(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】膜質改善剤、それを利用した薄膜形成方法、それから製造された半導体基板及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
C23C 16/08 20060101AFI20241024BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C23C16/08
C23C16/455
H01L21/285 Z
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529944
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 KR2022017409
(87)【国際公開番号】W WO2023096216
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164643
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0104489
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,チャン ボン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030BA38
4K030BA42
4K030CA04
4K030EA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA08
4M104BB16
4M104BB30
4M104DD33
4M104DD43
4M104DD45
4M104HH13
(57)【要約】
本発明は、膜質改善剤、それを利用した薄膜形成方法、それから製造された半導体基板及び半導体素子に関し、所定の構造の化合物を膜質改善剤として提供して、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減させ、薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に常温にて固体である化合物を用いて薄膜を形成する場合にも段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させることができ、腐食や劣化が低減され、薄膜の結晶性が向上して薄膜の電気的特性が改善する効果がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン系薄膜用膜質改善剤であって、
前記モリブデン系薄膜は、基板上にモリブデン金属、モリブデンオキシド、またはモリブデンナイトライドを含み、
前記膜質改善剤は、下記の化学式1
[化学式1]
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、
前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
前記R
1及びR
3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
前記R
2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR
4R
5R
6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R
4、R
5及びR
6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される飽和化合物であることを特徴とするモリブデン系薄膜用膜質改善剤。
【請求項2】
前記膜質改善剤は、屈折率(a)が1.38ないし1.72の範囲内であると同時に、蒸気圧(25℃、mmHg, b)を前記屈折率(a)で除した値(b/a)が0.003ないし0.043の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデン系薄膜用膜質改善剤。
【請求項3】
前記膜質改善剤は、前記膜質改善剤に対する1H-NMRスペクトラム対比前記膜質改善剤とモリブデン前駆体を1:1モル比で混合して加圧後、測定した
1H-NMRスペクトラムで新たに生成されたピークの頂点の積分値が0.1%未満を示す化合物であり、ここで前記モリブデン前駆体は、20℃及び1bar条件下で固体または液体であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデン系薄膜用膜質改善剤。
【請求項4】
前記膜質改善剤は、前記モリブデン系薄膜に残留しないことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン系薄膜用膜質改善剤。
【請求項5】
前記モリブデン系薄膜は、拡散防止膜または電極用途であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデン系薄膜用膜質改善剤。
【請求項6】
下記の化学式1
[化学式1]
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、
前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
前記R
1及びR
3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
前記R
2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR
4R
5R
6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R
4、R
5及びR
6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される飽和構造の膜質改善剤をチャンバ内に注入してローディング(loading)された基板表面に注入させる段階を含むことを特徴とするモリブデン系薄膜形成方法。
【請求項7】
前記薄膜は、酸化膜、窒化膜または金属膜であることを特徴とする請求項6に記載のモリブデン系薄膜形成方法。
【請求項8】
前記膜質改善剤は、VFC方式、DLI方式またはLDS方式でチャンバ内に移送されて、前記チャンバは、ALDチャンバまたはCVDチャンバであることを特徴とする請求項6に記載のモリブデン系薄膜形成方法。
【請求項9】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、i-a)前記膜質改善剤を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に遮蔽領域を形成する段階;ii-a)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-a)モリブデン前駆体を気化して前記遮蔽領域を逸脱した領域に吸着させる段階;iv-a)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-a)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi-a)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階;を含むことを特徴とする請求項6に記載のモリブデン系薄膜形成方法。
【請求項10】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、i-b)モリブデン前駆体を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に吸着させる段階;ii-b)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-b)前記膜質改善剤を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に注入させる段階;iv-b)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-b)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi-b)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階を含むことを特徴とする請求項6に記載のモリブデン系薄膜形成方法。
【請求項11】
請求項6に係るモリブデン系薄膜形成方法で製造されることを特徴とする半導体基板。
【請求項12】
前記モリブデン系薄膜は、2層または3層の多層構造であることを特徴とする請求項11に記載の半導体基板。
【請求項13】
請求項11の半導体基板を含む半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜質改善剤、それを利用した薄膜形成方法、及びそれから製造された半導体基板及び半導体素子に関し、より詳細には、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減あるいは増加させ、薄膜成長率を適切に調節して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成したり、常温にて固体前駆体を用いて薄膜を形成する場合、段差被覆性(ステップカバレッジ、step coverage)、薄膜の厚さ均一性、あるいは比抵抗などの膜の品質を大きく向上させる膜質改善剤、それを利用した薄膜形成方法、及びそれから製造された半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン(Mo)は、化学的、熱的安定性が非常に優れ、高い電気伝導性及び低い電気的比抵抗(ρ=0.57X10-5Ω・cm at bulk)を有しており、最近、素子の微細化、低い電力消耗量、高い生産性などの要求を満たす物質として脚光を浴びている。
【0003】
具体的に、モリブデン(Mo)は多様な半導体、ディスプレイ金属工程を行うにあたり、電極(electrode)、拡散防止膜(diffusion barrier)、ガスセンサ、触媒物質として応用されて、特に、モリブデン含有薄膜はグラフェン素材を代替し得る2次元半導体物質として関心を集めながら、その応用に対する研究が急速に進んでいる。
【0004】
モリブデン含有薄膜を形成するために用いられる代表的なモリブデン化合物として、塩化モリブデン(MoCl5)がある。しかし、Thin Solid Films, 166, 149(1988)によれば、低い蒸着率、多量の塩素含量及び塩化水素などによる膜質汚染などに対する短所が報告されており、特に、固体化合物でパーティクル汚染及び均一な前駆体気化を行うことができないという短所がある。
【0005】
また、Chem. Vap. Deposition(2008)14, 71に報告されたMo(NtBu)2(NiPR2)2などのイミド化合物が公知となっているが、比較的熱的安定性が劣り、イミドリガンドによってモリブデン中心金属と窒素間のπ-結合による高い安定性のため、工程におけるリガンド分解が良好に発生せず、炭素汚染が非常に深刻であるという短所がある。
【0006】
米国特許公報4,431,708号及びJ. dePhys. IV2(C2), 865には比較的蒸気圧が高いMo(CO)6化合物を用いて蒸着によって生成されるモリブデン含有薄膜が報告されているが、これは常温において固体化合物として不均一な気化の特性上、低い熱的安定性及びパーティクル問題が発生する可能性が高い。
【0007】
よって、半導体及びディスプレイ素子に悪影響を引き起こすおそれが高いハロゲン(halogen)などを薄膜に含まず、同時に常温において固体形態であっても複雑な構造の薄膜形成が可能であり、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させる薄膜の形成方法と、それから製造された半導体基板などの開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減あるいは増加させ、薄膜成長率を適切に調節して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成したり、常温にて固体前駆体を用いて薄膜を形成する場合、段差被覆性(step coverage)、薄膜の厚さ均一性、あるいは比抵抗などの膜の品質を大きく向上させる膜質改善剤、それを利用した薄膜形成方法、及びそれから製造された半導体基板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、薄膜の結晶性を改善させることによって、薄膜の密度及び電気的特性を改善させることを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、下記で説明された本発明によってすべて達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、モリブデン系薄膜用膜質改善剤であって、
【0012】
前記モリブデン系薄膜は、基板上にモリブデン、モリブデンオキシド、またはモリブデンナイトライドを含み、
【0013】
前記膜質改善剤は、下記の化学式1
【0014】
[化学式1]
【0015】
【0016】
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
【0017】
前記R1及びR3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、
【0018】
前記R2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR4R5R6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R4、R5及びR6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される飽和化合物であることを特徴とするモリブデン系薄膜用膜質改善剤を提供する。
【0019】
前記膜質改善剤は、屈折率(a)が1.38ないし1.72の範囲内であると同時に、蒸気圧(25℃、mmHg, b)を前記屈折率(a)で除した値(b/a)が0.003ないし0.043の範囲内であってもよい。
【0020】
前記膜質改善剤は、前記膜質改善剤に対する1H-NMRスペクトラム対比前記膜質改善剤とモリブデン前駆体を1:1モル比で混合して加圧後、測定した1H-NMRスペクトラムで新たに生成されたピークの頂点の積分値が0.1%未満を示す化合物であってもよい。
【0021】
ここで前記モリブデン前駆体は、20℃及び1bar条件下で固体または液体であってもよい。
【0022】
前記膜質改善剤は、モリブデン系薄膜用遮蔽領域を提供してもよい。
【0023】
前記モリブデン系薄膜用遮蔽領域は、前記モリブデン系薄膜が形成される基板に形成されてもよい。
【0024】
前記モリブデン系薄膜用遮蔽領域は、前記モリブデン系薄膜に残留せず、前記モリブデン系薄膜は、炭素、ケイ素及びハロゲン化合物を1%以下含んでもよい。
【0025】
前記モリブデン系薄膜は、拡散防止膜(diffusion barrier)または電極(electrode)用途であってもよい。
【0026】
【0027】
また、本発明は下記の化学式1
【0028】
[化学式1]
【0029】
【0030】
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R1及びR3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR4R5R6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R4、R5及びR6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される飽和構造の膜質改善剤をチャンバ内に注入してローディング(loading)された基板表面に注入させる段階を含むことを特徴とするモリブデン系薄膜形成方法を提供する。
【0031】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、i-a)前記膜質改善剤を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に遮蔽領域を形成する段階;ii-a)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-a)モリブデン前駆体を気化して前記遮蔽領域を逸脱した領域に吸着させる段階;iv-a)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-a)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi-a)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階;を含んでもよい。
【0032】
また、前記モリブデン系薄膜形成方法は、i-b)モリブデン前駆体を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に吸着させる段階;ii-b)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-b)前記膜質改善剤を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に注入させる段階;iv-b)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-b)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi-b)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階を含んでもよい。
【0033】
前記モリブデン前駆体は、20℃及び1bar条件下で固体または液体であってもよく、30℃で蒸気圧が0.1mTorrないし100Torrであるモリブデン前駆体であってもよい。
【0034】
前記モリブデン前駆体は、下記の化学式2ないし化学式36で表される化合物から選択された1種以上であってもよい。
【0035】
[化学式2ないし化学式19]
【0036】
【0037】
[化学式20ないし化学式32]
【0038】
【0039】
[化学式33ないし化学式36]
【0040】
【0041】
(前記化学式2ないし化学式36において、線は結合であり、別途の元素を記載しない結合と結合が交わる地点は炭素であり、前記炭素の原子価を満たす数の水素は省略されており、R′、R″はそれぞれ水素、または炭素1ないし5のアルキル基であり、R′は隣接するR′と連結されてもよい。)
【0042】
【0043】
前記チャンバは、ALDチャンバまたはCVDチャンバであってもよい。
【0044】
前記膜質改善剤またはモリブデン前駆体は、気化して注入された後、プラズマ後処理する段階を含んでもよい。
【0045】
前記ii)段階と前記iv)段階において、それぞれチャンバ内部に投入されるパージガスの量は、投入された膜質改善剤の体積を基準として10ないし100,000倍であってもよい。
【0046】
前記反応ガス、膜質改善剤及びモリブデン前駆体は、VFC方式、DLI方式またはLDS方式でチャンバ内に移送されてもよい。
【0047】
前記チャンバ内にローディングされた基板は、50ないし400℃に加熱されて、前記膜質改善剤と前記モリブデン前駆体のチャンバ内の投入量(mg/サイクル)比は、1:1.5ないし1:20であってもよい。
【0048】
前記反応ガスは、還元剤、窒化剤または酸化剤であってもよい。
【0049】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、蒸着温度が50ないし700℃であってもよい。
【0050】
前記モリブデン系薄膜は、酸化膜、窒化膜または金属膜であってもよい。
【0051】
【0052】
また、本発明は、前述したモリブデン系薄膜形成方法で製造されることを特徴とする半導体基板を提供する。
【0053】
前記モリブデン系薄膜は、2層または3層の多層構造であってもよい。
【0054】
【0055】
また、本発明は、前述した半導体基板を含む半導体素子を提供する。
【0056】
前記半導体基板は、低抵抗金属ゲートインターコネクト(low resistive metal gate interconnects)、高アスペクト比3D金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタ(high aspect ratio 3D metal-insulator-metal capacitor)、DRAMトレンチキャパシタ(DRAM trench capacitor)、3Dゲート-オール-アラウンド(GAA; Gate-All-Around)、または3D NANDであってもよい。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減させ、薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に常温にて固体化合物で薄膜を形成する場合にも段差被覆性を向上させる膜質改善剤を提供する効果がある。
【0058】
また、薄膜形成時、工程副生成物がより効果的に減少されて、腐食や劣化を防いで薄膜の結晶性を改善させることによって、薄膜の電気的特性を改善させる効果がある。
【0059】
また、薄膜形成時、工程副生成物が減少されて段差被覆性と薄膜密度を改善させることができ、ひいてはそれを利用した薄膜形成方法、及びそれから製造された半導体基板を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】MoO
2Cl
2に本発明で提示した膜質改善剤を先注入及び後注入した実験と、当該膜質改善剤を使用しなかった実験の実施例6の結果を対比した図面であり、左側は比抵抗の測定結果を示したグラフであり、右側は蒸着速度の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
【0062】
以下、本記載のモリブデン系薄膜用膜質改善剤、それを利用したモリブデン系薄膜形成方法、及びそれから製造された半導体基板について詳細に説明する。
【0063】
本記載において、用語“遮蔽”は他に特定しない限り、モリブデン系薄膜を形成するためのモリブデン前駆体が基板上に吸着されることを低減、阻止または遮断するだけでなく、工程副生成物が基板上に吸着されることまで低減、阻止または遮断することを意味する。
【0064】
本発明者らは、チャンバ内部にローディングされた基板表面にモリブデン系薄膜を形成するためのモリブデン前駆体を遮蔽する膜質改善剤を用いる場合、モリブデン系薄膜に残留しない遮蔽領域を形成して相対的に粗い薄膜を形成すると同時に、形成される薄膜の成長率が調節されて複雑な構造の基板に適用しても薄膜の均一性を確保して段差カバレッジが大きく向上し、特に、薄い厚さで蒸着可能であり、工程副生成物として残留していたハロゲン化物、及び過度な水素ガスを用いても減らすことが困難だった炭素の残量まで改善させることを確認した。これを基に遮蔽領域を提供する膜質改善剤に対する研究に邁進して本発明の完成に至った。
【0065】
【0066】
本発明の膜質改善剤は、モリブデン系薄膜用膜質改善剤を提供する。
【0067】
前記モリブデン系薄膜は、一例として下記の化学式2ないし化学式36で表される化合物から選択された1種以上の前駆体として提供されてもよく、この場合、本発明で達成しようとする効果を充分に得ることができる。
【0068】
[化学式2ないし化学式19]
【0069】
【0070】
[化学式20ないし化学式32]
【0071】
【0072】
[化学式33ないし化学式36]
【0073】
【0074】
(前記化学式2ないし化学式36において、線は結合であり、別途の元素を記載しない結合と結合が交わる地点は炭素であり、前記炭素の原子価を満たす数の水素は省略されており、R′、R″はそれぞれ水素、または炭素1ないし5のアルキル基であり、R′は隣接するR′と連結されてもよい。)
【0075】
前記モリブデン系薄膜は、一般的に用いる拡散防止膜のみならず、電極として半導体素子に活用されてもよい。
【0076】
【0077】
前記膜質改善剤は、下記の化学式1
【0078】
[化学式1]
【0079】
【0080】
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R1及びR3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR4R5R6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R4、R5及びR6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される飽和化合物であることを特徴とし、このような場合、モリブデン系薄膜形成時、モリブデン系薄膜に残留しない遮蔽領域を形成して相対的に粗い薄膜を形成すると同時に、副反応を抑制して薄膜成長率を調節して、薄膜内工程副生成物が低減されて腐食や劣化が低減され、薄膜の結晶性が向上して、複雑な構造を有する基板の上に薄膜を形成する場合にも段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させる効果がある。
【0081】
前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、好ましくは炭素である。
【0082】
前記R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1ないし3のアルキル基であり、これらのうち最小1つ以上は炭素数が2または3である。好ましい一例として、前記R1、R2及びR3のうちいずれか1つの炭素数は1であり、残りの2つの炭素数は2または3、より好ましくは、前記R1、R2及びR3のうちいずれか1つの炭素数は1であり、残りの2つの炭素数は2であり、この範囲内で工程副生成物が減少する効果が大きく、段差被覆性に優れ、薄膜密度の向上効果及び薄膜の電気的特性がより優れるという利点がある。
【0083】
前記化学式1において、Xはハロゲン元素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素であってもよく、より好ましくは、塩素または臭素であってもよく、この範囲内で工程副生成物の減少及び段差被覆性の改善効果がより優れるという利点がある。また、前記Xは、一例としてフッ素であってもよく、この場合、高温蒸着が要求される工程により適するという利点がある。
【0084】
前記化学式1において、Xは他の好ましい一例としてヨウ素であってもよく、この範囲内で薄膜結晶性が改善され、副反応を抑制して工程副生成物が減少する効果がより優れるという利点がある。
【0085】
【0086】
前記化学式1で表される化合物は、ハロゲン置換されたターシャリーアルキル化合物であり、具体的な例として、2-クロロ-2-メチルプロパン、2-クロロ-2メチルブタン、2-クロロ-2メチルペンタン、3-クロロ-3メチルペンタン、3-クロロ-3メチルヘキサン、3-クロロ-3エチルペンタン、3-クロロ-3エチルヘキサン、4-クロロ-4メチルヘプタン、4-クロロ-4エチルヘプタン、4-クロロ-4プロピルヘプタン、2-ブロモ-2メチルプロパン、2-ブロモ-2メチルブタン、2-ブロモ-2メチルペンタン、3-ブロモ-3メチルペンタン、3-ブロモ-3メチルヘキサン、3-ブロモ-3エチルペンタン、3-ブロモ-3エチルヘキサン、4-ブロモ-4メチルヘプタン、4-ブロモ-4エチルヘプタン、4-ブロモ-4プロピルヘプタン、2-ヨード-2メチルプロパン、2-ヨード-2メチルブタン、2-ヨード-2メチルペンタン、3-ヨード-3メチルペンタン、3-ヨード-3メチルヘキサン、3-ヨード-3エチルペンタン、3-ヨード-3エチルヘキサン、4-ヨード-4メチルヘプタン、4-ヨード-4エチルヘプタン、4-ヨード-4プロピルヘプタン、2-フルオロ-2メチルプロパン、2-フルオロ-2メチルブタン、2-フルオロ-2メチルペンタン、3-フルオロ-3メチルペンタン、3-フルオロ-3メチルヘキサン、3-フルオロ-3エチルペンタン、3-フルオロ-3エチルヘキサン、4-フルオロ-4メチルヘプタン、4-フルオロ-4エチルヘプタン、4-フルオロ-4プロピルヘプタンからなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、2-クロロ-2メチルプロパン、2-クロロ-2メチルブタン、3-クロロ-3メチルペンタン、2-ブロモ-2メチルプロパン、2-ブロモ-2メチルブタン、3-ブロモ-3メチルペンタン、2-ヨード-2メチルプロパン、2-ヨード-2メチルブタン、3-ヨード-3メチルペンタン、2-フルオロ-2メチルプロパン、2-フルオロ-2メチルブタン及び3-フルオロ-3メチルペンタンからなる群から選択された1種以上であり、この場合、モリブデン薄膜用遮蔽領域を提供して薄膜の成長率を調節する効果が大きく、工程副生成物の除去効果も大きく、段差被覆性の改善及び膜質改善効果が優れている。
【0087】
【0088】
前記化学式1で表される化合物は、一例として屈折率(a)が1.38ないし1.72の範囲内であると同時に、25℃で測定した蒸気圧(mmHg, b)を前記屈折率(a)で除した値(b/a)が0.003ないし0.043の範囲内である飽和化合物であってもよい。このような場合、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減させ、薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合にも、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させ、薄膜前駆体のみならず工程副生成物の吸着を阻止して基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副生成物を効果的に除去するという利点がある。
【0089】
本発明において、前記屈折率は、他に特定しない限り当分野で公知となった方法で測定することができる。具体的な例として、ASTMD542に基づいてAbbe屈折計を利用して25℃で測定することができる。
【0090】
前記化学式1で表される化合物は、具体的な例として、屈折率(a)が1.385ないし1.72の範囲内であると同時に、25℃で測定した蒸気圧(mmHg, b)を前記屈折率(a)で除した値(b/a)が0.032ないし0.043の範囲内である飽和化合物であってもよく、好ましくは、屈折率(a)が1.388ないし1.719範囲内であると同時に、25℃で測定した蒸気圧(mmHg, b)を前記屈折率(a)で除した値(b/a)が0.0035ないし0.043の範囲内である飽和化合物であってもよく、この場合に、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減させ、薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合にも、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させ、薄膜前駆体のみならず工程副生成物の吸着を阻止して基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副生成物を効果的に除去するという利点がある。
【0091】
【0092】
前記膜質改善剤と前記モリブデン前駆体の反応性は、前記膜質改善剤とモリブデン前駆体を混合する前に測定したH-NMRスペクトラムと、1:1モル比の混合物を1時間加圧して測定したH-NMRスペクトラムを対比して生成されたNMRピーク頂点の積分値を不純物含量とすると、前記不純物含量(%)が0.1%未満と表されることによって、膜質改善剤を使用した場合に、モリブデン前駆体の吸着を妨害せず、かつ工程副生成物が減少しながら蒸着速度を調節して薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合にも、段差被覆性と膜質を向上させることができ、腐食や劣化を防いで薄膜の結晶性を改善させることによって、薄膜の比抵抗特性及び電気的特性を改善させることができる。
【0093】
前述した反応性によって、前記膜質改善剤は、モリブデン前駆体の粘度や蒸気圧を容易に調節し、モリブデン前駆体の挙動を妨害しないという利点がある。
【0094】
このような反応性を示す膜質改善剤は、一例としてハロゲン置換された直鎖あるいは分岐鎖アルカン化合物またはシクロアルカン化合物であってもよい。
【0095】
具体的な例として、1-ヨードブタン、2-ヨードブタン、2-ヨード-3-メチルブタン、3-ヨード-2,4-ジメチルペンタン、シクロヘキシルヨージド、シクロペンチルヨージド、1-ブロモブタン、2-ブロモブタン、2-ブロモ-3-メチルブタン、3-ブロモ-2,4-ジメチルペンタン、シクロヘキシルブロマイド、及びシクロペンチルブロマイドからなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、1-ヨードブタン及び2-ヨードブタンからなる群から選択された1種以上であり、この場合、モリブデン前駆体の吸着を妨害せず、かつ膜質改善剤として基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副生成物を効果的に除去するという利点がある。
【0096】
【0097】
前記膜質改善剤は、前記モリブデン系薄膜に残留しないことを特徴とする。
【0098】
この時、残留しないということは、他に特定しない限り、XPSで成分分析時にC元素1.0原子%(atom%)、Si元素1.0原子%(atom%)未満、N元素1.0原子%(atom%)未満、ハロゲン元素1.0原子%(atom%)未満で存在する場合をいう。
【0099】
【0100】
前記モリブデン系薄膜は、拡散防止膜(diffusion barrier)または電極(electrode)用途で用いられることができ、これに限定されるものではない。
【0101】
前記膜質改善剤は、好ましくは、純度99.9%以上の化合物、純度99.95%以上の化合物、または純度99.99%以上の化合物であってもよく、参考までに、純度99%未満の化合物を用いる場合には、不純物を形成することがあるため、可及的99%以上の物質を用いることが好ましい。
【0102】
【0103】
前記化学式1で表される化合物は、好ましく原子層蒸着(ALD)工程に用いられるものであり、この場合、モリブデン前駆体の吸着を妨害せず、かつ膜質改善剤として基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副生成物を効果的に除去するという利点がある。
【0104】
前記化学式1で表される化合物は、好ましく常温(22℃)にて液体であり、密度が0.8ないし2.5g/cm3または0.8ないし1.5g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が0.1ないし300mmHgまたは1ないし300mmHgであり、 水における溶解度 (25℃)が200mg/L以下であってもよく、この範囲内で遮蔽領域を効果的に形成し、段差被覆性、薄膜の厚さ均一性及び膜質改善が優れるという効果がある。
【0105】
より好ましくは、前記化学式1で表される化合物は、密度が0.75ないし2.0g/cm3または0.8ないし1.3g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が1ないし260mmHgであり、水における溶解度(25℃)が160mg/L以下であってもよく、この範囲内で遮蔽領域を効果的に形成し、段差被覆性、薄膜の厚さ均一性及び膜質改善が優れるという効果がある。
【0106】
【0107】
本発明のモリブデン系薄膜形成方法は、下記の化学式1
【0108】
[化学式1]
【0109】
【0110】
(前記Aは炭素(C)またはケイ素(Si)であり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R1及びR3は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり、前記R2は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または式BR4R5R6の官能基を有し、前記Bは炭素またはケイ素であり、前記R4、R5及びR6は、独立して、水素、炭素数1ないし5のアルキル基、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。)で表される膜質改善剤をALDチャンバ内に注入してローディング(loading)された基板表面に吸着させる段階を含むことを特徴とし、このような場合、基板にモリブデン系薄膜用遮蔽領域を形成してモリブデン系薄膜の蒸着速度を低減させ、薄膜成長率を制御して複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合にも、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性を大きく向上させるだけでなく、比抵抗改善などの膜質改善効果まで提供することができる。
【0111】
前記膜質改善剤を基板表面に遮蔽させる段階は、基板表面に膜質改善剤の供給時間(Feeding Time)がサイクル当たり、好ましくは、0.01ないし5秒、より好ましくは、0.02ないし3秒、さらに好ましくは、0.04ないし2秒、より一層好ましくは、0.05ないし1秒であり、この範囲内で薄膜成長率が低く、段差被覆性及び経済性に優れるという利点がある。
【0112】
本記載において、膜質改善剤の供給時間(Feeding Time)は、チャンバの体積15ないし20L及び流量0.5ないし5mg/sを基準とし、より具体的には、チャンバの体積18L及び流量1ないし2mg/sを基準とする。
【0113】
【0114】
前記薄膜形成方法は、好ましい一実施例として、i-a)前記膜質改善剤を気化してALDチャンバ内にローディングされた基板表面に遮蔽させる段階;ii-a)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-a)モリブデン前駆体を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に吸着させる段階;iv-a)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-a)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvia)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階を含んでもよい。この時、前記i-a)段階ないしvi-a)段階を単位サイクル(cycle)として目的とする厚さの薄膜を得るまで前記サイクルを繰り返して行ってもよく、このように1サイクル内において本発明の膜質改善剤をモリブデン前駆体よりも先に投入して基板に吸着させる場合、高温で蒸着しても薄膜成長率を適切に低くすることができ、生成される工程副生成物が効果的に除去されて薄膜の比抵抗が減少し、段差被覆性が大きく向上するという利点がある。
【0115】
【0116】
好ましいまた他の実施例として、前記薄膜形成方法は、i-b)モリブデン前駆体を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に吸着させる段階;ii-b)前記チャンバ内部をパージガスで1次パージする段階;iii-b)前記膜質改善剤を気化してチャンバ内にローディングされた基板表面に吸着させる段階;iv-b)前記チャンバ内部をパージガスで2次パージする段階;v-b)前記チャンバ内部に反応ガスを供給する段階;及びvi-b)前記チャンバ内部をパージガスで3次パージする段階を含んでもよい。この時、前記i-b)段階ないしvi-b)段階を単位サイクルとして目的とする厚さの薄膜を得るまで前記サイクルを繰り返して行ってもよく、このように1サイクル内において本発明の膜質改善剤をモリブデン前駆体よりも後に投入して基板に吸着させる場合、前記膜質改善剤は薄膜形成用成長活性化剤として作用することができ、このような場合、薄膜成長率が高くなり、薄膜の密度及び結晶性が高くなって薄膜の比抵抗が減少し、電気的特性が大きく向上するという利点がある。
【0117】
【0118】
本発明の薄膜形成方法は、好ましい一例として、1サイクル内において本発明の膜質改善剤をモリブデン前駆体よりも先に投入して基板に吸着させてもよく、この場合、高温で薄膜を蒸着させても薄膜成長率を適切に減少させることによって、工程副生成物が大きく減少し、段差被覆性を大きく向上させることができ、薄膜の結晶性が増加して薄膜の比抵抗を減少させることができ、アスペクト比が大きな半導体素子に適用しても薄膜の厚さ均一度が大きく向上して半導体素子の信頼性を確保するという利点がある。
【0119】
【0120】
前記薄膜形成方法は、一例として、前記膜質改善剤をモリブデン前駆体の蒸着前または後に蒸着させる場合、必要に応じて単位サイクルを1ないし99,999回繰り返して行ってもよく、好ましくは単位サイクルを10ないし10,000回、より好ましくは50ないし5,000回、より一層好ましくは100ないし2,000回繰り返し行ってもよく、この範囲内で目的とする薄膜の厚さを得ながら、本発明で達成しようとする効果を充分に得ることができる。
【0121】
本発明において、前記チャンバは、一例としてALDチャンバまたはCVDチャンバであってもよい。
【0122】
本発明において、前記膜質改善剤またはモリブデン前駆体は、気化して注入された後、プラズマ後処理する段階を含んでもよく、この場合に、薄膜の成長率を改善しながら工程副生成物を減らすことができる。
【0123】
【0124】
基板上に前記膜質改善剤を先に吸着させた後、前記モリブデン前駆体を吸着させる場合、または前記モリブデン前駆体を先に吸着させた後、前記膜質改善剤を吸着させる場合、前記未吸着膜質改善剤をパージする段階で前記チャンバ内部に投入されるパージガスの量は、前記未吸着膜質改善剤を除去するのに充分な量であれば特に制限されない。一例として10ないし100,000倍でもよく、好ましくは50ないし50,000倍、より好ましくは100ないし10,000倍でもよく、この範囲内で未吸着膜質改善剤を充分に除去して薄膜がまんべんなく形成され、膜質の劣化を防ぐことができる。ここで、前記パージガス及び膜質改善剤の投入量は、それぞれ1サイクルを基準とし、前記膜質改善剤の体積は、気化された膜質改善剤の蒸気の体積を意味する。
【0125】
具体的な一例として、前記膜質改善剤を流速1.66mL/s及び注入時間0.5secで注入(1サイクル当たり)と、未吸着膜質改善剤をパージする段階でパージガスを流量166.6mL/s及び注入時間3secで注入(1サイクル当たり)する場合、パージガスの注入量は、膜質改善剤の注入量の602倍である。
【0126】
【0127】
また、前記未吸着モリブデン前駆体をパージする段階で前記ALDチャンバ内部に投入されるパージガスの量は、前記未吸着モリブデン前駆体を除去するのに充分な量であれば特に制限されない。一例として、前記ALDチャンバ内部に投入されたモリブデン前駆体の体積を基準として10ないし10,000倍でもよく、好ましくは50ないし50,000倍、より好ましくは100ないし10,000倍でもよく、この範囲内で未吸着モリブデン前駆体を充分に除去して薄膜がまんべんなく形成され、膜質の劣化を防ぐことができる。ここで、前記パージガス及びモリブデン前駆体の投入量は、それぞれ1サイクルを基準とし、前記モリブデン前駆体の体積は、気化されたモリブデン前駆体の蒸気の体積を意味する。
【0128】
【0129】
また、前記反応ガス供給段階直後に行うパージ段階において、前記ALDチャンバ内部に投入されるパージガスの量は、一例として前記ALDチャンバ内部に投入された反応ガスの体積を基準として10ないし10,000倍でもよく、好ましくは50ないし50,000倍、より好ましくは100ないし10,000倍でもよく、この範囲内で所望の効果を充分に得ることができる。ここで、前記パージガス及び反応ガスの投入量は、それぞれ1サイクルを基準とする。
【0130】
【0131】
前記膜質改善剤及びモリブデン前駆体は、好ましくVFC方式、DLI方式またはLDS方式でALDチャンバ内に移送されてもよく、より好ましくはLDS方式でチャンバ内に移送されるものである。
【0132】
前記チャンバ内にローディングされた基板は、一例として50ないし700℃、具体的な例として、300ないし700℃に加熱されてもよく、前記膜質改善剤またはモリブデン前駆体は、前記基板上に加熱されないまま、あるいは加熱された状態で注入されてもよく、蒸着効率によって加熱されないまま注入された後、蒸着工程の途中で加熱条件を調節してもよい。一例として、50ないし700℃下で1ないし20秒間基板上に注入してもよい。
【0133】
【0134】
前記膜質改善剤と前記モリブデン前駆体のチャンバ内の投入量(mg/サイクル)比は、好ましくは1:1.5ないし1:20であってもよく、より好ましくは1:2ないし1:15であり、さらに好ましくは1:2ないし1:12であり、より一層好ましくは1:2.5ないし1:10であり、この範囲内で段差被覆性の向上効果及び工程副生成物の低減効果が大きい。
【0135】
【0136】
本発明において、前記モリブデン前駆体は、一例として非極性溶媒と混合してチャンバ内に投入されてもよく、この場合、モリブデン前駆体の粘度や蒸気圧を容易に調節可能であるという利点がある。
【0137】
前記非極性溶媒は、好ましくはアルカン及びシクロアルカンからなる群から選択された1種以上であってもよく、このような場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易な有機溶媒を含みながらも、薄膜形成時に蒸着温度が増加しても段差被覆性(step coverage)が向上するという利点がある。
【0138】
より好ましい例として、前記非極性溶媒は、C1ないしC10のアルカン(alkane)またはC3ないしC10のシクロアルカン(cycloalkane)を含んでもよく、好ましくはC3ないしC10のシクロアルカン(cycloalkane)であり、この場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0139】
本記載において、C1、C3などは炭素数を意味する。
【0140】
前記シクロアルカンは、好ましくはC3ないしC10のモノシクロアルカンであってもよく、前記モノシクロアルカンのうちシクロペンタン(cyclopentane)が常温にて液体であり、最も蒸気圧が高く気相蒸着工程で好ましいが、これに限定されるものではない。
【0141】
前記非極性溶媒は、一例として水における溶解度(25℃)が200mg/L以下、好ましくは50ないし400mg/L、より好ましくは135ないし175mg/Lであり、この範囲内でモリブデン前駆体に対する反応性が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0142】
本記載において、溶解度は、本発明が属する技術分野で通常使用する測定方法や基準によれば特に制限されず、一例として飽和溶液をHPLC法で測定することができる。
【0143】
前記非極性溶媒は、好ましくモリブデン前駆体及び非極性溶媒を合わせた総重量に対して5ないし95重量%含んでもよく、より好ましくは10ないし90重量%含んでもよく、さらに好ましくは40ないし90重量%含んでもよく、最も好ましくは70ないし90重量%含んでもよい。
【0144】
万一、前記非極性溶媒の含量が前記上限値を超過して投入されると、不純物を誘発して抵抗と薄膜内の不純物数値が増加し、前記有機溶媒の含量が前記下限値未満で投入されると、溶媒添加による段差被覆性の向上効果及び塩素(Cl)イオンなどの不純物の低減効果が少ないという短所がある。
【0145】
【0146】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、一例として前記膜質改善剤を用いる場合、下記の数式1で計算されるサイクル当たりの薄膜成長率(Å/サイクル)の減少率が-5%以下であり、好ましくは-10%以下、より好ましくは-20%以下であり、さらに好ましくは-30%以下、より一層好ましくは-40%以下、最も好ましくは-45%以下であり、この範囲内で段差被覆性及び膜の厚さ均一性に優れている。
【0147】
[数式1]
【0148】
サイクル当たりの薄膜成長率減少率(%)=[(膜質改善剤を使用した場合のサイクル当たりの薄膜成長率-膜質改善剤を使用しなかった場合のサイクル当たりの薄膜成長率)/膜質改善剤を使用しなかった場合のサイクル当たりの薄膜成長率]×100
【0149】
前記数式1において、膜質改善剤を使用した場合及び使用しなかった場合のサイクル当たりの薄膜成長率は、それぞれのサイクル当たりの薄膜蒸着厚さ(Å/サイクル)、すなわち、蒸着速度を意味し、前記蒸着速度は、一例としてエリプソメトリー(Ellipsometery)で薄膜の最終厚さを測定した後、総サイクル回数で除して平均蒸着速度として求めることができる。
【0150】
前記数式1において、「膜質改善剤を使用しなかった場合」は、薄膜蒸着工程において基板上にモリブデン前駆体のみを吸着させて薄膜を製造する場合を意味し、具体的な例としては、前記薄膜形成方法において膜質改善剤を吸着させる段階、及び未吸着膜質改善剤をパージさせる段階を省略して薄膜を形成した場合をいう。
【0151】
【0152】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、SIMSに基づいて測定された、薄膜厚さ100Å基準薄膜内の残留ハロゲンの強さ(c/s)が好ましくは100,000以下、より好ましく70、000以下、さらに好ましく50,000以下、より一層好ましくは10,000以下であってもよく、好ましい一実施例として、5,000以下、より好ましくは1,000ないし4、000、より一層好ましくは1,000ないし3、800であってもよく、このような範囲内で腐食及び劣化が防止される効果が優れている。
【0153】
本記載において、パージは、好ましくは1,000ないし50,000sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、より好ましくは2,000ないし30,000sccm、さらに好ましくは2,500ないし15,000sccmであり、この範囲内でサイクル当たりの薄膜成長率が適切に制御され、単一原子層(atomic mono-layer)、あるいはこれに近く蒸着がなされて膜質側面で有利であるという利点がある。
【0154】
【0155】
前記ALD(原子層蒸着工程)は、高いアスペクト比が要求される集積回路(IC:Integrated Circuit)の製作において非常に有利であり、特に自己制限的な薄膜成長メカニズムによる、優れた段差塗布性(conformality)、均一な被覆性(uniformity)、及び精密な厚さ制御などの利点がある。
【0156】
前記薄膜形成方法は、一例として50ないし800℃範囲の蒸着温度で実施することができ、好ましくは300ないし700℃範囲の蒸着温度で、より好ましくは350ないし650℃範囲の蒸着温度で実施することができる。この範囲内でALD工程特性を具現しつつ優れた膜質の薄膜に成長させる効果がある。
【0157】
前記薄膜形成方法は、一例として0.01ないし30Torr範囲の蒸着圧力で実施することができ、好ましくは0.1ないし30Torr範囲の蒸着圧力で、より好ましくは1ないし30Torr範囲の蒸着圧力で、最も好ましくは5ないし20Torr範囲の蒸着圧力で実施することができる。この範囲内で均一な厚さの薄膜を得る効果がある。
【0158】
本記載において、蒸着温度及び蒸着圧力は、蒸着チャンバ内に形成される温度及び圧力として測定するか、蒸着チャンバ内の基板に加えられる温度及び圧力として測定することができる。
【0159】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、好ましくは前記膜質改善剤をチャンバ内に投入する前に、チャンバ内の温度を蒸着温度に昇温する段階;及び/または前記膜質改善剤をチャンバ内に投入する前に、チャンバ内に不活性気体を注入してパージする段階を含んでもよい。
【0160】
また、本発明は、前記モリブデン系薄膜製造方法を具現することができる薄膜製造装置として、ALDチャンバ、膜質改善剤を気化する第1気化器、気化された膜質改善剤をALDチャンバ内に移送する第1移送手段、薄膜前駆体を気化する第2気化器、及び気化された薄膜前駆体をALDチャンバ内に移送する第2移送手段を含む薄膜製造装置を含んでもよい。ここで気化器及び移送手段は、本発明が属する技術分野で通常用いられる気化器及び移送手段であれば特に制限されない。
【0161】
【0162】
具体的な例として、前記薄膜形成方法について説明すると、まず、上部に薄膜が形成される基板を原子層蒸着が可能な蒸着チャンバ内に位置させる。
【0163】
前記基板は、シリコン基板、シリコンオキシドなどの半導体基板を含んでもよい。
【0164】
前記基板は、その上部に導電層または絶縁層がさらに形成されてもよい。
【0165】
前記蒸着チャンバ内に位置させた基板上に薄膜を蒸着するために、上述した膜質改善剤と、モリブデン前駆体、またはこれと非極性溶媒の混合物をそれぞれ準備する。
【0166】
その後、準備された膜質改善剤を気化器内に注入した後、蒸気相に変化させて蒸着チャンバに伝達して基板上に吸着させ、パージ(purging)して未吸着の膜質改善剤を除去させる。
【0167】
次に、準備されたモリブデン前駆体、またはこれと非極性溶媒の混合物(薄膜形成用組成物)を気化器内に注入した後、蒸気相に変化させて蒸着チャンバに伝達して基板上に吸着させ、未吸着のモリブデン前駆体/薄膜形成用組成物をパージ(purging)させる。
【0168】
本記載において、前記膜質改善剤を基板上に吸着させた後、パージして未吸着膜質改善剤を除去させる工程;及びモリブデン前駆体を基板上に吸着させてパージして未吸着モリブデン前駆体を除去させる工程は必要に応じて順序を変えて実施することができる。
【0169】
本記載において、膜質改善剤及びモリブデン前駆体(薄膜形成用組成物)などを蒸着チャンバに伝達する方式は、一例として気相流量制御(マスフローコントローラー、Mass Flow Controller;MFC)方法を活用して揮発された気体を移送する方式(気体フローコントロール、Vapor Flow Control;VFC)、または液体流量制御(液体マスフローコントローラー、Liquid Mass Flow Controller;LMFC)方法を活用して液体を移送する方式(液体移送システム、Liquid Delivery System;LDS)を使用することができ、好ましくはLDS方式を使用するものである。
【0170】
この時、膜質改善剤及びモリブデン前駆体などを基板上に移動させるためのキャリアガスまたは希釈ガスでとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)からなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合気体を使用することができるが、制限されるものではない。
【0171】
本記載において、パージガスとしては、一例として不活性ガスを使用することができ、好ましくは前記キャリアガスまたは希釈ガスを使用することができる。
【0172】
【0173】
次に、反応ガスを供給する。前記反応ガスとしては、本発明が属する技術分野で通常用いられる反応ガスであれば特に制限されず、好ましくは還元剤、窒化剤または酸化剤を含んでもよい。前記窒化剤と、基板に吸着されたモリブデン前駆体とが反応して窒化膜が形成され、前記還元剤と、基板に吸着されたモリブデン前駆体とが反応して金属膜が形成され、前記酸化剤と、基板に吸着されたモリブデン前駆体とが反応して酸化膜が形成される。
【0174】
好ましくは、前記窒化剤は窒素ガス(N2)、ヒドラジンガス(N2H4)、または窒素ガス及び水素ガスの混合物であってもよく、前記酸化剤は酸素ガス(O2)、オゾンガスまたは酸素ガス及びオゾンガスの混合物であってもよく、前記還元剤は水素ガス(H2)などであってもよい。
【0175】
前記薄膜形成方法は、一例として蒸着温度が50ないし800℃であり、好ましくは200ないし700℃であり、具体的な例としては250ないし500℃、250ないし450℃、380ないし420℃、または400ないし450℃であり、この範囲内で薄膜比抵抗、ステップカバレージなどが大きく改善する利点がある。
【0176】
次に、不活性ガスを用いて反応していない残留反応ガスをパージさせる。これにより、過剰量の反応ガスだけでなく、生成した副生成物も一緒に除去することができる。
【0177】
上記のように、前記モリブデン系薄膜形成方法は、一例として膜質改善剤を基板上に遮蔽させる段階、未吸着の膜質改善剤をパージする段階、モリブデン前駆体/薄膜形成用組成物を基板上に吸着させる段階、未吸着のモリブデン前駆体/薄膜形成用組成物をパージする段階、反応ガスを供給する段階、残留反応ガスをパージする段階を単位サイクルとして、所望の厚さの薄膜を形成するために前記単位サイクルを繰り返すことができる。
【0178】
前記モリブデン系薄膜形成方法は、他の一例として、モリブデン前駆体/薄膜形成用組成物を基板上に吸着させる段階、未吸着のモリブデン前駆体/薄膜形成用組成物をパージする段階、膜質改善剤を基板上に吸着させる段階、未吸着の膜質改善剤をパージする段階、反応ガスを供給する段階、残留反応ガスをパージする段階を単位サイクルとして、所望の厚さの薄膜を形成するために前記単位サイクルを繰り返すことができる。
【0179】
前記単位サイクルは、一例として1ないし99,999回、好ましくは10ないし1,000回、より好ましくは50ないし5,000回、より一層好ましくは100ないし2,000回繰り返されることができ、この範囲内で目的とする薄膜特性が良好に発現されるという効果がある。
【0180】
【0181】
本発明はまた、半導体基板を提供し、前記半導体基板は、本記載のモリブデン系薄膜形成方法で製造されることを特徴とし、このような場合、薄膜の段差被覆性(step coverage)及び薄膜の厚さ均一性が大きく優れ、薄膜の密度及び電気的特性が優れるという効果がある。
【0182】
【0183】
前記製造された薄膜は、好ましくは厚さが20nm以下であり、薄膜厚さ10nm基準の比抵抗値が0.1ないし400μΩ・cmであり、ハロゲン含量が10,000ppm以下であり、段差被覆率が90%以上であり、この範囲内で拡散防止膜としての性能に優れ、金属配線材料の腐食が低減されるという効果があるが、これに限定されるものではない。
【0184】
前記薄膜は、厚さが一例として1ないし20nm、好ましくは1ないし20nm、より好ましくは3ないし25nm、さらに好ましくは5ないし20nmであってもよく、この範囲内で薄膜特性が優れるという効果がある。
【0185】
前記薄膜は、一例として薄膜厚さ10nm基準の比抵抗値が0.1ないし400μΩ・cm、好ましくは15ないし300μΩ・cm、より好ましくは20ないし290μΩ・cm、より一層好ましくは25ないし280μΩ・cmであってもよく、この範囲内で薄膜特性が優れるという効果がある。
【0186】
前記薄膜は、ハロゲン含量が好ましくは10,000ppm以下、または1ないし9,000ppm、さらに好ましくは5ないし8,500ppm、より一層好ましくは100ないし1,000ppmであってもよく、この範囲内で薄膜特性が優れつつも薄膜成長率が低減されるという効果がある。ここで、前記薄膜に残留するハロゲンは、一例としてCl2、Cl、またはCl-であってもよく、薄膜内ハロゲン残留量が低いほど膜質が優れており好ましい。
【0187】
前記薄膜は、一例として段差被覆率が90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上であり、この範囲内で複雑な構造の薄膜でも容易に基板に蒸着させることができ、次世代半導体装置に適用可能であるという利点がある。
【0188】
本発明において、段差被覆率は他に特定しない限り、当業界で公知となった方式で計算されることができ、例えば上端部に蒸着された薄膜厚さ(上部蒸着厚さ)と、側面部に蒸着された薄膜厚さ(側面蒸着厚さ)を測定し、上部蒸着厚さを側面蒸着厚さで除した値を百分率で示してもよい。
【0189】
前記薄膜は、一例として比抵抗値が1500μΩ.cm以下、好ましくは1400μΩ.cm以下、より好ましくは1300μΩ.cm以下であって、小さな値であればあるほどさらに好ましく、この範囲内で複雑な構造の薄膜が必要とする電気的特性を提供することができ、次世代半導体装置に適用可能であるという利点がある。
【0190】
【0191】
前記製造された薄膜は、一例としてモリブデン膜、モリブデンオキシド膜、またはモリブデンナイトライド膜を含んでもよく、この場合、半導体素子の拡散防止膜、または電極として有用な利点がある。
【0192】
【0193】
前記薄膜は、一例として、必要に応じて2層または3層の多層構造であってもよい。前記2層構造の多層膜は、具体的な一例として下層膜-中層膜構造であってもよく、前記3層構造の多層膜は、具体的な一例として下層膜-中層膜-上層膜構造であってもよい。
【0194】
前記下層膜は、一例としてSi、SiO2、MgO、Al2O3、CaO、ZrSiO4、ZrO2、HfSiO4、Y2O3、HfO2、LaLuO2、Si3N4、SrO、La2O3、Ta2O5、BaO、TiO2からなる群から選択された1種以上を含んでなってもよい。
【0195】
前記中層膜は、一例としてTixNy、好ましくはTNを含んでなってもよい。
【0196】
前記上層膜は、一例としてW、Moからなる群から選択された1種以上を含んでなってもよい。
【0197】
【0198】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例及び図面を提示する。下記実施例及び図面は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0199】
【0200】
[実施例]
【0201】
実施例1ないし5、比較例1ないし3、参考例1
【0202】
実験で使用する膜質改善剤とモリブデン前駆体として、下記の表1に示した組み合わせを選定した。
【0203】
【0204】
実施例1
【0205】
上記表1に記載された化合物のうち、膜質改善剤としてt-ブチルヨージドと、モリブデン前駆体として化学式34で表される化合物、MoO2Cl2をそれぞれ準備した。準備された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物をそれぞれキャニスターに入れて、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/分の流速で150℃に加熱された気化器に供給した。
【0206】
気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物を、それぞれ1秒間、Si基板がローディングされた蒸着チャンバに1:1の投入量比で投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。この時、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0207】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、3秒間アルゴンパージを実施した。この時、金属薄膜が形成される基板を下記の表2に示した温度380℃にそれぞれ加熱した。このような工程を200ないし400回繰り返して10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0208】
【0209】
実施例2
【0210】
上記表1に記載された化合物のうち、膜質改善剤としてt-ブチルヨージドと、モリブデン前駆体として化学式34で表される化合物、MoO2Cl2をそれぞれ準備した。準備された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物をそれぞれキャニスターに入れて、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/分の流速で150℃に加熱された気化器に供給した。
【0211】
気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物を、それぞれ1秒間、Si基板がローディングされた蒸着チャンバに1:1の投入量比で投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。この時、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0212】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、3秒間アルゴンパージを実施した。この時、金属薄膜が形成される基板を下記の表2に示した温度400℃にそれぞれ加熱した。このような工程を200ないし400回繰り返して10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0213】
【0214】
実施例3
【0215】
上記表1に記載された化合物のうち、膜質改善剤としてt-ブチルヨージドと、モリブデン前駆体として化学式34で表される化合物、MoO2Cl2をそれぞれ準備した。準備された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物をそれぞれキャニスターに入れて、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/分の流速で150℃に加熱された気化器に供給した。
【0216】
気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物を、それぞれ1秒間、Si基板がローディングされた蒸着チャンバに1:1の投入量比で投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。この時、反応チャンバ内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0217】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバに投入した後、3秒間アルゴンパージを実施した。この時、金属薄膜が形成される基板を下記の表2に示した温度420℃にそれぞれ加熱した。このような工程を200ないし400回繰り返して10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0218】
【0219】
比較例1ないし3
【0220】
前記実施例1ないし3において膜質改善剤を未含有としたことを除き、前記実施例1ないし3と同一の工程を繰り返した。
【0221】
結果的に、10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0222】
【0223】
実施例4
【0224】
前記実施例1において、気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤と薄膜前駆体化合物を、それぞれ1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに1:1の投入量比で順次投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施したことを除き、前記実施例1と同一の工程を繰り返した。
【0225】
具体的に、気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した後、気化器にて蒸気相に気化されたモリブデン前駆体を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。
【0226】
その結果、200ないし400回繰り返して10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0227】
【0228】
実施例5
【0229】
前記実施例1において、気化器にて蒸気相に気化された薄膜前駆体と膜質改善剤を、それぞれ1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに1:1の投入量比で順次投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施したことを除き、前記実施例1と同一の工程を繰り返した。
【0230】
具体的に、気化器にて蒸気相に気化されたモリブデン前駆体を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した後、気化器にて蒸気相に気化された膜質改善剤を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間供給して、アルゴンパージを実施した。
【0231】
その結果、200ないし400回繰り返して10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0232】
【0233】
参考例1
【0234】
前記実施例1において、膜質改善剤としてt-ブチルヨージドをヨードブタンに代替したことを除き、前記実施例1と同一の工程を繰り返した。
【0235】
その結果、10nm厚さの自己-制限原子層であるMoN薄膜を形成した。
【0236】
【0237】
[実験例]
【0238】
1)蒸着評価(サイクル当たりの蒸着速度、GPC)
【0239】
製造された薄膜に対して、光の偏光特性を用いて薄膜の厚さや屈折率などの光学的特性を測定することができる装置であるエリプソメトリー(Ellipsometer)で測定した薄膜の厚さをサイクル回数で割り、1サイクル当たりに蒸着される薄膜の厚さを計算して蒸着速度を評価し、その結果は下記の表2に示した。
【0240】
【0241】
2)薄膜抵抗評価(比抵抗)
【0242】
製造された薄膜の表面抵抗を四探針法(four-pointprobe)方式で測定して面抵抗を求めた後、前記薄膜の厚さ値から比抵抗値(μΩ.cm)を算出し、その結果値を下記の表2に示した。
【0243】
【0244】
前記表2に示したように、本発明のt-ブチルヨージドを膜質改善剤として薄膜前駆体化合物と共に用いた場合(実施例1ないし3)は、膜質改善剤を使用しなかった場合(比較例1ないし3)と同等ないし類似の蒸着速度を提供しながら、比抵抗は919ないし1884μΩ.cmと減少して表れたので、薄膜成長速度が適切に制御されて電気的特性が向上したことを確認することができた。
【0245】
3)不純物の低減特性
【0246】
製造された厚さ10nm薄膜の不純物、すなわち工程副生成物の低減特性を比較するために、 i-a)(Ti)、窒素(N)、Cl(塩素)、カーボン(C)及び酸素(O)の元素に対してXPS(X線光電子分光法、X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行い、その結果は下記の表3に示した。
【0247】
【0248】
上記表3に示したように、本発明に係る膜質改善剤を薄膜前駆体化合物と同時に用いた場合(実施例1)は、膜質改善剤を用いなかった場合(比較例1)と同等類似の水準を示すだけでなく、他の膜質改善剤を用いた場合(参考例1)に比べてCl及びCの強度がすべて0.01%水準まで減少し、不純物の低減特性が優れることを確認することができた。特に、比較例1の場合、膜質改善剤を投入しなかったので、理論上炭素が検出されてはならないが、薄膜前駆体化合物、パージガス及び反応ガスに含まれた微量のCO及び/またはCO2から起因したと思われる炭素が検出されることを確認することができるが、本発明の実施例1では薄膜蒸着時、炭化水素化合物である膜質改善剤を投入したにもかかわらず、比較例1に比べて炭素強度が減少したことを確認することができ、これは本発明の膜質改善剤が不純物の低減特性が優れていることを意味する。
【0249】
特に、参考例1は、本発明の膜質改善剤と類似してハロゲン化物系構造の化合物を投入したが、実施例1、ひいては比較例1よりも不純物強度が非常に高く表れて膜質改善効果がないことを確認することができた。
【0250】
【0251】
さらに、膜質改善剤の注入段階別に効果を確認するために、下の実験を追加で実施した。
【0252】
【0253】
実施例6
【0254】
MoO2Cl2をMo前駆体として活用して、VFC供給方式を活用してALD蒸着評価を行った。
【0255】
MoO2Cl2のキャニスター加熱温度は90℃であり、蒸着評価温度は380℃、400℃、420℃でそれぞれ行った。工程圧力は6torrであり、アンモニア反応ガスとArパージガスの流量はすべて1000sccmだった。
【0256】
比抵抗及びGPC改善効果を確認するために、MoN薄膜を蒸着して比較した。
【0257】
具体的に、MoO2Cl2注入後、Arパージ後にt-ブチルヨージドを注入し、Ar注入、NH3反応ガス注入後、Ar注入してALD蒸着実験を行う実験(後注入)と、t-ブチルヨージドを注入し、Ar注入後にMoO2Cl2を注入し、Ar注入後にNH3反応ガスを注入してAr注入するように順序を変えてALD蒸着実験を行う実験(先注入)をそれぞれ行った後、上の実験例で提示した方式で比抵抗と蒸着速度を測定し、対照群として膜質改善剤の投入を省略して製造されたMoN薄膜に対しても同一に比抵抗と蒸着速度を測定した。
【0258】
それぞれの測定結果を下記の
図1に示した。下記の
図1は、MoO
2Cl
2に本発明で提示した膜質改善剤を先注入及び後注入した実験と、膜質改善剤を使用しなかった対照群実験の実施例6の結果を対比した図面である。
【0259】
下記の
図1から分かるように、対照群と対比して左側図面に表示された比抵抗は、対照群と対比して先注入、後注入が共に改善し、この中でも先注入で最も改善した結果を示すことが確認され、右側図面に表示された蒸着速度も先注入でさらに改善した結果を示すことが確認され、これにより膜質改善剤を先注入する場合に、後注入よりも一層優れた効果を確認した。
【国際調査報告】