(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】中空コアフォトニック結晶ファイバベースの広帯域放射発生器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/365 20060101AFI20241114BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20241114BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241114BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20241114BHJP
G02F 1/355 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G02F1/365
G02B6/032 Z
G02B6/02 451
G02B6/27
G02F1/355
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525860
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077286
(87)【国際公開番号】W WO2023078619
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】バウアーシュミット、セバスチャン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ユーベル、パトリック、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ、ペーター、マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
2H137
2H250
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AA05
2H137AA14
2H137AB06
2H137AC01
2H137BA02
2H137BA11
2H137BC42
2H137BC44
2H137BC45
2H137DA08
2H250AB66
2H250AC53
2H250AF04
2H250AF23
2H250AF28
2H250AF44
2H250AG18
2H250AH15
2K102AA05
2K102BA20
2K102BB03
2K102BC01
2K102BD10
2K102DA06
2K102DD00
2K102EB11
2K102EB20
2K102EB30
(57)【要約】
【解決手段】実質的に直線偏光した入力放射を受けると広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置が開示される。この装置は、中空コアフォトニック結晶ファイバと、中空コアフォトニック結晶ファイバによって受けられる前に前記入力放射に実質的に円偏光または楕円偏光を与えるように動作可能な少なくとも1つの第1偏光素子と、前記第1偏光素子と組み合わせて動作して前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えることができる第2偏光素子とを備える。前記第2偏光素子および前記第1偏光素子は、前記楕円偏光が前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するように方向づけされる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に直線偏光した入力放射を受けて広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置であって、
中空コアフォトニック結晶ファイバと、
前記中空コアフォトニック結晶ファイバによって受けられる前に前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な少なくとも1つの第1偏光素子と、を備え、
当該広帯域放射源装置は、前記第1偏光素子と組み合わせて前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えるように動作可能な第2偏光素子をさらに備え、前記第2偏光素子および前記第1偏光素子は、前記楕円偏光が前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するように方向づけされることを特徴とする、広帯域放射源装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1偏光素子は、前記入力放射の円偏光度を10%を超える大きさで増加させるように動作可能である、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項3】
前記第1偏光素子は、前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な四分の一波長板を備える、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項4】
前記第1偏光素子は、前記入力放射の直線偏光状態に対して可変の方向を有する可変第1偏光素子を備える、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項5】
前記第2偏光素子は、半波長板を備える、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項6】
前記広帯域出力放射の偏光メトリックを監視するように動作可能な偏光計をさらに備える、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項7】
前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、変調不安定性メカニズムによって前記広帯域出力放射を生成するように動作可能な作動混合物を備える、請求項1に記載の広帯域放射源装置。
【請求項8】
前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、作動混合物として1つ以上の希ガスを備える、請求項7に記載の広帯域放射源装置。
【請求項9】
広帯域出力放射を生成する方法であって、当該方法は、中空コアフォトニック結晶ファイバ内に含まれる作動媒体を入力放射で励起して前記広帯域出力放射を生成することを含み、前記入力放射は、前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するために楕円偏光されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記入力放射は、10%を超える円偏光度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
四分の一波長板を使用して、実質的に直線偏光した放射に実質的に円偏光を与えて前記入力放射を得ることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
半波長板と組み合わせて四分の一波長板を使用して、実質的に直線偏光した放射に楕円偏光を与えて前記楕円偏光した入力放射を得ることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記広帯域出力放射が主に直線偏光となるように、前記実質的に直線偏光した放射の偏光方向に対して少なくとも前記半波長板の方向を変えることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記広帯域出力放射が主に直線偏光となるように、前記実質的に直線偏光した放射の偏光方向に対して前記半波長板および前記四分の一波長板のそれぞれの方向を変えることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の記載の広帯域放射源装置を備える計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、その全体が参照により本書に援用される2021年11月2日に出願された欧州出願第21205875.4号および2021年12月1日に出願された欧州出願第21211780.8号の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、中空コアフォトニック結晶ファイバベースの広帯域放射発生器、特に、集積回路の製造における計測用途に関連する広帯域放射発生器に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」または「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えばウェハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている代表的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、13.5nmである。4~20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を用いて、例えば波長193nmの放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
低k1リソグラフィを使用して、リソグラフィ装置の古典的な解像限界よりも小さい寸法のフィーチャを処理することができる。このようなプロセスでは、解像度の式はCD=k1×λ/NAとして表すことができる。ここで、λは使用する放射の波長、NAはリソグラフィ装置の投影光学系の開口数、CDは「限界寸法」(通常、印刷される最小のフィーチャサイズであるが、この場合はハーフピッチ)およびk1は経験的な解像度係数である。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的機能と性能を実現するために回路設計者が計画した形状と寸法に似たパターンを基板に再現することが難しくなる。これらの困難を克服するために、高度な微調整ステップをリソグラフィ投影装置および/または設計レイアウトに適用することができる。これらには、たとえば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光学近接効果補正(OPC:optical proximity correction、「光学補正およびプロセス補正」とも呼ばれる)などの設計レイアウトのさまざまな最適化、または一般に「解像度向上技術」(RET:resolution enhancement techniques)として定義されている他の方法が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳しい制御ループを使用して、低k1でのパターンの再現を改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
計測ツールは、IC製造プロセスの多くの面で使用され、例えば、露光前に基板を適切に位置決めするためのアライメントツール、基板の表面トポロジーを測定するためのレベリングツール、たとえば、プロセス制御において露光および/またはエッチングされた製品を検査/測定するためのフォーカス制御および散乱計測ベースのツールとして使用される。いずれの場合も放射源が必要とされる。測定の堅牢性や精度などのさまざまな理由から、このような計測用途には広帯域放射(または白色光)の放射源の使用が増えている。広帯域放射発生のために現在の装置を改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、実質的に直線偏光した入力放射を受けると広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置が提供される。この広帯域放射源装置は、中空コアフォトニック結晶ファイバと、前記中空コアフォトニック結晶ファイバによって受けられる前に前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な少なくとも1つの第1偏光素子とを備える。前記広帯域放射源装置は、前記第1偏光素子と組み合わせて動作して前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えることができる第2偏光素子をさらに備える。前記第2偏光素子および前記第1偏光素子は、前記楕円偏光が前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するように方向づけされる。
【0008】
本発明の第2の態様では、広帯域出力放射を生成する方法が提供される。この方法は、中空コアフォトニック結晶ファイバ内に含まれる作動媒体を入力放射で励起して前記広帯域出力放射を生成することを含む。前記入力放射は、前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するために楕円偏光される。
【0009】
本発明の第3の態様では、第1の態様の広帯域放射源装置を備える計測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施形態は、添付の概略図を参照して、例としてのみ説明される。
【
図3】半導体製造を最適化するための3つの主要技術間の連携を表す、全体的なリソグラフィの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る放射源を備える、計測装置として使用される散乱計測装置の概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る放射源を備えるレベルセンサ装置の概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る放射源を備えるアライメントセンサ装置の概略図である。
【
図7】一実施形態に係る放射源の一部を形成する中空コア光ファイバの、横断面(すなわち、光ファイバの軸に垂直)における概略断面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、スーパーコンティニウム生成のための中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)設計の実施例の横断面を概略的に示す図である。
【
図9】広帯域出力放射を提供するための放射源の概略図である。
【
図10】入力偏光をHC-PCFの優先軸に合わせるための監視ブランチを備えた放射源の概略図である。
【
図11】第1の実施形態に係る放射源の概略図である。
【
図12】第2の実施形態による放射源の概略図である。
【
図13】直線偏光放射と円偏光放射のパルスエネルギーに対するインテグレーテッドパワーのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、「放射線」および「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365、248、193、157または126nm)およびEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射線を包含するために使用される。
【0012】
本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに基板の目標部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を与えるために使用できる一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈され得る。「放射バルブ」という用語もこの文脈で使用できる。標準的なマスク(透過型または反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のこのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイを含む。
【0013】
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。このリソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと;基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板サポートを正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板サポート(例えばウェハテーブル)WTと;パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを含む)目標部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0014】
動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOからビームを受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、放射を成形し、および/または放射を制御するための屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型、および/または他の形式の光学素子といった各種光学素子またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面におけるその断面において所望の空間および角度強度分布を有するように放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0015】
本明細書において使用する「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、および/または液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁光学システムおよび/または静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0016】
リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wの間の隙間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)により覆われる形式の装置であってよい。これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、米国特許第6952253号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
リソグラフィ装置LAはまた、2つ以上の基板サポートWT(「デュアルステージ」とも呼ばれる)を有するタイプのものであり得る。そのような「多段」機械では、基板サポートWTを並行して使用することができ、および/または基板Wのその後の露光の準備におけるステップを、基板サポートWTの1つに位置する基板W上で実行することができる。他の基板サポートWT上の基板Wは、他の基板W上のパターンを露光するために使用されている。
【0018】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含み得る。測定ステージは、センサおよび/または洗浄装置を保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように配置することができる。測定ステージは、複数のセンサを保持することができる。洗浄装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように構成することができる。基板サポートWTが投影システムPSから離れているとき、測定ステージは投影システムPSの下に移動することができる。
【0019】
動作中、放射ビームBは、マスクサポートMTに保持されるパターニングデバイス、例えばマスクMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によりパターン化される。マスクMAの通過後、放射ビームBはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる投影システムPSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置測定システムIFの助けを借りて、放射ビームBの経路内の異なる目標部分Cを集束されアライメントされた位置に位置するように基板サポートWTを正確に移動できる。同様に、第1位置決め装置PMおよび場合により別の位置センサ(
図1には明示されていない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために用いることができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用の目標部分を占めるが、それらは目標部分の間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、これらが目標部分Cの間に配置されるとき、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0020】
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、たまにリソセルまたは(リソ)クラスタとも称され、しばしば基板W上での露光前および露光後プロセスを実行するための装置も含むリソグラフィシセルLCの一部を形成してよい。従来、これらは、例えば基板Wの温度を調整するため、例えばレジスト層の溶剤を調整するために、レジスト層を堆積させるスピンコート装置SC、露光されたレジストを現像する現像装置DE、冷却プレートCH、およびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板Wを入力/出力ポートI/O1,I/O2から取り出し、それらを異なるプロセス装置間で基板を移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを運ぶ。リソセルの装置(しばしば集合的にトラックとも称される)は、通常はトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、TCU自体は監視制御システムSCSにより制御され、SCSは例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAを制御してもよい。
【0021】
リソグラフィ装置LAによって露光された基板Wを正確かつ一貫して露光するために、基板を検査して、後続の層間のオーバーレイエラー、線幅、限界寸法(CD)などのパターン構造の特性を測定することが望ましい。この目的のために、検査ツール(図示せず)をリソセルLCに含めることができる。エラーが検出された場合、たとえば、特に同じバッチまたはロットの他の基板Wがまだ露光または処理される前に検査がなされる場合には、後続の基板の露光または基板Wで実行される他の処理ステップを調整することができる。
【0022】
計測装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性がどのように変化するか、または同じ基板Wの異なる層に関連する特性が層ごとにどのように変化するかを決定するために使用される。あるいは、検査装置は、基板W上の欠陥を特定するように構成されてもよく、例えば、リソセルLCの一部であってもよく、またはリソグラフィ装置LAに統合されてもよく、または独立型(スタンドアロン)の装置であってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層の画像)、または半潜像(後露光ベークステップPEB後のレジスト層の画像)、または現像されたレジスト画像(レジストの露光部分または非露光部分が除去された画像)、またはエッチングされた画像(エッチングなどのパターン転写ステップ後)の特性を測定することができる。
【0023】
通常、リソグラフィ装置LAでのパターニングプロセスは、基板W上の構造のディメンジョニングおよび配置の高精度を必要とする処理における最も重要なステップの1つである。この高精度を保証するために、
図3に概略的に示すように、3つのシステムをいわゆる「全体的な」統制環境で組み合わせることができる。これらのシステムの1つは、計測ツールMT(2番目のシステム)とコンピュータシステムCL(3番目のシステム)に(実質的に)接続されているリソグラフィ装置LAである。そのような「全体的な」環境の鍵は、これら3つのシステム間の連携を最適化してプロセスウィンドウ全体を強化し、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまることを保証する厳密な制御ループを提供することである。プロセスウィンドウは、特定の製造プロセスが定義された結果(機能的半導体デバイスなど)を生成する一連のプロセスパラメータ(たとえば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)、通常、その範囲内でリソグラフィプロセスまたはパターニングプロセスのプロセスパラメーターが変化を許可される、を定義する。
【0024】
コンピュータシステムCLは、パターン化される設計レイアウト(の一部)を使用して、どの解像度向上技術を使用するかを予測し、計算機によるリソグラフィシミュレーションおよび計算を実行して、どのマスクレイアウトおよびリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスの最大の全体的なプロセスウィンドウを達成するかを決定することができる(
図3において第1スケールSC1の二重矢印で示されている)。通常、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの可能性に一致するように構成される。コンピュータシステムCLはまた、例えば次善の処理によって欠陥が存在するかどうかを予測するために、プロセスウィンドウ内のどこでリソグラフィ装置LAが現在動作しているか(例えば、計測ツールMTからの入力を使用して)を検出するために使用されてもよい(
図3において第2スケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0025】
計測ツールMTは、コンピュータシステムCLに入力を提供して、正確なシミュレーションおよび予測を可能にすることができ、リソグラフィ装置LAにフィードバックを提供して、例えばリソグラフィ装置LAの較正状態にいて起こり得るドリフトを特定することができる(
図3において第3スケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0026】
リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御および検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。このような測定を行うためのツールは、通常、計測ツールMTと呼ばれる。そのような測定を行うための様々なタイプの計測ツールMT、走査型電子顕微鏡または様々な形態のスキャトロメータ計測ツールMTが含まれる、が知られている。スキャトロメータは、瞳またはスキャトロメータの対物レンズの瞳との共役面にセンサを有することにより(通常は瞳ベースの測定と呼ばれる測定)、または像平面または像平面との共役面にセンサを有することにより、リソグラフィプロセスのパラメータの測定(この場合、測定は、通常、画像またはフィールドベースの測定と呼ばれる)を可能とする汎用性の高い機器である。このようなスキャトロメータおよび関連する測定技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、特許出願US20100328655号、US2011102753A1号、US20120044470A号、US20110249244号、US20110026032号またはEP1,628,164A号にさらに記載されている。上述のスキャトロメータは、軟X線からの放射および可視から近赤外の波長範囲の放射を使用して格子を測定することができる。
【0027】
第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、回折格子の特性を再構成または計算するために、測定された信号に再構成法を適用することができる。そのような再構成は、例えば、散乱放射とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することから生じ得る。数学的モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が実際のターゲットから観察されたものと同様の回折パターンを生成するまで調整される。
【0028】
第2の実施形態では、スキャトロメータMTは分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射源から放出された放射はターゲットに向けられ、ターゲットからの反射または散乱放射は、正反射性の反射放射のスペクトルを測定する(つまり、波長の関数としての強度の測定)スペクトロメータ検出器に向けられる。このデータから、例えば厳密結合波解析と非線形回帰により、またはシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により、検出されたスペクトルを生じさせるターゲットの構造またはプロファイルを再構築できる。
【0029】
第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソメトリックスキャトロメータである。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態の散乱放射を測定することにより、リソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのような計測装置は、例えば、計測装置の照明セクションに適切な偏光フィルタを使用することにより、(直線、円、または楕円などの)偏光放射を放出する。計測装置に適した放射源は、偏光放射も提供してもよい。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの様々な実施形態は、米国特許出願第11/451,599号、第11/708,678号、第12/256,780号、第12/486,449号、第12/920,968号、第12/922,587号、第13/000,229号、第13/033,135号、第13/533,110号および第13/891,410号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、反射スペクトルおよび/または検出構成の非対称性を測定することにより、2つの正しく位置合わせされていない格子または周期構造のオーバーレイを測定するように構成される。非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(典型的には重なり合う)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続した層である必要はない)に適用されてもよく、ウェハ上の実質的に同じ位置に形成されてもよい。スキャトロメータは、例えば共同所有の特許出願EP1,628,164Aに記載されるように、非対称性を明確に区別できるよう対称的な検出構成を有することができる。これにより、回折格子のミスアライメントを簡単に測定できる。周期構造の非対称性を介して測定されるターゲットとして周期構造を含む2つの層の間のオーバーレイエラーを測定するためのさらなる例は、国際特許出願公開番号第WO2011/012624号または米国特許出願第US20160161863号に見いだすことができ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
関心のある他のパラメータは、フォーカスおよびドーズであってもよい。フォーカスおよびドーズは、参照により本書にその全体が組み込まれる米国特許出願US2011-0249244に記載されるように、散乱計によって(または代替的に走査型電子顕微鏡によって)同時に決定されうる。単一の構造が用いられてもよく、それは、フォーカスエネルギーマトリックス(FEM、フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる)の各点についてクリティカルディメンジョンおよび側壁角度の測定値の固有の組み合わせを有する。仮にこれらのクリティカルディエンジョンおよび側壁角度の固有の組み合わせが利用可能であれば、フォーカスおよびドーズの値は、これらの測定値から一意に決定されうる。
【0032】
計測ターゲットは、リソグラフィプロセスによって多くの場合レジスト内に形成されるが、例えばエッチングプロセスの後にも形成される、複合格子の集合体であってもよい。典型的に、格子内の構造のピッチおよび線幅は、計測ターゲットから来る回折次数を捕捉可能な測定光学系(特に光学系のNA)に強く依存する。先に示したように、回折された信号は、二つの層の間のシフト(「オーバレイ」とも称される)を決定するために用いられてもよいし、リソグラフィプロセスにより生成される元の格子の少なくとも部分を再構築するために用いられてもよい。この再構築は、リソグラフィプロセスの品質の指針を提供するために用いられてもよく、かつ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために用いられてもよい。ターゲットは、ターゲット内のデザインレイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成されるより小さなサブセグメンテーション(小区分)を有してもよい。このサブセグメンテーションに起因して、ターゲットは、全体的なプロセスパラメータの測定結果がデザインレイアウトの機能部分に酷似することとなるように、デザインレイアウトの機能部分により類似した振る舞いをするであろう。ターゲットは、アンダーフィルモードまたはオーバーフィルモードで測定されうる。アンダーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも小さなスポットを生成する。オーバーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも大きなスポットを生成する。このようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することが可能であってもよく、したがって異なるプロセスパラメータを同時に決定する。
【0033】
特定のターゲットを用いるリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータの測定に用いる測定レシピによって少なくとも部分的に決まる。「基板測定レシピ」の用語は、測定自体の一以上のパラメータを含んでもよいし、測定された一
以上のパターンの一以上のパラメータを含んでもよいし、または両方を含んでもよい。例えば、ある基板測定レシピに用いられる測定が回折ベースの光学測定である場合、測定の一以上のパラメータは、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の向きなどを含んでもよい。測定レシピを選択する基準の一つは、例えば、プロセスの変動に対する一つの測定パラメータの感受性であってもよい。より多くの例は、米国特許出願US2016-0161863号および公開された米国特許出願US2016/0370717に記載されており、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0034】
スキャトロメータなどの計測装置が
図4に示されている。それは、放射を基板6に投射する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射または散乱された放射は、スペクトロメータ検出器4に渡される。これは、鏡面反射放射のスペクトル10を測定する(すなわち、波長の関数としての強度の測定)。このデータから、例えば、厳密結合波解析と非線形回帰によって、または
図3の下部に示すようにシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、検出スペクトルを生じさせる構造またはプロファイルが処理ユニットPUによって再構成され得る。一般に、再構成では、構造の一般的な形式は既知であり、いくつかのパラメータは、構造が作成されたプロセスの知識から推測され、スキャトロメトリデータから決定される構造のほんの僅かのパラメータが残る。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータまたは斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0035】
計測ターゲットの測定によるリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータの測定に使用される測定レシピによって少なくとも部分的に決定される。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ以上のパラメータ、測定された1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータ、またはその両方を含み得る。たとえば、基板測定レシピで使用される測定が回折ベースの光学測定である場合、測定の1つ以上のパラメータには、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の方向などが含まれ得る。測定レシピを選択するための基準の1つは、例えば、処理変動に対する測定パラメータの1つの感度であり得る。さらなる例は、米国特許出願第2016/0161863号および公開された米国特許出願第2016/0370717A1号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
IC製造に使用される別のタイプの計測ツールは、トポグラフィ測定システム、レベルセンサまたは高さセンサである。このようなツールは、基板(又はウェハ)の上面のトポグラフィを測定するために、リソグラフィ装置内に集積され得る。基板のトポグラフィのマップは、高さマップとも称され、基板の高さを基板上の位置の関数として示すこれらの測定から生成され得る。この高さマップはその後、基板上の適正合焦位置でパターニングデバイスの空間像を提供するべく、基板へのパターンの転写の際に基板の位置を補正するために用いられ得る。この文脈において、「高さ」とは、基板に対して概して面外の寸法(Z軸とも称される)を指すことが理解されるであろう。典型的には、レベル又は高さセンサは(自身の光学系に対して)固定された場所で測定を実施し、基板とレベル又は高さセンサの光学系との間の相対移動が基板全体の各場所での高さ測定をもたらす。
【0037】
本技術分野において既知のレベル又は高さセンサLSの一例が
図5に概略的に示されている。同図は動作の原理のみを図示している。この例において、レベルセンサは、投影ユニットLSP及び検出ユニットLSDを含む光学系を備えている。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRによって付与される放射ビームLSBを提供する放射源LSOを備えている。放射源LSOは、例えば、スーパコンティニューム放射源のような狭帯域又は広帯域放射源、偏光又は非偏光レーザビームのような偏光又は非偏光、パルス又は連続であってもよい。放射源LSOは、複数のLEDなど、異なる色又は波長範囲を有する複数の放射源を含んでいてもよい。レベルセンサLSの放射源LSOは、可視放射に限定されず、追加的又は代替的にはUV及び/又はIR放射並びに基板の表面からの反射に適した任意の範囲の波長を包含し得る。
【0038】
投影格子PGRは、周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1をもたらす周期構造を備える周期的格子である。周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1は、入射基板表面に垂直な軸(Z軸)に対して0度から90度、典型的には70度から80度の入射角ANGをもって、基板W上の測定場所MLOの方に誘導される。測定場所MLOで、パターン形成された放射ビームBE1は、基板Wによって反射され(矢印BE2によって示される)、検出ユニットLSDの方に誘導される。
【0039】
測定場所MLOにおける高さレベルを判定するために、レベルセンサは更に、検出格子DGRと、検出器DETと、検出器DETの出力信号を処理する処理ユニット(図示しない)とを備える検出システムを備えている。検出格子DGRは投影格子PGRと同一であってもよい。検出器DETは、受光した放射を示す、例えば、光検出器のように受光した放射の強度を示す、又はカメラのように受光した強度の空間的分布を表す、検出器出力信号を生成する。検出器DETは1つ以上の検出器タイプの任意の組み合わせを備えていてもよい。
【0040】
三角測量技術によって、測定場所MLOにおける高さレベルを判定することができる。検出された高さレベルは、典型的には検出器DETによって測定された信号強度に関係しており、その信号強度は、とりわけ投影格子PGRの設計及び(斜め)入射角ANGに応じて決まる周期性を有する。
【0041】
投影ユニットLSP及び/又は検出ユニットLSDは、投影格子PGRと検出格子DGRとの間のパターン形成された放射ビームの経路に沿って、レンズ及び/又はミラーなど、更なる光学素子を含んでいてもよい(図示せず)。
【0042】
一実施形態においては、検出格子DGRは省略されてもよく、検出器DETは検出格子DGRがある位置に設置されてもよい。そのような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。
【0043】
基板Wの表面を効果的にカバーするために、レベルセンサLSは、測定ビームBE1のアレイを基板Wの表面上に投影し、それによってより大きな測定範囲をカバーする測定領域MLO又はスポットのアレイを生成するように構成されていてもよい。
【0044】
一般的なタイプの様々な高さセンサが、例えば、参照により組み込まれる米国特許第7265364号明細書及び米国特許第7646471号明細書に開示されている。可視又は赤外放射の代わりにUV放射を用いた高さセンサが、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2010233600A1号明細書に開示されている。参照により組み込まれる国際公開第2016102127A1には、多素子検出器を用いて、検出格子を必要とせずに、格子像の位置を検出及び認識する小型の高さセンサが記載されている。
【0045】
IC製造で使用される別のタイプの計測ツールは、アライメントセンサである。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な態様は、付与されたパターンを、以前の層において(同じ装置又は異なるリソグラフィ装置によって)定められたフィーチャに関して正しくまた正確に配置するための能力である。このために、マークまたはターゲットの1つ以上のセットが基板に提供される。各マークは、その位置を、位置センサ、典型的には光学位置センサによって後に測定することが可能な構造である。位置センサは「アライメントセンサ」と呼ばれ、マークは「アライメントマーク」と呼ばれることがある。
【0046】
リソグラフィ装置は、1つまたは複数の(例えば、複数の)アライメントセンサを含むことができ、それによって、基板上に設けられたアライメントマークの位置を正確に測定することができる。アラインメント(または位置)センサは、回折や干渉などの光学現象を使用して、基板上に形成されたアラインメントマークから位置情報を取得し得る。現在のリソグラフィ装置で使用されているアライメントセンサの例は、米国特許6961115号に記載されている自己参照干渉計に基づいている。たとえば、米国特許公開2015261097A1号に開示されているように、位置センサのさまざまな拡張と変更が開発されている。これらすべての公表文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
図6は、例えば、援用により本願に含まれる米国特許6961116号に記載されているような既知のアライメントセンサASの一実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは、1つ以上の波長の放射ビームRBを提供し、この放射ビームRBは、誘導(diverting)光学系によって、基板W上に位置付けられたマークAMのようなマーク上へ照明スポットSPとして誘導される。この例では、誘導光学系はスポットミラーSM及び対物レンズOLを含む。マークAMを照明する照明スポットSPは、マーク自体の幅よりも小さい直径とすることができる。
【0048】
アライメントマークAMによって回折された放射は、(この例では対物レンズOLを介して)情報保持ビームIBにコリメートされる。「回折される」という用語は、マークからのゼロ次回折(反射と呼ぶことができる)を含むことが意図される。例えば上記の米国特許6961116号に開示されているタイプの自己参照干渉計SRIは、ビームIBをそれ自体と干渉させ、その後ビームは光検出器PDによって受光される。放射源RSOによって2つ以上の波長が生成される場合は、追加の光学系(図示せず)を含ませて別個のビームを提供してもよい。光検出器は単一の要素とするか、又は所望の場合は多くの画素を含むことができる。光検出器はセンサアレイを含み得る。
【0049】
この例ではスポットミラーSMを含む誘導光学系が、マークから反射したゼロ次放射を阻止するよう機能することで、情報保持ビームIBがマークAMからの高次回折放射だけを含むようにしてもよい(これは測定に必須ではないが、信号対雑音比を改善する)。
【0050】
強度信号SIが処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIにおける光学処理とユニットPUにおける計算処理の組み合わせによって、基準フレームに対する基板上のX及びYの位置の値が出力される。
【0051】
図示されているタイプの単一測定は、マークの1つのピッチに対応する特定範囲内のマークの位置を固定するだけである。これと関連付けてもっと粗い測定技法を用い
て、このマーク位置を含む正弦波の周期を識別する。マークが作製されている材料やマークの下及び/又は上に提供されている材料とは無関係に、精度の向上及び/又はマークのロバストな検出のため、様々な波長で、粗いレベル及び/又は微細レベルで同一のプロセスを繰り返すことができる。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化及び逆多重化すること、及び/又は時分割もしくは周波数分割によって多重化することができる。
【0052】
この例では、アライメントセンサ及びスポットSPは固定状態のままであり、移動するのは基板Wである。従ってアライメントセンサは、基準フレームに堅固かつ高精度に搭載されながら、実質的に基板Wの移動方向と反対の方向にマークAMをスキャンすることができる。基板Wのこの移動は、基板Wが基板サポートに搭載されると共に基板位置決めシステムが基板サポートの移動を制御することによって制御される。基板サポート位置センサ(例えば干渉計)が、基板サポート(図示せず)の位置を測定する。一実施形態では、基板サポート上に1つ以上の(アライメント)マークが設けられている。基板サポート上に設けられたマークの位置を測定することにより、位置センサで決定される基板サポートの位置を較正できる(例えばアライメントシステムが接続されているフレームに対して)。基板上に設けられたアライメントマークの位置を測定することにより、基板サポートに対して基板の位置を決定できる。
【0053】
上記のスキャトロメータ、トポグラフィ測定システム、または位置測定システムなどの計測ツールMTは、測定を実行するために放射源から発生する放射を使用することができる。計測ツールで使用される放射の特性は、実行される可能性のある測定のタイプと品質に影響を与える可能性がある。いくつかの用途では、基板を測定するために複数の放射周波数を使用することが有利な場合がある。たとえば、広帯域放射を使用できる。複数の異なる周波数が、他の周波数との干渉を無しまたは最小限に抑えて、計測ターゲットを伝搬、照射、および散乱させることができる場合がある。したがって、たとえば、異なる周波数を使用して、より多くの計測データを同時に取得することができる。異なる放射周波数はまた、計測ターゲットの異なる特性を調査し、発見することができる可能性がある。ブロードバンド放射は、たとえばレベルセンサ、アライメントマーク測定システム、スキャトロメトリツール、または検査ツールなどの計測システムMTで役立ち得る。広帯域放射源は、スーパーコンティニウム光源であり得る。
【0054】
高品質の広帯域放射、例えば、スーパーコンティニウム放射は、生成するのが難しい場合がある。広帯域放射を生成するための1つの方法は、たとえば非線形の高次効果を利用して、高出力の狭帯域または単一周波数の入力放射またはポンプ放射を広げることである。入力放射(レーザを使用して生成され得る)は、ポンプ放射と呼ばれる場合がある。あるいは、入力放射はシード放射と呼ばれることもある。効果を広げるための高出力放射を得るために、放射を小さな領域に限定して、強く局所化された高強度放射を達成することができる。これらの領域では、放射は、広帯域出力放射を生成するために、非線形媒体を形成する拡大構造および/または材料と相互作用し得る。高強度放射領域では、適切な非線形媒体を提供することによって放射の拡大を可能にし、および/または改善するために、異なる材料および/または構造を使用することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、広帯域出力放射はフォトニック結晶ファイバ(PCF)内で生成される。いくつかの実施形態では、このようなフォトニック結晶ファイバは、ファイバコアの周囲に、ファイバを通って伝わる放射線をファイバコア内に閉じ込めるのを助ける微細構造を有する。ファイバコアは、非線形特性を有し、高強度ポンプ放射がファイバコアを通って伝送されるときに広帯域放射を生成できる固体材料で作ることができる。固体コアのフォトニック結晶ファイバで広帯域放射を生成することは可能であるが、固体材料を使用する場合にはいくつかの欠点がある可能性がある。たとえば、UV放射が固体コア内で生成される場合、この放射はほとんどの固体材料によって吸収されるため、ファイバの出力スペクトルには存在しない可能性がある。
【0056】
いくつかの実装形態では、
図8を参照して以下でさらに説明するように、入力放射を広げるための方法および装置は、入力放射を閉じ込めるため、および入力放射を広げて広帯域放射を出力するためにファイバを使用し得る。ファイバは中空コアファイバであり得、ファイバ内の放射の効果的な誘導および閉じ込めを達成するための内部構造を含み得る。ファイバは、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)であり得る。これは、主にファイバの中空コアの内側にある強力な放射閉じ込めに特に適しており、高い放射強度を実現する。ファイバの中空コアは、入力放射を広げるための拡大媒体として機能するガスで満たすことができる。このようなファイバとガスの配置は、スーパーコンティニウム放射源を作成するために使用できる。ファイバへの放射入力は、電磁放射、たとえば、赤外線、可視、UV、および極端UVスペクトルの1つまたは複数の放射であり得る。出力放射は、本明細書では白色光と呼ばれ得る広帯域放射から成るか、またはそれを含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態は、光ファイバを含むそのような広帯域放射の新しい設計に関する。光ファイバは、中空コアのフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)である。特に、光ファイバは、放射を閉じ込めるための反共振構造を含むタイプの中空コアのフォトニック結晶ファイバであり得る。反共振構造を含むそのようなファイバは、当技術分野では、反共振ファイバ、管状ファイバ、単リングファイバ、負曲率ファイバ、またはインヒビットカップリングファイバ (inhibited coupling fiber)として知られている。そのようなファイバの様々な異なる設計が当技術分野で知られている。あるいは、光ファイバは、フォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF、例えばカゴメファイバ)であり得る。
【0058】
多くのタイプのHC-PCFを操作することができ、それぞれが異なる物理的誘導機構に基づいている。このような2つのHC-PCFには、(単なる例として)中空コアフォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF)と中空コア反共鳴反射ファイバ(HC-ARF)が含まれる。HC-PCFの設計および製造の詳細は、米国特許US2004/015085A1(HC-PBF用)および国際特許出願WO2017/032454A1(中空コア反共鳴反射ファイバ用)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
図9(a)は、カゴメ格子構造を含むカゴメファイバを示す。
【0059】
放射源に使用するための光ファイバの例を
図7を参照して説明する。
図7は、横断面における光ファイバOFの概略断面図である。
図7のファイバの実際の例と同様のさらなる実施形態が国際公開第2017/032454A1号に開示されている。
【0060】
光ファイバOFは、光ファイバOFの他の2つの寸法と比較して1つの寸法がより長い細長い本体を含む。このより長さは、軸方向と呼ばれ、光ファイバOFの軸を規定し得る。他の2つの寸法は、横断面と呼ばれる平面を定義する。
図7は、この横断面(すなわち、軸に垂直)における光ファイバOFの断面を示しており、これは、x-y平面と表示されている。光ファイバOFの横断面は、ファイバ軸に沿って実質的に一定であり得る。
【0061】
光ファイバOFはある程度の柔軟性を有し、したがって、軸の方向は、一般に、光ファイバOFの長さに沿って均一ではないことが理解されよう。光軸、横断面などの用語は、局所的な光軸、局所的な横断面などを意味すると理解される。さらに、構成要素が円筒形または管状であると説明される場合、これらの用語は、光ファイバOFが曲げられるときに歪んだような形状を包含すると理解されるであろう。
【0062】
光ファイバOFは任意の長さを有することができ、光ファイバOFの長さは用途に依存し得ることが理解されよう。光ファイバOFは、1cmから10mの間の長さを有することができ、例えば、光ファイバOFは、10cmから100cmの間の長さを有することができる。
【0063】
光ファイバOFは、中空コアHCと、中空コアHCを取り囲むクラッド部分と、クラッド部分を取り囲み、サポートするサポート部分SPと、を備える。光ファイバOFは、中空コアHCを有する本体(クラッド部分およびサポート部分SPを含む)を備えると見なすことができる。クラッド部分は、中空コアHCを通して放射を誘導するための複数の反共振要素を備える。特に、複数の反共振素子は、主に中空コアHCの内側に光ファイバOFを通って伝播する放射を閉じ込め、光ファイバOFに沿って放射を導くように配置される。光ファイバOFの中空コアHCは、実質的に光ファイバOFの中心領域に配置され得る。光ファイバOFの軸はまた、光ファイバOFの中空コアHCの軸を規定し得る。
【0064】
クラッド部分は、光ファイバOFを通って伝播する放射を誘導するための複数の反共振要素を含む。特に、この実施形態では、クラッド部分は、6つの管状キャピラリCAPの単一のリングを含む。管状キャピラリCAPのそれぞれは、反共振要素として機能する。
【0065】
キャピラリCAPは、チューブと呼ばれることもある。キャピラリCAPは、断面が円形であってもよく、または別の形状を有していてもよい。各キャピラリCAPは、光ファイバOFの中空コアHCを少なくとも部分的に規定し、中空コアHCをキャピラリキャビティCCから分離する、ほぼ円筒形の壁部分WPを備える。壁部分WPは、中空コアHCを通って伝播する(そして、かすめ入射角で壁部分WPに入射する)放射のための反射防止ファブリペロー共振器として機能し得ることが理解されよう。壁部分WPの厚さは、中空コアHCへの反射が概して増強されるのに対してキャピラリキャビティCCへの透過が概して抑制されることを確実にするように適切にされ得る。いくつかの実施形態では、キャピラリ壁部分WPは、0.01~10.0μmの間の厚さを有し得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、クラッド部分という用語は、光ファイバOFを通って伝播する放射を誘導するための光ファイバOFの一部(すなわち、前記放射を中空コアHC内に閉じ込めるキャピラリCAP)を意味することを意図していることが理解されよう。放射は横モードの形で閉じ込められ、ファイバ軸に沿って伝播する。
【0067】
サポート部分は、一般に管状であり、クラッド部分の6つのキャピラリCAPを支持する。6つのキャピラリCAPは、内側サポート部分SPの場合、内面の周りに均一に分布している。6つのキャピラリCAPは、一般に六角形のフォーメイションで配置されていると説明することができる。
【0068】
キャピラリCAPは、各キャピラリが他のキャピラリCAPのいずれとも接触しないように配置される。キャピラリCAPのそれぞれは、内側サポート部分SPと接触し、リング構造内の隣接するキャピラリCAPから離間している。そのような配置は、光ファイバOFの伝送帯域幅を増加させることができるので(例えば、キャピラリが互いに接触している配置と比較して)有益であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、キャピラリCAPのそれぞれは、リング構造内の隣接するキャピラリCAPと接触していてもよい。
【0069】
クラッド部分の6つのキャピラリCAPは、中空コアHCの周りにリング構造で配置されている。キャピラリCAPのリング構造の内面は、光ファイバOFの中空コアHCを少なくとも部分的に規定している。中空コアHCの直径d(対向するキャピラリ間の最小寸法として定義され得る、矢印dによって示される)は、10から1000μmの間であり得る。中空コアHCの直径dは、中空コアHC光ファイバOFのモードフィールド直径、衝突損失、分散、モード複数(modal plurality)、および非線形特性に影響を及ぼし得る。
【0070】
この実施形態では、クラッド部分は、キャピラリCAP(反共振要素として機能する)の単一のリング配列を含む。したがって、中空コアHCの中心から光ファイバOFの外側までの任意の半径方向の線は、1つのキャピラリCAPのみを通過する。
【0071】
他の実施形態は、反共振要素の異なる配置で提供され得ることが理解されるであろう。これらは、反共振要素の複数のリングを有する配置、および入れ子になった反共振要素を有する配置を含み得る。
図8(a)は、径方向に沿って互いに積み重ねられたキャピラリCAPの3つのリングを有するHC-PCFの実施形態を示す。この実施形態では、各キャピラリCAPは、同じリング内および異なるリング内の両方で、他のキャピラリと接触している。さらに、
図7に示される実施形態は、6つのキャピラリのリングを含むが、他の実施形態では、任意の数の反共振要素(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11または12のキャピラリ)を含む1つ以上のリングを、クラッド部分に設けることができる。
【0072】
図8(b)は、単一リングの管状キャピラリを備えた上記のHC-PCFの修正された実施形態を示す。
図9(b)の例では、管状キャピラリ21の2つの同軸リングがある。管状キャピラリ21の内側リングと外側リングを保持するために、支持チューブSTがHC-PCFに含まれてもよい。支持チューブはシリカで作られてもよい。
【0073】
図7および
図8(a)および
図8(b)の例の管状キャピラリは、円形の断面形状を有し得る。管状キャピラリには、楕円形または多角形の断面などの他の形状も可能である。さらに、
図7および
図8(a)および
図8(b)の例の管状キャピラリの固体材料は、PMAのようなプラスチック材料、シリカのようなガラス、または軟質ガラスを含み得る。
【0074】
図9は、広帯域出力放射を提供するための放射源RDSを示している。放射源RDSは、パルスポンプ放射源PRSまたは所望の長さとエネルギーレベルの短パルスを生成できる他のタイプの放射源と、中空コアHCを備えた光ファイバOF(例えば
図7に示されるタイプのもの)と、中空コアHC内に配置された作動媒体(例えば、ガス)と、を備える。
図9では、放射源RDSは、
図7に示される光ファイバOFを含むが、代替の実施形態では、他のタイプの中空コアHC光ファイバを使用することができる。
【0075】
パルスポンプ放射源PRSは、ポンプ放射または入力放射IRDを提供するように構成される。光ファイバOFの中空コアHCは、パルスポンプ放射源PRSからの入力放射IRDを受け取り、それを広げて出力放射ORDを提供するように構成される。作動媒体は、広帯域出力放射ORDを提供するように、受信された入力放射IRDの周波数範囲を広げることを可能にする。
【0076】
放射源RDSは、リザーバRSVをさらに含む。光ファイバOFは、リザーバRSVの内部に配置される。リザーバRSVは、ハウジング、コンテナまたはガスセルと呼ばれることもある。リザーバRSVは、作動媒体を含むように構成される。リザーバRSVは、リザーバRSVの内部で作動媒体(ガスであり得る)の組成を制御、調整、および/または監視するための、当技術分野で知られている1つまたは複数の特徴を備え得る。リザーバRSVは、第1の透明窓TW1を含み得る。使用中、光ファイバOFは、第1の透明窓TW1が光ファイバOFの入力端IEに近接して配置されるように、リザーバRSVの内部に配置される。第1の透明窓TW1は、リザーバRSVの壁の一部を形成することができる。第1の透明窓TW1は、少なくとも受信された入力放射周波数に対して透明であり得、その結果、受信された入力放射IRD(またはその少なくとも大部分)が、リザーバRSVの内側に配置された光ファイバOFに結合され得る。入力放射IRDを光ファイバOFに結合するために光学系(図示せず)が提供され得ることが理解されるであろう。
【0077】
リザーバRSVは、リザーバRSVの壁の一部を形成する第2の透明窓TW2を備える。使用中、光ファイバOFがリザーバRSVの内部に配置されるとき、第2の透明窓TW2は、出力端OEに近接して配置される。第2の透明窓TW2は、少なくとも装置の広帯域出力放射ORDの周波数に対して透明であり得る。
【0078】
あるいは、別の実施形態では、光ファイバOFの2つの対向する端部は、異なるリザーバ内に配置され得る。光ファイバOFは、入力放射IRDを受け取るように構成された第1の端部セクションと、広帯域出力放射ORDを出力するための第2の端部セクションとを含み得る。第1の端部セクションは、作動媒体を含む第1のリザーバ内に配置され得る。第2の端部セクションは、第2のリザーバの内部に配置することができ、第2のリザーバはまた、作動媒体を含み得る。リザーバの機能は、上記の
図9に関連して説明した通りであり得る。第1のリザーバは、入力放射IRDに対して透明であるように構成された第1の透明窓を含み得る。第2のリザーバは、広帯域出力広帯域放射ORDに対して透明であるように構成された第2の透明窓を含み得る。第1および第2のリザーバはまた、光ファイバOFを部分的にリザーバの内側且つ部分的に外側に配置することを可能にし、その結果、ガスをリザーバの内側に密封することができる、密封可能な開口部を含み得る。光ファイバOFは、リザーバ内に含まれていない中間セクションをさらに含むことができる。2つの別個のガスリザーバを使用するそのような配置は、光ファイバOFが比較的長い(例えば、長さが1mを超える)実施形態にとって特に都合がよい。2つの別個のガスリザーバを使用するそのような構成の場合、2つのリザーバ(2つのリザーバー内のガスの組成を制御、調整、および/または監視するための、当技術分野で知られている1つまたは複数の特徴を含み得る)は、光ファイバOFの中空コアHC内に作動媒体を提供するための装置を提供すると見なすことができる。
【0079】
この文脈において、窓へのその周波数の入射放射の少なくとも50%、75%、85%、90%、95%、または99%が窓を通して透過される場合、窓はその周波数に対して透明であり得る。
【0080】
第1の透明窓TW1および第2の透明窓TW2の両方が、リザーバRSVの壁内に気密シールを形成することができ、その結果、作動媒体(ガスであり得る)がリザーバRSV内に含まれ得る。ガスは、リザーバRSVの周囲圧力とは異なる圧力でリザーバRSV内に含まれ得る。
【0081】
作動媒体は、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス、水素、重水素、窒素などのラマン活性ガス、またはアルゴン/水素混合物、キセノン/重水素混合物、クリプトン/窒素混合物、または窒素/水素混合物などのガス混合物を含んでもよい。充填ガスの種類に応じて、非線形光学プロセスには、変調不安定性(MI)、ソリトン自己圧縮、ソリトン分裂、カー効果、ラマン効果および分散波発生(DWG)が含まれる場合があり、その詳細はWO2018/127266A1およびUS9160137B1に記載されている(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。充填ガスの分散は、リザーバRSR内の作動媒体圧力(つまり、ガスセル圧力) を変更することで調整できるため、生成される広帯域パルスのダイナミクスと関連するスペクトル広がり特性を調整して、周波数変換を最適化できる。
【0082】
一実施形態では、作動媒体は、広帯域出力放射ORDを生成するために、少なくとも入力放射IRDの受け取り中に中空コアHC内に配置され得る。光ファイバOFが広帯域出力放射を生成するための入力放射IRDを受信していない間、ガスは、中空コアHCから完全にまたは部分的に存在しない可能性があることが理解されよう。
【0083】
周波数を広げるために、高強度の放射が望ましい場合がある。中空コアHC光ファイバOFを有することの利点は、光ファイバOFを通って伝播する放射の強力な空間的閉じ込めによって高強度の放射を達成し、高い局所的な放射強度を達成できることである。光ファイバOF内の放射強度は、例えば、高い受信入力放射強度のため、および/または光ファイバOF内の放射の強い空間的閉じ込めのために、高くあってよい。中空コア光ファイバの利点は、中実コア光ファイバよりも広い波長範囲の放射を誘導できることであり、特に、中空コア光ファイバは、紫外線と赤外線の両方の範囲の放射を誘導できることである。
【0084】
中空コアHC光ファイバOFを使用することの利点は、光ファイバOF内に導かれる放射の大部分が中空コアHCに閉じ込められることである。したがって、光ファイバOF内の放射の相互作用の大部分は、光ファイバOFの中空コアHCの内部に提供される作動媒体との相互作用である。その結果、放射に対する作動媒体の拡大効果が増大し得る。
【0085】
受け取られた入力放射IRDは、電磁放射であり得る。入力放射IRDは、パルス放射として受け取ることができる。例えば、入力放射IRDは、例えばレーザによって生成される超高速パルスを含み得る。
【0086】
入力放射IRDは、コヒーレント放射であり得る。入力放射IRDは、コリメートされた放射であり得る。その利点は、入力放射IRDを光ファイバOFに結合する効率を促進および改善することであり得る。入力放射IRDは、単一の周波数または狭い範囲の周波数を含み得る。入力放射IRDは、レーザによって生成され得る。同様に、出力放射ORDは、コリメートされ得、および/またはコヒーレントであり得る。
【0087】
出力放射ORDの広帯域範囲は、放射周波数の連続範囲を含む連続範囲であってよい。出力放射ORDは、スーパーコンティニウム放射を含み得る。連続放射は、多くのアプリケーション、たとえば計測アプリケーションでの使用に役立つ場合があります。たとえば、周波数の連続範囲を使用して、多数の特性を調べることができる。周波数の連続範囲は、例えば、測定された特性の周波数依存性を決定および/または排除するために使用され得る。スーパーコンティニウム出力放射ORDは、例えば、100nm~4000nmの波長範囲にわたる電磁放射を含み得る。広帯域出力放射ORDの周波数範囲は、例えば、400nm~900nm、500nm~900nm、または200nm~2000nmであり得る。スーパーコンティニウム出力放射ORDは、白色光を含み得る。
【0088】
パルスポンプ放射源PRSによって提供される入力放射IRDは、パルス状であってよい。入力放射IRDは、200nmから2μmの間の1つまたは複数の周波数の電磁放射を含み得る。入力放射IRDは、例えば、1.03μmの波長を有する電磁放射を含み得る。パルス放射122の繰り返し率は、1kHzから100mMのオーダーの大きさであり得る。パルスエネルギーは、0.1μJから100μJ、たとえば1~10μJのオーダーの大きさを持ち得る。入力放射IRDのパルス持続時間は、10fsから10psの間、例えば、300fsであり得る。入力放射IRDの平均電力は、100mWから数100Wの間であり得る。入力放射IRDの平均電力は、例えば、20~50Wであり得る。
【0089】
パルスポンプ放射源PRSはレーザであってもよい。このようなレーザパルスの時空間伝送特性、例えば光ファイバOFに沿って伝送されるそのスペクトル振幅と位相は、(ポンプ)レーザパラメータ、作動媒体変動、および光ファイバOFパラメータの調整を通じて変更および調整することができる。前記時空間伝送特性は、出力電力、出力モードプロファイル、出力時間プロファイル、出力時間プロファイルの幅(または出力パルス幅)、出力スペクトルプロファイル、および出力スペクトルプロファイルの帯域幅(または出力スペクトル帯域幅)のうちの1つまたは複数を含み得る。前記パルスポンプ放射源PRSパラメータは、ポンプ波長、ポンプパルスエネルギー、ポンプパルス幅、ポンプパルス繰り返し率のうちの1つ以上を含み得る。前記光ファイバOFパラメータは、光ファイバの長さ、中空コアHCのサイズおよび形状、キャピラリのサイズおよび形状、中空コアHCを取り囲むキャピラリの壁の厚さのうちの1つまたは複数を含み得る。例えば充填ガスなどの前記作動媒体のパラメータには、ガスの種類、ガス圧力、ガス温度の1つ以上が含まれ得る。
【0090】
放射源RDSによって提供される広帯域出力放射ORDは、少なくとも1Wの平均出力電力を有し得る。平均出力電力は、少なくとも5Wであり得る。平均出力電力は、少なくとも10Wであり得る。広帯域出力放射ORDは、パルス化された広帯域出力放射ORDであり得る。広帯域出力放射ORDは、少なくとも0.01mW/nmの出力放射の全波長帯域におけるパワースペクトル密度を有し得る。広帯域出力放射の全波長帯域のパワースペクトル密度は、少なくとも3mW/nmであり得る。
【0091】
前述の計測用途など、広帯域出力放射ORDを必要とする多くの用途では、広帯域出力放射ORDの短波長エッジをさらに拡張すること、特に紫外線(UV)波長領域に拡張することへの関心が高まっている。望ましい波長領域は、たとえば400nmまで、350nmまで、300nmまで、200nmまで、100nmまで、50nmまで、または10nmまでの波長を含んでもよい。滑らかな(または平らな)スペクトルプロファイルと拡張された短波長エッジを備えた広帯域出力放射ORD(スーパーコンティニウム放射など)を放射できる放射源RDSは、波長の汎用性が高く、したがって柔軟性が高いことが求められるアプリケーションにおいて非常に望ましい。たとえば、滑らかでUV拡張されたスーパーコンティニウムは、既存の放射源では、より小さなピッチサイズとより多数の層を持つターゲットを使用するという現在進行中の需要を満たすことができないオーバーレイ計測アプリケーションで特に役立つ。拡張されたUV波長は、より小さなターゲット格子を解像し、より多くのターゲット層を貫通することができる。また、滑らかでUV拡張されたスペクトルプロファイルにより、さまざまなアプリケーションや測定パフォーマンスの最適化のために、異なるスペクトル範囲間で正確かつ信頼性の高い波長切り替えが可能になる。
【0092】
現在、光ファイバOFで生成される広帯域出力放射ORDの短波長エッジをさらに拡張するために、いくつかの方法が採用されている。これらの方法には、a)より長い光ファイバOFの使用、b)より小さなコア径の光ファイバの使用、c)より低いガス圧の使用が含まれる。これらの方法を個別にまたは組み合わせて使用すると、UV領域で位相整合条件を満たすことができるため、UV波長の生成が容易になる。ただし、このような方法には多くの欠点がある。たとえば、より長い中空コアHC光ファイバOF(例えばHC-PCF)では、通常、より大きなリザーバRSVが必要になる。これにより、広帯域放射源RDSの物理的寸法が大きくなり、製造コストが高くなる。設置面積の大きい放射源は、放射源を収容するためのスペースが限られている多くのアプリケーションには適していない。中空コアHC光ファイバOFのコア径を小さくすると、ファイバ内の伝搬損失が増加し、変換効率が低下し、望ましくない(たとえば、アンバランスな又はピーキーな)スペクトルプロファイルが発生する。さらに、線引きタワーでコア径の小さい中空コアHC光ファイバOFを製造するのは非常に困難で、製造コストが高くなる。ガス圧を下げると、ガスが充填された中空コアHCの非線形性が大幅に低下し、変換効率が低下し、望ましくない(たとえば、アンバランスな又はピーキーな)スペクトルプロファイルが発生する。より低いガス圧で同じレベルの非線形性を維持するには、より高いパルスエネルギーを持つパルスポンプ放射源PRSが必要になる。ただし、このような高パルスエネルギーポンプ放射源PRSは非常に高価になる可能性がある。
【0093】
広帯域出力放射ORD(たとえば、スーパーコンティニウム放射) の生成には、多くの非線形光学プロセスが関係している。どの非線形光学プロセスが他のプロセスよりも顕著なスペクトル広がり効果を持つかは、動作パラメータの設定方法によって決まる。たとえば、ポンプパルスが正常分散領域(正の群速度分散(GVD))でファイバを伝搬するようにポンプ波長および/または光ファイバを選択することにより、自己位相変調が支配的な非線形光学プロセスとなり、ポンプパルスのスペクトル広がりの原因となる。ただし、ほとんどの場合、パルスポンプ放射源PRSによって提供される入力放射IRDのスペクトル広がりは、異常分散領域(負のGVD)で光ファイバOF内を伝播するためにポンプパルスを必要とするソリトンダイナミクスによって駆動される。これは、異常分散領域では、カー非線形性と分散の効果が互いに反対に作用するためである。異常波長分散を持つ光ファイバ(HC-PCFなど)に入射されるポンプパルスのパルスパラメータがソリトンのパルスパラメータと正確に一致しない場合、ポンプパルスは特定のソリトン次数と分散波を持つソリトンパルスに進化する。
【0094】
ソリトン分裂と変調不安定性(MI)は、ソリトン駆動による広帯域放射生成におけるスペクトル広がりの2つの主なメカニズムであることが知られている。2つのメカニズムの違いは、ソリトン分裂プロセスは低ソリトン次数に関連し、MIプロセスは高ソリトン次数に関連することである。MIは、非線形分散媒体における強力な狭帯域(MI変調周波数と比較して)ポンプパルスのスペクトル側波帯の自発成長を指す物理プロセスである。MIは一般に異常分散領域で発生する。しかしながら、高次分散が存在するなど、特定の要件が満たされている場合は、正常分散領域でも発生する可能性がある。MIプロセスの間に、量子ゆらぎなどによりパルスの電場(またはエンベロープ)に存在する小さな摂動は、カー非線形性の存在下で指数関数的に増幅される。増幅量はMIゲインによって決まる。このようなMIプロセスの間に、時間的パルスエンベロープは複数の短い時間的サブ構造または基本ソリトンに分割される。これと並行して、スペクトル側波帯がピークポンプ波長の両側で対称的に生成され、連続的に広がるスペクトルプロファイルになる。
【0095】
変調周波数は次のように表される。
【数1】
対応するMI周期は次のように与えられる。
【数2】
ここで、γは非線形係数、Pはポンプパワー、β
2はファイバ伝搬定数を表す。MIプロセスが支配的になるためには、ポンプパルスがMI周期T
MIよりも十分に長くなければならない。しかしながら、ポンプパルス持続時間だけから、ソリトン分裂プロセスとMIプロセスのどちらが広帯域放射生成におけるスペクトル広がりに対して支配的なメカニズムになるかを判断することはできない。これは、ポンプパルス持続時間がポンプピークパワーに比例し、それが非線形係数、ひいては変調周期に影響を与えるためである。
【0096】
パルス持続時間τの所与のポンプパルスの場合、等価ソリトン次数Nは次のように与えられる。
【数3】
【0097】
式(1)で、N=1の場合、ソリトンは基本ソリトンである。N>1のその他のソリトンはすべて高次ソリトンである。前述のように、MIプロセスが支配的なスペクトル広がりメカニズムとなるためには、ポンプパルスがMI周期TMIよりも十分に長くなければならない(またはτ0≫TMI)。N≫20の場合、スペクトル広がりは典型的にはMIプロセスによって支配されるのに対し、N≪20の場合、スペクトル広がりは典型的にはソリトン分裂によって支配されることが分かっている。したがって、MIプロセスを使用する構成では、ソリトン次数Nが高い入力放射IRDを生成することが望ましい。さらに、式(3)から分かるように、入力放射IRDのソリトン次数は、入力放射IRDのパルス持続時間τ0に比例する。したがって、MIプロセスが支配的な従来の一般的な構成では、入力放射IRDのパルス持続時間τ0は、通常100フェムト秒(fs)から数十ピコ秒(ps)の範囲であり、パルスエネルギーは1マイクロジュール(μJ)から20μJの範囲である。
【0098】
たとえばラマンプロセスなどの他の非線形光学プロセスも、非線形スペクトル拡張に寄与する可能性がある。ラマンプロセスは、ガス媒体の種類に依存する。たとえば、広帯域出力放射ORDが希ガスまたはガス混合物(アルゴン、クリプトン、キセノンなど)で満たされたHC-ARFで生成される場合、ラマン効果は存在しないものの、MIがポンプパルスのスペクトル広がりの支配的なプロセスとなる。同様に、広帯域出力放射ORDがラマン活性ガスまたはガス混合物(水素、重水素、窒素など)で満たされたHC-ARFで生成されるケースでは、ポンプパルスの持続時間が支配的な(高ゲインの) 分子振動の振動時間と同程度かそれより短い場合、MIが依然として支配的なプロセスとなるが、ラマン効果はそれほど支配的ではなく、ポンプパルスのスペクトル重心のレッドシフトをもたらす。しかしながら、ポンプパルスの持続時間が支配的なラマン活性モードの振動時間よりも長い場合、ラマン効果が支配的な役割を果たす。ラマン効果は、ソリトン自己周波数シフトとソリトン衝突を引き起こす。ラマンプロセスとMIプロセス間の相互作用により、広帯域出力放射ORDの拡張された長波長エッジがもたらされる可能性があることが見いだされている。
【0099】
光学計測では、計測ツールの性能は、とりわけ光源放射(光源からの広帯域放射など)の偏光安定性に依存することがよくある。受信された偏光状態の変動は、通常、ウェハレベルでのパワーの変動につながり、計測システムの忠実性を損なう。
【0100】
HC-PCFで入力放射IRDから広帯域出力放射ORDへの十分に高い変換効率を確保するには、入力偏光を中空ファイバの優先軸(preferred axis)に合わせる必要がある。優先軸は、高速軸または低速軸のいずれかである。これらの2つの軸のうちの1つだけが、最適な変換効率を提供し、入力放射IRDの直線偏光状態を維持する。工業製品では、HC-PCFの優先軸は取り付け前には不明であり、高速軸と低速軸のどちらが優先軸になるかが常に明らかではないため、これを実現するのは面倒である。これは、ガスセルを交換するときに、偏光消光比(PER)などの偏光メトリックを最大化し、適切な出力パワースペクトル密度(PSD)を得るために、入力偏光角をスキャンする必要があることを意味する。これには、PERを監視および変更するための追加コンポーネントが必要である。これにより、コスト、ボリューム、および放射源のダウンタイムが増加する(スキャンが遅い)。緩和戦略には、HC-PCFの絶対回転の工場調整が含まれる場合があるが、想定されるライフタイム間の偏光性能は、そのような追加コンポーネントなしでは確保できない。
【0101】
図10は、分光的にフィルタリングされた広帯域放射出力のPERおよび偏光軸を評価できるように、入力偏光をHC-PCFの優先軸(たとえば、低速または高速)に調整するための追加コンポーネントを含むHC-PCFソース構成の概略図である。
図9に関連してすでに説明したコンポーネントについては、再度説明しない。可変半波長板MHWPは、光ファイバHCの前に設けられている。フィルタFLと偏光計PLMは、入力偏光方向の関数として出力放射ORD(つまり、ビームスプリッタBSによって分割されたメイン出力ビームまたは監視ブランチの一部)のPERを測定するために設けられている。可変半波長板MHWPを使用すると、出力放射のPERを監視しながら、PERが最大になるまで、直線偏光したポンプ放射PRDの軸を回転させて軸回転入力放射IRDを取得できる。
【0102】
本発明者らは、PERが(1回の線引き運転から取得された)ファイバ間またはファイバ製造バッチ間で大きく異なることも観測した。PERの範囲は5~20dBと測定されている。この比較的大きなPER範囲には、HC-PCFの下流で動的な(つまり、ファイバに依存する)偏光管理が必要であり、製品の複雑さとコストが増加する。
【0103】
円偏光または楕円偏光の入力放射またはポンプ放射を使用して、MIプロセス(例えば、MIガスまたは1つ以上の希ガス/第18族ガスなどのガス混合物を含む作動媒体を使用)を経て広帯域放射を生成するように構成されたHC-PCFベースの放射源を提供することが提案されている。
【0104】
図11は、実施形態に係る第1のソース構成の概略図である。この構成は、
図10の可変半波長板を、直線偏光したポンプ放射PRDに円偏光を与えて円偏光入力放射IRDを得る第1偏光素子または(例えば、固定)四分の一波長板QWPに置き換えている。この例では、四分の一波長板QWPが固定されているため、偏光計を含む出力に監視ブランチはない。他の実施形態では、四分の一波長板QWPは可変であり、監視ブランチが含まれてもよい。
【0105】
固定の四分の一波長板QWPを使用する利点は、QWPを通過した後の入力放射IRDの偏光方向がわかっているため、直線偏光した入力放射IRDに対する四分の一波長板QWPの工場での調整が簡単になることである。つまり、製品内の偏光計や可変ステージは必要なく、構成が簡素化される。新しいHC-PCFはそれぞれ入力時に円偏光を観測するため、再現性が保証される。
【0106】
本明細書に開示された概念によって改善できる別の態様は、出力PSDである。出力PSDは、ポンプエネルギーおよび/または繰り返し率を単純にスケーリングすることによって増加できると直感的に思えるかもしれない。これはある程度は正しいが、実際にはこのアプローチには限界がある。低い繰り返し率(例えば1~2.5MHzまで)では、PSDは基本的に繰り返し率に直線的に比例する。しかしながら、中空コアファイバをより高いパルスエネルギーで駆動する場合、PSDはロールオフを示す。さらに、繰り返し率が閾値率(例えば2.5MHz)を超えて増加すると、ロールオフエネルギーはより低いエネルギーにシフトする。この効果は、達成可能な最大PSDの上限を効果的に設定しているインターパルス効果によって引き起こされる可能性が高い。これらのインターパルス効果は、入力放射による作動ガス混合物の望ましくないイオン化によって引き起こされる可能性が高い(固体コアPCDを駆動する場合、固体コアを損傷する前に、はるかに高いパルスエネルギーに達する可能性がある)。
【0107】
しかしながら、円偏光または楕円偏光の入力放射を使用してスペクトル広がりを推進する場合、作動ガス混合物の非線形屈折率は、直線偏光した入力放射の場合よりも1.5倍小さくなる。さらに、円偏光または楕円偏光の入力放射を使用すると、作動ガス混合物のイオン化が減少する。その結果、同じ光学非線形性を可能にするには50%大きいポンプエネルギーが必要になり、出力PSDの有益なスケーリングをもたらす。そのため、円偏光の入力放射によって生成されるスペクトルは、直線偏光した放射の場合と同様のロールオフ挙動を示すが、ロールオフは直線偏光の場合と比較して高いポンプエネルギーで実現される。これは、直線偏光放射LPおよび円偏光放射CPのパルスエネルギーPEに対するインテグレーテッドパワーIP(またはPSD)のグラフを示すグラフ13に示されている。本発明者は、円偏光ポンプ放射で50%高いエネルギーレベルでポンピングすると、PSDを1.5倍に増加できることを実験的に証明した。これは、直線偏光入力放射から円偏光入力放射に移行するときのPE1(および対応するインテグレーテッドパワーIP1)の増加によってグラフ13に示されている。
【0108】
非線形屈折率(したがってPSD)のこの線形スケーリング(ロールオフ前)は、スペクトル特性(スペクトル形状など)に大きな変化を伴わずに行われるのがMI生成の特徴であることを理解する必要がある。ラマン生成を使用するときに入力エネルギーおよび/または繰り返し率を増加すると、スペクトル形状が変化するため、これは望ましくない。
【0109】
本発明の別の実施形態では、入力放射IRDに対して定義された楕円偏光状態(実質的な円偏光状態よりはむしろ)を定義して、ファイバの複屈折を(少なくとも部分的に)予め補正し、その結果として、より優れた線形出力偏光忠実性を達成することができる。
【0110】
図12は、このような楕円偏光状態を得るための実施形態を示す。この構成は、固定または可変の四分の一波長板QWP(第1偏光素子)に加えて、第2偏光素子または可変(例えば、電動式)の半波長板HWPを備える。この構成は、出力PERを監視するための偏光計PLMを備えた監視ブランチも含む。この実施形態は、異なるファイバの出力偏光のPER再現性を向上させる。一実施形態では、入力放射の偏光方向に対する半波長板HWPおよび(オプションで、可変の場合)四分の一波長板の方向は、HC-PCFの出力が主に直線偏光(たとえば、最大PERおよび/または1%未満の円偏光度)になるように調整される。これは、半波長板HWPおよび四分の一波長板のそれぞれを適切な範囲(たとえば、45度)にわたってスキャンして、最大PERを決定できる2Dマップを取得することによって実行できる。
【0111】
上記の開示において、任意の楕円偏光状態は、10%を超える大きさ、20%を超える大きさ、30%を超える大きさ、40%を超える大きさ、50%を超える大きさ、60%を超える大きさ、70%を超える大きさ、80%を超える大きさ、または90%を超える大きさの円偏光度(DOCP)を有する入力放射の偏光状態を表すことができる。
【0112】
DOCPは、ビーム内の円偏光放射の割合またはパーセンテージを表す。たとえば、ゼロのDOCPは、線形放射と非偏光放射の組み合わせの状態に対応するが、(ポンプレーザ)入力放射は(線形)偏光度が高いため、このアプリケーションでは、DOCPは実質的に線形偏光放射を表す。円偏光状態は、DCOPがほぼ100%(たとえば、99%を超えるか、99.9%を超える)である入力放射の偏光状態を表す。DCOPは、-100%(または-1)から100%(または1)までのスケールを表します。ここで、-100%DCOPは、純粋に左回りの円偏光放射を表し、100%DCOPは、純粋に右回りの円偏光放射を表し、その間の値は、偏光の楕円度を表す。
【0113】
偏光の楕円度は、楕円のアスペクト比で表すこともできる。例えば、円偏光放射は、1のアスペクト比を有することができ、楕円偏光入力放射は、20:1未満、10:1未満、8:1未満、6:1未満、4:1未満、または2:1未満のアスペクト比で表される楕円率を有することができる。
【0114】
別の実施形態では、1つ以上の偏光素子を使用して直線偏光したポンプ放射に楕円偏光または円偏光を与えることによって楕円偏光または円偏光放射を生成する代わりに、ポンプ放射源は、例えばそのキャビティの特性により、楕円偏光または円偏光放射を直接生成するように構成されてもよい。
【0115】
本発明のさらなる実施形態は、以下の番号が付けられた項に開示されている。
1.実質的に直線偏光した入力放射を受けて広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置であって、中空コアフォトニック結晶ファイバと、前記中空コアフォトニック結晶ファイバによって受けられる前に前記入力放射に実質的に円偏光または楕円偏光を与えるように動作可能な少なくとも1つの第1偏光素子と、を備える広帯域放射源装置。
2.前記少なくとも1つの第1偏光素子は、前記入力放射の円偏光の度合いを10%を超える大きさで増加させるように動作可能である、項1に記載の広帯域放射源装置。
3.前記第1偏光素子は、前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な四分の一波長板を備える、項1または2に記載の広帯域放射源装置。
4.前記第1偏光素子は、前記入力放射の直線偏光状態に対して固定された方向(オリエンテーション)を備える、項1、2または3に記載の広帯域放射源装置。
5.前記第1偏光素子は、前記入力放射の直線偏光状態に対して可変の方向を有する可変第1偏光素子を含む、項1、2、または3に記載の広帯域放射源装置。
6.前記第1偏光素子と組み合わせて動作して、前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えることができる第2偏光素子を備える、項1から5のいずれかに記載の広帯域放射源装置。
7.前記第2偏光素子は、半波長板を備える、項6に記載の広帯域放射源装置。
8.前記第2偏光素子および前記第1偏光素子は、前記楕円偏光が前記中空コアフォトニック結晶ファイバのファイバ複屈折を少なくとも部分的に補償するように方向づけられる、項6または7に記載の広帯域放射源装置。
9.前記広帯域出力放射の偏光メトリックを監視するように動作可能な偏光計を備える、項6、7または8に記載の広帯域放射源装置。
10.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、変調不安定性メカニズムによって前記広帯域出力放射を生成するように動作可能な作動混合物を備える、項1から9のいずれかに記載の広帯域放射源装置。
11.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、作動混合物として1つ以上の希ガスを備える、項10に記載の広帯域放射源装置。
12.前記入力放射を生成するためのポンプ放射源を備える、項1から11のいずれかに記載の広帯域放射源装置。
13.広帯域出力放射を生成する方法であって、
中空コアフォトニック結晶ファイバ内に含まれる作動媒体を入力放射で励起して前記広帯域出力放射を生成することを含み、
前記入力放射は、実質的に円偏光または楕円偏光を含む、方法。
14.前記入力放射は、10%を超える円偏光度を有する、項13に記載の方法。
15.四分の一波長板を使用して前記入力放射に実質的に円偏光を与えることを含む、項13または14に記載の方法。
16.四分の一波長板を半波長板と組み合わせて使用して、前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えることを含む、項13または14に記載の方法。
17.前記楕円偏光は、前記中空コアフォトニック結晶ファイバのファイバ複屈折を少なくとも部分的に補償する、項16に記載の方法。
18.前記広帯域出力放射が主に直線偏光になるように、少なくとも半波長板の方向を入力放射の偏光方向に対して変更することを含む、項16または17に記載の方法。
19.前記広帯域出力放射が主に直線偏光になるように、半波長板および四分の一波長板のそれぞれの方向を、入力放射の偏光方向に対して変更することを含む、項16または17に記載の方法。
20.前記作動混合物は、1つ以上の希ガスを含む、項13から19のいずれかに記載の方法。
21.項1から11のいずれかに記載の広帯域放射源装置を備える計測装置。
22.散乱計測装置、レベルセンサまたはアライメントセンサを含む、項21に記載の計測装置。
23.実質的に直線偏光した入力放射を受けて広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置であって、実質的に円偏光または楕円偏光を有する前記入力放射を生成するためのポンプ放射源と、前記入力放射を受けるように構成された中空コアフォトニック結晶ファイバと、を備える広帯域放射源装置。
24.前記広帯域出力放射の偏光メトリックを監視するように動作可能な偏光計を備える、項23に記載の広帯域放射源装置。
25.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、変調不安定性メカニズムによって前記広帯域出力放射を生成するように動作可能な作動混合物を備える、項23または24に記載の広帯域放射源装置。
26.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、作動混合物として1つ以上の希ガスを備える、項25に記載の広帯域放射源装置。
27.実質的に直線偏光した入力放射を受けて広帯域出力放射を生成するように構成された広帯域放射源装置であって、中空コアフォトニック結晶ファイバと、前記中空コアフォトニック結晶ファイバによって受けられる前に前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な少なくとも1つの第1偏光素子と、を備え、前記広帯域放射源装置は、前記第1偏光素子と組み合わせて前記入力放射に実質的に楕円偏光を与えるように動作可能な第2偏光素子をさらに備え、前記第2偏光素子および前記第1偏光素子は、前記楕円偏光が前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するように方向づけされることを特徴とする、広帯域放射源装置。
28.前記少なくとも1つの第1偏光素子は、前記入力放射の円偏光度を10%を超える大きさで増加させるように動作可能である、項27に記載の広帯域放射源装置。
29.前記第1偏光素子は、前記入力放射に実質的に円偏光を与えるように動作可能な四分の一波長板を備える、項27に記載の広帯域放射源装置。
30.前記第1偏光素子は、前記入力放射の直線偏光状態に対して可変の方向を有する可変第1偏光素子を備える、項27に記載の広帯域放射源装置。
31.前記第2偏光素子は、半波長板を備える、項27に記載の広帯域放射源装置。
32.前記広帯域出力放射の偏光メトリックを監視するように動作可能な偏光計をさらに備える、項27に記載の広帯域放射源装置。
33.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、変調不安定性メカニズムによって前記広帯域出力放射を生成するように動作可能な作動混合物を備える、項27に記載の広帯域放射源装置。
34.前記中空コアフォトニック結晶ファイバは、作動混合物として1つ以上の希ガスを備える、項33に記載の広帯域放射源装置。
35.広帯域出力放射を生成する方法であって、当該方法は、中空コアフォトニック結晶ファイバ内に含まれる作動媒体を入力放射で励起して前記広帯域出力放射を生成することを含み、前記入力放射は、前記中空コアフォトニック結晶ファイバの複屈折を少なくとも部分的に補償するために楕円偏光されることを特徴とする、方法。
36.前記入力放射は、10%を超える円偏光度を有する、項35に記載の方法。
37.四分の一波長板を使用して、実質的に直線偏光した放射に実質的に円偏光を与えて前記入力放射を得ることをさらに含む、項35に記載の方法。
38.半波長板と組み合わせて四分の一波長板を使用して、実質的に直線偏光した放射に楕円偏光を与えて前記楕円偏光した入力放射を得ることをさらに含む、項35に記載の方法。
39.前記広帯域出力放射が主に直線偏光となるように、前記実質的に直線偏光した放射の偏光方向に対して少なくとも前記半波長板の方向を変えることをさらに含む、項38に記載の方法。
40.前記広帯域出力放射が主に直線偏光となるように、前記実質的に直線偏光した放射の偏光方向に対して前記半波長板および前記四分の一波長板のそれぞれの方向を変えることをさらに含む、項38に記載の方法。
41.項27に記載の記載の広帯域放射源装置を備える計測装置。
【0116】
本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定の言及がなされ得るが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることを理解するべきである。他の可能な用途には、統合光学システム、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどのガイダンスと検出パターンの製造が含まれる。
【0117】
本明細書では、リソグラフィ装置との関連で本発明の実施形態を具体的に参照することができるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはウェハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する任意の装置の一部を形成することができる。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0118】
上記では、光学リソグラフィの文脈での本発明の実施形態の使用について具体的に言及してきたが、文脈が許せば、本発明は光学リソグラフィに限定されず、その他のアプリケーション、たとえばインプリントリソグラフィでも使用することができる。
【0119】
本発明の特定の実施形態が上記で説明されたが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】