(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】薄膜基板を搬送するための真空処理システム、装置および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20241108BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241108BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C23C14/56 A
H01L21/205
H01L21/31 B
H01L21/31 C
H01L21/68 A
C23C16/44 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524674
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021079646
(87)【国際公開番号】W WO2023072371
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】シュナッペンベルガー フランク
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029CA01
4K029CA05
4K029DC16
4K029DC25
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4K029KA03
4K030CA17
4K030GA14
5F045AA03
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5F131AA10
5F131AA33
5F131AA34
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5F131BA17
5F131CA02
5F131CA23
5F131DA20
5F131DC13
5F131DC22
(57)【要約】
真空条件下で薄膜基板(12)を搬送するための装置(10)が記述される。搬送用の装置(10)は、第1の基板対向面部分(104)を含む基板対向面(102)付きの回転可能ローラ(100)を含み、基板対向面(102)は、1つまたは複数のガス出口(105)を含み、1つまたは複数のガス出口は、ガス流を放出するように構成されており、ローラは、堆積領域(106)および少なくとも1つの非堆積領域(108)を含む。装置はさらに、ガス流を1つまたは複数のガス出口(105)から、薄膜基板(12)と第1の基板対向面部分(104)との間の隙間に供給するためのガス分配システム(400)と、少なくとも1つの非堆積領域(108)に設けられた1つまたは複数の封止ベルト(122)を含む封止ベルトコンベヤシステム(120)とを含む。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空条件下で薄膜基板(12)を搬送するための装置(10)であって、
第1の基板対向面部分(104)を備える基板対向面(102)付きの回転可能ローラ(100)を備え、
前記基板対向面(102)が1つまたは複数のガス出口(105)を備え、前記1つまたは複数のガス出口が、ガス流を放出するように構成されており、
前記ローラが、堆積領域(106)および少なくとも1つの非堆積領域(108)を備え、前記装置はさらに、
前記ガス流を前記1つまたは複数のガス出口(105)から、前記薄膜基板(12)と前記第1の基板対向面部分(104)との間の隙間に供給するためのガス分配システム(400)と、
前記少なくとも1つの非堆積領域(108)に設けられた1つまたは複数の封止ベルト(122)を備える封止ベルトコンベヤシステム(120)と
を備える装置(10)。
【請求項2】
前記1つまたは複数の封止ベルト(122)が、前記薄膜基板(12)と前記第1の基板対向面部分(104)との間の隙間を封止するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が、前記1つまたは複数の封止ベルト(122)を前記第1の基板対向面部分(104)に設けるように、および、前記薄膜基板を前記回転可能ローラに、詳細には前記少なくとも1つの非堆積領域(108)に押し付けるように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が、前記薄膜基板を前記少なくとも1つの非堆積領域(108)に所定の力で押し付けるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ローラ(100)が、前記ローラ(100)の中心軸(A)の両側に2つの非堆積領域(108)を備え、前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が、第1の封止ベルト搬送軌道(124)および第2の封止ベルト搬送軌道(126)を備え、前記第1の封止ベルト搬送軌道(124)および前記第2の封止ベルト搬送軌道(126)が、前記2つの非堆積領域(108)に設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が2つの封止ベルト(122)を備え、前記2つの封止ベルト(122)の一方が、前記第1の封止ベルト搬送軌道(124)に設けられ、前記2つの封止ベルト(122)の他方が、前記第2の封止ベルト搬送軌道(126)に設けられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が、1つもしくは複数の第1のロール(125)および/または1つもしくは複数の第2のロール(127)を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の封止ベルト搬送軌道(124)および前記第2の封止ベルト搬送軌道(126)が、前記1つまたは複数の第2のロール(127)を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記1つまたは複数の第1のロール(125)が、前記1つまたは複数の第2のロール(127)よりも大きい直径を有し、前記1つまたは複数の第1のロール(125)が、前記封止ベルトおよび前記薄膜基板(12)を案内するように構成されている、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が支持体(130)を備え、前記支持体(130)が前記ローラ(100)の垂直下方に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記支持体(130)が、第1の支持壁(132)および第2の支持壁(134)を備え、前記第1および第2の支持壁が、前記ローラ(100)の前記中心軸(A)の両側に配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記支持体(130)が1つまたは複数のスペーサ(134)を備え、前記スペーサが、前記ローラの前記堆積領域(106)の幅に対応する長さを備え、前記第1の支持壁(132)と前記第2の支持壁(134)の間に配置されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の支持壁(132)および前記第2の支持壁(134)のそれぞれが、第1の壁部(133)および第2の壁部(135)を備え、詳細には、前記第1の支持壁(132)および前記第2の支持壁(134)それぞれがヒンジ(136)を備え、前記ヒンジが、前記第1の壁部(133)と前記第2の壁部(135)との間の角度(α)を変えるように構成されている、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の壁部分(133)が固定されており、前記第2の壁部分(135)が可動である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の第2のロール(127)が前記第2の壁部(135)に配置されている、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
前記封止ベルトコンベヤシステム(120)が、前記1つまたは複数の封止ベルト(122)を移動させるためのアクチュエータを備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
材料を薄膜基板(12)に堆積させるための真空処理システム(200)であって、
処理チャンバ(220)と、
請求項1~16のいずれか1項に記載の装置(10)と
を備える、真空処理システム(200)。
【請求項18】
コントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記ローラ(100)の第1の速度と、前記1つまたは複数の封止ベルト(122)の第2の速度とを調節するためのコマンドを発行するように構成されている、請求項17に記載の真空処理システム(200)。
【請求項19】
真空条件下で薄膜基板(12)を搬送する方法(600)であって、
第1の基板対向面部分(104)を含む基板対向面(102)付きの回転可能ローラ(100)を越えて前記薄膜基板を移動させるステップであって、前記ローラが堆積領域(106)および少なくとも1つの非堆積領域(108)を含む、ステップと、
前記薄膜基板(12)と前記第1の基板対向面部分(104)との間の隙間にガス流を供給するステップと、
前記少なくとも1つの非堆積領域(108)において、前記薄膜基板(12)と前記第1の基板対向面部分(104)との間の前記隙間を封止ベルトコンベヤシステム(120)の1つまたは複数の封止ベルト(122)で封止するステップと
を含む、方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、フレキシブル基板または薄膜基板を搬送するための装置に関する。さらに、本開示の実施形態は、フレキシブル基板または薄膜基板の処理のための、詳細には、フレキシブル基板を薄層でコーティングするための、または材料を薄膜基板もしくはフレキシブル基板に堆積させるための装置、システムおよび方法に関する。特に、本開示の実施形態は、フレキシブル基板を層のスタックでコーティングするための、たとえば、薄膜太陽電池製造、薄膜電池製造、またはフレキシブルディスプレイ製造のためのシステムおよび方法において、フレキシブル基板の搬送のために使われる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムまたは箔などのフレキシブル基板の処理は、パッケージング産業、半導体産業、および他の産業において需要が高い。処理は、金属、半導体、誘電体材料などの材料を用いたフレキシブル基板のコーティングと、エッチングと、それぞれの用途のために基板に対して行われる他の処理操作とから構成され得る。このタスクを実施するシステムは通常、基板を搬送するためのローラアセンブリを備える処理システムに結合された、基板の少なくとも一部分がその上でコーティングされるコーティングドラム、たとえば円筒形ローラを含む。
【0003】
たとえば、CVD処理、PVD処理または蒸着処理などのコーティング処理は、フレキシブル基板に薄層を堆積させるのに使うことができる。ロールツーロール堆積装置とは、1キロメートル以上などのかなりの長さのフレキシブル基板が供給スプールからほどかれ、薄層のスタックでコーティングされて、再び巻き取りスプールに巻き取られるもの、と理解される。特に、薄膜電池、たとえばリチウム電池、ディスプレイ産業および光電池(PV)産業の製造では、ロールツーロール成膜システムへの関心が高い。たとえば、フレキシブルタッチパネル要素、フレキシブルディスプレイ、およびフレキシブルPVモジュールの高まる需要により、適切な層をロールツーロールコータで堆積させることに対する需要が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高品質のコーティングをフレキシブル基板上に実現するためには、フレキシブル基板搬送に関する様々な難題が克服されなければならない。たとえば、真空条件下で移動するフレキシブル基板の処理中に、適切な基板張力、ならびに良好な基板ローラ接触および基板冷却を実現することは、依然として難題である。
【0005】
上記を考慮して、真空条件下で薄膜基板を搬送するための装置が提供される。この装置は、第1の基板対向面部分を含む基板対向面付きの回転可能ローラを含み、基板対向面は、1つまたは複数のガス出口を含み、1つまたは複数のガス出口は、ガス流を放出するように構成されており、ローラは、堆積領域および少なくとも1つの非堆積領域を含む。装置はさらに、1つまたは複数のガス出口からガス流を薄膜基板と第1の基板対向面部分との間の隙間に供給するためのガス分配システムと、少なくとも1つの非堆積領域に設けられた1つまたは複数の封止ベルトを含む封止ベルトコンベヤシステムとを含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、材料を薄膜基板上に堆積させるための真空処理システムが提供される。この真空処理システムは、本明細書に記載の実施形態による処理チャンバおよび装置を含む。
【0007】
本開示のさらなる態様によれば、真空条件下で薄膜基板を搬送する方法が提供される。この方法は、第1の基板対向面部分を含む基板対向面付きの回転可能ローラを越えて薄膜基板を移動させるステップであって、ローラが堆積領域および少なくとも1つの非堆積領域を含む、ステップと、薄膜基板と第1の基板対向面部分との間の隙間にガス流を供給するステップと、少なくとも1つの非堆積領域において、薄膜基板と第1の基板対向面部分との間の隙間を封止ベルトコンベヤシステムの1つまたは複数の封止ベルトで封止するステップとを含む。
【0008】
実施形態はまた、開示された方法を実施するための装置を対象とし、記載された各方法態様を実施するための装置部分を含む。これらの方法態様は、ハードウェア構成要素、もしくは適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータによって、これら2つの任意の組み合わせによって、または他の任意の手法で実施することができる。さらに、本開示による実施形態はまた、記載された装置を動作させるための方法を対象とする。この実施形態は、装置のあらゆる機能を実行するための方法態様を含む。
【0009】
上記で言及された本開示の特徴を細部にわたって理解できるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって得られることがある。添付の図面は、本開示の実施形態に関連しており、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に記載の実施形態による装置を概略的に示す図である。
【
図2】本明細書に記載の実施形態による装置の一部分を概略的に示す図である。
【
図3A】本明細書に記載の実施形態による装置の概略側面図である。
【
図3B】本明細書に記載の実施形態による装置の概略前面図である。
【
図4A】本明細書に記載の実施形態による装置の概略底面図である。
【
図4B】本明細書に記載の実施形態による装置の概略底面図である。
【
図5】本明細書に記載の実施形態によるシステムを概略的に示す図である。
【
図6】本明細書に記載の実施形態による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、1つまたは複数の例が図に示されている、本開示の様々な実施形態を詳細に参照する。以下の図面の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。概して、個々の実施形態に関する相違点だけが説明される。各例は、本開示の説明として提供されており、本開示を限定するものではない。さらに、1つの実施形態の一部として図示または説明された特徴は、別の実施形態がさらに得られるように他の実施形態に使用すること、または他の実施形態と組み合わせて使用することができる。本明細書は、そのような修正形態および変形形態を含むものである。
【0012】
図面についての以下の説明の中で同じ参照番号は、同じまたは同様の構成要素を指す。概して、個々の実施形態に関する相違点だけが説明される。特にことわらない限り、1つの実施形態の一部分または態様についての説明は、別の実施形態における対応する部分または態様にも同様に適用される。
【0013】
図1を例として参照すると、薄膜基板12を搬送するための装置10が提供される。本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、装置は、基板対向面102付きの回転可能ローラ100を含む。基板対向面102は、基板対向面部分104を含む。さらに、基板対向面102は、1つまたは複数のガス出口(
図1には示されていない)を含む。1つまたは複数のガス出口は、ガス流を放出するように構成されており、
図2に関してさらに説明される。ローラは、堆積領域および少なくとも1つの非堆積領域をさらに含む。装置は、ガス分配システムおよび封止ベルトコンベヤシステムをさらに含む。
【0014】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、回転可能ローラ100は、中心回転軸Aのまわりに回転可能であり得る。ローラは、回転方向Rおよび/またはR’に回転することができる。回転可能ローラ100またはローラは、薄膜基板またはフレキシブル基板12を搬送するように構成され得る。
【0015】
本開示では、「フレキシブル基板」または「薄膜基板」は、折り曲げ可能な基板と理解されてよい。たとえば、「フレキシブル/薄膜基板」は、「箔」または「ウェブ」であり得る。本開示では、用語「フレキシブル基板」、用語「基板」、および用語「薄膜基板」は、同義に使用されることがある。たとえば、本明細書に記載のフレキシブル基板は、PET、HC-PET、PE、PI、PU、TaC、OPP、BOOP、CPP、1つまたは複数の金属(たとえば、銅)、紙、これらの組み合わせ、およびハードコートPET(たとえば、HC-PET、HC-TaC)などのような既にコーティングされた基板のような材料で作製されてよく、またはこれらを含んでよい。いくつかの実施形態では、フレキシブル基板は、その両面にインデックス整合(IM)層を備えたCOP基板である。たとえば、基板の厚さは、1μm以上で1mm以下、詳細には500μm以下、さらには200μm以下とすることができる。さらに詳細には、基板は4μmの厚さを有することができる。基板幅WSは、0.1m≦W≦6mとすることができる。基板は、透明または非透明な基板であってよい。詳細には、基板は金属箔、たとえば銅箔であってよい。
【0016】
本開示では、「回転可能ローラ」または「ローラ」は、(フレキシブル)基板と接触するための基板対向面102を有するドラムまたはローラと理解されてよい。「フレキシブル基板と接触するための基板対向面」という表現は、ローラの外面が、フレキシブル基板の案内中または搬送中にフレキシブル基板に接触するように構成されていること、と理解されてよい。通常、基板対向面は、ローラの湾曲外面であり、詳細には円筒形外面である。したがって、通常、ローラは回転軸のまわりに回転可能であり、基板対向面部分104を含む。通常、基板対向面部分104は、ローラの湾曲基板対向面、たとえば円筒形対称面の一部である。ローラの湾曲基板対向面は、フレキシブル基板の案内中にフレキシブル基板と(少なくとも部分的に)接触するように適合させることができる。基板対向面部分は、基板の案内中に湾曲基板対向面と基板が接触する、ローラの角度範囲として定義することができ、ローラの巻き付け角度に対応し得る。たとえば、ローラの巻き付け角度は、90°以上、詳細には180°以上、さらには270°以上であってよい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わされることが可能ないくつかの実施形態によれば、回転可能ローラ100は円筒形であり、0.2m≦L≦8.5mの長さLを有する。さらに、ローラは0.1m≦D≦3.0mの直径Dを有し得る。したがって、有利には、ローラは、大きい幅のフレキシブル基板を案内および搬送するように構成される。
【0017】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、回転可能ローラ100は、基板対向面102を含む。基板対向面は、基板に対向する、かつ/または基板を案内するドラム表面の一部または一領域と見ることができる。たとえば、基板対向面102は、基板に隣接する、または基板に接触し得るローラの表面と理解されてよい。特に、基板対向面102は、コーティング中または堆積処理中にコーティングされる基板の面から引き離されている基板の面に隣接し得る。基板対向面102は、基板対向面部分104、すなわち、基板がローラの基板対向面と接触するローラの部分を含む。基板はローラによって移動するので、基板対向面部分104は連続的に変わり得る。すなわち、基板対向面部分104は、基板の(ローラの回転による)搬送中に所与の時点までローラに隣接またはローラに接触している、基板のそれぞれの部分に対応し得る。
【0018】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、装置10は、ガス流を1つまたは複数のガス出口から、薄膜基板12と第1の基板対向面部分104との間の隙間に供給するためのガス分配システム400を含む。ガス分配システム400は、ローラに接続されたシステムであるように
図1に例示的に示されている。当業者であれば、ガス分配システムがローラ内に(少なくとも部分的に)設けられてもよいことが理解されよう。一般に、ガス分配システムはローラに接続することができ、ローラの表面に配置された1つまたは複数のガス流出口からガス流を供給することができる。ローラ内部に、ガス供給チャネルを設けることができる。ガス供給チャネルは、1つまたは複数のガス出口に接続することができる。詳細には、ガス流は、基板対向面部分104で供給することができ、すなわち、ガス流は、基板が基板対向面102に接触し得る1つまたは複数のガス出口から供給することができる。基板とローラの基板対向面の間の距離、すなわち基板と基板対向面102との間の隙間の寸法は、基板に向けて供給できるガス流の圧力に応じて変わり得る。
【0019】
有利には、ガス流は、基板が回転可能ローラ100に直接接触するのを防止するように供給することができる。ガス流はさらに、ローラを経由して搬送される基板を冷却するために供給することもできる。したがって、堆積中に高い堆積温度が基板に加えられるときに、ガス流により基板の損傷を防止または回避することができる。たとえば、回転可能ローラ100は、0~-10℃の間の温度まで、詳細には-11℃~-15℃の温度まで、より詳細には-16℃~-20℃の温度まで冷却されて、搬送される基板を十分に冷却することができる。たとえば、堆積材料は、280℃~290℃の温度で基板に向けて供給されることがある。それに応じて、回転可能ローラの冷却は、堆積材料の温度が堆積材料の融点未満に低くなるように設定され得る。さらに、それに応じて、このように作製された堆積材料は基板にとどまる。
【0020】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、ガス流は冷却ガスを含み得る。冷却ガスは、不活性ガスであってよい。冷却ガスは、ヘリウム(H2)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)および/またはこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。実施形態によれば、ガス流は、圧力Pgで供給することができる。圧力Pgは、0~100ミリバールでよく、詳細には1~10ミリバールでよい。実施形態によれば、ガス流によって基板対向面または基板対向面部分に供給されるガスの体積は、0.1cm3~500cm3でよく、詳細には1~100cm3でよく、より詳細には2~10cm3でよい。
【0021】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、装置は、封止ベルトコンベヤシステムを含む。封止ベルトコンベヤシステム120は、1つまたは複数の封止ベルト122を含み、少なくとも1つの非堆積領域に設けられる。封止ベルトコンベヤシステム120は、1つまたは複数の封止ベルト122を第1の基板対向面部分104に設けるように構成することができる。さらに、封止ベルトコンベヤシステムは、基板を回転可能ローラ100に押し付けるように、すなわち少なくとも1つの非堆積領域108に押し付けるように構成することもできる。詳細には、1つまたは複数の封止ベルト122を回転可能ローラ100に押し付けることができる。さらに詳細には、1つまたは複数の封止ベルト122は、回転可能ローラ100の少なくとも1つの非堆積領域108に設けることができる。実施形態によれば、1つまたは複数の封止ベルト122は、薄膜基板12と第1の基板対向面部分104との間の隙間を封止するように構成することができる。したがって、封止ベルトコンベヤシステム120は、冷却ガスが隙間から漏れるのを防止するように構成することができる。
【0022】
有利には、ローラの端部でローラに向けて封止ベルトによって圧力を与えることによって、基板は、ローラに対して固定して搬送することができる。したがって、基板を冷却するために供給されるガス流は、ローラの両側で、基板とローラの間の隙間から漏れることがないか部分的にしか漏れない。したがって、基板の過度の浮きを防止または回避することができる。したがって、基板は、回転可能ローラ上で平坦なままであることが可能であり、基板への材料堆積がより均一になる。薄膜基板にしわまたは折り目が形成されることを回避または防止することができる。したがって、基板処理の歩留まりを向上させることができる。さらに有利には、真空チャンバに漏れるガスを少なくすることができる。すなわち、真空状態の維持が容易になり得る。したがって、処理チャンバ内を真空にするための装置、たとえばポンプがあまり頻繁に使用されなくてもよいので、堆積処理をより効率的に、かつエネルギー消費をより少なくすることができる。
【0023】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図2が例として参照される実施形態によれば、回転可能ローラ100は、堆積領域106と、少なくとも1つの非堆積領域108とを含む。堆積領域106は、コーティング中または堆積中にコーティング材料または堆積材料が基板に到達し得る基板の領域に対応する、ローラの一部として理解されてよい。詳細には、堆積領域106は、ローラの長さに沿って約2/3だけ延び、詳細には3/4だけ、より詳細には4/5だけ、さらに詳細には5/6だけ延びる、円筒形ローラの基板対向面102または基板対向面部分104の一部であり得る。これとは対照的に、非堆積領域108は、コーティング中または堆積中にコーティング材料または堆積材料が基板に到達し得ない基板の領域に対応する、ローラの一部として理解されてよい。詳細には、非堆積領域108は、ローラの長さに沿って約1/3だけ延び、詳細には1/4だけ、より詳細には1/5だけ、さらに詳細には1/6だけ延びる、円筒形ローラの基板対向面102または基板対向面部分104の一部であり得る。詳細には、回転可能ローラ100は、ローラの長さの軸方向両端部に2つの非堆積領域を含み得る。言い換えれば、回転可能ローラは、ローラの中心軸の両側に2つの非堆積領域を含み得る。非堆積領域108は、ローラの長さのうちのローラの最も外側に配置され得る。
【0024】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、回転可能ローラは、回転可能ローラ100の軸方向両端部、すなわちローラの長さの軸方向両端部またはローラの中心軸Aの軸方向両端部に2つの非堆積領域を含み得る。軸方向両端部のそれぞれに、1つまたは複数の封止ベルト122のうちの1つの封止ベルトを設けることができる。したがって、基板は、ローラの軸方向両端部において、回転可能ローラ100に押し付けられ得る。言い換えれば、封止ベルトコンベヤシステム120は、薄膜基板を少なくとも1つの非堆積領域108に、詳細にはローラの軸方向両端部の2つの非堆積領域に、所定の力で押し付けるように構成することができる。所定の力は、1ミリバール~2000ミリバール、詳細には10~500ミリバールの圧力Ppdであってよい。加えて、または代替として、1つまたは複数の封止ベルトには張力が与えられてもよい。1つまたは複数の封止ベルトの張力は、1~500N、詳細には10~200Nでよい。
【0025】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1つまたは複数の封止ベルト122は、熱的に厳しい環境での使用に適しているフレキシブル材料および/または折り曲げ可能な材料で作製することができる。さらに、1つまたは複数の封止ベルト122は、真空環境での使用に適している材料で作製することもできる。たとえば、1つまたは複数の封止ベルト122は、任意の種類のプラスチック、具体的には熱硬化性ポリマー、たとえばアルミナのような金属、ゴム、ポリウレタン、アラミド繊維で強化されたポリクロロプレン複合物、バナジウム鋼、PET、ポリアミド、ポリクロロプレン、ポリエステルおよび/またはこれらの組み合わせから作製することができる。1つまたは複数の封止ベルトは、厚さが0.01~5cm、詳細には0.05~2cm、より詳細には0.1~1cmであってよい。
【0026】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図1が再び例として参照される実施形態によれば、封止ベルトコンベヤシステム120は、第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126を含み得る。第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126は、2つの非堆積領域108に設けることができる。したがって、第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126は、回転可能ローラ100の軸方向両端部に設けることができる。実施形態によれば、封止ベルトコンベヤシステムは、2つの封止ベルト122を含むことができ、2つの封止ベルト122のうちの一方は、第1の封止ベルト搬送軌道124に設けることができ、2つの封止ベルト122のうちの他方は、第2の封止ベルト搬送軌道126に設けることができる。第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126は、ローラの中心軸または長さの軸方向両端部に配置することができる。言い換えれば、第1の封止ベルト搬送軌道124と第2の封止ベルト搬送軌道126は、ローラの長さだけ離れたローラの端部で互いに対向し得る。
【0027】
有利には、1つまたは複数の封止ベルトは、堆積材料が基板に到達し得る領域の外側に設けられるので、堆積処理を妨げるおそれがない。したがって、1つまたは複数の封止ベルトは、堆積処理による影響を全くまたはほとんど受けずに、基板をローラのところに有利なように保持して堆積を改善することができる。
【0028】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、封止ベルトコンベヤシステム120は、1つまたは複数の第1のロール125および/または1つまたは複数の第2のロール127を含み得る。1つまたは複数の第1のロール125は、1つまたは複数の第2のロール127よりも直径が大きいことがある。1つまたは複数の第1のロール125は、基板および/または1つまたは複数の封止ベルトをローラのところに保持するように構成することができる。1つまたは複数の第1のロールは、基板をローラに押し付けるように構成することができる。すなわち、1つまたは複数の第1のロールは、ローラと基板の間で追加の封止をするように構成することができる。言い換えれば、1つまたは複数の第1のロールは、基板とローラの基板対向面との間で追加の封止を行うように構成することができる。1つまたは複数の第1のロールは、1つまたは複数の封止ベルトおよび基板を案内するように構成することができる。
【0029】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、装置は2つの第1のロールを含むことができ、一方の第1のロールはローラの第1の側に配置され、他方の第1のロールはローラの第2の側に配置され得る。ローラの第1の側および第2の側は、基板が搬送されるそれぞれの側であってよい。
図1で見ることができるように、2つの第1のロールは、ローラの中心軸に平行な軸を含み得る。したがって、1つまたは複数の第1のロールのそれぞれは、ローラの軸方向両端部に隣接する軸方向両端部を有することができる。1つまたは複数の封止ベルトのうちの第1の封止ベルトは、2つの第1のロールの一方の端部で2つの第1のロール間に架けることができ、1つまたは複数の封止ベルトのうちの第2の封止ベルトは、2つの第1のロールの反対側の端部で2つの第1のロール間に架けることができる。1つまたは複数の第1のロールは、1つまたは複数の第1のロールおよび回転可能ローラ100に沿って案内しやすくするための、第1の封止ベルトおよび第2の封止ベルトのサイズが適合する、すなわち1つまたは複数の封止ベルト122の幅が適合する、案内部分を含み得る。
【0030】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1つまたは複数の第2のロール127は、1つまたは複数の封止ベルト122を案内する助けになるように構成することができる。たとえば、
図1に例として見られるように、1つまたは複数の第2のロール127は、1つまたは複数の第1のロール125の上方に配置することができる。1つまたは複数の第2のロールは、所定の圧力を基板に与えることもできるように配置することができる。1つまたは複数の第2のロールの位置、および1つまたは複数の封止ベルトの全長は、封止ベルトコンベヤシステムまたは1つもしくは複数の封止ベルトが所定の圧力を基板に与えることができるように選択することができる。
【0031】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、封止ベルトコンベヤシステム120は、1つまたは複数の封止ベルトをローラとともに移動させるためのアクチュエータを含み得る。代替として、1つまたは複数の封止ベルトは、ローラが移動することによって移動させることができる。すなわち、外部アクチュエータが封止ベルトコンベヤシステムに設けられなくてもよい。1つまたは複数の封止ベルトは、ローラの回転方向に移動させることができる。1つまたは複数の封止ベルトは、ローラの回転速度と同様の速度で移動させることができる。
【0032】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図2が再び例として参照される実施形態によれば、回転可能ローラ100は、基板対向面102を含む。基板対向面は、1つまたは複数のガス出口105を含み得る。1つまたは複数のガス出口105は、ガス流を放出するように構成することができる。ガス流は、ガス分配システムによって供給され得る。1つまたは複数の流出口は、基板対向面にわたって分布させることができる。1つまたは複数のガス出口は、あるパターンで配置することができ、かつ/または基板対向面102全体にわたってランダムに分布させることができる。詳細には、1つまたは複数のガス出口は、ローラの堆積領域106内に設けることができる。実施形態によれば、任意の個々のガス出口、ガス出口の任意のサブグループ、またはすべてのガス出口は、開口、孔、スリット、ノズル、送風管、スプレーバルブ、ダクト開口、オリフィス、ジェット、多孔性材料によって形成される出口などからなる群から選択することができる。たとえば、基板対向面は、多孔性層、すなわち多孔性材料を含む層を含み得る。多孔性層は、ガス流を放出するように構成することができる。具体的には、同様の量または体積のガスを、設けられたガス出口に関係なく放出することができる。
図2に示されるように、1つまたは複数の封止ベルト122は、少なくとも1つの非堆積領域108に、
図2の例では、ローラの軸方向両端部の2つの非堆積領域に、設けることができる。
図2では基板が省略されていることを理解されたい。
【0033】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、基板対向面は、1cm2当たり1~10個の基板対向面のガス出口密度を含み得る。言い換えれば、基板対向面の1cm2当たりのガス出口の個数は、少なくとも1~20個、より詳細には1~5個であり得る。1つまたは複数のガス出口は、直径が5~200μm、より詳細には10~100μmであり得る。
【0034】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1つまたは複数のガス出口は閉鎖可能であり得る。したがって、基板対向面102に基板がないときに、すなわち、基板が基板対向面で現在搬送されていないときに、1つまたは複数のガス出口は閉鎖することができる。たとえば、1つまたは複数のガス出口は、ローラの回転位置に応じて1つまたは複数のガス出口を閉鎖する閉鎖部を含み得る。1つまたは複数のガス出口のそれぞれが閉鎖部を含み得る。閉鎖部は、フラップ、封止部などから選択されてよい。1つまたは複数のガス出口の閉鎖は自動的に、具体的には回転可能ローラ100の回転位置に応じて、調節することができる。したがって、ガス流は、基板が基板対向面部分と接触しているときに、または基板対向面部分によって案内されているときに供給することができる。
【0035】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図3Aおよび
図3Bが例として参照される実施形態によれば、装置10は支持体130を含み得る。支持体130は、ローラの上方、下方、および/または側方に配置することができる。特に、支持体130は、回転可能ローラ100の垂直下方に配置することができる。第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126は、支持体130に配置することができる。詳細には、支持体130は、第1の支持壁132および第2の支持壁134を含み得る。第1の支持壁132および第2の支持壁134は、回転可能ローラ100の中心軸の軸方向両端部に配置することができる。第1の支持壁132および第2の支持壁134の長さの延長部は、ローラの中心軸とは向きが異なっていてよい。第1の封止ベルト搬送軌道124および第2の封止ベルト搬送軌道126はそれぞれ、第1の支持壁132および第2の支持壁134に設けることができる。1つまたは複数の第1のロール125は、支持体の上方に配置することができる。支持体は、1つまたは複数の第1のロールを保持することができる。実施形態によれば、1つまたは複数の第1ロール125と1つまたは複数の第2ロール127は、互いに接触し得る。したがって、1つまたは複数の第1のロールおよび1つまたは複数の第2のロールを動かすための駆動力が伝達され得る。
【0036】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、支持体130は、1つまたは複数のスペーサ134を含み得る。1つまたは複数のスペーサは、ローラの堆積領域106の幅に対応する長さを含んでよく、第1の支持壁132と第2の支持壁134の間に配置することができる。スペーサは、ローラの中心軸に実質的に平行に延び得る。スペーサは、支持体130の第1の支持壁132および第2の支持壁134を支持し得る。1つまたは複数のスペーサは、基板への材料の堆積がローラの堆積部106において可能になるように配置することができる。
【0037】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図4Aおよび
図4Bが例として参照される実施形態によれば、第1の支持壁132および第2の支持壁134のそれぞれは、第1の壁部分133および第2の壁部分135を含み得る。さらに、第1の支持壁132および第2の支持壁134は、ヒンジ136を含み得る。ヒンジは、第1の壁部分133と第2の壁部分135の間の角度αを変えるように構成することができる。第1の壁部分133と第2の壁部分135は互いに平行であってもよい。ヒンジ136は、第1の壁部分133および第2の壁部分135の一方の端部で、第1の壁部分133と第2の壁部分135を連結することができる。第1の壁部分133および/または第2の壁部分135は、調整ねじ、強制ねじなどのアジャスタ138を含み得る。アジャスタ138は、第1の壁部分と第2の壁部分の間の角度αを変えるように構成することができる。
【0038】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の壁部分133は固定されていてよく、第2の壁部分135は可動であってよい。ヒンジ136は、第2の壁部分135の移動を可能にし得る。アジャスタ138は、第2の壁部分の位置を変えることができる。たとえば、アジャスタを調整することによって角度αが変えられて、第1の壁部分と第2の壁部分を互いに遠ざけたり近づけたりすることができる。たとえば、角度αは、0°~10°、詳細には0.5°~7°、より詳細には1°~5°とすることができる。角度は、
図4Bの白抜き矢印で示される回転方向に開くことができる。
【0039】
有利には、第1の壁部分と第2の壁部分の間に角度を付けること、すなわち第1の壁部分と第2の壁部分を離すことにより、しわまたは折り目を防止できるように基板を相反する方向に引っ張ることになり得る。言い換えれば、基板の張りを強くする張力は、第1の壁部分と第2の壁部分の間の角度を変えることによって与えることができる。こうして基板はまっすぐになり、堆積品質が改善される。したがって、基板へのより平坦で均一な堆積を実現することができる。さらに、堆積効率を改善することもできる。
【0040】
図5を例として参照して、本開示による真空処理システム200について説明する。本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理システム200は、複数の処理ユニット221を含む処理チャンバ220を含む。複数の処理ユニット221は、少なくとも1つの堆積ユニットを含む。さらに、真空処理システム200は、複数の処理ユニット221を通り越して基板を案内するための、本明細書に記載の任意の実施形態による回転可能ローラ100を含む搬送用の装置を含む。
図1に概略的に示されるように、回転可能ローラ100は、ガス分配システム400に接続されている。通常、ガス分配システム400は、本明細書に記載のように、冷却ガスを複数のガス出口105からフレキシブル基板に供給できるように、冷却ガスを回転可能ローラ100に供給するように構成される。
【0041】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図5に例として示されている実施形態によれば、通常、真空処理システム200は、ロールツーロール処理システムである。本明細書に記載の任意の実施形態による回転可能ローラ100は、真空処理システムの処理ドラムまたはコーティングドラムであってよい。本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理システム200は、フレキシブル基板12を供給するためのストレージスプール212を収容する第1のスプールチャンバ210を含む。
【0042】
加えて、真空処理システム200は、第1のスプールチャンバ210の下流に配置された処理チャンバ220を含む。通常、処理チャンバ220は真空チャンバであり、複数の処理ユニット221を含む。複数の処理ユニット221は、少なくとも1つの堆積ユニットを含む。したがって、本開示では、「処理チャンバ」は、材料を基板に堆積させるための少なくとも1つの堆積ユニットを有するチャンバとして理解されてよい。したがって、処理チャンバは堆積チャンバと呼ばれることもある。本明細書で使用される用語「真空」は、真空圧がたとえば10ミリバール未満である、技術的な真空の意味で理解されてよい。一般的に、本明細書に記載の真空チャンバ内の圧力は、10-5ミリバール~約10-8ミリバールの間であってよく、より一般的には10-5ミリバール~約10-7ミリバールの間、さらに一般的には約10-6ミリバール~約10-7ミリバールの間であってよい。
【0043】
図5に例として示されているように、複数の処理ユニットは、回転可能ローラ100のまわりに周方向に配置することができる。ローラが回転すると、フレキシブル基板12は、ローラの基板対向面に向き合っている処理ユニットを通り越すように案内されるので、フレキシブル基板の表面は、処理ユニットを所定の速度で通り越して移動しながら処理されることが可能である。たとえば、複数の処理ユニットは、堆積ユニット、エッチングユニット、および加熱ユニットからなる群から選択された1つまたは複数のユニットを含み得る。本明細書に記載の真空処理システムの堆積ユニットは、スパッタ堆積ユニットであってよく、たとえば、AC(交流)スパッタソースもしくはDC(直流)スパッタソース、RF(高周波)スパッタソース、MF(中域周波数)スパッタソース、パルススパッタソース、パルスDCスパッタソース、マグネトロンスパッタソース、反応性スパッタソース、CVD堆積ユニット、PECVD堆積ユニット、PVD堆積ユニット、または別の適切な堆積ユニットであってよい。通常、本明細書に記載の堆積ユニットは、薄膜をフレキシブル基板に堆積させて、たとえば、フレキシブルディスプレイ装置、タッチスクリーン装置コンポーネント、または他の電子装置もしくは光学装置を形成するように適合されることを理解されたい。本明細書に記載の堆積ユニットは、導電性材料、半導電性材料、誘電性材料、または絶縁材料からなる群から選択された少なくとも1つの材料を堆積させるように構成することができる。
【0044】
加えて、
図5に例として示されているように、真空処理システム200は、処理チャンバ220の下流に配置された第2のスプールチャンバ250を含み得る。第2のスプールチャンバ250は、処理後にフレキシブル基板12を巻き取るための巻き取りスプール252を収容する。
【0045】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理システム200は、1つまたは複数の封止ベルトを堆積材料から遮蔽するためのシールドを含み得る。有利なことに、1つまたは複数の封止ベルトがローラの非堆積領域に設けられていることに加えて、1つまたは複数の封止ベルトは堆積材料から遮蔽され得る。したがって、1つまたは複数の封止ベルトへの熱負荷が低減または回避され得る。たとえばシールドは、処理チャンバのチャンバ壁に配置することができる。シールドはさらに、支持体130に配置することもできる。真空処理システムは、複数のシールドを含み得る。
【0046】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、真空処理システム200は、コントローラを含み得る。コントローラは、回転可能ローラ100の第1の速度、および1つまたは複数の封止ベルト122の第2の速度を調節するためのコマンドを発行するように構成することができる。第1の速度と第2の速度は、基板および1つまたは複数の封止ベルトが同様の速度で移動するように同期させることができる。
【0047】
本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができ、
図6に示されているブロック図が例として参照される実施形態によれば、真空条件下で薄膜基板12を搬送するための方法600が提供される。この方法は、基板対向面部分104を含む基板対向面102付きの回転可能ローラ100を越えて薄膜基板を移動させるステップ(
図6のブロック650で表される)を含む。ローラは、堆積領域106および少なくとも1つの非堆積領域108を含む。さらに、この方法は、薄膜基板12と基板対向面部分104との間の隙間にガス流を供給するステップ(
図6のブロック660によって表される)と、少なくとも1つの非堆積領域108において薄膜基板12と基板対向面部分104との間の隙間を封止ベルトコンベヤシステム120の1つまたは複数の封止ベルト122で封止するステップ(
図6のブロック670によって表される)とを含む。
【0048】
上記を考慮すると、最新技術と比較して、本明細書に記載の実施形態は、より良好な処理結果、たとえば、より高いコーティング品質または堆積品質を得ることができるように、フレキシブル基板または薄膜基板の改善された搬送、基板処理中のフレキシブル基板の改善された冷却を実現することを理解されたい。
【0049】
上記は本開示の諸実施形態を対象としているが、本開示のその他のさらなる実施形態を本開示の基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】