(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】クライオポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F04B37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533836
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 IB2022061581
(87)【国際公開番号】W WO2023105349
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】カセロ ジョン ジェイ
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA25
3H076BB21
3H076CC46
3H076CC54
3H076CC92
(57)【要約】
クライオポンプであって、正面開口部(22)を有する防熱板(12)を含む容器(10)であって、上記正面開口部(22)は上記容器(10)への入口を形成する、容器(10)と;上記防熱板(12)に熱的に結合され、上記正面開口部(22)を横切って取り付けられた正面アレイ(20)と;上記容器(10)の中に取り付けられたクライオパネル構造体(30)と;上記容器(10)の中に延びる2ステージ冷凍機であって、上記冷凍機の第1ステージは、上記防熱板(12)に熱的に結合され、上記冷凍機のより低温の第2ステージは、上記クライオパネル構造体(30)に熱的に結合されている、2ステージ冷凍機と;を備え、上記容器(10)は、上記正面開口部(22)に最も近い上記クライオパネル構造体(30)の表面と、上記クライオパネル構造体(30)に最も近い上記正面アレイ(20)の表面との間の距離(40)が、上記正面開口部(22)の直径の0.6倍と1.2倍の間である、細長い容器で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオポンプであって、
正面開口部を有する防熱板を含む容器であって、前記正面開口部は前記容器への入口を形成する、容器と、
前記防熱板に熱的に結合され、前記正面開口部を横切って取り付けられた正面アレイと、
前記容器の中に取り付けられたクライオパネル構造体と、
前記容器の中に延びる2ステージ冷凍機であって、前記冷凍機の第1ステージは、前記防熱板に熱的に結合され、前記冷凍機のより低温の第2ステージは、前記クライオパネル構造体に熱的に結合されている、2ステージ冷凍機と、
を備え、
前記容器は、前記正面開口部に最も近い前記クライオパネル構造体の表面と、前記クライオパネル構造体に最も近い前記正面アレイの表面との間の距離が、前記正面開口部の直径の0.6倍と1.2倍の間である、細長い容器で構成される、クライオポンプ。
【請求項2】
前記距離は、前記正面開口部の直径の0.7倍と0.9倍の間である、請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記正面開口部の直径は、20cmと21cm(7.8インチと8.2インチ)の間であり、前記クライオパネル構造体と前記正面アレイとの間の前記距離は、12cmと25cm(4.7インチと10インチ)の間である、請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記2ステージ冷凍機の前記第2ステージは、前記クライオパネルの温度を9K未満に維持するように構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記正面アレイは、円板状要素及び環状要素を備え、前記円板状要素及び前記環状要素は、互いに軸方向に変位して取り付けられ、前記環状要素は、前記円板状要素よりも前記正面開口部により近接して取り付けられ、前記円板状要素の直径は、前記環状要素の開口の直径と等しいか又はそれよりも大きくかつ前記環状要素の外径よりも小さく、前記環状要素の外径は、前記正面開口部の直径と等しいかそれよりも大きい、請求項1から4のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記正面アレイは、軸方向に延びる円筒状要素を備え、前記円筒状要素は、前記円板状要素と前記環状要素とを連結し、前記円筒状要素は、円筒状表面を備え、前記円筒状表面は、複数の開口を備える、請求項5に記載のクライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、クライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプ、詳細には2ステージのクライオポンプは、第1ステージの温度で水蒸気のようなI型ガスを、第2ステージの温度で窒素のようなII型ガスを捕捉することにより、高真空を提供するように構成されている。場合によっては、水素のようなIII型ガスをクライオ吸着するように構成されている。
【0003】
このようなクライオポンプが半導体プロセスチャンバを排気するために使用される場合、クライオポンプは、大量のII型ガスを貯蔵でき、さらにウェハーの間のチャンバ圧力を回復できることが重要である。ポンプが、再生の必要なく機能(ガスを貯蔵し圧力を回復)できる時間が長いほど、ユーザーにとってポンプの価値が高まる。クライオポンプの内部容積、霜点温度、及び遮蔽、そして霜をいかに効率的に形成するかによって、貯蔵できるガス容量が決まる。
【0004】
従来のクライオポンプでは、長年にわたって10K又は11Kのトッププレートから100Kのスパッタプレートまで、同じ容器サイズと内部容積が使用されている。従来、このようなクライオポンプは、排気されるプロセスチャンバの開口部に対応する内径8インチ(20cm)の正面開口部を有する。その期間にわたって、新しいプロセスが登場し、クライオポンプの再生間隔が長くなることが予想されるため、ポンプ性能要求が高くなっている。ポンプの容量と真空安定性を高めるために、既存のアレイ設計及び遮蔽の強化が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
II型のガスを捕捉するクライオポンプの容量をさらに増加させ、それにより、このようなポンプの容量を拡大し再生間の時間を延ばすことが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、クライオポンプを提供し、クライオポンプは、正面開口部を有する防熱板を含む容器であって、上記正面開口部は上記容器への入口を形成する、容器と;上記防熱板に熱的に結合され、上記正面開口部を横切って取り付けられた正面アレイと;上記容器の中に取り付けられたクライオパネル構造体と;上記容器の中に延びる2ステージ冷凍機であって、上記冷凍機の第1ステージは、上記防熱板に熱的に結合され、上記冷凍機の低温の第2ステージは、上記クライオパネル構造体に熱的に結合されている、2ステージ冷凍機と;を備え、上記容器は、上記正面開口部に最も近い上記クライオパネル構造体の表面と、上記クライオパネル構造体に最も近い上記正面アレイの表面との間の距離が、上記正面開口部の直径の0.6倍と1.2倍の間である、細長い容器を備える。
【0007】
上述のように、多くの場合、クライオポンプは、物理的気相成長プロセスのような半導体プロセスチャンバ内で真空を生成して維持するために使用される。このようなプロセスでは、真空が高真空レベルに維持され、ウェハーが交換された場合に、この高真空が再び迅速に達成されることが重要である。クライオポンプは捕捉式ポンプであるため、定期的に再生する必要がある。ポンプの再生は、その間にプロセスチャンバが使用できなくなることを意味するので、再生の頻度を低減することができれば好都合である。
【0008】
再生の頻度は、ポンプの容量及びポンプの動作が悪化する前に捕捉できるガス分子量に関係する。ガス分子はクライオパネルの霜として捕捉され、この霜は正面開口部に向かって成長する。霜が成長すると、霜の長さにわたって温度勾配が生じ、霜が温まりすぎるとガス分子が放出し始め、ポンプの有効性が低下する。さらに、クライオポンプが半導体処理産業で使用される場合、半導体処理工場に関連する限られた空間に収まるように設計されるため、コンパクトなポンプを提供することが望まれている。
【0009】
従来、クライオポンプは、半導体プロセスチャンバの開口部に相当する8インチ(20.3cm)の正面開口部を有するように構成されている。また、これらは、基部から正面開口部までの長さが直径のサイズの約1.2倍、すなわち24.6cm(9.7インチ)であり、クライオパネル構造体の上面から正面アレイの下面までの長さが正面開口部の直径の半分未満、約3.8インチ(9.6cm)であるように構成されている。
【0010】
本発明者は、容器を細長くすることによって、詳細にはクライオパネル構造体と正面アレイとの間の距離を長くすることによって、クライオポンプの容量、詳細には霜が貯蔵される領域が増加し、しかも分子の捕捉が効果的に維持されることを見出した。この寸法を大きくして容器を細長くすることは、「霜」又は捕捉されたII型ガスを貯蔵する容器の部分に追加の空間を与える。さらに、クライオパネル構造体と正面アレイとの間の距離を長くすることにより、クライオパネル構造体を正面開口部からより離すことができ、正面開口部は輻射の供給源であるため、これによりクライオパネル構造体はより低い温度を維持することができ、従って霜の保持を改善することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記距離は、上記正面開口部の直径の0.7倍と0.9倍の間である。
【0012】
他の実施形態では、上記距離は、上記正面開口部の直径の0.8倍と1.1倍の間である。
【0013】
最適な長さの増加は、状況、第2ステージのクライオパネルの温度及び防熱板の有効性を含むポンプの構成、ならびに場合によってはポンプの提案される使用にも依存するが、多くの状況において、クライオパネル構造体と正面アレイとの間の距離が上記正面開口部の直径の0.7倍と0.9倍の間になるように容器を細長くすることが、ガスの捕捉安定性を過度に低下させることなく、貯蔵容量の特に効果的な増加を提供することが見出されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記正面開口部の直径は、20cmと21cm(7.8インチと8.2インチ)の間であり、上記クライオパネル構造体と上記正面アレイとの間の距離は、12cmと25cm(4.7インチと10インチ)の間である。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記2ステージ冷凍機の上記第2ステージは、上記クライオパネルの温度を9K未満に維持するように構成されている。
【0016】
上述のように、クライオポンプの貯蔵容量は、霜を貯蔵するために利用可能な容積を増加させることによって増加させることができる。しかしながら、霜が正面開口部に向かって成長すると、霜の長さにわたって温度勾配が生じ、この距離が長くなると、正面開口部に最も近い霜の部分を低温に維持することがますます困難になる。霜が所定の温度に達すると、ガス分子が放出し始め、ポンプの効率が悪化することになる。低温のクライオパネル構造体を提供することで、霜の長さを長くすることができ、一方、クライオパネルから離れた表面の温度は、ガス分子をしっかりと保持するのに十分な低温のままである。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記正面アレイは、円板状要素及び環状要素を備え、上記円板状要素及び上記環状要素は、互いに軸方向に変位して取り付けられ、上記環状要素は、上記円板状要素よりも上記正面開口部により近接して取り付けられ、上記円板状要素の直径は、上記環状要素の開口の直径と等しいか又はそれよりも大きくかつ上記環状要素の外径よりも小さく、上記環状要素の外径は、上記正面開口部の直径と等しいかそれよりも大きい。
【0018】
容器内の低温を維持し、増加した容積の霜を輻射から保護するさらなる方法は、正面アレイの有効性を向上させることである。長手方向に変位した要素を有する正面アレイを設けることにより、容器内への流路を半径方向平面ではなく軸方向平面にすることができる。これにより、容器内への見通し線流路を回避するか又は少なくとも妨げ、容器が外部輻射から保護され、霜の上面をより低い温度を維持することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記正面アレイは、軸方向に延びる円筒状要素を備え、上記円筒状要素は、上記円板状要素と上記環状要素とを連結し、上記円筒状要素は、円筒状表面を備え、上記円筒状表面は、複数の開口を備える。
【0020】
さらなる態様は、クライオポンプを提供し、上記クライオポンプは、正面開口部を有する防熱板を含む容器であって、上記正面開口部は、上記容器への入口を形成する、容器と;上記防熱板に熱的に結合され、上記正面開口部を横切って取り付けられた正面アレイと;上記容器の中に取り付けられたクライオパネル構造体と;上記容器の中に延びる2ステージ冷凍機であって、上記冷凍機の第1ステージは、上記防熱板に熱的に結合され、上記冷凍機のより低温の第2ステージは、上記クライオパネル構造体に熱的に結合されている第2ステージと;を備え、上記冷凍機の上記第2ステージは、上記クライオパネル構造体の温度を9K未満に維持するように構成されている。
【0021】
さらなる態様は、クライオポンプを提供し、上記クライオポンプは、正面開口部を有する防熱板を含む容器であって、上記正面開口部は、上記容器への入口を形成する、容器と;上記防熱板に熱的に結合され、上記正面開口部を横切って取り付けられた正面アレイと;上記容器の中に取り付けられたクライオパネル構造体と;上記容器の中に延びる2ステージ冷凍機であって、上記冷凍機の第1ステージは上記防熱板に熱的に結合され、上記冷凍機のより低温の第2ステージは上記クライオパネル構造体に熱的に結合されている2ステージ冷凍機と;を備え、上記正面アレイは、円板状要素と環状要素とを備え、上記円板状要素及び上記環状要素は、互いに軸方向に変位して取り付けられ、上記環状要素は、上記円板状要素よりも上記正面開口部により近接して取り付けられ、上記円板状要素の直径は、上記環状要素の開口の直径に等しいか又はそれよりも大きくかつ上記環状要素の外径よりも小さく、上記環状要素の外径は、上記正面開口部の直径に等しいか又はそれよりも大きい。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記正面アレイは、軸方向に延びる円筒状要素を備え、上記円筒状要素は、上記円板状要素と上記環状要素とを連結し、上記円筒状要素は、円筒状表面を備え、上記円筒状表面は、複数の開口を備える。
【0023】
さらなる特定の及び好ましい態様は、独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせること、及び、請求項に明示的に規定されている以外の組み合わせで組み合わせることができる。
【0024】
装置の特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると説明される場合、これは、その機能を提供する、又はその機能を提供するように適合又は構成される装置の特徴を含むことを理解されたい。
【0025】
本発明の実施形態は、以下に、添付の図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来のクライオポンプと一実施形態によるクライオポンプとの違いを概略的に示す。
【
図2】一実施形態による正面アレイを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態を詳細に説明する前に、まず、概要について説明する。
【0028】
クライオポンプ、詳細にはPVD(物理的気相成長)プロセスのクライオポンプは、大量のII型ガスを貯蔵し、ウェハー間のチャンバ圧力を回復するために必要とされる。ポンプが、再生の必要なく長時間作動(ガスの貯蔵と圧力の回復)できればできるほど、そのポンプはユーザーにとってより価値のあるものとなる。ポンプの容量及び真空安定性を高めるために、従来のアレイ設計及び遮蔽に改良が加えられてきた。これらの改良により、スパッタプレート下のポンプ内で霜に利用できる物理的容積を増やすことが可能になっている。これらの改良は、ガスを貯蔵するために利用可能な容積をより有効に活用する上で一定の成功を収めたが、貯蔵できるガスのリットル(litres of)を大幅に増やすことはできていない。従来のフランジサイズを有するポンプの容積をさらに増加させるために、ポンプを細長くすることが提案されており、正面開口部からさらに遠くに追加の容積が提供される。いくつかの実施形態では、ガス貯蔵容量をさらに高めるために、より優れた防熱板、及び/又は、より低温の第2ステージのクライオパネルが提供される。
【0029】
実質的に、クライオポンプの内部容積、霜の温度及び遮蔽に加えて、霜がいかに効率的に形成されるかが、貯蔵可能なガス量を決定する。容器及び円筒状防熱板を長くすることでポンプの有効ガス量を増加させると、容量を増加させることができる。詳細には、長くすることが、改良された遮蔽スパッタプレート及び/又はより低温の第2ステージを有する冷凍機ユニットと併せて実行される場合、貯蔵容量は、最大50%増加させることができる。クライオポンプの容積を増加させることは、II型ガスの貯蔵容量を大幅に増加させるために重要である。結論として、細長いクライオポンプは容量を向上させ、より優れた遮蔽及び/又はより低温の第2ステージのクライオパネルで構成した場合に特に効果的である。
【0030】
図1は、左側の従来のクライオポンプと右側の一実施形態によるクライオポンプとの比較を概略的に示す。一実施形態によるクライオポンプは、同じ容器フランジサイズを利用しながら、従来のポンプと比較して細長い容器10を有する。いくつかの実施形態では、容器の長さは1から6インチ(2.5から15cm)の間で増加する。容器の細長い部分は、防熱板(radiation shield、輻射遮蔽)12に取り囲まれた部分であり、クライオパネル構造体30と正面アレイ20との間の部分である。この長さが長くなると、II型ガスを霜として貯蔵するのに利用可能な容積が増加する。また、極低温のクライオパネル表面~10Kから100Kのスパッタプレートまでの霜の距離も長くなる。このようにして、クライオパネル構造体30の上面と正面アレイの下面との間の距離40が長くなり、霜を貯蔵するために利用可能な容積Aが増加する。
【0031】
左側の図に概略的に示され、縮尺通りではない従来のクライオポンプでは、クライオパネル構造体と正面アレイとの間の距離は、正面開口部の直径42の約半分である。実施形態では、容器は細長くなっており、この距離は直径の約0.6から1.2倍、好ましくは0.7と0.9倍の間で増加されている。
【0032】
クライオポンプは、霜が貯蔵される領域Aを取り囲む防熱板12を備える。防熱板は、クライオポンプを真空容器から隔離するためにフランジ15の上方に0.6から1インチ(1.5から2.5cm)の間だけ延びている。
【0033】
本実施形態によるクライオポンプのガスを捕捉し、なおかつその後の圧力を回復させる能力は、容器10及び防熱板12をより長くし、防熱板12の内部の長さ/容積を増やすことよって高くなる。この実施形態では、クライオポンプは、正面開口部22を横切る改良された正面アレイプレート20を有する。
【0034】
また、クライオポンプでは、クライオパネル構造体30を冷却する第2ステージ冷凍機の温度が低い。この低い温度は、クライオパネル構造体での霜点温度を低下させ、それに対応して霜円柱に沿った霜点温度を低下させるのに役立ち、それによって、霜の上面温度に対する霜長さの増加の影響をある程度補償する。
【0035】
霜が成長してより長い円柱を形成すると、霜の上面を、ガス分子の放出を抑制するのに十分な低温に保つことがより難しくなる。正面アレイによる遮蔽を改善することで入口の放射熱負荷を減少させること、及び/又は、クライオパネル構造体の温度を低下させ、結果として霜円柱の底部の温度を低下させることは、それぞれ、霜円柱の上面の温度を低温に保つのに役立つ場合がある。冷凍機の第2ステージの温度を10K未満、好ましくは9K未満に下げる場合、このことはガス分子の放出を防ぐか又は少なくとも低減するのに役立つ。
【0036】
ルーバーの形態の穴を有する従来の正面アレイプレート50は、ほとんどの輻射を遮るが、それでも何らかの見通し線優先的ポンピングが起こるのを可能にする。ガスがポンプ送給されると、これは水平方向に層状の霜の蓄積物ではなく、むしろ糸のように見える結晶状の垂直構造物を形成する、これらの結晶「ロッド」は、低温の~10Kクライオパネル上でクライオパネルに付着する何百万もの糸のように成長し始め、100Kスパッタプレート又は~25K以下でない何らかのものまで伸びる。また、II型ガスは、10Kクライオパネルの下に噴出し(pump)、下部パネル及びチャコールアレイ上に生じるが、その量は限られている。
【0037】
ガスが蓄積できる容積の長さを長くし、第2ステージのクライオパネルの温度を下げ、ガスの輻射/優先的ポンピングを少なくすることで、蓄積できる容積を増やすことができる。さらに、容器を細長くすることでこれを行うことで、フランジサイズがより大きい、より大きな容器を製造した場合よりも安価であり、製造も容易である。
【0038】
伸長部の長さは、1インチから最大6インチ(2.5cmから15cm)とすることができる。
【0039】
改良された正面アレイによる遮蔽及び/又はより低い第2ステージ温度は、この実施形態では特に有用であるが、他のクライオポンプでの使用にも適用できる。
【0040】
図2は、従来のクライオポンプの正面アレイ及び一実施形態の正面アレイをより詳細に示す。左側の図は従来の正面アレイ50を示し、右側の図は一実施形態による正面アレイスパッタプレート22を上方(左側)及び下方(右側)から見た図である。図に示すように、上部円板状プレート20aと、下部環状プレート20bがある。円板状プレートは、環状プレート20bの開口部の直径よりも大きな直径を有する。上部円板状プレート20aと下部環状プレート20bの内径との間には、開口21を有する円筒形要素20cがある。これらの開口は軸方向に延びる壁にあり、このような方法で、容器の内部と外部との間に直接的な見通し線がなく、容器内の霜の輻射からの効果的な遮蔽が可能になる。
【0041】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書に詳細に開示されているが、本発明は、正確な実施形態に限定されず、添付の請求項及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な変更例及び修正例が結果として得られることを理解されたい。
【符号の説明】
【0042】
10 クライオポンプ容器
12 防熱板
15 フランジ
20 正面アレイ
20a 上部円板状プレート
20b 環状プレート
20c 円筒形要素
21 開口
22 正面開口部
30 クライオパネル構造体
40 クライオパネル構造と正面アレイとの間の長さ
42 正面開口部の直径
50 従来の正面アレイ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオポンプであって、
正面開口部を有する防熱板を含む容器であって、前記正面開口部は前記容器への入口を形成する、容器と、
前記防熱板に熱的に結合され、前記正面開口部を横切って取り付けられた正面アレイと、
前記容器の中に取り付けられたクライオパネル構造体と、
前記容器の中に延びる2ステージ冷凍機であって、前記冷凍機の第1ステージは、前記防熱板に熱的に結合され、前記冷凍機のより低温の第2ステージは、前記クライオパネル構造体に熱的に結合されている、2ステージ冷凍機と、
を備え、
前記容器は、前記正面開口部に最も近い前記クライオパネル構造体の表面と、前記クライオパネル構造体に最も近い前記正面アレイの表面との間の距離が、前記正面開口部の直径の0.6倍と1.2倍の間である、細長い容器で構成される、クライオポンプ。
【請求項2】
前記距離は、前記正面開口部の直径の0.7倍と0.9倍の間である、請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記正面開口部の直径は、20cmと21cm(7.8インチと8.2インチ)の間であり、前記クライオパネル構造体と前記正面アレイとの間の前記距離は、12cmと25cm(4.7インチと10インチ)の間である、請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記2ステージ冷凍機の前記第2ステージは、前記クライオパネルの温度を9K未満に維持するように構成されている、
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記正面アレイは、円板状要素及び環状要素を備え、前記円板状要素及び前記環状要素は、互いに軸方向に変位して取り付けられ、前記環状要素は、前記円板状要素よりも前記正面開口部により近接して取り付けられ、前記円板状要素の直径は、前記環状要素の開口の直径と等しいか又はそれよりも大きくかつ前記環状要素の外径よりも小さく、前記環状要素の外径は、前記正面開口部の直径と等しいかそれよりも大きい、
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記正面アレイは、軸方向に延びる円筒状要素を備え、前記円筒状要素は、前記円板状要素と前記環状要素とを連結し、前記円筒状要素は、円筒状表面を備え、前記円筒状表面は、複数の開口を備える、請求項5に記載のクライオポンプ。
【国際調査報告】