(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体成形化合物、レーザーエネルギーに曝露されるとめっき可能になる反応生成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241106BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241106BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241106BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20241106BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/36
C08K3/22
C08K5/13
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529403
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022050259
(87)【国際公開番号】W WO2023091578
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ハー、 チュンリン
(72)【発明者】
【氏名】シャンペン、 ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、 ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィット、 ルード
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002BH021
4J002CC281
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002CL032
4J002CM011
4J002CM021
4J002CN011
4J002DE077
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE117
4J002DE137
4J002DJ016
4J002DK009
4J002EJ018
4J002EJ058
4J002EN039
4J002EN049
4J002EN099
4J002EN109
4J002EQ029
4J002ER029
4J002ET009
4J002EU079
4J002EU119
4J002EU139
4J002EU189
4J002EU239
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD148
4J002FD149
4J002FD207
4J002GJ02
4J002GQ01
4M109AA01
4M109EA03
4M109EA11
4M109EB13
(57)【要約】
【解決手段】
液体圧縮成形(「LCM」)又はステンシル印刷の用途に有用な流動性状態の熱硬化性樹脂組成物が提供され、その反応生成物は、高温にさらされた後に非流動性となり、次いでレーザーエネルギーに曝露されるとめっき可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂マトリックス、
シリカ充填剤、
スピネル結晶、及び
テトラキスフェノール化合物と窒素含有硬化剤との組み合わせを含むクラスレートの組み合わせを含む硬化成分、
を含む室温で流動性状態である熱硬化性樹脂組成物であって、
基材の少なくとも一部上に配置され、高温条件に曝露された後に前記基材の一部の上又は周囲で非流動性状態に硬化されると、前記硬化した組成物は、レーザーエネルギーに曝露するとめっき可能であり、前記硬化した組成物がその上又は周囲に配置される前記基材は、約3cm未満の反りを示す、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化すると、以下の物理的特性:
(a)室温で約25GPa以下の範囲の貯蔵弾性率、
(b)20ppm/℃以下のCTEα1、
(c)40ppm/℃以下のCTEα2、
の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記基材がシリコンから構成されるウェハであり、前記組成物が前記ウェハの厚さの約50%未満の厚さで前記ウェハの上又は周囲に配置される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記スピネル結晶が、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、錫、金、銀、及びチタンのうちの1つ以上から選択される金属から形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
以下の工程を含む、封止された成形ウェハの反り耐性を改善する方法:
ウェハを提供する工程;
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を前記ウェハに接触させて提供する工程;並びに
前記ウェハと前記熱硬化性樹脂組成物を、前記熱硬化性樹脂組成物が前記ウェハの周りに流動し、硬化して熱硬化性樹脂組成物の反応生成物を形成するのに好ましい条件に曝露し、これにより反り耐性を約50%以上改善することができる工程。
【請求項6】
反り耐性が約65%以上改善される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反り耐性が約80%以上改善される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法により形成された製品。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂成分が、エポキシ樹脂、エピスルフィド樹脂、オキサジン、オキサゾリン、シアン酸エステル、及び/又はマレイミド、ナジミド若しくはイタコンイミド含有成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
A.基材を提供する工程;
B.請求項1に記載の室温で流動性状態である熱硬化性樹脂組成物を前記基材表面の少なくとも一部に塗布する工程;
C.前記基材と前記熱硬化性樹脂組成物を、前記組成物を硬化させるのに適した高温条件に曝露して、前記基材上に反応生成物を形成する工程;
D.そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、前記反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;及び
E.前記硬化した反応生成物におけるアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程;
を含む、成形された電気的に相互接続された半導体装置を製造する方法。
【請求項11】
F.工程Cからの硬化した熱硬化性樹脂組成物の反応生成物の表面の少なくとも一部の上に、前記熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を塗布する工程;
G.前記熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を、前記組成物を硬化して反応生成物を形成するのに適した高温条件に曝露する工程;
H.そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、前記反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;及び
I.前記硬化した反応生成物におけるアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程;
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程F~Iを繰り返すことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法により三次元成形された電気的に相互接続された半導体装置。
【請求項14】
基材と;
高温条件への曝露により反応生成物に硬化され、所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露され、前記基材の上又は周囲に配置されためっきによりその所定のパターン上にメタライゼーションが形成された熱硬化性樹脂組成物と;
を含む、成形された電気的に相互接続された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体圧縮成形(「LCM」)又はステンシル印刷の用途に有用な流動性状態の熱硬化性樹脂組成物が提供され、その反応生成物は、高温に曝露後に非流動性となり、次いでレーザーエネルギーに曝露するとめっき可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージが進化し続けるにつれて、材料の封入に対する要件も変化している。半導体装置等の電子部品を保護するには、固形のエポキシ樹脂組成物を塗布してトランスファー成形する方法が一般的である。しかしながら、半導体装置の薄型化及び高密度化に伴い、微細な開口部付近で流動不良が発生したり、一部の繊細な部品が損傷したりする可能性があるため、この方法には限界がある。
【0003】
したがって、電子装置の保護に役立つ処理技術として、LCM又はステンシル印刷が開発された。LCM又はステンシル印刷は、トランスファー成形に比べて、狭い隙間に樹脂が流れ込みやすく、電子部品にダメージを与えにくいという利点がある。多くの半導体ウェハレベルパッケージ(「WLP」)は、薄くて繊細な装置を封入するためにすでにLCMを使用している。
【0004】
しかしながら、LCM又はステンシル印刷には、半導体パッケージ業界、特にWLPで必要とされる商業量及び信頼性の要求を満たすには多くの課題がある。
【0005】
反りは、多くの硬化したLCM又は液体封止材で見られる一般的な問題である。これは、パッケージサイズが増大し、ウェハの厚さが継続的に減少している場合に特に顕著である。これらの対照的な要求により、反りの問題が深刻になり過ぎて、加工要件を満たすことができなくなり、半導体パッケージの不具合につながり得る。
【0006】
反りの問題に対処するために、多くのLCM又は液体封止材が配合され、弾性率及びガラス転移温度(「Tg」)を低下している。しかしながら、この道を進むと、カプセル化されたパッケージが信頼性試験に合格する可能性は低くなる。
【0007】
成形ウェハを形成するために使用される従来の材料は、ウェハの反りに対する耐性を改善するための望ましい物理的特性を有していないか、あるいは、LCM加工技術による応用に適していない。
【0008】
過去に、反りの問題に対処する試みがなされてきた。例えば、米国特許第9,263,360号では、エポキシ樹脂成分と、フェノールノボラック成分から成るエポキシ硬化剤と、任意でエピスルフィド樹脂、オキサジン、オキサゾリン、シアン酸エステル、マレイミド、ナジミド、イタコンイミド、及びそれらの組み合わせ;ブロックコポリマー、シリカ充填剤、並びに任意で触媒及び促進剤から選択される追加成分との組み合わせを含む熱硬化性樹脂マトリックスを含む熱硬化性樹脂組成物を対象として特許請求している。ここで、ブロックコポリマーとは、ポリスチレン、1,4-ポリブタジエン、シンジオタクチックポリ(メチルメタクリレート)から作成されるコポリマー;ポリメチルメタクリレート-ブロック-ポリブチルアクリレート-ブロックポリメチルメタクリレートコポリマー;及びそれらの組み合わせから選択される両親媒性のものである。シリカ充填剤は、組成物の50~90重量%を構成する。
【0009】
また米国特許第8,847,415号では、硬化性樹脂マトリックス、カチオン性触媒及び酸化剤を含む硬化成分を含む液体圧縮成形用硬化性樹脂組成物を対象として特許請求している。硬化すると、組成物は140℃未満のDSCピーク、及び20℃未満のDSC上の開始温度とピークとの間のデルタ温度を示す。
【0010】
米国特許第9,263,360号では、熱硬化性樹脂マトリックス、ブロックコポリマー、シリカ充填剤、及び無水物又はフェノール樹脂とイミダゾールとの組み合わせを含む硬化成分を含む熱硬化性樹脂組成物が提供される。硬化すると、組成物は室温で約22GPas以下の範囲の弾性率、10μm/℃以下のCTEα1、並びに例えば約-70℃~-30℃のTg1及び約100℃~150℃のTg2を包含する複数のTgを示す。
【0011】
同様に米国特許第6,727,325号では、硬化前のエポキシ樹脂と、特定の式で表されるテトラキスフェノール化合物とエポキシ樹脂とを反応して樹脂を硬化することができる化合物とを含むクラスレートとを含むエポキシ樹脂組成物を対象として特許請求している。
【0012】
そして国際特許公開第WO2020/037199号には、熱硬化性樹脂マトリックス、シリカ充填剤、及び硬化成分を含む熱硬化性樹脂組成物が記載されており、硬化成分は、テトラキスフェノール化合物と窒素含有硬化剤との組み合わせを含むクラスレートの組み合わせを含み、室温で24時間保管後の組成物の粘度増加は約30%未満であり、組成物をウェハ上で硬化させた場合、オーブン硬化後に示す組成物の反りは約3cm未満である。
【0013】
現在、業界は、誘電特性を有する成形パッケージ内又は成形パッケージ上に電気回路を直接統合する傾向にある。
【0014】
例えば、米国特許第7,547,849号(リー)は、
A.エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(及びコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーバインダー、ポリマーバインダーは、複合フィルムの総重量の50~97重量%の量で存在する;並びに
B.複合フィルムの総重量の3~50重量パーセントの量で存在するスピネル結晶充填剤;
を含む、レーザー光活性化可能でめっき可能な自立型複合フィルムに関し、
ポリマー複合材料は、400nm~1,000,000nmの吸光係数が0.05~0.6/ミクロンであり、スピネル結晶充填剤は化学式AB2O4又はBABO4で表され、式中、Aはカドミウム、亜鉛、銅、コバルト、マグネシウム、スズ、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、クロム、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される2価の金属カチオンであり、Bはカドミウム、マンガン、ニッケル、銅、コバルト、鉄、錫、チタン、アルミニウム、クロム、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される3価の金属カチオンであり、このフィルムは自立型フィルムである。
【0015】
さらに、米国特許出願公開第2019/0292386号(メウラ)は、熱硬化性樹脂;無機充填剤;活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物;及びカップリング剤を含むレーザー直接構造化(LDS)用の熱硬化性樹脂組成物に関する。非導電性金属化合物は、スピネル型金属酸化物、隣接する群に2種以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、周期律表の第3族から第12族までから選択される基、及びスズ含有酸化物から成る群から選択される1つ又は複数を包含する。カップリング剤は、メルカプトシラン、アミノシラン、及びエポキシシランから選択される1つ又は複数を包含する。
【0016】
これらの最近の取り組みにもかかわらず、新しいLCM又はステンシル印刷材料、特に流動性があり、レーザー活性化可能で、めっき可能な材料を提供すると同時に、ウェハの反りに対する耐性が向上し、それによってエンドユーザーに、ウェハの反りという繰り返し発生する問題に対処する複数の選択肢及び解決策の源を提供することが望ましいと考えられる。
【0017】
また既存の技術では、成形中により薄い誘電体層を形成する能力を向上させることができ、それによってパッケージの機能密度を高め、パッケージ設計の制約を取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第9,263,360号
【特許文献2】米国特許第8,847,415号
【特許文献3】米国特許第9,263,360号
【特許文献4】米国特許第6,727,325号
【特許文献5】国際特許公開第WO2020/037199号
【特許文献6】米国特許第7,547,849号
【特許文献7】米国特許出願公開第2019/0292386号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示は、これらの問題に対する解決策を提供し、その点における市場の需要を満たす。
【0020】
本明細書では、高温条件に曝露することによって硬化し得る熱硬化性樹脂組成物が提供される。硬化すると、硬化した組成物はレーザーで活性化され、めっき可能である。この点において、めっきは、三次元成形相互接続装置(「MID」)を製造するためのレーザー直接構造化(「LDS」)の基礎である。ここで、LDSでは、硬化組成物の表面又は表面近くでスピネル結晶が利用可能であり、そこに加えられるレーザーエネルギーを受け取ることができる(貫通ビア(through via)アプローチ中に表面を考慮してよい)。硬化した組成物の表面上を所定のパターンでレーザーエネルギーアブレーション後、スピネル結晶は、無電解又はその他のめっきを可能にするシードとして機能する可能性があり、それによってアブレーション部分にめっきパターンを形成する。
【0021】
また、熱硬化性樹脂が硬化した後、成形された基材は反りにくくなる。
【0022】
より具体的には、本発明の組成物は、成形化合物の望ましい物理的特性を維持しながら、圧縮成形及びオーブン硬化後の反りが低い液体圧縮成形封入剤として有用である。この組成物は、室温で低い貯蔵弾性率(例えば、室温で約25GPas以下、望ましくは約10~約20GPasの範囲内、例えば約5~約9GPas)及び低い熱膨張係数(「CTE」)(α1<20ppm;α2<40ppm)を示す。
【0023】
本発明の組成物の硬化反応生成物は、本明細書に開示されるもの以外の材料を有する成形基材と比較して、成形基材の反り抵抗を約50%、望ましくは少なくとも約65%、さらにより望ましくは少なくとも約80%改善することができる。基材はシリコンで構成されるウェハであることが多く、組成物はウェハの厚さの約50%未満の厚さ、例えばウェハの厚さの約33%未満の厚さでウェハ上に配置される。
【0024】
すなわち、そして重要なことであるが、組成物は、液体圧縮成形条件下で硬化した後、約3cm未満(例えば、約2cm未満)の反りを示す。この物理的特性の組み合わせは、現在半導体パッケージ業界が直面している重大な技術的ハードルの一部、特に液体封止剤の基材の反りを克服するのに有望であることを示している。本発明の組成物の使用により、反り耐性は、硬化中に改善されるだけでなく、LDS等の後続の加工中にも改善される。
【0025】
したがって、一態様では、反応生成物が、熱硬化性樹脂マトリックス(エポキシ樹脂成分等)、シリカを含む充填剤、スピネル結晶、並びに(1)テトラキスフェノール化合物を含むクラスレートと、(2)イミダゾール及びその誘導体等の窒素含有硬化剤との組み合わせを含む硬化成分を包含する、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0026】
別の態様では、成形されたウェハの反り耐性を改善する方法が提供され、その工程は以下を包含する:
1つ又は複数のシリコンチップが配置されたウェハを提供する工程;
上述のような熱硬化性樹脂組成物をウェハに接触させて提供する工程;
ウェハ及び熱硬化性樹脂組成物を、熱硬化性樹脂組成物がウェハの周囲に流動するのに好ましい条件に曝す工程;並びに
その後、熱硬化性樹脂組成物の反応生成物を硬化させるのに好ましい条件に熱硬化性樹脂組成物を曝す工程。
【0027】
一旦硬化すると、組成物の反応生成物はレーザーエネルギーに曝露されて、それにより反応生成物の表面又は表面付近に位置するスピネル結晶の残留物又は断片が形成され、残留物又は断片はめっきを通じて配線又は回路を形成するためのシードとして機能する。
【0028】
成形された電気的に相互接続された半導体装置を製造する方法も本明細書で提供される。この方法は、以下を含む工程を包含する:
ウェハを提供する工程;
本明細書に開示されているように、室温で流動性状態である熱硬化性樹脂組成物をウェハの表面の少なくとも一部に塗布する工程;
ウェハ及び熱硬化性樹脂組成物を、組成物を硬化させるのに適した高温条件に曝露して、ウェハ上に反応生成物を形成する工程;
そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;並びに
硬化した反応生成物にアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程。
【0029】
いくつかの実施形態では、方法は以下の工程を包含してよい:
硬化した熱硬化性樹脂組成物の反応生成物の表面の少なくとも一部の上に、熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を分配する工程;
熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を、組成物を硬化して反応生成物を形成するのに適した高温条件に曝露する工程;
そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;並びに
硬化した反応生成物にアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程。
【0030】
この方法を複数回繰り返して、所定のパターンに従って三次元成形された電気的に相互接続された半導体デバイスを構築してよい。
【0031】
もちろん、成形された電気的に相互接続された半導体装置も提供される。この装置は、高温条件への曝露により反応生成物に硬化され、所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露され、めっきを通してその所定のパターンのメタライゼーション上に形成された本発明の熱硬化性樹脂組成物がその上及び/又は周囲に配置されたウェハを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、ウェハレベルパッケージ用途のための液体圧縮成形カプセル化方法のプロセスフローダイヤグラムを示す。
【
図2】
図2は、ウェハレベルパッケージ用途のためのステンシル印刷カプセル化方法のプロセスフローダイヤグラムを示す。
【
図3】
図3は、硬化した材料のレーザーアブレーション及びめっき方法のプロセスフローダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述の熱硬化性樹脂組成物は、他の成分の中でも特に熱硬化性樹脂マトリックス(エポキシ樹脂等)を包含する。
【0034】
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールE、ビフェニル又はそれらの組み合わせから作られたエポキシが挙げられる。さらに、同じ種類の樹脂(A、F、S、又はE等)内の2つ以上の異なるビスフェノールエポキシ(又はその水素化物)を使用してもよい。
【0035】
本明細書で使用するのに望ましいビスフェノールエポキシの市販の例としては、ビスフェノールFエポキシ[例えば、日本化薬社製のRE-404-S、大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、830S、830A及び830W、並びにレゾルーション社製のRSL1738及びYL-983U]、ビスフェノール-Aエポキシ(例えば、レゾルーション社製のYL-979及び980)が挙げられる。
【0036】
大日本インキ化学工業株式会社から市販されている上記のビスフェノールエポキシは、ビスフェノールAエポキシをベースとする従来のエポキシよりも低い粘度を有する液体未希釈エピクロロヒドリン-ビスフェノールFエポキシとして宣伝されており、液体ビスフェノールAエポキシと同様の物理的特性を有する。ビスフェノールFエポキシはビスフェノールAエポキシよりも粘度が低く、他の全ては2種類のエポキシ間で同じであるため、粘度が低くなり、高速流動性のアンダーフィルシーラント材料が得られる。これら4つのビスフェノールFエポキシのEEWは165~180である。25℃での粘度は3,000~4,500cpsである(粘度の上限が4,000cpsであるRE1801を除く)。ビスフェノールAエポキシは、180~195のEEW(g/eq)と、25℃で100~250cpsの粘度を有する。
【0037】
レゾルーション社から市販されており、上記で説明したビスフェノールエポキシは、低塩化物含有液体エポキシとして宣伝されている。RSL-1738ビスフェノールAエポキシの総塩化物含有量は500~700ppm、YL-983Uの総塩化物含有量は150~350ppmと報告されている。
【0038】
本明細書での使用に適したエポキシの中には、フェノール化合物のポリグリシジル誘導体、例えば、レゾルーション社からのEPON828、EPON1001、EPON1009、及びEPON1031等の商品名EPONで市販されているもの;DER331、DER332、DER334等の登録商標EPON、並びにダウケミカル社からのDER542;並びに日本化薬社からのBREN-Sも包含される。他の適切なエポキシとしては、ポリオール等から調製されるポリエポキシド、及びフェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が挙げられ、後者はダウケミカル社のDEN431、DEN438、及びDEN439等である。クレゾール類似体は、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社からアラルダイトECN1235、アラルダイトECN1273、及びアラルダイトECN1299等の商品名アラルダイトで市販されている。SU-8は、レゾルーション社から入手可能なビスフェノールA型エポキシノボラックである。アミン、アミノアルコール及びポリカルボン酸のポリグリシジル付加物も本発明において有用であり、その市販樹脂としては、F.I.C.社からのグリアミン135、グリアミン125、及びグリアミン115;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社からのアラルダイトMY-720、アラルダイト0500、及びアラルダイト0510;並びにシャーウィン・ウィリアムズ社からのPGA-X及びPGA-Cが挙げられる。
【0039】
ビスフェノールエポキシに加えて、他のエポキシ化合物がエポキシ成分内に包含されていてもよい。例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカーボネート等の脂環式エポキシ、又はビスフェノール若しくはビフェニルエポキシの水素化バージョンを使用してもよい。
【0040】
また、粘度を調整する及び/又はTgを下げるための単官能、二官能又は多官能の反応性希釈剤、例えばブチルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル又はポリプロピレングリコールグリシジルエーテルも使用される。本明細書で使用するのに適切な単官能性エポキシ共反応希釈剤としては、エポキシ成分の粘度よりも低い、通常約250cps未満の粘度を有するものが挙げられる。
【0041】
単官能エポキシ共反応希釈剤は、炭素原子数約6~約28のアルキル基を有するエポキシ基を有するべきであり、その例としては、C6~28アルキルグリシジルエーテル、C6~28脂肪酸グリシジルエステル及びC10~28アルキルフェノールグリシジルエーテルが挙げられる。
【0042】
このような単官能性エポキシ共反応物希釈剤が包含される場合、共反応物希釈剤は、熱硬化性樹脂マトリックスの総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%まで、例えば約8重量%~約12重量%の量で使用されるべきである。
【0043】
エポキシ樹脂成分は、熱硬化性樹脂マトリックスの総重量に基づいて、約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%の範囲の量、例えば約60重量%で組成物中に存在すべきである。
【0044】
エポキシ樹脂に加えて、エピスルフィド樹脂、オキサジン、オキサゾリン、シアン酸エステル、及び/又はマレイミド、ナジミド又はイタコンイミド含有成分等の他の反応性成分が包含されてもよい。
【0045】
エピスルフィド樹脂として、オキシラン酸素原子が硫黄原子で置換されたこれらのエポキシのいずれかを使用してよい。
【0046】
オキサジンは以下の構造に包含されてよい:
【0047】
【0048】
式中、R1~R8は、それぞれ個別に、水素、C1~40アルキル、又はC2~40アルケニルから選択される要素であり、後者の2つは、任意で、O、N、S、C=O、COO若しくはNHC=Oのうちの1つ又は複数によって中断され、又はOH、OR、NRR、SH、SR、COOH、COOR、NHCOOH若しくはNHCOORのうちの1つ又は複数によって置換され、RはC1~40アルキル、C2~40アルケニル、又はC6~20アリールから選択され;
Xは、アルキレン、アルケニレン,又はアリーレンから広く選択される結合であり、任意で、O、NR、S、C=O、COO,又はNHC=Oのうちの1つ又は複数によって中断され、又はOH、OR、NRR、SH、SR、COOH、COOR、NHCOOH若しくはNHCOORのうちの1つ又は複数によって置換され、RはC1~40アルキル、C2~40アルケニル、又はC6~20アリールから選択され;
m及びnはそれぞれ1又は2であり;
kは0~6である。
【0049】
使用する場合、オキサジンは組成物中に熱硬化性樹脂マトリックスの総重量に基づいて約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%の範囲、例えば約60重量%の量で存在すべきである。
【0050】
オキサジンのより具体的な例は、ベンゾオキサジンであり、その例は、以下に包含される:
【0051】
【0052】
式中、oは1~4、Xは以下で定義され、R1はメチル、エチル、プロピル若しくはブチル等のアルキル;又は
【0053】
【0054】
式中、pは1~4、Yは以下で定義され、R4は水素、ハロゲン、アルキル又はアルケニルから選択される。
【0055】
上記のベンゾオキサジン構造におけるX及びYは、以下を包含する一価又は多価の基から独立して選択されてよい:
-典型的に約6~約500の範囲の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル種、ここでヒドロカルビル種は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル又はアルキニルアリールから選択されるが、ただしXが2つ以上の異なる種の組み合わせを含む場合のみは、Xはアリールであることができる;
-典型的に約6~約500の範囲の炭素原子を有するヒドロカルビレン又は置換ヒドロカルビレン種、ここでヒドロカルビレン種は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、アリールアルケニレン、アルケニルアリーレン、アリールアルキニレン又はアルキニルアリーレンから選択される、
-典型的に約6~約500の範囲の炭素原子を有する複素環式又は置換複素環式種、
-ポリシロキサン、並びに
-ポリシロキサン-ポリウレタンブロックコポリマー、並びに
-上記の1つ又は複数と、共有結合、-O-、-S-、-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-S-C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-O-S(O)2-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)--NR-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-O-、-NR-O-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-、又は-NR-P(O)R2-から選択されるリンカーとの組み合わせ;ここで、各Rは独立して水素、アルキル、又は置換アルキルである。
【0056】
当業者には容易に認識されるように、上記の「X」結合又は「Y」結合の1つ又は複数が協働してベンゾオキサジン基の付加を形成すると、例えば、オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシルアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルキニル、チオアルキニル、アミノアルキニル、カルボキシアルキニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシクロアルケニル、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、複素環式、オキシ複素環式、チオ複素環式、アミノ複素環式、カルボキシ複素環式、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルキニル、チオアリールアルキニル、アミノアリールアルキニル、カルボキシアリールアルキニル、オキシアルキニルアリール、チオアルキニルアリール、アミノアルキニルアリール又はカルボキシアルキニルアリール.オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルキニレン、チオアルキニレン、アミノアルキニレン、カルボキシアルキニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニレン、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルキニレン、チオアリールアルキニレン、アミノアリールアルキニレン、カルボキシアリールアルキニレン、オキシアルキニルアリーレン、チオアルキニルアリーレン、アミノアルキニルアリーレン、カルボキシアルキニルアリーレン、ヘテロアリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有二価又は多価の環状部分、オキシヘテロ原子含有二価又は多価の環状部分、チオヘテロ原子含有二価又は多価の環状部分、アミノヘテロ原子含有二価又は多価の環状部分、カルボキシヘテロ原子含有二価又は多価の環状部分等の多種多様な有機鎖が生成され得る。
【0057】
ベンゾオキサジンは、熱硬化性樹脂マトリックスの総重量に基づいて、約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%、例えば約60重量%の範囲の量で存在すべきである。
【0058】
シアン酸エステルとしては、以下の一般構造式を有する化合物を使用してよい:
【0059】
【0060】
式中、mは2~5であり、R1は芳香核含有残基である。R1は少なくとも6個の炭素原子を含むべきであり、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等の芳香族炭化水素から誘導されてよい。芳香族残基は、少なくとも2つの芳香環が架橋基を介して互いに結合している多核芳香族炭化水素から誘導されてもよい。例えば、架橋要素は次式を有する:
【0061】
【0062】
式中、Ra及びRbは、同一又は異なって、水素原子又は1~4の炭素原子を有するアルキル基を表す。R1は、ノボラック型フェノール樹脂から誘導される残基、すなわち、これらのフェノール樹脂のシアン酸エステルも包含する。R1は、さらに環に結合した非反応性置換基を含有してもよい。
【0063】
有用なシアン酸エステルの例としては、例えば、1,3-ジシアナトベンゼン;1,4-ジシアナトベンゼン;1,3,5-トリシアナトベンゼン;1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン;1,3,6-トリシアナトナフタレン;4,4'-ジシアナト-ビフェニル;ビス(4-シアナトフェニル)メタン及び3,3',5,5'-テトラメチル、ビス(4-シアナトフェニル)メタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル;ビス(4-シアナトフェニル)スルフィド;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;トリス(4-シアナトフェニル)-ホスファイト;トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;シアノ化ノボラック;1,3-ビス[4-シアナトフェニル-1-(メチルエチリデン)]ベンゼン並びにシアン化ビスフェノール末端ポリカーボネート又は他の熱可塑性オリゴマーが挙げられる。
【0064】
他のシアネートエステルとしては、米国特許第4,477,629号及び第4,528,366号(これらのそれぞれの開示は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる)に開示されているシアネート;英国特許第1,305,702号に開示されているシアン酸エステル、及び国際特許公開第WO85/02184号に開示されているシアン酸エステル(これらのそれぞれの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用するのに特に望ましいシアン酸エステルは、ハンツマン・アドバンスド・マテリアル社(ニューヨーク州タリータウン)から登録商標アロシー[1,1-ジ(4-シアナトフェニルエタン)]で市販されている。4つの望ましいアロシー・シアン酸エステルの構造は次のとおりである。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
使用する場合、シアン酸エステルは、熱硬化性樹脂マトリックスの総重量に基づいて、約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%、例えば約60重量%の範囲の量で存在すべきである。
【0071】
マレイミド、ナジミド、イタコンイミドとしては、以下の一般構造式を有する化合物を使用してよい:
【0072】
【0073】
式中、mは1~15であり、pは0~15であり、各R2は独立して水素又は低級アルキル(例えばC1-5)から選択され、Jは、有機又はオルガノシロキサンラジカル、及びそれらの2つ以上の組み合わせを含む一価又は多価基であり、例えば、上記のベンゾオキサジン構造に関して「X」及び「Y」として定義される。
【0074】
一価又は多価基としては、典型的には約6~約500の範囲の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル種が挙げられる。ヒドロカルビル種は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル及びアルキニルアリールであってよい。
【0075】
さらに、Xは、典型的には約6~約500の範囲の炭素原子を有するヒドロカルビレン又は置換ヒドロカルビレン種であってもよい。ヒドロカルビレン種の例としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、アリールアルケニレン、アルケニルアリーレン、アリールアルキニレン及びアルキニルアリーレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
マレイミド、イタコンアミド又はナジミドは、液体又は固体の形態であってよい。
【0077】
望ましい実施形態では、マレイミド、イタコンアミド又はナジミド官能基は、マレイミド含有化合物を液体にするのに十分な長さ及び分枝を有する多価基によって分離される。マレイミド、イタコンアミド又はナジミド化合物は、マレイミド、イタコンアミド又はナジミド官能基の間に分枝鎖アルキレンを含むマレイミド官能基間にスペーサーを含有してよい。
【0078】
マレイミド含有化合物の場合、マレイミド化合物は、望ましくは、ステアリルマレイミド、オレイルマレイミド、ビフェニルマレイミド若しくは1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイキソサン、又は上記の組み合わせである。
【0079】
再び、マレイミド含有化合物の場合、マレイミド化合物は、無水マレイン酸とダイマーアミドとの反応によって調製されてよく、又はアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ポリオキシプロピレンアミン、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノ安息香酸塩、若しくはそれらの組み合わせから調製されてよい。
【0080】
特に望ましいマレイミド及びナジミドとしては、以下が挙げられる。
【0081】
【0082】
式中、R5及びR6はそれぞれ、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルバメート、硫黄、スルホネート及びスルホンから選択される要素による置換又は中断を伴う又は伴わない、約6~約100の炭素原子を有するアルキル、アリール、アラルキル又はアルカリル基から選択される。
【0083】
他の望ましいマレイミド、ナジミド、及びイタコンイミドとしては、以下が挙げられる。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂組成物の総重量に基づいて、約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%、例えば約60重量%の範囲の量で存在すべきである(シリカ充填剤及びスピネル結晶充填剤を除く)。
【0106】
充填剤としてのシリカは、半導体チップと、嵌合及び封止される基材との間のCTEを修正して、それぞれのCTEをより厳密に一致又は調整するのに有用である可能性がある。シリカ充填剤はCTEに影響を与えるため、硬化した材料の熱膨張を低減し、それによって反りを低減するために使用できる。
【0107】
シリカ充填剤は、多くの場合、溶融球状シリカ等の強化シリカを包含してよく、未処理であってもよく、又はその表面の化学的性質を変えるように処理されていてもよい。シリカ充填剤成分は、0.1~75ミクロンの範囲、例えば0.1~50ミクロンの範囲の平均粒径分布を有する粒子を包含するべきである。このような粒子の市販例は、日本のタツモリ社又はデンカ社によって販売されている。さらに、ドイツのナノレジン社によって商品名ナノポックスで販売されているもののような、ナノサイズのシリカ粉末が添加されてもよい。ナノポックス充填剤は、ドイツのナノレジン社から入手可能な、エポキシ樹脂中の最大約50重量%のレベルの単分散シリカ充填剤分散液である。ナノポックス充填剤は、通常、約5nm~約80nmの粒径を有すると考えられている。
【0108】
ナノレジンは、ナノポックスEという商標名でも材料を製造する。例えば、ナノレジン社は、ナノポックスEブランド製品は、他の方法では封止が難しい電子部品への完全な含浸を可能にし、収縮と熱膨張の低減、破壊靱性と弾性率等の幅広い機械的及び熱的特性を提供すると報告している。以下の表に、ナノレジン社が提供する4つの注目のナノポックスE製品に関する情報を示す。
【0109】
【0110】
ナノレジン社は、ナノポックスEブランド製品を使用することにより、エポキシ配合物の重要な特性を大幅に改善できることを報告している。例えば:
-従来の強化充填剤と比較して配合物の粘度が低い
-沈殿なし
-破壊靱性、耐衝撃性及び弾性率の向上
-耐傷性及び耐摩耗性の改善
-収縮及び熱膨張の低減
-熱安定性、耐薬品性、ガラス転移温度、耐候性、及び誘電特性等の多くの望ましい特性が改善されるか、又は少なくとも悪影響がない。
【0111】
加工性は、それぞれのベース樹脂と比較して、本質的に変わらない。
【0112】
製造業者によると、ナノポックスEブランドの製品は、エポキシ樹脂マトリックス中のコロイド状シリカゾルである。メーカーによれば、分散相は、直径が50nm未満で粒度分布が非常に狭い、表面改質された球形のSiO2ナノ粒子で構成されている。これらの球体はサイズがわずか数ナノメートルで、樹脂マトリックス中に凝集することなく分散されている。メーカーによると、これにより、SiO2含有量が最大40重量%の非常に低い粘度の分散液が生成される。メーカーの報告によると、ナノ粒子はケイ酸ナトリウム水溶液から化学合成されている。このプロセスでは、粉末充填剤を溶解機又は高せん断エネルギーを使用する他の装置で分散させるプロセスとは対照的に、結合剤は損傷を受けない。
【0113】
シリカ充填剤は、熱硬化性樹脂組成物の総重量に基づいて、約10重量%~約95重量%、望ましくは約20重量%~約80重量%、例えば約60重量%の範囲内の量で存在すべきである。
【0114】
本発明の組成物は、スピネル結晶も包含する。
【0115】
スピネル結晶は、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、錫、金、銀及びチタン等の周期表の1つ又は複数の金属元素から形成されてよい。
【0116】
より具体的には、スピネル結晶は、複酸化物であり、AB2O4型化合物又はB(AB)O4型化合物に見られるタイプの金属酸化物であってもよく、ここで、A及びBは、上述したような金属元素であり、望ましくは、Aは銅であってよい。
【0117】
スピネル結晶は通常、高温条件に対して安定であり、水性金属化浴中で見られるような酸性又はアルカリ性条件に耐えることができる。
【0118】
スピネル結晶は本発明の組成物全体に実質的に均一に分散しているが、一部のスピネル結晶は、硬化反応生成物の表面の上又は周囲に配置され、レーザーエネルギーに曝露されると、レーザーアブレーションによって所定のパターンが形成され、そのパターンに従ってめっきが行われてよい。
【0119】
特に望ましいスピネル結晶は、シェパードカラー社から商品名LD-38で市販されている(高性能銅クロマイトシード形成LDS添加剤として記載されており、シェパード社は1~8重量%の量で使用することを推奨している)。
【0120】
ここで、スピネル結晶は、熱硬化性樹脂組成物の総重量に基づいて、本発明の組成物中に約1~約15重量%、例えば約3~約12重量%の量で使用されてよいが、望ましくは、スピネル結晶は、本発明の組成物中に約9~約10重量%の量で使用されるべきである。
【0121】
このようにして、必要に応じて、MIDを層ごとのプロセスで形成してよい。より具体的には、最初のレーザーアブレーションを行った後、熱硬化性樹脂組成物の新しい部分をその上に配置し、高温条件に曝露して硬化した反応生成物を形成し、その後、そのパターン又は異なる所定のパターンをレーザーエネルギーアブレーションに曝露して、めっき可能な表面を露出させてよい。このプロセスは、例えばエンドユーザーが望むだけ何度でも繰り返して、求められる三次元成形相互接続デバイスを作成してよい。
【0122】
MIDは、本明細書に記載の熱硬化性樹脂組成物で形成された成形デバイス上、内部、又はその周囲に構築された三次元回路を有する。例えば、三次元MIDには、三次元構造を有する成形品と、その成形品の表面に形成された三次元回路とが包含され得る。
【0123】
上述したように、MIDはLDSを使用して作製してよく、スピネル結晶又はLDS添加剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化反応生成物の表面の上又は周囲に金属核が生成される。
【0124】
レーザーによって放出されるエネルギーに曝露すると、スピネル結晶から金属核がシードとして形成される可能性があり、無電解めっきを使用して、レーザーに曝露された領域に所定のめっきパターン(例えば、配線又は回路)を形成し、そのパターンに従ってアブレーションを形成する可能性がある。
【0125】
レーザーは、YAGレーザー及びエキシマレーザー等のレーザー、並びに電子ビームから選択されてよいが、YAGレーザーが望ましい。さらに、レーザーエネルギーの波長は、例えば200nm~12,000nm、の範囲で選択してよく、望ましくは248nm、308nm、355nm、532nm、1064nm、3,000nm又は10,600nmである。
【0126】
例えば、50ワットのYAGレーザーを使用して、約355、532、又は1064nmのエネルギーを放射することによって硬化反応生成物の表面を活性化してよい。
【0127】
一般に、レーザーは、音響光学変調器/スプリッター/減衰器装置を使用して変調して、単一ビームで最大23ワットを生成できる。レーザービームの直径は、1、2、4、6、8、10、15、18、20又は25ミクロン、典型的には18又は12ミクロンのいずれか2つの数値の間の焦点距離であってよい。典型的な露光量(又はエネルギー線量(J/cm2))は、次の数値0.1、0.5、1.0、2、4、6、8、10、15又は20のいずれか2つの間にあってよい。
【0128】
めっきは、電気めっき又は無電解めっきを通じてレーザーによって放出されるエネルギーに曝露した後に行ってよい。レーザーが照射された領域にめっき処理を施すことにより、その領域にめっきによる回路を形成することができる。
【0129】
めっきでは通常、銅、ニッケル、金、銀及びパラジウムの1つ又は複数等の金属成分が分散された(又は場合によっては溶解された)キャリア液が使用される。金属成分は、塩、キレート、又は錯体の形態で存在してもよい。搬送される液体は、水等の任意の適切な液体であってよい。例えば、キャリア液は、3.0g/Lの銅(II)、9.0g/Lの苛性酸、及び4.0g/Lのホルムアルデヒドの溶液を形成する水性であってもよい。
【0130】
めっきプロセスは、55℃の温度で約60分間実施してよい。
【0131】
硬化成分は潜在的なものである必要がある。
【0132】
硬化成分としては、(1)クラスレート(テトラキスフェノール化合物等)と(2)窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。
【0133】
上記のクラスレートの例としては、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-クロロ-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-ブロモ-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-メトキシ-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-クロロ-5-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス[(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル]エタン、1,1,3,3-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,4,4-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4-テトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン及びそれらの組み合わせ等のテトラキスフェノール化合物が挙げられる。
【0134】
窒素含有化合物としては、いくつか例を挙げると、アミン、アミド、及びイミダゾール等が挙げられる。
【0135】
アミンとしては、例えば、脂肪族アミン、脂環式及び複素環式アミン、芳香族アミン、変性アミン等を使用してよい。
【0136】
脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、アルキル-t-モノアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N,N′,N′-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、ジメチルアミノヘキサノール及びそれらの組み合わせの一部又は全てを使用してよい。
【0137】
脂環式及び複素環式アミンとしては、ピペリジン、ピペリジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N′,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ(4,5,0)ウンデセン-7及びそれらの組み合わせの一部又は全てを使用してよい。
【0138】
芳香族アミンとしては、O-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン及びそれらの組み合わせを使用してよい。
【0139】
変性ポリアミンとしては、エポキシ化合物を付加したポリアミン、マイケル反応により付加したポリアミン、マンニッヒ反応により付加したポリアミン、チオ尿素を付加したポリアミン、ケトンブロックポリアミン及びそれらの組み合わせを使用してよい。
【0140】
イミダゾールとしては、イミダゾール及びその誘導体の一部又は全部、例えばイソイミダゾール,イミダゾール,アルキル置換イミダゾール、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、ブチルイミダゾール、2-へプタデセニル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデセニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、2-n-へプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-プロピル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-グアナアミノエチル-2-メチルイミダゾール及びイミダゾールの付加生成物メチルイミダゾール及びイミダゾールとトリメリット酸の付加生成物、2-n-へプタデシル-4-メチルイミダゾール等(一般に各アルキル置換基は、約17までの炭素原子、望ましくは約6までの炭素原子を含有する);アリール置換イミダゾール、例えばフェニルイミダゾール、ベンジルイミダゾール、2-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾール、2,3,5-トリフェニルイミダゾール、2-スチリルイミダゾール、1-(ドデシルベンジル)-2-メチルイミダゾール、2-(2-ヒドロキシル-4-t-ブチルフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(2-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(3-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、ジ(4,5-ジフェニル-2-イミダゾール)-ベンゼン-1,4,2-ナフチル-4,5-ジフェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-p-メトキシスチリルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(日本の東京、四国から登録商標2PHZとして市販されている)及びそれらの組み合わせを使用してよい。
【0141】
イミダゾールの市販の例としてはシグマ-アルドリッチ社からのイミダゾール、それぞれエアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社から市販されているキュアゾール1B2MZ(ベンジル-2-メチルイミダゾール)及びキュアゾール2P4MZ(2-フェニル-4-メチルイミダゾール)、ハンツマン・アドバンスド・マテリアル・アメリカ社からのアーバー9719-1(2-エチル-4-メチルイミダゾール)が挙げられる。
【0142】
アミド化合物としては、ジマル酸とポリアミンとの重合により得られるポリアミドが挙げられ、エステル化合物の例としては、カルボン酸のアリールエステル、チオアリールエステル等の活性カルボニル化合物が挙げられる。
【0143】
他の窒素含有化合物として、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、トリフルオロボロン-ピペリジン錯体、トリフルオロボロン-モノエチルアミン錯体、及びそれらの組み合わせを使用してよい。
【0144】
クラスレートと窒素含有化合物との比は、モル基準で約2.5:1~約0.5:1であるべきである。
【0145】
市販の硬化成分としては、日本曹達から商品名ニッソーキュアで市販されているものが挙げられる。
【0146】
硬化成分は、樹脂組成物全体に基づいて、約0.1重量%~約20重量%、例えば約2重量%~約12重量%の量で包含されるべきである。
【0147】
以下の例に示すように、様々な添加剤を包含してよい。しかしながら、特に注目すべきは、BYKケミーからディスーパーBYKの商品名で市販されている分散剤等の分散剤である。
【0148】
成形された、電気的に相互接続された半導体装置の製造方法も本明細書で提供される。この方法には、以下を含む工程が包含される:
ウェハを提供する工程;
本明細書に開示されているように、室温で流動性状態である熱硬化性樹脂組成物をウェハの表面の少なくとも一部に分配する工程;
ウェハ及び熱硬化性樹脂組成物を、組成物を硬化させるのに適した高温条件に曝露して、ウェハ上に反応生成物を形成する工程;
そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;及び
硬化した反応生成物にアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程。
【0149】
いくつかの実施形態では、方法は以下を包含してよい:
硬化した熱硬化性樹脂組成物の反応生成物の表面の少なくとも一部の上に、熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を分配する工程;
熱硬化性樹脂組成物のさらなる部分を、組成物を硬化して反応生成物を形成するのに適した高温条件に曝露する工程;
そのように形成された反応生成物を所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露して、反応生成物をその所定のパターンでアブレーションし、そうすることでスピネル結晶の残留物を曝露する工程;及び
硬化した反応生成物にアブレーションされた所定のパターン上にめっきを行う工程。
【0150】
この方法を複数回繰り返して、所定のパターンに従って三次元成形された電気的に相互接続された半導体装置を構築してよい。
【0151】
もちろん、成形された電気的に相互接続された半導体装置も提供される。この装置は、高温条件への曝露により反応生成物に硬化され、所定のパターンでレーザーエネルギーに曝露され、めっきによりその所定のパターン上にメタライゼーションが形成された本発明の熱硬化性樹脂組成物がその上及び/又は周囲に配置されたウェハを包含する。
【0152】
次の実施例は、説明のみを目的として提供される。
【実施例】
【0153】
現在、再構成ウェハは通常、直径8インチ又は12インチになるように作られている。使用の際、ウェハを封入するために使用される熱硬化性樹脂組成物を、空気圧によって、又はウェハの中央部分の上若しくは周囲にピストン分配によって分配してよい。再構成ウェハの他に、本発明の組成物は、ブランクウェハ及びトレンチ付きウェハ上にも成形してよい。
【0154】
続いて、約110℃~130℃の温度で約120~420秒間、液体圧縮成形条件に曝露する。例えば、
図1を参照。このような曝露後、圧縮成形されたウェハは、成形後硬化のために、約120℃~約150℃未満の温度、例えば約120℃~約130℃の温度で、約15分~1時間、従来のオーブンに入れられてもよい。望ましくは、8インチ、厚さ600μmの成形ウェハは、ウェハの横方向で約3mm未満の反りを示すべきである。
【0155】
典型的なステンシル印刷方法では、液体成形化合物が室温で基材上に塗布され、その上にシム又はステンシルがスペーサーとして使用される。液体成形化合物を金属スキージで基材表面に広げてフィルム層を形成する。シム又はステンシルの厚さによって、基材上に形成されるフィルム層の厚さが決まる。例えば、
図2を参照。ステンシル印刷後、ステンシル印刷されたウェハを、成形後硬化のために、約120℃~約150℃未満の温度、例えば約120℃~約130℃の温度で、約15分~1時間、従来のオーブンに入れてもよい。望ましくは、8インチ、厚さ600μmの成形ウェハは、ウェハの横方向で約3mm未満の反りを示すべきである。
【0156】
対照組成物(試料番号2及び4)を、熱硬化性樹脂、シリカ充填剤、硬化剤、及び着色剤を含む添加剤から調製した。さらに、他の2つの組成物(試料番号1及び3)を本発明に従って調製した。最初の2つの組成物は、印刷可能な封入剤形式の液体成形化合物として塗布するために配合した(
図2を参照)。残りの2つの組成物は、液体圧縮成形用途のために配合した(
図1を参照)。組成物の粘度安定性を評価し、シリコンチップが配置されたキャリアに塗布し、上述のように成形した。
【0157】
成形されたウェハの反りは、ニコンNEXIVスキャニングシステムによって、又はX方向及びY方向のシャドーモアレを使用することによって、又は定規によって推定することによって測定できる。
【0158】
成形されたウェハの反りは、成形及び成形後プロセス後に測定した。
【0159】
下記表1を参照すると、記載の成分を記載の量で配合した対照組成物(試料番号2及び4)並びに本発明の組成物(試料番号1及び3)が示される。
【0160】
【0161】
それぞれの組成物を、均質な溶液への溶解が観察されるまで機械的ミキサーを用いて記載の成分を一緒に混合することによって調製した。次いで、実質的に均一な稠度を有する粘稠なペーストが得られるまで、室温で約30~約60分間継続的に混合しながらシリカ充填剤を添加した。次に、使用の準備ができるまで試料を容器に移した。
【0162】
最初の2つの組成物をそれぞれ、キャリアとしてのシリコンウェハ中心の上及び周囲に分配した。約120℃~約130℃未満の温度で約200秒~約400秒間圧縮成形した後、組成物は約60~約80%硬化していることが観察され、表面は粘着性がなかった。次いで、そのように成形されたウェハを、約120℃~約150℃の温度で約15分~約1時間、成形後硬化のために従来のオーブンに入れた。
【0163】
意図された使用においては、LCM形式の本発明の組成物を、再構成ウェハの活性側上に分配し、加圧下(約98KN)、約110℃~約130℃の高温で約3分間~約7分間成形されてよい。次いで、成形されたウェハアセンブリは、約1時間~約2時間の間、約130℃~約150℃の高温にさらされてもよい。望ましくは、200μmの硬化材料では、8インチ、600μm厚のシリコンウェハは、成形後硬化の後に約3cm未満、望ましくは約2cm未満の反りを示すべきである。
【0164】
成形されたウェハは、剥離され、再配線層でコーティングされ、はんだバンプが適用され、その後、単一の半導体パッケージにダイスカットされる。
【0165】
下記表2には、試料を最初に約120℃~約130℃未満の温度の圧縮成形条件に約200秒~約400秒間曝露した後、さらにオーブン内で約120℃~約150℃の温度に約15分~約1時間曝露した後、観察及び測定された弾性率及びCTE(α1又は1、及びα2又は2)等の機械的特性を包含する特定の物理的特性が示される。
【0166】
【0167】
表2に示すように、スピネル結晶充填剤添加剤を含む液体成形化合物封止剤(試料番号2及び4)は、対照組成物(試料番号1及び3)と同様の物理的特性を有する。別の言い方をすれば、スピネル結晶充填剤の添加は、基材上への分配、印刷、及び塗布等の材料の適用処理条件にほとんど影響を与えず、また驚くべきことに、得られる硬化反応生成物の特性にも大きな影響を与えない。したがって、ここでの最終用途の用途では、組成の変更は、たとえあったとしてもほとんど必要ない可能性がある。
【0168】
「熱機械分析による固体材料の線形熱膨張の標準試験方法」ASTM国際指定:E831-06、2006年4月発行(「E831-06」)には、「熱機械分析技術を使用して固体材料の熱膨張係数の見かけの係数を決定する」試験方法が記載されている。E831-06の段落1.1を参照。この一般的な方法を、CTEα1又は1の測定に使用した。
【0169】
「プラスチックの標準試験法:動的機械的性質:曲げ(3点曲げ)」ASTM国際指定:D5023-01、2001年11月発行(「D5023-01」)は、「様々なプラスチック材料の温度の関数として弾性率を決定する手段を提供することを目的とした」試験方法を開示している。D5023-01の段落1.2を参照。この一般的な方法を貯蔵弾性率の測定に使用した。
【0170】
フリップチップ半導体パッケージで高いTgと低い反りを実現するには、低温硬化条件(約130℃未満)が必要で、そのような低温硬化条件にさらされた後に急速なゲル化を示す組成物が反りに影響を与えることが示されている。硬化した組成物のTgは、組成物を硬化するために使用される温度以上でなければならない;Tgは90℃以上、望ましくは125℃以上である必要がある。組成物の硬化が遅い場合、又はより高い温度で硬化する場合、金型及び基材セットの間の無応力点は高い。
【0171】
このような圧縮成形された半導体パッケージの-55℃~125℃の熱サイクル性能について高い信頼性を達成するには、液体圧縮成形材料は、260℃でのリフロー後のTMAによるTgが90℃以上、望ましくは125℃以上、DSCでの開始とピークの間のデルタ温度は20℃以下である必要がある。
【0172】
本発明の組成物は、硬化すると以下の特性を達成する:
a)DMA(3点曲げ法、5℃/分)で測定した,室温(25℃)での貯蔵弾性率が、25GPas以下の範囲、
b)TMA(ランプ速度5℃/分)で測定したCTEα1が15ppm/℃以下、CTEα2が30ppm以下、
c)TMA(3点曲げ法、ランプ速度5℃/分)で測定した少なくとも1つのTgが135℃以上。
【0173】
図3に示すように、硬化した反応生成物は、レーザーアブレーションによってレーザー活性化され、スピネル結晶が凝集して表面に露出し、めっき可能となる。
【0174】
以下の表3は、試料番号1及び3によって示されるLDS材料のめっき性能について観察及び収集されたデータを、ポカン基準と比較して示している。試料番号1及び3を、それぞれ
図2及び
図1に示すように、シリコンウェハ基材上に塗布し、硬化した。硬化した試料番号1及び2のそれぞれ、並びにポカン基準を、
図3に示したものと同じレーザーアブレーション及びめっきのプロセスを使用して評価した。ポカン標準は、標準として使用されるスピネル結晶充填剤を含有する市販の熱可塑性材料である。
【0175】
【0176】
平均めっき指数は、対照として使用される市販の熱可塑性LDS材料と比較して、レーザーアブレーションされた硬化反応生成物がめっきされる程度を示す。一般に、平均めっき指数の値が高いほど、めっき性は優れている。
【国際調査報告】