(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びこれを含むプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20241121BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241121BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20241121BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20241121BHJP
C08L 61/10 20060101ALI20241121BHJP
C08L 61/14 20060101ALI20241121BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241121BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08G59/40
C08K3/36
C08K5/3445
C08K5/07
C08L61/10
C08L61/14
C08L63/00 Z
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536501
(86)(22)【出願日】2023-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2023016214
(87)【国際公開番号】W WO2024101707
(87)【国際公開日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0147208
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウク・パク
(72)【発明者】
【氏名】テ・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンシク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・チュ・チェ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CC043
4J002CC074
4J002CD051
4J002CD062
4J002CH085
4J002DJ016
4J002EE047
4J002EU118
4J002GQ01
4J002HA08
4J036AA01
4J036AA05
4J036AD08
4J036AF06
4J036DC32
4J036DC41
4J036FA05
4J036FB06
4J036FB08
4J036FB12
4J036GA17
4J036JA05
(57)【要約】
本出願の一実施態様に係る樹脂組成物は、エポキシ系樹脂;シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含む硬化剤;シリカ粒子を含む無機粒子;及び硬化促進剤を含み、上記シアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂の重量比は、95:5乃至40:60であり、上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系樹脂;
シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含む硬化剤;
シリカ粒子を含む無機粒子;並びに
硬化促進剤を含み、
前記シアネートエステル系樹脂及び前記フェノール系樹脂の重量比(シアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂)は、95:5乃至40:60であり、
前記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含むものである、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の重量比(エポキシ系樹脂:硬化剤)は、60:40乃至20:80である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シアネートエステル系樹脂は、ノボラック型シアネートエステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル系樹脂及びこれらが一部トリアジン化されたプレポリマーの中から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール系樹脂は、ノボラック型フェノール系樹脂を含むものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリカ粒子の平均粒径は、0.3μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記金属系化合物は、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、マンガン(II)アセチルアセトナート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ及びステアリン酸亜鉛の中から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の中から選択される1種以上の熱可塑性樹脂をさらに含むものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、レベリング剤、湿潤剤及び帯電防止剤の中から選択される1種以上をさらに含むものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
プリント回路基板用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物又はその硬化物を含む、プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年11月7日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0147208号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、樹脂組成物及びこれを含むプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、両面プリント回路基板は、絶縁部材の両面に銅箔(Copper foil)を積層したCCL(Copper Clad Laminate)を基盤とする。かかる両面の銅箔に電気的な信号を接続するためにドリルで穴を加工し、電解銅めっきを用いて両面の銅箔をめっき層で接続させた後、回路を形成するためのUV感光性ドライフィルム(Dry film)を塗布してUVを照射することで、選択的にパターンを形成する。その後、これをエッチングして両面銅箔に回路パターンを形成させた後、絶縁のためのPSR(Photoimagable Solder Resist)を塗布し、最終部品が実装される表面に金めっきなどの表面処理を施す過程を通じて、上記両面プリント回路基板が製造されることができる。
【0004】
また、多層プリント回路基板は、両面基板の回路形成段階までは同一であり、回路パターンの形成後、その上にPSRを塗布するのではなく、再びプリプレグと銅箔とを各一枚ずつ上下に積層した後、加熱、加圧する工程を経て製造されることができる。そのため、上記多層プリント回路基板は、PCBを多層に形成したビルドアップ基板(Build-up Board)を意味する。
【0005】
このとき、上記多層プリント回路基板は、レーザ加工を通じて内層回路パターンと外層回路パターンとを電気的に導通するビアホールを形成することができ、上記ビアホールの内表面にめっき層を形成して、プリント回路基板を製造することができる。その後、必要によって上記めっき層上に保護層としてソルダーレジスト層をさらに形成するか、より多い数の外層をさらに形成することもできる。
【0006】
当該技術分野では、多層プリント回路基板の品質向上のために、導電層を構成する導体配線に対する密着力に優れるだけでなく、耐化学性などに優れた絶縁層が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、樹脂組成物及びこれを含むプリント回路基板を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一実施態様は、
エポキシ系樹脂;
シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含む硬化剤;
シリカ粒子を含む無機粒子;並びに
硬化促進剤を含み、
上記シアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂の重量比は、95:5乃至40:60であり、
上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含むものである、樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本出願の他の実施態様は、上記樹脂組成物又はその硬化物を含む、プリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本出願の一実施態様に係る樹脂組成物は、硬化剤として特定の重量比を有するシアネートエステル系樹脂とフェノール系樹脂を適用し、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含む硬化促進剤を適用することにより、優れた硬化物性を有することができる。また、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物を用いて製造した絶縁フィルムは、デスミア処理によって適切な表面粗さを有することができるので、優れた銅箔密着力を有する特徴がある。
【0011】
したがって、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物を用いて、配線密着力、耐化学性などに優れた多層プリント回路基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本出願についてより詳細に説明する。
【0013】
本出願において、ある部材が他の部材「上に」に位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた別の部材が存在する場合も含む。
【0014】
本出願において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0015】
多層プリント回路基板を製造する方式として、導体層と絶縁フィルムとを交互に積層する方式が開発されて、現在半導体パッケージ用途で使用されている。上記多層プリント回路基板の製造工程は、まず、内層回路の上にビルドアップ絶縁フィルムを真空貼り合わせした後、プレキュア(Precure)→ドリリング→デスミア(Desmear)→無電解めっき→電解めっき→ポストキュア(Postcure)→外層回路形成の過程を経る。ここでデスミア(Desmear)工程は、酸性溶液でスミア(smear)を除去すると共に、絶縁フィルムの表面を一定量浸食させて表面粗さを形成する作用をするが、これは後の工程で形成される銅箔層との密着力を高める役割をする。
【0016】
上記ビルドアップ絶縁フィルムのための樹脂組成物としては、エポキシ樹脂とフェノール系硬化剤にシリカ粒子を無機フィラーで充填した組成物が初期製品に使用されたが、低誘電特性、低CTE(low CTE)への要求が増加したことを受け、エポキシ樹脂にシアネートエステル系硬化剤を使用する製品が開発された。
【0017】
しかしながら、上記エポキシ樹脂及びシアネートエステル樹脂の硬化物は、低CTE、高耐熱性などの長所があるが、単独で使用する場合、デスミア工程を通じて所望の表面粗さが形成できない問題点があった。
【0018】
そこで、本出願においては、硬化物性に優れるだけでなく、デスミア工程後にも所望の表面粗さを形成できる樹脂組成物及びこれを含むプリント回路基板を提供しようとする。
【0019】
本出願の一実施態様に係る樹脂組成物は、エポキシ系樹脂;シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含む硬化剤;シリカ粒子を含む無機粒子;及び硬化促進剤を含み、上記シアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂の重量比は、95:5乃至40:60であり、上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含む。
【0020】
本出願の一実施態様において、上記エポキシ系樹脂は、1分子内にエポキシ基が2個以上存在することが好ましい。より具体的に、上記エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセンエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールフェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールクレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂、変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などを1種以上含むことができる。
【0021】
これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、密着性の観点で、上記エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂などを1種以上含むことがより好ましい。
【0022】
本出願の一実施態様において、上記硬化剤は、シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含む。
【0023】
上記シアネートエステル系樹脂は、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールM型など)シアネートエステル系樹脂及びこれらが一部トリアジン化されたプレポリマーの中から選択される1種以上を含むことができる。
【0024】
より具体的に、上記シアネートエステル系樹脂は、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;及びこれらのシアネート樹脂が一部トリアジン化されたプレポリマーの中から選択される1種以上を含むことができる。
【0025】
上記シアネートエステル系樹脂の重量平均分子量は、500g/mol~4,500g/molであってもよく、600g/mol~3,000g/molであってもよいが、これにのみ限定されるものではない。
【0026】
本出願において、上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定されることができる。
【0027】
上記フェノール系樹脂は、フェノール骨格又はナフトール骨格を含む化合物であって、耐熱性、耐水性などに優れたノボラック型フェノール系樹脂を含むことができる。より具体的に、上記フェノール系樹脂は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール変性メラミン樹脂などのノボラック樹脂を含むことができる。
【0028】
本出願の一実施態様において、上記シアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂の重量比は、95:5乃至40:60であってもよく、90:10乃至40:60であってもよく、88:12乃至45:55であってもよい。上記シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂の総重量を基準に、上記シアネートエステル系樹脂の含量が40重量%未満の場合は、シアネートエステル系樹脂の長所である低誘電正接(low Df)特性、低CTE、高耐熱性などの硬化物性を得ることができないので、好ましくない。また、上記フェノール系樹脂の含量が5重量%未満の場合は、デスミア工程を通じて所望の表面形状を具現化しにくいことがあるので、好ましくない。
【0029】
本出願の一実施態様において、上記エポキシ系樹脂:硬化剤の重量比は、60:40乃至20:80であってもよく、60:40乃至30:70であってもよく、55:45乃至35:65であってもよい。上記エポキシ系樹脂:硬化剤の重量比を満たす場合、低誘電正接及び低CTE特性を有しながらも優れた耐熱性及び機械的物性を得ることができる。上記エポキシ系樹脂及び硬化剤の総重量を基準に、上記エポキシ系樹脂の含量が60重量%を超過する場合には、熱処理を通じて高い硬化度を得ることができなくて、優れた誘電特性及び所望の硬化物性を得ることができないので、好ましくない。また、上記硬化剤の含量が80重量%を超過する場合には、シアネートエステル系樹脂がトリアジン構造で互いに連結される自己架橋(Self-Crosslinking)が過度に生じるおそれがあって、硬化後にフィルムが割れやすくなる脆性破壊(brittle fracture)が起こり得るので、好ましくない。
【0030】
本出願の一実施態様において、上記無機粒子は、シリカ粒子を含む。
【0031】
本出願の一実施態様において、上記無機粒子は、シリカ粒子のみを含み、上記シリカ粒子以外に他の無機粒子は含まない。
【0032】
上記シリカ粒子の平均粒径は、0.3μm以下であってもよく、0.2μm以下であってもよく、0.05μm以上であってもよい。
【0033】
無機粒子として平均粒径が0.3μm以下又は0.2μm以下のシリカを使用する場合、従来はデスミアによって所望の表面粗さを得ることが難しかった。しかしながら、本出願の一実施態様によれば、上述したシアネートエステル系樹脂:フェノール系樹脂の特定の重量比を満たすことにより、デスミアによって所望の表面粗さを形成することができる。
【0034】
従来は、湿式デスミア処理によって表層部の樹脂組成物が一定厚さにエッチングされながら、無機粒子部位が突出する形状、又は無機粒子が脱落して生ずる窪み状などが形成されるが、このとき、樹脂組成物の硬化度と無機粒子大きさが表面粗さを決定する重要因子となる。通常、平均粒径0.3μmを超過する製品を無機粒子として使用する場合、デスミア処理によって表層部がよくエッチングされるように樹脂組成物の硬化度を適宜調節すれば、容易にRa 200nm以上の表面粗さを得ることができる。しかしながら、平均粒径が0.3μm以下又は0.2μm以下のシリカを使用する場合は、樹脂組成物がよくエッチングされても無機粒子の大きさが小さくて、Ra 200nm以上の表面粗さを得ることは難しい。
【0035】
一方、本出願の一実施態様のように、シアネートエステル系樹脂とフェノール系樹脂とを特定の重量比で混合使用する場合には、エポキシに対する両樹脂の硬化速度差、耐化学性差などによってデスミア液に対するエッチング速度が互いに異なるようになり、その結果、デスミア工程中に表層部の不均一エッチングが誘発されるようになって、無機粒子の大きさにかかわらず、200nm以上の表面粗さが形成されることができる。
【0036】
本出願の一実施態様において、上記樹脂組成物は、硬化物の機械強度、フィルム成形能などを向上させるために、熱可塑性樹脂をさらに含むことができる。上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリエステル樹脂の中から選択される1種以上を含むことができる。上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5,000g/mol~200,000g/molであってもよいが、これにのみ限定されるものではない。
【0038】
本出願の一実施態様において、上記樹脂組成物は、エポキシ系樹脂、硬化剤などを効率的に硬化させるために、硬化促進剤を含み、上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含むことを特徴とする。また、上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物及び金属系化合物以外に、アミン系化合物及び有機ホスフィン系化合物の中から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0039】
上記イミダゾール系化合物は、硬化剤中のフェノール系樹脂の硬化反応を促進させる役割を果たすことができ、上記金属系化合物は、硬化剤中のシアネートエステル系樹脂の硬化反応を促進させる役割を果たすことができる。すなわち、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物は、硬化剤としてシアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂を含むので、上記硬化促進剤としてイミダゾール系化合物及び金属系化合物のうちいずれか一つを含まない場合には、所望の表面粗さの効果を得ることができない。
【0040】
上記硬化促進剤としてイミダゾール系化合物と金属系化合物とを同時に含む場合には、エポキシ系樹脂に対する上記イミダゾール系化合物及び金属系化合物の間の硬化速度差、耐化学性差などによって、デスミア液に対するエッチング速度が互いに異なって進行される。その結果、デスミア工程中に表層部の不均一エッチングが誘発されて、無機粒子の大きさにかかわらず、200nm以上の表面粗さが形成されることができる。
【0041】
しかしながら、上記硬化促進剤として、上記イミダゾール系化合物及び金属系化合物のうちいずれか一つのみを含む場合には、硬化後にフィルムが割れやすくなるおそれがあり、デスミア処理時に表面が過エッチングされて白化現象が発生し得るので、好ましくない。
【0042】
上記イミダゾール系化合物は、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ--6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロリド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリンなどを1種以上含むことができる。
【0043】
上記金属系化合物としては、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズなどの金属の有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。上記有機金属錯体は、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、マンガン(II)アセチルアセトナートなどを1種以上含むことができる。また、上記有機金属塩は、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などを1種以上含むことができる。
【0044】
上記アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノ-メチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンなどが挙げられる。
【0045】
上記樹脂組成物の不揮発分の総重量を基準に、上記硬化促進剤の含量は、0.01重量%~5重量%であってもよい。
【0046】
本出願の一実施態様において、上記樹脂組成物は、当該技術分野に知られている添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤は、レベリング剤、湿潤剤及び帯電防止剤の中から選択される1種以上を含むことができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0047】
本出願の一実施態様において、上記樹脂組成物は、プリント回路基板用に適用されることができる。より具体的に、上記樹脂組成物は、プリント回路基板の絶縁フィルムに適用されることができる。上記絶縁フィルムは、多層プリント回路基板の層間絶縁材料として使用されることができる。
【0048】
また、本出願の他の実施態様は、上記樹脂組成物又はその硬化物を含むプリント回路基板を提供する。
【0049】
上記プリント回路基板は、多層プリント回路基板であってもよく、上記多層プリント回路基板に含まれた層の数が限定されるものではない。例えば、上記多層プリント回路基板の使用目的、用途などに応じて、上記多層プリント回路基板は、2層~20層の構造を含むことができる。
【実施例】
【0050】
以下、本出願を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、本出願に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本出願の範囲が、以下に記述する実施例に限定されるものとは解釈されない。本出願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本出願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0051】
<実施例>
【0052】
<実施例1>
ビスフェノール系エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO化学)70重量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(YDPN-639、KUKDO化学)30重量部、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C03CS、TECHIA)84重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)24重量部、平均粒径が0.18μmのシリカスラリー(不揮発成分60%のMEK溶液、K180SX-CM3、ADMATECHS)360重量部、フェノキシ樹脂(YP-50、KUKDO化学)20重量部、MEK(methyl ethyl ketone)110重量部を混合した後、メカニカルスターラー(mechanical stirrer)で250rpm、3時間の間撹拌した。
【0053】
その後、イミダゾール系硬化促進剤(2PHZ-PW、四国化成工業株式会社)1.0重量部と金属系硬化促進剤コバルト(II)アセチルアセトナート(Cobalt(II)acetylacetonate)(TCI)0.05重量部をMEKに10%濃度に希釈して添加し、高速回転ミキサーで均一に分散させてコーティング液を製造した。
【0054】
製造されたコーティング液は、38μm厚さのPETフィルムの上にアプリケーターを用いてコーティングした後、100℃で8分間乾燥して、厚さ25μmの絶縁フィルムを製造した。
【0055】
<実施例2>
上記実施例1において、シアネートエステル樹脂としてノボラック型シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C05CS、TECHIA)を98重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を12重量部添加すること以外は、実施例1と同一の含量比と同一の製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0056】
<実施例3>
上記実施例1において、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C03CS、TECHIA)を56重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を48重量部添加すること以外は、実施例1と同一の含量比と同一の製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0057】
<実施例4>
実施例1において、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C03CS、TECHIA)を153重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を24重量部添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0058】
<比較例1>
上記実施例1において、シアネートエステル樹脂としてノボラック型シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C05CS、TECHIA)を112重量部添加し、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)は添加しないこと以外は、実施例1と同一の含量比と同一の製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0059】
<比較例2>
実施例1において、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C03CS、TECHIA)を28重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を72重量部添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0060】
<比較例3>
実施例1において、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂を添加せず、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を97重量部添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0061】
<比較例4>
実施例1において、ジシクロペンタジエンビスフェノール系シアネートエステル樹脂(不揮発成分75%のMEK溶液、C03CS、TECHIA)を94重量部、ビフェニル系フェノール樹脂(GPH-65、日本化薬)を4重量部添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0062】
<比較例5>
硬化促進剤として、イミダゾール系硬化促進剤を添加せず、金属系硬化促進剤のみを添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0063】
<比較例6>
硬化促進剤として、金属系硬化促進剤を添加せず、イミダゾール系硬化促進剤のみを添加すること以外は、上記実施例1と同一の含量比と製造方法を使用して絶縁フィルムを製造した。
【0064】
<実験例1>
上記実施例及び比較例で製造した絶縁フィルムの特性を評価して、下記表1に示す。下記表1に記載した特性の評価方法は、以下の通りである。
【0065】
<熱膨脹係数(CTE, coefficient of thermal expansion)>
絶縁フィルムを190℃で90分間熱硬化した後、TMA(thermos mechanical analyzer、熱機械分析)を用いて25℃~120℃の区間での熱膨脹係数を測定した。
【0066】
<表面粗さ(Ra,nm)>
1)デスミア処理
絶縁フィルムをCCL(copper clad laminate、銅張積層板)基板の上に真空加圧ラミネータを使用して温度100℃、圧力0.7Mpaの条件で30秒間圧着して積層した後、熱風オーブンで100℃30分間、次いで170℃30分間プレキュア(pre-cure)を実施した。
【0067】
次いで、絶縁体の支持フィルム(PETフィルム)を剥離して絶縁層を露出させた後、デスミア処理を進行した。デスミア処理は、Atotech社のSecuriganth MVシリーズ処理液を使用して膨潤液処理(60℃、5分)-酸化液処理(80℃、20分)-中和液処理(50℃、4分)の3段階で進行した。
【0068】
2)表面粗さ(Ra,nm)の測定
デスミア処理された絶縁層の表面をOptical Profiler(Nanoview 3D surface profiler NV-2700, Nanosystem)を用いて試料当たり5回測定して、その平均値で算術平均粗さ(Ra)を求めた。
【0069】
<銅箔密着力>
1)銅めっき処理
銅めっきは、無電解化学銅めっきと電気銅めっきの2段階で進行した。無電解化学銅めっきは、Atotech社のPrintoganth MV製品を使用して、めっき厚さが0.5μm~1.0μmとなるように処理し、処理後には150℃の熱風オーブンで30分間乾燥した。
【0070】
電気銅めっきは、Atotech社のExpt Inpro SAP6薬品を使用して、めっき厚さが約20μmとなるように処理し、処理後には190℃の熱風オーブンで1時間の間熱処理した。
【0071】
2)銅箔密着力の評価
Stable Micro Systems社のTexture Analyzer(TA-XT Plus)を用いて銅めっき層の90度剥離力を測定した。測定された剥離力が0.45kgf/cm以上の場合、銅箔密着力が良好なものと判定し、0.45kgf/cm未満の場合、銅箔密着力が不良なものと判定した。
【0072】
【0073】
上記結果のように、実施例1~4は、40ppm/℃以下の低い熱膨脹係数と良好な銅箔密着性を示した。しかしながら、比較例1及び4の場合は、33~34ppm/℃の低い熱膨脹係数を示したが、デスミア処理による表面粗さ(Ra)が200nm以下であり、銅箔密着力も不良であった。また、比較例2及び3の場合は、熱膨脹係数も相対的に高く、銅箔密着力も不良であった。
【0074】
また、比較例5のように硬化促進剤として金属系化合物のみを含む場合には、硬化後にフィルムが割れやすくなってサンプルの作製が不可能であり、デスミア処理時に表面が過エッチングされて白化現象が発生した。また、比較例6のように硬化促進剤としてイミダゾール系化合物のみを含む場合には、熱膨脹係数が相対的に高く、デスミア処理時に表面が過エッチングされて白化現象が発生した。
【0075】
したがって、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物は、硬化剤として特定の重量比を有するシアネートエステル系樹脂とフェノール系樹脂を適用し、イミダゾール系化合物及び金属系化合物を同時に含む硬化促進剤を適用することにより、優れた硬化物性を有することができる。また、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物を用いて製造した絶縁フィルムは、デスミア処理によって適切な表面粗さを有することができるので、優れた銅箔密着力を有する特徴がある。
【0076】
また、本出願の一実施態様に係る樹脂組成物を用いて、配線密着力、耐化学性などに優れた多層プリント回路基板を製造することができる。
【国際調査報告】