(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】イオントラップ及びイオントラップ中のイオンを検出する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/02 20060101AFI20241121BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20241121BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01J49/02 700
H01J49/42 400
H01J49/00 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534358
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2022061650
(87)【国際公開番号】W WO2023105360
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】サロヴィッチ ニコライ ウィリアム
(57)【要約】
イオントラップ中のイオンを検出するための方法及びイオントラップである。本方法は、イオントラップにイオン化イオンを供給するステップと;イオントラップの第1の電極にRF貯蔵信号を印加してRF貯蔵場を形成するステップであって、RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFが変更される、ステップと;イオントラップ中のイオンに励起信号を印加するステップと;励起信号によって励起されたイオンの振動によって第2の電極に、第3の電極に、又は第2の電極と第3の電極の間で差動的に、誘導されたイメージ電流信号を検出するステップと;検出されたイメージ電流信号にFFTを適用して、変更された信号を正しく復元しながらイオン振動を検出するステップと;を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップ中でイオンを検出する方法であって、
a.前記イオントラップにイオン化イオンを供給するステップと、
b.前記イオントラップの第1の電極にRF貯蔵信号を印加してRF貯蔵場を形成するステップであって、前記RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFが変更される、ステップと、
c.前記イオントラップ中のイオンに励起信号を印加するステップと、
d.励起信号によって励起されたイオンの振動によって、第2の電極に、第3の電極に、又は前記第2の電極と前記第3の電極の間で差動的に、誘導されたイメージ電流信号を検出するステップと、
e.前記検出されたイメージ電流信号にFFTを適用してイオン振動を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記RF貯蔵信号は、周波数ω
mで周期的に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変調周波数は、前記第2の電極及び/又は前記第3の電極に接続された電荷増幅器/検出器の通過帯域下限よりも低い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サイドバンドのない前記検出されたイメージ電流のFFTスペクトルにおけるピークは、無視される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記検出されたイメージ電流信号の前記FFTスペクトルにおけるピークを識別するステップと、
前記ピークの各々の瞬時周波数(IF)を決定するステップと、
前記ピークの各々のIFにIQ復調スキームを適用するステップと、
前記IQ復調スキームの結果によって前記ピークの高さを重み付けするステップと、
をさらに含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記FFTは、非定常基準フレームで適用される、請求項2から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記FFTを適用する前に、前記検出されたイメージ電流は、好ましくはexp(-iω
m・t)として、印加された変調信号の複素共役で乗算される、請求項2から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記FFTは、変調周波数ω
mで回転する回転基準フレームにおいてFFTを適用するパラメトリックフーリエ変換(PFT)である、請求項2から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記RF貯蔵信号の変調は、周期的に変調され、詳細にはチョッピングされる、請求項2から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記FFTは、分数次FFT(FRFT)であり、パラメータαは、前記RF貯蔵信号の線形変化に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
イオンを捕捉及び検出するためのイオントラップであって、
トラッピング容積を画定する第1の電極、第2の電極、及び第3の電極と、
前記第1の電極に接続され、RF貯蔵場を生成するように構成されたRF貯蔵信号供給部であって、前記RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFは変更される、RF貯蔵信号供給部と、
前記第1の電極に接続され、励起信号を生成するように構成されたRF励起信号供給部と、
前記第2の電極及び/又は前記第3の電極に接続され、前記励起信号によって励起されたイオンの振動によって誘導されたイメージ電流を検出するように構成された検出器と、
を備えるイオントラップ。
【請求項12】
前記第1の電極はリング電極であり、前記第2の電極及び前記第3の電極はキャップ電極である、請求項11に記載のイオントラップ。
【請求項13】
評価ユニットが前記検出器に接続されており、前記評価ユニットは、請求項1から9のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成されている、請求項11又は12に記載のイオントラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントラップ及びイオントラップ中のイオンを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
四重極イオントラップなどのFFT質量分析計では、イオンを捕捉することができ、捕捉されたイオンの振動によりトラップの電極に誘導されるイオンイメージ電流を介してイオンの存在を検出することができる。イオンイメージ電流の非破壊検出は、質量分析の強力で堅牢な方法オプションである。しかし、破壊的な方法と比較すると、イメージ電流技術は、外部環境との不可避的な結合経路に起因するスプリアス電気信号である「ゴーストピーク」の存在に悩まされる。このような結合を低減し、エンドユーザーのための閉じ込め技術を開発するために、多くの努力が払われてきたが、根本的な改善が急務である。
【0003】
ゴーストピークは、1回の測定セッションの間に、比較的一定の周波数に留まることが知られているが、RFイオントラップ中の実際のイオンピークは、トラップ信号の変化に対して一貫した方法で反応することになる。イオン周波数は、発振周波数ω
zの式で与えられる。
【数1】
【0004】
ここで、z0はイオントラップの特性サイズ、Vacは印加される一定のAC貯蔵電圧(storage voltage)、ΩRFはトラッピング場の角周波数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、より信頼性が高く、より高感度でイオントラップ中のイオンを検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載のイオントラップ中のイオンを検出する方法及び請求項11に記載のイオントラップによって解決される。
【0007】
イオントラップ中でイオンを検出するための本発明による方法は、
a.イオン化イオンをイオントラップに供給するステップと、
b.イオントラップの第1の電極にRF貯蔵信号を印加することによってRF貯蔵場を形成するステップであって、RF貯蔵信号の貯蔵電圧VRF及び/又は貯蔵周波数ΩRFが変更される、ステップと、
c.イオントラップ中のイオンに励起信号を印加するステップと、
d.励起信号によって励起されたイオンの振動によって、第2の電極に、第3の電極に、又は第2の電極と第3の電極との間で差動的に、誘導されたイメージ電流信号を検出するステップと、
e.検出されたイメージ電流信号にFFTを適用してイオン振動を検出するステップと、
を含む。
【0008】
従って、最初にイオンがイオントラップに供給される。そこでは、イオンは、イオントラップの容積外でイオン化されるか、又はイオントラップのトラッピング容積内で直接イオン化される。イオンのイオン化には、電子衝撃イオン化、プラズマイオン化、イオン化ガスと被測定ガスとの間の化学イオン化など、何らかの公知のイオン化方法を使用することができ、エネルギーは、イオン化のために、衝突に起因するイオン化ガスから被測定ガスに伝達される。
【0009】
イオンは、イオントラップの第1の電極にRF貯蔵信号を印加してRF貯蔵場を形成することにより、イオントラップのトラップ容積に捕捉される。その後、励起信号が、イオントラップ中のイオンの振動による過渡信号を生成するためにイオンに印加される。イオントラップ中のイオンの振動により、第2の電極及び/又は第3の電極にイメージ電流が誘導され、誘導されたイメージ電流信号は、生の信号を取得するために、第2の電極、第3の電極から直接、又は第2の電極と第3の電極の間で差動的に検出される。高速フーリエ変換(FFT)又は離散FFT(DFT)などのフーリエ変換が、イオン振動を識別し、イオントラップ中のイオン振動に起因する信号を検出するために、検出されたイメージ電流信号に適用される。フーリエ変換の結果により、イオントラップに捕捉されたイオンの質量対電荷比(m/z比)を決定することができる。
【0010】
本発明によれば、RF貯蔵信号は経時的に変更される。そこでは、RF貯蔵信号の電圧V
RFは経時的に変更される。代替的に又は追加的に、貯蔵周波数Ω
RFは経時的に変更される。貯蔵電圧V
RF、貯蔵周波数Ω
RF、又はその両方の変更により、イオントラップに捕捉されたイオンの固有周波数ω
zは、以下の関係により変化する。
【数2】
.
【0011】
ここでは、ωzはイオンの振動数、z0は特性トラップ寸法、ΩRFは貯蔵場の角周波数である。
【0012】
従って、RF貯蔵信号を変更することで、結果として生じるイメージ電流信号が類似の方法で変更され、これは、イオントラップ中のイオンから来る信号と、個別の電極と外部環境との間の不要な結合経路の結果であるゴースト信号又はゴーストピークとの間を区別するために、計算されたFFTスペクトルで検出することができる。イオントラップ中のイオンの振動周波数は、RF貯蔵信号の変更に対して一貫して変更されるが、FFTスペクトルのゴーストピークは変更されないので識別することができ、容易に除去することができる
【0013】
好ましくは、RF貯蔵信号は、変調周波数ω
mで周期的に変調される。従って、検出されたイメージ電流信号は周波数変調(FM)信号となる。RF貯蔵信号の正弦波変調の例では、イオンの振動周波数は次のようになり、
【数3】
,
ここで、ω
m≪Ω
RF、及びV
ac≫V
mであり、V
mは変調振幅を示し、V
RFは、この例ではV
RF=V
ac+V
m*(sin(ω
mt))となるように設定される。
【0014】
好ましくは、変調周波数ωmは、第2の電極及び/又は第3の電極に接続された検出器又は電荷増幅器の通過帯域下限よりも低い。検出器又は電荷増幅器は、第2の電極及び/又は第3の電極からイメージ電流信号を抽出する。変調周波数は検出器又は電荷増幅器の通過帯域外であるため、検出器又は電荷増幅器への悪影響は回避される。
【0015】
好ましくは、サイドバンドのない検出されたイメージ電流のFFTスペクトルにおけるピークは、無視される。RF貯蔵信号が周波数ωmで周期的に変調される場合、生成された周波数変調イメージ電流信号は、元のキャリア信号と、変調周波数ωmの倍数と混合された元のキャリア周波数に対応する新しいサイドバンドとの和として表すことができる。しかしながら、ゴーストピークはサイドバンドを全くもたないことになる。サイドバンドのないピークを識別することによって、FFTスペクトルのゴーストピークを識別して無視することができ、イオントラップ中のイオンに関連するピークがFFTスペクトルに残る。
【0016】
好ましくは、本方法は、検出されたイメージ電流のFFTスペクトルのピークを識別するステップと、各ピークの瞬時周波数(IF)を決定するステップとをさらに含む。その後、各ピークのIFにIQ復調スキーム(同相及び直交成分復調スキーム)が適用される。これにより、それぞれのピークの同相(I)、直交成分(Q)、又はIとQの2乗平均平方根(RMS)のいずれかをIQ復調スキームから取り出すことができる。その後、FFTにおけるピークの高さは、I、Q又はRMSなどのIQ復調スキームの結果によって重み付けされる。周波数変調されたイメージ電流信号からのIFに続くFFTスペクトルのイオンピークは、この処理によって保存されることになるが、元の変調信号で同期的に復調しないノイズピークは、自動的に重み付け解除されることになる。また、これにより、I-Q復調の結果が実際のイオンの動きに起因する信号を返し、ゴーストピークの寄与を除去することになるので、ゴーストピークと重なるイオン信号を分離することができる。このように、弱い変調限界において、このプロセスはスプリアス信号を除去し、元の質量スペクトルをきれいにすることができる。
【0017】
好ましくは、FFTは非定常又は共動基準フレームで適用される。詳細には、RF貯蔵信号が周期変調のように経時的に変化する場合、従来のFFTを使用する代わりに、共動する時間フレームでフーリエ変換を適用することができる。この共動時間フレームでは、RF貯蔵信号の変調及び時間フレームに同じ周波数ωmを選択した場合、変調周波数が固定になる可能性がある。従って、ゴーストピークのような非変調信号は、複数の異なる周波数又は周波数ビンに分散されるが、イオントラップ中のイオンのイメージ電流信号のような変調信号は、回転フレームでの進化(evolution)に従う。その結果、結果として得られたデータの変換は、少数の周波数、あるいは単一の周波数又は周波数ビンに集中することになる。そこでは、周波数ビンは、DFTにおける離散的な周波数範囲に関連する。
【0018】
好ましくは、FFTを適用する前に、検出されたイメージ電流は、予め選択された変調の複素共役である係数exp(-iωmt)又は同様の関数によって乗算される。この項により、RF貯蔵信号の変調はバランスされ、フーリエ変換はRF貯蔵信号の変調と同じ割合で回転するフレームで実行できる。
【0019】
好ましくは、FFTは、変調周波数ωmで回転する回転基準フレームでFFTを適用するパラメトリックフーリエ変換(PFT)である。時間-周波数平面で見ると、このパラメトリックフーリエ変換は、それ自体が変調周波数で振動している周波数又は周波数ビンに沿って積分する効果を有する。これは、回転基準フレームに分析をシフトすることと等価である。変調された信号を単一のビンに集中させるだけでなく、この変換は、変調されていないデータと、異なる周波数、あるいは異なる位相で変調されたデータの両方を複数のビンに分散させる効果もある。変調指数が増加するにつれて、これらの不要で変調されていない信号は、より多くのビンにわたって広がり、従って、もちろん特定のビンに局在する必要とされる信号への影響が低減される。
【0020】
好ましくは、RF貯蔵信号の変調は、周期的に変調され、詳細にはチョッピングされる(chopped off)。そこでは、イオントラップ中で検出されたイオンに関するピークをさらに確実に識別するために、結果として生じるイメージ電流信号の符号化を達成することができる。詳細には、変調レベルがベッセル関数J0の最初のゼロに対応する場合、公称ピーク位置の中心周波数ビンにおける信号強度は完全に減衰することになる。この場合、変調を周期的にチョッピングすると、チョッピングパターンに適合した一連の短時間(SF)PFFTからその中心高さで測定された強度は、そのチョッピングパターンに従うことになる。適合した一連の従来のST-FFTは、チョッピング信号とは逆のビットパターンに従うことになる。チョッピングされたST-PFFT及びST-FFTは、感度をさらに高めるために、元のチョッピング信号に対して同期的に復調することができる。
【0021】
好ましくは、FFTは、純粋な時間表現と純粋な信号表現との間の部分的な回転に対応する分数次FFT(FRFT)であり、従来のフーリエ変換(https://en.wikipedia.org/wiki/Fractional_Fourier_transform 参照)によって実行される90°回転と比較される。FRFTは、RF貯蔵信号の線形変化に対応するパラメータαで適用される。従って、RF貯蔵信号の貯蔵電圧VRF、貯蔵周波数ΩRFのいずれか一方、又は両方の線形増加によって、RF貯蔵信号の線形変化は、検出されたイメージ電流信号の時間-周波数平面において増加又は減少線をもたらす。そこでは、FRFTのパラメータαがこの増減に一致し、RF貯蔵信号、すなわち検出されたイメージ電流信号の変調と同じ角度で傾斜/減衰する時間周波数平面の離散FFTに関する一連の周波数ビンが得られる。従って、イオン信号は1又は少数の周波数ビンに集中し、検出された生データ中の不要な変調されていない信号は複数のビンに分散されるため、測定結果への影響が低減される。従って、RF貯蔵信号の線形変化に対して、FRFTを適用する場合、ゴーストピークは非変調であるのでスペクトルから除去することができ、同時にイオン信号の信号対ノイズ比を向上させることができる。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、イオンを捕捉及び検出するためのイオントラップに関する。イオントラップは、トラッピング容積を画定する第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を備える。RF貯蔵信号供給部が第1の電極に接続され、RF貯蔵電界を生成するように構成され、RF貯蔵信号の貯蔵電圧VRF及び/又は貯蔵周波数ΩRFが変更される。RF励起信号供給装置が第1の電極に接続され、励起信号を生成するように構成されている。検出器が第2の電極及び/又は第3の電極に接続され、励起信号によって励起されたイオンの振動によって誘導されたイメージ電流を検出するように構成されている。
【0023】
好ましくは、第1の電極はリング電極であり、第2及び第3の電極はイオントラップのトラッピング容積を取り囲むキャップ電極である。
【0024】
好ましくは、評価ユニットが検出器に接続され、評価ユニットは、上述のような方法のステップを実行するように構成されている。そこでは、評価ユニットは、検出器に対して別個のユニットとすること又は検出器と一体的に構築することができる。
【0025】
以下、本発明は、添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】周波数図(frequency diagram)である。
【
図6A】分数次フーリエ変換による本発明による検出スキームである。
【
図6B】分数次フーリエ変換による本発明による検出スキームである。
【
図6C】分数次フーリエ変換による本発明による検出スキームである。
【
図7A】パラメトリックフーリエ変換による本発明による検出スキームである。
【
図7B】パラメトリックフーリエ変換による本発明による検出スキームである。
【
図9A】本発明によるさらなる検出スキームである。
【
図9B(a)】本発明によるさらなる検出スキームである。
【
図9B(b)】本発明によるさらなる検出スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によるイオントラップを示す
図1を参照する。イオントラップ10は、リング電極として構築された第1の電極18、第1のキャップ電極として構築された第2の電極14、及び第2のキャップ電極として構築された第3の電極16を備え、イオンを捕捉するために、第1の電極18、第2の電極14、及び第3の電極16は、トラッピング容積20を画定する。RF信号供給部22は、第1の電極18に接続され、第1の電極18と電極14及び16との間にRF貯蔵場を発生させ、イオンをトラッピング容積20の内部に貯蔵する。さらに、RF励起信号供給部26は、検出前に電極14、16のいずれかに単極信号として、又は電極14と16の間で差動的に励起信号を発生させるために、第2の電極14及び/又は第3の電極16に接続される場合がある。励起信号の結果、励起信号の周波数がそれぞれのイオンの振動イオン周波数ω
zに一致する場合、トラッピング容積20内に捕捉されたイオンは、トラッピング容積20内の平衡位置の周りで振動するように励起される。そこでは、周波数ω
zはイオンの質量に依存するので、イオンの振動の質量選択的励起を促進することができる。トラッピング容積20内のイオンの振動に起因して、第2の電極14及び第3の電極16にイメージ電流が誘導される。イオントラップ10は、検出器24をさらに備え、検出器24は、第2の電極14又は第3の電極16のいずれかに接続することができる。あるいは、
図1に例示されるように、検出器24は、第2の電極14及び第3の電極16に誘導されるイメージ電流の差分信号を検出するために、第3の電極16並びに第2の電極14に接続される。従って、イオンの励起は、特定のm/z比を有するイオン又はイオン種をイオントラップ10内で選択的に決定するために、イメージ電流信号の検出時にそれぞれの周波数で検出することができる。
【0028】
方法ステップのフロー図を示す
図2を参照する。イオントラップ中のイオンを検出するための方法は、
・ステップS01において、イオン化イオンをイオントラップに供給し、
・ステップS02において、RF貯蔵信号をイオントラップの第1の電極に印加することによってRF貯蔵場を形成し、RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFが変更され、
・ステップS03において、イオントラップ中のイオンに励起信号を印加し、
・ステップS04において、励起信号によって励起されたイオンの振動によって第2の電極に、第3の電極に、又は第2の電極と第3の電極との間に差動的に、誘導されるイメージ電流信号を検出し、
・ステップS05において、検出されたイメージ電流信号にFFTを適用してイオン振動を検出する、
ステップを含む。
【0029】
従って、ステップS01において、イオンがイオントラップ又はイオントラップのトラッピング容積に供給される。そこでは、イオンは、トラッピング容積の内部で直接イオン化すること、又は最初にイオントラップの外部でイオン化され、その後イオントラップのトラッピング容積に移送することができる。そこでは、イオンを生成するための何らかの従来の方法は、本発明に関連して使用することができる。
【0030】
ステップS02において、イオンは、イオントラップの第1の電極に印加されるRF貯蔵信号によって形成されるRF貯蔵場を印加することによって、イオントラップのトラッピング容積内に捕捉される。そこでは、イオントラップの第1の電極18は、四重極イオントラップのリング電極とすることができる。そこでは、貯蔵電圧VRFが経時的に変更される。好ましくは、貯蔵電圧は、周波数ωmで周期的に変調される。代替的に又は追加的に、RF貯蔵信号の貯蔵周波数ΩRFは、経時的に変更され、同様に好ましくは周波数ωmで周期的に変調される。そこでは、貯蔵電圧VRF及び貯蔵周波数ΩRFを同時に変調する場合、異なる変調周波数ωm及びω’mを適用することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、貯蔵電圧VRF又は貯蔵周波数ΩRFのみが同じ周波数で変調される。
【0031】
ステップS03において、励起信号がイオントラップ中のイオンに印加され、イオンの振動が起こる。
【0032】
ステップS04において、第2の電極14及び第3の電極16に誘導されるイメージ電流信号が検出され、イメージ電流信号は、励起信号によって励起されたイオンの振動によって引き起こされる。そこでは、イメージ電流信号は、イオントラップの第2の電極14又は第3の電極16から直接検出すること、又は第2及び第3の電極14、16の間で差動的に検出することができる。そこでは、RF貯蔵信号を変更することにより、イオントラップ中の励起イオンの振動周波数がこの変更に対応して変化する。そこでは、イオントラップ中のイオンの振動周波数は、
【数4】
.
によって与えられる。
【0033】
従って、貯蔵電圧VRF及び貯蔵周波数ΩRFのいずれかを変更すると、イオンの振動周波数が変更されることになる。
【0034】
ステップS05において、イオン振動周波数を検出するためにフーリエ変換が検出されたイメージ電流信号に適用される。従って、フーリエ変換によって、イオン振動の周波数を決定することができ、イオン振動の周波数から、個別のイオン種を識別するために、イオントラップ中のそれぞれのイオンの質量対電荷比を計算することができる。そこでは、ゴーストピークは、RF貯蔵信号の変更とは無関係であり、従ってFFTスペクトル内で識別して除去することができる。
【0035】
周波数領域(frequency regime)における本発明の状況を示す
図4を参照する。イオン信号30は検出器24の通過帯域32内にあり、従って検出器24によって検出することができる。そこでは、RF貯蔵信号は、周波数34によって変調され、周波数34は、通過帯域外であり、好ましくは検出器24の通過帯域32の下限よりも低い。従って、RF貯蔵信号の変更は検出器24に影響を与えず、RF貯蔵信号の変更に起因する検出器の飽和を回避することができる。
【0036】
詳細には、RF貯蔵信号が低い振幅周波数ωmで周期的に変調される場合、サイドバンドが生じ、低結合領域(low coupling regime)ではωz-ωm及びωz+ωmの2つのサイドバンドのみが現れる。高変調領域(high modulation regime)では、複数のサイドバンドが現れる。ゴーストピークはRF貯蔵信号の変調の影響を受けないため、これらのゴーストピークはFFTスペクトルにおいてサイドバンドを示さない。従って、イオントラップ中のイオンに関するFFTスペクトルのピークは、結果としてサイドバンドをもたないゴーストピークの代わりに、それらのサイドバンドによって識別することができる。従って、サイドバンドをもたないFFTスペクトルのピークは無視することができる。
【0037】
図3及び5を参照すると、取得されたFFTスペクトルのゴーストピークを識別して除去するための追加の検出スキームが示されている。
【0038】
ステップS51において、検出されたイメージ電流のFFTスペクトルにおけるピークが識別される。
【0039】
ステップS52において、各ピークの瞬時周波数(IF)が決定される。
【0040】
ステップS53において、各ピークの瞬時周波数に対してIQ復調スキームが適用される。そこでは、IQ復調スキームの結果は、同相(I)直交成分(Q)、又は、I及びQのRMSとすることができる。
【0041】
ステップS54において、それぞれのピークの高さは、IQ復調スキームの結果によって重み付けされる。
【0042】
図3の矢印100に従って、IQ復調スキームS53及び重み付けステップS54は、FFTスペクトルの各ピークに連続して適用される。
【0043】
図3のステップの一例を示す
図5を参照する。
図5aでは、例示的な実イオン信号及びゴースト信号の瞬時周波数が示されている。
図5bでは、FFTスペクトルが示されており、実イオン信号が上述のようにサイドバンドを生成するのに対し、ゴーストピークはいかなるサイドバンドも示さないことが分かる。
図5cは、RF貯蔵信号が正弦波変調されることを示す。
図5dは、信号のIFと適用された変調との間のポイントごとの乗算の結果を示す。変調に対して周波数ロック及び位相ロックされていないIF信号は、平均してゼロになるが、ロックが維持されているIF信号は、平均してゼロにならない余弦又は正弦2乗信号を生成することになる。IQ復調スキームは、
図5aに従って決定された個別の瞬時周波数の各々に適用される。
図5の例では、I-Q RMSは、個別のピークに重み付けとして適用され、インポスト(impost)変調に応答しない信号は、スペクトルから重み付け解除される。
図5eに示すように、実イオン信号の同期復調が達成され、ゴーストピークの減少によりノイズを大幅に低減することができる。従って、
図5eに示すような結果として生じるFFTスペクトルは、イオントラップ中のイオンに起因するピークを強化し、RF貯蔵信号の変調の影響を受けない信号を除去する。従って、ゴーストピークを除去することができ、同時に信号対ノイズ比を改善することができる。
【0044】
別の検出スキームを示す
図6Aから6Cを参照する。
図6Aを参照すると、
図6Aの画像a)に示すように、RF貯蔵信号の線形変化に関して、時間周波数平面において、検出されたイメージ電流信号の傾斜線が取得される。水平周波数ビンを示す
図6Aの画像b)に従って従来のFFTを適用すると、イオンの信号は複数の周波数ビンに広がり、結果として
図6Aの画像c)に示すスペクトルでは、イオン信号は重み付けされない。本発明により、従来のFFTを使用する代わりに、分数次FFT(FRFT)が検出されたイメージ電流信号に適用される。FRFTは、
図6Bに示されるように、時間周波数平面における任意の回転である。そこでは、FRFTはn乗フーリエ変換とみなすことができ、nは整数である必要はない。この点に関して、「https://en.wikipedia.org/wiki/fractional_fourier_transform」及びL. Stankovic他の「Time-frequency signal analysis with applications」, 2013, Artech Houseを参照されたい。そこでは、
図6A及び
図6Cの画像b)に示されるように周波数ビンの角度は、角度α=nπ/2だけ傾いている。
【0045】
線形周波数変調の場合、従来のFFTの代わりにFRFTが使用される。FRFTは、従来のフーリエ変換によって行われる90度の回転と比較して、純粋な時間表現と純粋な信号表現との間の部分的な回転に対応する。その点で、本発明によれば、FRFTの周波数ビンの傾斜角度αは、RF貯蔵信号の適合/線形変調によって、
図6Cの画像a)に示されるように、イメージ電流信号の傾斜角度と一致する。これらの角度の一致により、FRFTの使用に起因して、イオン信号は周波数ビンの1つに集中し、
図6Cの画像c)に示される明確なピークが生じる。そこでは、結果として生じるスペクトルは、それぞれの周波数ビンに沿ったイメージ電流信号の積分である。ゴーストピークのようなRF貯蔵信号の変更に影響されない他のピークは、水平線として時間周波数平面に現れる。ここで、
図6Aの例では、従来のフーリエ変換を使用した場合、このことは、結果として生じるFFTスペクトルの明確なピークにつながることになる。対照的に、FRFTを使用する場合、変更されていない信号はいくつかの周波数ビンに拡散されることになり、これによりこれらの信号が重み付けされず、結果として生じるFFTスペクトルから除去される。
【0046】
従って、RF貯蔵信号の特定の変更に合わせてFRFTを使用することにより、実イオン信号の強化が達成され、同時に、結果として生じるFFTスペクトルにおけるゴースト信号ピークの重み付け解除を実現することができる。
【0047】
パラメトリックフーリエ変換を用いた検出スキームを示す
図7A及び7Bを参照する。非線形変調(周波数変調-FMなど)の場合、変調と同じ割合で回転するフレームで従来のフーリエ変換を実行するのに相当するパラメトリックフーリエ変換を選択することができる(L. Stankovic他の「Time-frequency signal analysis with applications」, 2013, Artech House参照)。
【0048】
時間-周波数平面で見ると、非変調信号は直線40(
図7Bの画像a参照)のように見えるが、イオントラップ中のイオンの変調信号42は正弦波(
図7Aの画像a参照)のように見える。従来のFFTの実行は、特定の周波数範囲又は設定された周波数ビン(時間-周波数平面における水平方向の分割と見なすことができる)に見られる信号強度を計算することに相当する。その結果、
図7Aに存在するような周波数変調された信号42は、複数のビンに分割されたそれらの強度を見出し、見かけのスペクトルの重み付けが解除される。
【0049】
フーリエ変換の前に、周波数変調された信号42(A(t)eiφ(t)、A(t)は検出器24によって検出されたイメージ電流信号、φ(t)は変調の周波数ωmに関連する位相項)が、変調された信号のφ(t)と釣り合うように選択されたtの第2の関数(e-iφ(t))で乗算される場合、結果として得られるデータの変換は、変調前の元の周波数で、単一のビンに集中することになる。
【0050】
時間-周波数平面で見ると、このパラメトリックフーリエ変換は、
図7A及び7Bの画像b)に示されるように、それ自体が変調周波数で振動している周波数ビン44に沿って積分する効果を有する。これは、回転基準フレームに分析をシフトすることと等価である。
【0051】
変調された信号を単一のビンに集中させるだけでなく、この変換は、
図7Bに示されているように、変調されていない信号40と、異なる周波数、あるいは異なる位相で変調された信号46の両方を複数のビンに分散させる効果も有する。変調指数が増加するにつれて、これらの不要で変調されていない信号40、46は、より多くのビンにわたって広がることになり、従って、もちろん特定のビンに局在する必要とされる信号への影響が低減される。不要で変調されていない信号40、46は、
図7Bの画像c)に示されているように、変位したFFTスペクトルになるが、変調された目下のイメージ信号は、
図7Aの画像c)に示されるように、明確で顕著なピークに合計される。
【0052】
この周波数変調アプローチの信号対雑音の利点は、変調指数が増加するにつれてより完全に実現されるが、これは当然のことながら、適切な検出のためには、瞬間周波数の変化の全範囲が検出器24の帯域幅内に留まる必要があることも意味する。この技術では、変調がイメージ電流信号の全てのピークに同時に適用され、異なるイオン種からの信号の重なりが防止されるので、非常に間隔の狭い周波数のイオン種であっても分離可能である。
【0053】
従って、本検出スキームは、変調及びその変調周波数に関する知識を利用し、これは、駆動信号との整合を保つ信号をコヒーレントに合計し、整合しない信号を除去するようになっている。
【0054】
パラメトリックフーリエ変換を適用するためには、実世界データを解析形式に変換する必要がある。幸いにも、少なくとも主に振動するデータの場合、これは実世界データとそのヒルベルト変換との和として簡単に生成できる。
sA(t)=s(t)+ish(t)
変調されたコサイン信号の場合、
s(t)=cos(ωt+φ(t))
であり、これは、
sh(t)=sin(ωt+φ(t))
をもたらす。従って、
sA(t)=s(t)+ish(t)=cos(ωt+φ(t))+i*sin(ωt+φ(t))(式1)
となる。
【0055】
変調されたコサイン関数の例で分かるように、この解析的信号生成プロセスにより、他の方法では利用できない位相情報を回復することができる。式1をリファクタリングすると、φ(t)が既知であれば、フーリエ変換の前にこの項を除去するために乗算関数e-iφ(t)をどのように選択できるかを調べることができる。
sa(t)=ei(ωt+φ(t))=ei(ωt)ei(φ(t))
【0056】
図8は、パラメトリックFFTを用いた上述の検出スキームの結果を示す。
図8a及び8cは、少数のサイドバンドのみを生成する低結合領域に関し、
図8b及び8dは、多数のサイドバンドを生成する強結合領域に関する。
図8aは、RF貯蔵信号が例えば次のようにサイン(sign)波変調された場合に関し、
【数5】
ここで、z
0は特性トラップサイズであり、Ω
RFはトラップピング場の角周波数であり、V
acは、所定の例ではV
m
*(sin(ω
mt))によって変調された一定のトラッピング場電圧である。
図8aは、従来の又は生のFFTと、本発明によるパラメトリックFFTの使用との比較を示す。明示されるように、従来のFFTを使用した検出されたイメージ電流信号は、複数の周波数にわたって広がり、それ自体がサイドバンドを生成し、実イオン信号を実質的に重み付けしていない。対照的に、パラメトリックFFTを使用した場合、既存のサイドバンドは重み付け解除されて除去されるため、実イオン信号が顕著になる。RF貯蔵信号が変調されていない場合は、
図8cに示すように状況が逆転する。この場合、パラメトリックFFTを使用すると、
図7Bに示すように信号は複数の周波数ビンにわたって広がるが、従来のFFTは明確なピークを生成する。同様に
図8B及び
図8Dでは、高変調領域の例が示されており、RF貯蔵信号が変調されている場合、サイドバンドが重み付け解除され、ピーク信号が強化され、信号対ノイズ比が向上する。そこで、
図8では一例として1つの信号のみが使用され、この例は、
図8a及び8bに示されるように変調されるか、又は
図8c及び8dに示されるように変調されないかのいずれかであることに留意されたい。
【0057】
図9A及び9Bを参照すると、RF貯蔵信号の変調は、例えば
図9Aaに示されるように変調することができる。そこでは、
図9Aの例では、RF貯蔵信号の変調は、チョッピングスキームに相当するようにオン/オフに切り替えられる。
図9Abに示されるように、検出中にパラメトリックFFTが使用される場合、RF貯蔵信号の変調フェーズにおいてのみ、結果として生じるFFTスペクトルにおいて関連するピークが達成される。対照的に、
図9Acに示すように変調のないフェーズでは、従来のFFTを使用した場合にピークが得られる。従って、RF貯蔵信号の変調をオンオフすることにより、結果として生じるスペクトラムは、
図9Baと
図9Bbのスペクトラムの間で交互に切り替わる。従って、
図9Adに示されるような同期復調強度を得ることができ、それによって信号対ノイズN比が向上し、イオントラップ中のイオン振動に起因する信号を明確に識別することができる。
【0058】
従って、RF貯蔵信号の複合変調によって、イメージ電流信号の適合された応答を取得することができ、これは、ゴーストピークを除去するか又は結果として生じるイオン信号の信号対ノイズ比を向上させることによって、検出をさらに強化するために使用することができる。
【0059】
従って、本発明により、RF貯蔵信号が変調され、変調されたイメージ電流信号が得られる。貯蔵電圧又は貯蔵周波数を変化させると、対応するイオン周波数が変化する。変調に関する知識は、IQ復調スキームを使用するか又はRF貯蔵信号の線形変化に対して分数次FRFTを適用することにより、イオン振動周波数を決定するステップで使用することができる。一般に、パラメトリックフーリエ変換で使用するために複素共役を計算できる限り、何らかの変調スキームを使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップ中でイオンを検出する方法であって、
a.前記イオントラップにイオン化イオンを供給するステップと、
b.前記イオントラップの第1の電極にRF貯蔵信号を印加してRF貯蔵場を形成するステップであって、前記RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFが変更される、ステップと、
c.前記イオントラップ中のイオンに励起信号を印加するステップと、
d.励起信号によって励起されたイオンの振動によって、第2の電極に、第3の電極に、又は前記第2の電極と前記第3の電極の間で差動的に、誘導されたイメージ電流信号を検出するステップと、
e.前記検出されたイメージ電流信号にFFTを適用してイオン振動を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記RF貯蔵信号は、周波数ω
mで周期的に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変調周波数は、前記第2の電極及び/又は前記第3の電極に接続された電荷増幅器/検出器の通過帯域下限よりも低い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サイドバンドのない前記検出されたイメージ電流のFFTスペクトルにおけるピークは、無視される、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記検出されたイメージ電流信号の前記FFTスペクトルにおけるピークを識別するステップと、
前記ピークの各々の瞬時周波数(IF)を決定するステップと、
前記ピークの各々のIFにIQ復調スキームを適用するステップと、
前記IQ復調スキームの結果によって前記ピークの高さを重み付けするステップと、
をさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記FFTは、非定常基準フレームで適用される、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記FFTを適用する前に、前記検出されたイメージ電流は、好ましくはexp(-iω
m・t)として、印加された変調信号の複素共役で乗算される、
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記FFTは、変調周波数ω
mで回転する回転基準フレームにおいてFFTを適用するパラメトリックフーリエ変換(PFT)である、
請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記RF貯蔵信号の変調は、周期的に変調され、詳細にはチョッピングされる、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記FFTは、分数次FFT(FRFT)であり、パラメータαは、前記RF貯蔵信号の線形変化に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
イオンを捕捉及び検出するためのイオントラップであって、
トラッピング容積を画定する第1の電極、第2の電極、及び第3の電極と、
前記第1の電極に接続され、RF貯蔵場を生成するように構成されたRF貯蔵信号供給部であって、前記RF貯蔵信号の貯蔵電圧V
RF及び/又は貯蔵周波数Ω
RFは変更される、RF貯蔵信号供給部と、
前記第1の電極に接続され、励起信号を生成するように構成されたRF励起信号供給部と、
前記第2の電極及び/又は前記第3の電極に接続され、前記励起信号によって励起されたイオンの振動によって誘導されたイメージ電流を検出するように構成された検出器と、
を備えるイオントラップ。
【請求項12】
前記第1の電極はリング電極であり、前記第2の電極及び前記第3の電極はキャップ電極である、請求項11に記載のイオントラップ。
【請求項13】
評価ユニットが前記検出器に接続されており、前記評価ユニットは、
前記イオンの振動を検出するために前記検出されたイメージ電流信号にFFTを適用するように構成されている、
請求項11に記載のイオントラップ。
【国際調査報告】