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特表2024-540605動物種を保護するための農業システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】動物種を保護するための農業システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529924
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022083041
(87)【国際公開番号】W WO2023094484
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210037.4
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲブラー,セバスチャン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチェ,レナート
(72)【発明者】
【氏名】デニス,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヨルグ
(57)【要約】
本発明は、動物保護ゾーン(202)に存在する動物種の保護に関する。動物種のライフステージが、動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルに基づいて特定される。動物種のライフステージに基づいて、動物種を保護するために、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理が前記動物保護ゾーン(202)において実行されるべきではない動物保護時間窓が決定される。さらに、農業ゾーン(200)と動物保護ゾーン(202)との空間的重複に基づいて、重複ゾーン(210)が決定され、重複ゾーン(210)における農業処理の安全時間窓が決定される。安全時間窓は、動物保護時間窓と時間的に重ならない。これにより、動物種が重複ゾーン(210)において保護される安全時間窓の提供が可能になる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物保護ゾーン(202)に存在する動物種(402)を保護する農業システム(100)であって、前記農業システム(100)は、
-農業処理が計画されている農業ゾーン(200)を示す農業ゾーンデータを取得又は生成することと、
-存在する前記動物種(402)と関連する前記動物保護ゾーン(202)を示す保護ゾーンデータを取得又は生成することと、
-前記動物種(402)のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルを提供することと、
-前記動物ライフサイクルモデルに基づいて前記動物種(402)のライフステージを特定することと、
-前記動物種(402)の前記ライフステージに基づいて、前記動物種(402)に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理が前記動物保護ゾーン(202)で実行されるべきではない動物保護時間窓(302)を決定することと、
-前記農業ゾーンデータ及び前記保護ゾーンデータに基づいて、前記農業ゾーン(200)と前記動物保護ゾーン(202)との空間的重複として重複ゾーン(210)を決定することと、
-前記動物保護時間窓(302)に応じて前記重複ゾーン(210)内で農業処理の安全時間窓(300)を決定することであって、前記安全時間窓(300)は前記動物保護時間窓(302)と時間的に重ならない、決定することと、
を行うように構成される農業システム(100)。
【請求項2】
前記動物ライフサイクルモデルは、気象データに基づいて前記動物種(402)の前記ライフサイクルをシミュレートするように構成される、請求項1に記載の農業システム(100)。
【請求項3】
前記農業ゾーン(200)の地理情報に基づいて、前記動物得保護ゾーン(202)の地理情報に基づいて、又は前記農業ゾーン(200)の前記地理的場所情報及び前記動物保護ゾーン(202)の前記地理情報に基づいて、前記気象データを取得するように更に構成される請求項2に記載の農業システム(100)。
【請求項4】
前記動物種(402)の前記シミュレートされたライフサイクルに基づいて、前記動物種(402)が前記重複ゾーン(210)に存在する尤度を特定し、前記動物種(402)が前記重複ゾーン(210)に存在する前記特定された尤度に基づいて、前記安全時間窓(300)を決定するように構成される請求項1~3の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項5】
前記農業システム(100)は、前記決定された安全時間窓(300)に基づいて安全時間窓信号を提供又は生成するように更に構成され、前記安全時間窓信号は、農業装置(50)を制御するように構成された制御信号であり又は前記制御信号を含み、前記制御信号は、前記安全時間窓(300)中、前記重複ゾーン(210)内で農業処理を実行するよう前記農業装置(50)を制御するように構成される、請求項1~4の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項6】
前記安全時間窓信号に基づいて、前記農業ゾーン(200)において前記農業処理を実行するように構成された農業装置(50)を更に含む請求項5に記載の農業システム(100)。
【請求項7】
前記動物保護時間窓(302)中、前記重複ゾーン(210)において農業処理が実行されないよう前記農業ゾーン(200)における前記農業処理を適合するように更に構成された請求項1~6のいずれか1項に記載の農業システム(100)。
【請求項8】
農業生長モデルに基づいて、前記農業ゾーン(200)における生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定し、前記作物の前記特定された生長段階に応じて前記動物保護時間窓(302)を決定するように構成される請求項1~7の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項9】
前記農業システム(100)は、前記重複ゾーン内の土壌表層に到達する化学製品の能力を示す作物付着を特定するように構成され、前記農業システムは、前記特定された作物付着に応じて前記動物保護時間窓(302)を決定するように構成される、請求項1~8の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項10】
農業生長モデルを使用して前記作物の生長段階に基づいて前記作物の作物付着を特定し、前記特定された作物付着を使用して土壌負荷を特定するように構成され、前記動物保護時間窓(302)を決定するために、前記農業システム(100)は、予め規定され生態毒性閾値に関して前記特定された土壌負荷を評価するように構成される、請求項1~9の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項11】
前記農業システム(100)は、農業生長モデルに基づいて前記農業ゾーン(200)における生長中の若しくは生長させるべき作物の生長段階を特定するように構成され、前記農業システム(100)は、前記作物の前記生長段階に応じて、前記安全時間窓(300)中、前記重複ゾーン(210)において前記農業処理を実行するように構成され、
又は、
前記農業システム(100)は、前記作物の前記生長段階に基づいて農業処理時間窓(304)を決定するように構成され、前記農業処理時間窓(304)は、農業処理が前記農業ゾーン(200)において実行されるべき時間範囲を示す、請求項1~10の少なくとも1項に記載の農業システム(100)。
【請求項12】
動物保護ゾーンに存在する動物種を保護するコンピュータ実装方法(1200)であって、前記コンピュータ実装方法は、
-農業処理が計画されている農業ゾーンを示す農業ゾーンデータを取得又は生成するステップと、
-内部に存在する前記動物種と関連する前記動物保護ゾーンを示す保護ゾーンデータを取得又は生成するステップと、
-前記動物種(402)のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルを提供するステップと、
-前記動物ライフサイクルモデルに基づいて前記動物種のライフステージを特定するステップ(S1)と、
-前記動物種の前記ライフステージに基づいて、前記動物種に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理が前記動物保護ゾーンで実行されるべきではない動物保護時間窓を決定するステップ(S2)と、
-前記農業ゾーンデータ及び前記保護ゾーンデータに基づいて、前記農業ゾーンと前記動物保護ゾーンとの空間的重複として重複ゾーンを決定するステップ(S3)と、
-前記動物保護時間窓に応じて前記重複ゾーン内で農業処理の安全時間窓を決定するステップであって、前記安全時間窓は前記動物保護時間窓と時間的に重ならない、決定するステップ(S4)と、
を含む、コンピュータ実装方法(1200)。
【請求項13】
-気象データにおいて、前記動物ライフサイクルモデルにより前記動物種の前記ライフサイクルをシミュレートするステップ、
-前記農業ゾーンの地理情報に基づいて、又は前記動物得保護ゾーンの地理情報に基づいて、又は前記農業ゾーンの前記地理的場所情報及び前記動物保護ゾーンの前記地理情報に基づいて、前記気象データを取得又は生成するステップ、
-前記動物種の前記シミュレートされたライフサイクルに基づいて、前記動物種が前記重複ゾーンに存在する尤度を特定するステップ、
-前記動物種が前記農業ゾーンに存在する前記特定された尤度に基づいて、前記安全時間窓を決定するステップ、
-前記決定された安全時間窓に基づいて安全時間窓信号を提供するステップ、
-前記農業ゾーンにおいて前記農業処理を実行するよう、ロボット等の農業装置を制御するのに使用可能な安全時間窓信号を提供するステップ、
-ロボット等の農業装置に、前記安全時間窓信号に基づいて前記農業ゾーンにおいて前記農業処理を実行させるステップ、
-前記安全時間窓中、前記重複ゾーンにおいて前記農業処理を実行するステップ、
-前記動物保護時間窓中、前記重複ゾーンにおいて農業処理が実行されないように、前記農業ゾーンにおける前記農業処理を適合させるステップ、
-前記農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得、受信、又は生成するステップ、
-前記作物の前記取得された生長段階に応じて、前記安全時間窓中、前記重複ゾーンにおいて前記農業処理を実行するステップ、
-前記作物の前記生長段階に基づいて農業処理時間窓を決定するステップであって、前記農業処理時間窓は、農業処理が前記農業ゾーンにおいて実行される時間範囲を示す、決定するステップ、
の1つ又は複数を含む請求項12に記載のコンピュータ実装方法(1200)。
【請求項14】
動物種を保護するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、プロセッサ(16)で実行されると、請求項12又は13に記載のコンピュータ実装方法を前記プロセッサ(16)に実行させるプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
コンピュータ可読媒体(18)であって、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品を記憶したコンピュータ可読媒体(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物種を保護するための農業システム、動物種を保護するための方法、及び動物種を保護するための対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
両生類、特にその変態幼体等の動物種によっては、作物畑等の農業ゾーンにおいて定期的に適用される特定の化学製品により悪影響を受け得ることが知られている。そのような化学製品には、作物の生長、収量、及び品質をサポートする特定の肥料及び植物保護製品がある。これらの化学製品を特定の動物保護ゾーン、例えば水域の周囲で適用することは、これらの動物保護ゾーンに存在する特定の動物種を保護するために法律で制限されていることが多い。さらに、野生動物への潜在的な悪影響は、播種、施肥、植物保護製品の適用、収穫、又は圃場における任意の他の農業処理を含む農業処理を実行する際、合理的な範囲内で可能な限り制限されるべきである。
【0003】
例えば、スイス国特許出願公開第701643A2号明細書には、農業に使用される圃場及び牧草地における隠れた卵を含め、動物を検出する方法及び装置が開示されている。動物は2つの独立したフェーズで探索される。第1のフェーズは、繁殖期に関連し、農業処理とは関係ない。第1のフェーズにおいて、繁殖期開始時に、動物を探して、検出方法を使用してエリア全体を単作し、検出された幼若動物は、より長距離にわたりそれらを検出するための信号提供技術装置でマークされる。第2のフェーズは、農業処理に関連し、農業処理が圃場で実行される直前に実行される。第2のフェーズにおいて、農業処理を妨げられずに実行できるようにするために、動物を圃場から出すために、受信機装置が使用されて、マークされた動物を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、農業処理を実行している間、動物を保護できるようにする、動物種を保護する農業システムを提供することであることがわかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様において、動物保護ゾーンに存在する動物種を保護する農業システムが提示される。農業システムは、
-農業処理が計画されている農業ゾーンを示す農業ゾーンデータを取得又は生成することと、
-存在する動物種と関連する動物保護ゾーンを示す保護ゾーンデータを取得又は生成することと、
-動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルを提供することと、
-動物ライフサイクルモデルに基づいて動物種のライフステージを特定することと、
-動物種のライフステージに基づいて、動物種を保護するために、動物種に影響、特に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理が動物保護ゾーンで実行されるべきではない動物保護時間窓を決定することと、
-農業ゾーンデータ及び保護ゾーンデータに基づいて、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複として重複ゾーンを決定することと、
-動物保護時間窓に応じて重複ゾーン内で農業処理の安全時間窓を決定することであって、安全時間窓は動物保護時間窓と時間的に重ならない、決定することと、
を行うように構成される。
【0006】
本説明の枠組みでは、「シミュレートする」という用語は、予測、算出、推定、又はモデリング等を含め、広義で理解されるべきである。したがって、動物種のライフサイクルをシミュレートすることは、動物種のライフサイクルの予測、推定、算出、又はモデリング等により達成し得る。
【0007】
重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓は動物保護時間窓に応じて決定され、安全時間窓は動物保護時間窓と時間的に重ならないため、重複ゾーンにおける動物への悪影響は、安全時間窓中のみ、重複ゾーンで農業処理(動物種に悪影響を及ぼす恐れがある)を実行することにより回避することができる。これにより、例えば、個々の動物のマーキング、追跡、及び農業ゾーン、例えば作物畑外への移動が必要ないため、費用又は労力を下げることができる。
【0008】
本発明による農業システムには、より高位のオートメーションを達成することができるという更なる利点がある。特に、本農業システムを用いれば、人が農業ゾーンを頻繁に訪れて、農業ゾーンに潜在的に存在する動物種に容認できないほどの影響を及ぼすことなく農業処理をいつ実行することができるか見つけ出す必要ない。さらに、動物種の現在のライフステージに従って、動物種に容認できないほどの影響を及ぼすことなく農業処理を実行することができるか否かを査定するために、そのような動物種のライフステージを定期的に確認する必要がない。
【0009】
本発明による農業システムには、動物種の保護及び農業処理を互いとよりよく連携させることができるという更なる利点がある。動物保護と農業処理との連携は、1年中、特定の数日単位で確実に達成することさえ可能である。したがって、農業ゾーンを構成する特定の作物畑での農業処理の実行をかなり事前に計画することが可能である。これにより、農業ゾーンのうちの少なくとも1つに存在する動物種を保護する要件に最良に合うように、複数の農業ゾーンのうちのどの農業ゾーンがどの順序で処理されるべきかを計画することが可能になる。
【0010】
本発明による農業システムには、農業処置の精度を上げることができるという更なる利点がある。特に、本農業システムを用いれば、作物の生長、収量、及び品質にとって農業処理が特に好適であり、それと同時に動物種に悪影響を及ぼすリスクを下げる時間範囲、例えば、好ましい時間窓を確実に決定しことが可能である。これは、農業処理に適したときを決定するために、動物保護ゾーンにおける動物種の現在のライフステージ及び農業ゾーンの作物の現在の生長段階の少なくとも一方を考慮に入れることができるため、本農業システムにより達成することができる。
【0011】
農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータは、技術データ、特に気象データ、地理データ、農学データ、センサ、カメラ又は衛星データ、GPSデータ、ロケーションデータ等であり得る。
【0012】
農業ゾーンデータは、農業処理が計画される農業ゾーンの場所及び空間範囲を、例えば地理座標に関して表し得る。
【0013】
保護ゾーンデータは、保護される動物のタイプ、即ち動物種と、動物種と関連する動物保護の空間範囲とを表し得る。
【0014】
農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータは、例えば特定のエリアをデジタルマップ上で選択されると、農業システムにより生成、例えば自動的に生成することができる。デジタルマップ上での特定のエリアの選択は、ユーザ入力、公に利用可能な又は市販の地理情報に基づいて実行し得る。農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータは、農業システムに特定の情報が提供されると生成することができる。例えば、ユーザは、場所の名称、場所の地理座標、又は地理情報を農業システムに入力し得え、農業システムは次いで、この情報に基づいて、各農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータを生成する。より詳細に以下述べるように、地理情報は、各ゾーンの場所と、各ゾーンのエリア情報を含み得る。
【0015】
これに加えて又は代えて、農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータは、例えば外部サーバに記憶されたデータベースから農業システムにより取得し得る。取得することは、データベースから農業システムを用いてデータを能動的に要求することを含み得、即ち、データ伝送は農業システムにより開始される。データを取得することは、データベースから農業システムにデータを検索することを含むこともでき、即ち、データ伝送は、データベースを記憶している外部サーバにより開始される。
【0016】
動物種は、例えば、鳥種又は両生類種、好ましくは、ヨーロッパヒキガエル等のヒキガエル種、カエル種、イモリ種、又はサンショウウオ種であり得る。動物種は、例えば、水域中の幼生として始まり、変態形態を介して成体に成長する両生類種であり得る。これらの両生類種は全て、幾つかが互いに対して時間シフトされる類似したライフサイクルを有する。ライフサイクルは一般に、動物種の動物が卵の形態で存在し、次いで水域中でおたまじゃくしとして生きる第1段階を含む。続けて、変態は、例えば、出生池の周囲約290メートルのゾーン内のヨーロッパヒキガエルの場合、出生池に近い陸に移って生きる。
【0017】
本発明は、動物種によっては、ライフサイクルの特定のライフステージ中、特定の農業処理により悪影響を受け得るという認識を含む。例えば、ヨーロッパヒキガエルは、若く小さいとき、即ち、変態幼生のとき、植物保護製品等の化学製品の適用により、ライフサイクルの特定のライフステージ中、特定の状況下で悪影響を受け得る。これは主に、比較的高い表面対質量比によって生じがちである。ライフサイクルに応じて、ヒキガエル変態幼生は出生池又はその近傍に存在する。典型的には、ヨーロッパヒキガエル変態幼生は、冬の生息地への移動を開始するのに十分に強健になるまで、出生池の周囲約290メートルのゾーン内に留まる。ヨーロッパヒキガエル変態幼生の生存場所である池の動物保護ゾーンは、水域から約290メートルまで広がる、池又は水域の周囲ゾーンとして画定し得る。他の動物種の場合、他の動物保護ゾーンを画定し得る。例えば、他の動物種の場合、動物保護ゾーンは、森に関して画定し得、その森の周囲ゾーンを含み得る。森又は池の周囲の周囲ゾーンは、各動物保護ゾーンにおいて潜在的に生きている特定の動物種に応じて、森又は池から数メートル、例えば10メートルのみの広がりであってもよく、他の場合、最大で500メートル等の290メートルを超える広がりであってもよい。
【0018】
特定の場合、作物畑等の農業ゾーンは、動物保護ゾーンと少なくとも部分的に重複し得る。農業ゾーンでは、作物を生長させるために、種々の形態の農業処理を実行する必要がある。動物種を保護するために、動物種、より詳細には特定のライフステージに悪影響を及ぼし得る農業処理は、動物保護時間窓中、重複ゾーン内で実行されるべきではない。重複ゾーンは、農業ゾーン、例えば作物畑と動物保護ゾーンとの空間的重複により画定し得る。
【0019】
しかしながら、動物種、例えばヒキガエル変態幼生が重複ゾーンから去ってしまっているか、又はまだ存在していない場合、そのような重複ゾーンにおいて、変態幼生に悪影響を及ぼす農業処理が実行されてもよい。さらに、保護すべき動物種が潜在的に存在しても、例えば、土壌負荷が予め規定される生態毒性閾値を下回ると予期される場合、農業処理は重複ゾーンにおいて実行され得る。これは、作物付着が十分に高い場合であり得る。作物付着は、土壌表層に到達しない、例えば化学製品の相対量として特徴付けられる。これは、付着が高い場合、土壌負荷が小さいことを意味する。例えば、重複ゾーンにおける作物は、土壌及び潜在的に存在する動物に実際に到達する化学製品量が十分に低いように大量の土壌を覆う生長段階に達していることがある。したがって、大きなコップカバーは、大きな作物付着及び小さな土壌負荷に繋がり得る。
【0020】
農業システムは、動物種のライフステージに基づいて安全時間窓を決定するのに使用し得る。安全時間窓は、例えば、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するのに好適な日数等の時間範囲に対応し得る。それにより、農業システムは、ユーザが、農業ゾーンにおいて、動物種に悪影響を及ぼす、容認できないほどのリスクをとることなく、農業処理をいつ実行することが可能であるかについての知識を得られるようにする。例えば、農業システムは、動物種、より詳細には動物種の特定のライフステージに悪影響を及ぼすリスクが許容可能な状態で農業処理を実行可能であるときの予測、例えば、10日予測を提供するように構成し得る。
【0021】
これは、動物種のライフステージを特定し、ライフステージ、重複ゾーン、及び重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓に基づいて動物保護時間窓を決定することにより、農業システムにより達成される。特に、動物種のライフステージから、農業システムにより、例えば、動物種の変態幼生が現在、重複ゾーンに存在しているか否かを導出し得る。したがって、動物種のライフステージに基づいて、農業システムは、動物種の悪影響を及ぼし得る農業処理が重複ゾーンにおいて実行されるべきではない時間範囲を表す動物保護時間窓を決定し得る。動物保護時間窓中、例えば、動物種の変態幼生は重複ゾーンに存在すると予期される。動物保護時間窓に基づいて、農業システムは、重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓を決定する。重複ゾーンは、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複から決定される。安全時間窓中、重複ゾーンにおける農業処理は、動物種の動物、より詳細には動物種の特定のライフステージに悪影響を及ぼすことなく実行することができる。
【0022】
農業処理は、農業ゾーン、例えば作物圃場における作物を生長させるため及び作物を収穫するために実行される全ての作業に関する。動物種、より詳細には動物種の特定のライフステージに悪影響を及ぼし得る農業処理は、例えば、播種、化学製品の適用、収穫、又は動物種に悪影響を及ぼし得る任意の他の農業処理を含み得る。特定の農業処理が動物種に悪影響を及ぼし得るか否かは、動物種、そのライフステージ、及び特定の農業処理に依存する。例えば、特定の化学製品を重複ゾーンにおいて適用することは特定の動物種に悪影響を及ぼし得るが、他の動物種はその化学製品による影響を受けないことがある。さらに、特定の化学製品の重複ゾーンにおける適用が特定の動物種に悪影響を及ぼすか否かは、適用される化学製品の濃度及び/又は量に依存し得る。換言すれば、動物種に悪影響を及ぼさない農業処理の実行は動物保護時間窓中でさえも実行することができるため、安全時間窓を決定するために、好ましくは、動物種に悪影響を及ぼし得る農業処理のみが考慮される。
【0023】
動物保護ゾーンは、農業処理による悪影響を受け得る動物種が少なくとも一時的に存在するゾーンに対応し得る。動物種は、異なる動物保護ゾーンで一時的に生存し得、動物種の異なる群が異なる動物保護ゾーンで生存し得、動物保護ゾーンは農業ゾーンとの重複ゾーンを有し得る。動物種の2つの異なるライフステージは、例えば、成体及び変態幼体であり得る。動物保護ゾーンは、例えば、森及び水域並びに水域及び/又は森の周囲ゾーンの1つ又は複数を含み得る。水域の周囲ゾーンの広がりは、特定の動物種で固定され得、例えば、ヨーロッパヒキガエルの変態幼体では水域の290m周囲であり得、又は更なるパラメータ、例えば、気象状況等の環境パラメータ、例えば、気温、湿度、若しくは降水量、又は例えば、動物種のライフステージを示す任意の他の環境パラメータに更に依存し得る。
【0024】
動物保護ゾーンは、好ましくは、動物種が生存する又は動物種が、動物種のライフサイクル中、特定の期間にわたって存在するゾーンである。動物保護ゾーンは、動物種の移動ルートを含むこともできる。好ましくは、動物保護ゾーンは、少なくとも1つの水域と、1つ又は複数の水域の周囲の陸地とを含むゾーンを囲む境界により画定される。動物保護ゾーンは、例えば、動物種、特に特定のライフステージ、例えば変態幼体が、その動物種の特定のライフステージ中に特定の尤度、例えば80%又は90%で存在するゾーンとして画定し得る。動物保護ゾーンの境界は、例えば、水域の岸からの一定距離に基づいて決定し得る。例えば、動物保護ゾーンは、水域の岸から径方向に290メートルまで又は300メートルまで広がり得る。1つの水域と関連する周囲ゾーンは、他の水域の周囲ゾーンと重複し得、したがって、2つ以上の周囲ゾーンから統合された動物保護ゾーンを形成し得る。
【0025】
重複ゾーンは、農業ゾーンの一部であるため農業処理の実行が計画されるゾーンである。同時に、重複ゾーンは、動物種が潜在的に存在し得るゾーンである。動物種が重複ゾーンに存在する場合、一般に、動物種を保護するために、動物種に悪影響を及ぼし得る農業処理は重複ゾーンで実行されるべきではない。これは、保護すべき動物種が重複ゾーンに潜在的に存在するにも関わらず、農業処理が実行されることも依然として含み得る。例えば、農業処理は、重複ゾーンに潜在的に存在する動物種が容認できないほどの影響を受けないように適合された農業処理パラメータを用いて実行され得る。さらに、農業処理は依然として、例えば、作物付着が十分に高い場合、動物種に悪影響を及ぼすことなく実行され得る。例えば、重複ゾーンにおける作物は、化学製品の土壌負荷が十分に低下するよう大量の土壌を覆うような生長段階に達していることがある。動物種が重複ゾーンに存在する確率が最も高いときを特定するために、農業システムは、その動物種のライフサイクル内の現在のライフステージを特定できるようにする、その動物種の動物ライフサイクルモデルを採用するように構成される。
【0026】
動物保護時間窓は、動物種、特に特定のライフステージ、例えばその変態幼生が農業処理により悪影響を受け得る特定の時間範囲に対応する。動物ライフサイクルモデルは、動物種、例えば、ヨーロッパヒキガエル等の両生類種に依存する。動物ライフサイクルモデルは、統計モデル、例えば回帰モデルであり得る。動物ライフサイクルモデルは、例えば、両生類の場合、幼若動物で3つのライフステージ、即ち、水域における卵又はおたまじゃくしである第1のライフステージ、出生池に近い、例えば出生池から290m距離以内の陸上の変態幼生である第2のライフステージ、及び農業ゾーンの広い部分を通して移動する、成長した変態幼生又は幼動物である第3のライフステージをそれぞれ含み得る。動物保護時間窓は、例えば、第2のライフステージ及び/又は第3のライフステージを含み得る。更なる10日が、例えば、変態幼体が消失し始めた後、追加されてもよい。
【0027】
例えば、農業システムは以下を備え得る:
-農業処理が計画される農業ゾーンを示す農業ゾーンデータを取得又は生成するように構成された農業ゾーンデータ提供ユニット、
-存在する動物種と関連する動物保護ゾーンを示す保護ゾーンデータを取得又は生成するように構成された動物保護ゾーンデータ提供ユニット、
-動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルを提供するように構成された動物ライフサイクルモデル提供ユニット、
-動物ライフサイクルモデルに基づいて動物種の1つ又は複数のライフステージを特定するように構成されたライフステージ特定ユニット、
-動物種のライフステージに基づいて、動物種を保護するために、動物種に影響、特に悪影響を及ぼし得る農業処理が動物保護ゾーンにおいて実行されるべきではない動物保護時間窓を決定するように構成された動物保護時間窓決定ユニット、
-農業ゾーンデータ及び保護ゾーンデータに基づいて、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複として重複ゾーンを決定するように構成された重複ゾーン決定ユニット、及び
-動物保護時間窓に応じて重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓を決定するように構成された安全時間窓決定ユニットであって、安全時間窓は動物保護時間窓と時間的に重ならない、安全時間窓決定ユニット。
【0028】
農業システムは、決定された安全時間窓に基づいて安全時間窓信号を提供又は生成するように構成された出力ユニットを更に含み得る。好ましくは、提供される安全時間窓信号は、決定された安全時間窓中、決定された重複ゾーン内で農業処理を実行するように農業装置を制御するのに適する。特に、提供される安全時間窓信号が、決定された動物保護時間窓中、重複ゾーン内で農業処理を実行しないように又は農業処理パラメータを変更することにより農業処理を別様に実行するように農業装置を制御するのに適することが好ましい。
【0029】
例えば、農業ゾーンデータ提供ユニット、保護ゾーンデータ提供ユニット、及び/又は出力ユニットは、農業ゾーンデータ、保護ゾーンデータ、及び/又は安全時間窓信号をそれぞれ受信及び/又は送信するように構成された通信インタフェースの一部であり得る。安全時間窓信号は、決定された安全時間窓を示す安全時間窓データを表し得る。農業ゾーンデータ提供ユニット及び/又は保護ゾーンデータ提供ユニットは、各農業ゾーンデータ及び/又は保護ゾーンデータを記憶及び提供するメモリ構成要素又はクラウドとして実施されてもよい。動物ライフサイクルモデル提供ユニットは、動物ライフサイクルモデルを記憶及び提供するメモリ構成要素又はクラウドであり得る。農業システムは、農業生長モデルを提供する予行された農業生長モデル提供ユニットを更に備え得る。農業生長モデル提供ユニットは、農業生長モデルを記憶及び提供するメモリ構成要素又はクラウドであり得る。農業システムは、農業生長モデルに基づいて、農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定するように構成された生長段階特定油にデータを更に備え得る。好ましくは、農業システム、例えば、生長段階特定ユニットは、重複ゾーン内で土壌表層に到達する化学製品の相対量を示す作物付着を特定するように構成され、本システムは、特定された作物付着に応じて動物保護時間窓を決定するように構成される。さらに、農業システム、例えば、生長段階特定ユニットは、農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定するように更に構成し得、生長段階は、農業生長モデルに基づいて特定され、そして農業システムは、特定された生長段階に応じて動物保護時間窓を決定するように更に構成し得る。これに加えて又は代えて、農業システム、例えば生長段階特定ユニットは、農業生長モデルを使用して作物の生長段階に基づいて作物付着を特定し、特定された作物付着を使用して土壌負荷を特定するように構成し得、動物保護時間窓を決定するために、農業システム、例えば生長段階特定ユニットは、予め規定された生態毒性閾値に関連して、特定された土壌負荷を評価するように構成される。
【0030】
ライフステージ特定ユニット、生長段階特定ユニット、動物保護時間窓決定ユニット、重複ゾーン決定ユニット、及び安全時間窓決定ユニットは、1つ又は複数のプロセッサ又は処理ユニットとして実施し得る。1つ又は複数のプロセッサは、同じ計算装置の一部であってもよく又は幾つかの異なる処理装置にわたり分散してもよい。
【0031】
したがって、農業システムは、通信インタフェース、プロセッサ、及びメモリ構成要素を含み得る。通信インタフェースは、農業ゾーンデータ、保護ゾーンデータ、安全時間窓信号、及び/又は気象データ等のデータを交換するために、送受信機及び1つ又は複数のアンテナを含み得る。これに代えて又は加えて、通信インタフェースは、キーボード、ディスプレイ、マウス、タッチディスプレイ等の、ユーザと対話するためのユーザインタフェースを含み得る。プロセッサは、例えば、算出を実行することにより農業ゾーンデータ、保護ゾーンデータ、及び/又は気象データ等のデータを処理するように構成し得る。プロセッサは、重複ゾーンを特定し、安全時間窓を決定するように構成し得る。メモリ構成要素は、データを例えばデータベースに記憶するように構成し得る。
【0032】
動物ライフサイクルモデルは、環境パラメータに基づいて、特に気象データに基づいて動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成し得る。気象データは、動物種のライフサイクル内のライフステージを特定する動物ライフサイクルモデルへの入力として使用し得る。農業システムは、例えば、動物ライフサイクルモデルを使用して、気象データに基づいて動物種のライフステージを推定するように構成し得る。動物ライフサイクルモデルは、例えば、特定の深さの土壌温度、気温、及び降水量を含む気象データ並びに例えば動物の出生場所まで異なる距離に置かれたフェンスに基づく、気象データに応じた動物種、特に成年動物の場所の追跡データ及び幼若動物の捕獲場所に基づいて生成されてもよく又は当該気象データを入力として使用し得る。
【0033】
気象データは、例えば、農業システムのデータベースに記憶し得る。気象データは、農業システムに接続された1つ又は複数の外部サーバ上の、農業システムによりアクセスすることができる任意の他のデータベースに記憶されてもよい。例えば、外部サーバは、気象衛星ネットワーク又は気象ステーションネットワークを含み得る。外部サーバは、例えば、降水量、温度、及び湿度を含む気象情報を感知するセンサからのデータを受信し得る。気象情報は、例えば、土壌温度、気温、湿度、及び降水量を含み得る。外部サーバは、気象情報を集め、気象情報から気象データを形成し得る。
【0034】
気象データは、例えば、直近の過去2年間、3年間、4年間、又は5年間等の1つ又は複数の過去の年の気候情報を含む過去気候データを含み得る。気象情報は、天気予報、即ち、将来に予期される天気、例えば10日天気予報を提供するのに使用することもでき、これは気象データに含められ得る。農業システムは、例えば、気象データに含まれる天気予報に基づいて、将来の動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成し得る。
【0035】
気象データは、測定された気温及び/又は土壌温度、例えば、直近の過去2年間の温度プロファイル又は天気予報として、例えば来る10日間に予期される気温プロファイルを含み得る。気象データはこれに代えて又は加えて、測定された降水量、例えば、直近の過去2年間中の降水量を表す降水量プロファイルを含み得る。気象データは、天気予報、例えば、予期される降水量の10日間天気予報を含んでもよい。
【0036】
農業システム、例えば動物保護時間窓決定ユニットは、動物ライフサイクルモデルを使用して、気象データに基づいて、動物種がいつ移動を開始するか、動物種がいつ繁殖するか、及び/又は動物種の子孫がいつ生まれるかを特定するように構成し得る。これらの事象の1つ又は複数は、特定の気温、水温、及び/又は土壌温度及び降水量による影響を受け得る。
【0037】
農業システムは、農業ゾーンの地理情報に基づいて、動物保護ゾーンの地理情報に基づいて、又は農業ゾーンの地理情報及び動物保護ゾーンの地理情報に基づいて、例えば通信インタフェースを介して気象データを取得するように更に構成し得る。
【0038】
各ゾーンの地理情報は、例えば、各ゾーンの場所及び各ゾーンのエリア情報を含み得る。各ゾーンの場所は、例えば、各ゾーンの中心又は各ゾーンの任意の他のポイント等の各ゾーンの特定のポイントに対応し得る。エリア情報は、各ゾーンの広がりを2次元で示す数量を示すエリアを含み得る。エリア情報は、例えば、各ゾーンの区域又は境界をそれぞれ示す各ゾーンの境界座標を含む各ゾーンの境界情報を更に含み得る。
【0039】
農業システムは、動物保護ゾーン、農業ゾーン、又は動物保護ゾーン及び農業ゾーンの場所に基づいて、気象データを取得するように構成し得る。例えば、気象データは、例えば動物保護ゾーンの近傍又は内部の気象ステーションにより取得し得る。これにより、より正確な気象データを提供することが可能になり得、ひいては、動物種のライフステージをより正確に予測することが可能になり得る。
【0040】
地理情報は、例えば、通信インタフェースを介してユーザにより提供し得る。例えば、ユーザは場所を提供し得る。ゾーンのエリア情報が次いで、その場所に基づいてデータベースから選択され得る。これに加えて又は代えて、農業ゾーン及び/又は動物保護ゾーンについての地理情報が、データベースにより提供又はデータベースから受信され得る。データベースは、農業システムに、例えばメモリ構成要素に含まれ得る。代替的には、データベースは、農業システムとは別個であってもよく、例えば、気象ステーション又は気象衛星等の1つ又は複数の外部サーバに記憶されてもよい。動物保護ゾーンの地理情報は、例えば、同じデータベースから受信されてもよく又は別のデータベースから受信されてもよい。農業ゾーンの地理情報及び動物保護ゾーンの地理情報は、同じデータベースに記憶されてもよく又は異なるデータベースに記憶されてもよい。データベースは、地理情報として、各ゾーンのリストと、各ゾーンの各場所に関連する各エリア情報とを含み得る。
【0041】
これに加えて又は代えて、データベースは、例えば、衛星画像又は上から例えば航空機、気球、若しくはドローンから撮影された他の画像を含む、各場所に関連する画像データの形態の地理情報を含み得る。画像データは、例えば、地形図又は地図等のデジタルマップを含み得る。農業システムは、例えば画像認識を実行することにより、各場所の画像データに基づいて各ゾーンの場所及び各ゾーンのエリア情報を特定するように構成し得る。例えば、各ゾーンは、各ゾーンの1つ又は複数の特徴に基づいて特定され得る。農業ゾーンの特徴は、近隣ゾーンと比べて異なる色及び特定の形状特徴を含み得る。動物保護ゾーンの特徴は、不規則な境界形状、青色等の水域、森、若しくは山又は木若しくは岩等のゾーン内の不規則な形状の物体を示す特徴を含み得る。
【0042】
各場所は例えば、場所名、例えば球座標で提供される地理的位置、平面に投影される地図座標、地心地球固定(ECEF)デカルト座標、又はジオコードであり得る。各場所は、例えば、ユーザにより全地球測位システム(GPS)座標又は場所名として提供され得る。
【0043】
農業システム、例えば農業ゾーンデータ提供ユニットは、地理情報に基づいて農業ゾーンを選択し、農業ゾーン周囲の環境の画像データを受信するように構成することもできる。農業システム、例えば動物保護ゾーンデータ提供ユニットは、例えば画像認識に基づいて、画像データから動物保護ゾーンを特定するように構成し得る。これにより、特定の農業ゾーンを選択し、農業ゾーンに近い動物保護ゾーン、特に農業ゾーンと空間的に重なる動物保護ゾーンを自動的に検出することが可能になる。例えば、農業システムは、水域を識別することにより、動物保護ゾーンを自動的に特定するように構成し得る。農業システムは、予め規定された基準1つ若しくは複数水域の周囲ゾーン、例えば、水域の岸から算出された一定距離に境界を有するゾーンを更に特定するように構成し得る。このゾーンは、例えば水域に関して、ある方向と比べて他方の方向でより大きな広がりを有してもよい。例えば、水域の一方の側には農業ゾーンがなく、森が存在する場合、周囲ゾーンは森の中までは広がらなくてよく、一方、農業ゾーンが存在する水域の別の側ではこれが当てはまる。
【0044】
これに代えて又は加えて、動物保護ゾーンは例えば、例えばデジタルマップが可視化されるディスプレイを含む通信インタフェースを使用してユーザにより画定されてもよい。ユーザは、動物保護ゾーンの境界を入力として農業システムに提供し得る。
【0045】
これに代えて又は加えて、動物保護ゾーンは、デジタルマップ上で示された動物種の生息地に基づいて、例えば動物保護ゾーンデータ提供ユニットにより自動的に特定されてもよい。生息地は、例えば同物ライフサイクルモデルに基づいて、動物種の異なるライフステージに割り当てられ得る。重複ゾーンを可視化するために、このデジタルマップに、例えば農業ゾーンを示す地形図を重ねてもよい。
【0046】
農業ゾーンは、通信インタフェースを使用してユーザ入力により画定され、例えば、同物保護ゾーンデータ提供ユニットにより取得されてもよい。例えば、ディスプレイは、ユーザによる入力に基づいて場所を示すデジタルマップを表示し得る。ユーザは、マップ上で農業ゾーンの境界を選択し得、農業システムは、ユーザ入力に基づいて、農業ゾーン並びにその場所及びエリア情報を特定するように構成し得る。代替的には、農業ゾーンの境界の地理的位置は、緯度及び経度として提供されてもよい。
【0047】
農業システム、例えば重複ゾーン特定ユニットは、動物保護ゾーンの地理情報及び農業ゾーンの地理情報に基づいて、重複ゾーン及びその地理情報を特定するように構成し得る。
【0048】
農業システム、例えば同物保護時間窓決定ユニットは、動物種のシミュレートされたライフサイクルに基づいて、農業ゾーン、特に重複ゾーンにける動物種の存在尤度を特定するように構成し得る。例えば、動物種が出生水域又は出生池におたまじゃくしとして生存する間、動物種は重複ゾーンには存在しない。しかしながら、おたまじゃくしが変態幼生に成長するにつれて、変態幼生は出生水域から出て、隣接する作物畑内に潜在的に移動する。したがって、動物種のシミュレートされたライフサイクルから特定されるライフステージに応じて、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の存在尤度は、例えば動物保護時間窓決定ユニットにより特定することができる。
【0049】
動物ライフサイクルモデルは、動物種のライフステージに基づいて、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の存在尤度を示す時空スコアを特定するように構成された統計モデルであり得る。農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の存在尤度は、これに代えて又は加えて、気象データに依存し得る。
【0050】
農業システム、例えば安全時間窓決定ユニットは、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の特定された存在尤度に基づいて安全時間窓を決定するように構成し得る。例えば、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の存在尤度の閾値が規定され得、閾値を下回ると、動物種は農業ゾーン内に存在していない又は非常に低い確率で存在すると予期される。動物種はある時点で冬の生息地に移動するため、農業ゾーンにおける動物種の存在尤度は、動物種が冬の生息地に移動した後は閾値を下回ることになる。さらに、変態幼生が農業ゾーン、特に重複ゾーンに存在する前も、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける動物種の存在尤度は閾値を下回る。動物保護時間窓は、例えば、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおける変態幼生の発生と、冬の生息地への移動との間の時間範囲として決定し得る。その場合、安全時間窓は、例えば、動物保護時間窓と重ならない時間範囲、即ち、変態幼生の発生前の全ての時間及び冬の生息地への移動後の全ての時間に対応する。
【0051】
農業システム、例えば、出力ユニットは、決定された安全時間窓に基づいて安全時間窓信号を提供するように構成し得る。安全時間窓信号は、安全時間窓中に重複ゾーンにおいて農業処理を実行するように農業装置、例えば、飛行ドローン、トラクター、適用ロボット、又は農業適用ロボット等のロボットを制御するのに使用可能な制御信号を含んでもよく又は当該制御信号であってもよい。これにより、農業処理中、動物種に悪影響を及ぼすリスクを低減するように農業装置、例えばロボットを制御することが可能になる。
【0052】
農業装置は、農業ゾーン、例えば作物畑において播種、施肥、植物保護製品の適用、収穫、又は任意の他の農業処理を実行することを含む農業処理を実行することが可能な任意の機械を含み得る。
【0053】
農業装置は、トラクター、ロボット、飛行ドローン、適用ロボット、又は農業適用ロボットを含んでもよく又はこれらであってもよい。
【0054】
農業装置は、農業処理を完全に自律的に実行するように構成し得る。農業処理を完全に自律的に実行する予行された農業装置は、好ましくは、その環境を感知し、人間の入力があったとしても極わずかな状態で移動し農業処理を実行するように構成される。
【0055】
農業装置は、主に人間の入力があったときに農業処理を実行するように構成し得、即ち、農業装置は主に人間により制御される。この場合、農業装置の運転者又はユーザは、農業システムにより、動物種に悪影響を及ぼすことなく特定の農業ゾーンで農業処理をいつ実行するか指示され得る。
【0056】
農業装置は、農業装置の制御に使用可能な安全時間窓信号を受信するように構成し得るデータ入力ユニットを備え得る。農業装置は、受信した安全時間窓信号を処理し、安全時間窓信号に含まれる情報に従って農業装置を制御するように構成された制御ユニットを更に備え得る。それにより、農業装置のデータ入力により受信された安全時間窓信号を送信することにより農業装置を遠隔制御することが可能である。農業装置は、例えば、農業装置の制御ユニットにより生成し得る農業装置信号を提供するデータ出力を更に備え得る。農業装置信号は、エラーメッセージ等の農業装置のステータス情報を表し得る。農業装置信号は、農業システムにより、特に農業システムの電子装置により受信されるのに使用可能であり得るように生成し得る。例えば、農業装置信号は、農業システムの電子装置の通信インタフェースのアンテナアレイ又は送受信機により受信されるように提供し得る。提供された農業装置信号は、農業システムのプロセッサにより処理され得、農業装置信号に含まれた情報は、例えば、電子装置のディスプレイによりユーザに表示し得る。
【0057】
安全時間窓信号は、農業システムにより、例えばその電子装置により、例えばその出力ユニットにより送信されて、農業装置により処理され得る。安全時間窓信号は、安全時間窓についての情報を、例えば農業装置又はユーザに提供するのに使用可能な情報信号を含んでもよく又は当該情報信号であってもよい。安全時間窓信号は、安全時間窓をディスプレイに表示する表示信号であってもよく又は安全時間窓についての情報をスピーカにより音声で提供するためのオーディオ信号であってもよい。農業装置は、安全時間窓についての情報をユーザに、例えば視覚的及び/又は音声的に提示するように構成し得る。農業装置は、例えば、農業装置通信インタフェース、例えば、安全時間窓についての情報を可視化するディスプレイ及び/又は安全時間窓についての情報をユーザに音声で提供するスピーカを含み得る。
【0058】
これに加えて又は代えて、農業システムは、例えば、動物種に悪影響を及ぼす容認できるほどのリスクで動物種に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理を重複ゾーンにおいて実行し得る安全時間窓を通信インタフェースのディスプレイに表示するように構成し得る。農業システムは、農業ゾーン、動物保護ゾーン、及び重複ゾーンをディスプレイに表示するように構成することもできる。
【0059】
農業システムは、安全時間窓信号に基づいて農業ゾーンで農業処理を実行するように構成されたロボット等の農業装置を備え得る。これに加えて又は代えて、農業システムは、安全時間窓信号に基づいて、農業システム外のロボット等の農業装置を制御するように構成し得る。
【0060】
安全時間窓信号は、ロボット等の農業装置を制御するのに使用可能な制御信号であってもよく又は農業装置により処理されて、安全時間窓信号に含まれる情報に従って農業装置の動作を適合させるのに使用可能であってもよい。ロボット等の農業装置は、自律飛行ドローン又は自律トラクターであり得る。ロボット等の農業装置は、安全時間窓中、動物種に悪影響を及ぼす恐れがあり得る農業処理を重複ゾーンにおいて実行するように構成し得る。
【0061】
農業システム、例えば、農業処理時間窓決定ユニットは、農業処理時間窓を決定するように構成し得る。例えば、農業処理時間窓中、防除圧が高いため、農業処理時間窓は、農業ゾーンにおける農業処理が必要である時間範囲又は収量に関して農業ゾーンにおける農業処理が少なくとも有益である時間範囲を示し得る。農業処理時間窓は、安全時間窓内又は安全時間窓と少なくとも部分的に重なる時間範囲であり得る。代替的には、安全時間窓は、動物保護時間窓と重ならない、農業処理時間窓内の時間範囲であり得る。農業処理時間窓は、動物保護時間窓内又は動物保護時間窓と少なくとも部分的に重なる時間範囲であり得る。好ましくは、農業処理は、農業処理時間窓と安全時間窓との重複により画定される時間窓である好適時間窓内でのみ実行される。好適時間窓中、農業処理は、作物にとって有益であり、それと同時に、動物種に容認できないほどの影響を及ぼさない。したがって、好適時間窓は、安全時間窓内に完全に含まれる。好ましくは、農業処理は、動物保護時間窓と農業処理時間窓との重複により画定される重複時間窓中、実行されない。好適時間窓についての情報は、農業装置の制御に使用可能な安全時間窓信号に含まれ得る。
【0062】
ロボット等の農業装置は、農業処理時間窓中、農業ゾーンにおいて動物種に悪影響を及ぼさない農業処理を実行するように構成し得る。ロボット等の農業装置は、動物保護時間窓中、重複ゾーンを除く農業ゾーンにおいて、動物種に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理を実行するように構成することもできる。農業システムは、重複ゾーンにおける農業処理が動物種に容認できないほど影響を及ばさないように又は動物種に悪影響を及ぼすリスクを下げるために動物種への影響が少なくとも低下するように、動物保護時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理をロボット等の農業装置に適合させるように構成し得る。これにより、農業処理中に動物種に悪影響を及ぼすリスクを下げることが可能になる。
【0063】
好ましくは、農業システムは、安全時間窓中、重複ゾーンにおける農業処理を実行又は制御するように構成される。好ましくは、農業システムは、安全時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するようロボット等の農業装置を制御するように構成される。
【0064】
農業システムは、例えば、安全時間窓中、重複ゾーンを含む農業ゾーンにおいて化学製品の適用等の農業処理を実行するように構成し得る。農業システムは、例えば、ロボット等の農業装置に、安全時間窓中、農業ゾーン、特に重複ゾーンにおいて農業処理を実行させ得る。
【0065】
農業システムは、農業ゾーンにおける例えば、動物保護時間窓中、農業処理が重複ゾーンにおいて実行されるように農業装置を制御することにより、農業処理を適合させるように構成し得る。これにより、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は重複ゾーンにおいて動物保護時間窓中実行されないため、農業処理による動物への悪影響が低減することを保証することが可能になる。一方、重複ゾーンにおける、容認できないほどには動物種に影響を及ぼさない他の農業処理は、動物保護時間窓中、実行されてもよい。くわえて、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は、動物保護時間窓中、重複ゾーンを除く農業ゾーンにおいて実行されてもよい。これにより、最適なゾーンベース又はサブゾーンベースの農業処理が可能になり得る。
【0066】
農業システム、例えば出力ユニットは、適合信号、例えば、ロボット等の農業装置を制御するのに使用可能な制御信号又は動物保護時間窓中、重複ゾーンにおいて、動物種に容認できないほどの影響を及ぼさない農業処理に、農業処理に農業処理を適合させるための情報をユーザに提供するのに使用可能な情報信号を提供するように構成し得る。例えば、農業処理が化学製品の適用の形態で実行される場合、動物種に容認できないほど影響を及ぼさないようにするために、重複ゾーンにおいて化学製品の濃度を適合することができ又は重複ゾーンにおいて別の化学製品を適用してもよい。これにより、動物種に悪影響を及ぼすリスクを低減することが可能になる。さらに、農業処理によっては、重複ゾーンにおいて、動物保護時間窓中であっても実行されるものがある。これは、農業処理の効率を改善し得、収量及び/又は品質を更に上げ得る。
【0067】
農業システムは、例えば生長段階特定ユニットを用いて、農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得するように構成し得る。作物の生長段階を取得することは、ユーザ入力に基づいて作物の生長段階を取得若しくは受信すること又は作物の生長をシミュレートするように構成された農業生長モデルに基づいて作物の生長段階を特定することを含み得る。農業システムは、作物の生長段階に応じて、安全時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理を実行又は制御するように構成し得る。これに代えて又は加えて、農業システムは、作物の生長段階に基づいて農業処理時間窓を決定するように構成し得る。農業システムは、例えば農業処理時間窓決定ユニットを用いて、安全時間窓内に含まれるように農業処理時間窓を決定するように構成し得る。換言すれば、農業処理時間窓は、動物保護時間窓と時間的に重ならない時間範囲に制限され得る。代替的には、農業システムは、例えば安全時間窓決定ユニットを用いて、安全時間窓が農業処理時間窓に含まれ、動物保護時間窓と重ならないように、農業処理時間窓に更に基づいて安全時間窓を決定するように構成し得る。特に、農業システムは、安全時間窓と農業処理時間窓との重複により画定される、農業処理の好適時間窓を決定するように構成し得る。これにより、動物種の保護を保証することができながら、作物の収量及び/又は品質の改善を提供することが可能な安全時間窓を提供することが可能になる。
【0068】
この文章の受信での作物は、農業ゾーンで収穫することができる収量を提供する任意の植物として理解されるべきである。作物は例えば、小麦、トウモロコシ、大豆、牧草、又は形態は何であれ収量を提供する任意の他の植物を含み得る。典型的には、後の時点で生長及び収穫するために、第1の時点で作物は圃場で播種される。作物は、第1の時点で播種又は植え付けられ、数年等のより長い期間にわたって果物を提供し得るように経時生長する果樹等の多年草を含むこともできる。農業ゾーンにおいて植物から収穫することができる収量は、農業ゾーンにおける農業処理に依存する。
【0069】
農業処理時間窓は、植物により提供される収量及び/又はその品質を最適化するために農業処理が実行されるべき時間範囲に対応し得る。例えば、農業処理時間窓は、植物が害虫の影響を受けやすい植物の生長フェーズを示し得る。このフェーズ中、害虫による植物のダメージを回避する必要がある。例えば、植物は、害虫による植物へのダメージを回避するために、農業処理時間窓中に適用される化学製品を用いて保護することができる。
【0070】
農業生長モデルは、例えば、入力として作物タイプ及び/又は植え付け日を使用するように構成し得る。作物タイプ及び/又は植え付け日は、例えばユーザから取得又はユーザにより受信し得る。農業生長モデルは、作物タイプ固有であり得、即ち、生長中の作物タイプの特殊性を考慮し得る。例えば、異なる作物タイプは異なる害虫による影響を受け得、農業ゾーンにおける収量を最適化するために、異なる農業処理を必要とし得る。特に、化学製品の適用等の異なる農業処理は、異なる作物タイプで異なる農業処理時間窓中に実行される必要があり得る。農業生長モデルは、作物タイプ及び植え付け日に基づいて、農業ゾーンにおける作物の生長段階を特定するように構成し得る。任意選択的に、農業生長モデルは、作物の生長段階を特定するために、更なる入力パラメータを使用するように構成し得る。更なる入力パラメータは、例えば、どの化学製品を適用すべきか、又は農業ゾーンの土壌タイプ、実際の防除圧、気象情報、例えば温度若しくは降水量、又は植物のステータスを示す任意の他の環境パラメータ等の環境パラメータを含み得る。農業生長モデルは、例えば、気象データに基づいて作物の生長段階をシミュレートするように構成し得る。
【0071】
代替的には、作物の生長段階は、例えば、ユーザ入力に基づいてユーザから取得又はユーザにより受信され得る。農業生長モデルは、作物の生長段階に基づいて農業処理時間窓を決定するように構成し得、例えば、農業処理時間窓中、収量を最適化するために農業処理が実行されるべきである。作物の生長段階は、例えば、BBCH(Biologische Bundesanstalt,Bundessortenamt and Chemical industry)生長段階であり得、作物の生長段階は、例えば、“Growth stages of mono-and dicotyledonous plants BBCH Monograph”、Uwe Meier編、Quedlinburg発行、2018年(DOI:10.5073/20180906-074619)において規定されるようにBBCH値により示すことができる。例えば、秋まき小麦の場合、殺菌剤を適用する農業処理時間窓は、この時間窓中、防除圧が高いことに起因しBBCH30~65であり得る。
【0072】
好ましくは、農業システムは、農業生長モデルに基づいて、農業ゾーンで生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定するように構成され、農業システムは、作物の生長段階に応じて、安全時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するように構成される。代替的には、農業システムは、作物の生長段階に基づいて農業処理時間窓を決定するように構成し得、農業処理時間窓は、農業ゾーンにおいて農業処理が実行されるべき時間範囲を示す。
【0073】
作物の生長段階は、動物保護時間窓をより正確に決定するために使用することもできる。即ち、作物が特定の生長段階に達した場合、作物は、土壌上で生存している動物種の保護に寄与し得る。例えば、特定の生長段階において、作物は、作物畑に適用される化学製品のうち、土壌、ひいては動物種に到達する量がわずかな量である程度まで地面を覆い得る。換言すれば、作物付着、即ち、実際には土壌に到達しない化学製品の相対量は、作物が土壌の大部分を覆う場合、大幅に増大することができる。したがって、化学製品が実際に土壌に到達する程度をより正確に特定するために、作物の生長段階を考慮に入れ、特に、それに基づいて作物付着を考慮に入れることが可能である。作物付着が十分に大きい場合、保護すべき動物種が潜在的に存在し得るにも関わらず、化学製品を重複ゾーンにおいて適用することが可能であり得る。これは、作物の生長段階、特に作物付着を考慮に入れた場合、作物の生長段階を考慮せずに決定された動物保護時間窓と比べて短い期間を有する動物保護時間窓を決定することが可能であり得ることを意味する。
【0074】
したがって、農業システムが、作物の特定された生長段階に応じて動物保護時間窓を決定するために、作物付着を特定するように更に構成されることが好ましい。
【0075】
例えば、農業システムは、農業生長モデルに基づいて農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定し、作物の特定された生長段階に応じて動物保護時間窓を決定するように構成し得る。好ましくは、農業システムは、特定された生長段階に基づいて作物付着を特定するように構成される。さらに、農業システムは、特定された作物付着を使用して土壌負荷を特定するように構成し得る。好ましくは、動物保護時間窓を決定するために、農業システム、例えば動物保護時間窓決定ユニットは、予め規定された生態毒性閾値に関して、特定された付着及び/又は土壌負荷を評価するように構成される。例えば、特定された土壌負荷が予め規定される生態毒性閾値を上回る場合、重複ゾーンにおいて農業処理を実行しないように農業装置を制御するのに適した安全時間窓信号を生成し得る。しかし、特定された土壌負荷が予め規定される生態毒性閾値を下回る場合、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するように農業装置を制御するのに適した安全時間窓信号を生成し得る。
【0076】
例えば、農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を特定することにより、作物付着を特定するように構成された農業システムの動作において、農業システムは、例えばシミュレートされたBBCH段階をベースとして使用してシミュレートされた作物付着に基づいて、動物保護時間窓中、重複ゾーンにおける動物種への化学製品の暴露を決定し得る。特定された作物付着に基づいて、土壌、即ち、動物種が存在し得る(例えば、両生類の場合)エリアに到達する暴露(土壌負荷と呼ばれる)を算出し、生態毒性閾値と比較され得、生態毒性閾値は典型的には、植物保護製品を承認する規制当局により設定される。土壌負荷が生態毒性閾値を下回る場合、動物保護時間窓は安全時間窓に変更され、重複ゾーンにおける農業処理を可能にし得る。土壌負荷が生態毒性閾値よりも高い場合、農業処理は実行されず又は農業システムは、動物保護時間窓を安全時間窓に変えるために、信号の生成に使用することができる農業処理パラメータのどの変更が必要であるか、例えば、化学製品の濃度又は適用量の低減が必要であると判断し得る。したがって、農業システムを用いて、生態毒性閾値を下回る土壌負荷を生じさせる農業処理に繋がる1つ又は複数の農業処理パラメータのセットを決定することが可能である。1つ又は複数の農業処理パラメータのそのようなセットを決定することができる場合、保護すべき動物種が潜在的に重複ゾーンに存在する場合であっても、農業処理を重複ゾーンにおいて実行し得る。
【0077】
農業システムは、動物保護時間窓中に重複ゾーンで実行される農業処理が、動物種に容認できないほどの影響を及ぼしていないように又は動物種に容認できないほどの影響を及ぼさないように、農業ゾーンにおける農業処理を適合するように構成し得る。
【0078】
農業システムは、農業処理時間窓信号を提供するように構成し得る。農業処理時間窓信号は、農業処理時間窓についての情報を含み得及び/又は農業処理時間窓を表し得る。農業処理時間窓信号は、ロボット等の農業装置に送信されるのに使用することができる。ロボット等の農業装置は、農業処理時間窓信号に基づいて農業処理時間窓内で及び/又は安全時間窓信号に基づいて安全時間窓内で農業処理を実行するように構成し得る。
【0079】
データベースは幾つかのデータ層を含み得る。データ層の1つは、農業ゾーン及び動物保護ゾーンの地理情報を含み得る。例えば、地理情報は、ルックアップテーブル(LUT)及び/又はマークされたゾーンがある高解像度マップとうの画像データに含まれ得る。画像データは、例えば、ゾーンの境界座標と、農業処理が実行されるべき圃場、水域、森、動物の生息地等のゾーンとを含み得る。データベースは、動物ライフサイクルについての過去データ等の動物種の動物ライフサイクルについての情報が記憶されるデータ層を含むこともできる。さらに、データベースのデータ層の1つは、作物農事と、異なる作物の生長についての過去データとを含み得る。データベースは、1つのデータ層において、気象データ、例えば、現在の気象データ、予報された気象データ、及び/又は過去の気象データを含むこともできる。データベースのデータ層は、重複ゾーン及び/又は動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理が、容認できないほど動物種に影響を及ぼすリスクが低い状態で重複ゾーンにおいて実行され得る安全時間窓を決定するために農業システムにより使用され得る。
【0080】
農業システム、例えば、安全時間窓決定ユニットは、農業ゾーンの場所及びエリア情報、少なくとも1つの動物保護ゾーンの場所及びエリア情報、農業生長モデル、及び/又は動物ライフサイクルモデルに基づいて、安全時間窓を決定するように構成し得る。
【0081】
動物種は特に、両生類種、好ましくはヒキガエル種であり得る。
【0082】
更なる態様において、動物保護ゾーンに存在する動物種を保護するコンピュータ実装方法が提示される。コンピュータ実施方法は、
-農業処理が計画されている農業ゾーンを示す農業ゾーンデータを取得又は生成するステップと、
-存在する動物種と関連する動物保護ゾーンを示す保護ゾーンデータを取得又は生成するステップと、
-動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルを提供するステップと、
-動物ライフサイクルモデルに基づいて動物種のライフステージを特定するステップと、
-動物種のライフステージに基づいて、動物種を保護するために、動物種に影響、特に悪影響を及ぼす恐れのある農業処理が動物保護ゾーンで実行されるべきではない動物保護時間窓を決定するステップと、
-農業ゾーンデータ及び保護ゾーンデータに基づいて、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複として重複ゾーンを決定するステップと、
-動物保護時間窓に応じて重複ゾーン内で農業処理の安全時間窓を決定するステップであって、安全時間窓は動物保護時間窓と時間的に重ならない、決定するステップと、
を含む。
【0083】
コンピュータ実装方法は、以下のステップの1つ又は複数を更に含み得る:
-気象データにおいて、動物ライフサイクルモデルにより動物種のライフサイクルをシミュレートするステップ、
-農業ゾーンの地理情報に基づいて、動物得保護ゾーンの地理情報に基づいて、又は農業ゾーンの地理的場所情報及び動物保護ゾーンの地理情報に基づいて、気象データを取得するステップ、
-動物種のシミュレートされたライフサイクルに基づいて、動物種が重複ゾーンに存在する尤度を特定するステップ、
-動物種が重複ゾーンに存在する特定された尤度に基づいて、安全時間窓を決定するステップ、
-決定された安全時間窓に基づいて安全時間窓信号を提供するステップと、
-農業ゾーンにおいて農業処理を実行するよう、ロボット等の農業装置を制御するのに使用可能な安全時間窓信号を提供するステップ、
-ロボット等の農業装置に、安全時間窓信号に基づいて農業ゾーンにおいて農業処理を実行させるステップ、
-安全時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するステップ、
-動物保護時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理が実行されないように、農業ゾーンにおける農業処理を適合させるステップ、
-農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得、受信、又は生成するステップ、
-作物の取得された生長段階に応じて、安全時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理を実行するステップ、
-作物の生長段階に基づいて農業処理時間窓を決定するステップであって、農業処理時間窓は、農業処理が農業ゾーンにおいて実行される時間範囲を示す、決定するステップ。
【0084】
農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得するステップは、以下のステップの1つを含み得る:
-ユーザ入力に基づいて、農業ゾーンにおいて生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得、受信、又は生成するステップ又は
-作物の生長をシミュレートするように構成された農業生長モデルに基づいて、作物の生長段階を特定するステップ。
【0085】
方法は以下のステップを更に含み得る:
-動物保護時間窓中に重複ゾーンで実行される農業処理が、動物種に容認できないほどの影響を及ぼしていないように又は動物種に容認できないほどの影響を及ぼさないように、農業ゾーンにおける農業処理を適合するステップ、
-農業ゾーンの地理情報に基づく気象データ、動物保護ゾーンの地理情報、又は農業ゾーンの地理情報及び動物保護ゾーンの地理情報を取得又は受信するステップ、
-農業処理時間窓信号を提供するステップ、
-動物保護時間窓中に重複ゾーンで実行される農業処理が動物種に悪影響を及ぼす程度が低くなるか又は動物種に容認できないほどには影響を及ぼさないように、農業ゾーンにおける農業処理を適合させるステップ。
【0086】
更なる態様において、動物種を保護するためのコンピュータプログラム製品が提示される。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラム製品がプロセッサで実行されると、請求項12若しくは13に記載のコンピュータ実装方法又はその方法の任意の実施形態をプロセッサに実行させるためのプログラムコード手段を備える。
【0087】
別の態様では、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品又はそのコンピュータプログラム製品の任意の実施形態を記憶したコンピュータ可読媒体が提示される。
【0088】
請求項1の農業システム、請求項12のコンピュータ実装方法、請求項14のコンピュータプログラム製品、及び請求項15のコンピュータ可読媒体が、特に従属請求項に規定されるように、同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解されたい。
【0089】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上述の実施形態と各々の独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。
【0090】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記述する実施形態を参照することにより明らかにされ、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】動物種を保護するための動物保護ツールの形態の農業システムの一実施形態を模式的に示す。
図2】地形図の1セクションで強調表示された農業ゾーン及び動物保護ゾーンを例示的且つ模式的に示す。
図3】安全時間窓、動物保護時間窓、農業処理時間窓、及び農業処理実行の好適時間窓の時間範囲を模式的且つ例示的に示す。
図4】ヨーロッパヒキガエルの例での両生類の1年を通したライフサイクルを例示的且つ模式的に示す。
図5】ヨーロッパヒキガエルの1年を通した移動を例示的且つ模式的に示す。
図6A】異なるライフステージでの水域からの特定の距離へのヨーロッパヒキガエルの移動を模式的に示す。
図6B】動物保護ゾーンと農業ゾーンとの重複ゾーンにおける動物種の存在確率を示す、異なるライフステージでの水域周囲のヨーロッパヒキガエルの累積分布を例示的に示す。
図7】地形図において強調表示された農業ゾーン及び動物保護ゾーンを示す。
図8】農業ゾーン及び動物保護ゾーンを有する別の地形図を示す。
図9】農業ゾーンと、農業ゾーンと空間的に重なる動物保護ゾーンを形成する2つの動物保護サブゾーンとを有する地形図を示す。
図10】続く11年間にわたる両生類年間ライフフェーズを模式的に示す。
図11】農業処理を実行する安全時間窓を決定するために図1の農業システムにより使用される3つのデータ層を模式的に示す。
図12】動物保護ゾーンに存在する動物種を保護するコンピュータ実装方法の一実施形態の模式的且つ例示的な流れ図を示す。
図13】衛星画像として記録された特定のエリアのデジタルマップと、選択された作物畑での化学製品の意図された適用の詳細を入力するための入力マスクとを示すグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図14】1年中の幾つかの異なる日での冬の生息地の異なる生長段階を示す続くグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図15】意図された化学製品の適用のために選択された日で化学製品をいつ適用するかについての情報を提供するための続くグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図16】化学製品の適用が意図される別の日で化学製品をいつ適用するかについての情報を提供するための続くグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図17】作物付着及び土壌負荷情報を含む続くグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図18】意図される適用率を下げた続くグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
図19】続く更なるグラフィカルユーザインタフェース画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1は、動物保護ゾーン202(図2参照)に存在する動物種を保護するための動物保護ツールの形態の農業システム100の一実施形態を模式的に示す。この実施形態では、農業システム100は、両生類種、特にヒキガエル種、即ちヨーロッパヒキガエルを保護するのに使用し得る。
【0093】
農業システム100は、携帯電話又はタブレットコンピュータ等のポータブル電子装置10を備える。さらに、この実施形態では、農業システム100は農業装置を更に含み、農業装置は、例えば、電子装置10から受信される制御信号に基づいて農業処理を実行し得るロボット50、例えばトラクター又はドローンである。他の実施形態では、ロボット50は農業システム100の外部にあってもよい。農業システム100は、気象ステーションの形態の外部サーバ150に接続される。他の実施形態では、農業システムは、気象ステーション又は気象衛星等の1つ又は複数のサーバを含んでもよい。
【0094】
電子装置10は、制御ユニット12及び通信インタフェース14を備える。制御ユニット12は、プロセッサ16と、メモリ構成要素18の形態のコンピュータ可読媒体とを有する。プロセッサ16は、データを処理し、算出実行する。メモリ構成要素18は、農業ゾーンデータ、及び/又は保護ゾーンデータ、及び/又は気象データ等のデータを記憶する。メモリ構成要素18は、動物種を保護するコンピュータプログラム製品を更に記憶し得る。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラム製品がプロセッサ16で実行されると、動物種を保護するためのコンピュータ実装方法、例えば、図12に開示されるコンピュータ実装方法の実施形態をプロセッサ16に実行させるプログラムコード手段を含む。メモリ構成要素は、プロセッサ16を使用して電子装置10を動作させる更なるプログラムを記憶し得る。
【0095】
通信インタフェース14は、タッチディスプレイ20、送受信機22、及びアンテナアレイ24の形態のユーザインタフェースを含む。通信インタフェース14は、例えば、ユーザ又は他の装置若しくはサーバと通信するのに使用される。タッチディスプレイ20は、内容をユーザに可視化し、ユーザが、例えばユーザ入力を提供することにより電子装置10と対話できるようにする。送受信機22及びアンテナアレイ24は、電子装置10、ロボット50、及び外部サーバ150間のデータ交換に使用される。データをロボット50と交換するために、送受信機22によりアンテナアレイ24を介してデータリンク28を確率し得る。さらに、外部サーバ150とデータを交換するために、送受信機22は、アンテナアレイ24を介してデータリンク30を確立し得る。
【0096】
以下、両生類、特にヨーロッパヒキガエルを保護する農業システム100の機能について図1図2、及び図3に関して説明する。特に、農業システム100は、動物種に容認できないほどの影響を及ぼすことなく、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理を作物畑(図2参照)の形態の農業ゾーン200において実行し得る好適日数を決定する動物保護ツールとして使用される。特に、農業システム100は、農業ゾーン200の一部、即ち農業ゾーン200と動物保護ゾーン202との空間的重複により形成される重複ゾーン210に存在するヨーロッパヒキガエルの変態幼生に容認できないほどの影響を及ぼすことなく、殺菌剤等の化学製品を農業ゾーン200において適用し得るときを決定するのに使用される。
【0097】
この実施形態では、メモリ構成要素18は、地球又は地球の少なくとも一部の地形図204図2参照)を表す画像データを記憶する。地形図204又はこの地形図204の少なくともセクションは、タッチディスプレイ20上で可視化し得る。
【0098】
ユーザは、タッチディスプレイ20を介して、ユーザが農業処理を実行したい農業ゾーン200についての地理情報を入力として電子装置10に提供し得る。例えば、ユーザは場所名の形態で場所をテキストフィールドに入力し得、それに基づいて、農業システムは農業ゾーンデータを生成する。これに代えて又は加えて、ユーザは、緯度及び経度等の地理座標を入力してもよく及び/又はユーザは、地形図204上で場所を識別する任意の他の手段により、例えば、場所をクリックして地形図204でズームすることにより場所を入力してもよく、それに基づいて、農業システムは農業ゾーンデータを生成する。電子装置10は、場所名を地形図204内の特定場所に関連付け、例えば、生成された農業ゾーンデータを採用してタッチディスプレイ20を介してその場所と、その場所の周囲環境とを示す。
【0099】
ユーザは次いで、地形図204に表示された場所及びその環境におけるゾーンを農業ゾーン200として選択し得る。例えば、ユーザは、タッチディスプレイ20に表示された地形図204上のポイントに触れることにより、農業ゾーン200への境界として機能し、農業システムが農業ゾーンデータを生成する基となる農業ゾーン200の境界を選択し得る。代替的には、境界は、例えば、ゾーン固有の特徴に基づいて農業ゾーン200又は幾つかの農業ゾーンを自動的に検出することにより、画像認識に基づいて農業システム100により自動的に決定し得る。農業システム100は次いで、対応する農業ゾーンデータを生成する。
【0100】
さらに、動物保護ゾーン202又は複数の動物保護ゾーン(図9参照)は、農業ゾーン200の環境において自動的に決定し得る。この実施形態では、動物保護ゾーンは、外部サーバ150に記憶されたデータベースからの保護ゾーンデータに含まれる情報に基づいて決定される。他の実施形態では、保護ゾーンデータを含むデータベースは、農業システム100に含まれてもよい。更に他の実施形態では、動物保護ゾーンは画像認識に基づいて決定されて、対応する保護ゾーンデータを生成し得る。
【0101】
この実施形態では、データベースは水域についての地理情報を含む。電子装置10は、タッチディスプレイ20に表示された農業ゾーン200の環境についてのこの情報を受信する。特に、図2は、農業ゾーン200の環境における水域206を示す。さらに、この実施形態では、プロセッサ16は水域206周囲のゾーン208を自動的に決定する。周囲ゾーン208は一緒に動物保護ゾーン202を形成する。動物種、ここではヨーロッパヒキガエルは、そのライフサイクルの特定のライフステージ中、動物保護ゾーン202に存在する。ゾーン208は、この実施形態では、水域206の境界を使用し、各方向において境界を290m拡張することにより決定される。周囲ゾーンの広がりは、水域に存在する動物種に依存し得る。
【0102】
プロセッサ16は次いで、農業ゾーン200と動物保護ゾーン202との空間的重複に基づいて重複ゾーン210を決定する。この実施形態では、農業ゾーンデータにより表される農業ゾーン200の境界の地理座標及び保護ゾーンデータにより表される動物保護ゾーン202は比較されて、それらが重複するか否かを判断する。図2の地形図204の状況では、動物保護ゾーン202の左上隅が農業ゾーン200内にあると判断される。他の実施形態では、農業ゾーン200と動物保護ゾーン202との空間的重複があるか否かを判断するために、他の地理座標が使用され得る。農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複がない(図8参照)場合、動物種が農業処理の影響を受けやすいライフステージ中、動物種は農業ゾーンにしないため、農業処理は、動物種に悪影響を及ぼすことなく農業ゾーンで随時実行し得る。
【0103】
しかしながら、図2の状況では、農業ゾーン200と動物保護ゾーン202との空間的重複は重複ゾーン210の形態で決定されるため、動物種は、動物保護時間窓302(図3参照)中、重複ゾーン210内で悪影響を受け得る。動物保護時間窓302は、ヨーロッパヒキガエルの変態幼生が動物保護ゾーン202、特に重複ゾーン210に存在し、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理により影響を受け得る時間範囲に対応する。したがって、農業システム100は、重複ゾーン210において動物種が保護される必要があるとき、即ち動物保護時間窓302及び動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理の実行が安全であるとき、即ち、安全時間窓300を決定する。
【0104】
安全時間窓300を決定するために、プロセッサ16はまず、動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成される動物ライフサイクルモデルに基づいて、動物保護ゾーン202に存在する動物種のライフステージ、特にここではヨーロッパヒキガエルのライフステージを特定する。動物種のライフステージの特定及び動物ライフサイクルモデルに関する詳細は、図4図6の説明に関して以下提供する。
【0105】
次いで、動物保護時間窓302が、動物種のライフステージに基づいて決定される。他の実施形態では、農業ゾーンにおける動物種の暴露を低減する、土壌表層に到達しない化学製品の相対量として特徴付けられる付着等の更なるパラメータが考慮され得る。実際に、特定の作物の生長段階により付着が決まり、そして付着により土壌負荷が決まる。付着が大きいほど、土壌負荷は小さい。したがって、大きな付着は、重複ゾーンに潜在的に存在する動物種に悪影響を及ぼすことなく重複ゾーンにおいて化学製品をなお適用することが可能であるために有益である。これは、十分に低い土壌負荷を提供するのに十分に付着が高いため、保護すべき動物種が潜在的に重複ゾーンに存在する場合であっても重複ゾーンにおいて化学製品がなお適用し得る状況に繋がり得る。
【0106】
したがって、農業処理が容認できないほどは動物種に影響しないライフステージは、作物付着による影響を受け得る。これは、動物保護時間窓302を短縮できるようにし得る。動物保護時間窓302中、動物種は、動物ライフサイクルモデルから特定されるライフステージに従って、重複ゾーン210に変態幼生として存在することが予期される。変態幼生は、農業処理により悪影響を受ける恐れがある。したがって、動物種を保護するために、動物保護時間窓302中、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は、動物保護ゾーン202、特に重複ゾーン210において実行されるべきではない。したがって、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は、重複ゾーン210を除く農業ゾーン200において実行し得る。農業処理パラメータが適合された農業処理はなお、重複ゾーンに存在する変態幼生に悪影響を及ぼさない場合、重複ゾーン内で実行し得る。したがって、農業処理は、例えば、化学製品の量、適用パターン、適用率を下げることにより、又は動物種への悪影響がより低い別の化学製品を適用することにより、又は重複ゾーンにおける動物種への影響を低減し得る任意の他の適合により、重複ゾーン210における動物種に容認できないほどの影響を及ぼさないように適合し得る。この場合、適合された農業処理はなお、重複ゾーン210において実行し得、一方、任意の農業処理が農業ゾーン200の残りの部分で実行し得る。
【0107】
この実施形態では、安全時間窓300が次いで、動物保護時間窓302(図3参照)と時間的に重ならない時間範囲として画定される。他の実施形態では、重複ゾーン210における農業処理の安全時間窓300が、安全時間窓300が動物保護時間窓302と時間的に重ならないように、任意の他の様式で動物保護時間窓302に応じて決定することもできる。
【0108】
図3は、異なる時間範囲、特に動物保護時間窓302及び農業処理時間窓304を含む1年の1セクションを開示する。農業処理時間窓304は、農業処理が実行されるべき時間範囲に対応する。例えば、農業処理時間窓304中、高い防除圧が存在し得、害虫をコントロールするために、その時間範囲中に植物保護製品を適用することが有益であり得る。植物保護製品又は他の化学製品の適用は、動物保護時間窓302中、重複ゾーン210における動物種、特にヨーロッパヒキガエルの変態幼生に悪影響を及ぼす恐れがある。したがって、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は、農業処理時間窓304と動物保護時間窓302との時間的重複として決定される重複時間窓306中、実行されるべきではない。重複時間窓306は、安全時間窓300内にない。しかしながら、農業処理、この場合、植物保護製品の適用は、好適時間窓308中、実行し得る。好適時間窓308は、農業処理時間窓304内及び安全時間窓300内にあり、換言すれば、好適時間窓308は、安全時間窓300と農業処理時間窓304との時間的重複として形成される。好適時間窓308中に農業処理を実行することにより、重複ゾーン210における動物種を保護しながら、農業処理を改善することが可能になる。好適時間窓308は、安全時間窓、即ち動物保護時間窓及び農業処理時間窓に基づいて決定される安全時間窓として見なすこともできる。
【0109】
農業処理時間窓304は、農業ゾーン200において生長中の又は生長させるべき作物の生長段階に基づいて決定し得る。農業処理時間窓304を決定するためには、作物の生長段階を取得する必要がある。作物の生長段階は、作物の生長をシミュレートするように構成された農業生長モデルを使用して決定し得る。特に、ユーザは、作物タイプ及び植え付け日を入力し得、農業生長モデルは作物の生長段階を経時特定し得る。農業生長モデルは、更なる環境パラメータに基づいて、例えば、降水量、温度、及び湿度等の気象データに基づいて作物の生長段階を特定し得る。作物の生長段階は、例えば、BBCH値であり得る。作物の生長段階を使用して、特定の農業処理がいつ実行されるべきかを決定し得、換言すれば、作物の生長段階に応じて農業処理時間窓304を決定し得る。代替的には、作物の生長段階は、例えばBBCH値の形態でユーザにより入力として受信されてもよい。
【0110】
作物の特定された生長段階は、作物付着の特定に使用することもできる。作物の生長が大きいほど、典型的には、作物が地面を覆う面積は大きくなる。その結果、作物の生長が大きいほど、適用される化学製品の大部分は作物により地面に到達することが妨げられるため、土壌に到達する化学製品の量は少なくなる。その結果、作物付着は大きい。土壌に実際に到達する化学製品の量は極わずかであるため、土壌上に潜在的に存在する動物種が容認できないほどの影響を受けるリスクを更に下げることができる。これにより、保護すべき動物種が重複ゾーンに潜在的に存在し得るにも関わらず、化学製品を作物に適用することが可能になり得る。したがって、作物の生長段階を考慮に入れることにより、農業処理を重複ゾーンで実行し得る動物保護時間窓をより正確に決定することが可能である。例えば、動物保護時間窓を決定するために作物の生長段階を考慮に入れる場合、動物保護時間窓は、作物の生長段階を考慮せずに決定される動物保護時間窓と比べて比較的短い期間を含み得る。その結果、その結果生じる土壌負荷は、重複ゾーンに潜在的に存在する動物種に悪影響を及ぼすことなく農業処理を重複ゾーン内で実行することができるように十分に低い、即ち、予め規定される生態毒性閾値を下回り得るため、安全時間窓は比較的長い期間を含み得る。
【0111】
電子装置10は次いで、決定された安全時間窓300に基づいて安全時間窓信号を生成する。この実施形態では、安全時間窓信号は、ロボット50の動作を制御するのに使用可能な制御信号である。他の実施形態では、安全時間窓信号は、安全時間窓300についての情報をユーザに提供するのに使用可能な情報信号、例えば表示信号であってもよい。情報信号の形態の安全時間窓信号は、重複ゾーン210における動物に容認できないほどに影響を及ぼすリスクなしで、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理を実行し得る日数の知識をユーザに提供するために、例えば、タッチディスプレイ20を介してユーザに表示されるのに使用可能であり得る。他の実施形態では、これに加えて又は代えて、農業処理時間窓信号及び/又は動物保護時間窓信号を生成し得る。ロボット50は、これらの信号又は農業処理時間窓についての情報に基づいて制御され得及び/又は動物保護時間窓はユーザに表示し得る。
【0112】
この実施形態では、ロボット50は、安全時間窓信号に基づいて、農業ゾーン200、特に重複ゾーン210において農業処理を実行する。特に、ロボット50は、安全時間窓300中、重複ゾーン210における動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理を実行する。他の実施形態では、ロボット50は、動物保護時間窓302中、重複ゾーン210において農業処理が実行されないように適合された農業処理を農業ゾーン200において実行し得る。換言すれば、この場合、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理は、農業処理が実行されない重複ゾーン210を除く農業ゾーン200で実行される。更に他の実施形態では、例えば、適用される化学製品を変更又はその濃度を下げることにより、動物種に容認できないほどの影響は及ぼさない、適合された農業処理は、動物保護時間窓302中、重複ゾーン210において実行し得る。
【0113】
更なる実施形態では、農業システム100は、作物の生長段階に応じて、安全時間窓300中、重複ゾーン210において農業処理を実行するように構成し得る。
【0114】
農業システム100は、両生類に容認できないほどの影響を及ぼすリスクなしで農業処理を実行することができる安全時間窓300を決定できるようにするため、動物種を保護するために、農業ゾーン200、特に重複ゾーン210で動物を探索する必要はない。さらに、例えば農業ゾーンの作物の収量を上げるために、農業処理は、農業処理時間窓中、即ち、農業処理が有益である間、実行し得る。
【0115】
他の実施形態では、安全時間窓の決定に2つ以上の動物種を考慮し得る。この場合、異なる安全時間部分窓を個々の動物種に決定することができ、時間的に重複する時間範囲は安全時間窓として使用し得、全ての動物種を保護できるようにする。
【0116】
動物ライフサイクルモデルについて、図4図5、及び図6に関して以下に説明する。動物ライフサイクルモデルは、動物種のライフステージを特定するために農業システム100により使用される。この実施形態では、動物ライフサイクルモデルは、気象データに基づいて動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成される。この実施形態はヨーロッパヒキガエルに関する。他の実施形態は、他の動物種、特に両生類種を含む。さらに、この実施形態では、動物ライフサイクルモデルは、動物のライフステージに基づいて、農業ゾーン200,特に重複ゾーン210(図2参照)における動物種の存在尤度を示す時空スコアを特定する統計モデルである。
【0117】
農業システム100は、動物保護ゾーン202及び農業ゾーン200又はその近傍における気象をモニタリングする気象ステーションから気象データを受信する。例えば、気象データは、データリンク30を介して外部サーバ150に記憶されたデータベースから受信し得る。気象データは次いで、プロセッサ16により更に処理するためにメモリ構成要素18に記憶することができる。他の実施形態では、農業システム100は、農業ゾーン200の地理情報に基づいて、又は動物保護ゾーン202の地理情報に基づいて、又は農業ゾーン200の地理的場所情報及び動物保護ゾーン202の地理情報に基づいて、気象データを取得するように構成することもできる。
【0118】
気象データは、例えば10cmの深さの土壌温度及び気温の温度プロファイルを含み得る。気象データは、例えば、直近の過去2年にわたる過去データを含み得る。これに加えて又は代えて、気象データは、例えば次の10日間に予期される土壌温度及び気温の温度プロファイルの形態の気象予測を含み得る。これに代えて又は加えて、気象データは、直近の過去2年間に測定された及び/又は気象予報として何らかの将来の時間範囲、例えば来る10日間にわたる降水量を表す降水量プロファイルを含み得る。
【0119】
土壌温度及び気温並びに降水量は動物種の各ライフステージに影響を及ぼすため、動物種のライフステージは気象データに関連し得る。例えば、ヒキガエル変態幼生は、特定の土壌温度及び気温が数日間維持された場合のみ、出生池から出得る。くわえて、ヒキガエル変態幼生が出生池から出ることができるようにするには、これらの日数にわたり特定の降水量がある必要がある。
【0120】
この実施形態では、農業システム100は、気象データ及び動物ライフサイクルモデルを使用して、動物種のシミュレートされたライフサイクルに基づいて重複ゾーン210における動物種、ここではヨーロッパヒキガエルの存在尤度を特定する。
【0121】
図4は、ヨーロッパヒキガエル402の種々のライフステージ、即ち、成体ヒキガエル404、ヒキガエル変態幼生408、及び幼若ヒキガエル412を有する、1月から12月までのヨーロッパヒキガエル402の1年を通したライフサイクル400を模式的に示す。図5は、模式距離表示501を有する地形図500におけるヨーロッパヒキガエル402の1年を通した動き又は移動をそれぞれ模式的に示す。図4中、ヨーロッパヒキガエル402が年の特定の時点で移動する確率を示す、ヨーロッパヒキガエル402の各移動の確率分布406が示されている。確率分布406は、気象データ、特に土壌温度、気温、及び降水量に依存する。
【0122】
典型的に3月から始まって、春移動期間410(図4及び図5参照)中、成体ヒキガエル404は冬の生息地502から繁殖池504への春移動510を開始する。繁殖池504に来ると、例えば典型的には4月に、成体ヒキガエル404は繁殖池504で産卵する。
【0123】
続けて、成体ヒキガエル404は、夏移動期間420中、繁殖池504から夏の生息地506への夏の移動520を開始する。
【0124】
その間、次世代のヒキガエルは繁殖池504で成長している。変態幼生408になった後、変態幼生408は、変態幼生移動期間430中、繁殖池504から繁殖池504の周囲ゾーンへの移動530を開始する。ヨーロッパヒキガエルの変態幼生408は、繁殖池504から約290mの距離まで移動する。変態幼生移動期間430は、変態幼生が存在するゾーンと重なり得る農業ゾーンにおいて農業処理を有益に実行し得る農業保護時間窓440と重なり得る。したがって、ヨーロッパヒキガエルの変態幼生408は、移動期間430中、保護される必要があり得、移動期間430は動物保護時間窓に対応し得る。即ち、繁殖池504の周囲ゾーンが農業ゾーンと重なる場合、移動期間430中に農業処理を実行することは、ヨーロッパヒキガエルに悪影響を及ぼす恐れがある。
【0125】
その年の後の時点で、変態が完了した後、典型的には6月20日以後、変態幼生408は幼若ヒキガエル412に成長している。幼若ヒキガエル412は、動物移動期間450中、別の移動550において冬の生息地502への移動を開始する。成体ヒキガエル404も、秋移動560において冬の生息地502に移動する。
【0126】
冬の生息地において、ヨーロッパヒキガエル402は、春移動期間410中に繁殖池504に春移動510して年毎のライフサイクルが翌年繰り返されるまで、冬眠したままである。
【0127】
動物ライフサイクルモデルは、ヨーロッパヒキガエルの例で提示される両生類のライフサイクルの上記理解に基づいて、動物種のライフサイクルをシミュレートする。動物ライフサイクルモデルは、繁殖池504からの特定の距離に移動する尤度に基づいて、重複ゾーンにおける動物種の存在尤度又は存在確率のそれぞれを更に考慮する。
【0128】
図6Aは、異なる移動期間中、繁殖池504からの特定の距離における異なるライフステージのヨーロッパヒキガエル402の分布602、603、604、605、及び606を示す地形図600を模式的に示す。図6Bは、縦軸に累積分布610を例示的に示し、横軸に異なるライフステージにおけるヨーロッパヒキガエル402の繁殖池504からの距離620を例示的に示す。移動期間ごとに異なる分布602、603、604、605、及び606が示されている。繁殖池504からのヨーロッパヒキガエル402の距離の累積分布は、動物保護ゾーンと農業ゾーン601との重複ゾーンにおける動物種、ここではヨーロッパヒキガエルの存在確率を示す。
【0129】
ヨーロッパヒキガエル402は、産卵のために繁殖池504内にいるように、春移動510中、繁殖池504に移動する。特に、分布602は、成体ヒキガエル404が、岸がゼロ距離のところに画定された状態で繁殖池504内にいることを示す。続けて、成体ヒキガエル404は、夏移動520中、夏の生息地506に移動し、これは分布606(図5図6A、及び図6B参照)で示されている。分布606は、例えば、成体ヒキガエル404の約20%のみが繁殖池504の500m半径内に存在すると予期され、一方、成体ヒキガエル404の基本的に100%が繁殖池504の1500m半径内にいると予期されることを示す。
【0130】
その間、卵から変態幼生408が成長している。変態幼生408は、移動期間430中、移動530において繁殖池504から繁殖池504の周囲ゾーンに移動し、これは分布603により示される。分布603によれば、変態幼生408の基本的に100%が、繁殖池504の290m半径内に留まる。
【0131】
時間の経過に伴い、変態幼生408は幼若412に成長する。幼若412は、冬眠のために冬の生息地506まで最終的に移動するまで、分布605により示される更なる距離まで移動を開始する。
【0132】
動物ライフサイクルモデルが、重複ゾーン210における動物種の存在尤度を特定するために、動物種のライフステージを特定するのに使用される。農業システム100は次いで、最終的に、重複ゾーン210における動物種の特定された存在尤度に基づいて安全時間窓300を決定する。
【0133】
以下、異なる状況の空間的に重複する又は重複しない農業ゾーンが、図7図8、及び図9に関して地形図704、804、及び904に提示される。
【0134】
図7は、作物畑の形態の農業ゾーン700及び水域706を含む動物保護ゾーン702が地形図704において強調表示されている状況を示す。地形図704は例えば、ディスプレイ、例えば図1に示される農業システム100のタッチディスプレイ20に表示され得る。この実施形態では、保護すべき動物種は水域706のみに存在するため、農業ゾーン700は保護ゾーンを含まない。さらに、農業ゾーン700は動物保護ゾーン702と空間的に重複しない。したがって、動物保護ゾーン702に存在する動物種に悪影響を及ぼすリスクなしで、任意の農業処理を農業ゾーン700において随時実行することができる。
【0135】
図8は、作物畑の形態の農業ゾーン800と、水域806及び水域806を囲むゾーン808を含む動物保護ゾーン802とを有する別の状況を示す。ゾーン808のサイズは、保護すべき動物保護ゾーン802に存在する動物種、例えばカエル種に依存する。この実施形態では、動物保護ゾーン802及び農業ゾーン800は空間的に重ならない。したがって、この状況でも、動物保護ゾーン802に存在する動物種に悪影響を及ぼすリスクなしで、任意の農業処理を農業ゾーン800において随時実行することができる。
【0136】
図9は、作物畑の形態の農業ゾーン900と、2つの動物保護サブゾーン902a及び902bにより形成される動物保護ゾーン902とを有する更に別の状況を示す。動物保護ゾーン902a及び902bの各々は、各水域906a及び906bのそれぞれ及び各ゾーン908a及び908bのそれぞれにより形成される。動物保護ゾーン902は、重複サブゾーン910a及び910bにおいて農業ゾーン900と空間的に重なる。重複サブゾーン910a及び910bは、動物種を農業処理から保護する必要がある重複ゾーン910を形成する。例えば、図1に提示される農業システム100は、農業処理を重複ゾーン910において実行することができる安全時間窓300を決定するのに使用することができる。
【0137】
図10は、11年の後続年である1年目から11年目までの両生類年間ライフフェーズ1000を模式的に示す。横軸1020はその年の月を表し、一方、縦軸1030は各年を表す。各年で、異なるライフサイクルフェーズは、特定のライフサイクルフェーズの時間シフトを年毎に観測することができるように同じ配色で表される。
【0138】
配色からわかるように、冬眠1002、春移動1004、繁殖1006、変態発生1008、及び夏の生息地1010を含む異なるライフサイクルフェーズは、年毎に時間シフトする。これらのシフトは、異なる土壌温度、異なる気温、及び異なる降水量等の異なる気象状況によって生じ得る。特定の気象状況は、異なるライフサイクルステージ1002、1004、1006、1008、1010の幾つかに影響を及ぼし得又はトリガーし得る。動物種のライフサイクルをシミュレートするために、動物ライフサイクルモデルにおいて過去データを考慮し得る。
【0139】
作物農事も一般に、気象状況に強く依存する。したがって、農業処理時間窓も、気象状況に応じて年毎にシフトする。農業処理時間窓は、実線の黒色縦線1012で示されている。各年で、農業処理時間窓の開始1014及び終了1016が示されている。
【0140】
作物収量改善のために農業ゾーンにおける農業処理が有益である農業処理時間窓を知ることにより、動物種に悪影響を及ぼすことなく収量を上げることができるように、動物種のライフステージに応じて農業処理の時間を選択することが可能である。動物種が動物保護ゾーンから出て、例えば冬の生息地に移動したとき又は成体が産卵後に動物保護ゾーンから出て、若い変態幼体が出生池の周囲ゾーンにまだ散らばっていないとき、農業処理を実行することが好ましい。
【0141】
したがって、例えば、図1図2、及び図3を参照して説明された農業システム100を用いて決定された農業処理時間窓304及び安全時間窓300により共有される農業処理の時間範囲、即ち好適時間窓308が決定され得る。
【0142】
図11は、安全時間窓300を決定するために図1図2、及び図3を参照して説明した農業システム100により使用し得る3つのデータ層を模式的に示す。第1のデータ層1100は、両生類生息地を示す高解像度マップを表す。第2のデータ層1102は、動物種の動物ライフサイクルモデルを表す。第3のデータ層1104は、動物保護ゾーンと空間的に重なり得る作物畑の形態の農業ゾーンで生長している作物の生長モデルを表す。
【0143】
更なる入力として、例えば、10日予報及び2年の過去値を表す、気温、土壌温度、及び降水量を表す気象データが好ましくは使用される。例えば、12km以下の空間解像度が気象データに使用され得る。
【0144】
図12は、動物保護ゾーンに存在する動物種を保護するために、コンピュータ実装方法1200の一実施形態の模式的で例示的な流れ図を示す。
【0145】
以下説明するコンピュータ実装方法1200は、農業システム、例えば、図1に示される農業システム100の実施形態により行うことができる。
【0146】
特に、以下説明するコンピュータ実装方法1200はプロセッサ、例えば農業システム100のプロセッサ16で実行される、動物種を保護するためのコンピュータプログラム製品により実行することができる。コンピュータプログラム製品は、プロセッサ、例えば農業システム100のプロセッサ16にコンピュータ実装方法を実行させるプログラムコード手段を含む。
【0147】
コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体、例えば、農業システム100のメモリ構成要素18に記憶することができる。
【0148】
コンピュータ実装方法は特に、水域及び周囲ゾーンを含む動物保護ゾーンに存在するヒキガエル種等の両生類種、特にヨーロッパヒキガエルの保護に使用することができる。
【0149】
ステップS1において、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの重複ゾーンが、それらの空間的重なりに基づいて決定される。このために、農業処理が計画されている農業ゾーンを示す農業ゾーンデータ及び存在する動物種と関連する動物保護ゾーンを示す保護ゾーンデータが処理される。
【0150】
ステップS2において、ヨーロッパヒキガエルのライフステージが、ヨーロッパヒキガエルのライフサイクルをシミュレートするように構成されたライフサイクルモデルに基づいて特定される。この実施形態では、動物ライフサイクルモデルは、図4図6に関して説明した動物ライフサイクルに基づく。
【0151】
特に、この実施形態では、ヨーロッパヒキガエルのライフサイクルは、気象データに基づいて動物ライフサイクルモデルにより特定される。気象データは、動物保護ゾーン又はその近傍における気象ステーションから受信される。他の実施形態では、気象データは、罷業ゾーンの地理情報に基づいて、又は動物保護ゾーンの地理情報に基づいて、又は農業ゾーンの地理場所情報及び動物保護ゾーンの地理情報に基づいて取得されてもよい。
【0152】
ヨーロッパヒキガエルのシミュレートされたライフサイクルは、重複ゾーンにおけるヨーロッパヒキガエルの存在尤度の特定に使用される。換言すれば、異なる時間範囲にわたり重複ゾーンのどこかにヨーロッパヒキガエルが存在する確率は、例えば、統計モデルに基づく時空スコアの形態で特定される。
【0153】
ステップS3において、動物保護時間窓が、重複ゾーンにおけるヨーロッパヒキガエルの存在尤度に応じて決定される。動物保護時間窓は、ヨーロッパヒキガエルが重複ゾーンに、特に変態幼生の形態で存在する尤度が閾値尤度レベルを上回るため、ヨーロッパヒキガエルを保護するために、ヨーロッパヒキガエルに悪影響を及ぼす恐れがある農業処理が動物保護ゾーンで実行されるべきではない時間範囲に対応する。他の実施形態では、動物保護時間窓は、任意の他の様式で動物種のライフステージに基づいて決定されてもよい。さらに、動物保護時間窓を決定するために、重複ゾーンで生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を考慮に入れることことが可能である。特に、作物の生長段階に基づいて、化学製品が作物に適用されるときに土壌に到達する化学製品の相対量を示す作物付着を特定し得る。即ち、作物付着が大きいほど、土壌に到達する化学製品の量は低くなる。さらに、土壌に到達する化学製品の量が低いほど、動物種が化学製品により悪影響を受けるリスクは低くなる。したがって、動物保護時間窓の決定は、特定された作物付着に基づいて、例えばシミュレートされたBBCH段階をベースとして使用して、動物保護時間窓中に重複ゾーンに潜在的に存在する動物種の化学製品への暴露を特定することを含み得る。
【0154】
さらに、動物保護時間窓を決定するために、例えば特定された作物付着に基づいて、土壌に到達する暴露、即ち土壌負荷を特定することが可能である。特定された土壌負荷、即ち土壌に到達する暴露は、生態毒性閾値と比較することができる。
【0155】
土壌負荷が生態毒性閾値を下回り得る場合、各日は、農業処理が許されるように安全時間窓に寄与する。しかし、土壌負荷が生態毒性閾値よりも高い場合、各日は、農業処理が実行されないように動物保護時間窓に寄与し得又は代替的には、農業処理パラメータが、動物種が潜在的に存在する重複ゾーンにおいて、適合された農業処理パラメータを用いて農業処理をなお実行することができるよう土壌負荷が生態毒性閾値を下回るように適合される。
【0156】
したがって、農業処理パラメータの特定のセットで、重複ゾーンにおける化学製品の適用が実行されるべきか否かを判断した次に、動物保護時間窓を安全時間窓に変えるために、農業処理のどの変更、例えば、化学物質の濃度又は適用量の低減が必要であるか判断することが可能である。したがって、土壌負荷が生態毒性閾値を下回るように農業処理をいかに変更するかを判断することが可能である。農業処理は次いで、農業処理がそれにも関わらず、重複ゾーンに潜在的に存在する動物種に悪影響を及ぼす化学物質の容認できるリスクを達成する、変更された農業処理パラメータを用いて実行し得るように、それに従って適合することができる。
【0157】
ステップS4において、重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓が決定される。安全時間窓は、動物保護時間窓と時間的に重ならないように決定される。換言すれば、安全時間窓は、動物保護時間窓と重複しない時間範囲として決定される。この実施形態では、動物保護時間窓は、重複ゾーンにおけるヨーロッパヒキガエルの存在尤度に基づいて決定されるため、安全時間窓も、重複ゾーンにおけるヨーロッパヒキガエルの存在尤度に基づいて決定される。
【0158】
任意選択的に、ステップS5において、安全時間窓信号が、決定された安全時間窓に基づいて提供される。安全時間窓信号は、この実施形態では、ロボット等の農業装置を制御するのに使用可能な制御信号である。特に、安全時間窓信号は、重複ゾーンにおけるヨーロッパヒキガエルの存在尤度に基づいて、農業装置、例えばロボットに農業処理を農業ゾーン、特に重複ゾーンにおいて実行させるように構成される。他の実施形態では、安全時間窓信号は、情報信号、例えば安全時間窓についての情報をユーザに提供するのに使用可能な表示信号であってもよい。ユーザは次いで、安全時間窓信号に基づいて、農業ゾーンにおける農業処理を適合し得る。
【0159】
さらに、任意選択的に、ステップS6において、ロボット等の農業装置、例えばドローン又はトラクターは、安全時間窓信号に基づいて農業ゾーンにおいて農業処理を実行させられる。特に、農業処理は安全時間窓信号に基づいて適合される。この実施形態では、動物保護時間窓中、重複ゾーンにおいて農業処理は実行されず、換言すれば、農業処理は、安全時間窓中のみ、重複ゾーンにおいて実行される。他の実施形態では、農業処理は、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理が重複ゾーンで実行されないように別の様式で適合させてもよい。例えば、農業処理、例えば化学製品の適用は、動物種に容認できないほどは影響を及ぼさない別の化学製品が適用されるという点又は動物種が容認できないほどは影響を受けないよう若しくは受ける悪影響が少なくとも低下するように適用濃度若しくは適用量が低減されるという点で重複ゾーンに向けて適合し得る。
【0160】
他の実施形態では、ステップS1~S6の順序は異なってよい。さらに、追加のステップがステップS1とS6との間で又はステップS1~S6の後に実行されてもよい。
【0161】
例えば、農業ゾーンで生長中の又は生長させるべき作物の生長段階を取得し得る。作物の生長段階は、例えば、BBCH値の形態でユーザ入力として生長段階を受信することにより取得されてもよく又は作物の生長をシミュレートするように構成された農業生長モデルに基づいて特定されてもよい。重複ゾーンにおける農業処理は次いで、取得された作物の生長段階に応じて安全時間窓中に、例えば収量を上げる農業処理の好適時間窓中に実行することができる。農業処理時間窓は、作物の生長段階に基づいて決定し得る。農業処理時間窓は、農業処理が農業ゾーン、特に重複ゾーンにおいて実行されるべき時間範囲を示す。好ましくは、農業処理時間窓信号、例えば、制御信号又は農業処理時間窓についての情報を有する情報信号が提供される。
【0162】
図13図19は、続くグラフィカルユーザインタフェース画像の例における、農業システム、例えば図1図12を参照して説明された任意の農業システムの例示的な使用を示す。
【0163】
図13は、衛星画像として記録された特定のエリアのデジタルマップ1302を示すグラフィカルユーザインタフェース画像1300を示す。デジタルマップ1302は、幾つかの作物畑並びに森、村、及び池を示す。デジタルマップ1302に示される特定の場所は、デジタルマップ1302に重ねられて示される入力マスク1306において、ユーザ入力1304により選択されている。入力マスク1306は更に、この場合は秋まき小麦である植え付け作物1308を指定できるようにする。さらに、植え付け日を選択することができる(1310)。
【0164】
さらに、適用されるものとする化学製品1312は、1ヘクタール当たりのリットル数単位の適用率1314と同様に選択することができる。
【0165】
グラフィカルユーザインタフェース画像1300は、幾つかのマップ選択肢1320を有効化又は無効化できるようにして、デジタルマップ1302における水域1316、1318の強調表示及び保護すべき動物種の潜在的な生息地1322、1324、例えば変態幼生の生息地の表示等を行う。
【0166】
デジタルマップ1302では、2つの作物畑1326、1328が強調表示されている。第1の作物畑1326は、保護すべき動物種のいかなる生息地1322、1324とも重複しない。したがって、その作物畑1326における化学製品の適用は、保護すべき動物種に影響を及ぼす潜在的なリスクなしで随時実行することができる。しかし、第2の作物畑1328は、生息地1322、1324の一方との重複ゾーン1330を有する。重複ゾーン1330内で農業処理を実行する場合に動物種に悪影響を及ぼすリスクを下げるために、農業処理は、農業システムにより安全時間窓内で実行されるべきである。
【0167】
図14は、グラフィカルユーザインタフェース画像1300において選択された化学製品を、生息地1322との重複ゾーン1330を有する第2の作物畑1328に対していつ適用するかについての情報を提供する後続グラフィカルユーザインタフェース画像1400を示す。
【0168】
グラフィカルユーザインタフェース画像1400は、1年のうちの幾つかの異なる日1404の秋まき小麦の異なる生長段階1402を模式的に示す。特に、1年のうちの異なる日1404の秋まき小麦の生長段階1402が、例えば、秋まき小麦の農業生長モデルを使用して特定される、算出されたBBCH値1406と共に示されている。さらに、グラフィカルユーザインタフェース画像1300において選択された1.25/haの適用率1408が示される。図示の枠1410により示されるように、例示的に12月12日が選択されている。選択された日付は、選択された化学製品での秋まき小麦の適用窓1412外であるため、対応するメッセージ1416が提供され得る。したがって、農業システムは、その選択された日付で第2の作物畑1328において農業処理を実行しない。
【0169】
図15は、グラフィカルユーザインタフェース画像1300において選択された化学製品を、生息地1322との重複ゾーン1330を有する第2の作物畑1328に対していつ適用するかについての情報を提供する後続グラフィカルユーザインタフェース画像1500を示す。
【0170】
グラフィカルユーザインタフェース画像1500は、グラフィカルユーザインタフェース画像1400を参照して説明したのと同様に、1年のうちの幾つかの異なる日1504の秋まき小麦の異なる生長段階1502を対応するBBCH値1506と共に示す。しかしながら、グラフィカルユーザインタフェース画像1500では、グラフィカルユーザインタフェース画像1400でのように12月12日が選択されているのではなく、枠1508により示されるように5月18日が選択されている。5月18日は、選択された化学製品の適用窓1510内にある。したがって、その化学製品の適用は、1年のその時期中の秋まき小麦の生長段階に従っている。しかしながら、第2の作物畑1328は生息地1322との重複ゾーン1330を有するため、選択された日付が、決定された動物保護時間窓1512内にあるか否かが更に判断される。このために、10日噴霧予測1514がグラフィカルユーザインタフェース画像1500において可視化され、選択された日付である5月18日から始まる、来る10日と、安全時間窓1516又は動物保護時間窓1512のいずれかへの対応する寄与とを示す。ユーザは次いで、グラフィカルユーザインタフェース画像1500から、重複ゾーン1330における化学製品の適用がいつ許されるか及びいつ許されないかを知ることができる。さらに、農業装置は、安全時間窓1516中に農業処理が実行されるように制御され得る。
【0171】
図16は、グラフィカルユーザインタフェース画像1300において選択された化学製品を、生息地1322との重複ゾーン1330を有する第2の作物畑1328に対していつ適用するかについての情報を提供する後続グラフィカルユーザインタフェース画像1600を示す。
【0172】
グラフィカルユーザインタフェース画像1500とは対照的に、グラフィカルユーザインタフェース画像1600では5月25日が選択されている。秋まき小麦の対応する生長段階は、5月28日の秋まき小麦の模式的に示された生長段階を囲む枠1602により示されている。10日噴霧予測1604から得られるように、5月25日及び6月3日のみが安全時間窓1606に属し、一方、これらの日付の間の日は動物保護時間窓1608内にある。
【0173】
図17は、グラフィカルユーザインタフェース画像1600と同じ特徴を示す後続グラフィカルユーザインタフェース画像1700を示す。くわえて、グラフィカルユーザインタフェース画像1700は、秋まき小麦の模式的に示された生長段階1704の各々と関連する作物付着を示す破線1702を示す。さらに、グラフィカルユーザインタフェース画像1700は、各作物付着1702と関連する土壌負荷を表す実線1706を示している。一点鎖線1708は生態毒性閾値を示す。生態毒性閾値1708は典型的には、植物保護製品を承認する規制当局により設定される。土壌負荷1706は土壌に到達する暴露を表す。暴露は、シミュレートされたBBCH段階1710を使用して特定された付着1702に基づいて特定することができる。付着1702及び土壌負荷1706は生態毒性閾値1708と比較されて、選択された日付が安全時間窓1712内又は動物保護時間窓1714内にあるか否かを更に正確に判断し得る。土壌負荷1706が生態毒性閾値1708を下回る場合、化学製品の適用は、重複ゾーンに存在する動物種に悪影響を及ぼすリスクなしで実行することができる。選択された日である5月25日では、選択された土壌負荷1706は生態毒性閾値1708を上回り、6月2日から始まってのみ生態毒性閾値1708を下回るため、グラフィカルユーザインタフェース画像1600に関して、5月25日及び6月3日のみが安全時間窓1712に寄与し、10日噴霧予測1716の間の日は、動物保護時間窓1714に寄与する。
【0174】
図18は、後続グラフィカルユーザインタフェース画像1800を示す。グラフィカルユーザインタフェース画像1700とは対照的に、意図される適用率1802は、グラフィカルユーザインタフェース画像1300の入力マスク1306において1.25l/haから1.00l/haに下げられている。その結果、土壌負荷は実線1806(グラフィカルユーザインタフェース画像1700でも実線1706として示されている)から破線1804に下がる。この結果、破線1804は一点鎖線1808で表されている生態毒性閾値と既に5月28日に、ひいてはグラフィカルユーザインタフェース画像1700よりも早期に交差する。
【0175】
したがって、実線1804は、5月28日から始まって生態毒性閾値1808を下回るため、動物保護時間窓1810の持続時期間は、グラフィカルユーザインタフェース画像1700の動物保護時間窓1714と比べて短くなる。したがって、安全時間窓1812は、10日噴霧予測1814中、グラフィカルユーザインタフェース画像1700よりも長い。したがって、動物保護時間窓1810の持続期間を短くするために、化学物質の濃度又は適用量を下げることが可能である。
【0176】
図19は、異なる日、即ち、秋まき小麦の模式的に示された生長段階1904を囲む枠1902により示されるように6月6日が選択されている、更なる後続グラフィカルユーザインタフェース画像1900を示す。6月6日から始まる10日噴霧予測1907から得られるように、これらの10日の各日は安全時間窓1908内にあり、したがって、制限なく化学製品を適用することができる。
【0177】
開示した実施形態に対する他の変形形態は、図面、本開示及び添付の請求項を研究することから、特許請求される本発明を実施する当業者によって理解及び実現され得る。
【0178】
請求項では、単語「備える」及び「含む」は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を排除しない。
【0179】
単一のユニット又は装置は請求項に記載された複数の項目の機能を実現する場合がある。特定の手段が互いに異なる従属請求項で言及されているという事実のみで、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0180】
コンピュータプログラム製品は、光記憶媒体又は固体媒体等の適当な媒体に記憶/配布され、他のハードウェアと共に又はその一部として供給され得るが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線/無線通信システムを介して配信され得る。
【0181】
本明細書で説明する任意のユニットは、古典的な計算システムの一部である処理ユニットであり得る。処理ユニットは、汎用プロセッサを含み得、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)又は任意の他の専用回路も含み得る。任意のメモリは、物理的なシステムメモリであり得、揮発性、不揮発性又はこれらの2つのいくつかの組み合わせであり得る。「メモリ」という用語は、不揮発性大容量ストレージなどのコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。計算システムが分散型である場合、処理能力及び/又は記憶能力も分散型であり得る。計算システムは、「実行可能な構成要素」としての複数の構造を含み得る。「実行可能な構成要素」という用語は、ソフトウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせであり得る構造として計算の分野でよく理解されている構造である。例えば、ソフトウェアで実装される場合、当業者であれば、実行可能な構成要素の構造は、計算システム上で実行され得るソフトウェアオブジェクト、ルーチン、メソッドなどを含み得ることを理解するであろう。これは、計算システムのヒープ内の実行可能な構成要素又はコンピュータ可読記憶媒体上の実行可能な構成要素の両方を含み得る。実行可能な構成要素の構造は、計算システムの1つ以上のプロセッサ、例えばプロセッサスレッドによって解釈されると、計算システムにある機能を実施させるためにコンピュータ可読媒体上に存在し得る。そのような構造は、例えば、実行可能な構成要素がバイナリである場合のように、プロセッサによって直接コンピュータ可読なものであり得るか、又はプロセッサによって直接解釈可能であるそのようなバイナリを生成するように、例えば単一段階若しくは複数段階のいずれかで解釈可能及び/若しくはコンパイル可能な構造であり得る。他の例では、構造は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は任意の他の専用回路内等、ハードウェアに排他的又は略排他的に実装されるハードコード又はハード有線論理ゲートであり得る。したがって、「実行可能な構成要素」という用語は、ソフトウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせのいずれで実装されるかにかかわらず、計算の技術分野における通常の当業者によってよく理解される構造のための用語である。本明細書における任意の実施形態は、計算システムの1つ以上の処理ユニットによって実施される行為を参照して説明される。そのような行為がソフトウェアで実装される場合、1つ以上のプロセッサは、実行可能な構成要素を構成するコンピュータ実行可能命令を実行することに応じて計算システムの動作を指示する。計算システムは、計算システムが他の計算システムと例えばネットワークを介して通信することを可能にする通信チャネルを含むこともできる。「ネットワーク」は、計算システム及び/若しくはモジュール並びに/又は他の電子装置間の電子データの伝送を可能にする1つ以上のデータリンクとして定義される。情報がネットワーク又は別の通信接続、例えばハード有線、無線又はハード有線と無線との組み合わせのいずれかを介して計算システムに転送又は提供される場合、計算システムは、接続を伝送媒体として適切にみなす。伝送媒体は、コンピュータ実行可能命令又はデータ構造の形態で所望のプログラムコード手段を搬送するために使用することができ、汎用又は専用目的の計算システム又はそれらの組み合わせによってアクセスされ得るネットワーク及び/又はデータリンクを含み得る。全ての計算システムがユーザインタフェースを必要とするわけではないが、いくつかの実施形態では、計算システムは、ユーザとのインタフェースに使用するためのユーザインタフェースシステムを含む。ユーザインタフェースは、例えば、ディスプレイを介したユーザへの入力又は出力機構として機能する。
【0182】
当業者であれば、本発明の少なくとも一部は、パーソナルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、メッセージプロセッサ、ハンドヘルド装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラマブル家電、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、携帯電話、PDA、ページャ、ルータ、スイッチ、データセンタ、眼鏡のようなウェアラブル機器等を含む、多くのタイプの計算システム構成を有するネットワーク計算環境で実施され得ることを理解するであろう。本発明は、例えば、ネットワークを介してハード有線データリンク、無線データリンク又はハード有線データリンクと無線データリンクとの組み合わせのいずれかによってリンクされるローカル及びリモートの計算システムの両方がタスクを実施する分散システム環境でも実施され得る。分散システム環境では、プログラムモジュールは、ローカルとリモートとの両方のメモリ記憶装置に配置され得る。
【0183】
当業者であれば、本発明の少なくとも一部は、クラウド計算環境で実施されてもよいことを理解するであろう。クラウド計算環境は、分散され得るが、これは、必須ではない。分散される場合、クラウド計算環境は、組織内で国際的に分散され得、且つ/又は複数の組織にわたって保有された構成要素を有し得る。本明細書及び以下の特許請求の範囲では、「クラウド計算」は、構成可能な計算リソース、例えばネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション及びサービスの、共有プールへのオンデマンドネットワークアクセスを可能にするモデルとして定義される。「クラウド計算」の定義は、そのようなモデルが展開された場合に得られ得る他の多数の利点のいずれにも限定されない。図の計算システムは、説明したように、本明細書に開示された様々な実施形態を実装し得る様々な構成要素又は機能ブロックを含む。様々な構成要素又は機能ブロックは、ローカル計算システム上に実装され得るか、又はクラウドに常駐する要素を含むか若しくはクラウド計算の態様を実装する分散計算システム上で実装され得る。様々な構成要素又は機能ブロックは、ソフトウェア、ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせとして実装され得る。図に示される計算システムは、図に示されるより多い又は少ない構成要素を含み得、状況が許す限り、構成要素のいくつかを組み合わせ得る。
【0184】
請求項に参照符号が存在したとしても、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0185】
本発明は、動物保護ゾーンに存在する動物種の保護に関する。動物種のライフステージが、動物種のライフサイクルをシミュレートするように構成された動物ライフサイクルモデルに基づいて特定される。動物種を保護するために、動物種に悪影響を及ぼす恐れがある農業処理が動物保護ゾーンにおいて実行されるべきではない動物保護時間窓が、動物種のライフステージに基づいて決定される。さらに、重複ゾーンが、農業ゾーンと動物保護ゾーンとの空間的重複に基づいて決定され、重複ゾーンにおける農業処理の安全時間窓が決定される。安全時間窓は、動物保護時間窓と空間的に重ならない。これにより、動物種が重複ゾーンにおいて保護される安全時間窓を提供することができる。
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【国際調査報告】