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特表2024-542791バイオリアクタのモデルベース分析ツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】バイオリアクタのモデルベース分析ツール
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533044
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022084079
(87)【国際公開番号】W WO2023099670
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21306688.9
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュルダン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】シーニ,アデル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルツ,カリーヌ エリーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ド カンディティス,バルトロメーオ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB01
4B029FA09
4B029FA11
(57)【要約】
システムソフトウェア(5)を備えたコンピュータ(2)を介してバイオリアクタ(3)内のバイオマスを分析する方法およびシステムであって、バイオリアクタ(3)は、バイオマスを測定するための少なくとも1つのセンサ(6)を有し、システムソフトウェア(5)によって提供されるデータインターフェイスによって管理されるコンピュータ(2)へのデータ接続を有し、システムソフトウェア(5)は、バイオマス中の細胞の特定の細胞パラメータを計算するために、少なくとも1つのセンサ(6)によって測定されコンピュータ(2)に送信される誘電率に関するリアルタイムの生データを分析するためのデータ変換モデル(8)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムソフトウェア(5)を備えたコンピュータ(2)を介してバイオリアクタ(3)内のバイオマスを分析する方法であって、バイオリアクタ(3)は、バイオマスを測定するための少なくとも1つのセンサ(6)を有し、システムソフトウェア(5)によって提供されるデータインターフェイスによって管理されるコンピュータ(2)へのデータ接続を有し、
システムソフトウェア(5)は、バイオマス中の細胞の特定の細胞パラメータを計算するために、少なくとも1つのセンサ(6)によって測定されコンピュータ(2)に送信される誘電率に関するリアルタイムの生データを分析するためのデータ変換モデル(8)を提供する、
前記方法。
【請求項2】
Cole-Cole方程式に基づく物理学ベースのデータモデルが、データ変換モデル(8)として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単なる物理学ベースのデータモデルを使用してリアルタイムの生データを分析することに加えて、データ駆動型の機械学習アプローチをデータ変換モデル(8)に使用して、精度が向上したハイブリッドデータ変換モデルを実現する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのセンサ(6)が、様々な励起周波数における誘電率の振幅をリアルタイムの生データとして測定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コンピュータ(2)が、細胞膜静電容量および内部伝導率の事前定義されたパラメータ値を考慮して、その半径または直径の形での細胞寸法および生存細胞密度(VCD)を細胞パラメータとして計算する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
データが、細胞膜静電容量および内部伝導率のサンプリングおよびオフライン分析に基づいて不連続的に調整される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各測定ターンの終了後、オフライン分析を介して細胞膜静電容量および内部伝導率の平均値が計算され、以前に定義されたパラメータ値の代わりに次の測定ターンに使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バイオマスを分析するための自動化システムであって、バイオマスを測定するための少なくとも1つのセンサ(6)を備えたバイオリアクタ(3)と、少なくとも1つのセンサ(6)に接続されたコンピュータ(2)と、少なくとも1つのセンサ(6)への接続を管理し、データ変換モデル(8)を提供するデータインターフェイスを備えたコンピュータ(2)上で実行される、請求項1~7のうちの1つを実行するように配置されている、システムソフトウェア(5)とを含む、前記自動化システム。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサ(6)が、誘電分光法を統合した静電容量プローブである、請求項8に記載の自動化システム。
【請求項10】
システムソフトウェア(5)が、データ変換モデル(8)でのリアルタイムの生データ処理を可能にする、誘電分光法プローブとデータインターフェイスとの間に実装された、特定のソフトウェアモジュールを含む、請求項9に記載の自動化システム。
【請求項11】
少なくとも1つのセンサ(6)が、使い捨てのシングルユースセンサである、請求項8~10のいずれか一項に記載の自動化システム。
【請求項12】
コンピュータ(2)が、システムソフトウェア(5)およびデータ変換モデル(8)を実行する単一の制御ユニットである、請求項8~11のいずれか一項に記載の自動化システム。
【請求項13】
コンピュータ(2)が、少なくとも1つのセンサ(6)に接続され、バイオリアクタ(3)を制御し、少なくとも1つのセンサ(6)への接続を管理するデータインターフェイスを備えたシステムソフトウェア(5)を実行する、第1のコンピュータ、およびデータ変換モデル(8)を提供し、第1のコンピュータのデータインターフェイスへのデータネットワークを介した第1のコンピュータへの接続を使用する、遠隔地にある第2のコンピュータ、を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の自動化システム。
【請求項14】
データ変換モデル(8)が、少なくとも1つのセンサ(6)がシングルユースまたはマルチユースプローブであるかに依存せず、別個のセンサに使用することができる、請求項8~13のいずれか一項に記載の自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された発明は、コンピュータ支援の物理学ベースのモデルを使用してバイオリアクタ内のin situ分析ツールを操作する方法を開示する。
【0002】
技術分野
本発明は、連続的なバイオ医薬品プロセスの技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
製薬業界の品質アプローチは、生化学化合物の製造における生産性の向上と増加に重点を置いている。これは、生産ライン内に統合されたリアルタイム監視を備えた複雑なバイオプロセスの使用を必要とする。インライン分析は、プロセスの自動化を可能にできるため、時間と材料を大幅に節約することで最適化できる。現在、バイオマス、半径、栄養量、代謝指標など、細胞培養における重要な変数、ならびにバイオプロセスの重要なパラメータを監視できる広範なセンサやオフライン技術が市場に出回っているが、そのほとんどがin situセンサに変換されていない。
【0004】
したがって、分析ツールをin situセンサに変換することは、これらの測定値の品質向上を目指した現在の探究的なトレンドである。さらに、プロセス分析ツール(PAT)と呼ばれるこれらの最適化されたセンサのおかげで、モデルを通して定量的および定性的な情報に変換された物理的測定値により、連続的または不連続的な細胞培養の条件をリアルタイムで調整できる。インラインセンサへのこの適応は、クリーニングステップ不要、システムのダウンタイム短縮、クリーンルーム不要、およびコスト削減など、多くの利点を有する。
【0005】
別の性質は、マルチユース(MU)からシングルユース(SU)センサへの変換であり、これは、特に洗浄ステップが不要になるなど、同様の利点を提供する。残念ながら、SUセンサは、システムのインストール前に実行できない較正に関する大きな問題を有する。
【0006】
したがって、これらのプロセスセンサおよび分析ツールは、それらの困難に対処するために、大量のデータに基づく特定の複雑な較正モデルを必要とする。
【0007】
要約すると、前述の既知の最新技術に関して4つの主な問題点がある。
1.通常、特定のアプリケーションおよびプロセスにおいて最初に使用する場合、PATは生データのみを供給し、生存細胞密度、グルコース濃度などのパラメータ情報および測定値を直接与えない。例えば、誘電分光法は、定量的な媒体誘電率データは与えるが、生存細胞密度データは与えない。したがって、複雑な変換または較正モデルを開発する必要がある。
【0008】
2.PATのためのデータ駆動型較正モデルは、この応用分野において現在実装および使用されている他のアプローチがないため、好ましいモデルである。PATのためのデータ駆動型較正モデルは、許容可能な精度と測定許容範囲でパラメータ測定値を与えるために、幾つかの細胞培養の実行と大量のデータが必要である。
【0009】
3.マルチユースセンサまたはPATをシングルユースバージョンに変換する際の難しさの中でも、SU変動を伴う主な難しさは、MUセンサの較正とは大きく異なる、これらの特定の較正である。一方でプロセスMUセンサは、実行直前にオフラインで較正できるが、プロセスSUセンサはサプライヤから与えられた事前較正データを必要とする。分析ツールのためのデータ駆動型較正モデルは、モデルの一部が、特定の感度、内部の工場係数など、プローブに依存しているため、MUから別のMUまたはSU PATに転送することはできない。
【0010】
4.例えば3Lのバイオリアクタから、例えば2kLのかなり大きなバイオリアクタへのスケールアップは、これらのモデルがデータ駆動型ベースであるため、in situ分析にとって挑戦となる。これらのデータは、バイオリアクタのサイズや、混合、散布などの量によって大きく異なる培養条件に敏感である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、この特許出願の課題は、従来技術の既知の制限を克服できるバイオリアクタで分析ツールを使用する方法を見つけることである。
【0012】
この課題は、システムソフトウェアを備えたコンピュータを介してバイオリアクタ内のバイオマスを分析する方法によって解決され、バイオリアクタは、バイオマスを測定するための少なくとも1つのセンサを有し、システムソフトウェアによって提供されるデータインターフェイスによって管理されるコンピュータへのデータ接続を有しており、システムソフトウェアは、少なくとも1つのセンサによって測定され、コンピュータに送信された誘電率に関するリアルタイムの生データを分析して、バイオマス内の細胞の特定の細胞パラメータを計算するためのデータ変換モデルを提供する。
【0013】
本発明の目的は、センサ、この場合は静電容量プローブを変換し、誘電分光法を真のバイオマスプローブに統合して、半径や生存細胞密度などの細胞パラメータに関する定性的および定量的情報を提供することである。さらに重要なのは、プローブがリアルタイムで動作して生データを提供し、較正の手間が軽減され、マルチユースまたはシングルユースプローブの変動に対応できることである。このアプローチは、説明した4つの問題を1つずつ解決する。
【0014】
問題1および2:
物理学ベースのモデルは、プローブを最初に使用したときから使用可能であり、モデルのパラメータや係数として機械学習および/またはモデル構築は必要なく、それはこのデータが、プローブ測定値から取得されるか、オフライン測定値から推定されるか、文献から活用されるためである。物理学ベースのモデルは、細胞を「誘電」体として記述する方程式に基づいているため、大量のデータや古い細胞培養の実行に基づく事前の較正も必要ない。それはプローブから取得したリアルタイムの物理値を使用できる。
【0015】
問題3:
物理学ベースのモデルはセンサに依存せず、工場での較正も不要である。そのため、モデルは使用済みのセンサで自己較正できる。方程式から抽出されるパラメーターは、誘電体として考えられた細胞から取得されるため、モデルは1つのマルチユースプローブから別のMUプローブ、またはシングルユースプローブに転送できる。
【0016】
問題4:
物理学ベースのモデルは細胞株に依存しないが、細胞はモデルにおいてモデル化された形状を有する。実際、細胞は誘電体として考えられているため、その生化学的特異性はモデルにおける干渉の根本原因にはならない。
【0017】
細胞膜静電容量Cおよび内部伝導率σはオフライン解析から計算され、細胞の定性的な情報を提供しながらモデルを定期的に調整することができる。
【0018】
このプロセスの好ましいさらなる発展形態は、例えば、以下を包含するが、これらに限定されるわけではない。
・単なる物理学ベースのデータモデルを使用してリアルタイムの生データを分析することに加えて、データ駆動型の機械学習アプローチをデータ変換モデルに使用して、精度が向上したハイブリッドデータ変換モデルを実現する。
・少なくとも1つのセンサは、様々な励起周波数における誘電率の振幅をリアルタイムの生データとして測定する。
【0019】
・コンピュータは、細胞膜静電容量および内部伝導率の事前定義されたパラメータ値を考慮して、その半径または直径の形での細胞寸法および生存細胞密度(VCD)を細胞パラメータとして計算する。
・データは、細胞膜静電容量および内部伝導率のサンプリングおよびオフライン分析に基づいて不連続的に調整される。
・各測定ターンの終了後、オフライン分析を介して細胞膜静電容量および内部伝導率の平均値が計算され、以前に定義されたパラメータ値の代わりに次の測定ターンに使用される。
【0020】
この課題に対する別の解決策は、バイオマスを測定するための少なくとも1つのセンサを備えたバイオリアクタと、少なくとも1つのセンサに接続されたコンピュータと、および少なくとも1つのセンサへの接続を管理し、データ変換モデルを提供するデータインターフェイスを備えたコンピュータ上で実行される、先述の方法を実行するように配置されている、システムソフトウェアとを含む、バイオマスを分析するための自動化システムである。
【0021】
自動化システムの好ましいさらなる発展形態は、例えば、以下を包含するが、これらに限定されるわけではない。
・少なくとも1つのセンサは、誘電分光法を統合した静電容量プローブである。
・ソフトウェアは、スマート誘電分光法プローブとデータインターフェイスの間に実装された特定のソフトウェアモジュールを含み、組み込みモデルによるリアルタイムの生データプロセスを可能にする。
・少なくとも1つのセンサは、使い捨てのシングルユースセンサである。
・コンピュータは、システムソフトウェアおよびデータ変換モデルを実行する単一の制御ユニットである。
【0022】
・コンピュータは、少なくとも1つのセンサに接続され、バイオリアクタを制御し、少なくとも1つのセンサへの接続を管理するデータインターフェイスを備えたシステムソフトウェアを実行する、第1のコンピュータ、およびデータ変換モデルを提供し、そのデータインターフェイスを介した第1のコンピュータへの接続を使用する、遠隔地にある第2のコンピュータ、を含む。
・データ変換モデルは、少なくとも1つのセンサがシングルユースまたはマルチユースプローブであるかに依存せず、別個のセンサに使用、つまり、モデルはマルチまたはシングルユースの1以上のセンサに使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による方法、およびソフトウェア5を包含する自動化システム1、ならびにそれらの機能的に有利な発展形態について、少なくとも1つの好ましい例示的な実施形態を使用して、関連する図面を参照して以下でさらに詳しく説明する。図面では、互いに対応する要素には同じ参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、使用した自動化バイオリアクタシステムの概略図を示す。
図2a図2は、使用したモデルの種々の好ましい実施形態の理解しやすい概略図を示す。
図2b図2bは、使用したモデルの種々の好ましい実施形態の理解しやすい概略図を示す。
図3図3は、生存細胞密度(VCD)の結果的な曲線を示す。
図4図4は、半径(R)の結果的な曲線を示す。
図5図5は、細胞膜静電容量と内部伝導率の平均値を示す。
図6図6は、シングルユースおよびマルチユースプローブを比較した生存細胞密度(VCD)のそれぞれの結果的な曲線を示す。
図7図7は、シングルユースおよびマルチユースプローブを比較した半径(R)表示のそれぞれの結果的な曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に使用される自動化バイオリアクタシステム1の例を示している。このシステムは、細胞培養物を含むバイオマスを含むバイオリアクタ3自体、その制御ユニット2、バイオリアクタ3に接続されたバイオマスセンサ6、および制御ユニット2によって実行されるシステムソフトウェア5を含み、これは、特定のデータモデル8を使用して、少なくとも1つのセンサ6によって測定され、制御ユニット2に送信された誘電率に関するリアルタイムの生データを分析することにより、バイオマス内の細胞の特定の細胞パラメータを計算する。
【0026】
制御ユニット2は、バイオリアクタ3を制御するのに適した標準コンピュータであることが好ましい。別の選択肢は、バイオリアクタ3に組み込まれたデバイスに統合されたマイクロコントローラまたはプロセッサである。特にローカル制御ユニット2がデータモデル8自体を提供する場合は、マイクロコントローラによって通常提供されるより高い処理能力が必要になるため、標準または産業用パーソナルコンピュータまたはサーバー、またはその他の適切なデバイスである可能性もある。別の好ましい実施形態では、データモデル8は、クラウドベースのサービスを使用してデータネットワークを介してリモートロケーションの適切な別個のコンピュータによって提供される。
【0027】
データモデル8は、リアルタイムの誘電率の生データを生存細胞密度(VCD)と平均細胞培養半径(R)の指標に変換する現象論的Cole-Coleモデル8であることが望ましい。Cole-Cole方程式はDebye方程式(Debye、1929)に基づいており、誘電率(ε)を周波数(f)の関数として表すことでβ分散の形状を再現し、次のように記述できる。
【数1】
【0028】
ここで、Δεは分布の振幅、fcは特性周波数(εがΔεの半分の値に等しい周波数)、αは分布の傾き、ε0は自由空間の誘電率、εは高周波(通常1MHz以上)での誘電率である[Opel et al., 2010]。
【0029】
誘電体パラメータΔε、f、およびαは、スキャンが実行されるたびに、生の誘電率データからINCYTE内部ソフトウェア(ArcAir、Hamilton)によって計算される。
Cole-Coleパラメータは、次の方程式を使用して、平均培養細胞半径Rなどの細胞の定量的情報にリンクできる。
【数2】
【0030】
ここで、C(F/mで測定)およびσ(S/mで測定)はそれぞれ、培養中の細胞の平均膜静電容量と内部伝導率である。σ(S/mで測定)という量は、静的媒体伝導率を表し、次の方程式から決定できる。
【数3】
【0031】
ここで、σ(S/m単位で測定)は静的懸濁液伝導率であり、ppは次のように表される予測バイオマス体積分率である。
【数4】
【0032】
最後に、培養中の細胞が球形であるという仮定から生存細胞密度VCDが計算され、単一の細胞体積Vは次のように表すことができる。
【数5】
および、したがって:
【数6】
【0033】
Cole-Coleモデル8を提供および適用するソフトウェア5は、生データ変換モジュールも含む。そのグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)4では、ユーザ7は計算に使用するモデリングの種類を選択できる。ソフトウェア5としてはMATLAB(登録商標)ソフトウェア(The MathWorks Inc)を使用するのが望ましいが、他の適切なソフトウェアも使用できる。この例では、2020年のMATLAB(登録商標)バージョン9.9.0.1570001が使用された。
【0034】
モデル8をアルゴリズムで使用して、r値およびVCD値が1分ごとに計算された。細胞半径およびVCDの平均オフライン値を取得するために、毎日2つのサンプルが取得された。これらは、平滑化スプラインで補間された。モデル8によって計算された値はスプラインと比較され、標準誤差予測(SEP)が次のように計算された。
【数7】
【0035】
コンピュータソフトウェア5は、培養の間中の半径とVCDを監視するためのプラットフォームに統合されるのが好ましい。このGUI4を使用して、ユーザは、Cおよびσの理論値、ならびに生の誘電率値を含むファイルを入力するよう要求される。選択したモデル8に応じて、Nova分析器でオフラインで決定された値を含むファイルを追加することもできる。生の誘電率データは、代替オプションとして、バイオマスセンサ6によってリアルタイムで提供することもできる。
【0036】
計算された半径およびVCD値は、自動化細胞培養分析器で行われたオフライン測定値と比較される。これにより、培養中の細胞に適用されたCole-Coleモデル8の妥当性がテストされる。
【0037】
特定のソフトウェアモジュールは、スマート誘電分光法プローブとソフトウェアインターフェイスとの間にあるシステムソフトウェアに実装されることが好ましく、組み込みモデル8によるリアルタイムの生データ処理が可能になる。
【0038】
以下の方法ステップは、モデル8を最高の精度で使用するための好ましい例を示している。
1)説明した純粋に物理学ベースのCole-Coleモデル8をプローブ6とともに使用して、様々な励起周波数でリアルタイムの誘電率測定値を供給する。リアルタイムとは、最速で6秒ごとに1回の測定を意味する。プローブ6は、文献から取得した細胞固有パラメータ、好ましくは細胞膜静電容量と内部伝導率を使用して、最初のフィールド使用からバイオマスセンサ6として直接使用される。これは、バイオリアクタ3での細胞培養の最初の2日間または3日間まで使用できる。図3と4は、生存細胞密度(VCD)および半径(R)の表示の結果的な曲線を示している。
【0039】
2)細胞膜静電容量および内部伝導率のサンプリングおよびオフライン分析に基づく変換モデル8の不連続的な調整。モデル8は、次の方程式に基づいて、これらの細胞固有パラメータの各サンプリングで計算を開始する。
【数8】
【数9】
【0040】
図5は、実行終了後に計算して後で文献のパラメータ値の代わりに使用できる、これら2つの細胞固有パラメータのそれぞれの平均値を示している。
【0041】
3)実験データが示すように、このモデルは、いかなる特定のセンサ調整もすることなしに、使い捨てのシングルユースセンサに転送可能である。図6と7は、生存細胞密度(VCD)および半径(R)の表示のそれぞれの結果的な曲線を示している。
【0042】
結論として、調整されたモデル8は、pHや溶存酸素などの典型的なプロセス制御センサで通常必要とされるSUセンサの追加の較正ステップなしで、MUまたはSUプローブ6のどちらでも使用でき、本発明の較正不要の特徴を失うことはないと理解できる。
【0043】
モデル8は細胞株に依存せず、細胞を誘電体として使用するため、小型バイオリアクタから大型バイオリアクタまで細胞培養の特性評価と監視を行うスケーラビリティは明らかである。モデル8の精度の向上は、データ駆動型アプローチと物理学ベースのモデル8を組み合わせたハイブリッドモデルによって行われる。図2は、使用したモデル8の種々の好ましい実施形態を包含する、本発明についての理解しやすい概略図を与える。
【符号の説明】
【0044】
1 自動化バイオリアクタシステム
2 制御ユニット/コンピュータ
3 バイオリアクタ
4 ユーザインターフェイス
5 ソフトウェア
6 センサ/プローブ
7 ユーザ
8 データ変換モデル(Cole-Cole)
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】