(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多孔性高分子粒子、およびこれを用いたタンパク質精製用カラム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20241029BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B01J20/26 H
B01J20/28 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524466
(86)(22)【出願日】2023-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2023013849
(87)【国際公開番号】W WO2024058579
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0117461
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0121985
(32)【優先日】2023-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スンジュン・オ
(72)【発明者】
【氏名】イェジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミンチェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AB03D
4G066AB06D
4G066AC17D
4G066AC22A
4G066AC22B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA50
4G066CA54
4G066FA07
4G066FA33
4G066FA37
(57)【要約】
本発明は、高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散し、50nm~500nmの直径を有する気孔;を含み、多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol以上5000μmol未満である多孔性高分子粒子およびこれを用いたタンパク質精製用カラムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックス;および
前記高分子マトリックスに分散し、50nm~500nmの直径を有する気孔;を含み、
下記の数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol以上5000μmol未満である、多孔性高分子粒子:
[数式1]
エポキシ含有量(μmol/g)=[(V
0-V)×C
塩基×1000]/W
前記数式1中、
Vは、多孔性高分子粒子を含む実験群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、
V
0は、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、
C
塩基は、滴定に使用された塩基の濃度(M)であり、
Wは、滴定に使用された多孔性高分子粒子の質量(g)である。
【請求項2】
前記多孔性高分子粒子は、SEMによって測定した粒子表面の気孔径が50nm~500nmである、請求項1に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項3】
前記多孔性高分子粒子は、光学顕微鏡によって測定した粒子径が10μm~150μmである、請求項1に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項4】
前記多孔性高分子粒子は、光学顕微鏡によって測定した粒子径の変動係数が20%以下である、請求項1に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項5】
前記多孔性高分子粒子は、タンパク質精製用粒子である、請求項1に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項6】
前記多孔性高分子粒子は、
気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液および連続相水溶液の重合反応生成物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項7】
前記1種の気孔誘導物質は、芳香族炭化水素系化合物、ケトン系化合物、アセテート系化合物からなる群より選択された1種の化合物を含む、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項8】
前記芳香族炭化水素系化合物は、メシチレンを含む、請求項7に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項9】
前記ケトン系化合物は、ジイソブチルケトンを含む、請求項7に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項10】
前記アセテート系化合物は、アミルアセテート、またはヘキシルアセテートを含む、請求項7に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項11】
前記1種の気孔誘導物質は、20℃で測定した粘度が0.5cP~15cPである、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項12】
前記2種の気孔誘導物質は、アルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含む、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項13】
前記アルコール系化合物は、炭素数1~11の脂肪族アルコールを含む、請求項12に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項14】
前記芳香族炭化水素系化合物は、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数6~8の芳香族炭化水素化合物を含む、請求項12に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項15】
前記分散相溶液において、気孔誘導物質1種~2種の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~80重量%である、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項16】
前記分散相溶液において、単量体の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~60重量%である、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項17】
前記分散相溶液において、架橋剤の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~60重量%である、請求項6に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項18】
前記多孔性高分子粒子は、
気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液および連続相水溶液がステップ乳化装置を通過して得られた液滴の重合反応生成物である、請求項1に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項19】
前記ステップ乳化装置は、
分散相溶液を注入する第1注入口;
連続相溶液を注入する第2注入口;
分散相溶液が流れる分散相流路;
連続相溶液が流れる連続相流路;および
分散相溶液が連続相流路に流れて液滴を形成する微細チャネル;を含む、請求項18に記載の多孔性高分子粒子。
【請求項20】
請求項1に記載の多孔性高分子粒子を含む、タンパク質精製用カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年9月16日付の韓国特許出願第10-2022-0117461号および2023年9月13日付の韓国特許出願第10-2023-0121985号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、多孔性高分子粒子、およびこれを用いたタンパク質精製用カラムに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品および再生医療分野の拡張に伴い、細胞、組織、微生物などを効率的に分離または精製できるシステムへのニーズが大きくなっている。
【0004】
従来技術では、親水性アガロース(agarose)を原料とする精製用レジンが主に使用されたが、このようなレジンは、精製過程中にバッファーによって膨潤して強度が低下し、その結果、精製速度や精製効率が低くなる問題を示した。
【0005】
これに対し、合成高分子をタンパク質精製用レジンに使用する場合には、アガロースより高い強度が提供されるという利点があるが、合成高分子が低い球形度と大きな粒度偏差を示す場合には、分離物(または精製物)の移動経路の差を生じて分離効率が低くなる問題が発生する。そして、合成高分子の表面の性質によりタンパク質が非特異的に吸着して精製効率が低くなる問題もある。
【0006】
そこで、タンパク質精製用レジンへの使用に適した高分子粒子を製造する技術が活発に研究されており、最近、高分子粒子を製造するために、微細な乳剤(emulsion)液滴を形成できる乳化装置に関する研究が進められている。微細な乳剤液滴は、例えば、水と油のように親和性が低くて互いに混ざらない2種類の流体を用いて、1種類の流体を他の種類の流体内部に分散させて形成される。代表的な乳剤としては、水滴を油内部に分散させた油中水滴型(Water in Oil;W/O)乳剤と、油を水内部に分散させた水中油滴型(Oil in Water;O/W)乳剤とが存在する。
【0007】
このような乳剤液滴を生成するための乳化装置は、2つの基板を互いに接着して作製され、1つの基板にはその上に設定された形状の流路が形成され、他の1つの基板には前記流路にオイルと水を注入する注入口が形成される。
【0008】
しかし、従来製造された高分子粒子の場合、気孔形成のために注入される気孔形成物質の粘度が高くて乳化装置内での吸着によって再使用が難しく、生産速度が減少する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生産効率性の高い方法で製造され、タンパク質精製用カラムで高いタンパク質精製性能を実現するのに適した粒子サイズおよび気孔サイズを有する多孔性高分子粒子を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記多孔性高分子粒子を含むタンパク質精製用カラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本明細書では、高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散し、50nm~500nmの直径を有する気孔;を含み、下記の数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol以上5000μmol未満である、多孔性高分子粒子を提供する。
【0012】
[数式1]
エポキシ含有量(μmol/g)=[(V0-V)×C塩基×1000]/W
【0013】
前記数式1中、Vは、多孔性高分子粒子を含む実験群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、V0は、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、C塩基は、滴定に使用された塩基の濃度(M)であり、Wは、滴定に使用された多孔性高分子粒子の質量(g)である。
【0014】
本明細書ではまた、前記多孔性高分子粒子を含む、タンパク質精製用カラムが提供される。
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態による多孔性高分子粒子およびこれを用いたタンパク質精製用カラムについてより詳細に説明する。
【0016】
本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0017】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0018】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0019】
そして、本明細書において、「第1」および「第2」などの序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に、第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0020】
本明細書において、「多孔性粒子」とは、粒子の内部および/または表面に気孔を有する粒子を意味することができる。
【0021】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む意味である。
【0022】
本明細書において、特に異なって定義したり説明しない以上、製造過程が行われる温度(または各製造段階)や製造された粒子が有する数値特性が計算または測定される温度は常温である。具体的には、本出願において、「常温」とは、特に加温または減温しない状態の温度であって、例えば、15℃~30℃、または20℃~30℃の範囲の温度を意味することができる。
【0023】
本明細書において、置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物中の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子の置換される位置、つまり置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;1級アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子の1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0026】
本明細書において、芳香族(aromatic)は、ヒュッケル則(Huckels Rule)を満足する特性であって、前記ヒュッケル則により、次の3つの条件をすべて満足するものを芳香族と定義できる。
【0027】
1)中空のp-オービタル、不飽和結合、ホール電子対などによって完全にコンジュゲーションをなしている4n+2個の電子が存在しなければならない。
2)4n+2個の電子は平面形態の異性体を構成しなければならず、環構造をなしていなければならない。
3)環のすべての原子がコンジュゲーションに参加できなければならない。
【0028】
本明細書において、脂肪族(aliphatic)は、上述した芳香族を除いた残りの有機化合物を意味する。
【0029】
本明細書において、アルキル基は、アルカン(alkane)に由来する1価の官能基で、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、前記直鎖アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。また、前記分枝鎖アルキル基の炭素数は3~20である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,6-ジメチルヘプタン-4-イルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は、置換もしくは非置換であってもよいし、置換される場合、置換基の例示は上述した通りである。
【0030】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0031】
1.多孔性高分子粒子
発明の一実施形態によれば、高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散し、50nm~500nmの直径を有する気孔;を含み、下記の数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol以上5000μmol未満である、多孔性高分子粒子が提供できる。
【0032】
[数式1]
エポキシ含有量(μmol/g)=[(Vo-V)×C塩基×1000]/W
【0033】
前記数式1中、Vは、多孔性高分子粒子を含む実験群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、Voは、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、C塩基は、滴定に使用された塩基の濃度(M)であり、Wは、滴定に使用された多孔性高分子粒子の質量(g)である。
【0034】
本発明者らは、前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、粒子に分布した気孔の直径が50nm~500nmに調節されて、広い表面積を提供して、リガンド付着などの過程により医薬品の製作に使用されるタンパク質精製用粒子への応用に適合できるという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0035】
特に、前記気孔は、後述のように、1種の単一気孔誘導物質から誘導されることによって、粒子製造工程が簡素化され、前記1種の単一気孔誘導物質が低い粘度を有することによって、ステップ乳化装置を速い速度で通過して工程効率性が高くなる。
【0036】
また、前記気孔を形成する1種の単一気孔誘導物質は、高分子マトリックスを形成する単量体、架橋剤および重合物に対する適当な混和性を有し、多孔性高分子粒子の重合時、上述した適正範囲のサイズの気孔を安定的に形成することができる。
【0037】
その一方、従来のような、2種以上の気孔誘導物質を混合する場合と比較して、同等水準以上の優れたタンパク質精製効率が達成可能であることを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0038】
また、前記気孔がアルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含む気孔誘導物質から誘導される場合には、従来のような、アルコール系化合物1種、あるいは芳香族炭化水素系化合物1種のみ使用していた時とは全く異なる気孔特性の気孔を導入して、リガンド付着などの過程により医薬品の製作に使用されるタンパク質精製用粒子への応用に最適な性能を実現することができる。
【0039】
さらに、前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、ステップ乳化装置により製造されて、均一なサイズの粒子の生産が可能になり、それによって粒子性能が最大化できる。
【0040】
具体的には、前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、高分子マトリックスを含むことができる。前記マトリックスは、多孔性高分子粒子の基材(substrate)、母体あるいはバインダー(binder)として作用し、前記マトリックスの内部あるいは外部に気孔が分散することができる。
【0041】
前記高分子マトリックスは、単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。前記単量体由来の繰り返し単位は、単量体化合物の重合によって形成される高分子に含まれる繰り返し単位であって、前記単量体は特に限定されないが、例えば、前記単量体は、エポキシ基を含む単量体であって、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate)、グリシジルアクリレート(glycidyl acrylate)、グリシジルアクリルアミド(glycidyl acrylamide)が単独で、あるいはエポキシ基を含まない単量体と混合されて使用できる。
【0042】
前記エポキシ基を含まない単量体としては、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、メチルアクリレート(methyl acrylate)、エチルアクリレート(ethyl acrylate)、エチルヘキシルアクリレート(ethyl hexyl acrylate)、ブチルアクリレート(butyl acrylate)、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)、N-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide)、N-ブチルアクリレート(N-butyl acrylate)などがある。
【0043】
前記高分子マトリックスは、架橋剤由来の繰り返し単位をさらに含むことができる。前記架橋剤の種類は特に制限されないが、例えば、エチレングリコールジメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが使用できる。あるいは、前記列挙された架橋剤のうち1以上の成分が共に使用されてもよい。粒子の親水性表面の形成などを考慮する時、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0044】
一方、前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、気孔を含むことができる。前記気孔は、後述する気孔誘導物質1種~2種から誘導される。前記気孔誘導物質(ポロゲン)は、多孔性高分子粒子を製造する過程で使用される粒子前駆体である液滴内に含まれ、液滴から多孔性高分子粒子を形成する気孔形成過程で気孔に転換される。
【0045】
また、前記気孔がアルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含む気孔誘導物質から誘導される場合には、従来のような、アルコール系化合物1種、あるいは芳香族炭化水素系化合物1種のみ使用していた時とは全く異なる気孔特性の気孔を導入して、リガンド付着などの過程により医薬品の製作に使用されるタンパク質精製用粒子への応用に最適な性能を実現することができる。
【0046】
前記気孔は、前記高分子マトリックスに分散することができる。前記マトリックスの内部あるいは外部に気孔が分散することができる。
【0047】
前記気孔は、50nm~500nm、または50nm~400nm、または50nm~300nm、または50nm~250nm、または50nm~200nm、または100nm~400nmの直径を有することができる。特に、前記気孔径は、前記多孔性高分子粒子の内部あるいは表面に形成された気孔に対して測定した値であってもよく、その測定方法は限定されないが、例えば、SEMによって測定可能である。
【0048】
具体的には、前記多孔性高分子粒子は、SEMによって測定した粒子表面の気孔径が50nm~500nm、または50nm~400nm、または50nm~300nm、または50nm~250nm、または50nm~200nm、または100nm~400nmであってもよい。
【0049】
前記気孔径は、多様な形状を有する気孔別に、気孔の形状に対する重心点を通る直線が気孔の境界線と出会う2つの地点間の距離を意味することができる。つまり、前記気孔が50nm~500nmの直径を有するというのは、前記気孔径が最大500nm以下であり、最小50nm以上であることを意味する。
【0050】
これによって、前記多孔性高分子粒子は、広い表面積を提供して、リガンド付着などの過程により医薬品の製作に使用されるタンパク質精製用粒子への応用に適することができる。これに対し、前記気孔径が50nm未満と過度に減少すると、リガンドおよびターゲットタンパク質が付着する十分な空間が確保されずに精製性能が低下する問題が発生することがある。また、前記気孔径が500nm超過と過度に増加すると、粒子の強度が弱くなり、粒子の比表面積が小さくなって精製性能が低下する問題が発生することがある。
【0051】
一方、前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、下記の数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が、上限の数値範囲が5000μmol未満、または4000μmol未満、または3000μmol未満、または2700μmol未満、または2500μmol未満、または2000μmol未満、または1500μmol未満、または1300μmol未満、または1150μmol未満、または1000μmol未満であってもよく、下限の数値範囲が500μmol以上、または800μmol以上であってもよい。前記上限の数値範囲と下限の数値範囲とを組み合わせて、下限と上限との間の数値範囲も満足することができる。前記下限と上限との間の数値範囲の一例を挙げると、500μmol以上5000μmol未満であってもよい。
【0052】
前記エポキシ含有量は、多孔性高分子粒子に含まれている高分子マトリックス内に含まれているエポキシ官能基の含有量を意味し、下記の数式1の滴定法により測定することができる。
【0053】
[数式1]
エポキシ含有量(μmol)=[(Vo-V)×C塩基×1000]/W
【0054】
前記数式1中、Vは、多孔性高分子粒子を含む実験群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、Voは、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料の滴定に使用された塩基の量(mL)であり、C塩基は、滴定に使用された塩基の濃度(M)であり、Wは、滴定に使用された多孔性高分子粒子の質量(g)である。
【0055】
前記数式1中、多孔性高分子粒子を含む実験群試料は、多孔性高分子粒子を溶媒に溶かした後、指示薬を添加した試料に相当し、具体的な溶媒、指示薬の種類は特別な制限なく使用可能である。ただし、前記多孔性高分子粒子を含む実験群試料の一例を挙げて説明すれば、多孔性高分子粒子0.1gを1mL HCl/アセトン(acetone)溶液(体積比1/40)と混合して4分間超音波処理(sonication)を進行させた混合液に、インジケータ(Indicator)溶液(0.1%クレゾールレッド(cresol red)と0.1%チモールブルー(thymol blue)とを1:3の体積比で混合後、1~1000mMの濃度範囲のNaOHを用いてpH7.0に合わせる)を添加した溶液が挙げられる。
【0056】
前記数式1中、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料は、多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を溶媒に溶かしたことを除けば、前記実験群試料と同一である。前記対照群試料の一例を挙げて説明すれば、蒸留水0.1gを1mL HCl/アセトン(acetone)溶液(体積比1/40)と混合して4分間超音波処理(sonication)を進行させた混合液に、インジケータ(Indicator)溶液(0.1%クレゾールレッド(cresol red)と0.1%チモールブルー(thymol blue)とを1:3の体積比で混合後、1~1000mMの濃度範囲のNaOHを用いてpH7.0に合わせる)を添加した溶液が挙げられる。
【0057】
前記数式1中、滴定に使用された塩基の例は大きく限定されず、通常、酸塩基滴定分野に使用される塩基を制限なく適用可能である。ただし、前記滴定に使用された塩基の一例を挙げると、NaOHが挙げられる。
【0058】
前記一実施形態の多孔性高分子粒子は、前記の数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol以上5000μmol未満を満足することによって、上述した適正範囲の気孔を安定的に大量形成できるというメリットがある。
【0059】
前記数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が5000μmol以上などと過度に増加すると、気孔誘導物質との親和性が低いエポキシ含有単量体によって単量体(あるいは架橋剤)による高分子マトリックスの形成が十分に行われず、気孔径が過度に増加することによって粒子の強度が弱くなり、粒子の比表面積が小さくなって精製性能が低下する問題が発生することがある。
【0060】
また、前記数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol未満などと過度に減少すると、気孔誘導物質との親和性が低いエポキシ含有単量体以外の単量体(あるいは架橋剤)による高分子マトリックスの形成が過度になって、気孔径が過度に減少することによって、リガンドおよびターゲットタンパク質が付着する十分な空間が確保されずに精製性能が低下する問題が発生することがある。
【0061】
一方、前記多孔性高分子粒子は、光学顕微鏡によって測定した粒子径が10μm~150μm、または30μm~50μm、または35μm~45μmであってもよい。タンパク質の精製時には、カラムの内部をタンパク質精製用粒子で充填し、精製しようとする物質を流すが、タンパク質精製用粒子のサイズが前記範囲より小さい場合には、タンパク質粒子などの反応物がカラムを通過することが難しい。また、前記範囲を超える場合、つまり、カラム内に存在する充填材の大きさが過度に大きい場合には、カラム内の空き空間(粒子と粒子との間の空間)が多く生じるため、精製しようとする物質が粒子表面に付着せずにカラムを通過できるため、精製効率が低くなりうる。
【0062】
前記粒子径は、多様な形状を有する粒子別に、粒子の重心点を通る直線が粒子の境界線と出会う2つの地点間の距離を意味することができる。つまり、前記多孔性高分子粒子が10μm~150μmの直径を有するというのは、前記多孔性高分子粒子の直径が最大150μm以下であり、最小10μm以上であることを意味する。
【0063】
また、前記多孔性高分子粒子は、光学顕微鏡によって測定した粒子径の変動係数が20%以下、または15%以下、または10%以下、または7%以下、または6.8%以下、または0.1%以上、または0.1%~20%、または0.1%~15%、または0.1%~10%、または0.1%~7%、または0.1%~6.8%であってもよい。
【0064】
前記多孔性高分子粒子の変動係数を測定する方法の例が限定されるものではないが、例えば、下記の数式2によって求められる。
【0065】
[数式2]
変動係数(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
【0066】
前記多孔性高分子粒子の粒子径の変動係数が上述した範囲に小さくなることによって、前記多孔性高分子粒子は、均一なサイズの粒子の生産が可能になり、それによって粒子性能が最大化できる。
【0067】
これに対し、前記多孔性高分子粒子の粒子径の変動係数が20%超過などと過度に増加する場合、粒子径の偏差が大きくて不均一で巨大粒子が発生することによって、医薬品の製作に使用されるタンパク質精製用粒子への応用に不適でありうる。
【0068】
一方、前記多孔性高分子粒子は、球形状の粒子であってもよい。球形状は、略球形に近い形状を有する形状を意味するもので、肉眼によっても確認できるが、例えば、粒子の形状で最も長い次元の長さを平均径で割った値が約0.80以上のものを意味することができる。粒子が球形状を有する場合、広い表面積を確保することができ、タンパク質の精製性能を高めることができる。
【0069】
一方、前記多孔性高分子粒子は、タンパク質精製用粒子であってもよい。
【0070】
一方、前記多孔性高分子粒子は、気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液および連続相水溶液の重合反応生成物であってもよい。前記重合により多孔性高分子粒子が製造できる。この時、前記重合は、分散相溶液と連続相水溶液とを混合した後に形成された連続相と分散相との界面(つまり、分散相液滴の表面)および/または分散相の内部で行われる。
【0071】
つまり、前記一実施形態の多孔性高分子粒子を製造する方法の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液;および連続相水溶液;を混合し、重合反応させる段階を含む多孔性高分子粒子の製造方法を使用することができる。
【0072】
前記分散相溶液は、連続相水溶液と混合された後に分散相(または液滴)を形成できる組成物を意味する。前記連続相水溶液は、分散相溶液と混合された後に連続相を形成できる組成物を意味する。
【0073】
前記連続相は、水相であってもよい。連続相として使用できる水溶液は、これに限定されないが、水と、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤とを含む溶液であってもよい。例えば、イオン性界面活性剤は、硫酸ドデシルナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)であってもよいし、非イオン性界面活性剤は、ツイン(Tween)20、ツイン40、ツイン60、ツイン80、トリトン(Triton)X-100、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)などであってもよい。一つの例において、連続相として0.5%のSDS溶液が使用できる。特に制限されるわけではないが、水は、蒸留水または脱イオン水であってもよい。
【0074】
一方、前記分散相は大きく制限されないが、連続相に不溶性を有し、後の架橋反応により重合可能な物質であってもよい。前記分散相溶液は、気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含むことができる。
【0075】
前記単量体は特に限定されないが、例えば、前記単量体は、エポキシ基を含む単量体であって、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate)、グリシジルアクリレート(glycidyl acrylate)、グリシジルアクリルアミド(glycidyl acrylamide)が単独で、あるいはエポキシ基を含まない単量体と混合されて使用できる。
【0076】
前記エポキシ基を含まない単量体としては、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、メチルアクリレート(methyl acrylate)、エチルアクリレート(ethyl acrylate)、エチルヘキシルアクリレート(ethyl hexyl acrylate)、ブチルアクリレート(butyl acrylate)、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)、N-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide)、N-ブチルアクリレート(N-butyl acrylate)などがある。
【0077】
前記分散相溶液において、単量体の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~60重量%、または10重量%~50重量%、または10重量%~40重量%、または17重量%~33重量%であってもよい。
【0078】
前記分散相溶液において、単量体の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として60重量%超過などと過度に増加すると、数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が5000μmol以上などと過度に増加し、気孔誘導物質との親和性が低いエポキシ含有単量体によって単量体(あるいは架橋剤)による高分子マトリックスの形成が十分に行われず、気孔径が過度に増加することによって粒子の強度が弱くなり、粒子の比表面積が小さくなって精製性能が低下する問題が発生することがある。
【0079】
また、前記分散相溶液において、単量体の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%未満などと過度に減少すると、数式1によって測定された多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量が500μmol未満などと過度に減少し、気孔誘導物質との親和性が低いエポキシ含有単量体以外の単量体(あるいは架橋剤)による高分子マトリックスの形成が過度になって、気孔径が過度に減少することによって、リガンドおよびターゲットタンパク質が付着する十分な空間が確保されずに精製性能が低下する問題が発生することがある。
【0080】
前記架橋剤の種類は特に制限されないが、例えば、エチレングリコールジメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが使用できる。あるいは、前記列挙された架橋剤のうち1以上の成分が共に使用されてもよい。粒子の親水性表面の形成などを考慮する時、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0081】
前記分散相溶液において、架橋剤の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~60重量%、または10重量%~50重量%、または10重量%~40重量%、または17重量%~37重量%であってもよい。
【0082】
一つの例において、分散相として、グリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate;GMA)とエチレングリコールジメタクリレート(Ethylene glycol dimethacrylate;EGDMA)とを5:1~1:5、または4:1~1:4、または3:1~1:3、または2:1~1:2の質量比で混合した溶液であってもよい。
【0083】
つまり、前記単量体1重量部に対する架橋剤の含有量比率が0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~2重量部であってもよい。上述した含有量を満足する場合、安定的にエマルジョンを形成し、所望する水準の架橋による粒子強度と形態特性などを確保するのに有利である。
【0084】
一方、前記気孔誘導物質は、1種の単一化合物または2種の混合物を含むことができる。前記分散相溶液において、気孔誘導物質1種~2種の含有量が、分散相溶液100重量%を基準として10重量%~80重量%、または20重量%~80重量%、または40重量%~80重量%、または45重量%~80重量%、または44重量%~55重量%であってもよい。
【0085】
気孔誘導物質の含有量が10重量%未満と過度に減少すると、前記多孔性高分子粒子内の気孔の平均径が過度に減少してタンパク質結合のための十分な空間を確保しにくい問題がある。これに対し、気孔誘導物質の含有量が80重量%超過と過度に増加すると、前記多孔性高分子粒子内の気孔の平均径が過度に増加して粒子の強度を確保しにくい問題がある。
【0086】
前記気孔誘導物質1種は、20℃で測定した粘度が0.5cP~15cP、または0.8cP~15cP、または0.8cP~10cP、または0.8cP~5cP、または0.8cP~1.5cP、または0.8cP~1.2cPであることを特徴とする。前記1種の単一気孔誘導物質が低い粘度を有することによって、ステップ乳化装置を速い速度で通過して工程効率性が高くなる。
【0087】
前記粘度を測定する方法の例が大きく限定されるものではなく、従来の粘度測定方法を制限なく適用可能である。ただし、一例を挙げて説明すれば、前記粘度は、20~25℃の温度で、Brookfield粘度計のDV2T装置に低粘度測定用のSpindle61番を装着した後、固定RPM200で粘度を測定することができる。しかし、これに必ずしも限定されるものではなく、一般に、RPM値が同一であり、測定される試料(例えば、溶液)の粘度領域が10~1000cp程度の水準であれば、その他の測定装置で粘度を測定することもできる。
【0088】
前記1種の気孔誘導物質は、芳香族炭化水素系化合物、ケトン系化合物、アセテート系化合物からなる群より選択された1種の化合物を含むことができる。つまり、前記1種の気孔誘導物質は、芳香族炭化水素系化合物1種、ケトン系化合物1種、またはアセテート系化合物1種のいずれか1つの化合物を含むことができる。
【0089】
前記芳香族炭化水素系化合物は、芳香族炭化水素化合物、または前記芳香族炭化水素化合物に含まれている水素原子の一部がその他の官能基で置換された誘導体化合物を含むことができる。具体的には、前記芳香族炭化水素系化合物は、炭素数1~10のアルキル基で1以上置換された炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物を含むことができる。前記炭素数1~10のアルキル基で1以上置換された炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物において、炭素数1~10のアルキル基は、少なくとも1以上、または1~6、または1~5、または1~4個置換されていてもよい。前記芳香族炭化水素系化合物の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、メシチレンを含むことができる。
【0090】
前記ケトン系化合物は、ケトン化合物、または前記ケトン化合物に含まれている水素原子の一部がその他の官能基で置換された誘導体化合物を含むことができる。具体的には、前記ケトン系化合物は、炭素数5~20の脂肪族ケトン化合物を含むことができる。前記ケトン系化合物の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、ジイソブチルケトンを含むことができる。
【0091】
前記アセテート系化合物は、アセテート化合物、または前記アセテート化合物に含まれている水素原子の一部がその他の官能基で置換された誘導体化合物を含むことができる。具体的には、前記アセテート系化合物は、炭素数6~20の脂肪族アセテート化合物を含むことができる。前記アセテート系化合物の例が大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、アミルアセテート、またはヘキシルアセテートを含むことができる。
【0092】
一方、前記気孔誘導物質は、アルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含むことができる。前記分散相溶液において、アルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含む気孔誘導物質の含有量が10重量%~80重量%であってもよい。気孔誘導物質の含有量が10重量%未満と過度に減少すると、前記多孔性高分子粒子内の気孔の平均径が過度に減少してタンパク質結合のための十分な空間を確保しにくい問題がある。これに対し、気孔誘導物質の含有量が80重量%超過と過度に増加すると、前記多孔性高分子粒子内の気孔の平均径が過度に増加して粒子の強度を確保しにくい問題がある。
【0093】
一方、前記アルコール系化合物100重量部に対して、芳香族炭化水素系化合物の含有量が10重量部~1000重量部であってもよい。前記範囲内でタンパク質精製用粒子への応用に適した気孔サイズ、粒子サイズを満足することができる。
【0094】
前記アルコール系化合物は、炭素数が11以下、または10以下、または1以上、または1~11、または1~10であってもよい。前記アルコール系化合物の炭素数が11超過などと過度に増加する場合には、粒子の重合時、分散相内で相分離が過度に早く起こるため、多孔性粒子ではないコア-シェル形態の粒子が形成されうる。タンパク質の精製時には、精製しようとするタンパク質が付着できるリガンドを粒子表面に付着させるが、コアシェル形態の粒子の場合、多孔性粒子に比べてリガンドが付着できるサイト(site)が少ないため、タンパク質の精製に不適である。
【0095】
より具体的には、前記アルコール系化合物は、炭素数1~11の脂肪族アルコールを含むことができる。前記炭素数1~11の脂肪族アルコールは、置換もしくは非置換であってもよいし、置換される場合、置換基の例示は上述した通りである。
【0096】
前記炭素数1~11の脂肪族アルコールの具体例が大きく限定されるものではないが、例えば、1-デカノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノールからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0097】
前記芳香族炭化水素系化合物は、炭素数が11以下、または10以下、または6以上、または6~11、または6~10であってもよい。前記芳香族炭化水素系化合物の代わりに脂肪族炭化水素系化合物を使用する場合には、粒子の重合時、分散相内で相分離が過度に早く起こるため、多孔性粒子ではないコア-シェル形態の粒子が形成されうる。タンパク質の精製時には、精製しようとするタンパク質が付着できるリガンドを粒子表面に付着させるが、コアシェル形態の粒子の場合、多孔性粒子に比べてリガンドが付着できるサイト(site)が少ないため、タンパク質の精製に不適である。
【0098】
また、前記芳香族炭化水素系化合物は、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数6~8の芳香族炭化水素化合物を含むことができる。前記芳香族炭化水素系化合物は、トルエンを含むことができる。
【0099】
一つの例において、前記分散相溶液は、単量体100重量部に対して、前記気孔誘導物質10重量部~1000重量部、または60重量部~500重量部を含むことができる。具体的には、前記単量体100重量部に対して、気孔誘導物質の含有量の下限は、例えば、10重量部以上、60重量部以上、200重量部以上、250重量部以上、300重量部以上、350重量部以上、400重量部以上、450重量部以上または500重量部以上であってもよい。また、前記単量体100重量部に対して、気孔誘導物質の含有量の上限は、例えば、1000重量部以下、550重量部以下、500重量部以下、450重量部以下、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、250重量部以下または200重量部以下であってもよい。上述した含有量を満足する場合、安定的にエマルジョンを形成し、所望する水準の架橋による粒子強度と形態特性などを確保するのに有利である。
【0100】
前記分散相溶液は、開始剤をさらに含むことができる。前記開始剤は、本出願の製造方法による粒子特性の確保が妨げられなければ、開始剤の種類は、光重合開始剤または熱重合開始剤など特に限定されず、従来の高分子粒子の製造分野で幅広く使用される多様な例を制限なく適用可能である。
【0101】
一例を挙げて説明すれば、ケトン開始剤、有機パーオキサイド開始剤、アゾ開始剤などの開始剤が使用できる。具体的には、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone)、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(2-Hydroxy-4’-(2-hydroxyethoxy)-2-methylpropiophenone)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-Hydroxycyclohexyl phenyl ketone)、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3またはジ-クミルパーオキサイドなどの化合物、およびこれらの混合物が使用できるが、これらに制限されるわけではない。
【0102】
前記開始剤の含有量は特に制限されない。目的とする粒子の特性の確保が妨げられない水準で適切な含有量だけ開始剤が使用できる。例えば、分散相溶液100重量部に対して、0.01重量部以上、具体的には、0.05重量部以上、0.10重量部以上、0.15重量部以上または0.20重量部以上の開始剤を含むことができる。そして、開始剤の前記含有量の上限は、例えば、5.0重量部以下、具体的には、4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、2.5重量部以下、2.0重量部以下、1.5重量部以下または1.0重量部以下であってもよい。
【0103】
前記重合は、粒子特性の確保が妨げられない条件で行われる。例えば、重合が行われる温度や撹拌速度などは当業者が適切に制御して行われる。
【0104】
一方、前記多孔性高分子粒子は、気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液および連続相水溶液がステップ乳化装置を通過して得られた液滴の重合反応生成物であってもよい。前記ステップ乳化装置を用いて多様な種類のO/W液滴を均一なサイズに作製することができる。気孔誘導物質、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液、連続相水溶液に関する説明は上述したものと同一である。
【0105】
これに対し、ステップ乳化装置ではない既存のO/W液滴製造装置(例えば、バッチ懸濁重合法)の場合、粒子径変動係数が急増して粒子径の偏差が大きくて不均一な問題が発生することがあった。
【0106】
前記ステップ乳化装置は、分散相溶液を注入する第1注入口;連続相溶液を注入する第2注入口;分散相溶液が流れる分散相流路;連続相溶液が流れる連続相流路;および分散相溶液が連続相流路に流れて液滴を形成する微細チャネル;を含むことができる。
【0107】
特に、前記1種の単一気孔誘導物質の粘度が低くてステップ乳化装置を通過して液滴を得る時、最大液滴生成速度が高くなり、ステップ乳化装置の内部にくっつかず、繰り返し使用時にも液滴の生成が円滑で、工程効率性が向上した。
【0108】
また、前記アルコール系化合物および芳香族炭化水素系化合物の混合物を含む気孔誘導物質の粘度が低くて、ステップ乳化装置を通過して液滴を得る時、最大液滴生成速度が高くなり、ステップ乳化装置の内部にくっつかず、繰り返し使用時にも液滴の生成が円滑で、工程効率性が向上した。
【0109】
前記分散相流路を流れる分散相の速度は、これに限定されないが、1μl/min~10ml/minであってもよい。前記連続相流路を流れる連続相の速度は、これに限定されないが、0.1μl/min~100ml/minであってもよい。
【0110】
具体的には、前記多孔性高分子粒子は、前記気孔誘導物質1種~2種、単量体、および架橋剤を含む分散相溶液および連続相水溶液をステップ乳化装置を通過させる段階は、前記分散相溶液を第1注入口に注入する段階;前記連続相溶液を第2注入口に注入する段階;および分散相流路を流れる分散相が微細チャネルを通して連続相流路に流れて液滴を形成する段階;を含む製造方法によって得られる。
【0111】
より具体的には、下記の
図10および
図11を参照して説明すれば、前記ステップ乳化装置は、設定された乳化パターン10が形成されたシリコン基板1と、第1、第2注入口52、54および排出口56が形成されたガラス基板2とを互いに接着し、互いに接着したシリコン基板1とガラス基板2を熱酸化させることによって作製される。
【0112】
乳化装置が準備されると、分散相溶液を第1注入口52を通して分散相を分散相チャネル20の分散相供給部22に注入する(S210)。ここで、分散相には、その目的に応じて、モノマー、架橋剤、開始剤などが混合されてもよい。前記分散相は、シリンジポンプにより第1注入口52に注入できるが、これに限定されない。第1注入口52を通して分散相供給部22に注入された分散相は、分散相流路24を流れる。この時、分散相の速度は、これに限定されないが、1μl/min~10ml/minであってもよい。分散相流路24を流れる分散相は、複数の微細チャネル40を通して連続相流路34に流れる。
【0113】
また、連続相を第2注入口54を通して連続相チャネル30の連続相供給部32に注入する(S220)。前記連続相は、シリンジポンプにより第2注入口54に注入できるが、これに限定されない。第2注入口54を通して連続相供給部32に注入された連続相は、連続相流路34を流れる。この時、連続相の速度は、これに限定されないが、0.1μl/min~100ml/minであってもよい。
【0114】
複数の微細チャネル40を通して連続相流路34に流れる分散相は、連続相流路34を流れる連続相に出会って、連続相に浸透してO/W液滴が形成される(S230)。
【0115】
O/W液滴は、連続相と共に連続相流路34に沿って排出部36まで流れ、排出口56を通して乳化装置の外部に排出される。
【0116】
一方、前記ステップ乳化装置で得られた液滴を重合反応させる段階で、前記重合は、光重合または熱重合がすべて可能であり、上述した分散相に光重合開始剤または熱重合開始剤を添加することによって、重合反応が行われる。前記光重合開始剤または熱重合開始剤の具体的な例や、光重合または熱重合の具体的な条件は特に限定されず、従来の高分子粒子の製造分野で幅広く使用される多様な例示、条件を制限なく適用可能である。
【0117】
2.タンパク質精製用カラム
発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態の多孔性高分子粒子を含む、タンパク質精製用カラムが提供される。前記多孔性高分子粒子に関する内容は、前記一実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0118】
前記タンパク質の例が大きく限定されるものではなく、例えば、抗体医薬品を使用することができる。前記多孔性高分子粒子は、前記タンパク質精製用カラムに使用されるビーズとして適用可能であり、前記タンパク質精製用カラムのその他の構成、構造に関する内容は、既存の精製カラム分野で広く知られた多様な構成、構造を制限なく適用可能である。
【発明の効果】
【0119】
本発明によれば、生産効率性の高い方法で製造され、タンパク質精製用カラムで高いタンパク質の精製性能を実現するのに適した粒子サイズおよび気孔サイズを有する多孔性高分子粒子、およびこれを用いたタンパク質精製用カラムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】実施例1で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(左から右に向かって、粒子表面、粒子外郭部断面、粒子中心部断面の順)を示す図である。
【
図2】実施例2で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(左から右に向かって、粒子表面、粒子外郭部断面、粒子中心部断面の順)を示す図である。
【
図3】実施例3で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(左から右に向かって、粒子表面、粒子外郭部断面、粒子中心部断面の順)を示す図である。
【
図4】実施例4で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(粒子表面)を示す図である。
【
図5】実施例5で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージを示す図である。
【
図6】実施例6で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージを示す図である。
【
図7】実施例7で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージを示す図である。
【
図8】比較例1で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(左から右に向かって、粒子表面、粒子外郭部断面、粒子中心部断面の順)を示す図である。
【
図9】比較例2で得られた多孔性高分子粒子のSEMイメージ(粒子表面)を示す図である。
【
図10】本発明の実施例による乳化装置の第1基板の平面図である。
【
図11】本発明の実施例による乳化装置の第2基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0121】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0122】
<実施例および比較例:多孔性高分子粒子の製造>
実施例1~7
1)分散相(dispersive phase)の製造
下記表1に記載の物質および含有量(含有量基準:分散相溶液100重量%)のように、単量体としてグリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate、GMA)、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(Ethylene glycol dimethacrylate、EGDMA)、気孔誘導物質(Porogen)をバイアルで撹拌した。以後、光開始剤としてirgacure651を前記撹拌液の重量に対して1重量%バイアルに追加投入し、5分程度常温で撹拌して分散相溶液を製造した。
【0123】
2)連続相(continuous phase)の製造
DI水(water)に0.5%の濃度で硫酸ドデシルナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)を溶かして連続相溶液を製造した。
【0124】
3)多孔性高分子粒子の製造
ステップ乳化装置(step emulsification microfluidic device)にコネクタを連結し、シリンジポンプを用いて第1注入口52に分散相を注入し、第2注入口54に連続相を注入して、分散相は20μl/minの速度で分散相流路24を流し、連続相は80μl/minの速度で連続相流路34を流して、光学顕微鏡によって測定した約37μmの直径の微細液滴を生成した。(下記の
図10および
図11を参照)
【0125】
生成された液滴を3%PVA(分子量85,000~125,000)水溶液に収集して液滴が溶液に均等に分散するように振った後、スポット(spot)UV硬化器を用いて光重合を進行させて多孔性高分子粒子を製造した。
【0126】
比較例1~2
1)分散相(dispersive phase)の製造
下記表1に記載の物質および含有量(含有量基準:分散相溶液100重量%)のように、単量体としてグリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate、GMA)、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(Ethylene glycol dimethacrylate、EGDMA)、気孔誘導物質(Porogen)を用いたことを除けば、前記実施例と同様の方法で分散相溶液を製造した。
【0127】
2)連続相(continuous phase)の製造
前記実施例と同様の方法で連続相溶液を製造した。
【0128】
3)多孔性高分子粒子の製造
前記比較例で得られた分散相を用いたことを除けば、前記実施例と同様の方法で多孔性高分子粒子を製造した。
【0129】
比較例3~4
下記表1に記載の物質および含有量(含有量基準:分散相溶液100重量%)のように、グリシジルメタクリレート(GMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EDGMA)および開始剤の総体積と気孔誘導物質との体積比率1:0.5によりグリシジルメタクリレート(GMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EDGMA)および開始剤を気孔誘導物質溶液に溶解し、撹拌して、透明な均一混合溶液を形成して油相を準備した。気孔誘導物質溶液は、n-ヘキサンとドデカノールとを1:1の体積比率により混合して準備した。
【0130】
そして、安定剤として分子量1800のポリビニルアルコール(PVA)と、界面活性剤としてナトリウムドデシルスルフェート(SDS)とを脱イオン水に溶解して無色透明の均一混合溶液を形成して、安定剤の濃度0.1%、界面活性剤の濃度3.0%の水相を準備した。
【0131】
そして、機械的撹拌条件で水相に油相を添加し、重合反応を進行させ、反応液を脱イオン水とエタノールで順次洗浄して未反応残留物を除去した後、70℃で真空乾燥して多孔性高分子粒子を製造した。
【0132】
参考例1
1)分散相(dispersive phase)の製造
前記実施例5と同様の方法で分散相溶液を製造した。
【0133】
2)連続相(continuous phase)の製造
前記実施例5と同様の方法で連続相溶液を製造した。
【0134】
3)多孔性高分子粒子の製造
前記ステップ乳化装置(step emulsification microfluidic device)を用いず、既存のバッチ懸濁重合法で多孔性高分子粒子を製造した。
【0135】
<実験例>
前記実施例、比較例および参考例で得られた多孔性高分子粒子に対して、下記の方法で物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0136】
1.エポキシ含有量
(1)実験群試料の滴定
前記実施例、比較例および参考例で得られた多孔性高分子粒子0.1gを、1mL HCl/アセトン(acetone)溶液(体積比1/40)と混合して4分間超音波処理(sonication)を進行させた。前記混合液にインジケータ(Indicator)溶液(0.1%クレゾールレッド(cresol red)と0.1%チモールブルー(thymol blue)とを1:3の体積比で混合後、0.01M NaOHを用いてpH7.0に合わせる)を添加した。溶液の色がpurple-blueになるまで0.1M NaOHで滴定を進行させた。
【0137】
(2)対照群試料の滴定
前記実施例、比較例および参考例で得られた多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いたことを除けば、前記実験群試料と同様の方法で対照群試料に対して滴定を進行させた。
【0138】
(3)エポキシ含有量の測定
下記の数式1を用いて、多孔性高分子粒子1gに含まれているエポキシ含有量を計算した。
【0139】
[数式1]
エポキシ含有量(μmol/g)=[(V0-V)×CNaOH×1000]/W
【0140】
前記数式1中、
Vは、多孔性高分子粒子を含む実験群試料の滴定に使用されたNaOHの量(mL)であり、
V0は、前記実験群試料において多孔性高分子粒子の代わりに蒸留水を用いた対照群試料の滴定に使用されたNaOHの量(mL)であり、
CNaOHは、滴定に使用されたNaOHの濃度(M)であり、
Wは、滴定に使用された多孔性高分子粒子の質量(g)である。
【0141】
2.粒子径および変動係数
前記実施例、比較例および参考例で得られた多孔性高分子粒子に対して、常温で光学顕微鏡を用いて粒子を観測し、粒子の直径およびその変動係数(coefficient of variant、CV)を測定した。具体的には、100個の粒子試料に対して常温で光学顕微鏡を用いて測定し、下記の数式2によって求めた。
【0142】
[数式2]
変動係数(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
【0143】
3.気孔径
前記実施例、比較例および参考例で得られた多孔性高分子粒子に対して、SEMイメージを通して粒子表面、外郭部切断面、中心部切断面の気孔径範囲を確認した(下記の
図1~
図9参照)。
【0144】
【0145】
-メシチレン(Mesitylene):粘度:1.0cP(20℃)
-ジイソブチルケトン(Diisobutyl ketone):粘度:0.9cP(20℃)
-アミルアセテート(Amyl acetate):粘度:0.9cP(20℃)
-ヘキシルアセテート(Hexyl acetate):粘度:1.2cP(20℃)
-1-デカノール:粘度:12.0cP(20℃)
-トルエン(Toluene):粘度:0.56cP(25℃)
-n-ブチルアセテート(N-butyl acetate):粘度:0.685cP(25℃)
【符号の説明】
【0146】
1:第1基板、2:第2基板
10:乳化パターン、20:分散相チャネル
22:分散相供給部、24:分散相流路
30:連続相チャネル、32:連続相供給部
34:連続相流路、36:排出部
40:微細チャネル、52:第1注入口
54:第2注入口、56:排出口
【国際調査報告】