(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置で使用するためのペリクル及び膜
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20241031BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G03F1/62
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529189
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081574
(87)【国際公開番号】W WO2023094177
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハウエリング,ゾマー,シルベスター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミューレン,ポール,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クライン,アレクサンダー,ルードウィク
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H195BC33
2H195BC34
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA24
(57)【要約】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法が開示される。方法は、第1の材料から形成された多孔質膜を設けること、少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布すること、及び多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように塗布することを含む。少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じ、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。有利には、これにより、キャッピング層に使用される材料に関係なく、EUVフレアを低減しながら、多孔質膜をエッチングから保護することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、
第1の材料から形成された多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
前記少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、前記少なくとも1つの二次元材料層が前記又は各キャッピング層と前記多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を備えたペリクル。
【請求項2】
前記多孔質膜がナノ構造を含む、請求項1のペリクル。
【請求項3】
前記多孔質膜が実質的に自立式である、請求項1又は2のペリクル。
【請求項4】
前記又は各少なくとも1つの二次元材料層が、前記多孔質膜の前記少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成する、請求項1から3のいずれか一項のペリクル。
【請求項5】
前記二次元材料がグラフェン又はナノチューブを含む、請求項1から4のいずれか一項のペリクル。
【請求項6】
前記二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む、請求項1から5のいずれか一項のペリクル。
【請求項7】
少なくとも1つの二次元材料層が前記多孔質膜の両面に隣接して設けられ、キャッピング層が、前記少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と前記多孔質膜との間に配置されるように前記ペリクルの各側に設けられる、請求項1から6のいずれか一項のペリクル。
【請求項8】
前記又は各キャッピング層が三次元材料である、請求項1から7のいずれか一項のペリクル。
【請求項9】
前記又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である、請求項1から8のいずれか一項のペリクル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのキャッピング層が、前記多孔質層及び前記少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している、請求項1から9のいずれか一項のペリクル。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャッピング層が、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm
-1未満の材料から形成される、請求項1から10のいずれか一項のペリクル。
【請求項12】
前記キャッピング層が0.3から5nm程度の厚さを有する、請求項1から11のいずれか一項のペリクル。
【請求項13】
前記キャッピング層がイットリウム又は酸化イットリウムを含む、請求項1から12のいずれか一項のペリクル。
【請求項14】
前記キャッピング層が、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含む、請求項1から13のいずれか一項のペリクル。
【請求項15】
前記キャッピング層が、様々な材料から形成された複数の副層を含む、請求項1から14のいずれか一項のペリクル。
【請求項16】
前記多孔質膜の周辺部にペリクル境界を更に備えた、請求項1から15のいずれか一項のペリクル。
【請求項17】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法であって、
第1の材料から形成された多孔質膜を設けること、
前記多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布すること、及び
前記多孔質膜の少なくとも1つの面上の前記少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を、前記少なくとも1つの二次元材料層が前記又は各キャッピング層と前記多孔質膜との間に配置されるように塗布することを含む方法。
【請求項18】
放射ビームを使用して基板上にパターニングデバイスの像を形成するように動作可能なリソグラフィ装置であって、前記放射ビームの経路内に配置された膜を備え、前記膜が、
第1の材料から形成された多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
前記少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、前記少なくとも1つの二次元材料層が前記又は各キャッピング層と前記多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2021年11月25日に出願された欧州出願21210424.4の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィ装置で使用するためのペリクル及びそのようなペリクルを形成する関連方法に関する。本発明はまた、(基板上に像を形成するために使用される)リソグラフィ装置の放射ビームの経路内に配置された膜を備えたリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えば、マスク)からのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板にパターンを投影するためリソグラフィ装置が用いる放射の波長は、その基板上に形成することができるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いたリソグラフィ装置を使用すると、従来のリソグラフィ装置(例えば193nmの波長の電磁放射を使用できる)よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置において放射ビームにパターンを与えるのに使用されるパターニングデバイス(例えば、マスク)は、マスクアセンブリの一部を構成することがある。マスクアセンブリは、パターニングデバイスを粒子汚染から保護するペリクルを備えることがある。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持されることがある。
【0006】
[0006] 従来技術に関連する1つ以上の問題を回避又は軽減する装置及び又は方法を提供することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本開示の第1の態様によれば、リソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法であって、第1の材料から形成された多孔質膜を設けること、多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布すること、及び多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように塗布することを含む方法が提供される。
【0008】
[0008] ペリクルは、EUVリソグラフィ装置内のレチクルに隣接して使用するのに適している場合がある。使用中、そのような(反射型)レチクルは、例えば照明システムからのEUV放射で照明される。レチクルが照明システムから受けた放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するように構成されることが理解されるであろう。投影システムが、(反射された)パターン付き放射ビームを収集し、基板(例えばレジストコートシリコンウェーハ)上にレチクルの(回折限界)像を形成する。レチクル上に汚染があると、一般には基板上に形成される像が変わり、印刷エラーが発生することになる。
【0009】
[0009] レチクルの粒子汚染を避けるために、レチクルを保護するためのペリクルと呼ばれる薄い膜を使用することが知られている。ペリクルはレチクルの前に配置され、粒子がレチクルに付着するのを防ぐ。ペリクルは、投影システムによって鮮明に結像されないため、ペリクル上の粒子が結像プロセスを妨げないように配置される。ペリクルは、レチクルに粒子が当たって許容できない印刷エラーが発生するのを防ぐのに十分な厚さである一方、ペリクルによるEUV放射の吸収を減らすためにできるだけ薄いことが望ましい。
【0010】
[00010] 第1の態様によるペリクルの形成方法は、これより考察するように特に有利である。
【0011】
[00011] 本明細書で使用される多孔質膜が、例えばナノチューブ膜などの開口構造を有する材料を意味するものとすることが理解されよう。本明細書で使用される二次元材料が、例えばグラフェンなどの1つ以上の単一原子層から形成される材料を意味するものとすることが理解されよう。少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じる働きをする。
【0012】
[00012] 非多孔質膜が、膜の2つの対向する面を画定する2つの概ね平行な表面を有し得ることが理解されるであろう。2つの概ね平行な表面により境界される体積が、非多孔質膜を形成する材料によって実質的に占められる。対照的に、多孔質膜が、材料を有しない空隙が散りばめられた、多孔質膜を形成する材料により占められる領域を含むことが更に理解されるであろう。そのような多孔質膜の場合、2つの概ね平行な仮想表面又は非物理的表面が膜の境界又は側面を画定することがある。2つの概ね平行な仮想表面により境界される体積は、多孔質膜を形成する材料によって部分的にのみ占められる。多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布することは、多孔質膜の境界又は面を画定する少なくとも1つの仮想表面又は非物理的表面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布することを含むものとする。
【0013】
[00013] 第1の態様による方法は、ペリクルの大部分が多孔質材料から形成されるペリクルをもたらす。有利には、これにより密度が小さい、ひいては極端紫外(EUV)放射の透過率が大きいペリクルがもたらされる可能性がある。これはEUVリソグラフィシステムにとって特に重要であり、システムのスループットを向上させる。
【0014】
[00014] EUVリソグラフィ装置においてペリクル膜として使用するための特に有望な材料の1つは、カーボンナノチューブ(CNT)から形成される織物又は膜である。そのようなCNTペリクルは多孔質材料であるため、非常に高いEUV透過率(>98%)をもたらす可能性がある。更に、CNTペリクルは非常に優れた機械的安定性も提供するため、機械的故障に対して堅牢なままでありながら、小さな厚さで製造することができる。しかしながら、通常、リソグラフィ装置内には低圧の水素ガスが供給され、(露光中)EUV放射の存在下で水素プラズマが形成される。水素プラズマからの水素イオン及び水素フリーラジカルが、CNTから形成されたペリクルをエッチングし、ペリクルの潜在的な寿命を制限し、CNTペリクルの商業的実装を妨げる可能性があることが分かっている。
【0015】
[00015] そのようなCNTペリクルのエッチングを軽減するために、そのようなCNTペリクルに保護用のキャッピング層を設けることがこれまでに提案されている。そのようなキャッピング層は、リソグラフィ装置の環境において化学的に安定しており、EUV放射に対する消衰係数が低い材料から形成されることがある。
【0016】
[00016] しかしながら、炭素と適切なキャッピング層の屈折率の差は、通常、炭素と真空の屈折率の差よりも大きい。したがって、本発明者らは、そのようなキャッピング層が望ましくないEUVフレアの増大をもたらすことになることに気付いた。少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜に塗布し、その後、(第1の態様による方法によって特定されるように)キャッピング層を少なくとも1つの二次元材料層に塗布することは、これより考察するように特に有利である。
【0017】
[00017] 多孔質材料が構造を有することになるため、多孔質材料と周囲の媒体の屈折率に大きな差異がある場合、放射(例えばEUV放射)がペリクルを通って伝播するときに、放射は(例えば、ミー散乱を介して)散乱されることになることが理解されよう。これは放射の望ましくない拡散又はフレアを引き起こし、リソグラフィ装置の結像性能に再び影響を与えることになる。EUV放射はほとんどの材料によって非常に強く吸収されるため、EUVリソグラフィシステムは通常、高真空で運転される。したがって、多孔質材料が、1に近い屈折率を有する材料から形成されることが特に望ましい場合がある。また、多孔質材料が、EUV放射に対する消衰係数ができるだけ低い材料から形成されることが望ましい場合がある。
【0018】
[00018] 第1の態様による方法の少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じ、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。これにより、キャッピング層をより滑らかで平坦な外面上に設けることが可能になる。有利には、これにより、キャッピング層に使用される材料に関係なく、EUVフレアを低減しながら、多孔質膜をエッチングから保護することができる。更に、二次元材料の表面は、多孔質材料の表面よりも大幅に滑らかで平坦であることに加えて、より小さな表面積を有することになる。結果として、(比較的薄い)キャッピング層が多孔質材料上に直接ではなく二次元材料上に設けられるとき、キャッピング層の体積が減少する。有利には、これにより、キャッピング層が同じ厚さであっても、ペリクルのEUV透過率が高くなる。
【0019】
[00019] CNT膜内において、カーボンナノチューブは分かれている場合があるか、代替的に、それらはまとまって束になることがある。更に、そのような束のサイズは異なる場合がある。発明者らは、キャッピング層がCNT膜に直接塗布される場合に、キャッピング層によるEUV透過率の損失がCNT膜内の束化の程度に強く依存することが分かった。例えば、膜内のCNTの密度が一定の場合、1束当たりのCNTの数が少なければ少ないほど、EUV透過率の損失は大きくなる。有利には、第1の態様による方法を用いることによって、キャッピング層が(多孔質膜ではなく)少なくとも1つの二次元材料層に塗布されるため、EUV透過率の損失は、もはや多孔質膜内の構造の典型的なサイズ(例えば、CNT膜の場合は束の数)に依存しない。実際、これを二次元の平坦な層に塗布することによって、所与の厚さのキャッピング層について、EUV透過率の損失は最小限に抑えられる。
【0020】
[00020] 最後に、第1の態様による方法を用いて形成されたペリクルの少なくとも1つの二次元材料層は多孔質層の構造を閉じる。有利には、これにより、そのような二次元材料層がないCNTペリクルよりも高い粒子阻止能が得られる。
【0021】
[00021] 多孔質膜の少なくとも1つの面への少なくとも1つの二次元材料層の塗布は、湿式転写プロセスを用いて達成されることがある。
【0022】
[00022] そのような湿式転写プロセスは当技術分野で知られている。一般に、湿式転写プロセスは、第1の基板(例えば、銅基板)上での二次元材料(例えば、グラフェンフィルム)の成長を含む。続いて、二次元材料の他方の面上に接着層を形成する。接着層は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマーを含むことがある。続いて、第1の基板を、例えば選択的エッチングによって除去する。例えば、銅を含む第1の基板を、過硫酸アンモニウムを使用して除去することがある。任意選択で、接着層及び二次元材料を(例えば水で)すすぐことがある。続いて、多孔質膜のある面に二次元材料を塗布する。最後に、接着層を、例えば選択的エッチングによって除去する。
【0023】
[00023] 少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布することは、支持基板上に少なくとも1つの二次元材料層を設けること、少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜のある面に押し付けること、及び支持基板を除去することを含むことがある。
【0024】
[00024] 支持基板は、その表面に犠牲層を備えることがある。少なくとも1つの二次元材料層は、犠牲層上に設けられることがある。支持基板を除去することは、犠牲層をエッチングして支持基板を除去することを含むことがある。
【0025】
[00025] 多孔質膜はナノ構造を含むことがある。
【0026】
[00026] 多孔質膜はナノチューブを含むことがある。
【0027】
[00027] 例えば、多孔質膜は、CNTから形成された織物である場合がある。これは、カーボンナノチューブ膜(CNTm)と呼ばれることがある。
【0028】
[00028] 多孔質膜は実質的に自立式である場合がある。
【0029】
[00029] 使用中、ペリクルが、レチクル又はマスクに取り付けられるペリクルフレームによってその周辺部で支持されることになることが理解されるであろう。本明細書で使用するとき、多孔質膜が実質的に自立式であるとは、多孔質膜が自重を支えることを意味するものとする。つまり、少なくとも1つの二次元材料層及びキャッピング層以外に、多孔質膜を支持する多孔質膜に隣接する追加の膜は存在しない。
【0030】
[00030] 一部の実施形態では、多孔質膜はペリクルの厚さの大部分を構成するものと考えられることがある。
【0031】
[00031] その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層として塗布されることがある。
【0032】
[00032] 二次元材料はグラフェンを含むことがある。
【0033】
[00033] 一部の実施形態では、多孔質膜の片面又は両面に隣接して3つのグラフェン層が設けられることがある。
【0034】
[00034] 一実施形態では、多孔質膜はカーボンナノチューブ膜である場合があり、二次元材料はグラフェンを含む。グラフェンを二次元材料として使用する1つの利点は、ペリクルがこれまでに炭素から形成されており、この環境における炭素の特性が既知であることである。例えば、グラフェンなどの別の炭素ベースの材料を使用することによって、(他の材料から生じ得る)EUV反射の大幅な増加が回避されることがある。更に、他の材料は、リソグラフィ装置内での水素エッチングに対する感受性が増大することがある。
【0035】
[00035] 二次元材料は六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むことがある。
【0036】
[00036] 二次元材料は二硫化モリブデン(MoS2)を含むことがある。
【0037】
[00037] 有利には、これらの材料(h-BN及びMoS2)は水素エッチングに強く、したがって、二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)及び/又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む実施形態では、厚さがより小さいキャッピング層が塗布されることがある。
【0038】
[00038] 一部の実施形態では、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に塗布されることがあり、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるようにペリクルの各側に塗布されることがある。
【0039】
[00039] 多孔質膜の異なる面に異なるタイプの二次元材料が設けられ得ることが理解されるであろう。
【0040】
[00040] その又は各キャッピング層は三次元材料である場合がある。
【0041】
[00041] 有利には、三次元材料は二次元材料よりも製造が著しく容易である。以上で考察したように、二次元材料は多孔質膜の構造を効果的に閉じる。これにより、以上で考察したように、第2の態様によるペリクルの利点を享受しながら、三次元材料をキャッピング層に使用することが可能になる。
【0042】
[00042] その又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である場合がある。
【0043】
[00043] 特に明記しない限り、本明細書では、キャッピング層の全EUV透過率が、ペリクルを通って伝播した後に透過されるEUV放射の割合を意味するものとすることが理解されるであろう。キャッピング層がペリクルの各側に設けられる実施形態では、キャッピング層の全EUV透過率は両側からの全透過率を意味する。
【0044】
[00044] 一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は96.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.8%程度である場合がある。
【0045】
[00045] キャッピング層のEUV透過率が、一般に、(a)キャッピング層を形成する材料のタイプ、及び(b)キャッピング層の厚さに依存することが理解されるであろう。キャッピング層のEUV透過率が、一般に、キャッピング層の密度又は空隙率にも依存することが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0046】
[00046] 少なくとも1つのキャッピング層は、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している場合がある。
【0047】
[00047] 他の2つの層を水素エッチングから保護するのに適するように、キャッピング層が、(a)水素により強くエッチングされない適切な材料から形成され得ること、及び(b)適切な厚さを有し得ることが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0048】
[00048] 少なくとも1つのキャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成されることがある。
【0049】
[00049] EUV放射のペリクルによる吸収を最小限に抑えることが望ましい。そのため、一般的には、キャッピング層をEUV放射に対する消衰係数が最小限の材料から形成することが望ましい。
【0050】
[00050] 一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1未満の材料から形成される。一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.005nm-1未満の材料から形成される。
【0051】
[00051] キャッピング層は0.3から5nm程度の厚さを有することがある。
【0052】
[00052] キャッピング層はイットリウム又は酸化イットリウムを含むことがある。
【0053】
[00053] イットリウムは、EUV放射に対する消衰係数が0.0021nm-1程度である。酸化イットリウム(Y2O3)は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1程度である。
【0054】
[00054] キャッピング層は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含むことがある。
【0055】
[00055] 方法は更に、多孔質膜の周辺部にペリクル境界を取り付けることを含むことがある。
【0056】
[00056] ペリクル境界は、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布される前に多孔質膜の周辺部に取り付けられることがある。
【0057】
[00057] 本開示の第2の態様によれば、リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、第1の材料から形成された多孔質膜と、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層とを備えたペリクルが提供される。
【0058】
[00058] 本開示の第2の態様によるペリクルは、本開示の第1の態様による方法を用いて形成されることがある。本開示の第2の態様によるペリクルは、本開示の第1の態様による方法のいずれかの特徴から生じ得るいずれかの特徴を有することがある。
【0059】
[00059] ペリクルは、EUVリソグラフィ装置内でレチクルに隣接して使用するのに適している場合がある。使用中、そのような(反射型)レチクルは、例えば照明システムからのEUV放射で照明される。レチクルが照明システムから受けた放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するように構成されることが理解されるであろう。投影システムが、(反射された)パターン付き放射ビームを収集し、基板(例えばレジストコートシリコンウェーハ)上にレチクルの(回折限界)像を形成する。レチクル上に汚染があると、一般には基板上に形成される像が変わり、印刷エラーが発生することになる。
【0060】
[00060] レチクルの粒子汚染を避けるために、レチクルを保護するためのペリクルと呼ばれる薄い膜を使用することが知られている。ペリクルはレチクルの前に配置され、粒子がレチクルに付着するのを防ぐ。ペリクルは、投影システムによって鮮明に結像されないため、ペリクル上の粒子が結像プロセスを妨げないように配置される。ペリクルは、レチクルに粒子が当たって許容できない印刷エラーが発生するのを防ぐのに十分な厚さである一方、ペリクルによるEUV放射の吸収を減らすためにできるだけ薄いことが望ましい。
【0061】
[00061] 第2の態様によるペリクルは、これより考察するように特に有利である。
【0062】
[00062] 本明細書で使用される多孔質膜が、例えばナノチューブ膜などの開口構造を有する材料を意味するものとすることが理解されよう。本明細書で使用される二次元材料が、例えばグラフェンなどの1つ以上の単一原子層から形成される材料を意味するものとすることが理解されよう。少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じる働きをする。
【0063】
[00063] 第2の態様によるペリクルは、ペリクルの大部分が多孔質材料から形成されることを可能にする。有利には、これにより密度が小さい、ひいては極端紫外(EUV)放射の透過率が大きいペリクルがもたらされる可能性がある。これはEUVリソグラフィシステムにとって特に重要であり、システムのスループットを向上させる。
【0064】
[00064] 多孔質材料が構造を有することになるため、多孔質材料と周囲の媒体の屈折率に大きな差異がある場合、放射(例えばEUV放射)がペリクルを通って伝播するときに、放射は(例えば、ミー散乱を介して)散乱されることになることが理解されよう。これは放射の望ましくない拡散又はフレアを引き起こし、リソグラフィ装置の結像性能に再び影響を与えることになる。EUV放射はほとんどの材料によって非常に強く吸収されるため、EUVリソグラフィシステムは通常、高真空で運転される。したがって、多孔質材料が、1に近い屈折率を有する材料から形成されることが特に望ましい場合がある。また、多孔質材料が、EUV放射に対する消衰係数ができるだけ低い材料から形成されることが望ましい場合がある。
【0065】
[00065] EUVリソグラフィ装置においてペリクル膜として使用するための特に有望な材料の1つは、カーボンナノチューブ(CNT)から形成される織物又は膜である。そのようなCNTペリクルは多孔質材料であるため、非常に高いEUV透過率(>98%)をもたらす可能性がある。更に、CNTペリクルは非常に優れた機械的安定性も提供するため、機械的故障に対して堅牢なままでありながら、小さな厚さで製造することができる。しかしながら、通常、リソグラフィ装置内には低圧の水素ガスが供給され、(露光中)EUV放射の存在下で水素プラズマが形成される。水素プラズマからの水素イオン及び水素フリーラジカルが、CNTから形成されたペリクルをエッチングし、ペリクルの潜在的な寿命を制限し、CNTペリクルの商業的実装を妨げる可能性があることが分かっている。
【0066】
[00066] そのようなCNTペリクルのエッチングを軽減するために、そのようなCNTペリクルに保護用のキャッピング層を設けることがこれまでに提案されている。しかしながら、炭素と適切なキャッピング層の屈折率の差は、通常、炭素と真空の屈折率の差よりも大きい。したがって、そのようなキャッピング層は、望ましくないEUVフレアの増加をもたらすことになる。第2の態様によるペリクルの少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じ、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。これにより、キャッピング層をより滑らかで平坦な外面上に設けることが可能になる。有利には、これにより、キャッピング層に使用される材料に関係なく、EUVフレアを低減しながら、多孔質膜をエッチングから保護することができる。更に、二次元材料の表面は、多孔質材料の表面よりも大幅に滑らかで平坦であることに加えて、より小さな表面積を有することになる。結果として、(比較的薄い)キャッピング層が多孔質材料上に直接ではなく二次元材料上に設けられるとき、キャッピング層の体積が減少する。有利には、これにより、キャッピング層が同じ厚さであっても、ペリクルのEUV透過率が高くなる。
【0067】
[00067] CNT膜内において、カーボンナノチューブは分かれている場合があるか、代替的に、それらはまとまって束になることがある。更に、そのような束のサイズは異なる場合がある。発明者らは、キャッピング層がCNT膜に直接塗布される場合に、キャッピング層によるEUV透過率の損失がCNT膜内の束化の程度に強く依存することが分かった。例えば、膜内のCNTの密度が一定の場合、1束当たりのCNTの数が少なければ少ないほど、EUV透過率の損失は大きくなる。有利には、第2の態様によるペリクルによって、キャッピング層が(多孔質膜ではなく)少なくとも1つの二次元材料層に塗布されるため、EUV透過率の損失は、もはや多孔質膜内の構造の典型的なサイズ(例えば、CNT膜の場合は束の数)に依存しない。実際、これを二次元の平坦な層に塗布することによって、所与の厚さのキャッピング層について、EUV透過率の損失は最小限に抑えられる。
【0068】
[00068] 最後に、第2の態様によるペリクルの少なくとも1つの二次元材料層は多孔質層の構造を閉じる。有利には、これにより、そのような二次元材料層がないCNTペリクルよりも高い粒子阻止能が得られる。
【0069】
[00069] 多孔質膜はナノ構造を含むことがある。
【0070】
[00070] 多孔質膜はナノチューブを含むことがある。
【0071】
[00071] 例えば、多孔質膜は、CNTから形成された織物である場合がある。これは、カーボンナノチューブ膜と呼ばれることがある。
【0072】
[00072] 多孔質膜は実質的に自立式である場合がある。
【0073】
[00073] 使用中、ペリクルが、レチクル又はマスクに取り付けられるペリクルフレームによってその周辺部で支持されることになることが理解されるであろう。本明細書で使用するとき、多孔質膜が実質的に自立式であるとは、多孔質膜が自重を支えることを意味するものとする。つまり、少なくとも1つの二次元材料層以外に、多孔質膜を支持する多孔質膜に隣接する追加の膜は存在しない。
【0074】
[00074] 多孔質膜は、ペリクルの厚さの大部分を構成するものと考えられることがある。
【0075】
[00075] その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成することがある。
【0076】
[00076] 二次元材料はグラフェンを含むことがある。
【0077】
[00077] 一部の実施形態では、多孔質膜の片面又は両面に隣接して3つのグラフェン層が設けられることがある。
【0078】
[00078] 一実施形態では、多孔質膜はカーボンナノチューブ膜である場合があり、二次元材料はグラフェンを含む。グラフェンを二次元材料として使用する1つの利点は、ペリクルがこれまでに炭素から形成されており、この環境における炭素の特性が既知であることである。例えば、グラフェンなどの別の炭素ベースの材料を使用することによって、(他の材料から生じ得る)EUV反射の大幅な増加が回避されることがある。更に、他の材料は、リソグラフィ装置内での水素エッチングに対する感受性が増大することがある。
【0079】
[00079] 二次元材料は六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むことがある。
【0080】
[00080] 二次元材料は二硫化モリブデン(MoS2)を含むことがある。
【0081】
[00081] 有利には、これらの材料(h-BN及びMoS2)は水素エッチングに強く、したがって、二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)及び/又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む実施形態では、厚さがより小さいキャッピング層が塗布されることがある。
【0082】
[00082] 一部の実施形態では、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に隣接して設けられることがあり、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるようにペリクルの各側に設けられることがある。
【0083】
[00083] 多孔質膜の異なる面に異なるタイプの二次元材料が設けられ得ることが理解されるであろう。
【0084】
[00084] その又は各キャッピング層は三次元材料である場合がある。
【0085】
[00085] 有利には、三次元材料は二次元材料よりも製造が著しく容易である。以上で考察したように、二次元材料は多孔質膜の構造を効果的に閉じる。これにより、以上で考察したように、第2の態様によるペリクルの利点を享受しながら、三次元材料をキャッピング層に使用することが可能になる。
【0086】
[00086] その又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である場合がある。
【0087】
[00087] 特に明記しない限り、本明細書では、キャッピング層の全EUV透過率が、ペリクルを通って伝播した後に透過されるEUV放射の割合を意味するものとすることが理解されるであろう。キャッピング層がペリクルの各側に設けられる実施形態では、キャッピング層の全EUV透過率は両側からの全透過率を意味する。
【0088】
[00088] 一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は96.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.8%程度である場合がある。
【0089】
[00089] キャッピング層のEUV透過率が、一般に、(a)キャッピング層を形成する材料のタイプ、及び(b)キャッピング層の厚さに依存することが理解されるであろう。キャッピング層のEUV透過率が、一般に、キャッピング層の密度又は空隙率にも依存することが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0090】
[00090] 少なくとも1つのキャッピング層は、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している場合がある。
【0091】
[00091] 他の2つの層を水素エッチングから保護するのに適するように、キャッピング層が、(a)水素により強くエッチングされない適切な材料から形成され得ること、及び(b)適切な厚さを有し得ることが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0092】
[00092] 少なくとも1つのキャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成されることがある。
【0093】
[00093] EUV放射のペリクルによる吸収を最小限に抑えることが望ましい。そのため、一般的には、キャッピング層をEUV放射に対する消衰係数が最小限の材料から形成することが望ましい。
【0094】
[00094] 一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1未満の材料から形成される。一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.005nm-1未満の材料から形成される。
【0095】
[00095] キャッピング層は0.3から5nm程度の厚さを有することがある。
【0096】
[00096] キャッピング層はイットリウム又は酸化イットリウムを含むことがある。
【0097】
[00097] イットリウムは、EUV放射に対する消衰係数が0.0021nm-1程度である。酸化イットリウム(Y2O3)は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1程度である。
【0098】
[00098] キャッピング層は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含むことがある。
【0099】
[00099] キャッピング層は、様々な材料から形成された複数の副層を含むことがある。
【0100】
[000100] ペリクルは更に、多孔質膜の周辺部にペリクル境界を備えることがある。
【0101】
[000101] 本開示の第3の態様によれば、放射ビームを使用して基板上にパターニングデバイスの像を形成するように動作可能なリソグラフィ装置であって、放射ビームの経路内に配置された膜を備え、膜が、第1の材料から形成された多孔質膜と、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層とを備えたリソグラフィ装置が提供される。
【0102】
[000102] 第3の態様による膜が、第2の態様によるペリクルと実質的に同じであることが理解されるであろう。更に、第3の態様による膜もリソグラフィ装置内で透過膜を構成するため、上述のように、第2の態様によるペリクルと同じ理由で有利である。
【0103】
[000103] 本開示の第3の態様によるリソグラフィ装置内の放射ビームの経路内に配置された膜は、本開示の第1の態様による方法を用いて形成されることがある。本開示の第3の態様によるリソグラフィ装置内の放射ビームの経路内に配置された膜は、本開示の第1の態様による方法のいずれかの特徴から生じ得るいずれかの特徴を有することがある。同様に、本開示の第3の態様によるリソグラフィ装置内の放射ビームの経路内に配置された膜は、本開示の第2の態様によるペリクルのいずれかの特徴を有することがある。
【0104】
[000104] 膜は動的ガスロックの一部を構成することがある。
【0105】
[000105] そのような動的ガスロックは、例えば、放射ビームがリソグラフィ装置の投影システムから基板テーブル上に支持された基板に通過するための開口部の近くに形成されることがある。
【0106】
[000106] 代替的に、膜はスペクトルフィルタの一部を構成することがある。
【0107】
[000107] そのようなスペクトルフィルタは、リソグラフィ装置内の任意の都合の良い又は適切な位置に設けられることがある。スペクトルフィルタは、基板テーブル上に支持された基板に帯域外放射が入射するのを回避するか、又は少なくとも抑制するように構成されることがある。
【0108】
[000108] 第3の態様による膜は、これより考察するように、上述の第2の態様によるペリクルの特徴のいずれかを有することがある。
【0109】
[000109] 多孔質膜はナノ構造を含むことがある。
【0110】
[000110] 多孔質膜はナノチューブを含むことがある。
【0111】
[000111] 例えば、多孔質膜は、CNTから形成された織物である場合がある。これは、カーボンナノチューブ膜と呼ばれることがある。
【0112】
[000112] 多孔質膜は実質的に自立式である場合がある。
【0113】
[000113] 使用中、膜が支持フレームによってその周辺部で支持されることになることが理解されるであろう。本明細書で使用するとき、多孔質膜が実質的に自立式であるとは、多孔質膜が自重を支えることを意味するものとする。つまり、少なくとも1つの二次元材料層以外に、多孔質膜を支持する多孔質膜に隣接する追加の膜は存在しない。
【0114】
[000114] 多孔質膜は、膜の厚さの大部分を構成するものと考えられることがある。
【0115】
[000115] その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成することがある。
【0116】
[000116] 二次元材料はグラフェンを含むことがある。
【0117】
[000117] 一部の実施形態では、多孔質膜の片面又は両面に隣接して3つのグラフェン層が設けられることがある。
【0118】
[000118] 一実施形態では、多孔質膜はカーボンナノチューブ膜である場合があり、二次元材料はグラフェンを含む。グラフェンを二次元材料として使用する1つの利点は、ペリクルがこれまでに炭素から形成されており、この環境における炭素の特性が既知であることである。例えば、グラフェンなどの別の炭素ベースの材料を使用することによって、(他の材料から生じ得る)EUV反射の大幅な増加が回避されることがある。更に、他の材料は、リソグラフィ装置内での水素エッチングに対する感受性が増大することがある。
【0119】
[000119] 二次元材料は六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むことがある。
【0120】
[000120] 二次元材料は二硫化モリブデン(MoS2)を含むことがある。
【0121】
[000121] 有利には、これらの材料(h-BN及びMoS2)は水素エッチングに強く、したがって、二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)及び/又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む実施形態では、厚さがより小さいキャッピング層が塗布されることがある。
【0122】
[000122] 一部の実施形態では、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に隣接して設けられることがあり、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように膜の各側に設けられることがある。
【0123】
[000123] 多孔質膜の異なる面に異なるタイプの二次元材料が設けられ得ることが理解されるであろう。
【0124】
[000124] その又は各キャッピング層は三次元材料である場合がある。
【0125】
[000125] 有利には、三次元材料は二次元材料よりも製造が著しく容易である。以上で考察したように、二次元材料は多孔質膜の構造を効果的に閉じる。これにより、以上で考察したように、第2の態様によるペリクルの利点を享受しながら、三次元材料をキャッピング層に使用することが可能になる。
【0126】
[000126] 少なくとも1つのキャッピング層は、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している場合がある。
【0127】
[000127] 他の2つの層を水素エッチングから保護するのに適するように、キャッピング層が、(a)水素により強くエッチングされない適切な材料から形成され得ること、及び(b)適切な厚さを有し得ることが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0128】
[000128] 少なくとも1つのキャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成されることがある。
【0129】
[000129] EUV放射の膜による吸収を最小限に抑えることが望ましい。そのため、一般的には、キャッピング層をEUV放射に対する消衰係数が最小限の材料から形成することが望ましい。
【0130】
[000130] 一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1未満の材料から形成される。一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.005nm-1未満の材料から形成される。
【0131】
[000131] キャッピング層は0.3から5nm程度の厚さを有することがある。
【0132】
[000132] キャッピング層はイットリウム又は酸化イットリウムを含むことがある。
【0133】
[000133] キャッピング層は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含むことがある。
【0134】
[000134] キャッピング層は、様々な材料から形成された複数の副層を含むことがある。
【0135】
[000135] リソグラフィ装置は更に、多孔質膜の周辺部に膜境界を備えることがある。
【0136】
[000136] 本開示の第4の態様によれば、リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、膜と、膜の周辺部かつ第1の面にある境界と、膜の周辺部かつ第2の面にある保護部とを備えたペリクルが提供される。
【0137】
[000137] ペリクルは、EUVリソグラフィ装置内でレチクルに隣接して使用するのに適している場合がある。第4の態様によるペリクルは、これより考察するように特に有利である。
【0138】
[000138] 以上で考察したように、リソグラフィ装置内に低圧水素ガスが存在することにより、ペリクルがエッチングされ、ペリクルの潜在的な寿命が制限される可能性がある。そのようなペリクルのエッチングを軽減するために、ペリクルに保護用のキャッピング層を設けることがこれまでに提案されている。しかしながら、EUV放射のペリクルによる吸収を最小限に抑えることが望ましいため、そのようなキャッピング層の材料及び厚さは一般的にかなり制限される。
【0139】
[000139] 本発明の発明者らは、水素イオン及びフリーラジカルによる炭素のエッチングが温度に依存することに気付いた。特に、本発明者らは、炭素エッチング速度が低温及び中温ではより高いが、十分に高い温度では無視できるレベルまで低下することに気付いた。発明者らはまた、EUVリソグラフィスキャナ内のペリクルの中心部が、(少なくとも一部の時間)水素エッチングが無視できるほど十分に高い温度に達し得るが、ペリクルの周辺部が通常、この温度より低いままであり、したがって、水素エッチングの影響を受けやすくなることにも気付いた。
【0140】
[000140] 有利には、第4の態様によるペリクルは、膜の(a)最も水素エッチングのリスクにさらされており、(b)使用時にEUV放射を受けない部分(前面)に追加の保護部を設ける。これにより、リソグラフィ装置の性能に影響を与えることなく、ペリクルの寿命を延ばすことができる。
【0141】
[000141] 保護部は、膜の使用時にEUV放射を受けない部分に設けられることがある。
【0142】
[000142] 保護部は、膜の境界と一致する部分に設けられることがある。
【0143】
[000143] つまり、保護部は境界と重なる(ただし、ペリクルの反対側に設けられる)。
【0144】
[000144] 保護部は、膜の境界と一致しない部分内に部分的に延在することがある。
【0145】
[000145] つまり、保護部は、膜の境界に取り付けられていない領域上に部分的に内側に延在することもある。
【0146】
[000146] 保護部は、膜の大部分と同じ材料から形成されることがある。
【0147】
[000147] そのような実施形態では、保護部はバルク材料(例えば、CNT膜)の厚さが増した部分である場合があり、これは水素によってエッチングされる厚さが増した犠牲部として機能することがある。
【0148】
[000148] 付加的に又は代替的に、保護部は、膜のそれが取り付けられる部分を水素エッチングから保護するのに適した材料を含むことがある。
【0149】
[000149] そのような実施形態では、保護部はキャッピング材料を含む。保護部には、(膜の中央部と比較して)そのようなキャッピング材料がより厚めに供給され得ることが理解されるであろう。
【0150】
[000150] 膜は、ナノチューブ、グラフェン及び/又は非晶質炭素を含むことがある。
【0151】
[000151] 例えば、膜は、CNTから形成された織物である場合がある。これは、カーボンナノチューブ膜と呼ばれることがある。これは、EUVリソグラフィ装置のペリクル膜として使用するのに特に有望な材料である。そのようなCNTペリクルは多孔質材料であるため、非常に高いEUV透過率(>98%)をもたらす可能性がある。更に、CNTペリクルは非常に優れた機械的安定性も提供するため、機械的故障に対して堅牢なままでありながら、小さな厚さで製造することができる。
【0152】
[000152] ペリクルは更に、膜の少なくとも1つの表面をコーティングするキャッピング材料を含むことがある。
【0153】
[000153] キャッピング材料は、次の材料のうちのいずれかを単独で又は組み合わせて含むことがある:イットリウム(Y)、酸化イットリウム(YaOb)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)。キャッピング材料は、様々な材料から形成された複数の副層を含むことがある。
【0154】
[000154] 本開示の第2及び第4の態様を組み合わせ得ることが理解されるであろう。
【0155】
[000155] 具体的には、第4の態様によるペリクルの膜は、第1の材料から形成された多孔質膜と、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層とを含むことがある。
【0156】
[000156] 上述した、又は以下の説明で参照される1つ以上の態様又は特徴が、1つ以上の他の態様又は特徴と組み合わせられ得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
[000157] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0158】
【
図1】リソグラフィ装置及び放射源を備えるリソグラフィシステムの概略図である。
【
図2】本開示の実施形態によるペリクルを形成する方法の概略図である。
【
図3A】
図2に示した方法の第1の実施形態の概略図である。
【
図3B】
図2に示した方法の第2の実施形態の概略図である。
【
図4】CNT膜の両面にグラフェンフィルムを塗布する方法の概略図である。
【
図5】本開示の実施形態によるペリクルの概略断面図を示す。
【
図6】4つの異なるイオンエネルギー、すなわち5eV、10eV、20eV及び30eVの1.5・10
19m
-2・s
-1の水素イオンフラックスについての炭素の水素エッチングの予想エッチング速度を温度の関数として、同様にsp3炭素濃度を温度の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0159】
[000158]
図1はリソグラフィシステムを示している。リソグラフィシステムは、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備える。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを生成するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、レチクル又はマスク)を備えるレチクルアセンブリ15を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。照明システムILは、パターニングデバイスMAに入射する前に放射ビームBを調整するように構成される。投影システムは、放射ビームB(今やパターニングデバイスMAによりパターン付与されている)を基板Wに投影するように構成される。基板Wは先に形成されたパターンを含むことがある。この場合、リソグラフィ装置は、パターン付き放射ビームBを先に基板W上に形成されたパターンと位置合わせする。
【0160】
[000159] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSはすべて、外部環境から隔離できるように構築及び配置されることがある。大気圧より低い圧力のガス(例えば、水素)が放射源SO内に供給されることがある。照明システムIL及び/又は投影システムPS内に真空が設けられることがある。大気圧よりかなり低い圧力の少量のガス(例えば、水素)が、照明システムIL及び/又は投影システムPS内に供給されることがある。
【0161】
[000160]
図1に示す放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれ得るタイプである。例えばCO2レーザであり得るレーザ1が、レーザビーム2を介して、燃料放出器3から与えられるスズ(Sn)などの燃料にエネルギーを付与するように構成される。以下の説明ではスズに言及するが、任意の適切な燃料が使用されることがある。燃料は、例えば液体の形態である場合や、例えば金属又は合金である場合がある。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って誘導するように構成されたノズルを備えることがある。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4でスズに入射する。レーザエネルギーのスズへの付与は、プラズマ形成領域4においてプラズマ7を生成する。プラズマのイオンの脱励起及び再結合の間にプラズマ7からEUV放射を含む放射が放出される。
【0162】
[000161] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ5(より一般的に法線入射放射コレクタと呼ばれることがある)によって収集及び集束される。コレクタ5は、EUV放射(例えば13.5nmなどの所望の波長を有するEUV放射)を反射するように構成される多層構造を有することがある。コレクタ5は、2つの楕円焦点を有する楕円構成を有することがある。以下で考察するように、第1の焦点がプラズマ形成領域4にある場合があり、第2の焦点が中間焦点6にある場合がある。
【0163】
[000162] レーザ生成プラズマ(LPP)源の他の実施形態では、コレクタ5は、EUV放射をかすめ入射角で受け、EUV放射を中間焦点に集束させるように構成される、いわゆる斜入射型コレクタである場合がある。斜入射型コレクタは、例えば複数の斜入射リフレクタを備えた入れ子型コレクタである場合がある。斜入射リフレクタは、光軸を中心として軸対称に配置されることがある。
【0164】
[000163] 放射源SOは、1つ以上の汚染トラップ(図示せず)を備えることがある。例えば汚染トラップが、プラズマ形成領域4と放射コレクタ5との間に位置することがある。汚染トラップは、例えば回転フォイルトラップであるか、又は他の任意の適切な形態の汚染トラップである場合がある。
【0165】
[000164] レーザ1は放射源SOから分離されることがある。この場合、レーザビーム2は、例えば適切な誘導ミラー及び/もしくはビームエキスパンダ、並びに/又は他の光学系を備えたビームデリバリシステム(図示せず)を用いて、レーザ1から放射源SOに渡されることがある。レーザ1及び放射源SOは、併せて放射システムと見なされることがある。
【0166】
[000165] コレクタ5により反射される放射は放射ビームBを形成する。放射ビームBは点6で集束されてプラズマ形成領域4の像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源として作用する。放射ビームBが集束される点6は、中間焦点と呼ばれることがある。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの閉鎖構造9の開口部8に又はその近くに位置するように配置される。
【0167】
[000166] 放射ビームBは、放射源SOから放射ビームを調整するように構成される照明システムILに入る。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることがある。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は連携して、放射ビームBに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームBは、照明システムILから移動し、支持構造MTにより保持されたレチクルアセンブリ15に入射する。レチクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMA及びペリクル19を備える。ペリクルは、ペリクルフレーム17を介してパターニングデバイスMAに取り付けられる。レチクルアセンブリ15は、レチクル-ペリクルアセンブリ15と呼ばれることがある。パターニングデバイスMAは放射ビームBを反射しこれにパターンを付与する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、又はその代わりに他のミラー又はデバイスを備えることがある。
【0168】
[000167] パターニングデバイスMAからの反射に続き、パターン付き放射ビームBは投影システムPSに進入する。投影システムは、基板テーブルWTにより保持された基板Wに放射ビームBを投影するように構成される複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、ある縮小係数を放射ビームに適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する像を形成することがある。例えば、4という縮小係数が適用されることがある。
図1では投影システムPSは2つのミラー13、14を有しているが、投影システムPSは任意の数のミラー(例えば6つのミラー)を備えることがある。
【0169】
[000168] リソグラフィ装置は、例えばスキャンモードで使用されることがある。スキャンモードでは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンしながら、放射ビームに付与されたパターンを基板Wに投影する(すなわち動的露光)。基板テーブルWTの支持構造(例えばマスクテーブル)MTに対する速度及び方向は、投影システムPSの縮小及び像反転特性によって決定されることがある。基板Wに入射するパターン付き放射ビームは放射の帯域を含むことがある。放射の帯域は露光スリットと呼ばれることがある。スキャン露光中、基板テーブルWT及び支持構造MTの移動によって、露光スリットが基板Wの露光フィールド上を進むことがある。
【0170】
[000169]
図1に示す放射源SO及び/又はリソグラフィ装置は、図示されていないコンポーネントを備えることがある。例えば、放射源SO内にスペクトルフィルタが設けられることがある。スペクトルフィルタは、EUV放射に対して実質的に透過性であるが、赤外線放射のような他の波長の放射を実質的に遮断することがある。
【0171】
[000170] リソグラフィシステムの他の実施形態では、放射源SOは他の形態をとることもある。例えば代替的な実施形態では、放射源SOは1つ以上の自由電子レーザを備えることがある。1つ以上の自由電子レーザは、1つ以上のリソグラフィ装置に供給され得るEUV放射を放出するように構成されることがある。
【0172】
[000171] 以上で簡単に説明したように、レチクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMAに隣接して設けられるペリクル19を備える。ペリクル19は、放射ビームBが照明システムILからパターニングデバイスMAに近付くときと、パターニングデバイスMAによって反射されて投影システムPSに向かうときの両方でペリクル19を通過するように、放射ビームBの経路に設けられる。ペリクル19は、EUV放射を実質的に通す(ただし、少量のEUV放射を吸収することになる)薄膜又は膜を含む。本明細書において、EUV透過ペリクル又はEUV放射を実質的に通す膜とは、ペリクル19がEUV放射の少なくとも65%、EUV放射の好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を透過することを意味する。ペリクル19は、パターニングデバイスMAを粒子汚染から保護する役割を果たす。
【0173】
[000172] リソグラフィ装置LA内部でクリーンな環境を維持する努力がなされることがあるが、リソグラフィ装置LA内部に依然として粒子が存在することがある。ペリクル19がなければ、粒子がパターニングデバイスMA上に付着されることがある。パターニングデバイスMA上の粒子は、放射ビームBに付与されるパターン、ひいては基板Wに転写されるパターンに悪影響を及ぼす恐れがある。ペリクル19は、有利にはパターニングデバイスMA上に粒子が付着されるのを防止するために、パターニングデバイスMAとリソグラフィ装置LA内の環境との間にバリアを提供する。
【0174】
[000173] ペリクル19は、パターニングデバイスMAから、ペリクル19の表面に入射する粒子がリソグラフィ装置LAのフィールド面内に存在しない十分な距離に位置決めされる。このペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の間隔は、ペリクル19の表面上の粒子が基板W上に結像される放射ビームBにパターンを付与する程度を抑える役割を果たす。粒子が放射ビームB内に存在しても、その位置が放射ビームBのフィールド面内でない(例えば、パターニングデバイスMAの表面でない)場合、その粒子の像が基板Wの表面で焦点が合わないことが理解されるであろう。他に考慮すべき事項が存在しないならば、ペリクル19をパターニングデバイスMAからかなり離れた距離に位置決めすることが望ましい場合がある。しかしながら実際は、他のコンポーネントが存在するため、リソグラフィ装置LA内でペリクルを収容するのに利用可能な空間は限られている。一部の実施形態では、ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の間隔は、例えば約1mm~10mm、例えば1mm~5mm、例えば2mm~2.5mmである場合がある。
【0175】
[000174] ペリクルは境界部及び膜を含むことがある。ペリクルの境界部は中空で概ね矩形である場合があり、膜は境界部によって囲まれていることがある。当技術分野で知られているように、ペリクルは1つ以上の薄い材料層を概ね矩形のシリコン基板上に堆積させることによって形成されることがある。シリコン基板は、ペリクルのこの構築段階の間1つ以上の薄層を支持する。層の所望の又は目標厚さ及び組成が一旦適用されると、シリコン基板の中央部がエッチングによって除去される(これはバックエッチングと呼ばれることがある)。矩形のシリコン基板の周辺部はエッチングされない(代替的には中央部よりエッチングの程度が少ない)。この周辺部は最終ペリクルの境界部を形成する一方、1つ以上の薄層はペリクルの(境界部によって境される)膜を形成する。ペリクルの境界部はシリコンから形成されることがある。
【0176】
[000175] 本開示の一部の実施形態は、新しいタイプのペリクル及びそのようなペリクルを形成する方法に関する。
【0177】
[000176] ペリクル(例えば、膜及び境界部を含む)は、より剛性の高いペリクルフレームからのある程度のサポートを必要とすることがある。ペリクルフレームは2つの機能を提供することがある。第1に、ペリクルフレームはペリクルを支持することがあり、またペリクル膜をぴんと張ることがある。第2に、ペリクルフレームは、ペリクルのパターニングデバイス(レチクル)との接続を促進することがある。1つの既知の構成では、ペリクルフレームは、ペリクルの境界部に接着される概ね矩形の本体部及びこの本体の側部に接着されるチタン取付機構を備えることがある。パターニングデバイス(レチクル)には中間固定部材(スタッドとして知られている)が固定されている。パターニングデバイス(レチクル)上の中間固定部材(スタッド)は、ペリクルフレームの取付部材と係合する(例えば解放可能に係合する)ことがある。
【0178】
[000177] 本開示の一部の実施形態は、
図1に示すリソグラフィ装置LAなどのリソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法に関する。そのような方法100を
図2に概略的に示す。
【0179】
[000178] 方法100は、第1の材料から形成された多孔質膜を設けるステップ102を含む。本明細書で使用する多孔質膜が、例えばナノチューブ膜などの開口構造を有する材料を意味するものとすることが理解されるであろう。一部の実施形態では、多孔質膜はナノ構造を含むことがある。一部の実施形態では、多孔質膜はナノチューブを含むことがある。例えば、多孔質膜はCNTから形成された織物である場合がある。これはカーボンナノチューブ膜と呼ばれることがある。
【0180】
[000179] 方法100は更に、少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布するステップ104を含む。
【0181】
[000180] 一部の実施形態では、その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層として塗布される。これは、湿式転写法を用いて塗布されることがある。代替的に、
図4を参照して以下で更に考察するように、その又は各少なくとも1つの二次元材料層を一時的又は中間支持基板から転写することがある。
【0182】
[000181] 本明細書で使用する二次元材料が、例えばグラフェンなどの1つ以上の単一原子層から形成される材料を意味するものとすることが理解されよう。様々な異なる二次元材料を使用し得ることが理解されるであろう。
【0183】
[000182] 一部の実施形態では、二次元材料はグラフェンを含むことがある。一部の実施形態では、3つのグラフェン層が多孔質膜の片面又は両面に隣接して設けられることがある。一実施形態では、多孔質膜はカーボンナノチューブ膜である場合があり、二次元材料はグラフェンを含む。単一のグラフェン層が0.35nm程度の厚さを有することがある。2つの積層されたグラフェン層間の距離が0.14nm程度である場合がある。したがって、3つのグラフェン層の厚さが1.3nm程度である場合がある。
【0184】
[000183] グラフェンを二次元材料として使用する1つの利点は、ペリクルがこれまでに炭素から形成されており、この環境における炭素の特性が既知であることである。例えば、グラフェンなどの別の炭素ベースの材料を使用することによって、(他の材料から生じ得る)EUV反射の大幅な増加が回避されることがある。更に、他の材料は、リソグラフィ装置内での水素エッチングに対する感受性が増大することがある。
【0185】
[000184] 代替的に又は付加的に、一部の実施形態では、二次元材料は六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むことがある。代替的に又は付加的に、一部の実施形態では、二次元材料は二硫化モリブデン(MoS2)を含むことがある。有利には、これらの材料(h-BN及びMoS2)は水素エッチングに強く、したがって、二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)及び/又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む実施形態では、厚さがより小さいキャッピング層が後続のステップにおいて塗布されることがある。単一の六方晶窒化ホウ素(h-BN)層又は二硫化モリブデン(MoS2)層は、0.65nm程度の厚さを有することがある。
【0186】
[000185] 一部の実施形態では、その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、0.5nmから5nm程度の厚さを有する。一部の実施形態では、その又は各少なくとも1つの二次元材料層は、0.5nmから2nm程度の厚さを有する。
【0187】
[000186] 方法100は更に、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように、多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を塗布するステップ106を含む。
【0188】
[000187] 一部の実施形態では、その又は各キャッピング層は三次元材料である場合がある。有利には、三次元材料は二次元材料よりも製造が著しく容易である。以下で考察するように、(ステップ104で提供される)二次元材料は多孔質膜の構造を効果的に閉じる。これにより、以下で考察するように、
図2の方法100の利点を享受しながら、三次元材料をキャッピング層に使用することが可能になる。
【0189】
[000188] 特に明記しない限り、本明細書では、キャッピング層の全EUV透過率が、ペリクルを通って伝播した後に透過されるEUV放射の割合を意味するものとすることが理解されるであろう。キャッピング層がペリクルの各側に設けられる実施形態では、キャッピング層の全EUV透過率は両側からの全透過率を意味する。
【0190】
[000189] 一部の実施形態では、その又は各キャッピング層の全EUV透過率は96%以上である。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は96.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.5%以上である場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は97.8%程度である場合がある。
【0191】
[000190] キャッピング層のEUV透過率が、一般に、(a)キャッピング層を形成する材料のタイプ、及び(b)キャッピング層の厚さに依存することが理解されるであろう。キャッピング層のEUV透過率が、一般に、キャッピング層の密度又は空隙率にも依存することが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0192】
[000191] 一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層は、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適した材料から形成される。他の2つの層を水素エッチングから保護するのに適するように、キャッピング層が、(a)水素により強くエッチングされない適切な材料から形成され得ること、及び(b)適切な厚さを有し得ることが理解されるであろう。例示的な材料については以下で考察する。
【0193】
[000192] EUV放射のペリクルによる吸収を最小限に抑えることが望ましい。そのため、一般的には、キャッピング層をEUV放射に対する消衰係数が最小限の材料から形成することが望ましい。
【0194】
[000193] 一部の実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成されることがある。一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1未満の材料から形成される。一部の実施形態では、キャッピング層は、EUV放射に対する消衰係数が0.005nm-1未満の材料から形成される。
【0195】
[000194] 一部の実施形態では、キャッピング層は0.3から5nm程度の厚さを有することがある。つまり、キャッピング層は、1つの原子の単層と同じくらい小さい厚さを有することがある(つまり、0又は1個の原子の厚さ、及び、例えば0.3nm程度の原子間距離を有する)。他の実施形態では、キャッピング層は、下にある二次元材料層及び多孔質膜をより良く保護するために、より大きい厚さを有することがある。一部の実施形態では、キャッピング層は1nmを超える厚さを有することがある。一部の実施形態では、キャッピング層は1.5nmを超える厚さを有することがある。一部の実施形態では、キャッピング層は2nmを超える厚さを有することがある。一部の実施形態では、キャッピング層は5nmを超える厚さを有することがある。
【0196】
[000195] 一部の実施形態では、キャッピング層はイットリウム(Y)又は酸化イットリウム(YaOb)を含む。イットリウムは、EUV放射に対する消衰係数が0.0021nm-1程度である。酸化イットリウム(Y2O3)は、EUV放射に対する消衰係数が0.01nm-1程度である。したがって、ペリクル膜の各面に厚さ1.5nmの酸化イットリウム(Y2O3)のキャッピング層が存在する実施形態では、少なくとも1つのキャッピング層の全EUV透過率は約97%である。
【0197】
[000196] 一部の実施形態では、多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を塗布するステップ106は、それぞれが異なる材料を含む複数の副層を塗布することを含むことがある。例えば、一部の実施形態では、多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を塗布するステップ106は、第1の材料の第1の副層を多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層に塗布すること、及び第2の材料の第2の副層を第1の副層に塗布することを含む。第1の副層は、第2の副層よりもEUV放射に対する消衰係数が小さい場合がある。第2の(最も外側の)副層は、第1の副層よりも化学的安定性が高い場合がある。一部の実施形態では、第1の副層は金属を含むことがあり、第2の副層は金属酸化物を含むことがある。
【0198】
[000197] 一部の実施形態では、多孔質膜は実質的に自立式である場合がある。使用中、ペリクルが、レチクル又はマスクMAに取り付けられるペリクルフレームによってその周辺部で支持されることになることが理解されるであろう。本明細書で使用するとき、多孔質膜が実質的に自立式であるとは、多孔質膜が自重を支えることを意味するものとする。つまり、少なくとも1つの二次元材料層及びキャッピング層以外に、多孔質膜を支持する多孔質膜に隣接する追加の膜は存在しない。
【0199】
[000198] 非多孔質膜が、膜の2つの対向する面を画定する2つの概ね平行な表面を有し得ることが理解されるであろう。2つの概ね平行な表面により境界される体積が、非多孔質膜を形成する材料によって実質的に占められる。対照的に、多孔質膜が、材料を有しない空隙が散りばめられた、多孔質膜を形成する材料により占められる領域を含むことが更に理解されるであろう。そのような多孔質膜の場合、2つの概ね平行な仮想表面又は非物理的表面が膜の境界又は面を画定することがある。2つの概ね平行な仮想表面により境界される体積は、多孔質膜を形成する材料によって部分的にのみ占められる。多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布することは、多孔質膜の境界又は面を画定する少なくとも1つの仮想表面又は非物理的表面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布することを含むものとする。
【0200】
[000199] 多孔質膜の厚さが、膜の境界又は面を画定する2つの概ね平行な仮想表面又は非物理的表面間の距離として定義されることがある。多孔質膜は、1~100nm程度の厚さを有することがある。多孔質膜は、10~100nm程度の厚さを有することがある。多孔質膜は、50~100nm程度の厚さを有することがある。一部の実施形態では、多孔質膜は、ペリクルの厚さの大部分を構成するものと考えられることがある。
【0201】
[000200] 一部の実施形態では、
図2に示す方法100は更に、多孔質膜の周辺部にペリクル境界を取り付けることを含むことがある。このような実施形態では、ペリクル境界は、(ステップ104で)少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布される前に、多孔質膜の周辺部に取り付けられることがある。
【0202】
[000201]
図2に示す方法100は、これより考察するように特に有利である。少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じる働きをする。
【0203】
[000202]
図2に示す方法100は、ペリクルの大部分が多孔質材料から形成されるペリクルをもたらす。有利には、これにより密度が小さい、ひいては極端紫外(EUV)放射の透過率が大きいペリクルがもたらされる可能性がある。これはEUVリソグラフィシステムにとって特に重要であり、システムのスループットを向上させる。EUVリソグラフィ装置においてペリクル膜として使用するための特に有望な材料の1つは、カーボンナノチューブ(CNT)から形成される織物又は膜である。そのようなCNTペリクルは多孔質材料であるため、非常に高いEUV透過率(>98%)をもたらす可能性がある。更に、CNTペリクルは非常に優れた機械的安定性も提供するため、機械的故障に対して堅牢なままでありながら、小さな厚さで製造することができる。しかしながら、通常、リソグラフィ装置内には低圧の水素ガスが供給され、(露光中)EUV放射の存在下で水素プラズマが形成される。水素プラズマからの水素イオン及び水素フリーラジカルが、CNTから形成されたペリクルをエッチングし、ペリクルの潜在的な寿命を制限し、CNTペリクルの商業的実装を妨げる可能性があることが分かっている。
【0204】
[000203] そのようなCNTペリクルのエッチングを軽減するために、そのようなCNTペリクルに保護用のキャッピング層を設けることがこれまでに提案されている。そのようなキャッピング層は、リソグラフィ装置の環境において化学的に安定しており、EUV放射に対する消衰係数が低い材料から形成されることがある。
【0205】
[000204] しかしながら、炭素と適切なキャッピング層の屈折率の差は、通常、炭素と真空の屈折率の差よりも大きい。したがって、本発明者らは、そのようなキャッピング層が望ましくないEUVフレアの増大をもたらすことになることに気付いた。(ステップ104において)少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜に塗布し、その後、(ステップ106において)キャッピング層を少なくとも1つの二次元材料層に塗布することは、これより考察するように特に有利である。
【0206】
[000205] 多孔質材料が構造を有することになるため、多孔質材料と周囲の媒体の屈折率に大きな差異がある場合、放射(例えばEUV放射)がペリクルを通って伝播するときに、放射は(例えば、ミー散乱を介して)散乱されることになることが理解されよう。これは放射の望ましくない拡散又はフレアを引き起こし、リソグラフィ装置LAの結像性能に再び影響を与えることになる。EUV放射はほとんどの材料によって非常に強く吸収されるため、EUVリソグラフィシステムは通常、高真空で運転される。したがって、多孔質材料が、1に近い屈折率を有する材料から形成されることが特に望ましい場合がある。また、多孔質材料が、EUV放射に対する消衰係数ができるだけ低い材料から形成されることが望ましい場合がある。
【0207】
[000206] (
図2に示す方法100のステップ104で塗布される)少なくとも1つの二次元材料層は、多孔質膜の隣接面を閉じ、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。これにより、キャッピング層をより滑らかで平坦な外面上に設けることが可能になる。有利には、これにより、キャッピング層に使用される材料に関係なく、EUVフレアを低減しながら、多孔質膜をエッチングから保護することができる。更に、二次元材料の表面は、多孔質材料の表面よりも大幅に滑らかで平坦であることに加えて、より小さな表面積を有することになる。結果として、(比較的薄い)キャッピング層が多孔質材料上に直接ではなく二次元材料上に設けられるとき、キャッピング層の体積が減少する。有利には、これにより、キャッピング層が同じ厚さであっても、ペリクルのEUV透過率が高くなる。
【0208】
[000207] CNT膜内において、カーボンナノチューブは分かれている場合があるか、代替的に、それらはまとまって束になることがある。更に、そのような束のサイズは異なる場合がある。発明者らは、キャッピング層がCNT膜に直接塗布される場合に、キャッピング層によるEUV透過率の損失がCNT膜内の束化の程度に強く依存することが分かった。例えば、膜内のCNTの密度が一定の場合、1束当たりのCNTの数が少なければ少ないほど、EUV透過率の損失は大きくなる。有利には、
図2に示す方法100を用いることによって、キャッピング層が(多孔質膜ではなく)少なくとも1つの二次元材料層に(ステップ106において)塗布されるため、EUV透過率の損失は、もはや多孔質膜内の構造の典型的なサイズ(例えば、CNT膜の場合は束の数)に依存しない。実際、これを二次元の平坦な層に塗布することによって、所与の厚さのキャッピング層について、EUV透過率の損失は最小限に抑えられる。
【0209】
[000208] 最後に、
図2に示す方法100を用いて形成されたペリクルの少なくとも1つの二次元材料層は多孔質層の構造を閉じる。有利には、これにより、そのような二次元材料層がないCNTペリクルよりも高い粒子阻止能が得られる。
【0210】
[000209]
図2に概略的に示す一般的な方法100の2つの例示的な実施形態を、
図3A及び
図3Bを参照してこれより説明する。
【0211】
[000210]
図3Aは、
図2に示す方法100の第1の実施形態の概略図である。この方法は、CNTから形成された多孔質膜200を設けることを含む。これは、カーボンナノチューブ膜又はCNTmと呼ばれることがある。多孔質膜200は、多孔質膜の周辺部にあるペリクル境界210に取り付けられる。ペリクル境界210は、概ね矩形のフレームを備えることがある。ペリクル境界210は、例えば、従来の非多孔質膜に使用されるシリコンから形成されることがある。代替的に、ペリクル境界210は、例えば、カーボンナノチューブ、石英又は鋼から形成されることがあり、これらの材料は追加の利点を提供することがある。多孔質膜200は、既知の技術を用いてペリクル境界210に事前に取り付けられていることがある。
【0212】
[000211] 多孔質CNT膜210のEUV透過率は約97.5%である場合がある。多孔質CNT膜210は、厚さが100nm程度である場合がある。以下の実施形態の例は、EUV透過率が約97.5%で厚さが100nm程度である多孔質CNT膜210に基づいている。
【0213】
[000212] 以上で説明したように、多孔質膜の厚さが、膜の境界又は面を画定する2つの概ね平行な仮想表面又は非物理的表面間の距離として定義されることがある。同様に以上で説明したように、2つの概ね平行な仮想表面により境界される体積は、多孔質膜を形成する材料によって部分的にのみ占められる(多孔質膜が材料を有しない空隙が散りばめられた材料により占められる領域を含む)。約97.5%のEUV透過率を有する炭素から形成された従来の非多孔質膜を得るために、EUV放射に対する炭素の消衰係数に基づいて、例示的な多孔質CNT膜210がどの程度多孔質であるかを示すと、多孔質膜は厚さが4nm程度であることになる。対照的に、例示的な多孔質CNT膜210は、厚さが100nm程度である。
【0214】
[000213] この方法は、グラフェンフィルム220を設けることを含む。例えば、グラフェンフィルム220は、単層グラフェン層又は3層グラフェン層(3GL)を含むことがあるが、グラフェンフィルム220が任意の数のグラフェン層を含み得ることが理解されるであろう。一般に、グラフェンフィルム220は、少なくとも1つの二次元材料層を含む。単層グラフェン層についてのグラフェンフィルム220のEUV透過率は約99.8%である場合がある。(3層グラフェン層についての)グラフェンフィルム220のEUV透過率は約99.5%である場合がある。
【0215】
[000214] この方法は更に、グラフェンフィルム220を多孔質膜200の面に塗布するステップ104を含む。この実施形態では、グラフェンフィルム220は、ペリクル境界210が取り付けられる面と反対にある、又はその面から遠位にある面に塗布される。この実施形態では、グラフェンフィルム220は、多孔質膜200の面に隣接する実質的に連続した層として塗布される。グラフェンフィルム220は、湿式転写法を用いて塗布されることがある。代替的に、グラフェンフィルム220は、
図4を参照して以下で更に考察するように、一時的又は中間支持基板から転写されることがある。多孔質CNT膜200とグラフェンフィルム220の組み合わせは、G-CNTmと呼ばれることがある。(単層グラフェン層についての)グラフェンフィルム220を有する多孔質CNT膜200のEUV透過率は約97.3%である場合がある。
【0216】
[000215] この方法は更に、グラフェンフィルム220がキャッピング層230と多孔質膜200との間に配置されるように、グラフェンフィルム220にキャッピング層230を塗布するステップ106を含む。形成された後にグラフェンフィルム220に塗布される材料層として概略的に示されているが、実際には、キャッピング層230はグラフェンフィルム220上に形成され(すなわち、その場で形成され)得ることが理解されるであろう。
【0217】
[000216] この実施形態では、方法は更に、多孔質膜200の第2の面にキャッピング層230を塗布することを含む。具体的には、キャッピング層230は、ペリクル境界210が取り付けられるのと同じ面に塗布される。
【0218】
[000217] 一部の実施形態では、キャッピング層230は酸化イットリウム(Y2O3)を含む。したがって、一部の実施形態では、キャッピング層230をグラフェンフィルム220に塗布するステップ106は、酸化イットリウム(Y2O3)の層をグラフェンフィルム220に直接、又は中間副層に塗布することを含む。例えば、一実施形態では、キャッピング層は、厚さが1.5nmの酸化イットリウム(Y2O3)の層を含む。
【0219】
[000218] グラフェンフィルム220は、多孔質膜200の隣接面を閉じて、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。これは、2つのキャッピング層230との界面の概略拡大部の比較から分かる。これにより、グラフェンフィルム220に塗布されたキャッピング層230を、より滑らかで平坦な外面上に設けることが可能になる。有利には、これにより、キャッピング層230に使用される材料に関係なく、EUVフレアを低減しながら、多孔質膜200をエッチングから保護することができる。
【0220】
[000219] 更に、グラフェンフィルム220の表面は、多孔質材料200の表面よりも大幅に滑らかで平坦であることに加えて、より小さな表面積を有することになる。結果として、(比較的薄い)キャッピング層230が多孔質膜200上に直接ではなくグラフェンフィルム220上に設けられるとき、キャッピング層230の体積が減少する。これはまた、2つのキャッピング層230との界面の概略拡大部の比較から分かる。有利には、この結果、同じ厚さのキャッピング層230についてペリクルのEUV透過率も高くなる。
【0221】
[000220] グラフェンフィルム220は多孔質膜200の構造を閉じ、その結果、有利には、このようなグラフェンフィルム220のないCNTペリクルよりも高い粒子阻止能をもたらす。
【0222】
[000221]
図3Aに示すこの実施形態では、ペリクルのキャビティ側(すなわち、ペリクル境界210と同じ側)のキャッピング層230には、キャップが多孔質膜200上に直接堆積されているため起伏がある。これは、EUV透過の不均一性及びフレアの低減には不利である場合があるが、EUV反射には有利である場合がある。
【0223】
[000222]
図2に示す方法100の一部の実施形態では、ステップ104において、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に塗布されることがあり、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層が各キャッピング層と多孔質膜との間に配置されるようにペリクルの各面に塗布されることがある。ペリクルを形成する方法100のそのような実施形態の一例を、これより
図3Bを参照して説明する。
【0224】
[000223]
図3Bは、
図2に示した方法100の第2の実施形態の概略図である。
図3Bに示す方法の実施形態は、
図3Aに示す方法の実施形態と非常に似ている。したがって、以下では相違点のみを詳細に説明する。
【0225】
[000224]
図3Bに示す方法の実施形態は、2つのグラフェンフィルム220を設けることを含む。グラフェンフィルムは、実質的に
図3Bを参照して以上で説明した単層グラフェンフィルムと同様である場合がある。
【0226】
[000225]
図3Bに示す方法の実施形態では、方法は、2つのグラフェンフィルム220を多孔質膜200の両面に塗布するステップ104を含む。つまり、この実施形態では、グラフェンフィルム220は、ペリクル境界210が取り付けられている面とその反対面のそれぞれに塗布される。また、この実施形態では、グラフェンフィルム220はそれぞれ、多孔質膜200のある面に隣接する実質的に連続した層として塗布される。多孔質CNT膜200と2つのグラフェンフィルム220の組み合わせは、G-CNTm-Gと呼ばれることがある。2つのグラフェンフィルム220(各フィルムは単層グラフェン層を含む)を備えた多孔質CNT膜200のEUV透過率は約97.1%である。
【0227】
[000226]
図3Bに示す方法の実施形態は、各グラフェンフィルム220が1つのキャッピング層230と多孔質膜200との間に配置されるように、2つのグラフェンフィルム220のそれぞれにキャッピング層230を塗布するステップ106を含む。
【0228】
[000227] 一部の実施形態では、キャッピング層230をグラフェンフィルム220のそれぞれに塗布するステップ106は、酸化イットリウム(Y2O3)の層をグラフェンフィルム220に直接、又は中間副層に塗布することを含む。例えば、一実施形態では、キャッピング層は厚さ1.5nmの酸化イットリウム(Y2O3)の層を含む。
【0229】
[000228]
図3Bに示す方法の実施形態では、グラフェンフィルム220は、多孔質膜200の両面を閉じ、ペリクルのより滑らかで平坦な外面を形成する働きをする。有利には、これにより、キャッピング層230に使用される材料に関係なく、EUVフレアを更に低減しながら、多孔質膜200をエッチングから保護することができる。
【0230】
[000229] 更に、グラフェンフィルム220の表面は、多孔質材料200の表面よりも大幅に滑らかで平坦であることに加えて、より小さな表面積を有することになる。両キャッピング層230が多孔質膜200上に直接ではなくグラフェンフィルム220上に設けられるため、キャッピング層230の体積が減少する。有利には、この結果、同じ厚さのキャッピング層230についてペリクルのEUV透過率も高くなる。
【0231】
[000230] 2つの単層グラフェン層フィルムのEUV吸収は約0.4%である。しかしながら、キャッピング層230は、多孔質CNT膜200ではなく、グラフェンフィルム220の閉じた表面に塗布されるため、2つのキャッピング層のEUV吸収が減少する。正確な減少はCNT膜200内の束の数に依存するが、平均すると、2つのキャッピング層のEUV吸収は約1.5%減少する。したがって、CNTmの各面に単層グラフェン層フィルム220を追加すると、EUV透過率が正味で約1.1%増加する。
【0232】
[000231] 多孔質CNT膜200、2つのグラフェンフィルム220及び2つのキャッピング層230の組み合わせは、C-G-CNTm-G-Cと呼ばれることがある。C-G-CNTm-G-Cペリクル(両側が1.5nmのY2O3層で覆われた単層グラフェン層フィルムの場合)のEUV透過率は約94.1%である。対照的に、同じCNTm膜の両側が1.5nmのY2O3層で覆われた場合(グラフェンフィルム220を含まない)、(C-CNTm-C)ペリクルのEUV透過率は約93%となる(この値はCNTの束の数に依存する)。
【0233】
[000232] 上記の推定値は、数%のEUV放射の損失をもたらし得る、EUV放射のペリクルによる散乱を考慮していない。CNT膜200の構造を閉じることによって、これらの損失を回避するか、少なくとも低減することができる。したがって、上で推定されたEUV透過率の1.1%の増加に加えて、
図2に示した方法100を用いて形成されたペリクルは、EUV放射の損失を更に減少させることが予想される。
【0234】
[000233]
図3Bに示す方法の実施形態において、グラフェンフィルム220が多孔質膜200の両面を閉じるという事実は、これより考察するように追加の利点を有する。
【0235】
[000234] CNT膜200内において、カーボンナノチューブは分かれている場合があるか、代替的に、それらはまとまって束になることがある。更に、そのような束のサイズは異なる場合がある。発明者らは、キャッピング層がCNT膜に直接塗布される場合に、キャッピング層によるEUV透過率の損失がCNT膜内の束化の程度に強く依存することが分かった。例えば、膜内のCNTの密度が一定の場合、1束当たりのCNTの数が少なければ少ないほど、EUV透過率の損失は大きくなる。有利には、両キャッピング層230が(多孔質膜200ではなく)グラフェンフィルム220に塗布されるため、EUV透過率の損失は、もはや多孔質膜200内の構造の典型的なサイズ(例えば、CNT膜の場合は束の数)に依存しない。実際、キャッピング層230を平坦なグラフェンフィルム220に塗布することによって、所与の厚さのキャッピング層230について、EUV透過率の損失は最小限に抑えられる。
【0236】
[000235] グラフェンフィルム220の多孔質膜200の1つ以上の面への塗布は、湿式転写プロセスを用いて達成されることがある。このような湿式転写プロセスは当技術分野で知られている。一般に、湿式転写プロセスは、第1の基板(例えば、銅基板)上での二次元材料(例えば、グラフェンフィルム220)の成長を含む。続いて、二次元材料の他方の面に接着層を形成する。接着層は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマーを含むことがある。続いて、第1の基板は、例えば選択的エッチングによって除去される。例えば、銅を含む第1の基板は、過硫酸アンモニウムを使用して除去されることがある。任意選択で、接着層及び二次元材料を(例えば水で)すすぐことがある。続いて、二次元材料は多孔質膜200のある面に塗布される。最後に、接着層は、例えば選択的エッチングによって除去される。
【0237】
[000236] グラフェンフィルム220を多孔質膜200の1つ以上の面に塗布する代替的な方法を、
図4を参照してこれより考察する。
図4は、CNT膜200の両面にグラフェンフィルム220を塗布する方法300の概略図である。方法300は、
図3Bに示すペリクルを形成する方法の実施形態におけるステップ104に用いられることがある。
【0238】
[000237] グラフェンフィルム220をCNT膜200に塗布する方法300は、支持基板310上にグラフェンフィルム220を設けること、グラフェンフィルム220を多孔質膜200のある面に押し付けること、及び支持基板310を除去することを含む。
【0239】
[000238] 支持基板310は、ベース基板312と、ベース基板312の表面に設けられた犠牲層314とを備える。グラフェンフィルム220は犠牲層314上に設けられる。
【0240】
[000239] 形成された後に、支持基板310の犠牲層314に塗布されるグラフェンフィルム220として概略的に示されているが、実際には、グラフェンフィルム220が犠牲層314上に形成され(つまり、その場で形成され)得ることが理解されるであろう。
【0241】
[000240] 支持基板310上に設けられたグラフェンフィルム220は、製造中間物と呼ばれることがある。方法300は、2つのそのような製造中間物を設けることを含むことがある。
【0242】
[000241]
図4の中央右側部分に示すように、方法300は、支持基板310を通じて圧力を加えることによって、グラフェンフィルム220のそれぞれを多孔質膜200のある面に押し付けることを含む。
【0243】
[000242] 支持基板310は、犠牲層314をエッチングしてグラフェンフィルム220からベース基板312を解放することによって除去されることがある。
【0244】
[000243] 本開示の一部の実施形態は、
図1に示したリソグラフィ装置LAなどのリソグラフィ装置で使用するためのペリクルに関する。そのようなペリクルは、例えば、
図2に概略的に示した方法100を用いて形成されることがある。
【0245】
[000244] 本開示の一部の実施形態は、放射ビームを使用して基板上にパターニングデバイスの像を形成するように動作可能なリソグラフィ装置に関する。リソグラフィ装置は、概ね
図1に示したリソグラフィ装置LAの形態である場合がある。そのような実施形態によるリソグラフィ装置LAは更に、放射ビームBの経路内に配置された膜を備える。膜は、
図2に概略的に示した方法100を用いて形成されることがある。
【0246】
[000245] 一部の実施形態では、膜は動的ガスロックの一部を構成することがある。そのような動的ガスロックは、例えば、放射ビームBがリソグラフィ装置LAの投影システムPSから基板テーブルWT上に支持された基板Wに通過するための開口部の近くに形成されることがある。
【0247】
[000246] 一部の実施形態では、膜はスペクトルフィルタの一部を構成することがある。そのようなスペクトルフィルタは、リソグラフィ装置内の任意の都合の良い又は適切な位置に設けられることがある。スペクトルフィルタは、基板テーブル上に支持された基板に帯域外放射が入射するのを回避するか、又は少なくとも抑制するように構成されることがある。
【0248】
[000247] 本開示の一部の実施形態は、本開示の実施形態によるペリクル400の概略的断面を示す
図5を参照してこれより説明する、
図1に示したリソグラフィ装置LAなどのリソグラフィ装置で使用するためのペリクルに関する。
【0249】
[000248] ペリクル400は、膜410と、境界420と、保護部430とを備える。境界420は、膜410の周辺部かつその第1の面412に設けられる。保護部430は、膜410の周辺部かつその第2の面414に設けられる。
【0250】
[000249]
図5に示すペリクル400は、これより考察するように特に有利である。以上で考察したように、リソグラフィ装置LA内に低圧水素ガスが存在することにより、ペリクルがエッチングされ、ペリクルの潜在的な寿命が制限される可能性がある。そのようなペリクルのエッチングを軽減するために、ペリクルに保護用のキャッピング層を設けることがこれまでに提案されている。しかしながら、EUV放射のペリクルによる吸収を最小限に抑えることが望ましいため、そのようなキャッピング層の材料及び厚さは一般的にかなり制限される。
【0251】
[000250] 水素イオンと炭素材料との相互作用は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2つの公開された論文、(1)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1996、36/12、1647-1659、及び(2)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Corrigendum-Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1997、37、897に定量的に説明されている。この水素イオンと炭素材料との相互作用の定量的記述は、Roth-Garcia-Rosales(RGR)モデルと呼ばれることがある。RGRモデルは、例えばイオンエネルギーが1~30eVを形成するなど、リソグラフィ装置内で遭遇する典型的な水素イオンエネルギーの温度の関数として炭素材料のエッチング収率を予測するのに使用される可能性がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019m-2・s-1程度である場合がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019m-2・s-1の数桁の範囲内(例えば、1018m-2・s-1から1020m-2・s-1)にある場合がある。
【0252】
[000251]
図6は、4つの異なるイオンエネルギー、すなわち5eV、10eV、20eV及び30eVの1.5・10
19m
-2・s
-1の水素イオンフラックスについての炭素の水素エッチングの予想エッチング速度を温度の関数として示している。
図6はまた、sp3炭素濃度を温度の関数として示している。
図6から、リソグラフィ装置LA内のこれらの典型的な周囲条件では、純粋にCNTから形成されたペリクルの場合、ペリクルの水素エッチング速度は約1050Kの温度で無視できるレベルに低下することが予想されることがわかる。しかしながら、当業者であれば、異なる条件下では異なる最低温度が望ましい場合があることを理解するであろう。
【0253】
[000252] 本発明の発明者らは、水素イオン及びフリーラジカルによる炭素のエッチングが温度に依存することに気付いた。特に、本発明者らは、炭素エッチング速度が低温及び中温ではより高いが、十分に高い温度では無視できるレベルまで低下することに気付いた。発明者らはまた、EUVリソグラフィスキャナ内のペリクル19の中心部が、(少なくとも一部の時間)水素エッチングが無視できるほど十分に高い温度に達し得るが、ペリクルの周辺部が通常、この温度より低いままであり、したがって、水素エッチングの影響を受けやすくなることにも気付いた。
【0254】
[000253] 有利には、
図5に示すペリクル400は、膜410の(a)最も水素エッチングのリスクにさらされており、(b)使用時にEUV放射を受けない部分(前面414)に追加の保護部430を設ける。これにより、リソグラフィ装置LAの性能に影響を与えることなく、ペリクルの寿命を延ばすことができる。
【0255】
[000254] 一部の実施形態では、保護部430は、膜410の使用時にEUV放射を受けない部分に設けられることがある。
【0256】
[000255] 保護部430は、膜410の境界420と一致する部分に設けられることがある。つまり、保護部430は境界420と重なることがある(ただし、ペリクル400の反対側414に設けられる)。保護部430は、膜410の境界420と一致しない部分416内に部分的に延在することがある。つまり、保護部430は、膜410の境界420に取り付けられていない領域上に部分的に内側に延在することもある。
【0257】
[000256] 一部の実施形態では、保護部430は、保護部は、膜410の大部分と同じ材料から形成されることがある。そのような実施形態では、保護部430はバルク材料(例えば、CNT膜)の厚さが増した部分である場合があり、これは水素によってエッチングされる厚さが増した犠牲部として機能することがある。
【0258】
[000257] 一部の実施形態では、保護部430は、それが取り付けられる膜410の一部を水素エッチングから保護するのに適した材料から形成されることがある。そのような実施形態では、保護部430はキャッピング材料を含むことがある。キャッピング材料は、次の材料のいずれかを単独で又は組み合わせて含むことがある:イットリウム(Y)、酸化イットリウム(YaOb)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)。キャッピング材料は、様々な材料から形成された複数の副層を含むことがある。
【0259】
[000258] 保護部430には、(膜410の中央部と比較して)そのようなキャッピング材料がより厚めに供給され得ることが理解されるであろう。
【0260】
[000259] 一部の実施形態では、膜410はナノチューブを含む。例えば、膜410はCNTから形成された織物である場合がある。これはカーボンナノチューブ膜と呼ばれることがある。これは、EUVリソグラフィ装置のペリクル膜として使用するのに特に有望な材料である。そのようなCNTペリクルは多孔質材料であるため、非常に高いEUV透過率(>98%)をもたらす可能性がある。更に、CNTペリクルは非常に優れた機械的安定性も提供するため、機械的故障に対して堅牢なままでありながら、小さな厚さで製造することができる。他の実施形態では、膜410はグラフェン及び/又は非晶質炭素を含むことがある。
【0261】
[000260] 一部の実施形態では、ペリクル400は更に、膜410の少なくとも1つの表面をコーティングするキャッピング材料を含む。
【0262】
[000261]
図5に示し、以上で説明したペリクル400の特徴が、
図2に示し、以上で説明した方法を用いて形成されるペリクルの特徴と組み合わせられ得ることが理解されるであろう。
【0263】
[000262] 例えば、膜410は、第1の材料(例えばCNT膜)から形成された多孔質膜と、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料(例えばグラフェン)層と、少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層とを含むことがある。
【0264】
[000263] この文書におけるマスク又はレチクルへの言及は、パターニングデバイスへの言及として解釈されることがあり(マスク又はレチクルはパターニングデバイスの一例である)、これらの用語は同じ意味で使用されることがある。特に、マスクアセンブリという用語は、レチクルアセンブリ及びパターニングデバイスアセンブリと同義である。
【0265】
[000264] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0266】
[000265] 用語「EUV放射」は、4~20nmの範囲内、例えば13~14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると考えられることがある。EUV放射は、10nm未満、例えば6.7nm又は6.8nmなどの4~10nmの範囲内の波長を有することがある。
【0267】
[000266] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0268】
以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲及び条項から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【0269】
1.リソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法であって、
第1の材料から形成された多孔質膜を設けること、
多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布すること、及び
多孔質膜の少なくとも1つの面上の少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように塗布することを含む方法。
2.少なくとも1つの二次元材料層の多孔質膜の少なくとも1つの面への塗布が、湿式転写プロセスを用いて達成される、条項1の方法。
3.少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布することが、
少なくとも1つの二次元材料層を支持基板上に設けること、
少なくとも1つの二次元材料層を多孔質膜のある面に押し付けること、及び
支持基板を除去することを含む、条項1の方法。
4.支持基板がその表面に犠牲層を備え、
少なくとも1つの二次元材料層が犠牲層上に設けられ、
支持基板を除去することが、犠牲層をエッチングして支持基板を除去することを含む、条項3の方法。
5.多孔質膜がナノ構造を含む、条項1から4のいずれか一項の方法。
6.多孔質膜がナノチューブを含む、条項5の方法。
7.多孔質膜が実質的に自立式である、条項1から6のいずれか一項の方法。
8.その又は各少なくとも1つの二次元材料層が、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層として塗布される、条項1から7のいずれか一項の方法。
9.二次元材料がグラフェンを含む、条項1から8のいずれか一項の方法。
10.二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含む、条項1から9のいずれか一項の方法。
11.二次元材料が二硫化モリブデン(MoS2)を含む、条項1から10のいずれか一項の方法。
12.少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に塗布され、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるようにペリクルの各側に塗布される、条項1から11のいずれか一項の方法。
13.その又は各キャッピング層が三次元材料である、条項1から12のいずれか一項の方法。
14.その又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である、条項1から13のいずれか一項の方法。
15.少なくとも1つのキャッピング層が、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している、条項1から14のいずれか一項の方法。
16.少なくとも1つのキャッピング層が、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成される、条項1から15のいずれか一項の方法。
17.キャッピング層が0.3から5nm程度の厚さを有する、条項1から16のいずれか一項の方法。
18.キャッピング層がイットリウム又は酸化イットリウムを含む、条項1から17のいずれか一項の方法。
19.キャッピング層が、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含む、条項1から18のいずれか一項の方法。
20.多孔質膜の周辺部にペリクル境界を取り付けることを更に含む、条項1から19のいずれか一項の方法。
21.ペリクル境界が、少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の少なくとも1つの面に塗布される前に多孔質膜の周辺部に取り付けられる、条項20の方法。
22.リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、
第1の材料から形成された多孔質膜と、
多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を備えるペリクル。
23.多孔質膜がナノ構造を含む、条項22のペリクル。
24.多孔質膜がナノチューブを含む、条項23のペリクル。
25.多孔質膜が実質的に自立式である、条項22から24のいずれか一項のペリクル。
26.その又は各少なくとも1つの二次元材料層が、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成する、条項22から25のいずれか一項のペリクル。
27.二次元材料がグラフェンを含む、条項22から26のいずれか一項のペリクル。
28.二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含む、条項22から27のいずれか一項のペリクル。
29.二次元材料が二硫化モリブデン(MoS2)を含む、条項22から28のいずれか一項のペリクル。
30.少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に隣接して設けられ、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるようにペリクルの各側に設けられる、条項22から29のいずれか一項のペリクル。
31.その又は各キャッピング層が三次元材料である、条項22から30のいずれか一項のペリクル。
32.その又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である、条項22から31のいずれか一項のペリクル。
33.少なくとも1つのキャッピング層が、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している、条項22から32のいずれか一項のペリクル。
34.少なくとも1つのキャッピング層が、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成される、条項22から33のいずれか一項のペリクル。
35.キャッピング層が0.3から5nm程度の厚さを有する、条項22から34のいずれか一項のペリクル。
36.キャッピング層がイットリウム又は酸化イットリウムを含む、条項22から35のいずれか一項のペリクル。
37.キャッピング層が、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含む、条項22から36のいずれか一項のペリクル。
38.キャッピング層が、様々な材料から形成された複数の副層を含む、条項22から37のいずれか一項のペリクル。
39.多孔質膜の周辺部にペリクル境界を更に備えた、条項22から38のいずれか一項のペリクル。
40.放射ビームを使用して基板上にパターニングデバイスの像を形成するように動作可能なリソグラフィ装置であって、放射ビームの経路内に配置された膜を備え、膜が、 第1の材料から形成された多孔質膜と、
多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を備えたリソグラフィ装置。
41.膜が動的ガスロックの一部を構成する、条項40のリソグラフィ装置。
42.膜がスペクトルフィルタの一部を構成する、条項40のリソグラフィ装置。
43.多孔質膜がナノ構造を含む、条項40から42のいずれか一項のリソグラフィ装置。
44.多孔質膜がナノチューブを含む、条項43のリソグラフィ装置。
45.多孔質膜が実質的に自立式である、条項40から44のいずれか一項のリソグラフィ装置。
46.その又は各少なくとも1つの二次元材料層が、多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成する、条項40から45のいずれか一項のリソグラフィ装置。
47.二次元材料がグラフェンを含む、条項40から46のいずれか一項のリソグラフィ装置。
48.二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含む、条項40から47のいずれか一項のリソグラフィ装置。
49.二次元材料が二硫化モリブデン(MoS2)を含む、条項40から48のいずれか一項のリソグラフィ装置。
50.少なくとも1つの二次元材料層が多孔質膜の両面に隣接して設けられ、キャッピング層が、少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と多孔質膜との間に配置されるように膜の各側に設けられる、条項40から49のいずれか一項のリソグラフィ装置。
51.その又は各キャッピング層が三次元材料である、条項40から50のいずれか一項のリソグラフィ装置。
52.少なくとも1つのキャッピング層が、多孔質層及び少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している、条項40から51のいずれか一項のリソグラフィ装置。
53.少なくとも1つのキャッピング層が、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm-1未満の材料から形成される、条項40から52のいずれか一項のリソグラフィ装置。
54.キャッピング層が0.3から5nm程度の厚さを有する、条項50から53のいずれか一項のリソグラフィ装置。
55.キャッピング層がイットリウム又は酸化イットリウムを含む、条項50から54のいずれか一項のリソグラフィ装置。
56.キャッピング層が、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含む、条項50から55のいずれか一項のリソグラフィ装置。
57.キャッピング層が、様々な材料から形成された複数の副層を含む、条項50から56のいずれか一項のリソグラフィ装置。
58.多孔質膜の周辺部に膜境界を更に備えた、条項40から57のいずれか一項のリソグラフィ装置。
59.リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、
膜と、
膜の周辺部かつ第1の面上にある境界と、
膜の周辺部かつ第2の面上にある保護部と
を備えるペリクル。
60.保護部が、膜の使用時にEUV放射を受けない部分に設けられる、条項59のペリクル。
61.保護部が、膜の境界と一致する部分に設けられる、条項59又は条項60のペリクル。
62.保護部が、膜の境界と一致しない部分内に部分的に延在する、条項61のペリクル。
63.保護部が、膜の大部分と同じ材料から形成される、条項59から62のいずれか一項のペリクル。
64.保護部が、膜のそれが取り付けられる部分を水素エッチングから保護するのに適した材料を含む、条項59から63のいずれか一項のペリクル。
65.膜が、ナノチューブ、グラフェン及び/又は非晶質炭素を含む、条項59から64のいずれか一項のペリクル。
66.膜の少なくとも1つの表面をコーティングするキャッピング材料を更に含む、条項59から65のいずれか一項のペリクル。
67.膜が、
第1の材料から形成された多孔質膜と、
多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、少なくとも1つの二次元材料層がその又は各キャッピング層と多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を含む、条項59から66のいずれか一項のペリクル。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、
第1の材料から形成された多孔質膜と、
前記多孔質膜の少なくとも1つの面に隣接する少なくとも1つの二次元材料層と、
前記少なくとも1つの二次元材料層に隣接する少なくとも1つのキャッピング層であって、前記少なくとも1つの二次元材料層が前記又は各キャッピング層と前記多孔質膜との間に配置される少なくとも1つのキャッピング層と
を備えたペリクル。
【請求項2】
前記多孔質膜がナノ構造を含む、請求項1のペリクル。
【請求項3】
前記多孔質膜が実質的に自立式である、請求項1又は2のペリクル。
【請求項4】
前記又は各少なくとも1つの二次元材料層が、前記多孔質膜の前記少なくとも1つの面に隣接する実質的に連続した層を構成する、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項5】
前記二次元材料がグラフェン又はナノチューブを含む、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項6】
前記二次元材料が六方晶窒化ホウ素(h-BN)又は二硫化モリブデン(MoS2)を含む、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項7】
少なくとも1つの二次元材料層が前記多孔質膜の両面に隣接して設けられ、キャッピング層が、前記少なくとも1つの二次元材料層がキャッピング層と前記多孔質膜との間に配置されるように前記ペリクルの各側に設けられる、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項8】
前記又は各キャッピング層が三次元材料である、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項9】
前記又は各キャッピング層の全EUV透過率が96%以上である、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのキャッピング層が、前記多孔質層及び前記少なくとも1つの二次元材料層を水素エッチングから保護するのに適している、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャッピング層が、EUV放射に対する消衰係数が0.02nm
-1未満の材料から形成される、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項12】
前記キャッピング層が0.3から5nm程度の厚さを有する、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項13】
前記キャッピング層がイットリウム又は酸化イットリウムを含む、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項14】
前記キャッピング層が、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、金(Au)、窒化ジルコニウム(ZrN)、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)のうちのいずれかを含む、請求項1
又は2のペリクル。
【請求項15】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルを形成する方法であって、
第1の材料から形成された多孔質膜を設けること、
前記多孔質膜の少なくとも1つの面に少なくとも1つの二次元材料層を塗布すること、及び
前記多孔質膜の少なくとも1つの面上の前記少なくとも1つの二次元材料層にキャッピング層を、前記少なくとも1つの二次元材料層が前記又は各キャッピング層と前記多孔質膜との間に配置されるように塗布することを含む方法。
【国際調査報告】