(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高温において半導体ワークピースを処理するためのチャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241029BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241029BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20241029BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20241029BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20241029BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/265 603D
H01J37/317 B
H01J37/20 A
H01J37/20 E
H01J37/244
H01J37/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523602
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022044859
(87)【国際公開番号】W WO2023075968
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スン, ダーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホール, ダニエル
【テーマコード(参考)】
5C101
5F131
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB01
5C101BB08
5C101EE19
5C101EE25
5C101EE35
5C101FF02
5C101FF16
5C101FF46
5C101FF49
5C101GG46
5C101GG49
5F131AA02
5F131BA23
5F131CA03
5F131CA06
5F131EA04
5F131EA10
5F131EB15
5F131EB32
5F131EB36
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
半導体ワークピースなど、ワークピースを加熱およびクランプするためのチャックが開示される。チャックは、ワークピースが600Cを超える温度まで加熱されることを可能にするように構成される。さらに、ワークピースが熱くなっている間、チャックを作る構成要素は、室温など、はるかに低い温度において維持され得る。チャックは、側壁と開放端部とをもつ中空円筒として形成されたハウジングを含む。電極が、ワークピースをクランプするために、側壁の上面に配設される。熱源が、キャビティ中に配設され、放射熱をワークピースのほうへ放出する。クランプリングが、ワークピースを固定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、熱センサが、ワークピースの温度を監視するために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックであって、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極と
を備える、チャック。
【請求項2】
前記側壁の前記上面上に配設されたクランプリングをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記クランプリングの内径が、前記ワークピースの外径よりも大きく、したがって、前記クランプリングが、前記ワークピースのいかなる部分をも覆わない、請求項2に記載のチャック。
【請求項4】
前記クランプリングが、前記内径から内側に延びる複数のタブを備え、したがって、前記複数のタブが、前記ワークピースの一部分の上に配設され、前記1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、前記複数のタブを前記上面のほうへ引きつける、請求項3に記載のチャック。
【請求項5】
前記複数のタブと前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記複数のタブの底面上に配設された下向き突出部をさらに備える、請求項4に記載のチャック。
【請求項6】
前記クランプリングの内径が、前記ワークピースの外径よりも小さく、したがって、前記クランプリングが、前記ワークピースの一部分を覆い、したがって、前記1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、前記クランプリングを前記上面のほうへ引きつける、請求項2に記載のチャック。
【請求項7】
前記ハウジングと前記熱源との間に配設された放射シールドをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項8】
前記ハウジングと前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記側壁の前記上面上に配設された突出部をさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項9】
熱センサとコントローラとをさらに備え、前記コントローラが、前記熱センサからの情報に基づいて前記熱源の出力を修正する、請求項1に記載のチャック。
【請求項10】
前記熱センサが非接触温度計を含む、請求項9に記載のチャック。
【請求項11】
前記1つまたは複数の電極が、それぞれのバイポーラDC信号を各々提供される2つの電極を備え、前記バイポーラDC信号が、逆位相のものである、請求項1に記載のチャック。
【請求項12】
前記熱源が、放射加熱を使用して前記ワークピースを加熱する、請求項1に記載のチャック。
【請求項13】
リフトピンおよび/または接地ピンが、前記側壁の前記上面上に配設される、請求項1に記載のチャック。
【請求項14】
ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックであって、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形をなすハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面に対して前記ワークピースを保持するための機械的クランプと
を備える、チャック。
【請求項15】
前記ハウジングと前記熱源との間に配設された放射シールドをさらに備える、請求項14に記載のチャック。
【請求項16】
前記側壁の前記上面と前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記側壁の前記上面上に配設された突出部をさらに備える、請求項14に記載のチャック。
【請求項17】
熱センサとコントローラとをさらに備え、前記コントローラが、前記熱センサからの情報に基づいて前記熱源の出力を修正する、請求項14に記載のチャック。
【請求項18】
前記熱センサが非接触温度計を含む、請求項17に記載のチャック。
【請求項19】
リフトピンおよび/または接地ピンが、前記側壁の前記上面上に配設される、請求項13に記載のチャック。
【請求項20】
イオン源と、
静電チャックと
を備え、前記静電チャックは、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極と
を備える、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年10月26日に出願された米国特許出願第17/510,991号の優先権を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、特に600℃超の温度において、半導体ワークピースをクランプおよび加熱するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造は、複数の個別のおよび複雑なプロセスを伴う。これらのプロセスの多くでは、半導体ワークピースは、チャックにクランプされるかまたは場合によっては取り付けられる。たとえば、ワークピースをチャックの表面にクランプする、ワークピース内の電界を誘導することによって、ワークピースを保持し、動作するために、静電チャックが通常使用される。
【0004】
たいていの半導体ワークピースは、シリコンから作られる。最近、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、ガリウム亜硝酸塩およびシリコンオンガラスなど、他の材料から作られた半導体ワークピースに対する関心がある。いくつかの実施形態では、これらの他の材料は、600℃超など、高い温度において最も良く注入される。
【0005】
従来のチャックは、これらの高い温度における課題に直面する。これらの課題は、高温において漏れが増加されることと構造的完全性が損なわれることとによる、クランプ力の低減を含む。
【0006】
したがって、半導体ワークピースを、保持し、600℃を超える温度まで加熱することが可能であるチャックがあれば、有利であろう。さらに、このチャックが、既存の静電チャックに現在突きつけられている問題を受けないのであれば、有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
半導体ワークピースなど、ワークピースを加熱およびクランプするためのチャックが開示される。チャックは、ワークピースが600℃を超える温度まで加熱されることを可能にするように構成される。さらに、ワークピースが熱くなっている間、チャックを作る構成要素は、室温など、はるかに低い温度において維持され得る。チャックは、側壁と開放端部とをもつ中空円筒として形成されたハウジングを含む。電極が、ワークピースをクランプするために、側壁の上面に配設される。熱源が、キャビティ中に配設され、放射熱をワークピースのほうへ放出する。クランプリングが、ワークピースを固定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、熱センサが、ワークピースの温度を監視するために使用される。
【0008】
一実施形態による、ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックが開示される。チャックは、側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、キャビティ中に配設された熱源と、側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極とを備える。いくつかの実施形態では、チャックは、側壁の上面上に配設されたクランプリングを備える。いくつかの実施形態では、クランプリングの内径が、ワークピースの外径よりも大きく、したがって、クランプリングは、ワークピースのいかなる部分をも覆わない。いくつかの実施形態では、クランプリングは、内径から内側に延びる複数のタブを備え、したがって、複数のタブは、ワークピースの一部分の上に配設され、1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、複数のタブを上面のほうへ引きつける。いくつかの実施形態では、チャックは、複数のタブとワークピースとの間の接触面積を低減するために複数のタブの底面上に配設された下向き突出部を備える。いくつかの実施形態では、クランプリングの内径が、ワークピースの外径よりも小さく、したがって、クランプリングは、ワークピースの一部分を覆い、したがって、1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、クランプリングを上面のほうへ引きつける。いくつかの実施形態では、チャックは、ハウジングと熱源との間に配設された放射シールドを備える。いくつかの実施形態では、チャックは、ハウジングとワークピースとの間の接触面積を低減するために側壁の上面上に配設された突出部を備える。いくつかの実施形態では、チャックは、熱センサとコントローラとを備え、コントローラは、熱センサからの情報に基づいて熱源の出力を修正する。いくつかの実施形態では、熱センサは非接触温度計を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電極は、それぞれのバイポーラDC信号を各々提供される2つの電極を備え、バイポーラDC信号は、逆位相のものである。いくつかの実施形態では、熱源は、放射加熱を使用してワークピースを加熱する。いくつかの実施形態では、リフトピンおよび/または接地ピンが、側壁の上面上に配設される。
【0009】
別の実施形態による、ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックが開示される。チャックは、側壁と開放端部とを有する中空円筒として形をなすハウジングであって、側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、キャビティ中に配設された熱源と、側壁の上面に対してワークピースを保持するための機械的クランプとを備える。いくつかの実施形態では、チャックは、ハウジングと熱源との間に配設された放射シールドを備える。いくつかの実施形態では、チャックは、側壁の上面とワークピースとの間の接触面積を低減するために側壁の上面上に配設された突出部を備える。いくつかの実施形態では、チャックは、熱センサとコントローラとを備え、コントローラは、熱センサからの情報に基づいて熱源の出力を修正する。いくつかの実施形態では、熱センサは非接触温度計を含む。いくつかの実施形態では、リフトピンおよび/または接地ピンが、側壁の上面上に配設される。
【0010】
別の実施形態による、イオン注入システムが開示される。イオン注入システムは、イオン源と、静電チャックとを備え、静電チャックは、側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、キャビティ中に配設された熱源と、側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極とを備える。
【0011】
本開示をより良く理解するために、参照により本明細書に組み込まれる、添付の図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による、チャックのブロック図である。
【
図2】ワークピースが配設されるハウジングの上面を示す図である。
【
図3】チャックとクランプリングと半導体ワークピースとの間のインターフェースを示す図である。
【
図7】
図1または
図6のチャックを使用するイオン注入システムのブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、旧来の静電チャックは、600℃を上回るなど、高い温度において動作する、課題に直面し得る。
【0014】
図1は、半導体ワークピースなど、ワークピース1をクランプし、その半導体ワークピースを600℃を超える温度まで加熱するために使用され得るチャック100を示す。いくつかの実施形態では、チャック100は、半導体ワークピースを700℃超の温度まで加熱するように構成される。
【0015】
チャック100は、中空円筒として形成され得るハウジング10を備える。ハウジング10は、任意の好適な材料を使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、ハウジング10は、アルミナまたは窒化アルミニウムなど、誘電体材料から作られ得る。
【0016】
中空円筒は、側壁12と開放端部とを有する。開放端部は、第1の端部、ワークピースに面する端部または上端部と呼ばれることがある。第1の端部の反対側にある、ハウジング10の第2の端部または底端部11は、閉じられるかまたは部分的に閉じられ得る。
図1中に示されているものなど、いくつかの実施形態では、ハウジング10は、側壁12が、底端部11から上方へ延び、0.5から10インチの間の高さを有するように、カップ形であり得る。側壁12の上面13は、ワークピース1がその上に載る、支持体を提供し得る。上面13の内径は、ワークピース1の外径よりもわずかに小さくなり得、外径は、ワークピース1の外径よりも大きくなり得る。たとえば、側壁12は、5から50mmの間の厚さを有し得る。このようにして、ワークピース1は、側壁12の上面13に載っていることが可能である。いくつかの実施形態では、ワークピース1は、側壁12におおいかぶさるように突き出ない。いくつかの実施形態では、ワークピース1の最外1~10mmは、側壁12上に、または、側壁12の上に配設される。しかしながら、上面の残りは中空であるので、ワークピースの残りは、ハウジング10によって支持されないことに留意されたい。
【0017】
いくつかの実施形態では、
図2に示されているように、複数の突出部15が、上面13上に配設され得る。これらの突出部15は、円形、正方形または任意の他の好適な形状であり得る。突出部15は、上面13から上方へ延び、5から20μmの間の高さと、0.5から2mmの間の直径とを有し得る。いくつかの実施形態では、各々、360°/Nだけ分離され、リング形に配置された上面13に沿って配設された、N個の突出部がある。いくつかの実施形態では、Nは、3から60の間であり得る。他の実施形態では、突出部15は、複数の同心リングとして構成され得る。突出部15の使用は、上面13とワークピース1との間の接触面積を低減する。このようにして、ワークピース1とハウジング10との間の熱伝導がより少なくなり得る。これらの突出部15は、ハウジング10と同じ材料から作られ得、ハウジング10と一体であり得る。他の実施形態では、突出部15は、SiC、結晶、または他の材料から作られ得る。突出部15は、化学またはプラズマエッチ、あるいはPVDまたはCVDなどの堆積方法を使用して形成され得る。突出部15はまた、ワークピース1上の粒子生成を低減するために、低摩擦コーティングでコーティングされ得る。
【0018】
図2は、1つまたは複数のリフトピン16および/または接地ピン17が、上面13に沿って配設され得ることをも示す。これらのピンは、ばね式であり得る。
【0019】
ハウジング10内の側壁12の内側のおよび底端部11の上の空間は、キャビティ18を画定し得る。
【0020】
底端部11の厚さは、側壁12の厚さと同様であり得る。いくつかの実施形態では、
図1に示されているように、キャビティ18への電気コンジットの導入を可能にするために、開口14が、底端部11中に配設され得る。これらの電気コンジットは、熱源20、電極30、および随意に、熱センサ60のための、電力と他の信号とを提供するために使用され得る。さらに、電気コンジットは、接地ピンが利用される場合、接地ピン17に接地基準を提供するために使用され得る。
【0021】
熱源20が、キャビティ18内に配設され得る。熱源20は、LEDアレイ、レーザ、黒鉛または他の抵抗加熱器、あるいは誘導的に加熱されるデバイスであり得る。いくつかの実施形態では、ワークピース1と熱源20との間に物理的な接点がないように、熱源20は、放射により動作する。熱源20のための電気的接点は、底端部11中の開口14を通過し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、熱源20によって放出される放射は、クランプされているワークピース1のタイプに適合される。たとえば、可視光が、シリコンワークピースによって容易に吸収される。異なる周波数が、他のワークピースに最も好適であり得る。たとえば、炭化ケイ素が、より多くのIRエネルギーを吸収する。したがって、加熱要素温度、またはレーザ/LED周波数など、放射特性は、クランプされているワークピース1のタイプに従って調整され得る。
【0023】
放射シールド70が、熱源20と、側壁12および底端部11の内面との間など、キャビティ18内に配設され得る。いくつかの実施形態では、放射シールド70は、熱源20からの放射熱からハウジング10を保護することによって、より低い温度においてハウジング10を維持するのに役立つ。他の実施形態では、放射シールドは、放射熱がワークピース1のほうへ向け直されるように、反射性であり得る。放射シールド70は、黒鉛箔、アルミニウムまたはモリブデン、あるいは高反射性コーティングをもつ材料から構築され得る。
【0024】
1つまたは複数の電極30が、側壁12の上面13の近くで側壁12中に埋め込まれ得る。電極30は、導電性であり、任意の好適な材料を使用して形成され得る。
【0025】
一実施形態では、電極30は、AC電圧またはパルスDC電圧を使用してバイアスされ得る。いくつかの実施形態では、AC電圧またはパルスDC電圧の周波数は、1から60Hzの間であり得、振幅は、200から2000Vの間であり得る。電極30は、ワークピース1をクランプするために使用される静電力を作成するために使用される電気電圧を提供する、電極電源35と電気通信していることがある。一実施形態では、ワイヤ36が、開口14を通過し、電極30を電極電源35に電気的に接続する。いくつかの実施形態では、各電極30は、対応するワイヤ36と電気通信している。いくつかの実施形態では、偶数個の電極30がある。電極30の各ペアが、矩形波など、それぞれのバイポーラ電力信号と電気通信していることがあり、したがって、ペアの一方の電極が、正の出力を受信し、そのペアの他方の電極が、負の出力を受信する。周期および振幅に関して、同じ矩形波出力が、電極のすべてに印加される。しかしながら、各矩形波出力は、それに隣接するものから位相シフトされる。したがって、一実施形態では、3つのペアとして構成された、上面に沿って配設された6つの電極30がある。これらの電極の1つのペアが、第1の矩形波によって電力供給され、電極の第2のペアが、第1の矩形波に対して120°の位相シフトを有する第2の矩形波によって電力供給さる。同様に、第3の矩形波が、第2の矩形波から120°位相シフトされる。もちろん、他の構成も、本開示の範囲内に入る。
【0026】
たとえば、
図5A~
図5Bは、電極30が、側壁12の上面13の近くに配設された1つの特定の実施形態を示す。この実施形態では、2つの電極30a、30bが示されている。しかしながら、他の実施形態では、上述のように、3つ以上の電極があり得る。2つの電極30a、30bは、蛇行形であり得る。他の実施形態では、電極30a、30bは、他の形状を有し得る。たとえば、一実施形態では、電極30a、30bは、同心リングまたは同心アークであり得る。各電極は、それぞれのバイポーラ電力信号と通信していることがあり、したがって、2つの電極に供給される電圧は、逆位相のものである。
【0027】
他の実施形態では、電極30は、DC電圧を使用してバイアスされ得る。DC電圧の大きさは、200から2000Vの間であり得る。この実施形態では、各電極30は、DC電圧を供給される。たとえば、各ペアにおける一方の電極が、正電圧を供給され得、そのペアにおける他方の電極が、負電圧を供給される。他の構成も可能である。反対の電荷が、ワークピース1上で誘起される。電極30とワークピースとの間の吸引力が、ワークピース1を所定の位置に確実に保持する。
【0028】
いくつかの実施形態では、ワークピースは、導電性でないことがある。たとえば、ワークピース1は、シリコンオンガラス、ガリウムヒ素、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素であり得る。これらの実施形態では、電極30によって生成された電界は、ワークピース1中に十分な電界を誘起しないことがあり、したがって、ワークピース1を確実に保持するための十分なクランプ力を生成しない。
【0029】
したがって、いくつかの実施形態では、
図1および
図3に見られるように、クランプリング40が利用され得る。しかしながら、平坦なワークピースを利用するものなど、いくつかの実施形態では、クランプリング40は、使用されないことがある。むしろ、ワークピース1の外側周囲に沿って電極30によって生成された静電力は、ワークピース1を所定の位置に保持するのに十分であり得る。これらの実施形態では、ワークピース1がハウジング10におおいかぶさるように突き出ることが許容可能であり得る。
【0030】
しかしながら、上述のように、他の実施形態では、ワークピース1は、導電性でないことがあるかまたは十分に平坦でないことがある。それらの実施形態では、クランプリング40が利用され得る。
【0031】
クランプリング40は、側壁12の上面13の一部分上に載る。
【0032】
図2および
図4Aに示されているものなど、いくつかの実施形態では、クランプリング40の内径は、ワークピース1の外径よりも大きく、したがって、クランプリング40は、ワークピース1上に載っていない。これらの実施形態では、クランプリング40は、クランプリング40の内径から内側に延びる複数のタブ41を有し得る。これらのタブ41は、ワークピース1の少なくとも一部分にわたって延びる。
【0033】
これらの実施形態では、クランプリング40は、SiCまたは多結晶シリコンなど、導電性材料または半導電性材料、あるいは導電性コーティングをもつ誘電体材料から作られ得る。電極30によって生成された電界は、これらのタブ41と相互作用してクランプ力を加え、タブ41は、電極30のほうへ引きつけられる。いくつかの実施形態では、互いから120°だけ分離された3つのタブが、使用され得る。他の実施形態では、異なる数のタブ41が採用され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の下向き突出部42(
図1参照)が、タブ41の下面上に配設され得る。下向き突出部42は、ワークピース1からの熱損失を低減し、粒子生成を最小限に抑えるために、SiC、石英、または熱絶縁性および低摩擦コーティングをもつ他の材料から作られ得る。これらの下向き突出部42は、化学またはプラズマエッチ、あるいはPVDまたはCVDなどの堆積方法を使用して形成され得る。それらの突出部は、1mmの外径と5~20μmの高さとを有し得る。これらの下向き突出部42は、ワークピース1とタブ41との間の接触面積を低減し、これは、これらの構成要素間の熱伝導性を低減する。
【0035】
クランプリング40がハウジング10上に置かれるとき、クランプリング40は、タブ41がそれぞれの電極30と整合されるように構成され得る。
【0036】
図4Bに示されている、別の実施形態では、クランプリング40の内径は、ワークピース1の外径よりも小さく、したがって、クランプリング40は、ワークピース1の外縁の全体の上に配設される。この実施形態では、複数の下向き突出部42が、ワークピース1に重なる領域においてクランプリング40の全体に沿って配設され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、チャック100は、熱センサ60を含み得る。いくつかの実施形態では、熱センサ60は非接触温度計であり得る。この実施形態では、非接触温度計は、ハウジング10の底端部11上に、または底端部11の近くに配設され、開放端部のほうへ向けられ得る。このようにして、熱センサとワークピース1との間に物理的な接点がない。
【0038】
他の実施形態では、熱センサ60は、熱電対または他の接点ベースの熱センサであり得る。これらの実施形態では、熱センサ60は、上面13に近接して、側壁12上に配設されるか、または側壁12中に埋め込まれ得る。
【0039】
これらの実施形態では、熱センサ60は、コントローラ90と通信していることがある。コントローラ90は、処理ユニットとメモリデバイスとを含み得る。処理ユニットは、マイクロプロセッサ、信号プロセッサ、カスタマイズされたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または別の好適なユニットであり得る。このメモリデバイスは、フラッシュROM、電気的消去可能ROMまたは他の好適なデバイスなど、不揮発性メモリであり得る。他の実施形態では、メモリデバイスは、RAMまたはDRAMなど、揮発性メモリであり得る。メモリデバイスは、コントローラ90が、ワークピース1の温度を制御することを可能にする命令を備える。
【0040】
コントローラ90は、熱源20と通信していることがある。したがって、一実施形態では、閉ループ制御が利用され、コントローラ90は、熱センサ60を介してワークピースの温度を監視する。ワークピース1の現在温度に基づいて、コントローラ90は、熱源20によって提供される電力を修正し得る。
【0041】
別の実施形態では、熱センサ60が利用されないことがある。この実施形態では、コントローラ90は、熱源20によって提供される電力を調節するために、開ループ制御を利用し得る。
【0042】
コントローラ90は、クランプおよびクランプ解除がいつ行われるかを制御するために、電極電源35と通信していることもある。
【0043】
たとえば、動作中、ワークピース1が、ハウジング10の上面13上に置かれ得る。随意に、クランプリング40が、次いで、上面13上に置かれる。電極電源35は、次いで、クランプ力を作成するように作動される。上記で説明されたように、クランプ力は、電極30とワークピース1との間のものであるか、電極30とクランプリング40との間のものであるか、また、電極30とタブ41との間のものであり得る。
【0044】
コントローラ90は、次いで、熱源20を作動させ得る。熱源20は、熱をワークピース1のほうへ放射する。さらに、上記で説明されたように、放射シールド70がまた、熱をワークピース1のほうへ向け直し得る。いくつかの実施形態では、コントローラ90は、ワークピース1の所望の温度を実現および維持するために、熱センサ60から情報を受信し、熱源20からの出力を調整する。
【0045】
上記の開示は、静電クランプを利用するチャック100について説明するが、他の実施形態も可能である。たとえば、
図6に示されているように、別の実施形態では、電極30は省略される。むしろ、機械的クランプ80が、ワークピース1を所定の位置に保持するために使用される。機械的クランプ80は、垂直および回転移動を機械的クランプ80に与え得るアクチュエータ81を使用して付けられ得る。ワークピース1が、上面13上に置かれることになるとき、機械的クランプ80は、上面13から離れて回転され、ワークピース1が、上面13上の所定の位置にのせられることを可能にする。機械的クランプ80は、次いで、上面13に対してまたは突出部15に対してワークピース1を押すために、回転し、下向きに移動し得る。別の実施形態では、機械的クランプ80はまた、電磁力によって駆動され得る。いくつかの実施形態では、機械的クランプ80は、リングまたは複数のタブ82であり得る。
【0046】
図7は、
図1または
図6のチャック100を使用するイオン注入システムを示す。イオン源250が、イオンを生成するために使用される。イオン源250の抽出開孔の外側に、およびイオン源250の抽出開孔に近接して、抽出オプティクス200が配設され、それは、1つまたは複数の電極を備え得る。抽出オプティクス200は、イオン源250からイオンビームを抽出するために使用される。
【0047】
抽出オプティクス200から下流に、質量分析器210が位置する。質量分析器210は、抽出されたリボンイオンビーム251の経路を案内するために磁界を使用する。磁界はイオンの飛行経路に、それらの質量および電荷に応じて、影響を及ぼす。分離開孔221を有する質量分離デバイス220が、質量分析器210の出力または遠位端に配設される。磁界の適切な選択によって、選択された質量および電荷を有する抽出されたリボンイオンビーム251中のイオンのみが、分離開孔221を通して向けられることになる。他のイオンが、質量分離デバイス220、または質量分析器210の壁に当たり、システムにおいてこれ以上進まないことになる。
【0048】
コリメータ230が、質量分離デバイス220から下流に配設され得る。コリメータ230は、分離開孔221を通過する、抽出されたリボンイオンビーム251からのイオンを受け取り、複数の平行なまたはほぼ平行なビームレットから形成されるリボンイオンビームを作成する。質量分析器210の出力または遠位端と、コリメータ230の入力または近位端とは、固定距離離れていることがある。質量分離デバイス220は、これらの2つの構成要素間の空間中に配設される。
【0049】
コリメータ230から下流に、加速/減速段240が位置し得る。加速/減速段240は、エネルギー純度モジュールと呼ばれることがある。エネルギー純度モジュールは、イオンビームの偏向、減速、および焦点を独立して制御するように構成されたビーム線レンズ構成要素である。たとえば、エネルギー純度モジュールは、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)または静電フィルタ(EF)であり得る。加速/減速段240から下流に、チャック100が位置する。ワークピースは、処理中にチャック100上に配設される。
【0050】
図7は、ビーム線を利用するイオン注入システムとともに使用されるチャック100を示すが、他の実施形態も可能である。たとえば、チャック100は、処理チャンバとともに使用され得、処理チャンバから抽出されるイオンが、ワークピースに直接当たる。これらの実施形態では、イオン注入システムは、イオン源と、上記で説明されたチャック100とを備え得る。
【0051】
本システムは、多くの利点を有する。第1に、ワークピース1の大部分が、ハウジング10によって支持されないことに留意されたい。むしろ、ワークピース1のエッジのみが支持される。このようにして、裏側粒子の数が低減される。さらに、固有の曲がりをもつワークピースが、容易にクランプされ得る。さらに、ワークピース1が熱膨張により膨張するとき、ワークピース1の大部分は、旧来のように、チャックの上面と接触しない。これは、膨張しているワークピースがプラテンに対して移動することによって引き起こされる、粒子の作成を最小限に抑える。
【0052】
さらに、ワークピース1を除いて、高温構成要素がない。高真空下でのワークピース1とチャック100との間の低い熱接点伝導性が、高温ワークピースからチャック100への低い熱流量を保証する。1つのテストでは、ハウジング10およびクランプリング40は、ワークピース1が700℃を上回る温度まで加熱される間、ヒートシンクの使用によってなど、室温において維持され得ることがわかった。これは、構成要素に対する熱応力を低減し、より長い寿命およびより少ないダウンタイムにつながる。さらに、ハウジング10が、室温に近い温度において維持され得る場合、より少ない漏れ電流が生じることになる。
【0053】
本開示は、本明細書で説明される特定の実施形態によって、範囲が限定されるべきではない。実際は、上記の説明および添付の図面から、本明細書で説明されるものに加えて、本開示の他の様々な実施形態および修正が当業者に明らかになろう。したがって、そのような他の実施形態および修正は、本開示の範囲内に入るものとする。さらに、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実装形態のコンテキストにおいて、本明細書で説明されたが、本開示の有用性がそれに限定されないこと、および、本開示が、任意の数の目的のための任意の数の環境において有益に実装され得ることを、当業者は認識されよう。したがって、以下に記載する特許請求の範囲は、本明細書で説明される本開示の全幅および全趣旨に鑑みて解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックであって、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極と
を備える、チャック。
【請求項2】
前記側壁の前記上面上に配設されたクランプリングをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記クランプリングの内径が、前記ワークピースの外径よりも大きく、したがって、前記クランプリングが、前記ワークピースのいかなる部分をも覆わない、請求項2に記載のチャック。
【請求項4】
前記クランプリングが、前記内径から内側に延びる複数のタブを備え、したがって、前記複数のタブが、前記ワークピースの一部分の上に配設され、前記1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、前記複数のタブを前記上面のほうへ引きつける、請求項3に記載のチャック。
【請求項5】
前記複数のタブと前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記複数のタブの底面上に配設された下向き突出部をさらに備える、請求項4に記載のチャック。
【請求項6】
前記クランプリングの内径が、前記ワークピースの外径よりも小さく、したがって、前記クランプリングが、前記ワークピースの一部分を覆い、したがって、前記1つまたは複数の電極によって生成された静電力が、前記クランプリングを前記上面のほうへ引きつける、請求項2に記載のチャック。
【請求項7】
前記ハウジングと前記熱源との間に配設された放射シールドをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項8】
前記ハウジングと前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記側壁の前記上面上に配設された突出部をさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項9】
熱センサとコントローラとをさらに備え、前記コントローラが、前記熱センサからの情報に基づいて前記熱源の出力を修正する、請求項1に記載のチャック。
【請求項10】
前記熱センサが高温計を備える、請求項9に記載のチャック。
【請求項11】
前記1つまたは複数の電極が、それぞれのバイポーラDC信号を各々提供される2つの電極を備え、前記バイポーラDC信号が、逆位相のものである、請求項1に記載のチャック。
【請求項12】
前記熱源が、放射加熱を使用して前記ワークピースを加熱する、請求項1に記載のチャック。
【請求項13】
リフトピンおよび/または接地ピンが、前記側壁の前記上面上に配設される、請求項1に記載のチャック。
【請求項14】
ワークピースをクランプおよび加熱するためのチャックであって、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形をなすハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面に対して前記ワークピースを保持するための機械的クランプと
を備える、チャック。
【請求項15】
前記ハウジングと前記熱源との間に配設された放射シールドをさらに備える、請求項14に記載のチャック。
【請求項16】
前記側壁の前記上面と前記ワークピースとの間の接触面積を低減するために前記側壁の前記上面上に配設された突出部をさらに備える、請求項14に記載のチャック。
【請求項17】
熱センサとコントローラとをさらに備え、前記コントローラが、前記熱センサからの情報に基づいて前記熱源の出力を修正する、請求項14に記載のチャック。
【請求項18】
前記熱センサが高温計を備える、請求項17に記載のチャック。
【請求項19】
リフトピンおよび/または接地ピンが、前記側壁の前記上面上に配設される、請求項
14に記載のチャック。
【請求項20】
イオン源と、
静電チャックと
を備え、前記静電チャックは、
側壁と開放端部とを有する中空円筒として形成されたハウジングであって、前記側壁の内側の領域がキャビティを画定する、ハウジングと、
前記キャビティ中に配設された熱源と、
前記側壁の上面上に配設された1つまたは複数の電極と
を備える、イオン注入システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
たいていの半導体ワークピースは、シリコンから作られる。最近、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、窒化ガリウムおよびシリコンオンガラスなど、他の材料から作られた半導体ワークピースに対する関心がある。いくつかの実施形態では、これらの他の材料は、600℃超など、高い温度において最も良く注入される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【
図1】一実施形態による、チャックのブロック図である。
【
図2】ワークピースが配設されるハウジングの上面を示す図である。
【
図3】チャックとクランプリングと半導体ワークピースとの間のインターフェースを示す図である。
【
図7】
図1または
図6のチャックを使用するイオン注入システムのブロック
図である。
【国際調査報告】