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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241106BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241106BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241106BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241106BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
H01G11/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523971
(86)(22)【出願日】2023-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2023004537
(87)【国際公開番号】W WO2023219274
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057424
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ラム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・グン・キム
【テーマコード(参考)】
4G048
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5E078AA01
5E078AA03
5E078AB01
5E078BA27
5E078BA59
5E078BA71
5E078BA73
5E078BB30
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、初期容量と寿命特性がいずれも優れた電池を実現することができる正極活物質の製造方法に関する発明であり、(A)全体の金属のうちニッケル(Ni)を80モル%以上含有する正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合した後、一次焼成して、一次焼成品を製造するステップと、(B)前記一次焼成品とニッケル化合物を混合した後、二次焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含み、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.15モル%未満になるように添加される正極活物質の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)全体の金属のうちニッケル(Ni)を80モル%以上含有する正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合した後、一次焼成して、一次焼成品を製造するステップと、
(B)前記一次焼成品とニッケル化合物を混合した後、二次焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含み、
前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.15モル%未満になるように添加される、正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記正極活物質前駆体は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される組成を有する、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
[化学式1-1]
Nia1Cob1Mnc1 d1(OH)
[化学式1-2]
Nia1Cob1Mnc1 d1O・OH
前記化学式1-1および化学式1-2中、
は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Hf、F、P、S、YおよびLaから選択される1種以上であり、
0.80≦a1<1.0、0<b1≦0.20、0<c1≦0.20、0≦d1≦0.10、a1+b1+c1+d1=1である。
【請求項3】
前記ニッケル化合物は、平均粒径(D50)が3μm未満である、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケル化合物は、Ni(OH)、NiO、NiCO、NiSO、NiF、NiCl、NiBr、NiI、2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HOおよびNiSO・6HOから選択される1種以上である、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.14モル%以下になるように添加される、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.02モル%~0.10モル%になるように添加される、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記一次焼成は、600℃~750℃の温度下で行われる、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記二次焼成は、750℃~900℃の温度下で行われる、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記二次焼成は、前記一次焼成より高い温度下で行われる、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
(C)前記リチウム遷移金属酸化物にコーティング元素含有原料物質を混合し、熱処理して、コーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年5月10日付けの韓国特許出願第10-2022-0057424号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池に使用される正極活物質のうち層状構造を有する正極活物質の場合、電気自動車などのEV(Electric Vehicle)に適用する目的でその性能が日々向上している。
【0004】
正極活物質が発揮することができる電気化学的容量が高いほど、エネルギー密度が高くなり、全世界の電池製造メーカーは、エネルギー密度が高い正極活物質を先に占有するために努力している状況であり、それに伴い、ニッケルの含量が高い層状構造の正極活物質が最も話題になっている。
【0005】
しかし、ニッケルの含量が高くなるほど、充放電を複数回繰り返すと、正極活物質の電気化学的性能が急激に劣化する問題がある。すなわち、エネルギー密度を高めるために、リチウム以外の全体の金属のうちニッケルの含量を80モル%以上に高める場合、充電および放電容量は増加するが、放電抵抗増加率が高くなって、寿命特性(容量維持率およびガス発生量など)が急激に劣化する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、初期容量と寿命特性がいずれも優れた電池を実現することができる正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、正極活物質の製造方法を提供する。
【0008】
(1)本発明は、(A)全体の金属のうちニッケル(Ni)を80モル%以上含有する正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合した後、一次焼成して、一次焼成品を製造するステップと、(B)前記一次焼成品とニッケル化合物を混合した後、二次焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含み、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.15モル%未満になるように添加される正極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
(2)本発明は、前記(1)において、前記正極活物質前駆体は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される組成を有する正極活物質の製造方法を提供する
[化学式1-1]
Nia1Cob1Mnc1 d1(OH)
[化学式1-2]
Nia1Cob1Mnc1 d1O・OH
前記化学式1-1および化学式1-2中、
は、Al、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Hf、F、P、S、YおよびLaから選択される1種以上であり、
0.80≦a1<1.0、0<b1≦0.20、0<c1≦0.20、0≦d1≦0.10、a1+b1+c1+d1=1である。
【0010】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記ニッケル化合物は、平均粒径(D50)が3μm未満である正極活物質の製造方法を提供する。
【0011】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記ニッケル化合物は、Ni(OH)、NiO、NiCO、NiSO、NiF、NiCl、NiBr、NiI、2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HOおよびNiSO・6HOから選択される1種以上である正極活物質の製造方法を提供する。
【0012】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.14モル%以下になるように添加される正極活物質の製造方法を提供する。
【0013】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.02モル%~0.10モル%になるように添加される正極活物質の製造方法を提供する。
【0014】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、前記一次焼成は、600℃~750℃の温度下で行われる正極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、前記二次焼成は、750℃~900℃の温度下で行われる正極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つにおいて、前記二次焼成は、前記一次焼成より高い温度下で行われる正極活物質の製造方法を提供する。
【0017】
(10)本発明は、前記(1)~(9)のいずれか一つにおいて、(C)前記リチウム遷移金属酸化物にコーティング元素含有原料物質を混合し、熱処理して、コーティング層を形成するステップをさらに含む正極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、前記一次焼成品に特定量のニッケル化合物を添加した後、二次焼成する場合、製造される正極活物質を用いた電池の初期特性および寿命特性をいずれも改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0020】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の異なる特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
正極活物質の製造方法
本発明者らは、ニッケル含量が高い正極活物質の製造時に、正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を2回焼成(一次焼成および二次焼成)し、二次焼成の前に特定量のニッケル化合物を添加する場合、製造された正極活物質を用いた電池の性能が改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明による正極活物質の製造方法は、(A)全体の金属のうちニッケル(Ni)を80モル%以上含有する正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合した後、一次焼成して、一次焼成品を製造するステップと、(B)前記一次焼成品とニッケル化合物を混合した後、二次焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含み、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.15モル%未満になるように添加される。
【0024】
本発明による正極活物質の製造方法は、(C)前記リチウム遷移金属酸化物にコーティング元素含有原料物質を混合し、熱処理して、コーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0025】
以下、正極活物質の製造方法について具体的に説明する。
【0026】
(A)ステップおよび(B)ステップ
本発明による正極活物質の製造方法は、(A)全体の金属のうちニッケル(Ni)を80モル%以上含有する正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合した後、一次焼成して、一次焼成品を製造するステップと、(B)前記一次焼成品とニッケル化合物を混合した後、二次焼成して、リチウム遷移金属酸化物を製造するステップとを含む。ここで、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%超0.15モル%未満になるように添加される。
【0027】
本発明の製造方法によって製造された正極活物質は、表面に高容量性能を発現するニッケルが適量コーティングされ、リチウム二次電池に適用したときに、電池の初期容量を改善し、且つ正極活物質の表面での電荷移動抵抗を下げることにより、結果的に、寿命特性の改善効果、特に、抵抗増加率が大幅に減少する効果がある。
【0028】
本発明によると、前記ニッケル化合物は、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が、0.01モル%超0.15モル%未満になるように、具体的には0.01モル%超、0.02モル%以上、0.04モル%以上、0.06モル%以上、0.08モル%以上、0.10モル%以下、0.12モル%以下、0.14モル%以下、0.15モル%未満になるように添加されることができる。この場合、正極活物質の表面にニッケルが適量コーティングされて、充放電容量が改善し、且つ寿命劣化の副作用がないことができる。
【0029】
前記ニッケル化合物が前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%以下になるように添加される場合には、ニッケルコーティング量が十分ではなく、正極活物質の表面を完全に包むことができず、コーティング効果があまりないという問題があり得る。
【0030】
前記ニッケル化合物が、前記正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対して前記ニッケル化合物に含有されたニッケルのモル%が0.15モル%以上になるように添加される場合には、過剰なニッケルコーティングによって、均一でない一部が絡み合った形態のコーティング膜が形成されて、正極活物質の寿命特性が大きく劣化する問題があり得る。
【0031】
本発明によると、前記正極活物質前駆体は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される組成を有することができる。
【0032】
[化学式1-1]
Nia1Cob1Mnc1 d1(OH)
【0033】
[化学式1-2]
Nia1Cob1Mnc1 d1O・OH
【0034】
前記化学式1-1および化学式1-2中、
は、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Hf、F、P、S、YおよびLaから選択される1種以上であり、
0.80≦a1<1.0、0<b1≦0.20、0<c1≦0.20、0≦d1≦0.10、a1+b1+c1+d1=1である。
【0035】
前記a1は、前駆体内の金属元素のうちニッケルの原子分率を意味し、0.80以上、0.85以上、0.95以下、0.98以下、1.0未満であることができる。
【0036】
前記b1は、前駆体内の金属元素のうちコバルトの原子分率を意味し、0超、0.01以上、0.02以上、0.05以下、0.10以下、0.20以下であることができる。
【0037】
前記c1は、前駆体内の金属元素のうちマンガンの原子分率を意味し、0超、0.01以上、0.02以上、0.05以上、0.10以下、0.20以下であることができる。
【0038】
前記d1は、前駆体内の金属元素のうちM元素の元素分率を意味し、0以上、0.01以上、0.02以下、0.05以下、0.10以下であることができる。
【0039】
前記リチウム含有原料物質は、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、LiNO、CHCOOLiおよびLi(COO)からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、好ましくは、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)またはこれらの組み合わせであることができる。
【0040】
正極活物質の製造時に、前記正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質は、1:1~1:1.625、または1:1~1:1.15のモル比で混合されることができる。リチウム含有原料物質が前記範囲未満で混合される場合、製造される正極活物質の容量が低下する恐れがあり、リチウム含有原料物質が前記範囲を超えて混合される場合、未反応のLiが副生成物として残り、容量の低下および焼成の後、正極活物質粒子の分離(正極活物質の絡み合い現象誘発)が発生し得る。
【0041】
前記正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を混合するときに、ドーピング元素含有原料物質がさらに混合されることができる。前記ドーピング元素含有原料物質に含まれる金属元素は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、SおよびYなどであることができる。前記ドーピング元素含有原料物質は、前記金属元素を含む酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであることができる。例えば、前記金属元素がAlである場合、アルミニウム水酸化物(Al(OH))が使用されることができ、前記金属元素がZrである場合、ジルコニウム酸化物(ZrO)が使用されることができる。
【0042】
本発明によると、前記ニッケル化合物は、平均粒径(D50)が3μm未満であることができる。具体的には、前記ニッケル化合物は、平均粒径(D50)が0.01μm超3μm未満、さらに具体的には0.05μm超2.5μm未満であることができる。また、前記ニッケル化合物は、最大粒径(Dmax)が12μm以下であることができる。この場合、正極活物質の粒径に対して類似するか小さい水準であり、コーティング時に、正極活物質の表面への原子拡散の面で均一な塗布が可能であり、製造される正極活物質の特性が均一であることができる。
【0043】
本発明によると、前記ニッケル化合物は、ニッケルの水酸化物、酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物またはこれらの水和物などであることができ、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiCO、NiSO、NiF、NiCl、NiBr、NiI、2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HOおよびNiSO・6HOから選択される1種以上であることができる。前記ニッケル化合物は、具体的には、融点または分解温度(decomposition temperature)が700℃以下であることができる。
【0044】
本発明によると、前記一次焼成は、600℃~750℃の温度下で行われることができる。具体的には、前記一次焼成は、600℃以上、650℃以上、700℃以上、730℃以下、740℃以下、750℃以下で行われることができる。前記一次焼成は、正極活物質前駆体とリチウム原料物質を混合し反応させるステップであり、相対的に低温である600℃~750℃の温度で焼成することにより、一次焼成品の強度を低く調節することができる。これは、粒子の表面のリチウム副生成物が相対的に低温で焼成されるほど、焼成品の強度が弱いためである。
【0045】
本発明によると、前記二次焼成は、750℃~900℃の温度下で行われることができる。また、前記二次焼成は、前記一次焼成より高い温度下で行われることができる。具体的には、前記一次焼成は、750℃以上、760℃以上、770℃以上、800℃以下、850℃以下、900℃以下で行われることができる。前記二次焼成は、一次焼成で未反応の少量の残留リチウムが反応するステップであり、前記一次焼成温度より相対的に高温で焼成し、効果的な結晶成長に役立つことができる。
【0046】
前記(B)ステップにおいて、二次焼成の後には、リチウム遷移金属酸化物の表面に存在し得る残留リチウムを除去するために一般的に行われる水洗、濾過および乾燥工程が行われることができる。
【0047】
前記水洗工程は、脱イオン水、蒸留水、エタノールなどの水洗溶液を用いて行われることができ、前記水洗溶液の含量は、二次焼成品100重量部に対して50重量部~150重量部であることができる。前記水洗は、5℃~40℃の温度下で1分~30分間行われることができる。この場合、正極活物質の表面の残留イオンを効果的に除去し、且つ水洗工程で発生する正極活物質の表面劣化を最小化することができる。
【0048】
前記濾過および乾燥工程は、水洗工程を経て水分を含む正極活物質から水分を除去するための工程である。前記濾過は、フィルタプレスを使用して行われることができ、前記乾燥は、100℃~150℃の温度下で行われることができ、真空状態で行われることができる。
【0049】
(C)ステップ
本発明による正極活物質の製造方法は、前記リチウム遷移金属酸化物にコーティング元素含有原料物質を混合し、熱処理して、コーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0050】
前記コーティング元素含有原料物質に含まれる金属元素は、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、SおよびYなどであることができる。前記コーティング元素含有原料物質は、前記金属元素を含む酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであることができる。例えば、前記金属元素がBである場合、ホウ酸(HBO)などが使用されることができる。
【0051】
前記コーティング元素含有原料物質は、前記リチウム遷移金属酸化物に対して200ppm~2000ppmの重量で含まれることができる。前記コーティング元素含有原料物質の含量が前記範囲内である場合、電池の容量が改善することができ、生成されたコーティング層が電解液とリチウム遷移金属酸化物との直接的な反応を抑制して、電池の長期性能特性が改善することができる。
【0052】
(C)ステップにおける熱処理は、200℃~400℃の温度で行われることができる。熱処理温度が前記範囲内である場合、遷移金属酸化物の構造的安定性を維持しながらコーティング層を形成することができる。前記熱処理は、1時間~10時間行うことができる。熱処理時間が前記範囲内である場合、適切なコーティング層が形成されることができ、生産効率が改善することができる。
【0053】
正極
また、本発明は、上述の方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0054】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、上述の方法により製造された正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0055】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で使用されることができる。
【0056】
前記正極活物質層は、正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0057】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して、80重量%~99重量%、より具体的には85重量%~98重量%の含量で含まれることができる。上記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0058】
この際、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0059】
前記バインダーは、正極活物質粒子の間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0060】
前記正極は、上記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上記の正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。ここで、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。また、他の方法として、前記正極は、前記正極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0061】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0062】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0063】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0064】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0065】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0066】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0067】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0068】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0069】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0070】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0071】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量に対して10重量%以下、具体的には5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池において化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0072】
前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0073】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0074】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0075】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0076】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0077】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0078】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1重量%~5重量%含まれることができる。
【0079】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0080】
したがって、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0081】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0082】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0083】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0084】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0085】
実施例および比較例
実施例1
Ni0.89Co0.04Mn0.07(OH)で表される組成を有する正極活物質前駆体にAl(OH)を微量添加し、Li/Metal(Ni+Co+Mn+Al)のモル比が1.05になるようにリチウム原料物質LiOH・HOを添加した後、これらを混合して混合物を製造した。前記混合物をアルミナるつぼに投入し、720℃、酸素雰囲気下で、5時間一次焼成して、一次焼成品を製造した。
【0086】
前記一次焼成品にNi(OH)を、正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数を基準に含有されたニッケルのモル%が0.02モル%になるように混合した後、790℃、酸素雰囲気下で、5時間二次焼成して、脱イオン水に水洗した後、フィルタプレスを使用して濾過し、130℃の真空オーブンで乾燥して、リチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0087】
その後、前記リチウム遷移金属酸化物にホウ酸(HBO)を1000ppm混合し、大気雰囲気下、295℃で5時間熱処理して、ホウ素を含むコーティング層が形成されたリチウム遷移金属酸化物(正極活物質A)を製造した。
【0088】
実施例2
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.06モル%になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Bを製造した。
【0089】
実施例3
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.1モル%になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Cを製造した。
【0090】
実施例4
二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、800℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Dを製造した。
【0091】
実施例5
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.06モル%になるように混合し、二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、800℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Eを製造した。
【0092】
実施例6
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.1モル%になるように混合し、二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、800℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Fを製造した。
【0093】
実施例7
二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、810℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Gを製造した。
【0094】
実施例8
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.06モル%になるように混合し、二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、810℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Hを製造した。
【0095】
実施例9
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.1モル%になるように混合し、二次焼成を酸素雰囲気(酸素90体積%以上)下、810℃で行った以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Iを製造した。
【0096】
比較例1
Ni0.89Co0.04Mn0.07(OH)で表される組成を有する正極活物質前駆体にAl(OH)を微量添加し、Li/Metal(Ni+Co+Mn+Al)のモル比が1.05になるようにリチウム原料物質LiOH・HOを添加した後、これらを混合して混合物を製造した。前記混合物をアルミナるつぼに投入し、720℃、酸素雰囲気下で、5時間一次焼成して、一次焼成品を製造した。
【0097】
前記一次焼成品を790℃、酸素雰囲気下で、5時間二次焼成し、脱イオン水に水洗した後、フィルタプレスを使用して濾過し、130℃の真空オーブンで乾燥して、リチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0098】
その後、前記リチウム遷移金属酸化物にホウ酸(HBO)を1000ppm混合し、大気雰囲気下、295℃で5時間熱処理して、ホウ素を含むコーティング層が形成されたリチウム遷移金属酸化物(正極活物質J)を製造した。
【0099】
比較例2
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.01モル%になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Kを製造した。
【0100】
比較例3
Ni(OH)を正極活物質前駆体に含有された全体の金属のモル数に対してNi(OH)に含有されたニッケルのモル%が0.15モル%になるように混合した以外は、実施例1と同じ方法で正極活物質Lを製造した。
【0101】
実施例1~9および比較例1~3での一次焼成温度、二次焼成温度およびNi(OH)添加量をまとめ、下記表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
実験例
実験例1:コインセルの特性評価
実施例および比較例で製造した正極活物質を用いてリチウム二次電池を製造し、リチウム二次電池それぞれに対して、初期充放電容量、充放電効率、30サイクル後の放電抵抗を評価した。
【0104】
具体的には、実施例および比較例で製造した正極活物質それぞれと、FX35導電材、KF9709バインダーおよびBM740Hバインダーを97.5:1.0:1.4:0.1の重量比でNMP溶媒の中で混合し、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して、正極を製造した。一方、負極活物質としてLi金属ディスク(metal disk)を使用した。前記で製造した正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させてから、前記ケースの内部に電解液を注入して、リチウム二次電池を製造した。ここで、電解液として、EC/EMC/DMC(30/30/40、vol%)有機溶媒に1MのLiPFを溶解させた電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。
【0105】
前記のように製造されたリチウム二次電池を25℃で、0.1C定電流で4.25VまでCC/CVモード充電を実施した後(終了電流0.05C)、3.0VになるまでCCモード放電を実施しながら初期充電容量、初期放電容量、充放電効率を取得し(下記表2に示す)、45℃で、0.33C定電流で3.0V~4.25Vの範囲で充放電サイクルを30回繰り返して実施した。ここで、30回目の充放電サイクルで放電を開始してから60秒間の電圧降下を測定し、これを印加された電流値で除して放電抵抗を計算し、下記表2に寿命特性を代表する値として示した。一方、全過程において、1C=200mA/gに設定した。
【0106】
【表2】
【0107】
前記表2を参照すると、実施例1~9で製造された正極活物質を含む電池の場合、優れた初期充放電容量および充放電効率を有し、且つ、比較例1~3で製造された正極活物質を含む電池に比べて、著しく優れた寿命特性を有することを確認することができる。
【0108】
結果、本発明による正極活物質の製造方法のように、ニッケル含量が高い正極活物質を製造するときに、正極活物質前駆体とリチウム含有原料物質を2回焼成し、二次焼成の前に特定量のニッケル化合物を添加して正極活物質を製造する場合、前記正極活物質を用いた電池は、初期特性が優れるだけでなく、寿命特性が著しく改善することが分かる。
【国際調査報告】