(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】メモリインターフェースの電圧温度(VT)ドリフトの補償方法
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20241112BHJP
G06F 1/10 20060101ALI20241112BHJP
G11C 7/04 20060101ALI20241112BHJP
G11C 7/22 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G06F12/00 564D
G06F12/00 597D
G06F1/10 510
G11C7/04
G11C7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526595
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022048059
(87)【国際公開番号】W WO2023081055
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591016172
【氏名又は名称】アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ディー ウィリー
(72)【発明者】
【氏名】カーシク ゴパラクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ ジャヤラマン
【テーマコード(参考)】
5B160
【Fターム(参考)】
5B160CC03
(57)【要約】
データ処理システムは、メモリに結合されたデータプロセッサを含む。データプロセッサは、基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、第1の量及び第2の量の電流値を決定するための較正回路と、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて第1の量及び第2の量におけるドリフトを計算し、ドリフトに従って第1の量及び第2の量を更新するための補償回路と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリに結合されたデータプロセッサを備えるデータ処理システムであって、
前記データプロセッサは、
基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、
前記基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、
前記基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、
前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定するための較正回路と、
測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算し、前記ドリフトに従って前記第1の量及び前記第2の量を更新するための補償回路と、を備える、
データ処理システム。
【請求項2】
前記補償回路は、前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算する、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項3】
前記較正回路は、
メモリ動作を発行して前記電流値を決定する較正コントローラと、
前記較正コントローラに結合された、前記メモリ動作に応じて前記メモリに信号を提供するためのメモリ物理層インターフェース回路(PHY)と、を備える、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項4】
前記メモリは、
前記少なくとも1つの電圧感度係数及び前記少なくとも1つの温度感度係数を記憶するためのモードレジスタを備える、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項5】
前記メモリは、
前記メモリの温度を測定するための温度センサを備え、
前記メモリは、所定の動作中に前記温度を前記データプロセッサに提供する、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項6】
前記所定の動作は、リフレッシュ動作を含む、
請求項5のデータ処理システム。
【請求項7】
前記補償回路は、前記第1の量及び前記第2の量の何れかのドリフトがそれぞれの許容閾値を超えることに応じて、前記較正回路にフルリンク再トレーニングシーケンスを実行させる、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項8】
メモリに結合されるように構成されたデータプロセッサであって、
基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、
前記基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、
前記基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、
前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定するための較正回路と、
測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算し、前記ドリフトに従って前記第1の量及び前記第2の量を更新するための補償回路と、を備える、
データプロセッサ。
【請求項9】
前記補償回路は、前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算する、
請求項8のデータプロセッサ。
【請求項10】
前記較正回路は、
メモリ動作を発行して前記電流値を決定する較正コントローラと、
前記較正コントローラに結合された、前記メモリ動作に応じて前記メモリに信号を提供するためのメモリ物理層インターフェース回路(PHY)と、を備える、
請求項8のデータプロセッサ。
【請求項11】
前記補償回路は、前記メモリの少なくとも1つのモードレジスタから前記少なくとも1つの電圧感度係数及び前記少なくとも1つの温度感度係数を読み取るように構成されている、
請求項8のデータプロセッサ。
【請求項12】
前記補償回路は、前記第1の量及び前記第2の量の何れかのドリフトがそれぞれの許容閾値を超えることに応じて、前記較正回路にフルリンク再トレーニングシーケンスを実行させる、
請求項8のデータプロセッサ。
【請求項13】
データプロセッサがメモリにアクセスするためのタイミング値を更新して、リンクの再トレーニングを実行することなく、動作中に電圧温度(VT)ドリフトを補償するための方法であって、
基準クロック信号を生成することと、
第1の遅延回路を使用して第1の量だけ前記基準クロック信号を遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供することと、
第2の遅延回路を使用して第2の量だけ前記基準クロック信号を遅延させて、読み取りデータ信号を提供することと、
較正回路を使用して前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定することと、
補償回路を使用して、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算することと、を含む、
方法。
【請求項14】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算することを含む、
請求項13の方法。
【請求項15】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、読み取りサイクル中に前記メモリから受信した読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、リフレッシュ期間中に前記メモリから受信した読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項14の方法。
【請求項17】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、前記読み取りクロック信号を連続トグルモードにするように前記メモリのモードレジスタを設定することによって受信した前記読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項14の方法。
【請求項18】
前記メモリの温度を測定することと、
所定の動作中に前記温度を前記データプロセッサに提供することと、を含む、
請求項13の方法。
【請求項19】
前記所定の動作中に前記温度を前記データプロセッサに提供することは、
前記メモリのリフレッシュ動作中に前記温度を前記データプロセッサに提供することを含む、
請求項18の方法。
【請求項20】
前記第1の量及び前記第2の量の何れかのドリフトがそれぞれの許容閾値を超えることに応じて、前記較正回路にフルリンク再トレーニングシーケンスを実行させることを含む、
請求項13の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代のダイナミックランダムアクセスメモリ(dynamic random-access memory、DRAM)は、DRAMと、グラフィックス処理ユニット(graphics processing unit、GPU)、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)等の1つ以上のデータプロセッサとを接続するバス上のデータ伝送の速度を増加させることによって、高いメモリ帯域幅を提供する。一例では、グラフィックスダブルデータ速度(graphics double data rate、GDDR)メモリは、グラフィックスアプリケーションに必要とされる高帯域幅に対応するためにデータ伝送レートの境界を押し上げてきた。データの正確な受信を保証するために、現代のGDDRメモリは、受信回路が確実にデータを正確に取り込むことができるように、動作の前に大規模なトレーニングを必要としてきた。しかしながら、時間とともに、GDDRデータ伝送システムは、電圧温度(VT)ドリフトを経験し、これにより遅延の最適点が変化して、定期的な再トレーニングの実行が必要となり、再トレーニングの実行中にはシステム動作の停止が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】いくつかの実施形態による、VTドリフトを補償するデータ処理システムのブロック図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、
図1のデータ処理システムのGDDR PHY-DRAMリンクのブロック図である。
【
図3】
図2のGDDR PHY-DRAMリンクに対応する、注釈付きのGDDR PHY-DRAMリンクのブロック図である。
【
図4】
図2のデータ処理システムの動作を理解するのに有用なタイミング図である。
【
図5】
図2のデータ処理システムの動作を理解するのに有用な別のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下の説明において、異なる図面における同一の符号の使用は、同様のアイテム又は同一のアイテムを示す。別段の言及がなければ、「結合される(coupled)」という単語及びその関連する動詞形は、当該技術分野で周知の手段による直接接続及び間接電気接続の両方を含み、また、別段の言及がなければ、直接接続の任意の記述は、好適な形態の間接電気接続を使用する代替の実施形態も同様に意味する。
【0004】
データ処理システムは、メモリに結合されたデータプロセッサを含む。データプロセッサは、基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、基準クロック信号を第1の量だけ遅延させてコマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、第1の量及び第2の量の電流値を決定するための較正回路と、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて第1の量及び第2の量におけるドリフトを計算し、ドリフトに従って第1の量及び第2の量を更新するための補償回路と、を含む。
【0005】
メモリに結合されるように適合されたデータプロセッサは、基準クロック発生回路と、第1の遅延回路と、第2の遅延回路と、較正回路と、補償回路と、を含む。基準クロック発生回路は、基準クロック信号を提供する。第1の遅延回路は、基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供する。第2の遅延回路は、基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供する。較正回路は、第1の量及び第2の量の電流値を決定する。補償回路は、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて第1の量及び第2の量におけるドリフトを計算し、ドリフトに従って第1の量及び第2の量を更新する。
【0006】
データプロセッサがメモリにアクセスするためのタイミング値を更新して、リンクの再トレーニングを実行することなく、動作中に電圧温度(VT)ドリフトを補償するための方法は、基準クロック信号を生成することを含む。基準クロック信号は、第1の遅延回路を使用して第1の量だけ遅延され、コマンド及びアドレス信号を提供する。基準クロック信号は、第2の遅延回路を使用して第2の量だけ遅延され、読み取りデータ信号を提供する。当該第1の量及び当該第2の量の電流値は、較正回路を使用して決定される。当該第1の量及び当該第2の量におけるドリフトは、補償回路を使用して、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて計算される。
【0007】
図1は、いくつかの実施形態による、VTドリフトを補償するデータ処理システム100のブロック図である。データ処理システム100は、概して、グラフィックス処理ユニット(GPU)110、ホスト中央処理ユニット(CPU)120、ダブルデータ速度(DDR)メモリ130及びグラフィックスDDR(GDDR)メモリ140の形態のデータプロセッサを含む。
【0008】
GPU110は、最適化されたグラフィックス処理、レンダリング及び表示のために非常に高い性能を有する離散グラフィックスプロセッサであるが、これらのタスクを実行するために高いメモリ帯域幅を必要とする。GPU110は、概して、コマンドプロセッサ111のセットと、グラフィックス単一命令複数データ(single instruction, multiple data、SIMD)コア112と、キャッシュ113のセットと、メモリコントローラ114と、DDR物理インターフェース回路(DDR PHY)117と、GDDR PHY118と、を含む。
【0009】
コマンドプロセッサ111は、OpenGLプログラミング言語で指定されるもの等の高レベルグラフィックス命令を解釈するために使用される。コマンドプロセッサ111は、OpenGL命令等の高レベルグラフィックス命令を受信するためのメモリコントローラ114への双方向接続、キャッシュ113への双方向接続、及び、グラフィックスSIMDコア112への双方向接続を有する。高レベル命令の受信に応じて、コマンドプロセッサは、キャッシュ113を一時記憶装置として使用して、フレームデータ等のデータのレンダリング、幾何学的処理、シェーディング及びラスタ化のための低レベル命令を発行する。グラフィックス命令に応じて、グラフィックスSIMDコア112は、大規模並列方式で大きいデータセットに対して低レベル命令を実行する。コマンドプロセッサ111及びキャッシュ113は、入力データ及び出力(例えば、レンダリング及びラスタ化された)データの一時的な記憶のために使用される。また、キャッシュ113は、グラフィックスSIMDコア112への双方向接続と、メモリコントローラ114への双方向接続と、を有する。
【0010】
メモリコントローラ114は、コマンドプロセッサ111に接続された第1の上流ポートと、キャッシュ113に接続された第2の上流ポートと、DDR PHY117への第1の下流双方向ポートと、GDDR PHY118への第2の下流双方向ポートと、を有する。本明細書で使用される場合、「上流」ポートは、データプロセッサに向かい、且つ、メモリから離れる回路の側にあり、「下流」ポートは、データプロセッサから離れ、且つ、メモリに向かう方向にある。メモリコントローラ114は、DDRメモリ130及びGDDRメモリ140との間のデータ転送のタイミング及び順序付けを制御する。DDR及びGDDRメモリは非対称アクセスを有し、すなわち、メモリ内のオープンページへのアクセスは、クローズドページへのアクセスよりも高速である。メモリコントローラ114は、メモリアクセスコマンドを格納し、例えば、特定のサービス品質目標を遵守しながらオープンページへのアクセスを優先することによって、効率のためにそれらを順不同で処理する。
【0011】
DDR PHY117は、メモリコントローラ114の第1の下流ポートに接続された上流ポートと、DDRメモリ130に双方向に接続された下流ポートと、を有する。DDR PHY117は、DDRバージョン5(DDR5)等のDDRメモリ130のバージョンの全ての指定されたタイミングパラメータを満たし、メモリコントローラ114の指示でタイミング較正動作を実行する。同様に、GDDR PHY118は、メモリコントローラ114の第2の下流ポートに接続された上流ポートと、GDDRメモリ140に双方向に接続された下流ポートと、を有する。GDDR PHY118は、GDDRメモリ140のバージョンの全ての指定されたタイミングパラメータを満たし、メモリコントローラ114の指示でタイミング較正動作を実行する。
【0012】
DDRメモリ130及びGDDRメモリ140へのインターフェースタイミングは、VTドリフトの影響を受けやすい。VTドリフトを補償するための既知の技術は、リンクの定期的な再トレーニングを中心とする。しかしながら、再トレーニングは、再トレーニングの実行中にシステム内の全動作を停止させ、これにより性能が損なわれ、グラフィックスワークロードのジャンプ及び停止を引き起こし、ユーザエクスペリエンスを損なわせ得る。
【0013】
定期的な再トレーニングの負担を克服するために、本発明者らは、VT誘起位相ドリフトに対するシステムリンク感度を低減するための様々な方法を開発した。開示するVTドリフト補償方法は、定期的な高速リンク位相の再トレーニングの必要性を低減し、場合によっては、それを排除する。例示的な実施形態では、本技術は、GDDRメモリインターフェースに適用されるが、GDDRメモリだけにもメモリインターフェースだけにも限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、メモリコントローラ114は、基本的なリンク較正を実行するための較正コントローラ115と、頻繁な再トレーニングを必要とせずにVTドリフトを補償するための補償回路116と、を含み、したがって、システム性能を向上させ、ユーザエクスペリエンスを改善する。
【0015】
較正コントローラ115は、DDR PHY及び117及びGDDR PHY118のタイミングパラメータの較正を制御する回路である。システム起動時に、DDR PHY117とDDRメモリ130との間のリンクがトレーニングを必要とし、GDDR PHY118とGDDRメモリ140との間のリンクがトレーニングされる。トレーニングは、概して、入力データを取り込むためにメモリ及びPHYによって使用される基準電圧の値、コマンドクロックとデータクロックとの間のタイミング関係、並びに、送信機におけるデータとクロックとの間のタイミング関係を決定して、データが受信機で確実に取り込まれ得るようにすることを含む。これらの較正を実行するための技術は周知であり、DDR及びGDDRのバージョンに基づいて異なる。更に、「DFI」規格として既知である、メモリコントローラとメモリPHYとの間のインターフェースの事実上の業界規格が、メモリコントローラとPHYとの間のインターフェースのシグナリング及び特性を指定するために開発されている。DFI規格の最新バージョンの特徴の1つは特定の下位レベルのトレーニングの特徴の定義であり、較正機能の大部分がPHYによって自動的に実行される一方で、較正フロー全体がメモリコントローラによって指示される。
【0016】
本明細書において開示される様々な実施形態によると、補償回路116は、GDDR PHY118等PHY回路のこれらの能力を活用し、較正コントローラ115及びGDDR PHY118を使用して、再較正動作を行う必要なくVTドリフトを調整する。補償回路116は、GDDR PHY118における遅延を制御するために使用されるタイミングパラメータにおけるドリフトを計算する。特定の一実施形態では、補償回路116は、測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいてドリフトを計算し、GDDR PHY118の遅延量を更新することによって、これらのパラメータに基づいてタイミング変化を補償する。
【0017】
GDDRメモリ140は、モードレジスタ141のセットと、温度センサ142と、を含む。モードレジスタ141は、データ処理システムにおけるGDDRメモリ140の動作を制御するためのプログラミングインタフェースを提供する。以下で更に説明するように、モードレジスタ141は、VTドリフト補償において使用される少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数を記憶する。また、GDDRメモリ140は、GDDRメモリ140の温度を測定するための温度センサを含む。一形態では、温度センサ142は、補償回路116が更新された温度情報を定期的に確実に受信するようにする更新動作中に、GPU110内の補償回路116に温度データを提供する。
【0018】
本発明者らは、通常動作中に性能に影響を及ぼす再較正を必要とせずに、測定した温度差及び電圧差のみに基づいて、特定の較正されたタイミングパラメータを調整することを見出した。したがって、本開示は、VT誘起位相ドリフトに対するシステムリンク感度を低減するための様々な方法を説明する。開示するVTドリフト補償方法は、定期的な高速リンク位相の再トレーニングの必要性を低減し、場合によっては排除する。本開示は、グラフィックスDDRメモリインターフェースに関して提示されるが、GDDRメモリのみにも、メモリインターフェースのみにも限定されない。
【0019】
一部のGDDR、バージョン6(GDDR6)物理層インターフェース(PHY)システムでは、「WCK2DQI」VTドリフト方向及び大きさとして既知のパラメータの電圧温度(VT)ドリフトは、PHY基準クロックに対する誤り検出訂正(error detection and correction、EDC)レーン(WCK2DQO)のVT位相ドリフトを監視することによって推論に成功した。本明細書で使用される場合、WSK2DQIは、データ入力遅延に対する書き込みクロック(WCK)を意味し、WCK2DQOは、データ出力遅延に対するWCKを意味する。PHY基準クロックは、誤り検出訂正(EDC)レーンと共有される分岐クロックソースであった。この基本的な関係は、式[1]に示すように表すことができる。
WCK2DQI_drift=WCK2DQO_drift*α [1]
式中、αは、ハードウェア評価から導出されるスケーリング係数である。
【0020】
今日使用されている多くの製品は、このWCK2DQIドリフト相関をWCK2DQO位相ドリフトに活用しているが、これは完全な解決策ではなく、全てのDRAMベンダ及びアプリケーションで機能するわけではなく、この方法にはいくつかの制約又は欠点がある。本発明者らは、本明細書において、ドリフト追跡をより良好に活用して、GDDRインターフェースにおけるパラメータを含む高速リンクインターフェースのための定期的なトレーニングのオーバーヘッドを低減するか又は排除する方法を提案する。
【0021】
式[1]で表される温度ドリフト相関の単純なモデルには2つの主な制約がある。第1に、式[1]は、DRAMデバイス間でのプロセス変動がほとんどないか全くないと仮定する。第2に、式[1]は、WCK2DQO VTドリフトが、電圧感度及び温度感度の両方についてWCK2DQIに対称的にスケーリングされると仮定する。換言すると、αスカラーは、温度及び電圧の両方について、すなわち、式(2)で表されるように等価でなければならない。
α_temp=α_volt=WCK2DQI_drift/WCK2DQO_drift [2]
【0022】
本発明者らは、実際には、一部のDRAMデバイスが、WCK2DQOドリフトとWCK2DQI VTドリフトとの間に対称な相関関係を有していないことを見出した。一例として、表Iは、1つのそのようなDRAMデバイスのDQへの書き込みクロックのVTドリフト係数を示す。
【0023】
【0024】
表中、psはピコ秒で時間を表し、Vはボルトで電圧を表し、TCは摂氏温度で温度を表す。VDDは最悪の場合の処理コーナーにおけるメモリの典型的な内部電源電圧を表し、VDDQは最悪の場合の処理コーナーにおけるメモリの典型的な入/出力電源電圧を表し、TCは最悪の場合の処理コーナーにおける温度を表すことに留意されたい。
【0025】
一方、測定値は、以下の表IIに示すように、同じDRAMベンダからのDQ入力に対する書き込みクロックのVTドリフト係数によって異なる。
【0026】
【0027】
上記の表I及び表IIから分かるように、このDRAMベンダには式(2)は当てはまらない。この特定の例の変形は、以下の式で記述される。
式(1):
α_temp=0.7/1.1=0.636
α_volt=-30/-180=0.166
α_avg=(α_temp+α_volt)/2
【0028】
この従来の技術を使用してWCK2DQO VTドリフトに基づいてWCK2DQI VTドリフトを決定すると、式(4)によって定義される、重大な位相トラッキング誤差が生じる。
位相トラッキング誤差=α_error*WCK2DQ_drift [4]
式中α_error=abs(α_temp±α_volt)*0.5であり、WCK2DQ_driftは観測された総位相ドリフトである。α_errorを導出するために使用される0.5の乗数は、電圧α係数と温度α係数との間の非対称性が平均化されることを仮定する。
【0029】
したがって、例えば、WCK2DQOから100ピコ秒(ps)のドリフトが観測される場合、このドリフトは、100ps*0.47/2のWCK2DQIで位相トラッキング誤差をもたらし、これは23psの誤差をもたらす。この量の位相トラッキング誤差はかなりの量であり、精度を制限し、したがって、式[2]に基づく既存の位相トラッキング技術の有用性を制限する。更に、この量は、同一ベンダの製品ラインの異なるDRAMに対するプロセス不一致の項を考慮することなく計算された。
【0030】
本開示の発明者らは、これらの上記の制限を克服するための新しい方法及び装置を開発した。これらの制限の原因は、典型的なGDDRメモリPHYからGDDRメモリへのリンクに示されており、ここでこれについて説明する。
【0031】
図2は、いくつかの実施形態による、
図1のデータ処理システム100のGDDR PHY-DRAMリンク200のブロック図である。GDDR PHY-DRAMリンク200は、物理インターフェース260を介して通信するGPU110及びGDDRメモリ140の一部を含む。
【0032】
GPU110は、位相ロックループ(phase locked loop、PLL)210と、コマンド及びアドレス(command and address、「C/A」)回路220と、読み取りクロック回路230と、データ回路240と、書き込みクロック回路250と、を含む。これらの回路は、GPU110のGDDR PHY118の一部を形成する。
【0033】
位相ロックループ210は、基準クロック発生回路として動作し、「CKIN」とラベル付けされた入力クロック信号を受信するための入力と、出力と、を有する。
【0034】
C/A回路220は、遅延要素221と、セレクタ222と、「TX」とラベル付けされた伝送バッファ223と、を含む。遅延要素221は、PLL210の出力に接続された入力と、出力と、を有し、
図2には具体的に示されていない入力によって制御される可変遅延を有する。可変遅延は、本明細書に記載の技術に従って、較正コントローラ115によって起動時に決定され、補償回路116によって動作中に調整される。セレクタ222は、第1のコマンド/アドレス値を受信するための第1の入力と、第2のコマンド/アドレス値を受信するための第2の入力と、遅延要素221の出力に接続された制御入力と、を有する。伝送機223は、セレクタ222の出力に接続された入力と、「C/A」とラベル付けされたコマンド/アドレス信号を供給するために対応する集積回路端子に接続された出力と、を有する。C/A回路220は、
図2に示された代表的なセレクタ222及びバッファ223と同じように構成された、C/A信号グループ内の各信号に対する個別バッファのセットを含むが、代表的なC/A回路220のみが示されていることに留意されたい。
【0035】
読み取りクロック回路230は、「RX」とラベル付けされた受信バッファ231と、セレクタ232と、を含む。受信バッファ231は、「RCK」とラベル付けされた信号を受信するための対応する集積回路端子に接続された入力と、出力と、を有する。
【0036】
受信クロックセレクタ232は、PLL210の出力に接続される第1の入力と、受信バッファ231の出力に接続される第2の入力と、出力と、
図2には示されていないモード信号を受信する制御入力と、を有する。
【0037】
データ回路240は、受信バッファ241と、ラッチ242と、遅延要素243及び244と、シリアライザ245と、伝送バッファ246と、を含む。受信バッファ241は、「DQ」と一般的にラベル付けされるデータ信号を受信する集積回路端子に接続された第1の入力と、「VREF」とラベル付けされた基準電圧を受信するための第2の入力と、出力と、を有する。ラッチ242は、受信バッファ241の出力に接続された「D」とラベル付けされた入力、クロック入力、及び、出力データ信号を提供するための「Q」とラベル付けされた出力を有するD型ラッチである。GDDR PHY118とGDDRメモリ140との間のインターフェースは、2つのデータビットを4つの公称電圧レベルのうち何れかに符号化する、「PAM-4」として既知の4レベルパルス振幅変調データシグナリングシステムを実装する。したがって、受信バッファ241は、入力電圧によって4つのレベルのうち何れが示されるかを識別し、それに応じて状態を表す2つのデータビットを出力する。例えば、受信バッファ241は、4つの電圧範囲を定義するVREFに基づいて3つのスライシングレベルを生成し、3つの比較器を使用して、受信データ信号が何れの範囲に入るかを判定することができる。データ回路240は、2つのデータビットをラッチし、各ビット位置に対して複製されるラッチを含む。遅延要素243は、入力がセレクタ232の出力に接続され、出力がラッチ242のクロック入力に接続されている。遅延要素244は、PLL210の出力に接続された入力と、出力と、を有する。シリアライザ245は、バーストの連続サイクルに対応する、所定のビット位置の第1のデータ値及び所定のビット位置の第2のデータ値を受信するための入力と、遅延要素244の出力に接続された制御入力と、対応するDR端子に接続された出力と、を有する。データバスの各データバイトは、バイトの各ビットに対するデータ回路240のようなデータ回路のセットを有する。この複製によって、プリント回路基板上で異なるルーティングを有する異なるデータバイトが異なる遅延値を有することが許容される。
【0038】
書き込みクロック回路250は、遅延要素251、セレクタ252及び伝送バッファ253を含む。遅延要素251は、PLL210の出力に接続された入力と、出力と、を有する。セレクタ252は、第1のクロック状態信号を受信するための第1の入力、第2のクロック電圧を受信するための第2の入力、遅延要素251の出力に接続された制御入力、及び、出力を有する。伝送バッファ253は、セレクタ252の出力に接続された入力と、「WCK_t」とラベル付けされた真の書き込みクロック信号を提供するために対応する集積回路端子に接続された第1の出力と、「WCK_c」とラベル付けされた相補的な書き込みクロック信号を提供するために対応する集積回路端子に接続された第2の出力と、を有する。
【0039】
GDDRメモリ140は、概して、書き込みクロック受信機270と、コマンド/アドレス受信機280と、データ経路トランシーバ290と、を含む。書き込みクロック受信機270は、受信バッファ271、バッファ272、分周器273、バッファ/ツリー274、及び、分周器275を含む。受信バッファ271は、WCK_t信号を受信するGDDRメモリ140の集積回路端子に接続された第1の入力と、WCK_c信号を受信するGDDRメモリ140の集積回路端子に接続された第2の入力と、出力と、を有する。
図2に示される例では、受信バッファ271の出力は、8GHzの公称周波数を有するクロック信号である。バッファ272は、受信バッファ271の出力に接続された入力と、出力と、を有する。分周器273は、バッファ272の出力に接続された入力と、4GHzの公称周波数を有する分周クロックを提供するための出力と、を有する。分周器275は、バッファ/ツリー274の出力に接続された入力と、2GHzの公称周波数を有する「CK4」とラベル付けされたクロック信号を提供するための出力と、を有する。
【0040】
コマンド/アドレス受信機280は、受信バッファ281及びスライサ282を含む。受信バッファ281は、C/A信号を受信するGDDRメモリ140の対応する集積回路端子に接続された第1の入力と、VREFを受信するための第2の入力と、出力と、を有する。C/A入力信号は、2つの論理状態レベルを有する通常のバイナリ信号として受信され、非ゼロ復帰(non-return-to-zero、NRZ)信号符号化とみなされる。スライサ282は、各々が受信バッファ281の出力に接続されたD入力と、分周器275の出力のうち対応する出力を受信するためのクロック入力と、対応するC/A信号を提供するためのQ出力と、を有する2つのデータラッチのセットを有する。
【0041】
データ経路トランシーバ290は、シリアライザ291、伝送機292、シリアライザ293、伝送機294、受信バッファ295、及び、スライサ296を含む。シリアライザ291は、第1の読み取りクロックレベルを受信するための入力と、第2の読み取りクロックレベルを受信するための第2の入力と、バッファ/ツリー274の出力に接続された選択入力と、出力と、を有する。伝送機292は、シリアライザ293の出力に接続された入力と、GDDRメモリ140のRCK端子に接続された出力と、を有する。シリアライザ293は、第1の読み取りデータ値を受信するための入力と、第2のデータ値を受信するための第2の入力と、バッファ/ツリー274の出力に接続された選択入力と、出力と、を有する。伝送機294は、シリアライザ293の出力に接続された入力と、GDDRメモリ140の対応するDQ端子に接続された出力と、を有する。受信バッファ295は、GDDRメモリ140の対応するDQ端子に接続された第1の入力と、VREF値を受信するための第2の入力と、出力と、を有する。スライサ296は、受信バッファ295の出力に接続されたD入力と、バッファ/ツリー274の出力に接続されたクロック入力と、対応するDQ信号を提供するためのQ出力とを各々が有する4つのデータラッチのセットを有する。
【0042】
インターフェース260は、GPU110ダイのボンドパッドから、パッケージインピーダンスを通ってパッケージ端子へ、プリント回路基板上のトレースを通ってGDDRメモリ140のパッケージ端子へ、パッケージインピーダンスを通ってGDDRメモリ140ダイのボンドパッドへとルーティングされる物理接続のセットを含む。
【0043】
動作中、データ処理システムは、グラフィックスSIMDコア112によって実行される高帯域幅グラフィックス処理のために、グラフィックスカード又はアクセラレータとして使用することができる。オペレーティングシステム又はアプリケーションプログラムを実行するホストCPU120は、GPU110及びホストCPU120のための統合メモリとして働くDDRメモリ130を通して、グラフィックス処理コマンドをGPU110に送信する。それは、例えば、OpenGLコマンドとして使用して又は任意の他のホストCPUを通して、コマンドをGPUインターフェースに送信し得る。OpenGLはKhronos Groupによって開発された、2D及び3Dベクトルグラフィックスをレンダリングするためのクロス言語、クロスプラットフォームアプリケーションプログラミングインターフェースである。ホストCPU120は、アプリケーションプログラミングインターフェース(application programming interface、API)を使用して、GPU110と相互作用し、ハードウェア加速レンダリングを提供する。
【0044】
データ処理システム100は、2つのタイプのメモリを使用する。第1のタイプのメモリはDDRメモリ130であり、GPU110及びホストCPU120の両方によってアクセス可能である。グラフィックスSIMDコア112の高い性能の一部として、GPU110は、高速グラフィックスダブルデータ速度(graphics double data rate、GDDR)メモリを使用する。
【0045】
高速DDRメモリにおいて、読み取りデータ又は書き込みデータは、データ要素をラッチするために使用されるクロック信号に対して変化する可変伝送経路遅延を有し得る。更に、JEDEC委員会は、データ要素がデータプロセッサとメモリとの間で適切に転送され得るように、プロセッサがリンクを較正して、GPU110とGDDRメモリ140との間の一連のデータ要素遅延を実行することを規定している。様々な信号処理経路長は、動作中にVTが変化すると、様々な信号経路におけるドリフトが互いに追従せず、式[2]に示される単純な温度スケーリング調整が正確な補償された較正値を生成しないように、システムにスキューを注入する。次に、この特性について説明する。
【0046】
図3は、
図2のGDDR PHY-DRAMリンク200に対応する、注釈付きのGDDR PHY-DRAMリンク300のブロック図である。GDDR PHY-DRAMリンク300には、VTの変化に従った特定のタイミング差を説明する信号経路を示すために注釈が付けられている。
【0047】
タイミング経路310は、スライサ296における入力(書き込み)データの取り込みに対する、差動信号WCK_t及びWCK_cによって形成される書き込みクロックの経路を示す。タイミング経路310は、受信した書き込みクロックがスライサ296のクロック入力に到達する前に、DRAMパッケージ、受信バッファ271、バッファ272、分周器273及びバッファ/ツリー274を通って流れることを示す。タイミング経路350は、書き込みサイクル中のデータ入力信号の経路を示し、受信したデータがDRAMパッケージインピーダンス及び受信バッファ283を通ってスライサ284の入力に流れることを示す。タイミング経路310は、タイミング経路350よりも多くの回路を通過し、VTの変化は、タイミング経路350での変化よりも大きく影響を及ぼす。これらのパス遅延は、WCK2DQIとして既知のタイミングパラメータに影響を与える。
【0048】
タイミング経路320は、読み取りクロックRCKの出力への書き込みクロックの経路を示す。タイミング経路320は、受信した書き込みクロックが、DRAMパッケージ抵抗受信バッファ271、バッファ272、分周器273、バッファ/ツリー274、分周器275、シリアライザ291、送信バッファ292及びパッケージインピーダンスを通って流れて、読み取りクロックを形成することを示す。この経路遅延は、WCK2RCKとして既知のタイミングパラメータを決定する。
【0049】
タイミング経路330は、スライサ296におけるコマンド/アドレス信号の取り込みに対する書き込みクロックの経路を示す。タイミング経路320は、受信した書き込みクロックがスライサ282のクロック入力に到達する前に、DRAMパッケージインピーダンス、受信バッファ271、バッファ272、分周器273、バッファ/ツリー274及び分周器275を通って流れることを示す。タイミング経路340は、コマンドサイクル中のC/A入力信号の経路を示し、受信したデータがDRAMパッケージ及び受信バッファ281を通ってスライサ282の入力に流れることを示す。この経路は、WCK2CAとして既知のタイミングパラメータに影響を及ぼす。タイミング経路330は、タイミング経路340よりも多くの回路を通過し、VTの変化は、タイミング経路340での変化よりも大きく影響を及ぼす。これらのパス遅延は、WCK2CAとして既知のタイミングパラメータに影響を与える。
【0050】
これらの代表的な回路図は、VTドリフトがこれらの経路の各々に異なる影響を与えることを示す。例えば、パッケージルーティング経路を通る伝搬時間は、温度の影響を受けるが、メモリの電源電圧の影響を受けない。一方、能動回路を通る伝搬時間は、温度だけでなく電源電圧の影響を受ける。
【0051】
図4は、システム性能又は待ち時間に影響を与えることなくWCK2RCK_driftパラメータを取り込む方法を理解するのに有用なタイミング
図400である。タイミング
図400において、横軸は時間をピコ秒(ps)で表し、縦軸はいくつかの信号の振幅をボルト(V)で表す。タイミング
図400は、真のクロック信号CK_t及び補のクロック信号CK_cによって形成される差動クロック信号の波形を示す。差動クロック信号は、「CMD」とラベル付けされたコマンド信号及びアドレス信号(
図4には図示せず)をGDDRメモリ140にラッチするために使用される。コマンドがメモリにおいて確実に取り込まれることを保証するために、2つの信号グループ間の遅延量を決定するためにコマンド/アドレストレーニングが以前実行された
図1の較正コントローラ115が、CMD信号及びアドレス信号がCK_t信号及びCK_c信号における遷移に対して適切なセットアップ時間及びホールド時間でデータ「アイ」の中心付近のGDDRメモリ140への入力に到着するように、GDDR PHY118によって適用される。したがって、「T0」とラベル付けされた時間にプリチャージオールコマンドPREALLがGDDRメモリ140によってラッチされ、リフレッシュオールバンク(refresh all banks)(REFab)コマンドが「Ta0」とラベル付けされた時間にラッチされ、書き込みトレーニングコマンド(WRTR)が「Tb0」とラベル付けされた時間にラッチされる。WRTRコマンドに応じて、GDDRメモリ140は、予想読み取りデータと比較可能な読み取りデータを提供し、GDDR PHY118は、予想読み取りデータがGDDRメモリ140からDQピンに返されるまで遅延素子251の遅延を徐々に変化させて、電流WCK2RCK_driftを定義することができる。したがって、較正コントローラ115は、1つ以上のリフレッシュオールバンク期間中にWCK2RCK_driftパラメータを見つけるために増分書き込みトレーニングを実行することができるが、GDDRメモリ140は、如何なる読み取り動作又は書き込み動作も実行することができない。
【0052】
図5は、システム性能又はコマンド待ち時間に影響を与えることなくメモリ温度を読み取る方法を理解するのに有用なタイミング
図500である。タイミング
図500において、横軸は時間をピコ秒(ps)で表し、縦軸はいくつかの信号の振幅をボルト(V)で表す。タイミング
図500は、真のクロック信号CK_t及び補のクロック信号CK_cによって形成される差動クロック信号の波形を示す。差動クロック信号は、「CMD」信号とラベル付けされたコマンド信号及びアドレス信号(
図5には図示せず)をGDDRメモリ140にラッチするために使用される。コマンドがメモリにおいて確実に取り込まれることを保証するために、2つの信号グループ間の遅延量を決定するためにコマンド/アドレストレーニングが以前実行された
図1の較正コントローラ115が、CMD信号及びアドレス信号がCK_t信号及びCK_c信号における遷移に対して適切なセットアップ時間及びホールド時間でデータ「アイ」の中心付近のGDDRメモリ140への入力に到着するように、GDDR PHY118によって適用される。したがって、「T0」とラベル付けされた時間にプリチャージオールコマンドPREALLがGDDRメモリ140によってラッチされ、リフレッシュオールバンク(REFab)コマンドが「Ta0」とラベル付けされた時間にラッチされ、モードレジスタセットコマンド(MRS)が「Tb0」とラベル付けされた時間にラッチされる。このMRSコマンドは、メモリの温度値を保持するモードレジスタを読み取る。
【0053】
例えば、モードレジスタセットコマンドは、GDDR4メモリ140の特定のモードレジスタの特定ビットに書き込んで温度読み出し動作を呼び出すコマンドである。GDDRメモリ140は、DQピン7:0上の温度センサ142から導出された温度読み出しを提供する。GDDRメモリ140は、DQピンを長期間安定に保って、初期タイミング較正の前に温度の読み取ることを可能にする。図示した実施形態では、GDDRメモリ140は、Tb0に続く最大時間t
WRIDON内にバイナリ温度読み出しを提供する。GDDRメモリ140は、少なくとも、
図5に示されるように早ければTb0後の時間t
MRDにも提供され得る、時間Tc2にバイナリ温度読み出しを無効にするMRSコマンドの受信まで、DQ[7:0]でバイナリ温度の読み出しを駆動する。したがって、較正コントローラ115は、GDDRメモリ140が、保留中の読み取り動作又は書き込み動作を全く実行することができない、1つのリフレッシュオールバンク期間中にDRAM_deltaTempパラメータを見つけるために温度読み出しを実行することができる。
【0054】
いくつかの実施形態によると、メモリコントローラ114内の較正コントローラ115は、他のVT補償方法と組み合わせてWCK2RCKからのドリフト追跡情報を活用する柔軟性を有する。例えば、WCK2RCK_driftから登録された位相ドリフトが閾値を超える場合、較正コントローラ115は、任意選択的に完全な書き込み/読み取り/CA較正をトリガすることができる。この完全な較正は、VT感度係数を更新するために使用され得る。この技術を容易にするために、較正コントローラ115は、デバイス動作全体で複数の電圧及び温度ドリフトの大きさを抽出し、1つ以上のオフセットを更新して、将来のVT挙動をより良好に予測することができる。
【0055】
モードレジスタ141に記憶されたVT感度情報を完全に活用するために、必要時にUMCにフルリンク再トレーニングを発行させる最大ドリフト閾値とともに、許容誤差耐性が設定される。このプロセスに使用することができる例示的なパラメータのセットを表III~Vに示す。
【0056】
表IIIは、32Gbpsの転送速度でのGDDR DRAM基準RX(書き込み)動作に対応する。
【0057】
【0058】
表IVは、32Gbpsの転送速度でのGDDR DRAM基準TX(読み取り)動作に対応する。
【0059】
【0060】
表Vは、32Gbpsの転送速度でのGDDR DRAM C/Aタイミング基準動作に対応する。
【0061】
【0062】
本明細書に記載のデータ処理システム又はその一部は、1つ以上の集積回路で具現化することができ、その何れかは、プログラムによって読み取られ、直接的又は間接的に使用されて集積回路を製造し得る、データベース又は他のデータ構造の形態のコンピュータでアクセス可能なデータ構造によって記述又は表現され得る。例えば、本データ構造は、ベリログ又はVHDL等の高位設計言語(HDL)におけるハードウェア機能の挙動レベル記述又はレジスタ転送レベル(RTL)記述であってもよい。記述は、合成ライブラリからゲートのリストを含むネットリストを生成するために記述を合成することができる合成ツールによって読み取ることができる。ネットリストは、集積回路を含むハードウェアの機能も表すゲートのセットを含む。ネットリストは、次に、マスクに適用される幾何学的形状を記述するデータセットを生成するために配置され、ルーティングされてもよい。次に、マスクを、様々な半導体製造工程で使用して、集積回路を製造してもよい。代替的に、コンピュータアクセス可能記憶媒体上のデータベースは、所望の場合、ネットリスト(合成ライブラリの有無にかかわらず)若しくはデータセット、又は、グラフィック・データ・システム(Graphic Data System、GDS)IIデータであってもよい。
【0063】
特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態に対する様々な修正が当業者には明らかであろう。例えば、いくつかの実施形態は、グラフィックスダブルデータレート(GDDR)DRAMを参照して説明してきたが、非グラフィックスDDRメモリ、高帯域幅メモリ(HBM)等他のメモリタイプにも適用され得る。更に、非常に高性能のグラフィックス動作向けに個別のGPUを有するデータ処理システムを参照して説明してきたが、CPU及びGPUが単一の集積回路チップ上に一緒に組み込まれた加速処理ユニット(accelerated processing unit、APU)を有するデータ処理システムにも適用することができる。差動シグナリング又はシングルエンドシグナリング、及び、NRZデータシグナリング又はPAM-4シグナリングの使用は、異なる実施形態において異なり得る。
【0064】
したがって、添付の特許請求の範囲は、開示された実施形態の範囲に含まれる開示された実施形態の全ての変更を網羅することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリに結合されたデータプロセッサを備えるデータ処理システムであって、
前記データプロセッサは、
基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、
前記基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、
前記基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、
前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定するための較正回路と、
測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算し、前記ドリフトに従って前記第1の量及び前記第2の量を更新するための補償回路と、を備え
、
前記データプロセッサは、前記メモリから温度読み出し動作を起動し、前記温度読み出し動作から前記測定した温度変化を決定するように動作可能である、
データ処理システム。
【請求項2】
前記補償回路は、前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算する、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項3】
前記メモリは、
前記少なくとも1つの電圧感度係数及び前記少なくとも1つの温度感度係数を記憶するためのモードレジスタを備える、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項4】
前記メモリは、
前記メモリの温度を測定するための温度センサを備え、
前記メモリは、所定の動作中に前記温度を前記データプロセッサに提供する、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項5】
前記所定の動作は、リフレッシュ動作を含む、
請求項
4のデータ処理システム。
【請求項6】
前記補償回路は、前記第1の量及び前記第2の量の何れかのドリフトがそれぞれの許容閾値を超えることに応じて、前記較正回路にフルリンク再トレーニングシーケンスを実行させる、
請求項1のデータ処理システム。
【請求項7】
メモリに結合されるように構成されたデータプロセッサであって、
基準クロック信号を提供するための基準クロック発生回路と、
前記基準クロック信号を第1の量だけ遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供するための第1の遅延回路と、
前記基準クロック信号を第2の量だけ遅延させて、読み取りデータ信号を提供するための第2の遅延回路と、
前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定するための較正回路と、
測定した温度変化、少なくとも1つの電圧感度係数及び少なくとも1つの温度感度係数に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算し、前記ドリフトに従って前記第1の量及び前記第2の量を更新するための補償回路と、を備え
、
前記メモリから温度読み出し動作を起動し、前記温度読み出し動作から前記測定した温度変化を決定するように動作可能である、
データプロセッサ。
【請求項8】
前記補償回路は、前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算する、
請求項
7のデータプロセッサ。
【請求項9】
前記較正回路は、
メモリ動作を発行して前記電流値を決定する較正コントローラと、
前記較正コントローラに結合された、前記メモリ動作に応じて前記メモリに信号を提供するためのメモリ物理層インターフェース回路(PHY)と、を備える、
請求項
7のデータプロセッサ。
【請求項10】
データプロセッサがメモリにアクセスするためのタイミング値を更新して、リンクの再トレーニングを実行することなく、動作中に電圧温度(VT)ドリフトを補償するための方法であって、
基準クロック信号を生成することと、
第1の遅延回路を使用して第1の量だけ前記基準クロック信号を遅延させて、コマンド及びアドレス信号を提供することと、
第2の遅延回路を使用して第2の量だけ前記基準クロック信号を遅延させて、読み取りデータ信号を提供することと、
較正回路を使用して前記第1の量及び前記第2の量の電流値を決定することと、
前記メモリから温度読み出し動作を起動することと、
補償回路を使用して、
前記温度読み出し動作から測定した温度変化
と、少なくとも1つの電圧感度係数
と、少なくとも1つの温度感度係数
と、に基づいて前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算することと、を含む、
方法。
【請求項11】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と前記メモリから受信した読み取りクロック信号との間のタイミングドリフトに基づいて、前記第1の量及び前記第2の量におけるドリフトを計算することを含む、
請求項
10の方法。
【請求項12】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、読み取りサイクル中に前記メモリから受信した読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、リフレッシュ期間中に前記メモリから受信した読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項
11の方法。
【請求項14】
前記メモリに提供される書き込みクロック信号と、前記読み取りクロック信号を連続トグルモードにするように前記メモリのモードレジスタを設定することによって受信した前記読み取りクロック信号と、の間のタイミングドリフトを測定することを含む、
請求項
13の方法。
【請求項15】
前記第1の量及び前記第2の量の何れかのドリフトがそれぞれの許容閾値を超えることに応じて、前記較正回路にフルリンク再トレーニングシーケンスを実行させることを含む、
請求項
10の方法。
【国際調査報告】