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  • 特表-モリブデン前駆体化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】モリブデン前駆体化合物
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20241121BHJP
   C07F 11/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C23C16/18
H01L21/285 C
C07F11/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527439
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2022049145
(87)【国際公開番号】W WO2023086298
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,829
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット, ベンジャミン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, ペイ
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4H050AA03
4H050AB99
4H050WB13
4H050WB22
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030BA36
4K030BA38
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030HA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA08
4M104BB16
4M104BB30
4M104DD33
4M104DD42
4M104DD43
4M104DD45
4M104FF18
4M104GG14
4M104GG16
4M104HH13
(57)【要約】
本発明は、様々なマイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面へのモリブデン含有膜の蒸着に有用であると考えられる、ある特定のモリブデン含有化合物を提供する。一態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、反応ゾーンにおいて、蒸着条件下で、本明細書に記載の式(I)の化合物に基板を曝露することを含む方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、反応ゾーンにおいて基板を蒸着条件下で、式(I)の化合物:
[式中、各Rは、(i)C~Cアルキルまたは(ii)1個または複数のハロゲン原子で置換されたC~Cアルキルから独立して選択される];
に曝露することを含み、それによって基板上にモリブデン含有膜を形成する方法。
【請求項2】
各RがC~Cアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各Rがメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各Rがtert-ブチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各Rがトリフルオロメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
蒸着条件が、約200℃~約750℃の温度および約0.5~約500Torrの圧力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
蒸着条件が、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに式(I)の化合物を導入し、同時に還元性ガスを反応ゾーンに導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
蒸着条件が、反応ゾーンに酸化性ガスのパルスを断続的に導入する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
蒸着条件が、(i)マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに式(I)の前駆体を導入し、同時に、断続的に(ii)基板を酸化性ガスに曝露し;断続的に(iii)基板を還元性ガスに曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
還元性ガスが、H、ヒドラジン、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、およびNHから選択されるガスから構成される、請求項7または9に記載の方法。
【請求項11】
酸化性ガスが、HO(H0)蒸気、H、O、およびNOから選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
基板が、窒化チタン、窒化タンタル、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ランタン、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、および酸化イットリウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
モリブデン含有膜がモリブデン金属である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本発明は、2021年11月10日出願の米国仮特許出願第63/277,829号の優先権を主張する。本優先権文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロ電子デバイス基板上へのモリブデン含有膜の蒸着における前駆体として有用なある特定のモリブデン化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
モリブデン、クロム、およびタングステンなどの第6族の金属は、融点が極めて高く、熱膨張係数が小さく、抵抗率が低く、熱伝導率が高いという特徴から、拡散バリア、電極、フォトマスク、パワーエレクトロニクス基板、低抵抗ゲート、フラットパネルディスプレイ、および相互接続の使用を含む、半導体デバイスの製造にますます利用されている。
【0004】
このような有用性は、効率的な大量製造の操作に対応するために、堆積させた膜の高い適合性および高い堆積速度を特徴とする、このような用途のためのモリブデン、クロムおよびタングステン膜の堆積を達成する取組みの動機付けとなっている。このため、蒸着操作に有用な改良されたモリブデンおよびタングステンの供給試薬、およびこのような試薬を利用した改良された工程パラメータの開発が取り組まれている。
【0005】
原子層堆積(ALD)法では、反応物質と前駆体分子とが交互のパルスで反応ゾーンに導入され、所望の化学組成の層が形成される。これらの前駆体は気体の形態でウエハに供給される。標準的な温度と圧力において気体である前駆体については、この方法が十分に確立されている。前駆体気体は成膜チャンバーに直接流入する。新しいインターコネクト材料へのトレンドは、より広範な前駆体のポートフォリオを必要とし、その多くは室温で液体または固体である。これらのALD前駆体は、十分な揮発性、熱安定性、および基板と堆積される膜との反応性を有していなければならない。液体であれ固体であれ、前駆体の蒸気圧がプロセス条件を決定する。
【0006】
ほとんどの液体前駆体は室温で供給され、圧力を下げることで気化する。一般に、液体は固体前駆体よりも精製、取り扱い、供給が容易である。したがって、多くの垂直統合型デバイスメーカー(IDM)は、液体供給装置を好む。
【0007】
固体は、材料とそれを供給するガスラインを加熱する必要があるため、より困難である。理想的には、前駆体は不燃性、非腐食性、非毒性であり、製造が簡単で安価であるべきである。
【発明の概要】
【0008】
要約すると、本発明は、様々なマイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面へのモリブデン含有膜の蒸着に有用であると考えられる、ある特定のモリブデン含有化合物を提供する。一態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、反応ゾーンにおいて、蒸着条件下で、基板を式(I)の化合物:
[式中、各Rは、(i)C~Cアルキルまたは(ii)1個または複数のハロゲン原子で置換されたC~Cアルキルから独立して選択される];
に曝露することを含み、それによって基板上にモリブデン含有膜を形成する法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】310℃までに質量の50%がエバポレートされることを示す、酢酸モリブデン(II)ダイマー化合物の熱重量分析を示すグラフである。
図2】290℃までに質量の50%がエバポレートされることを示す、一般的な前駆体HfClの熱重量分析を示すグラフである;したがって、酢酸モリブデン(II)ダイマーは、ALDなどの蒸着技術において、同様の温度で供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「または」は、内容が明確に指示しない限り、一般に「および/または」を含む意味で使用される。
【0011】
用語「約」は、一般に、言及された値と同等とみなされる(例えば、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められる数値を含むことがある。
【0012】
終点を使用して表現される数値範囲は、その範囲に包含されるすべての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む)。
【0013】
第1の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させる方法であって、反応ゾーンにおいて、基板を式(I)の化合物に曝露することを含む方法を提供する
[式中、各Rは、(i)C~Cアルキル、または(ii)1個または複数のハロゲン原子で置換されたC~Cアルキルから独立して選択される;
蒸着条件下により、基板上にモリブデン含有膜が形成する]。
【0014】
一実施形態では、各Rは、メチル、tert-ブチル、およびトリフルオロメチルから選択される。
【0015】
上に示した式(I)の化合物は、モリブデン含有アルカノエートのダイマーとして存在する。言い換えれば、式(I)の化合物は、経験式
[式中、Rは上記で定義した通りである]
を有する。
【0016】
式(I)の化合物の多くは公知であり、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO))を酢酸で処理することによって調製することができる(すなわち、Rがメチルである場合)。同様に、式(I)の対応するR基には、他のカルボン酸を利用することができる。(例えば、Rhenium and Molybdenum Compounds Containing Quadruple Bonds、Alicia B.Brignole、F.A.Cotton、Z.Dori、Z.Dori、Z.Dori、G.Wilkinson;書籍編集者:F.A.Cotton;初版:1972年1月1日;https://doi.org/10.1002/9780470132449.ch15.を参照のこと。さらに、Rがメチルである場合、酢酸モリブデン(II)ダイマー化合物は、Sigma Aldrich(CAS番号14221-06-8)から商業的に入手できる。)
【0017】
式(I)の化合物は、モリブデン含有膜の化学蒸着に有用であると考えられる。これに関して、用語「モリブデン含有」膜は、モリブデン金属、酸化モリブデン、炭化モリブデン、および窒化モリブデンのうちの1種または複数から構成される膜である。
【0018】
化学的な蒸着法としては、化学的気相成長(CVD)法、および原子層堆積(ALD)法と称される方法が挙げられ、これらは、特に、UVレーザー光解離CVD、プラズマアシストCVD、パルスCVD、およびプラズマアシストALDなどのこれらのいくつかの派生バージョンも含む。二次元または三次元のマイクロエレクトロニクスデバイス基板上への高純度の金属の蒸着において、これらの種類の蒸着法は、蒸着された金属の純度が高く、多くの場合、非常に非平面的なマイクロエレクトロニクスデバイス形状に良好なコンフォーマルな段差被覆性を与えることができるため、望ましいことがある。
【0019】
一実施形態では、基板表面上に堆積されるモリブデン含有膜または層は、例えば、化学気相成長、パルス化学気相成長(CVD)または原子層堆積(ALD)によって、したがって式(I)の化合物から誘導される蒸気を直接用いて形成することができる。
【0020】
一実施形態では、式(I)の化合物を、還元性ガスと共に、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに導入する。反応ゾーンの条件は、式(I)の前駆体中に含有するモリブデンがモリブデン金属としてマイクロエレクトロニクスデバイス基板上に堆積するように選択する。一実施形態では、前駆体および還元性ガスを反応ゾーンに連続的に導入する。別の実施形態では、堆積金属層の組成を改善するために、酸素、オゾン、または水と水素とを組み合わせたものなどの酸化性ガスを反応ゾーンに導入することができる。したがって、酸化性ガスは、完成したモリブデン層中に堆積する炭素の量を減少させる量および方式で導入する。一実施形態では、この酸化性ガスは、パルス状で断続的に導入する。この技法のさらなる詳細については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2020/0115798号で見出すことができる。
【0021】
したがって、一実施形態では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、式(I)の前駆体をマイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに導入し、同時に反応ゾーンに還元性ガスを導入することを含む方法を提供する。別の実施形態では、本方法は、反応ゾーンに酸化性ガスのパルスを断続的に導入する工程をさらに含む。
【0022】
別の実施形態では、式(I)のモリブデン前駆体を、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに導入し、続いて酸化性ガス(例えば、HO蒸気)をパルス導入し、続いて還元性ガス(例えば、H)をパルス導入することができる。このようにして、モリブデン金属膜をマイクロエレクトロニクスデバイス基板の表面に堆積させることができる。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、(i)式(I)の前駆体を、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに導入し、その間、断続的に(ii)基板を酸化性ガスに曝露し;断続的に(iii)基板を還元性ガスに曝露することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、前駆体、酸化性ガス、および還元性ガスは、原子層堆積領域にパルスで導入される。
【0023】
本発明のある特定の実施形態では、酸化性ガスは、HO蒸気、H、O、およびNOから選択されるガスで構成される。本発明のある特定の実施形態では、還元性ガスは、H、ヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、およびNHから選択されるガスで構成される。HおよびOの酸化電位を考慮すると、このようなガスは、ヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、もしくは1,2-ジメチルヒドラジンと共に利用すべきではないこと、または順次利用する場合は、基質を他の反応物質に曝露する前に、このような工程から残存するこのようなあらゆるガスを反応器からパージすべきであることが理解されよう。これらの技法に関するさらなる詳細については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2021/062331号で見出すことができる。
【0024】
ある特定の場合では、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N);メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジンなどのC~Cアルキルヒドラジンなどの窒素含有還元性ガスは有用であり得るが、一部の条件下では純粋な金属膜ではなくモリブデン含有窒化物膜がもたらされる。同様に、ある特定の実施形態では、一酸化炭素、アルカン、アルケン、およびアルキンなどの炭素含有還元性ガスは有用であり得るが、一部の条件下では、純粋な金属膜ではなく炭化モリブデン膜がもたらされる。一実施形態では、還元性ガスは水素である。
【0025】
本明細書に開示される方法は、金属前駆体と還元性ガスおよび/または酸化性ガス、ならびにキャリアガスの導入の間の任意選択の工程として、1種または複数のパージガスを含むことができる。未消費の反応物質および/もしくは反応副生成物をパージ除去するか、または金属前駆体および還元性ガスもしくは酸化性ガスの希釈剤およびキャリアとして機能するかのいずれかのために使用されるパージガスまたはキャリアガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、Arなどのパージガスは、約10~約10000sccmの範囲の流量で、約0.1~1000秒間、反応器内に供給され、それによって未反応物質および反応器内に残存し得るあらゆる副生成物をパージする。その他、このような不活性ガスは、本明細書で使用されるように、反応ゾーンに注入されるモリブデン前駆体ならびに/または酸化性ガスおよび/もしくは還元性ガスの濃度を変化させるためのキャリアガスとして利用することができる。キャリアガスの利用およびその流量は、最終的には、堆積ツールの構成、その操作規模、および利用される特定の前駆体に依存する。
【0026】
一実施形態では、元素モリブデン含有膜の形成をもたらすために、式(I)の前駆体と共に還元性ガスを利用することができる。あるいは、MoOなどの金属酸化物薄膜を堆積させる手段として本明細書に記載の前駆体を使用する場合、酸素などの酸化性ガス(すなわち、共反応物質)を本方法に加えることができる。
【0027】
多様な実施形態では、蒸着条件は、任意選択のそのような還元性ガスおよび/または酸化性ガスの存在を除けば、不活性雰囲気を含む。ある特定の実施形態では、前駆体蒸気は、他の金属蒸気の実質的な非存在下で堆積することができる。
【0028】
ある特定の実施形態では、基板表面上に堆積されるモリブデン含有層は、例えば、核形成層を事前に形成することなく、化学気相成長(CVD)法、パルス化学気相成長法、原子層堆積(ALD)法、または他の(熱的)気相成長法によって形成することができる。それぞれの前駆体蒸気接触工程は、モリブデン含有膜の所望の厚さを形成させるために所望のサイクル数だけ交互に繰り返し実施することができる。多様な実施形態では、基板(例えば、窒化チタン)層と式(I)の化合物蒸気との接触は、このような蒸着に対して200℃~750℃の範囲の温度で、約0.5~約500Torrの圧力で行われる。式(I)の化合物、還元性ガス、および酸化性ガスのパルス導入は、ある特定の実施形態において、約0.2秒~約60秒の持続時間の範囲であることができる。
【0029】
モリブデン金属含有材料は、上述のように、モリブデン金属、酸化物、炭化物、または窒化物のバルク堆積物を形成させるために、基板上に直接堆積することができる。元素モリブデン膜の堆積が望まれ、かつHが還元性ガスとして利用される場合、金属形成には、4モル当量を超えるH、または過剰のHが必要であるため、Hの濃度は、モリブデン金属対酸化物の形成に対して重要である。4モル当量未満のHでは、様々な量のモリブデン金属の酸化物が形成され、したがって、こうして形成された酸化モリブデンを還元するために、Hにさらに曝露する必要がある。
【0030】
本開示に従ってこのようなモリブデン含有材料を堆積させるためのプロセス化学は、反応Mo(OCCH+2H→2Mo+4HOCCHによって元素モリブデン、Mo(0)の堆積を含むことができる。中間的な反応は、存在してもよく、当該技術分野では周知である。
【0031】
本発明の方法に従って堆積されたモリブデン含有材料は、モリブデン含有材料の堆積速度、堆積されたモリブデン含有材料の膜抵抗率、堆積されたモリブデン含有材料の膜形態、堆積されたモリブデン含有材料の膜応力、材料の段差被覆性、膜組成および純度、ならびに適切なプロセス条件のプロセスウィンドウまたはプロセスエンベロープ(process envelope)などの任意の適切な評価指標およびパラメータによって特徴付けることができる。任意の適切な評価指標およびパラメータを採用して、堆積材料を特徴付けて、これを特定のプロセス条件に関連付けることにより、対応する半導体製品およびフラットパネルディスプレイの大量生産を可能にすることができる。有利なことに、本発明の方法は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上に高純度のモリブデン金属の膜を堆積させることができると考えられる。
【0032】
本発明の堆積方法で利用される基板は、任意の好適な種類のものであることができ、例えば、マイクロエレクトロニクスデバイス基板、例えば、シリコン基板、二酸化シリコン基板、または他のシリコンベースの基板を含むことができる。多様な実施形態では、基板は、1種または複数の金属基板または誘電体基板、例えば、Co、Cu、Al、W、WN、WC、TiN、Mo、MoC、SiO、W、SiN、WCN、Al、AlN、ZrO、HfO、SiO、酸化ランタン(La)、窒化タンタル(TaN)、窒化ニオブ、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化イットリウム(Y)を含むことができる。
【0033】
ある特定の実施形態では、例えば、二酸化ケイ素などの酸化物基板の場合、またはその代わりにシリコン基板もしくはポリシリコン基板の場合、基板は、その後に堆積される材料のために、その上に窒化チタンなどのバリア層を含むように加工または製造することができる。
【0034】
本発明の方法は、多数の代替的な方法で、多種多様なプロセス条件下で実施できることが理解されよう。マイクロエレクトロニクスまたは半導体デバイスは、任意の好適な種類のものであることができ、例えば、DRAMデバイス、3-D NANDデバイス、または他のデバイス、すなわちデバイス集積構造を含むことができる。多様な実施形態では、基板は、モリブデン含有材料が堆積されるビアを含むことができる。デバイスは、例えば、10:1~40:1の範囲にある深さ対横寸法のアスペクト比を有することができる。他の実施形態では、本方法は、モバイルデバイス、ロジックデバイス、フラットパネルディスプレイ、またはICパッケージング部品などのマイクロエレクトロニクスデバイス製品の製造において実施することができる。
【0035】
本発明の方法では、前駆体化合物は、任意の好適な方法で、例えば、単一ウエハチャンバー、マルチウエハチャンバー内、または複数のウエハを含有する炉内で、所望のマイクロエレクトロニクスデバイス表面または基板と反応することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「マイクロエレクトロニクスデバイス」は、マイクロエレクトロニクス、集積回路、またはコンピュータチップの用途で使用するために製造される、3D NAND構造、ロジックデバイス、DRAM、パワーデバイス、フラットパネルディスプレイ、および微小電気機械システム(MEMS)を含む半導体基板に対応する。用語「マイクロエレクトロニクスデバイス」は、いかなる意味においても限定的なものではなく、n型チャネル金属酸化物半導体(nMOS)および/またはp型チャネル金属酸化物半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロエレクトロニクスデバイスまたはマイクロエレクトロニクスアセンブリとなるあらゆる基板を含むことを理解されたい。さらに、下地基板はシリコンである必要はなく、ガラスもしくはサファイアなどの絶縁体、SiCもしくはGaNなどの高いバンドギャップ半導体、または電気回路の製造に有用な他の材料であることができる。このようなマイクロエレクトロニクスデバイスは、少なくとも1つの基板を含有し、この基板は、例えば、シリコン、SiO、Si、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、フレキシブル基板、多孔質無機材料、銅およびアルミニウムなどの金属、ならびにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WNなどの拡散バリア層が挙げられるが、これらに限定されないものから選択することができる。膜は、例えば、化学機械平坦化(chemical mechanical planarization)(CMP)および異方性エッチングプロセスなどの様々な後続処理工程に適合する。
【0037】
態様
第1の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、反応ゾーンにおいて、基板を式(I)の化合物に曝露することを含む方法を提供する
[式中、各Rは、(i)C~Cアルキルまたは(ii)1個または複数のハロゲン原子で置換されたC~Cアルキルから独立して選択される;
蒸着条件下により、基板上にモリブデン含有膜が形成する]。
【0038】
第2の態様では、本発明は、各RがC~Cアルキルである、第1の態様の方法を提供する。
【0039】
第3の態様では、本発明は、各Rがメチルである、第1の態様の方法を提供する。
【0040】
第4の態様では、本発明は、各Rがtert-ブチルである、第1または第2の態様の方法を提供する。
【0041】
第5の態様では、本発明は、各Rがトリフルオロメチルである、第1の態様の方法を提供する。
【0042】
第6の態様では、本発明は、蒸着条件が、約200℃~約750℃の温度および約0.5~約500Torrの圧力を含む、第1から第5の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0043】
第7の態様では、本発明は、蒸着条件が、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに式(I)の化合物を導入し、同時に還元性ガスを反応ゾーンに導入することを含む、第1から第6の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0044】
第8の態様では、本発明は、蒸着条件が、反応ゾーンに酸化性ガスのパルスを断続的に導入する工程をさらに含む、第7の態様の方法を提供する。
【0045】
第9の態様では、本発明は、蒸着条件が、(i)マイクロエレクトロニクスデバイス基板を含有する反応ゾーンに式(I)の前駆体を導入し、その間断続的に(ii)基板を酸化性ガスに曝露し;断続的に(iii)基板を還元性ガスに曝露することを含む、第1から第6の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0046】
第10の態様では、本発明は、還元性ガスが、H、ヒドラジン、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、およびNHから選択されるガスから構成される、第7または第9の態様の方法を提供する。
【0047】
第11の態様では、本発明は、酸化性ガスが、HO(H0)蒸気、H、O、およびNOから選択される、第8または第9の態様の方法を提供する。
【0048】
第12の態様では、本発明は、基板が、窒化チタン、窒化タンタル、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ランタン、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、および酸化イットリウムから選択される、第1から第11の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0049】
第13の態様では、本発明は、モリブデン含有膜がモリブデン金属である、第1から第12の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0050】
したがって、本開示のいくつかの例示的な実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本明細書に添付した特許請求の範囲内で、さらに他の実施形態を作製し、使用することができることを容易に理解するであろう。本文書が対象とする本開示の多数の利点が、前述の説明において記載された。しかし、本開示は、多くの点で、例示に過ぎないことが理解されよう。もちろん、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現する言語において表現される。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にモリブデン含有膜を堆積させるための方法であって、反応ゾーンにおいて基板を蒸着条件下で、式(I)の化合物:
(I)
[式中、各Rは、(i)C~Cアルキルまたは(ii)1個または複数のハロゲン原子で置換されたC~Cアルキルから独立して選択される];
に曝露することを含み、それによって基板上にモリブデン含有膜を形成する方法。
【請求項2】
各Rがメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各Rがtert-ブチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
蒸着条件が、約200℃~約750℃の温度および約0.5~約500Torrの圧力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸着条件が、反応ゾーンに酸化性ガスのパルスを断続的に導入する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】