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特表2024-544169木材及びセメント系組成物の積層体の製造方法
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  • 特表-木材及びセメント系組成物の積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】木材及びセメント系組成物の積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/06 20060101AFI20241121BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241121BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20241121BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241121BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241121BHJP
   C09J 171/02 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 13/00 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241121BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B05D7/06 Z
C08G59/40
C09J201/10
C09J163/00
C09J11/06
C09J171/02
B32B13/00
B32B21/08
B32B27/26
B32B27/38
B32B7/12
B27M1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531208
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2022082966
(87)【国際公開番号】W WO2023099306
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211443.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】524194366
【氏名又は名称】エンパ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ブルゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ショファ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ グレーンクイスト
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン ケルヒ
(72)【発明者】
【氏名】ザンヤ コスティーク
(72)【発明者】
【氏名】ティム マミー
(72)【発明者】
【氏名】クラース メンネッケ
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ シュタデルマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フェクトリ
(72)【発明者】
【氏名】サンドロ シュトゥッキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア フランギ
【テーマコード(参考)】
2B250
4D075
4F100
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
2B250AA02
2B250AA03
2B250BA07
2B250CA02
2B250DA04
2B250FA31
2B250FA41
2B250GA03
4D075AE06
4D075AE27
4D075DB21
4D075DC03
4D075EA23
4D075EA35
4D075EB03
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4D075EB33
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB45
4D075EC45
4F100AE01C
4F100AK53B
4F100AP01A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02B
4F100CA23C
4F100CB02B
4F100GB07
4F100JB13B
4F100JL11B
4F100YY00A
4J036AA05
4J036AB01
4J036AD08
4J036DA04
4J036DA09
4J036DB23
4J036DC03
4J036DC09
4J036DC14
4J036EA01
4J036FB12
4J036HA11
4J036HA13
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA13
4J036KA03
4J040EC002
4J040EE011
4J040EL051
4J040GA31
4J040HC04
4J040HD32
4J040HD36
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA38
4J040KA42
4J040MA08
4J040NA12
(57)【要約】
本発明は、(i)木製要素が提供され、(ii)木製要素の上面は、室温で液体でありシラン基を含む少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの液状エポキシ樹脂、及び少なくとも1つのアミン硬化剤を含む液体の形態で塗布される接着剤で被覆され、(iii)塗布された接着剤が、まだ湿っている間に液体セメント質組成物の層で覆われ、(iv)液体セメント系組成物及び接着剤が、それぞれ硬化されることを特徴とする、積層体の製造方法に関する。この方法により、実施が簡単なウェット・オン・ウェット方式で、木製要素及びセメント系要素を高耐久性で接合することができる。本方法から得られる積層体は、比較的軽く、安定であり、頑強であり、地上構造における持続可能な成分、特に天井要素として特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の製造方法であって、
(i)木材を提供し、
(ii)前記木材を、その上面で、液体形態で塗布される接着剤によって、被覆し、この接着剤は、室温で液体であるシラン基を含有する少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、及び少なくとも1種のアミン硬化剤を含み、
(iii)湿ったままの前記塗布された接着剤の上に、液体セメント系組成物を上塗りし、かつ
(iv)前記液体セメント系組成物及び前記接着剤を、それぞれ硬化する、
ことを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項2】
ステップ(i)における前記木材が、硬材又は軟材、好ましくはブナ材又はトウヒ材、特にブナ材からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記木材が、10~300mm、好ましくは20~200mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(ii)の前に前記木材にプライマーを塗布しないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)における前記接着剤が、0.1~10mm、好ましくは0.2~7mm、特に0.3~5mmの範囲の層の厚さで塗布されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(iii)において前記液体セメント系組成物を塗布する際に、前記木材が、外側に、型枠要素を備えており、それにより、前記塗布後に前記液体セメント系組成物が前記木材の表面に残り、かつ流出できないようになっていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iii)における前記液体セメント系組成物が、10~300mm、好ましくは20~200mm、特に30~100mmの範囲の層の厚さで塗布されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(iv)における前記硬化を、周囲温度で放置することによって行うことを特徴とし、任意選択で、ポリマーフィルムを用いて、前記セメント系組成物を表面において乾燥から保護することを伴う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
シラン基を含有する前記ポリマーが、0.3~2重量%の範囲の平均ケイ素含有量を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
シラン基を含有する前記ポリマーが、イソシアネート基を含有する少なくとも1つのポリエーテルと、少なくとも1つのアミノシラン、メルカプトシラン、又はヒドロキシシランとの反応から得られたものであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接着剤中のシラン基を含有する前記ポリマーと前記液状エポキシ樹脂の重量比が、20/80~70/30、好ましくは25/75~50/50の範囲内であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アミン硬化剤が、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、2,2(4),4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、200~500g/molの範囲の平均分子量Mを有するポリオキシプロピレンジアミン及びポリオキシプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N-ジメチルジ(1,3-プロピレン)トリアミン、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン、N-ベンジルプロパン-1,2-ジアミン、N-ベンジル-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、N-(2-フェニルエチル)-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン又はプロパン-1,2-ジアミンのクレシルグリシジルエーテルとの付加物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びこれらのアミンの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体セメント系組成物が、少なくとも1種のポルトランドセメント、少なくとも1種の無機充填剤、水、及び任意選択によりさらなる添加剤を含有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法から得られる積層体。
【請求項15】
請求項14に記載の積層体の、建築構造における成分としての、特に屋根要素としての、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造プロセス、積層体、及び建築構造における成分としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能な原材料である木は、太古の昔から建築材料として使用されており、持続可能性以外にも、コンクリートなどのセメント系建築材料に比べてさらなる利点、特に低密度及び魅力的な美観に加えて高い引張強度を有する。建築材料としての木の欠点は、主に耐火性が不十分であること及び音響伝導性により、防火及び遮音を実現することが困難であること、及び湿気の影響下での膨張及び収縮特性にある。ハイブリッドシステム(木-コンクリート複合材)として木をコンクリートに接着することには、木が引張力及びコンクリートの圧縮力を吸収できるという点で、2つの建築材料の利点を互いに組み合わせるという利点を有する。これは、例えば、比較的低い固有重量及び低い全高に加え、耐荷重能力及び曲げ剛性を有する屋根構造に利用でき、したがって、優れた防火性及び遮音性を備えた大きなスパンにも使用できる。このような特性を実現するには、根本的に異なる材料である木とコンクリートを、適切な接着方法によって最大限のせん断耐性及び耐久性で互いに接着させることが重要である。
【0003】
木をコンクリートに接着する際の典型的な手順は、ネジ、ボルト、クランプ、又はアンカーなどの金属の固定システムを使用して、硬化したコンクリート本体を木に接着することである。このような結合は安定で耐久性があるが、製造するのが複雑で、多くの場合、外観が満足のいくものではない。さらなる選択肢は、例えば液体コンクリートが木材と接触して硬化するという点で、木のノッチ又はスロットによってコンクリートとの機械的に安定した相互嵌合を確立することである。しかし、そのような接着は、特に湿度の上昇又は機械的ストレスによる収縮又は膨張の結果として木が動くため、安定性及び耐久性が不十分であることが多い。
【0004】
また、木材を硬化コンクリートに接着することも知られており、これに使用される接着剤は、通常、エポキシ樹脂接着剤である。典型的には、接着には、接着剤の硬化の中断を避け、安定した耐久性のある接着を確保するために、コンクリート表面のセメント表皮を機械的に除去するコンクリート表面の複雑な前処理を要する。
【0005】
木表面に機械的に嵌合させるために必要なスリット又はその他のノッチを必要とせずに、液体コンクリート又はモルタルを接着剤で被覆された木表面に注ぐことによって、木とコンクリート又はモルタルとの間に安定した耐久性のある接着を確立することは、特に魅力的である。しかし、このような接着剤に対する、機械的特性、液状コンクリートの高アルカリ性溶剤に対する非感受性及び耐久性に関する要求は高い。
【0006】
M.Brunner et al.,Materials and Structures(2007)40:119-126には、ウェット・オン・ウェット法におけるエポキシ樹脂接着剤による木とコンクリートの接着が記載されている。しかし、使用されているエポキシ樹脂接着剤は、混合後の発熱が大きいため、取り扱いが難しく、硬化後は非常に硬く、比較的脆い。これは、機械的ストレス下、又は湿度変化下での木の膨張及び収縮特性の結果として、積層体が接着剤界面で容易に破損することを意味する。さらに、エポキシ樹脂接着剤の硬化反応は生コンクリートによってしばしば妨げられ、その結果、不十分な接着強度が構築され、したがって、耐久性及び/又は永久的な接着が得られない。したがって、木とコンクリート本体の間に耐久性の高い永久的な接着を確立できる簡単なプロセスが必要とされている。
【0007】
シラン基を含有するポリマー及びエポキシ樹脂をベースとする硬化性組成物は、例えば欧州特許第370464号明細書又は米国特許出願公開第2017/0292050号明細書から、公知である。これは、水で濡れた硬化コンクリートなどに良好な接着特性を有する。このような接着剤が、新しく塗布された液体のままのコンクリートと接触していても、完璧に硬化し、高い接着強度を発現できることは、これまで知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、セメント系材料を液体形態で使用し、高い耐久性及び永久的な接着を可能にする、木とセメント系材料を接着する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、驚くべきことに、請求項1に記載の積層体の製造方法によって達成される。これには、シラン基を含有する少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、及び少なくとも1種のアミン硬化剤を含む、液体形態で塗布された接着剤で木材を被覆し、その後、まだ主に未硬化の接着剤を液体セメント系組成物で上塗りすることが含まれ、ここで、セメント系組成物及び接着剤は、最終的に硬化する。
【0010】
本発明の方法は、容易且つ迅速に実施可能であり、驚くべきことに、使用される接着剤は、従来技術から知られた問題を発生させることなく、ウェット・オン・ウェット法で、水で新たに作製したコンクリート又はモルタルなどの液体セメント系組成物による上塗りを可能にする。特に、混合したばかりの接着剤では、塗布時及びオープンタイムに問題を引き起こす過剰な発熱は発生せず、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルなどの液体セメント系組成物で上塗りした後、塗布されたまだ大部分が未硬化の接着剤は完璧に硬化し、木材への、及び同様に並行して硬化する水硬性硬化セメント系組成物への高い接着強度が発現する。硬化により、セメント系組成物と木が硬化した接着剤を介して互いに固定的且つ永久的に接着された積層体が生じる。積層体を室温の水中で24時間保管した後であっても、木が水の吸収によりある程度の膨張を起こした場合であっても、硬化したセメント系組成物と木の間の結合は十分に機械的に安定である。
【0011】
シラン基を有するポリマーを含まないエポキシ樹脂接着剤と比較して、本発明に従って使用される接着剤は、完璧な硬化、比較的低い発熱性、及びこの用途により適した機械的特性を有する。特に、これは高い伸張性及び耐衝撃性を示すが、純粋なエポキシ樹脂接着剤は、典型的には、硬く、比較的剛性の特質を有するため、剛性で硬化したセメント系組成物と、周囲条件に応じて動く木の間との接着にはあまり適していない。
【0012】
本発明の方法は、建築構造における持続可能な成分として、特に美観、遮音性、強度及び安定性に関して高い要求がある屋根要素として優れた適性を有する、木及びコンクリート又はモルタルからの積層体の製造を可能にする。さらに、本発明の方法は、軟材と比較して水を吸収する傾向が高いため、しばしば使用できない硬材を建築分野で使用することを可能にする。本発明の方法で使用される接着剤は、粘弾性中間層としての機能と同様に、防湿層としても機能し、積層体の木側をコンクリート側からの湿気の侵入から保護する。本方法から得られる積層体は、比較的軽量で、安定であり、耐久性があり、建築構造における持続可能な成分、特に屋根要素として特に適している。
【0013】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0014】
発明の実施方法
本発明は、
(i)木材が提供され、
(ii)木材の上面が、室温で液体であるシラン基を含有する少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、及び少なくとも1種のアミン硬化剤を含む、液体形態で塗布された接着剤で被覆され、
(iii)湿ったままの塗布された接着剤が、液体セメント系組成物で上塗りされ、
(iv)液体セメント系組成物及び接着剤が、それぞれ硬化される
ことを特徴とする、積層体の製造方法を提供する。
【0015】
「セメント系組成物」とは、セメントを含有する水硬性硬化組成物、特にモルタル又はコンクリートなどを指す。
【0016】
「液体セメント系組成物」は、まだ水硬性硬化していないか、又はわずかな程度しか硬化していないため、依然として自由流動性である、水を含有するセメント系組成物を指す。
【0017】
「無機充填剤」は、水硬性結合剤ではない粉末状又は粒状の無機材料を指す。
【0018】
「湿った」塗布された接着剤は、LDPEピペットで軽く叩くとピペットにくっつくものを指す。
【0019】
「シラン基」は、有機ラジカルに結合し、ケイ素原子上に1~3つ、特に2~3つの加水分解性アルコキシラジカルを有するシリル基を指す。
【0020】
「アミノシラン」、「メルカプトシラン」又は「ヒドロキシシラン」は、それぞれ、シラン基に加えて、有機ラジカル上に、アミノ、メルカプト又はヒドロキシル基を有するオルガノシランを指す。
【0021】
シラン基を含有するポリマーの「ケイ素含有量」は、ポリマー100重量%を基準とした、重量%でのポリマーのケイ素含有量を指す。
【0022】
ポリアミン又はポリオールなど「ポリ」で始まる物質名は、正式には、その名称に含まれる官能基を1分子中に2つ以上含有する物質を指す。
【0023】
「アミン水素」は、第一級及び第二級アミノ基の水素原子を指す。
【0024】
「アミン水素当量」とは、1モル当量のアミン水素を含有するアミン又はアミン含有組成物の質量を指す。これは、「g/eq」という単位で表される。
【0025】
「エポキシド当量」とは、1モル当量のエポキシ基を含有するエポキシ基含有化合物又は組成物の質量を指す。これは、「g/eq」という単位で表される。
【0026】
「分子量」は、分子のモル質量(モル当たりのグラム数)を指す。「平均分子量」は、オリゴマー又はポリマー分子の多分散混合物の数平均Mを指し、これは、典型的には、ポリスチレンを標準としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0027】
「貯蔵安定な」組成物は、適切な容器に入れて室温で長期間、典型的には少なくとも3ヶ月から最長6ヶ月以上にわたって保管することができ、この保管によって、その使用に関する範囲で何らかの変化が生じることなく保管できるものを指す。
【0028】
接着剤の「ポットライフ」は、成分を混合してから塗布するまでの最大時間を指し、その時間内では、混合された接着剤が十分に自由流動性であり、木表面を湿らせる能力が良好である。
【0029】
接着剤の「オープンタイム」は、成分を混合してからセメント系組成物で接着剤を上塗りするまでの間の、凝集結合が達成される最大時間を指す。
【0030】
「室温」は、23℃の温度を指す。
【0031】
この文書で言及されている全ての業界標準及び基準は、別段の記載がない限り、最初の出願日の時点で有効なバージョンを指す。
【0032】
重量パーセント(重量%)は、別段の記載がない限り、組成物全体を基準とした、組成物中の構成要素の質量による割合を指す。「質量」及び「重量」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
【0033】
木材は、好ましくは硬材又は軟材、好ましくはブナ材又はトウヒ材からなる。これらの種類の木は、高い機械的耐久性を有し、建築業界で広く使用されている。
【0034】
特に、木材はブナ材からなる。ブナ材は広く入手可能であり、特に硬質で耐久性がある。しかし、湿気の影響による膨張性が高いため、これまで建築材料として使用されることは比較的まれであった。
【0035】
適切な木材は、あらゆる種類の木製の成形本体である。少なくとも1つの平面を有する成形体が好ましい。
【0036】
木材は、好ましくは、水平な平面が上を向くように提供される(以下、「上面」とも呼ぶ)。
【0037】
木材は、好ましくは、立方体又は直方体、特に直方体の形状を有する。直方体の場合、好ましくは、最も大きな面の1つが上部にあり、したがって上面を形成するように配置される。以下、上辺に直角な辺を「厚さ」ともいう。
【0038】
木材は、好ましくは10~300mm、好ましくは20~200mmの範囲の厚さを有する。木材(H)の厚さは、例として図1にDとして示されている。
【0039】
木材の上面は、好ましくは0.3~20m、好ましくは1~10mの範囲の長さを有する。木材(H)の長さは、例として図1にLとして示されている。
【0040】
木材の上面は、好ましくは50~2,000mm、好ましくは100~1,500mm、特に150~1,000mmの範囲の幅を有する。木材(H)の幅は、例として図1にBとして示されている。
【0041】
木材は、好ましくは、長さが幅よりも大きく、幅が厚さよりも大きい直方体の形状を有する。このような木材は、板、梁、又はバーとも呼ばれる。
【0042】
木材は、接着されていない無垢材から構成されていてもよく、薄片又は角棒からなる接着された及び/又は互いに嵌合された積層木材から構成されていてもよい。特に、長さ1m以上、幅150mm以上の大型の木材の場合には、機械的耐久性及び寸法安定性が特に優れていることから、積層集成材が好ましい。
【0043】
木材は、ステップ(ii)で接着剤を塗布する前に前処理されてもよい。木材は、粉塵がないことが好ましい。
【0044】
粗面化又は溝若しくはスリットの機械加工などの機械的前処理は可能であるが、良好な接着には不要であるため、好ましくない。
【0045】
活性剤又はプライマーによる前処理も可能であるが、良好な接着のためには同様に不要である。
【0046】
好ましくは、ステップ(ii)の前に木材にプライマーを塗布しない。このような方法は、特に迅速且つ簡単であり、結果として耐久性が高く安定した積層体が得られる。
【0047】
接着剤の構成要素は、巨視的に均質な液体となるように、特にステップ(ii)で塗布する直前に混合される。混合は、スタティックミキサーによる自動混合及び計量ユニットによって、又はダイナミックミキサーを利用して、バッチ式で又は連続的に行うことができる。
【0048】
好ましくは、新たに混合された接着剤は、過度に流出することなく木材の上面にスキージ又はこてを用いて正確に広げられるように、わずかにチキソトロピー性を有する流体粘稠度を有する。
【0049】
接着剤の成分は、混合される前に、少なくとも2つの別個に包装された成分中に存在することが好ましく、その第1の成分はアミン硬化剤を含有し、第2の成分は液状エポキシ樹脂を含有し、シラン基を含有するポリマーは、第1及び/又は第2の成分、又は別個に包装された第3の成分の構成要素である。シラン基を含有するポリマーは、好ましくは第1及び/又は第2の成分の構成要素、特に第1の成分の構成要素である。接着剤のさらなる構成要素は、第1又は第2の成分中に存在してもよく、さらなる成分の構成要素として存在してもよい。さらなる構成要素は、第1及び第2の成分及びさらなる成分が防湿パッケージ内で貯蔵安定性を有するように、成分間で適切に分散される。
【0050】
混合に続いて、ステップ(ii)において、適切にはポットライフ内で、液体接着剤を木材の上面に塗布する。
【0051】
塗布は、好ましくは、カートリッジ又は塗布ガンからの注入又は塗布によって行われ、必要に応じて、適切な方法、特にスキージ、こて、又はドクターによって広げられる。同様に、スプレー法による塗布も可能である。
【0052】
好ましくは、ステップ(ii)の接着剤は、0.1~10mm、好ましくは0.2~7mm、特に0.3~5mmの範囲の層の厚さで塗布される。接着剤(K)の層の厚さは、例として図1にDとして示されている。
【0053】
成分の混合及び接着剤の塗布は、好ましくは周囲温度で行われ、これは、典型的には、約5~45℃、好ましくは約10~35℃の範囲である。
【0054】
成分を混合すると、化学反応によって接着剤の硬化が始まる。これにより、液体接着剤の粘度がゲル化するまで徐々に増加し、結果、最初はまだ粘着性であり得る表面を有する固体接着剤が得られるが、最終的には乾燥する。
【0055】
接着剤が湿ったままである、すなわち未硬化である接着剤のオープンタイム中に、湿ったままの塗布された接着剤は、ステップ(iii)において液体セメント系組成物で上塗りされる。したがって、ステップ(iii)は、塗布された接着剤がその表面に皮膜を形成する前に行われる。このような手順は、「ウェット・オン・ウェット」塗布とも呼ばれる。
【0056】
ステップ(iii)は、好ましくは、反応性基の最初の架橋反応の結果として、接着剤の粘度がすでにある程度増加している時点で行われる。粘度の増加は、接着剤の成分を混合した5分後に20℃でせん断速度10s-1のコーンプレート粘度計を用いて測定した初期粘度を基準として、好ましくは少なくとも10%、特に少なくとも30%である。
【0057】
好ましくは、ステップ(iii)で液体セメント系組成物を塗布した木材には、塗布後に液体セメント系組成物が木の表面に残り、流出できないように、外側、例えば側縁の延長部に、型枠要素が設けられている。図1では、木材(H)の厚さDが例として見られる。型枠要素は、好ましくは、液体セメント系組成物で形成された体積を完全に充填する場合、接着剤及びセメント系組成物の塗布に適切な高さを有する完全な型枠を形成する程度に、木材の厚さDを囲み、上方に突出するように取り付けられる。型枠要素の高さは、好ましくは、図1に例として示すように、積層体の厚さDに対応する。
【0058】
適切な型枠要素は、コンクリート建築において通例であるように、セメント系組成物が硬化した後に除去できるボード又は他の装置である。
【0059】
型枠要素は、ステップ(ii)の前又は後、特にステップ(ii)の前に取り付けることが好ましい。
【0060】
ステップ(iii)の前に、任意選択により、塗布された接着剤上に鉄筋が取り付けられ、接着剤の上塗り時に鉄筋がセメント系組成物に入れられ、セメント系組成物によって囲まれるように、スペーサーを用いて鉄筋が配置される。これにより、特に高い強度を有する積層体が可能になる。モルタル又はコンクリート工学で通常使用される鉄筋のいずれかを使用することができる。同様に、繊維又は織物、例えばガラス繊維又は炭素繊維の織物で作られた補強要素も適している。適切なポリプロピレン繊維は、例えば、商品名SikaFiber(登録商標)(Sika製)で入手可能である。適切な炭素繊維の層状織物は、例えば、商品名Sika(登録商標)CarboDur(登録商標)(Sika製)で入手可能である。
【0061】
セメント系組成物は、塗布前に構成要素を混合することによって製造される。ここで、セメントとさらなる添加剤を含有する乾燥混合物を使用することが可能であり、これは塗布直前に水で構成される。
【0062】
ステップ(iii)における液体セメント系組成物は、好ましくは薄すぎないが注ぐことができる粘稠度を有し、ここで、含水量は、硬化時の低収縮に加えて高強度をもたらすものである。
【0063】
塗布の際、好ましく取り付けられた型枠要素は、セメント系組成物の流出を防止する。型枠要素は、木材の被覆された上面とともに、液体セメント系組成物の鋳型を形成することが好ましく、その木材の被覆された上面が底部を形成する。型枠要素は、好ましくは、鋳型の深さがセメント系組成物の所望の層の厚さに対応する程度まで、木材の被覆された上面の上に突出している。
【0064】
好ましくは、ステップ(iii)における液体セメント系組成物は、10~300mm、好ましくは20~200mm、特に30~100mmの範囲の層の厚さで塗布される。セメント系組成物(Z)の層の厚さは、例として図1にDとして示されている。
【0065】
ステップ(iii)において、液体セメント系組成物は、好ましくは水平面が得られるように塗布される。セメント系組成物は、任意選択により、適切な方法によって圧縮される。適切には、セメント系組成物の表面は、塗布の終了に向かって、例えばスパチュラ又はレンガごてを用いて平滑化される。
【0066】
続いて、ステップ(iv)において、液体セメント系組成物及び接着剤を硬化させる。
【0067】
好ましくは、ステップ(iv)における硬化は、任意選択によりポリマーフィルムを用いて表面上のセメント系組成物を乾燥から保護しながら、周囲温度で放置することによって行われる。
【0068】
接着剤は、存在する反応性基、特にシラン基、エポキシ基及びアミノ基と、アミン水素との化学反応により、最終強度に達するまで硬化する。同時に、その下のセメント系組成物も同様に、存在するセメントの水硬性硬化によって硬化し、最終的にはその最終強度に達する。硬化の過程において、木及び硬化したセメント系組成物に対する接着剤の高い接着強度が発現し、その結果、本方法から得られる積層体は、木材とセメント系組成物の層との間に安定した接着を有する。
【0069】
硬化プロセスの期間は、周囲温度、接着剤又はセメント系組成物に使用される成分、及び組成物中の硬化促進剤の存在に依存する。典型的には、存在する型枠要素は約1~2日後に除去され、積層体は室温で数日又は数週間後に最終強度に達する。
【0070】
本方法で使用される接着剤は、室温で液体であるシラン基を含む少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、及び少なくとも1種のアミン硬化剤を含む。
【0071】
シラン基を含有するポリマーは、好ましくはシラン基を含有する有機ポリマー、より具体的にはポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル、又はそれぞれが1つ又は好ましくは2つ以上のシラン基を有するこれらのポリマーの混合形態である。シラン基は、側鎖として、又は鎖の末端に存在し得る。
【0072】
特に、シラン基を含有するポリマーは、シラン基を含有するポリエーテルである。これは、好ましくは、大部分のオキシアルキレン単位、特に1,2-オキシプロピレン単位を有する。
【0073】
シラン基を含有するポリマーは、分子当たり平均して好ましくは1.3~4つ、より好ましくは1.5~3つ、特に1.7~2.8つ、最も好ましくは1.7~2.3つのシラン基を有する。シラン基は、好ましくは末端にある。
【0074】
好ましいシラン基は、トリメトキシシラン基、ジメトキシメチルシラン基又はトリエトキシシラン基である。
【0075】
シラン基を含有するポリマーは、好ましくは2,000~20,000g/mol、より好ましくは3,000~15,000g/mol、特に4,000~10,000g/molの範囲の平均分子量Mを有する。
【0076】
シラン基を含有するポリマーは、好ましくは0.3重量%~2重量%、特に0.5重量%~1.5重量%の範囲の平均ケイ素含有量を有する。
【0077】
シラン基を含有するポリマーは、好ましくは、以下の方法の1つから得られたシラン基を含有するポリエーテルである:
・任意選択により例えばジイソシアネートによる鎖延長を伴う、アリル基を含有するポリエーテルとヒドロシランの反応(ヒドロシリル化)、
・任意選択により例えばジイソシアネートによる鎖延長を伴う、アルキレンオキシドとエポキシシランの共重合、
・任意選択によりジイソシアネートによる鎖延長を伴う、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランの反応、
・イソシアネート基を含有するポリエーテルを得る、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応と、その後のイソシアネート基とアミノシラン、ヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応。
【0078】
好ましくは、シラン基を含有するポリマーは、イソシアネート基を含有する少なくとも1つのポリエーテルと、少なくとも1つのアミノシラン、メルカプトシラン、又はヒドロキシシランとの反応から得られる。これにより、接着剤の特に高い接着強度が可能になる。
【0079】
イソシアネート基を含有するポリエーテルは、好ましくは、少なくとも1つのポリエーテルポリオールと少なくとも1つのジイソシアネートの反応から得られる。
【0080】
この反応は、好ましくは、水分を排除し、20~160℃、特に40~140℃の範囲内の温度で、任意選択により適切な触媒の存在下で行われる。
【0081】
NCO/OHのモル比は、好ましくは少なくとも1.3/1、より好ましくは少なくとも1.6/1、特に少なくとも1.9/1である。
【0082】
好ましいポリエーテルポリオールは、任意選択により末端オキシエチレン基を有する、ポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオールである。
【0083】
ポリオキシプロピレンジオールが特に好ましい。
【0084】
好ましいジイソシアネートは、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(HDI)、2,2(4),4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、パーヒドロ(ジフェニルメタンジイソシアネート)(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)又はナフタレンジイソシアネート(NDI)である。
【0085】
HDI、IPDI、MDI若しくはTDI、特にIPDI若しくはMDI、又はこれらのジイソシアネートの混合物が特に好ましい。
【0086】
イソシアネート基との反応に適したアミノシランは、第一級又は第二級アミノシランである。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3-メチルブブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどの第一級アミノシランから形成される付加物、及びアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル又はイタコン酸ジエステルなどのマイケル受容体、特に、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチル又はN-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルが好ましい。同様に、ケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基を有する、言及したアミノシランの類似体も適している。
【0087】
N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチル、N-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチル、又はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルが特に好ましい。これらは簡単に入手でき、接着剤の特に高い強度及び安定性を実現する。
【0088】
イソシアネート基との反応に適したメルカプトシランは、特に3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、又はケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基を有するこれらのメルカプトシランの類似体である。
【0089】
イソシアネート基との反応に適したヒドロキシシランは、特に、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシペンタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシオクタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-5-ヒドロキシデカンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロピルカルバメート、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリメトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール、又は1-モルホリノ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロパン-2-オールである。
【0090】
より好ましくは、イソシアネート基を含有するポリエーテルとの反応のためのアミノシラン、メルカプトシラン、又はヒドロキシシランは、アミノシラン、特に、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチル、N-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチル、又はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルである。
【0091】
シラン基を含有する好ましいポリマーは、液状エポキシ樹脂と特に相溶性があり、高い強度、高い耐衝撃性、及び湿気に対する高い安定性を有する接着剤を可能にする。
【0092】
接着剤は、少なくとも1つの液状エポキシ樹脂をさらに含む。
【0093】
液状エポキシ樹脂として適しているのは、室温で自由流動性であり、25℃未満のガラス転移温度を有する通常の工業用エポキシ樹脂である。これらは、公知の方法、より具体的には、特に少なくとも2つの活性水素原子を有する化合物、より具体的には、ポリフェノール、ポリオール又はアミンの、エピクロロヒドリンとの反応によるグリシジル化により得られる。
【0094】
芳香族液状エポキシ樹脂、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はビスフェノールFジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックグリシジルエーテルが好ましい。これらは粘度を容易に管理でき、高い強度及び安定性を有する接着剤を実現する。
【0095】
好ましくは、接着剤中のシラン基を含有するポリマーと液状エポキシ樹脂の重量比は、20/80~70/30、好ましくは25/75~50/50の範囲内である。このような接着剤は、高い耐衝撃性に加えて高い強度を有する。
【0096】
接着剤はまた、液状エポキシ樹脂を硬化できる少なくとも1つのアミン硬化剤を含む。
【0097】
適切なアミン硬化剤は、エポキシ基に反応性の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのアミン水素を有するアミンである。脂肪族アミノ基及び少なくとも3つのアミン水素を有する従来のポリアミンが好ましい。
【0098】
適切なアミン硬化剤はまた、少なくとも2つのアミン水素及び少なくとも1つのシラン基を有するアミン、特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、及びシリコン上のメトキシ基の代わりにエトキシ基を有するその類似体などの、アミノシランである。
【0099】
適切なアミン硬化剤はまた、エポキシ樹脂の単独重合を触媒するマンニッヒ塩基、例えば、特に2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0100】
好ましくは、アミン硬化剤は、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、2,2(4),4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)、200~500g/molの範囲の平均分子量Mを有するポリオキシプロピレンジアミン及びポリオキシプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N-ジメチルジ(1,3-プロピレン)トリアミン、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン又はプロパン-1,2-ジアミンのクレシルグリシジルエーテルとの付加物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びこれらのアミンの組み合わせからなる群から選択される。
【0101】
好ましくは、接着剤は少なくとも1種のアミノシランを含有する。
【0102】
好ましくは、接着剤は、脂肪族アミノ基及び少なくとも3つのアミン水素を有する少なくとも1種のポリアミン、特に、200~500g/molの範囲の平均分子量Mを有する、1,2-ジアミノシクロヘキサン若しくはIPDA若しくはポリオキシプロピレンジアミン、又はこれらのポリアミンの組み合わせである。
【0103】
接着剤は、好ましくは、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールも含有する。
【0104】
接着剤は、好ましくは2成分型接着剤として使用され、ここで、2つの成分は別個に包装され、塗布前に混合される。
【0105】
第1の成分は、アミン硬化剤と、エポキシ基と反応する他の化合物とを含有し、第2の成分は、液状エポキシ樹脂と、エポキシ基を含有するその他の化合物とを含有し、シラン基を含有するポリマーは、第1及び/又は第2の成分の構成要素である。シラン基を含有するポリマーは、好ましくは第1成分の構成要素である。
【0106】
2成分は、それ自体、湿気の排除により保存安定性がある。2成分を混合すると、第一級及び/又は第二級アミノ基が、存在するエポキシ基と反応し、シラン基が水と接触すると反応してアルコールを放出する。
【0107】
接着剤は、好ましくは、さらなる構成要素、特に、エポキシ基を含有する反応性希釈剤、乾燥剤、促進剤、水及び充填剤からなる群から選択される成分を含有する。
【0108】
エポキシ基を含有する適切な反応性希釈剤は、特に、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、4-メトキシフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-ノニルフェニルグリシジルエーテル、カルダノールグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、又は天然アルコールのグリシジルエーテル、例えば、特にC~C10若しくはC12~C14若しくはC13~C15アルキルグリシジルエーテルである。このような反応性希釈剤は、好ましくは、第2の成分の構成要素である。
【0109】
適切な乾燥剤は、特に、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シラン基のα位に官能基を有するオルガノシラン、特に、N-(メチルジメトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメート又は(メタクリロイルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、オルトギ酸エステル、また、酸化カルシウム又はモレキュラーシーブである。乾燥剤は、好ましくは、シラン基を含有するポリマーを含む成分の構成要素である。
【0110】
適切な促進剤は、特にシラン基を含有するポリマーの架橋を促進する物質、特に金属触媒及び/又は窒素化合物である。
【0111】
適切な金属触媒は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はスズの化合物、特に有機スズ化合物、有機チタン酸塩、有機ジルコン酸塩又は有機アルミン酸塩、特にジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート又はジオクチルスズジラウレートである。
【0112】
適切な窒素化合物は、特に、言及したアミン硬化剤、及びアミジン又はグアニジンである。
【0113】
適切な促進剤はまた、特にエポキシ基の反応を促進する物質、特にサリチル酸若しくはp-トルエンスルホン酸などの酸、又は特に硝酸カルシウムなどの硝酸塩、又は第三級アミン、フェノール若しくはマンニッヒ塩基、又はメルカプト基を有する化合物である。
【0114】
接着剤は、水又は放水性物質を含有することが好ましい。結果として、シラン基の架橋に必要な水は、環境から取り込むとしても、環境から取り込むのは、その一部のみでなければならない。
【0115】
接着剤は、好ましくは、接着剤全体を基準として5重量%まで、特に2重量%までの水を含有する。
【0116】
遊離水は、好ましくは、シラン基を含有するポリマーと同じ成分中に存在しない。
【0117】
適切な充填剤は、特に、任意選択により脂肪酸、特にステアリン酸塩、バライト、石英粉、珪砂、ドロマイト、ウォラストナイト、焼成カオリン、雲母又はタルクなどの層状ケイ酸塩、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカで被覆された、粉砕又は沈降炭酸カルシウムであり、熱分解プロセスからの微細シリカ、セメント、石膏、フライアッシュ、工業的に製造されたカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、鉄、銀、鋼などの金属粉末、PVC粉末、又は中空ガラス又はガス充填中空プラスチックビーズ(微粒子)などの軽量充填ビーズが含まれる。
【0118】
好ましい充填剤は、炭酸カルシウム、焼成カオリン、微細シリカ、工業用カーボンブラック、又はそれらの組み合わせである。
【0119】
接着剤は、特に、フタレート、水素化フタレート、テレフタレート、水素化テレフタレート、ポリエーテルポリオール又は可塑剤として知られる他の物質などの可塑剤、エポキシシラン又はメルカプトシランなどのさらなる架橋剤、溶剤又はシンナー、顔料、染料、増粘剤、繊維、ナノフィラー、難燃性物質、乳化剤、湿潤剤、消泡剤、又は酸化、熱、光若しくは紫外線に対する安定剤などの、さらなる添加剤を含んでもよい。
【0120】
接着剤は、好ましくは、接着剤全体を基準として、
・10重量%~40重量%の、シラン基を含有するポリマー、
・20重量%~60重量%の液状エポキシ樹脂、
・0%~25重量%のエポキシ基含有反応性希釈剤、
・5重量%~30重量%のアミン硬化剤、
・0重量%~50重量%の充填剤、
及び任意選択により、さらなる成分を含有する。
【0121】
接着剤は、好ましくは、2成分型接着剤として使用される。第1の成分と第2の成分は別個に製造され、防湿容器に保管される。適切な容器は、特に、ドラム缶、ホボック(hobbock)、バケツ、缶、カートリッジ、アルミニウムで被覆されたホイルパウチ又はチューブである。
【0122】
2成分は、接着剤の塗布前又は塗布中に混合される。混合比は、エポキシ基に反応性の基が、エポキシ基に対して適切な割合で存在するように選択することが好ましい。エポキシ基の数に対するアミン水素の数の比は、好ましくは、0.5~1.5、特に0.8~1.2の範囲である。重量部での混合比は、典型的には、1:10~10:1の範囲内である。
【0123】
2成分を混合すると、化学反応による硬化が始まる。ここで、エポキシ基はアミン水素と反応し、シラン基はアルコールの放出とともに加水分解を受け、シラノール基(Si-OH基)を形成し、その後の縮合反応を通じてシロキサン基(Si-O-Si基)を形成する。これらの反応、及び場合によってはさらなる反応の結果、接着剤は硬化する。シラン基の加水分解のための水が接着剤中にまだ存在していない場合、水は、木又はセメント系組成物から、及び/又は空気中の湿気の形態で接着剤に浸透することができる。
【0124】
硬化した接着剤は、非常に高い強度、高い伸張性、及び高い耐衝撃性を有する。これは、好ましくは少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも15MPaの引張強度、及び歪み速度2mm/分でDIN EN 53504に従う、長さ75mm、バー長さ30mm、バー幅4mm、厚さ約2mmを有するダンベル状の試験片で決定される少なくとも10%の破断点伸びを有する。
【0125】
液体セメント系組成物は、少なくとも1種のセメントを含有する。
【0126】
適切なセメントは、入手可能な全ての種類のセメント、及び2種以上のセメントの混合物である。適切なセメントの種類の例は、DIN EN 197-1に記載のもの、特に、ポルトランドセメント(CEM I)、ポルトランド複合セメント(CEM II)、高炉スラグセメント(CEM III)、ポゾランセメント(CEM IV)又は複合セメント(CEM V)である。これらの主要な種類は、当業者にはよく知られているサブグループに分類される。同様に、特にポルトランドセメントについてはASTM C150、又は混合水硬性セメントについてはASTM C595などの代替規格に従って製造されたセメントタイプも適している。
【0127】
特に好ましいセメントは、DIN EN 197-1によるCEM Iポルトランドセメント、特にポルトランドセメントタイプI-42.5、I-42.5R若しくはI-52.5、又はASTM C150によるポルトランドセメントである。
【0128】
さらに好ましいセメントは、任意選択により硫酸カルシウム及び/又はポルトランドセメントと組み合わせた、アルミン酸カルシウムセメント又はスルホアルミン酸カルシウムセメントである。
【0129】
ポルトランドセメントが特に好ましい。
【0130】
セメントに加えて、セメント系組成物は、いわゆる補助セメント系材料(SMC)を含み得る。これらは、微細形態で水酸化カルシウム及び水と反応して、セメント様の特性を有する化合物を与えることができる材料である。好ましいSMCは、フライアッシュ、スラグ、メタカオリン、ポゾラン、又はシリカフュームである。
【0131】
さらに、液体セメント系組成物は、水と反応することができるさらなる無機物質、特に硫酸カルシウムを含んでもよい。
【0132】
液体セメント系組成物は、好ましくは、少なくとも1種の無機充填剤を含有する。
【0133】
無機充填剤は、好ましくは、石英粉末、珪砂、砂質石灰岩、川砂、骨材、炭酸カルシウム、チョーク、重晶石(バライト)、ドロマイト、ウォラストナイト、タルク、二酸化チタン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0134】
セメント系組成物は、好ましくは、2種以上の無機充填剤の混合物を含有する。
【0135】
石英粉末、珪砂、骨材、炭酸カルシウム、チョーク、又はそれらの混合物が特に好ましい。
【0136】
液体セメント系組成物は、好ましくは水をさらに含有する。
【0137】
水の量は、好ましくは、組成物が、過剰に流出することなく、注ぎ、広げられる、ペースト状で自由流動性塊の形態であるような量である。このような粘稠度を得るために必要な水の量は、セメントの種類、無機充填剤の種類及び量、特に可塑剤などのさらなる添加剤の存在に依存する。
【0138】
液体セメント系組成物の水セメント値(w/c)は、好ましくは、0.2~0.75、特に0.4~0.6の範囲である。これにより、硬化した組成物の高い強度及び不浸透性を達成することができる。
【0139】
液体セメント系組成物は、好ましくは、従来技術のセメント系組成物において通例であるさらなる添加剤、特に、促進剤、遅延剤、流動助剤、増粘剤、消泡剤、保水剤、顔料及び殺生物剤からなる群から選択される添加剤を含有する。
【0140】
液体セメント系組成物は、好ましくは、少なくとも1種のポルトランドセメント、少なくとも1種の無機充填剤、水、及び任意選択によりさらなる添加剤を含有する。
【0141】
液体セメント系組成物は、より好ましくは、液体セメント系組成物全体を基準として、
5~60重量%のポルトランドセメント、
20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~70重量%の無機充填剤、
3重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%の水、及び
0重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~25重量%のさらなる添加剤
を含有する。
【0142】
砂を含有し、粗骨材をほとんど含まないセメント系組成物はモルタルとも呼ばれる。これらは特に、0.05~4mmの範囲の粒径を有する無機充填剤を含有する。
【0143】
骨材を含有するセメント系組成物は、コンクリートとも呼ばれる。これらは特に、0.05~4mmの範囲の粒径を有する無機充填剤と、32mmまで、特に16mmまでの粒径を有する骨材との混合物を含有する。
【0144】
セメント系組成物の固体又は乾燥構成要素は、好ましくは、液体セメント系組成物を得るために水と混合される。
【0145】
水の添加後、セメントの水硬性硬化が始まり、その結果、液体セメント系組成物が徐々に硬化し、固体の石様材料、特に硬化モルタル又はセメントが形成される。
【0146】
硬化の初期段階では、乾燥から保護するためにセメント系組成物をポリマーフィルムで覆うことが有利であり得る。これにより、セメントの水硬性硬化に十分な水が確保される。
【0147】
本発明はさらに、本発明のプロセスから得られる積層体を提供する。
【0148】
積層体は、接着剤を介して圧入方式で互いに結合された、木層と、セメント系組成物の水硬性硬化層とを含む。
【0149】
積層体は、好ましくは直方体の形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1図1は、例示を目的として、説明した積層体を示す。これは、木層(H)、接着剤層(K)、及びセメント系組成物の層(Z)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0151】
直方体の底面は木面によって形成され、直方体の上面はセメント系組成物によって形成されることが好ましい。木層の厚さは、好ましくは、セメント系層の厚さと等しいか、又はそれより大きい。図1は、例として、木層(H)の厚さ(D)、接着剤層(K)の厚さ(D)、及びセメント系組成物(Z)の厚さ(D)を示す。
【0152】
積層体の寸法は、好ましくは、支持、強化又は補強がない場合に、木層がその重量で著しく曲がることなくセメント系組成物の層を支持できるような寸法である。
【0153】
積層体は、安定であり、耐久性がある。積層体は特に、永久的に曲がることなく、空間内で自由に輸送できる。積層体は、積み重ねることができ、熱、湿気又は紫外線に接触しても、安定性が大幅に損なわれることはない。
【0154】
積層体は、板、梁、バー、又はサンドイッチエレメントとも呼ばれる。
【0155】
本発明はさらに、建築構造における成分、特に屋根要素としての、積層体の使用を提供する。この積層体は、特に、木側が内部から見える天井を形成し、セメント系組成物の側が屋根又は上階に向けられるように、屋根要素として設置される。
【0156】
本発明の方法による積層体は、特に遮音性及び断熱性があり安定であり、必要な水硬性結合剤及び混和剤のレベルが低く、したがって特に持続可能である、耐荷重木製天井の設置を可能にする。
【実施例
【0157】
以下に実施例を挙げるが、これらは記載された本発明をさらに説明することを目的としている。当然のことながら、本発明はこれらの記載された実施例に限定されない。
【0158】
「標準気候条件」(「SCC」)は、温度23±1℃且つ相対湿度50±5%を指す。
【0159】
使用された角棒積層ブナ材は、Fagus Suisse SA製のものである。
【0160】
接着剤の製造:
接着剤S1:
遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC150、FlackTek Inc.)を使用して以下の成分を指定の量(重量部、PW)で混合し、湿気を排除して混合物を保管することにより、第1の成分を製造した:
末端トリメトキシシラン基を有するシラン基、ポリエーテル骨格及びケイ素含有量0.91重量%を含有する、61.6PWの線状ポリマー、
1.7PWのビニルトリメトキシシラン、
22.8PWの1,2-ジアミノシクロヘキサン(Dytek(登録商標)DCH-99、Invista製、AHEW28.5g/eq)、
7.5PWのポリオキシプロピレンジアミン(Jeffamin(登録商標)D-400、Huntsman製、AHEW115g/eq)、
2.65PWの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest(登録商標)A-1110、Momentive製、AHEW89.7g/eq)、
1.8PWのフタル酸ジイソデシル(Palatinol(登録商標)10-P、BASF製)、
1.95PWの触媒及びUV安定剤。
【0161】
同様に、次の成分を混合し、湿気を排除して混合物を保管することにより、第2の成分を製造した:
66.4PWのビスフェノールAジグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)GY250、Huntsman製、EEW187g/eq)、
22.1PWのヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Araldite(登録商標)DY-H、Huntsman製、EEW149g/eq)、
2.5PWの乳化剤混合物、
1.4PWのカーボンブラック、
7.6PWの充填剤。
【0162】
塗布のために、2成分を、第1の成分対第2の成分の重量部で0.6/1の混合比で混合し、遠心ミキサー又は別の適切な撹拌システムを用いて処理して、均一な液体接着剤混合物を得、これを10分以内に塗布した。
【0163】
接着剤の特性を評価するために、次の試験が実施された:
混合粘度は、20℃の温度で2成分を混合した5分後に、せん断速度10s-1で、サーモスタット付きRheotec RC30コーンプレート粘度計(コーン直径50mm、コーン角度1°、コーン先端プレート距離0.05mm)を使用して測定した。
【0164】
ポットライフの測定では、新たに混合した接着剤300gを500mlビーカー中でスパチュラを用いて、接着剤が良好な作業性をもはや有しない程度に濃くなるまで5分間隔で撹拌した。
【0165】
機械的特性を決定するために、混合した接着剤をPTFE被覆されたフィルム上に注いで、厚さ2mmのフィルムを得、標準気候条件下で保管した。1日後、長さ75mm、バー長さ30mm、バー幅4mmを有する複数のダンベル状の試験片をフィルムから打ち抜き、標準気候条件下でさらに6日間保管した。続いて、DIN EN 53504に記載されているように、ひずみ速度2mm/分、引張強さ(破断力)、破断伸び、及び0.05%~0.25%伸びでの弾性率(MoE0.25%)を決定した。
【0166】
接着剤S1は、混合粘度が7.75Pa・s、ポットライフが35分、引張強度が20MPa、破断点伸びが15%、0.25%弾性率が779MPaであった。硬化すると、非粘着性の均質で膨れのない、シルキーマットな表面並びに高い引張強度及び耐衝撃性を備えた材料が得られた。
【0167】
接着剤S1において、シラン基を含有するポリマーとビスフェノールAジグリシジルエーテルの重量比は35.7/64.3である。
【0168】
積層体の製造:
実施例1:
複数の積層体を標準気候条件下で製造し、いずれの場合も、ブナ材で作製した40×50×30mmの木材を、40×50mmの領域が上を向き、厚さが30mmとなるように水平基板上に配置した。表面の粉塵をブラシで除去した。続いて、3gの混合接着剤S1を清浄な表面に塗布し、スパチュラを用いて均一に広げた(塗布率1.5kg/mに相当)。
【0169】
このようにして被覆された試験片を、木材の外側を継ぎ目なく取り囲み、木材の表面から30mm突出した型枠型にクランプして、深さ30mmのセメント系組成物の鋳型を形成した。
【0170】
続いて、新たに作製したモルタル(SikaGrout(登録商標)-212N、Sika Schweiz AG製、乾燥モルタル25kgに対して水2.9lで作製)を層の厚さ30mmで鋳型に導入し、したがってS1で被覆された木材の表面上に導入した。接着剤の混合及びモルタルの注入後の待ち時間は20~30分であった。モルタルを塗布した時点では、接着剤はまだ皮膜を形成していなかった(接着剤をLDPEピペットで軽く叩くとピペットにくっついた)。
【0171】
このようにして製造された試験片を標準気候条件下で48時間放置し、その後型枠型を取り外した。その結果、寸法40×50×30mmのブナ材と寸法40×50×30mmの硬化モルタルで構成される40×50×60mmの積層体が得られ、接着剤S1によって木とモルタルが40×50mmの面積にわたって強固に接着された。
【0172】
複数のこのような試験片を標準気候条件下で28日間保管し、その後圧縮せん断強度試験に供した。圧縮剪断強度は、DIN EN 392に従って、接着された50×40mmの剪断領域で、1mm/sの試験速度で測定された。
【0173】
さらなるこの種の試験片を標準気候条件下で28日間保管し、その後、水中で、室温で24時間保管し、同様に湿潤状態で上記の圧縮せん断強度試験に供した。
【0174】
実施例1は、標準気候条件下で28日間保管した後、3.9MPa(6つの試験片の平均)の圧縮せん断強度を示し、いずれの場合も接着剤に近いモルタル層に破砕があった。
【0175】
水中で24時間保管した後、木層はいずれの場合も明らかに膨潤した(体積が約30%増加)が、それ以外は、試験片は無傷であった。湿った試験片の圧縮せん断強度は2.0MPa(6つの試験片の平均)であり、いずれの場合も接着剤に近いモルタル層に破砕があった。
【0176】
実施例2:
複数の積層体を標準気候条件下で製造し、いずれの場合も、ブナ材で作製した1020×60×30mmの木材を、1020×60mmの領域が上を向き、厚さが30mmとなるように水平基板上に配置した。表面の粉塵をブラシで除去した。続いて、清浄な表面に混合接着剤S1を1.5kg/mで塗布し、試験片を型枠に固定して深さ30mmの鋳型を得た。
【0177】
接着剤の塗布から30分後、新たに作製したモルタル(SikaGrout(登録商標)-212N、Sika Schweiz AG製、乾燥モルタル25kgに対して水2.9lで作製)を層の厚さ30mmで鋳型に導入し、したがってS1で被覆された木材の表面上に導入した。
【0178】
試験片を標準気候条件下で48時間放置し、その後型枠型を取り外した。その結果、寸法1020×60×30mmのブナ材と寸法1020×60×30mmの硬化モルタルで構成される1020×60×60mmの積層体が得られ、接着剤S1によって木とモルタルが1020×60mmの面積にわたって強固に接着された。
【0179】
複数のこのような試験片を標準気候条件下で28日間保管し、スパン幅900mm、初期荷重5N、及び試験速度5mm/分でDIN 512186に従う3点曲げ試験を実施した。弾性率を測定するために、このような試験片を同一の試験に供し、ここで、試験速度は2mm/分、負荷範囲は100~3200Nであった。
【0180】
実施例2は、3点曲げ試験において、最大力1.2kN、最大変形14mm(4つの試験片の平均)を示し、いずれの場合も接着剤に近いモルタル層に破砕があった。(比較すると、同じ試験配置で寸法1020×60×60mmの被覆されていないブナ材の試験片は、最大力1.8kNを示し、最大変形は28mmであった。)
【0181】
実施例2は、3点曲げ試験において、14.8MPaの弾性率を示した(5つの試験片の平均)。(比較すると、同じ試験配置で寸法1020×60×60mmの被覆されていないブナ材の試験片は13.4MPaの弾性率を示した。)
【0182】
実施例3:
接着されたブナ材の角材(約2000×40×40mm)で作製された寸法5200×320×120mmの角棒集成木の梁を、5200×320mmの領域が上を向き、厚さが120mmであるように水平なベース上に配置することにより、標準気候条件下で複数の積層体を製造した。表面に深さ60mmの鋳型が形成されるように、型枠型を木製梁の周囲に取り付けた。
【0183】
続いて、木製梁の表面(=鋳型の底部)からブローにより粉塵を取り除いた後、1.5kg/mの混合接着剤S1を、スパチュラを用いて、流し込み、広げることにより、被覆した。
【0184】
次に、建築用鋼メッシュの形態の補強材を、接着剤で被覆された表面全体に配置し、メッシュは、コンクリートブロックの形態のスペーサーによって接着剤表面から25~35mmの高さで静止した。
【0185】
続いて、新たに作製した自己充填コンクリート(Sikacrete(登録商標)-16SCC、Sika Schweiz AG製、乾燥混合物25kgに対して水2.2lで作製)を鋳型に注入して、コンクリートを補強材に成形した。接着剤の混合からコンクリートの注入までの待ち時間は20~30分であった。
【0186】
このようにして製造された配置物をポリマーフィルムで覆い、標準気候条件下で48時間放置し、その後ポリマーフィルム及び型枠を取り外した。このようにして得られた積層体は、標準気候条件下でさらに26日間保管され、建築構造における屋根要素として使用可能な状態となった。寸法は5200×320×180mmであり、長さ、幅又は高さに歪みはなかった。特に、「キーイング」とも呼ばれるコンクリート層の収縮による収縮亀裂又は反りは見られず、硬化後にコンクリートが木表面から剥離することもなかった。
図1
【国際調査報告】