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特表2024-542681イソプレナール及び/又はプレナールの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】イソプレナール及び/又はプレナールの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/38 20060101AFI20241108BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20241108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C07C45/38
C07C47/21
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532415
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022084198
(87)【国際公開番号】W WO2023099727
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21212228.7
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュイッカーツ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ルパート
(72)【発明者】
【氏名】カマスズ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルスドルフ,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC45
4H006AD11
4H006AD17
4H006BA05
4H006BC13
4H006BD10
4H006BD33
4H006BD52
4H006BE30
4H039CA62
4H039CC20
(57)【要約】
イソプレノールを含むガス状反応物流を分子状酸素の存在下で銀含有不均一系触媒と接触させてイソプレナール及び/又はプレナール含有生成物流を得ることによる、イソプレナール及び/又はプレナールの調製方法において、反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.04未満に維持される。この方法は、高い転化率と選択率を長期間維持し、触媒の詰まりや圧力損失を回避する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレノールを含むガス状反応物流を分子状酸素の存在下で銀含有不均一系触媒と接触させてイソプレナール及び/又はプレナール含有生成物流を得ることによる、イソプレナール及び/又はプレナールの調製方法であって、前記反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.04未満に維持されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
未反応イソプレノール流を前記生成物流から分離し、イソプレノールを含む新鮮な供給流と前記未反応イソプレノール流とを混合して前記反応物流を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応物流中でイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比を維持することが、蒸留、選択的吸着、及び/又は選択的反応によってイソプレノールを含む流れからホルムアルデヒドを除去することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記未反応イソプレノール流を前記新鮮な供給流と混合する前に、前記未反応イソプレノール流からホルムアルデヒドを除去することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記未反応イソプレノール流が前記新鮮な供給流と混合され、前記混合された流れからホルムアルデヒドが除去されることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記未反応イソプレノール流が、イソプレノールと、水と、ホルムアルデヒドとを含有する粗イソプレノール流と混合され、前記混合された流れからホルムアルデヒドを除去することが、
(i)前記混合された流れを、1.5bara以下の圧力で運転される第1の低沸点物分離塔に送り、イソプレノールとホルムアルデヒドとを含む第1の塔底流と、水と低沸点物とを含む第1の蒸留流とを得る工程;
(ii)前記第1の塔底流を、2bara以上の圧力で運転される第2の低沸点物分離塔に送り、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流と、イソプレノールを含む第2の塔底流とを得る工程;並びに
(iii)前記第2の塔底流を仕上げ塔に送り、高沸点物を含む塔底流と、蒸留流としての反応物流とを得る工程;
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系触媒が、不活性担体上に被覆された銀又は完全に金属の銀触媒体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イソプレノールを含む前記新鮮な供給流が、イソブテンとホルムアルデヒドとを反応させるプロセスに由来し、イソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.04未満になるまで精製される、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化的脱水素化による3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)からの、3-メチル-3-ブテン-1-アール(イソプレナール)又は3-メチルブト-2-エナール(プレナール)の調製に関する。より具体的には、本発明は、イソプレノールを含むガス状反応物流を分子状酸素の存在下で銀含有不均一系触媒と接触させて(イソ)プレナール含有生成物流を得ることによる、イソプレナール及び/又はプレナールの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレナール及びイソプレナールは、香料、ビタミン、及びカロテノイドの合成中間体として非常に望まれている。適切な触媒上でのイソプレノールの酸化的又は非酸化的脱水化によるそれらの調製は、当業者に公知であり、また文献に広く記載されている。
【0003】
国際公開第2009/115492号パンフレットは、イソプレノールの酸化的脱水化のための貴金属を含む担持触媒の使用に関する。この担持触媒は、例えばステアタイト球上に銀を含み、6重量%の銀含有量と0.18~0.22cmの粒子径を有する。これは、火炎噴霧又はエチレンジアミンとシュウ酸銀との複合溶液の塗布及びその後の空気流中での乾燥によって合成される。
【0004】
欧州特許第2448669号明細書は、貴金属、例えば銀を含む担持触媒に関する。銀金属含有触媒は、ステアタイト球にコロイド銀を付着させることによって得られる。
【0005】
国際公開第2012/146436号パンフレットは、3-メチル-3-ブテン-1-オールから3-メチル-3-ブテン-3-アールへの酸化的脱水素化のための銀で被覆されたステアタイト球の触媒に関する。
【0006】
国際公開第2012/146528号パンフレットには、三次元変形、並びに/又は銀含有繊維及び/若しくはフィラメントの空間内での配置によって得られる成形触媒体の存在下で、対応するアルコールの酸化的脱水素化によってC1~C10アルデヒドを調製する方法が記載されている。
【0007】
国際公開第2018/153736号パンフレットには、メタノールの酸化的脱水素化によるアルデヒド及びケトンの調製、特にホルムアルデヒドの調製のための銀含有触媒が記載されている。この触媒は二層系である。第1の触媒層は、単位当たりの重量が0.3~10kg/mであり、線径が30~200μmである束、ネット、又はメッシュの形態の銀含有材料からなる。第2の層は、0.5~5mmの粒径を有する顆粒形態の銀含有材料からなる。三次元変形並びに/又は空間内での銀含有繊維若しくは糸の配置は、不規則に又は規則的な形で生じ得る。顆粒は、小さい通常は不規則な形状の粒子、例えば銀の結晶からなる粒状材料である。
【0008】
国際公開第2020/099390号パンフレットは、発熱条件下での有機化合物の酸化的脱水素化のための、特にオレフィン性不飽和アルコールからのオレフィン性不飽和カルボニル化合物の調製のための、金属銀触媒体を含む触媒床の使用に関する。
【0009】
中国特許第103769162号明細書は、不飽和アルコールの酸化に使用される複合金属触媒及びその調製方法に関する。中国特許第108404944号明細書は、バナジウム銀モリブデンリン酸塩触媒の調製方法、及びプレナール調製のためのこの触媒の使用に関する。
【0010】
オレフィン性不飽和アルコールからオレフィン性不飽和アルデヒドへの酸化的脱水素化は、非常に発熱性である。反応速度は、反応温度、反応物、及び反応条件下で不安定な生成物に大きく依存するため、反応の制御は困難である。このため、時間の経過と共にコークス形成の蓄積、管の詰まり、及び圧力損失の増加が生じる可能性がある。確実に連続運転するためには、酸素含有ガス流を使用してコークス堆積物を燃焼させることにより、触媒を定期的に再生することが必要である。
【0011】
触媒上に堆積したコークス及びその他の堆積物を頻繁に燃焼させて除去するにもかかわらず、長年の運転の間に転化率と選択率の両方が低下することがあるため、触媒を交換しなければならない。このような反応器を開けると、炭素質の堆積物が見られ、反応管の一部が詰まっていることが分かる。
【0012】
米国特許第6,013,843号明細書には、不活性担体上の銅、銀、及び/又は金からなる触媒上でのイソプレノールの酸化的脱水素化によってアルデヒドを連続的に工業生産するための方法が開示されており、この方法は、アルコールを蒸発させること、アルコール蒸気を酸素含有ガスと混合すること、得られた酸素含有アルコール蒸気をアルコールの露点よりも高いが反応開始温度より低い温度で触媒層に最初に通し、次いで酸素含有アルコール蒸気を反応させて対応するアルデヒドを形成することを含む。反応管内の詰まりは、未変換アルコールのリサイクルによって補充される出発アルコール中のごく少量の副生成物に起因すると考えられる。触媒を破壊する反応は、酸素含有アルコール蒸気が開始温度より低い温度で最初に担持触媒を通過する場合に回避されるとされている。
【0013】
高い転化率と選択率を長期間維持し、触媒の詰まり及び圧力損失を回避する方法が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、イソプレノールを含むガス状反応物流を分子状酸素の存在下で銀含有不均一系触媒と接触させてイソプレナール及び/又はプレナール含有生成物流を得ることによる、イソプレナール及び/又はプレナールの調製であって、反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.04未満、好ましくは0.03未満、特には0.02未満、又は0.01未満に維持されることを特徴とする、調製に関する。更により好ましい実施形態では、イソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比は、0.002未満、又は0.001未満に維持される。
【0015】
以降で、略語「(イソ)プレナール」は、プレナール、イソプレナール、又は両方の混合物を示すために使用される。
【0016】
本発明によれば、反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比は、一定レベル以下に維持される。しかしながら、反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比を一定の点を超えて減少させると、急速に減少する点に到達する。ホルムアルデヒドの除去は、追加の設備と運転コストを要する。比率を下げることによる改善と、そのような比率を維持するためのコストとの間で、経済的なバランスを取らなければならない。従って、イソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比は、好ましくは0.0005以上、或いは場合によっては0.005以上である。
【0017】
今回、反応器の詰まりと圧力損失の増加が、反応物流中のホルムアルデヒドの存在によって大きく影響されることが見出された。縮合と重合による触媒のファウリング反応は、触媒上での炭素又はコークスの形成に関与する主要な反応であると考えられる。この炭素の形成には、ホルムアルデヒドの熱縮合、又はホルムアルデヒドとオレフィン系炭化水素であるイソプレノール及び(イソ)プレナールとの熱縮合が関与すると考えられる。触媒の存在下では、一次縮合生成物は脱水素及び重合タイプの反応を起こし、触媒上に付着し、炭素質の堆積物が形成されるまで更に脱水素及び分解を受ける傾向がある。
【0018】
反応物流中のホルムアルデヒドの存在は、2つの主な発生源に起因する。ホルムアルデヒドは、反応器に送られる新鮮な供給流中に、すなわちイソプレノール製造工程に由来する不純物として含まれる可能性がある。工業的慣行では、イソプレノールはイソブテンとホルムアルデヒドから合成される。イソプレノール合成後の精製工程で分離できない全てのホルムアルデヒドは、最終的に反応物流に入る。
【0019】
加えて、ホルムアルデヒドは系内でも生成される。イソプレノールの一部は分解されてイソブテンとホルムアルデヒドに戻る。ほとんどの連続工業プロセスは50~60%のシングルパス転化レベルで未変換のイソプレノールのリサイクルを伴って運転されるため、未反応イソプレノールを含む流れを精製する工程が行われない場合には、未変換イソプレノールのリサイクル流中にホルムアルデヒドが存在する可能性がある。今回、未変換イソプレノールのリサイクル流が、反応物流におけるホルムアルデヒド汚染の最大の原因になることが判明した。そのため、反応器からのイソプレノールリサイクル流の純度は、本発明の目的を解決するために極めて重要である。
【0020】
従来の方法と同様に、本発明による方法は、通常部分的な転化で、例えば30~70%、好ましくは50~60%の転化率で行われる。未反応のイソプレノール流は生成物流から分離される。未反応イソプレノール流はリサイクルされる。すなわち、イソプレノールを含む新鮮な供給流と混合されて反応物流を供給する。未反応イソプレノール流は、主成分としてイソプレノールを含むが、プレナール、イソプレナール、イソアミルアルコール、イソバレルアルデヒド、イソ吉草酸、プレノール、ホルムアルデヒドも含み得る。また、これは、微量の他のC及びCアルデヒド並びに酸も含み得る。
【0021】
本発明によれば、反応物流中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比を低減することは、いくつかの異なる方法で実現することができる。一実施形態では、未反応イソプレノール流が新鮮な供給流と混合される前に、未反応イソプレノール流からホルムアルデヒドが除去される。
【0022】
一実施形態では、未反応イソプレノール流が新鮮な供給流と混合され、混合された流れからホルムアルデヒドが除去される。
【0023】
或いは、十分に精製されたある量の新鮮な供給流と未反応イソプレノール流とを混合することにより、混合された流れにおいてイソプレノールに対するホルムアルデヒドの望まれる重量比を得ることも可能である。
【0024】
一実施形態では、イソプレノールを含む新鮮な供給流は、イソブテンとホルムアルデヒドとを反応させるプロセスから得られ、イソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.04未満、好ましくは0.03未満、特には0.02未満、又は0.01未満になるまで精製される。更に好ましい実施形態では、新鮮な供給流は、イソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比が0.002未満、又は0.001未満になるまで精製される。
【0025】
ホルムアルデヒドは、蒸留、選択的吸着、及び/又は選択的反応などの従来の分離方法によってイソプレノール流から除去することができる。
【0026】
蒸留によるホルムアルデヒドの除去には、単一の蒸留塔又は一連の蒸留塔の使用が含まれ得る。使用される塔又はカラムは従来の蒸留塔であってよい。蒸留塔の適切な種類には、充填された塔、例えばランダム充填又は構造化充填された塔、棚段塔(plate column)(すなわちトレイカラム(tray column))、及び充填材とトレイの両方を含む混合塔が含まれる。
【0027】
適切な棚段塔は、これ全体を通って液相が流れる内部構造を含み得る。適切な内部構造には、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルトレイ、及びThormann(登録商標)トレイ、特にバブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルトレイ、及びThormann(登録商標)トレイが含まれる。
【0028】
ランダム充填された塔は、様々な成形体で充填されることができる。熱と物質の伝達は、通常25~80mmの範囲のサイズを有する成形体によって表面積を拡大することによって改善される。適切な成形体には、ラシヒリング(中空シリンダー)、レッシング(Lessing)リング、ポールリング、ハイフロー(Hiflow)リング、及びインタロックス(Intalox)サドルが含まれる。充填材料は、規則的又は不規則な方式で(バルク材料として、すなわち緩く充填されて)塔内に提供され得る。適切な材料には、ガラス、セラミック、金属及びプラスチックが含まれる。
【0029】
構造化充填材は、規則的充填材を発展させたもので、規則的成形構造体を有する。これにより、ガス流の圧力損失を低減できる。適切な種類の構造化充填材には、布地充填材及び金属シート充填材が含まれる。
【0030】
選択的吸着によるホルムアルデヒド除去は、低分子量アルデヒド、特にホルムアルデヒドに対して選択性を示す吸着剤と流れを接触させることを含む。有用な吸着剤材料は、高い選択性と高い吸着容量を提供する必要がある。追加の非常に重要な要件は、吸着剤材料が(イソ)プレナールの回収率を低下させる及び/又は吸着剤を不活性にする可能性のある化学反応を触媒したりそれに関与したりしない必要があることである。吸着剤としては、イオン交換樹脂、メソポーラス固体、活性炭、及びゼオライトが挙げられる。
【0031】
選択的反応によるホルムアルデヒドの除去には、ホルムアルデヒドが、触媒の失活及び詰まりを起こしにくい生成物へと、又はホルムアルデヒドよりも流れからより容易に分離できる生成物へと選択的に反応する反応条件に流れをおくことが含まれる。
【0032】
一実施形態では、未反応イソプレノール流は、粗イソプレノール流と混合され、混合された流れからホルムアルデヒドが除去される。粗イソプレノール流は、一般に、未反応イソブチレンが除去されたイソプレノール生成プロセスの生成物流である。これは、ホルムアルデヒドの除去がイソプレノール合成後の精製ユニットで行われることを意味する。未反応イソプレノール流が混合された粗イソプレノール流からホルムアルデヒドを回収する好ましい方法は、以降でより詳しく説明される。
【0033】
更に別の実施形態では、反応物流は、未反応イソプレノール流と、他の供給源からのイソプレノールと、イソブテンとホルムアルデヒドとの反応からの新鮮な供給流と、の混合物からなる。イソプレノールの他の供給源は、イソブテンとホルムアルデヒドとの反応以外の、イソプレノールが副生成物又は目的生成物として得られるプロセスである(例えばイソプレノール異性化、又は商業的供給元からのイソプレノール)。
【0034】
反応物流中にホルムアルデヒドが存在すると、触媒活性と選択性の両方が低下し、圧力損失の増加と反応器の詰まりを引き起こす。ホルムアルデヒドに加えて、反応物流中に存在し得る他の不純物も、触媒活性及び選択性の低下を引き起こす可能性がある。好ましくは、反応物流の中でのイソプレノールに対するホルムアルデヒドの一定の重量比を維持するために使用される装置又は操作は、これらの不純物の大部分を除去するためにも有効である。好ましい実施形態では、以下の不純物のうちの少なくとも1つの反応物流中の濃度、特には以下の不純物の全ての濃度は、示された制限値未満に保たれる。
【0035】
【表1】
【0036】
これらの制限を遵守することは、反応物流が他の供給源からのイソプレノール流を含む場合に特に重要である。
【0037】
酸化
このプロセスは、イソプレノールを含むガス状反応物流を分子状酸素の存在下で銀含有不均一系触媒と接触させて、(イソ)プレナール含有生成物流を得ることを含む。
【0038】
通常、このプロセスは、以下の工程を含む:
a) イソプレノールを蒸発させる工程;
b) イソプレノール蒸気を酸素含有ガスと混合する工程;
c) 例えばガス状混合物を銀含有不均一系触媒の層に通すことによって、ガス状混合物を銀含有不均一系触媒と接触させ、ガス状混合物を反応させて(イソ)プレナールを形成する工程。
【0039】
銀含有不均一系触媒は特に限定されない。これは、ステアタイト球などの不活性担体上に被覆された銀を含んでいてもよい。或いは、不均一系触媒は、銀含有繊維及び/又はフィラメントから形成される。更なる実施形態では、不均一系触媒は、完全に金属の銀触媒体から構成される。
【0040】
不活性担体上に被覆された銀を有する触媒を製造するためには、銀金属は、好ましくは火炎噴霧によって不活性材料に適用されるが、他の方法、例えば含浸又はプラズマ噴霧も、耐摩耗性シェルが得られる限り適しており、そうでない場合には、可能な限り滑らかである必要がある。
【0041】
必要に応じて、活性組成物で被覆されていない不活性材料で触媒を希釈することもできる。担体材料としても有用な適切な不活性材料としては、セラミック材料、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、及び特にステアタイトが挙げられる。ただし、触媒充填材には活性物質粒子が10%以上含まれている必要がある。
【0042】
触媒に適した形状としては、球体のみならず、他の形状、例えば楕円体、円柱、又はリングも挙げられる。球体の直径d、又は他の形状体の最大直径は、直径0.1~1.5cmの範囲内であってよく、直径は管束管の内径に依存する。
【0043】
触媒粒子は、例えば一般的な直立型反応器内の銀又はステンレス鋼のメッシュ上に保持される。
【0044】
不均一系触媒は、連続気相反応に適した化学反応槽(反応器)内に配置される。通常、反応器は少なくとも2つの開口部を有し、少なくとも1つは化合物を中に通すためのものであり、少なくとも1つは生成物を反応器から出すためのものである。特別な実施形態では、触媒床は管型反応器内に、好ましくは管束反応器の反応管内に配置される。触媒気相反応を行うために適した管型反応器は、通常、反応ガスが横断し、触媒床で満たされており、周囲を取り囲む反応器ジャケット内に含まれる伝熱媒体がその周りを流れる触媒管束を含む。伝熱媒体は好ましくは塩浴であり、通常はアルカリ硝酸塩及び/又は亜硝酸塩などの様々な塩の溶融混合物である。
【0045】
このプロセスは、好ましくは、塩浴中に配置される多数の短い管型反応器からなる、欧州特許第0881206B1号明細書に記載されているような反応器内で行われる。このプロセスの試薬及び生成物は熱的に不安定であるため、滞留時間を最小限にするために比較的短い反応管を有することが好ましい。また、塩浴による冷却を最大限にし、それにより反応の高い発熱性に関連するホットスポット温度を最小限にするために、比較的薄い反応器管を有することも好ましい。塩浴による冷却を行わずにプロセスを実行した場合には、断熱条件下で得られる高温は選択性に悪影響を及ぼすであろう。
【0046】
望まれる反応器容量に応じて、使用される管束反応器は、典型的には5~60000本の管、好ましくは500~50000本の管、特には1000~45000本の管を有する。実験目的のためには、単一の管を使用することができる。
【0047】
更に別の実施形態では、管型反応器は、管板間に配置された複数の管を含む。「管板」という用語は、管又はパイプを互いに対して正確な位置及びパターンで受け入れるように穴が開けられた、プレート又はシートの丸い平らなパーツを意味する。「管板」は、管型反応器内の管を支持及び隔離するために使用される。
【0048】
好ましい実施形態では、反応管は、好ましくは0.25cm~5.0cmの範囲;より好ましくは0.5cm~4.0cmの範囲;特には1.0cm~1.5cmの範囲の内径を有する。好ましくは、反応管は少なくとも5cm、好ましくは10~60cm、特には20~40cmの範囲の長さを有する。
【0049】
好ましくは、反応管内の触媒床の充填高さは、12mm~500mm、特には50mm~500mmの範囲である。充填高さは反応管の長さと内径に依存する。触媒床の高さは、好ましくは管の長さよりも若干短い。好ましくは、これは、外部冷却媒体とよく熱交換される管の部分のみに延在する。好ましい実施形態では、個々の管の入口及び/又は出口に向かう反応器管の一部は、ステアタイトなどのほぼ不活性な材料の成形体で充填され得る。好ましい実施形態では、これらの不活性材料は触媒粒子と同類似した形状を有する。好ましくは、全ての反応器管は、圧力損失、触媒床の体積及び触媒床の位置、並びに不活性材料が存在する場合には不活性材料に関して、互いに類似した方法で充填される。個々の管への充填は、1袋当たりの触媒又は不活性材料の量が規定されている、予め袋詰めされた触媒のサンプルを使用することにより簡略化することができる。品質管理のために、個々の管の圧力損失を監視し、文書化することができる。
【0050】
反応管内の混合ガスの滞留時間は、好ましくは0.0005~2秒の範囲内、より好ましくは0.1~1.5秒の範囲内である。反応ガスの組成については以降で詳しく説明する。
【0051】
脱水素化は、好ましくは0.5~2bar(絶対圧)の範囲内の圧力で、好ましくは大気圧で又は下流で圧力損失を生じさせるために若干高めの圧力で行われる。特に好ましくは、反応器は1.150~1.350bar(絶対圧)の範囲で運転される。反応器管に沿った圧力損失は、好ましくは5~100mbarの範囲に維持される。
【0052】
脱水素化は、好ましくは300℃~500℃の範囲の温度、より好ましくは350℃~450℃の範囲の温度で行われる。
【0053】
好ましくは、可燃性分子、酸素、及び不活性ガスの濃度は、プロセスにおいて爆発性領域に入ることを回避する形で供給流組成を制御することによって規定される。好ましくは、これは、爆発限界を超える可燃性分子の濃度を有する「高濃度(fat)」組成物を流すことによって実現される。好ましい実施形態では、酸素は、純粋な酸素又は濃縮された酸素ではなく、空気を使用することによって供給される。始動時に爆発性領域での運転を回避するために、空気の部分置換に窒素を使用することができる。定常運転になると、窒素はゆっくり空気と交換される。
【0054】
生成物流は従来の方法で後処理される。例えば、高温の反応ガスは、水などの溶媒により、又は好ましくは反応器から出る際に直接凝縮生成物混合物中で、急冷される。反応器流出物の液相は分離される。有機相が蒸留されることで、未反応のイソプレノールから(イソ)プレナールが分離される。
【0055】
再生
通常、銀含有不均一系触媒から蓄積したコークスを除去するために、再生サイクルが定期的に行われる。再生サイクルは、圧力損失が閾値を超えて増加したときに開始することができ、或いは任意の時間間隔(例えば週に1回)で開始することもできる。再生サイクルは、塩浴の温度を例えば400~450℃に上げてコークスを燃焼させながら、反応器に所定の時間、例えば6~24時間希釈空気又は空気を送り込むことからなる。
【0056】
ホルムアルデヒド除去とイソプレノール合成の統合
アルコール水溶液からホルムアルデヒドを選択的に回収することは、非常に困難である。この困難さは、単量体ホルムアルデヒド(及び重合体ホルムアルデヒド)が、水との水和物、及びイソプレノールなどのアルコールとのヘミホルマールの両方を形成するということから生じる。ホルムアルデヒドの重合度が異なる水和物とヘミホルマールは、混在する沸点を有する。水和物とヘミホルマールの安定性とそれらの間の平衡は、温度に依存する。蒸留塔の上部領域で形成されたホルマールは、塔の高温の底部で分解する場合があり、これにより分離作業が更に複雑になる。
【0057】
近年、平衡がホルムアルデヒドとイソプレノールのヘミホルマール側にシフトし、その結果本質的に全てのホルムアルデヒドが蒸留塔の底部に残る低温での第1の蒸留と、ヘミホルマールがホルムアルデヒドとイソプレノールに開裂され、その結果ホルムアルデヒドがイソプレノールから容易に分離されることができる高温での第2の蒸留と、を伴う蒸留列で、ホルムアルデヒドをイソプレノールから実質上完全に分離できることが報告された。M.Dyga,A.Keller,and H.Hasse,Industrial & Engineering Chemistry Research 2021,60,11,4471-4483を参照のこと。
【0058】
一実施形態では、未反応イソプレノール流は、イソプレノールと、水と、ホルムアルデヒドとを含有する粗イソプレノール流と混合される。そして、混合された流れからホルムアルデヒドを除去することは、
(i)混合された流れを、1.5bara以下の圧力で運転される第1の低沸点物分離塔に送り、イソプレノールとホルムアルデヒドとを含む第1の塔底流と、水と低沸点物とを含む第1の蒸留流とを得る工程;
(ii)第1の塔底流を、2bara以上の圧力で運転される第2の低沸点物分離塔に送り、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流と、イソプレノールを含む第2の塔底流とを得る工程;並びに
(iii)第2の塔底流を仕上げ塔に送り、高沸点物を含む塔底流と、蒸留流としての反応物流とを得る工程;
を含む。
【0059】
ホルムアルデヒドをイソブチレンと反応させることで反応混合物が得られる。未反応のイソブチレンは、イソブチレン蒸留塔内で反応混合物から除去され、粗イソプレノールの流れが得られる。粗イソプレノールは、イソブチレン蒸留管からの塔底流として得られる。イソブチレンは、イソブチレン蒸留流として得られる。イソブチレン蒸留流は、好ましくはホルムアルデヒドとイソブチレンとの反応にリサイクルされる。
【0060】
イソプレノール-ホルムアルデヒドの解離温度よりも低い温度での第1の蒸留と、イソプレノール-ホルムアルデヒドの解離温度よりも高い温度での第2の蒸留を可能にするために、本発明は、異なる圧力で運転される2つの低沸点物分離塔を想定している。従って、第1の低沸点物分離塔に広がる比較的低い圧力で、水と、ホルムアルデヒドを本質的に含まない低沸点物とを含む第1の蒸留物が得られる。第2の低沸点物分離塔に広がる比較的高い圧力で、実質上全てのホルムアルデヒドが、イソプレノールから分離される。従って、本発明のプロセスにより、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを得ることが可能になる。
【0061】
「ホルムアルデヒドを本質的に含まない」という用語は、得られた純粋なイソプレノールに有意な量のホルムアルデヒドが存在しないことを示すものと理解される。従って、得られた純粋なイソプレノールは、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満のホルムアルデヒドを含む。
【0062】
粗イソプレノール流は、イソプレノールと、水と、ホルムアルデヒドとを含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、50~75重量%、より好ましくは60~65重量%のイソプレノールを含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、15~40重量%、より好ましくは22~35重量%の水を含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、1~5重量%、より好ましくは2~3重量%のホルムアルデヒドを含む。
【0063】
好ましくは、粗イソプレノール流は、液体流である。液体流は、単相液体流又は二相液体流であり得る。
【0064】
粗イソプレノールは、1.5bara以下の圧力で運転される第1の低沸点物分離塔に送られる。任意の高圧の粗イソプレノール流は、第1の低沸点物分離塔に送られる前に解放されることが好ましい。粗イソプレノール流は、好ましくは、側流として第1の低沸点物分離塔に供給され、供給の位置の上に精留部を、供給の位置の下にストリッピング部を画定する。
【0065】
第1の低沸点物分離塔では、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の塔底流、及び水と低沸点物を含む第1の蒸留流が得られる。「低沸点物」という用語は、大気圧で、イソプレノールの沸点より低い沸点、従って約130℃未満の沸点を有する有機化合物(ホルムアルデヒド以外)を指すと理解される。最も一般的な低沸点物は、プロセス中に副生成物として形成されるメタノール及び/又はギ酸イソプレニルである。
【0066】
好ましい実施形態では、第1の低沸点物分離塔は、1.2bara以下、好ましくは0.5bara以下の圧力で運転される。第1の低沸点物分離塔の塔底温度は、好ましくは80~135℃、より好ましくは90~115℃、最も好ましくは95~105℃の範囲である。第1の低沸点物分離塔の塔頂温度は、45~105℃の範囲が好ましく、55~80℃の範囲がより好ましい。
【0067】
特に好ましい実施形態では、第1の低沸点物分離塔は、0.2~0.5baraの範囲の圧力、90~115℃の範囲の塔底温度、及び55~80℃の範囲の塔頂温度で運転される。
【0068】
第1の低沸点物分離塔は、好ましくは15~65の理論段数、より好ましくは25~40の理論段数を有する。特に、第1の低沸点物分離塔のストリッピング部は、好ましくは10~25の理論段数を有する。第1の低沸点物分離塔の精留部は、好ましくは5~40の理論段数を有する。
【0069】
第1の塔底流は、好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~90重量%のイソプレノールを含む。
【0070】
第1の蒸留物は、典型的には、第1の低沸点物分離塔の塔頂でガス形態にて取り出され、凝縮されて液体二相流が得られる。液体二相流は好ましくは分離容器中で相分離され、水相と有機相が得られる。水相は、好ましくは、後述の廃水ストリッピングカラムに通される。有機相は、還流流として第1の低沸点物分離塔の塔頂に部分的に戻されることが好ましい。有機相の別の一部は、第1の低沸点物分離塔における水不溶性の低沸点物の蓄積を避けるためにプロセスから廃棄されることが好ましい。
【0071】
好ましい実施形態では、第1の蒸留流の少なくとも一部は、廃水ストリッピングカラムに送られて、低沸点物及び一緒に運ばれたイソプレノールを水から分離する。好ましくは、廃水ストリッピングカラムに送られる第1の蒸留流の一部は、上で論じたように、第1の蒸留流の凝縮及び相分離によって得られた水相である。
【0072】
廃水ストリッピングカラムでは、低沸点物が低沸点物蒸留流として得られ、廃水が塔底流として得られる。低沸点物蒸留流と廃水塔底流の両方がプロセスから除去され、各流れは更なる処理に送られることができる。
【0073】
更に、イソプレノールは、廃水ストリッピングカラムにおける側流として得られることが好ましい。イソプレノール側流は、典型的には二相流であり、好ましくは15~40重量%、より好ましくは25~35重量%のイソプレノールを含む。イソプレノール側流は、好ましくは第1の低沸点物分離塔にリサイクルされる。
【0074】
低沸点物蒸留流は、好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~85重量%の低沸点物を含む。
【0075】
廃水塔底流は、好ましくは1.2重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満の有機物を含む。廃水塔底流は、典型的には、0.05~1.5重量%、例えば0.3~0.9重量%のホルムアルデヒドの濃度でホルムアルデヒドを含む。
【0076】
廃水ストリッピングカラムは、好ましくは1.5bara以下、好ましくは1.1bara以下の圧力で運転される。廃水ストリッピングカラムの塔底温度は、95~110℃の範囲が好ましく、97~103℃の範囲がより好ましい。廃水ストリッピングカラムの塔頂温度は、65~100℃の範囲が好ましく、75~85℃の範囲がより好ましい。
【0077】
特に好ましい実施形態では、廃水ストリッピングカラムは、0.95~1.1baraの範囲の圧力、97~103℃の範囲の塔底温度、及び75~85℃の範囲の塔頂温度で運転される。
【0078】
廃水ストリッピングカラムは、好ましくは6~30の理論段数、より好ましくは10~20の理論段数を有する。
【0079】
第1の低沸点物分離塔で得られた第1の塔底流は、2bara以上の圧力で運転される第2の低沸点物分離塔に送られる。第1の塔底流は、好ましくは、側流として第2の低沸点物分離塔に供給され、供給の位置の上に精留部を、供給の位置の下にストリッピング部を画定する。
【0080】
第2の低沸点物分離塔では、水性ホルムアルデヒドを含む、又はこれから本質的になる第2の蒸留流、及びイソプレノールを含む第2の塔底流が得られる。第2の塔底流は、高沸点物を更に含む。「高沸点物」という用語は、大気圧で、イソプレノールの沸点より高い、すなわち、約130℃より高い沸点を有する有機化合物を指すと理解される。最も一般的な高沸点物は、プロセス中に副生成物として形成されるジオール及び/又はオリゴマーである。
【0081】
好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔は、2.5bara以上、好ましくは2.8bara以上、最も好ましくは2.9bara以上の圧力で運転される。第2の低沸点物分離塔の塔底温度は、好ましくは160~200℃、より好ましくは170~185℃、最も好ましくは175~180℃の範囲である。第2の低沸点物分離塔の塔頂温度は、115~160℃の範囲が好ましく、125~145℃の範囲がより好ましい。
【0082】
特に好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔は、2.9~3.5baraの範囲の圧力、175~180℃の範囲の塔底温度、及び130~140℃の範囲の塔頂温度で運転される。
【0083】
第2の低沸点物分離塔は、好ましくは20~60、より好ましくは35~60の理論段数を有する。特に、第1の低沸点物分離塔のストリッピング部は、好ましくは25~45の理論段数を有する。第1の低沸点物分離塔の精留部は、好ましくは7~20の理論段数を有する。
【0084】
第2の低沸点物分離塔の塔頂では、典型的には、オフガスが得られる。オフガスは、窒素を主に含み、微量のイソプレノール、ギ酸、水、ホルムアルデヒド、及び/又は分解ガスを含む場合がある。
【0085】
第2の塔底流は、好ましくは82~96重量%、より好ましくは87~91重量%のイソプレノールを含む。第2の低沸点物分離塔の比較的高い圧力により、ホルムアルデヒドとイソプレノールを高度に分離できる。従って、第2の塔底流は、好ましくは多くとも0.5重量%、より好ましくは多くとも0.1重量%のホルムアルデヒドを含む。
【0086】
第2の蒸留流は、水性流であり、好ましくは25~60重量%、より好ましくは40~50重量%、特に45~50重量%のホルムアルデヒドを含む。第2の蒸留流は、好ましくは多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%のイソプレノールを含む。
【0087】
第2の低沸点物分離塔の塔頂で現れる蒸気の凝縮曲線が広いため、液体をリサイクルする凝縮器を使用することが有利である。液体循環を伴う急冷での直接凝縮は、特に有利である。従って、このプロセスの好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔の精留部の下流において蒸気流方向に急冷部が設けられる。「蒸気流方向」という用語は、分離塔内のガス成分の流れの方向、すなわち、塔の上部に向かう上向きに関する。急冷部は、精留部の上の第2の低沸点物分離塔内に設けられることが好ましい。
【0088】
また、急冷での直接凝縮により、局所的なホルムアルデヒド濃度が高い箇所で発生する可能性のあるホルムアルデヒドの様々な凝縮及び重合メカニズムによって引き起こされる汚れも軽減される。第2の低沸点物分離塔及び下流プロセス、特に第2の低沸点物分離塔のオフガスにおける汚れの危険性を回避するために、第2の蒸留物中のホルムアルデヒドの濃度は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、特に50重量%以下である。
【0089】
急冷部の下端では、水性液体が回収される。急冷部が第2の低沸点物分離塔内に設けられている場合、水性液体は、例えば、精留部の上の及び急冷部の下の回収トレイで回収されることができる。
【0090】
水性液体は、循環ラインを通って急冷部に部分的に循環され、第2の蒸留物として部分的に取り出される。適切には、急冷部に循環された水性液体の一部は、急冷部の上部に循環される。水性液体の循環は、典型的にはポンプの使用によって達成される。上で述べたように、第2の蒸留物は、任意選択的にホルムアルデヒドとイソブチレンとの反応に少なくとも部分的にリサイクルされることができる。
【0091】
水性液体の一部を急冷部に循環させることにより、急冷部を通って上昇する蒸気の冷却、及び蒸気から水性液体へのホルムアルデヒドの吸収が可能になる。従って、ホルムアルデヒドは、急冷部を通って上昇する蒸気から急冷される。
【0092】
更に、水性液体は、還流流として第2の低沸点物分離塔の精留部に部分的に戻される。これは、還流ラインによって達成されることができる、又は水性液体は、急冷部の下の回収トレイからのオーバーフローとして精留部に部分的に戻されることができる。
【0093】
還流流対第2の蒸留物の質量流量比は、好ましくは2:1~10:1の範囲、より好ましくは3:1~7:1の範囲である。
【0094】
好ましい実施形態では、水性液体は、急冷部に循環される前に冷却される。好ましくは、第2の蒸留物として取り出される水性液体の一部は、冷却された水性液体の部分流である。
【0095】
急冷部の下端で回収される水性液体の温度は、好ましくは80~140℃、より好ましくは125~135℃の範囲である。急冷部に循環された冷却された水性液体の温度は、急冷部の下端で回収された水性液体の温度よりも10~80℃低いことが好ましい。これにより、エネルギー的に有利なプロセスが可能になる。
【0096】
急冷部の下端で取り出された熱い水性液体は、熱統合に役立つ。適切な実施形態では、それは、急冷部に循環される前に、第1の低沸点物分離塔に流入する粗イソプレノールの流れと熱交換される。
【0097】
一実施形態では、スクラブ部(scrubbing section)が、急冷部の下流において蒸気流方向に設けられ、水が、スクラブ部の上部に導入される。好ましくは、スクラブ部は、急冷部の上の第2の低沸点物分離塔内に設けられる。スクラブ部により、第2の蒸留物中のホルムアルデヒド濃度を上述の臨界濃度未満に維持することができ、従って例えば、オフガスラインなどで、パラホルムアルデヒドの堆積が回避される。
【0098】
スクラブ部の上部で導入された水と、第1の低沸点物分離塔で得られた第1の塔底流との質量流量比は、典型的には0.01:1~0.06:1の範囲であり、より好ましくは0.015:1~0.03:1の範囲である。
【0099】
第2の塔底流は、仕上げ塔に送られ、そこで純粋なイソプレノールが蒸留流として得られる。高沸点物は、塔底流を介して取り出される。第2の塔底流はホルムアルデヒドを本質的に含まないので、仕上げ塔の分離作業は、低沸点物分離部でのホルムアルデヒド分離の効率が低い場合に比べて大幅に複雑ではない。
【0100】
純粋なイソプレノール蒸留流は、好ましくは少なくとも97.0重量%、より好ましくは98.0重量%、例えば98.1~99.5重量%のイソプレノールを含む。
【0101】
高沸点物塔底流は、好ましくは90~99.9重量%、より好ましくは99~99.8重量%の高沸点物を含む。好ましくは、高沸点物塔底流は、0.2重量%未満のホルムアルデヒド、例えば0.05重量%未満のホルムアルデヒドを含む。
【0102】
好ましい実施形態では、仕上げ塔は、0.5bara以下、好ましくは0.25bara以下の圧力で運転される。第1の低沸点物分離塔の塔底温度は、130~190℃の範囲が好ましく、150~170℃の範囲がより好ましい。仕上げ塔の塔頂温度は、60~90℃の範囲が好ましく、65~85℃の範囲がより好ましい。
【0103】
特に好ましい実施形態では、仕上げ塔は、0.05~0.2baraの範囲の圧力、150~170℃の範囲の塔底温度、及び65~85℃の範囲の塔頂温度で運転される。
【0104】
仕上げ塔は、好ましくは6~40の理論段数、より好ましくは10~20の理論段数を有する。
【0105】
本発明は、添付の図面及び以下の実施例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1図1は、イソプレノール酸化反応の運転における経時的な転化率及び選択率を示す。
図2図2は、未反応イソプレノールのリサイクル流に対応するための様々な選択肢を備えたスキームA~Dを概略的に示す。
図3図3は、本発明の一実施形態によるプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明によれば、反応物流においてイソプレノールに対するホルムアルデヒドの一定の重量比を維持することは、図2にされるように多くの方法で実現することができる。スキームAは、リサイクル流bが先行技術のプロセスに典型的にどのように組み込まれるかを示す。スキームBは、リサイクル流bが既存のイソプレノール製造ユニットのイソプレノール分離工程を介してどのように送り返すことができるかを示す。スキームCは、追加の不純物分離工程、例えば蒸留工程を通る反応器供給流全体を示す。スキームDは、追加の不純物分離工程、例えば蒸留工程を通るリサイクル流のみを示す。
【実施例
【0108】
実施例1
イソプレノールの酸化はミニプラント反応器で検討される。触媒床は、銀で被覆された(5重量%)ステアタイト球(直径2mm)がステンレス鋼管(内径12mm)内に30cm充填されたものからなる。冷却ジャケットの温度は380℃に保持される。30g/hの水及び92L/hの空気と共に、300g/hのイソプレノール負荷が採用される。反応物流は水冷却器を通して急冷される。凝縮液はガスクロマトグラフィーによってオフラインで分析される。凝縮していないガス流は、ガスクロマトグラフィーによってオンラインで分析される。転化率及び(イソ)プレナールの選択率は、両方の分析を使用して計算される。
【0109】
ホルムアルデヒド濃度を0、2、3、4重量%と増加させたイソプレノールを用いる実験を行った。
【0110】
図1は、運転における経時的な転化率及び選択性を示している。5日目にはホルムアルデヒド濃度は2重量%に、14日目には3重量%に増加した。再生サイクルは、転化率50%の位置にプラス記号が付されている。ホルムアルデヒド濃度の増加に伴い、選択率の低下が観察される。運転初期の時間では、供給流に含まれるホルムアルデヒド1重量%当たり約1.5%ポイントの選択率の低下が観察される。ホルムアルデヒド濃度が高くなるのに伴い、再生サイクルはより頻繁に必要となった。4重量%のホルムアルデヒドでは、更に高い頻度で再生サイクルが必要であった。
【0111】
実施例2
図3に概略的に示されるプロセスによってイソプレナールが調製される。反応器供給流は、リサイクルされたイソプレノールと、様々な供給源からのイソプレノールと、イソブテンとホルムアルデヒドの反応から新たに合成されたイソプレノールとの混合物からなる(図3;1、a、b、i)。混合された流れの中のイソプレノールに対するホルムアルデヒドの重量比は0.04未満に維持される。他の不純物の含有量は上記の制限に準拠している。混合された供給流は部分的に留去される((図3;2、d)。残りの液体流には高沸点物が含まれており、反応器供給流から除去される(図3;o)。空気供給流が導入され(図3;e)、ガス状イソプレノールに混合される。
【0112】
反応器3は、ステアタイト球上に銀を含む触媒が充填された多管型反応器である。反応供給流は反応器内で変換され、冷却された反応生成物で直ちに急冷される(図3;3)。冷却された反応流は、気体流と液体流とからなる(図3;j、f)。ガス流は最初に吸収塔を通過し、そこで残りのガス状(イソ)プレナールが吸収される(図3;6)。(イソ)プレナールが濃縮された吸収剤(図3;k)は、続いてストリッピングユニットでストリッピングされる(図3;7)。ストリッピングされた吸収剤は吸収塔に再循環され、除去された(イソ)プレナールは反応器の液体反応流に戻される(図3;l)。ガス流(図3;m)は更に処理される。このガス流は、窒素と、未変換の酸素と、CO、CO、微量のホルムアルデヒド、イソブテン、及び水素を含む反応のあらゆるガス状副生成物とからなる。反応器での転化率が高いほど、これらの生成物の含有量も高くなる。液体反応器流(g)は、イソアミルアルコール、イソバレルアルデヒド、イソ吉草酸、プレノール、及びホルムアルデヒドなどの望ましくない副成分と共に、未変換のイソプレノール、プレナール、イソプレナール、及び水を含む。この流れは分離ユニットに送られる(図3;5)。分離された(イソ)プレナールはその後の使用のために送られ(図3;h)、水とイソプレノール、及び他の副成分が最初に相分離される。水相は更なる処理のために送られる(図3;n)。有機相(図3;i)は液体反応器供給流にリサイクルされる。
【0113】
以下の表は、液体反応生成物の典型的な組成を示している(図3工程4)。
【0114】
【表2】
【0115】
以下の表は、ガス流mの典型的な組成を示している(図3流れm)。
【0116】
【表3】
図1
図2
図3
【国際調査報告】