる。いくつかの実施形態では、安定化された有機スズ前駆体溶液は、密封容器内で貯蔵したときに、安定化化合物を含まない同等の有機スズ前駆体溶液よりも少なくとも1週間長い、他の実施形態では少なくとも1ヵ月長い平均安定性を有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の安定性強化のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0040】
溶媒は、有機スズ化合物の安定した分散を支持するように選択することができる。いくつかの実施形態では、単鎖線状アルコールを含む溶媒は、安定化化合物として使用することができる。安定化剤としての添加剤の有無に関わらず、線状アルコールは、他の溶液特性が適切であれば唯一の溶媒として使用することもできるし、或いは他の溶媒成分とブレンドされた共溶媒として使用することもできる。有機スズ化合物を安定的に分散させることに加えて、前駆体溶液は、放射線パターニング可能な組成物を処理するために所望される特性を提供しなければならない。重要な特性には、例えば、溶解度パラメータ、蒸発、引火点、毒性及び粘度が含まれる。特定の用途のために、有機溶媒は、約10℃以上、さらなる実施形態では約20℃以上、さらなる実施形態では約25℃以上の引火点を有することが望ましい。また、乾燥目的では、溶媒は、約250℃以下、さらなる実施形態では約225℃以下、他の実施形態では約200℃以下の沸点を有することが望ましいこともある。適切な溶媒は、例えば、芳香族化合物(例えば、キシレン、トルエン)、エーテル(アニソール、テトラヒドロフラン)、エステル(酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、乳酸エチル)、アルコール(例えば、4-メチル-2-プロパノール、t-アミルアルコール、1-ブタノール、1-プロパノール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、ジエチルケトン)、これらの混合物などを含むことができる。明確にするために、以下の添加剤の説明に含まれる有機化合物はどれも、本明細書中の用語では溶媒とはみなされない。スピンコーティング及び他の処理の目的では、前駆体溶液は、約0.5センチポアズ(cP)~約50cP、さらなる実施形態では約1cP~約35cP、他の実施形態では約1.5cP~約25cPの粘度を有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の引火点、沸点及び粘度のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0041】
いくつかの前駆体溶液では、6個以下の炭素原子を有する非分枝状第1級アルコール(線状アルコール)(CH(CHOH、0≦n≦5)又はそのブレンドである共溶媒との溶媒ブレンドを使用することが望ましい。これらのアルコールは、大きい立体障害なしに配位子としてスズイオンに結合するのに利用可能である傾向があり、したがって、微量水分からの加水分解を阻害することができる。溶媒ブレンドにおいて、線状アルコールは、安定化化合物として特定するために共溶媒と呼ぶことができる。これらの共溶媒は、1つ又は複数の他の溶媒とブレンドして溶媒ブレンドを形成することができ、この溶媒ブレンドは一般に、全溶媒に対して約0.01vol%~約75vol%の非分枝状第1級アルコール、追加の実施形態では、全溶媒に対して約0.1vol%~約60vol%、いくつかの実施形態では約1vol%~約55vol%、約5vol%~約45vol%、さらなる実施形態では約25vol%~約40vol%の非分枝状第1級アルコールを含み、さらに、提示された範囲の下限値及び上限値を混合する任意の他の範囲、例えば、約0.01vol%~約45vol%又は約25vol%~約55vol%を含む。溶媒ブレンドを使用すると、全体的な溶液特性を調整するための1つ又は複数の追加のパラメータが提供され、このようなブレンドでは線状アルコールの安定化効果が観察される。当業者は、上記の明示的な範囲内の非分枝状第1級アルコール組成物のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0042】
いくつかの実施形態では、6個以下の炭素原子を有する非分枝状第1級アルコールは、スピンコーティングなどの特定の使用のため、より高い引火点を提供するため、或いは他の潜在的な実利的理由のために、その粘度が単独では望ましくなく低ければ溶媒ブレンドで使用され得るが、いくつかの実施形態では、線状アルコールを単独で使用することが適切であり得る。いくつかの実施形態では、線状(炭素数≦6)アルコール及び添加剤の両方が、安定化化合物として有機スズ前駆体溶液に含まれ得る。前駆体溶液が1つ又は複数の線状(炭素数≦6)アルコール及び添加剤の両方を有する場合、別の溶媒は含まれても含まれなくてもよい。
【0043】
添加剤は、所望の程度の安定性を提供するために添加され得る。共溶媒とは異なり、添加剤の量は一般にモルで見て比較的低いが、添加剤の上限は、非分枝状第1級アルコールのモル下限とほぼ同じ大きさであり得る。全溶媒量への言及とは対照的に、添加剤の量は一般にスズ濃度に対して言及される。添加剤は液体又は固体であってもよく、そして潜在的に溶解された気体であってもよい。特定の添加剤の有効性は、有機スズ組成物の特性に依存し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、適切な添加剤は、例えば、ジオール、カルボン酸、アミド(例えば、ジメチル尿素を含むアルキル尿素)、アミノアルコール(例えば、(ROH)3-nNH、n=0~2、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンを含む)、ジケトン(例えば、アセチルアセトンを含む1,3-ジケトン)、ホルムアミド/アルキルホルムアミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、又はトリオール(例えば、グリセロール)、これらの混合物、これらのフッ素化誘導体などを含むことができる。一般に、適切な添加剤は、その揮発性によって特徴付けることができる。例えば、一部の添加剤は一般に、堆積中に蒸発及び揮発するように十分に揮発性であり、有機スズオキソ/ヒドロキソコーティング中に大きく取り込まれることはない。逆に、いくつかの実施形態では、添加剤は十分に揮発性でなくてもよく、有機スズオキソ/ヒドロキソコーティング中に取り込まれ得る。追加の実施形態では、添加剤Aは、例えば有機スズオキソ/ヒドロキソコーティング中に少なくとも部分的に取り込まれるように、不揮発性及び/又は十分に非加水分解性のSn-A結合を形成し得る。堆積された放射線感受性組成物中のいくらかの添加剤の残りが、処理の間に利用可能な水からの加水分解後のオキソ-ヒドロキソネットワークの形成を著しく妨げることがないように、添加剤は一般に十分に少量で添加される。いくつかの実施形態では、二官能性添加剤が架橋配位子として関与することができ、この添加剤は2つ以上のSn原子間を架橋することができる。
【0045】
ジオール添加剤のいくつかの適切な例としては、1~6個の炭素を有する線状、分枝状、環状ジオール、及びそれらの異性体、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4,-ブタンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-シクロヘキサノール、1,3-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサノール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。同様に、グリセロールは、式HOCHCHOHCHOHを有するトリオールである。いくつかの実施形態では、ジオール又はトリオール添加剤は約0.05~約5モル比のジオール対Snのモル比を含むことができ、さらなる実施形態では、モル比は約0.1~約2であることができ、さらなる実施形態では、モル比は約0.5~約1であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、カルボン酸の適切な例は、R’COOH(式中、R’は、1~6個の炭素原子を有する線状、分枝状、又は環状ヒドロカルビル基である)、そのフッ素化誘導体、及び関連の異性体を含むことができる。カルボン酸添加剤の適切な例は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、酪酸、2,2-ジメチルプロパン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、安息香酸、シクロへキサン酸、へキサン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸(3-methylpetanoic acid)、4-メチルペンタン酸、及びこれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、カルボン酸添加剤は、約0.005~約10のカルボン酸分子対Snのモル比を含むことができ、さらなる実施形態では、モル比は約0.01~約6、約0.01~約5、約0.5~約3、約0.1~約2、約0.5~約1、約1~約2でよく、さらなる実施形態では、モル比は約1~約3であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、添加剤は、適切なアミノアルコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、適切なアミノアルコールは、例えば、ヒドロキシル(-OH)及びアミノ(-NH基)の両方を有し、1~6個の炭素原子を有する化合物を含むことができる。アミノアルコールは、線状、分枝状、又は環状ヒドロカルビル基を含むことができる。適切なアミノアルコール添加剤のいくつかの例は、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン(例えば、1-アミノ-2-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール)、ブタノールアミン(例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノール)、ペンタノールアミン(例えば、5-アミノ-1-ペンタノール、4-アミノ-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、Snに対するアミノアルコールのモル比は約0.005~約10でよく、さらなる実施形態では、モル比は約0.01~約6、約0.01~約5、約0.5~約3、約0.1~約2、約0.5~約1、約1~約2でよく、さらなる実施形態では、モル比は約1~約3であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、添加剤は、ジアルキル尿素、例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素などを含むことができ、Snに対するジアルキル尿素のモル比は、約0.005~約10であり、さらなる実施形態では、モル比は、約0.01~約6、約0.01~約5、約0.5~約3、約0.1~約2、約0.5~約1、約1~約2でよく、さらなる実施形態では、モル比は約1~約3であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、添加剤は、非置換及びフルオロ置換1,3-ジケトン、例えば、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、及びこれらの混合物を含むことができ、Snに対する1,3-ジケトンのモル比は、約0.005~約10であり、さらなる実施形態では、モル比は、約0.01~約6、約0.01~約5、約0.5~約3、約0.1~約2、約0.5~約1、約1~約2でよく、さらなる実施形態では、モル比は約1~約3であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、添加剤強化フォトレジスト溶液は、上記のような1つ又は複数の添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、添加剤強化フォトレジスト溶液は、上記のような1つ又は複数の添加剤及び上記のような線状アルコールを含むことができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の添加剤の量及びモル比の範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。一般に、所望の添加剤量は、特定の添加剤及びその特性に依存し得る。
【0051】
安定化化合物は一般に、任意の適切な経路で有機スズフォトレジスト溶液に導入することができる。いくつかの実施形態では、添加剤及び/又は共溶媒は、有機スズ前駆体の導入の前に、適切な量で配合溶媒に添加することができる。添加剤及び/又は共溶媒を配合溶媒に添加した後、溶媒を適切に混合して、均質な溶液を保証することができる。他の実施形態では、添加剤及び/又は共溶媒は、前駆体の配合溶媒への導入の前に有機スズ前駆体に添加することができる。他の実施形態では、添加剤及び/又は共溶媒は、溶媒及び有機スズ前駆体の混合物(すなわち、フォトレジスト溶液)に添加し、その後適切に混合することができる。
【0052】
処理への水の関与は、いくつかの潜在的な側面を有する。溶液の安定性を促進するために、水は一般に制限されるべきである。上記のように、含水量は規格化することができ、規格化プロセスは、上記で引用された第’486号出願に記載されている。水規格化は、安定性の制御及び一貫性のために有用であり得るが、前駆体溶液は、溶媒の含水量を調整することによる水規格化を受けてもよいし、受けなくてもよい。溶媒の含水量が規格化されるかどうかに関わりなく、前駆体溶液において起こり得る化学現象をより良く理解するために、前駆体溶液の含水量は、時間の関数として監視することができる。
【0053】
水規格化に関して、選択される含水量は、約±15パーセント、いくつかの実施形態では±10パーセント、さらなる実施形態では±8%、他の実施形態では±6%の許容誤差の範囲内で選択される値に設定することができる。本明細書で使用される場合、ppmはμg/mlの短縮表記であり、これは、1g/mlの溶液密度に対する重量ppmである。許容誤差は、絶対水分量に関して±50ppm、さらなる実施形態では±40ppm、他の実施形態では±25ppmとして表すことができるが、選択された含水量がより大きい場合、絶対許容誤差は実際的観点からより大きくなり得る。溶媒含水量の絶対値に関して、溶媒は、約100ppm~約10,000ppm、さらなる実施形態では約200ppm~約6000ppm、他の実施形態では約300重量ppm~約5000ppm、いくつかの実施形態では約300ppm~約4000ppm、追加の実施形態では約300ppm~約2500ppmの含水量を有するように調整することができる。適切な含水量は、調整された前駆体溶液中のスズ濃度に多少依存する可能性があり、したがって、0.5Mのスズ溶液は、調整された前駆体溶液中の0.05Mのスズ濃度よりも大きい含水量で安定し得る。当業者は、上記で示される値の範囲内の水の許容誤差又は含水量のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0054】
上記のように、適切な添加剤/共溶媒は一般に、水が溶液中の有機スズ種と反応することを妨害するか又は遅らせることができる。有機スズ前駆体種と水との反応は一般に遊離水を消費して、溶液中に有機スズオキソ/ヒドロキソ種を生じさせ、したがって、安定化化合物を含まない組成物に対する安定化化合物を含む組成物の遊離水の差の測定は、適切な安定化化合物の適切な選択を知らせることができる。遊離水は一般に、上記のようにカールフィッシャー滴定法の使用により有機溶媒中で測定することができる。本明細書において一般的に、カールフィッシャー滴定で測定される、有機スズ組成物との配合前の溶媒中の遊離水の量は、初期含水量と称することができ、前駆体溶液中の遊離水の量は、測定含水量と称される。調製の直後の有機スズ溶液の含水量も、初期含水量と称することができる。いくつかの実施形態では、有機スズ前駆体溶液の初期含水量は、測定誤差の範囲内で、溶液を調製するために使用される溶媒の初期含水量と同等であり得る。以下の実施例で記載されるように、適切な安定化化合物は、他の点では等価の非安定化化合物含有前駆体溶液に対して、安定化化合物を含有する前駆体溶液中の有機スズ前駆体の測定含水量の相対的な差に基づいて選択することができる。或いは、適切な安定化化合物は、安定化化合物含有前駆体溶液の初期含水量と、測定含水量との間の相対的な差に基づいて選択することができる。或いは、適切な安定化化合物は、調製後の一定期間に評価された安定化化合物含有前駆体溶液の測定含水量に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、調製後の期間は、1日未満、1日、3日、7日、1ヵ月、1ヵ月超又は他の所望の時間間隔である。いくつかの実施形態では、適切な安定化化合物は、他の点での非安定化化合物含有組成物と比べて、有機スズ種の水分取込みを減少させる(すなわち、特定の期間後により高い測定含水量を有する)種を含む。参照のために、添加剤を含まずに4-メチル-2-ペンタノール溶媒を含む等価の前駆体溶液を使用することができる。水分取込みが遅いということは、クラスター形成及び沈殿と相関し得る加水分解性配位子の加水分解の減少を示すと考えられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、安定化化合物強化フォトレジスト溶液は、粒子又は不溶性欠陥を除去するためにろ過され得る。一般に、微粒子は目に見えない可能性があり、微粒子について組成は不明である。一部の微粒子は、有機スズ組成物の十分に大きいクラスターであり得るが、微粒子は、プロセス設備からの破片又は組成物の不純物である可能性がある。微粒子の同一性に関係なく、それらは、示された処理によって除去することができる。適切なろ過方法は、上記で引用された第’498号特許出願に記載されている。本明細書に記載される前駆体溶液は、微粒子汚染が非常に少ないように処理し、使用前に貯蔵及び輸送のために容器内に密封することができる。
【0056】
フォトレジスト溶液における微粒子汚染は一般に、フォトレジストを使用するリソグラフィパターニングから得られる集積デバイスの性能に悪影響をもたらす可能性がある。例えば、小さい粒子はフォトレジストパターンに埋め込まれ、現像後又はエッチング/パターン転写後に欠陥(例えば、スカム、マイクロブリッジ、ライン破損など)として現れ得る不均質性を作り出し、したがってデバイス歩留まりを低下させ得る。本明細書に記載されるように、微粒子は、溶液中での加水分解/縮合プロセスから生じる縮合有機スズオキソ/ヒドロキソ種を含むことができる。本明細書に記載される添加剤組成物は、このような加水分解/縮合プロセスを妨害することができ、したがって、縮合有機スズ微粒子の形成を妨害することができる。
【0057】
前駆体溶液による処理
上記のように、安定性強化フォトレジスト溶液を使用して放射線パターニング可能な有機スズオキソヒドロキソ組成物を形成することができ、このようなコーティングは、当該技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて形成され得る。スピンコーティングは、安定化化合物強化フォトレジスト溶液を用いてコーティングを形成するために特に望ましいことがある。典型的なスピンコーティングプロセスでは、一定量の安定化化合物強化フォトレジスト溶液が基板表面に導入され、基板が高速で回転されて、急速な蒸発及び縮合プロセスが推進され、放射線パターニング可能なコーティングの形成が可能になる。いくつかの実施形態では、基板は、約500rpm~約10,000rpm、さらなる実施形態では約1000rpm~約7500rpm、追加の実施形態では約2000rpm~約6000rpmの速度(すなわち、回転速度)で回転され得る。回転速度は、所望のコーティング厚さを得るように調整することができる。スピンコーティングは、約5秒~約5分間、さらなる実施形態では約15秒~約2分間実施することができる。例えば50rpm~250rpmの初期低速回転を使用して、基板全体にわたる組成物の初期バルク塗布を実施することができる。水又は他の適切な溶媒を用いて、裏面リンス、エッジビード除去ステップなどを実施して、任意のエッジビードを除去することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内のスピンコーティングパラメータのさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0058】
基板は一般にコーティング材料が堆積され得る表面を示し、基板は、表面が最上層に関連する複数の層を含み得る。基板表面は、コーティング材料の接着のための表面を調製するように処理することができる。表面の調製の前に、表面は、必要に応じて清浄化及び/又は平滑化することができる。適切な基板表面は、任意の妥当な材料を含むことができる。対照となるいくつかの基板には、例えば、シリコンウェハ、半導体ウェハ、シリカ基板、他の無機材料、有機ポリマーなどのポリマー基板、これらの複合体、並びに基板の表面全体にわたる及び/又は層中のこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、基板は、パターニングされた構造、例えば、参照によって本明細書中に援用される「Pre-Patterned Lithography Templates,Process Based on Radiation Patterning Using The Templates And Processes To Form The Templates」という表題の米国特許第10,649,328号明細書においてStowersらにより記載されるものなどを含むことができる。
【0059】
コーティングの厚さは一般に、前駆体溶液の濃度、粘度、及びスピンコーティングの回転速度の関数であり得る。他のコーティングプロセスの場合、厚さは一般に、コーティングパラメータの選択によって調整することもできる。いくつかの実施形態では、その後のパターニングプロセスで小さく且つ高解像度の特徴の形成を容易にするために、薄いコーティングを使用することが望ましいこともある。例えば、乾燥後のコーティング材料は、約250ナノメートル(nm)超、追加の実施形態では約1nm~約50nm、他の実施形態では約2nm~約40nm、他の実施形態では約1nm~約40nm、さらなる実施形態では約3nm~約25nmの平均厚さを有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さのさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。厚さは、フィルムの光学特性に基づいたx線反射率及び/又は偏光解析の非接触法を用いて評価することができる。一般に、コーティングは、処理を容易にするために比較的均一である。妥当なサイズの基板上の高均一性コーティングなどのいくつかの実施形態では、コーティングの均一性又は平坦性の評価は、例えば、1センチメートルのエッジ除外により評価することができ、すなわち、コーティングの均一性は、コーティングのエッジから1センチメートル以内の部分については評価されないが、他の適切なエッジ除外を選択することもできる。
【0060】
プロセスをうまく適用するために加熱は必要ないかもしれないが、コーティング材料を高密度化するため、処理を加速するため、プロセスの再現性を高めるため、そして/或いはアルコール及び/又はアミンなどの加水分解副生成物の蒸発を促進するために、コーティングされた基板を加熱することが望ましいこともある。コーティングされた基板の加熱が実施される実施形態では、コーティングされた基板は、約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約55℃~約225℃の温度まで加熱することができる。加熱は一般に、少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分~約30分間、追加の実施形態では約0.75分~約10分間実施することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の加熱温度及び時間のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0061】
一般に、フォトレジストコーティングは、放射線を用いてパターニングすることができる。適切な放射線源には、極端紫外線(EUV)、紫外線(UV)、又は電子ビーム(EB)放射線が含まれる。半導体デバイスの製造の場合、UV放射線と比較して解像度がより高く、電子ビーム(EB)ベースの処理と比較してスループットが高いため、EUV放射線が望ましいことがある。放射線は一般にマスクを通して基板材料に方向付けることができ、或いは放射線ビームを制御可能に基板全体に走査して、レジストコーティングに潜像を形成することができる。
【0062】
参照によって本明細書中に援用される国際標準ISO21348(2007)に従って、紫外光は、100nm以上~400nm未満の波長間に及ぶ。フッ化クリプトンレーザーは、248nm紫外光の光源として使用することができる。紫外線範囲は、10nm以上~121nm未満の極端紫外線(EUV)、及び122nm以上~200nm未満の遠紫外線(FUV)など、容認された規格に従っていくつかの方法で細分することができる。フッ化アルゴンレーザーからの193nmラインは、FUVの放射線源として使用することができる。EUV光は、13.5nmにおけるリソグラフィに使用されており、この光は、高エネルギーレーザー又は放電パルスを用いて励起されるXe又はSnプラズマ源から発生される。EUV光子の商業的な供給源には、ASML Holding N.V.Netherlandsによって製造されるスキャナーが含まれる。軟x線は、0.1nm以上~10nm未満と定義することができる。
【0063】
電磁放射線の量は、曝露時間に対する積分放射フラックスによって得られるフルエンス又は線量によって特徴付けることができる。EUV放射線が使用される実施形態の場合、適切な放射線量は、約1mJ/cm~約150mJ/cm、さらなる実施形態では約2mJ/cm~約100mJ/cm、さらなる実施形態では約3mJ/cm~約50mJ/cmであり得る。当業者は、上記の明示的な範囲内の放射線フルエンスのさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0064】
放射線への曝露及び潜像の形成に続いて、通常、その後の曝露後ベーク(PEB)が実施される。いくつかの実施形態では、PEBは、約45℃~約250℃、追加の実施形態では約50℃~約190℃、さらなる実施形態では約60℃~約175℃の温度で実施することができる。曝露後加熱は一般に、少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分~約30分間、追加の実施形態では約0.75分~約10分間実施することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内のPEB温度及び時間のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。PEBは、非曝露領域を金属酸化物に分解することなく曝露領域をさらに強固にするように設計することができる。
【0065】
PEBの実施に続いて、画像の現像は、潜像を含むパターニングされたコーティング材料を現像液組成物と接触させて、非照射コーティング材料を除去してネガ画像を形成するか、又は照射コーティングを除去してポジ画像を形成するかのいずれかを含む。有機スズオキシドヒドロキシドコーティングの照射領域は一般に親水性であり、したがって、酸又は塩基水溶液に溶解し、有機溶媒に溶解しない;逆に、非照射領域は一般に疎水性であり、したがって有機溶媒に溶解し、酸又は塩基水溶液に溶解しない。ネガ型イメージングの場合、現像液は、前駆体溶液を形成するために使用される溶媒などの有機溶媒であり得る。一般に、現像液の選択は、照射及び非照射コーティング材料の両方に関する溶解度パラメータ、並びに現像液の揮発性、燃焼性、毒性、粘度、及び他のプロセス材料との潜在的な化学的相互作用によって影響され得る。これらの有機スズオキシドフォトレジストのためのいくつかの有用な現像液組成物は、参照によって本明細書中に援用される「Organometallic Photoresist Developer Compositions and Processing Methods」という表題のJiangらの米国特許出願公開第2020/0326627号明細書に記載されている。
【0066】
また、乾式現像とも呼ばれる無溶媒現像も有機スズ材料と共に使用され得ることが発見された。乾式現像は、例えば、適切なプラズマ又は適切な流動ガスに材料を曝露させることによる、フォトレジストの照射領域又は非照射領域の選択的除去を含むことができる。有機スズレジストの乾式現像は、「Dry Development of Resists」という表題のVolosskiyらのPCT公開第2020/132281A1号明細書、及び「High Resolution Latent Image Processing and Thermal Development」という表題のCardineauらの米国仮特許出願第63/247,885号明細書に記載されており、これらはいずれも参照によって本明細書中に援用される。このような乾式現像プロセスでは、照射領域又は非照射領域の除去を容易にする小分子反応物を含むガスを流しながら、照射基板をプラズマ又は熱プロセスにさらすことによって、現像を達成することができる。現像に続いて、所望により洗浄ステップを行い、パターンから望ましくない材料をさらに除去することができ、このような方法は、参照によって本明細書中に援用される「Patterned Organometallic Photoresists and Methods of Patterning」という表題のKocsisらの米国特許出願公開第2020/0124970号明細書に記載されている。
【0067】
あらゆる任意選択的な洗浄を含む現像ステップの完了後、コーティング材料は、材料をさらに縮合させるため、そして材料をさらに脱水し、高密度化し、又は材料から残留現像液を除去するために熱処理され得る。この熱処理は、酸化物コーティング材料が最終的なデバイスに取り込まれる実施形態では特に望ましいことがあるが、さらなるパターニングを容易にするためにコーティング材料の安定化が望ましい場合、コーティング材料がレジストとして使用されて最終的に除去されるいくつかの実施形態では、熱処理を実施することが望ましいかもしれない。特に、パターニングされたコーティング材料のベークは、パターニングされたコーティング材料が所望のレベルのエッチング選択性を示す条件下で実施することができる。いくつかの実施形態では、パターニングされたコーティング材料5は、約100℃~約600℃、さらなる実施形態では約175℃~約500℃、追加の実施形態では約200℃~約400℃の温度まで加熱され得る。加熱は、少なくとも約1分間、他の実施形態では約2分~約1時間、さらなる実施形態では約2.5分~約25分間実施することができる。加熱は、空気中、真空中、又はAr若しくはNなどの不活性ガス雰囲気中で10実施され得る。当業者は、上記の明示的な範囲内の熱処理の温度及び時間のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。同様に、ブランケットUV曝露、又はOなどの酸化性プラズマへの曝露を含む非熱処理も同様の目的のために使用され得る。
【0068】
このようなパターニングプロセスは一般に、レジスト材料に形成されたパターンに基づく基板のエッチング及び/又は堆積を含み得るデバイス形成におけるステップである。繰返しのリソグラフィステップを実施して材料のスタックを作成し、所望のデバイスを形成することができる。
【実施例
【0069】
実施例1:配位数(CN)の増加の実証
以下の実施例は、線状アルコール共溶媒の添加が、有機スズ前駆体のSn配位数を増加させ得ることを実証する。
【0070】
300ppmの目標初期含水量を含有するように各溶媒組成物を規格化して、以下の表1に従って4-メチル-2-ペンタノール対n-プロパノールの特定の体積比を有する溶媒組成物をまず調製することによって、一連の有機スズ溶液を調製した。本明細書で使用される場合、ppmは、1ミリリットル当たりのマイクログラム(μg/ml、溶媒密度が1g/mlの場合は質量ppmに等しい)を指す。上記で引用されたJiangらの第’876号特許に記載されるように、水規格化は、既知の濃度の水を有する適切な既知量の4-メチル-2-ペンタノール又はn-プロパノールを混合することによって達成した。
【0071】
【表1】
【0072】
次に2つの別個のアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物(例えば、RSn(OtAmyl)及びRSn(OtAmyl))の混合物を含む有機スズ前駆体R1を、0.05Mの最終Sn濃度を提供するように各溶媒組成物に添加し、徹底的に混合して有機スズ溶液A、25P、50P、75P、及びPを形成した。有機スズ溶液に沈殿の証拠はなかった。各有機スズ溶液をCにより1対1の比率で希釈することによってNMR分析用のアリコートを調製し、次に400MHzのBruker NMRスペクトロメーターで分析した。配合の直後、そして室温で30日間貯蔵した後に再度、サンプルA、25P、50P、75P、及びPのアリコートにおいて119S NMR分析を行なった。対応するスペクトルは、それぞれ図1及び図2示される。サンプルAは約-250ppmでSnピークを示し、これは、4-CNSn環境についての文献の報告と一致する。逆に、サンプル25P、50P、75P、及びPは約-460ppmでピークを示し、これは、6-CNSnについての文献の報告と一致する。したがって、これらの結果は、n-プロパノールがSn4+に結合して、第5及び第6の配位子を追加することを実証する。溶媒濃度がそれに応じて平衡をシフトさせるため、溶媒アルコキシ基は初期アルコキシ基の代わりになることが予想され得る。またこの結果では、溶媒として4-メチル-2-ペンタノールのみを有する有機スズ溶液において、第5又は第6の配位子の追加の証拠は示されない。この結果は、配位数の増加が、少なくとも部分的に、第2級又は第3級溶媒と比較して線状アルコールの立体障害が少ないことに起因することを示唆する。結果はさらに、線状アルコールと別の共溶媒とのブレンドが、有機スズ溶液の安定化効果を提供できることを示唆する。
【0073】
実施例2:共溶媒による水消費量の削減
以下の例は、線状アルコール共溶媒の添加により、時間と共に有機スズフォトレジストの水消費量が減少し得ることを実証する。
【0074】
まず、異なる体積比の4-メチル-2-ペンタノール(4M2P)及びn-プロパノールを含む一連の溶媒組成物を調製した。300ppmの目標初期含水量を含有するように1セットの溶媒組成物を規格化し、1000ppmの目標初期含水量を含有するように第2のセットを規格化した。水規格化は、実施例1に記載されている。規格化した各溶媒組成物の調製後に、カールフィッシャー(KF)滴定を実施して、規格化及び溶媒ブレンド後の各溶媒組成物中の実際の初期含水量を評価した。結果は、以下の表2に示される。
【0075】
【表2】
【0076】
次に、2つの別個のアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物(例えば、RSn(OtAmyl)及びRSn(OtAmyl))の混合物を含む有機スズ前駆体R1を、0.05Mの最終Sn濃度を提供するように各溶媒組成物に添加した。溶液を徹底的に混合して、表2に示されるように、有機スズ溶液サンプル0P1、25P1、50P1、75P1、100P1、0P2、25P2、50P2、75P2及び100P2を形成した。室温において密封ボトル内で1日、7日、及び29日間貯蔵した後に、各サンプルにおいてKF滴定を実施して、時間と共に各サンプルで水がどのくらい消費されたかを決定した。結果は、初期含水量300ppmで調製されたサンプル(「P1」サンプル)については図3にプロットされ、初期含水量1000ppmで調製されたサンプル(「P2」サンプル)については図4にプロットされる。
【0077】
両方の図において、n-プロパノールを含有するサンプルでは、4M2Pのみを含有するサンプルよりも消費される水がはるかに少ないことが見られる。最初に約300ppmの水を含有していたサンプル25P1、50P1、75P1、及び100P1の場合、1日後の測定含水量は、25P1、50P1、75P1、及び100P1についてそれぞれ250ppm、224ppm、233ppm、及び285ppmまでわずかに減少しただけであった。逆に、0P1(例えば、4M2Pのみを含有するサンプル)の測定含水量は、1日後に約50ppmまで大幅に減少した。最初に約1000ppmの水を含有していたサンプル25P2、50P2、75P2、及び100P2の場合、1日後の測定含水量は、25P2、50P2、75P2、及び100P2についてそれぞれ268ppm、251ppm、261ppm、及び233ppmまで減少した。逆に、0P2(例えば、4M2Pのみを含有するサンプル)の測定含水量は、1日後に約70ppmまで大幅に減少した。いずれのデータセットにおいても、4M2Pのみを含有するサンプルは、n-プロパノールを含有するサンプルよりも溶媒からはるかに多い水を消費し、これにより、n-プロパノールのような線状アルコール共溶媒は、有機スズ前駆体化合物の加水分解を妨害できることが示された。
【0078】
各サンプルを7日間エージングした後、各サンプルにおいてKF測定を再度実施して、貯蔵中にさらなる水がどのくらい消費されたかを決定した。前述のように、275ppm、245ppm、254ppm、及び297ppmの水分濃度をそれぞれ有するサンプル25P1、50P1、75P1、及び100P1は全て、40ppmの測定含水量を有する0P1、よりも著しく多い遊離水を有していた。同様に、サンプル25P2、50P2、75P2、及び100P2は、7日後に209ppm、201ppm、191ppm、及び159ppmの測定含水量を有したが、0P2は、7日後に39ppmの測定含水量を有した。
【0079】
最後に、室温で29日貯蔵した後、各サンプルの測定含水量をKF滴定により再度分析した。サンプル25P1、50P1、75P1、及び100P1は、それぞれ318ppm、282ppm、310ppm、及び345ppmの測定含水量を示したが、非共溶媒組成物サンプル0P1は、24ppmという著しく少ない測定含水量を示した。同様に、25P2、50P2、75P2、及び100P2サンプルは、それぞれ178ppm、174ppm、165ppm、及び131ppmの測定含水量を示したが、非共溶媒組成物サンプル0P2は、20ppmという著しく少ない測定含水量を示した。
【0080】
さらに、非共溶媒組成物サンプル0P1及び0P2の測定含水量は、時間と共に減少し続けたことが分かり、これにより、有機スズ前駆体は、非共溶媒組成物中の水と反応し、水を消費し続けることが示される。さらに、それぞれ図3及び図4を参照して、共溶媒組成物25P1、50P1、75P1、及び100P1の測定含水量は、時間の関数で増大したが、共溶媒組成物25P2、50P2、75P2、及び100P2の測定含水量は、時間の関数で減少したことが分かる。この結果は、周囲の水が時間と共にサンプルに取り込まれ、初期含水量が300ppmのサンプルが、初期含水量がより高いサンプルよりも加水分解に対する抵抗性がはるか高いことを示唆する。この結果は、最小限且つ制御された初期含水量と、線状アルコール共溶媒との組合せが、加水分解に対して、したがって遊離水の消費に対してより効果的な妨害を提供できることを示唆するが、上記のように、平衡の詳細は複雑になり得る。
【0081】
この挙動は、0P1及び0P2などの非共溶媒組成物が、線状アルコール共溶媒が存在する組成物よりもはるかに多くの水を消費することを示し、共溶媒強化組成物において加水分解が妨害され得ることの証拠である。
【0082】
実施例3:貯蔵寿命
この実施例は、種々の添加剤を有する有機スズレジスト溶液の貯蔵寿命の改善を説明する。
【0083】
3つの有機スズ前駆体R1、R2、R3を使用して、様々な添加剤強化フォトレジスト溶液を調製した。R1は、2つのアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物(例えば、RSn(OtAmyl)及びRSn(OtAmyl))の混合物を含み、R2及びR3は、別々に、単一且つ別個のアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物を含む。有機スズ組成物の貯蔵寿命及び沈殿に対する強靭性を改善する各添加剤の性向を試験するために、異なる初期含水量を有する3つの水規格化ストック溶媒を希釈溶媒として使用した。水規格化は、実施例1に記載されている。各組合せについて、目標初期含水量が300ppm、1000ppm、及び3000ppmである4-メチル-2-ペンタノール(4M2P)の3つのストック溶液をまず調製することによってサンプルを調製した。4M2Pのみを用いて調製される対照比較例は、各添加剤の改善を測定するために各添加剤/4M2Pの組合せに対して調製した。
【0084】
全てのサンプルを、0.05Mの最終Sn濃度を提供するように標準化した。添加剤を含むサンプルの場合、有機スズ前駆体R1、R2、及びR3の添加の前に、添加剤を溶媒に添加し、混合した。有機スズ溶液の貯蔵寿命を高めるために試験した添加剤には、酢酸(AA)、ギ酸(FA)、トリエタノールアミン(TEA)、及びトリフルオロ酢酸(TFA)が含まれ、全てを2つの異なる添加剤対Snモル比で試験した。例えば、1AAは、1モル酢酸対1モルSnの組成を表し、3AAは、3モル酢酸対1モルSnの組成を表す。各添加剤組成物の貯蔵寿命安定性は、1ヵ月にわたって各サンプルを沈殿について監視することによって行った。結果は以下の表に示されており、以下の表3に示されるようにA、B、C、D、及びFの性能評価が与えられる。
【0085】
【表3】
【0086】
上記の表3の結果は、最も高い水分濃度において、3つの非添加剤対照組成物が比較的低い安定性を有し、1週間未満(R1)又は1日未満(R2及びR3)で沈殿物を形成することを示す。さらに、R2の非添加剤対照組成物は、各水分濃度において比較的低い安定性を示したが、これは部分的に、有機溶媒中での有機スズ前駆体R2の比較的低い溶解度に起因する。この結果は、添加剤が、R2の溶解度を改善することにより部分的に、R2溶液の安定性を改善し得ることを示唆する。最も低い初期含水量(300ppm)における添加剤サンプルの1つを除く全ては、1ヵ月を超えて安定していた。1000ppmの初期含水量では、安定性は、R3については添加剤組成物に強く依存し、R1及びR2についてはAAのモル比に依存すると思われる。結果は、AA、TEA、FA、及びTFAが、より高い初期含水量レベルにおいて、沈殿物形成に関して安定性を改善できることを示しており、これらの添加剤は、不溶性種の形成を妨害するために使用可能であることが示される。
【0087】
実施例4:エージング及びパターニング性能
この実施例は、前駆体溶液の安定性をさらに評価するための手段として、共溶媒又は添加剤の存在が、周囲空気にさらされた有機スズレジスト溶液のエージングに関連する効果をどのようにして軽減するかを示す。
【0088】
有機スズレジスト前駆体R4を全ての場合に使用した。R4は、0.044Mの全Sn濃度を達成するように4-メチル-2-ペンタノール中のアルキルスズトリアルコキシド及びスズテトラアルコキシドの混合物を含み、ここで、スズテトラアルコキシドは、全Snの1%を構成した。これらのサンプルは、水規格化をしなかった。R4前駆体の添加前に、ジメチル尿素、メタノール、又はトリエタノールアミンのいずれかを4-メチル-2-ペンタノール溶媒に添加して、表4に示されるようなサンプル濃度を達成した。ジメチル尿素及びトリエタノールアミンの濃度は、Snの総量に対するモル%であった。各サンプルの調製後、対照セット及びエージングセットの2つのセットに体積を分けた。対照セットのサンプルは、蓋をして室温で7日間引出しの中に貯蔵したが、エージングセットのサンプルは、ドラフト内に貯蔵して、蓋をせずに7日間周囲空気にさらした。
【0089】
次に、各サンプルを使用して放射線パターニング可能なコーティングを調製した。薄膜堆積のための基板として、自然な酸化物表面を有するシリコンウェハ(直径100mm)を使用した。レジストの堆積前に、基板をヘキサメチルジシラザン(HMDS)の蒸気プライムで処理した。溶液を基板上に900rpmでスピンコーティングし、100℃で2分間ベークして、アルキルスズオキシドヒドロキシドレジストコーティングを形成した。
【0090】
EUV光(Lawrence Berkeley National Laboratory Micro Exposure Tool,MET)を用いて、直径約500umの50個の円形パッドの線形配列をウェハ上に投影させた。パット曝露時間は、各パッドに対して増大するEUV線量(7%の指数関数的ステップ)を送達するように調節した。次に、ホットプレート上で160℃において2分間、レジスト及び基板に曝露後ベーク(PEB)を行った。曝露したフィルムを2-ヘプタノン中に15秒間浸漬し、2-ヘプタノンでさらに15秒間すすいでネガ型画像を形成した。すなわち、コーティングの非曝露部分を除去した。J.A.Woollam M-2000分光エリプソメーターを用いて、曝露したパッドの残留レジストの厚さを測定した。測定した厚さを測定した最大のレジスト厚さに規格化し、曝露線量の対数に対してプロットして、一連のPEB温度における各レジストの特性曲線を形成した。規格化した厚さ対対数線量曲線の最大勾配は、フォトレジストコントラスト(γ)として定義され、この点を通る接線が1に等しくなる線量値は、フォトレジストの線量対ゲル(dose-to-gel)(Dg)として定義される。このようにして、フォトレジストの特徴付けに使用される一般的なパラメータは、参照によって本明細書中に援用されるMack,C.Fundamental Principles of Optical Lithography,John Wiley&Sons,Chichester,U.K;pp 271-272,2007に従って近似され得る。
【0091】
対照及びエージングサンプルの各セットについて線量対ゲル値を測定した。対照組成物とエージング組成物との間のDgの差は、以下の表4に示される。
【0092】
【表4】
【0093】
表4の共溶媒又は添加剤を有する組成物については、対照サンプルとエージングサンプルとの間の線量対ゲル値が2%未満である。逆に、添加剤(ジメチル尿素又はトリエタノールアミン)又は共溶媒(メタノール)を含有しない組成物は、エージングサンプルのDgにおいて30%を超える増大を示した。言い換えると、これらの結果は、添加剤又は共溶媒の存在が、Snに対して低濃度であっても、周囲雰囲気への7日間の曝露により引き起こされるエージング効果を軽減することができ、それにより、パターニング性能の再現性を著しく維持できることを示す。
【0094】
実施例5:添加剤による水消費量の削減
以下の実施例は、ジオール添加剤を添加すると、有機スズフォトレジストの水消費量が時間と共に減少され得ることを実証する。
【0095】
適切な質量のエチレングリコール(EG)を4-メチル-2-ペンタノール中に溶解させて、それぞれ0.05M、0.1M、及び0.15Mの溶液を形成することにより、一連の添加剤強化溶媒溶液を調製した。EGを添加する前に、4-メチル-2-ペンタノール溶媒に水を添加して、KF滴定で測定したときに約1000ppmの初期含水量を有する水規格化4-メチル-2-ペンタノールを得た。添加剤強化溶媒溶液を調製した後、次に有機スズ前駆体R1を各サンプルに添加し、徹底的に混合して、各溶液中0.05Mの最終Sn濃度を得た。サンプルA1、A2、及びA3は、Snに対する添加剤のモル比がそれぞれ1.0、2.0、及び3.0であった。また添加剤を含まない対照サンプルも、1000ppmの水を含有する4-メチル-2-ペンタノール中0.05MのSn濃度を有するように調製した。サンプルは、以下の表5に要約される。
【0096】
【表5】
【0097】
有機スズ前駆体R1は、2つのアルキルスズトリ-tert-アミルアルコキシド化合物(例えば、RSn(OtAmyl)及びRSn(OtAmyl))の混合物を含んでいた。上記の表5に記載されるようなサンプルA1、A2、A3、及び対照をそれぞれ室温で密封ボトルに貯蔵し、様々な時点で各サンプルにおいてKF滴定を実施して、様々な時点で測定含水量を決定した。配合の当日、配合の4日後、及び配合の13日後にサンプルを測定した。消費された水の量は、初期含水量(例えば、1000ppm)と測定含水量との間の差として計算し、消費された水のパーセントは、消費された水の量を初期含水量で除したものとして計算した。配合の0日後、配合の4日後、及び配合の13日後の各サンプルの測定含水量及び消費された水のパーセントは表6に要約され、図5にグラフで表示される。
【0098】
【表6】
【0099】
A3及び対照の測定含水量は、配合当日にそれぞれ886ppm及び378ppmであった。対照は、1000ppmの初期水の62.2%を消費したが、A3は、初期水の11.4%しか消費しなかった。添加剤強化サンプル及び対照の全てについて、配合の4日後及び配合の13日後に、測定含水量データを集めた。結果は、各期間において、添加剤強化溶液では対照溶液よりも少ない水が消費されたことを示す。さらに、結果は、各サンプルについて消費された水のパーセントは時間と共に増大したが、エチレングリコール添加剤がプロセスを遅らせるのに役立つ可能性があることを示す。結果はさらに、スズに対するエチレングリコールのモル比が1.0(A1)から3.0M(A3)まで増大するにつれて、消費された水のパーセントが減少したことを示しており、したがって、添加剤のモル比の調整を使用して、有機スズ種の加水分解を制御することができる。
【0100】
図5は、各サンプルの測定含水量が時間と共に減少するが、各期間において、添加剤含有サンプルA1、A2、及びA3では、測定含水量(例えば、遊離水の量)が対照サンプルよりも高いことをグラフで示す。
【0101】
結果は、添加剤を含まない対照溶液が、加水分解的に敏感な有機スズ種と水との間の反応を比較的妨害しないことを示唆する。対照的に、エチレングリコール添加剤は、Sn結合部位に対して水と競合し、それにより、有機スズ溶液の加水分解は効果的に妨害され得る。
【0102】
上記の実施形態は例示的なものであって、限定することは意図されない。追加の実施形態は特許請求の範囲内に含まれる。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して記載されたが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細の変化がなされ得ることを認識するであろう。上記文書の参照による援用はどれも、本明細書における明示的な開示に反する主題が援用されないように限定される。他に具体的に示されない限り、特定の構造、組成物及び/又はプロセスが、構成要素、要素、成分又は他の区分と共に本明細書に記載される範囲で、本明細書中の開示は、特定の実施形態、特定の構成要素、要素、成分、他の区分又はこれらの組合せを含む実施形態、並びに本議論において提唱されるような主題の基本的な性質を変化させない追加の特徴を含むことができる、このような特定の構成要素、成分若しくは他の区分又はこれらの組合せから本質的になる実施形態を包含することが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】