(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子(LNP)の凍結及び凍結乾燥方法並びにそれにより得られるLNP
(51)【国際特許分類】
A61K 9/19 20060101AFI20241025BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20241025BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241025BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241025BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241025BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241025BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241025BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241025BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241025BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241025BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241025BHJP
A61K 38/00 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K47/28
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/24
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/26
A61K47/34
A61K39/00
A61K38/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520676
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022077571
(87)【国際公開番号】W WO2023057444
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フロラン・ペラル
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン・ヴォワネ
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ・ブトリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB11
4C076DD38
4C076DD49
4C076DD52
4C076DD60
4C076DD63
4C076EE23
4C076EE38
4C076FF36
4C084AA01
4C084AA13
4C084BA44
4C084MA05
4C084NA13
4C085AA03
4C085BA01
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086NA13
(57)【要約】
本発明は、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む脂質ナノ粒子(LNP)の凍結又は凍結乾燥方法に関する。本方法は、前記LNPを含む液体組成物を提供するステップと、液滴を得るのに好適な条件下でステップa)の組成物を噴霧するステップと、ステップb)において得られた液滴を凍結させて凍結LNPを得るステップとを含む。本方法はまた、得られた凍結LNPを乾燥させて凍結乾燥LNPを得るステップを含み得る。本発明はまた、凍結及び凍結乾燥LNPに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ナノ粒子(LNP)であって、前記LNPは、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含み、前記LNPは、少なくとも核酸を含むLNPの凍結方法であって、前記方法が、
a)前記LNPを含む液体組成物を提供するステップと、
b)液滴を得るのに好適な条件下でステップa)の前記組成物を噴霧するステップと、
c)ステップb)において得られた前記液滴を凍結させて凍結LNPを得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
噴霧のステップb)は、電磁気液滴流発生機、圧電液滴流発生機、油圧小滴エアロゾル発生機、圧縮空気ノズル、超音波噴霧ノズル、熱液滴流発生機、又は電気流体力学小滴(EHD)発生機で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凍結のステップc)は、前記液滴を極低温雰囲気中へ、加圧二酸化炭素で、極低温液体上方の蒸気中へ、極低温液体中へ、又は冷たい固体表面上へ噴霧することによって実施される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
脂質ナノ粒子(LNP)の凍結乾燥方法であって、前記方法が、少なくとも、
d)請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法に従って凍結LNPを得るステップと、
e)ステップd)において得られた前記凍結LNPを好適な条件下で乾燥させて凍結乾燥LNPを得るステップと
を含む方法。
【請求項5】
乾燥のステップe)は、回転ドラム真空凍結乾燥、冷気の流れでの大気乾燥、真空室凍結乾燥、又は真空トンネル凍結乾燥によって実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対するw/w%で、
- 20~60%、若しくは25%~60%、若しくは30%~55%、若しくは35%~55%、若しくは35%~50%、若しくは40%~50%の、前記イオン化可能なカチオン性脂質、及び/又は
- 5~50%、若しくは5%~45%、9%~40%、9%~30%の前記中性脂質、及び/又は
- 20~55%、若しくは20%~50%、若しくは25%~45%の、前記ステロイドアルコール、若しくはそれのエステル
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- 前記イオン化可能なカチオン性脂質は、[(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル] 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(D-Lin-MC3-DMA);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA);1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLin-DMA);ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル) 9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319);9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102);[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);[3-(ジメチルアミノ)-2-[(Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシプロピル](Z)-オクタデカ-9-エノエート(DODAP);2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-[ジ(ヘプタデシル)アミノ]-2-オキソエチル]ペンタンアミド(DOGS);[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルへプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]カルバメート(DC-Chol);テトラキス(8-メチルノニル) 3,3’,3’’,3’’’-(((メチルアザンジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラプロピオネート(306Oi10);デシル(2-(ジオクチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(9A1P9);エチル 5,5-ジ((Z)-ヘプタデカ-8-エン-1-イル)-1-(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(A2-Iso5-2DC18);ビス(2-(ドデシルジスルファニル)エチル) 3,3’-((3-メチル-9-オキソ-10-オキサ-13,14-ジチア-3,6-ジアザヘキサコシル)アザンジイル)ジプロピオネート(BAME-O16B);1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200);3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12);ヘキサ(オクタン-3-イル)9,9’,9’’,9’’’,9’’’’,9’’’’’-((((ベンゼン-1,3,5-トリカルボニル)イリス(アザンジイル)) トリス(プロパン-3,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサノナノエート(FTT5);(((3,6-ジオキソピペラジン-2,5-ジイル)ビス(ブタン-4,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル)(9Z,9’Z,9’’Z,9’’’Z,12Z,12’Z,12’’Z,12’’’Z)-テトラキス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)(OF-Deg-Lin);TT3;N1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド;N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5);ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(8-(ノニルオキシ)-8-オキソオクチル)アミノ)オクタノエート(脂質5);
【化1】
及びそれらの組合せを含む群から選択され;並びに/又は
- 前記中性脂質は、DSPC;DPPC;DMPC;POPC;DOPC;DOPE、DPPE、DMPE、DSPE、DLPEなどの、ホスファチジルエタノールアミン;スフィンゴミエリン;セラミド、及びそれらの組合せを含む群から選択され、並びに/又は
- 前記ステロール、若しくはそれのエステルは、コレステロール及びその誘導体;エルゴステロール;デスモステロール(3β-ヒドロキシ-5,24-コレスタジエン);スチグマステロール(スチグマスタ-5,22-ジエン-3-オール);ラノステロール(8,24-ラノスタジエン-3b-オール);7-デヒドロコレステロール(Δ5,7-コレステロール);ジヒドロラノステロール(24,25-ジヒドロラノステロール);チモステロール(5α-コレスタ-8,24-ジエン-3β-オール);ラトステロール(5α-コレスタ-7-エン-3β-オール);ジオスゲニン((3β,25R)-スピロスタ-5-エン-3-オール);シトステロール(22,23-ジヒドロスチグマステロール);シトスタノール;カンペステロール(カンペスタ-5-エン-3β-オール);カンペスタノール(5a-カンペスタン-3b-オール);24-メチレンコレステロール(5,24(28)-コレスタジエン-24-メチレン-3β-オール);マルガリン酸コレステリル(コレスタ-5-エン-3β-イル ヘプタデカノエート);コレステリルオレエート;コレステリルステアレート;及びそれらの組合せからなる群から選択される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記LNPは、更に、脂質成分として少なくとも1種のPEG-脂質を含む、請求項1又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記LNPは、前記LNPの前記脂質成分の総重量に対するw/w%で、0.5~15%、又は0.5%~10%、又は0.8%~5%、又は1%~3%、又は1.5%~2%の前記PEG-脂質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PEG-脂質は、PEG-DAG;DMG-PEG-2000;PEG-PE;PEG-S-DAG;PEG-S-DMG;PEG-cer;PEG-ジアルコキシプロピルカルバメート;2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159);及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記LNPは、前記LNPの前記脂質成分の総重量に対してw/w%で、
- 50%のイオン化可能なカチオン性脂質、10%の中性脂質、38.5%のコレステロール、及び1.5%のPEG-脂質、又は
- 46.3%のイオン化可能なカチオン性脂質、9.4%の中性脂質、42.7%のコレステロール、及び1.6%のPEG-脂質、又は
- 47.4%のイオン化可能なカチオン性脂質、10%の中性脂質、40.9%のコレステロール、及び1.7%のPEG-脂質、又は
- 40%のイオン化可能なカチオン性脂質、30%の中性脂質、28.5%のコレステロール、及び1.5%のPEG-脂質、又は
- 50%の9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000、又は
- 46.3%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、9.4%のDSPC、42.7%のコレステロール、及び1.6%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)、
- 47.4%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、10%のDSPC、40.9%のコレステロール、及び1.7%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)、又は
- 40%のcKK-E10、30%のDOPE、28.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000、又は
- 40%のOF-02、30%のDOPE、28.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000
を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸はRNAである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA);マイクロRNA(miRNA);短鎖(又は低分子)干渉RNA(siRNA);小ヘアピンRNA(shRNA);長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA);非対称性干渉RNA(aiRNA);自己増幅型RNA(saRNA);ガイドRNA(gRNA);及びそれらの組合せである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸は、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原の中で選択される治療薬をエンコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記LNPを含む前記液体組成物は、抗凍結剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗凍結剤は、トレハロースとデキストランとの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記トレハロース及び前記デキストランは、前記組成物の全体積に対して、等しい量の重量/体積パーセントで存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項4~13のいずれか一項に定義されるような方法に従って得られる凍結乾燥LNP。
【請求項19】
少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む凍結乾燥LNPであって、前記凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにある凍結乾燥LNP。
【請求項20】
前記核酸は、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原の中で選択される治療薬をエンコードする、請求項15に記載の凍結乾燥LNP。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の分野及びそれらの調製方法に関する。本発明は、更に、脂質ナノ粒子(LNP)の凍結及び凍結乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子(LNP)は、様々なタイプの治療活性薬剤を細胞へ送達するのに効率的であると判明している(Thi et al.,Vaccines,2021,9(4),359)。例えば、LNP-mRNAなどの、核酸を含有するLNPは、大きな興味を引いており、最近、ワクチン分野でそれらの効能及び安全性が判明しており、Covid-19パンデミックの管理において劇的に重要であると判明している(Reichmuth et al.,Therapeutic delivery,2016,7(5),319-334;Khurana et al.,Nano today,2021,38,101142)。
【0003】
しかしながら、現在認可されているmRNA-脂質ナノ粒子(LNP)COVID-19ワクチンの重大な欠点は、それらが非常に低い温度で保管されなければならないことである(Schoenmaker et al.,International journal of pharmaceutics,2021,601,120586)。実際に、両方の認可ワクチンに要する保管温度条件は、それぞれ、Modernaワクチンについては約-20℃及びBioNTech/Pfizerワクチンについては約-80℃~-60℃である(Crommelin et al.,J Pharm Sci.2021;110(3):997-1001)。
【0004】
組織化構造であるLNPは、凍結プロセス及びそのような保管温度によって悪影響を受け得る。LNP構造の変更は、それらのカーゴを細胞に適切に送達する及び意図される治療効果を達成するLNPの能力の低下をもたらし得る。
【0005】
更に、そのような温度条件は、医薬組成物の製造、流通、及び包装を通してずっとコールドチェーンの維持に多様な困難さを必然的に生み出す。コールドチェーン管理のいかなる失敗も、必然的に製品廃棄物に終わるであろう。
【0006】
パンデミックな状況は、迅速な及びグローバルな回答を必要としているが、LNPベースのワクチン品質の維持を確実にするために必要とされる温度レベル及び制御の要求は、製造施設の展開、グローバルな流通組織化、並びに地方の供給及び行政を遅らせ得る。
【0007】
凍結乾燥(freeze-drying)(又は凍結乾燥(lyophilization))は、製薬工業において不安定な製品を安定化させるための共通の方法である。凍結乾燥は、製品が、凍結させることにより固化され、水などの、製品を含有する溶媒が、低い大気圧(若しくは真空)下で又は冷たい、乾燥したガスの流れ下に加熱すると昇華によって蒸発する技法である。凍結乾燥は、バイアルにおいて従来の凍結乾燥によって又は噴霧凍結乾燥(SFD)によって実施され得る。
【0008】
噴霧凍結乾燥のための方法及び装置は、Adali et al.,Processes.2020;8(6)、Wanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153、国際公開第2009/109550 A1号パンフレット、国際公開第2013/050162 A1号パンフレット、国際公開第2013/050156 A1号パンフレット、又は国際公開第2013/050159 A1号パンフレットに開示されている。
【0009】
Ali et al.,(Int J Pharm.2017;516(1-2):170-177)は、脂質ナノ粒子の噴霧凍結乾燥を記載している。
【0010】
Fukushige et al.,(Int J Pharm.2020;583:119338)は、プロタミン-siRNA錯体を含有するリポソームの噴霧凍結乾燥を記載している。
【0011】
Zhao et al.,Bioact Mater.2020;5(2):358-363は、凍結又は凍結乾燥プロセスの条件下での異なる濃度の抗凍結剤(スクロース、トレハロース又はマンニトール)ありのmRNA含有脂質様ナノ粒子(LLN)の安定性に関する研究を報告している。
【0012】
しかしながら、LNPの凍結乾燥はまた、物理的不安定性、例えば、LNPの凝集、融合、又は内容物漏出につながるいくらかのストレスを引き起こすことが知られている(Trenkenschuh et al.,Eur J Pharm Biopharm.2021 Aug;165:345-360)。Ball et al.(Int J Nanomedicine,2016,12,305-315)は、LNP安定性への凍結乾燥の影響を報告している。
【0013】
それ故に、LNP構造及び/又は安定性への悪影響がないか又は減少したLNPの凍結又は凍結乾燥方法が依然として必要とされている。
【0014】
LNP凝集及びLNPのサイズ分布への影響がないか又は減少したLNPの凍結又は凍結乾燥方法が必要とされている。
【0015】
LNP中でカプセル化される試剤のカプセル化率への影響がないか又は減少したLNPの凍結又は凍結乾燥方法が必要とされている。
【0016】
LNP構造及び/又は安定性への悪影響がないか又は減少して噴霧凍結させられる又は噴霧凍結乾燥させられるのに好適なLNP製剤が必要とされている。
【0017】
LNP凝集及びLNPのサイズ分布への影響がないか又は減少して噴霧凍結させられる又は噴霧凍結させられるのに好適なLNP製剤が必要とされている。
【0018】
LNP中でカプセル化される試剤のカプセル化率への影響がないか又は減少して噴霧凍結させられる又は噴霧凍結させられるのに好適なLNP製剤が必要とされている。
【0019】
LNPの凍結乾燥方法が、並びに/又はLNP凝集及びLNPのサイズ分布への影響がないか若しくは減少して、2~8℃で保管することができる凍結乾燥LNPを得ることを可能にする凍結乾燥させられるのに好適なLNP製剤が必要とされている。
【0020】
LNPの凍結乾燥方法が、並びに/又はmRNAなどの、LNP中でカプセル化される試剤のカプセル化率への影響がないか若しくは減少して、2~8℃で保管することができる凍結乾燥LNPを得ることを可能にする凍結乾燥されるのに好適なLNP製剤が必要とされている。
【0021】
mRNA含有LNPの凍結乾燥方法が、並びに/又はカプセル化mRNAのカプセル化率への影響がないか若しくは減少して、2~8℃で保管することができる凍結乾燥LNPを提供するのに好適な、mRNA含有LNP製剤が必要とされている。
【0022】
mRNA含有LNPの凍結乾燥方法が、並びに/又は投与後にmRNAからの高められたタンパク質発現を維持する若しくは生み出すことができる凍結乾燥LNPを提供するのに好適な、凍結乾燥させられるのに好適なmRNA含有LNP製剤が必要とされている。
【0023】
本発明は、それらのニーズの全て又は一部を満たす目的を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の目的の1つによれば、本発明は、脂質ナノ粒子(LNP)(前記LNPは、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含み、前記LNPは、少なくとも1種の核酸を含む)の凍結方法であって、前記方法が、
a)前記LNPを含む液体組成物を提供するステップと、
b)液滴を得るのに好適な条件下でステップa)の組成物を噴霧するステップと、
c)ステップb)において得られた液滴を凍結させて凍結LNPを得るステップと
を含む方法に関する。
【0025】
実施例セクションにおいて示されるように、本発明者らは、意外にも、例えば-80℃の凍結温度での、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステル、並びに任意選択的にPEG-脂質を含むLNPなどの、LNPを含有する液滴の凍結乾燥が、バイアルにおける凍結と比較してLNPの凝集の減少を可能にしたことを観察している。LNPのサイズ分布は維持された。更に、mRNAなどの、核酸を含有するLNPについて、核酸カプセル化率は、バイアルにおいて凍結されたLNPと比較して小滴で凍結されたLNPについてより高いとして観察された。本明細書に開示されるような方法は、有利にも、凍結LNPの安定性を維持することを可能にする。
【0026】
大きい塊を構成する凝集体は苦痛などの有害反応を引き起こし得るので、LNP凝集の減少は、凍結LNPから再構成された製剤の注射時に有益であることができる。更に、mRNAなどの、良い核酸カプセル化率の維持は、対応するタンパク質発現、それ故に治療意図効果を改善するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態において、凍結LNPは、凍結マイクロペレットで得られ得る。
【0028】
その目的の1つによれば、本発明は、脂質ナノ粒子(LNP)の凍結乾燥方法であって、前記方法が、
d)本明細書に開示されるような方法に従って凍結LNPを得るステップと、
e)ステップd)において得られた凍結LNPを好適な条件下で乾燥させて凍結乾燥LNPを得るステップと
を含む、方法に関する。
【0029】
実施例セクションに示されるように、本発明者らは、意外にも、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステル、並びに任意選択的にPEG-脂質を含むLNPなどの、LNPの噴霧凍結乾燥が、LNP凝集を防ぐこと又は減らすことを可能にしたことを観察している。更に、mRNAなどの、核酸を含有するLNPについて、核酸カプセル化率は、従来の凍結乾燥プロセス(バイアルにおける)と比較して経時的に維持されるものとして観察された。本明細書に開示されるような方法は、有利にも、凍結乾燥LNPの安定性を維持することを可能にする。
【0030】
更に、実施例セクションに示されるように、本発明者らは、意外にも、タンパク質をエンコードする、mRNAなどの、核酸を含有する噴霧凍結乾燥LNPからの再懸濁LNPのマウスでの注射が、従来の凍結乾燥LNPからの再懸濁LNPと比べてより高いタンパク質発現をもたらしたことを観察している。
【0031】
大きい塊を構成する凝集体は苦痛などの有害反応を引き起こし得るので、LNP凝集の減少は、凍結乾燥LNPから再構成された製剤の注射時に有益であることができる。更に、mRNAなどの、良い核酸カプセル化率の維持は、対応するタンパク質発現、それ故に治療意図効果を改善するであろう。
【0032】
更に、本明細書に開示されるような噴霧凍結乾燥方法に従って得られた凍結乾燥LNPは、従来の凍結乾燥に従って得られた凍結乾燥LNPと比較してより迅速に注射用の水に又は緩衝液に溶解した。それ故に、本明細書に開示されるような噴霧凍結乾燥方法は、従来の凍結乾燥と比較して溶解のための時間が減少した凍結乾燥LNPを得ることを有利にも可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥LNPは、凍結乾燥マイクロペレットで得られ得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、ステップb)における噴霧は、電磁気液滴流発生機、圧電液滴流発生機、油圧小滴エアロゾル発生機、圧縮空気ノズル、超音波噴霧ノズル、熱液滴流発生機、又は電気流体力学小滴(EHD)発生機で実施され得る。いくつかの実施形態において、噴霧は、電磁気液滴流発生機で実施され得る。いくつかの実施形態において、噴霧は、圧電液滴流発生機で実施され得る。
【0035】
液滴の凍結は、液滴を、凍結ガス、凍結液体、又は凍結表面と接触させることによって得られ得る。いくつかの実施形態において、凍結のステップc)は、液滴を極低温雰囲気中へ、加圧二酸化炭素で、極低温液体上方の蒸気中へ、極低温液体中へ、又は冷たい固体表面上へ噴霧することによって実施され得る。本明細書に開示されるような方法では、凍結のステップは、液滴を極低温雰囲気中へ噴霧することによって実施され得る。
【0036】
ステップe)における乾燥(又は凍結乾燥)は、回転ドラム真空凍結乾燥、冷気の流れでの大気乾燥、真空室凍結乾燥、又は真空トンネル凍結乾燥によって実施され得る。いくつかの実施形態において、ステップe)における乾燥は、真空室凍結乾燥で実施され得る。いくつかの実施形態において、ステップe)における乾燥は、回転ドラム真空凍結乾燥によって実施され得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、
- 約20~約60%、若しくは約25%~約60%、若しくは約30%~約55%、若しくは約35%~約55%、若しくは約35%~約50%、若しくは約40%~約50%の前記イオン化可能なカチオン性脂質、及び/又は
- 約5~約50%、若しくは約5%~約45%、約9%~約40%、約9%~約30%の前記中性脂質、及び/又は
- 約20~約55%、若しくは約20%~約50%、若しくは約25%~約45%の前記ステロイドアルコール、若しくはそれのエステル
を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態において,
- イオン化可能なカチオン性脂質は、[(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル] 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(D-Lin-MC3-DMA);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA);1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLin-DMA);ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル) 9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)イルオキシ)ヘプタデカンジオエート(L319);9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102);[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);[3-(ジメチルアミノ)-2-[(Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシプロピル] (Z)-オクタデカ-9-エノエート(DODAP);2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-[ジ(ヘプタデシル)アミノ]-2-オキソエチル]ペンタンアミド(DOGS);[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルへプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]カルバメート(DC-Chol);テトラキス(8-メチルノニル) 3,3’,3’’,3’’’-(((メチルアザンジイル) ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラプロピオネート(306Oi10);デシル (2-(ジオクチルアンモニオ)エチル) ホスフェート(9A1P9);エチル 5,5-ジ((Z)-ヘプタデカ-8-エン-1-イル)-1-(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(A2-Iso5-2DC18);ビス(2-(ドデシルジスルファニル)エチル) 3,3’-((3-メチル-9-オキソ-10-オキサ-13,14-ジチア-3,6-ジアザヘキサコシル)アザンジイル)ジプロピオネート(BAME-O16B);1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200);3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12);ヘキサ(オクタン-3-イル) 9,9’,9’’,9’’’,9’’’’,9’’’’’-((((ベンゼン-1,3,5-トリカルボニル)イリス(アザンジイル)) トリス(プロパン-3,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサノナノエート(FTT5);(((3,6-ジオキソピペラジン-2,5-ジイル)ビス(ブタン-4、1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル) (9Z,9’Z,9’’Z,9’’’Z,12Z,12’Z,12’’Z,12’’’Z)-テトラキス(オクタデカa-9,12-ジエノエート)(OF-Deg-Lin);TT3;N
1,N
3,N
5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド;N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5);ヘプタデカン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(8-(ノニルオキシ)-8-オキソオクチル)アミノ)オクタノエート(脂質5);
【化1】
及びそれらの組合せを含む群から選択され;並びに/又は
- 中性脂質は、DSPC;DPPC;DMPC;POPC;DOPC;DOPE、DPPE、DMPE、DSPE、DLPEなどの、ホスファチジルエタノールアミン;スフィンゴミエリン;セラミド、及びそれらの組合せを含む群から選択され、並びに/又は
- ステロール、若しくはそれのエステルは、コレステロール及びその誘導体;エルゴステロール;デスモステロール(3β-ヒドロキシ-5,24-コレスタジエン);スチグマステロール(スチグマスタ-5,22-ジエン-3-オール);ラノステロール(8,24-ラノスタジエン-3b-オール);7-デヒドロコレステロール(Δ5,7-コレステロール);ジヒドロラノステロール(24,25-ジヒドロラノステロール);チモステロール(5α-コレスタ-8,24-ジエン-3β-オール);ラトステロール(5α-コレスタ-7-エン-3β-オール);ジオスゲニン((3β,25R)-スピロスタ-5-エン-3-オール);シトステロール(22,23-ジヒドロスチグマステロール);シトスタノール;カンペステロール(カンペスタ-5-エン-3β-オール);カンペスタノール(5a-カンペスタン-3b-オール);24-メチレンコレステロール(5,24(28)-コレスタジエン-24-メチレン-3β-オール);マルガリン酸コレステリル(コレスタ-5-エン-3β-イル ヘプタデカノエート);コレステリルオレエート;コレステリルステアレート;及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0039】
LNPは、更に、脂質成分として少なくとも1種のPEG-脂質を含み得る。
【0040】
LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約0.5~約15%、又は約0.5%~約10%、又は約0.8%~約5%、又は約1%~約3%、又は約1.5%~約2%の前記PEG-脂質を含み得る。
【0041】
PEG-脂質は、PEG-DAG;DMG-PEG-2000;PEG-PE;PEG-S-DAG;PEG-S-DMG;PEG-cer;PEG-ジアルコキシプロピルカルバメート;2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159);及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、
- 約50%のイオン化可能なカチオン性脂質、約10%の中性脂質、約38.5%のコレステロール、及び約1.5%のPEG-脂質、又は
- 約46.3%のイオン化可能なカチオン性脂質、約9.4%の中性脂質、約42.7%のコレステロール、及び約1.6%のPEG-脂質、又は
- 47.4%のイオン化可能なカチオン性脂質、10%の中性脂質、40.9%のコレステロール、及び1.7%のPEG-脂質、又は
- 約40%のイオン化可能なカチオン性脂質、約30%の中性脂質、約28.5%のコレステロール、及び約1.5%のPEG-脂質、又は
- 約50%の9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、約10%のDSPC、約38.5%のコレステロール、及び約1.5%のDMG-PEG-2000、又は
- 約46.3%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、約9.4%のDSPC、約42.7%のコレステロール、及び約1.6%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)、
- 約47.4%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、約10%のDSPC、約40.9%のコレステロール、及び約1.7%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)、又は
- 約40%のcKK-E10、約30%のDOPE、約28.5%のコレステロール、及び約1.5%のDMG-PEG-2000、又は
- 約40%のML7/OF-02、約30%のDOPE、約28.5%のコレステロール、及び約1.5%のDMG-PEG-2000
を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、LNP中に含有される核酸はRNAであり得る。いくつかの実施形態において、RNAはmRNAであり得る。
【0044】
mRNAは、5’Cキャップ構造、5’UTR配列、ORF配列、3’UTR配列、及びポリ(A)テールを含み得る。
【0045】
mRNAは、長さが少なくとも30のヌクレオチドであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、核酸は、治療薬であっても、治療薬をエンコードしてもよい。治療薬は、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、核酸は、抗原をエンコードしてもよい。抗原は、細菌性抗原、ウイルス抗原、及び腫瘍抗原を含む群の中で選択され得る。抗原は、インフルエンザA若しくはインフルエンザBウイルスの株からの又は呼吸器合胞体A若しくはBウイルスからの、又はSARS-Cov2からの抗原であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、LNPを含む液体組成物は、更に、少なくとも1種の抗凍結剤を含む。抗凍結剤はポリオールであり得る。ポリオールは、マンノース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、及びイノシトールからなる群から選択され得る。抗凍結剤はトレハロースであり得る。
【0049】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる凍結LNPに関する。
【0050】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる凍結乾燥LNPに関する。
【0051】
その目的の1つにおいて、本発明は、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む凍結LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにある凍結LNPに関する。そのような凍結LNPは、更に、PEG-脂質を含み得る。
【0052】
その目的の1つにおいて、本発明は、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む凍結乾燥LNPであって、前記凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあるLNPに関する。そのような凍結乾燥LNPは、更に、PEG-脂質を含み得る。
【0053】
その目的の1つにおいて、本発明は、薬剤の製造方法であって、前記方法が、少なくとも、本明細書に開示されるような方法に従って凍結又は凍結乾燥LNP(LNPは少なくとも核酸を含む)を調製するステップを含む方法に関する。薬剤の製造方法は、更に、凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に再懸濁させるステップか又は凍結LNPを解凍するステップを含む。
【0054】
その目的の1つにおいて、本発明は、薬剤として使用するための、本明細書に開示されるような及び少なくとも核酸を含む凍結乾燥又は凍結LNPに関する。
【0055】
その目的の1つにおいて、本発明は、インフルエンザA及び/又はインフルエンザBウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するための、本明細書に開示されるような並びにインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0056】
その目的の1つにおいて、本発明は、呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するための、本明細書に開示されるような並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0057】
その目的の1つにおいて、本発明は、インフルエンザA及び/又はインフルエンザBウイルス感染に抗する免疫原性組成物として使用するための、本明細書に開示されるような並びにインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0058】
その目的の1つにおいて、本発明は、吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスに抗する免疫原性組成物として使用するための、本明細書に開示されるような並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0059】
その目的の1つにおいて、本発明は、薬剤の製造における、本明細書に開示されるような及び少なくとも核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPの使用に関する。
【0060】
その目的の1つにおいて、本発明は、それを必要としている個人における疾患の予防及び/又は治療方法であって、本方法が、少なくとも、
- 解凍又は再懸濁LNPを得るために、本明細書に開示されるような凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に再懸濁させるか又は凍結LNPを解凍するステップであって、凍結又は凍結乾燥LNPが前記疾患に対して活性を有すると推定される核酸を少なくとも含むステップと、
- 解凍又は再懸濁LNPを前記個人に投与するステップと
を含む、方法に関する。
【0061】
本発明は、以下の説明においてより詳述される。
【発明を実施するための形態】
【0062】
定義
本明細書で特に定義されない限り,本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、この開示に用いられる用語の多くの全般的な辞書を当業者に提供し得る。本明細書に記載されるものに類似の又は同等の方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料が以下に記載される。不一致の場合、定義を含む、本明細書が優先される。一般に、細胞及び組織培養、分子生物学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医化学及び薬化学、並びにタンパク質及び核酸化学及び本明細書に記載される雑種形成に関連して、及びそれらの技法において用いられる用語体系は、当技術分野において周知の及び一般的に用いられるものである。酵素反応及び精製技法は、当技術分野において一般的に遂行されるように又は本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。更に、特に文脈によって要求されない限り、単数用語は、複数を含むものとし、複数用語は単数を含むものとする。
【0063】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSysteme International des Unites(SI)承認形で示される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。特に明記しない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシへの方向で左から右へ書かれる。本明細書に提供される見出しは、本開示の様々な態様の限定ではない。したがって、直ぐ下に定義される用語は、本明細書を全体として参照することによってより完全に定義される。
【0064】
この明細書及び実施形態の全体にわたって、語「有する(have)」及び「含む(comprise)」、又は「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、若しくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられる整数又は整数の群の包含を暗示するが、いかなる他の整数又は整数の群の排除も暗示しないことが理解される。本明細書に言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、全体として参照により援用される。多数の公文書が本明細書に引用されているけれども、この引用は、これらの公文書のいずれもが当技術分野における共通の一般知識の部分を形成することの承認を構成しない。
【0065】
態様が言語「含む(comprising)」で本明細書において記載される場合はいつでも、さもなければ「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載される類似の態様がまた提供されることが理解される。
【0066】
用語「1つ(a)」又は「1つ(an)」存在物は、その存在物の1つ以上を指す;例えば、「ヌクレオチド(a nucleotide)配列」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すことが理解される。したがって、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同じ意味で用いることができる。
【0067】
更に、「及び/又は」は、本明細書で用いられる場合、他のものあり又はなしで2つの明記される特徴又は成分のそれぞれの具体的な開示と見なされるべきである。したがって、「A及び/又はB」などの語句に用いられるような用語「及び/又は」は、本明細書では、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、並びに「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句に用いられるような用語「及び/又は」は、以下の態様:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することを意図する。
【0068】
用語「およそ」又は「約」は、およそ、大さっぱに、ぐらい、又はの範囲中のを意味するために本明細書では用いられる。用語「約」が数値範囲と関連して用いられる場合、それは、示される数値よりも上に及び下に境界を広げることによってその範囲を修正する。一般に、用語「約」は、例えば、10パーセン、上に又は下に(より高い又はより低い)の、相違だけ、表示値よりも上に又は下に、数値を修正することができる。いくつかの実施形態において、この用語は、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%、又は±0.01%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±10%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±5%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±4%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±3%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±2%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±1%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.9%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.8%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.7%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.6%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.5%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.4%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.3%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.1%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.05%だけ表示数値からの逸脱を示す。いくつかの実施形態において、「約」は、±0.01%だけ表示数値からの逸脱を示す。
【0069】
文脈に応じて、用語「ポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」は、単数の核酸並びに複数の核酸を包含する。本開示内で、用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、同じ意味で用いられる。それらは、少なくとも2つのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドか若しくはリボヌクレオチドかのどちらか、又はそれらの類似物のポリマー形態を指す。核酸は、任意の三次元構造を有し得、且つ公知の又は未知の、任意の機能を果たし得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、単離核酸分子又は構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)又はプラスミドDNA(pDNA)である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、従来型ホスホジエステル結合を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、非従来型結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見いだされるなどの、アミド結合)を含む。用語「核酸」は、ポリヌクレオチド中に存在する、任意の1つ以上の核酸セグメント、例えば、DNA又はRNAフラグメントを指す。「単離」核酸又はポリヌクレオチドとは、その自生の環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAを意図する。例えば、ベクター中に含有される因子VIIIポリペプチドをエンコードする組み換えポリヌクレオチドは、本開示の目的のためには単離されたと見なされる。単離ポリヌクレオチドの更なる例としては、異種宿主細胞中に維持される又は溶液中で他のポリヌクレオチドから精製された(部分的に又は実質的に)組み換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離RNA分子には、本開示のポリヌクレオチドのインビボ又はインビトロRNA転写物が含まれる。本開示による単離ポリヌクレオチド又は核酸は、更に、合成的に生み出されたそのような分子を含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、又は転写終結シグナルなどの調節要素を含むことができる。
【0070】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、線状又は環状であり得る。下記:遺伝子又は遺伝子フラグメントのコーディング又はノンコーディング領域、リンケージ分析から定義される複数遺伝子座(遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、クローズドエンドDNA(ceDNA)、自己増幅型RNA(saRNA)、鎖DNA(ssDNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、並びにプライマーは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である。核酸は、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似物などの、修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前後に付与され得る。核酸の配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。核酸は、更に、標識化成分との共役によってなどで、重合後に修飾され得る。用語「核酸の補体」は、それが、完全忠実性の参照配列と雑種を作ることができるように、参照配列と比べて相補的塩基配列及び逆方向性を有する核酸分子を意味する。核酸に適用されるような「組み換え」は、核酸が、インビトロ・クローニング、制限及び/又は連結反応ステップ、並びに宿主細胞において潜在的に発現させることができる構築物をもたらす他の手順の様々な組合せの生成物であることを意味する。
【0071】
本明細書で用いるところでは、用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」並びに複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結したモノマー(アミノ酸)からなる分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖又は複数鎖を指し、生成物の具体的な長さに言及しない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖若しくは複数鎖を指すために用いられる任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、又はそれと同じ意味で用いることができる。用語「ポリペプチド」はまた、限定なしにグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解開裂、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことを意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的起源に由来することができるか、又は組み換え技術から製造することができるが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。それは、化学合成を含む、任意の方法で生成することができる。
【0072】
「単離」ポリペプチド又はそれのフラグメント、変異体、若しくは誘導体は、その自然環境中にないポリペプチドを指す。特定レベルの精製は必要とされない。例えば、単離ポリペプチドは、その自生若しくは自然環境から簡単に取り出すことができる。宿主細胞中で発現した組み換えによって産生されたポリペプチド及びタンパク質は、本開示の目的のためには、任意の好適な技法によって分離された、分別された、又は部分的に若しくは実質的に精製された自生の又は組み換えポリペプチドが考えられるように、単離されたと考えられる。
【0073】
「投与する」又は「投与すること」は、本明細書で用いるところでは、本明細書に記載される組成物、例えば、キメラタンパク質を対象者に送達することを指す。組成物、例えば、キメラタンパク質は、当技術分野において公知の方法を用いて対象者に投与することができる。特に、組成物は、静脈内で、皮下に、筋肉内に、皮内に、又は任意の粘膜面経由で、例えば、経口で、舌下で、顎側に、径鼻的に、直腸に、径膣的に又は肺ルート経由で投与することができる。いくつかの実施形態において、投与は静脈内である。いくつかの実施形態において、投与は皮下である。いくつかの実施形態において、投与は自己投与である。いくつかの実施形態において、親がキメラタンパク質を子供に投与する。いくつかの実施形態において、キメラタンパク質は、医師、医者、又は看護師などの医療関係者によって対象者に投与される。
【0074】
用語「抗原」は、免疫反応を引き出す及び/又はそれに対して免疫反応が導かれる少なくとも1つのエピトープを含む、任意の分子、例えば、ペプチド又はタンパク質を含む。例えば、抗原は、任意選択的に処理後に、免疫反応を誘導する、例えば抗原又は抗原を発現させる細胞に対して特異的である分子である。処理後に、抗原は、MHC分子によって発現させられ得、Tリンパ球(T細胞)と特異的に反応する。したがって、抗原又はそれのフラグメントは、T細胞受容体によって認識できるべきであり、且つ適切な共刺激シグナルの存在下で、抗原又は抗原を発現させる細胞に対する免疫反応をもたらす、抗原又はフラグメントを特異的に認識するT細胞受容体を有するT細胞のクローン性増殖を誘導することができるべきである。
【0075】
本開示によれば、免疫反応の候補である、任意の好適な抗原が想定される。抗原は、天然に存在する抗原に相当し得る又はそれに由来し得る。そのような天然に存在する抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物及び他の感染性因子を含み得又はそれらに由来し得、病原体又は抗原はまた、腫瘍抗原であり得る。
【0076】
表現「イオン化可能なカチオン性脂質」は、生理的pHでプロトン化することができるが、8、9、10、11、又は12よりも上のpHで脱プロトン化され得る1つ以上の基を含有する脂質を指す。イオン化可能なカチオン性基は、生理的pHでカチオン性基を形成することができる1つ以上のプロトン化可能なアミンを含有し得る。カチオン性のイオン化可能な脂質化合物はまた更に、C6~C24アルキル又はアルケニル炭素基を持った2つ以上の脂肪酸などの1つ以上の脂質成分を含み得る。これらの化合物は、デンドリマー、デンドロン、ポリマー、又はそれらの組合せであり得る。
【0077】
表現「脂質成分」は、脂肪酸のエステルを含むが、それらに限定されない有機化合物の群を指し、一般に水に難溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることで特徴付けられる。脂質は、脂肪、脂肪油、エッセンシャルオイル、ワックス、リン脂質、糖脂質、スルホリピド、アミノ脂質、色素脂質(リポクローム)、及び脂肪酸を包含する総称である。本開示内で、「脂質」は、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG化脂質を包含する。
【0078】
表現「脂質ナノ粒子」(LNP)は、本明細書に開示されるような脂質成分の少なくとも1つと配合され得るナノメートル(例えば、ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis)(NTA)によって測定されるように10~800nm、例えば約80~約200nm)のオーダーの少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。いくつかの実施形態において、LNPは、核酸などの、活性薬剤又は治療薬を、興味のある標的部位(例えば、細胞、組織、器官、腫瘍等)に送達するために使用することができる製剤中に含まれる。そのような脂質ナノ粒子は、典型的には、本明細書に開示されるような脂質成分を含む。
【0079】
表現「凍結脂質ナノ粒子」は、その溶媒成分が固化してしまう温度条件に供されたLNPの液体組成物を指す。
【0080】
表現「凍結乾燥脂質ナノ粒子」は、凍結され、次いで、その溶媒成分が蒸発させられてしまう乾燥条件に供されたLNPの液体組成物を指す。
【0081】
用語「マイクロペレット」又は「マイクロビーズ」は、同じ意味で用いられ、マイクロメートル範囲の一般的に球形/円形である傾向を持った粒子を指すことを意図する。凍結又は凍結乾燥マイクロペレットは、約200~約1500マイクロメートル(μm)の範囲から選択される直径についての平均値を、各種の、好ましくは選ばれた値の周りで約±50μmの狭い粒度分布を有し得る。
【0082】
表現「カチオン性のイオン化可能な脂質」は、生理的pHでプロトン化することができるが、8、9、10、11又は12よりも上のpHで脱プロトンし得る1つ以上の基を含有する脂質を指す。イオン化可能なカチオン性基は、生理的pHでカチオン性基を形成することができる1つ以上のプロトン化可能なアミンを含有し得る。カチオン性のイオン化可能な脂質化合物はまた、更に、C6~C24アルキル又はアルケニル炭素基を持った2つ以上の脂肪酸などの1つ以上の脂質成分を含み得る。これらの化合物は、デンドリマー、デンドロン、ポリマー、又はそれらの組合せであり得る。
【0083】
表現「中性脂質」は、イオン化可能でないか又は選択されたpHで、例えば生理的pHで中性の双性イオン化合物であるかのどちらかである任意の脂質成分を指す。そのような脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン スフィンゴミエリン(SM)、又はセラミドなどの中性スフィンゴ脂質が含まれるが、それらに限定されない。中性脂質は、合成であっても天然由来であってもよい。
【0084】
表現「PEG-脂質」又は「PEG化脂質」は、同じ意味で用いられ、脂質部分及びポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指すことを意図する。PEG-脂質は、当技術分野において公知であり、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)等を含む。
【0085】
本開示内で、用語「小球化」は、冷却ガス又は冷媒などの冷却材料中に又は冷却材料の上昇流に逆らって落ちる液体材料の小滴を固化させるプロセスを指す。
【0086】
本開示内で、変化に関して用いられる用語「有意に」は、観察される変化が注目に値する及び/又はそれが統計的な意味を有することを意味することを意図する。
【0087】
表現「噴霧凍結乾燥」は、供給溶液が小滴へ分解され、小滴が、次いで低温媒体との接触によって凍結され、次いで凍結小滴が凍結乾燥機へ移されて水を昇華させ、乾燥粉末を得るプロセスを指すことを意図する。乾燥粉末は、乾燥マイクロペレットであり得る。
【0088】
本開示内で、本開示の特徴と関連して用いられる用語「実質的に」は、この特徴に大部分はしかし全部ではなく似ているこの特徴に関連する実施形態のセットを明示することを意図する。
【0089】
表現「ステロイドアルコール」又は「ステロール」は、同じ意味で用いられ、ヒドロキシル部分を有するステランコアからなる脂質の群を指すことを意図する。ステロイドアルコールの例として、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマステロール及びエルゴステロールが挙げられ得る。ステロイドアルコールの又はステロールのエステルは、カルボン酸とステロイドアルコールのヒドロキシル基とのエステルを指す。好適なカルボン酸は、カルボキシル部分に加えて、飽和若しくは不飽和の、線状若しくは分岐のアルキル基を含む。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C1~C20アルキル基であり得る。他の実施形態において、カルボン酸は脂肪酸であり得る。
【0090】
明確にするために、別個の実施形態との関連で記載される、本発明のある種の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが十分理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で記載される、本発明の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な副次的組み合わせで提供され得る。
【0091】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。とはいえ、本明細書に記載されるものに類似の又は同等の任意の方法及び材料をまた、本発明の実施又は試験に使用することができる。本明細書に言及される全ての刊行物は、それに関連して刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示する及び記載するために参照により本明細書に援用される。
【0092】
本明細書で以下に記載されるような供給源、原料及び成分のリストは、それらの組合せ及び混合物も考えられ、本明細書の範囲内であるように列挙される。
【0093】
この明細書の全体にわたって示されるあらゆる最高数値限界は、あたかもあらゆる下方数値限界が本明細書に明確に書かれているかのように、そのような下方数値限界を含むことが理解されるべきである。この明細書の全体にわたって示されるあらゆる最低数値限界は、あたかもあらゆる上方数値限界が本明細書に明確に書かれているかのように、そのような上方数値限界を含むであろう。この明細書の全体にわたって示されるあらゆる数値範囲は、あたかもそのようなより幅広い数範囲内に入るあらゆるより狭い数値範囲が本明細書に明確に書かれているかのように、そのようなより狭い数値範囲を含むであろう。
【0094】
例えば、原料のリストなどの、アイテムの全てのリストは、マーカッシュ(Markush)群として解釈されることを意図し、解釈されるべきである。したがって、全てのリストは、アイテムのリスト「並びにそれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される」アイテムとして読む及び解釈することができる。
【0095】
本開示に利用される様々な原料を含む成分についての商品名が本明細書で言及され得る。本発明者らは、本明細書で、任意の特定の商品名の下での材料によって限定されることを意図しない。商品名によって言及されるものと同等の材料(例えば、異なる名称又は参照番号の下で異なる供給源から入手されるもの)が、本明細書での記載において置換され及び利用され得る。
【0096】
噴霧、凍結及び乾燥
本発明は、脂質ナノ粒子(LNP)の噴霧凍結又は噴霧凍結乾燥方法に関する。LNPは、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含み得、ここで、前記方法は、のステップを含む。
【0097】
本明細書に開示されるような噴霧凍結方法は、
a)前記LNPを含む液体組成物を提供するステップと、
b)液滴を得るのに好適な条件下でステップa)の組成物を噴霧するステップと、
c)ステップb)において得られた液滴を凍結させて凍結LNPを得るステップと
を含み得る。
【0098】
凍結LNPは、凍結マイクロペレットで得られ得る。
【0099】
本明細書に開示されるような噴霧凍結乾燥方法は、
a)前記LNPを含む液体組成物を提供するステップと、
b)液滴を得るのに好適な条件下でステップa)の組成物を噴霧するステップと、
c)ステップb)において得られた液滴を凍結させて凍結LNPを得るステップと、
d)ステップc)において得られた凍結LNPを好適な条件下で乾燥させて凍結乾燥LNPを得るステップと
を含む。
【0100】
凍結乾燥LNPは、凍結乾燥マイクロペレットで得られ得る。マイクロペレットは、小球化する及び乾燥させることによって得られ得る。
【0101】
凍結乾燥(lyophilization)としても知られる、凍結乾燥は、例えば、医薬品、生物学的物質、例えば、タンパク質、酵素、微生物、並びに一般に任意の感熱性及び/又は加水分解感受性物質などの不安定な製品を乾燥させるために一般的に用いられるプロセスである。
【0102】
噴霧
噴霧は、電磁気液滴流発生機、圧電液滴流発生機、油圧小滴エアロゾル発生機、圧縮空気ノズル、超音波噴霧ノズル、熱液滴流発生機、又は電気流体力学小滴(EHD)発生機で実施され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、噴霧は、圧電液滴流発生機で実施され得る。
【0104】
電磁気又は圧電液滴流発生
層流ジェット崩壊技法としても知られる、小球化は、液体の較正単分散小滴の発生及び固化を可能にする。小球化は、電磁気又は圧電液滴流発生及び小滴の凍結によって実施され得る。
【0105】
電磁気又は圧電液滴流発生機の主要原理は、電磁石又は圧電セラミックオシレーターによって得られる機械的振動を使った毛管のオリフィスから出る液体ジェットのレイリー分裂に基づいている。Lord Rayleighは、ニュートン流体のモデルを提案した(Rayleigh L,Proc.London Math.Soc.1978.10,4-13)。低圧で小さい円形オリフィスから出る水溶液について、直径が2、3マイクロメートルに至るまでの小さい小滴の形成は、表面張力及びノズル壁への液体の癒着によって制限される。圧電励起によって、液体ジェットの崩壊長さは短くすることができ、信号タイプ(例えば、正弦曲線の、長方形の)、周波数及び振幅は、小滴の平均サイズ及び一様性の両方に影響を及ぼす。
【0106】
最速成長外乱及びジェット崩壊のための最適波長は、
【数1】
によって与えられる。
【0107】
λoptがジェット崩壊のための最適波長である場合、djは、ジェットの直径であり、ηは、流体の粘度であり、ρは、流体の密度であり、σは、流体の表面張力である。
【0108】
形成される小滴の直径dは、
【数2】
によって計算することができる。
【0109】
所望の結果を達成するために流体に加えるべき周波数fは、ジェット速度(それ故に流体の流量)u
j及び
【数3】
による波長に関係している。
【0110】
それ故に、最適条件は、プロセスパラメーター及び流体特性を知れば計算することができる。ノズル直径、流体のレオロジー及び表面張力に応じて、ある範囲の周波数及びジェット速度が、一様な小滴を形成するために存在する(Meesters G.,1992.Mechanisms of droplet formation.Delft University Press,Delft,NL)。
【0111】
好適な動作周波数はまた、小滴形成の安定性の目視評価によって実験的に決定することができる。標準的な小球化装置は、小滴形成を観察するための光ストロボスコープを装備している:所与の生成物及び所与の作業条件について、安定した及び動きのない小滴チェーンをこのストロボスコープ光で観察するまで周波数を手動で調整することができる。
【0112】
小球化は、±25%、又は±10%の狭いサイズ分布で例えば約200μm~約1500μm、又は約300μm~約600μmの範囲の直径の単分散較正小滴を発生させることを可能にする。
【0113】
電磁気又は圧電液滴流発生機はノズルである。Brandenberger et al.,J.Biotechnol.,1998,63,73-80に、又は国際公開第2016/012414 A1号パンフレットに開示されているなどの、好適なノズル及び多頭ノズル系が無菌小球化用途向けに開発されている。
【0114】
ノズルは、直径約250μm~約400μmの出口開口部を有し得、約300μmのものであり得る。
【0115】
小球化プロセスは、粘性のある液体に適応し得る。許容粘度は、およそ300mPa.sであり得る。
【0116】
LNPを含む液体組成物を含有する供給容器の及びノズルの温度は、小滴形成前の成分又は溶媒結晶化を回避するために制御されなければならない。製剤の技術分野の当業者は、賦形剤間の起こり得る相互作用を考慮に入れて、制御されない結晶化及び所与の限界よりも上の粘度を回避するために、安定化製剤中の異なる成分濃度を調整する方法を知っている。
【0117】
圧電液滴流発生機用のノズルの例は、Wanning at al.(Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153)に開示されており、その内容は参照により援用される。電磁気液滴流発生機用のノズルの例は、国際公開第2016/012414 A1号パンフレット)に開示されており、その内容は参照により援用される。
【0118】
他の噴霧方法
油圧小滴エアロゾル発生機、圧縮空気ノズル、超音波噴霧ノズル、熱液滴流発生機、又は電気流体力学小滴(EHD)発生機での噴霧などの、他の噴霧方法が、本明細書に開示されるような方法に好適であり得る。そのような方法は、Adali et al.,Processes.2020;8(6)に及びWanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153、)に開示されており、それらの内容は参照により援用される。
【0119】
油圧ノズルで、噴霧は、オリフィスに通して流体を押し進めることによって発生させられる。必要なエネルギーは、圧力を運動エネルギーに変換することによって提供され、小滴サイズは、供給速度及び粘度、並びに噴霧圧力の関数として変わる。
【0120】
圧縮空気ノズルで、噴霧化エネルギーは、液体と相互作用する、且つ広範囲の小滴サイズをもたらす剪断場を生み出す圧縮ガス流(通常空気)によって提供される。これらの装置は、多流体ノズルとしても知られる。例えば、2流体ノズルでは、液体供給物及び圧縮ガスが、ノズル中へ供給されて剪断場を生み出す。
【0121】
超音波ノズルで、高周波数電気信号が機械的エネルギーへ変換され、液体中へ移される場合に、液体は小滴へと分割される。典型的には、超音波ノズルは、2つの電極間に置かれた電気入力を受け取る2つの圧電トランスデューサーからなる。これは、トランスデューサーの同時に起こる機械的な膨張及び収縮を引き起こし、供給物を噴霧化するためにノズル先端に送られる超音波振動をもたらす。小滴サイズは、動作周波数及び供給流量に依存する。そのような装置の使用は、粒径の高度制御を可能にし、狭い小滴サイズ分布を提供する。
【0122】
凍結
当技術分野において公知の様々な技法が小滴を凍結させるために用いられ得る。凍結は、溶媒の固化及び熱の除去による硬化状態への溶質相のほとんど又は全てのレンダリングと定義される。
【0123】
液滴の凍結は、小滴を、凍結ガス、凍結液体、又は凍結平面と接触させることによって得られ得る。凍結のステップは、液滴を極低温雰囲気中へ、加圧二酸化炭素で、極低温液体上方の蒸気中へ、極低温液体中へ、又は冷たい固体表面上へ噴霧することによって実施され得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、凍結のステップは、液滴を極低温雰囲気中へ噴霧することによって実施され得る。
【0125】
極低温雰囲気中での凍結
本明細書に開示される方法において、凍結のステップは、液滴を極低温雰囲気中へ噴霧することによって実施され得る。
【0126】
大気凍結において、ヒートシンクは、溶液中に氷核の形成を誘導するのに十分に低いほぼ一様な温度の周囲圧力で、ガス状である。摩擦応力は一般に低く、小滴のサイズ及びおよそ球形の形状は、それらが固化するときに変わらない。これらの条件下で、冷却速度は、滑り速度に依存する、小滴表面を横切ってのエネルギー移動の速度によって限定される。
【0127】
いくつかの実施形態において、凍結は、凍結媒体によって温度が約-100℃~約-160℃の範囲に、例えば約-110℃又は-105℃に維持されている極低温室中に小滴を自由落下させることによって達成され得る。凍結媒体は、直接注入/液滴通路全てにわたる凍結ガスの噴霧によって凍結室に導入され得る。或いはまた、凍結媒体は、液滴の流れに向流での凍結ガスの流れとして、又は室中の静的凍結ガスを大気圧よりも上の圧力(例えばオーバー圧力は、1.1~1.5大気圧であり得る)に維持することにより導入され得る。いくつかの実施形態において、凍結媒体は、直接注入/液滴通路全てにわたる凍結ガスの噴霧によって凍結室に導入される。
【0128】
いくつかの実施形態において、空間温度プロファイルは、極低温室において構成される。例えば、同室における空間温度プロファイルは、例えば、-40℃~-60℃、例えば-50℃~-60℃の範囲の温度が塔のトップエリアにおいて維持され、-150℃~-192℃、例えば-150℃~-160℃の範囲の温度が塔のボトムエリアで維持されるなど、構成され、維持され得る。
【0129】
極低温室における温度は、任意選択的に、約-50℃~-190℃に全体にわたって維持され得るか又は変えられ/循環させられ得る。
【0130】
液滴は、極低温室中のそれらの自由落下中に凍結して較正凍結粒子を形成する。小滴を凍結小滴へ凍結させる(すなわち、ペレットを固化させる氷結晶形成)ための最小落下高さは、凍結させられる液滴のサイズ、小滴を凍結させるために用いられる方法、すなわち、直接注入/室中での凍結ガスの噴霧、又は凍結ガスの向流、又は大気圧よりも上の圧力での静的凍結ガス)に依存し得る。
【0131】
凍結小滴は、約200μm~約1500μm、若しくは約200μm~約800μm、若しくは約300μm~約600μmの範囲の、又は約500μmでの直径を有し得る。粒子のサイズは、粒径分析器又は画像化粒径分析器で測定され得る。
【0132】
そのような方法によって得られた凍結小滴は、凍結マイクロペレットと言われ得る。
【0133】
100~800μm範囲のサイズ/直径の円形マイクロペレットへの小滴の凍結を形成するために、極低温室のおよその高さは1~2m(メートル)であり得るが、1500μm(マイクロメートル)に至るまでのサイズ範囲のペレットへの小滴の凍結を形成するために、極低温室は、約2~3mであり得、ここで、極低温室の直径は、200~300cmの高さに対して約50~150cmであることができる。
【0134】
凍結媒体は、-110C℃よりも下の温度を有し得る。
【0135】
凍結媒体は、液体若しくは蒸気窒素、液体若しくは蒸気CO2、又は液体空気及び/若しくはそれの蒸気であり得る。
【0136】
他の凍結方法
他の凍結方法、例えば液滴を圧縮二酸化炭素と一緒に極低温液体上方の蒸気中へ、極低温液体中へ、又は冷たい固体表面上へ噴霧することによるなどが、本明細書に開示されるような方法に好適であり得る。
【0137】
そのような方法は、Adali et al.,Processes.2020;8(6)に及びWanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153)に開示されており、それらの内容は参照により援用される。
【0138】
圧縮二酸化炭素での噴霧乾燥において、水性噴霧液の温度はまた、共膨張二酸化炭素のジュール-トンプソン冷却による凝固点よりも下に下げることができる。
【0139】
極低温液体(SFV)上方の蒸気中へ噴霧することによる凍結は、液体凍結媒体の凝固点よりも上のガス状凍結媒体中へ小滴、及び液体凍結媒体の表面上へ蒸気層を通して沈降物を噴霧することによって実施され得る。超冷却及び凍結は、上に浮かぶガス及び蒸気中で又は凝縮冷媒との接触時に起こり得る。小さい小滴の速度は、大気制動のために急速に低下するので、摩擦応力は低いままであり、凍結条件は、大気凍結時のものに似ている。
【0140】
液体への噴霧凍結(SFL)は、凍結させられる溶液が極低温液体中へ高い流量で直接注入されるので、高い凍結速度を達成することを可能にし得る。これらの条件下で、摩擦応力は高く、流体動的条件は、明確には定められない。形成された粒子は、頻繁に小さいフラグメントである。或いはまた、溶液は、ノズルから液体凍結媒体中へより低い速度で滴らせられ得る又は噴霧され得る。凍結させられる溶液の密度が、極低温流体のそれよりも低い場合、それはまた、凍結容器のボトムから注入することができ、凍結粒子は、表面からすくい取られる。
【0141】
高い冷却速度及び一様な微粒子物質はまた、冷たい固体表面上に液体を噴霧する又は滴らせることによって生み出すことができる。したがって、蒸気層がヒートシンクへの熱エネルギーの移動を制限する、ライデンフロスト効果が回避されるので、凍結速度は、揮発性極低温液体と比較して加速される。
【0142】
同様にそれらの方法において、凍結媒体は、-110℃よりも下の温度を有し得る。凍結媒体は、液体窒素、液体CO2若しくは液体空気及び/又はそれらの蒸気であり得る。
【0143】
凍結ステップの後に、凍結小滴は、次いで集められ、噴霧乾燥機に移される。或いはまた、それらは、それらが凍結乾燥されるまで保管され得る。そのような保管は、凍結小滴のいかなる溶融又は凝集も回避するためにそれらの冷凍濃縮相のガラス転移温度Tg’よりも下にそれらを保たせる条件のあらかじめ冷却されたトレイ上で実施され得る。例えば、-10℃~-45℃の範囲のTg’値については、保管温度は、少なくとも-50℃以下であるべきである。本明細書に開示される凍結LNPは-70℃で保管され得る。
【0144】
凍結小滴は、凍結小滴のいかなる溶融又は凝集も回避するのに好適な条件下で保管される。
【0145】
乾燥(又は凍結乾燥)
乾燥(又は凍結乾燥)は、回転ドラム真空凍結乾燥、冷気の流れでの大気乾燥、真空室凍結乾燥、又は真空トンネル凍結乾燥によって実施され得る。
【0146】
「真空」は、当業者に公知であるように、大気圧よりも下である、低圧又はアンダープレッシャーを意味するとして理解される。本明細書で用いられるような真空条件は、10ミリバール、又は1ミリバール、又は500マイクロバール、又は1マイクロバールほどに低い圧力を意味し得る。凍結乾燥は、一般に、異なる圧力体制で行われ得、例えば、大気圧下で行われ得ることが指摘されるべきである。
【0147】
いくつかの実施形態において、乾燥は、回転ドラム真空凍結乾燥によって実施され得る。いくつかの実施形態において、乾燥は、真空室での凍結乾燥によって実施され得る。
【0148】
得られた凍結マイクロペレットは、昇華条件に供されることによって乾燥され得る。昇華条件は、低い加熱温度で及び真空下に、溶媒を蒸発させる、すなわち、凍結状態からガス状態させる。
【0149】
回転ドラム真空凍結乾燥による乾燥
いくつかの実施形態において、乾燥ステップは、真空回転ドラム乾燥機で実施され得る。好適な真空回転乾燥機は、国際公開第2013/050157 A1号パンフレット、国際公開第2013/050158 A1号パンフレット、国際公開第2013/050159 A1号パンフレットに、Adali et al.,Processes.2020;8(6)に、又はWanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153)に開示されており、その内容は参照により援用される。
【0150】
好適な回転乾燥機は、真空室中に置かれ得る。
【0151】
回転乾燥機のドラムは、例えば二重壁を用いて、温度制御可能な内壁面を含み得る。更に、又は或いはまた、例えば、マイクロ波又は赤外線加熱などの、凍結乾燥プロセス中にマイクロペレットを加熱するための他の手段が提供され得る。
【0152】
乾燥機の内壁面温度は、-60℃~+125℃の範囲内で制御可能であり得る。
【0153】
凍結乾燥中に、回転乾燥機のドラムは、溶媒の蒸発のために利用可能な内壁面を最大限にするために回転させられ得る。凍結乾燥プロセス中の典型的な回転速度は、約0.5~10回転毎分(rpm)、例えば1~8rpmを含み得るが、それらに限定されない。
【0154】
凍結乾燥小滴は、約200μm~約1500μm、又は約200μm~約800μm、又は約300μm~約600μmの範囲の、又は約500μmの直径を有し得る。
【0155】
そのような方法によって得られた凍結乾燥小滴は、凍結乾燥マイクロペレットと言われ得る。
【0156】
他の乾燥方法
冷気の流れでの大気乾燥、真空室凍結乾燥、又は真空トンネル凍結乾燥などの、他の乾燥方法が、本明細書に開示されるような方法に好適であり得る。それらの方法は、回転ドラムにおける乾燥の代替に好適である。
【0157】
そのような方法は、Adali et al.,Processes.2020;8(6)に及びWanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153)に開示されており、その内容は参照により援用される。
【0158】
大気凍結乾燥において、大気圧の冷たい及び乾燥した空気又はガスが、凍結小滴の上方を通過し、それらの表面から溶媒を除去する。微粒子乾燥材料で、プロセスガスは、凍結小滴の床を通って上昇することができるか、又は凍結小滴が透過性支持体上にある場合、それを下向き流で通過することができるかのどちらかである。十分に速いアップストリーム流量で、凍結小滴の慣性、室のジオメトリー及びガス動力学に応じで、流動床又は噴流床が形成される。ダウンストリーム乾燥において、ガスは、主として凍結小滴間の隙間をしみ出る。
【0159】
真空室凍結乾燥及び真空トンネル凍結乾燥において、凍結小滴は、低大気圧(真空)環境及び低温中に置かれる。乾燥プロセス中の真空の適用は、溶媒の除去を可能にする。最初の乾燥は、氷の昇華によって製剤から水を除去し、次いで第二の乾燥は非凍結の結合水を除去する。
【0160】
真空室凍結乾燥において、凍結小滴は、トレイ上に置かれ、層状で乾燥させられ、昇華速度は、二峰性粒度分布によって決定され、ここで、自由溶媒分子の短距離拡散は、内部細孔及びそれらの連結度によって決定される。昇華エネルギーは、下方の加熱プレートからの伝導によって及び/又は放射棚からの放射によって提供される。いくつかの実施形態において、乾燥は、真空室凍結乾燥において実施される。
【0161】
真空トンネル凍結乾燥は、乾燥時間の短縮を可能にし、凍結乾燥のエネルギー効率の上昇は、凍結小滴の層の厚さを減らすこと及び赤外線又はマイクロ波放射により昇華エネルギーを供給することによる。凍結小滴はトレイ上に置かれ、トレイは、準連続プロセスにおいて入口ロックを通過して真空トンネルに入り、出口ロックを通ってアンロードされる。
【0162】
例えば、凍結乾燥機(真空室凍結乾燥及び真空トンネル凍結乾燥)がトレイでロードされるとすぐに、凍結小滴の従来の凍結乾燥(氷の昇華)を開始するために、室又はトンネルにおいて真空が引かれる。
【0163】
以下の凍結乾燥パラメーターは、Tgが約-30℃~約-45℃の範囲である製剤について用いられるものの例である:
最初の乾燥:-35℃に等しい棚温度、10h中50μbarに等しい圧力。
第二の乾燥:20℃に等しい棚温度、3h中50μbarに等しい圧力。
【0164】
凍結乾燥サイクルは、優先的に3%よりも低い残留水分を得るために設計されなければならない。しかしながら、水分含量は、凍結乾燥される材料の安定性がそれを必要とする場合、ケースバイケースで、より高い値で最適化することができる。
【0165】
凍結乾燥小滴、つまりマイクロペレットは、次いで、全部まとめて集められ得る。保管条件は、乾燥した、脆い及び吸湿性粒子に好適である。凍結乾燥小滴の大部分は、次いで、当技術分野において公知の乾燥粉末充填技術を用いてバイアル中へ充填され得る。
【0166】
脂質ナノ粒子、及び製造プロセス
本明細書に開示されるようなLNP用の好適な脂質成分は、脂質成分として、少なくとも:1種のイオン化可能な脂質、1種の中性脂質、及び1種のステロイドアルコール又はそれのエステルを含み得る。
【0167】
任意選択的に、少なくとも1種のPEG-脂質も実践され得る。
【0168】
イオン化可能なカチオン性脂質
本明細書に開示されるようなLNPは、少なくとも1種のイオン化可能なカチオン性脂質を含み得る。
【0169】
イオン化可能なカチオン性脂質は、生理的pHでプロトン化することができるが、8、9、10、11、又は12よりも上のpHで脱プロトン化され得る1つ以上の基を含有し得る。イオン化可能なカチオン性基は、生理的pHでカチオン性基を形成することができる1つ以上のプロトン化可能なアミンを含有し得る。カチオン性のイオン化可能な脂質はまた、更に、C6~C24アルキル又はアルケニル炭素基を持った2つ以上の脂肪酸などの1つ以上の脂質成分を含み得る。これらの化合物は、デンドリマー、デンドロン、ポリマー、又はそれらの組合せであり得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は、少なくとも1つのプロトン化可能なアミン部分を含み得る。
【0171】
好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、米国特許第9,512,073号明細書からの又は米国特許第10,201,618号明細書中のイオン化可能なカチオン性脂質であり得、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0172】
好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、[(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル] 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(D-Lin-MC3-DMA);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(Dlin-KC2-DMA);1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(Dlin-DMA);ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル) 9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319);9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102);[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);[3-(ジメチルアミノ)-2-[(Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシプロピル] (Z)-オクタデカ-9-エノエート(DODAP);2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-[ジ(ヘプタデシル)アミノ]-2-オキソエチル]ペンタンアミド(DOGS);[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルへプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]30へナントレン-3-イル]N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]カルバメート(DC-Chol);テトラキス(8-メチルノニル) 3,3’,3’’,3’’’-(((メチルアザンジイル) ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラプロピオネート(306Oi10);デシル(2-(ジオクチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(9A1P9);エチル 5,5-ジ((Z)-ヘプタデカ-8-エン-1-イル)-1-(3-(30へナントレン-1-イル)プロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(A2-Iso5-2DC18);ビス(2-(ドデシルジスルファニル)エチル) 3,3’-((3-メチル-9-オキソ-10-オキサ-13,14-ジチア-3,6-ジアザヘキサコシル)アザンジイル)ジプロピオネート(BAME-O16B);1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200);3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12);ヘキサ(オクタン-3-イル)9,9’,9’’,9’’’,9’’’’,9’’’’’-((((ベンゼン-1,3,5-トリカルボニル)イリス(アザンジイル)) トリス(プロパン-3,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサノナノエート(FTT5);(((3,6-ジオキソピペラジン-2,5-ジイル)ビス(ブタン-4、1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル)(9Z,9’Z,9’’Z,9’’’Z,12Z,12’Z,12’’Z,12’’’Z)-テトラキス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)(OF-Deg-Lin);TT3;N
1,N
3,N
5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド;N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5);30へナントレン-9-イル 8-((2-ヒドロキシエチル)(8-(ノニルオキシ)-8-オキソオクチル)アミノ)オクタノエート(脂質5);
【化2】
及びそれらの組合せを含む群から選択され得る。
【0173】
イオン化可能なカチオン性脂質OF-02は、特にPCT出願国際公開第2022/099003号パンフレットに開示されており、その内容は参照により援用される。
【0174】
LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約20~約60%、又は約25%~約60%、又は約30%~約55%、又は約40%~約55%、又は約40%~約50%のイオン化可能なカチオン性脂質を含み得る。
【0175】
一実施形態において、好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、つまりDlin-MC3-DMA(MC3としても知られる)であり得る。
【0176】
一実施形態において、好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約50%の量で存在する、9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)であり得る。
【0177】
一実施形態において、好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約46.3%又は約47.4%の量で存在する、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)であり得る。
【0178】
一実施形態において、好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約40%の量で存在する、cKK-E10であり得る。
【0179】
一実施形態において、好適なイオン化可能なカチオン性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約40%の量で存在する、OF-02であり得る。
【0180】
中性脂質
本明細書に開示されるようなLNPは、少なくとも1種の中性脂質を含み得る。中性脂質の存在は、脂質ナノ粒子の構造的安定性を向上させ得る。中性脂質は、核酸の送達効率を考慮して適切に選択することができる。
【0181】
中性脂質は、本明細書に開示されるイオン化可能なカチオン性脂質とは異なる。中性脂質は、イオン化可能ではないか、又は選択されたpHで中性の双性イオン性化合物であるかのどちらかである。
【0182】
LNPのために有用な好適な中性脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、及びセラミドからなる群から選択され得る。
【0183】
ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンは、双性イオン性脂質である。スフィンゴミエリン及びセラミドは、イオン化可能な脂質ではない。
【0184】
ホスファチジルコリンは、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、POPC(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)であり得る。
【0185】
ホスファチジルエタノールアミンは、DOPE(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DSPE(1,2-ジステアロイル-s/i-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DLPE(1,2-ジラウロイル-SM-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、又はl-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)であり得る。
【0186】
中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、POPC、DOPCなどの、ホスファチジルコリン;DOPE、DPPE、DMPE、DSPE、DLPEなどの、ホスファチジルエタノールアミン;スフィンゴミエリン;セラミド、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0187】
一実施形態において、中性脂質は、DSPC、DOPC、及びDOPEであり得、例えばDSPC又はDOPEであり得る。
【0188】
一実施形態において、中性脂質はDSPCであり得る。
【0189】
LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約5~約50%、又は約5%~約45%、約9%~約40%、約9%~約30%の中性脂質を含み得る。
【0190】
一実施形態において、好適な中性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約10%の量で存在する、DSPであり得る。
【0191】
一実施形態において、好適な中性脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で約30%の量で存在するDOPEであり得る。
【0192】
中性脂質は、本明細書に開示されるようなLNP中に、約70:1~約1:2、例えば約30:1~約1:1、例えば約15:1~約2:1、例えば約10:1~約4:1の範囲の、より例えば約5:1であるイオン化可能なカチオン性脂質:中性脂質のモル比で存在し得る。
【0193】
ステロイドアルコール又はそれらのエステル
本明細書に開示されるようなLNPは、少なくとも1種のステロイドアルコール(つまりステロール)又はそれのエステルを含み得る。ステロール又はステロールのエステルの存在は、脂質ナノ粒子の構造的安定性を向上させ得る。
【0194】
ステロール、つまりステロイドアルコールは、コレステロール又はその誘導体、エルゴステロール、デスモステロール(3β-ヒドロキシ-5,24-コレスタジエン)、スチグマステロール(スチグマスタ-5,22-ジエン-3-オール)、ラノステロール(8,24-ラノスタジエン-3b-オール)、7-デヒドロコレステロール(Δ5,7-コレステロール)、ジヒドロラノステロール(24,25-ジヒドロラノステロール)、チモステロール(5α-コレスタ-8,24-ジエン-3β-オール)、ラトステロール(5α-コレスタ-7-エン-3β-オール)、ジオスゲニン((3β,25R)-スピロスタ-5-エン-3-オール)、シトステロール(22,23-ジヒドロスチグマステロール)、シトスタノール、カンペステロール(カンペスタ-5-エン-3β-オール)、カンペスタノール(5a-カンペスタン-3b-オール)、24-メチレンコレステロール(5,24(28)-コレスタジエン-24-メチレン-3β-オール);BHEM-コレステロール(2-(((((3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルへプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]34ヘナントレン-3-イル)オキシ)カルボニル)アミノ)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルエタン-1-アミニウムブロミド);及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0195】
ステロイドアルコールのつまりステロールのエステルは、カルボン酸とステロイドアルコールのヒドロキシル基とのエステルを指す。好適なカルボン酸は、カルボキシル部分に付け加えて、飽和又は不飽和の、線状又は分岐の。アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C1~C20飽和又は不飽和の、線状又は分岐の、アルキル基、例えばC2~C18、例えばC4~C16、例えばC8~C12飽和又は不飽和の、線状又は分岐の、アルキル基であり得る。他の実施形態において、カルボン酸は脂肪酸であり得る。例えば、脂肪酸は、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、又はアラキジン酸であり得る。
【0196】
一実施形態において、ステロールのエステルは、コレステリルエステルであり得る。
【0197】
ステロールのつまりステロイドアルコールのエステルは、マルガリン酸コレステリル(コレスタ-5-エン-3β-イル ヘプタデカノエート)、コレステリルオレエート、コレステリルステアレート;及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0198】
ステロールつまりステロイドアルコール又はそれらおエステルは、コレステロール又はその誘導体、エルゴステロール、デスモステロール(3β-ヒドロキシ-5,24-コレスタジエン)、スチグマステロール(スチグマスタ-5,22-ジエン-3-オール)、ラノステロール(8,24-ラノスタジエン-3b-オール)、7-デヒドロコレステロール(Δ5,7-コレステロール)、ジヒドロラノステロール(24,25-ジヒドロラノステロール)、チモステロール(5α-コレスタ-8,24-ジエン-3β-オール)、ラトステロール(5α-コレスタ-7-エン-3β-オール)、ジオスゲニン((3β,25R)-スピロスタ-5-エン-3-オール)、シトステロール(22,23-ジヒドロスチグマステロール)、シトスタノール、カンペステロール(カンペスタ-5-エン-3β-オール)、カンペスタノール(5a-カンペスタン-3b-オール)、24-メチレンコレステロール(5,24(28)-コレスタジエン-24-メチレン-3β-オール)、マルガリン酸コレステリル(コレスタ-5-エン-3β-イル ヘプタデカノエート)、コレステリルオレエート、コレステリルステアレート、及びそれらの組合せからなる群から選択され得るから選択され得る。
【0199】
或いはまた、ステロールは、酸化されたコレステロールなどのコレステロール誘導体であり得る。
【0200】
本開示に好適な酸化されたコレステロールは、25-ヒドロキシコレステロール、27-ヒドロキシコレステロール、20α-ヒドロキシコレステロール、6-ケト-5α-ヒドロキシコレステロール、7-ケト-コレステロール、7β,25-ヒドロキシコレステロール、7β-ヒドロキシコレステロール;及びそれらの組合せであり得る。例えば、酸化されたコレステロールは、25-ヒドロキシコレステロール及び20α-ヒドロキシコレステロールであり得、例えばそれは20α-ヒドロキシコレステロールであり得る。
【0201】
一実施形態において、ステロールつまりステロイドアルコール、又はそれのエステルは、コレステロール、コレステリルエステル、又はコレステロール誘導体、例えば酸化されたコレステロールであり得る。一実施形態において、ステロールつまりステロイドアルコールは、コレステロール又はコレステリルエステルであり得、例えばコレステロールであり得る。
【0202】
一実施形態において、ステロールつまりステロイドアルコールはコレステロールであり得る。
【0203】
LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約20~約55%、又は約20%~約50%、又は約25%~約45%の前記ステロイドアルコール、又はそれのエステルを含み得る。
【0204】
一実施形態において、ステロールつまりステロイドアルコールはコレステロールであり得、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約28.5%、又は約38.5%、又は約40.9%、又は約42.7%の量で存在し得る。
【0205】
ステロールつまりステロイドアルコール、又はそれらのエステルは、約4:1~約1:2、例えば約3.5:1~約1:1.8、例えば約2:1~約1:1.5、例えば約1.5:1~約1:1.2の範囲の、例えば約1.3:1~約1:1.3である、イオン化可能なカチオン性脂質:ステロイドアルコール、又はそのエステルのモル比でLNP中に存在し得る。
【0206】
PEG-脂質
脂質ナノ粒子は、PEG-脂質(又はPEG化脂質)を含み得る。
【0207】
考えられるPEG-修飾脂質には、C6~C20のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した長さが5kD以下のポリエチレングリコール鎖が含まれるが、それに限定されない。LNPの組成物へのPEG-修飾脂質の添加は、複雑な凝集を防ぎ得、及びまた循環寿命を高める及び組成物又は脂質ナノ粒子の標的細胞への送達を増やすための手段を提供し得る。
【0208】
好適なPEG化脂質は、例えば、l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などの、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG);ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE);4-0-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-λ-0-(co-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG);ペグ化セラミド(PEG-cer);ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピルカルバメート;2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(co-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメート;2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159);及びそれらの組合せであり得る。
【0209】
一実施形態において、好適なPEG化脂質は、EG-DAG;PEG-DMG;PEG-PE;PEG-S-DAG;PEG-S-DMG;PEG-cer;PEG-ジアルコキシプロピルカルバメート;2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159);及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0210】
例えば、PEG化脂質は、PEG-DMG PEG-PE、又は2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)であり得る。
【0211】
一実施形態において、PEG-脂質は、PEG-2000-PEなどのPEG-PEであり得る。
【0212】
一実施形態において、PEG-脂質は、DMG-PEG-2000などの、PEG-DMGであり得る。
【0213】
一実施形態において、PEG-脂質は、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)であり得る。
【0214】
LNPは、LNPの脂質成分の全モル量に対して約1~約15%、例えば約1%~約10%、例えば約1%~約5%、例えば約1%~約3.5%の範囲のモル量でPEG-脂質を含み得る。
【0215】
一実施形態において、PEG-脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約1.5%の量で存在する、DMG-PEG-2000であり得る。
【0216】
一実施形態において、PEG-脂質は、例えば前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約1.6%又は約1.7%の量で存在する、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)であり得る。
【0217】
PEG-脂質及びイオン化可能なカチオン性脂質は、約70:1~約4:1、例えば約40:1~約10:1、例えば約35:1~約15:1の、例えば約33:1又は約14:1であるPEG-脂質に対するイオン化可能なカチオン性脂質のモル比でLNP中に存在し得る。
【0218】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約20%~約60%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約5%~約50%の中性脂質の、20%~約55%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約0.5%~約15%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0219】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約35%~約55%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約5%~約35%の中性脂質の、約25%~約45%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約1.0%~約2.5%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0220】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約40%~約50%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約9%~約30%の中性脂質の、約28%~約45%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約1.5%~約2.5%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0221】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質の並びに中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質のモル比は、約35/16/46.5/1.5の、約50/10/38.5/1.5の、約57.2/7.1/34.3/1.4の、約40/15/40/5の、約50/10/35/4.5/0.5の、約50/10/35/5の、約40/10/40/10の、約35/15/40/10の、又は約52/13/30/5のものであり得る。
【0222】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質の並びに中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質のモル比は、約35/16/46.5/1.5又は約50/10/38.5/1.5のものであり得る。
【0223】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約50%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約10%の中性脂質の、約38.5%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約1.5%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0224】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約46.3%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約9.4%の中性脂質の、約42.7%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約1.6%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0225】
一実施形態において、LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドアルコール又はそれのエステル、及びPEG-脂質を、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、約40%のイオン化可能なカチオン性脂質の、約30%の中性脂質の、約28.5%のステロイドアルコール又はそれのエステルの、及び約1.5%のPEG-脂質のモル量で含み得る。
【0226】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は、Dlin-MC3-DMA(つまり(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、又は[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);
【化3】
であり得る。
【0227】
一実施形態において、中性脂質は、DSPC又はDOPEであり得る。
【0228】
一実施形態において、ステロイドアルコールはコレステロールであり得る。
【0229】
一実施形態において、PEG-脂質は、PEG-PE(PEG-2000-PE)又はPEG-DMG(PEG-2000-DMG)であり得る。
【0230】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質はDlin-MC3-DMAであり得、中性脂質はDSPCであり得、ステロイドアルコールはコレステロールであり得、PEG-脂質はPEG-DMG(DMG-PEG-2000)であり得る。
【0231】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、50%のDlin-MC3-DMA、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、及び1.5%のPEG-DMG(PEG-2000-DMG)を含み得る。
【0232】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)であり得、中性脂質はDSPCであり得、ステロイドアルコールはコレステロールであり得、PEG-脂質はPEG-DMG(DMG-PEG-2000)であり得る。
【0233】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、50%の9-ヘプタデカニル 8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、10%のDSPC、38.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000を含み得る。
【0234】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)であり得、中性脂質はDSPCであり得、ステロイドアルコールはコレステロールであり得、PEG-脂質はPEG-DMG(DMG-PEG-2000)であり得る。
【0235】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、46.3%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、9.4%のDSPC、42.7%のコレステロール、及び1.6%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)を含み得る。
【0236】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、47.4%の[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル) ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、10%のDSPC、40.9%のコレステロール、及び1.7%の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)を含み得る。
【0237】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質はcKK-E10であり得、中性脂質はDOPEであり得、ステロイドアルコールはコレステロールであり得、PEG-脂質はPEG-DMG(DMG-PEG-2000)であり得る。
【0238】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、40%のcKK-E10、30%のDOPE、28.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000を含み得る。
【0239】
一実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質はML7/OF-02であり得、中性脂質はDOPEであり得、ステロイドアルコールはコレステロールであり得、PEG-脂質はPEG-DMG(DMG-PEG-2000)であり得る。
【0240】
一実施形態において、LNPは、前記LNPの脂質成分の総重量に対してw/w%で、40%のML7/OF-02、30%のDOPE、28.5%のコレステロール、及び1.5%のDMG-PEG-2000を含み得る。
【0241】
脂質ナノ粒子(LNP)
脂質ナノ粒子(LNP)は、平均直径サイズ、モード径サイズ、LNPのサイズ分布の均質性を反映する多分散指数(PI)、pKa、及び/又はLNDの球状表面電荷を反映するゼータ電位などの、当技術分野において周知の幾つかのパラメーターで特徴付けられ得る。
【0242】
LNPは、少なくとも1種の治療薬をカプセル化するために使用され得る。カプセル化率及びそのような試剤の総含有量も、LNPを特徴付けるパラメーターとして使用され得る。
【0243】
モード径サイズ、平均径サイズ及びPIは、96のウェルプレート自動サンプラー又は動的光散乱(DLS)を備えたMalvern製のNanoparticles Tracking Analysis(NTA)NS300によって測定され得る。pKaは、蛍光プローブ 2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)を使用して測定され得る。ゼータ電位は、例えばNicomp 380 ZLSシステム又はMalvern nanoZSで、電気泳動移動度又は動的電気泳動移動度測定を用いて測定することができる。
【0244】
LNPの「平均径サイズ」は、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)によって測定され得、サンプル中の分析された全ての粒子の平均径を表す。「モード径サイズ」は、サンプルの数において最も頻度の高い粒子集団のサイズを表す。言い換えれば、それは、最高頻度の粒子のサイズである。サンプルのサイズ分布プロファイルに関して、モード径サイズは、分布において見られるピークの最高点を表す。
【0245】
NTAは、液体懸濁液中のサンプルの粒度分布を得るためにブラウン運動及び光散乱の両方の特性を利用する。レーザービームは、カメラが取り付けられている拡大顕微鏡によって粒子を見ることができるように、ビーム路散乱光の中でサンプル室及び懸濁液中の粒子を通過させられる。粒子運動は、フレームごとに記録される。観察される粒子のそれぞれの中心が特定され、x及びy平面において移動した平均距離を得るために追跡される。この値は、粒子拡散係数(Dt)を決定するのに役立ち、この係数から、サンプル温度T及び溶媒粘度ηを知ることによって、粒子の球相当流体力学直径dが、ストークス-アインシュタイン方程式:
【数4】
(ここで、KBはボルツマン定数である)
で決定される。
【0246】
LNPは、それらを、全身投与、例えば非経口投与に、又は筋肉内、皮内、若しくは皮下投与に好適なものにする直径を有し得る。典型的には、脂質ナノ粒子は、600ナノメートル(nm)未満の、例えば400nm未満の平均径サイズを有する。
【0247】
一実施形態において、LNPは、200nm未満の平均径サイズを有する。そのようなサイズは、有利には、無菌濾過に適合しており、筋肉内投与又は皮下投与後のリンパ管を通っての移動に最も適切である。このサイズはまた、より大きい粒子の注射が毛管血栓症を誘発し得るので、静脈内投与にも適切である。
【0248】
いくつかの実施形態において、LNPは、約20nm~約300nm、例えば約25nm~約250nm、例えば約30nm~約200nm、約40nm~約180nm、約60nm~約170nm、約70~約160nm、及び約80~約150nmの範囲の平均径サイズを有し得る。一実施形態において、LNPは、NTAによって測定されるように、約85~約140nmの範囲の平均径サイズを有し得る。液体組成物(本明細書に開示される方法のステップa))において、LNPは、NTAによって測定されるように、約70nm~約250nm、又は約80nm~約200nm、又は約85~約140nm、又は約90~約120nmのモード径サイズを有し得る。
【0249】
NTA技法は、サンプルが液体であることを必要とする。それ故に、凍結又は凍結乾燥ステップ後のLNPの平均径サイズの測定のために、得られた凍結又は凍結乾燥LNPは、解凍されるか又は、水性緩衝液などの溶液若しくは注射用の水(WFI)に再懸濁させられる。
【0250】
本明細書に開示されるような凍結方法及び噴霧乾燥は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含むLNPのモードサイズへのゼロの又は減少した影響を有し得る。また、本明細書に開示されるような凍結方法及び噴霧乾燥は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及びPEG-脂質を含むLNPのモードサイズへのゼロの又は減少した影響を有し得る。LNPの安定性は、それ故に、本明細書に開示されるような方法によって影響を受けないか又は最小限に影響を受ける。
【0251】
LNPの安定性は、本明細書に開示されるような方法の適用の前後に、又は本明細書に開示されるような方法の適用後に及び一定の期間に沿って、LNPを特徴付けるいくつかのパラメーターの値を測定することによって評価され得る。
【0252】
LNPの安定性を評価するために測定され得るLNPのパラメーターは、例えば、NTAによって測定されるようなモード径サイズ又は、場合によってはLNP中にロードされる、mRNAなどの、試剤のカプセル化率であり得る。
【0253】
例えば、LNPのモード径サイズは、凍結前の液体組成物中のLNPについて、及び凍結LNPについて測定され得る。上で示されたように、凍結LNPは、NTAによる測定に供される前に、解凍されるか又は、例えば水性緩衝液若しくは注射用の水で、溶液に再懸濁されなければならない。
【0254】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法の凍結ステップでのLNPは、液体組成物(凍結前の)中のLNPのモード径サイズの約45%以下、又は約35%以下、又は約30%以下、又は約25%以下、又は約20%以下、又は約15%以下又は約10%以下、又は約8%以下、又は約5%以下のNTAによって測定されるモート径サイズを有し得る。
【0255】
約45%未満、又は約35%未満、又は約30%未満、又は約25%未満、又は約20%未満、又は約15%未満、又は約10%未満、又は約8%未満、又は約5%未満の凍結のステップの前後のLNPのモード径サイズの変化は、凍結プロセス中の低い又は減少した凝集効果を示すものであり得る。
【0256】
LNPのモード径サイズはまた、NTAによる測定に供される前に、例えば水性緩衝液の、溶液又は注射用の水に再懸濁させられた凍結乾燥LNPについて測定され得る。
【0257】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法の凍結乾燥ステップにおいてLNPは、液体組成物中のLNPの平均径サイズの約15%以下、又は約13%以下、又は約11%以下、又は約10%以下、又は約5%以下のNTAによって測定される平均径サイズを有し得る。
【0258】
約15%未満、又は約13%未満、又は約11%未満、又は約10%未満、又は約5%未満の噴霧凍結乾燥のステップの前後のLNPのモード径サイズの変化は、噴霧凍結乾燥プロセス中の低い又は減少した凝集効果を示すものであり得る。
【0259】
本明細書に開示されるような噴霧凍結乾燥方法の影響はまた、凍結乾燥LNPに関して経時的に評価され得る。そのような場合に、凍結乾燥LNPは、一定温度、例えば+5℃で保管され得、時々、例えば、1ヶ月、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月ごとに、凍結乾燥LNPのサンプルは、NTAによるモードサイズ径測定のために水性緩衝液又は注射用の水に再懸濁され得る。得られた測定値は、次いで、凍結乾燥前の又は凍結乾燥直後の、すなわち、T0での液体組成物中のLNPのモードサイズ径であり得る、基準値と比較され得る。
【0260】
脂質ナノ粒子は、少なくとも1種の治療薬を含み得る又はカプセル化し得る。そのような試剤は、LNPの外面中でカプセル化され得る及び/又は外面上に吸着され得る。そのような試剤は、いくらかの正又は負電荷を有し得る。
【0261】
負に帯電した治療薬、例えば、核酸を含有するLNPの場合に、脂質ナノ粒子は、例えば調製時に、イオン化可能なカチオン性脂質(カチオン性電荷)対負に帯電した試剤(例えば、核酸の場合に、ホスフェートからのアニオン性電荷)の正(+)対負(-)電荷比を調整することによって形成され得る。イオン化可能なカチオン性脂質の及び負に帯電した試剤の電荷は、約6.5~約7.5である、生理的pHなどの、選択されたpHでの電荷である。
【0262】
LNP中のイオン化可能なカチオン性脂質対負に帯電した試剤の+/-電荷比は、以下の方程式:(+/-電荷比)=[(カチオン性脂質量(mol))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]:[(負に帯電した試剤量(mol))*(負に帯電した試剤中の負電荷の総数)]によって計算することができる。
【0263】
負に帯電した試剤量及びイオン化可能なカチオン性脂質量は、LNPの調製時のローディング量を考慮して当業者によって容易に決定することができる。
【0264】
ある実施形態によれば、本開示に好適なLNP中の正電荷対負電荷の比は、それらが大域的な負電荷又は中性の又は中性に近い大域的な電荷を有し得るようなものである。
【0265】
一実施形態において、LNP中の正電荷対負電荷の電荷比は、約4:1~約15:1、例えば約5:1~約12:1、例えば約6:1~約9:1の範囲であり、例えば約6:1~約8:1である。
【0266】
一実施形態において、LNP中の正電荷対負電荷の電荷比は約6:1である。
【0267】
本開示は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる凍結LNPに関する。
【0268】
本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む凍結LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにある凍結LNPに関する。そのような凍結LNPは、更に、PEG-脂質を含み得る。そのような凍結LNPは、更に、核酸を含む。
【0269】
その目的に1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる凍結乾燥LNPに関する。
【0270】
本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステルを含む凍結乾燥LNPであって、前記凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにある凍結乾燥LNPに関する。そのような凍結乾燥LNPは、更に、PEG-脂質を含み得る。そのような凍結乾燥LNPは、更に、核酸を含む。
【0271】
脂質ナノ粒子製造プロセス
LNPの製造方法は、当技術分野において公知である。
【0272】
一実施形態において、治療薬を含有するLNPは、少なくとも:
i)水混和性有機溶媒に、LNPの脂質成分を可溶化するステップと、
ii)ステップa)において得られた有機溶媒を、核酸を含有する水性溶媒と混合するステップと、
iii)水性溶媒中の、前記LNPを得るステップと
を含む方法によって得られ得る。
【0273】
一実施形態において、LNPの製造方法は、少なくとも:
i)水混和性有機溶媒に、少なくとも1種のイオン化可能なカチオン性脂質、少なくとも中性脂質、少なくとも1種のステロイドアルコール又はそれのエステル、及び少なくとも1種のPEG-脂質を可溶化するステップと、
ii)ステップa)において得られた有機溶媒を、核酸を含有する水性溶媒と混合するステップと、
iii)水性溶媒中の、核酸を含有する脂質ナノ粒子を得るステップと
を含み得る。
【0274】
有用な水-混和性有機溶媒は、本明細書に開示されるような脂質化合物及び任意の他の添加される脂質を可溶化することができる任意の水-混和性有機溶媒であり得る。好適な有機溶媒の例として、エタノール又はメタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、t-ブタノール、THF、DMSO、アセトン、アセトニトリル、ジグリム、DMF、1,4-ジオキサン、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチル亜リン酸トリアミドが挙げられ得る。一実施形態において、有機溶媒は、エタノール及びイソプロパノールであり得る。
【0275】
ステップii)において有用な水性溶媒には、水性緩衝液が含まれる。
【0276】
好適な水性緩衝液の例として、クエン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、コハク酸緩衝液、ホウ酸緩衝液又はリン酸緩衝液などの、酸性緩衝液が挙げられ得る。例えば、水性緩衝溶媒は、クエン酸緩衝液又は酢酸緩衝液であり得る。
【0277】
水性溶媒のpHは、約3.5~約7.0、例えば約4.0~約6.5、例えば約4.5~約6.0の範囲であり得、例えば約5.5にあり得る。一実施形態において、pHは、約4.0のものであり得る。
【0278】
ステップii)において、有機溶媒と水性溶媒とは、約1:1~約1:6の範囲の比有機溶媒:水性溶媒で混合され得る。一実施形態において、この比は、約1:2~約1:4の範囲であり得、例えば約1:3の比であり得る。
【0279】
一実施形態によれば、有機溶媒と水性溶媒とは、約0.01ml/分~約12ml/分の範囲の流量でステップb)において混合され得る。いくつかの実施形態において、流量は、約0.02ml/分~約10ml/分、約0.5ml/分~約8ml/分、約1ml/分~約6ml/分の範囲であり得る、又は約4ml/分であり得る。
【0280】
混合のステップは、当技術分野において公知の任意の方法によって実施され得る。例えば、両溶媒は、T字管又はYコネクターで混合され得る。或いはまた、混合は、Belliveau et al.(Mol Ther Nucleic Acids.2012;1(8):e37)によって記載されているように微小流体マイクロミキサーで層流混合することによって実施され得る。
【0281】
示されたように、ステップb)における水性溶媒は核酸を含む。好適な核酸は、例えば以下に詳述される通りであり得る。
【0282】
本方法は、更に、必要ならば、pHを酸性から中性に上げるステップを含み得る。
【0283】
更なる実施形態において、本方法は、約5.5~約7.5、例えば約6.0~約7.5の範囲のpHでステップiii)において得られたLNPを含有する水性溶媒のpHを上げるステップiv)を含み得る。
【0284】
pHを上げるステップは、当技術分野における任意の公知の方法によって実施され得る。例えば、pHの変更は、透析又は透析濾過ステップによって実施され得る。
【0285】
更に、必要ならば、オスモル濃度は、身体へ等張液を注入することに関して290mOsmol/kgに近い最終オスモル濃度に達するように調整され得る。
【0286】
更に、LNPの調製方法は、脂質ナノ粒子を医薬組成物として、例えば免疫原性組成物として更に配合するために脂質ナノ粒子を収穫する、精製する、濃縮する及び/又は殺菌するのに好適な任意の更なるステップを含み得る。
【0287】
LNPの凍結及び凍結乾燥処方
凍結又は凍結乾燥される前に、LNPを含む組成物は、賦形剤と混合され得る。そのような賦形剤は、緩衝液、増量剤、pH安定剤、pH調整剤、熱安定剤、抗凍結剤、リオプロテクタント、酸化防止剤であり得る。
【0288】
凍結又は凍結乾燥を意図されるLNPを含む組成物は、等張(等浸透圧性)であり得る。
【0289】
抗凍結剤のような、そのような賦形剤は、凍結又は噴霧凍結乾燥方法中にLNPを安定させるのに貢献し得る。
【0290】
抗凍結剤及びリオプロテクタント
LNPを含有する液体組成物は、少なくとも1種の抗凍結剤を添加され得る。
【0291】
抗凍結剤又はリオプロテクタントは、二糖類(例えばラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、及びマンノースなどの)、ソルビトール、アミノ酸、ペプチド、ポリマー及びアルブミン(ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)などのタンパク質又はゼラチンから選択され得る。
【0292】
いくつかの実施形態において、抗凍結剤は炭水化物であり得る。一実施形態において、抗凍結剤は、単糖、二糖、三糖、糖アルコール、オリゴ糖又はその相当する糖アルコール、及び直鎖多価アルコールから選択される炭水化物である。例示的な二糖抗凍結剤には、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース等が含まれる。
【0293】
一実施形態において、抗凍結剤はポリオールであり得る。いくつかの実施形態において、抗凍結剤は、マンノース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、イノシトール、グルコース、フルクトース、アルギニン、グリセリン、デキストラン、及びそれらの混合物からなる群の中で選択され得る。
【0294】
いくつかの実施形態において、抗凍結剤はトレハロースであり得る。いくつかの実施形態において、トレハロースはトレハロース二水和物であり得る。
【0295】
いくつかの実施形態において、抗凍結剤はデキストランであり得る。
【0296】
いくつかの実施形態において、抗凍結剤は、トレハロースとデキストランとの混合物である。
【0297】
一実施形態において、トレハロースは、組成物の全体積に対して、約5~約50重量/体積パーセント(w/v%)、又は約8(w/v)%~約40(w/v)%、又は約10(w/v)%~約25(w/v)%、又は約15(w/v)%~約20(w/v)%の濃度で存在する。
【0298】
一実施形態において、トレハロースは、約16.25(w/v)%の濃度で存在する。
【0299】
1,000~100,000Daの分子量を有するデキストランが好ましく、より好ましくは1,000~10,000Daが使用され得る。デキストランは、他の抗凍結剤と一緒に使用され得る。
【0300】
一実施形態において、デキストランは、約5~約25重量/体積パーセント(w/v%)、又は約8(w/v)%~約20(w/v)%、又は約15(w/v)%~約18(w/v)%の濃度で存在する。
【0301】
一実施形態において、デキストランは、約16.25(w/v)%の濃度で存在する。
【0302】
一実施形態において、トレハロース及びデキストランは、組成物の全体積に対して、等しい量の重量/体積パーセントで存在する。
【0303】
一実施形態において、抗凍結剤は、組成物の全体積に対して、約16.25(w/v)%の濃度でのトレハロースと、約16.25(w/v)%の濃度でのデキストランとの混合物である。
【0304】
いくつかの実施形態において、本開示に従ったLNPを含有する組成物は、トレハロース及びデキストランから本質的になる抗凍結剤を含み得る。
【0305】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステル及び上に示されたような抗凍結剤を含むLNPを含む凍結乾燥マイクロペレットに関する。いくつかの実施形態において、抗凍結剤は、トレハロースとデキストランとの混合物である。
【0306】
緩衝液
緩衝液は、リン酸緩衝食塩水、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、アミノ酸系緩衝液(例えばヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液などの)、オルトリン酸二水素ナトリウム、オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸二水素カリウム、オルトリン酸水素二カリウム、TES、MOPS、PIPES、ココジル酸塩、SSC、MES及びHEPESから選択され得る。
【0307】
いくつかの実施形態において、緩衝液はトリス緩衝液であり得る。
【0308】
いくつかの実施形態において、緩衝液はリン酸緩衝食塩水であり得る。
【0309】
いくつかの実施形態において、製剤は緩衝液を含まない。
【0310】
いくつかの実施形態において、製剤はトリス緩衝液を含まない。
【0311】
他の賦形剤
LNPを含む並びに本明細書に開示されるような方法で凍結させられる及び凍結乾燥されることを意図する組成物は、更に、熱安定剤、酸化防止剤、又は増量剤などの追加の賦形剤を含み得る。
【0312】
熱安定剤は、マンニトール、ポリマー(例えばデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどの)及びタンパク質から選択され得る。
【0313】
酸化防止剤は、ビタミンA(レチノール)、ビタミンC(アスコルビン酸)及びビタミンE(トコトリエノール及びトコフェロールを含む)から選択され得る。
【0314】
増量剤は、マンニトール、ポリマー(例えばデキストラン、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンなどの)、二糖類(例えばラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、及びマンノースなどの)、ソルビトール並びに、アルブミン及びゼラチンなどのタンパク質から選択され得る。
【0315】
核酸
本開示に好適な核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)であり得る。核酸には、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組み換えによって産生された及び化学的に合成された分子が含まれる。
【0316】
核酸は、一本鎖又は二本鎖分子であっても、線状又は円を形成するために共有結合で閉じていてもよい。核酸は、二本鎖RNA(dsRNA);一本鎖RNA(ssRNA);二本鎖DNA(dsDNA);一本鎖DNA(ssDNA);及びそれらの組合せであり得る。
【0317】
核酸を含有するLNPは、核酸の、細胞への導入、すなわち、細胞のトランスフェクションのために、例えば、組み換えタンパク質発現のために、遺伝子置換のために、宿主タンパク質の発現を抑える又は増やすために用いられ得る。
【0318】
核酸は、真核生物又は原核生物起源、例えばヒト、動物、植物、細菌、酵母又はウイルス起源等のものであり得る。それは、当業者に公知の任意の技法によって、例えばスクリーニングライブラリーによって、化学合成によって又は或いはまたスクリーニングライブラリーによって得られた配列の化学若しくは酵素修飾を含む混合方法によって得られ得る。それは、化学的に修飾され得る。
【0319】
核酸は、ベクーに含まれ得る。ベクターは、当業者に公知であり、プラスミドベクター、コスミッドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、アデノウイルス若しくはバキュロウイルスベクターなどの、ウイルスベクター、又は細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、若しくはPI人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含み得る。ベクターは、発現ベクター並びにクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミド並びにウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列と特異的な宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、又は哺乳類)中の又はインビボ発現系中の動作可能に連結したコード配列の発現のために必要な適切なDNA配列とを含有する。クローニングベクターは、一般に、ある種の所望のDNAフラグメントを操作する及び増幅するために使用され、所望のDNAフラグメントの発現のために必要な機能性配列を欠いている可能性がある。
【0320】
核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA);マイクロRNA(miRNA);短鎖(又は低分子)干渉RNA(siRNA);小ヘアピンRNA(shRNA);長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA);非対称性干渉RNA(aiRNA);自己増幅型RNA(saRNA);核内低分子RNA(snRNA);核小体低分子RNA(snoRNA);ガイドRNA(gRNA);アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO);プラスミドDNA(pDNA);閉鎖型DNA(ceDNA)、及びそれらの組合せであり得る。
【0321】
いくつかの実施形態において、核酸はRNAであり得る。
【0322】
いくつかの実施形態において、核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA);マイクロRNA(miRNA);短鎖(又は低分子)干渉RNA(siRNA);小ヘアピンRNA(shRNA);長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA);非対称性干渉RNA(aiRNA);自己増幅型RNA(saRNA);ガイドRNA(gRNA);及びそれらの組合せであり得る。
【0323】
いくつかの実施形態において、LNPは、核酸としてCRISPR/Cas9などの、CRISPRタンパク質をエンコードするmRNA、及びガイドRNA(gRNA)を含有し得る。gRNAは、rRNA:tracrRNA二本鎖として又はシングルガイドRNA(sgRNA)として提供され得る。いくつかの実施形態において、CRISPRタンパク質は、ポリペプチドとして直接に及びCRISPRタンパク質をエンコードするmRNAとしてではなく提供され得る。
【0324】
いくつかの実施形態において、RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)であり得る。
【0325】
いくつかの実施形態において、核酸は、本明細書に記載されるような、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原をエンコードし得る。
【0326】
メッセンジャーRNA(mRNA)
mRNAは、典型的には、DNAからの情報をリボソームに伝えるタイプのRNAと考えられる。mRNAの存在は、典型的には、非常に短時間であり、処理及び翻訳を含み、これに分解が続く。典型的には、真核生物において、mRNA処理は、N-末端(5’)エンド上への「キャップ」の、及びC-末端(3’)エンド上への「テール」の付加を含む。
【0327】
典型的なキャップは、5’-5’-トリホスフェート結合によって第1の転写ヌクレオチドに結合するグアノシンである、7-メチルグアノシンキャップである。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に見いだされるヌクレアーゼへの耐性を提供するのに重要である。5’キャップは、典型的には、次の通り付加される:先ず、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌクレオチドから末端ホスフェート基の1つを除去し、2つの末端ホスフェートを残し;次いで、グアノシントリホスフェート(GTP)が、グアニリルトランスフェラーゼによって末端ホスフェートに付加され、5’5’5トリホスフェート結合を生み出し;次いで、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによってメチル化される。
【0328】
テールは、典型的には、ポリアデニリル部分がそれによってmRNA分子の3’エンドに付加されるポリアデニル化事象である。この「テール」の存在は、mRNAをエクソヌクレアーゼ分解から保護するのに役立つ。メッセンジャーRNAは、タンパク質を作り上げる一連のアミノ酸へとリボソームによって翻訳される。
【0329】
いくつかの実施形態において、mRNAは、5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるmRNAは、mRNAの安定性又は翻訳に影響を及ぼす1つ以上の要素を含む5’UTRを含む。いくつかの実施形態において、5’UTRは、長さが約50~500ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるmRNAは、ポリアデニル化信号の1つ以上を含む3’UTR、細胞内のmRNAの位置の安定性に影響を及ぼすタンパク質用の結合部位、又はmiRNA用の1つ以上の結合部位を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、長さが50~500ヌクレオチド又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるmRNAは、mRNA転写産物によってエンコードされるものとは異なる遺伝子から誘導される5’又は3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるmRNAは、奇想天外である5’又は3’UTRを含む。
【0330】
本明細書に開示されるmRNAは、様々な公知の方法のいずれかに従って合成され得る。例えば、本開示によるmRNAは、インビトロ転写(IVT)によって合成され得る。インビトロ転写方法は、当技術分野において公知である。例えば、それらの内容が参照により援用される、Geall et al.(2013) Semin.Immunol.25(2):152-159;Brunelle et al.(2013) Methods Enzymol.530:101-14を参照されたい。手短に言えば、IVTは、典型的には、プロモーター、リボヌクレオチドトリホスフェートのプール、DTT及びマグネシウムイオンを含み得る緩衝液システム、並びに適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7又はSP6 RNポリメラーゼ)、DNAse I、ピロホスファターゼ、及び/又はRNAse阻害剤を含有する線状の又は円形のDNAテンプレートで行われる。正確な条件は、具体的な用途に従って変わるであろう。これらの試薬の存在は、最終mRNA生成物において望ましくなく、不純物又は汚染物質と考えられ、それらは、治療上の使用に好適である、きれいな且つ均質なmRNAを提供するために精製されなければならない。インビトロ転写反応から提供されるmRNAは、いくつかの実施形態において望ましいものであり得るが、細菌、真菌、植物、及び/又は動物から産生された野生型mRNAを含む、他の供給源のmRNAを本開示に従って使用することができる。
【0331】
本明細書に開示されるmRNAは、修飾されても非修飾であってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるmRNAは、典型的にはRNNA安定性を高める1つ以上の修飾を含有する。例示的な修飾には、骨格修飾、糖修飾、又は塩基修飾が含まれる。いくつかの実施形態において、開示されるmRNAsは、プリン類(アデニン(A)、グアニン(G))又はピリミジン類(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、並びに修飾ヌクレオチド類似物又はプリン類及びピリミジン類の誘導体として、例えば1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-ショードウラシル、クエオシン、β-D-マンノシル-クエオシン、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、及びイノシンなどを含むが、それらに限定されない天然に存在するヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似物(修飾ヌクレオチド)から合成され得る。いくつかの実施形態において、開示されるmRNAは、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-l-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、及び2’-O-メチルウリジンからなる、それらを含むが、それらに限定されない少なくとも1種の化学的修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、N1-メチルシュードウリジンを含む。そのような類似物の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、及び米国特許第5,700,642号明細書から当業者に公知であり、それらの内容は参照により援用される。
【0332】
用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む、及び例えば完全に又は実質的にリボヌクレオチド残基からなる分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。それには、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNAなどの単離RNA、合成RNA、又は組み換えによって産生されたRNAが含まれる。
【0333】
明確にするために、mRNAは、真核生物宿主によってタンパク質へと翻訳され得る、いかなるコーディングRNA分子をも包含する。コーディングRNA分子は、一般に、興味のあるタンパク質をコードする、及び真核生物宿主によって翻訳され得る配列であって、前記配列が開始コドン(ATG)からスタートし、例えば終止コドン(すなわち、TAA、TAG、TGA)によって終了する配列を含むRNA分子を指す。
【0334】
RNAは、天然に存在するRNA又は、少なくとも1種のヌクレオチドの付加、削除、置換及び/又は変更によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAであり得る。そのような変更は、RNAのエンド若しくは内部に、例えばRNAの少なくとも1つのヌクレオチドになどの、非ヌクレオチド物質の付加を含むことができる。RNA分子中のヌクレオチドはまた、天然に存在しないヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドなどの、非標準的なヌクレオチドを含むことができる。これらの変更RNAは、類似物又は天然に存在するRNAの類似物と言うことができる。
【0335】
mRNAは、DNAテンプレートを使用するインビトロ転写によって産生され得る。或いはまた、RNAは、化学合成によって得られ得る。そのような方法は当業者に公知である。例えば、市販されている様々なインビトロ転写キッドが存在する。
【0336】
RNAは、適切な細胞抽出物及び適切なDNAテンプレートを使用して、細胞を含まない系でインビトロ合成され得る。例えば、クローニングベクターが、転写産物の発生のために適用される。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼ用の任意のプロモーターであることができる。RNAポリメラーゼのいくつかの例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。インビトロ転写のためのDNAテンプレートは、核酸、例えばcDNAのクローニングすること、及びそれをインビトロ転写のための適切なベクターへ導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。例えば、クローニングベクターが、一般に指定の転写ベクターである転写産物を産生するために使用される。
【0337】
RNAは、タンパク質又はペプチドをエンコードし得る。すなわち、適切な環境中に、例えば、抗原提示細胞、例えば樹状細胞などの、細胞内に存在する場合、RNAを、それがエンコードするタンパク質又はペプチドを産生するために発現させることができる。RNAの安定性及び翻訳効率は、必要に応じて修正され得る。
【0338】
いくつかの実施形態において、mRNAは、本明細書に記載されるなどの、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原をエンコードし得る。
【0339】
いくつかの実施形態において、mRNAは抗原をエンコードし得る。
【0340】
RNA分子は、可変の長さのものであり得る。したがって、それらは、短いRNA分子、例えば約100ヌクレオチドよりも短いRNA分子、又は例えば約100ヌクレオチドよりも長い、若しくは約300ヌクレオチドよりも更に長い、長いRNA分子であり得る。
【0341】
mRNAは、長さが少なくとも30ヌクレオチドであり得る。
【0342】
mRNAは、5’キャップ構造、5’-UTR配列、タンパク質又はペプチドをコードするORF配列、3’-UTR配列、及びポリ(A)テールを含み得る。
【0343】
典型的には、mRNAは、以下の一般式を含み得る又はそれからなり得る:
[5’キャップ]w-[5’UTR]x-[興味のある遺伝子]-[3’UTR]y-[ポリA]z
式中、[5’キャップ]は、5’-5’結合によってmRNAに結合したメチルグアニンヌクレオチドを含有し、
式中、[5’UTR]及び[3’UTR]は、非翻訳領域(UTR)であり、
式中、[5’UTR]は、コザック配列を含有し、
式中、[興味のある遺伝子]は、興味のあるタンパク質をコードする任意の遺伝子であり、
式中、[ポリA]はポリ(A)テールであり、
式中、w、x、y、及びzは、同一であるか又は異なり、0又は1に等しい。
【0344】
コザック配列は、真核性mRNAに起こる、一般にコンセンサス配列である、及び翻訳プロセスの開始に主要な役割を果たしている、配列を指す。コザック配列及びコザックコンセンサス配列は、当技術分野において周知である。
【0345】
[3’UTR]は、いかなるタンパク質も発現させない。[3’UTR]の目的は、mRNAの安定性を高めることである。一実施形態によれば、α-グロビンUTRは、それが不安定性でないことが知られているので、選択される。
【0346】
興味のある遺伝子に対応する配列は、考えられている宿主内で満足できるタンパク質産生を得るために最適化されたコドンであり得る。
【0347】
ポリ(A)テールは、当技術分野において周知であるマルチプルアデノシンモノホスフェートからなる。ポリ(A)テールは、一般に、成熟メッセンジャーRNAの産生中に一般に起こる翻訳後修飾の1つであるポリアデニル化と呼ばれるステップ中に産生される。そのようなポリ(A)テールは、mRNAの安定性及び半減期に寄与し、可変の長さのものであることができる。例えば、ポリ(A)テールは、10A以上のヌクレオチドであり得、それは20A以上のヌクレオチドを含み、それは100A以上、例えば約120Aのヌクレオチドを含む。
【0348】
RNA分子は、
(i)キャップ付き非修飾RNA分子;
(ii)キャップ付き修飾RNA分子;
(iii)キャップなし非修飾RNA分子;
(iv)キャップなし修飾RNA分子
を包含し得る。
【0349】
キャップ付き及びキャップなしRNA分子
「キャップ付きRNA分子」は、5’-5’トリホスフェート結合又は類似物に結合している、グアノシン又は修飾グアノシン、例えば7-メチルグアノシン(m7G)にその5’エンドが結合しているRNA分子を指す。この定義は、5’キャップの最も広く受け入れられている定義に等しい。
【0350】
「キャップ類似物」は、5’-5’トリホスフェート結合に結合した、7-メチルグアノシン(m7G)に生物学的に同等である、及びしたがってまた、真核宿主における相当するメッセンジャーRNAのタンパク質発現を損なうことなしに置換することができるキャップを含む。
【0351】
キャップの例として、m7GpppN、m7GpppG、m7GppspG、m7GppspspG、m7GppspspG、m7Gppppm7G、m2
7’,3’-OGpppG、m2
7’,2’-OGpppG、m2
7’,2’-OGppspsG、又はm2
7’,2’-OGpppspsGが挙げられ得る。
【0352】
キャップ類似物の例は、グリセリル、反転デオキシヌクレオチド脱塩基残基(部分)、4’,5’メチレンヌクレオチド、1-(ベータ-D-エリトロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、アルファ-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、スレオ-ペントフラノスル ヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-反転ヌクレオチド部分、3’-3’-反転ヌクレオチド脱塩基部分、3’-2’-反転ヌクレオチド部分、3’-2’-反転ヌクレオチド脱塩基部分、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホルアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、3’ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又は架橋若しくは非架橋メチルホスホネート部分であることができる。
【0353】
キャップ類似物の他の例としては、逆転止めキャップ類似物(ARCA)、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、及び2-アジド-グアノシンが挙げられる。
【0354】
注目すべきことに、キャップ類似物の中で、いくつかは、タンパク質発現に好適であるが、他は、それに対してタンパク質発現を妨げ得る。そのような差異は、当業者によって理解される。
【0355】
RNAへの5’-キャップ又は5’-キャップ類似物の提供は、前記5’-キャップ又は5’-キャップ類似物の存在下でのDNAテンプレートのインビトロ転写によって達成され得、ここで、前記5’-キャップは、共転写により生成RNAストランド中へ組み込まれ得るか、又はRNAは、例えば、インビトロ転写によって生成され得、5’-キャップは、キャッピング酵素、例えば牛痘ウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合させられ得る。
【0356】
「キャップなしRNA分子」は、「キャップ付きRNA分子」の定義に属さない任意のRNA分子を指す。
【0357】
したがって、一般的な実施形態によれば、「キャップなしmRNA」は、その5’エンドが、5’-5’トリホスフェート結合を経由して、7-メチルグアノシンに結合していないmRNA、又は前に定義されたような類似物を指し得る。
【0358】
メッセンジャーRNAなどの、キャップなしRNA分子は、(5’)ρρρ(5’)、(5’)ρρ(5’)、(5’)ρ(5’)又は(5’)OH先端さえを有するキャップなしRNA分子であり得る。そのようなRNA分子は、それぞれ、5’ρρρRNA;5’ρρRNA;5’ρRNA;5’OHRNAと略され得る。
【0359】
非限定的に、キャップなしRNA分子の第1の塩基は、アデノシン、グアノシン、シトシン、又はウリジンのいずれかであり得る。
【0360】
RNAは、キャップなし5’-トリホスフェートを持たなくてもよい。そのようなキャップなし5’-トリホスフェートの除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成することができる。
【0361】
修飾及び非修飾RNA分子
RNAは、天然に存在するポリ(A)テールの延長若しくは切頭、又はRNAのコーディング領域に関係しないUTRの導入などの5’-若しくは3’-非翻訳領域(UTR)の変更、例えば、既存の3’-UTRと、アルファ2-グロビン、アルファ1-グロビン、ベータ-グロビン、例えばベータ-グロビン、例えばヒトベータ-グロビンなどの、グロビン遺伝子から誘導される3’-UTRの少なくとも1つ、例えば2つのコピーとの交換などの、更なる修飾を含み得る。
【0362】
「修飾RNA分子」は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド糖、又は修飾プリン若しくは修飾ピリミジンなどの、塩基を含有するRNA分子を指す。修飾ヌクレオシド又は塩基は、A、U、C又はG(それぞれ、ヌクレオシドに関してアデノシン、ウリジン、シチジン又はグアノシン;及び糖部分だけに言及する場合はアデニン、ウラシル、シトシン又はグアニン)ではない任意のヌクレオシド又は塩基であることができる。
【0363】
「非修飾RNA分子」は、修飾RNA分子の定義に等しくない任意のRNA分子を指す。
【0364】
用語「修飾及び非修飾」は、用語「キャップ付き及びキャップなし」とは、後者がRNAの5’-エンドでの塩基に特に関係しているので、異なって考えられる。
【0365】
修飾ヌクレオチドの存在は、安定性を高め得る及び/又は核酸の細胞毒性を低下させ得る。用語RNAの安定性は、分子の活性、量、又は数の半分を排除するのに必要とされる期間である、RNAの半減期に関係している。RNAの半減期は、その安定性を示し得る。RNAの半減期は、RNAの発現の継続時間に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは、延長した期間発現させられるであろうと予期することができる。
【0366】
非限定的に、修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド及び塩基の例は、国際公開第2015/024667A1号パンフレットに開示されている。修飾RNAは、骨格修飾、糖修飾又は塩基修飾を含む、修飾されたヌクレオチド、ヌクレオシド又は塩基を含有し得る。修飾塩基及び/又は修飾RNA分子は、当技術分野において公知であり、例えば、Warren et al.(“Highly Efficient Reprogramming to Pluripotency and Directed Differentiation of Human Cells with Synthetic Modified mRNA”;Cell Stem Cell;2010)に教示されており、その内容は参照により援用される。
【0367】
糖修飾には、ヌクレオチドの糖の化学修飾が含まれる。糖修飾は、多数の異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾する又は置き換えることができる、2’ヒドロキシ(OH)基の置換又は修飾に存し得る。
【0368】
「オキシ」、-2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシ又はアリールオキシ(-OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR;2’ヒドロキシルが、例えば、メチレン架橋によって、同じリボース糖の4’炭素に連結されている、「固定された」核酸(LNA);及びアミノ基(-O-アミノ、ここで、アミノ基、例えば、NRRは、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、若しくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノであることができる)又はアミノアルコキシが挙げられるが、それらに限定されない。
【0369】
「デオキシ」修飾は、水素、アミノ(例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、若しくはアミノ酸)を含む;又はアミノ基は、リンカー経由で糖に結合させることができ、ここで、リンカーは、原子C、N、及びOの少なくとも1個を含む。
【0370】
糖基はまた、リボース中の対応する炭素の立体化学配置とは反対のそれを有する少なくとも1個の炭素を含有することができる。したがって、修飾RNAは、例えば、糖としてのアラビノースを含有するヌクレオチドを含むことができる。
【0371】
骨格修飾は、ヌクレオチドの骨格のホスフェートが化学的に修飾される、修飾を含む。骨格のホスフェート基は、酸素原子の少なくとも1個を異なる置換基で置き換えることによって修飾することができる。更に、修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドは、本明細書に記載されるような修飾ホスフェートでの非修飾ホスフェートの完全置換を含むことができる。
【0372】
修飾ホスフェート基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート及びホスホトリエステルが挙げられるが、それらに限定されない。ホスホロジチオネートは、両方の非結合酸素が硫黄によって置き換えられている。ホスフェートリンカーはまた、結合酸素の窒素での置換(架橋ホスホロアミデート)、硫黄での置換(架橋ホスホロチオエート)及び炭素での置換(架橋メチレン-ホスホネート)によって修飾することができる。
【0373】
塩基修飾は、ヌクレオチドの塩基部分の化学修飾を含む。これに関連して、ヌクレオチド類似物又は修飾は、例えば、真核細胞におけるRNA分子の転写及び/又は翻訳に好適であるヌクレオチド類似物から選択される。修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドは、核酸塩基部分において修飾することができる。例えば、ヌクレオシド及びヌクレオチドは、主要溝面で化学的に修飾することができる。主要溝化学修飾は、アミノ基、チオール基、アルキル基、又はハロ基を含むことができる。修飾塩基は、修飾プリン塩基又は修飾ピリミジン塩基であり得る。修飾プリン塩基の例としては、ヒポキサンチン;キサンチン;7-メチルグアニン;イノシン;キサントシン及び7-メチルグアノシンなどの、修飾アデノシン及び/又は修飾グアノシンが挙げられる。修飾ピリミジン塩基には、5,6-ジヒドロウラシル;シュードウリジン;5-メチルシチジン;5-ヒドロキシメチルシチジン;ジヒドロウリジン及び5-メチルシチジンなどの、修飾シチジン及び/又は修飾ウリジンが含まれる。
【0374】
例えば、ヌクレオチド類似物/修飾物は、以下の塩基修飾物:2-アミノ-6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、2-アミノプリン-リボシド-5’-トリホスフェート;2-アミノアデノシン-5’-トリホスフェート、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-トリホスフェート、2-チオシチジン-5’-トリホスフェート、2-チオウリジン-5’-トリホスフェート、2’-フルオロチミジン-5’-トリホスフェート、2’-O-メチルイノシン-5’-トリホスフェート 4-チオウリジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルシチジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、5-メチルウリジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、6-アザシチジン-5’-トリホスフェート、6-アザウリジン-5’-トリホスフェート、6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、7-デアザアデノシン-5’-トリホスフェート、7-デアザグアノシン-5’-トリホスフェート、8-アザアデノシン-5’-トリホスフェート、8-アジドアデノシン-5’-トリホスフェート、ベンズイミダゾール-リボシド-5’-トリホスフェート、N1-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、N1-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、N6-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、O6-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、シュードウリジン-5’-トリホスフェート、又はピューロマイシン-5’-トリホスフェート、及びキサントシン-5’-トリホスフェートから選択され得る。
【0375】
修飾ヌクレオシドは、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、l-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン/4-メトキシ-シュードウリジン、及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンからなるリストから選択され得る。
【0376】
修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドには、5-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン、及び4-メトキシ-l-メチル-シュードイソシチジンが含まれ得る。
【0377】
修飾ヌクレオシドには、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、及び2-メトキシ-アデニンが含まれ得る。
【0378】
修飾ヌクレオシドには、イノシン、1-メチル-イノシン、ウィオシン(wyosine)、ウィブトシン(wybutosine)、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、l-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、及びN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンが含まれ得る。
【0379】
マスクされていないポリ-A配列を有するRNAは、マスクされたポリ-A配列を有するRNAよりも効率的に翻訳され得る。「マスクされていないポリ-A配列」は、RNA分子の3’エンドでのポリ-A配列がポリ-A配列のAで終了している、及びポリ-A配列の、3’エンドに位置するA以外に、すなわち、下流にヌクレオチドが続かないことを意味する。更に、約120塩基ペアの長いポリ-A配列は、最適の転写産物安定性及びRNAの翻訳効率をもたらす。
【0380】
それ故に、RNAの安定性及び/又は発現を高めるために、ポリ-A配列は、例えば、10~500、例えば30~300、例えば65~200、例えば100~150アデノシン残基の長さを有するために、修飾され得る。ポリ-A配列は、およそ120アデノシン残基の長さを有し得る。RNAの安定性及び/又は発現を更に高めるために、ポリ-A配列はマスクされていないことができる。
【0381】
RNA分子の3’-非翻訳領域への3’-非翻訳領域(UTR)の組込みは、翻訳効率の向上をもたらすことができる。相乗効果は、そのような3’-非翻訳領域の2つ以上を組み込むことによって達成され得る。3’-非翻訳領域は、それらが導入されるRNAに自己移植性であるか又は非相同であり得る。3’-非翻訳領域は、ヒトβ-グロブリン遺伝子に由来し得る。
【0382】
上記の修飾、すなわち、ポリ-A配列の組込み、ポリ-A配列の脱マスクと、少なくとも1つの3’-非翻訳領域の組込みとの組合せは、RNAの安定性及び翻訳効率の向上に相乗影響を及ぼし得る。
【0383】
RNAの発現は、更に、ペプチド又はタンパク質をエンコードする配列の修飾によって、例えばRNA安定性を高めるためのGC含有量を増やすことによって及び/又は細胞における翻訳を高めるためのコドン最適化を行うことによって増加させられ得る。
【0384】
LNPにおける核酸
本明細書に開示される方法に従って得られる凍結又は凍結乾燥LNPは、mRNAなどの核酸を含有する。核酸は、治療薬をエンコードし得る。mRNAなどの核酸は、LNPでカプセル化され得る。
【0385】
LNPにおける核酸のカプセル化率は、当技術分野において公知の任意の方法によって測定され得る。例えば、実施例セクションに開示されるRiboGreenアッセイにおけるような蛍光プローブが用いられ得る。
【0386】
カプセル化率は、LNPの組織構造の安定性又は維持への凍結又は凍結乾燥方法の潜在的影響を評価するために用いられ得る。
【0387】
凍結ステップでのLNPは、RiboGreenアッセイによって測定されるように、液体組成物中のLNPにおける、mRNAなどの核酸の総量の約5%以上、又は約4%以上、又は約3%以上、又は約2%以上、又は約1%以上の、総量の、mRNAなどの、核酸を含有し得る。
【0388】
凍結ステップでのLNPは、液体組成物中のLNPの核酸カプセル化率の25以上%、又は22%以上、20%以上のmRNAなどの、核酸カプセル化率を有する。
【0389】
乾燥ステップでのLNPは、+5℃で保管される場合に、3ヶ月で、T0時の乾燥ステップでのLNPの核酸カプセル率の、5%以上、又は2%以上の、RiboGreenアッセイによって測定されるような、mTNAなどの、核酸カプセル化率を有し得る。+5℃で3ヶ月保管後の5%未満のLNPにおけるmRNAなどの核酸カプセル化率の変化は、保管期間中のLNPの低い又は減少した構造変化を示し得る。
【0390】
乾燥ステップでのLNPは、+5℃で保管される場合に、6ヶ月で、T0時の乾燥ステップでのLNPにおける核酸の総量の、約5%以上、又は約2%以上の、RiboGreenアッセイによって測定されるような、mRNAなどの、核酸の総量を含有し得る。5%未満の+5℃で6ヶ月保管後のLNPにおける総核酸量の変化は、保管期間中のLNPの低い又は減少した構造変化を示し得る。
【0391】
乾燥ステップでのLNPは、+5℃で保管される場合に、6ヶ月で、T0時の乾燥ステップでの核酸カプセル率の10%以上、又は5%以上の、RiboGreenアッセイによって測定されるような、mTNAなどの、核酸カプセル化率を有し得る。10%未満の又は5%以上の+5℃で6ヶ月保管後のLNPにおける核酸カプセル化率の変化は、保管期間中のLNPの低い又は減少した構造変化を示し得る。
【0392】
乾燥ステップでのLNPは、+5℃で保管される場合に、11ヶ月で、T0時の乾燥ステップでのLNPにおける核酸の総量の約10%以上、又は約5%以上の、RiboGreenアッセイによって測定されるような、mRNAなどの、核酸の総量を含有し得る。10%未満の+5℃で11ヶ月保管後のLNPにおける総核酸量の変化は、保管期間中のLNPの低い又は減少した構造変化を示し得る。
【0393】
乾燥ステップでのLNPは、+5℃で保管される場合に、11ヶ月で、T0時の乾燥ステップでの核酸カプセル率の10%以上、又は5%以上の、RiboGreenアッセイによって測定されるような、mTNAなどの、核酸カプセル化率を有し得る。10%未満又は5%以上の+5℃で3ヶ月保管後のLNPにおける核酸カプセル化率の変化は、保管期間中のLNPの低い又は減少した構造変化を示し得る。
【0394】
治療薬
核酸は、治療薬であり得るか又は治療薬をエンコードし得る。いくつかの実施形態において、核酸は、治療薬をエンコードするmRNAであり得る。
【0395】
「治療薬」は、それが投与される個人において、病状又は病状の症状の発生のリスクを防ぐ若しくは減らすために又は病状の強さを治す、若しくは低減するために、又は病状の少なくとも1つの症状を治す若しくは低減するために提案される有効成分を指すことを意図する。「個人」は、ヒト及び動物を指すことを意図する。
【0396】
治療薬は、ペプチド、タンパク質、核酸であり得る。いくつかの実施形態において、治療薬は核酸であり得る。核酸は、様々な治療ペプチド又はタンパク質をエンコードし得る。
【0397】
治療薬は、ゲノム編集ポリペプチド、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、抗体、酵素、構造タンパク質、血液タンパク質、ホルモン、転写因子、又は抗原であり得る。
【0398】
一実施形態において、治療薬はゲノム編集ポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、ゲノム編集ポリペプチドは、CRISPR/Cas9などの、CRISPRタンパク質、制限酵素、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクター・タンパク質(TALEヌクレアーゼ、TALENなどの、TALE)、又はジンク・フィンガータンパク質(ZFヌクレアーゼ、ZFNなどの、ZF)である。例えば、国際公開第2020/139783号パンフレットを参照されたい。
【0399】
治療薬は、免疫反応を刺激する若しくは阻害する、細胞増殖を刺激する若しくは防ぐ、又は炎症を低減するのに好適なサイトカイン又はケモカインであり得る。好適なサイトカイン又はケモカインの例としては、インスリン、インスリン様成長因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33などの、サイトカイン、インターフェロン(IFN)アルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IFNオメガ若しくはIFNタウ、例えばTNFアルファ及びTNFベータ、TNFガンマなどの、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF関連アポトーシス誘導配位子(TRAIL);リンホトキシン-β(LT-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、及び血管内皮成長因子(VEGF)などの、成長因子が挙げられるが、それらに限定されない。エリスロポエチン又は任意の他のホルモン成長因子の産生も含まれる。
【0400】
いくつかの実施形態において、治療薬は抗体であり得る。本明細書で用いるところでは、用語「抗体」は、2つの軽鎖ポリペプチド及び2つの重鎖ポリペプチドを含む全抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントを指す。抗体は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す単クローン性抗体(例えば、全長単クローン性抗体)であり得る。抗原結合性フラグメントは、一本鎖抗体、一本鎖Fvフラグメント(scFv)、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、又はF(ab’)2フラグメントであり得る。抗体は、それらに対して防護又は治療免疫反応が望まれる、腫瘍抗原又は感染病抗原、例えば、腫瘍細胞によって発現される抗原を識別し得る。抗体の例としては、例えば、アダリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、イピリムマブ、トシリズマブ、カナキヌマブ、イトリズマブ、又はトラロキヌマブが挙げられる。
【0401】
いくつかの実施形態において、治療用ペプチド又はタンパク質は、対象者における代謝又は成長を調整するための望ましい使用を有する酵素であり得る。いくつかの実施形態において、酵素は、不在である又は機能不全である内在性酵素に取って代わるために投与され得る。いくつかの実施形態において、酵素は、代謝性蓄積症を治療するために使用され得る。代謝性蓄積症は、内在性酵素の不在又は機能不全のために代謝産物の全身貯留によって生じる。そのような代謝産物には、脂質、糖タンパク質、及びムコ多頭が含まれる。酵素補充療法の例としては、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、MPS II(ハンター症候群)、MPS VI及び糖原病タイプIIなどの、リソソーム病が挙げられる。
【0402】
構造タンパク質は、例えば、コラーゲン、フィブロイン、フィブリノゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、及びミオシンであり得る。
【0403】
血液タンパク質は、例えば、トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノゲン活性化因子、タンパク質C、フォン・ヴィレブランド因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン 顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は修飾第VIII因子、抗凝血剤等であり得る。
【0404】
ホルモンは、例えば、インスリン、甲状腺ホルモン、ゴナドトロピン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドパミン、ウシソマトトロピン、レプチン等であり得る。
【0405】
転写因子(TF)は、特異的なDNA配列を識別してクロマチン及び転写を制御し、ゲノムの発現を導く複雑系を形成する。幾つかのファミリーの転写因子が存在し、各ファミリーのメンバーは、構造特性を共有し得る。転写因子の例として、ヘリックス-ターン-ヘリックス(例えば、Oct-1)、ヘリックス-ループ-ヘリックス(例えば、E2A)、ジンクフィンガー(例えば、糖質コルチコイドオ受容体、GATAタンパク質)、塩基性タンパク-ロイシンジッパー[環状AMP応答要素結合因子(CREB)、活性化タンパク質-1(AP-1)]、又はβ-シートモチーフ[例えば核因子-κB(NF-κB)]が挙げられ得る。
【0406】
治療薬は、癌の治療において又は感染病(例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生動物又は寄生虫感染症)の治療において免疫反応の引き金となるのに好適な抗原であり得る。
【0407】
いくつかの実施形態によれば、抗原を含む本明細書に開示されるようなLNPを含有する組成物は、それ故に、免疫原性組成物又はワクチン組成物であり得る。
【0408】
抗原含有組成物は、それらの価の点で変わり得る。価は、組成物中の抗原成分の数を指す。免疫原性組成物又はワクチン組成物は、一価又若しくは多価、すなわち、二価、三価組成物、又はそれ以上であり得る。多価組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上の抗原若しくは抗原部分(例えば、抗原ペプチド等)を含み得る。抗原成分は、単一のポリヌクレオチド上に又は別個のポリヌクレオチド上に存在し得る。
【0409】
本明細書に開示されるような組成物は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生生物などの、感染性因子との接触から生じる感染症を防護する、処理する、又は治療するために使用され得る。
【0410】
本明細書に開示されるような組成物は、癌疾病を防護する、処理する、又は治療するために使用され得る。
【0411】
いくつかの実施形態によれば、核酸は、細菌抗原、ウイルス抗原、及び腫瘍抗原からなる群の中で選択される少なくとも1つの抗原をエンコードし得る。
【0412】
細菌抗原
細菌はグラム陽性菌又はグラム陰性菌であることができる。細菌抗原は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルガドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、イヌ流産菌(Brucella canis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンビロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア肺炎(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリジェンス(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、クアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase Negative Staphylococcus)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロトキシン産生性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)(ETEC)、病原性大腸菌(enteropathogenic E.coli)、大腸菌(E.coli)0157:H7、エンテロバクター種(Enterobacter sp.)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレプシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス種(Proteus sps.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcesens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、及びペスト菌(Yersinia pestis)から得られ得る。
【0413】
ウイルス抗原
ウイルス抗原は、アデノウイルス;単純ヘルペス、1型;単純ヘルペス、2型;脳炎ウイルス、乳頭腫ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス;エプスタイン・バーウイルス;ヒトサイトメガロウイルス;ヒトヘルペスウイルス、8型;ヒト乳頭腫ウイルス;BKウイルス;JCウイルス;天然痘;ポリオウイルス、肝炎Bウイルス;ヒトボカウイルス;パルボウイルスB19;ヒトアストロウイルス;ノーウォークウイルス;コクサッキーウイルス;肝炎Aウイルス;ポリオウイルス;鼻炎ウイルス;重症急性呼吸器症候群ウイルス;肝炎Cウイルス;黄熱ウイルス;テング熱ウイルス;ウエストナイルウイルス;風疹ウイルス;肝炎Eウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス、A型又はB型;グアナリトウイルス;ジュニンウイルス;ラッサ熱ウイルス;マチュポウイルス;サビアウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;エボラウイルス;マールブルグウイルス;麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;パラインフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス(RSV);ヒトメタニューモウイルス;ヘンドラウイルス;ニパウイルス;狂犬病ウイルス;肝炎D;ロタウイルス;オルビウイルス;コルチウイルス;ハンタウイルス、中東呼吸器コロナウイルス;新型コロナ(SARS-Cov-2)ウイルス;チクングンヤ熱ウイルス;ジカウイルス;パラインフルエンザウイルス;ヒトエンテロウイルス;ハンタウイルス;日本脳炎ウイルス;豚水疱疹ウイルス;東部ウマ脳炎源(Eastern equine encephalitisor);又はバンナウイルスから得られ得る。
【0414】
一実施形態において、抗原は、インフルエンザA若しくはインフルエンザBウイルスの株又はそれらの組合せからである。インフルエンザA若しくはインフルエンザBの株は、鳥、豚、馬、犬、ヒト又は非ヒト霊長類と関連し得る。
【0415】
核酸は、ヘマグルチニンタンパク質又はそれのフラグメントをエンコードし得る。ヘマグルチニンタンパク質は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、Hll、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18、又はそれらのフラグメントであり得る。ヘマグルチニンタンパク質は、頭部ドメイン(HA1)を含んでも含まなくてもよい。或いはまた、ヘマグルチニンタンパク質は、細胞質ドメインを含んでも含まなくてもよい。
【0416】
実施形態において、ヘマグルチニンタンパク質は、短縮ヘマグルチニンタンパク質である。短縮ヘマグルチニンタンパク質は、膜透過ドメインの部分を含んでも含まなくてもよい。
【0417】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、H1N1、H3N2、H7N9、H5N1及びH10N8ウイルス又はB型ウイルスからなる群から選択され得る。
【0418】
別の実施形態において、抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)からであり得る。好適なRSV抗原は、RSV A及び/又はRSV B型からであり得る。RSV抗原は、例えば、融合糖タンパク質Fタンパク質、又は接着タンパク質Gタンパク質であり得る。
【0419】
別の実施形態において、抗原は、SARS-Cov-1ウイルス、SARS-Cov-2ウイルス、又はMERS-Covウイルスなどのコロナウイルスからであり得る。いくつかの実施形態において、抗原は、SARS-Cov2からのスパイクタンパク質などの、SARS-Cov2抗原であり得る。
【0420】
腫瘍抗原
抗原は、腫瘍抗原、すなわち、癌細胞において発現するタンパク質又はペプチドなどの癌細胞の構成成分であり得る。用語「腫瘍抗原」は、限定された数の組織及び/若しくは器官において又は特異的な発育段階において通常の状態下で特異的に発現する並びに少なくとも1つの腫瘍若しくは癌組織中に発現する若しくは異常に発現するタンパク質に関係している。腫瘍抗原には、例えば、分化抗原、例えば細胞型特異分化抗原、すなわち、一定の分化段階で、ある種の細胞型において通常の状態下で特異的に発現するタンパク質、及び生殖細胞系列特異抗原が含まれる。例えば、腫瘍抗原は、それがその中で発現する癌細胞によって提示される。
【0421】
例えば、腫瘍抗原には、癌胎児性抗原、1-フェトタンパク質、イソフェリチン、及び胎児スルホ糖タンパク質、cc2-H-フェロタンパク質及びγ-フェトプロテインが含まれ得る。
【0422】
本開示に有用であり得る腫瘍抗原についての他の例は、p53、ART-4、BAGE、ベータ-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CD 4/m、CEA、CLAUDIN-6、CLAUDIN-18.2及びCLAUDIN-12などの、クローディンファミリーの細胞膜表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1ー、G250、GAGE、GnT-V、Gapl OO、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、例えばMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A1 1、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/Melan-A、MC1 R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、-2、-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl 90マイナーBCR-abL、Pm l/RARa、PRAME、プロティナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、Rul又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVrVIN、TEL/AMLl、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/1NT2、TPTE及びWT、例えばWT-1である。
【0423】
医薬組成物及びそれの使用
本明細書に開示される方法に従って得られる凍結乾燥又は凍結LNPは、医薬組成物に使用され得る。医薬組成物は、それ自体としての又は少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と更に配合された凍結乾燥又は凍結LNPを含み得る。
【0424】
本開示は、薬剤として使用するための、本明細書に開示されるような方法に従って得られる及び少なくとも1種の核酸を含む凍結乾燥又は凍結LNPに関する。
【0425】
本開示は、少なくとも核酸、並びに、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、及びステロイドアルコール、又はそれのエステル、任意選択的にPEG-脂質を含む及び薬剤として使用するための、少なくとも核酸を含む凍結乾燥又は凍結LNPであって、凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにある、又は凍結LNPが凍結マイクロペレットにあるLNPに関する。
【0426】
薬剤、又は医薬組成物の製造方法は、少なくとも、本明細書に開示されるような方法に従って凍結乾燥LNPを調製するステップであって、LNPが少なくとも核酸を含むステップを含み得る。
【0427】
薬剤、又は医薬組成物の製造方法は、少なくとも、本明細書に開示されるような方法に従って凍結LNPを調製するステップであって、LNPが少なくとも核酸を含むステップを含み得る。
【0428】
本方法は、更に、凍結乾燥又は凍結LNPを包装するステップを含み得る。本方法は、更に、凍結乾燥又は凍結LNPを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と配合するステップを含み得る。本方法は、更に、凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に再懸濁させるか又は凍結LNPを解凍するステップを含み得る。
【0429】
「薬学的に許容される溶媒」は、凍結乾燥LNPを再懸濁させるか又は溶解させるのに好適な、及びそれを必要としている個人へ腸内投与又は非経口投与を薬学的に許容される任意の溶媒であり得る。薬学的に許容される溶媒は、注射用の水又は食塩水、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、又はリン酸緩衝液などの緩衝液であり得る。
【0430】
医薬組成物は無菌であり得る。
【0431】
医薬組成物及び試剤の配合及び製造のための一般的なガイドラインは、例えば、RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy,21St Edition,A.R.Gennaro;Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,Md.,2006において入手可能である。LNPの1種以上の成分と適合しない可能性がある賦形剤に関する限りを除いては、任意の薬学的に許容される賦形剤が、医薬組成物に使用され得る。
【0432】
使用され得る例示的な薬学的に許容される賦形剤は、注射用の水、又はアミノ酸緩衝液(ヒスチジン、アルギニン、グリシン、プロリン、グリシルグリシン)、食塩水緩衝液(無機塩NaCI、塩化カルシウム)、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液などの、生理食塩水などの、希釈剤;デキストロース、グリセロール、エタノール、スクロース、トレハロース、マンニトールなどの糖若しくは多価アルコール;ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロクサマー188などの界面活性剤等、並びにそれらの組合せから選択され得る。多くの場合に、糖、多価アルコール、又は塩化ナトリウムなどの、等張試剤を組成物中に含めることが好ましいであろうし、製剤はまた、トリプタミンなどの酸化防止剤及びTween 20又は80などの安定剤、エタノール、又はイソプロパノールなどの、一価アルコール、及びグリコールなどの多価アルコールなどの他の溶媒並びに大豆油、ココナツオイル、オリーブオイル、サフラワーオイル、綿実油などの食用油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの油状エステル;バインダー、補助剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、崩壊剤、潤滑剤、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、着色剤、香味料、防腐剤、酸化防止剤、加工剤、薬物送達調整剤、及びリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖類、二糖類、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールなどのエンハンサーを含有し得る。薬学的に許容される賦形剤はまた、生理的に適合性である任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤等を含み得る。
【0433】
凍結又は凍結乾燥LNPは、組成物の形態(固体又は液体)、治療される個人、LNP中に含有される治療薬の性質などの、当技術分野において公知のパラメーターに応じて、任意の好適なルートによって投与され得る。
【0434】
例えば、得られた凍結又は凍結乾燥LNP入りの医薬組成物は、全身的に、経口で、舌下で、鼻腔的に、皮内に、又は皮下に投与され得る。
【0435】
水溶液での非経口投与について、例えば、溶液は、必要ならば好適に緩衝液で処理され、液体希釈剤は、先ず、十分な食塩水又はグルコースで等張の状態にされるべきである。これらの水溶液は、とりわけ、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に好適である。これに関連して、用いることができる無菌の水性媒体は、当業者に公知であろう。
【0436】
いくつかの実施形態において、得られた凍結又は凍結乾燥LNP入りの医薬組成物は、皮下投与に好適であり得る。
【0437】
凍結又は凍結乾燥LNPを含む医薬組成物は、多室注射器などの、薬物組合せ装置であって、その中で少なくとも1つの室が、固体形態の医薬組成物を含有し、少なくとも1つの室が、組成物を懸濁させる又は溶解させるための薬学的に許容される溶媒を含有する装置によって投与され得る。
【0438】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる及び薬剤として使用するための、少なくとも核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0439】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結乾燥又は凍結LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、及び、薬剤として使用するための、少なくとも核酸を含むLNPに関する。
【0440】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような、並びにインフルエンザA及び/又はインフルエンザBウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するためのインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0441】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、並びにインフルエンザA及び/又はインフルエンザBウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するためのインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0442】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような、並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するための呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0443】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルス感染を防ぐ又は治療するのに使用するための呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0444】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような、並びにインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスに抗する免疫原性組成物として使用するためのインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0445】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、並びにインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスに抗する免疫原性組成物として使用するためのインフルエンザAウイルス及び/又はインフルエンザBウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0446】
その目的の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示されるような、並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスに抗する免疫原性組成物として使用するための呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0447】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、並びに呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスに抗する免疫原性組成物として使用するための呼吸器合胞体Aウイルス及び/又は呼吸器合胞体Bウイルスからの抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0448】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる、及びSARS-Cov-2感染を防ぐ又は治療するのに使用するためのSARS-Cov2抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0449】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、及びSARS-Cov-2感染を防ぐ又は治療するのに使用するためのSARS-Cov2抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0450】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる、及びSARS-Cov2に抗する免疫原性組成物として使用するためのSARS-Cov2抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0451】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、及びSARS-Cov2に抗する免疫原性組成物として使用するためのSARS-Cov2抗原をエンコードする少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0452】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような方法に従って得られる、及び薬剤の製造における少なくとも1種の核酸を含む凍結又は凍結乾燥LNPに関する。
【0453】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含む凍結又は凍結乾燥LNPであって、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、及び薬剤の製造における少なくとも1種の核酸を含むLNPに関する。
【0454】
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要としている個人における疾患の予防及び/又は治療方法であって、本方法が、少なくとも、
- 本明細書に開示される方法に従って得られる凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に再懸濁させるか又は凍結LNP(凍結又は凍結乾燥LNPは、前記疾患に対して活性であると推定される少なくとも1種の核酸を含む)を解凍して再懸濁又は解凍LNPを得るステップと、
- 再懸濁又は解凍LNPを前記個人に投与するステップと
を含む方法に関する。
【0455】
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要としている個人における疾患の予防及び/又は治療方法であって、本方法が、少なくとも
- 凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に再懸濁させるか又は凍結LNP(LNPは、少なくとも、脂質成分として、カチオン性のイオン化可能な脂質、中性脂質、ステロイドアルコール、又はそれのエステル、及び任意選択的にPEG-脂質を含み、凍結LNPが凍結マイクロペレットにあり、又は凍結乾燥LNPが凍結乾燥マイクロペレットにあり、凍結又は凍結乾燥LNPは、前記疾患に対して活性であると推定される少なくとも1種の核酸を含む)を解凍して再懸濁又は解凍LNPを得るステップと、
- 再懸濁又は解凍LNPを前記個人に投与するステップと
を含む方法に関する。
【0456】
いくつかの実施形態において、核酸はRNAであり得る。いくつかの実施形態において、RNAはmRNAであり得る。
【0457】
個人へのLNPの送達方法であって、(i)LNPの溶液を得るために凍結乾燥LNPを薬学的に許容される溶媒に懸濁させる若しくは溶解させるか又は凍結LNPを解凍するステップと、(ii)LNPの溶液を、それを必要としている個人に投与するステップとを含む方法も開示される。ステップ(ii)は、理想的には、ステップ(i)の24時間以内、例えば、液体製剤でのLNPの再構成後の12時間以内、6時間以内、3時間以内、又は1時間に行われる。
【0458】
本開示は、特に明記しない限り、又は矛盾若しくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙されるクレームの少なくとも1つからの、少なくとも1つの制限、要素、条項、記述用語等が、同じ基本クレームに従属する別のクレーム(又は、関連する、任意の他のクレームのような)へ導入される、全ての変化、組合せ、及び並べ替えを包含することが理解されるべきである。要素がリストとして、例えば、マーカッシュ群又は同じようなフォーマットで提示される場合、要素の各部分群も開示され、任意の要素をその群から除去できることが理解されるべきである。一般に、本開示、又は本開示の態様が、特定の要素、特徴等を含むと言われる場合、それらはまた、そのような要素、特徴等からなる、又は本質的になる実施形態を包含することが理解されるべきである。簡潔にするために、それらの実施形態は、あらゆる場合に、本明細書では文字通り具体的に示されてはいない。本開示のいかなる実施形態又は態様も、具体的な排除が明細書において列挙されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲から明確に排除できることも理解されるべきである。本開示の背景を記載するために及びその実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書に言及される刊行物及び他の参考資料は、参照により本明細書によって援用される。
【0459】
以下の実施例は、限定ではなく例示の目的のために提供される。
【実施例】
【0460】
実施例1:原材料及び方法
mRNA-含有脂質ナノ粒子(LNP)の調製
LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質としてのDLin-MC3-DMA(つまりSAI Life Science製の(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート;中性脂質としてのDSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン-Avanti-Polar Lipids:参照記号850365)、ステロイドアルコールとしてのコレステロール-Avanti-Polar Lipids 参照番号700000P、及びPEG-脂質としてのDMG-PEG 2000 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000] Avanti Polar Lipids 参照番号880150Pを使って調製した。
【0461】
LNPの脂質成分をエタノールへ溶解させた。中性脂質:ステロイドアルコール:PEG-脂質:イオン化可能なカチオン性脂質のモル比は、10:38.5:1.5:50であった。
【0462】
カプセル化mRNAは、非複製型mRNA発光酵素(mRNA-Luc;参照番号:L-7602 TriLinkTM Biotechnologiesであった。900μg/mLのmRNAの濃度でのクエン酸緩衝液(pH 4.0)中でmRNAを調製した。
【0463】
mRNAと脂質とを3:1の比率で混合した。全ての実験で用いられた装入比は6:1であった。
【0464】
本明細書で以下に記載される方法に従ってLNPを調製した。
【0465】
精製及び配合後に、100μg/mLのmRNA及び3mg/mLの全脂質でのLNPの原液を得た。
【0466】
有機相の調製
LNP製剤用の6mLの有機相の調製
46mgのDSPC、24mgのDMG-PEG 2000及び88mgのコレステロールを3971μLのエタノールで溶解させた。次いで1872μLのDLin-MC3-DMA原液(エタノール中100mg/mL)を添加して20mg/mLの脂質相溶液を得た。
【0467】
水相の調製
LNP用の1.8mLの水相の調製
水相に使用されるmRNA濃度を、6/1(N/P=6/1)の脂質窒素/mRNAホスフェート装入比を得るために計算した。この濃度は、1μgのmRNAが0.003μmolのホスフェートに相当すると仮定してイオン化可能なカチオン性脂質濃度から決定した。NanoAssemblR(登録商標)(Precision Nanosystem製のNanoassemblr Benchtop;Belliveau et al.,Molecular Therapy-Nucleic Acids(2012))で3:1の水溶液対エタノール溶液の比率を使用する場合に1.5mLの水溶液が2mLのLNPを製造するために必要とされるので、必要とされるmRNA濃度は900μg/mLであると計算された。
【0468】
mRNA溶液を50mMクエン酸緩衝液pH4.0中で調製した。
【0469】
LNP調製
製造業者の勧告に従ってNanoAssemblR装置を用いてLNPを調製した。
【0470】
水相及び有機相を、それぞれ、製造業者の勧告に従ってNanoAssemblRに好適な注射器でロードした。流量を、比率:3:1及び全流量:4ml/分にセットアップした。水相と脂質相とを次いで混合してLNPを得た。
【0471】
LNP精製及び収穫
得られたLNPを、クエン酸緩衝液(50mM-pH4.0)に対して透析して残留エタノールを除去した。
【0472】
凍結及び凍結乾燥用のLNP含有製剤の調製
最終生成物の保管の前に、上に開示されたように調製されたLNPに賦形剤を添加することによって凍結及び凍結乾燥用のLNP製剤を調製した。
【0473】
先ず、クエン酸緩衝液でカプセル化プロセスからのエタノールを除去するために透析ステップを実施した。次いで、第2の透析をトリス緩衝液(50mM)、pH 7.5で行った。次いで、抗凍結剤としてのトレハロースを添加した(500mM)。配合LNPを次いで無菌濾過し(0.22μm)、その後バイアルに満たし、凍結又は凍結乾燥させた。
【0474】
凍結プロセス
mRNAを含有する配合LNPを、2つのタイプの凍結プロセス:バイアルにおける凍結又は噴霧凍結による凍結に供した。
【0475】
バイアルにおける凍結は、0.5mLの配合LNP(上に示されたように得られた)をリオストッパー(West参照番号7002-4333)付きの3mLのタイプIガラスバイアル中に満たすことによって実施した。バイアルを、液体プロセスについてはマイナス80℃又はマイナス-20℃で凍結させた。バイアルを、大気圧下に-45℃で調節される凍結乾燥機棚上で凍結させた。凍結バイアルを、それぞれ、マイナス80℃又はマイナス20℃で、使用まで保管した。
【0476】
噴霧凍結は、液体窒素の直接噴霧/蒸発によって冷却されるジャケット付き室(小球化塔)中で配合LNPの液体ジェットを小球化すること(電磁気液滴流ノズル-Meridion Technologies GmbH,Muellheim,Germany+小球化塔Gatt,Binzen,Germany)によって実施した(Adali et al.,Processes 2020,8,709;Wanning et al.,Int J Pharm.2015;488(1-2):136-153;国際公開第2013/050156 A1号パンフレット;国際公開第2013/050159 A1号パンフレット;又は国際公開第2016/012414 A1号パンフレット)。冷却室中の雰囲気を、マイナス105℃よりも下に冷却し、液体流量は20mL/分であり、振動数は4000Hzであり、ノズル径は300μmであった。塔の高さは160cmであった。凍結マイクロペレット(又はマイクロビーズ)を-50℃のあらかじめ冷やされたトレイ上に注ぎ、50μBar(凍結乾燥機SMH90,Elancourt,France)で凍結乾燥させた。凍結マイクロペレットを収穫し、使用までマイナス80℃で保管した。
【0477】
凍結乾燥(Freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))プロセス
mRNAを含有するLNPを2つのタイプの凍結乾燥プロセス:バイアルにおける凍結乾燥(又は従来の噴霧凍結)及び噴霧凍結乾燥(又は小球化:小滴の凍結、次いで乾燥)に供した。
【0478】
バイアルにおける凍結乾燥(従来の凍結乾燥)
バイアルにおける凍結は、0.5mLの配合LNP(上に示されたように得られた)をリオストッパー(West参照番号7002-4333)付きの3mLのタイプIガラスバイアル中に満たすことによって実施した。バイアルを、次いで、以下の通りScientific Lyostar凍結乾燥機で凍結乾燥させた。
【0479】
【0480】
配合LNPの凍結乾燥ケーキを得、分析前に+5℃で、0、1、2、3、6又は11ヶ月間保管した。
【0481】
噴霧凍結乾燥プロセス
噴霧凍結は、上に示されたように小球化すること(電磁気液滴流発生機)によって実施した。
【0482】
凍結マイクロペレットを収穫し、次いで凍結乾燥機棚上で乾燥させた。凍結マイクロペレットを-50℃のあらかじめ冷やされたトレイ上に注ぎ、50μBar(凍結乾燥機USIFROID SMH90,Elancourt,France)で凍結乾燥させた。
【0483】
凍結乾燥マイクロペレットを収穫し、粉末Quantos用量システム-Mettler Toledo,Columbus,Ohio,US)付きの、リオストッパー(West参照番号7002-4333)付きの5mLのタイプIガラスバイアル(100mg/バイアル)中に満たし、使用まで+5℃で保管した。凍結乾燥LNPを分析前に0、1、2、3、6又は11ヶ月間保管した。
【0484】
LNPの再懸濁
凍結LNPを室温で解凍した。
【0485】
ここで後に記載されるような分析測定又はインビボアッセイの前に、凍結乾燥LNPを注射用の水に再懸濁させて100μg/mL RNAでの再懸濁LNP溶液を得た。
【0486】
分析法
以下の分析法を用いて凍結及び凍結乾燥プロセス後のLNPを特性化した。
【0487】
LNPサイズ及び濃度
LNPのサイズ及び濃度をNTA(ナノ粒子トラッキング解析)によって測定した。
【0488】
製造業者の勧告に従ってNanoSight NS300(Malvern)及びNano Sample Assistant(Malvern)装置でNTA測定を実施した。上に示されたように、凍結LNPを室温で解凍し、凍結乾燥LNPを水(0.5mL)に再懸濁させた。Perkin Elmer製の希釈ロボットJanusで、再懸濁又は解凍LNPをトリス緩衝液(トリス 50mM)に更に希釈し(1/2000)、96ウェルプレートに分配した。LNPのサイズ(平均サイズ及びモードサイズ)並びに濃度を次いで測定した(カメラレベル 15-検出閾値 5)。SURF-CALTM Particle Size Standard(Thermo Scientific PD-047B-サイズ 47±2nm;濃度 1×1010粒子/mL)を対照として使用した(カメラレベル 15-検出閾値 3)。ここで提示されるNTA結果は、3通り測定におけるサンプルの平均結果である。
【0489】
0.22μm濾過後及び凍結又は凍結乾燥前に得られたLNPを対照として使用した。
【0490】
RNAカプセル化率
カプセル化mRNAの百分率及びLNT中のmRNA濃度を、製造業者の勧告(Invitrogen Detection Technologies)に従ってQuant-iT Ribogreen RNA試薬キットを使用して測定し、蛍光マイクロプレートリーダーで定量化した。RiboGreen RNA標準(100μg/ml)を使用する標準曲線及びTriton X100(0.5%)あり又はなしの内部対照(Clean Cap Fluo mRNA-参照番号L7602-1mg/mL)を、それぞれ標準曲線については1~0.03125μg/mLのRNA及び内部対照については100~3.125μg/mLのmRNAで)、TE緩衝液(トリス 10mM、EDTA 1mM、pH 7.5)中で準備した。
【0491】
凍結LNPを室温で解凍し、凍結乾燥LNTを上に示されたような水(0.5mL)に再懸濁させた。
【0492】
非カプセル化RNAの定量化のために、LNPをトリス/EDTAアッセイ緩衝液(10mMのトリス-HCl、1mMのEDTA、pH7.5)に順次に希釈した。RNAの総量の定量化のために、LNPを、0.5(v/v)%のTriton X100を含有するトリス/EDTAアッセイ緩衝液(10mMのトリス-HCl、1mMのEDTA、pH7.5)に順次に希釈した。
【0493】
対照及びサンプルを96ウェルプレートに分配した。
【0494】
Ribogreen染料(200×希釈の)をサンプルに添加し(50/50ミックス;サンプル/Ribogreen試薬)、十分に混合し、暗いところで、室温で5分インキュベートした。蛍光をSpectraMaxプレートリーダーで測定した(励起波長及び放射波長:485及び528nm)。
【0495】
0.22μm濾過後及び凍結又は凍結乾燥前に得られたLNPを対照として使用した。濾過後に、LNPをサンプリングしてLNP対照として使用し、いかなるプロセスにも供さなかった(「凍結なし」及び「凍結乾燥なし」)。
【0496】
mRNAの完全性
製造業者の勧告書(「Quick Start Guide RNA 6000 Pico Kit G2938-90049」Rev.C Edition 08/2013)に従ってBioanalyzer 2100(AGILENT TECHNOLOGIES)を使用するキャピラリー電気泳動を用いてLNPにおけるmRNAの完全性を測定した。
【0497】
サンプルをTE緩衝液-0.5%のTriton X100と1:9のサンプル:緩衝液体積比で混合することによってmRNAの脱カプセル化を実施した。サンプルを更に希釈し(1:40最終)、2分間熱的に変性した(70℃)。
【0498】
mRNAサンプルを、次いで製造業者の勧告書(「Quick Start Guide RNA 6000 Pico Kit G2938-90049」Rev.C Edition 08/2013)に従ってゲルにロードした。
【0499】
0.22μm濾過後に及び凍結又は凍結乾燥前に得られたLNPを対照として使用した。
【0500】
インビボ生物発光
mRNA-lucを含有するLNPを実施例1に記載されるように調製した。バイアルにおける従来の凍結乾燥によってか又は噴霧凍結乾燥によってかのどちらかでLNPを凍結乾燥させて噴霧凍結乾燥マイクロペレットを得た(実施例1を参照されたい)。凍結乾燥(freeze-dried)(又は凍結乾燥(lyophilized))LNPを320日間+5℃で保管し、その後注射用の水に再懸濁させ、筋肉内ルートによってマウス(1条件当たり5動物-SKH1無毛雌ウス、6週齢)に注射した。注射は、右大腿四頭筋において行った。各マウスは、3μgのmRNAを受けた(35μL注射された)。LNP mRNA-Luc注射後に、異なる時点:T0h、T6h、及びT24hで測定値を取得した。対照マウスは、mRNAなしのLNPを受けた。
【0501】
筋肉内注射後に、マウスをIVIS Spectrum CT装置で撮像してバックグラウンド生物発光信号(T0)を得た。生物発光を発生させるために、マウスにT6h生物発光取得時に150mg/kgのD-ルシフェリン及びT24取得についてはD1で、及びT72h時にD3で腹腔内ルートによって投与した。15分後に、マウスを麻酔させ(イソフルラン)、生物発光信号の取得(発光酵素)を行った。取得は、右大腿四頭筋領域において行った。
【0502】
生物発光信号を定量化するために、関心領域(ROI)を各動物について明確にした。ROIのサイズ及び場所を大腿四頭筋に適応させた。各動物について、同じサイズのROIを用いた。
【0503】
定量化をLiving ImageソフトウェアからのROI測定ツールにより行った。結果は、全光束(光子/秒)として表した。
【0504】
実施例2:LNP安定性への凍結プロセスの影響
実験のデザイン
mRNA-Lucを含有するLNPを、実施例1に記載されるように調製した。
【0505】
実験の第1のセットにおいて、LNPを-20℃及び-80℃でバイアルにおいて凍結させるか又は80℃でマイクロペレットで噴霧凍結させた(実施例1を参照されたい)。
【0506】
凍結LNPを測定値の取得前に解凍した。
【0507】
LNPのサイズ及び濃度をNTAによって測定した(実施例1を参照されたい)。
【0508】
RNAカプセル化率は、Quant-iTTM RiboGreen(登録商標)RNA Assayによって測定した(実施例1を参照されたい)。
【0509】
結果
NTAによって得られたLNP平均径及びモード径、並びに濃度を表1にまとめる。
【0510】
【0511】
総RNA及びRNAカプセル化カリウム率を表2及び3にまとめる。
【0512】
【0513】
【0514】
データは、-80℃での噴霧凍結LNPが、-80℃で又は-20℃でバイアルにおいて凍結されたLNPと比較して増加したmRNAカプセル化率を有する傾向があることを示す。
【0515】
このデータは、LNPの噴霧凍結が凍結LNPの安定性及びmRNAカプセル化率を改善させることを示す。
【0516】
総合すれば、結果は、LNPの噴霧凍結が、LNP凝集を減らすこと、及びmRNAカプセル化率を維持することによって、凍結LNPの安定性を改善させることを示す。
【0517】
大きい塊を構成する凝集体は苦痛などの有害反応を引き起こし得るので、LNP凝集の減少は、注射時に有益であることができる。更に、良好なmRNAカプセル化率の維持は、対応するタンパク質発現、それ故に治療探求効果を改善するであろう。
【0518】
実施例3:LNP安定性への凍結乾燥プロセスの影響
実験のデザイン
mRNA-lucを含有するLNPを、実施例1に記載されるように調製した。
【0519】
LNPをバイアルにおいて従来の方法で凍結乾燥させる(従来の)か又は小球化することによって噴霧凍結乾燥させた(SFD)(実施例1を参照されたい)。凍結乾燥物を、T0、3、6又は11ヶ月間+5℃で保管した。
【0520】
測定値の取得前に、凍結乾燥LNPを注射用の水に再懸濁させた。
【0521】
再懸濁LNPのサイズ及び濃度をNTAによって測定した(実施例1を参照されたい)。
【0522】
再懸濁LNPのRNAカプセル化率をQuant-iTTM RiboGreen(登録商標)RNA Assayによって測定した(実施例1を参照されたい)。
【0523】
結果
NTAによって得られた再懸濁LNPの平均径及びモード径、並びに濃度を表4、5及び6にまとめる。
【0524】
【0525】
【0526】
【0527】
総合すれば、上のデータは、噴霧凍結乾燥LNP及び従来の方法で凍結乾燥させたLNPが、特に+5℃で保管される場合に、経時的に安定していることを示す傾向がある。
【0528】
再懸濁LNPのRNAカプセル化率及び総RNAを表7及び8にまとめる。
【0529】
【0530】
【0531】
データは、液体の、凍結乾燥段階前でのmRNAカプセル化率で比較される場合に、特に11ヶ月の保管後に、噴霧凍結乾燥LNAが、従来の方法で凍結乾燥されたLNPのmRNAカプセル化率よりも安定したmRNAカプセル化率を有する傾向があることを示す。
【0532】
このデータは、LNPの噴霧凍結乾燥がmRNAカプセル化率の安定性を改善させることを示す。
【0533】
総合すれば、結果は、LNPの噴霧凍結が、LNP凝集を防ぐこと又は減らすことによって、及びmRNAカプセル化率を維持することによって、LNPの安定性を改善させることを示す。
【0534】
大きい塊を構成する凝集体は苦痛などの有害反応を引き起こし得るので、LNP凝集の減少は、注射時に有益であることができる。更に、良好なmRNAカプセル化率の維持は、対応するタンパク質発現、それ故に治療探求効果を改善するであろう。
【0535】
実施例4:mRNAの完全性への凍結及び凍結乾燥プロセスの影響
実験のデザイン
mRNA-lucを含有するLNPを、実施例1に記載されるように調製した。
【0536】
LNPをバイアルにおいて従来の方法で凍結乾燥させる(従来の凍結乾燥)か又は小球化することによって噴霧凍結乾燥させた(SFD)(実施例1を参照されたい)。凍結乾燥物を、T0、3、又は6ヶ月間+5℃で保管した。
【0537】
mRNAの完全性を実施例1に示されるように測定した。
【0538】
結果
発光酵素mRNA(mRNA-Luc;参照番号:L-7602 TriLinkTM Biotechnologies)の予期サイズは1941塩基である。
【0539】
どんな凍結乾燥プロセス、従来の凍結乾燥対噴霧凍結乾燥、又は+5℃での保管の継続時間、0、3又は6ヶ月でも、mRNAの完全性は維持された。
【0540】
実施例5:インビボmRNA発現への凍結乾燥プロセスの影響
実験のデザイン
mRNA-Lucを含有するLNPを、実施例1に記載されるように調製した。
【0541】
LNPをバイアルにおいて従来の方法で凍結乾燥させる(従来の凍結乾燥)か又は小球化することによって噴霧凍結乾燥させた(SFD)(実施例1を参照されたい)。凍結乾燥物を、更なる使用まで320日間+5℃で保管した。
【0542】
3つのグループのマウスを処理した:(1)mRNAありの及び従来の方法で凍結乾燥させたLNP、(3)mRNAありの及び噴霧凍結乾燥させたLNP、並びに(3)mRNAなしの及び使用前に凍結乾燥なしのLNP。
【0543】
生物発光を実施例1に示されるように測定した。
【0544】
結果
得られた生物発光結果を表9にまとめる。
【0545】
【0546】
上のデータに示されるように、注射後6及び24時間で、生物発光、それ故に発光酵素の発現のレベルは、従来の方法で凍結乾燥させたLNPに対して噴霧凍結乾燥LNPを注射されたマウスにおいて著しく大きい。
【0547】
6時間で、噴霧凍結乾燥LNPで得られた生物発光のレベルは、従来の方法で凍結乾燥させたLNPで得られた生物発光のレベルの約40倍であった。注射の3日後に、噴霧凍結乾燥LNPで得られた生物発光のレベルは、従来の方法で凍結乾燥させたLNPで得られた生物発光のレベルの依然として約15倍であった。
【0548】
mRNAによってエンコードされるタンパク質の高められた発現は、例えば、抗原の高められた発現が高められた免疫反応を得るのに役立ち得る免疫付与及びワクチン応用でのような、治療への応用について有益な興味を見つけるであろう。
【0549】
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