(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】α-スルホ脂肪酸塩の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/44 20060101AFI20241108BHJP
C07C 309/17 20060101ALI20241108BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20241108BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241108BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241108BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C07C303/44
C07C309/17
A61K8/46
A61Q5/02
A61Q19/10
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532684
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022082797
(87)【国際公開番号】W WO2023099283
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/134796
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ベン チュアン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ファン チン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ショウ ダオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルン,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラウスキ,デトレフ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AC781
4C083CC04
4C083CC21
4C083CC23
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE11
4C083EE31
4C083FF01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB12
4H006AD15
4H006AD17
4H006BB31
4H006BC51
4H006BC53
(57)【要約】
本発明は、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法であって、以下の工程:a)粗製α-スルホ脂肪酸を溶媒中で希釈し、pHを2~4に調整する工程と、b)工程a)で得られたα-スルホ脂肪酸塩のスラリーを完全に溶解するまで加熱する工程と、c)工程b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで徐々に冷却して結晶を得る工程と、d)工程c)で得られた結晶を濾過して母液を除去し、濾過ケーキを酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法であって、以下の工程:
a)前記粗製α-スルホ脂肪酸を溶媒中で希釈し、pHを2~4に調整する工程と、
b)前記工程a)で得られたα-スルホ脂肪酸塩のスラリーを、完全に溶解するまで加熱する工程と、
c)前記工程b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで徐々に冷却して結晶を得る工程と、
d)前記工程c)で得られた前記結晶を濾過して母液を除去する工程と、
e)濾過ケーキを酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記工程a)における前記α-スルホ脂肪酸塩と前記溶媒との重量比は、1:20~1:4、好ましくは1:18~1:5、好ましくは1:16~1:6、より好ましくは1:15~1:7、更により好ましくは1:13~1:8である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)において、前記溶媒は、水又は水混和性溶媒であり、好ましくは、前記溶媒は、水を含み、より好ましくは、前記溶媒は、実質的に水である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)において、塩酸を用いて前記pH値を2~4、好ましくは2.5~3.5に調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程c)において、α-スルホ脂肪酸塩の溶液を、40~60℃、好ましくは45~55℃に冷却し、前記工程c)で少なくとも1時間維持する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程e)で使用される前記酸水溶液は、0.001重量%~5重量%の量、好ましくは0.01重量%~3重量%の量、更に好ましくは0.03重量%~2.5重量%、より好ましくは0.05重量%~2重量%の量のクエン酸を少なくとも含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程e)において、前記酸水溶液と前記α-スルホ脂肪酸塩との重量比は、40:1~1:1、例えば、30:1~2:1、20:1~2.5:1、好ましくは15:1~3:1、より好ましくは11:1~4:1、更により好ましくは8:1~4.5:1、更により好ましくは7.8:1~5:1、最も好ましくは7.8:1~5.6:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記濾過ケーキは、工程e)において酸水溶液で2回リンスされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2回のリンスにおける前記酸水溶液の重量比は、1:1~1:3.5、好ましくは1:1.5~1:3、より好ましくは1:1.8~1:2.5である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粗製α-スルホ脂肪酸塩は、不純物として硫酸塩を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により得られる精製されたα-スルホ脂肪酸塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により得られる前記精製されたα-スルホ脂肪酸塩を含むパーソナルケア組成物。
【請求項13】
前記組成物は、ヘアシャンプー、シャワージェル、石鹸、シンデット、洗浄ペースト、洗浄ローション、スクラブ製剤、フォームバス、オイルバス、シャワーバス、シェービングフォーム、シェービングローション、シェービングクリーム、及びデンタルケア製品の形態である、請求項12に記載のパーソナルケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法に関する。本発明の方法では、硫酸塩の不純物を効果的且つ効率的に除去することができる。
【背景技術】
【0002】
アニオン性界面活性剤を製造するための有機酸又はアルコールのスルホン化は、長い間知られてきた。例えば、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、又は濃硫酸をスルホン化剤として使用することができる。α-スルホ脂肪酸塩(即ち、塩の形態の混合物、典型的には、一塩と二塩)、特に炭素原子数12~18の鎖長を有する脂肪酸に基づく二塩は、良好な洗浄特性が際立っていることが知られている。過去において、α-スルホ脂肪酸又はその塩は、スルホン化剤として無水三酸化硫黄又は二酸化硫黄を使用する脂肪酸のスルホン化によって調製されてきた。酸は、硫酸塩などのより溶解性の高いアルカリ塩の存在下で、そのまま回収される、或いは中和によって又は沈殿によって塩に変換されてきた。これらのプロセスで得られた生成物は、一般に、硫酸塩の存在により着色されており、生成物の着色を少なくするには、例えば、次亜塩素酸ナトリウム又は溶液中で次亜塩素酸イオンを生成する化合物を用いた漂白工程が必要であるが、生成物には、依然として消費者にとって望ましくない硫酸塩が含まれていた。パーソナルケア製品は、消費者のニーズによって動かされる。目及び皮膚に対する潜在的な刺激物として広くみなされている硫酸塩含有組成物の悪影響に対する市場の懸念が高まっているため、無添加についての要求は増え続けており、硫酸塩無添加がこの傾向での主要な要求となっている。
【0003】
英国特許出願公開第1214714A号明細書は、α-スルホカルボン酸モノナトリウムの調製方法を開示した。このプロセスでは、溶媒を蒸発させ、水及び空気の吹き込みによる濾過をすることによって、精製されたα-スルホ脂肪酸塩が得られる。このプロセスによって得られる生成物でさえも白色の濾過ケーキであり、漂白工程を行う必要はないが、生成物には、このプロセスを使用することによって除去できない硫酸塩が依然として含まれている。
【0004】
米国特許出願公開第2020/0100998A1号明細書は、脂肪酸のスルホン化生成物の中和された水性ペーストを過酸化水素で漂白することを含む、淡色のα-スルホ脂肪酸二塩の生成方法を開示している。しかしながら、この方法は、硫酸塩含有量をより低いレベルにするために粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製するためのプロセス又は処理を一切行わずに、許容可能な色レベルを有するα-スルホ脂肪酸塩を得ることを目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術水準によれば、許容可能なレベルの硫酸塩含有量を有する精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得るための容易に利用できる方法はなかった。従って、本発明の目的は、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、本発明の精製方法により硫酸塩含有量が非常に低い精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得ることができるという驚くべき発見がなされた。
【0007】
一態様では、本発明は、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法に関し、この方法は、以下の工程:
a)粗製α-スルホ脂肪酸塩を溶媒中で希釈し、pHを2~4に調整する工程と、
b)工程a)で得られたα-スルホ脂肪酸塩のスラリーを、完全に溶解するまで加熱する工程と、
c)工程b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで徐々に冷却して結晶を得る工程と、
d)工程c)で得られた結晶を濾過して母液を除去する工程と、
e)濾過ケーキを酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む。
【0008】
好ましくは、工程a)において、塩酸を用いてpH値を2~4、好ましくは2.5~3.5に調整する。
【0009】
好ましくは、工程a)におけるα-スルホ脂肪酸塩対溶媒の重量比は、1:20~1:4の範囲、好ましくは1:18~1:5の範囲、好ましくは1:16~1:6の範囲、より好ましくは1:15~1:7の範囲、更により好ましくは1:13~1:8の範囲である。
【0010】
好ましくは、工程e)で使用される酸水溶液は、少なくとも0.001重量%~5重量%の量、好ましくは0.01重量%~3重量%の量、更に好ましくは0.03重量%~2.5重量%、より好ましくは0.05重量%~2重量%の量のクエン酸を含む。
【0011】
好ましくは、濾過ケーキは、工程(e)において2回リンスされる。好ましくは、2回のリンスで使用される酸水溶液の重量比は、1:1~1:3.5、好ましくは1:1.5~1:3、より好ましくは1:1.8~1:2.5である。
【0012】
別の態様では、本発明は、精製方法によって得られる、又は得られることができる精製されたα-スルホ脂肪酸塩に関する。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、本発明の精製方法によって得られる精製されたα-スルホ脂肪酸塩を含むパーソナルケア組成物に関する。
【0014】
驚くべきことに且つ予期せぬことに、ここで発明者らは、本精製方法を使用することにより硫酸塩含有量が非常に低い精製されたα-スルホ脂肪酸塩が得られることができ、従って上で概説される目的が達成されることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「1つの~を含む(comprising one)」又は「1つの~を含む(comprising a)」という用語は、別段の指定がない限り、「少なくとも1つの~を含む」という用語と同義であると理解とすべきであり、「~の間(between)」という用語は、境界値を包含すると理解すべきである。
【0016】
不定冠詞「a」、「an」及び定冠詞「the」という用語は、1つの又は1つを超える(即ち、少なくとも1つ)、その冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。
【0017】
「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」の意味に加えて、この用語が関連する構成要素の他のあらゆる可能な組合せも包含する。
【0018】
本明細書で使用される「重量%」又は「重量パーセント」という用語は、品目全体の総重量に対する特定の成分の重量の比に100を掛けたものを指す。
【0019】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、少なくとも80%、90%、95%、99%又は100%を指す。
【0020】
濃度、重量比又は量の任意の範囲を規定する場合、任意の特定の上限濃度、重量比又は量には、任意の特定の下限濃度、重量比又は量がそれぞれ付随し得ることに留意すべきである。
【0021】
本発明は、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法に関し、この方法は、以下の工程:
a)粗製α-スルホ脂肪酸塩を溶媒中で希釈し、pHを2~4に調整する工程と、
b)工程a)で得られたα-スルホ脂肪酸塩のスラリーを、完全に溶解するまで加熱する工程と、
c)工程b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで徐々に冷却して結晶を得る工程と、
d)工程c)で得られた結晶を濾過して母液を除去する工程と、
e)濾過ケーキを酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む。
【0022】
最新技術によれば、8~22の炭素原子を有する実質的に飽和又は不飽和の脂肪酸と二酸化硫黄又は三酸化硫黄との反応によりα-スルホカルボン酸を生成するプロセスは、(a)硫黄酸化物がモル過剰(当業者であれば予想されるように、通常、適切である脂肪酸1モル当たり酸化硫黄1.1~1.5モル)となるような量で、硫黄酸化物と脂肪酸の溶液(実質的に不活性な溶媒中)を混合する工程と、(b)混合物を、反応が実質的に完了するのに十分な時間、混合物の沸点までの反応温度に維持する工程と、(c)その後、水酸化アルカリ、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液と混合することにより反応混合物を部分的に中和する工程と、(d)中和された溶液から溶媒を除去して、粗製α-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む。
【0023】
原理的には、スルホン化は、全ての公知のプロセスによって行うことができる。しかしながら、フォールフィル反応器(Fallfil reactor)内で二酸化硫黄又は三酸化硫黄をスルホン化剤として用いてスルホン化を行うことが好ましい。このような方法は、例えば、独国特許出願公開第4035935号明細書に詳細に記載されている。
【0024】
生成プロセスでの使用に適した脂肪酸は、6~22の炭素原子、特に8~18の炭素原子を有する実質的に直鎖又は分岐の飽和又は不飽和脂肪酸である。少なくとも90重量%がラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸又はパルミチン酸、又はそれらの混合物である脂肪酸が、特に適している。好ましくは、ココナッツ、パーム核又は獣脂脂肪酸混合物などの工業用脂肪酸混合物が存在し、不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸が少量存在し得る。
【0025】
酸化硫黄は、二酸化硫黄又は三酸化硫黄のいずれかであり得、これは、ガスの形態で使用されることができるが、安定化された液体の形態であるのが最も都合がよい。溶媒は、硫黄酸化物、脂肪酸及び反応の生成物に対して実質的に不活性であり、硫黄酸化物及び脂肪酸の両方に対する溶媒であるものであればいずれでもよい。好ましい溶媒としては、例えば、英国特許出願公開第1214714A号明細書に記載されているジクロロメタンが挙げられる。脂肪酸のスルホン化は、撹拌機を備えた反応容器内で、例えば、大気圧以上で65℃に加熱しながら行うことができる。実質的に完全な反応を達成するための反応時間は非常に短く、例えば、5分~30分であり得る。いくつかの実施形態では、反応温度が低いほど、より長い反応時間が必要となる場合がある。
【0026】
最新技術によれば、α-スルホ脂肪カルボン酸塩の生成プロセスは、溶媒の非存在下でガス状の硫黄酸化物を用いて行うことができる。例えば、脂肪酸は、第1にガス状の三酸化硫黄と反応する。この場合、三酸化硫黄は、SO3対脂肪酸のモル比が1.0:1.0~1.5:1.0の範囲である量で使用することが好ましい。この場合、脂肪酸は、70~95℃の範囲の貯留層温度で反応器に導入される。好ましくは、スルホン化後に得られた液体スルホン化生成物は、温度制御された後反応コイル(temperature-controlled postreaction coil)にてこの温度に5~20分間維持され経時変化に曝される。
【0027】
酸性スルホン化生成物である、このようにして得られた粗製スルホン化脂肪酸生成物/スルホン化生成物は、次いで、部分的又は完全に中和される。
【0028】
中和剤は、中和剤の量に応じて、スルホン酸基及びカルボン酸基がその塩の形態に変換される、又は部分的にその塩の形態に変換されるように使用される。アンモニア、アミンなどの有機塩基、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物、並びにアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属重炭酸塩が、中和剤として適している。脂肪酸のスルホン化によって得られる酸性混合物は、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリを含むアルカリ溶液を添加することによって中和することができる。特に、中和剤を水溶液の形態で使用することが好ましい。濃縮水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液が特に好ましい。水酸化アルカリの量又は中和溶液のpHを調整して、スルホカルボン酸の一ナトリウム塩又はスルホカルボン酸の二ナトリウム塩を得ることができる。通常、pHが5未満、好ましくは4.5未満に調整される場合、得られる塩の大部分は、スルホカルボン酸の一ナトリウム塩であり、pHが4.5より高く調整される場合、スルホカルボン酸の二ナトリウム塩が得られることができる。ナトリウム又はカリウムの次亜塩素酸塩を、中和剤として、好ましくは水溶液又は懸濁液中で、使用することも可能である。このようにして、生成物の所望の漂白効果を同時に達成することができる。しかしながら、特に、一塩のペーストが生成された後にのみ、漂白剤を一塩のペーストに添加することが好ましい。一塩を、過酸化水素水溶液、過ホウ酸一水和物、過ホウ酸四水和物又は次亜塩素酸塩で、好ましくは濃縮過酸化水素水溶液で漂白することが好ましい。
【0029】
粗製α-スルホ脂肪酸塩は、液体を除去するための中和及び濾過後に得られ、硫酸ナトリウム塩は、不純物として存在する。本発明のいずれか一つの実施形態によれば、粗製α-スルホ脂肪酸塩は、不純物として、4重量%超、特に6重量%~14重量%、又は8重量%~12重量%の硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)を含む。
【0030】
本発明の目的を達成するために、脂肪酸と硫黄酸化物との反応により得られる粗製α-スルホ脂肪酸塩を精製する方法が、発明者らによって発見され、その方法は、以下の工程:
a)粗製α-スルホ脂肪酸塩を溶媒中で希釈し、pHを2~4に調整する工程と、
b)工程a)で得られたα-スルホ脂肪酸塩のスラリーを完全に溶解するまで加熱する工程と、
c)工程b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで徐々に冷却して結晶を得る工程と、
d)工程c)で得られた結晶を濾過して母液を除去する工程と、
e)濾過ケーキを酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得る工程と、を含む。
【0031】
工程(a)
粗製α-スルホ脂肪酸塩は、溶媒中で希釈され、pHは、2~4、好ましくは2.5~3.5、より好ましくは約3に調整され、特に、pHは、好ましくは塩酸(例えば、市販されているように、濃度は、28~36重量%以内である)で調整される。粗製α-スルホ脂肪酸塩を希釈するのに適した溶媒は、水、又は酢酸、アセトアルデヒド、アセトン、アセトニトリル、ブタンジオール、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、ギ酸、グリセロール、メタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、エチルアミンなどの水混和性溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はスルホン酸を含む1つ以上の酸を含む酸性溶液であり得る。好ましくは、溶媒は、水を含み、より好ましくは、溶媒は、実質的に水である。
【0032】
いくつかの実施形態では、α-スルホ脂肪酸と溶媒の重量比は、1:20~1:4、好ましくは1:18~1:5、好ましくは1:16~1:6、より好ましくは1:15~1:7、更により好ましくは1:13~1:8である。
【0033】
工程(b)及び工程(c)
α-スルホ脂肪酸塩のスラリーは、工程(a)で得られ、次いで、α-スルホ脂肪酸塩が完全に溶解するまで加熱され(工程(b))、次いで、室温まで徐々に冷却されて(工程(c))α-スルホ脂肪酸塩の結晶を得る。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、工程(b)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の溶液は、摂氏1度当たり5~40分間、好ましくは摂氏1度当たり5~30分間の冷却速度で室温まで冷却される。本発明のいくつかの実施形態では、工程(c)において、α-スルホ脂肪酸塩の溶液を、40~60℃、好ましくは45~55℃に冷却し、この温度を、少なくとも1時間、好ましくは1~2又は1~2.5時間維持する。次いで、α-スルホ脂肪酸塩の溶液を室温まで冷却し続けて、結晶を得る。
【0035】
工程(d)
工程c)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の結晶を含むスラリーをフィルタープレスに移して、例えば、2~4バールの圧力下で母液を除去して、α-スルホ脂肪酸塩の結晶を収集する。
【0036】
工程(e)
工程(d)で得られたα-スルホ脂肪酸塩の結晶を含む濾過ケーキを、圧力下(例えば2~4バール)で作動するフィルタープレスを用いて酸水溶液で少なくとも2回リンスして、精製されたα-スルホ脂肪酸塩を得た。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、酸水溶液は、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、グリコール酸、酒石酸、又はリン酸を含み得、好ましくは、工程e)で使用される酸水溶液は、少なくともクエン酸を含み、より好ましくは、酸水溶液は、クエン酸を、0.001重量%~5重量%の量、好ましくは0.01重量%~3重量%の量、更に好ましくは0.03重量%~2.5重量%の量、より好ましくは0.05重量%~2重量%の量で含む。本発明のいくつかの実施形態では、工程e)で使用される酸水溶液とα-スルホ脂肪酸塩との重量比は、40:1~1:1、例えば、30:1~2:1、20:1~2.5:1、好ましくは15:1~3:1、より好ましくは11:1~4:1、更により好ましくは8:1~4.5:1、更により好ましくは7.8:1~5:1、最も好ましくは7.8:1~5.6:1であり得る。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、濾過ケーキは、酸水溶液で2回リンスされ、2回のリンスで使用される酸水溶液の重量比は、1:1~1:3.5、好ましくは1:1.5~1:3、より好ましくは1:1.8~1:2.5であり、好ましくは酸水溶液はクエン酸を含む。いくつかの好ましい実施形態では、第1のリンスで使用される酸水溶液は、pH2~4、好ましくは2.5~3.5、より好ましくは約3のpHを有するクエン酸溶液であり、第2のリンスで使用される酸水溶液は、0.5重量%~4重量%、好ましくは1重量%~3.5重量%、より好ましくは1.2重量%~3重量%、最も好ましくは1.5重量%~2.5重量%の濃度のクエン酸溶液である。濾過してリンス液を除去した後に、精製されたα-スルホ脂肪酸塩が得られる。
【0039】
本発明の方法により得られる精製されたα-スルホ脂肪酸塩は、2重量%未満の硫酸塩不純物、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満の硫酸塩不純物を含む。
【0040】
本発明は又、パーソナルケア組成物又は化粧品組成物、更には洗剤及び洗浄剤のための、本精製方法によるプロセスによって得られる、又は得られることができるα-スルホ脂肪酸塩の使用に関する。
【0041】
本発明は又、本発明の精製方法により得られる精製されたα-スルホ脂肪酸塩を含むパーソナルケア組成物又は化粧品組成物に関する。パーソナルケア組成物は、皮膚又は毛髪への局所的適用を目的としている。パーソナルケア組成物は、生成物を皮膚又は毛髪に局所的に適用し、次いでその後数秒~数分以内に水で皮膚又は毛髪をリンスすることができる、洗い流し配合物であり得る。下地を使用して生成物を拭き取ることもできる。パーソナルケア組成物は、例えば、液体、半液体クリーム、ローション、ゲル、固体、又はそれらの組合せの形態であり得る。好ましくは、組成物は、ヘアシャンプー、シャワージェル、石鹸、シンデット、洗浄ペースト、洗浄ローション、スクラブ製剤、フォームバス、オイルバス、シャワーバス、シェービングフォーム、シェービングローション、シェービングクリーム、歯磨き粉、うがい薬及びデンタルケア製品の形態である。
【0042】
パーソナルケア組成物の例としては、固形石鹸、シャンプー、コンディショニングシャンプー、ボディウォッシュ、保湿ボディウォッシュ、シャワージェル、スキンクレンザー、クレンジングミルク、インシャワー(in-shower)ボディー用保湿剤、ペット用シャンプー、シェービング製剤、及び使い捨てのクレンジングクロスと組み合わせて使用される洗浄組成物を挙げられることができるが、これらに限定されない。洗剤組成物及び洗浄組成物に関して、組成物は、例えば、バス及びトイレの洗浄剤などであり得、更には衛生施設で使用するための洗浄及び/又は芳香ジェルであり得る。
【0043】
本発明のパーソナルケア組成物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性界面活性剤などの界面活性剤、皮膚活性剤、皮膚コンディショニング剤、及び増粘剤を更に含み得る。
【0044】
本発明のパーソナルケア組成物は、一般に、洗い流しパーソナルケア組成物の作製の当技術分野において知られているような従来の方法によって調製される。このような方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを伴う、又は伴わない、1つ以上の工程で成分を比較的均一な状態まで混合することを含む。
【実施例】
【0045】
材料:
粗製α-スルホ脂肪酸塩:Sulfopon(登録商標)SFA(45重量%の活性物質)、BASFから入手可能
【0046】
クエン酸一水和物:Sinopharm AR、>99.5%
【0047】
測定:
α-スルホ脂肪酸塩の組成
10mgの試験試料を10mLのメタノール/水(50:50v/v)に溶解し、液体クロマトグラフィー/質量分析法カップリング(mass spectrometry coupling)によって分析した。成分の濃度は、クロマトグラフィーにおける面積%分布を計算することによって決定した。
【0048】
硫酸塩含有量
100mgの試験試料を100mLメスフラスコに個別に秤量し、マークまで脱イオン水を補充した。試験溶液をイオンクロマトグラフィーにより分析した。定量化は、外部標準法を使用してピーク面積を用いて実行される。
【0049】
色(ハーゼン)
α-スルホ脂肪酸塩を、脱イオン水(95重量%)とイソプロパノール(5重量%)の混合物で希釈して、希釈溶液の総含有量に基づいて4重量%の乾燥残留物を得た。この溶液の色値は、Hach Lange GmbH(Lico 500)からの市販の色測定器の11mm円形キュベットにて測定された。カラー値は、ハーゼン単位で表される。
【0050】
精製方法の詳細は、以下の通りである:
【0051】
粗製α-スルホ脂肪酸塩(Sulfopon(登録商標)SFA)を水で希釈して700gのスラリー(α-スルホ脂肪酸塩濃度8重量%~15重量%)を得、pH値を塩酸又はクエン酸でpH3に調整した。次いで、以下のプログラムを使用して、スラリーを加熱してα-スルホ脂肪酸塩を完全に溶解し、次いで室温まで冷却した:
-3.5時間かけて室温から70℃まで加熱し、粗製α-スルホ脂肪酸塩が完全に溶解するまで70℃に維持する、
-摂氏1度当たり6分の速度で60℃まで冷却し、60℃で1時間維持する、
-次いで、摂氏1度当たり30分の速度で50℃まで冷却し、50℃で1時間維持する、
-次いで、摂氏1度当たり30分の速度で40℃まで冷却し、40℃で1時間維持する、
-次いで、摂氏1度当たり6分の速度で室温まで冷却する。
【0052】
α-スルホ脂肪酸塩の結晶を含むスラリーをフィルタープレス(SHXB-BZ-0.5L)に移し、2バールで10分間母液を除去した。以下の表1に詳述するように、濾過ケーキをリンスし濾過した。試料は、異なるpH調整剤及びリンスプログラムを使用して調製した。
【0053】
【0054】
【0055】
結果は、粗製α-スルホ脂肪酸塩のスラリーを調製するために塩酸をpH調整剤として使用し、濾過ケーキを2回リンスするためにクエン酸溶液を使用した場合(即ち、試料9)、α-スルホ脂肪酸塩が、より低いハーゼン色数で得られ、これは不純物が少なくより高い純度を示唆していることを示している。
【0056】
精製されたα-スルホ脂肪酸塩(試料8)と粗製α-スルホ脂肪酸塩の組成比較を表2に示す。
【0057】
【国際調査報告】