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  • 特表-多結晶結晶材料の研磨 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】多結晶結晶材料の研磨
(51)【国際特許分類】
   B24B 1/00 20060101AFI20241031BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241031BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20241031BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B24B1/00 B
B24B37/00 K
B24B37/24 B
B24B37/00 H
H01L21/304 621D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525506
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022047298
(87)【国際公開番号】W WO2023076100
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,394
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シン, ラジブ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】デー, サニー
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA07
3C049CA01
3C049CA04
3C158AA07
3C158AB04
3C158AC04
3C158CA01
3C158CA05
3C158DA12
3C158EB01
3C158EB20
3C158EB26
3C158ED09
5F057AA01
5F057BA30
5F057BB40
5F057CA11
5F057DA03
5F057EA05
5F057EA07
5F057EA08
5F057EA09
5F057EB03
5F057EB05
5F057EB10
(57)【要約】
本発明は、ダイヤモンド表面などの硬質表面を最終仕上げするための方法論を提供する。本方法では、表面粗さが約0.2nmから約100nmであり、例えば厚さが約0.02mm~約5mmの範囲にあり、ショアD硬度が30以上である平滑なパッドを、既知の研磨スラリーと組み合わせて用いることにより、優れた平滑な仕上がりを有するダイヤモンド表面が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド表面を研磨する方法であって、
a.当該表面を、ダイヤモンド表面を磨くのに効果的な研磨剤粒子を含むスラリー組成物と接触させること、
b.表面粗さが約0.2~100nmであり、ショアD硬度が少なくとも約30である回転研磨パッドを有する化学機械研磨装置を用いて、前記スラリー組成物を前記表面に対して移動させること、及び
c.前記表面を磨いて当該表面の一部を除去することにより、研磨されたダイヤモンド表面をもたらすこと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ダイヤモンド表面がダイヤモンド単結晶を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイヤモンド表面が多結晶ダイヤモンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨パッドが、ポリマー材料から構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー材料が、ポリ(塩化ビニル)、高密度ポリエチレン、及び架橋ポリエチレンから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリー組成物が、ダイヤモンド研磨剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多結晶アルミナ表面を研磨する方法であって、
a.当該表面を、多結晶アルミナ表面を磨くのに効果的な研磨剤粒子を含むスラリー組成物と接触させること、
b.表面粗さが約0.2~100nmであり、ショアD硬度が少なくとも約30である回転研磨パッドを有する化学機械研磨装置を用いて、前記スラリー組成物を前記表面に対して移動させること、及び
c.前記表面を磨いて当該表面の一部を除去することにより、研磨された多結晶アルミナ表面をもたらすこと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記研磨パッドが、ポリマー材料から構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料が、ポリ(塩化ビニル)、高密度ポリエチレン、及び架橋ポリエチレンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリー組成物が、ダイヤモンド研磨剤を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ダイヤモンド及び他の硬質表面を研磨するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスデバイスウェハは、集積回路を形成するために使用される。マイクロエレクトロニクスデバイスウェハは、基板(例えばシリコン)を含み、当該基板の領域には、絶縁性、導電性又は半導体特性を有する異なる材料を堆積させるためにパターンが形成されている。正確なパターン形成を得るためには、基板上に層を形成する際に使用された余剰な材料を除去しなければならない。さらに、機能的で信頼性のある回路を作製するためにはしばしば、後続処理の前に、平らな又は平坦なマイクロエレクトロニクスウェハ表面を作製することが重要である。よって、マイクロエレクトロニクスデバイスウェハの特定の表面を平坦化する及び/又は研磨することが必要となる。
【0003】
化学機械研磨又は平坦化(CMP)は、材料がマイクロエレクトロニクスデバイスウェハの表面から除去され、当該表面が、物理的なプロセス(例えば磨き)と化学的なプロセス(例えば酸化又はキレート化)との結合により、平坦化され、研磨されるプロセスである。最も基本的な形態において、CMPは、スラリー(例えば、研磨剤及び活性化学物質の溶液)を、マイクロエレクトロニクスデバイスウェハの表面をバフ研磨して除去、平坦化及び研磨のプロセスを行う研磨パッドに付与することを伴う。除去又は研磨のプロセスが、純粋に物理的又は化学的な作用のみで構成されることは通常、望ましくなく、むしろ、迅速で均一な除去をもたらすために、双方のシナジー的組み合わせが求められる。集積回路の作製において、CMPスラリーはまた、金属と他の材料との複合層を含む膜を優先的に除去可能であるのが望ましく、これによって、後続のフォトリソグラフィー、パターン形成、エッチング、及び薄膜プロセスのため、より高度に平坦な表面を製造することができる。従来のCMP作業では、基板キャリア又は研磨パッドがキャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置内の研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリにより、基板に対して制御可能な圧力(当該基板を研磨パッドに対して押圧する)がもたらされる。パッドは、基板に対して移動させる。
【0004】
硬質材料、例えばダイヤモンドのCMP研磨速度を改善する必要がある。特に、ダイヤモンド材料は、誘電体、エッチングストップ、又は集積回路(IC)及びその他の関連用途のための関連機能要素として使用され得る。一般的には、CMPプロセスの全体的な摩擦が低く、基板表面に研磨欠陥が実質的に生じないことが重要である。さらに、研磨中の圧力及び速度が増加するにつれて、研磨プロセス中の温度上昇を減らす必要がある。研磨プロセス中の温度上昇を低減させることにより、当該プロセスがより安定的で再現性が高いものになる。
【0005】
特に、小領域の単結晶ダイヤモンド基板(例えば5mm~50mm)、及び大領域の多結晶ダイヤモンド基板(例えば25m~150mm)が、多くの新たな用途(例えば、EUVリソグラフィ、6G通信のためのダイヤモンド基板上の窒化ガリウム(GaN)製造、及び宝飾用途のためのダイヤモンドの化学気相堆積のためのダイヤモンドシード)のために開発されている。このような材料を研磨する間に直面する主要な課題には、ダイヤモンド粒子の非平坦性が含まれる。ダイヤモンド粒子の向きはさまざまであるため、化学的効果は結晶の方向によって異なり、非平坦な表面が生じる。これらの問題に対処するためには、新たな方法を開発する必要がある。
【0006】
特定の硬質スラリー粒子(例えばダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び炭化ホウ素)は、機械的プロセス(例えばラップ研磨及びグラインダ研磨)により硬質基材(例えばダイヤモンド)を研磨するために、慣用的に用いられている。一般的には、粒子のサイズにより研磨速度(すなわち材料除去)が制御される。しかしながら、比較的大きな粒子は、表面及び表面の下により大きな損傷をもたらす傾向があるため、機械的な研磨プロセスでは、複数の工程が採用され得る。不所望の表面損傷を制限しつつ、除去速度の改善を図るために例えば、当初は比較的大きなサイズの粒子を、(1又は複数の)初期CMP工程で使用することができ、その後、より小さなサイズの粒子を、(1又は複数の)後のCMP工程で使用することができる。とはいえ、硬質材料(例えばダイヤモンド)の表面仕上げ全体を改善する必要性が残っている。
【0007】
概要
要約すると、本発明により、硬質表面、例えばダイヤモンド表面の最終仕上げをする方法が提供される。本方法では、表面粗さ(Ra)が約0.2nmから約100nmであり、例えば厚さが約0.02mm~約5mmの範囲にあり、ショアD硬度が30以上である平滑なパッドを、既知の研磨スラリーと組み合わせて用いることにより、優れた平滑な仕上がりを有するダイヤモンド表面が提供される。当該パッドは、合成材料製、例えばポリ(塩化ビニル)(PVC)又は他のポリマー製であり得る。本発明による方法において使用されるパッドは、ダイヤモンド表面の最終仕上げに用いられる従来のパッド(粗さプロファイルが>100nmと比較的高い)に比べ、極めて平滑(平均粗さ(Ra)0.2nm~100nm)である。本発明による方法では、CMPスラリーを用いてダイヤモンド表面を研磨したところ、当該ダイヤモンド表面は、多結晶ダイヤモンド膜及び多結晶炭化ケイ素のトポグラフィーがより平坦であり、粗さがより低いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】多結晶ダイヤモンド表面についてサイズが異なる粒子を用いて研磨されたダイヤモンド基板の、光学式プロファイラ(optical profilometer)による立体(3D)画像である(比較例)。初期粗さは10~50nmの範囲にある。従来のパッドを使用すると、ウェハ内の不均一性が高く、最大3~5nmの粗さになった。
図2】超平滑なPVCパッドを使用して研磨された多結晶ダイヤモンド(PCD)基板についての、光学式プロファイラによる立体(3D)画像である。この例では、約0.3~1nmの粗さが達成可能である。
図3】超平滑なパッド(標準的なポリマーパッド裏地あり、及び無しの場合)の使用の描写である。
【0009】
詳細な説明
本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」には、内容として明示的に別段の定めがない限り、複数形が含まれる。本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されるように、「又は(or)」という用語は一般的に、内容として明示的に別段の定めがない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で用いられる。
【0010】
「約(about)」という用語は一般的に、言及された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数値範囲をいう。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数字が含まれ得る。
【0011】
終点を用いて表現された数値範囲には、当該範囲内に包含されるすべての数字が含まれる(例えば1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5が含まれる)。
【0012】
第1の態様では、本発明によりダイヤモンド表面を研磨する方法が提供され、当該方法は、
a.当該表面を、ダイヤモンド表面を磨くのに効果的な研磨剤粒子を含むスラリー組成物と接触させること、
b.表面粗さが約0.2~100nmであり、ショアD硬度が少なくとも約30である回転研磨パッドを有する化学機械研磨装置を用いて、前記スラリー組成物を前記表面に対して移動させること、及び
c.前記表面を磨いて当該表面の一部を除去することにより、研磨されたダイヤモンド表面をもたらすこと、
を含むものである。
【0013】
1つの実施態様ではダイヤモンド表面が、ダイヤモンド単結晶を含む。
【0014】
1つの実施態様ではダイヤモンド表面が、多結晶ダイヤモンド(PCD)を含む。
【0015】
別の態様では本発明により、多結晶アルミナ表面を研磨する方法が提供され、該方法は、
a.当該表面を、多結晶アルミナ表面を磨くのに効果的な研磨剤粒子を含むスラリー組成物と接触させること、
b.表面粗さが約0.2~100nmであり、ショアD硬度が少なくとも約30である回転研磨パッドを有する化学機械研磨装置を用いて、前記スラリー組成物を前記表面に対して移動させること、及び
c.前記表面を磨いて当該表面の一部を除去することにより、研磨された多結晶アルミナ表面をもたらすこと、
を含むものである。
【0016】
1つの実施態様では、研磨パッドが、ポリマー材料から構成されている。1つの実施態様ではポリマー材料が、ポリ(塩化ビニル)、高密度ポリエチレン(HDPE)などから選択される。
【0017】
上述のように表面粗さ(Ra)は、約0.2~約100nmである。特定の実施態様では、表面粗さが約90未満、約80未満、約70未満、約60未満、又は約50nm未満である。
【0018】
1つの実施態様では、パッドの多孔性が約0~50m.s/Kgである。1つの実施態様では、パッドの厚さが約50ミクロン~約15mmである。1つの実施態様では、パッドを積み重ねてもよいし、積み重ねなくてもよい(図3に示したとおり)。積み重ねパッドの基部は、標準的な(硬質又は軟質)ポリマーパッドであり得る。
【0019】
1つの実施態様では、ダイヤモンド表面を磨くために効果的なスラリー組成物が、既知のものであり、それらの多くは市販で手に入る。例えば、研磨剤(例えばダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、ジルコニアなど)を含むスラリー組成物が使用できる。市販で手に入るスラリーには、ダイヤモンドを含有するものが含まれる。既知のスラリーのさらなる例には、米国特許第9,567,492号(U.S. Patent No. 9,567,492)に記載されたものが含まれ、参照により援用される。
【実施例
【0020】
実施例1、2及び3は、Buehler社のAutomet-250(プラテンのRPMは120、ヘッドのRPMは60)で行った。使用圧力は、多結晶SiC、多結晶ダイヤモンド及び多結晶アルミナについて、4psiであった。スラリーの流量は、30mL/分に維持し、表面仕上げは、Wyko社の光学式プロファイラ(スキャンサイズは300μm×255μm)で測定した。
【0021】
実施例4は、先に述べたのと同じパラメータで行うが、ST-PCF-Bパッドにおける圧力条件が異なる。
【0022】
ST-PCF-Bは、非多孔質の超平滑パッドであり、標準的なポリマーパッド裏地を備え、ショアD硬度は70であり、表面粗さは約55nm(Ra)である。
【0023】
実施例1:SND-9200-FAスラリーを用い、異なるパッドでの多結晶SiCデータ
【0024】
実施例2:SND-9200-FAスラリーを用い、異なるパッドでの多結晶ダイヤモンドデータ
【0025】
実施例3:SND-9200-FAスラリーを用いて、異なるパッドでの多結晶アルミナデータ
【0026】
実施例4:SND-9200-FAスラリーを用い、ST-PCF-Bパッド(圧力ラダー付き)での多結晶SiCデータ
【0027】
このように、本開示についていくつかの例示的な実施態様を記載したので、当業者であれば直ちに、本明細書に添付された特許請求の範囲内でさらに別の実施態様を行うことができ、また使用可能なことを理解するであろう。本文書によりカバーされる開示の多くの利点については、先に説明したとおりである。しかしながら、本開示は多くの点で、例示に過ぎないことが理解されるだろう。本開示の範囲はもちろん、添付特許請求の範囲が表現される言語で規定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】