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特表2024-544218防食性を有する不凍剤濃縮物及びそれから製造される水性冷却剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】防食性を有する不凍剤濃縮物及びそれから製造される水性冷却剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/20 20060101AFI20241121BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20241121BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241121BHJP
   C23F 11/16 20060101ALI20241121BHJP
   C23F 11/18 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C09K5/20
C09K5/10 F
C09K3/00 102
C23F11/16
C23F11/18 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533955
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022083648
(87)【国際公開番号】W WO2023104588
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213282.3
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣末 雅之
(72)【発明者】
【氏名】マルコウスキー,イタマール ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ニッツシュケ,ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,ニーナ
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062AA08
4K062BB22
4K062CA05
4K062FA03
4K062FA05
4K062GA01
4K062GA08
(57)【要約】
本発明は、主成分としての凝固点降下液と、腐食防止剤としての特定の含硫黄有機化合物及びそれとは異なる更なる腐食防止剤とをベースとする新規な不凍剤濃縮物に関する。この不凍剤濃縮物は、例えば、内燃機関の冷却剤用及び熱伝導流体用として適している。更に本発明は、それから製造される水性冷却剤組成物にも関する。更に本発明は、その冷却装置が、フッ化アルミン酸塩フラックスを用いるはんだ付けによりアルミニウムから作製されている内燃機関を冷却するための、この水性冷却剤組成物の使用にも関する。更に本発明は、特定の含硫黄有機化合物の、このような不凍剤濃縮物及び水性冷却剤組成物全般における腐食防止剤としての使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食性を有する不凍剤濃縮物であって、
(A)主成分としての、一価、二価及び三価アルコール、多価アルコール、これらのエーテル並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の凝固点降下液と;
(B)腐食防止剤としての少なくとも1種の一般式I:
【化1】
(式中、可変要素R1は、水素又は式-(C2m)-COOXのカルボキシアルキル基(式中、mは1~4であり、Xは水素、アルカリ金属陽イオン、アンモニウム陽イオン又は置換アンモニウム陽イオンである)であり、可変要素R2及びR3は、それぞれ互いに独立に、水素又はC~C-アルキル基であり、R2及びR3は、これらが結合しているチアゾール環の2個の環炭素原子と一緒になって5又は6員の飽和又は不飽和環を形成していてもよい)の2-チオチアゾールと;
(C)更なる腐食防止剤としての少なくとも1種の無機硝酸塩と;
(D)更なる腐食防止剤としての少なくとも1種の無機リン酸塩と;
(E)そのアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩の形態にあり、酸部分に3~21個の炭素原子を有する、少なくとも1種の脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と;
を含み、
ただし、密度が5g/cm以上である金属形態又は陽イオン形態にある金属は、前記組成物中に、各金属毎に、200重量ppm以下、好ましくは150重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm以下、とりわけ80重量ppm以下の量で存在し、
成分(B)は、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸又はこれらのアルカリ金属、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩である、不凍剤濃縮物。
【請求項2】
成分(A)は、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール又はモノエチレングリコール若しくはモノプロピレングリコールと35重量%以下のグリセロールとの混合物からなる群から選択され、好ましくはモノエチレングリコールである、請求項1に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項3】
成分(C)は、硝酸(HNO)のアルカリ(土類)金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩、好ましくは、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウムからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項4】
成分(E)は、好ましくは、プロピオン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸及びドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項5】
成分(E)は、好ましくは、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項6】
前記金属は、銅、スズ、カドミウム、水銀、鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、セレン、銀、アンチモン、モリブデン及びタリウムからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項7】
不凍剤濃縮物であって:
凝固点降下液(A)を75~99.5重量%と、
腐食防止剤(B)~(E)(合計)を0.5~25重量%と、
(B)~(E)とは異なる更なる腐食防止剤を0~10重量%と、
水を0~10重量%と、
を含み、
ただし、その合計は常に100%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物を10~90重量%と残部である水とを含む、水性冷却剤組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の水性冷却剤組成物の製造方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の不凍剤濃縮物を水で希釈する方法。
【請求項10】
移動式又は定置式用途において、とりわけ乗用車において、内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、請求項8に記載の水性冷却剤組成物の使用。
【請求項11】
その冷却装置がフッ化アルミン酸塩フラックスを使用するはんだ付けプロセスを用いて主にアルミニウムから又はアルミニウムのみから作製されている内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、請求項8に記載の水性冷却剤組成物の使用。
【請求項12】
内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを運転するための方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却剤を使用する、方法。
【請求項13】
主にアルミニウム若しくはアルミニウム合金から又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金のみから作製されている冷却装置又は冷却回路を備える内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを運転するための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の運転のための方法であって、前記作製された冷却装置又は冷却回路は、フッ化アルミン酸カリウムを含有するフラックスを用いるはんだ付けプロセスから得られる、方法。
【請求項15】
内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスの冷却方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却剤を使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分としての凝固点降下液と、腐食防止剤としての特定の含硫黄有機化合物及びそれとは異なる更なる腐食防止剤とをベースとする新規な不凍剤濃縮物に関する。この不凍剤濃縮物は、例えば、内燃機関や電動車の冷却剤用及び熱伝導流体用として適している。更に本発明は、それから製造される水性冷却剤組成物にも関する。更に本発明は、その冷却装置が、フッ化アルミン酸塩フラックスを用いるはんだ付けによりアルミニウムから作製されている、内燃機関、電動機(electric engine)、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、この水性冷却剤組成物の使用にも関する。更に本発明は、特定の含硫黄有機化合物の、このような不凍剤濃縮物及び水性冷却剤組成物全般における腐食防止剤としての使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内燃機関、電動機、バッテリー及びパワーエレクトロニクスの冷却装置(通常、冷却回路として構成される)に使用される冷却剤組成物は、通常、冷却剤組成物の凝固点を低下させる凍結防止成分として、モノエチレングリコール又はモノプロピレングリコールなどのアルキレングリコールを、任意選択的にグリセロールとの混合物として含んでいる。これは、更なる成分、例えば、消泡剤、染料又は苦味物質に加えて、特に腐食防止剤も含有している。
【0003】
とりわけ最近の内燃機関では、その到達温度のために、使用される材料に厳しい要求が課される。腐食は、いかなる種類及びいかなる程度であっても、エンジンの寿命の短縮及び信頼性の低下を招き得る潜在的な危険因子である。更に、最近のエンジン及び電動車の部品には、複数の異なる材料、例えば、鋳鉄、銅、黄銅、軟質はんだ、鋼鉄に加えて、アルミニウム、アルミニウム合金及びマグネシウム合金も使用されることが増えてきている。この複数の金属材料を使用した結果として、特に異なる金属が互いに接触する位置で腐食が発生し得るという問題も追加される。このような位置では特に、孔あき腐食、隙間腐食、エロージョン、キャビテーションなどの様々な種類の腐食が比較的容易に発生し得る。冷却剤組成物も、冷却装置の非金属構成要素、例えば、ホース継手又はシール材のエラストマー及びプラスチックと適合性を有していなくてはならず、且つこれらを変化させてはならない。更に、冷却剤組成物の種類は最近の内燃機関の熱伝達に非常に重要である。
【0004】
これまでしばらくの間、輸送機関及び自動車の構造のみならず定置機関にも通常使用されている内燃機関用の冷却装置又は冷却回路は、主にアルミニウム若しくはアルミニウム合金から製造されるか又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金のみから製造されてきた。これは電動車についても同様である。その際は、例えば保護ガス雰囲気下でのはんだ付けなど、特定のはんだ付けプロセスが用いられる。このようなはんだ付けプロセスにはフラックスを併用することが必須である。その際は、通常、四フッ化アルミン酸カリウム、例えばKAlF、KAlF及びKAlFの混合物(例えばNocolok(登録商標)の名称で市販)がフラックスとして使用される。その一般式はKAlであり、ただし、(x+(3×y))=zであり、x、y及びzは自然数、yは1又は2、好ましくは1、xは1~6、好ましくは1、2又は3、zは4~12、好ましくは4、5又は6である。
【0005】
前述のフラックスの一部は、はんだ付け作業後に冷却装置表面に残留する。冷却装置内に残留したこれらのフラックスは、水性冷却剤組成物を導入してエンジンを作動させると、水及び水性冷却剤組成物の構成成分が互いに平衡にある状態で化学反応が連鎖することによって、ある程度の速さで水酸化アルミニウムゲルが析出し、それにより冷却回路内にスラッジが形成される。それにより、エンジンの熱を除去する効果が大幅に制限され、結果として、加熱系の熱交換、給気の冷却及びギアボックスオイルの冷却の機能も制限される。更に、水酸化アルミニウムゲルが存在すると、腐食防止剤が水酸化アルミニウムゲルに吸着され、その結果として腐食防止作用が著しく低下するため、冷却剤の防食性に悪影響が及ぼされる。
【0006】
国際公開第2009/111443A2号パンフレットには、フッ化アルミン酸カリウムフラックスを使用してはんだ付けされたアルミニウム部品を含む熱交換装置に使用することができる、アルコールをベースとする熱伝導流体が開示されている。この熱伝導流体には、例えば、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、リン酸塩、アンチモン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、アゾール又はカルボン酸塩といった、無機又は有機の性質を有する、可能性のある一連の個々の腐食防止剤が全て推奨されている。使用可能な含硫黄アゾールとして2-メルカプトベンゾチアゾール(MTB)が述べられている。その表1には、ベースとなる冷却剤濃縮物として、モノエチレングリコールを主成分とし、エチレングリコールを>94重量%、トリルトリアゾールを0.1~0.3重量%、硝酸塩を0.2~0.5重量%、モリブデン酸塩を0.04~0.1重量%、ホウ砂を0.1~2.0重量%、リン酸を0.1~0.5重量%、MBTを<0.3重量%、ケイ酸塩を0.1~0.5重量%及びNaOH/KOHを0.4~2.0重量%含む配合物(I)が示されいる。このMBTは、MBTに関する説明がないため断定できないが、メルカプトベンゾチアゾールであり得る。
【0007】
上述のフラックスを使用してはんだ付けされたアルミニウム冷却装置に使用する際に求められるフラックス耐性に関するより厳しい要件に実際に適合する、内燃機関、電動機、バッテリー及びパワーエレクトロニクスに用いるのに十分な、防食性を有する冷却剤組成物は、国際公開第2014/124826号パンフレット(以下参照)を除いて、現時点では未だ見出されていない。したがって本発明の目的は、そこから水性冷却剤組成物を得ることが可能な防食性を有する不凍剤濃縮物であって、はんだ付けされたアルミニウムラジエーター内のフッ化アルミン酸塩フラックス残留物に対する耐性が高い、すなわち、冷却回路内で水酸化アルミニウムゲルの析出物を形成し、スラッジを形成する傾向をもはや示さないか又はその傾向が大幅に低減されており、したがって、より効率的な防食を可能にする、不凍剤濃縮物を提供することにあった。
【0008】
国際公開第2014/124826号パンフレットには、構成成分として、凝固点降下剤であるアルコール、(2-ベンゾチアジルチオ)-カルボン酸、リン酸塩、有機カルボン酸及びモリブデン酸塩を含む冷却剤が開示されている。
【0009】
国際公開第2014/124826号パンフレットによる冷却剤の防食活性は良好であるが、この冷却剤は、重金属が存在する組成物の廃棄が困難になるという理由から最近の冷却剤には推奨されていない(discourage)モリブデン酸塩を含むことが必須である。重金属を含有する冷却剤は個別に回収することが必要であり、モリブデン酸塩が存在すると、特別廃棄物として取り扱わなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、国際公開第2014/124826号パンフレットによる冷却剤と同等であるか又はそれを上回る防食性能及びフラックス耐性を示す、重金属を含まない冷却剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明者らは、防食性を有する不凍剤濃縮物であって、
(A)主成分としての、一価、二価及び三価アルコール、多価アルコール、これらのエーテル並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の凝固点降下液と;
(B)腐食防止剤としての少なくとも1種の一般式I:
【化1】
(式中、可変要素R1は、水素であるか又は好ましくは式-(C2m)-COOXのカルボキシアルキル基(式中、mは1~4であり、Xは水素、アルカリ金属陽イオン、アンモニウム陽イオン又は置換アンモニウム陽イオンである)であり、可変要素R2及びR3は、それぞれ互いに独立に、水素又はC~C-アルキル基であり、R2及びR3は、これらが結合しているチアゾール環の2個の環炭素原子と一緒になって5又は6員の飽和又は不飽和環を形成していてもよい)の2-チオチアゾールと;
(C)更なる腐食防止剤としての少なくとも1種の無機硝酸塩と;
(D)更なる腐食防止剤としての少なくとも1種の無機リン酸塩と;
(E)そのアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩の形態にあり、酸部分に3~21個の炭素原子を有する、少なくとも1種の脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と;
を含み、
ただし、密度が5g/cm以上である金属又は陽イオン形態にある金属は、組成物中に、各金属毎に200重量ppm以下の量で存在し、
成分(B)は、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸又はこれらのアルカリ金属、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩である、不凍剤濃縮物を見出した。
【0012】
本発明による不凍剤濃縮物は、これらの濃縮物から調製される冷却剤であり、国際公開第2014/124826号パンフレットによる組成物と少なくとも同等の防食活性を示すことに加えて、例えば酸素含有気体による酸化に対する安定性がより高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の不凍剤濃縮物の主成分であり、したがって、概して濃縮物の50重量%超を構成する凍結防止成分(A)は、それを用いて製造された冷却剤組成物を有する内燃機関が0℃を大幅に下回る環境で始動した場合もエンジンを確実に問題なく始動させ、その後、エンジンの運転中に良好な流動挙動を示し、良好な除熱を行う。成分(A)に好適な一価、二価又は三価アルコール、多価アルコール及びこれらのエーテルは、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びsec-ブタノール、フルフロール(furfurol)、テトラヒドロフルフリルアルコール、エトキシ化フルフリルアルコール、メトキシエタノールなどのアルコキシアルカノール、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルチトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールに加えてグリコールのモノエーテル、例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルエーテルであり、これらの中では、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールのn-ブチルエーテルが好ましい。言うまでもなく、ここに述べたアルコール、多価アルコール及びエーテルの混合物を使用することも可能である。本発明に関するプロピレングリコールという用語は、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールの両方を包含する。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明による防食性を有する不凍剤濃縮物は、凝固点降下液(A)として、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール又はモノエチレングリコール若しくはモノプロピレングリコールと各場合において凝固点降下液の総量を基準として35重量%以下のグリセロールとの混合物を含む。特に非常に好ましくは、モノエチレングリコールが、他のアルコール又はエーテルを追加せずに使用される。
【0015】
特に好ましい実施形態において、本発明の防食性を有する不凍剤濃縮物は、腐食防止剤(B1)又は(B2)として少なくとも1種の一般式I:
【化2】
(式中、可変要素R1は、水素であるか又は好ましくは式-(C2m)-COOXのカルボキシアルキル基(式中、mは1~4であり、Xは水素、アルカリ金属陽イオン、アンモニウム陽イオン又は置換アンモニウム陽イオンである)であり、可変要素R2及びR3は、それぞれ互いに独立に、水素又はC~C-アルキル基であり、R2及びR3は、これらが結合しているチアゾール環の2個の環炭素原子と一緒になって5又は6員の飽和又は不飽和環を形成していてもよい)の2-チオチアゾールを含む。
【0016】
可変要素R1中のC~C-アルキレン基は、1,2-プロピレン、1,2-ブチレン若しくは2,3-ブチレンなどの分岐基又は直鎖ポリメチレン基とすることができる。R1は、好ましくは、式-(CH-COOX(式中、mは1、2、3又は4、好ましくは2又は3である)の基である。好ましくは、-(C2m)-は、1,2-エチレン又は1,3-プロピレンである。
【0017】
可変要素R2及びR3の一方又は両方がC~C-アルキル基である場合、このアルキル基は、通常、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択される。特に、R2及びR3は、両方が水素であるか、又はこれらの可変要素の一方が水素であり、もう一方がメチル若しくはエチルであるか、又は2つの可変要素R2及びR3が、これらが結合しているチアゾール環の2個の環炭素原子と一緒になってベンゼン環(ベンゾ縮合環系)を形成している。
【0018】
可変要素Xがアルカリ金属陽イオンである場合、これは例えば、リチウムであるか又は好ましくはナトリウム若しくはカリウムである。可変要素Xが無置換アンモニウム陽イオンである場合、これはアンモニア(NH)から誘導されたものである。可変要素Xが置換アンモニウム陽イオンである場合、これは例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン若しくはトリエチルアミンなどの、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン若しくはトリアルキルアミンから、又はトリエタノールアミン若しくはトリイソプロパノールアミンなどのトリアルカノールアミンから誘導されたものである。
【0019】
本発明によれば、腐食防止剤(B)は、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸又はこれらのアルカリ金属、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩である。ここに述べた2種の腐食防止剤は、Sanbit(登録商標)ABT及びDanbit(登録商標)PBTの名称で市販されている(製造業者:Sanshin Chemical Industry)。
【0020】
腐食防止剤(C)としては、通常、硝酸(HNO)のアルカリ(土類)金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩が使用される。アルカリ金属硝酸塩及びアルカリ土類金属硝酸塩が好ましく、アルカリ金属硝酸塩がより好ましい。硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム、とりわけ、硝酸ナトリウムが非常に好ましい。
【0021】
腐食防止剤(D)としては、通常、オルトリン酸HPOのアルカリ金属、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩又は酸そのものが使用され、アルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩は上記と同義である。しかしながら、成分(D)は、通常、pHが4~11、特に7~11である本発明の濃縮物中では、通常、全てが又は主として塩形態で存在することになる。遊離オルトリン酸が使用される場合、これは通常、水酸化ナトリウム若しくはカリウム、アンモニア又は適切なアミンを用いて所望の塩に変換される。更なる好適な成分(D)は、二リン酸の、メタリン酸の、ピロリン酸の、及び/若しくはポリリン酸の、アルカリ金属、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩又は酸そのものであり、アルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩は上記と同義である。ここに述べた塩及び/又は酸の混合物を使用することも可能である。この種のリン酸塩(D)の典型的な代表は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、二リン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及び類似のカリウム塩である。
【0022】
可能な腐食防止剤(E)は、特に、以下に示すカルボン酸の群からの個々の代表又はそのような代表の混合物である:
(E1)各場合において3~16個の炭素原子を有する、そのアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩の形態にある、脂肪族、脂環式又は芳香族、好ましくは脂肪族又は芳香族、非常に好ましくは脂肪族モノカルボン酸;
(E2)各場合において3~21個の炭素原子を有する、そのアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩の形態にある、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸。
【0023】
(E1)群の可能な直鎖若しくは分岐脂肪族又は脂環式、好ましくは脂肪族モノカルボン酸は、例えば、プロピオン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロヘキシル酢酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸又はドデカン酸である。(E1)群の好適な芳香族モノカルボン酸は、特に、安息香酸に加えて、例えば、C~C-アルキル安息香酸、例えば、o-、m-若しくはp-メチル安息香酸若しくはp-tert-ブチル安息香酸、ヒドロキシル含有芳香族モノカルボン酸、例えば、o-、m-若しくはp-ヒドロキシ安息香酸若しくはp-(ヒドロキシメチル)安息香酸又はハロ安息香酸、例えば、o-、m-若しくはp-フルオロ安息香酸である。
【0024】
本明細書において使用するイソノナン酸とは、9個の炭素原子を有する1種以上の分岐鎖脂肪族カルボン酸を指す。エンジン冷却剤組成物に使用されるイソノナン酸の実施形態としては、7-メチルオクタン酸(例えば、CAS番号693-19-6及び26896-18-4)、6,6-ジメチルヘプタン酸(例えば、CAS番号15898-92-7)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(例えば、CAS番号3302-10-1)、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸(例えば、CAS番号3302-12-3)及びこれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、イソノナン酸は、その主要成分として、7-メチルオクタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸及び2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸のうちの1種を90%を超えて含む。イソノナン酸の残りは、炭素数9の他のカルボン酸異性体及び少量の1種以上の夾雑物を含み得る。好ましい実施形態では、イソノナン酸は、90%を超える主要成分として、3,5,5-トリメチルヘキサン酸を有し、更に好ましくは、主要成分は、95%を超える3,5,5-トリメチルヘキサン酸である。
【0025】
(E2)群のジカルボン酸又はトリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸、より好ましくは脂肪族ジカルボン酸の典型例は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロペンタジエンジカルボン酸、テレフタル酸、フタル酸及びトリアジントリイミノカルボン酸、例えば、6,6’,6”-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリイミノ)トリヘキサン酸である。これらの中でも脂肪族のものが特に好ましい。
【0026】
上述のカルボン酸(E)は、本発明の不凍剤濃縮物の製造において遊離酸として添加された場合であってさえも、濃縮物のpHは、通常4~11、特に7~11、より好ましくは7~10、更に好ましくは7.5~9.5であるため、通常は全部が又は主に、上に定義したアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウム塩として存在する。遊離カルボン酸として使用される成分(E)は、通常、水酸化ナトリウム若しくはカリウム、アンモニア又は適切なアミンを用いて、好ましくは水酸化ナトリウム又はカリウムを用いて、所望の塩に変換される。
【0027】
一実施形態においては、本発明による冷却剤中に、少なくとも1種の脂肪族モノ-又はジカルボン酸、より好ましくは少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸が存在する。
【0028】
凝固点降下液(A)中における腐食防止剤(B)~(E)の相互作用は、冒頭に述べた目的を達成するために重要である。これに加えて、本発明の防食性を有する不凍剤濃縮物は、更なる腐食防止剤及び/又は他の添加剤成分を、各場合において単独で又は混合物で、この目的に慣用されている量で含むことができる。
【0029】
更なる可能な腐食防止剤(F)~(K)は:
(F)無機塩としての、アルカリ金属ホウ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属フッ化物;
(G)2~15個の炭素原子を有し、更にエーテル酸素原子又はヒドロキシル基を含んでいてもよい、脂肪族、脂環式又は芳香族アミン;
(H)ベンゾ縮合していてもよく、及び/又は追加の官能基を有していてもよい、4~10個の炭素原子を有する単環式又は二環式の不飽和又は部分不飽和複素環;
(J)テトラ(C~C-アルコキシ)シラン(テトラ-C~C-アルキルオルトケイ酸エステル);
(K)カルボキサミド又はスルホンアミド
である。
【0030】
ここに述べた腐食防止剤(B)~(K)に加えて、例えば、マグネシウムと有機酸との可溶性塩、例えば、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、メタンスルホン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム若しくはプロピオン酸マグネシウム、ヒドロカルバゾール又は独国特許出願公開第19605509A号明細書に記載されている四級化されたイミダゾールを、更なる腐食防止剤として慣用量で使用することも可能である。
【0031】
無機塩(F)の典型例は、テトラホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、メタケイ酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化マグネシウムである。アルカリ金属ケイ酸塩及びアルカリ金属メタケイ酸塩を併用する場合、これらは、有利には、慣用量の慣用されている有機シリコホスホン酸塩(organosilicophosphonate)又は有機シリコスルホン酸塩(organosilicosulfonate)で安定化されている。
【0032】
アミン(G)は、好ましくは2~9個、特に4~8個の炭素原子を有する。アミン(G)は、好ましくは第三級アミンである。アミン(G)は、好ましくは、0~3個のエーテル酸素原子又は0~3個のヒドロキシル基を含む。アミン(G)の典型例は、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、イソノニルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン、ピペリジン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、アニリン並びにベンジルアミンである。脂肪族及び脂環式アミン(G)は、概して飽和である。
【0033】
複素環(H)は、特に、1、2又は3個の窒素原子を有し、ベンゾ縮合していてもよい、単環式5又は6員系である。しかしながら、典型的には合計2、3又は4個の窒素原子を有する5及び/又は6員の複素環である部分環を有する二環系を使用することも可能である。複素環(H)は、更に、C~C-アルコキシ、任意選択的に置換されたアミノ又はメルカプトなどの官能基を有することもできる。この複素環骨格は、言うまでもなく、アルキル基、特にC~C-アルキル基も有していてもよい。複素環(H)の典型例は、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール(トリルトリアゾール)、水素化トルトリアゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、アデニン、プリン、6-メトキシプリン、インドール、イソインドール、イソインドリン、ピリジン、ピリミジン、3,4-ジアミノピリジン、2-アミノピリミジン及び2-メルカプトピリミジンである。
【0034】
可能なシラン(J)は、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン又はテトラ-n-ブトキシシランである。
本明細書において使用することができる芳香族、複素芳香族、脂肪族及び脂環式(環の一部としてアミド基を有する)カルボキサミド並びに本明細書において使用することができる脂肪族及び芳香族スルホンアミド(K)の典型例は、独国特許出願公開第10036031A号明細書に記載されている。当該明細書に述べられている全てのアミドの代表例として、本明細書においては、以下に示すもののみを挙げることとする:アジパミド、ベンズアミド、アントラニルアミド、3-及び4-アミノベンズアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ピコリンアミド、ニコチンアミド、ベンゼンスルホンアミド、o-及びp-トルエンスルホンアミド並びに2-アミノベンゼンスルホンアミド。
【0035】
他の添加剤成分(L)~(O)は、以下:
(L)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸-マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン-ビニルイミダゾールコポリマー及び/又は不飽和カルボン酸とオレフィンとのコポリマーをベースとする硬水安定剤;本明細書において好適な市販の硬水安定剤はSokalan(登録商標)CP 42である;
(M)消泡剤;
(N)染料;
(O)口に入れた場合の衛生及び安全性のための苦味物質、例えば、安息香酸デナトニウム型の苦味物質
に示すものとすることができる。
【0036】
冷却剤には、基本的に重金属又はその陽イオンを意図的に添加しないことは本発明の特徴である。本発明に関する「重金属」は、密度が5g/cm以上の金属と定義される。環境及び/又は毒性上の理由から、特に以下に示す重金属は基本的に存在しない:銅、スズ、カドミウム、水銀、鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、セレン、銀、アンチモン、モリブデン及びタリウム。
【0037】
明確化のために述べると、本明細書において使用される「重金属」という語は、金属形態及び陽イオン形態の両方を包含する。
【0038】
上に述べた構成成分(A)~(O)は、その製造プロセスに起因して微量の重金属を含む可能性があるので、本発明による冷却剤の重金属の含有量の閾値を、各重金属毎に200重量ppmとすることが可能であり、好ましくは、冷却剤は、各重金属を150重量ppmを超えて、より好ましくは100重量ppmを超えて、特に80重量ppmを超えて含まない。好ましい実施形態において、冷却剤の重金属の含有量は、各重金属種毎に、50重量ppm以下、好ましくは25重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下、更に好ましくは5重量ppmである。
【0039】
特に重金属としての銅又はマンガンに関しては、本発明による冷却剤中の含有量の閾値は、各化学種毎に、好ましくは50重量ppm以下、より好ましくは25ppm以下,更に好ましくは10ppm以下、特に5ppm以下である。
【0040】
本発明によれば、重金属、特に上に述べた重金属が存在しないため、本発明による冷却剤を用いる冷却器系の運転中に生成する分解又は酸化生成物がより少なくなることが更に確認された。国際公開第2014/124826号パンフレットによる類似の冷却器と比較して、形成されるグリコール酸、シュウ酸及び/又はギ酸が少ないことが判明した。したがって、本発明の他の事項は、本発明による冷却剤を使用して、分解又は酸化生成物がより少なくなるように、内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを運転するための方法にある。本発明の他の事項は、本発明による冷却剤を使用して、内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを冷却するための方法にある。
【0041】
本発明の不凍剤濃縮物中の凝固点降下液(A)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも85重量%、とりわけ少なくとも90重量%である。
【0042】
本発明の不凍剤濃縮物中の腐食防止剤(B)~(K)の総量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、1~70重量%、好ましくは2~35重量%、特に2.5~15重量%、とりわけ3~10重量%である。
【0043】
本発明の不凍剤濃縮物中の式(I)による化合物の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0.01~5重量%、好ましくは0.03~3重量%、とりわけ0.07~1重量%である。
【0044】
本発明の不凍剤濃縮物中の無機硝酸塩(C)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0.001~2重量%、特に0.003~1重量%、とりわけ0.007~0.5重量%である。
【0045】
本発明の不凍剤濃縮物中の無機リン酸塩(D)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0.1~8重量%、特に0.1~5重量%、とりわけ0.1~3重量%である。
【0046】
本発明の不凍剤濃縮物中の脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸(E)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0.1~10重量%、特に0.5~8重量%、とりわけ1~5重量%である。
【0047】
本発明の不凍剤濃縮物中の無機ホウ酸塩、ケイ酸塩及び/又はフッ化物塩(F)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~2重量%、特に0.01~2重量%、とりわけ0.1~1重量%である。
【0048】
本発明の不凍剤濃縮物中の脂肪族、脂環式及び/又は芳香族アミン(G)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~5重量%、特に0.01~5重量%、とりわけ0.1~3重量%である。
【0049】
本発明の不凍剤濃縮物中の単環式又は二環式複素環(H)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~5重量%、特に0.01~5重量%、とりわけ0.05~2重量%である。
【0050】
本発明の不凍剤濃縮物中のテトラ(C~C-アルコキシ)シラン(J)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~5重量%、特に0.01~5重量%、とりわけ0.1~2重量%である。
【0051】
本発明の不凍剤濃縮物中のカルボキサミド及び/又はスルホンアミド(K)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~10重量%、特に0.01~10重量%、とりわけ0.1~5重量%である。
【0052】
本発明の不凍剤濃縮物中の硬水安定剤(L)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~1重量%、特に0.01~1重量%、とりわけ0.05~0.5重量%である。
【0053】
本発明の不凍剤濃縮物中の消泡剤(M)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~0.5重量%、特に0.0005~0.05重量%、とりわけ0.001~0.02重量%である。
【0054】
本発明の不凍剤濃縮物中の染料(N)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~0.05重量%、特に0.001~0.05重量%である。
【0055】
本発明の不凍剤濃縮物中の苦味物質(O)の量は、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~0.05重量%、特に0.001~0.05重量%である。
【0056】
本発明の不凍剤濃縮物は、更に少量の水を、各場合において、濃縮物の総量を基準として、通常、0~10重量%、特に0~5重量%を含むことができる。
【0057】
本発明の不凍剤濃縮物に含まれる全ての成分(水を含む)の総量は、全ての場合において100.0重量%である。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明の不凍剤濃縮物は、凝固点降下液(A)を75~99.5重量%と、腐食防止剤(B)~(E)を全体で(合計)0.5~25重量%と、(B)~(E)とは異なり、通常は上述の(F)~(K)群から選択される更なる腐食防止剤を0~10重量%と、更に水を0~10重量%とを含む。
【0059】
本発明の不凍剤濃縮物は、個々の成分を単純に混合することにより製造することができる。しかしながら、本発明の不凍剤濃縮物はまた、より高い濃度の活性成分(B)~(O)が、凍結防止成分として機能する凝固点降下液(A)及び任意選択的な若干の水と共に存在する適切な超濃縮物(superconcentrate)を希釈することにより製造することもできる。濃縮物中の超濃縮物の比率は、概して3~60重量%である。超濃縮物は、通常、輸送目的で、通常の濃度を有する濃縮物から、他の構成成分が依然として丁度溶解した形態で存在するような量の凍結防止成分を抜いた形で製造される。
【0060】
本発明はまた、本発明の不凍剤濃縮物を10~90重量%、特に20~60重量%含む水性冷却剤組成物も提供する。本発明の水性冷却剤組成物は、通常、本発明の不凍剤濃縮物を適量の水で希釈することにより製造される。
【0061】
したがって、本発明による水性冷却剤組成物を得るための上に記載した成分(A)~(O)の濃縮物の含有量は、水による希釈を考慮することによって容易に算出することができる。
【0062】
更に本特許出願は、その冷却装置がフッ化アルミン酸塩フラックスを使用するはんだ付けプロセスを用いて主にアルミニウムから又はアルミニウムのみから作製されている内燃機関、電動機、バッテリー又はパワーエレクトロニクスを冷却するための、上に述べた本発明の水性冷却剤組成物の使用を提供する。それにより、このような冷却装置の冷却回路内で水酸化アルミニウムゲルが析出してスラッジを形成するという冒頭に示した問題が非常に有利な形で解決される。したがって、本発明の水性冷却剤組成物は、フッ化アルミン酸塩フラックス残留物に対する耐性が著しく高く、その結果として、より効果的な防食を提供する。本発明による冷却剤は、とりわけ、乗用車の防食に関する、好ましくは鉄、鉄合金、銅、黄銅、アルミニウムの腐食、とりわけアルミニウム、鋼鉄及び銅の腐食に対する要件を満たす。
【0063】
概して、上に述べた一連の含硫黄有機化合物(B)はまた、フッ化アルミン酸塩フラックスを使用してはんだ付けされたアルミニウムラジエーターを含まない冷却装置及び伝熱回路においてさえも、不凍剤濃縮物の極めて有効な腐食防止剤として適している。したがって、本発明はまた、主要成分としての一価、二価及び三価アルコール、多価アルコール、これらのエーテル並びにこれらの混合物から選択される凝固点降下液をベースとする不凍剤濃縮物及びそれから製造される水性冷却剤組成物中における、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸、(チオベンゾイルチオ)酢酸並びにこれらのアルカリ金属、アンモニウム及び置換アンモニウム塩の腐食防止剤としての使用も提供する。
【0064】
本発明による冷却剤は、あらゆる種類の移動式又は定置式用途の内燃機関、電動機、バッテリー及びパワーエレクトロニクスの冷却に適しているため、これらは好ましくはあらゆる種類の車両、より好ましくは乗用車に使用される。
【0065】
以下の実施例は、本発明を限定することなく更に例示するものである。
【実施例
【0066】
【表1】
【0067】
冷却剤の酸化安定性に与えるモリブデンの影響(ランシマット(Ranzimat)試験)
表1に従う冷却剤組成物1及び2並びにモリブデンを含まない組成物1を20gをランシマット(Ranzimat)装置に装入した。組成物中に空気(10l/h)を130℃で24時間送入した(DIN EN 15751:2014-06)。
【0068】
試験前後の組成物を、ガスクロマトグラフィーにより、酸化生成物であるギ酸、酢酸及びグリコール酸を分析し、pH値及び予備アルカリ度(mL HCl 0.1mol/L)を求めた:
【0069】
【表2】
【0070】
組成物1中にモリブデンが存在すると、空気の存在下におけるモリブデンの酸化能を示すカルボン酸の量が増加することが容易に分かる。
【0071】
モリブデンを含まない組成物1及び組成物2では、モリブデンが存在しないことにより、生成するカルボン酸が大幅に減少する。
【0072】
ASTM D4340による腐食試験
表1に従う組成物を2回蒸留水で50体積%に希釈し、任意選択的にフラックスKlFを500ppm添加した。
ASTM D4340に従う腐食試験(標準試験片GAlSi6Cu4、腐食速度をmg/cm単位で示す)を実施し、試験前後のpH値及び予備アルカリ度(mL HCl 0.1mol/L)を求めた。
【0073】
【表3】
【0074】
本発明による組成物2は、腐食防止剤としてのモリブデンが存在しないにも拘らず、国際公開第2014/124826A1号パンフレットによる組成物3と腐食速度が同程度であり、フラックスの存在下においても良好な耐性を示すことが容易に分かる。
【0075】
組成物2のpH値の変化は、組成物3よりも更に小さかったが、予備アルカリ度は同等であった。
【国際調査報告】