(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリアリーレン(エーテル)スルホンを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/06 20060101AFI20241108BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241108BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L81/06
C08L77/00
C08K5/5313
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530564
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2022082065
(87)【国際公開番号】W WO2023094231
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ロート
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ヘネンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム シュトラオホ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マレツコ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL002
4J002CN041
4J002EW136
4J002FD206
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、ポリアリーレン(エーテル)スルホン及びポリアミドを含む組成物、それらの使用、並びに本発明の組成物から製造される繊維、フィルム及び成形物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~80質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド10~50質量%;
C) 少なくとも1つのホスフィン酸アルミニウム4~15質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.01~2質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤0~60質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
を含む組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である、組成物。
【請求項2】
成分B)の少なくとも1つのポリアミドが、PA 9T、PA 4T、PA 6T6I及びPA 6T66からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ホスフィン酸アルミニウムが、ジエチルホスフィン酸アルミニウムである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの酸捕捉剤D)が、ホスホン酸の金属塩、ホスホン酸の半エステルの金属塩、及びスズ酸塩から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
酸捕捉剤D)がスズ酸亜鉛である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分A)を20~75質量%含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
成分B)を12.5~40質量%含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
成分C)を4~12.5質量%含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
成分D)を0.05~1.5質量%含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
成分F)を5~50質量%含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
繊維、フィルム、発泡体又は成形物品の製造のための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
前記繊維、フィルム、発泡体又は成形物品が、電気又は電子部品である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物を含む、繊維、フィルム又は成形物品。
【請求項14】
電気又は電子部品である、請求項13に記載の繊維、フィルム、発泡体又は成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアリーレン(エーテル)スルホン及びポリアミドを含む組成物に関する。
【0002】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、高い耐熱性、優れた機械的性能及び固有の難燃性を示す高温耐性ポリマーのグループに属す(E.M. Koch, H.-M. Walter, Kunststoffe 80 (1990) 1146; E. Doering, Kunststoffe 80, (1990) 1149, N. Inchaurondo-Nehm, Kunststoffe 2008 190)。ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、非晶質ポリマーであり、有機溶媒の影響を受けやすい。さらに、芳香族単位の高い含有量により、比較トラッキング指数(CTI)のような断熱特性が、他の熱可塑性材料と比較して低い。
【0003】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンの前述の欠点を克服するために、ポリアミドが多くの溶剤に対して良好な耐性を示し高いCTI値も示すため、ポリアリーレン(エーテル)スルホン及びポリアミドをベースにした組成物が興味深い可能性がある。ポリアリーレン(エーテル)スルホンとポリアミドは混和しないため、二成分ブレンドは機械的特性が劣る(M. Weber in “Polymer Blends and Alloys” G. Shonaike, G.P. Simon (Eds.), Marcel Dekker Inc. 1999, p. 275)。
【0004】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンとポリアミドを相溶化するためのいくつかのアプローチが公知である。ポリヒドロキシエーテルは、ポリアリーレン(エーテル)スルホン/ポリアミドのブレンドの相溶性を改善することが公知である(独国特許出願公開第3617501号明細書)。さらに、無水物官能化ポリアリーレン(エーテル)スルホンとポリアミドとの反応性ブレンドがいくつかの特許及び論文に記載されている(C.-L- Myers, ANTEC 1, 1420 (1992); EP 613916, WO 97/04018; W. Kaufhold, H. Schnablegger, R.T. Kumpf, H. Pielarzik, R.E. Cohen, Acta Polym. 46, 307 (1995))。記載されているアプローチはいずれも望ましい要件を完全には満たしていないため、性能を向上させた新たな化合物が継続的に必要とされている。
【0005】
欧州特許出願公開第0477757号明細書において、ポリアリーレン(エーテル)スルホン及び脂肪族芳香族ポリアミドをベースとするポリマーブレンドが記載されている。欧州特許出願公開第2594610号明細書により、改善したCTI値を示す、種々のポリアリーレン(エーテル)スルホン及びポリアミドをベースとする積層体が公知である。積層体についての難燃性試験は、良好な難燃性挙動を示す。
【0006】
本発明の根底にある問題は、公知のポリアリーレン(エーテル)スルホン/ポリアミドブレンドの欠陥に対処し、かつ射出成形に適し、改善されたCTI値及び良好な難燃性を示す材料又は組成物を提供することであった。
【0007】
この問題は、本発明の組成物により解決された。特に、本発明は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~80質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド10~50質量%;
C) 少なくとも1つのホスフィン酸アルミニウム4~15質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.01~2質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤0~60質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
を含む組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物を提供する。本明細書において、「少なくとも1つ」は、一般に、1つ又は2つ以上、例えば3つ又は4つ又は5つ以上を意味し、それ以上は複数又は数えられないことを意味してよい。例えば、1つ、又は2つ以上の混合物を意味してよい。化合物に関して使用される場合、「少なくとも1つ」は、化学構造、すなわち化学的性質が異なる1つ又は2つ以上の化合物を記載するということを意味する。
【0008】
さらに、本明細書において「ポリマー」は、ホモポリマー又はコポリマー又はそれらの混合物を意味してよい。当業者は、ホモポリマーであろうとコポリマーであろうとどのようなポリマーでも、その性質上、典型的には、鎖長、分枝度又は末端基の性質のような構成が異なるポリマー個体の混合物であることを理解している。したがって、以下において、ポリマーの接頭語としての「少なくとも1つ」は、異なる種類のポリマーを包含してよく、それによりそれぞれのタイプが前述した構成の違いを有してよいことを意味する。
【0009】
本発明の組成物は、フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~80質量%を含む。
【0010】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、当業者に公知のポリマーの一種である。原則として、成分A)について、ポリアリーレン(エーテル)スルホンがフェノール性末端基最大0.05質量%を含むという条件で、任意の構造のポリアリーレン(エーテル)スルホンが本発明に包含される。以下のより詳細な説明において、ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、成分A)として使用される場合に、フェノール性末端基最大0.05質量%を含むことが常に前提条件である。
【0011】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式II
【化1】
[式中、記号t、q、Q、T、Y、Ar及びAr
1の定義は以下のとおりである:
t、qは、互いに独立して0、1、2又は3であり;
Q、T、Yは、互いに独立して、化学結合又は-O-、-S-、-SO
2-、S=O、C=O、-N=N-及びCR
aR
b-から選択される基であり、R
a及びR
bは、互いに独立して、水素原子、(C
1~C
12)アルキル、(C
1~C
12)アルコキシ、(C
3~C
12)シクロアルキル又は(C
6~C
18)アリール基であり、Q、T及びYの少なくとも1つは-SO
2-であり;及び
Ar及びAr
1は、互いに独立して(C
6~C
18)アリーレンである]
の単位から構成されることが好ましくてよい。
【0012】
上記の前提条件内で、Q、T又はYが化学結合である場合に、これは、左側に隣接する基と右側に隣接する基が化学結合により直接結合して存在することを意味する。
【0013】
好ましい一実施形態に従って、t及びqは独立して0又は1である。
【0014】
好ましい一実施形態に従って、式IIにおけるQ、T、及びYは、独立して、化学結合、-O-、-SO2-及びCRaRb-から選択されるが、ただし少なくとも1つのQ、T、及びYが存在し、-SO2-である。さらに、Ra及びRbが、互いに独立して、水素又は(C1~C4)アルキルである場合が好ましくてよい。
【0015】
-CRaRb-において、Ra及びRbは、好ましくは独立して、水素、(C1~C12)アルキル、(C1~C12)アルコキシ及び(C6~C18)アリールから選択される。
【0016】
(C1~C12)アルキルは、炭素原子1~12個を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を指す。以下の部分が特に包含される:(C1~C6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、2又は3メチルペンチル、並びに(C7~C12)アルキル、例えば、非分枝ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、及びそれらの単分枝又は多分枝類似体。
【0017】
「C1~C12-アルコキシ」という用語は、アルキル基における任意の位置で、酸素を介して結合している炭素原子1~12個を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ又は1,1-ジメチルエトキシを指す。
【0018】
(C3~C12)シクロアルキルは、炭素環員3~12個を有する単環式飽和炭化水素基を指し、特に(C3~C8)シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル、-シクロヘキシルメチル、-ジメチル、及びトリメチルを含む。
【0019】
Ar及びAr1は、互いに独立して(C6~C18)アリーレン基である。特定の実施形態に従って、Ar1は、非置換の(C6~C12)アリーレン基である。
【0020】
Ar及びAr1は、独立して、フェニレン、ビスフェニレン及びナフチレン基から、並びにアントラセン、フェナントレン又はナフタセンに由来するアリーレン基から選択されることが好ましくてよい。例えば、Ar及びAr1は、独立して、1,2フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、2,6-ナフチレン及び2,7-ナフチレン、2,7-ジヒドロキシナフチレン及び4,4’-ビスフェニレンから選択される。
【0021】
特に、Ar及びAr1が、独立して、フェニレン基及びナフチレン基から選択される、例えば独立して1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、2,6-ナフチレン及び2,7-ナフチレンから選択される、より詳述すれば独立して1,4-フェニレン、1,3-フェニレン及びナフチレンから選択されることが好ましくてよい。さらに、本発明の他の実施形態に従って、Ar及びAr1は、独立して、アントラセン、フェナントレン、又はナフタセンに由来するアリーレン基から選択される。なおさらなる実施形態に従って、Ar及びAr1は、独立して、2,7-ジヒドロキシナフチレン及び4,4’-ビスフェニレンから選択される。
【0022】
成分A)に従ったポリアリーレン(エーテル)スルホンが、以下の繰り返し単位IIa~IIoの少なくとも1つを含む場合が好ましくてよい:
【化2-1】
【化2-2】
【0023】
好ましくは存在してよい前記単位IIa~IIoに加えて、他の繰り返し単位は、ヒドロキノンに由来する1つ以上の1,4-フェニレン単位が、レゾルシノールに由来する1,3-フェニレン単位又はジヒドロキシナフタレンに由来するナフチレン単位によって置換されたものである。
【0024】
特に好ましい一般式IIの単位は、単位IIa、IIg、及び/又はIIkである。特定の実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンが本質的に一般式IIの1つ類の単位の1つのタイプから構成されることが特に好ましく、前記1つのタイプは、特に、IIa、IIg、及びIIkから選択されてよい。
【0025】
好ましい実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、Tが化学結合であり、YがSO2である繰返単位から構成される。このポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)(式IIg)とも言われる。
【0026】
さらなる好ましい実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、TがC(CH3)2であり、YがSO2である繰返単位から構成される。このポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ポリスルホン(PSU)(式IIa)とも言われる。
【0027】
さらに他の好ましい実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、T及びYがSO2である繰返単位から構成される。このポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ポリエーテルスルホン(PESU)(式IIk)とも言われる。
【0028】
本開示の目的のために、略語PPSU、PESU、及びPSUは、DIN EN ISO 1043-1:2001に従う。
【0029】
本発明の組成物中に存在する成分A)の量は、20~80質量%である。好ましい実施形態に従って、成分A)の量は、組成物の20~75質量%、特に20~70質量%、より詳述すれば20~65質量%、さらにより詳述すれば20~60質量%である。より詳述すれば、この実施形態は、20~55質量%、より詳述すれば20~50質量%、さらにより詳述すれば20~45質量%の成分A)を使用する。さらに好ましい実施形態において、成分A)の量は、組成物の25~75質量%、特に25~70質量%、より詳述すれば25~65質量%、さらにより詳述すれば25~60質量%である。本発明のより特定の実施形態は、25~55質量%、より詳述すれば25~50質量%、さらにより詳述すれば25~45質量%の成分A)を使用する。他の好ましい実施形態に従って、成分A)の量は、組成物の30~75質量%、特に30~70質量%、より詳述すれば30~65質量%、さらにより詳述すれば30~60質量%である。本発明のより特定の実施形態は、30~55質量%、より詳述すれば30~50質量%、さらにより詳述すれば30~45質量%の成分A)を使用する。ある場合には、成分A)の30~40質量%、より詳述すれば30~35質量%の量が好ましくてよい。
【0030】
成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、Cl-又はOCH3-末端基を有し、OH又はフェノラート末端基の含有量は最大0.05質量%である。フェノール性末端基の量は電位差滴定によって測定される。
【0031】
好ましい実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、最大0.04質量%、より詳述すれば最大0.03質量%のフェノール性末端基を有する。さらに好ましい実施形態に従って、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、最大0.02質量%、より詳述すれば最大0.01質量%、さらにより詳述すれば最大0.005質量%のフェノール性末端基を有する。成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンが実質的にフェノール性末端基を有さない場合が好ましくてよい。
【0032】
本発明の目的のために、「フェノール性末端基」という表現は、芳香環に結合し、任意に脱プロトン化された形でも存在するヒドロキシ基を意味する。当業者は、フェノール性末端基が、塩基への曝露の結果としてプロトンが切断されることによって、フェノラート末端基として公知の形をとることもできることを知っている。したがって、「フェノール性末端基」という表現は、芳香族OH基だけでなくフェノラート基も明示的に含む。
【0033】
フェノール性末端基の割合は、好ましくは電位差滴定によって測定される。このために、ポリマーをジメチルホルムアミドに溶解し、水酸化テトラブチルアンモニウムのトルエン/メタノール溶液で滴定する。終点は電位差測定により記録される。ハロゲン末端基の割合は、好ましくは元素分析によって測定される。
【0034】
本発明のポリアリーレン(エーテル)スルホンA)の質量平均モル質量Mwは、好ましくは10000~150000g/mol、特に15000~120000g/mol、特に好ましくは18000~100000g/molであり、標準として狭く分布したポリメチルメタクリレートに対して、溶媒としてジメチルアセトアミド中でゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
【0035】
上述のポリアリーレン(エーテル)スルホンをもたらす製造プロセスはそれ自体当業者に知られており、例としてHerman F. Mark、「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」、第3版、第4巻、2003年、チャプター「ポリスルホン」2~8頁、及びHans R. Krickheldorf、「Aromatic Polyethers」、ポリマー合成ハンドブック、第2版、2005年、427~443頁において記載されている。
【0036】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンの合成は、一般に、双極性非プロトン性溶媒中で高温で適切なモノマーを重縮合させることによって行うことができる(R.N. Johnsonら, J.Polym. Sci. A-1 5 (1967) 2375、J.E. McGrathら, Polymer 25 (1984) 1827)。
【0037】
末端基を同時に制御したポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造は、一般に当業者に公知であり、文献からも公知である(例えばMcGrathら、Polym. Eng. Sci. 17, 647 (1977))。
【0038】
公知のポリアリーレン(エーテル)スルホンは、通常、ハロゲン末端基、特に-Fもしくは-Cl、又はフェノール性OH末端基もしくはフェノラート末端基を有し、ここで、後者は、そのままで、又は反応した形で、特に-OCH3末端基の形で存在することができる。
【0039】
非プロトン性極性溶媒中での、及び無水アルカリ金属炭酸塩、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの混合物、非常に特に好ましくは炭酸カリウムの存在下での、2つのハロゲン置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物と、前記ハロゲン置換基に対して反応性の2つの官能基を有する少なくとも1つの芳香族化合物との反応が特に好ましい。特に適した組み合わせの1つは、溶媒としてのNメチルピロリドン及び塩基としての炭酸カリウムである。
【0040】
成分A)としてのポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ハロゲン末端基、特に塩素末端基、又はエーテル化末端基、特にアルキルエーテル末端基のいずれかを有することが好ましく、これらは、OH末端基、又はそれぞれフェノラート末端基と適したエーテル化剤との反応によって得られる。
【0041】
適したエーテル化剤の例は、単官能性ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリール、例えば、C1~C6-塩化アルキル、C1~C6-臭化アルキル、又はC1~C6-ヨウ化アルキル、好ましくは、塩化メチルもしくは塩化ベンジル、臭化ベンジル、又はヨウ化ベンジル、又はそれらの混合物である。成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンの目的のために、好ましい末端基は、ハロゲン、特に塩素、アルコキシ、特にメトキシ、アリールオキシ、特にフェノキシ、又はベンジルオキシである。
【0042】
成分B)として、本発明の組成物は、少なくとも1つの半芳香族ポリアミド10~50質量%を含む。
【0043】
本記載内容における「半芳香族ポリアミド」は、成分B)として使用されるポリアミドが脂肪族及び芳香族モノマーから構築され、ポリマーが脂肪族及び芳香族単位を含むことを意味する。
【0044】
本発明による成分B)として適したポリアミドの例は、少なくとも1つのジカルボン酸と少なくとも1つのジアミンとの反応によって得られるポリアミドを含み、その際モノマーの一部は芳香族単位を有するため、得られるポリアミドは部分的に芳香族である。
【0045】
好ましくは使用されうる少なくとも1つのジカルボン酸は、炭素原子4~12個、より詳述すれば6~12個、特に6~10個を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸から選択される。適したジカルボン鎖の例は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸及びイソフタル酸である。
【0046】
少なくとも1つのジアミンは、炭素原子6~12個、特に6~10個を有するアルカンジアミン、及び芳香族ジアミンを含む。適したジアミンの例は、m-キシリレンジアミン(MXDA)、ジ-(4-アミノフェニル)メタン、ジ-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン及びフェニレンジアミンである。
【0047】
さらなる実施形態に従って、成分B)としての少なくとも1つのポリアミドは、2つ以上のモノマー(例えば、前記モノマー)の共重合によって得られてよい。任意の所望の混合比での複数のポリアミドの混合物も適していてよい。
【0048】
さらに適した成分B)は、その一部が環状アミド、特に環員数7~13を有するラクタムに由来するポリアミドを含む。かかるラクタムの例は、ε-カプロラクタム、ω-カプリロラクタム、ω-ラウロラクタムである。
【0049】
特定の実施形態に従って、ポリアミドB)は、1:1のモル比のMXDAとアジピン酸を使用することによって得られてよい。
【0050】
さらに、成分B)として、半芳香族コポリアミドが特に適していることがしばしば証明されている。例えば、一般に0.5質量%未満、典型的に0.3質量%未満のトリアミン含有量を有するPA 6/6T及びPA 66/6Tである(欧州特許出願公開第299444号明細書を参照)。また、成分B)としての少なくとも1つの半芳香族ポリアミドは、欧州特許出願公開第1994075号明細書に開示されているような少なくとも1つの高温耐性ポリアミド(PA 6T/6I/MXD6)であってもよい。
【0051】
成分B)として、例えば欧州特許出願公開第129195号明細書及び欧州特許出願公開第129196号明細書に記載されているような、少ないトリアミン含有量を有する少なくとも1つの半芳香族コポリアミドを使用することも好ましくてよい。
【0052】
本発明の組成物の成分B)として使用されてよい少なくとも1つのポリアミドは、以下の網羅的でないリストから具体的に選択されてよい:
【表1】
【0053】
好ましくは、成分B)としての少なくとも1つの半芳香族ポリアミドは、PA 9T、PA 4T、PA 6I/6T及びPA 6T66から選択される。
【0054】
特定の一実施形態に従って、成分B)はPA 9Tである。さらなる実施形態において、成分B)はPA 4Tである。さらにさらなる本発明の実施形態は、成分B)としての少なくとも1つの半芳香族ポリアミドとしてPA6T6Iを使用する。さらにさらなる実施形態に従って、少なくとも1つのポリアミドB)はPA 6T66である。
【0055】
本発明の組成物が成分B)を組成物の10~45質量%、より詳述すれば10~40質量%の量で含むことが好ましくてよい。さらに、ポリアミド成分B)が10~35質量%、より詳述すれば10~30質量%の量で存在することが好ましくてよい。成分B)を12~45質量%、より詳述すれば12~40質量%、特に12.5~40質量%の量で使用することがさらに適していてよい。非常に具体的な本発明の実施形態において、組成物は12.5~35質量%、より詳述すれば15~35%、より詳述すれば15~30質量%の成分B)を含む。
【0056】
本発明の組成物は、成分C)としてホスフィン酸アルミニウム4~15質量%を含む。ホスフィン酸アルミニウムは、高い熱安定性及び比較的低い揮発性を有する必要がある。例えば、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが成分C)として特に適している。ジエチルホスフィン酸アルミニウムは市販されており、例えばExolith OP1230(Clariant社)である。
【0057】
特定の実施形態に従って、成分C)は、組成物の4~14質量%、より詳述すれば4~13質量%の量で使用される。本発明のさらに具体的な実施形態は、4~12.5質量%、より詳述すれば7~12.5質量%の成分C)を使用する。さらなる実施形態に従って、成分C)の量は4~10質量%が適している。
【0058】
本発明の組成物の酸捕捉剤(成分D))は、0.01~2質量%の量で存在する。本発明の組成物において成分D)として使用できる適した酸捕捉剤は、例えば、ホスホン酸の金属塩、ホスホン酸とスズ酸塩との半エステル金属塩、及びこれらの酸捕捉剤の任意の混合物から選択される。一実施形態に従って、欧州特許出願公開第2100916号明細書に記載される、ホスホン酸もしくはホスホン酸の混合物の金属の一塩又は二塩、又はそれらの金属の半エステル塩に基づく酸捕捉剤が使用される。金属は、典型的には、周期表の第1族、第2族及び第3族の金属から選択されるか、又はTi、Zn及びAlから選択される。さらなる実施形態に従って、例えば市販されているスズ酸亜鉛(ZnSnO3)(例えばFlamtard S社)などのスズ酸塩をベースとする酸捕捉剤が使用される。成分D)は、好ましくは組成物の0.01~1.8質量%、より詳述すれば0.05~1.5質量%の量で使用される。
【0059】
本発明のさらなる態様に従って、本発明の組成物は、成分E)として少なくとも1つの相溶化剤をさらに含む。本発明に従って、任意の成分E)は、組成物の0~10質量%、好ましくは0~8質量%、より詳述すれば0~5質量%、さらにより詳述すれば0~4質量%の量で使用される。「相溶化剤」は、ポリマーブレンドの成分間の相溶性を高める化合物であると理解される。すなわち、本発明のこの態様に従って、成分E)は、本発明の組成物のポリアリーレン(エーテル)スルホンA)成分とポリアミドB)成分とを特に相溶化する。
【0060】
存在する(量>0質量%)場合に、成分E)は、好ましくは組成物の0.5~10質量%の量で使用される。1~9質量%、特に1.5~8質量%、より詳述すれば2~8質量%の成分E)が本発明の組成物中に存在することが好ましくてよい。なおさらなる実施形態に従って、0.5~7.5質量%、より詳述すれば0.5~5質量%の量の成分E)が存在する。
【0061】
適した相溶化剤E)は、例えば、電位差滴定により測定して、少なくとも0.2質量%、好ましくは少なくとも0.25質量%のフェノール性末端基を有するポリアリーレン(エーテル)スルホンから選択される。さらなる実施形態に従って、成分E)として有用なポリアリーレン(エーテル)スルホンは、少なくとも0.3質量%、より詳述すれば少なくとも0.35質量%のフェノール性末端基を有する。
【0062】
本発明のさらなる実施形態に従って、本発明の組成物における成分E)として使用できるポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ポリマー鎖あたり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホンを含む。本明細書での「平均で」という用語は、数値平均を意味する。
【0063】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、当業者に公知のポリマーの一種である。それらの生成及び末端基の同時制御も当業者には一般に公知であり、成分A)に関連して前記されている。特に、かかるポリアリーレン(エーテル)スルホンの合成は、一般に、双極性非プロトン性溶媒中で高温で適切なモノマーを重縮合させることによって行ってよい(R.N. Johnsonら, J.Polym. Sci. A-1 5 (1967) 2375、J.E. McGrathら, Polymer 25 (1984) 1827)。本発明の組成物における成分E)として適しているために、ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、少なくとも0.2質量%(又は本明細書において定義される制限のいずれか)のフェノール性末端基を含む。
【0064】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、定義した、好ましくは成分A)について前記で定義した一般式IIの単位から構成されることが好ましくてよい。特に好ましいポリアリーレン(エーテル)スルホンは、ポリエーテルスルホン(PESU)を指す。この実施形態が非常に特に好ましい。
【0065】
任意の成分E)として使用される好ましいポリアリーレン(エーテル)スルホンは、一般に、5000~60000g/molの範囲の平均モル質量Mn(数平均)、及び0.20~0.95dl/gの相対粘度を有する。ポリアリーレン(エーテル)スルホンの相対粘度は、DIN EN ISO 1628 1に従って、25℃で1質量%のN-メチルピロリドン溶液中で測定される。
【0066】
任意の成分E)として使用されるポリアリーレン(エーテル)スルホンA)は、好ましくは、10000~150000g/mol、特に15000~120000g/mol、特に好ましくは18000~100000g/molの質量平均モル質量Mwを有し、標準として狭く分布したポリメチルメタクリレートに対して、溶媒としてジメチルアセトアミド中でゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
【0067】
成分E)として適したポリアリーレン(エーテル)スルホンを製造するための好ましい方法を以下に記載し、a-b-cの順序で以下のステップを含む:
(a) 溶媒(S)の存在下で少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)を提供するステップ、ここで、ポリアリーレン(エーテル)スルホン中のフェノール性末端基の含有量が所望の成分E)に適切であり、そのフェノール性末端基がフェノラート末端基の形で存在し、このポリアリーレン(エーテル)スルホンが好ましくは前記で定義した一般式IIの単位から構成される、
(b) 少なくとも1つの酸、好ましくは少なくとも1つの多塩基性カルボン酸を添加するステップ、及び
(c) 成分E)として適しているポリアリーレン(エーテル)スルホンを固体の形で得るステップ。
【0068】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)は、ここでは好ましくは溶媒(S)中の溶液の形で提供される。
【0069】
原理的には、成分E)として適しているポリアリーレン(エーテル)スルホンを提供するために種々の方法がある。一例として、適切なポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)を、適した溶媒と直接接触させ、本発明の方法に直接、すなわちさらに反応させずに使用できる。代わり、ポリアリーレン(エーテル)スルホンのプレポリマーを使用し、溶媒の存在下で反応させ、その結果、記載したポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)を溶媒の存在下で生成することができる。
【0070】
しかしながら、ポリアリーレン(エーテル)スルホン(E*)は、好ましくは、溶媒(S)及び塩基(B)の存在下で、構造X-Ar-Y(s1)の少なくとも1つの出発化合物と構造HO-Ar1-OH(s2)の少なくとも1つの出発化合物とを反応させることによって、ステップ(a)で提供され、式中、
- Yはハロゲン原子であり、
- Xはハロゲン原子及びOHから選択され、かつ
- Ar及びAr1は、互いに独立して、炭素原子6~18個を有するアリーレン基である。
【0071】
ここでの(s1)と(s2)との比は、フェノール性末端基の所望の含有量をもたらすように選択される。適した出発化合物は当業者に公知であるか、又は公知の方法によって製造されうる。
【0072】
ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、特に2,7-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールA、及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルが出発化合物(s2)として特に好ましい。
【0073】
しかしながら、三官能性化合物を使用することもできる。この場合、分枝した構造が生じる。三官能性出発化合物(s2)を使用する場合、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0074】
使用される量的割合は、原則として、理論量の塩化水素の開裂を伴って進行する重縮合反応の化学量論の関数であり、当業者はこれらを公知の方法で調整する。しかしながら、フェノール性OH末端基の数を増加させるためには、過剰の(s2)が好ましい。
【0075】
この実施形態において、モル(s2)/(s1)比は、特に好ましくは1.005~1.2、特に1.01~1.15、非常に特に好ましくは1.02~1.1である。
【0076】
代わりに、X=ハロゲン及びY=OHを有する出発化合物(s1)を使用することもできる。この場合、出発化合物(s2)の添加により過剰なヒドロキシ基が得られる。この場合、ハロゲンに対する使用されるフェノール性末端基の割合は、好ましくは1.01~1.2、特に1.03~1.15、非常に特に好ましくは1.05~1.1である。
【0077】
十分に高い分子量を提供するために、重縮合反応における転化率は少なくとも0.9であることが好ましい。プレポリマーがポリアリーレン(エーテル)スルホンの前駆体として使用される場合、重合度は実際のモノマーの数に基づく。
【0078】
好ましい溶媒(S)は、非プロトン性極性溶媒である。さらに、適した溶媒の沸点は、80~320℃、特に100~280℃、好ましくは150~250℃の範囲にある。適切な非プロトン性極性溶媒の例は、高沸点エーテル、エステル、ケトン、非対称ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-エチル-2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドンである。
【0079】
出発化合物(s1)と(s2)との反応は、好ましくは、前記した非プロトン性極性溶媒(S)、特にN-メチル-2-ピロリドン中で実施する。
【0080】
当業者にとって、出発化合物(s1)のハロゲン置換基に対する反応性を高めるために、フェノール性OH基の反応を塩基(Ba)の存在下で実施することが好ましいこと自体公知である。
【0081】
塩基(Ba)は無水であることが好ましい。特に適した塩基は、無水アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの混合物であり、ここでは炭酸カリウムが特に好ましい。
【0082】
特に好ましい組み合わせは、溶媒(S)としてN-メチル-2-ピロリドン及び塩基(Ba)として炭酸カリウムである。
【0083】
適した出発化合物(s1)及び(s2)の反応は、80~250℃、好ましくは100~220℃の温度で実施され、ここでの温度の上限は溶媒の沸点によって提供される。反応は、好ましくは2~12時間、特に3~8時間以内に生じる。
【0084】
ステップ(a)の後及びステップ(b)の実施前に、ポリマー溶液を濾過することが有利であることが証明されている。これにより、重縮合反応中に形成された塩と、形成されうるゲルが除去される。
【0085】
ステップ(a)の目的のために、ポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)の量を、ポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)と溶媒S)との混合物の合計質量に対して、10~70質量%、好ましくは15~50質量%に調整することが有利であることも判明している。
【0086】
ステップ(b)の目的のために、少なくとも1つの酸、好ましくは少なくとも1つの多塩基性カルボン酸を、ステップ(a)からのポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)に、好ましくは溶媒(S)中のポリアリーレン(エーテル)スルホンE*)の溶液に添加する。
【0087】
少なくとも1つの多塩基性カルボン酸を沈殿剤に添加することも可能である。
【0088】
「多塩基性」は、塩基性度が少なくとも2であることを意味する。塩基性度は、分子あたりのCOOH基の(適切な場合は平均の)数である。多塩基性は、2以上の塩基性を意味する。本発明の目的のために、好ましいカルボン酸は二塩基性及び三塩基性カルボン酸である。
【0089】
多塩基性カルボン酸は、種々の方法で、特に固体もしくは液体の形で又は溶液の形で、好ましくは溶媒(S)と混和性の溶媒中で添加されうる。
【0090】
多塩基性カルボン酸の数平均モル質量は、好ましくは最大1500g/mol、特に最大1200g/molである。同時に、多塩基性カルボン酸の数平均モル質量は、好ましくは少なくとも90g/molである。
【0091】
特に適した多塩基性カルボン酸は、一般構造(IX):
HOOC-R-COOH 式(IX)
[式中、Rは、炭素原子2~20個を有し、任意にさらなる官能基、好ましくはOH及びCOOHから選択される炭化水素部分を表す]
によるものである。
【0092】
好ましい多塩基性カルボン酸は、C4~C10ジカルボン酸、特にコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びトリカルボン酸、特にクエン酸である。特に好ましい多塩基性カルボン酸は、コハク酸及びクエン酸である。
【0093】
フェノラート末端基をフェノール性末端基に適切に変換するには、フェノラート末端基の量に関して使用する多塩基性カルボン酸の量を調整することが有利であることが証明されている。
【0094】
ステップ(b)の目的のために、カルボキシ基の量が、フェノール末端基のモル量に対して25~200mol%、好ましくは50~150mol%、特に好ましくは75~125mol%であるように多塩基性カルボン酸を添加することが好ましい。
【0095】
添加される酸の量が少なすぎる場合に、ポリマー溶液の沈殿特性は不十分であり、一方、著しく過剰な添加は、さらなる加工中に生成物の変色を引き起こしうる。
【0096】
ステップ(c)の目的のために、ポリアリーレン(エーテル)スルホンE)は、固体の形で得られる。原理的には、固体の形で材料を得るために種々のプロセスを使用することができる。しかしながら、沈殿によってポリマー組成物を得ることが好ましい。
【0097】
好ましい沈殿プロセスは、特に、溶媒(S)と貧溶媒(S’)との混合を介して実施できる。貧溶媒は、ポリマー組成物が溶解しない溶媒である。この貧溶媒は、好ましくは非溶媒と溶媒との混合物である。好ましい非溶媒は水である。溶媒と非溶媒との好ましい混合物(S’)は、好ましくは溶媒(S)、特にN-メチル-4-ピロリドンと、水との混合物である。ステップ(b)からのポリマー溶液を貧溶媒(S’)に添加することが好ましく、その結果ポリマー組成物の沈殿が生じる。この場合、貧溶媒を過剰に使用することが好ましい。ステップ(a)からのポリマー溶液は、微細に分散した形、特に液滴の形で添加されることが特に好ましい。
【0098】
使用される貧溶媒(S’)が溶媒(S)、特にN-メチル-2-ピロリドンと、非溶媒、特に水との混合物を含む場合に、好ましい溶媒:非溶媒の混合比は、1:2~1:100、特に1:3~1:50である。
【0099】
溶媒(S)としてN-メチル-2-ピロリドンと組み合わせた、水とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)との混合物が、貧溶媒(S’)として好ましい。1:3~1:50、特に1:30の比のNMP/水混合物が貧溶媒(S’)として特に好ましい。
【0100】
溶媒(S)中のポリマー組成物の含有量が、ポリマー組成物及び溶媒(S)から構成される混合物の合計質量に対して10~50質量%、好ましくは15~35質量%である場合に、沈殿が特に効率的である。
【0101】
成分C)のカリウム含有量は、好ましくは最大600ppmである。カリウム含有量は原子分光法によって測定される。
【0102】
また、特定の官能化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、例えば国際公開第2018/141552号に記載されているようなナフタル酸無水物末端基を含むポリアリーレン(エーテル)スルホンも成分E)として適しており、フェノール性末端基の含有量は前記で定義したとおりである。本発明による相溶化剤成分E)として適している国際公開第2018/141552号に記載されているポリアリーレン(エーテル)スルホンは、好ましくは、成分A)のポリアリーレン(エーテル)スルホンについて定義した、好ましくは前記で定義した一般式IIの単位から構成され、かつ式(I):
【化3】
のナフタル酸無水物末端基を含み、その際、フェノール性末端基の含有量は成分E)について前記で定義したとおりである。
【0103】
国際公開第2018/141552号によるポリアリーレン(エーテル)スルホンを含むナフタル酸無水物末端基を、以下で「PNA」とも呼ぶ。PNAは、分岐し、個々のポリマー鎖ごとに2つを超える末端基を有することが可能であってよい。典型的に、PNAは、直鎖状であり、個々のポリマー鎖ごとに2つの末端基を有する。
【0104】
式(I)の末端基の量は、少量又は非常に少なくてよく、すなわち、式(I)の末端基である末端基はほんのわずかである。ポリアリールエーテルスルホンが式(I)の末端基を最大10%含むこと、言い換えれば、100末端基のうち最大10個が式(I)の末端基であることが好ましくてよい。PNAが数学的に直鎖である場合、最大5個ごとに個々のポリマー鎖が1つの式(I)の末端基を有するか、又は最大10個ごとに個々のポリマー鎖が2つの式(I)の末端基を有する。当業者は、実際には他の分布が要件を満たすことを理解している。最大25%、すなわち100個の末端基のうち最大25個が式(I)の末端基であることが好ましくてよい。10%~80%の間の任意の割合の末端基は、例えば20%、30%、40%、50%、60%もしくは70%、又は10%~80%の間の任意の不均等な割合の式(I)の末端基であってよい。10%~80%の末端基が式(I)の末端基であることが好ましくてよい。15~70%、例えば25%~60%の末端基、例えば30%~50%が式(I)の末端基であることがより好ましくてよい。
【0105】
式(I)の末端基ではない末端基の性質は特に限定されないが、定義した、好ましくは前記で定義したように、PNAが少なくとも0.2質量%のフェノール性末端基を含有する場合に、PNAが成分E)(相溶化剤)として適しているという前提条件がある。式(I)の末端基ではない可能な末端基は、フェノール性OH末端基又はフェノラート末端基、フェノール性アルコキシ末端基(中でもOCH3末端基が好ましくてよい)、アミノ末端基(中でも-NH2が好ましくてよい)、ハロゲン末端基(F又はClであってよい)である。ハロゲン末端基の中でClが最も好ましい。式(I)の末端基ではない末端基が無水フェノール末端基であることも可能である。一般に、式(I)の末端基以外の末端基は、Cl-、OH-及びOCH3であることが好ましくてよい。
【0106】
例えば、第A表に列挙されるPNAタイプPNA-1~PNA-10のいずれも、好ましくは、定義した、好ましくは前記で定義したように、それぞれのPNAがフェノール性末端基を少なくとも0.2質量%有することを条件として、成分E)として使用されてよい:
【表2】
【0107】
本開示の目的のために、略語PPSU、PESU、及びPSUは、DIN EN ISO 1043-1:2001に従う。特定の一実施形態に従って、成分E)は、PPSUに基づくPNA、特に前記で個別に言及したPPSUのいずれかから選択される。
【0108】
PNAの合成は、国際公開第2018/141552号に記載されている。
【0109】
本発明の特定の実施形態は、成分E)を含まない、本明細書で定義されるE)の量が0質量%である組成物に関する。
【0110】
本発明のさらなる態様に従って、本発明の組成物は、少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤(任意の成分F))をさらに含む。本発明に従って、成分F)は、組成物の0~60質量%、特に0~50質量%、より詳述すれば0~40質量%、さらにより詳述すれば0~30質量%の量で使用される。
【0111】
存在する場合に、成分F)は、好ましくは組成物の5~60質量%の量で使用される。本発明のこの態様に従って、5~50質量%又は10~50質量%、特に15~40質量%、より詳述すれば20~30質量%の成分F)が本発明の組成物中に存在する場合が好ましくてよい。なおさらなる実施形態に従って、25~30質量%の量の成分F)が使用される。
【0112】
一実施形態に従って、成分F)は、少なくとも1つの繊維状充填剤であることが好ましい。少なくとも1つの繊維状充填剤は、好ましくは、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維及びガラス繊維から選択され、より詳述すれば炭素繊維及びガラス繊維から選択される。好ましい一実施形態に従って、成分F)はガラス繊維である。少なくとも1つのガラス繊維を使用する場合に、マトリックス材料との適合性を改善するために、サイジング、好ましくはポリウレタンサイジング、及び/又はカップリング剤を備えることができる。使用される少なくとも1つの炭素繊維及び/又はガラス繊維の直径は、一般に5~20μm、より詳述すれば5~18μmの範囲である。
【0113】
少なくとも1つのガラス繊維は、短ガラス繊維であるか、又は連続フィラメント繊維(ロービング)の形状を有していてよい。完成した射出成形品における少なくとも1つのガラス繊維の平均長さは、好ましくは0.08~2mmの範囲である。
【0114】
少なくとも1つの炭素繊維及び/又はガラス繊維を、織物、マット、又はガラスシルクロービングの形で使用することもできる。
【0115】
さらなる実施形態に従って、成分F)は少なくとも1つの粒子状充填剤である。適した粒子状充填剤は、非晶質シリカ、炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム及びチョーク、粉末石英、雲母、種々のケイ酸塩、例えば粘土、白雲母、黒雲母、スゾイト(suzoite)、スズマレタイト、タルク、緑泥石、金雲母、長石、ケイ酸カルシウム、例えば珪灰石、及びケイ酸アルミニウム、例えばカオリン、特に焼成カオリンから選択されてよい。
【0116】
粒子状充填剤の粒子の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%が、最終製品で測定して、45μm未満、好ましくは40μm未満の直径(幾何学的中心を通る最大直径)である場合が好ましくてよく、その際、粒子のアスペクト比として公知の値は、最終製品で測定して、1~25の範囲、好ましくは2~20の範囲である。アスペクト比は、粒子の直径と厚さの比(いずれの場合も幾何学的中心を通る最大寸法と最小寸法)である。
【0117】
ここでの粒子直径は、一例として、ポリマー混合物の薄層の電子顕微鏡写真を記録し、少なくとも25個、好ましくは少なくとも50個の充填剤粒子を評価することによって測定できる。粒子直径は、Transactions of ASAE、491頁(1983年)にあるように、沈降分析によっても測定できる。ふるい分析を使用して、直径40μm未満の充填剤の質量割合を測定することもできる。
【0118】
少なくとも1つの粒子状充填剤は、特に好ましくは、タルク、カオリン、例えば焼成カオリン、及び珪灰石から選択される。本発明に従って使用される粒子状充填剤は、前記充填剤の2つ又は全ての混合物であってよい。これらの中でも、それぞれの場合に最終製品で測定して、粒子の少なくとも95質量%の割合が40μm未満の直径及び1.5~25のアスペクト比を有するタルクが特に好ましい。好ましくは、カオリンは、それぞれの場合に最終製品で測定して、20μm未満の直径を有する粒子の少なくとも95質量%を有し、かつ好ましくは1.2~20のアスペクト比を有しうる。
【0119】
特定の一実施形態に従って、本発明の組成物は成分F)を含まない(0質量%)。
【0120】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤(任意の成分G))をさらに含む組成物に関する。耐衝撃性改良剤成分G)は、少なくとも1つの耐衝撃性改良ゴムであってよい。また、2つ以上の異なる耐衝撃性改良ゴムの混合物を使用してもよい。
【0121】
本発明によれば、成分G)は、組成物の0~30質量%、より詳述すれば0~20質量%、さらにより詳述すれば0~10質量%の量で使用される。存在する場合、成分G)は、好ましくは組成物の5~30質量%の量で使用される。本発明のこの態様に従って、5~25質量%、特に5~20質量%、より詳述すれば10~20質量の成分G)%が本発明の組成物中に存在することが好ましくてよい。なおさらなる実施形態に従って、25~30質量%の量の成分G)が存在する。
【0122】
本発明の目的のために、ゴムは一般に、室温でエラストマー特性を有する架橋性ポリマーである。
【0123】
組成物の靱性を増加させる好ましいゴムは、通常、2つの重要な特徴を有する:-10℃未満、好ましくは-30℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー部分を含み、かつポリアミドB)もしくはポリアリーレン(エーテル)スルホンA)又はその双方と相互作用できる少なくとも1つの官能基を含む。適した官能基の例は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボキサミド基、カルボキシイミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ウレタン基及びオキサゾリン基である。
【0124】
成分G)として一般に好ましい少なくとも1つの官能化ゴムは、以下の成分から構成される官能化ポリオレフィンゴムを含む:
d1) 炭素原子2~8個を有する少なくとも1つのα-オレフィン40~99質量%;
d2) ジエン0~50質量%;
d3) アクリル酸もしくはメタクリル酸の少なくとも1つのC1~C12-アルキルエステル、又はこのタイプのエステルの混合物0~45質量%;
d4) 少なくとも1つのエチレン性不飽和C2~C20モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、又はこのタイプの酸の官能性誘導体0~40質量%;
d5) のエポキシ基を含む少なくとも1つのモノマー1~40質量%;及び
d6) フリーラジカル重合が可能な少なくとも1つのモノマー。
【0125】
適した少なくとも1つのα-オレフィン(d1)の例は、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-ペンチレン、1-ヘキシレン、1-ヘプチレン、1-オクチレン、2-メチルプロピレン、3-メチル-1-ブチレン及び3-エチル-1-ブチレンである。エチレン及びプロピレンが好ましくてよい。
【0126】
適した少なくとも1つのジエンモノマー(d2)の例は、炭素原子4~8個を有する共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、炭素原子5~25個を有する非共役ジエン、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン及び1,4-オクタジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン、並びにアルケニルノルボルネン類、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン及び2-イソプロペニル-5-ノルボルネン、並びにトリシクロジエン、例えば3-メチルトリシクロ[5.2.1.02・6]-3,8-デカジエン、又はこれらの混合物である。1,5-ヘキサジエン、5-エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンが好ましい。ジエン含有量は、オレフィンポリマーの合計質量に対して、一般に0~50質量%であり、好ましくは0.5~50質量%であってよく、特に好ましくは2~20質量%、より特に好ましくは3~15質量%であってよい。
【0127】
適した少なくとも1つのエステル(d3)の例は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシル、オクチル及びデシルアクリレート、並びに対応するメタクリレートである。これらの中でも、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、及び2-エチルヘキシルのアクリレート及びメタクリレートが特に好ましい。
【0128】
少なくとも1つのエステル(d3)の代わりに、又はこれらに加えて、オレフィンポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸(d4)の形の酸官能性モノマー及び/又は潜在的な酸官能性モノマーを含んでもよい。
【0129】
少なくとも1つのモノマー(d4)の例は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、特にtert-ブチルアクリレート、及びジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸、並びにこれらの酸の誘導体及びそれらの半エステルである。
【0130】
本発明の目的のために、潜在的な酸官能性モノマーは、重合条件下、又は組成物へのオレフィンポリマーの組み込み中に遊離酸基を形成する化合物である。これらの例は、炭素原子2~20個を有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸、及び前記酸の第三級C
1~C
12-アルキルエステル、特にtert-ブチルアクリレート及びメタクリレートである。エチレン性不飽和ジカルボン酸及び無水物(d4)は、以下の式III及びIVを有する:
【化4】
[式中、R
5、R
6、R
7及びR
8は互いに独立してH又はC
1~C
6-アルキルである]。
【0131】
エポキシ基を含むモノマーd5は、次の式V及びVIを有する:
【化5】
[式中、R
9、R
10、R
11及びR
12は、互いに独立して、H又はC
1~C
6-アルキルであり、mは0~20の整数であり、pは0~10の整数である]。
【0132】
R5~R12は好ましくは水素であり、mは好ましくは0又は1であり、pは好ましくは1である。
【0133】
好ましい化合物(d4)及び(d5)は、それぞれマレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸、並びにそれぞれアルケニルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルから選択されてよい。
【0134】
式III及びIV、並びにそれぞれV及びVIの特に好ましい化合物は、マレイン酸及び無水マレイン酸、並びにそれぞれ双方共にエポキシ基を含むアクリレート及び/又はメタクリレート、特にグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートであってよい。
【0135】
特に好ましい少なくとも1つのオレフィンポリマーは、49.9~98.9質量%、特に59.85~94.85質量%のエチレン、及び1~50質量%、特に5~40質量%のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、及び0.1~20.0質量%、特に0.15~15質量%のアクリル酸グリシジル及び/又はメタクリル酸グリシジル、アクリル酸及び/又は無水マレイン酸から作成されるものであってよい。
【0136】
特に適した官能化ゴムG)は、エチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルアクリレートポリマーお及びエチレン-メチルメタクリレート-グリシジルアクリレートポリマー、並びにこれらの任意の混合物から選択されてよい。
【0137】
他のモノマー(d6)の例は、例えば、ビニルエステル及びビニルエーテル、並びにこれらの混合物である。
【0138】
前記ポリマーは、それ自体公知の方法により、又は一般知識を適用することにより当業者が利用できる方法、例えば好ましくは高圧及び高温でのランダム共重合により調製してよい。
【0139】
コポリマーの溶融指数は、一般に、1~80g/分10分(190℃及び2.16kg荷重で測定)であり得る。
【0140】
さらに、エチレン-プロピレングラフト無水マレイン酸又はエチレン-1-ブテングラフト無水マレイン酸のような官能化エチレン-α-オレフィンコポリマーも、本発明の組成物中の耐衝撃性改良剤として使用することができる。
【0141】
コアシェルグラフトゴムは、本発明に従って使用してよい適した耐衝撃性改良剤G)の別のグループである。これらは、エマルション中で調製することができ、少なくとも1つの硬質成分と1つの軟質成分から構成されるグラフトゴムである。通常、硬質成分は少なくとも25℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーであり、通常、軟質成分は0℃以下のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーである。これらの製品は一般に、コア(グラフトベース)と少なくとも1つのシェル(グラフト)から作成された構造を有し、その構造は、典型的にモノマーの追加順序の結果である。軟質成分は一般に、ブタジエン、イソプレン、少なくとも1つのアクリル酸アルキル、少なくとも1つのメタクリル酸アルキル又は少なくとも1つのシロキサン、及び必要に応じて少なくとも1つの他のコモノマーに由来する。適したシロキサンコアは、例えば、環状オリゴマーオクタメチルテトラシロキサン又はテトラビニルテトラメチルテトラシロキサンから出発して調製されてよい。これらは、例えば、開環カチオン重合において、好ましくはスルホン酸の存在下で、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランと反応させて、軟質シロキサンコアを得てよい。少なくとも1つのシロキサンを、例えば、ハロ又はアルコキシのような少なくとも1つの加水分解性基を有する少なくとも1つのシラン、例えばテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン又はフェニルトリメトキシシランの存在下で重合を実施することによって架橋してもよい。これに適した少なくとも1つのコモノマーの例は、スチレン、アクリロニトリル、及び2つ以上の重合性二重結合を有する架橋又はグラフトモノマー、例えばジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジアクリレート又はトリアリル(イソ)シアヌレートである。硬質成分は、一般に、スチレン、α-メチルスチレン、又はこれらのコポリマーに由来し、ここでの少なくとも1つのコモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はメチルメタクリレートであることが好ましくてよい。
【0142】
少なくとも1つのコアシェルグラフトゴムは、軟質コアと硬質シェル、又は硬質コアと第1の軟質シェルと少なくとも1つのさらなる軟質シェルを含むことが好ましくてよい。ここでの少なくとも1つの官能基、例えばカルボニル、カルボン酸、無水物、アミド、イミド、カルボン酸エステル、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ、オキサゾリン、ウレタン、尿素、ラクタム又はハロベンジルの組み込みは、好ましくは、最終シェルの重合中に少なくとも1つの適した官能化したモノマーを添加することによって起きうる。
【0143】
適した官能化モノマーの例は、マレイン酸、無水マレイン酸、半エステルもしくはジエステル、又はマレイン酸、tert-ブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート及びビニルオキサゾリンである。官能基を有するモノマーの割合は、コアシェルグラフトゴムの合計質量に対して、一般に0.1~25質量%であり、好ましくは0.25~15質量%であってよい。軟質成分と硬質成分の質量比は一般に1:9~9:1であり、好ましくは3:7~8:2であってよい。
【0144】
このタイプのゴムはそれ自体公知であるか、又は一般知識を使用することによって当業者に入手可能であり、例えば欧州特許出願公開第208187号明細書に記載されている。
【0145】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、成分G)として使用できる適した耐衝撃性改良剤の別の群である。本発明の目的のために、ポリエステルエラストマーは、一般にポリ(アルキレン)エーテルグリコールに由来する長鎖セグメントと、低分子量ジオール及びジカルボン酸に由来する短鎖セグメントとを含んでよいセグメント化コポリエーテルエステルである。このタイプの製品はそれ自体公知であるか、又は当業者に入手可能であり、例えば米国特許第3,651.014号明細書に記載されている。対応する製品は、Hytrel(登録商標)(Du Pont)、Arnitel(登録商標)(Akzo)及びPelprene(登録商標)(Toyobo Co. Ltd.)としても市販されている。
【0146】
特定の一実施形態に従って、本発明の組成物は成分G)を含まない(0質量%)。
【0147】
本発明の組成物は、任意に1つ以上の助剤H)をさらに含んでよい。本発明に従って、成分H)は、0~40質量%、特に0~30質量%、より詳述すれば0~20質量%、さらにより詳述すれば0~10質量%、例えば0~5質量%の量で使用される。存在する場合に、組成物は助剤H)を0.01~20質量%、より詳述すれば1~20質量%含むことが好ましくてよい。H)は、0.01~15質量%、例えば0.5~10質量%の量で使用されることがより好ましくてよい。本発明の組成物がH)を0.5~8質量%含むことがさらにより好ましくてよい。
【0148】
少なくとも1つの助剤は、例えば加工助剤、顔料、安定剤から選択されてよく、種々の添加剤の混合物であってもよい。従来の添加剤の他の例は、酸化遅延剤、熱又は紫外線によって生じる分解を抑制する作用剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び可塑剤であり、これらを単独で又は他の補助剤と組み合わせて使用してよい。
【0149】
顔料及び染料の量は、一般に0~6質量%であり、好ましくは0.05~5質量%であってよく、特に0.1~3質量%であってよい。
【0150】
熱可塑性プラスチックの着色用のための顔料は周知であり、例えば、R.Gaechter及びH.Mueller、Taschenbuch der Kunststoffadditive[プラスチック添加剤ハンドブック]、Carl Hanser Verlag、1983年、494~510頁を参照されたい。挙げることができる顔料の第1の好ましい群は、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白[2PbCO3・Pb(OH)2]、リトポン、アンチモン白、及び二酸化チタンである。二酸化チタンの2つの最もよく知られた結晶形(ルチル及びアナターゼ)のうち、開示した組成物の白色着色に使用されるのは典型的には特にルチル形である。本発明に従って使用することができる黒色顔料は、酸化鉄黒色(Fe3O4)、スピネルブラック[Cu(Cr、Fe)2O4]、マンガン黒(二酸化マンガン、二酸化ケイ素、酸化鉄から構成される混合物)、コバルト黒、及びアンチモン黒であり、また特に好ましくはファーネスブラック又はガスブラックの形で主に使用されるカーボンブラックであってもよい。これに関連して、G.Benzing、Pigmente fuer Anstrichmittel[塗料用顔料]、Expert-Verlag(1988)、78頁以降を参照されたい。
【0151】
特定の色合いは、例えば、無機有彩色顔料、例えば酸化クロムグリーン、又は有機有彩顔料、例えばアゾ顔料又はフタロシアニンを使用することによって達成することができる。このタイプの顔料は当業者に公知である。
【0152】
本発明の組成物に添加することができる酸化抑制剤及び熱安定剤の例は、例えば塩化物、臭化物、又はヨウ化物である、元素の周期律表の第I族の金属のハロゲン化物、例えばハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、又はハロゲン化リチウムである。フッ化亜鉛及び塩化亜鉛も使用できる。立体障害フェノール、ヒドロキノン、前記群の置換した代表物、第二級芳香族アミンを、適宜リン含有酸と組み合わせて使用するか、又はそれらの塩、もしくは前記化合物の混合物を、好ましくは1質量%までの濃度で使用することも可能である。
【0153】
UV安定剤の例は、種々の置換したレゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、及びベンゾフェノンであり、これらの一般に使用される量は2質量%までである。
【0154】
潤滑剤、離型剤の例は、その量が一般に2質量%まで、好ましくは1質量%までであり、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキル、ステアラミド、及びペンタエリスリトールと長鎖脂肪酸のエステルである。ジアルキルケトン、例えばジステアリルケトンを使用することも可能である。本発明の組成物は、0.1~2質量%、より好ましくは0.1~1.75質量%、特に好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~0.9質量%のステアリン酸及び/又はステアリン酸塩を含む。原理的には、他のステアリン酸誘導体、例えばステアリン酸のエステルを使用することも可能である。
【0155】
ステアリン酸は、好ましくは脂肪の加水分解によって生成される。このようにして得られる生成物は、通常、ステアリン酸とパルミチン酸から構成される混合物である。したがって、これらの製品は、製品の構成に応じて、広い軟化範囲、例えば50~70℃を有する。20質量%超のステアリン酸含有有量、特に好ましくは25質量%超で生成物を使用することが好ましくてよい。純粋なステアリン酸(98質量%超)を使用することも可能である。
【0156】
成分H)はさらにステアリン酸塩も含むことができる。ステアリン酸塩は、対応するナトリウム塩と金属塩溶液との反応によって(例えばCaCl2、MgCl2、アルミニウム塩)、又は脂肪酸と金属水酸化物との直接反応によって生成できる(例えば、Baerlocher Additives、2005年を参照されたい)。典型的に、トリステアリン酸アルミニウムを使用することが好ましい。
【0157】
他の可能な添加剤は核剤であり、例えばタルク粉末である。
【0158】
組成物の調製は、当該技術分野において公知のプロセス、例えば押出によって実施されうる。例えば、成分を、押出機(一軸又は二軸)、ブラベンダーミキサー又はバンバリーミキサ又はニーダーのような溶融混合装置に供給し、混合して押し出す。典型的に押出物を冷却し、そして粉砕する。典型的に、押出成形後に、ストランドを冷却し、ペレット化して、ペレット又は顆粒を得る。
【0159】
本発明の特定の一実施形態は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~75質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド12.5~40質量%;
C) ホスフィン酸アルミニウム4~12.5質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.05~1.5質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤5~50質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
を含む組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物に関する。
【0160】
さらに好ましい実施形態は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~60質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド12.5~40質量%;
C) ホスフィン酸アルミニウム4~12.5質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.05~1.5質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤10~50質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
を含む組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物に関する。
【0161】
さらに特定の実施形態は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~80質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド10~50質量%;
C) 少なくとも1つのホスフィン酸アルミニウム4~15質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.01~2質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤0~60質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
からなる組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物に関する。
【0162】
本発明のさらに特定の一実施形態は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~75質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド12.5~40質量%;
C) ホスフィン酸アルミニウム4~12.5質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.05~1.5質量%、より詳述すれば0.05~0.5質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤5~50質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
からなる組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物に関する。
【0163】
本発明のさらに特定の一実施形態は、以下、
A) フェノール性末端基を最大0.05質量%有する少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホン20~60質量%;
B) 少なくとも1つの半芳香族ポリアミド12.5~40質量%;
C) ホスフィン酸アルミニウム4~12.5質量%;
D) 少なくとも1つの酸捕捉剤0.05~1.5質量%、より詳述すれば0.05~0.5質量%;
E) 少なくとも1つの相溶化剤0~10質量%;
F) 少なくとも1つの繊維状又は粒子状充填剤10~50質量%;
G) 少なくとも1つの耐衝撃性改良剤0~30質量%;及び
H) 少なくとも1つの助剤0~40質量%;
からなる組成物であって、前記組成物の成分の質量%の合計が100質量%である組成物に関する。
【0164】
本発明の組成物の成分は、任意の所望の順序で混合することができ、個々の成分を混合装置に投与する順序は異なっていてよく、例えば、2つ又は任意に3つの成分を予め混合するか、又は全ての成分を一緒に混合してよい。
【0165】
製品の性能のために、均一な混合が重要である。これを達成するために、一般に、280~390℃、好ましくは290~380℃の温度で0.1~30分間の混合時間を適用する。配合後に得たストランドを冷却して、ペレット化する。
【0166】
本発明による組成物は、良好な機械的性能、並びにCTI値(比較トラッキング指数)及び耐火挙動の特有の組み合わせを示す。
【0167】
本発明の組成物は、繊維、フィルム、発泡体又は成形物品の製造のために有利に使用されうる。さらなる態様に従って、本発明は、本明細書に記載の組成物を含む繊維、フィルム又は成形物品に関する。良好な比較トラッキング指数により、本発明の組成物は一般に電気又は電子部品の製造に特に適している。本発明の組成物は高温耐性及び良好な耐薬品性を有するため、高温及び/又は化学薬品に曝される電気又は電子部品の製造に特に適している。一般に、本発明の組成物から得られてよい製品は、車両分野、例えば自動車又は飛行機における産業品目であってよい。同様に、それらは、家庭用品、例えば電化製品又は食品と接触する物品であってよい。さらに、電池ハウジング、配管部品、エネルギー吸収発泡体も本発明の組成物を用いて製造することができる。
【0168】
実施例:以下の実施例は本発明をさらに説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0169】
成分A: 成分Aとして、粘度数49.0ml/gを有するポリエーテルスルホンを使用した。使用した生成物は、0.19質量%のCl末端基(元素分析)及び0.23質量%のOCH3末端基(1H-NMR)を有していた。OH末端基の量は検出限界未満(<0.02質量%)であった。この成分Aを、実施例では「成分A1」と呼ぶ。
【0170】
成分B: 成分B1:粘度数120ml/gを有するポリアミド9T(濃H2SO4中25℃で測定)。
【0171】
成分B1:粘度数120ml/gを有するポリアミド6T6I(濃H2SO4中25℃で測定)。
【0172】
成分C: 成分C1:難燃剤Exolith OP1230。
【0173】
成分CV: Daihachi Chmicalsの難燃剤CR-733S(有機リン酸塩)。
【0174】
成分D: 成分D1: 酸捕捉剤Flamtard S。
【0175】
成分DV: 水酸化アルミニウム、乾燥粉末としてAlteoにより提供される。
【0176】
成分 E: OH末端PESU(PESU-OH)の調製を、次の手順に従って実施した:
撹拌機、ディーン・スターク・トラップ、窒素注入口及び温度制御装置を備えた4lのHWS容器中に、278.27g(0.969mol)の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、250.17g(1.00mol)の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)、及び152.03g(1.10mol)の炭酸カリウム(粒径39.3μm)を、窒素雰囲気下で、1000mlのNMPに懸濁する。撹拌下で、混合物を190℃まで加熱する。30l/時間の窒素を混合物を介してパージし、その混合物を190℃で6時間維持する。この後、500mlのNMPを添加して混合物を冷却する。窒素下で混合物を60℃未満に冷却させる。濾過後に、11gのコハク酸を溶液に添加し、その溶液を30分間撹拌し、そしてポリマー溶液を水中で沈殿させた。沈殿した生成物を熱水で抽出し(85℃で20時間)、減圧下で120℃で24時間乾燥する。生成物のV.N.は48.3ml/gであり、OH末端基の量は0.22質量%であった(電位差滴定により測定)。この成分Eを、実施例では「成分E1」と呼ぶ。
【0177】
成分F: ガラス繊維、直径10μmのチョップドストランド(長さ4.5mm)、及びPUベースのサイジング。この成分Fを、実施例では「成分F1」と呼ぶ。
【0178】
成分H: 成分H1: Naugard 445。
【0179】
成分H2: 次亜リン酸ナトリウム。
【0180】
化合物の製造及び試験
配合を、二軸押出機(ZSK30)を使用して実施し、バレル温度を380℃未満の溶融温度を維持するように設定した。試験試料の成形を、溶融温度340℃、鋳型温度120℃で実施した。引張試験を、ISO 527(E-モジュラス、強度、引張伸び)に従って実施した。一部の試料について、引張試験を150℃でも実施した。衝撃強度をISO 179 1eUに従って試験し、ノッチ付き衝撃をISO 179 1eAに従って試験した。CTIを、厚さ4mmを有する試料についてIEC 60112に従って測定した。FR性能を、厚さ0.8mmの試料でUL-94に従って試験した。ポリアリーレン(エーテル)スルホンの溶液粘度を、25℃でN-メチルピロリドン中の0.01g/mlの溶液を使用して測定した。
【0181】
【0182】
【0183】
実施例から見出すことができるように、本発明による組成物は、良好な機械的性能、並びにCTI値及びFR挙動(UL-94)との特有の組み合わせを示す。参考試験は劣ったFR性能を示す。
【国際調査報告】