(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水中で接着する方法
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20241108BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241108BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/08
C09J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532740
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2022084306
(87)【国際公開番号】W WO2023099777
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ヘーベルリーン、 ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ライリー、 スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、 エメル
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040HB22
4J040JA01
4J040JA13
4J040KA31
4J040KA42
4J040MA02
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
水中にある基材を接合する方法であって、水中でシアノアクリレート組成物を少なくとも1つの基材に塗布する工程と、該組成物を水中で硬化させる工程を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中にある基材を接合する方法であって、
水中で、少なくとも1つの基材にシアノアクリレート組成物を塗布する工程であって、
前記シアノアクリレート組成物が、
(a)第1パートであって、
シアノアクリレート成分およびゴム強化剤を含み、
前記ゴム強化剤は、(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンとメチルアクリレートとのジポリマー、または(i)と(ii)の組み合わせを含む、第1パートと;
(b)第2パートであって、
2-置換ベンゾチアゾールまたはその誘導体(ここで、2-置換基がC
1-20アルキル基、C
2-20アルケン基、C
8-20アルキルベンジル基、C
1-20アルキルアミノ基、C
1-20アルコキシ基、C
1-20アルキルヒドロキシ基、エーテル基、スルフェンアミド基、C
1-20チオアルキル基またはC
1-20チオアルコキシ基である)を含む、第2パートと;
を含み、
第1パートまたは第2パートの少なくとも一方が、
少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分、
ハロ、-NO
2、または-CNおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも2つ以上の電子求引基で置換された少なくとも1つのベンゾニトリル化合物、および
少なくとも1つの無水物成分をさらに含む、工程と、
前記組成物を水中で硬化させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記シアノアクリレート組成物のシアノアクリレート成分が、構造H
2C=C(CN)-COOR(式中、RはC
1-15アルキル基、C
2-15アルコキシアルキル基、C
3-15シクロアルキル基、C
2-15アルケニル基、C
6-15アラルキル基、C
5-15アリール基、C
3-15アリル基およびC
1-15ハロアルキル基から選択される)に含まれる材料から選択され、例えば、前記シアノアクリレート成分はエチル-2-シアノアクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールが、少なくとも1つのハロ、C
1-20チオアルキル、C
1-20ハロアルキル、C
1-20アルキル、C
1-20アルコキシまたはヒドロキシル置換基でさらに置換されている、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記シアノアクリレート組成物のハロ置換基がCl、FまたはBrである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールが、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、5-ブロモ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(tert-ブチルアミノ)チオ]-1,3-ベンゾチアゾール-5-オール、5,6-ジクロロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、6-ブロモ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、5-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、6,7-ジクロロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2,5-ジメチル-1,3-ベンゾチアゾール、4,5,6,7-テトラフルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、4,5,6,7-テトラフルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(アリルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-5-(メチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(エチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ヘキシルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(1,3-ジメチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(オクタデシルチオ)ベンゾチアゾール、2-(1-エチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(オクチルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(1-メチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(2-フェニルエトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(1-メチルヘプチル)オキシ]-1,3-ベンゾチアゾール、2-アリル-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(1-メチルヘキシル)オキシ]-1,3-ベンゾチアゾール、4-クロロ-2-メトキシ-1,3-ベンゾチアゾール、2-(3-メチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、4-クロロ-2-(エチニルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2,5,6-トリメチル-1,3-ベンゾチアゾール、4-メトキシ-2,7-ジメチル-1,3-ベンゾチアゾール、5,6-ジメトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2,5,7-トリメチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ブチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(エチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ウンデシルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-5-ベンゾチアゾロール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、および2-[(シクロヘキシルアミノ)チオ]-ベンゾチアゾール)からなる群から選択され、好ましくは、前記2-置換ベンゾチアゾールが、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、6-メトキシベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾールおよび2-メチル-5-ベンゾチアゾロールからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、下記式:
【化1】
(式中、Aは、O、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を場合により含むことができるC
4~C
30の脂肪族鎖であり;
前記鎖は、1つ以上のアクリレートもしくはメタクリレート官能基、および/または1つ以上のC
1~C
10アルキル基で場合により置換され;かつ
R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、HおよびC
1~C
6アルキルからなる群から任意に選択される)
で表される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が第2パート(b)中に存在する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記シアノアクリレート組成物の無水物成分が、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、ジフェン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、1,8-ナフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、2,3-ジクロロマレイン酸無水物、2-ドデセン-1-イル-コハク酸無水物、ホモフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3-フルオロフタル酸無水物、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-ニトロフタル酸無水物、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、メタクリル酸無水物、シトラコン酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物、エキソ-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ジ-O-アセチル-L-酒石酸無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記シアノアクリレート組成物のベンゾニトリル化合物が、テトラフルオロイソフタロニトリル、3,5-ジニトロベンゾニトリル;2-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル;ペンタフルオロベンゾニトリル;α,α,α-2-テトラフルオロ-p-トルニトリル;およびテトラクロロテレフタロニトリル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記シアノアクリレート組成物のベンゾニトリル化合物が、組成物の全重量に基づいて、0.05~5重量%、好ましくは0.1~1重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記シアノアクリレート組成物の無水物成分が、組成物の全重量に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、組成物の全重量に基づいて、1~20重量%、好ましくは4~12重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールが5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾールであり、無水物がフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物または4-メチルフタル酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、少なくとも1つのベンゾニトリル化合物がテトラフルオロイソフタロニトリルまたはペンタフルオロベンゾニトリルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
組成物の全重量に基づいて、前記シアノアクリレート組成物のベンゾニトリルが0.1~1重量%の量で存在し、無水物が0.1~2重量%の量で存在し、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が4~12重量%の量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シアノアクリレート組成物が、カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤成分をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記促進剤成分がテトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンであるカリックスアレーンを含む、請求項16に記載の方法であって、方法。
【請求項18】
前記促進剤成分が、15-クラウン-5,18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるクラウンエーテルを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記促進剤成分が下記の構造に含まれるポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートを含む、請求項16~18のいずれかに記載の方法:
【化2】
(式中、nは3より大きい)。
【請求項20】
前記シアノアクリレート成分が、耐衝撃性付与添加剤、チキソトロピー付与剤、増粘剤、染料、耐熱分解性エンハンサー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記耐衝撃性付与添加剤がクエン酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記シアノアクリレート成分が、2-スルホ安息香酸無水物、トリエチレングリコールジ(p-トルエンスルホネート)、トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、ジメチルジオキソレン-4-イルメチルp-トルエンスルホネート、p-トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、1,3-プロピレンサルファイト、ジオキサチオランジオキシド、1,8-ナフトスルトン、スルトン1,3-プロパン、スルトン1,4-ブテン、アリルフェニルスルホン、4-フルオロフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンスルホン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン、エチルp-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、エチレンサルファイト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記添加剤が、1,8-ナフトスルトンおよびエチレンサルファイト、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
水中にある基材を接合する方法であって、
水中で、少なくとも1つの基材にシアノアクリレート組成物を塗布する工程であって、前記シアノアクリレート組成物が、
(a)第1パートであって、
シアノアクリレート成分およびゴム強化剤を含み、
前記ゴム強化剤は、(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンとメチルアクリレートとのジポリマー、または(i)と(ii)の組み合わせを含む、第1パートと;
(b)第2パートであって、
2-置換ベンゾチアゾールまたはその誘導体(ここで、2-置換基がC
1-20アルキル基、C
2-20アルケン基、C
8-20アルキルベンジル基、C
1-20アルキルアミノ基、C
1-20アルコキシ基、C
1-20アルキルヒドロキシ基、エーテル基、スルフェンアミド基、C
1-20チオアルキル基またはC
1-20チオアルコキシ基である)を含む、第2パートと;
第1パートまたは第2パートの少なくとも一方が、無水物成分をさらに含み;
第2パートが、
組成物の全重量に基づいて、1~20重量%、好ましくは4~12重量%の量で存在する、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分;および
ハロ、-NO
2、または-CNおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも2つ以上の電子求引基で置換された少なくとも1つのベンゾニトリル化合物
をさらに含む、工程と、
前記組成物を水中で硬化させる工程と、を含む方法。
【請求項25】
前記シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールが、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、6-メトキシベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾールおよび2-メチル-5-ベンゾチアゾロールならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記シアノアクリレート組成物の無水物成分が、テトラフルオロイソフタロニトリル、3,5-ジニトロベンゾニトリル;2-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル;ペンタフルオロベンゾニトリル;α,α,α-2-テトラフルオロ-p-トルニトリル;およびテトラクロロテレフタロニトリル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;かつ
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シアノアクリレート組成物が、シアノアクリレート組成物の第1パートと第2パートとの比率が約1:1~約10:1の範囲、例えば2:1、または3:1、または4:1、または5:1、または6:1、または7:1、または8:1、または9:1で塗布される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記シアノアクリレート組成物が、第1パートと第2パートとの比率が約10:1で塗布される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、少なくとも1つのベンゾニトリル化合物のための担体材料として用いられる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
第2の基材の表面を第1の基材のコーティングされた表面と接合する前に、前記組成物を最大45秒間水にさらす工程を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記組成物を硬化させることにより、5分間硬化させた後、例えば24時間硬化させた後、例えば168時間後に、少なくとも0.6N/mm
2のせん断強度を有する接着が形成される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記組成物を硬化させることにより、5分間硬化させた後、例えば24時間硬化させた後、例えば168時間後に、少なくとも4N/mm
2のせん断強度を有する接着が形成される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
一方または両方の基材が金属であり、例えば、一方または両方の基材が鋼である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
一方または両方の基材が炭酸カルシウムを含み、例えば、一方または両方の基材が殻であり、例えば、一方または両方の基材がイシサンゴ目(scleractinia)の殻(shell)である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ノズル寿命が少なくとも4分、例えば少なくとも5分である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のいずれかに記載の方法によって接合された2つの水中基材を含むアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シアノアクリレート組成物による水中接着方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
<関連技術の簡単な説明>
シアノアクリレート接着剤等の硬化性組成物は、一般に数分で、特定の基材によってはしばしば数秒で、広範囲の基材を迅速に接着する優れた能力があることで広く認められている。
【0003】
シアノアクリレート接着剤組成物はよく知られており、広範な用途を有する速硬化性瞬間接着剤として広く使用されている。H.V.Coover,D.W.DreifusおよびJ.T.O’Connor、「Cyanoacrylate Adhesives」Handbook of Adhesives中、27,463-77,I.Skeist編, Van Nostrand Reinhold,New York,第3版(1990年)を参照されたい。G.H.Millet,“Cyanoacrylate Adhesives”in Structural Adhesives: Chemistry and Technology, S.R. Hartshorn編、Plenum Press,New York,249-307頁(1986年)も参照されたい。
【0004】
シアノアクリレート接着剤組成物は、空気中での硬化に適している。有利なことに、これらの組成物は、空気中で硬化すると数秒でハンドリング強度に達し、空気中で硬化すると1分以内に60%を超える強度を達成する。
【0005】
シアノアクリレートの重合は、通常の大気条件下でほとんどの表面に存在する求核剤によって開始される。表面化学による開始とは、2つの表面が、その2つの表面間のシアノアクリレートの小さな層と密接に接触しているときに、十分な開始種が利用できることを意味する。これらの条件下では、短時間で強力な接着が得られる。したがって、本質的にシアノアクリレートはしばしば瞬間接着剤として機能する。
【0006】
シアノアクリレート接着剤組成物は、水中でディスペンスするのが難しいため、従来は水中用途には使用されていない。水中とは、接合される基材が完全に水中に沈められていることを意味することは理解されるであろう。水は基材と接触している。本明細書で使用する水中とは、基材が水中にあるが水と接触していない状態を指すものではない。例えば、水中とは、基材が防水容器に入れられ、この容器が水と接触している一方で、基材は防水容器によって乾燥状態に保たれているため水と接触していない状態を意味しない。特に本発明は、水中で容器からディスペンスされるシアノアクリレート接着剤を使用する方法に関する。このような場合、シアノアクリレート接着剤は水の中を通って基材表面上にディスペンスされ、その基材表面も水と接触している。
【0007】
水中でシアノアクリレート接着剤組成物をディスペンスすると、組成物が水と反応し、接着しようとする基材に塗布される前に組成物が早期に硬化する可能性がある。実際、シアノアクリレート組成物は水に敏感であることがよく知られており、場合によっては、例えば後で使用するために保管している間など、微量の水でも早期硬化を引き起こす可能性がある。
【0008】
シアノアクリレート接着剤の性能、特に耐久性は、水にさらされるとしばしば疑わしくなる。硬化したシアノアクリレート組成物を使用して形成された接着は、水の影響を受けやすい場合がある。例えば、硬化したシアノアクリレート組成物が水にさらされると、時間の経過とともに劣化することにより、形成された接着が最終的に機能しなくなる場合がある。一般に、水にさらされると、時間の経過とともに接着強度が低下する。
【0009】
シアノアクリレート接着剤組成物は、水中でディスペンスされたとき、第1の基材に塗布され、第2の基材と接合される前に部分的に硬化することもある。この場合、基材間の接着を形成することは可能かもしれないが、基材が接合される前に組成物が部分的に硬化しているため、該接着は弱くなる。
【0010】
これらの問題を克服するために、通常はシアノアクリレート接着剤組成物を空気中で基材に塗布し、その後接着した基材を水中に設置することがある。
【0011】
シアノアクリレート接着剤組成物を使用した水中接着は、シアノアクリレート接着剤組成物の特性が有益となる用途に有利であろう。基材を水中から取り出すことが困難な状況では、シアノアクリレート接着剤組成物を水中でディスペンスし硬化させることが有益であろう。例えば、ボートの修理もしくはメンテナンス、またはセンサーなどの新しい部品をボートに取り付ける際に、水中にあるボートの部品を接着するためにシアノアクリレート接着剤組成物を使用することは、ボートを水から引き上げる必要性(これは、困難で費用がかかり、船を陸に戻す必要がありうる)がなくなるため有益であろう。同様に、水中でのメンテナンスや修理を行えること、または石油掘削装置、橋、パイプライン等の全体的または部分的に水中にある構造物に部品を取り付けることができれば有用であろう。
【0012】
サンゴ礁はサンゴポリプのコロニーによって形成される。サンゴポリプの骨格は炭酸カルシウムから形成され、サンゴポリプはその炭酸カルシウムの骨格によって一緒に結合されている。サンゴ礁の大部分は、イシサンゴポリプ(スクレラクチニア(Scleractinia)ともいわれる)によって形成されている。イシサンゴは、サンゴ礁を保護し支える、硬い炭酸カルシウムの外骨格を分泌する。サンゴ礁は、例えば過剰な栄養素または海洋の酸性化によって損傷を受けることがある。サンゴの移植は、サンゴ礁が損傷から回復するのを助ける有効な方法と考えられている。健全なサンゴポリプが、健全なサンゴ礁から損傷したサンゴ礁に移植される。健全なポリプは、サンゴ礁の修復を助けることができる。移植されたサンゴポリプは、セメントまたはエポキシを用いて新しい場所に固定される。移植されたサンゴポリプが移植された場所から外れてしまうと、サンゴポリプは死んでしまい、移植は成功しない。これらの方法では、エポキシのディスペンス、塗布、硬化に長い時間がかかりうる。これは、使用者(多くの場合ダイバー)が水中で長時間過ごさなければならないことを意味し、費用がかかり、危険でもありうる。
【0013】
ディゾンら(Dizon et al)は、シアノアクリレート接着剤ゲル組成物、エポキシパテ、および海洋エポキシの使用を比較し、サンゴポリプの接着に適しているかどうかを判定した。ディゾンらは、シアノアクリレート接着剤組成物を水の上で塗布し、その後サンゴポリプを水中に沈めた。ディゾンらは、シアノアクリレート接着剤組成物が最も取り扱いやすい一方で、接着効果と移植片の自己接着(transplant self-attachment)という重要な部分においては評価が低いことを見出した。
【0014】
シアノアクリレート組成物の利点を有し、移植中にサンゴポリプを接着するのに効果的な接着剤組成物を提供することが有益であろう。
【0015】
以下のような代替接着剤を提供することが有益であろう:(1)水中に沈めたままディスペンスでき、(2)接着される基材への塗布を可能にするのに十分な時間未硬化のままであることができ、(3)その後、望ましくは短い硬化時間で、硬化でき、(4)高強度の接着を発現でき、(5)接着強度を保持できる。上記のすべてが水中で達成される必要がある。
【発明の概要】
【0016】
一態様において、本発明は、水中にある基材を接合する方法であって、
水中で、少なくとも1つの基材にシアノアクリレート組成物を塗布する工程であって、前記シアノアクリレート組成物が、
第1パートであって、
シアノアクリレート成分およびゴム強化剤を含み、
前記ゴム強化剤は、i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンとメチルアクリレートとのジポリマー、または(i)と(ii)の組み合わせを含む、第1パートと;
第2パートであって、
2-置換ベンゾチアゾールまたはその誘導体(ここで、2-置換基はC1-20アルキル基、C2-20アルケン基、C8-20アルキルベンジル基、C1-20アルキルアミノ基、C1-20アルコキシ基、C1-20アルキルヒドロキシ基、エーテル基、スルフェンアミド基、C1-20チオアルキル基またはC1-20チオアルコキシ基である)を含む、第2パートと;
を含み、
第1パートまたは第2パートの少なくとも一方は、
少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分、
ハロ、-NO2、または-CNおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも2つ以上の電子求引基で置換された少なくとも1つのベンゾニトリル化合物、および
少なくとも1つの無水物成分
をさらに含む、工程と、
該組成物を水中で硬化させる工程と、
を含む方法を提供する。
【0017】
水中とは、基材が水中に沈められ、組成物が塗布されると同時に水が基材と接触することを意味する。基材は、例えば直接水にさらされないように防水容器に入っているということはない。有利なことに、この方法は、接合前にアセンブリを取り出して乾燥させることができないために従来は除外されていた用途であり、水中での接合を可能にする。
【0018】
有利なことに、この方法で塗布される組成物は、水中に沈められた状態でディスペンスすることができ、接合される基材に塗布するのに十分な時間未硬化のままであり、その後、短い硬化時間で硬化する。有利なことに、水中で硬化された硬化組成物は、高強度の接着を発現し、その接着強度を長期にわたって保持する。この組成物は、組成物が硬化する前にディスペンスされ、塗布され、基材を接合することができるように、十分に長いオープンタイムを有するが、使用者が水中で過ごさなければならない時間を最小限にするために、従来の方法で使用された組成物よりも硬化時間が短いことが望ましい。
【0019】
水中にある基材を接合するためのシアノアクリレート組成物の認識されている欠点は、本明細書に開示されているシアノアクリレートハイブリッド組成物によって克服されうる。本発明の望ましい特性はすべて、水中環境における組成物の特性を指す。本発明の組成物は、ディスペンスされるとその場所に留まる。本方法の組成物は水中でディスペンスすることができ、例えば、水との最初の接触時に、基材上への組成物のディスペンスを妨げるような早期硬化はない。本方法の組成物は、ディスペンスできるように適切な粘度を有しなければならない。組成物は適切な浮力を有してもよい。例えば、本方法の組成物は、通常の水流によって引き起こされる力によって位置がずれないことが適切である。
【0020】
組成物は、水中にディスペンスされ、水中にある基材を接合する方法に使用しうる。理論に束縛されることを望むものではないが、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分のアクリレート部分による硬化速度の調節と、材料固有の高粘度との組み合わせが、水性環境においてこの予想外のオープンタイムをもたらすと考えられる。組成物の第1パートは、200~600mPa・sのCasson粘度を有してもよい。第2パートは、BS5350パートB8に従って測定される1~20mPa・sの粘度を有してもよい。
【0021】
本方法に適用されるシアノアクリレート組成物のシアノアクリレート成分は、構造H2C=C(CN)-COOR(式中、RはC1-15アルキル、C2-15アルコキシアルキル基、C3-15シクロアルキル基、C2-15アルケニル基、C6-15アラルキル基、C5-15アリール基、C3-15アリル基およびC1-15ハロアルキル基から選択される)に含まれる材料から選択されてよく、例えば、該シアノアクリレート成分はエチル-2-シアノアクリレートを含む。
【0022】
シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールは、少なくとも1つのハロ、C1-20チオアルキル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルキル、C1-20アルコキシまたはヒドロキシル置換基でさらに置換されていてもよい。
【0023】
シアノアクリレート組成物のハロ置換基は、Cl、F、またはBrであってよい。
【0024】
シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールは、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、5-ブロモ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(tert-ブチルアミノ)チオ]-1,3-ベンゾチアゾール-5-オール、5,6-ジクロロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、6-ブロモ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、5-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、6,7-ジクロロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2,5-ジメチル-1,3-ベンゾチアゾール、4,5,6,7-テトラフルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、4,5,6,7-テトラフルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(アリルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-5-(メチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(エチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ヘキシルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(1,3-ジメチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(オクタデシルチオ)ベンゾチアゾール、2-(1-エチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(オクチルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(1-メチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-(2-フェニルエトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(1-メチルヘプチル)オキシ]-1,3-ベンゾチアゾール、2-アリル-1,3-ベンゾチアゾール、2-[(1-メチルヘキシル)オキシ]-1,3-ベンゾチアゾール、4-クロロ-2-メトキシ-1,3-ベンゾチアゾール、2-(3-メチルブトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、4-クロロ-2-(エチニルオキシ)-1,3-ベンゾチアゾール、2,5,6-トリメチル-1,3-ベンゾチアゾール、4-メトキシ-2,7-ジメチル-1,3-ベンゾチアゾール、5,6-ジメトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2,5,7-トリメチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ブチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(エチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(ウンデシルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-5-ベンゾチアゾロール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、および2-[(シクロヘキシルアミノ)チオ]-ベンゾチアゾール)からなる群から選択されてよく、好ましくは、2-置換ベンゾチアゾールは、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、6-メトキシベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾールおよび2-メチル-5-ベンゾチアゾロールからなる群から選択される。
【0025】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、下記式:
【0026】
【化1】
(式中、Aは、O、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を場合により含むことができるC
4~C
30の脂肪族鎖であり;
該鎖は、1つ以上のアクリレートもしくはメタクリレート官能基、および/または1つ以上のC
1~C
10アルキル基で場合により置換され;かつ
R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、HおよびC
1~C
6アルキルからなる群から任意に選択される)
で表されてもよい。
【0027】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0028】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、第2パート(b)中に存在していてもよい。
【0029】
シアノアクリレート組成物の無水物成分は、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、ジフェン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、1,8-ナフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、2,3-ジクロロマレイン酸無水物、2-ドデセン-1-イル-コハク酸無水物、ホモフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3-フルオロフタル酸無水物、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-ニトロフタル酸無水物、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、メタクリル酸無水物、シトラコン酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物、エキソ-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ジ-O-アセチル-L-酒石酸無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0030】
シアノアクリレート組成物のベンゾニトリル化合物が、テトラフルオロイソフタロニトリル、3,5-ジニトロベンゾニトリル;2-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル;ペンタフルオロベンゾニトリル;α,α,α-2-テトラフルオロ-p-トルニトリル;およびテトラクロロテレフタロニトリル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0031】
シアノアクリレート組成物のベンゾニトリル化合物が、組成物の全重量に基づいて、0.05~5重量%、好ましくは0.1~1重量%の量で存在してもよい。
【0032】
シアノアクリレート組成物の無水物成分が、組成物の全重量に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の量で存在してもよい。
【0033】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、組成物の全重量に基づいて1~20重量%、好ましくは4~12重量%の量で存在してもよい。
【0034】
シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールが5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾールであってもよく、無水物がフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物または4-メチルフタル酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、少なくとも1つのベンゾニトリル化合物がテトラフルオロイソフタロニトリルまたはペンタフルオロベンゾニトリルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0035】
組成物の全重量に基づいて、シアノアクリレート組成物のベンゾニトリルが、0.1~1重量%の量で存在してもよく、無水物が0.1~2重量%の量で存在してもよく、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が4~12重量%の量で存在してもよい。
【0036】
シアノアクリレート組成物は、場合により促進剤成分をさらに含み、促進剤成分は、カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0037】
促進剤成分は、テトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンであるカリックスアレーンを含んでもよい。
【0038】
促進剤成分は、15-クラウン-5,18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるクラウンエーテルを含んでもよい。
【0039】
促進剤成分は、以下の構造に含まれるポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0040】
【0041】
シアノアクリレート成分は、耐衝撃性付与添加剤、チキソトロピー付与剤、増粘剤、染料、耐熱分解性エンハンサー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含んでもよい。
【0042】
耐衝撃性付与添加剤はクエン酸であってもよい。
【0043】
シアノアクリレート成分が、2-スルホ安息香酸無水物、トリエチレングリコールジ(p-トルエンスルホネート)、トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、ジメチルジオキソレン-4-イルメチルp-トルエンスルホネート、p-トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、1,3-プロピレンサルファイト、ジオキサチオランジオキシド、1,8-ナフトスルトン、スルトン1,3-プロパン、スルトン1,4-ブテン、アリルフェニルスルホン、4-フルオロフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンスルホン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン、エチルp-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、エチレンサルファイト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。
【0044】
添加剤は、1,8-ナフトスルトンおよびエチレンサルファイト、ならびにそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0045】
別の一態様において、本発明は、水中にある基材を接合する方法であって、
水中で、少なくとも1つの基材にシアノアクリレート組成物を塗布する工程であって、
該シアノアクリレート組成物が、
第1パートであって、シアノアクリレート成分およびゴム強化剤を含み、該ゴム強化剤は、(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンとメチルアクリレートとのジポリマー、または(i)と(ii)の組み合わせを含む、第1パートと;
第2パートであって、2-置換ベンゾチアゾールまたはその誘導体(ここで、2-置換基がC1-20アルキル基、C2-20アルケン基、C8-20アルキルベンジル基、C1-20アルキルアミノ基、C1-20アルコキシ基、C1-20アルキルヒドロキシ基、エーテル基、スルフェンアミド基、C1-20チオアルキル基またはC1-20チオアルコキシ基である)を含む、第2パートと;
を含み、
第1パートまたは第2パートの少なくとも一方は、無水物成分をさらに含み;
第2パートは、
組成物の全重量に基づいて、1~20重量%、好ましくは4~12重量%の量で存在する少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分;および
ハロ、-NO2、または-CNおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも2つ以上の電子求引基で置換された少なくとも1つのベンゾニトリル化合物
をさらに含む、工程と、
該組成物を水中で硬化させる工程と、
を含む方法に関する。
【0046】
シアノアクリレート組成物の2-置換ベンゾチアゾールは、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)-ベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、6-メトキシベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾールおよび2-メチル-5-ベンゾチアゾロール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0047】
シアノアクリレート組成物の無水物成分は、テトラフルオロイソフタロニトリル、3,5-ジニトロベンゾニトリル;2-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル;ペンタフルオロベンゾニトリル;α,α,α-2-テトラフルオロ-p-トルニトリル;およびテトラクロロテレフタロニトリル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0048】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0049】
シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート組成物の第1パートと第2パートとの比率が約1:1~約10:1の範囲(例えば2:1、または3:1、または4:1、または5:1、または6:1、または7:1、または8:1、または9:1)で塗布されてもよい。
【0050】
シアノアクリレート組成物は、第1パートと第2パートの比率が約10:1の比率で塗布されてもよい。
【0051】
シアノアクリレート組成物の少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が、少なくとも1つのベンゾニトリル化合物の担体材料として用いられてもよい。
【0052】
水中にある基材を接合する方法は、第2の基材の表面を第1の基材のコーティングされた表面と接合する前に、組成物を最大45秒間水にさらす工程を含んでもよい。これは、組成物のオープンタイムと呼ばれることがある。組成物は、最大90秒まで、例えば最大60秒まで、例えば最大45秒までの良好なオープンタイムを有しうる。有利なことに、良好なオープンタイムは、組成物が硬化する前に基材を正しく嵌合する時間を与える。良好なオープンタイムは組み立てのための時間を与えるので、基材を正しい配置でアセンブリに組み立てることができる。組成物は良好なオープンタイムを有し、組成物が硬化することなく、水中でノズル(これを通して組成物がディスペンスされて塗布される)を交換することができる。組成物は、膜の最上層で膜を形成しうるが、大部分は硬化せず、良好なオープンタイムを有する。
【0053】
水中にある基材を接合する方法では、組成物は、例えば水柱内で水と混ざったりあるいは水中で分散したりしない。組成物の物理的特性、例えば粘度は、水と混ざらず、塗布された場所に留まるようなものである。組成物の最外層は硬化して、組成物の大部分が水と接触するのを防ぐ膜を形成しうる。この点で、組成物の全体にわたる硬化は、2つの基材が一緒にされた後に起こり得る。
【0054】
水中にある基材を接合する方法は、組成物を硬化させる工程を含んでもよく、5分間硬化した後、例えば24時間硬化した後、例えば168時間後、少なくとも0.6N/mm2のせん断強度(ASTM D1002に従って測定される)を有する接着を形成できる。例えば、少なくとも1つの基材が炭酸カルシウムを含んでいてもよい場合、例えば、全部または一部が炭酸カルシウムから形成されていてもよい場合である。
【0055】
水中にある基材を接合する方法では、組成物を硬化させることにより、5分間硬化した後、例えば24時間硬化した後、例えば168時間後、少なくとも4N/mm2のせん断強度(ASTM D1002に従って測定される)を有する接着を形成する。例えば、少なくとも1つの基材が金属、例えば鋼から形成される場合である。
【0056】
本発明の方法において、一方または両方の基材は天然に存在するものおよび/または人工のものであってよい。
【0057】
天然に存在する基材としては、サンゴ礁などのサンゴ基材が挙げられる。サンゴ礁はサンゴポリプのコロニーによって形成される。炭酸カルシウムの基材は、本発明の方法によって接合されうる。これらの基材としては、サンゴ基材、例えばサンゴ基材の炭酸カルシウム骨格を含む炭酸カルシウム基材が挙げられる。例えば、本発明の方法は、サンゴ形成の破損を修復するため、および/または、サンゴ形成にサンゴ材料を追加するために使用してもよい。
【0058】
水中にある基材を接合する方法では、一方または両方の基材が金属であってもよく、例えば、一方または両方の基材が鋼であってもよい。
【0059】
水中にある基材を接合する方法において、少なくとも1つの基材は、鋼、アルミニウム、木材、グラスファイバー、骨材を含む建築材料、砂、フェロセメントを含むコンクリート/セメント材料、繊維強化プラスチックを含む群から選択される材料を含んでもよい。
【0060】
好適には、両方の基材は、独立して、鋼、アルミニウム、木材、グラスファイバー、骨材を含む建築材料、砂、フェロセメントを含むコンクリート/セメント材料、繊維強化プラスチックを含む群から選択される材料を含んでもよい。
【0061】
水中にある基材を接合する方法において、少なくとも1つの基材は、ボートもしくは船などの船舶、またはその一部であってもよい。本方法は、ボートまたは船舶に物品を取り付けるために(例えばセンサーの取り付けや交換部品の取り付け)、あるいはボートまたは船舶の修理を行うために使用してもよい。本発明の方法を用いると、ボートまたは船を水から引き上げるために陸に戻る必要がなく、これを行うことができる。
【0062】
水中にある基材を接合する方法において、少なくとも1つの基材は、水中に位置する構造物、または水中に伸びる構造物の一部、例えば橋、石油またはガス掘削装置、パイプライン、ダム、風力タービンなどであってもよい。このような構造物は水中から移動させることができないため、水中で、アクセサリ、センサー、交換部品などの製品を取り付けたり、修理を行ったりできると有利である。
【0063】
水中にある基材を接合する方法においては、一方または両方の基材が炭酸カルシウムを含んでもよく、例えば、炭酸カルシウムから全体的または部分的に形成されていてもよく、例えば、一方または両方の基材が殻(shell)であり、例えば、一方または両方の基材がイシサンゴ目(scleractinia)の殻である。
【0064】
水中にある基材を接合する方法においては、ノズル寿命は少なくとも4分、たとえば少なくとも5分であってもよい。ディスペンスノズルは、本組成物が早期に硬化してノズルを塞ぐことがないため、ノズル寿命が良好である。シアノアクリレートを含む組成物は、通常は、例えば水中にある場合等湿気にさらされると急速に硬化するため、これは驚くべきことである。有利なことに、ノズル寿命が長くなり、したがってノズルを交換する前に、より多くの組成物を塗布することができる。
【0065】
水中にある基材を接合する方法は、様々な量の塩分および/またはミネラルを含む水中で実施してもよい。例えば、本方法は、蒸留水、または公共水道などの処理水で実施してもよい。例えば、本方法は、蒸留水中、または公共/水道供給水のような処理水中で実施してもよい。本方法は、井戸、川、または湖などの淡水中で実施してもよい。本方法は、塩水中、例えば海水中、例えば塩分濃度が約30g/L~約50g/Lの水中で実施してもよい。
【0066】
水中にある基材を接合する方法は、pHが約6~約9、例えば約6.5~約8、または約7.5~約8.5の範囲の水中で実施してもよい。
【0067】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって接合された2つの水中基材を含むアセンブリに関する。
【0068】
詳細な説明
水中にある基材を接合する方法は、以下に詳細に説明するシアノアクリレート組成物を水中で塗布する工程を含む。
【0069】
本方法のシアノアクリレート成分は、多くの置換基とともに選択されてよい、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーを含み、例えば、H2C=C(CN)-COOR(式中、RはC1-15アルキル基、C2-15アルコキシアルキル基、C3-15シクロアルキル基、C2-15アルケニル基、C6-15アラルキル基、C5-15アリール基、C2-15アリル基およびハロアルキル基から選択される)で表されるものが挙げられる。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(n-ブチル-2-シアノアクリレート等)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β-メトキシエチルシアノアクリレート、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つから選択される。特に望ましいシアノアクリレートモノマーとして、エチル-2-シアノアクリレートが挙げられる。
【0070】
シアノアクリレート成分は、本発明の方法の組成物中に、全組成物の、約50重量%~約99.98重量%の範囲内の量で含まれてよく、約70重量%~約85重量%の範囲が望ましい。
【0071】
ゴム強化成分は、いくつかの候補のうちの1つから選択してよい。そのような候補の1つは、エチレン、メチルアクリレート、およびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物である。例えば、ゴム強化成分は、デュポン(Dupont(商標))からVAMAC N123、VAMAC B-124等のVAMACの商品名で入手できるエチレンアクリル酸エラストマーであってもよい。VAMAC N123およびVAMAC B-124は、デュポンによってエチレン/アクリルエラストマーのマスターバッチであると報告されている。デュポンの材料VAMAC Gは類似のコポリマーであるが、色を与えるフィラーまたは安定剤を含まない。VAMAC VCSゴムは、ベースゴムのようであり、それからVAMAC製品ラインの残りのメンバーが配合される。VAMAC VCS(VAMAC MRとしても知られる)は、エチレン、メチルアクリレート、およびカルボン酸硬化部位を持つモノマーの組み合わせの反応生成物であり、これは、一度形成されると、離型剤オクタデシルアミン、複合有機リン酸エステルおよび/またはステアリン酸等の加工助剤、ならびに置換ジフェニルアミン等の酸化防止剤を実質的に含まない。
【0072】
近年、デュポンは、VAMAC VMX 1012およびVCD 6200という商品名で、エチレンとメチルアクリレートから製造されたゴムを市場に提供した。VAMAC VMX 1012ゴムは、ポリマー主鎖中にカルボン酸をほとんどまたは全く有さないと考えられている。VAMAC VCSゴムと同様に、VAMAC VMX 1012およびVCD 6200ゴムは、上述の離型剤オクタデシルアミン、複合有機リン酸エステルおよび/またはステアリン酸等の加工助剤、ならびに置換ジフェニルアミン等の酸化防止剤を実質的に含まない。これらのVAMACエラストマーポリマーはすべて本明細書において有用である。
【0073】
1つのバリエーションにおいて、このように形成された反応生成物は、加工助剤および酸化防止剤を実質的に含まないようにされる。加工助剤は、オクタデシルアミン(Akzo NobelからARMEEN 18Dの商品名で市販されているとデュポン(DuPont(商標))から報告されている)、複合有機リン酸エステル(R.T.Vanderbilt Co.,IncからVANFRE VAMの商品名で市販されているとデュポンから報告されている)、ステアリン酸および/またはポリエチレングリコールエーテルワックスなどの離型剤である。酸化防止剤は、置換ジフェニルアミン(Uniroyal ChemicalからNAUGARD(登録商標)445の商品名で市販されているとデュポンから報告されている)である。
【0074】
あるいは、ゴム強化成分は、エチレンとメチルアクリレートとのジポリマーである。この選択肢の1つのバリエーションでは、そのように形成されたジポリマーは、加工助剤および酸化防止剤を実質的に含まないようにされる。もちろん、ゴム強化剤は、前段落の反応生成物と本段落のジポリマーとの組み合わせであってもよく、そのいずれかまたは両方が加工助剤および酸化防止剤を実質的に含まないものであってもよい。
【0075】
ゴム強化成分は、組成物の全重量に基づいて、約1.5重量%~約20重量%、例えば約5重量%~約15重量%の濃度で存在してもよく、約8重量%~約10重量%が特に望ましい。
【0076】
有利なことに、ゴム強化成分が、組成物の全重量に基づいて約5重量%~約15重量%の量で存在する場合、本発明の組成物は、改善された柔軟性および強靭性を有する。
【0077】
少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を、好ましくは脂肪族鎖の末端に有する脂肪族化合物であってもよいが、特に2つより多い(メタ)アクリレート官能基が存在する場合には、脂肪族鎖に沿ったペンダントであることも同様に適切である。アルカンジ-およびトリ-オールジ-およびトリ-(メタ)アクリレートは、それぞれ、このような化合物の一部の例である。より具体的には、ヘキサンジオールジメタクリレートおよびヘキサンジオールジアクリレートが望ましい。さらに、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートも望ましい。
【0078】
例えば、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、以下の式を有してもよい:
【0079】
【化3】
(式中、Aは、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子を場合により含むことができるC
4~C
30脂肪族鎖であり、ここで、該鎖は、1つ以上のアクリレートおよび/もしくはメタクリレート官能基、ならびに/または1つ以上のC
1~C
10アルキル基で場合により置換されており、R
1およびR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、HおよびC
1~C
6アルキルからから任意に選択される)。
【0080】
好適には、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を有する成分は、以下の式を有する:
【0081】
【化4】
(式中、R
1およびR
2は同一であるかまたは異なり、HまたはMeから選択され;Xは、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子を場合により含むことができるC
4~C
30アルキル鎖であり、ここで、該鎖が1つ以上のアクリレートおよび/もしくはメタクリレート官能基、ならびに/または1つ以上のC
1~C
10アルキル基で場合により置換されている)。
【0082】
Xは、C4~C30アルキル鎖であってもよく、例えば、Xは、C4アルキル鎖、またはC5アルキル鎖、またはC6アルキル鎖、またはC7アルキル鎖、またはC8アルキル鎖、またはC9アルキル鎖、またはC10アルキル鎖、またはC11アルキル鎖、またはC12アルキル鎖であってもよい。好適には、Xは、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、またはドデシル鎖からなる群から選択されるアルキル鎖であってもよい。
【0083】
好適には、このような成分は、本発明の組成物に改善された熱性能および湿潤エージング性能(humid ageing performance)を付与する。
【0084】
少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を有する成分は以下から選択されてもよい:
【0085】
【0086】
少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、約0.5~約20重量%、例えば約1~約15重量%の濃度で存在してもよく、約4~約12重量%が特に望ましい。少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分が約20重量%を超える量で存在する場合、組成物の引張強度が低下する。成分が約1重量%未満の量で存在する場合、湿潤エージングの改善が低下する。この成分が約4~約12重量%の量で存在する場合、引張強度性能を維持しながら湿潤エージングの最大の改善が観察される。有利なことに、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む成分は、活性可塑剤として作用し、2パート組成物の湿潤エージング性能を改善することに加えて、ベンゾチアゾール成分ための担体として機能することができ、それによって追加の担体を含む必要性がなくなる。
【0087】
無水物成分は、無水フタル酸のような芳香族のもの、またはその完全もしくは部分的に水素化されたものであってもよいが、無水フタル酸(またはその完全もしくは部分的に水素化されたもの)の有無にかかわらず他の無水物を使用してもよい。
【0088】
例えば、無水物成分が、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、ジフェン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、1,8-ナフタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、2,3-ジクロロマレイン酸無水物、2-ドデセン-1-イル-コハク酸無水物、ホモフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3-フルオロフタル酸無水物、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-ニトロフタル酸無水物、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、メタクリル酸無水物、シトラコン酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物、エキソ-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ジ-O-アセチル-L-酒石酸無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物およびそれらの組み合わせから好適に選択されてもよい。好適には、無水物成分は、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物または4-メチルフタル酸無水物である。
【0089】
無水物成分は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~約5重量%、例えば約0.1~約2重量%の濃度で存在してよく、約0.5重量%が特に望ましい。無水物成分が組成物の総重量に基づいて約5重量%を超える濃度で存在する場合、性能のさらなる向上は観察されない。無水物成分が組成物の総重量に基づいて0.1重量%未満で存在する場合、湿潤エージング性能の改善はそれほど顕著ではない。
【0090】
また、耐熱性付与剤を添加してもよい。このような薬剤には、米国特許第5,328,944号(Attarwala)(その開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載されているスルホネート、スルフィネート、サルフェート、及びサルファイト等の特定の硫黄含有化合物が挙げられる。
【0091】
例えば、本発明の組成物は、2-スルホ安息香酸無水物、トリエチレングリコールジ(p-トルエンスルホネート)、トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、ジメチルジオキソレン-4-イルメチルp-トルエンスルホネート、p-トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、1,3プロピレンサルファイト、ジオキサチオランジオキサイド、1,8-ナフトスルトン、スルトン1,3-プロパン、スルトン1,4-ブテン、アリルフェニルスルホン、4-フルオロフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンスルホン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン、エチルp-トルエンスルホネート、およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物等の耐熱性を付与する添加剤を場合により含んでもよい。
【0092】
本発明のシアノアクリレート組成物には、カリックスアレーンおよびオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物(ethoxylated hydric compounds)およびそれらの組み合わせから選択されるいずれか1つ以上等の促進剤が含まれてもよい。
【0093】
カリックスアレーンおよびオキサカリックスアレーンのうち、多くは公知であり、特許文献に報告されている。例えば、米国特許第4,556,700号、第4,622,414号、第4,636,539号、第4,695,615号、第4,718,966号、および第4,855,461号(これらの各々の開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)を参照されたい。
【0094】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造に含まれるものが本明細書において有用である:
【0095】
【化6】
(式中、R
1はC
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、置換
C1-10アルキルまたはC
1-10置換アルコキシであり;R
2はHまたはC
1-10アルキルであり;nは4、6または8である。)
【0096】
1つの特に望ましいカリックスアレーンは、テトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである。
【0097】
多くのクラウンエーテルが知られている。例えば、本明細書において、単独で、または組み合わせて、又は他の第1の促進剤と組み合わせて使用してもよい例として、15-クラウン-5,18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7が挙げられる。米国特許第4,837,260号(Sato)(その開示が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる)を参照されたい。
【0098】
シラクラウンもまた、多くが知られており、文献に報告されている。例えば、典型的なシラクラウンは、以下の構造の範囲内に表されうる:
【0099】
【化7】
(式中、R
3及びR
4は、それ自体はシアノアクリレートモノマーの重合を引き起こさない有機基であり、R
5はH又はCH
3であり、nは1~4の整数である。)。好適なR
3基及びR
4基の例は、R基、メトキシ等のC
1-20アルコキシ基、及びフェノキシ等のアリールオキシ基である。R
3基及びR
4基は、ハロゲン又は他の置換基を含んでいてもよく、その例はトリフルオロプロピルである。しかしながら、アミノ、置換アミノ、及びアルキルアミノ等の塩基性基は、R
4基およびR
5基として適していない。
【0100】
本発明の組成物に有用なシラクラウン化合物の具体例としては、以下が挙げられる:
【0101】
【0102】
【0103】
【化10】
および、ジメチルシラ-17-クラウン-6。
例えば、米国特許第4,906,317(Liu)(その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)を参照されたい。
【0104】
多くのシクロデキストリンが本発明に関連して使用されうる。例えば、シアノアクリレートに少なくとも部分的に可溶性であるα、β又はγ-シクロデキストリンのヒドロキシル基誘導体として米国特許第5,312,864号(Wenz)(その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載及び特許請求されているものが適切な選択肢であろう。
【0105】
例えば、本明細書における使用に好適なポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートとしては、以下の構造に含まれるものが挙げられる:
【0106】
【化11】
(式中、nは3よりも大きく、例えば3~12の範囲内であり、nが9であることが特に望ましい。)。より具体的な例としては、PEG200DMA(式中、nは約4)、PEG400DMA(式中、nは約9)、PEG600DMA(式中、nは約14)及びPEG800DMA(式中、nは約19)が挙げられ、数字(例えば400)は、2つのメタクリレート基を除いた分子のグリコール部分の平均分子量を表し、グラム/モルとして表される(すなわち400g/mol)。特に望ましいPEG DMAは、PEG400DMAである。
【0107】
また、エトキシル化ヒドロキシ化合物(又は用いられうるエトキシル化脂肪アルコール)のうち、以下の構造に含まれるものから適切なものを選択してもよい:
【0108】
【化12】
(式中、C
mは直鎖状又は分枝鎖状のアルキル又はアルケニル鎖であることができ、mは1~30、例えば5~20の整数、nは2~30、例えば5~15の整数であり、RはH又はアルキル、例えばC
1-6アルキルであってもよい。)
【0109】
上記構造に含まれる材料の商業的に入手可能な例として、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン、BASF SEからDEHYDOL(登録商標)の商品名で提供されるものが挙げられる。
【0110】
使用される場合、上記の構造に包含される促進剤は、全組成物の、約0.01重量%~約10重量%の範囲内の量で組成物に含まれてもよく、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲が望ましく、約0.4重量%が特に望ましい。
【0111】
安定剤パッケージも通常、シアノアクリレート組成物に含まれている。安定剤パッケージは、1つ又は複数のフリーラジカル安定剤及びアニオン安定剤を含んでよく、そのそれぞれの種類及び量は当業者に周知である。例えば、米国特許第5,530,037号及び同第6,607,632号(これらのそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
【0112】
一般的に使用されるフリーラジカル安定剤としては、ハイドロキノンが挙げられ、一方、一般的に使用されるアニオン性安定剤としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三酸化硫黄(及びその加水分解生成物)、二酸化硫黄、およびメタンスルホン酸が挙げられる。
【0113】
追加の物理的特性を付与するために他の添加剤を含んでもよく、例えば改善された耐衝撃性(例えばクエン酸)、厚さ(例えばポリメチルメタクリレート)、チキソトロピー性(例えばヒュームドシリカ)、色等である。
【0114】
これらの他の添加剤は、もちろん添加剤の種類に応じて、約0.05重量%~約20重量%、例えば約1重量%~15重量%、望ましくは5重量%~10重量%の量で本発明の組成物に個々に使用してよい。例えば、より具体的には、クエン酸は、本発明の組成物中、5~500ppm、望ましくは10~100ppmの量で使用されてよい。
【0115】
水中にある基材を接合する方法は、水中で、本明細書に開示される組成物を少なくとも1つの基材に塗布する工程と、該組成物を硬化させる工程を含む。
【0116】
ノズル寿命は少なくとも4分、例えば少なくとも5分であってよい。これは、組成物が塗布されている間ディスペンスするために使用されるノズル内で、この時間内に組成物が硬化しないことを意味する。組成物が水と接触するノズルの先端で組成物の薄層が硬化する可能性がある。水と接触しないノズル本体内の組成物の大部分は未硬化のままであろう。組成物が水中で良好なノズル寿命を有するので、ノズルから組成物をディスペンスすることは依然として可能であろう。
【0117】
有利なことに、組成物は、第2の基材の表面を第1の基材のコーティングされた表面と接合する前に最大45秒間水に曝されてもよく、組成物は未硬化のままであるため、基材間の接着を形成することが可能である。
【0118】
本方法は、水中で組成物を硬化させる工程を含む。組成物を硬化させるために水から取り出すことはない。硬化すると、形成された接着は強固になる。硬化すると、形成された接着は時間が経ってもその強度を維持し、本発明の方法は長期間基材を接合するのに適している。接着は、5分間の硬化後、例えば24時間硬化後、例えば168時間後に、少なくとも0.6N/mm2のせん断強度(ASTM D1002に従って測定される)を有しうる。炭酸カルシウム等の接着が難しい材料でも、この接着強度を達成することができる。炭酸カルシウムを長時間(例えば168時間)有効に接着させるため、本方法はサンゴ礁での応用、例えばサンゴの移植に適している。達成される接着の強度は炭酸カルシウムの破壊点よりも大きい可能性があり、これは該接着が破壊される前に炭酸カルシウムが破壊されうることを意味する。該接着は、5分間の硬化後、例えば24時間硬化後、例えば168時間後に、少なくとも4N/mm2のせん断強度(ASTM D1002に従って測定される)を有しうる。より高いせん断強度を有する基材は、接着が破壊される前に該基材が破壊されることはないため、より高いせん断強度の接着を達成することが可能である。例えば金属、例えば鋼、例えばグリットブラスト軟鋼(GBMS)は、本方法によって形成される接着よりも高いせん断強度を有し、5分間硬化後、例えば24時間硬化後、例えば168時間後に、少なくとも4N/mm2のせん断強度(ASTM D1002に従って測定される)を有しうる。
【実施例】
【0119】
簡単に説明すると、試験する部品の接着は以下のように行った。部品を水中に沈め、部品の全表面に水が接触するようにした。部品を完全に水没させた。接着剤を塗布する前に、部品を水から取り出すことはしなかった。
【0120】
代表的な組成物の成分を表1に示す。
【0121】
【0122】
柔軟性CA成分は、エチル-2-シアノアクリレート、(i)エチレン、メチルアクリレート、及びカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンとメチルアクリレートとのジポリマー、又は(i)と(ii)との組み合わせを含むゴム強化剤、並びに安定剤を含む。使用されるゴム強化剤は、本明細書に記載されているもののいずれでもよいが、この例では、VAMAC(登録商標)VCS5500の商品名で提供されているものである。ここで使用される安定剤は、メタンスルホン酸とSO2との組み合わせである。柔軟性CA組成物の総重量を基準として、エチル-2-シアノアクリレートは80重量%超で存在し、ゴム強化剤は6重量%で存在する。表1の組成物において、第1パート(パートA)と第2パート(パートB)との比率は10:1であるが、他の比率も使用することができる。
【0123】
組成物を容器からディスペンスし、第1の部品に塗布した。第2の部品を1インチ(2.54cm)重ね、部品をクランプで固定して接着剤を硬化させ、部品間の接着を形成した。容器から組成物をディスペンスしてから第2の部品を重ねるまでの間の時間をオープンタイムという。接着剤の塗布と接着剤の硬化は両方とも水中で行われた。乾燥部品の試験では、部品は水中に置かれなかった。該接着剤の塗布時および接着剤の硬化時には部品は乾燥しており、表面に水分がなかった。接着のせん断強度は、ASTM D1002に従って測定した。
【0124】
以下の基材を試験した:グリットブラスト軟鋼(GBMS)、炭酸カルシウム。
【0125】
結果
GBMS部品を、オープンタイム0秒で接合した。すなわち、組成物を部品に塗布し、直ちに部品を接合した。接着剤が硬化する間、部品は水から取り出されなかった。接着は水中に完全に浸った状態で硬化された。表2に示すように、接着剤は5分間硬化した後、良好なハンドリング強度を達成した。水中で接着剤が塗布され硬化された場合の接着強度は、乾燥部品で達成された接着強度と同等である。この強度により、接合された部品は、接着が破壊されることなく取り扱うことができる。水中で塗布され硬化された組成物の強度は、乾燥部品に塗布された接着剤で達成される強度と同等であった。表2に示すように、24時間硬化した後接着強度は維持された。表2に示すように、168時間硬化した後接着強度は維持された。
【0126】
GMBS部品を、オープンタイム0秒(組成物を塗布し、部品を直ちに接合した)、30秒(組成物を塗布し、30秒後に部品を接合した)、および45秒(組成物を塗布し、45秒後に部品を接合した)で接合した。接着剤は水中で塗布され、その後部品は水中から取り出され、空気中で24時間硬化された。接着剤は、45秒間水にさらされた後でも、強力な接着を形成した。表3に示すように、オープンタイム0秒、30秒、および45秒では、24時間後に強力な接着が形成された。
【0127】
炭酸カルシウム部品を、オープンタイム0秒で接合した。接着剤が硬化する間、部品は水から取り出されなかった。接着は水中に完全に浸った状態で硬化された。表2に示すように、接着剤は5分間硬化した後、良好なハンドリング強度を達成した。水中で接着剤を塗布し硬化させた場合の接着強度は、乾燥部品で達成された接着強度と同等である。炭酸カルシウムの引張強度はおよそ1N/mm2であるので、接着が破壊されないまま部品が破損する可能性がある。この強度により、接合された部品は、接着が破壊されることなく取り扱うことができる。水中で塗布され硬化された組成物の強度は、乾燥部品に塗布された接着剤で達成される強度と同等であった。表2に示すように、24時間硬化した後接着強度は維持された。表2に示すように、168時間硬化した後接着強度は維持された。
【0128】
炭酸カルシウム部品を、オープンタイム0秒(組成物を塗布し、部品を直ちに接合した)、30秒(組成物を塗布し、30秒後に部品を接合した)、および45秒(組成物を塗布し、45秒後に部品を接合した)で接合した。接着剤は水中で塗布され、その後部品は水中から取り出され、空気中で24時間硬化された。接着剤は、45秒間水にさらされた後でも、強力な接着を形成した。表3に示すように、オープンタイム0秒、30秒、および45秒では、24時間後に強力な接着が形成された。炭酸カルシウムの引張強度はおよそ1N/mm2であるので、接着が破壊されないまま部品が破損する可能性がある。
【0129】
【0130】
【0131】
水中の接着剤のパッケージのノズル寿命は、接着剤が2分以内ごとにディスペンスされる場合、5分より長い。表4は、接着剤組成物が容易にディスペンスされ、5分後にノズルが詰まらなかったことを示している。接着剤組成物は、0分、すなわちノズルが最初に水に開いたとき、ノズルから容易に押し出された。水に開いてから1分後、組成物はノズルから容易に押し出された。水中にあるノズルは、組成物のディスペンスを妨げなかった。水中でさらに1分後(2分)、組成物はノズルから容易にディスペンスされた。水中でさらに1分後(3分)、組成物はノズルから容易にディスペンスされた。水中でさらに2分後(5分)、組成物の表面が硬化し始めたため、ノズルの先端を洗浄する必要があった。組成物の大部分の硬化は起こらず、組成物の薄い層のみが硬化し始めた。ノズルの先端を洗浄して硬化した層を取り除き、大部分の硬化は起こらなかったため組成物はノズルから容易にディスペンスされた。
【0132】
【0133】
本発明に関連して本明細書で使用される場合、「含む(comprises/comprising)」という用語、及び「有する/含む(having/including)」という用語は、記載した特徴、整数、工程、又は成分の存在を特定するために使用されるが、1又は複数の他の特徴、整数、工程、成分、又はそれらの群の存在又は付加を除外するものではない。
【0134】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において、組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔のために、単一の実施形態の文脈で説明された本発明の様々な特徴は、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【国際調査報告】