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特表2024-541011ビーム均一性制御のための可変電極厚さを有するイオン抽出アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ビーム均一性制御のための可変電極厚さを有するイオン抽出アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20241029BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20241029BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524647
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022044855
(87)【国際公開番号】W WO2023075966
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】17/512,310
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リハンスキー, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ, アラン ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ルボミルスキー, ドミトリー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101AA34
5C101AA36
5C101DD03
5C101DD25
5C101DD38
(57)【要約】
イオン源のためのイオン抽出アセンブリが提供される。イオン抽出アセンブリは、複数の電極であって、当該複数の電極が、プラズマチャンバに連結するように配置されたプラズマ対向電極、及びプラズマ対向電極の外側に配置された基板対向電極を備える、複数の電極を含み得る。複数電極のうちの少なくとも1つの電極は、複数の孔を画定するグリッド構造を含み得、当該少なくとも1つの電極が、不均一な厚さを有し、少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を備える、イオン源のためのイオン抽出アセンブリであって、
前記複数の電極が、
プラズマチャンバに連結するように配置された、プラズマ対向電極、及び
前記プラズマ対向電極の外側に配置された、基板対向電極
を備え、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの電極が、
複数の孔を画定するグリッド構造を有し、前記少なくとも1つの電極が、不均一な厚さを有し、前記少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、前記少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる、イオン抽出アセンブリ。
【請求項2】
前記グリッド構造が、孔の2次元アレイを画定する、請求項1に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項3】
前記グリッド構造が、前記中間領域から前記外側領域へグリッドの厚さにおける線形変動、又は前記中間領域から前記外側領域へグリッドの厚さにおける非単調変動を規定する、請求項1に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項4】
前記グリッド構造が、ドーム形を画定する、請求項1に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項5】
前記グリッド構造が、前記中間領域に1センチメートル以下の厚さを有し、前記外側領域に少なくとも1ミリメートルの4分の1の厚さを有する、請求項1に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項6】
前記イオン抽出アセンブリが、
前記プラズマ対向電極と前記基板対向電極との間に配置された、抑制電極を更に備え、前記基板対向電極が、接地電極として機能する、請求項1に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電極が、前記プラズマ対向電極、前記抑制電極、又は前記プラズマ対向電極と前記抑制電極の両方を含む、請求項6に記載のイオン抽出アセンブリ。
【請求項8】
プラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバの片側に沿って配置されたイオン抽出アセンブリと
を備える、イオン源であって、
前記イオン抽出アセンブリが、プラズマ対向電極を含む複数の電極を備え、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの電極が、
複数の孔を画定するグリッド構造を有し、前記少なくとも1つの電極が、不均一な厚さを有し、前記少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、前記少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる、イオン源。
【請求項9】
前記グリッド構造が、孔の2次元アレイを画定する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項10】
前記グリッド構造が、前記中間領域から前記外側領域へグリッドの厚さにおける線形変動を規定する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項11】
前記グリッド構造が、ドーム形を画定する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項12】
前記グリッド構造が、前記中間領域に1センチメートル未満の厚さを有し、前記外側領域に少なくとも1ミリメートルの4分の1の厚さを有する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項13】
前記イオン抽出アセンブリが、
前記プラズマ対向電極に隣接して配置された、抑制電極と
前記抑制電極の外側に配置された、接地電極と
を更に備え、前記少なくとも1つの電極が、前記プラズマ対向電極、前記抑制電極、又は前記プラズマ対向電極と前記抑制電極の両方を含む、請求項8に記載のイオン源。
【請求項14】
プラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバ内でプラズマを生成するために連結された電力発生器と、
前記プラズマチャンバの片側に沿って配置された、イオン抽出アセンブリと
前記イオン抽出アセンブリに対向して配置された、基板ステージと
を備える、処理システムであって、前記イオン抽出アセンブリが、プラズマ対向電極を含む複数の電極を備え、前記プラズマ対向電極が、
複数の孔を画定するグリッド構造を有し、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの電極が、不均一な厚さを有し、前記少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、前記少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる、処理システム。
【請求項15】
前記グリッド構造が、孔の2次元アレイを画定する、請求項14に記載の処理システム。
【請求項16】
前記グリッド構造が、前記中間領域から前記外側領域へグリッドの厚さにおける線形変動を規定する、請求項14に記載の処理システム。
【請求項17】
前記グリッド構造が、ドーム形を画定する、請求項14に記載の処理システム。
【請求項18】
前記イオン抽出アセンブリが、
前記プラズマ対向電極に隣接して配置された、抑制電極と
前記抑制電極の外側に配置された、接地電極と
を更に備え、前記少なくとも1つの電極が、前記プラズマ対向電極、前記抑制電極、又は前記プラズマ対向電極と前記抑制電極の両方を含む、請求項14に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、「ION EXTRACTION ASSEMBLY HAVING VARIABLE ELECTRODE THICKNESS FOR BEAM UNIFORMITY CONTROL」と題され、2021年10月27日に出願された米国非仮特許出願第17/512,310号の優先権を主張するもので、その全ての内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
[0002]本開示は、概して処理装置に関し、より具体的には、プラズマベースのイオン源に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]現在、プラズマは、基板エッチング、層堆積、イオン注入、及び他のプロセスなどの用途のために、電子デバイスなどの基板を処理するために使用されている。幾つかの処理装置は、基板処理用のイオン源として機能するプラズマを生成するプラズマチャンバを採用する。イオンビームは、抽出アセンブリによって抽出され、隣接するチャンバ内の基板に向けられ得る。このプラズマは様々な方法で生成され得る。
【0004】
[0004]様々な商業の体系において、プラズマチャンバは、広いイオンビームを生成するために抽出光学系を採用している。一例として、グリッドタイプの抽出光学系をプラズマチャンバの片側に沿って設置して、抽出開孔の2次元グリッドによって広いイオンビームを生成することができる。かかるグリッドは、最大0.5メートルほどの直径を有し得る。
【0005】
[0005]多くの用途では、イオンビーム電流密度の均一性がグリッド全体にわたって要求される。あるいは、特定のイオンビーム(電流密度)プロファイルが望ましい場合もある。このプロファイルを調整するために、例えば、抽出されたイオンビームの不均一性につながり得るプラズマの不均一性を補償するために、プラズマシェーパ又は磁石を採用する場合がある。かかるアプローチは複雑で、実装には比較的費用がかかり、正確に最適化するのは困難である。イオンビームプロファイルを調整するために使用される他のアプローチには、グリッド孔間のピッチを変更すること、又はグリッドの異なる領域でグリッド孔のサイズを変更することが含まれる。これらのアプローチは経験的反復によって最適化しやすく、プラズマチャンバ内のプラズマの不均一性を幾らか補償することができる。しかし、これらは、抽出されたビームレットに位置の関数として別のビーム発散を生成するという望ましくない副作用を有する。かかるビーム発散の差は、基板全体のデバイス歩留まりの均一性を低下させる恐れがある。
【0006】
[0006]これらの留意事項及び他の留意事項に関連して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0007】
[0007]一実施形態では、イオン源のためのイオン抽出アセンブリが提供される。イオン抽出アセンブリは、複数の電極であって、当該複数の電極が、プラズマチャンバに連結するように配置されたプラズマ対向電極、及びプラズマ対向電極の外側に配置された基板対向電極を含む、複数の電極を含み得る。複数の電極のうちの少なくとも1つの電極は、複数の孔を画定するグリッド構造を有し得、当該少なくとも1つの電極は、不均一な厚さを有し、少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる。
【0008】
[0008]別の実施形態では、イオン源が、プラズマチャンバと、プラズマチャンバの片側に沿って配置されたイオン抽出アセンブリとを含み得る。イオン抽出アセンブリは、プラズマ対向電極を含む複数の電極を含み得る。複数の電極のうちの少なくとも1つの電極は、複数の孔を画定するグリッド構造を有し、当該少なくとも1つの電極は、不均一な厚さを有し、少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる。
【0009】
[0009]更なる実施形態では、処理システムが、プラズマチャンバと、プラズマチャンバ内でプラズマを生成するために連結された電力発生器と、プラズマチャンバの片側に沿って配置されたイオン抽出アセンブリとを備える。イオン抽出アセンブリは、プラズマ対向電極を含む複数の電極を含み得る。プラズマ対向電極は、複数の孔を画定するグリッド構造を含み得、複数の電極のうちの少なくとも1つの電極は、不均一な厚さを有し、少なくとも1つの電極の中間領域における第1のグリッドの厚さが、少なくとも1つの電極の外側領域における第2のグリッドの厚さとは異なる。処理システムは、イオン抽出アセンブリに対向して配置された、基板ステージを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】[0010]本開示の実施形態に係る、例示的な処理システムの側面図である。
図1B】[0011]本開示の実施形態に係る、イオン抽出アセンブリの側方断面図である。
図1C】[0012]本開示の他の実施形態に係る、別のイオン抽出アセンブリの側方断面図である。
図1D】[0013]図1Cのイオン抽出アセンブリの変形の側方断面図である。
図1E】[0014]本開示の他の実施形態に係る、更なるイオン抽出アセンブリの側方断面図である。
図1F】[0015]本開示の他の実施形態に係る、更に別のイオン抽出アセンブリの側方断面図である。
図2A】[0016]既知の抽出グリッド構成を有する基準プラズマチャンバ内のシミュレーションしたプラズマ密度を示す合成図である。
図2B】[0017]図2Aのプラズマチャンバの軸に対する位置の関数としてシミュレーションした、抽出されたイオンビーム電流密度を示すグラフである。
図3A】[0018]本実施形態にしたがって配置された抽出グリッドアセンブリを有するチャンバにおけるシミュレーションしたプラズマ密度を示す合成図である。
図3B】[0019]図3Aのプラズマチャンバの軸に対する位置の関数としてシミュレーションした、抽出されたイオンビーム電流密度を示すグラフである。
図4】[0020]本開示の実施形態に係る、例示的なプラズマ対向グリッドの側方断面図である。
図5A】[0021]本開示の実施形態に係る、別の例示的な抽出グリッドの側方断面図である。
図5B】[0022]図5Aの抽出グリッドの上面斜視図である。
図6】[0023]本開示の実施形態に係る、別の例示的な抽出グリッドの側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0024]図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は単なる表現にすぎず、本開示の具体的なパラメータを描写することを意図するものではない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされない。図面では、類似の付番は類似の要素を表す。
【0012】
[0025]ここで、本開示による装置、システム及び方法を、システム及び方法の実施形態が示される添付の図面を参照しながら、以下により十分に記載する。システム及び方法は、多くの異なる形態で実現されてよく、本明細書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されない。その代わりに、これらの実施形態は、本開示が一貫しておりかつ完全となるように提供され、当業者にシステム及び方法の範囲を十分に伝える。
【0013】
[0026]図面に見られるような半導体製造デバイスの構成要素の形状寸法及び向きに対して、これらの構成要素及びその構成部品の相対的な配置及び向きを記載するために、「上部」、「底部」、「上方」、「下方」、「鉛直」、「水平」、「横方向」、及び「長手方向」などの用語が本明細書で使用され得る。専門用語には、具体的に言及された単語、その派生語、及び同様の趣旨の単語が含まれ得る。
【0014】
[0027]本明細書で使用される、単数形で列挙され、「a」又は「an」という単語に続く要素又は動作は、複数の要素又は動作を潜在的に含むものとしても理解される。更に、本開示の「一実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しない。
【0015】
[0028]本明細書に提供されるのは、処理装置、特に小型イオンビーム処理装置において、イオンビームのプロファイルを修正し、特にイオンビームの均一性を向上させるためのアプローチである。本実施形態は、イオンビームの抽出点におけるイオンビームのプロファイルが一又は複数の方向にわたって有用である用途に適している可能性がある。
【0016】
[0029]図1Aは、本開示の実施形態による、例示的なシステムの側面図を示す。本明細書では、このシステムを処理システム100と称する。処理システム100は、基板112のイオンビーム処理に適している可能性がある。処理システム100は、プラズマ106を収容するプラズマチャンバ102と、適切なガス種(別個に図示せず)がプラズマチャンバ102に供給されるときに、プラズマ106を生成するための電力を供給するように連結された電力発生器104とを含む。電力発生器104は、例えば、幾つかの実施形態にしたがって誘導結合プラズマを生成するように配置されたRF電力発生器であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、プラズマ106は、任意の適切な手段によって生成され得る。プラズマに晒された電極(図示されていないが、プラズマ対向電極であってもよい)に接続されたビーム電源120は、プラズマ106の電位を、プロセスチャンバ108の電位(通常はアース接地)よりも高い正の電位まで上昇させるために使用される。言い換えると、ビーム電源120は、基板112に衝突するイオンのエネルギーを規定する電位に供給し、ここでイオンは、ビーム電源120の高電圧側によって規定されるプラズマ電位でプラズマ106から出射し、基板112の電位もビーム電源120の低電圧側によって規定される。
【0017】
[0030]図1Aに示されるように、基板112は、プラズマチャンバ102に隣接するプロセスチャンバ108内で基板ホルダ110上に配置され得る。基板及びホルダは、示されるように、ウエハ法線の面が抽出イオンビームの軸と平行になるように、又はこの軸に対してある角度で傾くように方向づけることができる。基板及びホルダはまた、イオンビーム処理の均一性を向上させるために、ある軸を中心に回転したり、ビーム内で移動したりすることもできる。
【0018】
[0031]処理システム100は、プラズマチャンバ102の側面に沿って配置されたイオン抽出アセンブリ130を更に含み得る。示されるように、イオン抽出アセンブリ130は、複数の電極を含み得、これらの電極は、基板112に向けられる複数のイオンビームレットを生成するための孔のアレイを有するグリッドとして構成され得る。幾つかの実施形態では、イオン抽出アセンブリ130は3つの電極を含み得、他の実施形態では、イオン抽出アセンブリ130は2つの電極を含み得る。
【0019】
[0032]本開示の様々な実施形態によると、イオン抽出アセンブリ130は、プラズマチャンバ102に最も近いプラズマ対向電極132を有する。プラズマ対向電極132は、概して、プラズマチャンバ102と同電位に構成され得、一方、イオン抽出アセンブリ130の一又は複数の他の電極は、プラズマチャンバ102に対して負にバイアスをかけられ得る。かかる特定のバイアス構成は、図1Aには特に示されていない。基板112及び/又はプロセスチャンバ108は、概して、ターゲットのエネルギーを有するイオンビームを生成するために、プラズマチャンバ102に対して負にバイアスをかけられ得る。
【0020】
[0033]プラズマ対向電極132を特に参照すると、この電極は、複数の孔を画定するグリッド構造で形成される。孔は、例えば、2次元グリッドパターンとして配置され得る。同様に、イオン抽出アセンブリ130の更なる電極は、基板112にビームレットを伝導する開孔138の2次元アレイを画定するように、2次元で同様のグリッドパターンを有し得る。
【0021】
[0034]様々な実施形態によれば、X-Y平面におけるイオン抽出アセンブリ130のサイズは、X-Y平面における基板112のサイズに等しいか、あるいはそれを超えることがある。その結果、イオン抽出アセンブリ130によって生成されたイオンビームが基板112の全体を覆うことができる。
【0022】
[0035]本開示の実施形態によれば、プラズマ対向電極132は、不均一な厚さ(z方向に沿った不均一な高さを意味する)を設ける。特に、図1Bにより明確に示されるように、プラズマ対向電極の中間領域Mにおける第1のグリッドの厚さは、プラズマ対向電極の外側領域Oにおける第2のグリッドの厚さよりも大きい。特に、図1Bは、本開示の実施形態によるイオン抽出アセンブリの側方断面図を示し、ここで、基板対向電極134を含む2つの電極が提供される。更に、図1Cは、本開示の他の実施形態による別のイオン抽出アセンブリの側方断面図を示し、ここで、プラズマ対向電極132と基板対向電極134との間に配置された抑制電極136を含む3つの電極が提供される。幾つかの実施例では、基板対向電極134は減速電極として機能し得る。例えば、基板対向電極は外側電極又は接地電極として機能することがあり、接地電位に固定されることを意味し、一方、抑制電極は負電圧に固定される。
【0023】
[0036]これらの実施形態のそれぞれでは、プラズマ対向電極132は、示されるように、不均一な厚さを有するグリッドで形成される。プラズマ対向電極132に適した厚さは、幾つかの非限定的な実施形態によれば、約1センチメートル以下であり得る。例えば、プラズマ対向電極132のグリッド構造は、中間領域Mにおいて1センチメートル未満の厚さを有し得、外側領域Oに向かって厚さが減少することにより、外側領域Oにおいて厚さが少なくとも2ミリメートルとなる。グリッドの厚さの公差のみによって制限される、はるかに小さな厚さの変動を使用して、より微細な調整を行うこともでき、この公差は、通常、公称グリッドの厚さの1~2%ほどである。更に、これらの実施形態におけるグリッド構造は、幾つかの実施形態によれば、1ミリメートルから5ミリメートルの間の孔のサイズを規定し得る。プラズマ対向電極に適した材料には、例えば、モリブデン又は炭素が含まれてもよく、これらの材料は、図1B及び図1Cに描かれているようなテーパ状のグリッド構造を生成するために容易に機械加工することが可能であり得る。様々な実施形態において、イオン抽出アセンブリ130の一又は複数の更なる電極は、均一な厚さを有してもよく、一般的に、既知の二極の又は三極の抽出アセンブリと同様に構成され得ることに留意されたい。
【0024】
[0037]図1Dは、図1Cのイオン抽出アセンブリの変形の側方断面図を示す。この実施例では、イオン抽出アセンブリ140は、孔のグリッドとして配置された3つの電極を含む。イオン抽出アセンブリ140は、スクリーン電極又はプラズマ対向電極142、抑制電極146、及び基板対向電極を含み、この基板対向電極は減速電極として機能することがあり、したがって、本明細書では減速電極144と呼ばれる。図1Dに示されるように、プラズマ対向電極142は孔の(2-D)アレイで形成され、ここで、孔143は円筒形の特徴として表される。抑制電極146の孔147及び減速電極144の孔145も同様である。示されるように、プラズマ対向電極では、グリッドの全体的な厚さが内側領域から外側領域に向かって減少する。プラズマ対向電極142の1つの特徴は、図1Dに示されるように、孔143が存在する領域ではグリッドの厚さが均一であるが、一方、孔の間ではグリッドの厚さが変わることである。言い換えると、孔143の上面149はX-Y平面に平行に整列している。この構成の利点は、孔143の上部に形成されるメニスカスが、抽出されたイオンをZ方向に平行な軌道に沿って向ける傾向があることである。
【0025】
[0038]しかし、他の実施形態では、グリッドの厚さは、孔にわたって変化してもよい。かかる実施形態では、厚さの相対的な変化によってメニスカスにわずかな傾きが生じ、その結果、イオンの軌道がZ方向に対してわずかに傾く可能性がある。しかし、この傾き(存在する場合)は、プロセス要件にしたがって許容範囲内であり得る。
【0026】
[0039]図1Eは、本開示の他の実施形態による、更なるイオン抽出アセンブリの側方断面図を示す。この実施例では、イオン抽出アセンブリ150は、孔のグリッドとして配置された3つの電極を含む。イオン抽出アセンブリ150は、スクリーン電極又はプラズマ対向電極152、抑制電極156、及び基板対向電極を含み、この基板対向電極は減速電極として機能することがあり、したがって、本明細書では減速電極154と呼ばれる。図1Eに示されるように、プラズマ対向電極152は孔の(2-D)アレイで形成され、ここで、孔153は円筒形の特徴によって表される。同様に、抑制電極156は孔の(2-D)アレイで形成され、ここで、孔157は円筒形の特徴として表され、一方、減速電極154は同じく円筒形の特徴として示される孔155を含む。この実施例では、プラズマ対向電極152及び減速電極154は、均一な厚さを有し得る。示されるように、抑制電極156については、グリッドの全体的な厚さが内側領域から外側領域に向かって増加する。
【0027】
[0040]図1Fは、本開示の他の実施形態による、更なるイオン抽出アセンブリの側方断面図を示す。この実施例では、イオン抽出アセンブリ160は、孔のグリッドとして配置された3つの電極を含む。イオン抽出アセンブリ160は、スクリーン電極又はプラズマ対向電極162、抑制電極166、及び基板対向電極を含み、この基板対向電極は減速電極として機能することがあり、したがって、本明細書では減速電極164と呼ばれる。図1Fに示されるように、プラズマ対向電極152は孔の(2-D)アレイで形成され、ここで、孔163は円筒形の特徴によって表される。同様に、抑制電極166は孔の(2-D)アレイで形成され、ここで、孔167は円筒形の特徴として表され、一方、減速電極164は同じく円筒形の特徴として示される孔165を含む。この実施例では、減速電極164は、均一な厚さを有し得る。示されるように、プラズマ対向電極162と抑制電極166の両方については、グリッドの全体的な厚さが内側領域から外側領域に向かって減少する。この構成の利点は、グリッドの厚さを一定量変更することによって達成されるイオンビーム特性への効果(以下に詳述)を、所与のグリッド内でより少ない厚さの変化で達成できることである。
【0028】
[0041]後に続く図2A~3Bに関して詳述するように、グリッドアセンブリのうちの少なくとも1つのグリッドのグリッド構造の不均一な厚さによって提供される、図1A~1Fの実施形態の1つの有益な特徴は、例えばプラズマチャンバ102内のプラズマ密度の変動による、イオンビーム電流密度の不均一性を補償できることである。
【0029】
[0042]ここで図2Aを参照すると、既知の抽出グリッド構成を有する基準プラズマチャンバ内のシミュレーションしたプラズマ密度を示す合成図が示されている。基準プラズマチャンバは、既知のイオンビームエッチング装置のように構成され得、ここで、イオンビームを生成するために均一なイオン抽出アセンブリが提供される。図2Aのビューは、中央部又は中間部がR=0の点で図の左端にある状態で、プラズマチャンバの2分の1の断面を示している。プラズマチャンバ内の異なる輪郭は、プラズマ密度の異なるレベルを示す。一般に、プラズマ密度は、示されるようにプラズマチャンバ内で実質的に変化する可能性がある。多くのシステムでは、プラズマ密度はプラズマチャンバの中心領域でE16/m~E17/mほどになり、壁面付近では急峻にゼロに遷移し得る。図2Aのビューでは、プラズマ対向グリッドが示されており、Rで表される水平方向に沿って均一な厚さを有する。幾つかの実施形態では、Z方向に沿った高さ及びR方向に沿った幅は、10センチメートルから数十センチメートルほどであり得る。図2Aの実施例では、プラズマ密度は、中心領域から、特にプラズマチャンバの鉛直壁Wに向かって減少する。鉛直壁に向かって主プラズマチャンバ内のプラズマ密度が減少することは、鉛直壁付近のグリッドの領域において、プラズマ対向グリッド直下のイオン束の対応する減少に反映され得る。
【0030】
[0043]図2Bは、図2Aのプラズマチャンバの軸に対する位置の関数としてシミュレーションしたイオンビーム電流密度を示すグラフであり、プラズマチャンバ内のプラズマ密度の変動が、上述のイオン束、及びグリッドアセンブリから抽出されるイオン電流の唯一の重要な変動源であると仮定する。一般に、イオン束は、電子温度の変動、下流グリッドへのイオンの衝突による電流密度等によっても変化し得る。図2Bに示される電流密度の急激な変動は、グリッドイオン光学系による個々のビームレットの形成を反映している。したがって、電流密度曲線は、ピークが各ビームレットからの電流を表し得るエンベロープを形成する。エンベロープのピークに続いて、電流密度は大きく単調に減少し、チャンバの中心からチャンバのエッジまでの距離の5分の1のみの間、電流密度は比較的一定に保たれる。より大きな半径値では、ピーク電流密度は、グリッドエッジに向かって、約3分の2まで急激に減少する(様々な実施形態では、パラメータRは、円筒形プラズマチャンバの実施形態においてなど、X軸に沿った値又はY軸に沿った値を表す場合があることに留意されたい)。イオンビームが基板に向かって伝搬するにつれて、個々の開孔からのビームレットは合体し、電流密度の変動は消えるが、下流のイオンビーム電流密度分布は、抽出されたイオンビーム電流密度のエンベロープの形状を実質的に反映し得ることに留意されたい。
【0031】
[0044]図3Aは、本実施形態にしたがって配置された抽出グリッドアセンブリを有するチャンバにおけるシミュレーションしたプラズマ密度を示す合成図である。再び図3Aのビューは、中央部又は中間部が図の左端にある状態で、プラズマチャンバの2分の1の断面を示している。プラズマチャンバ内の異なる輪郭は、図2Aに関して前に留意したように、プラズマ密度の異なるレベルを示す。比較を明確にするために、プラズマ密度及び相対密度の変動は、図2Aのシナリオに密接に対応するようにシミュレーションされる。プラズマ密度は、中心領域から、特にプラズマチャンバの鉛直壁Wに向かって減少する。図3Aのビューでは、図1Aの実施形態に関して上述したように概して配置された、プラズマ対向電極132が示される。特に、グリッドの厚さはプラズマチャンバの中間部の9ミリメートルからプラズマチャンバの外側に向かって4ミリメートルに減少する。以下に詳述するように、また図3Aに示すように、図2Aの実施例とは異なり、鉛直壁に向かう主なプラズマチャンバ内のプラズマ密度のこの減少は、プラズマ対向グリッドの直下のイオン束の系統的な減少には反映されない。
【0032】
[0045]図3Bは、図2Aのプラズマチャンバの軸に対する基板の位置の関数としてシミュレーションしたイオンビーム(グリッド)電流を示すグラフであり、プラズマチャンバ内のプラズマ密度の変動が、上述のイオン束、及びグリッドアセンブリから抽出されるイオン電流の唯一の重要な変動源であると仮定する。一般に、イオン束は、電子温度の変動、下流グリッドへのイオンの衝突による電流密度等によっても変化し得る。図3Bに示される電流密度の急激な変動は、グリッドイオン光学系による個々のビームレットの形成を反映している。したがって、電流密度曲線は、ピークが開孔位置の電流を表し得るエンベロープを形成する。エンベロープのピークに続いて、中心領域からグリッドの中心(R=0)とグリッドの外側との中間ゾーンへと電流密度が初期に増加する。全体として、チャンバの中央(R=0)で抽出される電流密度は、プラズマ対向電極132の外縁で抽出される電流密度とほぼ同じである。更に、電流密度の最大差はわずか約33%であり、これは中間領域での電流密度の増加に反映されている。
【0033】
[0046]特定の理論に束縛されることなく、グリッドの厚さを意図的に変更することによって抽出ビーム電流を変更した結果は、次のように説明することができる。プラズマが形成されるとき、スクリーングリッドのプラズマ側(プラズマ対向グリッド)にプラズマメニスカスが生成される。メニスカスの正確な形状及びメニスカスから抽出される電流は、プラズマに隣接するグリッドアセンブリに生成される電界によって決まる。この電界の強さ、メニスカスの形状、及び抽出電流は、バイアス電極(抑制グリッド)とプラズマメニスカスとの間の距離、並びにプラズマ電位に対して抑制電極に配置された電位によって決定される。所与の抑制電極電位に対して、プラズマメニスカスと抑制電極との間の電位差は一定になる。しかし、厚さが変化するグリッドの場合、プラズマメニスカスと抑制電極との間の距離(Z軸に沿って)が変化することにより、スクリーングリッド(x-y平面)を横切る可変電界及びそれに伴う可変抽出電流が生成される。この可変距離は、図1A~1Fの電極アセンブリ形状のそれぞれによって生み出される。
【0034】
[0047]図3Aの場合と同様に配置されたプラズマ対向グリッドの例の拡大図が図4に示される。この実施例では、プラズマ対向電極又はプラズマ対向グリッド132Aは、中心から外側に向かって線形に減少する厚さで配置されている。したがって、3次元では、プラズマ対向グリッド132Aは、浅いピラミッド形状を有し得る。この構成では、全体的な抽出電流密度の変動は、図2Bの基準システムよりもはるかに小さく、ピラミッド型プラズマグリッドの形状は、特に中心から約12センチメートル以内の領域において、均一厚さのプラズマ対向グリッド(図2B)で観察された抽出電流密度の減少を過剰に補償しているように見えることに留意されたい。他の実施形態では、不均一な厚さのプラズマ対向グリッドは、他の適切な形状を有し得る。
【0035】
[0048]図5Aは、本開示の実施形態による、別の例示的なプラズマ対向グリッドの側方断面図である。図5Bは、図5Aのプラズマ対向グリッドの上面斜視図である。この実施例のプラズマ対向グリッド132Bはドーム形を有する。Z方向に沿った相対的な尺度が誇張されている可能性があることに留意されたい。したがって、直径~40センチメートルを有する例示的な抽出グリッドは、幾つかの非限定的な実施形態によれば、1センチメートルほどの最大厚さ、及び1/4ミリメートルほどの最小厚さを有し得る。ドーム形は、プラズマ対向グリッド132Aと比較して、プラズマ対向グリッド132Bの中心からの半径の関数として、グリッドの厚さをより緩やかに変更させる。したがって、線形に減少する厚さのグリッドの場合、図3Bに示される抽出ビーム電流密度の増加は、排除又は低減される可能性がある。もちろん、他の実施形態によれば、グリッド断面の他の形状も可能であり、実験的に決定してもよい。一般に、本開示の他の実施形態によれば、不均一な厚さを有するグリッド断面は、グリッドの幅にわたる抽出ビーム電流密度のターゲットとする均一性又は不均一性を生成するために、任意の適切なプロファイルで設計され得る。例えば、グリッドは、グリッドの中心からグリッドのエッジまで単調に変化する厚さを有し得、任意の適切な形状を有するか、又はグリッドの中心からグリッドのエッジまで非単調に変化する厚さを有し得る。
【0036】
[0049]図6は、本開示の実施形態による別の例示的な抽出グリッドの側方断面図であり、中間部分から外側部分へのグリッドの厚さの非単調変化を示す。この実施例では、プラズマ対向グリッド132Cは、中間部分176の厚さよりも相対的に小さい厚さを有する、凹んだ中間部分174を備えて配置される。外側部分178では、プラズマ対向グリッド132Cの厚さは中間部分176よりも再び小さくなる。かかるグリッド厚さプロファイルは、図6に示されるように、プラズマ172のプラズマ密度がプラズマチャンバの中央部で窪み、中央部に隣接する中間領域で密度がよりピークになるプラズマチャンバ170に適している可能性がある。
【0037】
[0050]様々な実施形態では、不均一な厚さのプラズマ対向グリッドの正確な形状及び厚さの輪郭は、プラズマチャンバの特性に応じて調整され得る。例えば、所与のプロセスレシピは、プラズマチャンバ内のR方向に沿って所与の内部プラズマ密度プロファイルを生成し得る。この内部プラズマ密度プロファイルに基き、プラズマ対向グリッドの輪郭(R-Z平面内)は、Rの関数として抽出されたビーム密度が均一になるように、内部プラズマ密度プロファイルをちょうどオフセットするように調整され得る。
【0038】
[0051]幾つかの実施形態では、プラズマシェーパなどの構成要素は、抽出グリッドアセンブリからの抽出ビーム電流均一性を制御するために、可変厚さのプラズマ対向グリッドと併せて採用され得る。追加的に又は代替的に、ビーム電流の均一性を更に制御するために、可変厚さのプラズマ対向グリッドと併せて、グリッド孔サイズ又はグリッド孔密度が変化し得る。
【0039】
[0052]以上の観点から、本開示は、少なくとも以下の利点を提供する。第1の利点として、本実施形態は、複雑で費用のかかるプラズマ源設計を行うことなく、均一なイオンビーム電流を生成するための構成要素を提供する。別の利点は、ビーム発散などの他のビーム特性を変更することなく、イオン抽出アセンブリ全体で均一なイオン電流を抽出することができることである。更なる利点は、本実施形態のプラズマ対向グリッドは、グリッド開孔(孔)のサイズ及び孔の間隔が均一であり得るため、複雑な穴あけ技法を使用せずに作製できることである。
【0040】
[0053]本明細書では、本開示の特定の実施形態について記載してきたが、本開示は当該技術分野が許容する限り広い範囲にわたり、本明細書も同様に読まれ得るので、本開示は本明細書での説明に限定されるわけではない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】