(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20241031BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20241031BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20241031BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08F6/00
C08F220/06
C08F220/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509454
(86)(22)【出願日】2023-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2023007523
(87)【国際公開番号】W WO2024085336
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0136874
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ホ・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジン・キム
【テーマコード(参考)】
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070DA42
4F070DB03
4F070DB09
4F070DC07
4J100AJ02P
4J100AK08P
4J100AL62Q
4J100AL66Q
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA23
4J100DA37
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC25
4J100GC32
4J100JA60
4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給し、重合反応させて、含水ゲル重合体(hydrous gel polymer)を得るステップと、前記含水ゲル重合体を乾燥させて、乾燥体を得るステップと、前記乾燥体を加水処理して、水分を前記乾燥体に吸着(adsorption)させるステップと、前記加水処理された乾燥体を粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップとを含む高吸水性樹脂製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給し、重合反応させて、含水ゲル重合体(hydrous gel polymer)を得るステップと、
前記含水ゲル重合体を乾燥させて、乾燥体を得るステップと、
前記乾燥体を加水処理して、水分を前記乾燥体に吸着(adsorption)させるステップと、
前記加水処理された乾燥体を粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップとを含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記含水ゲル重合体を乾燥する前に、
前記含水ゲル重合体を粗粉砕するステップをさらに含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記加水処理された乾燥体を粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップは、
前記乾燥体の加水処理直後、もしくは、加水処理の後、24時間以内に行われる、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記加水処理によって乾燥体に吸着した水分吸着量は、前記乾燥体100重量%に対して1重量%~10重量%である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記加水処理は、水分を前記乾燥体上に噴霧加水して行われる、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記加水処理は、15℃~70℃の条件下で行われる、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記加水処理された乾燥体の含水率は、5重量%~15重量%である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記加水処理された乾燥体を粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップの後、表面架橋剤の存在下で表面架橋を行い、
表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記内部架橋剤は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち1以上である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸またはその塩である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年10月21日付けの韓国特許出願第10-2022-0136874号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関し、より詳細には、加水処理により、微粉(fine particles)発生量が減少した高吸水性樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収することができる機能を有する合成高分子物質であり、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)など、それぞれ異なる名称がつけられている。前記のような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での新鮮度維持剤および蒸煮用などの材料として広く用いられており、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野において主に用いられている。
【0004】
一方、高吸水性樹脂を製造するための一連のステップのうち、粉砕ステップにおいて、乾燥体の表面破壊による微粉発生量が増加する問題が発生していた。このように前記微粉が粉砕工程中に発生する場合、微粉が発生するだけ最終製品化される高吸水性樹脂の取得率が減少し得、粉砕ステップを行う作業者の呼吸器に前記微粉が吸入されて健康上の問題を引き起こし得る。
【0005】
したがって、粉砕ステップで粉砕が行われる時に微粉発生量を低減することができる方法が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、粉砕ステップで微粉発生量を減少させることができる高吸水性樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給し、重合反応させて、含水ゲル重合体(hydrous gel polymer)を得るステップと、前記含水ゲル重合体を乾燥させて乾燥体(dried substance)を得るステップと、前記乾燥体を加水処理して、水分を前記乾燥体に吸着(adsorption)させるステップと、前記加水処理された乾燥体(hydrated dried substance)を粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップとを含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によると、乾燥が完了した乾燥体を加水処理して、前記乾燥体上に水分を吸着(adsorption)させることができる。前記加水処理によって乾燥体の表面の水分含量が増加することができ、これにより、粉砕の際、前記乾燥体の表面が破壊される現象が抑制されることができる。したがって、粉砕ステップで前記乾燥体の表面が破壊されることによって発生する微粉の量が減少することができる。なお、このように微粉発生量が減少することで、最終製品化される高吸水性樹脂の取得率が増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による高吸水性樹脂を製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0011】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明について、
図1を参照してより詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給し、重合反応させて、含水ゲル重合体(hydrous gel polymer)を得るステップと、前記含水ゲル重合体を乾燥させて、乾燥体aを得るステップと、前記乾燥体aを加水処理して、水分を前記乾燥体aに吸着(adsorption)させるステップと、前記加水処理された乾燥体bを粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップとを含むことができる。
【0013】
まず、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給し、重合反応させて、含水ゲル重合体を得るステップを行うことができる。前記組成物は、上述のように、水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤、並びに重合開始剤を含むことができ、その他にも、必要に応じて、さらに、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤の添加剤を含むことができる。
【0014】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸またはその塩であることができる。例えば、前記水溶性エチレン系不飽和単量体として、アクリル酸の少なくとも一部が中和したアクリル酸およびまたはそのナトリウム塩であるアルカリ金属塩を用いる場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができる。
【0015】
その他にも、前記水溶性エチレン系不飽和単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアニオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのノニオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその四級化物;が用いられることができ、前記アニオン性単量体の塩は、金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩であることができる。
【0016】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、少なくとも一部が中和した酸性基を含むことができる。前記少なくとも一部が中和した酸性基を含む水溶性エチレン系不飽和単量体は、水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基に中和剤を用いて中和反応させることで製造されることができる。ここで、前記中和剤としては、酸性基を中和することができる水酸化ナトリウム(または苛性ソーダ)、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質が用いられることができる。
【0017】
一方、前記内部架橋剤は、上記の水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割を果たすことができる。
【0018】
前記内部架橋剤としては、フリーラジカル重合(Free-Radical Polymerization;FRP)反応によって架橋反応が行われる(メタ)アクリレート系化合物であることができる。具体的には、前記内部架橋剤は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物であることができる。より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち1以上であることができる。
【0019】
一方、前記組成物において、前記重合開始剤としては、重合方法に応じて、熱重合開始剤またはUVの照射による光重合開始剤を用いることができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応が進むにつれて、ある程度の熱が発生するため、熱重合開始剤をさらに含むこともできる。
【0020】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成し得る化合物が用いられることができる。前記光重合開始剤は、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群から選択される一つ以上を用いることができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートであることができる。
【0021】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群から選択される一つ以上を用いることができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)がある。
【0022】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源に応じて、熱重合および光重合に大別され、熱重合を行う場合、ニーダ(kneader)などの攪拌軸を有する重合反応器で行われることができ、光重合を行う場合、移動可能なコンベアベルトを備えた重合反応器で行われることができる。
【0023】
本発明の含水ゲル重合体は、水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む組成物を重合反応器に供給して行われる重合反応から製造されることができ、ここで、前記組成物において、内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部であることができる。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部または0.2重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下または0.5重量部以下であることができる。前記内部架橋剤の含量が低すぎる場合、架橋が十分に行われず、適正水準以上の強度の実現が難しい可能性があり、上部の内部架橋剤の含量が高すぎる場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の実現が難しい可能性がある。
【0024】
本発明の組成物は、溶媒に溶解された溶液の形態で準備されることができる。ここで、使用可能な溶媒としては、上述の原料物質を溶解させることができるものが用いられることができる。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物が用いられることができる。
【0025】
次に、前記組成物の重合反応により形成された含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級するステップにつながることができる。ここで、前記含水ゲル重合体を乾燥するにあたり、効率を高めるために、粗粉砕ステップをさらに経ることができる。前記粗粉砕ステップで用いられる粉砕機としては、具体的には、竪型カッター(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダ(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円盤粉砕機(Disc mill)、破片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円盤式切断機(Disc cutter)からなる粉砕器機群から選択されるいずれか一つを用いることができる。
【0026】
一方、
図1のフローチャートを参照して説明すると、本発明の高吸水性樹脂の製造方法は、前記のように粗粉砕されるか、あるいは粗粉砕ステップを経ていない含水ゲル重合体を乾燥して、乾燥体aを得るステップを含むことができる。前記乾燥ステップの乾燥方法は、具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射の方法により行われることができ、前記乾燥方法により乾燥ステップを行うことで、乾燥体aを取得することができる。
【0027】
ここで、前記乾燥体aの含水率は、2~9重量%であることができる。より具体的には、3~7重量%または4~6重量%であることができる。ここで、前記乾燥体aの含水率は、乾燥ステップを経たが、後続する加水処理は経ていない乾燥体aの含水率を意味し得る。前記乾燥体の含水率が2重量%未満である場合、乾燥体が過乾燥した状態で、乾燥体内の微粉の含量が過剰に増加し得る。前記乾燥体の含水率が9重量%を超える場合、前記乾燥体は、未乾燥の未乾燥体の状態であると考えられ、前記乾燥体が加水処理され、次の粉砕ステップに導入される場合に、粉砕の進行が不可能であり得る。
【0028】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、前記乾燥体aを加水処理して、水分を前記乾燥体aに吸着させるステップを含むことができる。具体的には、前記加水処理により乾燥体aの表面に一定量の水分を吸着させ、これにより、加水処理された乾燥体bを得ることができる。
【0029】
前記加水処理は、15℃~70℃の条件下、具体的には20℃~40℃の条件下で行われることができる。これにより、前記乾燥体aの表面に適切な水分の量を維持することができ、スムーズな加水処理が可能である。具体的には、前記加水処理温度は、前記加水処理が噴霧加水によって行われる場合には、液滴の温度であることができる。
【0030】
前記加水処理は、上記の条件下で行われ、この雰囲気にすることができる手段として、例えば、直接水分を噴霧加水する方法で行うことができる。このような加水処理により、乾燥体aの表面に水分が吸着することができる。このように加水処理された乾燥体bの表面に吸着した水分は、時間が経つにつれて内部に拡散して吸収されることができる。
【0031】
前記加水処理によって乾燥体aに吸着した水分吸着量は、前記乾燥体a100重量%に対して、1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上、および10重量%以下、7重量%以下または5重量%以下であることができる。前記水分吸着量は、加水処理によって乾燥体aに吸着される水分の量を意味し得る。水分が前記範囲内で乾燥体aに吸着される場合、加水処理された乾燥体bの含水率が本発明における所望の水準に逹することができる。ここで、前記水分吸着量は、国際標準化機構(International Organization for Standardization;ISO)171904-4:2001方法に準じて測定されることができる。
【0032】
一方、前記加水処理された乾燥体bの含水率は、5重量%以上、6重量%以上または9重量%以上、および15重量%以下、13重量%以下または11重量%以下であることができる。ここで、前記加水処理された乾燥体bの含水率は、前記加水処理を経たが、後続する粉砕ステップを経ていない加水処理された乾燥体bの含水率を意味し得る。前記加水処理された乾燥体bの含水率が前記範囲内である場合、後述する粉砕ステップにおいて、微粉発生量が、例えば、20%未満の水準に低減し得る。したがって、加水処理された乾燥体bの含水率が前記範囲内で制御されるように、加水処理の際、乾燥体aに吸着される水分吸着量を調節して加水処理することができる。
【0033】
前記加水処理された乾燥体bの含水率が5重量%未満である場合、本発明で目的とする粉砕時の微粉発生の低下が困難になり得る。前記加水処理された乾燥体bの含水率が15重量%を超える場合、加水処理された乾燥体bの水分含量が高すぎて、粉砕ステップで行われる粉砕が不可能になり得る。ここで、前記含水率は、水分測定器(AND MX_50)によって測定されることができる。
【0034】
本発明の一実施形態による製造方法によると、加水処理された乾燥体bを粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップを含むことができる。前記粉砕ステップは、1次に行われることができるが、一例として、1以上の回次として行われることができる。従来のように加水処理を行っていない乾燥体を粉砕する場合には、前記乾燥体の表面が破壊されることから微粉が過剰に発生した。通常、前記微粉は、150μm未満の粒度(D50)を有しており、高吸水性樹脂として製品化するには不適切であり得る。ここで、前記粒度(D50)は、粒度による粒子個数累積分布の50%地点での粒度を意味し得る。したがって、粉砕ステップで微粉発生量が増加するほど、高吸水性樹脂の取得率が低くなり得る。しかし、本発明において、粉砕ステップの前に加水処理を行うことで、乾燥体aの表面上に水分が吸着し、前記水分によって加水処理された乾燥体bの表面破壊が抑制されることができる。これにより、粉砕の際、微粉発生量が低減し、高吸水性樹脂の取得率が増加することができる。
【0035】
一方、粉砕ステップで用いられる粉砕機としては、具体的には、ボールミル(ball mill)、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)を用いることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記加水処理された乾燥体bを粉砕して、高吸水性樹脂を取得するステップは、前記乾燥体aの加水処理直後、もしくは加水処理の後、24時間以内に行われることができる。前記加水処理直後とは、加水処理の終了次第、あるいは加水処理の後、粉砕ステップまでかかる最小限の時間を意味し得る。このように、加水処理直後に加水処理された乾燥体bの表面の水分含量がさらに高いことができ、これにより、加水処理直後、粉砕ステップを行うときに、加水処理された乾燥体bの表面破壊を防止し、所望の結果を得ることができる。したがって、加水処理の際、水分吸着量が相対的に少ない場合、例えば、1重量%~3重量%である場合であっても、加水処理直後、粉砕ステップを行う場合、前記水分が加水処理された乾燥体bの表面から内部に拡散していない状態であるため、粉砕の際、微粉発生量が減少し得る。
【0037】
一方、加水処理の後、時間の経過に伴い加水処理された乾燥体bの表面上に存在していた水分が内部に拡散することができる。しかし、加水処理の際、乾燥体aに吸着した水分吸着量が、例えば、4重量%~10重量%と相対的に高い場合には、加水処理された乾燥体bを所定時間安定化させても、前記加水処理された乾燥体bの表面に残存している水分の量が高く維持されることができる。したがって、このように安定化過程を経た後、粉砕ステップが行われる場合、前記加水処理された乾燥体bの表面破壊が防止されて微粉発生量が減少することができる。ここで、前記安定化とは、例えば、密閉容器内の多湿な雰囲気で所定時間前記加水処理された乾燥体bを熟成させることを意味し得る。
【0038】
一方、前記粉砕ステップの後、最終製品化する高吸水性樹脂の物性を管理するために、適切な粒度に応じて分級する別の過程を経ることができる。さらに、前記分級は、各回次の粉砕の後に行われることができる。
【0039】
ここで、適切な粒度(D50)とは、150μm~850μmの粒度であることができ、このような粒度を有する粒子を正常粒子として区分することができる。一方、上述のように、150μm未満の粒度を有する粒子は、微粉として区分されることができる。このような粒度は、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)の規格EDANA WSP 220.3方法に準じて測定することができる。
【0040】
このような一連の粉砕ステップにより、正常粒子、すなわち、高吸水性樹脂を製造することができる。
【0041】
次に、必要に応じて、製造された高吸水性樹脂を表面架橋剤の存在下で表面架橋し、表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂を製造するステップをさらに含むことができる。ここで、前記表面架橋層は、表面架橋剤から生成されることができ、前記表面架橋剤は、多価エポキシ化合物を含み、前記多価エポキシ化合物は、多価アルコールのグリシジルエーテル化合物であることができる。
【0042】
具体的には、前記表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル(triethyleneglycol diglycidyl ether)、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル(tetraethyleneglycol diglycidyl ether)、グリセリンポリグリシジルエーテル(glycerin polyglycidyl ether)、およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群から選択される1種以上の多価エポキシ化合物を含むことができる。
【0043】
前記表面架橋剤は、溶液状態、具体的には、溶媒に溶解された表面架橋溶液状態で前記高吸水性樹脂に混合することができる。前記表面架橋溶液には、表面架橋剤の他にも、水およびメタノールが含まれることができる。一般的に、前記表面架橋溶液は、高吸水性樹脂の表面に塗布される。したがって、表面架橋結合反応は、高吸水性樹脂の表面上で行われ、これは、粒子の内部には実質的に影響を及ぼすことなく、粒子の表面上での架橋結合性を改善する。したがって、表面架橋結合した高吸水性樹脂は、内部でよりも表面付近でさらに高い架橋結合度を有する。表面架橋剤が添加された高吸水性樹脂を加熱させることで、表面架橋結合反応および乾燥が同時に行われることができる。
【0044】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは通常の技術者にとって明白であり、これにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0045】
実施例
実施例1
攪拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸100g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)0.16g、重合開始剤である光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.008g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12gおよび中和剤である苛性ソーダ(NaOH)溶液123.5gを常温で固形分含量が45.0重量%になるように混合し、組成物を製造した。
【0046】
次に、前記組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが10cm/minの速度で移動するコンベアベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。ここで、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cm2の強度を有する紫外線を照射して60秒間重合反応を行い、含水ゲル重合体を得た。
【0047】
次に、前記含水ゲル重合体をチョッパを用いて粗粉砕した。その後、粉砕された含水ゲル重合体をAir-flowオーブンを用いて185℃のホットエア(hot air)で30分間乾燥した。これにより、含水率が5重量%である乾燥体100gを得た。
【0048】
前記乾燥体を320mm×200mm×50mmのSUSトレイに均一に広げて3.2gの水分を噴霧加水した。これにより、前記乾燥体に吸着した水分吸着量は、乾燥体100重量%に対して3重量%であり、前記水分吸着量は、国際標準化機構(International Organization for Standardization;ISO)17190-4:2001方法に準じて測定した。このような噴霧加水によって加水処理された乾燥体の含水率は8重量%であった。次いで、前記加水処理された乾燥体を密閉容器に投入し、攪拌して混合した。その後、24時間前記密閉容器の中で安定化過程を行った。
【0049】
このように密閉容器で安定化した後、加水処理された乾燥体をロールミル(roll mill)で粉砕して粉砕物を得た。前記粉砕物をASTM規格のメッシュ#6、#10、#20、#25、#30、#40、#50、#70、#80および#100からなるメッシュセットに投入し、前記メッシュセットを振動篩機(Sieve shaker)に取り付けた。前記振動篩機(Sieve shaker)を10分間振幅(Amplitude)1.5mmで運転して前記粉砕物を分級した。これにより、150μm~850μmの粒度を有する高吸水性樹脂を得た。
【0050】
実施例2
前記実施例1で5.8gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が5重量%)を乾燥体に噴霧加水して、加水処理された乾燥体の含水率が10重量%になった以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0051】
実施例3
前記実施例1で11gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が10重量%)を乾燥体に噴霧加水して、加水処理された乾燥体の含水率が15重量%になった以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0052】
実施例4
前記実施例1で1.1gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が1重量%)を乾燥体に噴霧加水して加水処理された乾燥体の含水率が6重量%になり、前記加水処理された乾燥体の安定化過程を省略して、加水処理直後に粉砕を行った以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0053】
実施例5
前記実施例1で1.1gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が1重量%)を乾燥体に噴霧加水して加水処理された乾燥体の含水率が6重量%になり、前記加水処理された乾燥体の安定化過程を1時間行った以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0054】
実施例6
前記実施例1で3.2gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が3重量%)を含水率2重量%の乾燥体に噴霧加水して加水処理された乾燥体の含水率が5重量%になり、前記加水処理された乾燥体の安定化過程を省略して、加水処理直後に粉砕を行った以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0055】
実施例7
前記実施例1で18gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が15重量%)を乾燥体に噴霧加水し、加水処理された乾燥体の含水率が20重量%になった以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0056】
実施例8
前記実施例1で26gの水分(乾燥体100重量%に対して水分吸着量が20重量%)を乾燥体に噴霧加水し、加水処理された乾燥体の含水率が25重量%になった以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0057】
比較例
比較例1
前記実施例1で乾燥体を加水処理せず、すぐ粉砕した以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0058】
比較例2
前記実施例1で含水率2重量%の乾燥体を加水処理せず、すぐ粉砕した以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0059】
比較例3
前記実施例1で含水率10重量%の乾燥体を加水処理せず、すぐ粉砕した以外は、前記実施例1と同じ方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0060】
実験例
前記実施例もしくは比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、以下のような方法で測定した結果を下記表1に示した。
【0061】
1)含水率
含水率は、加水処理を経た場合(実施例)には、加水処理後および粉砕前の加水処理された乾燥体の含水率を意味し得、加水処理を経ていない場合(比較例)には、乾燥後および粉砕前の乾燥体の含水率を意味し得る。具体的には、前記含水率は、加水処理された乾燥体または乾燥体を水分測定器(AND MX_50)内のハロゲンランプ(400W)で加熱して水分を蒸発させることで発生する重量の変化から測定されている。具体的には、前記含水率は、以下のような順序にしたがって測定した。
【0062】
(i)水分測定器の測定条件(加熱温度:180℃、加熱時間:40分)をセットする。
(ii)サンプルパン上に試料が存在していない状態で、ゼロ(0)に重量を調整する。
(iii)加水処理された乾燥体または乾燥体のうち5g(誤差:0.02%)の試料をサンプリングし、前記サンプルパンの上に均一にローディングする。
(iv)測定が終了した後、含水率を確認する。
【0063】
2)微粉発生量
前記微粉発生量とは、粉砕ステップにより粉砕された粉砕物に150μm未満の粒度を有する微粉が含まれている分量を意味し得る。具体的には、前記微粉発生量は、下記のような方法によって測定した。
【0064】
先ず、実施例および比較例で粉砕された粉砕物のうち100gを試料としてサンプリングし、ASTM規格のメッシュ#6、#10、#20、#25、#30、#40、#50、#70および#100からなるメッシュセットに投入した。前記メッシュセットを振動篩機(Sieve shaker)に取り付けて10分間振幅(Amplitude)1.5mmで運転し、前記粉砕物を各メッシュによる粒度別に分級した。次いで、各メッシュに該当するメッシュの比率を下記数学式1によって計算した。
【0065】
【0066】
次に、#100下(粒度150μm未満)に該当する粉砕物のメッシュの比率を加算して微粉発生量を測定した。
【0067】
3)粒度
前記粒度は、粉砕物の粒度を測定したものであり、前述の「微粉発生量」を測定する方法と同様に、前記粉砕物(100g)をメッシュセットで分級し、下記数学式2にしたがって計算した。
【0068】
【0069】
ここで、前記各メッシュ(#40~100)は、上述のメッシュセットに含まれたメッシュ#40~#100の各メッシュであり、メッシュの比率は、上述の数学式1によるメッシュの比率である。すなわち、前記粒度は、メッシュ#40~#100のメッシュの比率を基準として平均粒度を算術平均計算した結果値である。
【0070】
【0071】
前記表1を参照すると、乾燥体に水分を吸着させて加水処理を行った後、粉砕ステップを行った実施例の場合、前記加水処理によって乾燥体の表面に水分が吸着されるため、粉砕ステップで発生する表面破壊による微粉発生量が減少したことを確認することができた。なお、5重量%の含水率を有している乾燥体に加水処理ステップを行っていない比較例1に比べて、同じ含水率の乾燥体に加水処理を行った実施例1~5の微粉発生量が少ないことを確認することができた。
【0072】
しかし、実施例7および8は、加水処理の際、乾燥体に多量の水分を吸着させて本発明で得ようとする加水処理された乾燥体の含水率の範囲を過剰に超過させたものであり、粉砕ステップで粉砕が不可能であることを確認することができた。
【0073】
一方、比較例1は、加水処理ステップを行っていない含水率5重量%の乾燥体を粉砕した高吸水性樹脂であり、実施例1~5に比べて微粉発生量が著しく増加したことを確認することができた。前記実施例1~5は、比較例1と同じ含水率を有する乾燥体を加水処理して粉砕しているが、前記比較例1は、加水処理を行っておらず、粉砕ステップを行うことで、乾燥体の表面が破壊されて微粉発生量が増加したことを確認することができた。
【0074】
なお、比較例2は、加水処理ステップを行っていない含水率2重量%の乾燥体を粉砕した高吸水性樹脂であり、同じ含水率を有する乾燥体を加水処理した実施例6に比べて微粉発生量が増加したことを確認することができた。上述のように、同じ含水率の乾燥体に対して、加水処理ステップの遂行可否によって微粉発生量が改善することができることを確認することができた。
【0075】
一方、比較例3は、加水処理ステップを行っておらず、含水率が10重量%である乾燥体を粉砕しているが、粉砕が不可能であることを確認することができた。このように、乾燥体の含水率が高い場合は、乾燥ステップで含水ゲル重合体が未乾燥の状態であり得、このように未乾燥の状態で粉砕ステップに導入される場合、比較例3のように粉砕が不可能であり得る。
【国際調査報告】