(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241108BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241108BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241108BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/04
C08L75/04
C08L71/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533082
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 KR2023000444
(87)【国際公開番号】W WO2023132737
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0003582
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホン・チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CH022
4J002CK021
4J002CP031
4J002DE146
4J002EA016
4J002FD140
4J002FD202
4J002FD206
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、硬化性組成物およびその用途を提供することができる。本発明は、駆動、保管および/または維持過程で熱を発生させたり、発火または爆発の可能性がある製品や素子に適用され、前記熱、発火および爆発に効果的に対応できる硬化性組成物を提供することができる。例えば、本発明の組成物は、前記のような製品や素子を複数個含む物品に適用され、いずれか1つの素子や製品から発生する異常発熱、爆発および発火に対応し、このような発熱、爆発および発火の隣接する他の素子や製品への伝搬を防止したり最小化することができる。本発明は、また、前記硬化性組成物を優れた取り扱い性、保管安定性および難燃性が確保されるように提供することができる。本発明の硬化性組成物または硬化体は、また、カプセル化しない相転移物質を使用して前記特性を達成しながらも、前記特性を長期間安定的に維持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分および相転移物質を含み、
下記一般式1のL
Rが5%以下であり、ショア(Shore)A硬度が10以下である硬化体を形成する硬化性組成物:
[一般式1]
L
R=100×(m
1-m
2)/m
1
一般式1中、m
2は、前記硬化体を80℃で24時間維持した後の重量であり、m
1は、80℃で24時間維持する前の前記硬化体の重量である。
【請求項2】
樹脂成分および相転移物質を含み、
下記一般式2のTanδが0.15~2の範囲内の硬化体を形成する硬化性組成物:
[一般式2]
Tanδ=G”/G’
一般式2中、G’は、前記硬化体の25℃における貯蔵弾性率であり、G”は、前記硬化体の25℃における損失弾性率である。
【請求項3】
前記硬化体の25℃における貯蔵弾性率が0.2MPa以上である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分は、シリコーン樹脂成分またはウレタン樹脂成分である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分を30重量%~80重量%の範囲内に含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記相転移物質は、極性結晶性相転移物質を含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記相転移物質は、ポリアルコール(polyalcohol)を含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記相転移物質は、線状構造を有し、数平均分子量が1,000g/mol~10,000g/molの範囲内の極性相転移物質を含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記相転移物質は、ポリアルキレングリコールを含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
樹脂成分100重量部に対して40~180重量部の極性結晶性相転移物質を含む、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記相転移物質は、非極性相転移物質をさらに含む、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記極性結晶性相転移物質の融点と前記非極性相転移物質の融点の差が5℃~50℃の範囲内である、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
極性結晶性相転移物質100重量部に対して10~100重量部の非極性相転移物質を含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
下記式3のM
Lが5%以下である硬化体を形成する、請求項1または2に記載の硬化性組成物:
[式3]
M
L=100×(m
3-m
4)/(m
3×m
5)
式3中、m
4は、前記硬化体を25℃で水に96時間浸漬した後に測定した前記硬化体の重量であり、m
3は、25℃で水に96時間浸漬する前の前記硬化体の重量であり、m
5は、前記重量m
3の硬化体に含まれた相転移物質の重量比である。
【請求項15】
樹脂成分と相転移物質を含む硬化性組成物を硬化させる段階を含み、
前記硬化性組成物が請求項1または2に記載の硬化性組成物である硬化体の製造方法。
【請求項16】
前記相転移物質は、極性結晶性相転移物質を含み、硬化性組成物の硬化段階での硬化温度Tcと前記極性結晶性相転移物質の融点Tmの差の絶対値が0℃~20℃の範囲内となる硬化温度で硬化を進める、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
樹脂成分と相転移物質を混合して硬化性組成物を製造する段階をさらに含み、前記相転移物質は、極性結晶性相転移物質を含み、前記混合段階の混合温度Txと前記極性結晶性相転移物質の融点Tmの差の絶対値が0℃~20℃の範囲内となる混合温度で前記混合を進める、請求項15に記載の硬化体の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂成分と溶融した相転移物質を混合する、請求項17に記載の硬化体の製造方法。
【請求項19】
前記極性結晶性相転移物質は、線状構造を有し、数平均分子量が1,000g/mol~10,000g/molの範囲内である、請求項16に記載の硬化体の製造方法。
【請求項20】
発熱体および前記発熱体と隣接して存在する請求項1または2に記載の硬化性組成物の硬化体を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月10日付で韓国特許出願第10-2022-0003582号に基づく優先権の利益を主張し、当該特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、硬化性組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
製品から発生する熱を処理する技術の重要性が大きくなっているが、関連製品の発熱様態によって適切に熱を管理することが容易ではない。
【0004】
例えば、バッテリーモジュールやバッテリーパックなどの装置は、複数のバッテリーセルまたは複数のバッテリーモジュールを含み、これらは、相対的に互いに隣接して位置する。このような装置では、正常状態で複数の部品の温度が可能な限り一定に維持されることが必要であり、いずれか1つの部品から発生する異常発熱、発火および/または爆発ができるだけ他の部品に影響を及ぼさないようにすることが必要であるが、前記部品が非常に隣接して存在するので、前記のような制御は非常に難しい。
【0005】
部品から発生する熱を管理するために、いわゆる相転移物質(PCM:Phase Chage Material)を適用し、異常発熱による熱を吸収する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかしながら、相転移物質の種類によって熱を吸収する形態も全部異なっているので、適用製品で必要な吸熱特性、すなわち適用製品の正常状態を妨害せずに異常発熱による熱のみを吸収することは難しい問題である。
【0007】
また、通常、相転移物質は、熱を吸収すれば液相に相変化する場合が多いので、使用過程で相転移物質が消失し、吸熱特性を長期間安定的に維持することはかなり難しい問題である。このような問題を解決するために、相転移物質をカプセル化し、液相に相移転する場合にも、漏液が生じないようにする技術も知られている。
【0008】
しかしながら、相転移物質をカプセル化することにさらなる工程が必要である。
【0009】
また、カプセル化によって相転移物質の特性が変化するので、カプセル化した相転移物質を使用して製品によって要求される吸熱特性を精密に合わせることは非常に難しい問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0135105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、硬化性組成物およびその用途に関する。本発明は、駆動、保管および/または維持過程で熱を発生させたり、発火または爆発の可能性がある製品や素子に適用され、前記熱、発火および爆発に効果的に対応できる硬化性組成物を提供することを目的とする。例えば、本発明の組成物は、前記のような製品や素子を複数個含む物品に適用され、いずれか1つの素子や製品から発生する異常発熱、爆発および発火に対応し、このような発熱、爆発および発火の隣接する他の素子や製品への伝搬を防止したり最小化することができる。本発明は、また、前記硬化性組成物を優れた取り扱い性、保管安定性および難燃性が確保されるように提供することを一目的とする。
【0012】
本発明は、また、カプセル化しない相転移物質を使用して前記特性を達成しながらも、前記特性を長期間安定的に維持することができることを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において言及する物性のうち温度が当該物性に影響を与える物性は、特段の定めがない限り、常温で測定した物性である。
【0014】
本明細書において用語「常温」は、加温および減温しない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか1つの温度、例えば、約15℃、約18℃、約20℃、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において特段の定めがない限り、温度の単位は、℃である。
【0015】
本明細書において言及する物性のうち圧力が当該結果に影響を及ぼす場合には、特段の定めがない限り、当該物性は、常圧で測定した物性である。用語「常圧」は、加圧および減圧しない自然そのままの圧力であり、通常約700~800mmHg範囲内の程度を常圧と称する。
【0016】
本明細書において言及する物性のうち湿度が当該結果に影響を及ぼす場合には、特段の定めがない限り、当該物性は、前記常温および常圧状態で特に調節されない湿度で測定した物性である。
【0017】
本明細書は、硬化性組成物を開示する。
【0018】
前記硬化性組成物は、樹脂成分および相転移物質(PCM,Phase Change Material)を少なくとも含んでもよい。
【0019】
用語「硬化性組成物」は、硬化することができる組成物である。硬化は、化学的および/または物質的反応によって前記組成物が硬化する現象または前記組成物の粘度が増加する現象を意味する。本明細書において用語「硬化体」は、前記硬化性組成物が硬化した状態を意味する。
【0020】
硬化性組成物は、公知の方式によって硬化することができる組成物でありうる。1つの例示において、前記硬化性組成物は、エネルギー線硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または常温硬化型であってもよく、または前記硬化方式のうち2種以上の方式が適用される混成硬化型であってもよい。
【0021】
硬化性組成物がエネルギー線硬化型であれば、前記硬化性組成物の硬化は、紫外線などのエネルギー線照射によって行われ、湿気硬化型であれば、前記硬化性組成物の硬化は、適切な湿気下で維持する方式によって行われ、熱硬化型であれば、前記硬化性組成物の硬化は、適切な熱を印加する方式によって行われ、または常温硬化型であれば、前記硬化性組成物の硬化は、常温で硬化性組成物を維持する方式によって行われ得る。
【0022】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、特別なエネルギー線の照射や熱の印加がなく、常温で維持することで硬化することができる常温硬化型であってもよい。前記硬化性組成物に含まれた相転移物質の相(phase)を考慮して、硬化性組成物が常温硬化型である場合にも、前記硬化性組成物の硬化は、常温でなく、適切な温度範囲内で行われてもよい。前記適切な温度範囲は、特に制限されるものではないが、例えば、約40℃~80℃または50℃~70℃の温度範囲内であってもよい。
【0023】
前記硬化性組成物は、1液型硬化性組成物または2液型硬化性組成物であってもよい。1液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が全部混合された状態で保管される組成物であり、2液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が物理的に分離した状態で保管される組成物である。2液型硬化性組成物は、通常、いわゆる主剤パーツと硬化剤パーツを含み、硬化のためには、前記主剤および硬化剤パーツが混合される。本発明の一例による硬化性組成物が2液型硬化性組成物である場合には、前記硬化性組成物は、前記2液型硬化性組成物の主剤パーツまたは硬化剤パーツであってもよく、または、前記主剤パーツおよび硬化剤パーツの混合物であってもよい。
【0024】
前記本発明の硬化性組成物によって形成された硬化体は、所定の温度範囲で潜熱(latent heat)を示すことができる。用語「潜熱」は、通常、任意の物質が温度変化なしに相転移(Phase transition)を起こすのに必要な熱量と定義される。しかしながら、本発明の前記硬化体が前記潜熱を示すときに、必ず全体的に相転移を起こさなければならないわけではない。本発明の一例による硬化性組成物の硬化体に対する潜熱は、前記硬化体の少なくとも一部または前記硬化体が含む成分の状態変化の過程で発生し得る。
【0025】
本発明の硬化性組成物の硬化体が所定の温度範囲で潜熱を示すというのは、実施例の記載方式(実施例の潜熱測定項目)によるDSC(Differential Scanning Calorimeter)分析で前記硬化体が所定の温度範囲で吸熱ピークを示すことを意味する。本発明の一例による硬化性組成物の硬化体が前記潜熱を示す過程は、等温過程(isothermal process)でありうる。したがって、前記硬化体は、発熱する製品に適用され、前記製品の温度を均一に維持しつつ、前記熱を制御することができ、1つの製品から発生した異常発熱、爆発および/または発火が隣接する他の製品に及ぼす影響を最小化または防止することができる。
【0026】
本発明の硬化性組成物の硬化体が示す潜熱の下限は、30J/g、32.5J/g、35J/g、37.5J/g、40J/g、42.5J/g、45J/g、47.5J/g、50J/g、52.5J/g、55J/g、57.5J/g、60J/g、61J/gまたは62J/g程度であってもよく、その上限は、200J/g、195J/g、190J/g、185J/g、180J/g、175J/g、170J/g、165J/g、160J/g、155J/g、150J/g、145J/g、140J/g、135J/g、130J/g、125J/g、120J/g、115J/g、110J/g、105J/g、100J/g、95J/g、90J/g、85J/g、80J/g、75J/g、70J/g、65J/g、60J/g、55J/g、50J/g、45J/gまたは40J/g程度であってもよい。前記潜熱は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲であってもよい。
【0027】
前記硬化体は、所定の温度範囲で前記潜熱を示すことができる。硬化体が潜熱を示す温度区間を本明細書において潜熱区間と呼ぶことができる。潜熱区間は、潜熱区間終了温度から潜熱区間開始温度を抜いた範囲内であってもよい。
【0028】
前記で潜熱区間開始温度は、前記DSC分析で吸熱ピークの開始地点における温度であり、具体的には、前記吸熱ピークのleft onsetの変曲点における温度である。前記で潜熱区間終了温度は、前記DSC分析で吸熱ピークの終了地点における温度であり、具体的には、前記吸熱ピークのright onsetの変曲点における温度である。DSC分析では、吸熱ピークが2個以上複数個確認される場合には、前記潜熱区間開始温度は、前記複数個の吸熱ピークのうち最初に確認される吸熱ピークの開始地点における温度(前記最初に確認される吸熱ピークのleft onsetの変曲点における温度)であり、前記潜熱区間終了温度は、前記複数個の吸熱ピークのうち最後に確認される吸熱ピークの終了地点における温度(前記最後に確認される吸熱ピークのright onsetの変曲点における温度)である。
【0029】
1つの例示において、前記硬化体の潜熱区間開始温度の下限は、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃または55℃程度であってもよく、その上限は、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃または25℃程度であってもよい。前記潜熱区間開始温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0030】
1つの例示において、前記硬化体の潜熱区間終了温度の下限は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃または60℃程度であってもよい。前記潜熱区間終了温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0031】
このような前記硬化体の前記潜熱区間の幅(潜熱区間終了温度-潜熱区間開始温度)の下限は、5℃、5.5℃、6℃、6.5℃、7℃、7.5℃、8℃、8.5℃、9℃、9.5℃、10℃、12℃、14℃、15℃、16℃、18℃、19℃、20℃、25℃、30℃または35℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃または20℃程度であってもよい。前記潜熱区間の幅は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0032】
前記潜熱特性を有する硬化体は、様々な発熱製品に適用され、当該製品を安定的かつ均一な温度範囲で作動させることができる。また、前記硬化体は、相対的に隣接して配置されている複数の発熱素子を含む製品に適用され、全体的な製品の温度を均一に維持することができ、いずれか1つの素子における異常発熱、発火および/または爆発が他の素子に及ぼす影響を最小化または防止することができる。特に前記潜熱特性を示す硬化性組成物の硬化体は、駆動温度が略15℃~60℃の範囲内で維持されるべき製品(例えば、二次電池またはそれを複数個含むバッテリーモジュールやバッテリーパックなど)に適用され、効率的に熱を制御することができる。
【0033】
本発明の硬化性組成物の硬化体は、前記潜熱特性を長期間安定的に維持することができる。前記硬化性組成物は、当該硬化体が前記潜熱特性を示すようにするために、相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んでもよい。相転移物質としては、固体(solid)から液体(liquid)への相転移(phase change)、液体(liquid)から気体(vapor)への相転移(phase change)、および/または固体(solid)から気体(vapor)への相転移(phase change)過程で吸熱する物質であってもよい。
【0034】
1つの例示において、前記相転移物質としては、固体(solid)から液体(liquid)への相転移過程で吸熱する物質が使用できる。このような物質は、吸熱後に液相に転移するので、漏液などによって硬化体で消失し得る、その結果、硬化体の吸熱特性も経時的に消失し得る。本発明では、硬化体を形成する硬化性組成物に含まれる樹脂成分の選択、架橋度の調節、前記相転移物質の種類および割合の調節および/または硬化性組成物の製造方法の調節を通じて硬化体内の相転移物質が液相に転移した後にも、硬化体内で消失しないようにすることができ、したがって、前記潜熱特性を長期間安定的に維持することができる。
【0035】
本発明の一例による硬化性組成物の硬化体は、下記式1のLRが所定の範囲内であってもよい。例えば、前記LRの上限は、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%または0.5%程度であってもよく、その下限は、0%または0.01%程度であってもよい。前記LRは、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0036】
[式1]
LR=100×(m1-m2)/m1
【0037】
式1中、m1は、前記硬化体の初期重量である。この初期重量は、前記m2を測定する前の前記硬化体の重量である。式1中、m2は、前記硬化体(初期重量m1の硬化体)を80℃で24時間維持した後の前記硬化体の重量である。前記80℃で24時間の維持は、例えば、前記硬化体をフィルターペーパー(filter paper)上に位置させた状態で行われ得る。前記m1およびm2の単位は、互いに同一であり、例えば、gであってもよい。
【0038】
通常、相転移物質は、吸熱過程で液体に転移し、一般的な相転移物質の吸熱開始温度が80℃未満なので、80℃で24時間維持される場合に、相当量の相転移物質の消失が予想される。しかしながら、本発明では、硬化体内で相転移物質を長期間安定的に維持することができ、したがって、前記範囲のLRを示すことができる。
【0039】
特に本発明では、相転移物質として非カプセル化した相転移物質を主成分として含む場合にも、前記特性を示すことができる。
【0040】
例えば、前記硬化体内に含まれる相転移物質の全重量を基準とする前記非カプセル化した相転移物質の割合の下限は、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%程度であってもよい。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。このような割合で非カプセル化した相転移物質を含む状態で前記特性を確保することができる。
【0041】
本発明の一例による硬化性組成物の硬化体は、下記式2によるMLが所定の範囲内にありえる。前記MLの上限は、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%または0.6%程度であってもよく、その下限は、0%または0.01%程度であってもよい。前記MLは、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0042】
[式2]
ML=100×(m3-m4)/(m3×m5)
【0043】
式2中、m3は、前記硬化体の初期重量を意味し、これは、下記のように硬化体を常温で水(例えば、蒸留水)に96時間維持する前の重量である。式2のm4は、前記初期重量m3の硬化体を常温で水(例えば、蒸留水)に96時間浸漬した後に測定した重量であり、m5は、前記硬化体に含まれた相転移物質の重量比である。前記m3およびm4の単位は、互いに同一であり、例えば、gであってもよい。また、前記m5の単位は、重量%であり、前記硬化体の全重量に対して前記硬化体に含まれた相転移物質の重量の百分率である。この際、前記m5を測定するための硬化体は、前記重量m3の硬化体(すなわち、常温で水(例えば、蒸留水)に96時間浸漬する前の硬化体)であってもよい。また、前記m5の計算に適用される相転移物質の重量は、硬化体に存在する全体前記相転移物質の重量であり、したがって、硬化体が前記極性結晶性相転移物質のみを含む場合、該極性結晶性相転移物質のみの重量を基準として前記m5が定められ、硬化体が前記極性結晶性相転移物質と他の相転移物質を共に含む場合、該極性結晶性相転移物質と他の相転移物質の全体重量を基準として前記m5が定められ得る。また、前記m4は、前記硬化体を水から取り出した後に水気を除去した後に測定した重量であってもよい。
【0044】
本発明の硬化体は、前記相転移物質として、後述する極性結晶性相転移物質を適用した場合にも、前記式2のMLが前記範囲内となるようにすることができる。極性結晶性相転移物質は、本発明において要求される好適な吸熱特性を示すのに有利であるが、極性を有するので、水に相溶性が良く、したがって、水と接触すれば容易に消失し得る。しかしながら、本発明では、極性結晶性相転移物質を適用した場合、特に非カプセル化した極性結晶性相転移物質を適用した場合にも、前記特性を示すことができる。
【0045】
例えば、前記硬化体内に含まれる相転移物質の全重量を基準とする前記極性結晶性相転移物質または前記非カプセル化された極性結晶性相転移物質の割合の下限は、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%または70重量%程度であってもよい。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。このような割合で前記極性結晶性相転移物質または前記非カプセル化した極性結晶性相転移物質を含む状態で前記特性を確保することができる。
【0046】
このような特性は、硬化体の架橋ネットワークおよび/または前記ネットワークを構成する樹脂成分の分子量特性を調節して達成することができる。通常、架橋ネットワークの架橋度が高い場合、および/または前記樹脂成分の分子量が大きい場合に、相転移物質を維持する特性が高くなり、その結果、前記相転移物質が液相になる場合、および/または水と接触する場合にも、当該物質の消失を効果的に抑制することができる。しかしながら、架橋ネットワークの架橋度が過度に高かったり、前記樹脂成分の分子量が過度に大きい場合には、硬化体の柔軟性や弾性が相対的に劣るので、耐衝撃性や耐振動性が要求される場合に適していない。
【0047】
本発明では、後述する硬度および/または弾性特性を有するように硬化体の架橋度を制御することによって、前記特性を全部満たすことができる。
【0048】
本発明の一例による硬化性組成物の硬化体のショアA(Shore A)硬度を調節することができる。例えば、前記ショアA硬度の上限は、10、9.9、9.8、9.7、9.6、9.5、9.4、9.3、9.2、9.1、9.0、8.5、8、7.5、7、6.5または6程度であってもよく、その下限は、0.01、0.1、0.5、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5または9程度であってもよい。前記ショアA硬度は、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0049】
硬化体の硬度は、前記硬化体を構成する樹脂成分の種類および/または架橋度によって定められる。本発明では、前記硬化体が前記範囲の硬度を示すことができるように架橋ネットワークを構成し、これを通じて、前記相転移物質を安定的に維持できるネットワークを提供することができる。また、前記範囲内の硬度は、硬化性組成物の硬化体が複雑な形状の空間を安定的に充填することができ、耐振動性や耐衝撃性をも向上させることができる。
【0050】
本発明の一例による硬化性組成物の硬化体は、下記式3のTanδが所定の範囲内にありえる。例えば、下記Tanδの下限は、0.01、0.05、0.1、0.15、0.16、0.18、0.2、0.22、0.25、0.3、0.35または0.4程度であってもよく、その上限は、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.25または0.25程度であってもよい。前記Tanδは、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0051】
[式3]
Tanδ= G”/G’
【0052】
式3のG’は、前記硬化体の常温における貯蔵弾性率(storage modulus)であり、G”は、前記硬化体の常温における損失弾性率(loss modulus)である。このような貯蔵弾性率および損失弾性率を測定する方法は、実施例に記載されている。
【0053】
式3から確認されるように、Tanδは、貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の割合である。通常、貯蔵弾性率が高いほど、硬化体は弾性体に近い挙動を示し、損失弾性率が高いほど、硬化体は粘性体や液体に近い挙動を示す。前記G’およびG”の割合を有する硬化体が本発明において目的とする特性を示すことができる。
【0054】
前記硬化体の常温における貯蔵弾性率(すなわち、式3のG’)の下限は、0.2MPa、0.21MPa、0.22MPa、0.23MPa、0.24MPa、0.25MPa、0.26MPa、0.27MPa、0.28MPa、0.29MPa、0.3MPaまたは0.31MPa程度であってもよく、その上限は、10MPa、9MPa、8MPa、7MPa、6MPa、5MPa、4MPa、3MPa、2MPa、1MPa、0.9MPa、0.8MPa、0.7MPa、0.6MPa、0.5MPa、0.4MPa、0.3MPa、0.29MPa、0.28MPaまたは0.27MPa程度であってもよい。前記貯蔵弾性率は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。前記G’を有する硬化体が本発明において目的とする特性を示すことができる。
【0055】
前記硬化体の硬度および/または弾性特性は、硬化体の架橋ネットワークを調整して達成することができる。ただし、一般的な樹脂成分のみの硬化では、前記特性の硬化体の達成が困難である。本発明では、前記架橋ネットワークを形成する樹脂成分の種類、前記相転移物質の種類、前記硬化性組成物の製造方法および/または前記硬化性組成物の硬化方法の調整を通じて前記目的とする架橋ネットワークを達成することができる。
【0056】
このような本発明の架橋ネットワークは、semi-IPN(Interpenetrating Polymer Network)と呼ばれることができる。Semi-IPNは、前記架橋ネットワークが前記樹脂成分の架橋構造を含み、また、前記相転移物質間の相互作用および/または前記相転移物質と前記樹脂成分の架橋構造との相互作用によって形成された構造をさらに含むことを意味する。このようなsemi-IPN構造は、樹脂成分の種類、前記相転移物質の種類、前記硬化性組成物の製造方法および/または前記硬化性組成物の硬化方法の調整を通じて達成することができる。
【0057】
なお、本発明の一例による前記硬化体は、UL94V測定基準によって測定された難燃性評価結果がV-0またはV-1等級であってもよい。これを通じて、複数の素子のうちでいずれか1つの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合にも、そのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化することができるように、優れた難燃性を確保することができる。
【0058】
前記硬化性組成物は、樹脂成分を含んでもよい。このような樹脂成分は、硬化が可能な硬化性樹脂成分であってもよい。用語「硬化性樹脂成分」の範疇には、それ自体がいわゆる樹脂成分である場合はもちろん、硬化反応後に樹脂成分を形成できる成分も含まれる。したがって、前記硬化性樹脂成分は、単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0059】
本発明では、前記樹脂成分として、所定の重量平均分子量(Mw,Weight Average Molecular Weight)を有する成分を使用することができる。例えば、前記樹脂成分の前記重量平均分子量の下限は、9000g/mol、10000g/mol、15000g/mol、20000g/molまたは25000g/mol程度であってもよく、その上限は、100000g/mol、90000g/mol、80000g/mol、70000g/mol、60000g/mol、50000g/mol、40000g/molまたは30000g/mol程度であってもよい。前記重量平均分子量は、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲であってもよい。このような分子量特性を有する樹脂成分は、組成物内の成分、例えば、目的とする架橋ネットワークの硬化体の形成に有利である。
【0060】
樹脂成分の種類には特別な制限はない。一例示において、前記樹脂成分は、ウレタン樹脂成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分であってもよい。前記ウレタン樹脂成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分は、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂であってもよく、または硬化反応を経て前記ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を形成する成分であってもよい。適用可能な樹脂成分の具体的な種類には特別な制限がなく、公知のウレタン樹脂成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分のうちで前述したような分子量特性を示すものを選択して使用することができ、このような樹脂成分の架橋度を制御することによって、最終硬化体の架橋ネットワークなどを制御することもできる。特に後述する相転移物質、特に結晶性極性相転移物質と共に前記semi-IPN構造を効果的に形成できるという点から、シリコーン樹脂成分またはウレタン樹脂成分を使用することができる。
【0061】
例えば、前記樹脂成分がシリコーン樹脂成分である場合、前記成分は、付加硬化性シリコーン樹脂成分として、(1)分子中に2個以上のアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンおよび(2)分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンを含んでもよい。前記化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応によって硬化体を形成することができる。
【0062】
前記(1)ポリオルガノシロキサンは、少なくとも2個のアルケニル基を含む。この際、アルケニル基の具体的な例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、これらのうち、ビニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニル基の結合位置は、特に限定されない。例えば、前記アルケニル基は、分子鎖の末端および/または分子鎖の側鎖に結合していてもよい。また、前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニルの他に含まれ得る置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうち、メチル基またはフェニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。
【0063】
前記(1)ポリオルガノシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いずれの形状でも有することができる。通常、上記のような分子構造のうち特に直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに限らない。
【0064】
前記(1)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R1
2SiO2/2で表されるシロキサン単位とR1
2R2SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R1
2R2SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R1R2SiO2/2で表されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはR2SiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体および上記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。上記で、R1は、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。また、上記で、R2は、アルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などであってもよい。
【0065】
前記付加硬化性シリコーン組成物において、(2)ポリオルガノシロキサンは、前記(1)ポリオルガノシロキサンを架橋させる役割を行うことができる。前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、水素原子の結合位置は、特に限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または側鎖に結合していてもよい。また、前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれ得る置換基の種類は、特に限定されず、例えば、(1)ポリオルガノシロキサンにおいて言及したような、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうち、通常、メチル基またはフェニル基が適用されるが、これに制限されるものではない。
【0066】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いずれの形状でも有することができる。上記のような分子構造のうち通常直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに制限されるものではない。
【0067】
前記(2)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R1
3SiO1/2で表されるシロキサン単位とR1
2HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R1
2HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R1HSiO2/2で表されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体および上記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。上記で、R1は、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。
【0068】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの含有量は、適切な硬化が行われ得る程度に含まれると、特に限定されない。例えば、前記(2)ポリオルガノシロキサンは、前述した(1)ポリオルガノシロキサンに含まれるアルケニル基1個に対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれ得る。このような範囲で硬化を十分に進行させ、耐熱性を確保することができる。
【0069】
前記付加硬化性シリコーン樹脂成分は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物をさらに含んでもよい。このような白金または白金化合物の具体的な種類は、特別な制限はない。触媒の割合も、適切な硬化が行われ得るレベルに調節されればよい。
【0070】
他の例示において、前記シリコーン樹脂成分は、縮合硬化性シリコーン樹脂成分として、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマーと、(b)水酸基含有シロキサンポリマーと、を含んでもよい。
【0071】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0072】
[化学式1]
R1
aR2
bSiOc(OR3)d
【0073】
化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、R3は、アルキル基を示し、R1、R2およびR3がそれぞれ複数個存在する場合には、互いに同じでも異なっていてもよく、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上、1未満の数を示し、a+bは、0超過かつ2未満の数を示し、cは、0超過かつ2未満の数を示し、dは、0超過かつ4未満の数を示し、a+b+c×2+dは、4である。
【0074】
化学式1の定義において、1価の炭化水素基は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであってもよく、この際、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などであってもよい。また、化学式1の定義において、1価の炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0075】
化学式1の定義において、R3のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基のうち、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これらに制限されるものではない。
【0076】
化学式1のポリマー中、分岐状または3次架橋されたシロキサンポリマーを使用することができる。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損傷させない範囲内で、具体的には、脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0077】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能アルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野における平均的技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーによって適切な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択することができ、それを使用した加水分解および縮合反応の条件をも容易に制御することができる。なお、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的に応じて、適切な一官能性アルコキシシランを併用使用することもできる。
【0078】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GE東レ・シリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などの、市販のオルガノシロキサンポリマーを使用することができる。
【0079】
前記縮合硬化性シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記化学式2で示される化合物を使用することができる。
【0080】
【0081】
化学式2中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子または置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、R4およびR5がそれぞれ複数個存在する場合には、上記は、互い同じでも異なっていてもよく、nは、5~2,000の整数を示す。
【0082】
化学式2の定義において、1価の炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化学式1の場合と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0083】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野における平均的技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーによって適切なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択することができ、それを使用した加水分解および縮合反応の条件をも容易に制御することができる。上記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レ・シリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などの、市販の二官能性オルガノシロキサンポリマーを使用することができる。
【0084】
上記に記述した付加硬化型あるいは縮合硬化型シリコーン組成物は、本発明において適用されるシリコーン樹脂成分の1つの例示である。
【0085】
他の例示において、樹脂成分がウレタン樹脂成分であれば、前記成分は、少なくともポリオールとポリイソシアネートを含んでもよい。上記で、ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を含む化合物であり、ポリイソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を含む化合物である。このような化合物は、それぞれ、単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0086】
ポリオールの種類には、大きな制限はなく、例えば、公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを適用することができる。上記で、ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール部分の炭素数が1~20、1~16、1~12、1~8または1~4のポリアルキレングリコールや、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体系ポリオール、PTME(poly(tetramethylene glycol))、PHMG(poly(hexamethylene ether glycol))などが知られている。また、前記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸とグリコールから合成されるポリオールであり、前記二塩基酸単位およびグリコール単位を含むポリエステルポリオールまたはポリカプロラクトンポリオール(環状ラクトンの開環重合から得られる)などが知られている。また、上記のようなポリオールの他にも、カーボネート系ポリオール、植物性ポリオールひまし油、HTPB(Hydroxyl-terminated polybutadiene)やHTPIB(Hydroxyl-terminated polyisobutylene)などの炭化水素系のポリオールも知られている。前記のような公知のポリオールのうちで適切な種類を選択して使用することができる。また、前記ポリイソシアネートとして、公知の芳香族または脂肪族ポリイソシアネート化合物のうちで適正な種類を選択して使用することができる。
【0087】
硬化性組成物の全重量を基準とする前記樹脂成分の割合の下限は、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%または80重量%程度であってもよく、その上限は、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、40重量%、35重量%または30重量%程度であってもよい。このような割合は、硬化性組成物の全重量を基準とするものであり、ただし、硬化性組成物が溶媒を含む場合に、前記溶媒を除いた硬化性組成物の全重量を基準とする割合である。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0088】
前記硬化性組成物は、前述した潜熱特性を確保するために、いわゆる相転移物質(PCM:Phase Change Material)をさらに含んでもよい。相転移物質は、よく知られているように、相転移(phse transition)過程で吸熱または発熱する物質である。前記相転移過程は、一般的に等温過程(isothermal process)である。
【0089】
前記相転移物質が吸熱または発熱する相転移は、固体から固体への相転移、固体から液体への相転移、固体から気体への相転移または液体から気体への相転移であってもよい。上記に記述された相転移反応(固体→固体、固体→液体、固体→気体、液体→気体)は、吸熱反応であってもよい。効率の観点から、固体から液体に相転移する物質が有利であるが、このような物質は、相転移後に液相となるので、硬化体内で維持しにくい。しかしながら、本発明の硬化体は、前述した重量変化率を示し、したがって、固体から液体に相転移する物質を適用することができる。これによって、本発明において適用する相転移物質は、固相および液相の間で相転移が起こる物質であってもよく、前記固相から液相への相転移反応が吸熱反応である物質であってもよい。
【0090】
硬化性組成物内で前記樹脂成分100重量部に対して前記相転移物質の重量比の下限は、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部または95重量部程度であってもよく、その上限は、200重量部、190重量部、180重量部、170重量部、160重量部、150重量部、140重量部、130重量部、120重量部、110重量部、100重量部、90重量部、80重量部、70重量部または65重量部程度であってもよい。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0091】
前述したsemi-IPN構造の達成のために、前記相転移物質としては、結晶性極性相転移物質を使用することができる。相転移物質が極性というのは、前記相転移物質が極性官能基を含むことを意味し、このような極性官能基の種類としては、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド残基(例えば、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキレンオキシド残基)および/またはカルボキシル基などがあり、特に前記ヒドロキシ基および/またはアルキレンオキシド残基(例えば、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキレンオキシド残基)を含む相転移物質を適用することができる。このような極性官能基によって、前記相転移物質は、前記樹脂成分またはその架橋構造および/または他の相転移物質と物理的または化学的相互作用をすることができ、これによって、前記semi-IPNを具現することができる。前記相転移物質が含む前記極性官能基の数の下限は、1個または2個程度であってもよく、その上限は、100個、95個、90個、85個、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、15個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個程度であってもよい。前記極性官能基の数は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0092】
なお、前記相転移物質が結晶性というのは、後述する実施例のDSC分析で前記相転移物質が所定範囲の融点を示すことを意味する。したがって、非結晶性の物質は、前記融点を有しない。
【0093】
本明細書において用語「結晶性極性相転移物質」と「極性結晶性相転移物質」は、同じ意味である。
【0094】
このような結晶性極性相転移物質の前記融点(Tm,melting point)の下限は、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、3.5℃、4℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃程度であってもよく、その上限は、95℃、90℃、85℃、80℃、79℃、78℃、77℃、76℃、75℃、74℃、73℃、72℃、71℃または70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記融点は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0095】
効率的な前記semi-IPNの形成のために、前記極性結晶性相転移物質としては、一定レベル以上の分子量を有する物質を使用することができる。例えば、前記極性結晶性相転移物質の数平均分子量(Mn,number average molecular weight)の下限は、1,000g/mol、1,200g/mol、1,400g/mol、1,600g/mol、1,800g/mol、2,000g/mol、2,500g/mol、3,000g/mol、3,500g/mol、3,800g/molまたは4,000g/mol程度であってもよく、その上限は、10,000g/mol、9,500g/mol、9,000g/mol、8,500g/mol、8,000g/mol、7,500g/mol、7,000g/mol、6,500g/mol、6,000g/mol、5,500g/mol、5,000g/mol、4,500g/molまたは4,000g/mol程度であってもよい。前記数平均分子量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
このようなレベルで数平均分子量を有する物質は、前記物理的または化学的相互作用によるsemi-IPN構造が効果的に形成され、そのような構造が目的とするレベルの硬度や弾性特性を示すようにすることができる。また、前記範囲の数平均分子量を満たす場合には、前記物質の融点が発熱製品の正常稼動温度範囲との関係で好適なレベルに形成されることができ、これによって、発熱製品に適用されるとき、発熱による前記製品の寿命低下問題を効果的に防止することができる。
【0096】
効果的なsemi-IPN構造の形成のためには、前記物質としては、線状構造を有する物質を適用することができる。
【0097】
前記のような極性結晶性相転移物質の種類には、特別な制限がなく、例えば、ポリアルコール(polyalcohol)を使用することができる。用語「ポリアルコール」は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物を意味する。前記ポリアルコールが含むヒドロキシ基の数の下限は、2個程度であってもよく、その上限は、100個、95個、90個、85個、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、15個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個程度であってもよい。前記ヒドロキシ基の数は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0098】
このようなポリアルコール、特に前記数平均分子量を有する線状のポリアルコールは、目的とする潜熱特性を示しながらも、前記semi-IPNが効果的に形成されるようにすることができる。ポリアルコールの具体的な例としては、グリセリン(glycerin)、ポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)などのポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)(例えば、アルキレングリコール部分の炭素数が1~20、1~16、1~12、1~8または1~4の範囲内のポリアルキレングリコール)、キシリトール(xylitol)およびエリトリトール(erythritol)からなる群から選ばれた1つ以上を例示することができる。前述した範囲の数平均分子量の確保が容易であるという観点から、前記ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)を適用することができ、特に線状構造の前記ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)を適用することができる。
【0099】
このような結晶性極性相転移物質が示す潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、155J/g、160J/g、165J/g、170J/g、175J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、190J/g、180J/g、170J/gまたは165J/g程度であってもよい。前記潜熱は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0100】
なお、前記結晶性極性相転移物質の潜熱区間開始温度の下限は、20℃、30℃、40℃、45℃、50℃または55℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃または60℃程度であってもよい。前記温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。なお、前記潜熱区間開始温度の定義は、前記硬化体の潜熱区間開始温度と同じである。
【0101】
前記結晶性極性相転移物質の潜熱区間終了温度の上限は、200℃、150℃、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃または70℃程度であってもよく、その下限は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃または65℃程度であってもよい。前記温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。なお、前記潜熱区間終了温度の定義は、前記硬化体の潜熱区間終了温度と同じである。
【0102】
前記結晶性極性相転移物質の潜熱区間の幅(潜熱区間終了温度-潜熱区間開始温度)の下限は、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または9.5℃程度であってもよく、その上限は、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃または10℃程度であってもよい。前記幅は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0103】
前述した極性結晶性相転移物質と知られている物質のうち、前記数平均分子量、線状構造および/または潜熱特性を有する物質を選択することができる。
【0104】
前記semi-IPNの形成のために、前記極性結晶性相転移物質の含有量を制御すことができる。例えば、硬化性組成物または前記硬化体内に含まれる相転移物質の全重量を基準とする前記極性結晶性相転移物質の割合の下限は、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%または70重量%程度であってもよい。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。このような割合で含まれた前記極性結晶性相転移物質は、前述したsemi-IPNを効果的に形成する。Semi-IPNの形成のために、前記結晶性極性相転移物質は、非カプセル化した物質であってもよい。
【0105】
前記硬化性組成物は、相転移物質として、前記結晶性極性相転移物質とは異なる相転移物質をさらに含んでもよい。このような相転移物質は、便宜上、第2相転移物質と呼ばれる。第2相転移物質としては、例えば、脂肪酸、ケトン化合物、D-乳酸(D-lactic acid)およびパラフィン化合物からなる群から選ばれた1つ以上を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0106】
前記で脂肪酸(Fattic acid)としては、ギ酸(formic acid)、n-オクタン酸(n-octanoic acid)、ラウリン酸(lauric acid)またはパルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)などを例示することができ、前記ケトン化合物としては、2-ペンタデカノン(2-pentadecanone)または4-ヘプタデカノン(4-heptadekanone)などを例示することができ、前記パラフィン化合物としては、n-ヘプタデカン(n-heptadecane)、n-オクタデカン(n-octadecane)、n-ノナデカン(n-nonadecane)、n-エイコサン(n-eicosane)、n-ヘニコサン(n-henicosane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、n-オクタコサン(n-octacosane)、n-ノナコサン(n-nonacosane)、n-トリアコンタン(n-triacontane)、n-ヘントリアコンタン(n-hentriacontane)、n-ドトリアコンタン(n-dotriacontane)、n-トリアトリアコンタン(n-triatriacontane)またはその他高次パラフィン(Paraffin C16~C18、Paraffin C13~C24、RT 35 HC、Paraffin C16~C28、Paraffin C20~C33,Paraffin C22~C45、Paraffin C22~C50、Paraffin natural wax 811、Paraffin natural wax 106など)などを例示することができる。
【0107】
前記第2相転移物質としては、例えば、炭素数が5以上のパラフィンを使用することができる。前記パラフィンの炭素数は、他の例示において5~40の範囲内であってもよい。このようなパラフィンは、前記炭素数を有するアルカン(alkane)であってもよい。
【0108】
適用される場合に、前記第2相転移物質の融点(Tm,melting point)の下限は、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、3.5℃、4℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃程度であってもよく、その上限は、95℃、90℃、85℃、80℃、79℃、78℃、77℃、76℃、75℃、74℃、73℃、72℃、71℃または70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記融点は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0109】
適用される場合に、前記第2相転移物質が示す潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、155J/g、160J/g、165J/g、170J/g、175J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、190J/g、180J/g、170J/g、165J/g、160J/gまたは155J/g程度であってもよい。前記潜熱は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0110】
前記第2相転移物質の潜熱区間開始温度の下限は、10℃、15℃、20℃、30℃、35℃または40℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃または45℃程度であってもよい。前記温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。なお、前記潜熱区間開始温度の定義は、前記硬化体の潜熱区間開始温度と同じである。
【0111】
前記第2相転移物質の潜熱区間終了温度の上限は、200℃、150℃、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよく、その下限は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃または45℃程度であってもよい。前記温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
なお、前記潜熱区間終了温度の定義は、前記硬化体の潜熱区間終了温度と同じである。
【0112】
前記第2相転移物質の潜熱区間の幅(潜熱区間終了温度-潜熱区間開始温度)の下限は、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または9.5℃程度であってもよく、その上限は、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃、9℃、8℃、7.5℃、7℃、6℃または5.5℃程度であってもよい。前記幅は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0113】
適用される場合に、前記第2相転移物質としては、前述したsemi-IPN構造の形成効率を考慮して、非極性相転移物質を使用することができる。用語「非極性相転移物質」は、前述した極性相転移物質が有する極性官能基を有しない相転移物質を意味する。
【0114】
目的とする吸熱特性を達成し、所望のsemi-IPNを効果的に形成するために、含まれる場合に、前記第2相転移物質の特性が前記非結晶極性相転移物質との関係で調節され得る。
【0115】
例えば、含まれる場合に、前記非結晶極性相転移物質の融点と前記第2相転移物質の融点の差の絶対値を調節することができる。前記絶対値の下限は、5℃、7℃、9℃、11℃、13℃、15℃、17℃、19℃、21℃、23℃または25℃程度であってもよく、その上限は、60℃、48℃、46℃、44℃、42℃、40℃、38℃、36℃、34℃、32℃、30℃、28℃、26℃、24℃、22℃または20℃程度であってもよい。前記絶対値は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。前記非結晶性極性相転移物質および前記第2相転移物質がそれぞれ複数個存在する場合に、前記絶対値は、前記非結晶性極性相転移物質の融点のうち最も低い融点と前記第2相転移物質の融点のうち最も高い融点との差または前記非結晶性極性相転移物質の融点のうち最も高い融点と前記第2相転移物質の融点のうち最も低い融点との差であってもよい。前記の場合に、前記第2相転移物質は、前記非結晶性極性相転移物質に対して低い融点または高い融点を有していてもよい。
【0116】
例えば、含まれる場合に、前記非結晶極性相転移物質の潜熱区間開始温度と前記第2相転移物質の潜熱区間開始温度との差の絶対値を調節することができる。前記絶対値の下限は、5℃、7℃、9℃、11℃、13℃、15℃、17℃、19℃、21℃、23℃または25℃程度であってもよく、その上限は、60℃、48℃、46℃、44℃、42℃、40℃、38℃、36℃、34℃、32℃、30℃、28℃、26℃、24℃、22℃または20℃程度であってもよい。前記絶対値は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。前記非結晶性極性相転移物質および前記第2相転移物質がそれぞれ複数存在する場合に、前記絶対値は、前記非結晶性極性相転移物質の潜熱区間開始温度のうち最も低い潜熱区間開始温度と前記第2相転移物質の潜熱区間開始温度のうち最も高い潜熱区間開始温度との差または前記非結晶性極性相転移物質の潜熱区間開始温度のうち最も高い潜熱区間開始温度と前記第2相転移物質の潜熱区間開始温度のうち最も低い潜熱区間開始温度との差であってもよい。前記の場合に、前記第2相転移物質は、前記非結晶性極性相転移物質と比べて、低い潜熱区間開始温度または高い潜熱区間開始温度を有していてもよい。
【0117】
前記第2相転移物質は、硬化性組成物に含まれていないか、あるいは、含まれる場合に、前記semi-IPNの形成効率を考慮して、その含有量を制御することができる。例えば、前記第2相転移物質の前記結晶性極性相転移物質100重量部に対する含有量の下限は、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部または50重量部程度であってもよく、その上限は、100重量部、90重量部、80重量部、70重量部、60重量部または55重量部程度であってもよい。前記含有量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。このような範囲で前記第2相転移物質は、含まれる場合に、前記semi-IPNの形成を阻害することなく、硬化体の吸熱特性を目標レベルに調節することができる。
【0118】
前記硬化性組成物は、任意の成分として、フィラー、例えば、熱伝導性フィラーを含んでもよい。このようなフィラーは、部品から発生する熱を前記相転移物質に効率的に伝達し、目的とする吸熱特性を安定的に確保することができる。
【0119】
熱伝導性フィラーとしては、特に制限されず、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、ベーマイト(AlOOH)およびハイドロマグネサイトなどの金属水酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ベリリウム(BeO)、マグネシアおよびアルミナ(Al2O3)などの金属酸化物、窒化アルミニウム(AlN,aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN,boron nitride)および窒化ケイ素(Si3N4、silicon nitride)などの窒化物および炭化ケイ素(SiC)などの無機フィラーなどを使用することができるが、これらに制限されるものではない。前記フィラーのうち1種または2種以上を選択することができる。低密度の硬化体を形成しようとする場合には、前記フィラー成分のうち比重が小さいフィラーを選択することができ、例えば、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を選択することができる。
【0120】
前記フィラーの形態は、特別な制限がなく、例えば、球状、針状、板状、その他無定形フィラーを使用することができる。
【0121】
1つの例示において、前記フィラーとしては、平均粒径が10μm~200μmの範囲内にあるフィラーを使用することができる。前記平均粒径は、後述する実施例に記載された方式で測定したD50粒径である。このような粒径のフィラーの適用を通じて、目的とする効果をさらに効率的に確保することができる。
【0122】
前記フィラーの平均粒径は、他の例示において、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上または40μm以上であるか、または180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下または50μm以下程度であってもよい。
【0123】
硬化性組成物内で前記熱伝導性フィラーの含有量は、目的によって調節される。例えば、硬化性組成物は、前記熱伝導性フィラーを前記樹脂成分100重量部に対して50~200重量部の範囲内に含んでもよい。他の例示において、前記硬化性組成物は、前記熱伝導性フィラーを前記樹脂成分100重量部に対して60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上または95重量部以上であるか、または190重量部以下、180重量部以下、170重量部以下、160重量部以下、150重量部以下、140重量部以下、130重量部以下、120重量部以下または110重量部以下で含んでもよい。
【0124】
本発明の一例による硬化性組成物は、前記成分にさらに必要な他の成分を含んでもよい。例えば、硬化性組成物は、前記成分の他に、必要な場合に、さらなる添加剤、例えば、触媒、顔料や染料、分散剤、揺変性付与剤、難燃剤などをさらに含んでもよい。
【0125】
このような硬化性組成物は、溶剤型組成物、水系組成物または無溶剤型組成物であってもよく、好適には、無溶剤型組成物であってもよい。
【0126】
前記硬化性組成物は、前述したように、1液型組成物であってもよく、2液型組成物であってもよく、場合によっては、2液型組成物の主剤または硬化剤パーツであってもよく、あるいは、前記主剤および硬化剤パーツの混合物であってもよい。
【0127】
硬化性組成物が2液型組成物である場合に、硬化性樹脂成分の他に、他の成分の主剤および硬化剤パーツ内での割合には特別な制限がない。例えば、前記相転移物質および/またはフィラーは、主剤または硬化剤パーツに全部含まれたり、主剤および硬化剤パーツに分けられて含まれることもできる。
【0128】
本発明の硬化性組成物は、様々な用途に好適に使用され、特に発熱製品に適用され、前記製品の熱を制御する素材に使用できる。
【0129】
本発明は、また、前記semi-IPNを有し、前記吸熱特性を示す硬化体の製造方法に関する。
【0130】
前記製造方法は、上記に記述された硬化性組成物を硬化させる段階を含んでもよい。
【0131】
この過程で前述したsemi-IPNを効果的に形成するために硬化の温度を制御することができる。例えば、前記硬化の温度は、前記硬化性組成物に含まれる極性結晶性相転移物質の融点との関係で調節することができる。すなわち、前記調節した温度下で前記相転移物質が前記semi-IPNの形成が可能な流動性を示すことができる。例えば、前記硬化温度(Tc)と前記極性結晶性相転移物質の融点(Tm)の差の絶対値の下限は、0℃、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃または2.5℃程度であってもよく、その上限は、20℃、18℃、16℃、14℃、12℃、10℃、8℃、6℃、5℃または4℃程度であってもよい。前記硬化温度と融点の絶対値と関連して硬化性組成物が非結晶性極性相転移物質を複数の種類で含む場合に、前記融点は、前記複数の極性相転移物質のうち最も高い融点を示す相転移物質の融点であってもよい。前記硬化温度と融点の差の絶対値は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0132】
前記組成物が熱硬化型、すなわち熱の印加によって硬化する類型の硬化性組成物でない場合にも、硬化は、前記硬化温度で進行されることができる。例えば、前記硬化性組成物がエネルギー線硬化型または常温硬化型などである場合にも、硬化温度(Tc)は、上記のように調節することができ、このような温度で前記semi-IPNを形成することができる。
【0133】
前記硬化温度Tcは、前記結晶性相転移物質の融点Tmと前記の差を示す限り、前記融点Tmに対して高くてもよく、または低くてもよい。
【0134】
一例示において、前記硬化温度Tcの下限は、40℃または50℃程度であってもよく、その上限は、80℃または70℃程度であってもよい。前記硬化温度Tcは、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。
【0135】
このような範囲で前記硬化性組成物を目的とする相転移物質の漏液の防止、適切な硬度の確保、適切な弾性と粘性の確保および優れた難燃性能などを有する硬化体を形成することができる。
【0136】
前記製造方法は、前記硬化性組成物を製造するために前記樹脂成分と前記相転移物質を混合する段階をさらに含んでもよい。
【0137】
この過程で前述したsemi-IPNを効果的に形成するために、前記混合の温度を制御することができる。例えば、前記混合の温度(Tx)は、前記硬化性組成物に含まれる極性結晶性相転移物質の融点(Tm)との関係で調節することができる。すなわち、前記調節した温度下で前記相転移物質が前記semi-IPNの形成が可能な流動性を示すことができる。例えば、前記混合温度(Tx)と前記極性結晶性相転移物質の融点(Tm)の差の絶対値の下限は、0℃、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、3.5℃、4℃、4.5℃、5℃、5.5℃、6℃、6.5℃または7℃程度であってもよく、その上限は、20℃、18℃、16℃、14℃、12℃、10℃、8℃、6℃、5℃または4℃程度であってもよい。前記混合温度と融点の絶対値と関連して、硬化性組成物が非結晶性極性相転移物質を複数の種類で含む場合に、前記融点は、前記複数の極性相転移物質のうち最も高い融点を示す相転移物質の融点であってもよい。前記混合温度と融点の差の絶対値は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であるか、または上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満であるか、または上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限の以上または超過であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限の以下または未満の範囲内であってもよい。このような範囲での混合を通じて、前記相転移物質は、目的とするsemi-IPNの形成に適した流動性を示すことができる。
【0138】
前記で硬化温度および/または混合温度との差の基準となる融点を有する結晶性極性相転移物質は、前述した線状構造および数平均分子量を有する相転移物質であってもよい。
【0139】
このような相転移物質は、前記樹脂成分と混合されるとき、溶融した状態で混合されてもよい。例えば、前記樹脂成分との混合前に前記相転移物質を当該融点以上の温度で維持して十分に溶融させた後に、前記樹脂成分と混合することができる。この際、相転移物質を溶融させる方法は、特に制限されず、例えば、前記相転移物質の融点以上の温度で前記相転移物質を維持して溶融させることができる。一例示において、前記相転移物質の維持温度は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上高い温度であってもよい。前記温度は、他の例示において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上または40℃以上高い温度であるか、または前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下低い温度であってもよい。
【0140】
このような温度範囲で溶融させた相転移物質と樹脂成分を混合して硬化性組成物を製造することによって、目的とする特性の硬化性組成物を効率的に製造することができる。なお、前記溶融した相転移物質と樹脂成分の混合時の温度は、前記相転移物質を溶融させた温度と同じ範囲内の温度であってもよく、あるいはそれより低い温度であってもよい。一例示において、前記混合は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上高い温度で行うことができる。前記温度は、他の例示において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上または40℃以上より高い温度であるか、または前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下より低い温度であってもよい。具体的には、前記相転移物質と樹脂成分を混合する場合、混合時の温度は、約40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上または60℃以上であるか、または150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下または70℃以下であってもよい。
【0141】
上記のように製造された硬化性組成物を前記方式で硬化させることによって、優れた難燃性はもちろん、目的とする範囲内のショアA硬度とTanδを有し、優れた耐振動性と耐衝撃性を有する硬化体を製造することができる。
【0142】
前記硬化体は、本発明の一例による硬化性組成物を硬化して得ることができる。前記硬化性組成物を硬化させて硬化体を得る方法には制限がなく、前記硬化性組成物の類型によって適切な硬化方式が適用されればよい。例えば、エネルギー線硬化型である場合、組成物に紫外線などのエネルギー線を照射する方式、湿気硬化型である場合、適切な湿気下に組成物を維持する方式、熱硬化型である場合、適切な熱を組成物に印加する方式、常温硬化型である場合、常温で組成物を維持する方式、混成硬化型である場合、2種以上の硬化方式を適用する方式などを使用することができる。前述したように、適切な例示において、前記硬化性組成物は、熱硬化型であってもよい。ただし、前記硬化は、前述した硬化温度Tcと融点Tmの差を示す温度で行われ得る。
【0143】
本発明の一例による製品は、前述した硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体を含んでもよい。本発明の一例による硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体は、発熱部品、発熱素子または発熱製品の熱を制御する素材として有用に適用することができる。したがって、前記製品は、発熱部品または発熱素子または発熱製品を含んでもよい。用語「発熱部品、素子または製品」は、使用過程で熱を発生させる部品、素子または製品を意味し、その種類は特に制限されない。代表的な発熱部品、素子または製品としては、バッテリーセル、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックなどを含む様々な電気/電子製品がある。
【0144】
本発明の一例による製品は、例えば、前記発熱部品、素子または製品と、前記発熱部品などと隣接して存在する前記硬化性組成物(または前記2液型組成物)または前記硬化性組成物の硬化体を含んでもよい。このような場合に、前述したように、前記発熱部品、素子または製品は、適正の駆動温度が略15℃~60℃の範囲内の部品、素子または製品であってもよい。すなわち、本発明の硬化性組成物は、発熱部品、素子または製品と隣接して配置され、製品の駆動温度を前記範囲内で均一に維持するのに有用である。
【0145】
本発明の一例による製品を構成する具体的な方法は、特に制限されず、本発明の硬化性組成物または前記硬化性組成物が放熱素材に適用される場合、公知の様々な方式で前記製品を構成することができる。
【0146】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックの構成時にポッティング材(potting material)に使用できる。ポッティング材は、バッテリーモジュールやバッテリーパック内の複数の単位バッテリーセルの少なくとも一部または全部と接触しつつ、これを覆っている素材であってもよい。本発明の前記硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体は、前記ポッティング材に適用されたときに、バッテリーモジュールやパックのバッテリーセルから発生する熱を制御することができ、連鎖発火または爆発などを防止することができ、前記モジュール、パックまたはバッテリーセルの駆動温度を均一に維持することができる。本発明では、また、硬化前は、粘度や揺変性が適正レベルに制御され、ポッティング効率に優れており、硬化後に不要な気泡の発生なしに安定したポッティング構造を形成する硬化性組成物を提供することができる。本発明では、硬化後に低密度を示し、体積に比べて軽量ながらも高出力のバッテリーモジュールやパックを提供できる硬化性組成物を提供することができる。本発明では、また、絶縁性などを含む要求物性にも優れた硬化性組成物を提供することができる。
【0147】
このような場合、バッテリー関連技術として、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックなどの放熱素材や車両用OBC(On Board Charger)の放熱素材として適用することができる。したがって、本発明は、また、前記硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体を放熱素材として含むバッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボード充電器(OBC)に関するものであってもよい。前記バッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボード充電器において前記硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体の適用位置や適用方法は、特に制限されず、公知の方式を適用することができる。また、本発明の硬化性組成物は、前記用途に制限されず、優れた放熱特性、保管安定性および接着力が要求される様々な用途に効果的に適用することができる。
【0148】
本発明に関する他の一例において、本発明は、前記硬化性組成物の硬化体を有する電子装備または装置に関するものであってもよい。
【0149】
電子装備または装置の種類は、特に制限されず、例えば、車両用AVN(audio video navigation)や電気自動車用OBC(On Board Charger)モジュール、LEDモジュールまたはICチップとこれを含むコンピュータやモバイル機器を例にあげることができる。
【0150】
前記硬化性組成物の硬化体は、前記装備または装置内で熱を発散し、衝撃に対する耐久性、および絶縁性などを付与することができる。前記硬化性組成物は、一例示において、バッテリーポッティング材に使用できる。
【0151】
本発明の一例によるバッテリーモジュールは、前述したポッティング材を適用したものである。このようなバッテリーモジュールは、軽量でありかつ高出力を示すことができ、バッテリーセルなどから発生した熱が適切に制御され、連鎖発火などの問題点も発生しない。
【0152】
前記バッテリーモジュールは、一例示において、基板と、前記基板上に配置された複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルの少なくとも一部または全体を覆っている前記硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体と、を含んでもよい。
【0153】
前記構造において前記硬化性組成物または前記硬化性組成物の硬化体(ポッティング材)は、一例示において、前記複数のバッテリーセルの全面(基板側と接触するバッテリーセルの表面は除外)と接触しつつ、前記バッテリーセルを覆っているか(
図1の構造)、あるいは複数のバッテリーセルの上部のみと接触していてもよい(
図2の構造)。
【0154】
図1および
図2は、上記のようなバッテリーモジュールの構造の模式図であり、基板10と、バッテリーセル20と、前記ポッティング材30(前記硬化性組成物またはその硬化体)と、を含む構造を示す図である。バッテリーモジュールは、前記バッテリーセル20を前記基板10に固定する接着素材40をさらに含んでもよいし、一例示において、前記接着素材40は、熱伝導性を有するように構成することができる。
【0155】
前記硬化性組成物またはその硬化体がポッティング材に適用される限り、バッテリーモジュールの具体的な構成、例えば、前記バッテリーセル、基板および/または接着素材の種類は、特に制限されず、公知の素材を適用することができる。
【0156】
例えば、前記バッテリーセルとしては、公知のポーチ型、角形または円筒形バッテリーセルを適用することができ、基板や接着素材としても、公知の素材を適用することができる。
【0157】
前記バッテリーモジュールの製造方法は、特に制限されず、例えば、基板上に形成された複数のバッテリーセルの上部に前記硬化性組成物を注いで、必要な場合に硬化させる段階を経て形成することができる。
【0158】
本発明の一例による硬化性組成物は、適切な粘度および揺変性を有するので、非常に隣接して配置されたバッテリーセルの間を効率的に充填することができ、ポッティング材を形成した後に目的とする断熱性と遮熱性などを示すことができる。
【発明の効果】
【0159】
本発明は、硬化性組成物およびその用途を提供することができる。本発明は、駆動、保管および/または維持過程で熱を発生させたり、発火または爆発の可能性がある製品や素子に適用され、前記熱、発火および爆発に効果的に対応できる硬化性組成物を提供することができる。例えば、本発明の組成物は、前記のような製品や素子を複数含む物品に適用され、いずれか1つの素子や製品から発生する異常発熱、爆発および発火に対応し、そのような発熱、爆発および発火の隣接する他の素子や製品への伝搬を防止したり最小化することができる。本発明は、また、前記硬化性組成物を優れた取り扱い性、保管安定性および難燃性が確保されるように提供することができる。本発明の硬化性組成物または硬化体は、また、カプセル化しない相転移物質を使用して前記特性を達成しながらも、前記特性を長期間安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【
図1】
図1は、本発明の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1の硬化体のDSC分析結果である。
【
図4】
図4は、実施例2の硬化体のDSC分析結果である。
【
図5】
図5は、実施例3の硬化体のDSC分析結果である。
【
図6】
図6は、実施例4の硬化体のDSC分析結果である。
【
図7】
図7は、比較例2の硬化体のDSC分析結果である。
【
図8】
図8は、比較例4の硬化体のDSC分析結果である。
【
図9】
図9は、比較例5の硬化体のDSC分析結果である。
【
図10】
図10は、比較例6の硬化体のDSC分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0161】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲が下記提示された内容により限定されるものではない。
【0162】
1.潜熱(latent heat)の測定
潜熱は、次の方式で評価した。約3~5mgの試料(硬化体またはPCM(Phase Change Material)をDSC(Differential Scanning Calorimeter)装置(TA instrument社、Q200モデル)にロードした。前記装置の潜熱評価のための温度区間を-20℃から200℃にセットした後、約10℃/分の速度で昇温しつつ、吸熱区間を測定し、前記吸熱区間で確認された吸熱ピークを積分して、潜熱(単位:J/g)を計算した。前記吸熱ピークのleft onsetの変曲点における温度を潜熱区間開始温度(Left onset温度)とし、right onset地点の変曲点における温度を潜熱区間終了温度(Right onset温度)とし、潜熱区間の広さは、前記オフセット温度からオンセット温度を抜いた値である。PCMの融点は、前記吸熱ピークの頂点における温度と定義した。
【0163】
2.漏液率(leakage rate)の測定
実施例または比較例で得た硬化体を幅が約1cm、長さが約1cm、厚さが約0.8cmとなるように切断して、試験片を製造した。試験片は、各硬化体当たり4個ずつを製造した。試験片の初期重量m1を測定し、4個の試験片の平均を記録する。その後、初期重量を測定した各試験片をフィルターペーパー(filter paper)に載置し、80℃のチャンバー(chamber)内で約24時間放置した後、重量m2を測定して、4個の試験片の平均を記録する。次に、下記式Aによって漏液率(leakage rate,LR)を計算する。
【0164】
[式A]
LR=100×(m1-m2)/m1
【0165】
3.質量損失(mass loss)の測定
実施例または比較例の硬化体を幅が約1cm、長さが約1cm、厚さが約0.3cmとなるように切断して、試験片を製造する。前記試験片の初期重量m3を測定した後に記録する。次に、初期重量を測定した試験片を蒸留水に入れ、常温(約25℃)で約4日間維持した後に取り出して、重量m4を測定する。前記重量m4は、蒸留水から取り出した試験片から水気を除去した後に測定した前記試験片の重量である。前記水気の除去は、前記試験片の表面の水気を脱脂綿でぬぐい取る方式で行う。質量損失(mass loss,ML)を下記式Bによって測定する。
【0166】
[式B]
ML=100×(m3-m4)/(m3×m5)
【0167】
式B中、m5は、前記試験片である硬化体に含まれたPCMの重量%であり、これは、前記硬化体の全重量に対して前記硬化体に含まれたPCMの重量%を意味する。
【0168】
4.ショア(Shore)A硬度
実施例または比較例の硬化体のShore A硬度は、ASTM D2240規格によって測定する。硬度の測定には、ASKER Durometer機器を使用する。扁平な硬化体(試験片)の表面に約1.5kg程度の荷重を加え、15秒後に安定化した値で確認して、硬度を測定する。
【0169】
5.Tanδの測定方法
実施例または比較例の硬化体を幅が約8mm、長さが約8mm、厚さが約3mmとなるように切断して、試験片を製造する。回転型レオメータARES G2(TA instrument、8mmのアルミニウムプレート、25℃ Frequency sweep)にロードし、5%ストレーン(strain)および0.95Hzの条件で常温(約25℃)における貯蔵弾性率(G’、storage modulus)を測定し、5%ストレーン(strain)および0.95Hzの条件で常温(約25℃)における損失弾性率(G”、loss modulus)を測定する。
【0170】
Tanδは、下記式Cによって規定される。
【0171】
[式C]
Tanδ=G”/G’
【0172】
6.難燃性の評価
実施例または比較例の硬化体を幅が約13mm、長さが約125mm、厚さが約2mmとなるように切断して、試験片を製造し、UL94V基準によって難燃性を測定する。測定結果がV-0またはV-1等級であれば、P(PASS)と評価し、その他の等級であれば、NGと評価する。
【0173】
7.GPC(Gel Permeation Chromatography)
分子量特性は、GPC(Gel permeation chromatography)を使用して測定する。5mLバイアル(vial)に分析対象材料を入れ、約5mg/mL程度の濃度となるようにトルエンで希釈する。その後、較正(Calibration)用標準試料と分析しようとする材料をシリンジフィルタ(syringe filter)(pore size:0.45μm)を介してろ過させた後に測定する。分析プログラムは、Agilent technologies社のChemStationを使用し、試料の溶出時間(elution time)を較正曲線(calibration curve)と比較して、重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)をそれぞれ求めることができる。
【0174】
GPCの測定条件は、下記の通りである。
<GPC測定条件>
機器:Agilent technologies社の1200series
カラム:Polymer laboratories社のPLgel mixed B 2個使用
溶媒:トルエン
カラム温度:40℃
サンプル濃度:5mg/mL、10μL注入
標準試料:ポリスチレン(Mp:3900000、723000、316500、52200、31400、7200、3940、485)
【0175】
8.フィラーの粒径分析
フィラーの粒径は、ISO-13320に準拠してMarven社のMASTERSIZER 3000装置を用いて測定し、測定時の溶媒としては、エタノール(Ethanol)を使用した。フィラーの粒径としては、D50粒径を測定し、これを平均粒径とした。前記D50粒径は、粒度分布の体積基準累積50%における粒子直径(メディアン直径)であり、体積基準として粒度分布を求め、全体積を100%とする累積曲線で累積値が50%となる地点における粒子直径である。
【0176】
実施例1.
硬化性樹脂成分としてシリコーン樹脂成分(SL3000,KCC)(重量平均分子量:約28,000g/mol)を使用して、下記のような方式で主剤パーツと硬化剤パーツをそれぞれ製造して、2液型硬化性組成物を製造した。
【0177】
主剤パーツ
前記硬化性樹脂成分の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。PCMとしては、PEG(poly(ethylene glycol))(PEG4000,Sigma Aldrich)を使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。フィラーとしては、平均粒径が約50μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を使用した。
前記PEGは、数平均分子量(Mn)が約4,000g/molであり、DSC(Differential Scanning Calorimeter)分析による融点(Tm)が約62.77℃であり、潜熱が約164.3J/gであり、潜熱区間の開始温度が約56.47℃であり、潜熱区間の終了温度が約66.14℃であり、したがって、潜熱区間の幅が約9.67℃であった。
【0178】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMおよびフィラーとしては、主剤パーツと同じものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0179】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを1:1の重量比でバス(bath)に入れ、70℃で約380rpmで約60分間均一に混合されるように撹拌して、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物を60℃のチャンバー(chamber)内で約1時間維持した後に、注入器でアルミ皿(dish)に約10mmの厚さとなるように塗布し、約60℃で約30分間維持して、硬化体を製造した。
【0180】
実施例2.
主剤パーツ
実施例1と同じ硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:132:106(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、主剤パーツの製造に使用した。
PCMとしては、実施例1で適用したものと同じPEGとドコサン(D、n-docosane)およびエイコサン(E、n-eicosane)を87.5:33.4:11.1の重量比(PEG:D:E)で混合して使用し、フィラーは、実施例1と同じ水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を使用した。
前記ドコサンは、DSC(Differential Scanning Calorimeter)分析で測定した融点(Tm)が約44℃であり、潜熱が約170J/gであり、潜熱区間の開始温度が約41.53℃であり、潜熱区間の終了温度が約46.99℃であった。前記エイコサンは、DSC(Differential Scanning Calorimeter)分析で測定した融点(Tm)が約36℃であり、潜熱が約152J/gであり、潜熱区間の開始温度が約31.79℃であり、潜熱区間の終了温度が約38.96℃であった。
【0181】
硬化剤パーツ
実施例1と同じ硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:132:106(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMおよびフィラーとしては、前記実施例2の主剤パーツと同じものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0182】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0183】
実施例3.
主剤パーツ
実施例1の硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)およびPCM(Phase Change Material)(P)を100:61.3(S:P)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。前記PCMとしては、実施例1と同じPEG(poly(ethylene glycol))(PEG4000,Sigma Aldrich)を使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。
【0184】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)およびPCM(Phase Change Material)(P)を100:61.3(C:P)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMとしては、主剤パーツと同じものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0185】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0186】
実施例4.
硬化性樹脂成分としてウレタン樹脂成分(KC-315A/KC-315B、Kangnam Chemical)(重量平均分子量:約2,500g/mol)を使用して、下記のような方式で主剤パーツと硬化剤パーツをそれぞれ製造し、2液型硬化性組成物を製造した。
【0187】
主剤パーツ
前記硬化性樹脂成分の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:95:95(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。PCMおよびフィラーとしては、実施例1と同じものを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。
【0188】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:95:95(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。PCMおよびフィラーとしては、実施例1と同じものを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記硬化剤パーツの製造時に使用した。
【0189】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0190】
比較例1.
PCMとフィラーを適用しないことを除いて、実施例1で使用したものと同じシリコーン樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤および硬化剤を混合し、実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0191】
比較例2.
主剤パーツ
実施例1の硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)およびPCM(Phase Change Material)(P)を100:62.6(S:P)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。前記PCMとしては、実施例2で使用したn-ドコサンを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。
【0192】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)およびPCM(Phase Change Material)(P)を100:62.6(C:P)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMとしては、主剤パーツと同じn-ドコサンを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0193】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0194】
比較例3.
主剤パーツ
実施例1で使用した硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:184:92.5(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌した。PCMおよびフィラーとしては、それぞれ、実施例1と同じものを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記混合および撹拌に適用した。
【0195】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:184:92.5(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌した。PCMおよびフィラーとしては、それぞれ、実施例1と同じものを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記混合および撹拌に適用した。しかしながら、この場合には、硬化剤パーツの粘度の過度な上昇によって成分の不均一な混合が目視で観察されるほどにひどく発生し、混合が不可能であり、そのため、硬化剤パーツを製造することができなかった。
【0196】
比較例4.
主剤パーツ
実施例1と同じ硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:132:106(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間常温(約25℃)で撹拌して、主剤パーツを製造した。
PCMとしては、実施例1で適用したものと同じPEGとドコサン(D、n-docosane)およびエイコサン(E、n-eicosane)を87.5:33.4:11.1の重量比(PEG:D:E)で混合して使用し、フィラーは、実施例1と同じ水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を使用した。前記ドコサンおよびエイコサンとしては、実施例2と同じものを使用した。
【0197】
硬化剤パーツ
実施例1と同じ硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:132:106(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間常温(25℃)で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMおよびフィラーとしては、前記実施例2の主剤パーツと同一のものを使用した。
【0198】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを1:1の重量比でバス(bath)に入れ、約380rpmで約60分間均一に混合されるように撹拌して、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物を注入器でアルミ皿(dish)に約10mmの厚さとなるように塗布し、常温(約25℃)で維持し、硬化体を製造した。
【0199】
比較例5.
主剤パーツ
実施例1の硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:31.4:73.9(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。前記PCMとしては、実施例2で使用したn-ドコサン(D)およびエイコサン(E)を23.4:8.0の重量比(D:E)で混合したものを使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。
【0200】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:31.4:73.9(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMとしては、実施例2で使用したn-ドコサン(D)およびエイコサン(E)を23.4:8.0の重量比(D:E)で混合したものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0201】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0202】
比較例6.
主剤パーツ
実施例1の硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。PCMとしては、PEG(poly(ethylene glycol))(PEG400,Sigma Aldrich)を使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。フィラーは、実施例1と同じ水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を使用した。
前記PEGは、数平均分子量(Mn)が約400g/molであり、DSC(Differential Scanning Calorimeter)分析による融点(Tm)が約5.1℃であり、潜熱が約116.2J/gであり、潜熱区間の開始温度が約-9.8℃であり、潜熱区間の終了温度が約6.3℃であった。
【0203】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMおよびフィラーとしては、主剤パーツと同じものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0204】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
【0205】
比較例7.
主剤パーツ
実施例1の硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の主剤(S)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(S:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、主剤パーツを製造した。PCMとしては、PPG(poly(propylene glycol))(PPG4000,Sigma Aldrich)を使用し、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に、前記主剤パーツの製造時に使用した。フィラーは、実施例1と同じ水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を使用した。
前記PPGは、数平均分子量(Mn)が約4.000g/molであった。ただし、前記PPGは、DSC(Differential Scanning Calorimeter)分析で融点が確認されないので、非結晶性であることが分かった。また、前記PPGに対しては、潜熱と潜熱区間が観察されなかった。
【0206】
硬化剤パーツ
前記硬化性樹脂成分(SL3000,KCC)の硬化剤(C)、PCM(Phase Change Material)(P)およびフィラー(F)を100:91.7:92.6(C:P:F)の重量比で混合し、380rpmで60分間70℃で撹拌して、硬化剤パーツを製造した。前記PCMおよびフィラーとしては、主剤パーツと同じものを使用した。また、前記PCMは、約80℃の温度で1時間維持して完全に溶融させた後に使用した。
【0207】
硬化体
前記主剤パーツと硬化剤パーツを使用して実施例1と同一に硬化体を製造した。
実施例および比較例に対する評価結果は、下記表1および表2に整理した。なお、
図3~
図10は、それぞれ、実施例1~4、比較例2、4~7の硬化体に対するDSC分析結果である。PCMを含まない比較例1と配合不能によって硬化体の製造が不可能な比較例3のDSC分析結果を除外した。
【0208】
下記表1および表2で、Left onset温度は、潜熱区間開始温度であり、Right onset温度は、潜熱区間の終了温度であり、G’は、貯蔵弾性率である。
【0209】
【0210】
【国際調査報告】