IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2024-544448熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品
<>
  • 特表-熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品 図1
  • 特表-熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20241126BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241126BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08L67/02
C08J5/04 CEQ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
C08K7/14
C08L63/00 A
C08L51/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580890
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2023008981
(87)【国際公開番号】W WO2024071585
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】10-2022-0124048
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0082468
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ソンホ
(72)【発明者】
【氏名】コ、コン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソン-モ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン-ソク
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB09
4F072AD02
4F072AD03
4F072AD37
4F072AE10
4F072AF06
4F072AF24
4F072AG05
4F072AH04
4F072AH05
4F072AH23
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK04
4F072AK15
4F072AL02
4J002BN163
4J002CD194
4J002CF062
4J002CF071
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品に関し、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、使用する素材が従来と異なるように変更されることで、耐熱特性及び耐衝撃性が改善され、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供する効果がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と、
ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と、
iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と、
iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と、
v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.45~0.85dl/gであり、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.5~0.9dl/gである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生ポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%、及び(メタ)アクリレート化合物1~20重量%を含むグラフト共重合体を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、グリシジルメタクリレート由来の単量体を1~15重量%含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さい、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂はミネラルウォーターボトル再生樹脂を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤、加水分解抑制補助剤及びフェノール性酸化防止剤から選択された1種以上の添加剤を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、曲げ強度が140MPa以上であると同時に、曲げ弾性率が5000MPa以上であり、前記曲げ強度および前記曲げ弾性率は、4mmの試験片を、ISO 178に準拠してSPAN64を使用して2mm/minの速度で測定された、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さい、請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物を含んで製造される、自動車内装部品。
【請求項14】
前記自動車内装部品は、車両電子機器ボディ制御モジュール(Body Control Module)ハウジングである、請求項13に記載の自動車内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年09月29日付の韓国特許出願第10-2022-0124048号及びこれに基づいて2023年06月27日付で再出願された韓国特許出願第10-2023-0082468号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品に関し、より詳細には、使用する原料の変化により耐熱特性及び耐衝撃性が改善されて、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された自動車内装部品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車内装部品に使用される素材としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)を混合した複合樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA)を混合した複合樹脂、またはポリカーボネート樹脂(PC)とポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を混合した複合樹脂などがあり、これらは、優れた物性を有し、様々な自動車内装部品に活用されている。
【0004】
最近、環境問題により、様々なプラスチック製品に、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」という)で製造された製品の廃棄物を加工して使用することが検討されている。
【0005】
特に、ペットボトル(Pet Bottle)を例に挙げると、25億個の数量と約10万トンの増量がなされているが、これに対するリサイクル方案は、回収して飲み物の瓶に再生したり、繊維や包装材に再生する程度に過ぎない。
【0006】
但し、前記PET樹脂は、PBTと同様にポリエステル樹脂類に分類されるが、PBTよりも結晶化温度が高いため、成形性が不良であり、寸法変化などの機械的性質も相対的に不安定であると知られている。
【0007】
そのため、PET樹脂を追加する場合、PBTと比較して前記のような物性が不良であるしかないため、これを解消できる技術を用意することが必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0060907号(公開日2016.05.31)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、使用する素材を変えることで、原価が節減されるだけでなく、無塗装品として使用可能であるので経済性に優れながらも、耐熱特性、耐衝撃性を改善して、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の目的は、前記の熱可塑性樹脂組成物を用いた自動車内装部品を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、I)i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
II)前記I)において、前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.45~0.85dl/gであってもよい。
【0014】
III)前記I)又はII)において、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.5~0.9dl/gであってもよい。
【0015】
IV)前記I)~III)において、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生ポリエチレンテレフタレート樹脂であってもよい。
【0016】
V)前記I)~IV)において、前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%、及び(メタ)アクリレート化合物1~20重量%を含んでなることができる。
【0017】
VI)前記I)~V)において、前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の粒子サイズは0.2~0.4μmであってもよい。
【0018】
VII)前記I)~VI)において、前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上であってもよい。
【0019】
VIII)前記I)~VII)において、前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、グリシジルメタクリレート由来の単量体を1~15重量%含んでなることができる。
【0020】
IX)前記I)~VIII)において、前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さくてもよい。
【0021】
X)前記I)~IX)において、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂はミネラルウォーターボトル再生樹脂を含むことができる。
【0022】
XI)前記I)~X)において、前記ミネラルウォーターボトル再生樹脂は、廃ミネラルウォーターボトルを押出してペレットに成形したものであってもよい。
【0023】
XII)前記I)~XI)において、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Melting point)は250~256℃であってもよい。
【0024】
XIII)前記I)~XII)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレン系滑剤、加水分解抑制補助剤及びフェノール性酸化防止剤から選択された1種以上の添加剤(vi)を含むことができる。
【0025】
XIV)前記I)~XIII)において、前記熱可塑性樹脂組成物は、4mmの試験片を、ISO 178に準拠してSPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が140MPa以上であると同時に、曲げ弾性率が5000MPa以上であってもよい。
【0026】
また、本発明は、XV)i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を含み、前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さいことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は、XVI)i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0028】
XVII)前記XVI)において、前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練及び押出するステップは、押出温度250~300℃、F/R(Flow ratio)10~55kg/hr、スクリュー回転数150~600rpm下で行うことができる。
【0029】
XVIII)前記XVI)~XVII)において、前記熱可塑性樹脂組成物を押出した後、射出温度240~280℃及び金型温度40~80℃下で射出するステップを含むことができる。
【0030】
また、本発明は、XIX)i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)再生ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、
XX)前記XIX)において、前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さいことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、XXI)前述した熱可塑性樹脂組成物を含んで製造されることを特徴とする自動車内装部品を提供する。
【0032】
XXII)前記XXI)において、前記自動車内装部品は、車両電子機器ボディ制御モジュール(Body Control Module)ハウジングであってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は自動車内装部品として成形され得る。
【0034】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から製造された自動車内装部品は、耐熱特性及び耐衝撃性が改善されて、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たすと同時に、成形性に優れるので、外観品質が向上する効果がある。
【0035】
したがって、本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物は、自動車内装材として必要とする車両電子機器ボディ制御モジュール(Body Control Module)ハウジングをはじめとする自動車内装部品分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】後述する実施例で使用する再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を製造する過程を示す工程フローチャートである。
図2】バージン(virgin)PET樹脂(左側の図)、及び図1の工程によって収得された廃ミネラルウォーターボトル再生樹脂(右側の図)をそれぞれ示した写真である。ここで、PET樹脂は、DMT工法で作られたバージン樹脂を指す。前記DMT工法は、当業界に公知されたジメチルテレフタレート(DMT)とエチレングリコール(EG)のエステル交換反応を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0039】
本記載において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」、または「由来の単位として含む」として定義され得る。
【0040】
他に特定されない限り、本記載で使用された成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語により修飾されるものと理解されなければならない。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、他に特定されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0041】
本記載において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む、記載された範囲内の全ての値を含むものと理解される。例えば、“5~10”の範囲は、5、6、7、8、9及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5~8.5、及び6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。また、10~30%の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。
【0042】
本記載で使用する用語「加水分解安定化剤」は、他に特定しない限り、加水分解から安定しているので、加水分解が起こり得る条件でも機械的物性などを改善させることができる物質を指す。
【0043】
本記載において、流動指数は、他に特定しない限り、ISO 1133に準拠して260℃下で5kgの荷重で測定した溶融流れ指数(Melt Flow Index)であり得る。
【0044】
本発明者らは、特定の重量%のポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体とカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤、並びにSiO2含量が過量であるガラス繊維を含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造した自動車用内装部品において、耐熱特性及び耐衝撃性が改善されて、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することを確認し、本発明のような機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たしながらも、成形性及び外観品質に優れた無塗装品として自動車用内装部品の素材を完成した。
【0045】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の一具現例に係る熱可塑性樹脂組成物は、i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体12~20重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を含む。
【0046】
本発明の一具現例に係るi)ポリブチレンテレフタレート樹脂とii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は結晶性素材であって、これを含む熱可塑性樹脂組成物に成形性を付与し、これを使用して製造した自動車内装部品に耐化学性を付与する。
【0047】
i)ポリブチレンテレフタレート樹脂
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性樹脂であって、外部から流入する化学薬品の浸透を防止しながらも、結晶化された構造として射出成形時に、これを含む熱可塑性樹脂組成物の流れ性を向上させ、外観品質を優れたものとする。
【0048】
本発明の一実施例において、前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂として、1,4-ブタンジオールと、テレフタル酸又はジメチルテレフタレートとを直接エステル化反応させるか、またはエステル交換反応させて縮重合したポリブチレンテレフタレート樹脂が使用されてもよい。
【0049】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)は、下記化学式1で表される繰り返し単位を有することができる。
【0050】
【化1】
【0051】
前記化学式において、mは、50~200の範囲の平均重合度である。
【0052】
本発明の一実施例において、前記熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度を高めるために、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂をポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミドなどのような衝撃改善化合物と共重合した共重合体、または前記ポリブチレンテレフタレート樹脂を前記衝撃改善化合物と混合した変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が使用されてもよい。
【0053】
本発明の一実施例において、ASTM D2857に準拠して測定した前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、一例として、0.45~0.85dl/g、0.45~0.77dl/g、または0.55~0.75dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が過度に低いと、物性補強効果が低下するため、耐化学性の改善効果が僅かであるという欠点があり、固有粘度が過度に高いと、成形性が低下して部品の外観に問題が発生し得るという欠点がある。
【0054】
本記載において、固有粘度は、特に断りがない限り、測定しようとする試料を0.05g/mlの濃度でメチレンクロライド溶媒に完全に溶解させた後、フィルターを使用して濾過させた濾液を、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて20℃で測定した値である。
【0055】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、重量平均分子量が、一例として10,000~80,000g/mol、20,000g/mol~100,000g/mol、30,000g/mol~90,000g/mol、40,000g/mol~80,000g/mol、または50,000g/mol~70,000g/molであってもよい。上述した範囲内で、機械的物性を向上させることができる。
【0056】
前記重量平均分子量は、具体的に、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れ、化合物の濃度が1wt%であるサンプル試料を準備し、標準試料(ポリスチレン、polystryere)とサンプル試料をフィルター(ポアサイズが0.45μm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して、化合物の分子量及び分子量分布を得ることができる。このとき、測定機器としてインフィニティ(Infinity)II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0057】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含量は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維及びvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、一例として44~56重量%、具体例として45~52重量%、好ましくは46~52重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品にクラックが発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0058】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きいものであってもよい。
【0059】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂の定義に符合する場合、商業的に購入して使用しても構わない。
【0060】
ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂
本発明の一実施例によれば、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂を含むことによって、BCM部品に必要な物性を実現することができる。
【0061】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂であれば、特に制限されない。
【0062】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、下記化学式2で表される繰り返し単位を基本構造として有することができる。
【0063】
【化2】
【0064】
前記化学式において、nは、1以上の整数を示し、例えば、40~160の整数を示す。
【0065】
本発明の一実施例において、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、衝撃改善化合物と共重合又は改質された(共)重合体であるか、あるいは衝撃改善化合物又は環境に優しい化合物を含んでなる共重合体の形態で使用することで、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度を高めることができる。
【0066】
前記衝撃改善化合物は、一例として、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミドなどであってもよい。
【0067】
前記環境に優しい化合物は、一例として、1,4-シクロヘキサンジメタノール、またはイソフタル酸などであってもよい。
【0068】
本発明の一実施例において、ASTM D2857に準拠して測定したii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5dl/g以上、0.5~0.9dl/g、または0.6~0.9dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が過度に低いと、物性補強効果が低下するため、耐化学性の改善効果が僅かであり得、固有粘度が過度に高いと、成形性が低下して部品の外観に問題が発生し得る。
【0069】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、重量平均分子量が、一例として5,000~80,000g/mol、または10,000~60,000g/molであってもよい。上述した範囲を満たす場合、耐加水分解性及び射出偏差を改善することができる。
【0070】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点(Melting point)が250℃以上、具体例として250~256℃であってもよく、この場合、熱可塑性樹脂組成物の溶融流れ指数を改善させることができるので、成形性を向上させるのに好ましい。
【0071】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化温度(Tm)が250℃以上であってもよく、具体例として250~258℃であってもよく、この場合、熱可塑性樹脂組成物の溶融流れ指数を改善させることができるので、成形性を向上させるのに好ましい。
【0072】
本記載において、融点は、当該分野で公知された方法を用いて測定することができ、一例として、熱示差走査熱量計(DSC)を用いて熱吸収ピークを測定することができる。
【0073】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含量は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、8~17重量%、好ましい例として9~17重量%、より好ましい例として9~16重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品にクラックが発生することがあり、上述した範囲を超えると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の剛性及び耐熱特性が低下することがある。
【0074】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリエチレンテレフタレート樹脂の定義に符合する場合、商業的に購入して使用しても構わない。
【0075】
前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を含むことができる。
【0076】
一例として、前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ミネラルウォーターボトル再生樹脂を含むことができる。前記ミネラルウォーターボトルは、これに限定するものではないが、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂であって、テレフタル酸とエチレングリコールを縮合重合して製造したポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0077】
前記ミネラルウォーターボトル再生樹脂は、廃ミネラルウォーターボトルを押出してペレットに成形したものであってもよい。
【0078】
前記ミネラルウォーターボトル再生樹脂は、一例として、後述する図1の工程フローチャートに従ってPETボトルをフレーク処理して収得することができる。
【0079】
下記の図1は、実施例で使用する廃ミネラルウォーターボトルを押出してリサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂を作製する過程を示す工程フローチャートである。
【0080】
下記の図1によれば、廃ミネラルウォーターボトルを有色と無色透明に分類する選別工程を行う。前記選別は、目視で行うことができ、ここで、有色は、主に緑色であり得る。
【0081】
選別された廃ミネラルウォーターボトルは、切断機を用いて粉砕される。粉砕工程に先立って200kg前後を洗浄することが、乾燥及びフレーク工程を行うのに好ましい。
【0082】
前記粉砕サイズは、一例として3~5mmの範囲内、具体例として3.5~5mmの範囲内に微細粉砕することができ、この場合、粉砕物の表面積を高めることで、後続の乾燥工程の効率を高め、増粘剤との配合効率も改善することができる。
【0083】
前記粉砕物を2次乾燥した後、フレーク処理する。
【0084】
前記2次乾燥は、前記粉砕物から水分の除去及び増粘剤を配合する工程であって、必要に応じては、予備乾燥後に除湿処理する方式で行われてもよい。
【0085】
前記予備乾燥は、前記粉砕物の含水率が1000ppm前後になるように120~140℃の範囲内で加熱する工程であって、予備乾燥と同時にあるいは順次に増粘剤を配合する。
【0086】
具体的には、140℃、50rpmに制御された摩擦乾燥機に前記粉砕物と増粘剤を投入し、120~140℃の加熱空気を連続して通過させながら2時間程度滞留させて、前記粉砕物の含水率が1000ppmになるように行われ得る。
【0087】
本記載において、ppmは、別途の定義がない限り、重量基準である。
【0088】
前記増粘剤は、前述した温度条件(例えば、140℃)及び後述する乾燥機の温度条件(例えば、165℃)付近で溶融しないと共に、増粘反応を行う化合物であれば、限定せず、一例として、カルボジイミド系増粘剤を使用することができる。
【0089】
前記カルボジイミド系増粘剤としては、例えば、カルボジイミド、ポリカルボジイミドなどがあり、当該増粘剤は、目的とする製品に適した固有粘度に応じて、前記粉砕物との配合比を適宜調節して投入するもので、粉砕物と増粘剤の混合物の合計100重量%に、一例として0.75重量%以下、または0.25~0.75重量%で投入することができる。
【0090】
前記除湿処理は、前述した(予備)乾燥物から樹脂の加水分解を防止するために含水率が50ppm未満になるように除湿して、追加の乾燥物を得る工程である。
【0091】
前記除湿処理は、一例として、前記追加の乾燥物を、高温の熱風形態で乾燥機ホッパーに投入し、温度165℃及び露点-60~-40℃下で5時間前後に滞留させ、含水率が50ppm未満になるように処理することができる。
【0092】
前記フレーク処理は、光学フレーク選別機を用いて5mm前後にフレーク化する。
【0093】
その次に、200~270℃の押出温度で押出してペレットに成形することができる。
【0094】
具体的に、前記押出工程は、前記フレークに増粘剤を追加配合し、増粘剤の溶融温度で溶融させた溶融物をペレットに成形することができる。
【0095】
前記増粘剤は、前述した予備乾燥物に投入した増粘剤よりも溶融温度が低い化合物であって、前述した乾燥温度140℃及び2次乾燥温度165℃付近で溶融されるので、前述した増粘剤と共に投入すると溶融されて予備乾燥及び除湿処理を行うことができないため、別途に投入する。
【0096】
前記増粘剤の使用量を適宜調節して、目的とする製品に要求される固有粘度を有するリサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂を提供することができる。一例として、前述した溶融物の総重量を基準として、一例として0.1~0.75重量%の範囲内であってもよい。
【0097】
前記増粘剤は、オキサゾリン系増粘剤を使用することができ、例えば、オキサゾリン、1,3-フェニレンビスオキサゾリンなどが挙げられる。
【0098】
前記押出工程は、一例として、押出機に前記フレーク及び増粘剤を投入し、溶融温度275~280℃、最大溶融圧約110barで溶融押出させて行うことができる。
【0099】
収得された溶融押出物は、一例として、真空度10mbarで20ミクロンのSUS(Steel Use Stainless)フィルターを通過させて異物を除去する後工程を行った後、冷却及び切断され得る。
【0100】
前記冷却及び切断は、通常使用する装置を用いて行われ得る。
【0101】
一例として、ペレタイザーを用いて、SUSフィルターから排出される溶融押出物を、ダイプレートの温度320℃、ブレードの回転数3200rpmの条件下で、90℃の循環水を使用して直径2.8mmの球状に成形することができる。
【0102】
収得された成形結果物が140℃以上の残熱を保持する場合、成形結果物の表面を再結晶化し得、一例として、振動コンベヤが設置されたインライン(in line)結晶化器を15分前後に通過させる途中に表面の再結晶化が起こり得る。
【0103】
前記表面結晶化により、原料同士がくっついて凝集することを防止することができる。
【0104】
表面再結晶化された成形結果物は、必要に応じて、タルク、カップリング剤、ガラス繊維などとコンパウンド処理して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂に加工され得る。
【0105】
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、8~17重量%、好ましい例として9~17重量%、より好ましい例として9~16重量%であってもよい。上述した範囲内で、前記リサイクルPET樹脂の含量を調節することによって、前記ポリエステル系組成物の機械的物性を向上させることができ、射出特性とのバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を確保することができる。
【0106】
(加水分解安定化剤)
本発明の一実施例によれば、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体とiv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂を併用使用して、加水分解安定特性を実現する加水分解安定化剤として使用することができる。
【0107】
本記載において、重合体中の単位、単量体、ブロックなどの重量%は、由来する単量体の重量%を意味することができる。
【0108】
また、本記載において、重合体中の単位、単量体、ブロックなどの重量%は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、他の方法としては、全ての単量体が重合されることを前提として、投入された単量体の含量を、製造された重合体中の単位などの含量として定義することができる。
【0109】
iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体
本発明において、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、耐熱特性を補完するだけでなく、これを含む熱可塑性樹脂組成物で製造される自動車内装部品に優れた耐衝撃性を提供することができる。
【0110】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体はグラフト共重合体であってもよい。
【0111】
前記グラフト共重合体は、一例として、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%、及び(メタ)アクリレート化合物1~20重量%を含んでなることができる。
【0112】
前記グラフト共重合体は、具体的に、共役ジエン化合物50~70重量%、芳香族ビニル化合物20~35重量%、及び(メタ)アクリレート化合物1~15重量%を含んでなることができる。
【0113】
前記グラフト共重合体は、好ましくは、共役ジエン化合物55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%、及び(メタ)アクリレート化合物5~15重量%を含んでなることができる。
【0114】
前述した範囲を外れて共役ジエン化合物の含量が少なすぎると、耐衝撃性が低下することがあり、共役ジエン化合物の含量が多すぎると、剛性(弾性率)が低下することがある。
【0115】
また、前述した範囲を外れて(メタ)アクリレート化合物の含量が少なすぎると、剛性は改善されるが、耐衝撃性が低下することがあり、(メタ)アクリレート化合物の含量が多すぎると、剛性補完効果が低下することがある。
【0116】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる(メタ)アクリレート化合物は、本発明の属する技術分野で使用することができる通常の(メタ)アクリレート化合物、例えば、メタクリレート及びアクリレートから選択される1種以上であってもよく、メタクリレートが好ましい。
【0117】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる共役ジエン化合物は、例えば、ブタジエンを含むことができるが、特定の共役ジエン化合物のみを含むものに制限されない。
【0118】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びp-メチルスチレンから選択される1種以上であってもよく、スチレンが好ましい。
【0119】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前述した特定の含量範囲の成分から重合されたことを特徴とし、好ましくは、(メタ)アクリレート成分が適切に含まれているので、耐熱特性を良好に向上させることができ、必要であれば、前記(メタ)アクリレート成分と異なる別個のアルキルアクリレート成分をさらに含むことができる。
【0120】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、粒子サイズ0.2~0.4μm、好ましい例として0.25~0.35μm、より好ましい例として0.2~0.35μmである粉体として使用することができ、この場合、衝撃強度の向上及び射出性の向上を提供するという効果がある。
【0121】
本記載において、粒子サイズは、粒子の大きさを測定する公知の方法によって測定することができ、詳細には、窒素ガス吸着法を用いて、BET分析装備(Micromeritics社のSurface Area and Porosity Analyzer ASAP 2020装備)を用いて測定することができる。より具体的には、チューブに0.3g~0.5gの試料を添加し、100℃で8時間前処理した後、常温でASAP 2020分析装備を用いて測定することができる。同じサンプルに対して3回測定して平均値を得ることができる。
【0122】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が、一例として、10,000~180,000g/mol、20,000g/mol~150,000g/mol、30,000g/mol~120,000g/mol、50,000g/mol~120,000g/mol、または80,000g/mol~120,000g/molであってもよい。上述した範囲内で、機械的物性を向上させることができる。
【0123】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、12~20重量%、好ましい例として12~19重量%、より好ましい例として12~18重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の衝撃性が弱くなることがあり、上述した範囲を超えると、これを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性が不良であり、当該熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の剛性及び耐熱特性が悪化することがある。
【0124】
iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂
本発明の一具現例に係るiv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の耐衝撃性を提供すると同時に、耐化学性を改善することができる。
【0125】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、一例として、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとアルキレンから生成されるエポキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーであってもよい。
【0126】
本記載において、他に特定しない限り、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルモノマーの両方を含み、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートモノマーの両方を含む。
【0127】
前記エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの具体的な例は、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートをはじめとする1,2-エポキシ基を含有する種類を含むことができる。
【0128】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、具体例として、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上であってもよい。
【0129】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、一例として、グリシジルメタクリレート単量体1~15重量%または3~10重量%、エチレン単量体60~74重量%または63~74重量%、及びn-ブチルアクリレート20~30重量%または25~30重量%を含んで重合された共重合体であってもよい。このとき、グリシジルメタクリレート単量体の含量が多すぎると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の耐衝撃性及び耐化学性を改善するのに不十分であり得る。
【0130】
前記iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂の含量は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、0.1~2.2重量%、好ましい例として0.5~2.2重量%、より好ましい例として1~2.2重量%であってもよい。前記範囲を外れてカルボキシ反応性エポキシ樹脂の含量が多すぎると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の表面に射出品のガス発生の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0131】
前記iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体及びiv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂の総含量は、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、15.1~20重量%、好ましい例として15.2~19重量%、より好ましい例として15.3~18重量%で含まれてもよい。前記範囲を外れて過量使用すると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の表面に射出品の外観品質を阻害することがあり、適切でない少量で使用すると、耐衝撃性を提供することができず、エステル交換反応の抑制効果を提供し難い。
【0132】
v)ガラス繊維
本発明の一実施例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、v)ガラス繊維を含むことによって、前記熱可塑性樹脂組成物の物性を向上させ、これによって、前記熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の引張強度及び曲げ強度を向上させることができる。
【0133】
前記v)ガラス繊維は、前記熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された成形品の剛性を補強して機械的物性を改善する種類を使用することができる。
【0134】
前記v)ガラス繊維は、一例として、シリカ50~65重量%、アルミナ15~32重量%及び酸化カルシウム12~22重量%を含むものであってもよい。前記範囲で含まれるガラス繊維を使用する場合、耐化学性、機械的物性及び耐熱性とのバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を確保することができる。
【0135】
前記v)ガラス繊維は、シリカ50~60重量%または50~55重量%、アルミナ15~27重量%または15~22重量%、及び酸化カルシウム13~25重量%または13~20重量%を含むことがより好ましい。この場合、加工性、比重、機械的特性の物性バランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を確保することができ、これから高耐熱、高剛性及び高靱性の成形品を提供することができる。
【0136】
前記v)ガラス繊維は、円形断面またはフラットな断面のガラス繊維であってもよく、前述した範囲及び断面を有する場合、高剛性、軽量化及び外観品質が確保され得る。
【0137】
前記v)ガラス繊維は、一例として、平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比(L/D)で示す縦横比が、一例として1:1~1:4、具体例として1:1~1:3、さらに具体的に1:1~1:2である場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物において高強度、高靱性と共に、伸び率及び表面外観品質の改善を提供することができ、具体例として1:3~1:4、さらに具体的に約1:4である場合、高強度、高靱性と共に、平坦度、変形及び配向の面で有利な成形品を提供することができる。
【0138】
本記載において、平均直径及び平均長さは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができ、具体的には、走査電子顕微鏡を用いて無機充填剤20個を選択し、直径を測定できるアイコンバー(bar)を用いて、それぞれの直径及び長さを測った後、算術平均を出してそれぞれ算出する。
【0139】
前記平均直径は、一例として10~13μm、具体例として10~11μmであってもよく、前記平均長さは、一例として2.5~6mm、具体例として3~4mmであってもよい。上述した範囲を満たす場合、加工性を改善して、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して製造された成形品の引張強度を改善するという効果がある。
【0140】
本発明の一実施例において、前記v)ガラス繊維は、他の無機質繊維と共に使用されてもよく、前記無機質繊維は、炭素繊維、玄武岩繊維、ケナフ又は大麻をはじめとする天然繊維から選択される1種以上である。
【0141】
前記v)ガラス繊維は、繊維の製造時または後処理工程時にサイジング剤で処理され得るが、このようなサイジング剤としては、潤滑剤、カップリング剤、界面活性剤などがある。
【0142】
前記潤滑剤は、ガラス繊維が良好なストランドを形成するために使用され、前記カップリング剤は、ガラス繊維とベース樹脂との間の良好な接着を可能にするもので、ベース樹脂及びガラス繊維の種類を考慮して適宜選択する場合、熱可塑性樹脂組成物に優れた物性を付与することができる。
【0143】
前記カップリング剤は、ガラス繊維に直接処理するか、または有機マトリックスに添加することができ、カップリング剤の性能を十分に発揮できる含量を適宜選択しなければならない。
【0144】
前記カップリング剤は、アミン系、アクリル系、またはシラン系などが挙げられ、シラン系を使用することが好ましい。
【0145】
前記シラン系は、一例として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどであってもよい。
【0146】
前記v)ガラス繊維は、一例として、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、10~35重量%、好ましい例として10~32重量%、より好ましい例として10~28重量%、より一層好ましい例として15~25重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品にクラックが発生することがあり、上述した範囲を超えると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の剛性及び耐熱特性が低下することがある。
【0147】
添加剤
本発明の一具現例に係る熱可塑性樹脂組成物は、その流れ性の向上などのために、適切なvi)添加剤をさらに含むことができる。
【0148】
前記vi)添加剤は、一例として、滑剤、熱安定剤及び加水分解抑制補助剤から選択された1種以上を使用することができる。
【0149】
前記滑剤は、これを含む熱可塑性樹脂組成物から自動車内装部品を製造するために使用される射出スクリューの取り出しの容易性及び流れ性を確保できるものであれば、特に制限されない。
【0150】
前記滑剤は、一例として、ポリエチレン系ワックスを使用することができる。
【0151】
前記滑剤は、一例として、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、0.01~5重量%、好ましい例として0.1~3重量%、より好ましい例として0.1~2重量%、さらに好ましい例として0.1~1重量%、最も好ましい例として0.1~0.5重量%であってもよい。前記範囲を外れて前記滑剤の含量が多すぎると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害することがある。
【0152】
前記熱安定剤は、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の高温による変性を防止できるものであれば、特に制限されない。
【0153】
前記熱安定剤は、前記特性を確保できる限り、特に制限されないが、好ましくは、フェノール系酸化防止剤(High phenolic antioxidant)を使用することができる。
【0154】
前記フェノール系酸化防止剤は、結晶化温度(Tm)が110~130℃であるヒンダードフェノール系安定剤を含むことができ、具体例として、テトラキス[エチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、またはこれらの結合を含むことができる。
【0155】
前記熱安定剤は、一例として、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、0.01~5重量%、好ましい例として0.01~3重量%、より好ましい例として0.01~2重量%であってもよい。前記熱安定剤の含量が多すぎると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害することがある。
【0156】
本発明に係る加水分解抑制補助剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に悪影響を及ぼさない限り、公知された種類を多様に使用することができ、市販されている物質の中では、化学式NaH2PO4の第一リン酸ナトリウムのような無機ホスフェート化合物を使用することができる。
【0157】
前記加水分解抑制補助剤は、一例として、組成物を構成する全成分(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂、v)ガラス繊維、及び後述するvi)添加剤)の合計100重量%を基準として、0.01~5重量%、好ましい例として0.01~3重量%、より好ましい例として0.01~2重量%であってもよい。前記範囲を外れて、前記加水分解抑制補助剤の含量が多すぎると、これを含む熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された自動車内装部品の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害することがある。
【0158】
前記熱可塑性樹脂組成物は、後述する試験片を作製し、ISO 75に準拠して測定した高荷重の熱変形温度が180℃以上、具体例として184~190℃であってもよい。
【0159】
本記載において、高荷重の熱変形温度は、ISO 75に準拠して1.82MPaの高荷重下で測定することができる。
【0160】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0161】
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、i)ポリブチレンテレフタレート樹脂44~56重量%と;ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂8~17重量%と;iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~28重量%と;iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~2.2重量%と;v)SiO2、CaO及びAl23を含み、前記SiO2含量が50重量%以上を占め、Al23含量がCaO含量よりも大きいガラス繊維10~35重量%と;を押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含む。
【0162】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述したその他の添加剤を含むことができる。
【0163】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサからなる群から選択された1種以上を用いて行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、これを用いて組成物を均一に混合した後、押出して、一例としてペレット状の熱可塑性樹脂組成物を収得することができ、この場合、機械的物性の低下及び熱的特性の低下が防止され、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0164】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、一例として、押出温度250~300℃、供給速度(Flow ratio、F/R)10~59kg/hr、スクリュー回転数200~390rpm下で行うことができ、好ましくは、押出温度250~280℃、F/R10~40kg/hr、スクリュー回転数220~300rpm下で行うことができる。
【0165】
前記熱可塑性樹脂組成物を押出した後、射出温度240~280℃、具体例として250~270℃、金型温度40~80℃、具体例として50~70℃下で、射出速度10~50mm/sec、具体例として10~30mm/sec下で射出するステップを含むことができる。
【0166】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む自動車内装部品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む自動車内装部品を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0167】
自動車内装部品
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分間の十分な補完を通じて、成形性、機械的物性、高荷重耐熱特性及び耐化学性を必要とする自動車内装部品に有用に使用することができる。
【0168】
前記自動車内装部品の製造方法は、当業界で通常用いる方法により製造することができる。一例として、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の溶融混練物、ペレットまたはこれから成形されたシート(板材)を原料として、射出成形法(インジェクションモールディング)、射出圧縮成形法、押出成形法(シートキャスティング)、プレス成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、または回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0169】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、250~300℃、または250~280℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を用いて、200~390rpm、または250~280rpm下で、主投入口にi)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂、iii)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、iv)カルボキシ反応性エポキシ樹脂及びv)ガラス繊維を供給速度(Flow ratio、F/R)10~59kg/hr、または30~40kg/hrで投入し、サイド投入口にvi)添加剤を供給速度10~59kg/hr、または10~20kg/hrで投入し、溶融混練及び押出してペレットを製造することができる。
【0170】
前記ペレットを射出成形機に投入して自動車内装部品を製造することができる。
【0171】
製造された自動車内装部品の物性を間接的に確認するために、前記ペレットを射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて、射出温度260℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出し、ISO規格の試験片を製造することができる。
【0172】
製造された試験片は、一例として、ISO 1133に準拠して260℃下で5kgの荷重で測定した流動指数(Melt Flow Rate)が30g/10min以上、具体例として30~36g/10minであってもよい。
【0173】
また、前記試験片は、一例として、ISO 180/1Aに準拠して23℃下で測定したアイゾットノッチ衝撃強度が10kJ/m2以上、具体例として11~12kJ/m2であってもよい。
【0174】
また、前記試験片は、一例として、ISO 527に準拠して50mm/minの速度で測定した引張強度が90MPa以上、具体例として90~99MPaであってもよい。
【0175】
また、4mmの試験片を、一例として、ISO 178に準拠してSPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が140MPa以上、具体例として140~144MPaであってもよく、曲げ弾性率が5000MPa以上、具体例として5000~5150MPaであってもよい。
【0176】
前記自動車内装部品は、具体的に車両電子機器ボディ制御モジュール(Body Control Module)ハウジングであってもよいが、特定の種類に限定されない。
【0177】
すなわち、本発明の一具現例に係る熱可塑性樹脂組成物は、特定の重量%のポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、カルボキシ反応性エポキシ樹脂、及びSiO2が過量を占めるガラス繊維を含むことを特徴とし、前記組成物から製造された自動車内装部品は、使用される素材が従来の素材から変更されることで、耐熱特性及び耐衝撃性が改善されて、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという利点がある。
【0178】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装部品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0179】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0180】
[実施例]
実施例1~4、及び比較例1~9
実施例で使用した原料は、次の通りである。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)
A-1)PBT、固有粘度(IV)0.7dl/g
A-2)PBT、固有粘度(IV)0.8dl/g
(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET:ホモポリマー)、固有粘度(IV)0.8dl/gのリサイクルPET樹脂:ミネラルウォーターボトルを下記図1の工程フローチャートに従って加工して収得された図2(右側の図)の白色チップに該当
(C)(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体
C1)メタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(粒子サイズ0.3μm、メチルメタクリレート15重量%、ブタジエン80重量%、スチレン5重量%、重量平均分子量103,000g/mol)
C2)アクリロニトリル-スチレン-ブチルアクリレート共重合体(アクリロニトリル25重量%、スチレン34重量%、ブチルアクリレート41重量%、重量平均分子量130,000g/mol)
C3)アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(アクリロニトリル10重量%、ブタジエン60重量%、スチレン30重量%、重量平均分子量78,000g/mol)
D)エチレン/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート樹脂(エチレン65重量%、n-ブチルアクリレート28重量%、グリシジルメタクリレート7重量%)
(E)ガラス繊維:平均長さ3mm、平均直径10μm
E-1)シリカ48重量%、アルミナ12重量%、酸化カルシウム35重量%、MgOを含むその他の成分5重量%を含んでなるガラス繊維
E-2)シリカ44重量%、アルミナ14重量%、酸化カルシウム36重量%、MgOを含むその他の成分6重量%を含んでなるガラス繊維
E-3)シリカ52重量%、アルミナ18重量%、酸化カルシウム16重量%、MgOを含むその他の成分14重量%を含んでなるガラス繊維
(添加剤)
F)滑剤(ポリエチレンワックス)LDPE wax
G)加水分解抑制補助剤(エステル交換反応抑制剤):化学式NaH2PO4の第一リン酸ナトリウム
H)熱安定剤(高フェノール系酸化防止剤):ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Pentaerythritol tetrakis[(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)]
【0181】
下記表1に記載された熱可塑性樹脂組成物の原材料を混合した後、押出を通じて、均一な分散度の熱可塑性樹脂組成物をペレット状に製造した後、前記ペレットに熱を加えて金型枠に注入した後、冷却させて部品を生産する射出工程を通じて、自動車内装部品として利用可能な試験片を作製した。
【0182】
具体的には、下記表1に示した各成分を含めてミキサーで混合した後、260℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を用いて、250rpm下で、主投入口に供給速度39kg/hrで投入し、サイド投入口に添加剤を11kg/hrで投入しながら1~3分間押出加工して熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【0183】
製造されたペレットを対流オーブンにて80℃で4時間以上乾燥させた後、射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて射出温度260℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出して、ISO試験片を作製した。
【0184】
【表1】
【0185】
参考に、前記表1で使用した原料は、A-1~Hまで全て合わせた重量%が総100重量%となる。
【0186】
実験例1:自動車内装部品試験片の物性の評価
前記実施例1~4、及び比較例1~9で製造された自動車内装部品試験片の物性を評価した。評価方式は、次の通りである。
-流動性(Melt Flow Rate):ISO 1133に準拠して行う(260℃、5kg)
-衝撃強度(IZOD):ISO 180/1Aに準拠して行う(Notched、23℃)
-引張強度及び伸び率:ISO 527に準拠して行う(50mm/min)
-曲げ強度、曲げ弾性率:ISO 178に準拠して行う(4mm、SPAN64、速度2mm/min)
-熱変形温度(HDT):ISO 75に準拠して行う(高荷重1.82MPa)
【0187】
前記評価基準で測定した結果は、下記表2の通りである。
【0188】
【表2】
【0189】
前記表2を参照すると、本発明に係る実施例1~4の熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度及び曲げ弾性率、高荷重の熱変形温度、耐加水分解維持率がいずれも高いので、これを使用して製造された自動車内装部品が、衝撃強度及び引張強度、曲げ強度などの物理的物性を基本的に満たしながらも、耐化学性、高荷重耐熱特性に優れ、射出時にガス発生の程度が低減されて、製品信頼性及び外観品質を共に提供することを確認することができる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂を、適切な範囲を外れて過量使用する比較例1は、実施例1~4と比較したとき、流動指数が低いため、加工性が不良であり、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率が著しく悪化したことを確認した。
【0190】
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂を極めて少量使用する比較例2は、実施例1~4と比較したとき、衝撃強度及び熱変形温度が多少不良であることを確認した。
【0191】
また、SiO2が50重量%未満であるガラス繊維を使用する比較例3、または比較例4は、実施例1~4と比較したとき、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度及び熱変形温度などが悪化したことが分かる。
【0192】
また、カルボキシ反応性エポキシ樹脂を使用していない比較例5は、実施例1~4と比較したとき、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び耐熱特性が不良であることが分かる。
【0193】
また、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物の代わりにASA樹脂を使用した比較例6は、実施例1~4と比較したとき、衝撃強度及び耐熱特性が悪化したことが分かる。
【0194】
また、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物の代わりにABS樹脂を使用した比較例7は、実施例1~4と比較したとき、引張強度、曲げ強度及び耐熱特性が悪化したことが分かる。
【0195】
また、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物を適切な範囲よりも少量使用した比較例8は、実施例1~4と比較したとき、衝撃強度が悪化したことが分かる。
【0196】
また、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物を適切な範囲よりも少量使用した比較例9は、実施例1~4と比較したとき、流動性及び曲げ弾性率が悪化し、引張強度及び曲げ強度、そして耐熱特性が不良であることを確認した。
【0197】
追加で、実施例1のリサイクルPET樹脂をバージンPETで代替したことを除いては、前記実施例1と同一の工程を繰り返して収得した試験片に対して、前述した流動性、引張強度、引張伸び率、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度及び熱変形温度を同一に測定した。このとき、バージンPETとしては、下記図2の左側の図で示した白色チップを使用した。
【0198】
その結果、流動性は34g/10minであり、引張強度は99MPaであり、引張伸び率は3.9%であり、曲げ強度は144MPaであり、曲げ弾性率は5070MPaであり、衝撃強度は11.4kJ/m2であり、熱変形温度は185℃と測定され、実施例1~4の熱可塑性樹脂組成物と同等又は類似の物性値を提供することが分かった。
【0199】
すなわち、本発明の一具現例に係る熱可塑性樹脂組成物は、特定の重量%のポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体とカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤、及びSiO2が過量含まれたガラス繊維を含むことによって、前記組成物から製造された自動車内装部品が、耐熱特性及び耐衝撃性が改善されて、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという効果があり、特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂として再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を適用しても、物性値を十分に改善させるという利点がある。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
前記i)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ii)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さいものであってもよい。
【国際調査報告】