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特表2024-541641薬物送達デバイス及びこれを用いた用量記録システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス及びこれを用いた用量記録システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20241031BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/20
A61M5/315
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532753
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022083752
(87)【国際公開番号】W WO2023099512
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21315265.5
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】トム・アレクサンダー・イアーウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・チャールズ・ガゼレイ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・メレディス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・ロバート・レスター
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・シニア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066LL21
4C066QQ48
4C066QQ82
(57)【要約】
本発明は、液状薬物の用量を設定して投薬するための薬物送達デバイス(1)に関する。デバイスは、ハウジング(10)と、用量設定部材(70)と用量設定ドラム(60)とを備えた用量設定及び駆動機構とを含む。用量設定及び駆動機構は、送達される用量を選択するための用量設定動作と、設定された用量を送達するための用量送達動作とを実施するように構成され、用量設定ドラム(60)は、用量設定部材(70)上の嵌合する1組の歯(73)と係合可能である1組のクラッチ歯(61)を含む。クラッチ歯(61)及び嵌合歯(73)は、クラッチ歯(61)と嵌合歯(73)との回転を防止するために用量設定動作中に係合され、クラッチ歯(61)及び嵌合歯(73)は、用量設定ドラム(60)と用量設定部材(70)との相対回転を可能にする用量送達動作中に係合が解除される。クラッチ歯(61)は、用量設定ドラム(60)の外面に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状薬物の用量を設定して投薬するための薬物送達デバイスであって、前記デバイスは、ハウジング(10)と、用量設定部材(70)と用量設定ドラム(60)とを備えた用量設定及び駆動機構とを含み、前記用量設定及び駆動機構は、送達される用量を設定するための用量設定動作と、前記設定された用量を送達するための用量送達動作とを実施するように構成され、前記用量設定ドラム(60)は、前記用量設定部材(70)上の嵌合する1組の歯(73)と係合可能である1組のクラッチ歯(61)を含み、前記クラッチ歯(61)及び前記嵌合歯(73)は、前記クラッチ歯(61)と前記嵌合歯(73)との回転を防止するために用量設定動作中に係合され、前記クラッチ歯(61)及び前記嵌合歯(73)は、前記用量設定ドラム(60)と前記用量設定部材(70)との相対回転を可能にする用量送達動作中に係合が解除され、前記クラッチ歯(61)は、前記用量設定ドラム(60)の外面に形成され、前記クラッチ歯(61)は、前記用量設定ドラム(60)の実質的に円筒状の外面から径方向外側に突出し、前記用量設定部材(70)は、近位端面に位置する少なくとも1つの開口、例えば2つの開口(77)を有し、前記開口は、前記用量設定ドラム(60)の前記クラッチ歯(61)の少なくとも一部と一致することを特徴とする、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記クラッチ歯(61)が、前記用量設定ドラム(60)の周囲に等間隔に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記用量設定ドラム(60)上に形成されたクラッチ歯(61)の数は、これらのクラッチ歯(61)が前記用量設定部材(70)の前記嵌合歯(73)と係合可能である回転位置の数の整数部分であることを特徴とする、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記用量設定ドラム(60)上に形成されたクラッチ歯(61)の前記数が、これらのクラッチ歯(61)が前記用量設定部材(70)の前記嵌合歯(73)と係合可能である回転位置の数の半分に等しいことを特徴とする、請求項3に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記用量設定及び駆動機構が、少なくとも前記用量設定部材(70)を前記ハウジング(10)に対して回転させることによって前記薬物送達デバイスにより送達される用量を選択するための用量設定動作と、少なくとも前記ハウジング(10)に対する前記用量設定ドラム(60)の回転中に前記設定された用量を送達するための用量送達動作とを実施するように構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記用量設定ドラム(60)が、前記用量設定部材(70)に対する前記用量設定ドラム(60)の回転運動を検出するための、前記用量設定ドラム(60)の近位端に円形パターンで形成されたエンコーダ機能部(61)のアレイを含み、前記用量設定ドラム(60)上に設けられた前記クラッチ歯(61)が前記エンコーダ機能部であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの開口(77)が、溝(78)の遠位端に、例えば、前記用量設定部材(70)の前記近位端面に形成された2つの同心溝(78、79)のうちの外側溝(78)の遠位端に位置することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記用量設定部材(70)が、単一の構成要素として機能するように互いに恒久的に固定された管状スリーブ(71)及び別個のボタン(72)を含み、前記管状スリーブ(71)が、径方向内側に延びるクラッチ歯(73)の前記リングを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記用量設定部材(70)、例えば前記管状スリーブ(71)が、径方向内側に延びる傾斜歯(74)のリング、把持面としてのプロファイル、及び/若しくは遠位方向に延びる止め歯(75)のリングを含み、並びに/又は前記ボタン(72)が、近位端面と、前記端面から遠位方向に延びるステムとを含み、前記ステムが、軸方向に延びる少なくとも1つのスプラインを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記用量設定部材(70)に、別個の取り付け可能なモジュール(2)を装着するための取り付け機能部(76)が設けられることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記クラッチ歯(61)が、前記用量設定ドラム(60)の前記近位側から見て、根元の近傍で僅かに幅が広く、先端に向かって僅かに狭くなる形状を有し、及び/又は隣り合うクラッチ歯(61)の間の空間は、前記クラッチ歯(61)の前記幅よりも幅広である、例えば約3倍幅広であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス(1)と、前記薬物送達デバイスの前記用量設定部材(70)への取り付けのための電子モジュール(2)とを含む、用量記録システムであって、前記モジュール(2)が、
センサと、
前記少なくとも1つのセンサの動作を制御して前記少なくとも1つのセンサからの信号を処理及び/又は記憶するように構成されたプロセッサと、
前記モジュールを前記用量設定部材に取り付けるための取り付け機能部と
を含む、用量記録システム。
【請求項13】
前記モジュール(2)が、前記用量設定部材の近位端を受け入れるためのキャップを含む、請求項12に記載の用量記録システム。
【請求項14】
前記モジュール(2)の前記センサが、前記用量設定ドラム(60)の前記クラッチ歯(61)の少なくとも一部と一致して位置する少なくとも1組の光学IRエミッタ/検出器を含む、請求項12又は13に記載の用量記録システム。
【請求項15】
前記モジュール(2)が、前記センサと前記プロセッサとを保持するシャーシを含み、前記シャーシは、前記用量設定部材(70)の近位端面における前記少なくとも1つの開口(77)を貫通して延びる少なくとも1つの光パイプ(7)を含む、請求項14に記載の用量記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、薬物送達デバイスを対象とし、薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスに取り付けられる電子モジュールとを含む用量記録システムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスは、正式な医療訓練を受けていない人による定期的な注射が行われるという用途を有する。これは、自己治療によって患者が自身の疾患の効果的な管理を行うことができる糖尿病を患う患者の間でますます一般的になる可能性がある。実際には、そのような薬物送達デバイスによって、ユーザは、多くのユーザ可変の薬剤用量を個々に選択して投薬できる可能性があり、或いは例えばプッシュプル機構で固定用量を投薬するのに、又は用量を選択し、事前に選択された用量を投薬するのに好適である可能性がある。
【0003】
基本的に2つのタイプの薬物送達デバイス、すなわち、再設定可能な(すなわち、再使用可能な)デバイス及び再設定不可能な(すなわち、使い捨て)デバイスがある。例えば、使い捨てペン型送達デバイスは、内蔵デバイスとして供給される。そのような内蔵デバイスは、取り外し可能な充填済みのカートリッジを有しない。むしろ、充填済みのカートリッジは取り外され得ず、デバイス自体を壊すことなくこれらのデバイスから交換され得る。したがって、そのような使い捨てのデバイスは、再設定可能な用量設定機構を有する必要がない。再使用可能なデバイスは、再設定可能な用量設定機構と、再充填可能な薬剤容器、例えば、薬剤が内部に収容されたカートリッジをカートリッジが空になったときに交換するために設けられた着脱可能なカートリッジホルダとを有する必要がある。本発明は、使い捨てデバイス、例えば欧州特許第2890434B1号明細書に開示されているデバイス、及び再使用可能なデバイス、例えば欧州特許第2890435B1号明細書に開示されているデバイスにも等しく適用可能である。また、更なる薬物送達デバイスが、国際公開第2016/055636A1号パンフレット及び欧州特許出願公開第3181170A1号明細書から知られている。
【0004】
そのような薬物送達デバイスに関して、設定されてペンから送達される用量を記録する機能は、メモリの補助として、又は用量履歴の詳細なロギングをサポートするために、多種多様なデバイスユーザにとって有用であり得る。したがって、そのような目的のために電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界においても、ユーザ又は患者にもますます人気が高まっている。例えば、薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスに取り外し可能に機械的に連結された電子モジュールとを含む、用量記録システムが、国際公開第2021/116387号パンフレットから知られている。薬物送達デバイスと用量記録機能との組み合わせも、国際公開第2021/116388A1号パンフレット、国際公開第2019/040313A1号パンフレット、及び国際公開第2021/099432A1号パンフレットに開示されている。
【0005】
例えば、欧州特許第2890434B1号明細書に記載されている、既知の薬物送達デバイスでは、例えば用量設定部材及び用量設定ドラムをハウジングに対して回転させることによって、薬物送達デバイスにより送達される用量を選択するための用量ダイヤル設定動作と、例えば用量設定ドラムを用量設定部材及びハウジングに対して回転させることによって、設定された用量を送達するための用量送達動作とを切り替えるために駆動機構内にクラッチが設けられる。クラッチは、用量設定ドラムの内面に設けられた歯と、用量設定部材のステム上に形成された嵌合する外歯とによって形成される。電子モジュールを用いて、薬物送達デバイスによって送達される用量を検出することは、電子モジュールがその動きを感知できる用量設定ドラムの外部からアクセス可能な機能がないため、この配置では困難である。更に、この配置には、成形型の構造に関するいくつかの制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、薬物送達デバイス及びかかる薬物送達デバイスを含む用量記録システムに関する改良を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、例えば、請求項1において定義された主題によって解決される。有利な実施形態及び改良形態は、従属請求項に準拠する。しかしながら、本開示は、添付の特許請求の範囲において定義された主題に限定されないことに留意すべきである。むしろ、本開示は、以下の説明から明らかになるように、独立請求項において定義された主題に加えて又はその代替として、改良を含み得る。
【0008】
本開示の一態様は、液状薬物の用量を投薬するための薬物送達デバイスに関し、デバイスは、ハウジング、好ましくは、実質的に円形の断面を有するハウジングと、用量設定部材と用量設定ドラムとを備えた用量設定及び駆動機構とを含む。一例では、ハウジングは、液状薬物が充填されたカートリッジを収容し得る。代替として、別個のカートリッジホルダは、ハウジングに恒久的に又は取り外し可能に取り付け可能であり得る。用量設定及び駆動機構は、例えば用量設定部材及び用量設定ドラムをハウジングに対して回転させることによって、薬物送達デバイスにより送達される用量を設定するための用量設定動作と、例えば用量設定ドラムを用量設定部材及びハウジングに対して回転させることによって、設定された用量を送達するための用量送達動作とを実施するように構成される。本開示の一例では、用量設定ドラムは、用量設定部材上の嵌合する1組の歯と係合可能であり且つ1組の歯から係合解除可能である、1組のクラッチ歯を含む。したがって、クラッチ歯及び嵌合歯は、クラッチ歯と嵌合歯との回転を防止するために用量設定又はダイヤル設定動作中に係合され得る一方で、クラッチ歯及び嵌合歯は、用量設定ドラムと用量設定部材との相対回転を可能にする用量送達動作中に係合が解除され得る。本開示の一態様は、用量設定ドラムの外面上のクラッチ歯の配置を対象とする。この点において、ハウジング及び/又は用量設定部材の径方向内側にある用量設定ドラムは、用量設定ドラムの外面から径方向外側に延びるように配置された、例えば用量設定ドラムの一端、例えば近位端又はその近傍に形成された歯のリングとして配置されたクラッチ歯を備えた略管状要素であり得る。本開示の一例では、クラッチ歯は、用量設定ドラムの外面に設けられるが、薬物送達デバイスの内側に位置する。
【0009】
薬物送達デバイスによって送達される用量を設定するための用量設定動作は、用量設定部材をハウジングに対して例えば螺旋経路に沿って回転及び/又は並進させることを含み得る一方で、設定された用量を送達するための用量送達動作は、ピストンロッドを軸線、好ましくはピストンロッドの長手方向中心軸線に沿って軸方向に変位させることを含み得る。任意選択的に、設定された用量を送達するための用量送達動作は、用量設定部材をハウジングに対して移動させること、例えば用量設定部材を軸方向に変位させることを含み得る。好ましくは、用量設定部材は、用量送達動作中にハウジングに対して回転しない。
【0010】
薬物送達デバイスは、液状薬物の可変用量を設定して投薬するのに適しており、ユーザが薬剤の複数のユーザ可変用量を個々に選択して投薬することを可能にし得る。代替として、薬物送達デバイスは、固定用量デバイス、例えば事前に定められた固定用量の投薬のみを許容するプッシュプルデバイスであり得る。更なる代替として、薬物送達デバイスは、1回以上の事前設定された用量、例えば、国際公開第2016/128424号パンフレットに開示されている閾値を上回る又は閾値を下回る用量から選択するのに適している場合がある。したがって、「用量設定」、「用量選択」、及び「用量ダイヤル」という用語は、薬物送達デバイスを特定の動作モードに限定することなく、本明細書で使用される。
【0011】
用量設定ドラムは、用量選択及び/又は用量送達を生じさせずに、現在設定されている用量を表示するだけであり得る。一方、用量設定ドラムは、例えば、用量設定動作及び用量送達動作のうちの少なくとも一方の間にハウジングに対して用量設定部材を一緒に移動させ、例えば回転させ得る。一例では、用量設定ドラムは、用量設定中及び用量送達中に螺旋経路上を回転する。
【0012】
クラッチ歯は、用量設定ドラムの外径から径方向に突出する場合、用量設定部材の内径に形成された嵌合歯と相互作用して、可能な限り大きな直径でトルクを伝達し得る。このことは、クラッチ歯が、例えばダイヤル停止状態において、より小さな直径で形成された場合よりも、頑丈であり、ユーザによって加えられるトルクに対して耐性があることを意味する。また、用量設定ドラムの外径にクラッチ歯を形成することは、最初にクラッチ歯から成形型を外す必要なしにコアピンから螺合解除されるようにねじ山がその部品の内筒面全体にわたって延在することを可能にするので、成形型の構造を簡素化する。
【0013】
薬物送達デバイスでは、クラッチ歯は、用量設定ドラムの実質的に円筒状の外面から径方向外側に突出し得る。例えば、クラッチ歯の外側リングは、用量設定ドラムの近位端を見たときにクラッチ歯が視認可能であるように、用量設定ドラム上に設けられ得る。用量設定ドラムは、好ましくは、円筒状の主形状を有する管状構成部品である。しかしながら、用量設定ドラムには、1つ以上のクリッカアーム、軸方向及び/若しくは周方向に延びる溝、リブ、並びに/又は歯が設けられることがあり、結果として、用量設定ドラムは、実質的に円筒状であるにすぎない。
【0014】
本開示の一例によれば、クラッチ歯は、用量設定ドラムの周囲に等間隔で配置される。より詳細には、用量設定ドラム上に形成されたクラッチ歯の数は、これらのクラッチ歯が用量設定部材の嵌合歯と係合可能である回転位置の数の整数部分であり得る。例えば、用量設定ドラム上に形成されたクラッチ歯の数は、これらのクラッチ歯が用量設定部材の嵌合歯と係合可能である回転位置の数の半分に等しい場合がある。
【0015】
より少ない数の幅広のクラッチ歯、例えば24個の一幅歯ではなく、12個の「二幅」歯は、用量設定ドラムから用量設定部材にトルクを伝達するより強力な手段を提供する。この構成では、用量設定部材は依然として一幅歯を有する必要があるが、この部品では、材料選択を制限する様々な機能を果たす、例えば、印刷可能である及び/又は光学エンコーダ用に反射性であるように低い摩擦係数を有することが望ましい場合がある、用量設定ドラムと比較して材料選択の自由度が高くなる。更に、より少ない数の幅広のクラッチ歯は、電子モジュールの光学エンコーダのためのはるかにより良好なターゲットを提供するが、これは、個々の反射性/非反射性領域が、より幅広であり、したがってより良好な光学信号応答を提供し、また用量設定ドラムが用量設定部材に対して回転するときの角度公差変動(相対過大又は過小移動)に対してより柔軟であることが理由である。
【0016】
好ましくは、薬物送達デバイス、例えばペン型注射器は、送達される用量のサイズに関する情報を取得するように構成された取り付け可能な電子モジュールと共に用いられるのに適している。モジュールは、薬物送達デバイスから着脱可能であり得、及び/又は薬物送達デバイスへの取り付け後に固定され得る。
【0017】
薬物送達デバイスによって送達される用量の量を検出する電子モジュールと共に用いられるように、用量設定ドラムは、用量設定部材に対する用量設定ドラムの回転運動を検出するための、用量設定ドラムの近位端に円形パターンで形成された、好ましくは等間隔で配置されたエンコーダ機能部のアレイを含み得る。更に、用量設定部材は、用量設定ドラムのエンコーダ機能部のアレイの少なくとも一部と一致する、すなわち重なる近位端面に位置する少なくとも1つの開口を有し得る。本開示によれば、エンコーダ機能部の1回転(360°)中に、各エンコーダ機能部が開口を1回通過する場合、開口とエンコーダ機能部とが一致する。近位端面に開口が設けられている場合、エンコーダ機能部は、近位方向を向いていることが好ましい。例えば、2つの開口が、用量設定部材の近位端面における、例えば180°正反対の位置に形成される。少なくとも1つの開口が用量設定ドラムのエンコーダ機能部の1つ、又はより好ましくは少なくとも2つにわたって広がる場合、用量設定部材に対する用量設定ドラムの回転の検出が容易になる。少なくとも1つの開口は、用量設定部材の近位端面に形成された溝の遠位端に位置し得る。例えば、2つの同心溝は、用量設定部材の近位端面に形成され得る。少なくとも1つの開口は外側溝の近位端に位置することが好ましく、その一方で、内側溝は機械コーディングを構成し得る。
【0018】
本開示の一態様によれば、用量設定ドラムの近位端に設けられたクラッチ歯は、エンコーダ機能部の追加機能を有し得る。換言すれば、相対回転運動は、送達される用量のサイズを決定するために電子モジュールのセンサによって検出可能である。しかしながら、本開示は、エンコーダ機能部がクラッチ歯であることに限定されるものではない。むしろ、エンコーダ機能部は、光学エンコーダシステムの単なるフラグとすることができる。
【0019】
用量設定部材には、別個の着脱可能なモジュール、例えば電子モジュールを薬物送達デバイスに取り外し可能に装着するための取り付け機能部が設けられ得る。より詳細には、用量設定部材には、用量設定部材の近位端面内に延びる少なくとも1つの例えば略円形溝が設けられ、取り付け機能部がその溝内に又は溝に隣接して設けられ得る。用量設定部材には、2つの同心溝が設けられ得る。一例では、取り付け機能部は、用量設定部材に設けられた少なくとも1つの、例えば互いに反対側に位置する2つの、径方向開口を含み得る。開口は、溝から、例えば2つの同心溝の外側溝から径方向外側を向いて設けられ得る。
【0020】
一例では、用量設定部材の最大外径は、ハウジングの外径よりも小さい。より詳細には、用量設定部材の最大外径は、用量設定部材に隣接して位置するハウジングの領域の内径以下であり得る。
【0021】
本開示の別の態様によれば、用量設定部材は、単一の構成要素として機能するように互いに恒久的に固定された2つの別個の構成要素を含み得る。このことは、製造及び/又は組み立て上の理由から好ましい場合がある。一例では、用量設定部材は、管状スリーブであって、径方向内側に延びるクラッチ歯のリング、径方向内側に延びる傾斜歯のリング、把持面としてのプロファイル、及び/又は遠位方向に延びる止め歯のリングを備えた管状スリーブを含み得る。加えて又は代替として、用量設定部材は、近位端面と、端面から遠位方向に延びるステムとを有するボタンを含み得、ステムは、軸方向に延びる少なくとも1つのスプラインを含む。用量設定部材のこれらの例示的なインターフェースは、薬物送達デバイスによって送達される用量を選択するための用量設定動作と、設定された用量を送達するための用量送達動作とを容易にし、薬物送達デバイスの用量設定モードと用量送達モードとの切り替えを容易にし得る。
【0022】
電子モジュールは、1組の光学IRエミッタ/検出器を使用して、薬物送達デバイス、例えば可変用量ペンから送達される用量を符号化し得る。ペンが、モジュールセンサの正しい性能を妨げ得る野外で使用される場合、例えば、高周囲光レベルからの迷IR放射のレベルを低減するために、ペンのダイヤル設定部材の構成要素は、反射したIR放射のレベルを低減/抑制することが意図される特徴を有し得る。特に、モジュール構成要素及び/又は用量設定部材は、IR吸収マスターバッチを含み得、及び/又はスパークエロージョンテクスチャ表面仕上げを有し得る。
【0023】
本開示による用量記録システムは、上に記載した薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスの用量設定部材への取り外し可能な取り付けのための電子モジュールとを含み得る。例えば、モジュールは、センサと、少なくとも1つのセンサの動作を制御して少なくとも1つのセンサからの信号を処理及び/又は記憶するように構成されたプロセッサと、モジュールを用量設定部材に取り外し可能に又は固定して取り付けるための取り付け機能部とを含み得る。モジュールは、用量設定部材の近位端を受け入れるためのキャップを含み得る。
【0024】
本開示の別の態様によれば、モジュールのセンサは、前記用量設定部材の近位端面における少なくとも1つの開口と一致して、すなわち重なって位置することができる少なくとも1組の光学IRエミッタ/検出器を含む。より詳細には、モジュールは、センサとプロセッサとを保持するシャーシを含み得、シャーシは、用量設定部材の近位端面における少なくとも1つの開口を貫通して延びる少なくとも1つの光パイプを含む。これによって、エンコーダ機能部から間隔をおいて位置する光学センサユニットを使用して、送達された用量の非常に信頼性が高く且つ正確な検出がもたらされる。シャーシは、国際公開第2021/214275号パンフレットに開示されている特徴を含み得る。
【0025】
用量設定部材の最大外径は、キャップの内径以下であり、それより、モジュールを用量設定部材上に取り付けることを許容し得る。モジュールの最大外径は、ハウジングの外径に等しい、それと同様である、又はそれよりも僅かに大きい、例えばハウジングの外径を約0mm~約5mmだけ上回る場合がある。この構成は、用量が送達されるときに用量設定部材が回転しなければならない場合でも、用量送達動作を妨げない。加えて、モジュールが誤って外れる又は損傷するリスクが最小限に抑えられ、用量設定部材の非常に大きな直径に起因して誤って過剰なトルクを加えることが防止される。
【0026】
用量記録システムの電子モジュールが薬物送達デバイスへの取り外し可能な取り付けのための再使用可能なモジュールである場合、モジュールは、中心軸線を有する外側キャップと、キャップ内に少なくとも部分的に保持されるシャーシと、メモリ及びプロセッサを含むPCB又はPCBAとを含み得る。例えば、PCBA及び電源は、キャップ及びシャーシ内に保持され得る。更に、光源及び光学センサは、第1の光源及び第1の光学センサが第2の光源及び第2の光学センサから角度的にオフセットされた状態で、中心軸線を中心とする円形領域に配置される。加えて、光導体が、シャーシ内に設けられ、モジュールの状態又は動作モードに関する情報を表示するために内部光源からモジュールの外面に光を案内し得る。
【0027】
モジュールは、モジュールを薬物送達デバイスの近位端に、例えば、用量設定部材に、ボタンに、又は用量設定部材に装着するための取り付け機能部を含み得る。例えば、取り付け機能部は、モジュールをダイヤル設定部材に軸方向に及び回転方向に固定するための少なくとも1つの可撓性クリップを含み得る。少なくとも1つの可撓性クリップは、キャップ内に受け入れられ得、センサ及びプロセッサを保持するシャーシから実質的に遠位方向に延び得る。
【0028】
本開示の更なる態様によれば、用量設定部材は、機械コーディングを含み得、モジュールは、モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたときに機械コーディングと係合する機械カウンタコーディングを含み得る。これによって、非一致モジュールを薬物送達デバイスに取り付けることが防止され得る。加えて、トルクは、機械コーディング及び機械カウンタコーディングを介してモジュールから用量設定部材に伝達され得る。
【0029】
用量記録システムの電子モジュールは、薬物送達デバイスから送達される用量を記録するのに適した薬物送達デバイスと共に用いられる電子システムを含み得る。電子システムは、電源、例えば、コインセル型バッテリのようなバッテリと、データを記憶するためのメモリと、電子システムの動作を制御するように構成され、電源及びメモリに連結されたプロセッサとを含み得る。加えて、電子システムは、少なくとも1つ、好ましくは2つの光学センサユニット、例えば、プロセッサと通信する、対応する第1の光学センサを備えた第1の光源、及び対応する第2の光学センサを備えた第2の光源を含み得る。光学センサは、薬物送達デバイスのエンコーダ、特に、例えば用量スリーブの反射率の異なるセグメントの動きを検出するのに適している場合があり、その動きは、薬物送達デバイスからダイヤル設定される(すなわち選択される)及び/又は送達される用量を示す。光学センサユニットを実装するのに適したいくつかの異なる方法がある。例えば、光学センサユニットは、電磁放射エミッタ、例えば、IR-LEDのようなLED、例えばNIR-LEDと、放射検出器とを含む、放射検出器を含み得る。
【0030】
一例では、エンコーダ及び光学センサユニットは直角位相配置にあり、すなわち位相が4分の1波長ずれており、これは、両方の光源が光を同時に発した場合、投薬される単位ごとに1つのセンサのみが状態を変化させることを意味する。例えば、これは、2つの光学センサをn*30°+15°だけ周方向にオフセットして設けることによって達成され、nは整数である。エンコーダとセンサユニットとを互いに対して移動させるので、以前に光を受信した光学センサのうちの1つは、ここで、発せられた光を受信せず、その逆も然りである。これは、光を選択的に反射するエンコーダによって達成され得る。例えば、歯のリングは、歯が光を反射する一方で、隣り合う歯の間の自由空間が光を反射しないか、又は歯よりも光を反射しないように設けられ得る。代替として、光を反射する領域と光を吸収する領域とが交互に設けられ得る。更なる代替として、エンコーダは、光を選択的に遮断し得る。他の例では、エンコーダ及び光学センサユニットは、逆位相配置にあり得る。なお更なる代替案では、エンコーダ及び光学センサユニットは、逆位相配置にはなく、その結果として、両方の光源が光を同時に発する場合、エンコーダの相対位置に応じて、どの光センサも光を検出しないか、又は1つのみ若しくは全ての光センサが光を検出する。エンコーダは、国際公開第2019/101962号パンフレットに記載されているように動作し得る。
【0031】
用量記録システムの電子モジュールは、注射デバイス用の再使用可能なクリップ式モジュールとして構成され得る。代替として、電子システムは、注射デバイスに組み込まれた(内蔵された)ユニット又はモジュールであり得る。電子システム及び(電子)モジュールという用語は、以下では両方の代替案に対して使用される。用量を記録する機能は、メモリの補助として、又は用量履歴の詳細なロギングをサポートするために、多種多様なデバイスユーザにとって有用であり得る。電子システム、例えば電子モジュールは、用量履歴をシステムから定期的にダウンロードできるようにするために、携帯電話又は類似のものに接続可能であるように構成することができることが想定される。
【0032】
電子用量記録システムは、別のデバイスと通信するための通信ユニットを更に含み得る。好ましくは、用量記録システムの電子モジュールは、より低いエネルギー消費をもたらす第1の状態からより高いエネルギー消費をもたらす第2の状態に電子モジュールが切り替えられ得るように構成され、それにより、別のデバイスとの前記通信、例えば同期又はペアリング動作を確立するように通信ユニットを誘導する。電子制御ユニットは、このユニットのスイッチを入れるために又はこのユニットを動作可能にするために、電子用量記録システムの別のユニットにコマンド、例えば信号を発し得る。このユニットは、別のデバイスと通信するための通信ユニット、例えば、Wi-Fi若しくはBluetoothなどの無線ネットワークを介して他のデバイスと通信するための無線通信インターフェース、又は更には、ユニバーサルシリーズバス(USB)、ミニUSB、若しくはマイクロUSBコネクタを受けるためのソケットなどの、有線通信リンクのためのインターフェースであり得る。好ましくは、電子用量記録システムは、通信ユニットとしてRF、Wi-Fi、及び/又はBluetoothユニットを含む。通信ユニットは、用量記録システム又は薬物送達デバイスと、他の電子デバイス、例えば携帯電話、パソコン、ラップトップなどの、外部との通信インターフェースとして提供され得る。例えば、用量データは、通信ユニットによって外部デバイスに送信され得る。用量データは、外部デバイスにおいて確立された用量ログ又は用量履歴のために使用され得る。
【0033】
本開示のなお更なる態様によれば、電子用量記録システムは、光源を作動させない(電源から電力が供給されない)スリープ状態を更に有する。電子用量記録システムは、少なくとも1つのスイッチ及び/又は電子システムの動きを検出するのに適した運動センサを更に含み得る。この例では、プロセッサは、少なくとも1つの運動センサによってスイッチの作動又は動きが検出されない場合にはスリープ状態を維持し、少なくとも1つの運動センサによってスイッチの作動又は動きが検出された場合には第1の低消費電力状態又は少なくとも1つの更なる状態に切り替わるように構成され得る。概して、スリープ状態又はモードは、モジュールの全ての機能が最小限の又は実質的にゼロの電力消費であるが、電子システム(又は薬物送達デバイス)がスリープモードから解除された場合にシステムの起動を必要としないモードであり得る。
【0034】
本開示は更に、上に記載した電子システムを備えた薬物送達デバイスに関し、この薬物送達デバイスは、薬剤を収容するカートリッジを含む。
【0035】
「薬物」又は「薬剤」という用語は、本明細書において同義に使用され、1つ以上の活性医薬成分又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び任意選択的に薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を表す。医薬品有効成分(「API」)とは、広義には、ヒト又は動物に対して生物学的効果を有する化学構造のことである。薬理学では、薬物又は薬剤は、疾患の治療、治癒、予防、若しくは診断に使用され、又はそれとは別に、身体的若しくは精神的な健康を増進するために使用される。薬物又は薬剤は、限られた持続時間にわたって、又は慢性疾患に対して定期的に使用され得る。
【0036】
後述するように、薬物又は薬剤は、1つ以上の疾患の治療のために、少なくとも1つのAPI、又はそれらの組み合わせを、様々なタイプの製剤中に含むことができる。APIの例としては、分子量500Da以下の低分子、ポリペプチド、ペプチド、及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物及び多糖類、並びに核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、並びにオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、リポソームなどの分子送達システムに組み込まれ得る。1つ以上の薬物の混合物もまた、企図されている。
【0037】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスと共に用いられるように適合された一次パッケージ又は「薬剤容器」に収容され得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、又は1つ以上の薬物の貯蔵(例えば、短期若しくは長期の貯蔵)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体若しくは可撓性容器であり得る。例えば、ある場合には、チャンバは、少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)薬物を貯蔵するように設計され得る。ある場合には、チャンバは、約1ヶ月~約2年間、薬物を貯蔵するように設計され得る。貯蔵は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(例えば、API及び希釈剤、又は2つの異なる薬物)を各チャンバ内に1つずつ別個に貯蔵するように構成された二重チャンバカートリッジであり得るか、又はそれを含み得る。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内に投薬する前及び/又はその間に、2つ以上の成分間の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、(例えば、2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通するように構成され、投薬前にユーザが所望する場合に2つの成分を混合することを可能にし得る。代替的又は追加的に、2つのチャンバは、成分がヒト又は動物の体内に投薬される際に混合を可能にするように構成され得る。
【0038】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防に使用することができる。障害の例としては、例えば、糖尿病又は糖尿病網膜症などの糖尿病に関連する合併症、深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症障害が挙げられる。障害の更なる例は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症、及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014、例えば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)又は86(オンコロジー薬剤)、及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0039】
1型若しくは2型糖尿病又は1型若しくは2型糖尿病に伴う合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬、又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/又は交換により並びに/或いは少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の天然に存在する残基又は純合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも称される。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、例えば1つ以上の有機置換基(例えば脂肪酸)がアミノ酸の1つ又は複数に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択的に、天然に存在するペプチドに存在する1つ以上のアミノ酸が欠失し、且つ/又は非コード可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置き換えられるか若しくは天然に存在するペプチドに非コード可能であるものを含めてアミノ酸が付加される。
【0040】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン、;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0041】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0042】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenがある。
【0043】
オリゴヌクレオチドの例としては、例えば:家族性高コレステロール血症の治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療用のRG012がある。
【0044】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0045】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン及びゴセレリンなどの脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストがある。
【0046】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリン若しくはそれらの誘導体又は上記多糖類の硫酸化形態、例えばポリ硫酸化形態及び/又は製薬上許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの製薬上許容される塩の例には、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0047】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えばマウス)抗体、又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか、又は結合能がない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支援しないアイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であり得、例えば抗体は、突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0048】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、そうした切断フラグメントに限定されない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、本技術分野において既知である。
【0049】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、且つ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、本技術分野で既知であるように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、又はCDR内の1つ若しくは複数のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0050】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0051】
本明細書に記載するいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物又は薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0052】
本発明の完全な範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素の修正(追加及び/又は削除)が行われてもよく、本発明が、そのような修正形態及びそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されるであろう。
【0053】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO 11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されているような針ベースの注射システムが含まれ得る。ISO 11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数回用量容器システム及び単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大別され得る。容器は、交換可能な容器又は一体化された交換不可能な容器であり得る。
【0054】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、多回用量容器システムは、交換可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回の用量を保持し、そのサイズは、一定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。別の複数回用量容器システムは、一体化された交換不可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回の用量を保持し、そのサイズは、一定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。
【0055】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送達可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一の用量を保持し、これにより、送達可能な容量の一部が排出される(部分排出)。ISO 11608-1:2014(E)にもまた記載されているように、単回用量容器システムは、一体化された交換不可能な容器を備えた針ベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送達可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一の用量を保持し、これにより、送達可能な容量の一部が排出される(部分排出)。
【0056】
本明細書で用いられる「軸方向」、「径方向」、又は「周方向」という用語は、デバイス、カートリッジ、ハウジング、又はカートリッジホルダの主長手方向軸線、例えば、カートリッジ、カートリッジホルダ、又は薬物送達デバイスの近位端及び遠位端を通って延びる軸線に対して使用され得る。
【0057】
ここで、本開示の非限定的で例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】薬物送達デバイスの実施形態を斜視図で示す。
図2図1のデバイスの構成部品を示す。
図3a】電子モジュールと共に図1の装置の断面図を示す。
図3b】取り付けられた電子モジュールと共に図1のデバイスの断面図を示す。
図4図1のデバイスの用量設定部材のボタンの近位端の図を示す。
図5図1のデバイスの近位端の図を示す。
図6図1のデバイスの近位端の断面図を示す。
図7図1のデバイスの用量設定ドラムを拡大詳細図で示す。
図8図1のデバイスのハウジングを示す。
図9図1のデバイスの用量設定部材スリーブを示す。
図10図9の用量設定部材スリーブの近位端を示す。
図11図9の用量設定部材スリーブを備えた図7の用量設定ドラムの近位端を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図面では、同一の要素、同一に作用する要素、又は同じ種類の要素には、同一の参照数字が提供され得る。
【0060】
以下では、いくつかの実施形態について、インスリン注射デバイスを参照して説明する。しかしながら、本開示は、そうした用途に限定されず、他の薬剤を排出するように構成された注射デバイス又は一般に薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイス及び/若しくは注射デバイスと共に等しく良好に配置され得る。
【0061】
実施形態は、注射デバイス、可変用量注射デバイスとの関連で提供され、これらの注射デバイスは、これにより送達される用量に関するデータを記録及び/又は追跡する。これらのデータは、選択された用量のサイズ及び/又は実際に送達された用量のサイズ、投与の日時、投与期間などを含み得る。本明細書に記載する特徴は、感知要素の配置及び電力管理技法を(例えば、小型バッテリを容易にするために及び/又は効率的な電力使用を可能にするために)含む。
【0062】
図に示す薬物送達デバイス1は、主な機能及び動作モードに関して参照される、欧州特許第2890434B1号明細書に開示されている使い捨て注射ペンと同じ一般的な動作原理に基づいている。しかしながら、図に示す実施形態は、以下に更に詳細に記載するように、いくつかの態様において改良され、着脱可能な電子モジュール2と共に用いられるように適合される。かかるモジュールの非限定的な例は、電子モジュールの主な機能及び動作モードに関して参照される、国際公開第2021/116387号パンフレット及びPCT/EP2021/060631号明細書に開示されている。
【0063】
欧州特許第2890434B1号明細書に開示されているものと同様の使い捨て注射ペンに関連して説明してきたが、本開示は、限定されるものではないが、
国際公開第2004/078239号パンフレット、国際公開第2014/033195号パンフレット、国際公開第2009/132777号パンフレット、国際公開第2005/018721号パンフレット、
米国特許第5,693,027号明細書、米国特許第6,663,602号明細書、又は米国特許第7,241,278号明細書のうちの1つに開示されている注射デバイスを含む、他の使い捨て又は再使用可能な薬物送達デバイスにも適用できる。
【0064】
換言すれば、本明細書では、「遠位」は、薬物送達デバイス若しくはその構成要素の吐出端の方を向く若しくは指すように配置されており又は配置されることになり、及び/又は近位端から離れる方を指し、近位端から離れる方を向くように配置されることになり、若しくは近位端から離れる方を向く、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。一方、「近位」は、本明細書では、薬物送達デバイス又はその構成要素の投薬端から及び/又は遠位端から離れる方を向く又は指すように配置されている又は配置されることになる、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。遠位端は、投薬端に最も近く及び/又は近位端から最も遠い端部であり得、近位端は、投薬端から最も遠い端部であり得る。近位面は、遠位端から離れる方を向いており及び/又は近位端の方を向いている可能性がある。遠位面は、遠位端の方を向いており及び/又は近位端から離れる方を向いている可能性がある。投薬端は、例えば、針ユニットがデバイスに取り付けられているか又は取り付けられることになる針端部であり得る。
【0065】
図1及び図2は、外側ハウジング10と、内側ハウジングインサート20と、ピストンロッド30と、駆動スリーブ40と、ナット50と、用量設定ドラム60と、用量設定部材70と、カートリッジ80と、キャップ90とを含む、薬剤送達デバイス又は薬物送達デバイス1を示す。針ハブと、例えば針カバーとを含む針配置(図示せず)は、追加の構成要素として提供される。
【0066】
外側ハウジング10は、カートリッジ80を受け入れるためのカートリッジホルダ11を形成し、針ハブを取り付けるためのねじ山12などが設けられる、遠位部と、用量設定及び駆動機構の構成部品を収容する、近位部とを有する略管状要素である。好ましい実施形態では、外側ハウジング10は透明であり、任意選択的に、近位部には不透明層が設けられる。ハウジング10は、透明な窓13を含む。図8には、ハウジング10の内面に形成された一連の対向止め歯14が視認可能である、ハウジング10の断面図が示されている。
【0067】
内側ハウジングインサート20は、異なる直径領域を有する略管状構成を備えた内側本体である。内側ハウジングインサート20は、ハウジング10の近位部に受け入れられ、ハウジング10に対する内側ハウジングインサート20のいかなる相対運動も防止するために、ハウジング10内に恒久的に固定される。内側ハウジングインサート20の外面には雄ねじ21が設けられる。更に、内側ハウジングインサート20の内面にはスプラインが設けられ、内側ハウジングインサート20の遠位端には雌ねじが設けられる。
【0068】
ピストンロッド30は、好ましくは反対側の互いに重なり合う、リードの異なる2つの雄ねじを有する細長い要素である。これらのねじ山のうちの1つは、内側ハウジングインサート20の雌ねじに係合する。軸受31とピストンロッド30との相対回転を可能にするために、ピストンロッド30の先端に円板状軸受31が取り付けられ得る。代替として、軸受は、所定の破断点を介して一個片の構成要素としてピストンロッド30に取り付けられ得る。
【0069】
駆動スリーブ40は、異なる直径領域を有する略管状要素である。駆動スリーブ40の遠位領域は、雄ねじ41を有する。駆動スリーブ40の内面は、ピストンロッド30の雄ねじの1つに係合する雌ねじを有する。駆動スリーブ40は、ピストンロッド30を取り囲み、内側ハウジングインサート20内に少なくとも部分的に位置する。駆動スリーブ40は、駆動スリーブ40のスカートにおけるU字状開口部によって形成された可撓性クリッカアームを更に有する。クリッカアームは、内側ハウジングインサート20の内部スプラインに係合し、駆動スリーブ40と内側ハウジングインサート20との相対回転中に径方向内側に曲がることができる。この径方向の撓みは、クリッカアームが用量設定部材70におけるポケットと一直線になっている限り許容されるが、クリッカアームが用量設定部材70におけるポケットと一直線になっていない場合は阻止され、これにより、駆動スリーブ40と内側ハウジングインサート20との相対回転が防止され得る。駆動スリーブ40は、その近位端において、用量設定部材70に当接して、駆動スリーブ40を用量設定部材70に対して遠位方向に付勢するばねアームを含み得る。駆動スリーブ40の内面には、用量設定部材70のいかなる回転も駆動スリーブ40に伝達されるように、用量設定部材70上のスプラインに恒久的に係合する、軸方向に延びる少なくとも1つの溝が設けられる。
【0070】
ナット50は、内側ハウジングインサート20と駆動スリーブ40との間に設けられる。ナット50の外部リブは、内側ハウジングインサート20の内部スプラインに係合する。ナット50の雌ねじは、駆動スリーブ40の雄ねじ41に係合する。代替として、ナット50と駆動スリーブ40との間の境界面にスプライン及びリブを設けることができ、ナット50と内側ハウジングインサート20との間の境界面にねじ山を設けることができる。更なる代替として、ナット50は、例えばハーフナットとして設計され得る。更に、少なくとも1つ、例えば、4つの、回転硬質停止部が、ねじ山41の近位端における駆動スリーブ40上の対応する停止部との相互作用のために、ナット50上に設けられる。
【0071】
用量設定ドラム60は、内側ハウジングインサート20の雄ねじ21に係合する雌ねじを備えた略管状要素である。したがって、用量設定ドラム60は、内側ハウジングインサート20とハウジング10との間に介在する。一連の番号が、表示部材を形成する用量設定ドラム60の外面に提供される、例えば印刷される。数字は、1つの数字のみ、又は数個の数字のみがハウジング10の窓13から視認可能であるように、螺旋ライン上に配置される。以下により詳細に説明するように、用量設定ドラム60には、用量設定部材70の対応するクラッチ歯73に係合するように、用量設定ドラム60の近位端の近傍にクラッチ歯61のリングが設けられる(図7)。更に、任意選択のクリッカアーム62は、用量設定部材70のラチェットプロファイル74に係合するように、例えば用量設定ドラム60の遠位端の近傍に設けられ得る。
【0072】
用量設定部材70は、単一の構成要素として機能するように互いに恒久的に固定された2つの別個の構成要素、すなわち、管状スリーブ71(図9)及びボタン72を含む。用量設定部材70の管状スリーブ71は、その近位端の近傍に、クラッチ歯73の内部リング、ラチェットプロファイル74を形成する傾斜した歯の内部リングを、及びその遠位端に、ハウジング10の対向止め歯14に係合するための止め歯75を含む。ボタン72は、近位端面と、この端面から遠位方向に延びるステムとを含む。図4に示すように、2つの径方向開口76と2つの軸方向開口77は両方とも、用量設定部材70のボタン72の端面に形成された内側溝79に対して同心状に配置された外側溝78に形成される。駆動スリーブ40のクリッカアームが曲がり得、駆動スリーブ40に形成されたそれぞれの溝に恒久的に係合する、軸方向に延びる少なくとも1つのスプラインを含む、ポケットが、ボタン72のステムに設けられる。
【0073】
図3a及び図6に示すように、用量設定部材70の管状スリーブ71には、用量設定部材70の把持及び回転を容易にする、異形の近位領域が設けられ得る。用量設定部材70、特に管状スリーブ71の最大外径は、ハウジング10の外径よりも小さい。より詳細には、用量設定部材70の最大外径は、用量設定部材70に隣接して位置するハウジング10の領域の内径よりも小さい。
【0074】
カートリッジ80は、典型的にはガラス製であり得る、充填済みのくびれたカートリッジリザーバを含む。ゴムタイプの栓又はストッパは、カートリッジリザーバの近位端に位置し、穿刺可能なゴムシールは、他方の端部、遠位端に位置する。ゴム製シールを所定の位置で保持するために、圧着された環状金属バンドが使用される。カートリッジ80は、ピストンロッド30の軸受31が栓に当接した状態でカートリッジホルダ11内に設けられる。
【0075】
図1は、キャップ90のないデバイス1を示す。キャップ90は、デバイス1の遠位端に取り付けられ、これにより、カートリッジホルダ11を覆い得る。キャップ90は、ハウジング10上に取り外し可能にスナップ嵌めされる可能性があり、デバイス1の使用のために取り外すことができる。
【0076】
電子モジュール2は、薬物送達デバイス1の近位端に、例えば用量設定部材70に取り外し可能に取り付けられ又は固定され、それにより、用量記録システムを形成し得る。モジュール2は、プロセッサを伴うPCBA 4とバッテリ5とを保持するカップ状の外キャップ3を含み得る。モジュール2は、プロセッサに接続されたセンサ装置であって、用量設定動作及び/又は用量送達動作を示す測定データを生成するように動作可能なセンサ装置を更に含む。この目的のために、センサ装置は、光学センサを一緒になって形成する少なくとも1つのLED及び1つ以上の光検出器を含む。代替的なセンサタイプは、LED及び光検出器に加えて又はそれらの代替として実装することができる。このような代替的なセンサタイプは、限定されるものではないが、光学センサ、音響センサ、容量センサ、電気スイッチを含み得る。PCBA 4は、例えば、プロセッサに接続されて別の(外部)デバイス、例えばスマートフォンとの通信を確立するように動作可能な無線Bluetooth(登録商標)通信インターフェースを含む通信ユニットを更に含み得るか又は通信ユニットに接続され得る。通信ユニットは、データ、例えば測定データを前記他のデバイスに送信するように動作可能である。なお更に、電子ユーザフィードバック生成器は、プロセッサに接続され、フィードバック信号をユーザに生成するように動作可能であり得る。例示的な配置では、電子ユーザフィードバック生成器は、光学フィードバック信号を生成するためのLEDを含む。LEDに加えて又はその代替として、電子ユーザフィードバック生成器は、発音器及び/又は振動モータを含み得る。
【0077】
モジュール2は、キャップ3とスナップ嵌め係合するシャーシを更に含み、それにより、キャップとシャーシとを軸方向及び回転方向に拘束する。シャーシは、透明又は半透明であり、ポリカーボネートなどから作製され得る。シャーシは、PCBユニット4を受け入れる。更に、シャーシは、滑らかな側壁と、センサ側端及びエンコーダ側端を形成する散乱性端面とを備えた、シャーシの軸方向に延びる突起である2つの光パイプ6を含む。換言すれば、光は、正反対のセンサ側端及びエンコーダ側端において光パイプに入るか又はそれらから出ることがあるが、側壁によって案内(反射)される。一例では、光パイプ6は、互いに対して回転方向に45°オフセットされ得る。光パイプ6は、モジュール2が薬物送達デバイス1に取り付けられたときに、ボタン72における開口77の1つに嵌合するように又は開口77の1つを貫通して延びるように配置される。この目的のために、シャーシは、ボタン72における径方向開口76に係合するように回転方向に例えば180°オフセットされた2つの可撓性クリップ7の形態の取り付け機能部を更に含む。
【0078】
薬物送達デバイスの用量設定及び駆動機構は、薬物送達デバイスによって送達される用量を選択するための用量設定又はダイヤル設定動作と、設定された用量を送達するための用量送達動作とを実施するように構成される。
【0079】
用量設定動作中に、用量設定ドラム60のクラッチ歯61は、用量設定部材70のクラッチ歯73に係合する。したがって、用量設定ドラム60、用量設定部材70、及び駆動スリーブ40(用量設定部材70にスプライン結合される)は、回転可能に連結される。ユーザは、用量設定ドラム60のねじ山を案内する内側ハウジングインサート20のねじ山21によって画定された螺旋経路に沿って、用量設定ドラム60、用量設定部材70、及び駆動スリーブ40がハウジング10の外に巻き上げられるように、用量設定部材70の管状スリーブ71を回転させることによって用量を設定し得る。ピストンロッド30と駆動スリーブ40との間のねじ付き境界面のピッチは、内側ハウジングインサート20と用量設定ドラム60との間のねじ付き境界面のピッチに対応し、その結果、ピストンロッド30は、内側ハウジングインサート20とのそのねじ付き境界面によって保持されて静止したままである。選択された用量の量は、ハウジング10における窓13を通して視認可能である。ハウジングに対する用量設定ドラム60、用量設定部材70、及び駆動スリーブ40のこのような回転中に、駆動スリーブ40の可撓性クリッカアームは、内側ハウジングインサート20の内部軸方向スプラインの上にスナップ嵌めし、それにより、個別の回転位置を画定する。図示の例示的な実施形態では、用量設定部材の1回転は、24回の用量増分に対応する。例えば、注射デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成される場合、投与量増分は、いわゆる国際単位(IU)で表示され得、1IUは、約45.5マイクログラム(1/22mg)の純結晶インスリンと生物学的に均等である。
【0080】
例えば、80単位の最大設定可能用量では、停止機能部は、更なる設定又はダイヤル設定を防止するために係合し得る。更に、用量設定中に、駆動スリーブ40は、内側ハウジングインサート20に対して回転し、その結果、軸方向に延びるリブ及びスプラインを介して内側ハウジングインサート20に回転方向に固定されたナット50が駆動スリーブ40のねじ山41上を移動する。最終用量ナット50は、投薬単位の数を数える機能を提供する。ナット50は、寿命の終わりにデバイス1をロックし、そのようなものとして、それ以上の薬物を、ユーザがダイヤル設定又は投薬することができない。設定中の、例えばダイヤル設定中の駆動スリーブ40の回転によって、ナット50がねじ山41に沿って前進する。ナット50は、常に内側ハウジングインサート20内を軸方向に自由に摺動し、これによりナット50の前進を可能にする。寿命の終わりの状態では、最終用量ナット50の停止機能部は、駆動スリーブ40上の対応する機能部に接触する。内側ハウジングインサート20とのスプライン結合接触は、これらの停止機能部47によって伝達されるいかなるトルクにも反応する。
【0081】
所望の用量がダイヤル設定された状態で、デバイス1は、用量投薬の準備が整う。これには基本的に用量設定部材70を押圧することが必要となり、押圧することによって、クラッチ歯61、73の係合が解除される。上述のように、用量を設定又はダイヤル設定するときに、用量設定部材70は、駆動スリーブ40の可撓性アームによって「付勢され」、駆動スリーブ40、用量設定部材70、及び用量設定ドラム60を共に回転方向にロックするクラッチ歯61、73が係合される。用量設定部材70を押圧すると、クラッチ歯61、73の係合が解除され、用量設定ドラム60と用量設定部材70との相対回転が可能となる。あらゆる状態において、駆動スリーブ40及び用量設定部材70は、回転方向にロックされたままである。したがって、クラッチの係合が解除された(用量設定部材70が押圧された)状態で、用量設定部材70及び駆動スリーブ40は、互いに回転方向にロックされる一方で、用量設定部材70、駆動スリーブ40、及び用量設定ドラム60は、依然として軸方向に連結される。同時に、駆動スリーブ40に対する用量設定部材70の軸方向相対運動は、ステム上のポケットが可撓性クリッカアームに対してシフトされることを結果としてもたらす。したがって、可撓性クリッカアームが内側に曲がることが防止される。ロックアウトのこのような作動によって、用量設定部材70が押圧された場合に可撓性クリッカアームが内側ハウジングインサート20のスプラインを克服することが防止される。この状態において、駆動スリーブ40及び用量設定部材70は、内側ハウジングインサート20に対して回転方向に拘束され、したがって、ハウジング10に対するいかなる回転も防止する。
【0082】
所望の用量がダイヤル設定された状態で、用量設定部材70は、押し下げることができ、ピストンロッド30は、カートリッジから薬物を投薬するために前方に駆動される。ピストンロッド30と駆動スリーブ40と内側ハウジングインサート20との間の嵌合ねじ山の相互作用によって、例えば2:1の機械的な利点がもたらされる。用量投薬中に、用量設定部材70のラチェットプロファイル74及び用量設定ドラム60のクリッカアーム62に関与する投薬クリッカが能動的になる。投薬クリッカは、主として、薬物が投薬されているという可聴フィードバックをユーザに提供する。相対回転は、一方向にのみ可能となる。用量送達中に、駆動スリーブ40は、内側ハウジングインサート20に対して回転しない。したがって、ナット50の回転位置は、用量送達中に変更されず、ナット50は、用量設定又はダイヤル設定中に設定された、駆動スリーブ40上のナット50の位置に留まる。
【0083】
用量設定部材70、より具体的には管状スリーブ71は、軸方向を向いた1組の止め歯75をその遠位端に有する。これらの歯75は、管状スリーブ71の近位リム上に形成され、ハウジング10の内面に形成された1組の対向止め歯14に用量送達の終了時に係合するように構成される。これらの歯14、75は、各用量の終了時に、ハウジング10及び用量設定ドラム60に対する用量設定部材70の回転位置を制御して「調整」する。これは、用量設定部材70と用量設定ドラム60との間のクラッチ歯61、73が位置合わせされ、その結果、用量設定部材70が解放されたときにクラッチ歯が正しく再係合することを確実にする(後続の用量がダイヤル設定されることを可能にする)のに重要である。更に、用量設定部材70の回転位置が各用量の終了時に用量設定ドラム60に対して一致することが、モジュール2の正確な機能のために重要である。これは、モジュール2が、送達される用量のサイズを決定するために、用量設定部材70に対する用量設定ドラム60上のクラッチ歯61の全ての相対回転運動を正確に検出するように意図されているためである。用量設定部材70とハウジング10との間に上述の歯14、75がなければ、用量の終了時におけるこれらの2つの部品の相対回転位置は、ダイヤルクリッカ(駆動スリーブ40の可撓性クリッカアーム及び内側ハウジングインサート20の軸方向スプライン)のみによって決定される。しかしながら、ダイヤルクリッカは、意図的に比較的低いトルクで克服されるように設計されるので、特に正確な回転データを提供するわけではない。なお更に、用量設定部材70が、0Uダイヤル状態でペン1を用いて押圧される場合、これらの止め歯14、75の係合によって、ユーザが用量設定部材70をハウジング10に対して回転させることが防止される。この状態で用量設定部材70を回転させることは、ユーザがピストンロッド30を前進又は後退させ得るやり方でペン機構を操作することを可能にし、用量誤りにつながる可能性がある。
【0084】
薬物送達デバイス1は、モジュール2と共に又はモジュール2なしに用いられるのに適している。モジュール2が用量設定部材70に外嵌される場合、可撓性クリップ7は、ボタン72の径方向開口76に係合してスナップ嵌めし、その一方で、光パイプ6は軸方向開口78内に延びる。用量設定ドラム60のクラッチ歯61のリングは、モジュール2と併せて使用される場合、エンコーダの追加機能を有する。
【0085】
用量設定ドラム60の近位端において用量設定ドラム60の外径に位置するこれらの径方向外側に突出するクラッチ歯61は、光学センサによって検出され得る。換言すれば、円形パターン、例えばリング状パターンで形成された、近位方向を向いたエンコーダ機能部のアレイは、クラッチ歯61のリングによって提供される。歯61は、用量設定ドラムの近位側から見て、根元の近傍で僅かに幅が広く、先端に向かって僅かに狭くなる形状を有し得る。換言すれば、歯61は、平行四辺形と同様の形状を有し得る。隣り合う歯の間の空隙は、歯の幅よりも著しく幅広であり、例えば約3倍幅広であり得る。図7に示すように、例示的な実施形態では、12個の等間隔のクラッチ歯61しか存在しないが、これらのクラッチ歯61は、用量設定部材70上の1組の24個の嵌合歯と組み合わさって、24個の個別の係合箇所を提供する(したがって、用量を設定又はダイヤル設定及び送達するときに用量設定部材の1回転当たりの24回の選択可能な用量増分を可能にする)。この配置には多数の利点がある。クラッチ歯61は、用量設定ドラム60の外径から径方向に突出するため、用量設定部材70の内径に形成された歯73と相互作用して、可能な限り大きな直径でトルクを伝達する。このことは、クラッチ歯61が、より頑丈であり、ユーザによって加えられるトルクに対してより耐性があることを意味する。より少ない数の幅広の歯(すなわち、24個の一幅歯ではなく、12個の「二幅」歯)もまた、用量設定ドラム60から用量設定部材70にトルクを伝達するより強力な手段を提供する。より少ない数の幅広の歯61はまた、モジュール2の光検出器のためのはるかにより良好なターゲットを提供するが、これは、個々の反射性/非反射性領域が、より幅広であり、したがってより良好な光学信号応答を提供し、また用量設定ドラム60が用量設定部材70に対して回転するときの角度公差変動(相対過大又は過小移動)に対してより柔軟であることが理由である。
【0086】
図6に示すように、ペン型注射器1の用量ボタン72は、ペン型注射器1の近位端側を構成し、その近位端面に形成された2つの同心溝78、79を有し、すなわち、溝は、近位端面における窪み又は切り欠きとして形成され得るとともに、遠位方向に延び得る。これらの溝78、79は、モジュール2の機能部を収容し、モジュールを用量ボタン72に対して回転させることを可能にして、取り付け中に正しい回転整列を見出す。溝78、79は、1組の機能部がペンの用量ボタン72上に個別に設けられた手段であって、誤ったタイプのボタンモジュール2の取り付けを防止する手段、すなわち、モジュール2がクリップ機能部7を介してしっかりと取り付けられることを可能にし、用量値がモジュール2によって検出/符号化されることを可能にするペン機構のクラッチ歯61へのアクセスを提供する専用機能部としての役割を果たす。上述のように、送達される用量のサイズを検出するためにモジュール2によって使用される機能部は、用量設定ドラム60の遠位端において外周の周りに機能部の等間隔のアレイとして形成されるクラッチ歯61である。しかしながら、これらのエンコーダ機能部は、クラッチ歯61である必要はなく、単純に、用量設定ドラム60と一緒に回転する光学エンコーダシステムのための「フラグ」とすることができ、開口77の配置は、モジュール2がペン1に外嵌される場合にそのようなエンコーダ機能部へのアクセスを可能にするのに有用である。
【0087】
モジュール2が、ペン1から送達される用量を符号化するために1組の光学IRエミッタ/検出器を使用するため、ペン1がモジュールセンサの正しい性能と干渉し得る野外で使用される場合、例えば高周囲光レベルからの「迷」IR放射のレベルを低減することが好ましい。用量設定部材70の構成要素は、反射したIR放射のレベルを低減/抑制することが意図される機能部を有し得る。特に、管状スリーブ71及び/又はボタン72は、IR吸収マスターバッチを含み得、及び/又は、スパークエロージョンテクスチャ表面仕上げを有し得る。
【符号の説明】
【0088】
1 薬物送達デバイス(ペン)
2 電子モジュール
3 キャップ
4 PCBA(プロセッサ、センサ)
5 バッテリ
6 光パイプ
7 可撓性クリップ
10 ハウジング
11 カートリッジホルダ
12 ねじ山
13 投与量窓
14 対向止め歯
20 内側ハウジングインサート
21 ねじ山
30 ピストンロッド
31 軸受
40 駆動スリーブ
41 ねじ山
50 ナット
60 用量設定ドラム
61 クラッチ歯
62 クリッカアーム
70 用量設定部材
71 管状スリーブ
72 ボタン
73 クラッチ歯
74 ラチェットプロファイル(傾斜歯)
75 止め歯
76 径方向開口
77 軸方向開口
78 外側溝
79 内側溝
80 カートリッジ
90 キャップ
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】