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特表2024-544471添加剤の除去装置およびこれを用いた添加剤の除去方法
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  • 特表-添加剤の除去装置およびこれを用いた添加剤の除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】添加剤の除去装置およびこれを用いた添加剤の除去方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20241126BHJP
   C08J 11/08 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521871
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2023006793
(87)【国際公開番号】W WO2024090696
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0140595
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・シク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テク・オ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ド・ダム・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・スク・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チョル・チャ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA13
4F401AB03
4F401AB04
4F401AB07
4F401AB10
4F401BA13
4F401CA32
4F401CA50
4F401CA57
4F401CB14
4F401CB18
4F401CB26
4F401CB34
4F401CB35
4F401EA54
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA63
4F401EA66
4F401EA68
4F401EA69
4F401FA03Z
4F401FA06Y
4F401FA06Z
4F401FA08Y
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、内部空間を提供し、一方に高分子注入口および他方に高分子排出口を備えるバレルと、前記バレルの内部空間に備えられ、軸回転するスクリューと、前記バレルの前記一側端部に設けられた溶媒排出部とを含み、前記バレルは、前記高分子注入口と前記高分子排出口との間に位置し、前記高分子注入口に隣接する膨潤溶媒注入口および前記高分子排出口に隣接する収縮溶媒注入口を含む添加剤の除去装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を提供し、一側に高分子注入口および他側に高分子排出口を備えるバレルと、
前記バレルの内部空間に備えられ、軸回転するスクリューと、
前記バレルの前記一側端部に設けられた溶媒排出部とを含み、
前記バレルは、前記高分子注入口と前記高分子排出口との間に位置し、前記高分子注入口に隣接する膨潤溶媒注入口および前記高分子排出口に隣接する収縮溶媒注入口を含む、添加剤の除去装置。
【請求項2】
前記スクリューの回転中心軸の延長線と地面がなす傾斜は、5度~30度である、請求項1に記載の添加剤の除去装置。
【請求項3】
前記バレルの前記他側端部には、回転力供給装置が備えられ、
前記スクリューは、前記回転力供給装置と連結されて軸回転するシャフトおよび前記シャフトの外周面に固定されて前記シャフトの長さ方向に沿って螺旋形に延びたプレートを含む、請求項1に記載の添加剤の除去装置。
【請求項4】
前記スクリューの軸回転によって前記高分子注入口に導入された高分子が、前記高分子排出口に移送されて排出される、請求項1に記載の添加剤の除去装置。
【請求項5】
前記バレルの内部空間は、前記高分子注入口から前記膨潤溶媒注入口までの膨潤ゾーンと、前記膨潤溶媒注入口から前記収縮溶媒注入口までの収縮ゾーンに区画される、請求項1に記載の添加剤の除去装置。
【請求項6】
前記高分子注入口から前記膨潤溶媒注入口までの距離xと、前記膨潤溶媒注入口から前記収縮溶媒注入口までの距離yとの比率x/yは、0.1~60である、請求項1に記載の添加剤の除去装置。
【請求項7】
請求項1に記載の添加剤の除去装置を準備するステップと、
前記高分子注入口に添加剤を含有する高分子を供給し、前記膨潤溶媒注入口と収縮溶媒注入口にそれぞれ膨潤溶媒と収縮溶媒を供給するステップと、
前記供給された高分子を前記スクリューの軸回転によって高分子排出口まで移送するステップと、
前記高分子注入口から前記膨潤溶媒注入口までの膨潤ゾーンで前記高分子を膨潤させるステップと、
前記膨潤溶媒注入口から前記収縮溶媒注入口までの収縮ゾーンで前記高分子を収縮させるステップとを含む、添加剤の除去方法。
【請求項8】
前記添加剤は、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)およびジ-(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)およびブチルベンゼルフタレート(BBP)のうち1種以上のフタレート系可塑剤である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項9】
前記高分子は、ポリ塩化ビニル(PVC)である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項10】
前記膨潤溶媒は、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ピリジン、3-ペンタノン、2-ペンタノン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、4-メチルペンタン-2-オン、ニトロベンゼン、1,4-ジオキサン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、アセトン、エチルアセテート、クロロホルムおよびジメチルスルホキシドのうち1種以上である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項11】
前記収縮溶媒は、エチルアルコール、トルエン、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、シクロヘキサン、1-ペンタノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサンおよびジエチルエーテルのうち1種以上である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項12】
前記高分子の膨潤ゾーンでの滞留時間と前記高分子の平均粒径(D50)は、下記の一般式3を満たす、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
[一般式3]
高分子の平均粒径(mm)*5≦膨潤ゾーンでの滞留時間(分)≦高分子の平均粒径(mm)*240
【請求項13】
前記膨潤溶媒注入口に供給される膨潤溶媒の流量に対する前記収縮溶媒注入口に供給される収縮溶媒の流量の流量比は、30体積%~300体積%である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項14】
前記高分子の収縮ゾーンでの滞留時間は、0.5分~10分である、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【請求項15】
前記供給された膨潤溶媒と収縮溶媒は、重力によって溶媒排出部に移送されて排出される、請求項7に記載の添加剤の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年10月27日付けの韓国特許出願第10-2022-0140595号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高分子のリサイクルのために高分子内に含有された添加剤を除去するための添加剤の除去装置およびこれを用いた添加剤の除去方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、様々な用途と目的に求められる物性を有する樹脂材料が開発されるに伴い、樹脂またはプラスチックなどの高分子材料の利用が増加している。一般的に、樹脂またはプラスチックは、原油の採取から製造に至るまで多くのエネルギーが使用され、その過程で多量の炭素が排出される。さらに、最終製品の廃棄によって、製品に含まれた樹脂またはプラスチックもともに廃棄される場合、環境汚染およびその処理のための社会的コストがかかる。そのため、エネルギー使用量の減少、炭素発生量の低減、および環境汚染の防止の観点で、廃棄される樹脂のリサイクルは必須である。このように最終消費者が使用した後に捨てられた樹脂をリサイクルして作られたプラスチックをPCR(Post-Consumer Recycled、ポストコンシューマリサイクル)樹脂とし、所望の純度と物性を有するPCR樹脂を得ようとする試みと努力が行われ続けている。
【0004】
一方、ポリ塩化ビニル樹脂(poly vinylchloride、PVC)は、硬質または軟質特性を有し、成形加工性に優れ、価格競争力に優れて汎用的な効用性で様々な応用分野に適用されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は、単独で使用することができず、ポリ塩化ビニル樹脂に柔軟性を付与し、加工性などの物性を向上させるなど様々な物性実現のために可塑剤と混合して使用されている。
【0005】
しかし、従来、可塑剤として使用されたフタレート系可塑剤は、環境および人体に有害で、韓国内外の規制がひどく、このようなフタレート系可塑剤が使用された既存のポリ塩化ビニル樹脂などの高分子をリサイクルするために、前記フタレート系可塑剤を除去することができなければ、商品化が難しいという問題があった。したがって、最近、フタレート系可塑剤が使用された高分子をリサイクルするために、回収された高分子内に残存するフタレート系可塑剤を効果的に除去するための試みがなされている。
【0006】
その一環として、回収された高分子内の可塑剤など添加剤を除去するために、従来、溶媒を使用して回収された高分子を溶解した後、逆溶媒を使用して再結晶させる方式、いわゆる溶解再結晶方式が主に行われていた。しかし、この場合、溶解および再結晶のために使用される溶媒および逆溶媒などの使用量が過剰に大きく、そのように再生された再生高分子の物性も悪かった。さらには、伴われる溶媒の量が多いため、それに比例して設備や装置に過剰なコストが伴われた。
【0007】
したがって、回収された高分子内に含有される可塑剤などの、添加剤を高い効率で除去するとともに、溶媒の使用量を最小化することができる装置の開発と、これを活用した高分子内の添加剤の除去方法の開発が同時に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、高分子のリサイクルのために、高分子内に含まれた可塑剤を高い効率で除去することができる連続した処理方法を提供し、これに最適化した高分子内の添加剤の除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、内部空間を提供し、一側に高分子注入口および他側に高分子排出口を備えるバレルと、前記バレルの内部空間に備えられ、軸回転するスクリューと、前記バレルの前記一側端部に設けられた溶媒排出部とを含み、前記バレルは、前記高分子注入口と前記高分子排出口との間に位置し、前記高分子注入口に隣接する膨潤溶媒注入口および前記高分子排出口に隣接する収縮溶媒注入口を含む添加剤の除去装置を提供する。
【0010】
なお、本発明は、前記添加剤の除去装置を準備し、前記高分子注入口に添加剤を含有する高分子を供給し、前記膨潤溶媒注入口と収縮溶媒注入口にそれぞれ膨潤溶媒と収縮溶媒を供給するステップと、前記供給された高分子を前記スクリューの軸回転によって高分子排出口まで移送するステップと、前記高分子注入口から前記膨潤溶媒注入口までの膨潤ゾーンで前記高分子を膨潤させるステップと、前記膨潤溶媒注入口から前記収縮溶媒注入口までの収縮ゾーンで前記高分子を収縮させるステップとを含む添加剤の除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の添加剤の除去装置は、小さい装置のサイズと少ない溶媒の使用量でも、高分子内の添加剤の連続抽出が可能であり、その添加剤の除去効率も向上することができる。
【0012】
また、本発明の添加剤の除去方法によると、従来の溶解再結晶方式とは異なり、廃樹脂から回収された高分子を溶媒に溶解せず、膨潤溶媒を高分子内に含浸させて高分子内部の添加剤を選別的に拡散および抽出することで、高分子から添加剤を除去することが可能である。これにより、使用される溶媒の量を低減し、求められる装置を簡素化することができ、経済性が改善する。
【0013】
次いで、膨潤溶媒の含浸によって膨潤された高分子内の膨潤溶媒を除去するにあたり、収縮溶媒を前記膨潤された高分子に適用することで、前記膨潤された高分子を収縮させることが可能であり、これにより、高分子内の溶媒および溶媒内に存在する添加剤の残存量を効率的に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による添加剤の除去装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常のもしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、図1を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態による添加剤の除去装置1は、内部空間を提供し、一側に高分子注入口20および他側に高分子排出口30を備えるバレル10と、前記バレル10の内部空間に備えられ、軸回転するスクリュー70と、前記バレル10の前記一側端部に設けられた溶媒排出部60とを含み、前記バレル10は、前記高分子注入口20と前記高分子排出口30との間に位置し、前記高分子注入口に隣接する膨潤溶媒注入口40および前記高分子排出口に隣接する収縮溶媒注入口50を含むことができる。
【0018】
先ず、前記高分子は、廃樹脂から回収された高分子として、廃樹脂を前処理して得られる高分子であり、粒子状であることができる。一方、前記廃樹脂は、硬質あるいは軟質に関係なく、樹脂やその組成物を使用して成形された様々な製品または用途から回収されることができる。また、前記回収高分子は、単一種の高分子であることができ、他の樹脂とブレンディングされた樹脂組成物であってもよい。
【0019】
前記前処理は、廃樹脂を本発明の添加剤の除去装置に適用するのに適する状態の高分子に処理する一連の過程を意味する。例えば、前記前処理は、前記廃樹脂を先ず水などの溶剤で洗浄することで、ダストなど比較的大きい異物を除去し、乾燥した後、粉砕することで、粒子状に処理する過程であることができる。
【0020】
具体的には、前記高分子の平均粒径(D50)は0.1mm以上であることができ、2mm以下であることができる。前記回収高分子の平均粒径が小さいほど、含浸溶媒の含浸速度が増加して、添加剤の除去速度が増加するが、平均粒径が小さい回収高分子を製造するために加工時間が増加する欠点がある。
【0021】
本発明の一実施形態による添加剤の除去装置への適用に適する高分子の種類は、特に制限されるものではないが、添加剤の除去装置によって除去される添加剤が可塑剤である場合には、前記高分子がポリ塩化ビニル(PVC)であることができる。
【0022】
一方、前記高分子の重合時または重合後、成形時など、製品の製造過程で樹脂に対する所望の物性を付与するために、可塑剤、フィラー、難燃剤、安定剤、充填剤、発布剤、粘度低下剤、着色剤、および熱安定剤などの添加剤が使用されることができ、使用された添加剤は、添加剤によって製造された樹脂内に残存する。したがって、樹脂をリサイクルするために製品から回収した廃樹脂内にも前記添加剤が含まれ得る。
【0023】
前記廃樹脂から回収された高分子から再生高分子を製造するにあたり、前記添加剤を適切に除去しなければならない理由は、以下のとおりである。
【0024】
第一に、添加剤が過量で残存する場合、良好な物性などを有する再生高分子の製造が難しいことがある。前記添加剤の影響で、再生高分子の変形または表面特性の低下などの物性低下または変色など色特性が低下し得る。
【0025】
第二に、添加剤によっては、最近、環境有害性および人体有害性によって使用が規制される添加剤がある。すなわち、製品の製造時にはなかった規制などによって、回収された高分子から規制対象である添加剤を所望水準以下に除去したときに再生高分子の製造が可能となることが頻繁になっている。
【0026】
上記のような理由で、前記添加剤を含有する回収された高分子から除去される必要がある添加剤は、主に可塑剤であることができる。具体的には、前記可塑剤は、フタレート系可塑剤であることができる。より具体的には、前記フタレート系可塑剤は、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)およびジ-(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)およびブチルベンゼルフタレート(BBP)のうち1種以上であることができる。
【0027】
一方、本発明の一実施形態による添加剤の除去方法は、高分子の形態を維持した状態で、添加剤のみを選択的に溶出させる点で、従来、溶解性溶媒を使用して高分子自体を溶解させた後、これを再結晶する方式とは差異なる。このような既存の溶解再結晶方式は、樹脂との相溶性が良好な可塑剤のような添加剤の場合、その除去が難しく、特に、この場合、溶媒(逆溶媒)の過量の使用を要求して溶媒コストだけでなく、これを精製するコストも高いため、コストに対する精製効率が劣る欠点がある。
【0028】
したがって、本発明の添加剤の除去方法は、先ず、添加剤を含む高分子を膨潤溶媒と接触させることで、膨潤溶媒を高分子内に含浸させて高分子を膨潤させ、且つ高分子内の添加剤を膨潤溶媒で拡散させることで、前記高分子から添加剤を除去することができる。次いで、膨潤溶媒が含浸された状態の高分子を収縮溶媒と接触させて収縮させることで、高分子内に存在する溶媒の含有率を最小限にすることができる。すなわち、膨潤された状態の高分子が収縮溶媒によって収縮されることで、内部の添加剤を含有する膨潤溶媒を最大限に高分子の外部に排出させ、最終的には、高分子内の添加剤の含量を低減することができる。
【0029】
ここで、前記、含浸(immersion)とは、含浸溶媒によって回収された高分子の表面に存在する添加剤(可塑剤)が洗浄(washing)されることだけでなく、前記含浸溶媒が回収された高分子の内部に拡散によって浸透し、内部の添加剤(可塑剤)を溶出させることを意味する。
【0030】
さらに、本発明は、前記添加剤の除去方法が連続して行われることができるとともに、膨潤溶媒および収縮溶媒の使用量を節約させることができて経済性を高めることができ、且つ添加剤、具体的には可塑剤の除去効率を向上させることができる最適の添加剤の除去装置1を提供する。
【0031】
このような見地で、本発明の一実施形態による前記バレル10は、添加剤の除去装置1の本体を構成する要素であり、長さ方向に延び、内部空間を有する管状であることができる。前記バレル10は、後述する溶媒によって変形しない材質からなることができ、具体的には、金属材またはガラス材であることができる。
【0032】
前記内部空間は、高分子注入口20に供給された高分子がスクリュー70によって高分子排出口30まで移送され、また、膨潤溶媒注入口40および収縮溶媒注入口50に供給された溶媒が重力によって移送される空間であり、前記高分子の膨潤と収縮によって高分子内の含有された添加剤の除去が行われる空間を意味することができる。
【0033】
具体的には、前記バレル10は、一側に高分子注入口20および他側に高分子排出口30を備えることができる。前記高分子は、添加剤を含む高分子であることができ、前記高分子は、高分子注入口20に供給されて後述する膨潤溶媒および収縮溶媒と順に接触する過程により内部の添加剤が除去されることができ、添加剤の除去された高分子は前記高分子排出口30を介して排出されることができる。
【0034】
一方、添加剤の除去装置1は、前記バレル10の内部空間に備えられ、軸回転するスクリュー70を含むことができ、前記スクリュー70に回転力を付与するために、前記バレル10の他側端部には、回転力供給装置80を含むことができる。ここで、前記他側端部は、前記バレル10の端部のうち前記高分子排出口30に隣接した端部であることができる。
【0035】
前記回転力供給装置80は、スクリュー70に軸回転のための駆動力を供給するためのものであり、具体的にはモータであることができる。
【0036】
具体的には、前記スクリュー70は、回転力供給装置80と連結されて軸回転するシャフト71および前記シャフト71の外周面に固定されて前記シャフト71の長さ方向に沿って螺旋形に延びたプレート72を含むことができる。前記回転力供給装置80によって付与された回転力によって、プレート72は、シャフト71を回転軸にして回転することができる。これにより、高分子注入口20に供給された高分子は、前記プレート72に積載され、前記スクリュー70の軸回転によって前記高分子排出口30に連続して移送されることができる。
【0037】
一方、前記高分子注入口20に供給される高分子の供給流量(g/min)は、スクリューの1ピッチpの体積(cm)、供給される高分子のバルク密度(g/cm)およびスクリューの回転速度(RPM、min-1)の関係で決定されることができ、具体的には、下記の一般式1を満たすことができる。
【0038】
[一般式1]
スクリューの1ピッチpの体積(cm)*供給される高分子のバルク密度(g/cm)*スクリューの回転速度(min-1)*0.1≦高分子の供給流量(g/min)≦スクリューの1ピッチpの体積(cm)*供給される高分子のバルク密度(g/cm)*スクリューの回転速度(min-1)*0.5
【0039】
一方、本発明の一実施形態によると、添加剤の除去装置1は、前記スクリュー70の回転中心軸の延長線、具体的には、シャフト71の延長線は、地面と傾斜して配置されることができる。すなわち、高分子排出口30の表面高さが高分子注入口20の表面高さより高く配置されることができる。添加剤の除去装置1を支持する支持台として高分子排出口30側を支持する支持台の長さを高分子注入口20側を支持する支持台の長さより長くすることで、前記スクリュー70の回転中心軸の延長線と地面との傾斜角zを実現することができる。
【0040】
一方、前記スクリュー70の回転中心軸の延長線と地面との傾斜角zによってバレル10の内部空間に導入された膨潤溶媒および収縮溶媒が重力によって溶媒排出部60まで移送されることができ、且つ導入された膨潤溶媒および収縮溶媒が高分子排出口30に逆流されて無くなることを防止することができる。
【0041】
さらには、前記スクリュー70の回転中心軸の延長線と地面がなす傾斜角zの制御により膨潤溶媒および収縮溶媒が装置内で滞留する時間および前記溶媒が高分子と接触する時間を決定することができ、これにより、高分子内の添加剤をより効率的に除去することができる。
【0042】
具体的には、前記スクリュー70の回転中心軸の延長線と地面がなす傾斜角zは、5度~30度であることができる。前記傾斜角zは、供給される膨潤溶媒および収縮溶媒の流量とも関係がある。前記傾斜角が30度超の場合、膨潤溶媒注入口40または収縮溶媒注入口50を介してバレル10に供給された溶媒がバレルの内部空間内で十分に滞留することができなかった状態で排出され、すなわち、高分子を膨潤または収縮することができる能力があるにも関わらず、過剰に短い時間内に排出されるため、必要以上に過剰な溶媒使用量が求められ、さらには、溶媒再使用のための精製工程で必要なエネルギー使用量が増加する問題がある。逆に、前記傾斜角が5度未満の場合には、バレルに供給された溶媒が高分子排出口30から排出されて無くなる可能性が高くなり、また、溶媒排出口に隣接するように逹した溶媒、すなわち、添加剤が濃縮された溶媒が溶媒排出口からスムーズに排出されることができないことから、高分子内の添加剤の除去効率が低下し得る。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記膨潤溶媒注入口40に膨潤溶媒が供給されることができ、前記収縮溶媒注入口50に収縮溶媒が供給されることができる。
【0044】
さらに、前記バレル10の内部空間は、前記高分子注入口20から前記膨潤溶媒注入口40までの膨潤ゾーン100と膨潤溶媒注入口40から前記収縮溶媒注入口50までの収縮ゾーンとに機能的に区画されることができる。具体的には、前記膨潤ゾーン100は、前記バレル10の横断面として前記高分子注入口20の中心を含む横断面から前記膨潤溶媒注入口40の中心を含む横断面までの領域(region)を意味し、前記収縮ゾーン200は、前記膨潤溶媒注入口40の中心を含む横断面から前記収縮溶媒注入口50の中心を含む横断面までの領域(region)を意味する。
【0045】
先ず、高分子注入口20を介して供給された添加剤を含有する高分子は、前記スクリュー70の軸回転によって高分子排出口30まで移送される過程で順に膨潤ゾーン100と収縮ゾーン200を通過する。
【0046】
前記高分子注入口20から前記膨潤溶媒注入口40までの距離xは、膨潤ゾーン100の長さであることができ、前記膨潤溶媒注入口40から前記収縮溶媒注入口50までの距離yは、収縮ゾーン200の長さであることができる。前記高分子注入口20から前記膨潤溶媒注入口40までの距離xと前記膨潤溶媒注入口40から前記収縮溶媒注入口50までの距離yとの比率x/yは、0.1~60であることができ、具体的には1~30であることができる。前記の比率x/yが0.1より小さい場合には、前記高分子が収縮ゾーンで滞留する時間が必要以上に長くなり、工程の経済性が低下し得、前記の比率x/yが60より大きい場合には、前記高分子が収縮ゾーンで滞留する時間が必要以上に短くなり、膨潤状態の高分子が十分に収縮され難い問題がある。
【0047】
一方、前記膨潤ゾーン100で添加剤を含有する高分子は膨潤溶媒と接触することで、前記膨潤溶媒が高分子の内部に浸透(impregnate)し、高分子は、その固有の分子構造を維持した状態で膨潤(スウェリング;swelling)し得る。高分子に含有されていた添加剤は浸透された含浸溶媒によって拡散して回収高分子の外部に溶出され、高分子内の添加剤が除去されることができる。
【0048】
高分子からの添加剤の効率的な除去のためには、高分子の膨潤に使用される膨潤溶媒の選定が重要である。先ず、膨潤溶媒は高分子粒子の内部に迅速且つ均一に含浸される必要があり、高分子に含まれた添加剤の最大限に多い量を高分子内に含浸された膨潤溶媒で溶出させる必要がある。したがって、膨潤溶媒は、高分子の種類および除去しようとする添加剤の種類を考慮して選定しなければならない。
【0049】
このような見地で、前記添加剤がフタレート系可塑剤である場合、前記膨潤溶媒は、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ピリジン、3-ペンタノン、2-ペンタノン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、4-メチルペンタン-2-オン、ニトロベンゼン、1,4-ジオキサン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、アセトン、エチルアセテート、クロロホルムおよびジメチルスルホキシドのうち1種以上であることができ、具体的には、メチルエチルケトンであることができる。前記溶媒の場合、高分子内に容易に含浸されることができるだけでなく、高分子内の添加剤、例えば、フタレート系可塑剤を溶出させる能力にも優れ、好ましく使用されることができる。
【0050】
このように、膨潤ゾーン100での膨潤溶媒の高分子内部への十分な含浸およびこれによる高分子の膨潤による内部添加剤のスムーズな溶出のために、前記膨潤溶媒注入口40に供給される膨潤溶媒の供給流量(cm/min)は、高分子の供給流量と供給される高分子のバルク密度によって決定されることができる。具体的には、以下の一般式2を満たすことができる。
【0051】
[一般式2]
供給される高分子の供給流量(g/min)/供給される高分子のバルク密度(g/cm)*0.5≦膨潤溶媒の供給流量(cm/min)≦供給される高分子の供給流量(g/min)/供給される高分子のバルク密度(g/cm)*10
【0052】
すなわち、膨潤溶媒の供給体積流量(cm/min)/高分子の供給体積流量(cm/min)が0.5以上である場合に、高分子に対する十分な膨潤が可能であり、高分子内の残留添加剤がスムーズに除去されることができる。一方、膨潤溶媒の供給体積流量(cm/min)/高分子の供給体積流量(cm/min)が10以下である場合に、不要な溶媒使用を低減することができ、過剰な溶媒使用による精製コストなどを削減することができ、これにより、工程の経済性を向上させることができる。
【0053】
一方、前記高分子の膨潤ゾーン100での滞留時間は、高分子の平均粒径(D50、mm)で表される数値との関係で、下記の一般式3を満たすことができる。
【0054】
[一般式3]
高分子の平均粒径(mm)*5≦膨潤ゾーンでの滞留時間(min)≦高分子の平均粒径(mm)*240
【0055】
すなわち、前記高分子が[高分子の平均粒径で表される数値*5]より大きい時間膨潤ゾーン100で滞留する場合に、膨潤溶媒が前記高分子の内部に含浸して添加剤を十分に溶出させることができる。一方、[高分子の平均粒径で表される数値*240]より長い時間を滞留する場合には、工程の経済性が低下し得る。具体的には、滞留時間を増加させるために、スクリューの回転速度(RPM)を過剰に下げる場合には、単位時間当り得られる添加剤が除去された高分子の取得率が低下し、または滞留時間を増加させるために、膨潤ゾーン100の長さを増加させる場合には、装置のサイズが増加し得る。
【0056】
一方、前記膨潤ゾーン100で膨潤溶媒と収縮溶媒の混合溶媒が存在し得る。すなわち、収縮溶媒注入口50に供給された収縮溶媒は、収縮ゾーン200と膨潤ゾーン100を経て溶媒排出部60に排出されるため、膨潤ゾーン100では膨潤溶媒と収縮溶媒もともに存在する。
【0057】
膨潤ゾーン100で膨潤溶媒に比べて収縮溶媒が過剰に多い場合には、膨潤溶媒による高分子の膨潤および溶媒含浸が低下し得るため、膨潤ゾーン100での膨潤溶媒と収縮溶媒の流量が適切な比率で制御されなければならない。一方、前記膨潤ゾーン100での膨潤溶媒と収縮溶媒のそれぞれの流量は、結局、膨潤溶媒注入口40に供給される膨潤溶媒の流量と前記収縮溶媒注入口50に供給される収縮溶媒の流量によって決定されるため、膨潤溶媒のスムーズな含浸と高分子の膨潤のためには、これらの流量比を適切に制御することが重要である。
【0058】
このような観点で、前記膨潤溶媒注入口に供給される膨潤溶媒の体積流量に対する前記収縮溶媒注入口に供給される収縮溶媒の体積流量の流量比は、30体積%~300体積%であることができる。収縮溶媒の供給体積流量が膨潤溶媒の供給体積流量の300体積%以下で供給される場合、すなわち膨潤ゾーン100で膨潤溶媒が収縮溶媒の3倍量以上で存在する場合には、膨潤溶媒の高分子膨潤による添加剤溶出機能が低下し得る。一方、収縮ゾーン200での収縮溶媒の機能とそれによる高分子内の添加剤の除去効率を考慮した時に、収縮溶媒の供給体積流量が所定水準以上には維持される必要があり、したがって、膨潤溶媒の体積流量に対する収縮溶媒の体積流量の流量比は30体積%未満になる場合には、収縮溶媒の足りない供給によって収縮ゾーンでの高分子収縮機能がスムーズに実現され難いことがある。
【0059】
一方、前記膨潤溶媒によって膨潤された高分子は、バレル10内の収縮ゾーン200に移送されることができる。前記収縮ゾーン200内で膨潤された高分子は収縮溶媒と接触することができる。具体的には、前記膨潤ゾーン100から収縮ゾーン200に移送された高分子は、内部に添加剤が溶出された膨潤溶媒が含浸されている状態であり、膨潤された高分子内の膨潤溶媒を除去せずに乾燥する場合、前記溶出された可塑剤がそのまま再生高分子の内部に残り、可塑剤の除去効率が低下し得る。したがって、膨潤された高分子内部の膨潤溶媒を除去することが重要であるが、本発明によると、収縮溶媒による化学的な手段によって膨潤高分子を収縮させることで、膨潤高分子内に存在する溶媒の含有率および可塑剤の含量を最小限にすることができる。
【0060】
前記収縮溶媒は、前記膨潤溶媒とは異なり、高分子を膨潤させる程度が低い溶媒が好ましく、且つ前記添加剤がフタレート系可塑剤である場合に、前記フタレート系可塑剤を溶解させる程度が高い溶媒が好ましい。このような見地で、前記添加剤がフタレート系可塑剤である場合、前記収縮溶媒は、エチルアルコール、トルエン、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、シクロヘキサン、1-ペンタノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサンおよびジエチルエーテルのうち1種以上であることができ、具体的には、イソプロピルアルコールであることができる。このような収縮溶媒は、膨潤高分子を効率的に収縮させることができるだけでなく、フタレート系可塑剤を溶解させる程度が優れ、膨潤高分子の収縮時に高分子の内部に存在する可塑剤を高分子の外部に容易に除去することができる。
【0061】
前記収縮ゾーン200での、収縮溶媒による膨潤された高分子の容易な収縮とそれによる膨潤された高分子内の膨潤溶媒(およびこれに含まれた添加剤)のスムーズな除去のためには、前記収縮溶媒注入口50を介して供給される収縮溶媒の供給流量は、高分子の供給流量と供給される高分子のバルク密度によって決定されることができる。具体的には、下記の一般式4を満たすことができる。
【0062】
[一般式4]
供給される高分子の供給流量(g/min)/供給される高分子のバルク密度(g/cm)*0.25≦収縮溶媒の供給流量(cm/min)≦供給される高分子の供給流量(g/min)/供給される高分子のバルク密度(g/cm)*5
【0063】
また、前記収縮ゾーン200での高分子の滞留時間は、0.5分~10分であることができる。前記収縮ゾーン200での高分子の滞留時間が0.5分未満と短い場合には、収縮溶媒が高分子内に深く十分に浸透することができなくなるため、膨潤高分子の収縮がスムーズでなくなり、添加剤の除去効率が減少し得、前記収縮ゾーン200での高分子の滞留時間が10分以上である場合、必要以上に滞留時間が長くなるため、溶媒使用量および装置のサイズの面で経済的ではない。
【0064】
本発明の一実施形態によると、収縮ゾーン200を経た収縮された高分子は、高分子排出口30を介して添加剤の除去装置1の外部に排出されることができる。前記排出された高分子に対しては、乾燥工程を行うことで、高分子内に残存している膨潤溶媒および収縮溶媒を除去することができる。乾燥工程が行われる乾燥機は、例えば、パドル乾燥機、フローティングベッド乾燥機(floating bed dryer)、真空乾燥機、脱揮発押出機であることができる。
【0065】
一方、本発明の一実施形態によると、前記膨潤溶媒と収縮溶媒は、溶媒排出部60を介して排出されることができる。
【0066】
前記溶媒排出部60は、前記バレル10の一側端部で前記バレル10と結合することができ、前記溶媒排出部60は、溶媒排出口を含むことができる。前記溶媒排出部60は、バレル10内部の洗浄などのために、バレル10の前記一側端部と分離が可能な形態であることができる。
【0067】
前記溶媒排出部60を介して排出される溶媒は、膨潤溶媒、収縮溶媒およびこれに溶解された添加剤を含み得る。したがって、排出された溶媒に対して、膨潤溶媒、収縮溶媒および添加剤を分離する精製工程を行うこともでき、これによるそれぞれの溶媒および添加剤を再使用することも可能である。
【0068】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0069】
実施例および
実施例1
先ず、図1のような添加剤除去装置1を準備した。具体的には、前記添加剤除去装置は、一側に高分子注入口20および他側に高分子排出口30を備える内径が6cmであるバレル10を含み、前記バレルの他側端部にはモータ80が備えられており、前記バレル内にはモータと連結されたスクリュー70を備えた。前記添加剤除去装置は、高分子注入口と高分子排出口との間に膨潤溶媒注入口40および収縮溶媒注入口50を含んでいる。ここで、前記高分子注入口から前記膨潤溶媒注入口までの距離xと前記膨潤溶媒注入口から前記収縮溶媒注入口までの距離yとの比率x/yは4であった。
【0070】
前記添加剤除去装置の支持台に載置してスクリューの回転中心軸の延長線と地面がなす傾斜を15度に調整した。
【0071】
次いで、フタレート系可塑剤14.3重量%を含有するPVC回収高分子(D50:200μm)を含む高分子パウダーサンプルを準備し、膨潤溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)と収縮溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を準備した。次いで、前記膨潤溶媒注入口40にMEKを15.5cm/minの体積流量(質量流量では0.75kg/hr)で、前記収縮溶媒注入口50にIPAを10.6cm/min(質量流量では0.5kg/hr)の体積流量でそれぞれ供給して正常状態に至ることを確認した後、前記高分子注入口20に高分子パウダーサンプルを4.2g/min(=0.25kg/hr)の質量流量で供給した。一方、スクリューの回転速度を1rpmにして高分子パウダーサンプルを膨潤ゾーン100および収縮ゾーン200を順に通過するようにして、前記高分子排出口30に排出させた。ここで、前記高分子の膨潤ゾーンでの滞留時間は24分、収縮ゾーンでの滞留時間は6分であった。
【0072】
前記高分子排出口30に排出PVC高分子0.5gをサンプリングし、これをガスクロマトグラフ炎イオン化検出分析(GC-FID)を行って試料内の残留フタレート系可塑剤の含量を計算した。ここで、ガスクロマトグラフ炎イオン化検出分析(GC-FID)装置は、Agilent社製の7890A GC systemを使用した。結果、残留可塑剤の含量は100ppmであった。
【0073】
実施例2
実施例1と比較して、膨潤溶媒注入口40にMEKを7.5cm/minの体積流量(質量流量では0.375kg/hr)で、前記収縮溶媒注入口50にIPAを2.7cm/min(質量流量では0.125kg/hr)の体積流量でそれぞれ供給した以外は、実施例1と同じ装置および方法でPVC高分子内の可塑剤を除去した。
【0074】
排出されたPVC高分子に対して、実施例1と同じ方法で残留可塑剤濃度を測定した結果、250ppmであった。
【0075】
比較例1
実施例1と比較して、膨潤溶媒注入口40には溶媒を供給せず、収縮溶媒注入口50にだけ膨潤溶媒であるMEKを25.9cm/min(質量流量では1.25kg/hr)で供給し、装置内の高分子の滞留時間を30分にした以外は、実施例1と同じ装置および方法でPVC高分子内の可塑剤を除去した。
【0076】
排出されたPVC高分子に対して、実施例1と同じ方法で残留可塑剤濃度を測定した結果、4,200ppmであった。
【0077】
比較例2
比較例1と比較して、収縮溶媒注入口50にだけ収縮溶媒であるIPAを26.5cm/min(質量流量では1.25kg/hr)で供給した以外は、比較例1と同じ装置および方法でPVC高分子内の可塑剤を除去した。
【0078】
排出されたPVC高分子に対して、実施例1と同じ方法で残留可塑剤濃度を測定した結果、62,000ppmであった。
【0079】
比較例3
比較例1と比較して、収縮溶媒注入口50にだけ膨潤溶媒であるMEKと収縮溶媒であるIPAを1:1の重量比で混合した混合溶媒を26.0cm/min(質量流量では1.25kg/hr)で供給した以外は、比較例1と同じ装置および方法でPVC高分子内の可塑剤を除去した。
【0080】
排出されたPVC高分子に対して、実施例1と同じ方法で残留可塑剤濃度を測定した結果、1,400ppmであった。
【0081】
上記の結果から、本発明の添加剤の除去装置を活用して連続的方法で高分子内の添加剤を効率的に除去することができた。実施例1および2を参照すると、添加剤の除去装置に備えられた膨潤溶媒注入口と収縮溶媒注入口にそれぞれ高分子を膨潤させる溶媒と収縮させる溶媒を導入する場合に、高い添加剤の除去効率を達成できることを確認することができる。一方、膨潤溶媒または収縮溶媒のうち一つだけを同じ流量で使用する場合(比較例1および2)または同じ溶媒を同じ流量で使用しても、これらの混合溶媒を使用する場合には、所望の可塑剤除去効率を達成することが難しかった(比較例3)。
図1
【国際調査報告】