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特表2024-543031薬物送達デバイスのための電子ユニットおよび移動電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのための電子ユニットおよび移動電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20241112BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20241112BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G16H20/17
A61M5/172
A61M5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526551
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022080402
(87)【国際公開番号】W WO2023078846
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21315213.5
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・アルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066FF05
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
4C066QQ92
5L099AA25
(57)【要約】
本開示は、薬物送達デバイス(1)のための電子回路に関し、電子回路(41、61)は:移動電子デバイス(80、100、120)と無線で通信し、少なくとも無線信号を移動電子デバイスへ伝送するように動作可能な通信インターフェース(46、66)であって、無線信号は、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することを可能にする、通信インターフェース(46、66)と、通信インターフェース(46、66)に動作可能に接続されており、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、電子回路(41、61)の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能であるプロセッサ(42、62)とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)のための電子回路であって、該薬物送達デバイスは、薬剤(8)を投薬するように動作可能であり、該電子回路(41、61)は:
移動電子デバイス(80、100、120)と無線で通信し、少なくとも無線信号を移動電子デバイスへ伝送するように動作可能な通信インターフェース(46、66)であって、無線信号は、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することを可能にする、通信インターフェース(46、66)と、
該通信インターフェース(46、66)に動作可能に接続されており、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、電子回路(41、61)の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能であるプロセッサ(42、62)と
を含む前記電子回路。
【請求項2】
電子回路は、該電子回路と移動電子デバイスとの間の距離を定量的に測定するために、移動電子デバイス(80、100、120)と通信するように動作可能である、請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
プロセッサ(42、62)は、距離が所定の承認距離を上回る限り、電子回路の電子的実装機能へのアクセスを承認しないように構成される、請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
プロセッサ(42、62)は、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析するようにさらに動作可能である、請求項1に記載の電子回路。
【請求項5】
プロセッサ(42、62)に動作可能に接続されており、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定するように動作可能である近接センサ(47、67)をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)。
【請求項6】
プロセッサ(42、62)は、
電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離が所定の動作距離の範囲内にあるとき、および/または
電子回路(41、61)が移動電子デバイス(80、100、120)に対して所定の相対動作位置内にあるときのみ、電子的実装機能を有効化またはトリガするように動作可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)。
【請求項7】
通信インターフェース(46、66)および近接センサ(47、67)のうちの少なくとも1つは、それぞれUWB(超広帯域)ベースのインターフェースまたはセンサとして実装され、電磁超広帯域信号を生成、伝送、受信、および/または処理するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)。
【請求項8】
プロセッサ(42、62)は、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、制御コマンドを生成するように動作可能であり、制御コマンドは:
信号ユニット(48、68)によって使用者が知覚可能な警告または信号を生成すること、
電気機械インターロック(30)によって薬物送達デバイス(1)の駆動機構(11)をロックまたはロック解除すること、
通信インターフェース(46、66)によってデータの伝送をトリガまたは終了すること、
電子回路(41、61)を待機モードから活動モードへまたは逆へ切り換えること、のうちの少なくとも1つを引き起こすように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)。
【請求項9】
通信インターフェース(46、66)は、移動電子デバイス(80、100、120)と使用者特有データを交換するように構成され、使用者特有データは:
薬剤タイプ、
薬剤投薬動作の時刻および/または日付、
投薬された薬剤の量、
使用者(4)の運動データ(251、261)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)。
【請求項10】
薬剤(8)を投薬するように動作可能な薬物送達デバイス(1)であって:
薬剤(8)で充填された薬剤容器(5)を収容するためのハウジング(16、18)と、
薬剤容器(5)から薬剤(8)を排出するまたは引き出すために薬剤容器(5)に動作可能に接続可能な駆動機構(11)と、
ハウジング(16、18)に一体化されたおよび/または駆動機構(11)に動作可能に接続された、請求項1~9のいずれか1項に記載の電子回路(61)とを含む前記薬物送達デバイス。
【請求項11】
薬物送達デバイス(1)のための補助デバイス(40)であって:
ハウジング(50)と、
該補助デバイス(40)を薬物送達デバイス(1)のハウジング(16、18)に締結するための締結具(49)と、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電子回路(41)とを含む前記補助デバイス。
【請求項12】
薬物送達デバイス(1)とともに使用するための移動電子デバイス(80、100、120)であって:
薬物送達デバイス(1)に関連付けられた請求項1~9のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)の通信インターフェース(46、66)と無線で通信するように動作可能であり、少なくとも無線信号を通信インターフェース(46、66)へ伝送するように動作可能である移動通信インターフェース(86、106、126)であって、無線信号は、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することを可能にする、移動通信インターフェース(86、106、126)と、
該移動通信インターフェース(46、66)に動作可能に接続されており、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、移動電子デバイス(80、100、120)の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能であるプロセッサ(82、102、122)と
を含む前記移動電子デバイス。
【請求項13】
プロセッサ(42、62)に動作可能に接続されており、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定するように動作可能である近接センサ(87、107、127)をさらに含む、請求項12に記載の移動電子デバイス(80、100、120)。
【請求項14】
移動通信インターフェース(86、106、126)および近接センサ(87、107、127)のうちの少なくとも1つは、超広帯域信号を伝送および受信するように動作可能なUWB(超広帯域)アンテナ(96)を含む、請求項12または13に記載の移動電子デバイス(80、100、120)。
【請求項15】
電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離、および
移動電子デバイス(80、100、120)の位置に対する電子回路(41、61)の相対位置
のうちの少なくとも1つを使用者(4)に対して示すおよび/または表すように動作可能な信号ユニット(88、108、128)をさらに含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の移動電子デバイス(80、100、120)。
【請求項16】
薬物送達デバイス(1)の電子的実装機能または薬物送達デバイス(1)に関連付けられた電子的実装機能を制御する方法であって:
薬物送達デバイス(1)に取り付けられたまたは一体化された電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の無線通信リンクを確立する工程と、
電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の無線信号の伝送によって、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定する工程と、
距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析または評価する工程と、
距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析または評価に基づいて、電子回路(41、61)および移動電子デバイス(80、100、120)のうちの少なくとも1つの電子的実装機能の実行の有効化、無効化、トリガ、または終了のうちの少なくとも1つを行う工程とを含む前記方法。
【請求項17】
コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムであって、該コンピュータ可読命令は、該プログラムが請求項1~9のいずれか1項に記載の電子回路(41、61)の少なくとも1つのプロセッサ(42、62)によって実行されたとき、または該プログラムが請求項12~15のいずれか1項に記載の移動電子デバイス(80、100、120)の少なくとも1つのプロセッサ(82、102、122)によって実行されたとき、該プロセッサ(42、62、82、102、122)に:
薬物送達デバイス(1)に取り付けられたまたは一体化された電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の無線通信リンクを確立させ、
電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の無線信号の伝送によって、電子回路(41、61)と移動電子デバイス(80、100、120)との間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定させ、
距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析または評価させ、
距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析または評価に基づいて、電子回路(41、61)および移動電子デバイス(80、100、120)のうちの少なくとも1つの電子的実装機能の実行の有効化、無効化、トリガ、または終了のうちの少なくとも1つを行わせる、前記コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイスのための電子回路またはユニット、薬物送達デバイス、薬物送達デバイスのための補助デバイス、薬物送達デバイスの電子的実装機能または薬物送達デバイスに関連付けられた電子的実装機能を制御する方法、ならびにデバイス制御および/またはユーザ認証のためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤の単一または複数の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体、当技術分野でよく知られている。通常、そのようなデバイスは、一般的なシリンジに実質的に類似した目的を有する。
【0003】
薬物送達デバイス、たとえば注射デバイスおよび針ベースの注射システム(NIS)デバイス、たとえばペン型注射器は、使用者特有の複数の要件を満たさなければならない。たとえば、患者が糖尿病などの慢性疾患を患っている場合、患者は身体的に虚弱である可能性があり、視覚障害を患っている可能性もある。したがって、特に家庭用医薬品用の好適な薬物送達デバイスは、構造上頑強である必要があり、容易に使用できるべきである。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取扱いは、分かりやすく容易に理解できるべきである。そのような注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および次の投薬を提供するべきである。さらに、用量設定ならびに用量投薬手順は、容易に操作できて明快でなければならない。
【0004】
特定の疾患の患者は、特定の量の薬剤がペン型注射シリンジを介して注射されること、またはポンプを介して注入されることを必要とすることがある。
【0005】
いくつかの薬物送達または注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の選択および以前設定された用量の注射を提供する。他の注射デバイスは、固定用量の設定および投薬を提供する。ここでは、所与の処方予定に従って注射されるべき薬剤の量は常に同じであり、経時的に変化せず、または変化させることができない。
【0006】
様々な注射デバイスによって実施される針ベースの注射は、特定の日付または時刻に設定または投薬または注射された薬剤の量に関する測定およびロギングデータにますます関連付けられる。このため、注射デバイスは、収集または測定された投薬関連データのデータ取得および/またはデータロギングならびに通信を提供する電子回路を備えることができる。
【0007】
そのような電子回路または電子ユニットは、注射デバイス自体に実装または一体化することができる。別法として、そのような電子回路または電子ユニットは、補助デバイスまたはアドオンデバイスによって提供することができ、そのような補助デバイスまたはアドオンデバイスは、注射デバイスに解放可能に取り付けられるように構成されており、注射デバイスの使用中に注射関連データをログ記録するように動作可能である。さらに、データロギングのための電子回路はまた、以前記憶された注射関連データをさらなるデータ処理のために外部電子デバイスへ伝送するための通信インターフェースを備えることができる。
【0008】
使用者または患者の中には、異なる薬物送達デバイスを使用することによって異なる薬剤を投与することが必要な人がいる可能性があり、それらのデバイスは一見類似して見える可能性がある。また、デバイスは家庭で保存されることがあり、理論的には1人だけではなく複数の人間がデバイスにアクセスすること可能になる。さらに、患者の中には、自身の家庭内で薬物送達デバイスの位置を特定し、発見し、または回収することが難しい人もいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、使用者が薬物送達デバイスを使用するための確実で直観的かつ平滑な支持を可能にして提供する薬物送達デバイスのための電子回路に対する改善を提供することが望ましい。さらに、薬物送達デバイスの使用が許可されていない使用者による薬物送達デバイスの無許可の使用を防止するように、患者の安全性を促進するためのコンピュータプログラムおよびそれぞれのハードウェア構成要素を提供することが望ましい。さらに、目的は、薬物送達デバイスが見つからない場合に、薬物送達デバイスの位置特定を可能または簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本開示は、薬物送達デバイスのための電子回路に関する。薬物送達デバイスは、薬剤、たとえば液体薬剤を、注射によって投薬するように動作可能である。電子回路は、移動電子デバイスと無線で通信するように動作可能であり、また少なくとも無線信号を移動電子デバイスへ伝送するように動作可能である通信インターフェースを含む。無線信号は、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することおよび/または定量的に測定することを可能にする。電子回路は、通信インターフェースに動作可能に接続されたプロセッサをさらに含む。プロセッサは、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、電子回路の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能である。
【0011】
典型的には、プロセッサは、電子回路の電子的実装機能へのアクセスを承認するまたは承認しないように動作可能である。プロセッサが電子的実装機能へのアクセスを承認するとき、プロセッサは、それぞれの機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能である。プロセッサが電子的実装機能へのアクセスを承認しないとき、たとえば所定の範囲外の無線信号に基づいて距離または相対位置が判定されたとき、プロセッサは、電子回路の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作不能である。
【0012】
電子回路は、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離のうちの少なくとも1つを定量的に測定するまたは判定するために、移動電子デバイスと、特に移動電子デバイスの対向通信インターフェースと通信するように動作可能である。追加または別法として、電子回路および移動電子デバイスとの無線通信は、電子回路および移動電子デバイスの相対位置を判定および/または測定する働きをする。
【0013】
電子回路と移動電子デバイスとの間の相対位置は、これらの物体間の距離ならびに方向を示すことができる。たとえば移動電子デバイスの観点から、相対位置は、電子回路が移動電子デバイスに対して実際に位置する方向および距離を示す。相対位置は、電子回路と移動電子デバイスとの間の最短距離の相対角度または方向を示す距離および距離ベクトルによって特徴付けることができる。
【0014】
電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することによって、距離および/または相対位置を制御パラメータとして使用することによって、電子回路の特定の機能の有効化、無効化、たとえばトリガまたは終了のうちの1つが行われる。
【0015】
典型的な実装では、距離が所定の承認距離を下回るとき、電子回路の電子的実装機能へのアクセスが提供される。距離が所定の承認距離を上回る限り、プロセッサは、電子回路の電子的実装機能へのアクセスを承認しないように構成することができる。同様に、移動電子デバイスに対する電子回路の距離だけでなく距離ベクトルおよび/または向きも制御パラメータとして使用することができる。
【0016】
実質上、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定し、電子回路の電子的実装機能へのアクセスを与えるための制御パラメータとしてこのパラメータを使用することによって、移動電子デバイス、特に移動電子デバイスとの無線通信は、たとえば電子回路の電子的実装機能をロック解除するまたは承認するためのキーロックを提供することができる。
【0017】
別の例によれば、プロセッサ、無線通信インターフェース、および移動電子デバイスのうちの1つが、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定および/または判定するように構成される。いくつかの例では、電子回路の通信インターフェースおよびプロセッサのうちの1つが、たとえば通信インターフェースによって取得または受信された無線通信信号を処理することによって、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを導出および/または測定および/または判定するように動作可能である。
【0018】
他の例では、移動電子デバイスが、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および/または相対位置を判定、導出、または計算するように構成される。ここでは、移動電子デバイスによって判定または計算される距離および/または相対位置は、移動電子デバイスの対向通信インターフェースと電子回路の通信インターフェースとの間に確立された無線通信リンクを通って、電子回路へ伝送することができる。ここでは、電子回路は、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および/または相対位置を導出または計算するように動作不能とすることができる。逆に、距離および相対位置のうちの少なくとも1つについてのそれぞれの情報は、移動電子デバイスによって導出することができ、したがって無線通信リンクを通って電子回路の通信インターフェースへ伝送することができる。
【0019】
こうして、それぞれの距離または相対位置情報が電子回路に対して利用可能になる。ここでは、たとえばスマートフォン、スマートウォッチ、フィットネストラッカ、たとえばウェアラブル電子デバイスのうちの1つとして実装される移動電子デバイスによって、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを計算するための計算能力を排他的に提供することができる。
【0020】
さらなる例によれば、電子回路のプロセッサは、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析するように動作可能である。ここでは、プロセッサによって、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを導出または計算することができる。別法として、移動電子デバイスによって、無線通信を介して距離および/または相対位置を取得することができる。
【0021】
いくつかの例では、電子回路の通信インターフェースは、移動電子デバイスの対向通信インターフェースとの間で無線信号を伝送ならびに受信するように動作可能なトランシーバとして実装される。いくつかの例では、移動電子デバイスが、電子回路の通信インターフェースによって受信されるべき無線信号を最初に伝達または放送することができる。ここでは、電子回路の通信インターフェースは、対向通信インターフェースから受信した無線信号を処理するように構成することができ、応答無線信号を生成し、ならびにそのような応答無線信号を対向通信インターフェースへ伝送するようにさらに構成することができる。したがって、電子回路の通信インターフェースは、移動電子デバイスの対向通信インターフェースとの双方向無線通信を提供するように実装することができる。
【0022】
いくつかの例では、通信インターフェースは、移動電子デバイスの対向通信インターフェースから受信した無線信号を修正し、それに対応して修正された無線信号を対向通信インターフェースへ戻すまたは伝送するように動作可能である。次いで、移動電子デバイスの対向通信インターフェースおよび任意選択のプロセッサが、電子回路の通信インターフェースの応答信号から、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを導出または計算するように動作可能であってよい。
【0023】
いくつかの例では、電子回路の通信インターフェースが、無線信号の伝送を開始し、少なくとも1つの移動電子デバイスから返ってくる無線信号を受信することができる。ここでは、移動電子デバイスの対向通信インターフェースは、電子回路の通信インターフェースによって開始および/または伝送された無線信号を受信、処理、および/または修正するように構成することができる。いずれにしても、電子回路の通信インターフェースならびに移動電子デバイスの対向通信インターフェースは、無線信号を伝送および受信するように動作可能なトランシーバとしてとして実装される。
【0024】
さらなる例によれば、電子回路は、電子回路と移動電子デバイスのうちの少なくとも1つとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定するように動作可能である近接センサを含む。近接センサは、電子回路の通信インターフェースと少なくとも1つの移動電子デバイスの対向通信インターフェースとの間の無線通信によって実装することができる。近接センサは、通信インターフェース内に実装することができる。他の例では、通信インターフェースが近接センサを構成または形成する。
【0025】
実質上、薬物送達デバイスに一体化されたまたは取り付けられた電子回路と少なくとも1つの移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定することによって、電子回路と少なくとも1つの移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの1つに応じて、電子回路および/または薬物送達デバイスのそれぞれの電子的実装機能を実施または実行することができる。このようにして、移動電子デバイスが電子回路に対して特定の幾何学的な領域または方向の範囲内にあるとき、電子的に実装されたデバイス機能が唯一および/または排他的に有効化、無効化、トリガ、または終了されることを実質上保証することができる。
【0026】
さらなる例によれば、近接センサは、プロセッサに動作可能に接続される。ここでは、プロセッサは、電子回路と少なくとも1つの移動電子デバイスとの間の距離が所定の動作距離の範囲内にあるとき、および/または電子回路が少なくとも1つの移動電子デバイスに対して所定の相対動作位置内にあるときのみ、少なくとも1つの識別信号を評価するように動作可能とすることができる。
【0027】
近接センサによって、薬物送達デバイスの特定の機能のより自動化されたロック解除を提供することができる。いくつかの例では、薬物送達デバイスが電子回路の電子的実装機能によって制御可能な電気機械インターロックを備えた場合、移動電子デバイスから伝送される識別信号が使用者特有データ記録と整合するとき、移動電子デバイスが電子回路に、したがってその近接センサに接近することで、インターロックの解放または停止をトリガすることができる。
【0028】
さらなる例によれば、通信インターフェースおよび近接センサのうちの少なくとも1つは、UWB(超広帯域)ベースの近接センサとして実装される。近接センサは、電磁超広帯域信号の送受信に基づいて、電子回路と少なくとも1つの移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを定量的に測定するように構成される。
【0029】
典型的には、電磁UWB信号は、比較的低いエネルギーレベルで無線スペクトルの比較的大きい部分をカバーする非常に短いRFパルスを含む。近接センサと少なくとも1つの移動電子デバイスとの間のUWBベースの通信リンクによって、高精度で、たとえば数センチメートル以下の範囲内で、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離を判定することができる。
【0030】
近接センサ、したがって電子回路と、少なくとも1つの移動電子デバイスとの間のUWBベースの通信によって、少なくとも1つの移動電子デバイスに対する電子回路の相対的な位置および/または向きを示す相対位置情報を提供することもでき、逆も同様である。
【0031】
UWBベースの無線通信は、物体の距離を取得するだけでなく、物体が別の物体に対して実際に位置しまたは配置される方向を測定または判定することも可能にする。近接センサと少なくとも1つの移動電子デバイスとの間のUWBベースの通信は、たとえば移動電子デバイスに対するページャ機能を実装するのに特に有用であり、したがって薬物送達デバイスに取り付けられたまたは一体化された電子回路を発見することを可能にする。
【0032】
電子回路のさらなる例では、プロセッサは、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、制御コマンドを生成するように動作可能である。制御コマンドは:
- 信号ユニットによって使用者が知覚可能な警告または信号を生成すること、
- 電気機械インターロックによって薬物送達デバイスの駆動機構をロックまたはロック解除すること、
- 通信インターフェースによってデータの伝送をトリガまたは終了すること、
- 電子回路を待機モードから活動モードへ切り換えること、または逆も同様であり、電子回路を活動モードから待機モードへ切り換えることのうちの少なくとも1つを引き起こすように構成される。
【0033】
いくつかの例では、プロセッサは、たとえば電子回路と移動電子デバイスとの間の距離がそれぞれ所定の承認済み距離または承認距離の範囲内にあるとき、信号ユニットに承認または確認信号のうちの1つを生成させる制御コマンドを生成する。使用者が知覚可能な信号または警告は、たとえば電子回路および/または薬物送達デバイスの機能が現在有効化またはロック解除されていることを使用者に対して示すことができる。
【0034】
他の状況では、たとえば距離が承認距離を上回るとき、プロセッサは、電子回路および/または薬物送達デバイスのそれぞれの電子的実装機能のロックを示す使用者が知覚可能な警告または信号を信号ユニットに生成させる制御コマンドを生成するように動作可能とすることができる。いくつかの例では、移動電子デバイスと電子回路との間の距離が所定の承認距離を上回る限り、薬物送達デバイスの駆動機構を機械的にロックまたは阻止することができる。追加または同時に、信号ユニットは、使用者へのそれぞれのインジケーションを生成するように動作可能とすることができる。
【0035】
さらなる例によれば、電子回路の通信インターフェースは、移動電子デバイスと使用者特有データを交換するように構成される。使用者特有データは:
- 薬剤タイプ、
- 薬剤投薬動作の時刻および/または日付、
- 投薬された薬剤の量、
- 使用者の運動データのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
電子回路の通信インターフェースと移動電子デバイスの対向通信インターフェースとの間に確立される無線通信リンクは、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定または判定するための無線信号を交換するように動作可能であるだけでなく、使用者特有データまたは薬物送達デバイスの構成について特有のさらなるデータを交換するために使用することもできる。その限りにおいて、電子回路と移動電子デバイスとの間の無線通信リンクは、2つまたは複数の目的、すなわち距離の測定ならびに使用者特有および/またはデバイス特有情報の伝達のための機能を提供する。
【0037】
いくつかの例では、電子回路は、薬物送達デバイスの電子ユニット内に実装される。薬物送達デバイスは、注射デバイスとして、たとえばペン型注射器として実装することができる。他の例では、電子回路は、注射デバイスのハウジングへの取付けもしくは締結および/もしくは固定のために構成された補助デバイスの一部であり、またはそのような補助デバイスに一体化される。
【0038】
別の態様によれば、本開示はさらに、薬剤を投薬するように動作可能な、たとえば注射によって薬剤を投薬するように動作可能な薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは、薬剤で充填された薬剤容器を収容するためのハウジングを含む。典型的には、薬剤容器は、患者の生体組織への注射のために構成された液体薬剤で充填されたカートリッジを含む。薬物送達デバイスは、薬剤容器から薬剤の用量を排出するまたは引き出すために薬剤容器に動作可能に接続可能な駆動機構をさらに含む。薬物送達デバイスは、ハウジングに一体化されたおよび/または駆動機構に動作可能に接続された、上述した電子回路をさらに含む。
【0039】
薬物送達デバイス内または薬物送達デバイス上に実装されるとき、電子回路はまた、薬物送達デバイスの動作を監視するように動作可能とすることができる。電子回路は、薬物送達デバイスの使用者によって開始または実施される薬剤の用量の設定および/または投薬を測定および/または記録するように動作可能とすることができる。
【0040】
薬物送達デバイスは上述した電子回路を含むため、薬物送達デバイスのための電子回路に関連して上述したすべての構成、効果、および利益は薬物送達デバイスにも等しく当てはまり、逆も同様である。
【0041】
別の態様によれば、本開示は、上述した薬物送達デバイスのための補助デバイスまたはアドオンデバイスに関する。補助デバイスは、ハウジングと、薬物送達デバイスのハウジングに補助デバイスを締結および/または固定するための締結具とを含む。さらに、補助デバイスは、上述した電子回路を含む。その限りにおいて、電子回路に関連して上述したすべての構成、効果、および利益は補助デバイスにも等しく当てはまり、逆も同様である。
【0042】
補助デバイスは、薬物送達デバイスに取り付けられたとき、薬物送達デバイスの構成を測定または判定するようにさらに動作可能とすることができる。補助デバイスは、注射デバイスによって現在設定または投薬された用量のサイズを測定するように特に構成することができる。典型的には、補助デバイスは、薬物送達デバイスの繰り返されるまたは頻繁な使用を監視するように動作可能である、および/またはそのように構成される。
【0043】
補助デバイスは、注射デバイスによって実施された投与または注射履歴を生成および/または記憶ならびに通信するように構成することができる。典型的には、補助デバイスは、薬剤の量が薬物送達デバイスによって投薬または注射された日付および時刻を記憶および/または監視するように動作可能である。薬剤の特定の量、たとえば一定または可変サイズの用量も同様に判定、測定、および/または記録することができる。
【0044】
別の態様では、本開示は、薬物送達デバイスとともに使用するための移動電子デバイスに関する。移動電子デバイスは、薬物送達デバイスに関連付けられた電子回路の移動または対向通信インターフェースと無線で通信するように動作可能な移動通信インターフェースを含む。移動通信インターフェースは、典型的には、少なくとも無線信号を通信インターフェースへ伝送するように動作可能である。無線信号は、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定することを可能にする。
【0045】
移動電子デバイスは、移動通信インターフェースに動作可能に接続されたプロセッサをさらに含む。プロセッサは、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析に基づいて、移動電子デバイスの電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するように動作可能である。
【0046】
ここでは、上述した電子回路または薬物送達デバイスと同時に、移動電子デバイスのプロセッサが、移動電子デバイスの電子的実装機能へのアクセスを提供または否定するために、したがって承認しまたは承認しないために、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを処理するように動作可能である。
【0047】
したがって、移動電子デバイスと電子回路との間の距離および/または相対位置が所定の承認範囲、距離、もしくは位置を超える限り、またはその範囲外である限り、移動電子デバイスの特定の機能、たとえば薬物送達デバイスと協働するための移動電子デバイスの機能を無効化することができる。
【0048】
いくつかの例では、移動電子デバイスの電子的実装機能は、薬物送達デバイスに関連付けられた電子回路のデバイス特有または薬剤特有または使用者特有のデータの読出しを含む。したがって、データの読出しおよび/またはそれぞれのデータ伝達通信リンクの確立は、移動電子デバイスと電子回路との間の距離が所定の承認距離の範囲内にあることを必要とする。
【0049】
いくつかの例では、移動電子デバイスを薬物送達デバイスの遠隔制御または遠隔コントローラとして実装することができるとき、電子回路に関連付けられたまたは電子回路を備える薬物送達デバイスと移動電子デバイスとの間の距離を、承認済み距離の範囲内になるように低減させることが必要になることがある。移動電子デバイスが所定の承認距離または承認位置の範囲外に位置する限り、移動電子デバイスの遠隔制御機能を無効化することができる。移動電子デバイスと電子回路との間の距離が所定の承認距離の範囲内にあるとき、および/または電子回路に対する移動電子デバイスの相対位置が所定の承認済み相対位置範囲内にあるとき、移動電子デバイスのそれぞれの機能を有効化することができる。
【0050】
こうして、移動電子デバイスのための一種の遠隔制御および/または移動電子デバイスの特定の薬物送達デバイス関連機能は、移動電子デバイスを薬物送達デバイスに密接させることを必要とする。この要件によって、患者の安全性および薬物送達デバイスの意図される使用への順守を強化することができる。
【0051】
別の例によれば、移動電子デバイスは、プロセッサに動作可能に接続されており、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを測定するように動作可能である近接センサを含む。近接センサは、移動通信インターフェースに一体化することができる。いくつかの例では、移動通信インターフェースは近接センサを提供し、または近接センサに寄与する。
【0052】
移動通信インターフェースは、移動電子デバイスに関連して上述した対向通信インターフェースを提供することができ、または移動電子デバイスに関連して上述した対向通信インターフェースと一致することができる。したがって、移動通信インターフェースは、電子回路の通信インターフェースへ電磁信号を無線で伝送するように動作可能であり、そのように構成される。移動通信インターフェースはまた、それぞれの無線信号、たとえば応答信号を電子回路の通信インターフェースから、たとえば引き換えに受信するように構成される。
【0053】
さらなる例によれば、移動通信インターフェースおよび近接センサのうちの少なくとも1つは、超広帯域信号を伝送および/または受信するように動作可能なUWBアンテナを含む。UWBアンテナは、典型的には、上述した近接センサおよび通信インターフェースのうちの1つに一体化される。
【0054】
別の例によれば、移動電子デバイスは:
- 電子回路と移動電子デバイスとの間の距離、および
- 移動電子デバイスの位置に対する電子回路の相対位置のうちの少なくとも1つを使用者に対して示すおよび/または表すように動作可能な信号ユニットをさらに含む。
【0055】
信号ユニットは、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを視覚的に表すように構成された1次元または2次元のディスプレイを含むことができる。他の例では、信号ユニットは、可視光信号を生成および提供するように動作可能な光源を単に含むことができる。信号ユニットは、異なる色、異なる明るさ、および/または異なる持続時間の光信号を提供するように動作可能とすることができる。したがって、光源によって、たとえば点滅光の周波数、明るさ、および持続時間のうちの少なくとも1つ、いくつか、もしくはすべてを変動させることによって、光信号の強度を変動させることによって、ならびに/または光信号の色を変動させることによって、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを示すことができる。
【0056】
他の例では、信号ユニットは、音響信号を生成するためのスピーカまたは同様のハードウェア構成要素を含む。またここでは、音響信号の強さまたは強度ならびに持続時間および周波数は、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを示すように構成することができる。
【0057】
他の例では、信号ユニットは、たとえば機械的な振動を生成することによって、または機械的もしくは触覚的に知覚可能なノッキング信号を生成することによって、触覚的に知覚可能な信号を生成するように動作可能である。またここでは、触覚信号の強度、持続時間、および周波数のうちの少なくとも1つを変動させることによって、信号ユニットは、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを示すことができる。
【0058】
さらなる例によれば、移動電子デバイスは、外部電子デバイスとして実装されており、薬物送達デバイスの電子回路から分離され、または薬物送達デバイスに取付け可能および/もしくは固定可能な補助デバイスの電子回路から分離される。いくつかの例では、移動電子デバイスは、ウェアラブル電子デバイスである。いくつかの例では、移動電子デバイスは、スマートフォン、タブレットコンピュータ、スマートウォッチ、フィットネストラッカ、または無線タグとして実装される。
【0059】
典型的には、移動電子デバイスは、上述した電子回路と通信するための移動電子デバイスとして実装される。その限りにおいて、電子回路、薬物送達デバイス、および/または補助デバイスに関連して上述したすべての構成、効果、および利益は移動電子デバイスにも等しくまたは同時に当てはまることができ、逆も同様である。
【0060】
別の態様によれば、本開示はまた、薬物送達デバイス、たとえば上述した薬物送達デバイスに関連付けられた電子的実装機能を制御する方法に関する。この方法は、薬物送達デバイスに取り付けられたまたは一体化された電子回路と移動電子デバイスとの間の無線通信リンクを確立する工程を含む。この方法は、電子回路と移動電子デバイスとの間の無線信号の伝送によって、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定する工程をさらに含む。この方法は、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析または評価する工程をさらに含む。さらに、この方法は、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析または評価に基づいて、電子回路および移動電子デバイスのうちの少なくとも1つの電子的実装機能の実行の有効化、無効化、トリガ、または終了のうちの少なくとも1つを行うことを含む。
【0061】
典型的には、この方法は、上述した電子回路、上述した薬物送達デバイス、上述した補助デバイス、および上述した移動電子デバイスのうちの少なくとも1つまたはいくつかによって実装することができる。いくつかの例では、この方法は、典型的には薬物送達デバイスおよび補助デバイスのうちの1つに実装される電子回路と、上述した移動電子デバイスとの間の無線通信によって実施または実行される。
【0062】
この方法のいくつかの例では、電子回路および移動電子デバイスのうちの少なくとも1つの電子的実装機能の実行の有効化、無効化、トリガ、または終了のうちの少なくとも1つは:
- 信号ユニットによって使用者が知覚可能な警告または信号を生成すること、
- 電気機械インターロックによって薬物送達デバイスの駆動機構をロックまたはロック解除すること、
- 通信インターフェースによってデータの伝送をトリガまたは終了すること、
- 電子回路を待機モードから活動モードへ切り換えること、または逆も同様であり、電子回路を活動モードから待機モードへ切り換えることのうちの少なくとも1つまたは多数を含む。
【0063】
いくつかの例では、この方法はまた、薬物送達デバイス内に実装される第1の電子回路、補助デバイス内に実装される第2の電子回路、および上述した移動電子デバイスによって実装することができる。ここでは、第1および第2の電子回路が各々、上述した電子回路を含む。
【0064】
別の態様によれば、本開示は、コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムに関し、コンピュータ可読命令は、上述した電子回路の少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、または上述した移動電子デバイスの少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、それぞれのプロセッサに、薬物送達デバイスに取り付けられたまたは一体化された電子回路と、使用者の移動電子デバイスとの間の無線通信リンクを確立させる。
【0065】
コンピュータ可読命令はさらに、プロセッサに、電子回路と移動電子デバイスとの間の無線信号の伝送によって、電子回路と移動電子デバイスとの間の距離および相対位置のうちの少なくとも1つを判定させることができる。コンピュータ可読命令はまた、それぞれの無線電磁信号の伝送および受信をトリガすることができる。コンピュータ可読命令はさらに、プロセッサに、距離および相対位置のうちの少なくとも1つを解析または評価させ、距離および相対位置のうちの少なくとも1つの解析または評価に基づいて、電子回路および移動電子デバイスのうちの少なくとも1つの電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了させるように動作可能である。
【0066】
典型的には、コンピュータプログラムは、薬物送達デバイスの電子的実装機能または薬物送達デバイスに関連付けられた電子的実装機能を制御する上述した方法を実行するように構成される。その限りにおいて、薬物送達デバイスのための電子回路、薬剤を投薬するように動作可能な薬物送達デバイス、そのような薬物送達デバイスのための補助デバイス、薬物送達デバイスとともに使用するための移動電子デバイス、および/または電子的実装機能を制御する方法に関連して上述したすべての構成、効果、および利益はコンピュータプログラムにも等しく当てはまり、逆も同様である。
【0067】
さらなる態様によれば、本開示は:
- 上述した電子回路を備える薬物送達デバイス、
- 薬物送達デバイスに取付け可能であり、上述した電子回路を備える補助デバイス、および
- 上述した移動電子デバイスのうちの1つ、任意に選択された複数、またはすべてを含むセットに関する。その限りにおいて、電子回路、薬物送達デバイス、補助デバイス、および移動電子デバイスのうちのいずれか1つに関連して上述したすべての構成、効果、および利益はこのセットにも等しく当てはまり、逆も同様である。
【0068】
概して、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって画成される。注射デバイスは、特有の実施形態または例に限定されるものではなく、異なる実施形態または例の要素の任意の組合せを含む。その限りにおいて、本開示は、特許請求の範囲の任意の組合せ、および異なる例または実施形態に関連して開示する構成の任意の技術的に実行可能な組合せを包含する。
【0069】
さらなる例によれば、電子回路と移動電子デバイスとの間で伝送される少なくとも1つの無線信号は、移動電子デバイスの使用者の獲得運動データを含む。プロセッサおよび/または移動電子デバイスは、獲得運動データを、使用者特有データレコードの記憶運動データと比較することによって、獲得運動データを評価するようにさらに動作可能である。使用者特有データレコードは、電子回路および移動電子デバイスのうちの1つのストレージ内に提供することができる。
【0070】
さらなる例によれば、電子回路のプロセッサおよび/または移動電子デバイスのプロセッサは、獲得運動データおよび/または記憶運動データ間の整合度を示すデータ整合インデックスを生成するように動作可能である。プロセッサは、データ整合インデックスに基づいて、電子回路の電子的実装機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了するようにさらに動作可能とすることができる。こうして、薬物送達デバイスを使用することが許可された使用者を、運動データによって識別することができる。
【0071】
運動データは、電子回路によって、またはたとえば使用者が携帯するもしくは使用者に取り付けられた移動電子デバイスによって、獲得または収集することができる。典型的には、使用者の運動データは、所定の期間にわたって獲得され、ならびに/または運動データは、特有および所定の時点もしくは特定の日に獲得される。運動データは、薬物送達デバイスおよび/または移動電子デバイスを使用する各使用者にとって特徴的かつ明確なものとすることができる。運動データは、各使用者の一種の指紋を提供することができる。
【0072】
典型的には、第1の使用者は、第1の使用者特有データレコードの運動データによって特徴付けられる。それに応じて、第2の使用者は、第2の使用者特有データレコードの運動データによって特徴付けることができる。使用者が動いている間または使用者が特定の動きもしくは運動パターンを実行もしくは実施している間に獲得された運動データを比較し、この使用者の獲得運動データを使用者特有データレコードの運動データと比較することによって、移動電子デバイスの使用者を識別することができる。
【0073】
典型的には、いくつかの例では、使用者特有データレコードは、特定の薬物送達デバイスに割り当てられるまたはマッピングされる。同じ使用者が薬物送達デバイスを使用し、この特定の使用者の運動データが獲得されたとき、獲得運動データを、薬物送達デバイスに割り当てられたまたはマッピングされた使用者特有データレコードと比較すると、高い整合度または類似性を示す。それに応じて、それぞれの使用者は、薬物送達デバイスを使用することが許可される。
【0074】
それに応じて、薬物送達デバイスの使用者による要求に応じて、電子回路、したがって薬物送達デバイスの少なくとも1つの機能が有効化、無効化、トリガ、または終了される。他の状況では、薬物送達デバイスを使用することが許可されていない第2の使用者がこの特定のデバイスを使用しようとしたとき、この第2の使用者の運動データが収集または獲得され、この特定の薬物送達デバイスにマッピングされた第1の使用者の使用者特有データレコードの運動データと比較される。第2の使用者の運動データは使用者特有データレコードの運動データから区別されるため、第2の使用者の獲得運動データと第1の使用者の使用者特有データレコードの記憶運動データとの間で判定される整合度または類似性はかなり低くなる。それに応じて、データ整合インデックスに基づいて、薬物送達デバイスのそれぞれの機能が有効化、無効化、トリガ、または終了される。
【0075】
いくつかの例では、使用者が薬物送達デバイスを使用することが認証されているとき、それぞれのデバイス機能を有効化またはトリガすることができる。他の状況では、使用者の運動データの解析または評価により、たとえば獲得運動データと記憶運動データとの間の整合度がかなり低いことから、使用者が薬物送達デバイスを使用することが認証されていないことが明らかになったとき、薬物送達デバイスのそれぞれの機能を無効化または終了することができる。
【0076】
さらなる例によれば、使用者の運動データは、センサによって獲得される。したがって、電子回路および/または移動電子デバイスは、プロセッサに動作可能に接続されたセンサを含む。センサは、使用者自身が動いたとき、または移動電子デバイスおよび薬物送達デバイスのうちの少なくとも1つを動かしたとき、使用者の動きもしくは動きパターンおよび/またはジェスチャを認識するように動作可能とすることができる。こうして、使用者の動きプロファイルまたはパターンを、使用者のそのようなジェスチャまたは典型的なジェスチャとして検出するおよび/または定量的に測定することができる。そのような動きパターンまたはジェスチャは、恒久的にまたは場合により獲得することができ、使用者特有データレコードの動きもしくは運動パターンおよび/またはジェスチャデータと比較することができる。
【0077】
典型的には、センサは、加速度センサ、回転センサ、位置センサ、距離センサのうちの少なくとも1つを含む。センサは、電気センサ信号を生成するように動作可能である。プロセッサは、典型的には、センサ信号を評価および/または解析して、電子回路および/または移動電子デバイス、したがってセンサを動かしたときの使用者の特徴的な運動またはジェスチャを示す運動データを導出するおよび/または特徴付けるように動作可能である。
【0078】
記憶運動データからの獲得運動データの逸脱を検出することができ、したがって整合度がかなり低くなり、かなり低い整合インデックスが生成される。整合インデックスのサイズに応じて、典型的にはそれぞれの許可を必要とする電子回路および/または関連付けられた薬物送達デバイスの機能の実行を有効化、無効化、トリガ、または終了することができる。
【0079】
センサが位置センサを構成するとき、センサは、たとえば衛星ベースの位置決めシステムと通信することによって、または別の電子デバイスと通信することによって、絶対または相対位置を判定するように動作可能とすることができる。こうして、別の電子デバイスに対するたとえば地理座標の形態またはたとえば相対座標の形態のセンサの絶対位置を測定または判定することができる。
【0080】
さらなる例では、電子回路はまた、クロックを備えており、クロックによって、センサによって獲得された運動データまたは位置データを日付、時点、および/または時間間隔にマッピングすることができる。こうして、使用者の典型的な運動パターンを示す経時的な運動プロファイルまたは動きプロファイルを生成することができる。
【0081】
一例として、使用者は、典型的な時点または時間間隔に特定の地理的位置にいると識別することができる。たとえば、第1の使用者は、1日8時間、たとえば9時から17時まで、特定のオフィスビルに滞在することによって特徴付けることができる。使用者は、昼休みのために決まった時間に、たとえば30分の時間間隔にわたってオフィスビルを離れることがある。
【0082】
さらに、使用者は、たとえば車または公共交通機関によって特定の時刻に家から職場へ移動することによって認識することができる。そのような運動データは、比較的長い時間間隔にわたって捕捉および獲得されることがある。現在獲得された運動データがそれぞれの運動データの長期平均から大幅に逸脱するとき、これは、異なる使用者がそれぞれの電子回路を使用している状況を示すことができる。
【0083】
記憶運動データまたは平均運動データからの獲得運動データの逸脱は、データ整合インデックスによって定量的に表現することができる。こうして、現在獲得された運動データが使用者特有データレコードにマッピングされたまたは割り当てられた特定の使用者から取得された確率または可能性、およびその距離を生成することができる。
【0084】
さらなる例によれば、使用者の運動データの少なくとも一部分が、衛星測位システム、通信ネットワークのアクセスポイント、薬物送達デバイスに取付け可能な補助デバイス、薬物送達デバイスの電子ユニットもしくは電子回路、または移動電子デバイスなどの移動電子デバイスの対向通信インターフェースのうちの少なくとも1つとの無線通信を介して、通信インターフェースによって獲得される。
【0085】
こうして、使用者の運動データを取得する方法に関して高度な柔軟性が提供される。その限りにおいて、加速度センサ、回転センサ、位置センサ、および距離センサなどのセンサを含まない電子デバイスでも、使用者の運動データを取得することができる。たとえば、都市部では、通信ネットワークの多数のアクセスポイントを提供することができ、電子回路が動きまたは運動を受けたとき、電子回路の通信インターフェースはそのようなアクセスポイントへの通信リンクを確立する。単に1つの場所から別の場所への動きまたは運動中に通信ネットワークの異なるアクセスポイントとの通信リンクのログ記録を確立することによって、使用者の習慣的な動きまたは運動を示すことができる運動パターンまたは運動プロファイルを生成することができる。
【0086】
この文脈で、「遠位」または「遠位端」という用語は、注射デバイスのうち人または動物の注射部位の方を向いている端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、注射デバイスのうち人または動物の注射部位から最も離れている反対側の端部に関する。
【0087】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0088】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0089】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0090】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0091】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0092】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0093】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0094】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0095】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0096】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0097】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0098】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0099】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0100】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0101】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0102】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0103】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0104】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、調合、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0105】
本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本開示に加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるいずれの参照番号も、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0106】
以下、薬物送達デバイスの電子的実装機能または薬物送達デバイスに関連付けられた電子的実装機能を制御する方法、ならびに認証システム、電子回路、薬物送達デバイス、補助デバイス、および移動電子デバイスの多数の実装を含む多数のハードウェア構成の多数の例について、図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】ペン型注射デバイスとして実装された薬物送達デバイスの一例を表す図である。
図2】補助デバイスを備えた注射デバイスを示す図である。
図3】ペン型注射デバイスの一例の長手方向断面図である。
図4】認証システムの多数のハードウェア構成要素を示す図である。
図5】認証システムの一例のブロック図である。
図6】認証システムの別の実装のブロック図である。
図7】認証システムのさらなる実装のブロック図である。
図8】注射デバイスに取り付けられた補助デバイスが少なくとも1つまたは複数の移動電子デバイスと通信するように動作可能であるブロック図である。
図9】移動電子デバイスと薬物送達デバイスの電子ユニットとの間の無線通信を表す図である。
図10】異なるデータレコードが提供され割り当てられた異なる使用者を概略的に表す図である。
図11】薬物送達デバイスを使用する使用者を認証する方法の流れ図である。
図12】獲得運動データと記憶運動データとの比較を示す図である。
図13】使用者を認証する方法のさらなる実装の流れ図である。
図14】使用者を認証する方法のさらなる流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1図3に、注射デバイスとして実装された薬物送達デバイス1の一例が概略的に表されている。薬物送達デバイス1は、たとえば円筒形または管状の細長いハウジング16を含む。ハウジング16は、長手方向に沿って延びる。遠位方向2、したがって遠位端に向かって、注射デバイス10のハウジングの遠位部材を形成または構成する容器ハウジング18に注射針19を取り付けることができる。近位方向3に向かって、したがって注射デバイス10の近位端に、それぞれ薬剤8の用量の設定および用量の投薬を可能にする用量ダイヤル12および/または用量ボタン14が設けられる。
【0109】
容器ハウジング18は、薬剤容器5を収容するような構成および形状である。薬剤容器5は、管状のバレルを含むことができる。たとえば標準的なカートリッジとして実装された薬剤容器5は、可動のストッパ6によって近位方向3に向かって封止することができる。薬剤容器5の遠位端は、典型的には、穿孔可能な封止7によって封止される。したがって、薬剤容器5の出口は、穿孔可能な封止によって覆われており、薬剤容器5のヘッドにたとえばクリンプキャップ(図示せず)によって固定される。
【0110】
注射デバイス10は、駆動機構11をさらに含む。駆動機構11は、ハウジング16の長手方向に沿って延びる細長い形状のピストンロッド24を含む。ハウジング16の内側には、駆動機構11の支持体または取付具として働く内側本体15を設けることができる。ピストンロッド24は、内側本体15にねじ係合することができる。したがって、駆動機構11によって誘起されるピストンロッド24の回転は、内側本体15およびハウジング16に対するピストンロッド24の前進運動を招き、ストッパ6を遠位方向2に薬剤容器5に対して付勢するまたは動かすことができる。こうして、薬剤8の用量を薬剤容器5の出口から排出することができる。典型的には、封止7は、図4および図5に表す両頭注射針19によって穿孔可能である。注射針は、たとえばねじ付ニードルハブを含み、容器ハウジングの遠位端に取外し可能または解放可能に接続することができる。
【0111】
駆動機構11は、典型的には、注射デバイス10のハウジング16内に設けられた窓20を通して少なくとも部分的に見える数字スリーブ21を含む。用量を設定したとき、数字スリーブ21は回転運動を受ける。それに応じて、増大する一連の用量を示す数字が、窓20内に現れて、現在設定されている用量のサイズを示すことができる。駆動機構11は、駆動スリーブ22をさらに含む。駆動スリーブ22は、駆動機構11が用量投薬または用量注射モードにあるとき、ピストンロッドに動作可能に接続または連結される。用量ボタン14を押すことで、駆動スリーブ22の回転を開始することができ、駆動スリーブ22は、クラッチの起動によって、ピストンロッド24に動作可能に接続されて、ピストンロッド24の用量投薬回転および遠位向きの長手方向前進運動を誘起する。
【0112】
ピストンロッド24は、その遠位端に押圧片25を備える。押圧片25は、典型的には、ピストンロッド24の遠位端に回転不能に支持される。押圧片25によって、ピストンロッド24によってかけられる遠位向きの推力が、ストッパ6の近位推力受け面へ伝達される。いくつかの例では、駆動機構11は、ばねなどの機械エネルギー貯蔵部を備える。機械エネルギー貯蔵部は、用量の設定中または用量を設定したときに付勢することができる。用量ボタン14を押し下げることによって、機械エネルギー貯蔵部内に貯蔵されている機械エネルギーを解放し、薬剤8の用量を投薬するためにピストンロッド24を遠位方向2に前進させることが可能な駆動トルクまたは駆動力を提供することができる。他の例では、駆動機構11は機械エネルギー貯蔵部を含まない。ここでは、使用者によって用量ボタン14にかけられた力は、ピストンロッド24を遠位方向に動かすために必要とされる駆動力へほぼ完全に伝達される。
【0113】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されている針ベースの注射システムを伴うことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数用量の容器システムおよび単一用量(部分または完全排出)の容器システムに大きく区別することができる。容器は、交換可能な容器であっても、一体化された交換不能の容器であってもよい。
【0114】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(使用者によって事前に設定される)であってもよい。別の複数用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(使用者によって事前に設定される)であってもよい。
【0115】
上述した駆動機構11は、使い捨てのまたは再利用可能なペン注射器内に概して実装可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する単なる例示である。上述した駆動機構は、全体が参照によって本明細書に組み入れられている、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1により詳細に説明されている。注射デバイス10とともに実装される駆動機構11のさらなる例は、全体が参照によって本明細書に組み入れられている、WO2014/033195A1またはWO2014/033197A1に見ることができる。WO2014/033195A1に開示されている駆動機構は、再利用可能な駆動機構である。WO2014/033197A1に開示されている駆動機構は、リセット機能を含まない使い捨て駆動機構の一例である。
【0116】
図4に、後述する認証システム1000の多数の構成要素が概略的に表されている。注射デバイス10は、電子ユニット60を備えることができる。電子ユニット60は、典型的には、電子回路61を含む。電子回路61は、プロセッサ62および電池63を含む。さらに、典型的な例では、注射デバイス10に埋め込まれたまたは一体化された電子ユニット60はまた、ストレージ64、センサ65、通信インターフェース66、近接センサ67、信号ユニット68を含むことができる。
【0117】
図4に示すように、電子ユニット60は、用量ダイヤル12内に配置することができる。用量ボタン14は、用量ダイヤル12のレセプタクルを閉じることができ、レセプタクルは、電子ユニット60の少なくとも一部分を収容するようなサイズである。図4にさらに表すように、認証システム1000は、少なくとも1つの移動電子デバイス80、100、120を含むことができる。移動電子デバイス80は、外部電子デバイスとして実装することができる。移動電子デバイス80は、スマートフォンを構成することができる。スマートフォン80は、典型的には、入力89およびディスプレイ91を含む。ここでは、入力89は、ディスプレイ91に一体化することができ、したがってディスプレイ91は、タッチセンシティブディスプレイとして実装される。他の例では、移動電子デバイス100は、ウェアラブル電子デバイスとして実装される。ウェアラブル電子デバイス100は、移動電子デバイス100をたとえば使用者の手首に取り付けることを可能にするストラップ112またはリストバンドを含むことができる。移動電子デバイス100は、スマートウォッチとして実装することができる。
【0118】
典型的には、移動電子デバイスは、プロセッサ102、電池103、ストレージ104、センサ105、通信インターフェース106、近接センサ107、および信号ユニット108を備えた電子回路101を収容するハウジング110を含む。ハウジング110は、ディスプレイ111によって閉じるまたは覆うことができる。いくつかの例では、移動電子デバイス100は、使用者4の手首または腕に取付け可能である。他の例では、移動電子デバイス100’は、使用者の体の別の部分に取り付けることができる。一例として、移動電子デバイス100’は、ベルトとして実装することができ、または使用者のベルトに一体化することができる。
【0119】
移動電子デバイス120は、無線タグとして実装することができる。無線タグ120は、ハウジング129を含むことができる。典型的には、無線タグ120は電子回路121を含み、電子回路121はたとえばプリント回路基板を含む。電子回路121は、プロセッサ122、電池123、センサ125、通信インターフェース126、近接センサ127、および信号ユニット128のうちの少なくとも1つを含むことができる。移動電子デバイス120は、典型的には、使用者4が携帯する。
【0120】
いくつかの例では、移動電子デバイス120は、鍵などの使用者の身の回り品に恒久的に取り付けることができる。さらなる例では、移動電子デバイス120は、薬物送達デバイス1に取り付けることができる。
【0121】
図5の例では、薬物送達デバイス1、したがって注射デバイス10は、可動部材26をさらに備える。可動部材26は、駆動機構11内に実装することができる。駆動機構11の可動の構成要素が、可動部材26を形成または構成することができる。注射デバイス10の電子ユニット60によって、駆動機構11の可動部材26の動きまたは位置を検出または追跡することができる。
【0122】
可動部材26の検出可能な位置または向きは、注射デバイス10の現在の状態または構成を示すことができる。長手方向に沿った可動部材26の位置は、薬剤容器5内に提供された薬剤8の残量を直接示すことができる。可動部材26の位置または向きのうちの少なくとも1つを検出するまたは定量的に測定することによって、電子ユニット60は、注射デバイスの瞬時の状態または構成に関するデバイス特有情報を集めることができる。こうして、電子ユニット60は、注射デバイス10の動作状態または使用履歴を示すデータを収集するおよび/または集めるように構成することができる。電子ユニット60は、特定の日付および/または時刻に投薬された薬剤の量に関する情報を含む投与または投薬履歴などのデータを収集することができる。
【0123】
注射デバイス10は、電気機械インターロック30をさらに備えることができる。電気機械インターロック30は、駆動機構11に一体化することができる。インターロック30は、注射デバイス10の電子ユニット60によって動作可能とすることができる。
【0124】
図5の例では、注射デバイス10は電子ユニット60を備える。電子ユニット60は、たとえば、印刷電子回路61、プロセッサ62、電池63、ストレージ64、少なくとも1つのセンサ65、通信インターフェース66、近接センサ67、および/または信号ユニット68を含む。
【0125】
信号ユニット68は、使用者が知覚可能な信号を生成するように構成される。信号ユニット68は、可聴信号を生成するためのスピーカを含むことができる。信号ユニット68は、使用者に対して情報を視覚化するためのディスプレイを含むことができる。信号ユニット68は、LEDなどの点滅光を含むことができる。信号ユニット68は、異なる色および/または持続時間の光インジケーションまたは光パルスを生成するように構成された多数のLEDまたは光源を含むことができる。信号ユニット68はまた、振動または何らかの他の触覚的に検出可能な信号を生成するためのブザーまたは同様の電気機械ユニットを含むことができる。
【0126】
通信インターフェース66は、移動電子デバイス80の別の通信インターフェース86と通信するように構成される。別法または追加として、通信インターフェース66は、ネットワーク130を介してデータベース140と通信するように構成される。通信インターフェース66は、特定のアクセスポイント131によって、データベース140および/またはネットワーク130にアクセスすることができる。通信インターフェース66とネットワーク130との間の通信は、典型的には、無線通信リンクとして実装される。
【0127】
移動電子デバイス80は、スマートフォンとして実装することができる。移動電子デバイス80は、電子回路81、プロセッサ82、電池83、ストレージ84、センサ85、通信インターフェース86、近接センサ87、信号ユニット88、使用者が動作可能な入力89、ハウジング90、およびディスプレイ91を含む。移動電子デバイス80は、地球的または地域的位置情報を集めるために、衛星測位システム95と通信するように構成することができる。典型的には、移動電子デバイス80の通信インターフェース86は、いくつかのアクセスポイントのうちの少なくとも1つによって、ネットワーク130と通信するように構成される。通信インターフェース86は、要求されたデータをデータベース140から集めるまたは受信するために、データベース140と通信することができる。
【0128】
図6に表す認証システム1000のさらなる例では、1つの移動電子デバイス80だけでなく、さらなる移動電子デバイス100が、たとえばスマートウォッチまたはフィットネストラッカの形態で設けられる。移動電子デバイス100はまた、電子回路101、プロセッサ102、電池103、ストレージ104、センサ105、通信インターフェース106、近接センサ107、および信号ユニット108のうちの少なくとも1つを含む。これらの構成要素は、すべてハウジング110内に封入することができる。信号ユニット108は、ディスプレイ111を含むことができる。信号ユニット108は、電子ユニット60に関連して上述した信号ユニット68と同じまたは類似の方法で実装することができる。
【0129】
移動電子デバイス100は、通信インターフェース106を介して、ネットワーク130およびデータベース140と通信するように動作可能である。移動電子デバイス100はまた、薬物送達デバイス1の電子ユニット60ならびに移動電子デバイス80の通信インターフェース86と無線で通信することができる。さらなる例では、移動電子デバイス100はまた、地理的位置データを取得するために、たとえば移動電子デバイス100の絶対または相対位置データを獲得するために、衛星測位システム95と直接または間接的に通信することができる。
【0130】
図7に表すさらなる例では、薬物送達デバイス1は、上述した電子ユニット60を含まなくてもよい。注射デバイス10および/または駆動機構11は、すべて機械的に実装することができる。ここでは、注射デバイス10は、補助デバイス40を備えることができる。補助デバイス40は、典型的には、補助デバイス40を注射デバイス10のハウジング16に取外し可能に締結または固定するための締結具49を含む。
【0131】
補助デバイス40は、信号ユニット48を含む。信号ユニット48は、たとえば点滅光の形態の光源、ディスプレイ、スピーカ、および振動生成ユニットのうちの1つを含むことができる。ディスプレイまたは点滅光として実装されたとき、信号ユニット48は、可視情報または可視警告を使用者に提供することができる。典型的には、補助デバイス40はまた、電子回路41、プロセッサ42、電池43、ストレージ44、センサ45、通信インターフェース46、および近接センサ47のうちの少なくとも1つを含む。典型的な例では、補助デバイス40は、注射デバイス10に取り付けられたとき、駆動機構11のインターロック30に動作可能に接続または連結される。
【0132】
追加または別法として、補助デバイス40、特にそのセンサ45は、駆動機構11の可動部材26に動作可能に接続または連結することができる。こうして、補助デバイス40は、可動部材26の位置、向き、または動きに反映する駆動機構11の瞬時の状態に関する情報を獲得または取得するように動作可能である。同様に、電子ユニット60または移動電子デバイス100に関連して上述したように、補助デバイス40は、移動電子デバイス80、100、120と無線で通信するように動作可能である。
【0133】
補助デバイス40はまた、通信ネットワーク130を介してデータベース140と直接通信するように動作可能とすることができる。図8にさらに表すように、注射デバイス10の補助デバイス40および/または電子ユニット60は、移動電子デバイス80、100、120のうちの少なくとも1つまたはいくつかと通信するように動作可能とすることができる。電子ユニット60、補助デバイス40、移動電子デバイス80、移動電子デバイス100、および移動電子デバイス120のうちの少なくとも2つの間に、無線通信リンクを確立することができる。さらに、移動電子デバイス80、100、120は、互いの間で通信することができる。
【0134】
電子ユニット60および補助デバイス40のうちの少なくとも1つと、移動電子デバイス80、100、120のうちの1つとの間に、第1の無線通信リンクを確立することができる。電子ユニット60、補助デバイス40、移動電子デバイス80、100、120のうちのいずれかと、通信ネットワーク130および/またはデータベース140との間に、さらなる無線通信リンクを確立することができる。
【0135】
センサ45、65、85、105、125は、加速度センサ、回転センサ、位置センサ、距離センサ、および生理学的データ捕捉センサのうちの1つとして実装することができる。生理学的データ捕捉センサの実装は、典型的には、ウェアラブル電子デバイス80、100、120を備える。センサ45、64、85、105、125によって、それぞれの電子回路41、61、81、101、121の運動データを獲得することができる。
【0136】
それぞれの運動データは、それぞれの電子回路61の関連付けられたストレージ44、64、84、104、124内に記憶することができる。獲得運動データはまた、通信インターフェース46、66、86、108、126を介して、別の電子回路41、61、81、101、121へ通信および/または伝送することができる。使用者4の運動データはまた、ネットワーク130を介してデータベース140との通信リンクを確立することによって取得することができる。センサ45、65、85、105、125のいずれかによって収集された運動データは、データベース140内に記憶することができ、任意の他の電子回路41、61、81、101、121が利用できるようにすることができる。
【0137】
さらに、たとえば使用者4が携帯する第1の移動電子デバイス100、120によって、運動データの少なくとも一部分を獲得または収集することができる。
【0138】
注射デバイス10に取り付けられたまたは一体化されたセンサ44、65によって、運動データのさらなる部分を獲得および収集することができる。それぞれの移動電子デバイス80、100、110と、補助デバイス40および電子ユニット60のうちの少なくとも1つとの間の無線通信リンクによって、運動データの異なる部分を組み合わせて収集することができる。無線通信インターフェース46、66、86、106、126のうちのいずれかは、特有の伝送プロトコルに従った特有の周波数範囲内で送受信(伝送および/または受信)するように動作可能とすることができる。無線通信インターフェースは、複数の通信回路を含むことができ、これらの通信回路は各々、異なる周波数範囲内で、および/または異なる無線伝送プロトコルに従って、送受信する。
【0139】
本明細書に記載する無線通信インターフェース46、66、86、106、126のうちの少なくとも1つまたはいくつかは、少なくとも1つのRFID通信回路(無線周波数識別)を含む。無線通信インターフェースは、NFC回路(近距離通信)、たとえば能動NFC回路(好ましくは、関連付けられた電源、たとえば印刷可能な電池などの電池を有する)、または受動NFC回路(好ましくは、回路に給電する電源をもたない)を含むことができる。無線通信インターフェースは、少なくとも1つのBluetoothおよび/またはBLE通信回路(Bluetooth Low Energy)を含むことができる。無線通信ユニットは、少なくとも1つのWiFi通信回路(wireless fidelity、たとえばIEEE802.11規格/プロトコルに準拠)を含むことができる。別法または追加として、無線通信ユニットは、磁場の変動、たとえば薬物送達デバイスの構成要素の無線通信回路によってもたらされる変動を検出するために、磁力計/コンパス回路を含むことができる。
【0140】
いくつかの例では、本明細書に記載する無線通信インターフェース46、66、86、106、126のうちの少なくとも1つまたはいくつかは、UWB(超広帯域)通信インターフェースとして実装される。
【0141】
無線通信インターフェース46、66、86、106、126のうちの少なくとも1つは、無線通信インターフェース46、66、86、106、126のうちのもう1つとの通信を可能にするUWB信号を生成するように構成される。UWB信号は、非常に低いエネルギーレベルで、無線スペクトルの大部分(たとえば、500MHzまたは中心周波数の20%のどちらかより低い方より大きい帯域幅)をカバーする非常に短いRFパルス(たとえば、1ナノ秒未満)を含む。動作周波数は、1つまたはそれ以上の国家および連邦規制に従って選択される。たとえば、国際的に広く受け入れられている周波数帯域は、約6.5GHz~約8GHzである。いくつかの実装では、UWB信号は、大規模な販売業者からのスマートフォンに広く受け入れられて利用可能なUWB規格を含み、したがって標準的なスマートフォンを移動電子デバイス80として使用することができる。
【0142】
いくつかの実装では、UWB通信は、プロプライエタリUWBプロトコルを含む。プロプライエタリUWBプロトコルは、時間変調、信号形状変調、および振幅変調の組合せからなる符号化を使用する。プロプライエタリUWBデバイス(たとえば、スマートフォン用のUSBドングル)を、無線タグ120として使用することができる。UWB信号の伝送は、使用者の動作によってトリガすることができる。
【0143】
いくつかの例では、図9に表すように、注射デバイス10および補助デバイス40のうちの少なくとも1つと、移動電子デバイス80、100、120のうちの少なくとも1つとの間の無線通信が、ページャ機能を提供する。たとえば、原則的には、UWB通信プロトコルを使用することによって通信リンクが確立されたとき、電子ユニット60の正確な位置追跡を提供することができる。したがって、わずか数センチメートルまたはさらには数ミリメートルの精度範囲内で、薬物送達デバイス10および補助デバイス40のうちの少なくとも1つの位置を正確に判定または測定することができる。
【0144】
追加または代替として、無線通信リンクはまた、第1の電子回路と第2の電子回路との間の距離および相対位置、たとえば注射デバイス10と移動電子デバイス80、100、120のうちの1つとの間の距離およびこれらの位置または相対位置のうちの少なくとも1つの判定および/または定量的な測定を提供することができる。
【0145】
図9に示すように、移動電子デバイス80は、アンテナ96、距離ユニット97、および位置検出ユニット98を備えた通信インターフェース86を含む。アンテナ96は、たとえばUWBアンテナとして実装されており、電子ユニット60と、別法として補助デバイス40の電子回路41と通信するように動作可能である。いくつかの例では、アンテナ96、したがって通信インターフェース86は、電子ユニット60の通信インターフェース66および/または近接センサ67と無線で通信するように動作可能である。UWBアンテナ96は、移動電子デバイス80内に実装されることに限定されるものではない。アンテナ96、距離ユニット97、および位置検出ユニット98は、任意の2つの移動電子デバイス80、100、120および/または電子回路41、61間の正確な位置および距離測定のためにUWB信号を生成および/または処理するように構成されており、同様に通信インターフェース46、66、106、126のいずれかで実装することができる。
【0146】
アンテナ96は、UWB信号の時間特性が周波数スペクトルに対して一定になるように構成することができ、その結果、パルスの歪みが最小になる。アンテナ96は、かなり平坦な周波数スペクトルを示すことができ、その結果、最小の共振歪みで広いパルスを得ることができる。アンテナ96は、通信インターフェース46、66、86、106、126のうちのいずれか1つに、典型的には信号の最小の減衰を有するようにそれぞれのハウジングの表面付近で一体化することができる。アンテナ96の可能な実装は、チップアンテナの一体化、または注射デバイス10、補助デバイス40、または移動電子デバイス80、100、120のうちのいずれか1つのうちのいずれか1つのプラスチック構成要素のうちの1つでアンテナ96として作用する導電層の一体化である。アンテナ96と通信するように動作可能な対向通信インターフェース46、66、86、106、126は、アンテナ96によって伝送されて入ってくるデータパケットを常時または断続的に受信するように構成することができる。
【0147】
アンテナ96に動作可能に連結された距離ユニット97は、信号分散、飛行時間測定、動的もしくは静的三角測量のうちの少なくとも1つに基づいて、またはそれぞれの無線通信プロトコルに適合しているさらに概ね利用可能な距離もしくは位置測定方式に基づいて、電子ユニット60と通信インターフェース86との間、したがって電子ユニット60とデバイス80との間の距離を導出するまたは定量的に測定することが可能である。
【0148】
アンテナ96は、電子ユニット60からの信号または応答信号が受信される方向を判定することが可能なアレイアンテナとして実装することができる。移動電子デバイス80と、電子ユニット60および補助デバイス40のうちの1つとの間の無線通信リンクによって、1.5mなどの距離だけでなく、デバイス10、40、および80の間の方向、したがって相対位置も、可視記号の形態で、たとえば移動電子デバイス80のディスプレイ91上に提供することができ、したがってそれぞれのデバイスが見つからない場合、または注射デバイス10を発見することができる場所に使用者が現在気付いていない場合に、使用者4が電子ユニット60を発見または回収することを支援することができる。
【0149】
図10に、第1の人物4のデータレコード250および別の人物4’の別のデータレコード250’が表されている。データレコード250、250’は、運動データ251、251’を含む。運動データ251は、使用者4のジェスチャデータ252および運動パターン254のうちの少なくとも1つを含む。ジェスチャデータ252は、使用者4によって実施または実行される特定の動きまたはジェスチャ、たとえば使用者が歩く方法または使用者がデバイスを持ち上げる方法に特有である。
【0150】
運動パターン254は、それぞれの使用者4の運動プロファイルに特有であり、またはそのような運動プロファイルを示すことができる。運動パターン254は、使用者の習慣に関する情報を収容することができる。たとえば、運動パターン254は、特定の使用者Aが特定の曜日に自身の住居環境におり、特有の時間間隔中、たとえば夜間にそこに留まることを示すことができる。
【0151】
運動パターン254は、典型的な動きプロファイルを収容することができ、経時的な使用者の位置のマッピングを提供することができる。場合により、データレコード250はまた、使用者識別256を含むことができる。使用者識別256は、使用者の固有の識別子を収容することができる。データレコード250は、使用者4がそれぞれの運動データまたは動きデータを経時的に捕捉および/または獲得することができない移動電子デバイス80、100、120を備えるとき、恒久的な更新を受けることができる。
【0152】
データレコード250は、運動データ251を含み、上述したストレージ44、64、84、104、124のいずれかに記憶される。データレコード250は、要求に応じて、たとえば認証システム1000が、データ整合インデックス270を判定または導出するために、実際にまたは新しく獲得された運動データ261と前に記憶された運動データ251との比較を実施するときに利用可能とすることができる。
【0153】
図10にさらに表すように、別の使用者Bが別のデータレコード250’を含む。このデータレコード250’も、データレコード250と同様に構築することができる。データレコード250’はまた、ジェスチャデータ252’、運動パターン254’、および場合により使用者識別256’を含む。運動データ251は第1の使用者4に特有であり、運動データ251’は別の使用者4’に特有である。
【0154】
図11による流れ図では、薬物送達デバイス1もしくは注射デバイス10の電子的実装機能および/または薬物送達デバイス1もしくは注射デバイス10に関連付けられた電子的実装機能を制御する方法の一例が概略的に表されている。第1の工程200で、上述した電子回路41、61に関連付けられたまたは上述した電子回路41、61を備えた薬物送達デバイスと、移動電子デバイス80、100、120のうちの少なくとも1つとの間の距離が測定される。移動電子デバイス80、100、120と電子回路41、61との間の無線通信を使用して、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の距離および/または相対位置を判定または測定する。
【0155】
工程202で、距離が所定の承認距離を下回る場合、したがってそれぞれの閾値を下回る場合、手順は工程204へ進む。たとえば、距離が所定の閾値距離を下回る場合、たとえば所定の承認距離を下回る場合、電子回路41、61の電子的実装機能および薬物送達デバイス1の電子的実装機能の有効化、無効化、トリガ、または終了のうちの1つが、プロセッサ42、62によって行われる。いくつかの例では、電子回路41、61の電子的実装機能は、注射デバイス10の駆動機構11を連動させるように動作可能である。次いで、距離測定によって、電子回路41、61は、移動電子デバイス80、100、120と、薬物送達デバイス1または注射デバイス10に取り付けられた補助デバイス40のうちの1つの電子回路41、61のうちの1つとの間で測定された距離のサイズに応じて、インターロック30をロック解除または解放するように動作可能とすることができる。
【0156】
工程202で、無線通信によって測定された距離が所定の閾値を上回ると判定された場合、手順は工程200へ戻り、薬物送達デバイス1と移動電子デバイス80、100、120との間の距離を繰り返し測定する。
【0157】
図13に表すさらなる例では、第1の工程300で、薬物送達デバイス1に一体化されたまたは取り付けられた電子回路41、61との間の距離が測定および/または判定される。次の工程302で、距離が評価または解析される。そこで、距離が所定の第1の閾値を下回るかどうかが判定される。工程202の評価により、距離が第1の所定の距離閾値を下回ることが明らかになった場合、手順は工程304へ進む。工程302で、距離が所定の第1の閾値を上回ると判定された場合、手順は工程300へ戻る。
【0158】
工程304で、したがって距離が所定の範囲内にあるとき、電子回路41、61の通信インターフェース46、66と移動電子デバイス80、100、120との間の無線通信をさらに使用して、注射デバイスおよび/または移動電子デバイスの位置を特定する。ここでは、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の相対位置が判定または測定される。
【0159】
相対位置は、薬物送達デバイス1に取り付けられたまたは一体化された電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の最短距離のベクトル、したがって方向を示す。通信インターフェース46、66と対向または移動通信インターフェース86、106、126との間で交換された無線信号に基づいて相対位置が判定または計算された後、それぞれの位置情報または場所情報が、移動電子デバイス80、100、120の使用者および/または薬物送達デバイス1の使用者4に提供される。
【0160】
情報は、たとえば使用者が知覚可能な信号を生成するように動作可能な信号ユニット88、108、128によって、使用者4に提供することができ、使用者が電子回路41、61を備えた薬物送達デバイスを識別および/または発見することが可能になる。ここでは、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の無線通信を使用して、一種の電子ページャ機能を提供することができ、それによって薬物送達デバイスが見つからない場合、または注射デバイス10もしくは薬物送達デバイス1が最近収納もしくは使用された場所に使用者が気付いていない場合に、使用者が薬物送達デバイスを発見することを支援することができる。
【0161】
場合により、さらなる工程308で、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の無線通信によって、さらなる距離測定が実施される。ここでは、距離が第2の距離閾値を下回るかどうかを判定することができる。工程308で、距離が第2の所定の最小閾値を下回ると判定された場合、手順は工程310へ進むことができ、それによって電子回路41、61の電子的実装機能または薬物送達デバイス1の電子機能へのアクセスを承認することができる。
【0162】
工程302、308におけるそのような2倍の距離測定または距離評価は、自身の移動電子デバイス80、100、120を有する使用者が薬物送達デバイス1の所定の空間的近傍内にいるとき、使用者の一般的な許可をすでに提供することができることから有益である。移動電子デバイス80、100、120との間の距離が第1の距離または範囲内にある場合、一般的な使用者認証手順を実行することができ、デバイス間の距離が制限されているため、移動電子デバイスと薬物送達デバイス1との間で比較的大きい距離をあけて認証ルーチンが実施される状況と比較して、制限または低減された量の電気エネルギーのみを消費することができる。
【0163】
電子的実装機能の実行を最終的に承認するために、距離は第2のすなわちより小さい範囲内にあることが意図される。このようにして、移動電子デバイス100、120がたとえばスマートウォッチなどのウェアラブル電子デバイスとして実装されるとき、使用者が薬物送達デバイスを正しい方法で保持しているかどうかを制御することができる。たとえば、工程308で実施されるこの第2の距離確認に基づいて、注射デバイス10が使用者4のウェアラブル電子デバイス100、120が取り付けられているのと同じ手で保持されているかどうかを測定または検出することができる。こうして、患者の安全性ならびに注射デバイスの意図されるまたは処方される使用への順守を強化することができる。
【0164】
図14によるさらなる例では、薬物送達デバイス1の電子的実装機能または薬物送達デバイス1に関連付けられた電子的実装機能を制御する手順が第1の工程400から始まり、第1の工程400で、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の距離が測定または判定される。次の工程402で、測定または判定された距離が所定の第1の距離閾値を下回るかどうかが確認または評価される。距離が閾値を上回る場合、手順は工程400へ戻る。工程402で、距離が第1の距離閾値を下回ると判定された場合、手順は工程404へ進む。工程404で、移動電子デバイス80、100、120および/または電子回路41、61のうちの少なくとも1つが、上述した使用者認証手順を実施するように動作可能になり、またはそのようにトリガされる。
【0165】
使用者認証は、識別信号の受信または交換および評価に基づいて行うことができる。別法または追加として、上述したように使用者の運動データを実施、解析、または評価することによって、使用者を識別することができる。
【0166】
次の工程406で、使用者4が薬物送達デバイス1を使用することが許可されているかどうかが判定される。工程406で、使用者認証に失敗した場合、デバイス機能、たとえば送達デバイス1、注射デバイス10、または補助デバイス40のうちの1つの電子回路41、61の電子的実装機能を無効化することができる。次いで手順は、工程404へ戻ることができる。
【0167】
工程406で使用者認証が承認された場合、手順は工程410へ進む。ここでは、移動電子デバイス80、100、120と電子回路41、61との間の距離が再び判定または測定される。次いで、さらなる工程412で、電子回路41、61と移動電子デバイス80、100、120との間の無線通信によって、さらなる距離測定が実施される。ここでは、距離が第2の距離閾値を下回るかどうかが判定することができる。工程412で、距離が第2の所定の最小閾値を下回ると判定された場合、手順は工程414へ進むことができ、それによって電子回路41、61の電子的実装機能または薬物送達デバイス1の電子機能へのアクセスを承認することができる。ここでは、工程410、412によって実施される第2の距離測定が、図13の工程304および308に関連して上述した距離測定に密接に対応することができる。
【符号の説明】
【0168】
1 薬物送達デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 使用者
5 薬剤容器
6 ストッパ
7 封止
8 薬剤
10 注射デバイス
11 駆動機構
12 用量ダイヤル
14 用量ボタン
15 内側本体
16 ハウジング
17 保護キャップ
18 容器ハウジング
19 注射針
20 窓
21 数字スリーブ
22 駆動スリーブ
24 ピストンロッド
25 押圧片
26 可動部材
30 インターロック
40 補助デバイス
41 電子回路
42 プロセッサ
43 電池
44 ストレージ
45 センサ
46 通信インターフェース
47 近接センサ
48 信号ユニット
49 締結具
50 ハウジング
51 ディスプレイ
60 電子ユニット
61 電子回路
62 プロセッサ
63 電池
64 ストレージ
65 センサ
66 通信インターフェース
67 近接センサ
68 信号ユニット
80 移動電子デバイス
81 電子回路
82 プロセッサ
83 電池
84 ストレージ
85 センサ
86 通信インターフェース
87 近接センサ
88 信号ユニット
89 入力
90 ハウジング
91 ディスプレイ
95 衛星測位システム
96 アンテナ
97 距離ユニット
98 位置検出ユニット
100 移動電子デバイス
101 電子回路
102 プロセッサ
103 電池
104 ストレージ
105 センサ
106 通信インターフェース
107 近接センサ
108 信号ユニット
110 ハウジング
111 ディスプレイ
112 ストラップ
120 移動電子デバイス
121 電子回路
122 プロセッサ
123 電池
125 センサ
126 通信インターフェース
127 近接センサ
128 信号ユニット
129 ハウジング
130 ネットワーク
131 アクセスポイント
140 データベース
250 データレコード
251 運動データ
252 ジェスチャデータ
254 運動パターン
256 使用者識別
260 データレコード
261 運動データ
262 ジェスチャデータ
264 運動パターン
266 使用者識別
270 整合インデックス
1000 認証システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】