(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱可塑性混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/03 20060101AFI20241031BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20241031BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20241031BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241031BHJP
B29C 49/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08L67/03
C08L23/06
C08L23/26
C08L63/00 A
B29C49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529956
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022081683
(87)【国際公開番号】W WO2023088806
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリク グッベルス
(72)【発明者】
【氏名】マキシミリアン レーエンマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー クレンツ
【テーマコード(参考)】
4F208
4J002
【Fターム(参考)】
4F208AA04
4F208AA12
4F208AA24
4F208AB07
4F208AG07
4F208LA09
4F208LB01
4F208LG42
4J002BB03X
4J002BB08Z
4J002BB23Y
4J002CD16Z
4J002CF001
4J002CF07X
(57)【要約】
A) 30~100質量%の熱可塑性配合物であって、以下:
A-1) 65~75質量%のポリエステル、
A-2) 5~25質量%のHD-またはLD-ポリエチレン、
A-3) 3~10質量%のアイオノマーであって、
3-1) 30~99質量%のエチレン
3-2) 0~60質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.01~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマーであって、ただしカルボン酸の割合が30~100質量%であり、カルボン酸無水物および/またはカルボン酸エステルの割合が相補的に0~70質量%であり、且つカルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも20%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、前記官能性モノマー
からなる少なくとも1つのコポリマーから構成され、ここで、成分3-1、3-2および3-3の割合の合計は100質量%になる、
前記アイオノマー、
A-4) 0.5~5質量%のエポキシ化油または油混合物であって、前記油または油混合物の基礎となる脂肪酸エステル中の少なくとも部分的な不飽和脂肪酸は12~22個の炭素原子を有する、前記油または油混合物
からなり、ここで成分A-1、A-2、A-3およびA-4の割合の合計は成分A)の100質量%になる、
前記熱可塑性配合物、
B) 0~70質量%のさらなる添加剤
を含有し、ここで成分A)およびB)の割合の合計は100質量%になる、熱可塑性混合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 30~100質量%の熱可塑性配合物であって、以下:
A-1) 65~75質量%のポリエステル、
A-2) 5~25質量%のHD-またはLD-ポリエチレン、
A-3) 3~10質量%のアイオノマーであって、
3-1) 30~99質量%のエチレン
3-2) 0~60質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.01~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマーであって、ただしカルボン酸の割合が30~100質量%であり、カルボン酸無水物および/またはカルボン酸エステルの割合が相補的に0~70質量%であり、且つカルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも20%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、前記官能性モノマー
からなる少なくとも1つのコポリマーから構成され、ここで、成分3-1、3-2および3-3の割合の合計は100質量%になる、前記アイオノマー、
A-4) 0.5~5質量%のエポキシ化油または油混合物であって、前記油または油混合物の基礎となる脂肪酸エステル中の少なくとも部分的な不飽和脂肪酸は12~22個の炭素原子を有する、前記油または油混合物
からなり、ここで成分A-1、A-2、A-3およびA-4の割合の合計は成分A)の100質量%になる、
前記熱可塑性配合物、
B) 0~70質量%のさらなる添加剤
を含有し、ここで成分A)およびB)の割合の合計は100質量%になる、熱可塑性混合物。
【請求項2】
A-3の成分3-3において、カルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも50%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、請求項1に記載の熱可塑性混合物。
【請求項3】
A-3の成分3―3における金属が、ナトリウム、カリウム、または両方の任意の比での混合物に相応する、請求項1または2に記載の熱可塑性混合物。
【請求項4】
成分A-1の割合が68~73質量%であり、成分A-2の割合が18~22質量%であり、成分A-3の割合が5~10質量%であり、且つ成分A-4の割合が2~5質量%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項5】
成分Aが、ポリエステル1kgあたり10~50mmolのカルボキシル末端基含有率を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項6】
A-3の成分3-3の官能性モノマーが、エチレン性不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびそれらの酸の官能性誘導体からなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項7】
A-3の成分3-3の官能性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルであって該エステルのアルコール部分においてそれぞれ1~18個の炭素原子を有するものからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項8】
成分A-3が、
3-1) 50~99質量%のエチレン
3-2) 0~50質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.05~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマー
から構成される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項9】
成分A-3が、
3-1) 50~90質量%のエチレン
3-2) 0~50質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 2~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマー
から構成される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項10】
成分A-4のエポキシ化油または油混合物が、大豆油、亜麻仁油、なたね油、カメリナ油、ひまし油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ひまわり油、コーン油および麻実油からなる群から選択される1つ以上の植物油から誘導される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項11】
成分A-4のエポキシ化油または油混合物が、大豆油、亜麻仁油、なたね油およびひまし油からなる群から選択される1つ以上の植物油から誘導される、請求項10に記載の熱可塑性混合物。
【請求項12】
成分A-4の割合が1~3質量%である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物を使用して製造された成形部材。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物を使用して製造された中空体。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱可塑性混合物を使用して、ブロー成形法を用いて製造された中空体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A) 30~100質量%の熱可塑性配合物であって、以下:
A-1) 65~75質量%のポリエステル、
A-2) 5~25質量%のHD-またはLD-ポリエチレン、
A-3) 3~10質量%のアイオノマーであって、
3-1) 30~99質量%のエチレン
3-2) 0~60質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.01~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマーであって、ただしカルボン酸の割合が30~100質量%であり、カルボン酸無水物および/またはカルボン酸エステルの割合が相補的に0~70質量%であり、且つカルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも20%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、前記官能性モノマー
からなる少なくとも1つのコポリマーから構成され、ここで、成分3-1、3-2および3-3の割合の合計は100質量%になる、前記アイオノマー、
A-4) 0.5~5質量%のエポキシ化油または油混合物であって、前記油または油混合物の基礎となる脂肪酸エステル中の少なくとも部分的な不飽和脂肪酸は12~22個の炭素原子を有する、前記油または油混合物
からなり、ここで成分A-1、A-2、A-3およびA-4の割合の合計は成分A)の100質量%になる、
前記熱可塑性配合物、
B) 0~70質量%のさらなる添加剤
を含有し、ここで成分A)およびB)の割合の合計は100質量%になる、熱可塑性混合物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記熱可塑性混合物を使用して製造された成形部材および中空体、殊に前記熱可塑性混合物を使用してブロー成形法を用いて製造された中空体に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性プラスチックから中空体および成形部材を製造するために、通常、熱可塑性プラスチック、例えばPETまたはPBTを含有する混合物が使用される。これらの混合物がそれぞれの成形法の要件を満たすために、それらはとりわけ特定のレオロジー特性を有さなければならない。ここで、一方では強度および粘性と、他方では可能な限り良好に型を充填するために充分な流動性との間のバランスが重要である。
【0004】
M.Joshi et al., Journal of Applied Polymer Science, Vol.43, 311~328, 1991(「D1」)、M.Joshi et al., Journal of Applied Polymer Science, Vol. 45, 1837~1847 1992(「D2」)、およびM.Joshi et al., POLYMER Volume 35, Number 17, 3679~3685, 1994(「D3」)の刊行物において、PBTおよびHDPEからの配合物、およびアイオノマーが両方のプラスチックの混和性に及ぼす作用が調査されている。PBTとHDPEとが単独で二相混合物を形成する場合、アイオノマー(酸性水素がナトリウムによって部分的に置き換えられたエチレン-メタクリル酸コポリマー)の添加は、かなり極性のPBTと非極性のHDPEとの相溶性の向上を、三成分混合物の新種の特性と共にもたらす。HDPEのPBT中での分散度が高まると、アイオノマーの割合の増加に伴ってPBTの結晶化速度が高まり、全体としてHDPE、PBTおよびアイオノマーからの三相が均一なアロイ相として見えるようになることができる。
【0005】
国際公開第1990/14391号(WO1990/14391 A1)(「D4」)においては、(i)ポリエステル、(ii-i)7~25個の炭素原子を有するカルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、または(ii-ii)2~5個の炭素原子を含有するα-オレフィンと、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸とからのイオン性コポリマーのナトリウム塩またはカリウム塩のいずれか、および(iii)質量平均分子量1,000~20,000を有するポリオレフィンからなる混合物が特許請求されている。D4によれば、これらの混合物は、高められた耐衝撃性を特徴とする。
【0006】
古い欧州特許出願公開第20190021.4号明細書(20190021.4)(「D5」)は、ポリエステル、HD-またはLD-ポリエチレン、エチレンと、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンの群から選択される化合物と、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルの群からの官能性モノマーとの少なくとも1つのコポリマーからなるアイオノマー、並びに場合よりさらなる添加剤を含有する、熱可塑性配合物を特許請求している。
【0007】
しかしながら、エポキシ化油または油混合物を混入することは、先述の従来技術には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第1990/14391号
【特許文献2】欧州特許出願公開第20190021.4号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.Joshi et al., Journal of Applied Polymer Science, Vol.43, 311-328, 1991
【非特許文献2】M.Joshi et al., Journal of Applied Polymer Science, Vol. 45, 1837~1847 1992
【非特許文献3】M.Joshi et al., POLYMER Volume 35, Number 17, 3679~3685, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、中空体および成形体を製造するために適しており、且つその組成が、一方では流動性と粘度と結晶化速度との間の、加工のために合わせられたバランスの調節を可能にし、他方では仕上げられた中空体および成形部材に必要な強度および衝撃耐性をもたらす、熱可塑性混合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それに応じて、冒頭で定義した熱可塑性混合物が見出された。好ましい実施態様は、従属請求項に記載される。
【0012】
成分Aとして、本発明による熱可塑性混合物は、
A) 30~100質量%の熱可塑性配合物であって、以下:
A-1) 65~75質量%のポリエステル、
A-2) 5~25質量%のHD-またはLD-ポリエチレン、
A-3) 3~10質量%のアイオノマーであって、
3-1) 30~99質量%のエチレン
3-2) 0~60質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.01~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマーであって、ただしカルボン酸の割合が30~100質量%であり、カルボン酸無水物および/またはカルボン酸エステルの割合が相補的に0~70質量%であり、且つカルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも20%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、前記官能性モノマー
からなる少なくとも1つのコポリマーから構成され、ここで成分3-1、3-2および3-3の割合の合計は100質量%になる、前記アイオノマー、
A-4) 0.5~5質量%のエポキシ化油または油混合物であって、前記油または油混合物の基礎となる脂肪酸エステル中の少なくとも部分的な不飽和脂肪酸は12~22個の炭素原子を有する、前記油または油混合物
からなり、ここで成分A-1、A-2、A-3およびA-4の割合の合計は成分A)の100質量%になる、
熱可塑性配合物を30~100質量%含有する。
【0013】
100質量%になるように、前記熱可塑性混合物は、成分Bとしてのなおもさらなる添加剤を0~70質量%の割合で含有する。
【0014】
好ましい熱可塑性混合物は、成分A-1を68~73質量%の割合で、成分A-2を18~22質量%の割合で、成分A-3を5~10質量%の割合で、および成分A-4を2~5質量%の割合で含有する。
【0015】
ここで、通常は成分A-1、A-2およびA-3として特定のポリエステル、特定のHD-またはLD-ポリエチレン、もしくは特定のアイオノマーの出発材料が用いられることが注記される。しかしながら、そのようなポリエステル、HD-またはLD-ポリエチレン、もしくはアイオノマーの出発材料のそれぞれの混合物も使用され得る。さらに、特定のポリエステル、HD-またはLD-ポリエチレン、もしくはアイオノマーの出発材料自体も、製造に起因する分子量の分布に基づき、本質的にそれぞれのポリエステル、HD-またはLD-ポリエチレン、もしくはアイオノマーの出発材料の混合物であることも注記される(が、そのことは当業者にはよく知られている)。
【0016】
一般に、芳香族ジカルボン酸および脂肪族または芳香族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステルA-1が使用される。
【0017】
好ましいジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸またはこれらの混合物を挙げることができる。60mol%まで、有利には10mol%以下の芳香族ジカルボン酸が、脂肪族または脂環式のジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびシクロヘキサンジカルボン酸によって置き換えられ得る。
【0018】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の中では、2~6個の炭素原子を有するジオール、殊に1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコールまたはそれらの混合物が好ましい。
【0019】
好ましいポリエステルA-1の第1の群は、ポリアルキレンテレフタレート、殊にアルコール部分内に2~10個の炭素原子を有するポリアルキレンテレフタレートである。
【0020】
そのようなポリアルキレンテレフタレートは自体公知であり、かつ文献内に記載されている。それらは、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香環を主鎖内に含有する。前記芳香環は、例えば、ハロゲン、例えば塩素および臭素によって、またはC1~C4-アルキル基、例えばメチル基、エチル基、i-プロピル基もしくはn-プロピル基およびn-ブチル基、i-ブチル基もしくはt-ブチル基によって置換されていてもよい。
【0021】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸、そのエステルまたは別のエステル形成誘導体を脂肪族ジヒドロキシ化合物と反応させることによって、自体公知の方式で製造することができる。
【0022】
特に好ましいポリエステルA-1として、2~6個の炭素原子を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。これらの中では、殊にポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。1質量%まで、有利には0.75質量%までの1,6-ヘキサンジオールおよび/または2-メチル-1,5-ペンタンジオールをさらなるモノマー単位として含有するPETおよび/またはPBTがさらに好ましい。
【0023】
ポリエステルA-1の粘度数(「VZ」)は、一般に50~220、有利には少なくとも140ml/g、殊に少なくとも145ml/gの範囲内にある(ISO 1628に準拠し、フェノール/o-ジクロロベンゼン混合物(25℃で質量比1:1)中の0.5質量%の溶液中で測定)。
【0024】
カルボキシル末端基含有率が、ポリエステル1kgあたり0~100mmol/kgまで、好ましくは10~50mmol/kgまで、および殊に15~40mmol/kgまでであるポリエステルが殊に好ましい。そのようなポリエステルを、例えば独国特許出願公開第4401055号明細書(DE-A 44 01 055)の方法により製造することができる。カルボキシル末端基含有率は、通常、滴定法(例えば、電位差滴定)によって特定される。
【0025】
殊に好ましい熱可塑性混合物は、成分A-1としてポリエステルの混合物を含有し、ここで少なくとも1つはPBTである。例えばポリエチレンテレフタレートの割合は、有利には混合物中でA)100質量%に対して50質量%まで、殊に10~35質量%である。
【0026】
さらに、場合によってはポリアルキレンテレフタレート、例えばPBTと混合してPETリサイクル材料(スクラップPETとも称される)も用いられ得る。
【0027】
リサイクル材料とは、一般に以下が理解される:
1) いわゆる「産業から出たリサイクル材料」: これは、重縮合の際または加工の際の生産廃棄物、例えば射出成形加工の際のスプルー、射出成形加工または押出の際の始動屑、または押し出されたプレートまたはフィルムの縁部の断片である。
【0028】
2) いわゆる「消費者から出たリサイクル材料」: これは、最終使用者による利用後に回収され、再生されたプラスチック物品である。量的に広く普及している物品は、ミネラルウォーター、ソフトドリンクおよびジュースのためのブロー成形されたPETボトルである。
【0029】
両方の種類のリサイクル材料は、粉砕材として存在していてもよいし、造粒物の形で存在していてもよい。後者の場合には、粗製リサイクル材料は分離および洗浄の後、押出機内で溶融および造粒される。これによって、取り扱い、流動のしやすさ、およびさらなる加工段階のための配量性が容易になることが多い。
【0030】
造粒されたリサイクル材料も粉砕材として存在するリサイクル材料も使用することができ、ここで、最大の辺長は、10mm、有利には8mm未満であるべきである。
【0031】
加工の際のポリエステルの加水分解による分解(痕跡量の湿分による)に基づき、リサイクル材料を予め乾燥することが推奨される。乾燥後の残留湿分含有率は、0.2%未満、殊に0.05%未満であるべきである。
【0032】
さらなる群として、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される完全芳香族ポリエステルを挙げることができる。
【0033】
芳香族ジカルボン酸として、既にポリアルキレンテレフタレートについて記載された化合物が適している。好ましくは、イソフタル酸5~100mol%とテレフタル酸0~100mol%との混合物、殊にテレフタル酸約80%とイソフタル酸20%との混合物~これら2つの酸のほぼ等量の混合物が使用される。
【0034】
芳香族ジヒドロキシ化合物は有利には、以下の一般式を有する:
【化1】
[式中、Zは、8個までの炭素原子を有するアルキレン基またはシクロアルキレン基、12個までの炭素原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または硫黄原子または化学結合を表し、且つ、mは0~2の値を有する]。前記化合物は、フェニレン基上で、C
1~C
6-アルキル基またはアルコキシ基およびフッ素、塩素または臭素を置換基として有することもできる。
【0035】
これらの化合物の母体構造として、例えば
ジヒドロキシジフェニル、
ジ-(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ-(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ-(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ-(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ-(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α’-ジ-(ヒドロキシフェニル)-ジアルキルベンゼン、
ジ-(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ-(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン
レソルシン、および
ヒドロキノン、並びにその核アルキル化または核ハロゲン化誘導体が挙げられる。
【0036】
これらの中で、
4,4’-ジヒドロキシジフェニル、
2,4-ジ-(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、
α,α’-ジ-(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、
2,2-ジ-(3’-メチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、および
2,2-ジ-(3’-クロロ-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、
並びに殊に、
2,2-ジ-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン
2,2-ジ-(3’,5-ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1、1-ジ-(4’-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、および
2,2-ジ(3’,5’-ジメチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、
またはそれらの混合物が好ましい。
【0037】
当然のことながら、ポリアルキレンテレフタレートと完全芳香族ポリエステルとの混合物も使用できる。これは、一般にポリアルキレンテレフタレート20~98質量%および完全芳香族ポリエステル2~80質量%を含有する。
【0038】
当然のことながら、ポリエステルブロックコポリマー、例えばコポリエーテルエステルも使用できる。そのような生成物は自体公知であり、文献内、例えば米国特許第3651014号明細書(US-A3651014)内に記載されている。また、相応の製品、例えばHytrel(登録商標)(DuPont)も市販されている。
【0039】
本発明によれば、ポリエステルとしてハロゲン不含のポリカーボネートも理解されるべきである。適したハロゲン不含のポリカーボネートは、例えば、一般式
【化2】
[式中、Qは単結合、C
1~C
8-アルキレン基、C
2~C
3-アルキリデン基、C
3~C
6-シクロアルキリデン基、C
6~C
12-アリーレン基並びに-O-、-S-または-SO
2-を意味し、且つmは0~2の整数である]
のジフェノールに基づくものである。
【0040】
ジフェノールは、フェニレン基上に置換基、例えばC1~C6-アルキルまたはC1~C6-アルコキシを有することができる。
【0041】
前記式の好ましいジフェノールは、例えばヒドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサンである。2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンおよび1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、並びに1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0042】
ホモポリカーボネートもコポリカーボネートも成分Aとして適しており、ビスフェノールA-ホモポリマーの他に、ビスフェノールAのコポリカーボネートが好ましい。
【0043】
適したポリカーボネートは、公知の方式で分枝化でき、特に有利には、用いられるジフェノールの合計に対して0.05~2.0モル%の少なくとも三官能価の化合物、例えば3つ以上のフェノール系OH基を有するものを導入することによって分枝化できる。
【0044】
1.10~1.50、殊に1.25~1.40の相対粘度ηrelを有するポリカーボネートが特に適していることが判明している。これは、平均分子量Mw(質量平均)10000~200000g/mol、有利には20000~80000g/molに相応する。
【0045】
前記一般式のジフェノールは自体公知であるか、または公知の方法によって製造可能である。
【0046】
ポリカーボネートの製造は、例えばジフェノールをホスゲンと界面法により反応させるか、またはホスゲンと均一相における方法(いわゆるピリジン法)により反応させることによって行うことができ、ここで、それぞれ調節すべき分子量は、公知の方式で相応の量の公知の連鎖停止剤によって達成される。(ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネートに関して、例えば独国特許出願公開第3334782号明細書(DE-OS 33 34 782)を参照)。
【0047】
適した連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p-t-ブチルフェノール、しかしさらに長鎖アルキルフェノール、例えば4-(1,3-テトラメチルブチル)-フェノール(独国特許出願公開第2842005号明細書(DE-OS 28 42 005)による)、またはアルキル置換基中に合計8~20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール(独国特許出願公開第3506472号明細書(DE-A 35 06 472)による)、例えばp-ノニルフェニル、3,5-ジ-t-ブチルフェノール、p-t-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチル-ヘプチル)-フェノールおよび4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールである。
【0048】
ハロゲン不含のポリカーボネートとは、本発明においては、ポリカーボネートがハロゲン不含のジフェノール、ハロゲン不含の連鎖停止剤および場合によりハロゲン不含の分枝剤から構成されていることを意味し、ここで、例えばホスゲンを用いた界面法によるポリカーボネートの製造から生じる、副次的なppm量の含有率のけん化可能な塩素は、本発明においてはハロゲン含有とみなされるべきではない。ppmの含有率のけん化可能な塩素を有するそのようなポリカーボネートは、本発明においてはハロゲン不含のポリカーボネートである。
【0049】
さらに適した成分A)としては、アモルファスのポリエステルカーボネートが挙げられ、ここで、製造に際して、ホスゲンは芳香族ジカルボン酸単位、例えばイソフタル酸単位および/またはテレフタル酸単位に対して置き換えられる。さらなる詳細については、欧州特許出願公開第711810号明細書(EP A 365 916)における該当箇所に教示されている。
【0050】
モノマー単位としてシクロアルキル基を有するさらに適したコポリカーボネートは、欧州特許出願公開第365916号明細書(EP A 365 916)内に記載されている。
【0051】
成分A-3として、本発明による熱可塑性混合物は、
10~25質量%のアイオノマーであって、
3-1) 30~99質量%のエチレン
3-2) 0~60質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.01~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマーであって、ただしカルボン酸の割合が30~100質量%であり、カルボン酸無水物および/またはカルボン酸エステルの割合が相補的に0~70質量%であり、且つカルボン酸のカルボキシル基の水素が、カルボキシル基の全数の少なくとも20%(「モル%」)の割合で、ナトリウム、カリウムおよび亜鉛からなる群から選択される金属によって置き換えられている、前記官能性モノマー
からなる少なくとも1つのコポリマーから構成され、ここで、成分3-1、3-2および3-3の割合の合計は100質量%になる、
前記アイオノマーを含有する。
【0052】
好ましい金属イオンはナトリウム、カリウムまたは亜鉛、殊にナトリウムまたはカリウム、またはそれらの混合物である。ナトリウムの使用が特に好ましい。パーセントでの中和の割合は、例えば市販の機器を用いたフレーム原子吸光分析法によって特定される。
【0053】
アイオノマーとは、例えばRoempp Online Lexikon, Georg Thieme Verlag, 2008年8月によれば、大きな割合の疎水性モノマーと、多くの場合、小さな割合のイオン性基を有するコモノマーとを含有するイオン性ポリマーと理解される。
【0054】
成分A-3の可能なアイオノマーについての例は、欧州特許出願公開第0419274号明細書(EP 0 419 274)内にも記載されている。
【0055】
それらのアイオノマーは直接的な共重合によって得ることができ、後の反応(例えばアルカリ含有アイオノマーを製造するためのアルカリ液との)によって塩へと変換される。
【0056】
好ましい成分3-3は、エチレン性不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸およびそれらの酸の官能性誘導体からなる群から選択される。
【0057】
そのような好ましい成分3-3は殊に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルであって該エステルのアルコール部分においてそれぞれ1~18個の炭素原子を有するものからなる群から選択される。
【0058】
基本的にアクリル酸またはメタクリル酸の第一級、第二級および第三級の全てのC1~C18-アルキルエステルが適しているが、1~12個の炭素原子、特に2~10個の炭素原子を有するエステルが好ましい。
【0059】
これについての例は、メチル-、エチル-、プロピル-、n-、i-ブチル-およびt-ブチル-、2-エチルヘキシル-、オクチル-およびデシルアクリレートおよびメタクリル酸の相応のエステルである。この中でも、n-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートが特に強調される。
【0060】
エステルの代わりに、またはそれに加えて、オレフィンポリマー中に、エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の、潜在的に酸官能性のモノマーが含有され得る。これについての例として、成分3-3のモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸の第三級アルキルエステル、殊にtert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、またはジカルボン酸誘導体、例えばマレイン酸およびフマル酸のモノエステル、またはこれらの酸の誘導体が挙げられる。
【0061】
潜在的に酸官能性のモノマーとは、重合条件下で、および/またはオレフィンポリマーが成形材料中に追加される際に、遊離酸基を形成するような化合物であると理解されるべきである。
【0062】
好ましくは、成分A-3は、成分として
3-1) 50~99質量%のエチレン
3-2) 0~50質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 0.05~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマー
を含有する。
【0063】
さらに好ましくは、成分A-3は、成分として
3-1) 50~90質量%のエチレン
3-2) 0~50質量%の、1-オクテン、1-ブテンおよびプロピレンからなる群から選択される1つ以上の化合物、および
3-3) 2~50質量%の、カルボン酸、カルボン酸無水物およびカルボン酸エステルからなる群から選択される1つ以上の官能性モノマー
を含有する。
【0064】
先述のエチレンコポリマーの製造を、自体公知の方法により、有利には高圧および高められた温度下でのランダム共重合によって行うことができる。
【0065】
エチレンコポリマーのメルトインデックスは、一般に1~80g/10分(190℃且つ2.16kgの負荷で測定)の範囲である。
【0066】
このエチレン-α-オレフィン-コポリマーの分子量は、10,000~500,000g/モル、好ましくは15,000~400,000g/モルである(ポリスチレン較正を用い1,2,4-トリクロロベンゼン中でGPCを用いて特定されたMn)。
【0067】
特別な実施態様において、いわゆるシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン-α-オレフィン-コポリマーが用いられる。さらなる詳細は、米国特許5272236号明細書(US 5,272,236)から得ることができる。この場合、エチレン-α-オレフィン-コポリマーは、ポリオレフィンについて、4未満の、有利には3.5未満の狭い分子量分布を有する。
【0068】
成分A-4として、本発明による熱可塑性混合物はエポキシ化油または油混合物であって、前記油または油混合物の基礎となる脂肪酸エステル中の少なくとも部分的な不飽和脂肪酸は12~22個の炭素原子を有する、前記油または油混合物を含有する。エポキシ化のための出発材料としてのそのような油は、石油化学由来、植物由来または動物由来であってよく、純粋な形態であっても、互いに混合されて存在してもよく、それに応じて、純粋なエポキシ化油またはそのようなエポキシ化油の混合物として熱可塑性混合物に添加され得る。
【0069】
米国特許第9034965号明細書(US-Schrift 9,034,965 B2)は、第2欄33行目~第3欄12行目において、エポキシ化に供され得る様々な油およびその混合物を記載している。そのようなエポキシ化油および油混合物も本発明により使用できる。
【0070】
有利には、大豆油、亜麻仁油、なたね油、ひまし油、カメリナ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ひまわり油、コーン油および麻実油からなる群から選択される植物油に基づくエポキシ化油が使用される。
【0071】
殊に、大豆油、亜麻仁油、なたね油およびひまし油からなる群から選択される植物油に基づくエポキシ化油が考慮される。
【0072】
成分Bとして、本発明による成形材料は、成分AとBとの合計100質量%に対して0~70質量%、殊に50質量%までの、成分Aとは異なるさらなる添加剤および加工助剤を含有し得る。
【0073】
通常の成分Bは例えば、40質量%までの、有利には15質量%までの量でのゴム弾性ポリマー(耐衝撃性改質剤、エラストマーまたはゴムと称されることも多い)である。
【0074】
耐衝撃性改質剤についての例は、官能基を有し得るゴムである。2つ以上の異なる衝撃性改質ゴムの混合物も用いられ得る。
【0075】
成形材料の粘性を高めるゴムは一般に、-10℃未満、有利には-30℃未満のガラス転位温度を有するエラストマー部分を含有し、それはポリアミドと反応できる少なくとも1つの官能基を含有する。適した官能基は例えばカルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシド基、ウレタン基、またはオキサゾリン基、好ましくはカルボン酸無水物基である。
【0076】
好ましい官能化ゴムには、以下の成分から構成される官能化ポリオレフィンゴムが含まれる:
1. 40~99質量%の、2~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのα-オレフィン、
2. 0~50質量%のジエン、
3. 0~45質量%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC1~C12-アルキルエステル、またはそのようなエステルの混合物、
4. 0~40質量%のエチレン性不飽和C2~C20-モノカルボン酸またはジカルボン酸、またはそのような酸の官能性誘導体、
5. 0~40質量%のエポキシ基含有モノマー、および
6. 0~5質量%のその他のラジカル重合性モノマー、
ここで、成分3)~5)の合計は、成分1)~6)に対して少なくとも1~45質量%である。
【0077】
適したα-オレフィンの例として、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-ペンチレン、1-ヘキシレン、1-ヘプチレン、1-オクチレン、2-メチルプロピレン、3-メチル-1-ブチレンおよび3-エチル-1-ブチレンを挙げることができ、ここでエチレンおよびプロピレンが好ましい。
【0078】
適したジエンモノマーとして、例えば4~8個の炭素原子を有する共役ジエン、例えばイソプレンおよびブタジエン、5~25個のC原子を有する非共役ジエン、例えばペンタ-1,4-ジエン、ヘキサ-1,4-ジエン、ヘキサ-1,5-ジエン、2,5-ジメチルヘキサ-1,5-ジエンおよびオクタ-1,4-ジエン、環式ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエン、並びにアルケニルノルボルネン、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン、2-イソプレニル-5-ノルボルネンおよびトリシクロジエン、例えば3-メチルトリシクロ(5.2.1.0.2.6)-3,8-デカジエンまたはそれらの混合物が挙げられる。ヘキサ-1,5-ジエン、5-エチリデン-ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。
【0079】
ジエン含有率は、オレフィンポリマーの総質量に対して、有利には0.5~50、殊に2~20、および特に好ましくは3~15質量%である。適したエステルについての例は、メチル-、エチル-、プロピル-、n-ブチル、i-ブチル-および2-エチルヘキシル-、オクチル-およびデシルアクリレート、もしくはメタクリル酸の相応のエステルである。これらの中で、メチル-、エチル-、プロピル-、n-ブチル-および2-エチルヘキシルアクリレートもしくはメタクリレートが特に好ましい。エステルの代わりに、またはそれに加えて、オレフィンポリマー中に、エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の、酸官能性および/または潜在的に酸官能性のモノマーも含有され得る。
【0080】
エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸についての例は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、殊にtert-ブチルアクリレートおよびジカルボン酸、例えばマレイン酸およびフマル酸、またはこれらの酸の誘導体並びにこれらのモノエステルである。
【0081】
潜在的に酸官能性のモノマーとは、重合条件下で、もしくはオレフィンポリマーが成形材料中に追加される際に遊離酸基を形成するような化合物であると理解されるべきである。これについての例として、2~20個の炭素原子を有するジカルボン酸の無水物、殊にマレイン酸無水物および先述の酸の第三級C1~C12-アルキルエステル、殊にtert-ブチルアクリレートおよびtert-ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0082】
他のモノマーとして、例えばビニルエステルおよびビニルエーテルが考慮される。
【0083】
50~98.9、殊に60~94.85質量%のエチレン、および1~50、殊に5~40質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、0.1~20.0、殊に0.15~15質量%のグリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、アクリル酸および/またはメタクリル酸無水物からのオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0084】
特に適した官能化ゴムは、エチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルアクリレートポリマーおよびエチレン-メチルメタクリレート-グリシジルアクリレートポリマーである。
【0085】
先述のポリマーの製造を、自体公知の方法により、有利には高圧および高められた温度下でのランダム共重合によって行うことができる。これらのコポリマーのメルトインデックスは、一般に1~80g/10分(190℃且つ2.16kgの負荷で測定)の範囲である。
【0086】
適したゴムのさらなる群として、コア・シェルグラフトゴムが挙げられる。これは、エマルション中で製造された、少なくとも1つの硬質成分と少なくとも1つの軟質成分とからなるグラフトゴムである。硬質成分とは、通常、少なくとも25℃のガラス転位温度を有するポリマーと理解され、軟質成分とは、最高0℃のガラス転位温度を有するポリマーと理解される。これらの生成物は、1つの核と、少なくとも1つのシェルとからなる構造を有し、その構造はモノマーの添加順序によってもたらされる。軟質成分は一般に、ブタジエン、イソプレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートまたはシロキサン、および場合によりさらなるコモノマーから誘導される。適したシロキサンコアは例えば、環状オリゴマーオクタメチルテトラシロキサンまたはテトラビニルテトラメチルテトラシロキサンから出発して製造され得る。これらは例えば、開環カチオン重合において、有利にはスルホン酸の存在下で、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランと反応して、軟質シロキサンコアになることができる。シロキサンは例えば、加水分解性基、例えばハロゲンまたはアルコキシ基を有するシラン、例えばテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランの存在下で、重合反応を実施することによって架橋されることもできる。適したコモノマーとして、ここで例えばスチレン、アクリロニトリル、および1つより多くの重合性二重結合を有する架橋性またはグラフト活性モノマー、例えばジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジアクリレートまたはトリアリル(イソ)シアヌレートが挙げられる。硬質成分は一般に、スチレン、α-メチルスチレンおよびそれらのコポリマーから誘導され、ここでコモノマーとして有利にはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびメチルメタクリレートが挙げられる。
【0087】
好ましいコア・シェルグラフトゴムは、軟質のコアおよび硬質のシェル、または硬質のコア、第1の軟質のシェルおよび少なくとも1つのさらなる硬質のシェルを含有する。官能基、例えばカルボニル基、カルボン酸基、酸無水物基、酸アミド基、酸イミド基、カルボン酸エステル基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、ウレタン基、尿素基、ラクタム基またはハロゲンベンジル基の組み込みは、ここで有利には、最後のシェルの重合の際に適した官能化モノマーを添加することによって行われる。適した官能化モノマーは例えばマレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸のモノエステルまたはジエステル、第三級ブチル-(メタ)アクリレート、アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、およびビニルオキサゾリンである。官能基を有するモノマーの割合は、コア・シェルグラフトゴムの総質量に対して一般に0.1~25質量%、有利には0.25~15質量%である。軟質成分対硬質成分の質量比は、一般に1:9~9:1、好ましくは3:7~8:2である。
【0088】
そのようなゴムは自体公知であり、例えば欧州特許出願公開第0208187号明細書(EP 0 208 187)内に記載されている。官能化のためのオキサジン基の組み込みは例えば欧州特許出願公開第0791606号明細書(EP 0 791 606)に従って行うことができる。
【0089】
適した耐衝撃性改質剤のさらなる群は、熱可塑性ポリエステルエラストマーである。ここで、ポリエステルエラストマーとは、通常はポリ(アルキレン)エーテルグリコールから誘導される長鎖セグメントと、低分子量ジオールおよびジカルボン酸から誘導される短鎖セグメントとを含有する、セグメント化コポリエーテルエステルと理解される。そのような生成物は自体公知であり、文献内、例えば米国特許第3651014号明細書(US 3,651,014)内に記載されている。相応の製品も名称Hytrel(商標)(Du Pont)、Arnitel(商標)(Akzo)およびPelprene(商標)(Toyobo Co. Ltd.)の下で市販されている。
【0090】
当然のことながら、異なるゴムの混合物も用いることができる。
【0091】
成分Bの添加剤として、繊維または粒子状の充填剤、例えばガラス繊維、ガラス球、アモルファスシリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末石英、マイカ、硫酸バリウムおよび長石を添加できる。熱可塑性混合物の混合物全体に対して、繊維状の充填剤Bは60質量%まで、殊に35質量%までの量で用いられ、粒子状の充填剤は30質量%まで、殊に10質量%までの量で用いられる。
【0092】
好ましい繊維状充填剤として、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維が挙げられ、E-ガラスとしてのガラス繊維が特に好ましい。これらは、市販の形態のロービングまたはチョップトガラスとして用いられ得る。
【0093】
さらに、充填剤として、レーザー吸収材料、例えば炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、グラフェンまたはカーボンナノチューブが考えられる。これらは所定の場合において好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.05質量%未満の量で用いられる。
【0094】
繊維状充填剤を、熱可塑性樹脂とより良好に適合させるために、シラン化合物で表面の前処理をすることができる。適したシラン化合物は、下記の一般式のものである:
(X-(CH
2)
n)
k-Si-(O-C
mH
2m+1)
4-k
前記式中、置換基は以下の意味を有する:
Xは、
【化3】
であり、
nは、2~10の、好ましくは3~4の整数であり、
mは、1~5の、好ましくは1~2の整数であり、
kは、1~3の、好ましくは1の整数である。
【0095】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、並びに置換基Xとしてグリシジル基を含有する相応のシランである。
【0096】
シラン化合物は、一般に表面被覆のために(成分Bに対して)0.05~5質量%、有利には0.1~1.5質量%、および殊に0.2~0.5質量%の量で用いられる。
【0097】
針状の鉱物充填剤も適している。
【0098】
針状の鉱物充填剤とは、本発明の意味においては、非常に顕著な針状の特徴を有する鉱物充填剤と理解される。例として、針状のウォラストナイトが挙げられる。有利には、該鉱物は、8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1のL/D(長さ対直径)比を有する。鉱物質の充填剤は、場合により先述のシラン化合物で前処理され得るが、前処理は必ずしも必要なわけではない。
【0099】
本発明による熱可塑性混合物は、成分Bとして、慣例的な加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱分解防止剤、紫外線による分解の防止剤、滑剤および離型剤、核形成剤、例えばフェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ナイロン22、並びに着色剤、例えば染料および顔料または可塑剤等が用いられ得る。
【0100】
好ましい核形成剤Bとして、本発明による熱可塑性混合物は0~5質量%のタルクを含有する。これは、用いられる場合、有利には0.001~4、殊に0.01~1質量%の量で用いられる。
【0101】
タルクは加水分解されたケイ酸マグネシウムであり、そこではさらなる微量元素、例えばMn、Ti、Cr、Ni、Na、およびKが存在し、且つOH基がフッ化物で置き換えられ得る。
【0102】
100%までの粒子サイズが20μm未満であるタルクを用いることが特に好ましい。粒子サイズ分布は通常、沈降分析によって特定され、有利には<20μm: 100質量%、<10μm: 99質量%、<5μm: 85質量%、<3μm: 60質量%、<2μm: 43質量%である。そのような製品はMicro-Talc I.T.extraとして市販されている。
【0103】
酸化遅延剤および熱安定剤の例としては、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度での、立体障害フェノールおよび/またはホスフィット、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、前記群の種々の置換された代替物およびこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
一般に成形材料に対して2質量%までの量で使用されるUV安定剤としては、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンが挙げられる。
【0105】
無機および有機の顔料、並びに色素、例えばニグロシンおよびアントラキノンが着色剤として添加され得る。特に適した着色剤は、例えば欧州特許第1722984号明細書(EP1722984 B1)、欧州特許第1353986号明細書(EP1353986 B1)、または独国特許出願公開第10054859号明細書(DE10054859 A1)内に挙げられている。
【0106】
成分Bの添加剤(「潤滑剤、滑剤および離型剤」)として、本発明による熱可塑性混合物は、10~40、好ましくは16~22個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸と、2~40、有利に2~6個の炭素原子を有する脂肪族の飽和アルコールまたはアミンとの、エステルまたはアミドを含有し得る。
【0107】
カルボン酸は、一価または二価であってよい。例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸および特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0108】
脂肪族アルコールは、一価~四価であってよい。アルコールについての例は、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトールであり、ここで、グリセリンおよびペンタエリトリトールが好ましい。
【0109】
脂肪族アミンは、一価~三価であってよい。これについての例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6-アミノヘキシル)アミンであり、ここで、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステルまたはアミドは、相応のグリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネートおよびペンタエリトリトールテトラステアレートである。
【0110】
種々のエステルまたはアミドの混合物、またはエステルとアミドとを組合せて用いることもでき、ここで、混合比は任意である。
【0111】
一価または多価のカルボン酸、有利には脂肪酸でエステル化もしくはエーテル化されているポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールがさらに適している。適した製品は例えばHenkel KGaA社のLoxiol(登録商標)EP 728として市販されている。
【0112】
アルコールとエチレンオキシドとから誘導される好ましいエーテルは、一般式
RO(CH2CH2O)nH
[式中、Rは6~40個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、nは1以上の整数を意味する]を有する。Rについて殊に好ましいのは、約50のnを有する飽和C16~C18-脂肪アルコールであり、BASF社のLutensol(登録商標)AT 50として市販されている。
【0113】
そのような添加剤(「潤滑剤、滑剤および離型剤」)についてのさらなる例は、長鎖脂肪酸(例えばテアリン酸またはベヘン酸)、それらの塩(例えば、ステアリン酸CaまたはZn)、またはモンタンワックス(28~32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖の飽和カルボン酸の混合物)、並びにモンタン酸CaまたはNa、並びに低分子量ポリエチレンワックスもしくはポリプロピレンワックスである。
【0114】
成分Bの先述の添加剤(「潤滑剤、滑剤および離型剤」)は通常、混合物全体に対して1質量%までの量で用いられる。
【0115】
成分Bの添加剤としての可塑剤についての例として、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0116】
本発明による成形材料は0~2質量%のフッ素含有エチレンポリマーも含有し得る。これは、フッ素含有率55~76質量%、有利には70~76質量%を有するエチレンのポリマーである。
【0117】
これについての例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、または比較的少ない割合(通常は50質量%まで)の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するテトラフルオロエチレンコポリマーである。これらは例えばSchildknechtによって「Vinyl and Related Polymers」, Wiley-Verlag, 1952, 484~494ページ内に、およびWallによって「Fluorpolymers」(Wiley Interscience, 1972)内に記載されている。
【0118】
これらのフッ素含有エチレンポリマーは成形材料中で均質に分布して存在し、好ましくは0.05~10μm、殊に0.1~5μmの範囲の粒子サイズd50(数平均)を有する。これらの小さい粒子サイズは、フッ素含有エチレンポリマーの水性分散液を使用し、ポリエステル溶融物中へそれらを組み込むことによって特に好ましく達成される。
【0119】
本発明による熱可塑性混合物を、自体公知の方法によって、出発成分A-1、A-2、A-3およびBを通常の混合装置、例えば(二軸)スクリュー押出機、ブラベンダーミルまたはバンバリーミル中で混合し、引き続き押出すことにより製造することができる。押出後、押出物を冷却し、且つ破砕することができる。個々の出発成分が予め混合され、次に残りの出発成分が個々に添加、および/または混合されて添加されることもできる。混合温度は、通常230~320℃である。殊に、個々の成分、例えばA-3および/またはBを「加熱供給(hot feed)」または押出機の入口に直接的に添加することもできる。
【0120】
本願の範囲では、本発明による熱可塑性混合物を使用して製造された成形部材および中空体がさらに特許請求される。殊に、本発明による熱可塑性混合物を使用して、ブロー成形法、例えば押出ブロー成形および延伸ブローを用いて製造された中空体が特許請求される。
【実施例】
【0121】
I. 出発材料:
成分A-1:
ポリブチレンテレフタレート (BASF社のUltradur(登録商標)B 6550)
特徴:
カルボキシル末端基含有率: 34mmol/kg
粘度: 160ml/g (ISO 1628に準拠して、フェノール/o-ジクロロベンゼンの1:1混合物の0.5質量%の溶液中、25℃で測定されたVZ)
メルトボリュームレート: 9.5cm3/10分(ISO 1133に準拠して250℃および2.16kgで測定)。
【0122】
成分A-2:
HDPE HTA 108(ExxonMobil(登録商標))
特徴:
密度: 0.961g/cm3(ASTM D1505に準拠)
メルトインデックス(190℃/2.16kg): 0.70g/10分(ASTM D1238に準拠)
メルトマスフローレート(MFR): 46g/10分(ASTM D1238に準拠)。
【0123】
成分A-3:
SURLYN(登録商標)1707(Dow Chemical社)
特徴:
ナトリウムイオンで80%まで中和されたエチレン-アクリル酸コポリマーのアイオノマー。アクリル酸含有率は15%である。
【0124】
成分A-4:
エポキシ化亜麻仁油(TRANSFORMACIONES QUIMICO-INDUSTRIALES, S.L. -TRAQUISA)
脂肪酸のパーセント割合による特徴(質量%):
ステアリン酸: 3~5
パルチミン酸: 5~7
オレイン酸(一価不飽和): 18~26
リノール酸(二価不飽和): 14~20
リノレン酸(三価不飽和): 51~56
(以下でエポキシ化亜麻仁油をELO(Epoxidized Linseed Oil)と略す)。
【0125】
II. 試料の準備:
Ultradur(登録商標)B6550(成分A-1)と、HDPE HTA108(成分A-2)と、Surlyn(登録商標)1707(成分(成分A-3)との混合物を、以下の表1に示す割合(質量%)で顆粒形態で混合し、80℃で終夜乾燥した。この混合物を、製造元によって強力混合用のスクリューが備えられている二軸押出機(型番CTW100、Thermo Fischer Polylab QC)に供給した。ELO(成分A-4)を、成分A-1とA-2とA-3との混合物に液体で計量添加した。押出機は回転速度140分-1、公称250℃で稼働された。溶融温度は約260℃と特定された。押し出されたストランドを水浴中で冷却して顆粒化した。得られた顆粒をRheotens分析に提供した。
【0126】
III. 測定の実施:
ISO 1133に準拠して250℃および2.16kgで試料C1、C2およびE1~E6のメルトボリュームフレートを測定した。
【0127】
IV. 測定結果:
先述の規格ISO 1133に準拠して、様々な熱可塑性混合物について、メルトボリュームレート(MVR-Melt Volume-Flow Rate)の値を特定した。比較例C1およびC2の組成物は、成分A-4を有さない、成分A-1とA-2とA-3との熱可塑性混合物について(冒頭で述べられた従来技術D5を参照)、および成分A-1とA-4とのみからの熱可塑性混合物についての結果を示す。これに対し、例E1~E6は本発明による熱可塑性混合物を含む。
【0128】
【0129】
比較例C1およびC2についてのMVR値は30cm3/10分を上回り、従って比較的薄い液体の挙動を示す一方で、本発明による熱可塑性混合物E1~E6は例外なく5cm3/10分未満の値を有する。測定の実施(ポイントIII)は殊に熱可塑性混合物の流動挙動に向けられているので、本発明による熱可塑性混合物の特性は成形法、例えばブロー成形による加工にも反映されると考えられる。本発明による熱可塑性混合物の場合、加工の間の溶融ストランドの望ましくない急速な途切れ(「熱可塑性混合物の流出/滴下」)が、効果的に低減されると考えられる。
【国際調査報告】