(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像分類アルゴリズムに基づく高吸水性樹脂の吸水速度算出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20241031BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241031BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20241031BHJP
G06V 10/764 20220101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N11/00 F
G06T7/00 350C
G06V10/82
G06T7/00 610C
G06V10/764
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531482
(86)(22)【出願日】2023-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2023016554
(87)【国際公開番号】W WO2024090949
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0141535
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0142281
(32)【優先日】2023-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キェオン ラク
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジ ヒエ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ セオブ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ホ スン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ミン ファ
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA04
5L096DA02
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
本発明は、所定の吸水材が水を吸水する映像を撮影した映像データから吸水材の吸水速度を算出する方法及びシステムを提供する。本発明によれば、吸水映像データを各フレーム画像データに分離し、人工ニューラルネットワークモデルを用いて各フレーム画像データが吸水中の画像であるか、あるいは、吸水済みの画像であるかを判別して、吸水開始時点と吸水終了時点を検出して吸水材の吸水速度を算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の吸水材の画像データと当該画像が吸水中の画像であるか、あるいは、吸水済みの画像であるかに区別してラベル付けした分類データとを含んでなる学習データの用意ステップと、
所定の画像データを入力されて、入力された画像を所定のラベルとして分類する人工ニューラルネットワークの構成ステップと、
前記学習データを前記人工ニューラルネットワークに入力して前記人工ニューラルネットワークを構成するパラメータを更新することにより、人工ニューラルネットワークを学習する機械学習ステップと、
を含んでなる、人工ニューラルネットワークモデルの生成方法。
【請求項2】
前記吸水材の画像データは、
多数の吸水材に対して吸水映像データを取得する映像データの取得ステップと、
前記映像データを構成する各フレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得ステップと、
を用いて取得した前記各フレーム画像データである、請求項1に記載の人工ニューラルネットワークモデルの生成方法。
【請求項3】
前記吸水映像データは、
所定の量の水を容器に入れて攪拌する間に所定の量の前記吸水材を投入し、水が吸水されて固まっていく過程が撮影された映像データである、請求項2に記載の人工ニューラルネットワークモデルの生成方法。
【請求項4】
吸水材を投入し、所定の時間の間に吸水材の映像データを取得する吸水材映像データ取得ステップと、
前記映像データを各フレーム画像データに分離してフレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得ステップと、
前記フレーム画像データを人工ニューラルネットワークモデルに入力してフレーム画像を分類するフレーム画像分類ステップと、
前記分類されたフレーム画像から吸水終了フレームと吸水開始フレームを取り出し、これらを用いて吸水速度を算出する吸水速度算出ステップと、
を含んでなる、吸水材の吸水速度算出方法。
【請求項5】
前記人工ニューラルネットワークモデルは、
請求項1から3のいずれか一項に記載の人工ニューラルネットワークモデルの生成方法に従って生成された人工ニューラルネットワークモデルである、請求項4に記載の吸水材の吸水速度算出方法。
【請求項6】
前記吸水速度算出ステップにおける前記吸水速度は、下記の数式1により算出される、請求項4に記載の吸水材の吸水速度算出方法。
[数式1]
吸水速度=(吸水終了フレームナンバー-吸水開始フレームナンバー)/映像データのfps
【請求項7】
吸水材の吸水速度を算出するシステムにおいて、
前記吸水材の吸水映像データを取得する映像データ取得部と、
前記吸水映像データから映像データを構成する各フレーム画像データに分離して、フレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得部と、
前記フレーム画像データから吸水開始時点と吸水終了時点を算出して吸水材の吸水速度を算出する吸水速度算出部と、
を備えてなる、吸水材の吸水速度算出システム。
【請求項8】
前記フレーム画像データ取得部が取得したそれぞれのフレーム画像データをフレーム順序の通りに入力されて吸水材が水を吸水する間である吸水中の画像であるか、あるいは、水の吸水が完了した吸水済みの画像であるかを区別して判別するフレーム画像判別部をさらに備え、
前記吸水速度算出部は、
前記フレーム画像判別部が最も先に吸水中の画像として判別した画像のフレームナンバー(開始フレームナンバー)から前記吸水開始時点を算出し、最も先に吸水済みの画像として判別した画像のフレームナンバー(終了フレームナンバー)から吸水終了時点を算出する、請求項7に記載の吸水材の吸水速度算出システム。
【請求項9】
前記吸水速度は、下記の数式1から算出される、請求項7に記載の吸水材の吸水速度算出システム。
[数式1]
吸水速度=(吸水終了フレームナンバー-吸水開始フレームナンバー)/映像データのfps
【請求項10】
前記フレーム画像判別部は、
入力される各フレーム画像データを入力されてこれを吸水中の画像または吸水済みの画像に区別して判別し、その判別結果を出力するように予め学習された人工ニューラルネットワーク部を備えてなる、請求項8に記載の吸水材の吸水速度算出システム。
【請求項11】
前記人工ニューラルネットワーク部は、
多数のサンプル吸水材の吸水サンプル映像データを各サンプルフレーム画像データに分離したサンプルフレーム画像データ及び前記各サンプルフレーム画像データに対して吸水中と吸水済みの状態でラベル付けしたデータを学習データとして入力されて、前記各サンプルフレーム画像データに対して前記ラベル付けデータがマッチングされるように学習されている、請求項10に記載の吸水材の吸水速度算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高吸水性吸水材の吸水速度を算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸水材の吸水速度を算出し、吸水速度に見合う用途を与えて用いてきた。従来、このような吸水速度を算出するために、サンプル吸水材を使用先に投入した後、マニュアルにてタイマーを用いて吸水時間を測定する方式を利用していた。
【0003】
しかしながら、このような方式は、研究者が一々に手作業で吸水時間を測定することを余儀なくされるため、非効率的であった。
【0004】
特許文献1には、吸水材の質量の変化を測定して試料の吸液量が最大の吸水量に達するまでに要される時間を概ね把握する方式が開示されている。しかしながら、このような方式は、試料の最大の吸水量と浸透速度係数が既知になってはじめて適用可能であるという問題がある。
【0005】
関連する先行技術としては、下記に掲げる文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の方式とは異なり、吸水材の吸水映像データのフレームごとの画像(イメージ)から吸水材の吸水の度合いを算出する方法及びシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の吸水材の画像データと当該画像が吸水中の画像であるか、あるいは、吸水済みの画像であるかに区別してラベル付けした分類データとを含んでなる学習データ用意ステップと、所定の画像データを入力されて、入力された画像を所定のラベルとして分類する人工ニューラルネットワークの構成ステップと、前記学習データを前記人工ニューラルネットワークに入力して前記人工ニューラルネットワークを構成するパラメータを更新することにより、人工ニューラルネットワークを学習する機械学習ステップと、を含んでなる、吸水材の吸水速度の算出のための人工ニューラルネットワークモデルの生成方法を提供する。
【0009】
このとき、前記吸水材の画像データは、多数の吸水材に対して吸水映像データを取得する映像データ取得ステップと、前記映像データを構成する各フレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得ステップと、を用いて取得する。また、前記吸水映像データは、所定の量の水を容器に入れて攪拌する間に所定の量の前記吸水材を投入し、水が吸水されて固まっていく過程が撮影された映像データであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、吸水材を投入し、所定の時間の間に吸水材の映像データを取得する吸水材映像データ取得ステップと、前記映像データを各フレーム画像データに分離してフレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得ステップと、前記フレーム画像データを人工ニューラルネットワークモデルに入力してフレーム画像を分類するフレーム画像分類ステップと、前記分類されたフレーム画像から吸水終了フレームと吸水開始フレームを取り出し、これらを用いて吸水速度を算出する吸水速度算出ステップと、を含んでなる吸水材の吸水速度算出方法を提供する。
【0011】
このとき、前記吸水速度算出ステップにおける前記吸水速度は、下記の数式1により算出されてもよい。
[数式1]
吸水速度=(吸水終了フレームナンバー-吸水開始フレームナンバー)/映像データのfps
【0012】
さらに、本発明は、前記吸水材の吸水映像データを取得する映像データ取得部と、前記吸水映像データから映像データを構成する各フレーム画像データに分離して、フレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得部と、前記フレーム画像データから吸水開始時点と吸水終了時点を算出して吸水材の吸水速度を算出する吸水速度算出部と、を備えてなる吸水材の吸水速度算出システムを提供する。
【0013】
本発明は、前記フレーム画像データ取得部が取得したそれぞれのフレーム画像データをフレーム順序の通りに入力されて吸水材が水を吸水する間である吸水中の画像であるか、あるいは、水の吸水が完了した吸水済みの画像であるかを区別して判別するフレーム画像判別部とをさらに備え、前記吸水速度算出部は、前記フレーム画像判別部が最も先に吸水中の画像として判別した画像のフレームナンバー(開始フレームナンバー)から前記吸水開始時点を算出し、最も先に吸水済みの画像として判別した画像のフレームナンバー(終了フレームナンバー)から吸水終了時点を算出することを特徴とする。
【0014】
前記フレーム画像判別部は、入力される各フレーム画像データを入力されてこれを吸水中の画像または吸水済みの画像に区別して判別し、その判別結果を出力するように予め学習された人工ニューラルネットワーク部を備えてなり、前記人工ニューラルネットワーク部は、多数のサンプル吸水材の吸水サンプル映像データを各サンプルフレーム画像データに分離したサンプルフレーム画像データ及び前記各サンプルフレーム画像データに対して吸水中と吸水済みの状態でラベル付けしたデータを学習データとして入力されて、前記各サンプルフレーム画像データに対して前記ラベル付けデータがマッチングされるように学習される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来、マニュアルにてタイマーを用いて吸水材の吸水速度を測定していた方法に比べて、吸水速度が多岐に亘っている吸水材に対して吸水映像を撮影することで、画像分類アルゴリズムを適用して、吸水速度をより一層正確に測定することができるという効果が奏される。
【0016】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る吸水材の吸水速度を算出するシステムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る吸水映像のフレームごとの画像の例を示す図である。
【
図3】学習データを用意するために撮影した映像データのフレーム画像を実際に示す図である。
【
図4】本発明に従って学習された予測モデルへの映像データの入力時の1枚のフレーム当たりのスコアの計算出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、画像分類アルゴリズムを活用して高吸水性樹脂(高吸水性ポリマー、SAP/Super Absorbent polymer)の吸水速度を算出する方法及びシステムに関するものである。本発明において用いた画像分類アルゴリズムとしては、通常の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)が使用可能であり、この他にも、本発明の出願日の前に公知となっている画像分類モデルが適用可能である。本発明の技術的な特徴は、画像分類モデルそれ自体にあるわけではなく、画像分類モデルを活用して高吸水性樹脂の吸水映像から吸水速度を算出するところにあることに留意されたい。
【0019】
1.本発明に係る吸水材(高吸水性樹脂)の吸水速度算出システム
【0020】
1.1.吸水映像データ取得部10
【0021】
本発明は、吸水材の吸水映像データを取得する映像データ取得部を備える。映像データ取得部は、本発明に係る吸水材の吸水速度算出方法において、映像データ取得ステップを行う。
【0022】
吸水材の吸水映像データとは、所定の条件下で所定の吸水材が吸水する過程を所定のフレームレート(fps)(1秒あたりのフレーム数、number of frames per second)にて撮影した映像データ(ビデオデータ、video data)のことを意味する。映像データ取得部は、前記映像データを入力される構成要素であって、通常のビデオカメラを備えてなり得る。
【0023】
<吸水材の吸水映像データの取得の実施例>
【0024】
吸水材の吸水映像データを取得する実施例を示す。本発明においては、100mLのビーカーに50mLの0.9wt%の塩水を満たした後、600rpmの磁性攪拌を行うことで、塩水が回転する間に、高吸水性樹脂(吸水材)2gを投入して塩水が吸水されて固まっていく全過程を撮影して映像データを取得した。このとき、映像の撮影は、ビーカー内の表面が映像内において取られる角度が30°~60°の角度になるようにしてビデオカメラにて行った。
【0025】
1.2.フレーム画像データ取得部20
【0026】
フレーム画像データ取得部は、前記映像データ取得部において取得した映像データ(吸水映像データ)、もしくは、入力された映像データ(吸水映像データ)をフレーム単位の画像データに分離する構成要素である。所定の映像データを各フレーム画像データに分離する作業は、通常の画像処理ソフトウェアまたは画像処理アルゴリズムを用いて実現し易いということが通常の技術者にとって周知である。
【0027】
フレーム画像データ取得部は、本発明の人工ニューラルネットワークモデルの生成方法及び吸水材の吸水速度算出方法において、フレーム画像データ取得手順を行う。
【0028】
1.3.吸水速度算出部30
【0029】
吸水速度算出部は、前記取得したフレーム画像データを入力されてフレーム画像を分類し、そのスコア(score)を出力する人工ニューラルネットワークモデル31と、人工ニューラルネットワークモデルの出力から吸水開始時点と吸水終了時点を算出する吸水進行判断部32と、吸水開始時点と吸水終了時点から吸水速度を算出する吸水速度演算部33と、を備えてなる。
【0030】
(1)画像判別部:人工ニューラルネットワークモデル31
【0031】
本発明は、前記フレーム画像データ取得部が取得したそれぞれのフレーム画像データをフレームの順番の通りに入力されて吸水材が水を吸水する間である吸水中の画像であるか、あるいは、水の吸水が完了した吸水済みの画像であるかを区別して判別するフレーム画像判別部を備える。
【0032】
画像判別部31は、人工ニューラルネットワークモデルから構成されてもよいが、本発明の人工ニューラルネットワークモデルは、前述した本発明において高吸水性樹脂の吸水速度を算出するために用いる画像分類アルゴリズムの一例である。人工ニューラルネットワークモデルとしては、通常の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)が使用可能であり、この他にも、本発明の出願日の前に公知となっている画像分類モデルが適用可能である。
【0033】
本発明の人工ニューラルネットワークモデルを構成する人工ニューラルネットワークは、後述する学習手順に従って機械学習(マシンラーニング)され、上述した吸水材の吸水映像データを構成する各フレーム画像データを入力されて当該画像が吸水進行中の画像であるか、あるいは、吸水済みの画像であるかを区別して、吸水進行中の画像である確率と吸水済みの画像である確率をスコア(score)として出力する。各フレーム画像に対して出力されるスコアは、0と1を含むその間の値である。後述する学習手順に従って学習された本発明の人工ニューラルネットワークモデルが出力する各フレーム画像に対するスコアの例を
図4に示す。
【0034】
(2)人工ニューラルネットワークの学習
【0035】
本発明の人工ニューラルネットワークモデル31は、下記の手順に従って機械学習される人工ニューラルネットワークを備える。人工ニューラルネットワークとしては、基本的にCNNが用いられる。
【0036】
まず、学習データとして、100mLのビーカーに50mLの0.9wt%の塩水を満たした後、600rpmの磁性攪拌を行うことで、塩水が回転する間に、高吸水性樹脂(吸水材)2gを投入して塩水が吸水されて固まっていく全過程を撮影して映像データを取得した。このとき、映像の撮影は、ビーカー内の表面が映像内において取られる角度が30°~60°の角度になるようにしてビデオカメラにて行った。
【0037】
次いで、前記映像データを各フレーム画像データに分離してフレーム画像データを取得した。
【0038】
このような学習データ用の映像データ及びフレーム画像データは、前述した映像データ取得部10及びフレーム画像データ取得部20を用いて取得可能である。
【0039】
次いで、前記フレーム画像データに、当該フレーム画像が吸水中の画像であるか、あるいは、吸水済みの画像であるかをラベル付けしたラベル付けデータをマージする。ラベル付けデータは、フレーム画像データにマージされることなく、フレーム番号ごとに独立して取り扱うことも可能である。
【0040】
図2に学習データを用意するための各映像データをフレーム画像データに分離し、ラベル付けした例を示す。
【0041】
次いで、画像データを入力されて、入力された画像を所定のラベルとして分類する人工ニューラルネットワークを構成する。人工ニューラルネットワークは、通常のCNNの構造を有していてもよく、コンピューターにおいて実現されるデータ処理構造としてのCNNのデータ構造は、通常の技術者にとって周知である。
【0042】
次いで、上記のようにして構成された人工ニューラルネットワークに上述した学習データを入力して機械学習を進め、人工ニューラルネットワークの学習を完了する。このような機械学習ステップにおいて、人工ニューラルネットワークを構成する各レイヤーのパラメーターが更新されて、学習済みの人工ニューラルネットワークを備える本発明の人工ニューラルネットワークモデル31は、任意の吸水材映像データから取得したフレーム画像データを入力されて当該画像が吸水中の画像に相当するか、あるいは、吸水済みの画像に相当するかに対する判別値であるスコア(score)を出力することになる。
【0043】
所定の吸水材A(試料10)、B(試料16)の吸水映像データ及びフレーム画像データに対するスコア出力値の例を
図4に示す。スコアが0に近づければ近づくほど、吸水が進んでいることを意味し、スコアが1に近づければ近づくほど、吸水が終了したことを意味する。
【0044】
(3)吸水進行判断部32
【0045】
吸水進行判断部32は、人工ニューラルネットワークモデル31が出力する各フレーム画像データのスコアに基づいて、吸水開始時点と吸水終了時点を算出する。
【0046】
図4の例は、スコアが0近くに安定化するフレームを吸水開始時点、スコアが0.5以上に上がるフレームを吸水終了時点のフレームとして選択したものである。
【0047】
(4)吸水速度演算部33
【0048】
吸水速度算出部30は、吸水開始時点と吸水終了時点から吸水速度を算出する吸水速度演算部33を備えてなる。吸水速度演算部33は、前記算出した吸水開始時点、吸水終了時点から下記の数式2に従って吸水速度を算出する。
【0049】
[数式2]
吸水速度=吸水終了時点-吸水開始時点
【0050】
吸水速度は、下記の数式1から算出することも可能である。
【0051】
[数式1]
吸水速度=(吸水終了フレームナンバー-吸水開始フレームナンバー)/映像データのfps
【0052】
2.本発明に係る吸水材(高吸水性樹脂)の吸水速度算出方法
【0053】
本発明に係る吸水材の吸水速度算出方法は、下記の手順を含んでなる。
【0054】
まず、上述した実施例の欄において説明したように、水に所定の吸水材を投入し、所定の時間の間に吸水材の映像データを取得する吸水材映像データ取得ステップを含む。
【0055】
次いで、前記映像データを各フレーム画像データに分離してフレーム画像データを取得するフレーム画像データ取得ステップを含み、前記取得したフレーム画像データを前述した方式により機械学習した人工ニューラルネットワークモデルに入力してフレーム画像を分類するフレーム画像分類ステップを含む。
【0056】
また、前記分類されたフレーム画像から吸水終了フレームと吸水開始フレームを取り出し、これらを用いて吸水速度を算出する吸水速度算出ステップを含み、吸水速度は、先の数式1または数式2を用いて算出可能である。
【0057】
(実施例1)
【0058】
本発明に係る吸水速度算出方法に従って試料1~試料16の吸水速度を測定する方法は、下記の通りである。
【0059】
(i)ニューラルネットワークモデルの学習
【0060】
100mlのビーカーに50mLの0.9wt%の塩水を満たした後、600rpmの磁性攪拌を行うことで、水が回転している間に、高吸水性樹脂試料2gを投入し、水が吸水されて固まっていく全過程を撮影した映像データを取得した。このとき、16種類の高吸水性樹脂試料に対して映像データを確保した。
【0061】
次いで、映像データのフレームを分離してフレーム画像を生成し、生成されたフレーム画像を固まる前と固まった後の2種類に区別してラベル付けを進めて学習データを確保した。
【0062】
次いで、画像分類アルゴリズムとしてCNNを適用してラベル付けされた前記学習データを用いてニューラルネットワークモデルを学習した。
【0063】
(ii)試料(吸水材)に対する吸水速度の算出
【0064】
高吸水性樹脂試料1~16に対して、それぞれ100mlのビーカーに50mLの0.9wt%の塩水を満たした後、600rpmの磁性攪拌を行うことで、水が回転している間に、試料1~16を2g投入し、水が吸水されて固まっていく全過程を撮影した映像データを取得し、フレーム画像に分離した。
【0065】
各試料に対してフレーム画像を順次に前記学習されたニューラルネットワークモデルに入力して吸水開始画像のフレームナンバーと吸水終了画像のフレームナンバーを取り出し、前記数式2に従う演算を行って各試料に対する吸水速度を算出した。
【0066】
試料1~16に対する吸水速度の算出値は、下記の表1にまとめて示す。
【0067】
(比較例1)
【0068】
比較例は、前記実施例と同様に、高吸水性樹脂試料1~16に対して、それぞれ100mlのビーカーに50mLの0.9wt%の塩水を満たした後、600rpmの磁性攪拌を行うことで、水が回転している間に、試料1~16を2g投入して進めた。
【0069】
但し、比較例は、水が吸水されて固まっていく過程において、研究員が自らタイマーを用いて時間を測定した。試料1~16を攪拌されているビーカーに投入するときにタイマーを起動し、水が吸水されて完全に固まり切ってそれ以上攪拌が行われない状態でタイマーを終了して、タイマーにより測定された時間をもって吸水速度を測定した。
【0070】
下記の表1に実施例に係る吸水速度の測定値との差を示す。各実施例と比較例の測定値の単位は、秒(second)である。
【0071】
【0072】
前記実施例と比較例から明らかなように、本発明に従い測定した吸水速度は、従来マニュアルにてタイマーを用いて吸水材の吸水速度を測定していた場合と比較したとき、平均0.38sの差を示すが、これは、従来の方式が研究者に応じて操作の誤差がある筈であることに鑑みると、本発明に係る方式の方が十分に正確性を保証するものであることが認められる。
【0073】
また、本発明の方式によれば、吸水材の吸水速度の算出過程を自動化させることができるという効果があり、様々な試料に対して標準化した方式により正確に吸水速度を算出することができるという効果がある。
【0074】
(実施例2/比較例2)
【0075】
実施例2においては、上記の実施例1における試料1に対して、本発明に係る方式と従来マニュアルにて測定していた方式によりそれぞれ10回測定した。
【0076】
下記の表は、各方式により測定した結果をまとめて示す。
【0077】
【0078】
上記の表2から明らかなように、本発明に係る方式は、従来の方式に比べて、最大値と最小値との差が遥かに小さく、しかも、標準偏差も小さいことから、繰り返し正確度の側面からみて、本発明に係る方式の方がさらに優れていることが認められる。
【符号の説明】
【0079】
本発明の図面及び説明の欄に用いられている構成要素の符号とその名称は、下記の通りである。
10…吸水映像データ取得部
20…フレーム画像データ取得部
30…吸水速度算出部
31…画像判別部(人工ニューラルネットワークモデル)
32…吸水進行判断部
33…吸水速度演算部
【国際調査報告】