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特表2024-542909回折に基づく重ね合わせ誤差計測の改良された目標
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  • 特表-回折に基づく重ね合わせ誤差計測の改良された目標 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】回折に基づく重ね合わせ誤差計測の改良された目標
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20241112BHJP
   G03F 1/42 20120101ALI20241112BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578178
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022045832
(87)【国際公開番号】W WO2023096704
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/283,429
(32)【優先日】2021-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グドル イタイ
(72)【発明者】
【氏名】ルバシェフスキー ユバル
(72)【発明者】
【氏名】ネグリ ダリア
(72)【発明者】
【氏名】ハジャジ エイタン
(72)【発明者】
【氏名】レビンスキー ウラジミール
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BE03
2H195BE09
2H197AA09
2H197EA15
2H197EA19
2H197EB02
2H197EB05
2H197EB06
2H197EB23
2H197HA03
2H197JA23
(57)【要約】
半導体計測のための方法は、半導体基板に第1及び第2の重なり合う薄膜層を堆積するステップと、重ね合わせ目標を画定すべく当該層をパターニングするステップを含んでいる。目標は、第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、第1の方向に垂直な第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む、第1の層における第1の格子パターンと、第1の線形格子と同一の第3の線形格子と第2の線形格子と同一の第4の線形格子を含む、第2の層における第2の格子パターンを含んでいる。第2の格子パターンは第1の格子パターンに対して、各々が前記第1及び第2の方向に第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされている。基板の散乱計測画像を取得して処理し、第1層と第2層のパターン間の重ね合わせ誤差を推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体計測方法であって、
半導体基板に第1の薄膜層と、前記第1の薄膜層に重ねて第2の薄膜層とを堆積するステップと、
前記第1及び第2の薄膜層をパターニングして重ね合わせ目標を画定するステップにおいて、前記重ね合わせ目標が、
前記第1の薄膜層に形成されて第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、前記第1の方向に垂直な第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む第1の格子パターンと、
第2の薄膜層に形成されて前記第1の線形格子と同一の少なくとも第3の線形格子と、前記第2の線形格子と同一の第4の線形格子を含む第2の格子パターンであって、前記第1の格子パターンに対して前記第1の方向及び前記第2の方向に所定の第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされている第2の格子パターンとを含むように画定するステップと、
撮像アセンブリを用いて、前記重ね合わせ目標が形成された前記半導体基板の散乱計測画像を取得するステップと、
前記画像を処理して、前記第1と第2の薄膜層のパターニング間の重ね合わせ誤差を推定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記第1の格子パターンが更に、前記第1及び第2の方向に各々向けられた第5及び第6の線形格子を含み、前記第2の格子パターンが更に、前記第1及び第2の方向に各々向けられた第7及び第8の線形格子を含み、
前記第3及び第4の線形格子が前記第1及び第2の線形格子に対して前記所定の第1及び第2の変位だけ正側にずらされている一方、前記第7及び第8の線形格子が前記第5及び第6の線形格子に対して前記所定の第1及び第2の変位だけ負側にずらされている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の変位の程度が等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記各々の線形格子が少なくとも2本の平行な棒材を含み、前記各々の線形格子の前記棒材の間隔が予め画定されていて、前記第1の線形格子と前記第2の線形格子が、前記棒材の前記所定の間隔に等しい距離だけ間隔が空けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体基板の平面内の前記第1及び第2の格子パターンの寸法が10μm×10μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体基板の平面内の前記第1及び第2の格子パターンの寸法が5μm×5μm以下である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の薄膜層がプロセス層を含み、前記第2の薄膜層がフォトレジスト層を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の薄膜層の各々がプロセス層を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記散乱計測画像を取得するステップが、前記重ね合わせ目標から散乱された光放射を対物レンズの射出瞳に合焦するステップと、前記射出瞳を画像センサに結像させるステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記画像を処理するステップが、前記重ね合わせ誤差を推定すべく画像中の2次以上の回折次数を比較するステップを含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
半導体ウェハをパターニングするためのマスク組であって、
前記半導体ウェハ上の第1の薄膜層をパターニングすべく構成された第1のフォトリソグラフィマスクであって、第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む第1の格子パターンを含む第1のフォトリソグラフィマスクと、
前記半導体ウェハ上の前記第1の薄膜層に重なる第2の薄膜層をパターニングすべく構成された第2のフォトリソグラフィマスクであって、前記第2の薄膜層に形成されて前記第1の線形格子と同一の第3の線形格子及び前記第2の線形格子と同一の第4の線形格子とから少なくとも含む第2の格子パターンを含み、前記第2の格子パターンが前記第1の格子パターンに対して、各々が前記第1及び第2の方向に所定の第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされた第2のフォトリソグラフィマスクとを含むマスク組。
【請求項12】
前記第1の格子パターンが更に、前記第1及び第2の方向に各々向けられた第5及び第6の線形格子を含み、前記第2の格子パターンが更に、前記第1及び第2の方向に各々向けられた第7及び第8の線形格子を含み、
前記第3及び第4の線形格子が、前記第1及び第2の線形格子に対して前記所定の第1及び第2の変位だけ正側にずらされている一方、前記第7及び第8の線形格子が前記第5及び第6の線形格子に対して前記所定の第1及び第2の変位だけ負側にずらされている、請求項11に記載のマスク組。
【請求項13】
前記第1及び第2の変位の程度が等しい、請求項11に記載のマスク組。
【請求項14】
前記各々の線形格子が少なくとも2本の平行な棒材を含み、前記各々の線形格子の前記棒材の間隔が予め画定されていて、前記第1の線形格子と前記第2の線形格子が、前記棒材の前記所定の間隔に等しい距離だけ間隔が空けられている、請求項11に記載のマスク組。
【請求項15】
前記半導体基板の平面内の前記第1及び第2の格子パターンの寸法が10μm×10μm以下である、請求項11に記載のマスク組。
【請求項16】
前記半導体基板の平面内の前記第1及び第2の格子パターンの寸法が5μm×5μm以下である、請求項15に記載のマスク組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月27日出願の米国仮特許出願第63/283,429号の優先権を主張するものであり、その内容を引用により本明細書に取り込んでいる。
【0002】
本発明は一般に半導体素子の製造に関し、特に半導体回路計測のための方法及び目標特徴に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体回路は一般にフォトリソグラフィ法を用いて製造される。フォトリソグラフィでは、感光性ポリマー(フォトレジスト)の薄層が半導体基板に堆積され、光その他の照射を用いてパターニングされ、フォトレジストで覆われた基板の部分が残る。フォトレジストは、典型的には紫外線照射を用いてレチクルの画像をフォトレジスト上に投影するスキャナによりパターニングされる。パターニングされた後で、エッチング及びイオン衝撃等の方法により基板を改質して基板の材料特性及び/又はトポグラフィを変化させる一方、フォトレジストで覆われた部分は影響を受けない。
【0004】
半導体回路計測は、パターニングされた特徴のトポグラフィ及び位置等、パターニングされたフォトレジストの特性の測定に用いられる。以前にパターニングされたプロセス層に対するフォトレジストのパターニングされた特徴の正確な位置は、フォトリソグラフィプロセスの高い歩留まりの実現に極めて重要である。下敷きとなるプロセス層に対するパターニングされたフォトレジストの見当合わせの誤差(見当誤差)は「重ね合わせ誤差」と呼ばれる。一例として、最小線幅が10~14nm(いわゆる10nm設計ルール)の典型的な半導体回路において、許容される最大重ね合わせ誤差は2~3nmである。最先端の半導体回路では、線幅は5nmまで縮小されており、これに伴い最大許容重ね合わせ誤差も縮小している。
【0005】
可視及び赤外波長での光放射はフォトレジスト層だけでなく、フォトレジストの下側の誘電体層も透過できるため、重ね合わせ誤差は一般に光学的重ね合わせ計測装置(一般に光学的重ね合わせ計測ツールと呼ばれる)を用いて計測される。更に、赤外波長はシリコン等の半導体基板を透過できるため、基板を貫通する計測が可能である。重ね合わせ誤差は、半導体基板のスクライブ線(隣接ダイを分離する線)及び/又はダイ内に配置された重ね合わせ目標を用いて計測される。
【0006】
一般的に用いられる重ね合わせ計測ツールは、二つのカテゴリー、すなわち散乱計測ツール及び撮像ツールに分類される。KLA社(米国カリフォルニア州ミルピタス市)のATL100(商標)ツール等の散乱計測ツールは、計測ツールの対物レンズの射出瞳からの重ね合わせ目標の周期的な目標特徴の回折(散乱計測)画像を取得する。散乱計測画像は、目標形状から散乱された光放射の角度分布を示すものであり、重ね合わせ誤差を測定すべく処理される。
【0007】
KLA社(米国カリフォルニア州ミルピタス市)のArcher(商標)シリーズツール等の撮像ツールは重ね合わせ目標、例えばKLAのAIM(商標)重ね合わせ目標等の画像を取得する。取得した画像に画像解析アルゴリズムを適用してプロセス層における目標形状の対称中心及びフォトレジスト層における目標形状の対称中心を特定する。重ね合わせ誤差は、二つの層の目標形状の対称中心間の変位に基づいて計算される。
【0008】
本明細書及び請求項で使用する用語「光放射」及び「光」は一般に、可視、赤外、及び紫外放射のいずれか及び全てを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0250521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下に説明する本発明の複数の実施形態は、特に散乱計測で用いる重ね合わせ目標の改良された設計と共に、そのような重ね合わせ目標を用いる計測のための方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の実施形態によれば、半導体計測のための方法が提供される。本方法は、半導体基板に第1の薄膜層と、第1の薄膜層に重ねて第2の薄膜層とを堆積するステップと、第1及び第2の薄膜層をパターニングして重ね合わせ目標を画定するステップを含んでいる。重ね合わせ目標は、第1の薄膜層に形成されて第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、第1の方向に垂直な第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む第1の格子パターンを含んでいる。重ね合わせ目標はまた、第2の薄膜層に形成されて第1の線形格子と同一の少なくとも第3の線形格子と、第2の線形格子と同一の第4の線形格子を含む第2の格子パターンも含んでいて、第2の格子パターンは第1の格子パターンに対して、第1の方向及び第2の方向に所定の第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされている。本方法は更に、撮像アセンブリを用いて、重ね合わせ目標が形成された半導体基板の散乱計測画像を取得するステップと、当該画像を処理して、第1と第2の薄膜層のパターニング間の重ね合わせ誤差を推定するステップを含んでいる。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1の格子パターンは更に、第1及び第2の方向に各々向けられた第5及び第6の線形格子を含み、第2の格子パターンは更に、第1及び第2の方向に各々向けられた第7及び第8の線形格子を含み、第3及び第4の線形格子は第1及び第2の線形格子に対して所定の第1及び第2の変位だけ正側にずらされている一方、第7及び第8の線形格子は第5及び第6の線形格子に対して所定の第1及び第2の変位だけ負側にずらされている。
【0013】
開示する実施形態において、第1及び第2の変位の程度は等しい。
【0014】
追加的又は代替的に、各々の線形格子は少なくとも2本の平行な棒材を含み、各々の線形格子の棒材の間隔が予め画定されている、第1の線形格子と第2の線形格子は、棒材の所定の間隔に等しい距離だけ間隔が空けられている。
【0015】
いくつかの実施形態において、半導体基板の平面内の第1及び第2の格子パターンの寸法は10μm×10μm以下である。代替的に、半導体基板の平面内の第1及び第2の格子パターンの寸法は5μm×5μm以下である。
【0016】
追加的な実施形態において、第1の薄膜層はプロセス層を含み、第2の薄膜層はフォトレジスト層を含んでいる。代替的に、第1及び第2の薄膜層の各々はプロセス層を含んでいる。
【0017】
いくつかの実施形態において、散乱計測画像を取得するステップは、重ね合わせ目標から散乱された光放射を対物レンズの射出瞳に合焦させて、射出瞳を画像センサに結像させるステップを含んでいる。追加的又は代替的に、画像を処理するステップは、重ね合わせ誤差を推定すべく画像内の2次以上の回折次数を比較するステップを含んでいる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、半導体ウェハをパターニングに用いるマスク組も提供される。マスク組は、半導体ウェハ上の第1の薄膜層をパターニングすべく構成された第1のフォトリソグラフィマスクを含み、第1のフォトリソグラフィマスクは、第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、第1の方向に垂直な第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む第1の格子パターンを含んでいる。マスク組は、半導体ウェハ上の第1の薄膜層に重なる第2の薄膜層をパターニングすべく構成された第2のフォトリソグラフィマスクを更に含んでいる。第2のフォトリソグラフィマスクは、第2の薄膜層に形成されて第1の線形格子と同一の第3の線形格子及び第2の線形格子と同一の第4の線形格子を少なくとも含む第2の格子パターンを含み、第2の格子パターンは第1の格子パターンに対して、第1の方向及び第2の方向に各々所定の第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされている。
【0019】
本発明は、その実施形態に関する図面及び以下の詳細な説明を参照することにより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による、半導体ウェハ上の重ね合わせ誤差を測定する散乱計測重ね合わせ計測装置の模式的側面図である。
図2】本発明の一実施形態による、散乱体計測のための重ね合わせ目標の模式的正面図である。
図3A】本発明の一実施形態による、2個のフォトリソグラフィマスクを含むマスク組の模式的正面図である。
図3B】本発明の一実施形態による、2個のフォトリソグラフィマスクを含むマスク組の模式的正面図である。
図4】本発明の一実施形態による、半導体ウェハ上の重ね合わせ誤差を計測する方法を模式的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
重ね合わせ目標は、半導体基板上の連続するパターニングされた薄膜層間の重ね合わせ誤差を精密かつ正確に計測すべく一般的に用いられる。これらの層は、例えば、プロセス層及びフォトレジスト層、又はエッチング後処理において、2個のプロセス層を含んでいてよい。従って、以下ではいくつかの例示的な実施形態をプロセス層及びフォトレジスト層に関して記述しているが、これらの実施形態の原理は、第1のプロセス層及び第2のプロセス層に準用することができる。
【0022】
標準的な散乱計測重ね合わせ計測において、重ね合わせ目標は、半導体ウェハの平面内で直交する二方向に向けられた平行且つ等間隔の棒材で形成された線形格子を含み、フォトレジスト層とプロセス層に同一の格子の組が重ね合わされている。フォトレジスト層の格子は、フォトリソグラフィプロセスで適当にずらされたマスク特徴により、プロセス層の格子に対して格子間隔よりも小さい所定の公称変位fだけずらされている。各線形格子の変位は格子棒材と直交する方向にある。各格子方向について、いくつかの変位は正側、他の変位は負側である。これらの変位は、二層の格子間の対称性、従って+1と-1次回折の対称性を破り、回折信号から重ね合わせ誤差を抽出することが可能になる。変位の正負の符号は、適当に選択された座標軸を指し、軸の正負の方向は任意に選択できる。同様に、回折次数の符号の選択も任意である。
【0023】
散乱計測重ね合わせ目標の一般的な設計は1個の正方形を含み、当該正方形の4象限として4個のセルが配置されている。このような目標の典型的な寸法は5μm×5μmのセルを4個含むため20μm×20μmである。各セルは、プロセス層内に線形格子(プロセス格子)と、当該プロセス格子に重ね合わされたフォトレジスト層内に同一線形格子(フォトレジスト格子)を含んでいる。そのうち2個のセルでは線形格子の棒材はy方向に向けられていてフォトレジスト格子はプロセス格子に対してx方向にずらされている一方、他の2個のセルでは棒材はx方向に向けられていて、第4のセルではフォトレジスト格子はプロセス格子に対してy方向に変位fだけずらされている。
【0024】
このような寸法を有する種類の散乱計測重ね合わせ目標において、1個のセル内の格子ペアと、隣接セル内の直交する格子ペアの棒材の両端との間の回折として生じる光学的クロストークは無視できる。しかし、例えば素子領域に挿入すべく設計された目標のように小さくされた目標サイズでは、目標の全体寸法を5μm×5μm以下に縮小することが求められる。このような小さな目標では、格子ペアと、これと直交する隣接ペアとの間の光学的クロストークにより測定結果に大きな誤差が生じる恐れがある。
【0025】
以下に説明する複数の実施形態は、フォトレジスト層内の格子の各々を、プロセス層内の格子に対して、格子棒材に対して垂直及び平行な二方向にずらすことにより、小さい散乱計測目標における光学的クロストークの問題に対処する。その結果、格子の両端が棒材の長さ方向にずらされる。このように、各格子の変位の方向及び符号を適当に選択することにより、棒材の両端が、隣接する格子棒材の長辺と同程度にずらされる。また、棒材の両端と隣接格子との距離は、隣接格子の棒材の間隔と同一の間隔を有するように設計されている。従って、棒材の両端は隣接格子に部分的な棒材を追加し、誤差を生じさせずに散乱計測信号に有利な仕方で寄与する。
【0026】
開示する複数の例において、半導体計測方法は、半導体基板に第1の薄膜層を堆積するステップと、第1の薄膜層に重ねて第2の薄膜層を堆積するステップと、第1及び第2の薄膜層をパターニングして重ね合わせ目標を画定するステップを含んでいる。重ね合わせ目標は、第1の薄膜層に形成され且つ第1の方向に向けられた少なくとも第1の線形格子と、第1の方向に垂直な第2の方向に向けられた少なくとも第2の線形格子を含む第1の格子パターンを含んでいる。重ね合わせ目標は更に、第2の薄膜層に形成されて第1の線形格子と同一の少なくとも第3の線形格子と、第2の線形格子と同一の少なくとも第4の線形格子を含む第2の格子パターンを含んでいる。第2の格子パターンは第1の格子パターンに対して、各々が第1及び第2の方向に所定の第1及び第2の変位である公称オフセット量だけずらされている。(本明細書及び請求項において、用語「公称」は、二つの薄膜層のパターニングに用いるマスクの設計に従い、理想的なリソグラフィプロセスで印刷される寸法及びパターンを指す)。
【0027】
本方法は更に、撮像アセンブリを用いて、重ね合わせ目標が形成された半導体基板の散乱計測画像を取得するステップと、当該画像を処理して、第1と第2の薄膜層のパターニング間の重ね合わせ誤差を推定するステップを含んでいる。理想的なプロセスから得られる筈の画像からの散乱計測画像の偏差は、公称オフセット量に対する目標内の格子パターン間の実際のオフセット量の偏差を示す。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による、半導体ウェハ12上の重ね合わせ誤差を測定する散乱計測重ね合わせ計測装置10の模式的側面図である。装置10は、本明細書で記述する重ね合わせ目標の使用を説明するための例として示されている。代替的に、このような目標は他の種類の散乱計測システムに用いられてもよい。
【0029】
散乱体重ね合わせ計測装置10は、撮像アセンブリ14、照明アセンブリ16、コントローラ18、及びウェハ12が載置される台座20を含んでいる。撮像アセンブリ14は、射出瞳23を有する対物レンズ22、キューブビームスプリッタ24、及び結像レンズ26を含んでいる。撮像アセンブリ14は更に、例えばピクセル30の2次元アレイを有する相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出器を含む2次元センサアレイ28を含んでいる。結像レンズ26は、センサアレイ28上に射出瞳23を結像させる。
【0030】
照明アセンブリ16は、光放射を発する光源32と、レンズ34を含んでいる。台座20は対物レンズ22に近接して配置され、コントローラ18により制御されるアクチュエータを含み、台座を(デカルト座標系36における)x、y、及びz方向に直線的に移動させること、及び台座をz軸の回りに回転させることができる。
【0031】
図示する実施形態において、第1の薄膜層38が半導体ウェハ12に堆積され、フォトリソグラフィプロセスによりパターニングされている。後続のプロセスステップにおいて、フォトレジストを含む第2の薄膜層40が、第1の薄膜層38に堆積されている。本実施形態において、第1の薄膜層38を「プロセス層」と称し、第2の薄膜層40を「フォトレジスト層」と称する。エッチング後処理等、代替的実施形態において、第1及び第2の薄膜層の両方がプロセス層を含んでいてよい。層38、40は、フォトリソグラフィプロセスにより形成されたパターンを含み、半導体回路は、図2に示して以下に述べる重ね合わせ目標等の散乱計測重ね合わせ目標の目標特徴を含むウェハ12に形成される。
【0032】
コントローラ18がセンサアレイ28及び台座20に結合されている。コントローラ18は典型的に、装置10の他の要素への接続に適したデジタル及び/又はアナログインターフェースと共に、本明細書に記述する機能を実行すべくソフトウェア及び/又はファームウェアでプログラミングされたプログラマブルプロセッサを含んでいる。代替的又は追加的に、コントローラ18は、コントローラの機能の少なくとも一部を実行するハードワイヤード及び/又はプログラマブルハードウェア論理回路を含んでいる。コントローラ18は、図1では簡潔のため単一のモノリシック機能ブロックとして示されているが、コントローラは実際には、本明細書に図示及び記述する信号の受信及び出力に適したインターフェースを有する複数の相互接続された制御部を含んでいてよい。
【0033】
薄膜層38、40の散乱計測重ね合わせ目標の散乱計測画像を取得すべく、当該目標が対物レンズ22の視野(FOV)内に入るようにウェハ12を台座20に配置される。光源32は、コヒーレント光放射ビームをレンズ34に投射し、レンズ34は更に当該ビームをキューブビームスプリッタ24に投射する。ビームスプリッタ24はビームを対物レンズ22に反射し、対物レンズ22はビームをウェハ12に投射する。ウェハ12に入射した放射は対物レンズ22へ逆向きに散乱されて、散乱放射の角度分布が射出瞳23で散乱計測画像を形成する。散乱計測画像はレンズ26によりセンサアレイ28上に結像される。コントローラ18は当該画像を読み出して重ね合わせ誤差を測定すべく処理する。
【0034】
図2に、本発明の一実施形態による、重ね合わせ誤差の散乱計測法による測定に用いる重ね合わせ目標100を示す。装置10に対する重ね合わせ目標100の向きを明確にすると共に目標の説明を容易にすべく直交座標36も同図に示している。
【0035】
同図のz方向から見た目標100は、4個のセル102、104、106、及び108を含んでいる。各セルは、下敷きとなるプロセス層38に形成された同一の線形格子に重ね合わされたフォトレジスト層40(図1)に形成された線形格子を含み、線形格子同士はx及びyのx及びyの両で公称オフセット量だけずれている。図示する例において、各線形格子は2本の平行な棒材を含み、格子及び棒材は次表のようにラベル付けされている。
【表1】
層38の第1の格子パターン及び層40の第2の格子パターンについて以下に更に詳述する。
【0036】
簡潔のため、図2の各線形格子は2本の棒材しか含んでいないが、実際には層38、40に形成される各格子は典型的にはより多くの棒材を含んでいる。
【0037】
セル内の2本の線形格子は互いに平行である。従って、例えばセル102の線形格子140と142は互いに平行である。図示する例において、セル102、106の格子はy方向に向けられ、セル104、108の格子はx方向に向けられている。4個のセル全てにおいて、フォトレジスト層とプロセス層の両方の棒材は同一の公称棒材幅(臨界寸法CD)W、及び棒材間隔Sを有している。
【0038】
目標100は、層38の第1の格子パターン及び層40の第2の格子パターンを含んでいる。これらをまとめて(表1)、棒材112a/b、116a/b、120a/b、及び124a/bを含む線形格子142、146、150、及び154の各々が第1の格子パターンを形成する一方、棒材110a/b、114a/b、118a/b、及び122a/bを含む線形格子140、144、148、及び152の各々が第2の格子パターンを形成する。第2の格子パターンは、以下に更に詳細に説明するように、第1の格子パターンに対してx及びy両方向での変位により画定される公称オフセット量を有している。図2に示す格子パターンは層38、40の各々に4個の線形格子を含んでいるが、代替的な実施形態ではこのような公称オフセット量を有する重ね合わせ目標は、より少ない数の格子、例えば2本の格子、又はより多い数の格子を含んでいてよい。更に、図2に示す格子パターンは、x及びy両方向に同一の幾何学的寸法(幅、間隔、及びオフセット量を含む)を好都合に有しているが、代替的な実施形態において、xとy方向の寸法が異なっていてもよい。
【0039】
目標100の二つの特性、すなわち1)隣接セル間の選択された間隔、及び2)x及びyの2方向の各々での層38、40の棒材間の変位を含む公称オフセット量は、光学クロストークの悪影響を緩和して重ね合わせ誤差の計算に用いる散乱計測画像の向上に有用である。
【0040】
先に述べたように、本明細書における公称オフセット量は、フォトリソグラフィプロセスで設計されたオフセット量を指し、これらのオフセット量は、棒材の生成に用いるフォトリソグラフィマスクの特徴の適切な変位として与えられる。層38の棒材に対する層40の棒材の実際のオフセット量は、公称オフセット量と重ね合わせ誤差の和である。公称オフセット量は、散乱計測信号の+1と-1回折次数の間の対称性を破るために用いられ、これによりコントローラ18は散乱計測画像を処理して層38と層40との重ね合わせ誤差を推定することが可能になる。
【0041】
例えば、セル102と104を参照するに、セル104の層38の棒材116a、116bの両端とセル102の層38の隣接棒材112bとの公称間隔は、棒材112aと112bの間隔と同一の公称間隔Sを有するように設計されている。同様に、セル102、108を参照するに、セル102の第38層の棒材112a、112bの両端と、セル108の第38層の隣接棒材124bとの公称間隔は、棒材124aと124bの間隔と同一の公称間隔Sを有するように設計されている。同様の間隔空けが他の2対のセル(セル106と108、セル104と106)の間にも適用される。
【0042】
セル102を更に参照すると、層38の棒材112a、112bに対する層40の棒材110aと110bの間の公称オフセット量はy方向に-f、x方向に-fの変位を含んでいる。変位fは典型的には棒材幅Wの分数である。ここに、負の変位とは、変位がデカルト座標36の座標軸の負の方向であることを示す。(座標軸の「正」と「負」の方向の意味は任意に選ばれている)。
【0043】
セル108において、棒材122a、122bは、各々の棒材124a、124bに対してy方向に-f、x方向に+fの変位を含む公称オフセット量を有している。
【0044】
セル106の公称オフセット量は、セル102に対する反対向きの変位を含み、すなわち棒材118a、118bは棒材120a、120bの各々に対してx及びy軸の両方の正側に+fだけずらされている。
【0045】
最後に、セル104の公称オフセット量は、セル108に対する反対向きの変位を含み、すなわち棒材116a、116bの各々に対して棒材114a、114bがy方向に+f、x方向に-fだけずらされている。
【0046】
セル間の間隔と格子パターンの(2次元)公称オフセット量を組み合わせることには、各セル内の棒材の両端が隣接セル内の棒材の長辺と同様の構造が得られるという利点がある。例えば、セル104内の棒材116aと棒材114aの両端と共にセル102内の棒材112bと棒材110bの対向する長辺を包含する領域126の層構造及び間隔は、セル102内の棒材112aと棒材112b、及び棒材110aと棒材110bの対向する長辺を包含する領域128と同一である。従って、領域126の構造は、セル102内の棒材110a/bと112a/bのペアにより形成される散乱計測画像に寄与する。領域130内の棒材116bと棒材114bの両端も同様に寄与する。
【0047】
重ね合わせ目標100内に、セル102、104、106、及び108の各々が2本の棒材を含んでいる。先に述べたように、代替的な重ね合わせ目標内ではセルは3、4、5本以上の棒材を含んでいてよい。棒材の数が多いほど目標100の回折効率が向上し、従ってセンサアレイ28(図1)に結像される散乱計測画像の品質が向上するが、代償として目標サイズが大きくなる。
【0048】
P=W+Sで与えられる格子のピッチ(周期)Pは、目標100から回折された光の第1次(+1及び-1次)回折が対物レンズ22(図1)の射出瞳23内に入射するように選択される。対物レンズ22の開口数(NA)及び光源32により放出されるコヒーレント光放射のスペクトルに応じて、棒材幅W=250nm、棒材間隔S=250nmとして例えば500nmピッチPを選択してよい。代替的に、棒材の幅及び間隔が各々W=350nm又は400nm、S=350nm又は400nmに等しい格子に対応して、ピッチPは700nm又は800nmのようにより大きくてもよい。代替的な例において、等しくないピッチ及び間隔を選択してもよい。
【0049】
セル内の棒材の数及び棒材のピッチPに依存して、本発明の一実施形態による重ね合わせ目標は、基板20の平面内の外形寸法が10μm×10μm未満である場合がある。格子ピッチ、棒材の幅、及び棒材の数を適当に選択することにより、重ね合わせ目標は、5μm×5μmまで小さくしても、重ね合わせ誤差の散乱計測で良好な性能を得ることができ、より微細な設計ルールを実施する場合は2μm×2μm以下まで小さくすることもできる。
【0050】
図3A、3Bは、本発明の一実施形態による、重ね合わせ目標100の製造に利用できるフォトリソグラフィマスク180、182を含むマスク組の模式的正面図である。(実際には、このようなマスクは典型的に素子特徴のより大きい組を含むが、簡潔のため図3A、3Bは重ね合わせ目標特徴だけを示している)。
【0051】
フォトリソグラフィマスク180は、フォトリソグラフィプロセスにおいてプロセス層38上の第1の格子パターンを不透明な背景181の前面に画定する開口部184a、184b等の開口部を含んでいる。例えば、開口部184a、184bは各々、棒材124a、124bを画定する(図2)。フォトリソグラフィマスク182は、不透明な背景183の前面にフォトレジスト層40上の第2の格子パターンを画定する開口部186a、186b等の開口部を含んでいる。例えば、開口部186a、186bは各々、棒材122a、122bを画定する(図2)。マスク182の開口部は、マスク180の開口部に対してx及びyの両方向にずらされ且つ第1と第2の格子パターン間に所望の公称オフセット量を生成する。
【0052】
代替的に、各開口部は、均一な格子棒材の代わりに、半導体基板12上に印刷された対応する複数の線がフォトリソグラフィプロセスの設計規則に従うように、複数の密接に間隔が空けられた平行な開口部の集合を含んでいてよい。個々の線が典型的には装置10の撮像アセンブリ14により解像不能であるため、複数の線の集合は重ね合わせ目標の棒材を画定する。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態による、目標100等の重ね合わせ目標の作成、及び当該目標を用いた重ね合わせ誤差の測定を模式的に示すフロー図200である。
【0054】
第1の堆積ステップ202において、半導体基板20に第1の薄膜層(例えば図1に示すようなプロセス層38)を堆積する。第1のパターニングステップ204において、例えば第1のマスクを用いたフォトリソグラフィのプロセスにより、第1の層に第1の格子パターンをパターニングし、続いてエッチングを行う。第2の堆積ステップ206において、第1の層に第2の薄膜層(例えばフォトレジスト層40)を堆積する。第2のパターニングステップ208では、例えば第2のフォトリソグラフィマスクを用いて、当該格子パターンの各格子毎にx及びy方向に所定のオフセット量だけずらしながら第2の格子パターンを第2の層にパターニングする。第1と第2の格子パターンが共に重ね合わせ目標を構成する。
【0055】
上述のように第1及び第2の薄膜層をパターニングした後、散乱計測画像取得ステップ210において、例えば装置10の撮像アセンブリ14により散乱計測画像を取得する。重ね合わせ誤差推定ステップ212において、装置10のコントローラ18が散乱計測画像を処理して層38と層40との重ね合わせ誤差を推定する。
【0056】
上述の実施形態は例として引用されており、本発明が本明細書に具体的に図示及び記述したものに限定されないことが理解されよう。本発明の範囲には、本明細書に記述する様々な特徴の組み合わせと部分的な組み合わせの両方、及び上述の説明を精査することにより当業者が想到するであろうが従来技術には開示されていない変形及び変更が含まれる。
図1
図2
図3A-3B】
図4
【国際調査報告】