(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線を決定する方法
(51)【国際特許分類】
F16D 66/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530527
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 DE2022200266
(87)【国際公開番号】W WO2023098957
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213710.5
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】フェルティク・フェリクス・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミュンツ・エーバーハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッケンヘーファー・トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツァー・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ネーゼンゾーン・マヌエル
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA41
3J058BA57
3J058BA60
3J058CC03
3J058CC22
3J058DB21
3J058DB23
3J058FA01
(57)【要約】
本発明は、ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線(2、6、9)を決定する方法であって、圧力-体積特性曲線(2、6、9)がいくつかの圧力-体積データ対(3)から形成され、各圧力-体積データ対(3)において、圧力補間値が体積補間値に割り当てられる、方法に関する。目的は、圧力-体積特性曲線(2、6、9)を自動的に決定する方法を提供することであり、上記方法は、ブレーキキャリパーデバイスの摩耗及び製造公差に起因する圧力-体積特性曲線(2、6、9)の不正確さを低減することができる。上記の目的は、体積補間値がいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)に関する補償計算によって決定されるという事実によって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線(2、6、9)を決定する方法であって、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)が、いくつかの圧力-体積データ対(3)から形成され、各圧力-体積データ対(3)において、圧力補間値が体積補間値に割り当てられる、方法において、前記体積補間値がいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)に関する補償計算によって決定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記体積補間値に割り当てられた前記圧力補間値の局所近傍における前記補助圧力-体積データ対(4、5)が、前記割り当てられた圧力補間値よりも小さい及び/又は大きい補助圧力補間値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補償計算が、好ましくは最小2乗法によって、前記局所近傍における前記圧力の関数として前記体積を示す前記補助圧力-体積データ対(4、5)に関する回帰関数を決定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記体積補間値が、前記割り当てられた圧力補間値の位置にある前記回帰関数の関数値として決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記補助圧力-体積データ対(4、5)が、前記ブレーキキャリパーデバイス上のセンサデバイスによって測定される、及び/又は推定によって決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記推定が、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の線形領域において、前記線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)の外挿(6)によって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記推定が、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の非線形領域において、前記非線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)から補助圧力-体積特性曲線(7)の平行移動によって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)が、厳密に単調増加で進行する、及び/又は、凹状に進行する、及び/又は、その微分が前記圧力補間値の全範囲において1つの最大値しか持たないように決定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の前記決定が、前記ブレーキキャリパーデバイスの動作時に行われ、前記ブレーキキャリパーデバイスの摩耗の影響を補償するために使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線を決定する方法であって、圧力-体積特性曲線がいくつかの圧力-体積データ対から形成され、各圧力-体積データ対において、圧力補間値が体積補間値に割り当てられる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなブレーキキャリパーデバイスが、例えば、自動車で使用され得る。自動車の制動過程におけるブレーキキャリパーデバイスの挙動は、油圧制御に関して、圧力-体積特性曲線によって説明される。これは、圧力に依存する体積を示すものである。よって、圧力-体積特性曲線は、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパーのブレーキピストンに所望の圧力を発生させるために、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパー内に変位させなければならない体積を規定する。
【0003】
ここで、圧力-体積特性曲線は、従来、いくつかの圧力-体積データ対に基づいて手動で決定されている。よって、例えば、10個の圧力-体積データ対が、外部測定デバイスの助けを借りて、ブレーキキャリパーデバイスにおいて圧力-体積特性曲線を決定するために手動で当てはめられる。一方では、圧力-体積特性曲線のこの手作業での当てはめは、大変な労力を伴う。時間がかかり、間違いが発生しやすく、場合によっては繰り返される必要があり続ける。他方では、手動による当てはめはまた、個体差の可能性や、ブレーキキャリパーデバイスの耐用期間にわたる圧力-体積特性曲線における変化に対応することができない。
【0004】
手作業による圧力-体積特性曲線の決定は、典型的には、所定のタイプのブレーキキャリパーデバイスにおける開発プロジェクトの一部として行われる。そして、このブレーキキャリパーデバイスでは、圧力-体積特性曲線は、測定されたブレーキキャリパーデバイスの適用される圧力-体積特性曲線又は開発プロジェクト内の仕様に基づいて、開発プロジェクトの終わり付近で明確に定義される。しかしながら、同じ設計のいくつかのブレーキキャリパーデバイスにおいて、このような圧力-体積特性曲線は製造公差のために異なることがある。その結果、圧力-体積特性曲線の精度が開発プロジェクトにおいて決定されたものよりもブレーキキャリパーデバイスの動作時の方が悪くなることがある。
【0005】
加えて、開発プロジェクトの後、ブレーキキャリパーデバイスの動作時には、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキパッド及びブレーキディスクが摩耗する。このことによっても圧力-体積特性曲線は変化し、通常、ブレーキキャリパーの体積吸収量は減少する(すなわち、ブレーキキャリパーの剛性が高まる)。ブレーキキャリパーデバイスが次第に摩耗するにつれて、圧力-体積特性曲線に更なる不正確さが生じる。
【0006】
概して、上記のような圧力-体積特性曲線の不正確さは、圧力制御の品質の低下を引き起こし、またブレーキキャリパーデバイスのロバスト性の低下も引き起こす。なお、圧力-体積特性曲線は、例えば体積ベースの安全モニタ又は体積ベースの制御など、自動車のソフトウェアの他の部分でも使用されることにも留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、ブレーキキャリパーデバイスの摩耗及び製造公差による圧力-体積特性曲線の不正確さを低減し得る圧力-体積特性曲線の自動判定方法を提供するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明によれば、いくつかの補助圧力-体積データ対に関する補償計算によって体積補間値を決定することによって達成される。
【0009】
補助圧力-体積データ対は事前に定義され得る。これにより、補助圧力-体積データ対を手動で選択する必要がなくなる。標準化によって、圧力-体積特性曲線の手作業による当てはめの際の労力が軽減される。圧力-体積特性曲線の決定はまた、補助圧力-体積データ対に関する補償計算を行うことによって自動化される。このことにより、圧力-体積特性曲線の当てはめが全体的に簡素化される。よって、本発明による方法はまた、2つの基本的な用途にも適する。一方では、本発明による方法は、開発プロジェクト(エンド・オブ・ライン、ワークショップ、又はシリーズアプリケーション)の一部として圧力-体積特性曲線の較正を行うために使用され得る。他方では、本発明による方法は、動作時にブレーキキャリパーデバイスが摩耗した場合に、圧力-体積特性曲線の自動当てはめを実行するために使用され得る。なお、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキフルード又はブレーキディスクの温度の影響は、圧力-体積特性曲線の決定においては無視され得る、又は慎重に選択された周囲条件によって排除され得る。これは、これらのパラメータが、摩耗に比べて圧力-体積特性曲線に一時的な変化しかもたらさないためである。概して、このことは、制御品質の低下及び油圧モニタのロバスト性の低下の問題を打ち消すことができる。
【0010】
ここで、体積補間値に割り当てられた圧力補間値の局所近傍における補助圧力-体積データ対は、割り当てられた圧力補間値よりも小さい及び/又は大きい補助圧力補間値を有することが有利である。
【0011】
本方法の一部として、まず、圧力-体積特性曲線を決定するための、いくつかの圧力-体積データ対がこのために選択される。この目的のために、例えば、圧力-体積特性曲線の圧力補間値が選択され、事前に定義される。これらの圧力補間値は、好ましくは、ブレーキキャリパーデバイスの圧力に関するソフトウェア信号の値の全範囲をカバーする。圧力補間値は、例えば、0、1.25、2.5、5、10、20、40、80、160、327barから選択され、定義され得る。次のステップにおいて、補助圧力補間値が、これらの事前に定義された圧力補間値のそれぞれについて形成される。この目的のために、例えば、10個の補助圧力補間値が、指定された圧力補間値の下方の局所近傍において選択され得る。追加的又は代替的に、更に10個の補助圧力補間値が、指定された圧力補間値の上方の局所近傍において選択され得る。局所近傍は、可能な限り、ここでは指定された圧力補間値のすぐ近くに調整されるべきである。よって、例えば、1.25barの圧力補間値が選択された場合、この指定された圧力補間値の下方の局所近傍は、例えば、圧力区間[0.75bar,1.25bar[に設定され得る。指定された圧力補間値の上方の局所近傍は、区間]1.25bar,1.75bar]であり得る。これらの補助圧力-体積データ対は、取得され、格納される。
【0012】
更に、補償計算が、好ましくは最小2乗法によって、局所近傍における圧力の関数として体積を示す補助圧力-体積データ対に関する回帰関数を決定することが好ましい。
【0013】
割り当てられた圧力補間値に関するそれぞれの体積補間値の決定は、取得された補助圧力-体積データ対を使用して行われる。この目的のために、補助圧力-体積データ対に関する回帰関数が、測定データから外れ値を除外するために決定される。この回帰関数は、例えば最小2乗法を使用して決定され得る。例えば、回帰関数は2次多項式であり得る。このようにして、回帰関数は、決定された補助圧力-体積データ対を、可能な限り最良の仕方でまとめてグループ化する。
【0014】
また、体積補間値は、割り当てられた圧力補間値の位置にある回帰関数の関数値として決定されることも有利である。
【0015】
回帰関数は、決定された補助圧力-体積データ対を、可能な限り最良の仕方でまとめてグループ化し、測定データから外れ値を確実に除外することができる。したがって、事前に定義された圧力補間値に関する体積補間値は、それぞれの圧力補間値の位置における回帰関数の関数値を基礎として使用することによって決定される。よって、圧力-体積特性曲線の決定は、全体的にエラーになりにくい。圧力-体積特性曲線を決定するのにかかる時間は短縮され得る。
【0016】
このすべてにおいて、補助圧力-体積データ対が、ブレーキキャリパーデバイス上のセンサデバイスによって測定される、及び/又は推定によって決定されることも有利である。
【0017】
圧力-体積特性曲線の決定は、可能な限り正確であるために、最大327barまでのブレーキキャリパーデバイスにおける圧力上昇を理論上必要とする。しかしながら、このことは、ブレーキキャリパーが堅固であるだけでは可能ではない。また、負荷サイクル(交互の曲げ応力)の観点からも、このような高い圧力上昇は勧められない。したがって、原則として、ブレーキキャリパーデバイス上のセンサデバイスでは、最大160barまでの範囲でしか補助圧力-体積データ対を決定することができない。したがって、圧力-体積特性曲線の較正においては、最大160barまでの補助圧力-体積データ対を使用することが推奨され、それは、この較正が、圧力-体積特性曲線を1回で決定するための静的ツール以上のものであるためである。しかしながら、圧力-体積特性曲線をブレーキキャリパーデバイスの摩耗に適合させることは不可能であり、それは、これらのデータ対がブレーキキャリパーデバイスの通常動作から得られたものであり、通常動作の場合、一般に圧力がかなり低くなるためである。それでも、センサデバイスからのデータがないにもかかわらず、両方のタイプの動作における圧力-体積特性曲線は、可能な限り、すなわち、例えば最大327barの圧力まで、圧力補間値の全範囲をマッピングすることができるべきである。この目的のために、欠落しているセンサデータは、測定によってアクセスできない圧力範囲における補助圧力-体積データ対の推定によって補足され得る。
【0018】
ここでは、線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対の外挿によって、圧力-体積特性曲線の線形領域で推定が行われることが好ましい。
【0019】
補助圧力-体積データ対の推定は、低圧及び高圧について別々に行われる。ここで、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパーの以下の特性が利用される。高圧範囲(約80bar以上)では、圧力-体積特性曲線は、ブレーキキャリパーの「堅い」構成要素(ブレーキキャリパーハウジングの材料)の影響によってほとんど排他的に決定される。この結果、これらの高圧範囲では、圧力-体積特性曲線はほぼ線形関係になる。したがって、高圧範囲までのセンサデータが入手可能であれば、線形関係により、(測定データが入手できない)更に高い圧力でも、求められている体積補間値の線形外挿を実施することができる。
【0020】
或いは、非線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対からの補助圧力-体積特性曲線の平行移動によって、圧力-体積特性曲線の非線形領域で推定が行われることが有利にも提供される。
【0021】
このタイプの推定は、低圧範囲において有利である。これは、低圧範囲(最大約80barまで)では、ブレーキキャリパーの「軟らかい」構成要素(シール、ブレーキライニングなど)の影響が勝るためである。この結果、この低圧範囲における圧力-体積特性曲線が非線形関係になり、ブレーキキャリパーの軟らかい構成要素及び堅い構成要素の影響が重ね合わされる。したがって、低圧範囲におけるセンサデバイスの測定データしか利用可能ではない場合、これらの測定データは非線形関係のために、単純に外挿できない。しかしながら、この範囲には、センサデバイスによる以前の測定から既に測定されたデータ(例えば以前の較正におけるもの)が存在することがあり、それらがこの範囲において補助圧力-体積特性曲線を形成する。そして、この補助圧力-体積特性曲線は、推定に使用され、(測定されていないが)必要なデータ対に対して適切な体積差分で平行移動され得る。これにより、ブレーキキャリパーデバイスの動作時でさえも、低圧における圧力-体積特性曲線が決定され、ブレーキキャリパーデバイスの摩耗に適合させることができる。しかしながら、この適合は、ここでのブレーキキャリパーデバイスのユーザには気づかれてはならない。したがって、圧力-体積特性曲線は、短時間で大きく変化してはならない。この理由から、最大学習増分が圧力-体積特性曲線の適合に使用されることがあり、その結果、圧力-体積特性曲線は、数回の適合で実際の圧力-体積特性曲線にゆっくりと近づくだけで、急激に近づくことがない。
【0022】
最後になるが、圧力-体積特性曲線は、厳密に単調増加で進行する、及び/又は、凹状に進行する、及び/又は、その微分が圧力補間値の全範囲において1つの最大値しか持たないように決定されることが有利である。
【0023】
特定の圧力-体積特性曲線が最終的にブレーキキャリパーデバイスで使用される前に、特定の圧力-体積特性曲線が、ある数学的基準を満たしているか否かがチェックされなければならない。これらの基準とは、圧力-体積特性曲線が厳密に単調に進行すること、摩耗に起因するブレーキキャリパーデバイスの耐用年数にわたる圧力-体積特性曲線の最大偏差が30%であること、圧力-体積特性曲線の進行が凹状であること、及び圧力-体積特性曲線の微分が圧力補間値の全範囲(例えば、0バールから327barまで)において1つの最大値しか持たないことである。これらの基準は、最も一般的な体積消耗部品(ディスクブレーキ、低抵抗ブレーキキャリパー、ドラムブレーキ、及びばね消耗部品)に関する経験的データから導き出され得る。
【0024】
最後に、圧力-体積特性曲線の決定は、ブレーキキャリパーデバイスの動作時に行われ、ブレーキキャリパーデバイスの摩耗の影響を補償するために使用されることが有利である。
【0025】
これにより、ブレーキキャリパーデバイスが耐用年数にわたって摩耗しても、圧力-体積特性曲線の高い精度が確保され得る。油圧制御の品質及び動作時の油圧モニタのロバスト性の改善が確保される。
【0026】
上記の本発明の特性、特徴、及び利点、並びにそれらが達成される仕方は、図面と併せて説明される以下の実施形態の説明に関連して、より明確になり、且つより容易に理解できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】いくつかの補助圧力-体積データ対による圧力補間値における圧力-体積特性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線2を示す圧力-体積
図1がある。この圧力-体積特性曲線2は、圧力(圧力-体積
図1の横軸)に依存する体積(圧力-体積
図1の縦軸)を示す。よって、圧力-体積特性曲線2は、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパーのブレーキピストンに所望の圧力を発生させるために、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパー内に変位させなければならない体積を規定する。
【0029】
圧力-体積特性曲線2を決定するために、まず圧力範囲がいくつかの圧力補間値に分割される。例えば、ブレーキキャリパーデバイスのための圧力補間値のソフトウェア信号の値の全範囲をカバーする、10個の圧力補間値が、0、1.25、2.5、5、10、20、40、80、160、327barにおいて事前に定義され得る。
図1では、1.25barの圧力補間値付近の局所近傍が例として示されている。この圧力補間値に対して、本発明による方法によって体積補間値が決定され得る。図示の例では、この体積補間値は0.2cm
3にある。圧力補間値は体積補間値とともに圧力-体積データ対3を形成する。
【0030】
図示の例では、1.25barの圧力補間値が事前に定義されている。圧力-体積データ対3の関連する体積補間値を決定するために、本発明によれば、補助圧力-体積データ対4、5が使用される。ここでは、第1の一式の補助圧力-体積データ対4が、1.25barの圧力補間値の下方の補助圧力補間値について指定される。これらの補助圧力補間値は、1.25barの圧力補間値の局所近傍において[0.75bar,1.25bar[の区間に見つけることができる。更に、第2の一式の補助圧力-体積補間値5が、1.25barの圧力補間値の上方の補助圧力補間値について指定される。これらの補助圧力補間値は、1.25barの圧力補間値の局所近傍において]1.25bar,1.75bar]の区間に見つけることができる。第1の一式の補助圧力-体積データ対4は、
図1の例では、10個の補助圧力-体積データ対を含む。第2の一式の補助圧力-体積データ対5は、
図1の例では、10個の補助圧力-体積データ対を含む。測定データにおける外れ値を除外するために、図示の例では、回帰関数として補助圧力-体積データ対4、5を通って配置されて示される2次多項式が最小2乗法によって計算されている。このようにして、格納された補助圧力-体積データ対4、5は可能な限り最良の仕方でまとめてグループ化される。次いで、計算された多項式は、1.25barの指定された圧力補間値に対して0.2cm
3の体積補間値を決定するために使用される。よって、圧力-体積特性曲線2の決定は、全体的にエラーになりにくい。圧力-体積特性曲線を決定するのにかかる時間は短縮され得る。
【0031】
圧力-体積特性曲線2の決定は、可能な限り正確であるために、最大327barまでのブレーキキャリパーデバイスにおける圧力上昇を理論上必要とする。しかしながら、このことは、ブレーキキャリパーが堅固であるだけでは可能ではない。また、負荷サイクル(交互の曲げ応力)の観点からも、このような高い圧力上昇は勧められない。したがって、原則として、ブレーキキャリパーデバイス上のセンサデバイスでは、最大160barまでの範囲でしか補助圧力-体積データ対4、5を決定することができない。したがって、圧力-体積特性曲線2の較正においては、最大160barまでの補助圧力-体積データ対4、5を使用することが推奨され、それは、この較正が、圧力-体積特性曲線2を1回で決定するための静的ツール以上のものであるためである。しかしながら、圧力-体積特性曲線2をブレーキキャリパーデバイスの摩耗に適合させることは不可能であり、それは、これらのデータ対がブレーキキャリパーデバイスの通常動作から得られたものであり、通常動作の場合、一般に圧力がかなり低くなるためである。それでも、センサデバイスからのデータがないにもかかわらず、両方のタイプの動作における圧力-体積特性曲線2は、可能な限り、すなわち、例えば最大327barの圧力まで、圧力補間値の全範囲をマッピングすることができるべきである。この目的のために、欠落しているセンサデータは、測定によってアクセスできない圧力範囲における補助圧力-体積データ対4、5の推定によって補足され得る。補助圧力-体積データ対4、5の推定は、低圧及び高圧について別々に行われる。
【0032】
図2には、補助圧力-体積データ対4、5の推定が詳細に示されている。ここで、ブレーキキャリパーデバイスのブレーキキャリパーの以下の特性が利用される。高圧範囲(約80bar以上)では、圧力-体積特性曲線2は、ブレーキキャリパーの「堅い」構成要素(ブレーキキャリパーハウジングの材料)の影響によってほとんど排他的に決定される。この結果、これらの高圧範囲では、圧力-体積特性曲線2はほぼ線形関係になる。したがって、高圧範囲までのセンサデータが入手可能であれば、線形関係により、(測定データが入手できない)更に高い圧力で、求められている体積補間値の線形外挿6を実施することができる。
【0033】
推定は、低圧範囲については、平行移動によって行われる。これは、低圧範囲(最大約80barまで)では、ブレーキキャリパーの「軟らかい」構成要素(シール、ブレーキライニングなど)の影響が勝るためである。この結果、この低圧範囲における圧力-体積特性曲線2が非線形関係になり、ブレーキキャリパーの軟らかい構成要素及び堅い構成要素の影響が重ね合わされる。したがって、低圧範囲におけるセンサデバイスの測定データしか利用可能ではない場合、これらの測定データは非線形関係のために、単純に外挿できない。しかしながら、この範囲には、センサデバイスによる以前の測定から既に測定されたデータ(例えば、以前の較正におけるもの)が存在することがあり、それらがこの範囲において補助圧力-体積特性曲線7を形成する。そして、この補助圧力-体積特性曲線7は、推定に使用され、必要なデータ対に対して適切な体積差分8で平行移動され得る。これにより、ブレーキキャリパーデバイスの動作時でさえも、低圧における適合された圧力-体積特性曲線9が決定され、ブレーキキャリパーデバイスの摩耗に適合させることができる。
【0034】
本発明を、好ましい実施形態によってより具体的に図示及び詳述してきたが、開示された例によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 圧力-体積図
2 圧力-体積特性曲線
3 圧力-体積データ対
4 補助圧力-体積データ対
5 補助圧力-体積データ対
6 線形外挿
7 補助圧力-体積特性曲線
8 体積差分
9 適合された圧力-体積特性曲線
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本発明を、好ましい実施形態によってより具体的に図示及び詳述してきたが、開示された例によって限定されるものではない。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.ブレーキキャリパーデバイスの圧力-体積特性曲線(2、6、9)を決定する方法であって、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)が、いくつかの圧力-体積データ対(3)から形成され、各圧力-体積データ対(3)において、圧力補間値が体積補間値に割り当てられる、方法において、前記体積補間値がいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)に関する補償計算によって決定されることを特徴とする、方法。
2.前記体積補間値に割り当てられた前記圧力補間値の局所近傍における前記補助圧力-体積データ対(4、5)が、前記割り当てられた圧力補間値よりも小さい及び/又は大きい補助圧力補間値を有する、上記1.に記載の方法。
3.前記補償計算が、好ましくは最小2乗法によって、前記局所近傍における前記圧力の関数として前記体積を示す前記補助圧力-体積データ対(4、5)に関する回帰関数を決定する、上記2.に記載の方法。
4.前記体積補間値が、前記割り当てられた圧力補間値の位置にある前記回帰関数の関数値として決定される、上記3.に記載の方法。
5.前記補助圧力-体積データ対(4、5)が、前記ブレーキキャリパーデバイス上のセンサデバイスによって測定される、及び/又は推定によって決定される、上記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6.前記推定が、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の線形領域において、前記線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)の外挿(6)によって行われる、上記5.に記載の方法。
7.前記推定が、前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の非線形領域において、前記非線形領域で測定されたいくつかの補助圧力-体積データ対(4、5)から補助圧力-体積特性曲線(7)の平行移動によって行われる、上記5.に記載の方法。
8.前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)が、厳密に単調増加で進行する、及び/又は、凹状に進行する、及び/又は、その微分が前記圧力補間値の全範囲において1つの最大値しか持たないように決定される、上記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9.前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の前記決定が、前記ブレーキキャリパーデバイスの動作時に行われ、前記ブレーキキャリパーデバイスの摩耗の影響を補償するために使用される、上記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)が、厳密に単調増加で進行する、及び/又は、凹状に進行する、及び/又は、その微分が前記圧力補間値の全範囲において1つの最大値しか持たないように決定される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記圧力-体積特性曲線(2、6、9)の前記決定が、前記ブレーキキャリパーデバイスの動作時に行われ、前記ブレーキキャリパーデバイスの摩耗の影響を補償するために使用される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】