(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-03
(54)【発明の名称】汚染防止物品
(51)【国際特許分類】
B05D 5/00 20060101AFI20241126BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241126BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241126BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20241126BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B05D5/00 H
B32B27/00 101
B05D7/24 302Y
C09K3/18 104
C09K3/18 102
C23C26/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531534
(86)(22)【出願日】2023-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2023014837
(87)【国際公開番号】W WO2024072004
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】10-2022-0121583
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0129096
(32)【優先日】2023-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・クワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・フイ・キム
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4H020
4K044
【Fターム(参考)】
4D075CA34
4D075CA36
4D075DB04
4D075EB01
4D075EB42
4D075EC01
4F100AA09B
4F100AA20B
4F100AB04A
4F100AH06B
4F100AK52B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100JB06B
4F100JL06B
4H020AA02
4H020BA31
4H020BA36
4K044AA03
4K044BA12
4K044BA19
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC00
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は汚染防止物品に関するものである。より詳しくは、無機塩化物によるファウリングを防止することができる汚染防止物品に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;および
前記基材の少なくとも一面に備えられる、無機塩化物汚染防止コーティング層を含み、
前記無機塩化物汚染防止コーティング層は下記式1~3を満足する、汚染防止物品:
[式1]
80°<REC<150°
[式2]
REC/CAH≧2.5
[式3]
CAH≧25°
上記式1~3中、
RECは水に対する後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)であり、
CAHは接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、水に対する前進接触角(Advancing contact angle)(単位:°)と後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)間の差である。
【請求項2】
式2のREC/CAHは10以下である、請求項1に記載の汚染防止物品。
【請求項3】
式1のRECは85°以上である、請求項1に記載の汚染防止物品。
【請求項4】
式3のCAHは60°以下である、請求項1に記載の汚染防止物品。
【請求項5】
前記無機塩化物は塩化カリウム(KCl)を含む、請求項1に記載の汚染防止物品。
【請求項6】
前記無機塩化物汚染防止コーティング層は、
アルキル-トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランの硬化物を含む、第1コーティング層;および
前記第1コーティング層上に形成され、フッ化ポリエーテルシランの硬化物を含む、第2コーティング層を含む、請求項1に記載の汚染防止物品。
【請求項7】
前記アルキル-トリアルコキシシランは下記化学式1で表される化合物である、請求項6に記載の汚染防止物品:
[化学式1]
R
11-Si(R
12)(R
13)(R
14)
上記化学式1中、
R
11は炭素数1~5のアルキル基であり、
R
12~R
14はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項8】
前記テトラアルコキシシランは下記化学式2で表される化合物である、請求項6に記載の汚染防止物品:
[化学式2]
Si(R
21)(R
22)(R
23)(R
24)
上記化学式2中、
R
21~R
24はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項9】
前記フッ化ポリエーテルシランは下記化学式3-1~3-4で表されるグループを含む化合物である、請求項6に記載の汚染防止物品:
[化学式3-1]
CF
3-
[化学式3-2]
-CF
2-CF
2-O-
[化学式3-3]
-CF
2-CF
2-CF
2-O-
[化学式3-4]
-Si(R
31)(R
32)(R
33)
上記化学式3-4中、
R
31~R
33はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項10】
前記基材はステンレススチール(Stainless Steel)である、請求項1に記載の汚染防止物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2022年9月26日付韓国特許出願第10-2022-0121583号および2023年9月26日付韓国特許出願第10-2023-0129096号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、汚染防止物品に関するものである。より詳しくは、無機塩化物によるファウリングを防止することができる汚染防止物品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
汚染防止コーティングは、産業的に多様な機器の表面に異物付着、または汚染物が吸着することを防止するために使用される。
【0004】
セメント生産時、廃プラスチックを再利用する過程で塩素(Cl)ダストが副産物として発生し、最近、環境的な問題により副産物である塩素ダストから追加的に塩化カリウム(KCl)を抽出するために別途の塩素ダスト処理設備を使用している。
【0005】
しかし、このような塩素ダスト処理過程で設備内表面に塩化カリウムによるファウリング(fouling)が発生する場合が多く、ファウリングが発生する場合、工程稼動率が大きく低下する問題が発生する。
【0006】
したがって、円滑な工程稼働のためには処理設備内部表面に塩化カリウムなどの無機塩化物の汚染物が付着することを防止する必要がある。
【0007】
しかし、このような処理設備の基材として一般に使用されるステンレススチールの表面はぬれ性(wettability)が高くてその特性上汚染物が付着しやすいため周期的な洗浄が必要である。また、汚染物が付着することを防止するために超撥水コーティングや疎水性コーティングを行う方法があるが、このようなコーティングによっても無機塩化物の汚染物付着防止および除去が容易ではなく、コーティング層の耐久性が高くなくてその効果が長続きしない問題がある。
【0008】
よって、機器内部表面に無機塩化物の汚染物が付着することを防止し、付着しても容易に除去することができる汚染防止コーティング層に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような課題を解決するために本明細書は、無機塩化物汚染防止コーティング層を含む汚染防止物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、基材;および前記基材の少なくとも一面に備えられる、無機塩化物汚染防止コーティング層を含み、前記無機塩化物汚染防止コーティング層は下記式1~3を満足する、汚染防止物品を提供する:
【0011】
[式1]
80°<REC<150°
[式2]
REC/CAH≧2.5
[式3]
CAH≧25°
【0012】
上記式1~3中、RECは水に対する後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)であり、
CAHは接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、水に対する前進接触角(Advancing Contact angle)(単位:°)と後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)間の差である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の汚染防止物品によれば、無機塩化物によるファウリングを効果的に防止することができる。
【0014】
特に、セメント生産時、廃プラスチックを再利用する過程で副産物として発生する塩素ダストから追加的に塩化カリウム(KCl)を抽出する塩素ダスト処理過程で発生する塩化カリウムが処理装置内部壁に付着されるファウリング現象を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による汚染防止コーティング層表面でソルトドーム(salt dome)が形成される過程を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるソルトドームの断面を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の比較例によるコーティング層表面でソルトドーム(salt dome)が形成されない過程を示す模式図である。
【
図4】本発明の比較例による基材表面でソルトドーム(salt dome)が形成されない過程を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるソルトドーム(A)および比較例のドーム(B、C)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するための目的にのみ使用される。
【0017】
また、本明細書で使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0018】
単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書で、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、これらの組み合わせ、または付加可能性を排除するのではない。
【0020】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されると言及される場合には各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、または他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0021】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるところ、特定の実施形態を例示し下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0022】
以下、本発明の一実施形態による汚染防止物品について詳しく説明する。
【0023】
本発明の一実施形態による汚染防止物品は、基材;および前記基材の少なくとも一面に備えられる、無機塩化物汚染防止コーティング層を含み、前記無機塩化物汚染防止コーティング層は下記式1~3を満足する:
【0024】
[式1]
80°<REC<150°
[式2]
REC/CAH≧2.5
[式3]
CAH≧25°
【0025】
上記式1~3中、
RECは水に対する後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)であり、
CAHは接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、水に対する前進接触角(Advancing contact angle)(単位:°)と後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)間の差である。
【0026】
本明細書で用語「接触角」とは、固体表面に置かれた液滴が成している気体/液体界面と固体表面間の角度をいう。このような接触角は多様な方式によって測定でき、本明細書では商用の接触角測定装置(KRUSS社、モデル名:DSA-100)を用いてSessile Drop Methodの方法で液滴の接触角を測定した。
【0027】
接触角は表面のぬれ性(wettability)を示す尺度であって、低い接触角は高いぬれ性を示し、高い接触角は低いぬれ性を示すとみることができる。
【0028】
また、本明細書で用語「前進接触角(Advancing contact angle)」とは、液滴と表面の間の接触線(Contact line)が動かずに成すことができる最大接触角である。実際の測定時には微量の水を連続的に追加しながら液滴の接触線(Contact line)が動き始める時の接触角と定義する。
【0029】
また、本明細書で用語「後進接触角(Receding Contact Angle)」とは、液滴と表面の間の接触線(Contact line)が動かずに成すことができる最小接触角である。実際の測定時には前記水を注入した注射器の針を通じて徐々に水の量を減少させるにつれて3相(固体/液体/気体)の界面が動く直前の角として測定することができる。
【0030】
また、本明細書で前記前進接触角および後進接触角は、水を液滴で大気圧(1atm)、25℃で測定した。
【0031】
また、本明細書用語「CAH」は接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、前記のように測定した前進接触角と後進接触角の差である。
【0032】
本発明者らは基材またはコーティング層の表面に汚染物、特に無機塩化物が付着されることを防止するための方法を研究していたところ、表面の接触角が所定の条件を満足する場合、コーティング耐久性が非常に優れながらも無機塩化物汚染物が付着されることを効果的に防止することができるという事実を発見して本発明を完成することになった。
【0033】
より具体的に、コーティング層表面が本発明の一実施形態の接触角条件を満足する時、塩化カリウム(KCl)などの無機塩化物を含む溶液がコーティング層表面に付着されても、中が空いておりコーティング層表面との接触面積が最小化されたドーム(Dome)のような形態に乾燥されることを確認した。これにより、無機塩化物によるファウリングを防止することができ、乾燥以後にもドーム形状が維持されてこれをそのまま除去することができて汚染物の除去が非常に容易である。
【0034】
また、単純にコーティング層表面が疎水性であるかまたは接触角のみ高いといってドームが形成または維持されるのではなく、本発明の一実施形態による式1~3の後進接触角、接触角履歴、および接触角履歴に対する後進接触角の比率が一定の条件を満足してこそ乾燥時にドームが形成されることを確認した。
【0035】
一例として、本発明の無機塩化物汚染防止コーティング層は下記式1~3を全て満足する。
【0036】
[式1]
80°<REC<150°
[式2]
REC/CAH≧2.5
[式3]
CAH≧25°
【0037】
上記式1~3中、
RECは水に対する後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)であり、
CAHは接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、水に対する前進接触角(Advancing contact angle)(単位:°)と後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)間の差である。
【0038】
本発明の一実施形態による無機塩化物汚染防止コーティング層は前記式1を満足する。即ち、後進接触角(REC)が80°超、または85°以上、または90°以上、95°以上、または100°以上でありながら、150°未満、または145°以下、または140°以下、または135°以下、または130°以下であってもよい。
【0039】
また、本発明の一実施形態による無機塩化物汚染防止コーティング層は前記式2を満足する。即ち、接触角履歴に対する後進接触角の比率(REC/CAH)が2.5以上、または2.8以上、または3.0以上、3.1以上、または3.2以上でありながら、10以下、または9以下、または8以下、または7以下、または6以下、または5以下、または4以下、または3.5以下であってもよい。
【0040】
また、本発明の一実施形態による無機塩化物汚染防止コーティング層は前記式3を満足する。即ち、接触角履歴(CAH)が25°以上、または26°以上、または28°以上でありながら、60°以下、または50°以下、または40°以下、または35°以下、または32°以下であってもよい。
【0041】
本発明の一実施形態で、前記基材はこれに限定されるものではないが、SUS、STSなどのステンレススチール(Stainless Steel)またはガラスであってもよい。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態によるコーティング層表面でソルトドーム(salt dome)が形成される過程を示す模式図である。
【0043】
本発明の一実施形態によって後進接触角、接触角履歴、および接触角履歴に対する後進接触角の比率が式1~3の条件を満足する場合、コーティング層表面に無機塩化物溶液が付着されて液滴を形成し乾燥される過程を示す。
【0044】
より具体的に
図1を参照すれば、まず、コーティング層表面に付着された無機塩化物溶液の液滴が乾燥されながら縁から液滴と空気との境界線に沿って固体状態の塩(salt)が生成される。液滴の乾燥が続けられながら塩が液滴の境界線に沿って成長し続けて、内部に残っている液滴はソルトドームに吸収され続けて外部に蒸発され、結局、中が空いており塩からなるドームであるソルトドーム(salt dome)形態が形成されることになる。
【0045】
一方、本発明の一実施形態による式1~3の一定の条件を満足する場合、形成されたソルトドームは平らな表面ではその形態が維持されるが、表面を傾けた時、例えば約45度前後に傾けた時は強い外力がなくても容易に脱落し残余物が残っていなくて除去が非常に容易である。
【0046】
本発明の無機塩化物汚染防止コーティング層は特定成分のコーティング層に限定されず、コーティング層が式1~3を同時に満足すれば、コーティング層の構造、成分、製造方法などに関係なくコーティング層表面に塩化物の付着と乾燥過程でソルトドームが形成されながら除去が容易な効果を示すことができる。
【0047】
水に対する後進接触角(REC)が80°以下である場合、液滴内部の塩または溶液が外郭に移動せずにコーティング層と接触した状態で残りやすく、この過程で乾燥時コーティング層表面に塩成分が残ることになることがある。一方、RECが150°以上で過度に高い場合、液滴がほとんど球形に近い状態で乾燥され、表面付近の溶液よりは液滴内部の溶液が外郭に持続的に移動することになって、表面付近の溶液は乾燥後半部に蒸発することになる。したがって、表面と接触する液滴の部分には塩がそのまま残っていることになってソルトドームが形成されないことがある。
【0048】
また、接触角履歴(CAH)が25°未満である場合、ソルトドームでの液滴と表面の間の界面が固定されず自由に動きやすくて、これにより液滴が乾燥されながら液滴界面が次第にソルトドームの内部に移動できる。したがって、乾燥過程でドーム自体の大きさが次第に小さくなりながらかたまった状態になってソルトドームの形状を維持することができなくなる。
【0049】
したがって、コーティング層表面に塩成分が残っていないながらもソルトドームの形状が維持されるためには、RECとCAHがそれぞれ一定水準以上に高い値を示す必要がある。しかし、RECに対するCAHの比率が過度に大きい場合、ソルトドームの形状が乾燥過程でつぶれることがあり、最終的に乾燥以後にソルトドーム形状を維持しにくくなる。
【0050】
したがって、ソルトドームの形成および維持のためには、CAHに対するRECの比率も重要であって、式1~3の条件を同時に満足する時、液滴の乾燥過程でソルトドーム形状を維持しながらコーティング層表面に塩成分が残らなくなり得る。
【0051】
図2は、本発明の一実施形態によるソルトドームの断面を模式的に示す図である。
図2で、Roはソルトドームの外部半径であり、Riはソルトドームの内部半径であり、hはソルトドームの高さである。
【0052】
図2を参照すれば、ソルトドームで外部半径(Ro)に対するドーム高さの比率が0.5以上であり(h/Ro≧0.5)、ソルトドームと表面の接触面での空いている空間の面積が50%以上(Ri
2/Ro
2≧0.5)である場合、本発明で意味するソルトドームが形成されたとみることができる。
【0053】
これと対照的に、
図3は本発明の比較例によるコーティング層表面でソルトドーム(salt dome)が形成されない過程を示す模式図であり、
図4は本発明の比較例による基材表面でソルトドーム(salt dome)が形成されない過程を示す模式図である。
【0054】
図3を参照すれば、初期には本発明と同様にコーティング層表面に付着された無機塩化物溶液の液滴が乾燥されながら縁から液滴と空気との境界線に沿って塩が生成される。しかし、本発明の一実施形態による式1~3のうちのいずれか一つ以上の一定の条件を満足しない場合、液滴の乾燥が続けられながらソルトドーム(salt dome)の形態が形成されず不完全なドームになるか、またはドーム形態が崩れて塩成分が表面に不規則に付着される形態で残っていることになる。
【0055】
図4を参照すれば、コーティング層がSUSのように接触角が低い表面に無機塩化物溶液の液滴が付着される場合であって、液滴が乾燥される過程で生成される塩がドーム形態を全く成さず全体的に表面に広がって強く付着されるので、除去が難しくファウリングの原因になる。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態によるソルトドーム(A)および比較例のドーム(B、C)の写真である。
【0057】
図5で、(A)は本発明の一実施形態によって完全に形成されたソルトドームを表面から剥ぎ取った写真であり、(B)は不完全に形成されたドームの写真であり、(C)はドームが形成されず表面に広がって付着された塩化物の写真である。
【0058】
前記のような特徴を満足する無機塩化物汚染防止コーティング層は、これに限定されるのではないが、一例としてアルキル-トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランの硬化物を含む第1コーティング層;および前記第1コーティング層上に形成され、フッ化ポリエーテルシランの硬化物を含む第2コーティング層を含むことができる。
【0059】
前記アルキル-トリアルコキシシランは下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0060】
[化学式1]
R11-Si(R12)(R13)(R14)
【0061】
上記化学式1中、
R11は炭素数1~5のアルキル基であり、
R12~R14はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0062】
発明の一実施形態によれば、前記テトラアルコキシシランは下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0063】
[化学式2]
Si(R21)(R22)(R23)(R24)
【0064】
上記化学式2中、
R21~R24はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0065】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング液は、アルキル-トリアルコキシシラン100重量部に対して、テトラアルコキシシラン1~50重量部を含むことができる。
【0066】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング液は、アルキル-トリアルコキシシラン100重量部に対して、有機酸1~10重量部を含むことができる。
【0067】
発明の一実施形態によれば、前記フッ化ポリエーテルシランは下記化学式3-1~3-4で表される残基(moiety)を含む化合物であってもよい。
【0068】
[化学式3-1]
CF3-
[化学式3-2]
-CF2-CF2-O-
[化学式3-3]
-CF2-CF2-CF2-O-
[化学式3-4]
-Si(R31)(R32)(R33)
【0069】
上記化学式3-4中、
R31~R33はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0070】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング液硬化および第2コーティング液硬化は、それぞれ独立して、100~150℃の温度条件で行うことができる。
【0071】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング層の硬化厚さは、約0.1~約100μm、より好ましくは約1~約50μm、または約2~約10μmであってもよい。第1コーティング層の硬化厚さが前記のような範囲にある時、適切なコーティング硬度を示しながらクラック発生を防止することができる。
【0072】
そして、前記第2コーティング層の硬化厚さは約1~約100nm、または約5~約50nmであってもよい。具体的に、前記第2コーティング層は、第2コーティング液に含まれているフッ化ポリエーテルシランがほとんど単一分子層(mono-molecule layer)として塗布された状態であってもよい。第2コーティング層の硬化厚さが前記のような範囲にある時、均一なコーティング層と適切な表面エネルギーレベルを維持することができる。
【0073】
本発明の一側面によれば、アルキル-トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、および有機酸を含む、第1コーティング液を塗布する段階;前記塗布された第1コーティング液を硬化して、第1コーティング層を形成する段階;前記第1コーティング層上にフッ化ポリエーテルシランを含む、第2コーティング液を塗布する段階;および前記塗布された第2コーティング液を硬化して、第2コーティング層を形成する段階を含む方法によって形成することができる。
【0074】
本発明の一実施形態による方法では、まず、基材表面にアルキル-トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、および有機酸を含む、第1コーティング液を塗布する。
【0075】
発明の一実施形態によれば、前記アルキル-トリアルコキシシランは下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0076】
[化学式1]
R11-Si(R12)(R13)(R14)
【0077】
上記化学式1中、
R11は炭素数1~5のアルキル基であり、
R12~R14はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0078】
さらに具体的に、前記R11は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルであってもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。
【0079】
R12~R14はそれぞれ独立して、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、またはペントキシであってもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。
【0080】
具体的に、例えば、前記アルキル-トリアルコキシシランは、メチル-トリメトキシシラン、メチル-トリエトキシシラン、メチル-トリプロポキシシラン、メチル-トリブトキシシラン、メチル-トリペントキシシラン、エチル-トリメトキシシラン、エチル-トリエトキシシラン、エチル-トリプロポキシシラン、エチル-トリブトキシシラン、エチル-トリペントキシシラン、プロピル-トリメトキシシラン、プロピル-トリエトキシシラン、プロピル-トリプロポキシシラン、プロピル-トリブトキシシラン、プロピル-トリペントキシシラン、ブチル-トリメトキシシラン、ブチル-トリエトキシシラン、ブチル-トリプロポキシシラン、ブチル-トリブトキシシラン、ブチル-トリペントキシシラン、ペンチル-トリメトキシシラン、ペンチル-トリエトキシシラン、ペンチル-トリプロポキシシラン、およびペンチル-トリブトキシシラン、ペンチル-トリペントキシシランからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0081】
前記のようなアルキル-トリアルコキシシランは、組成物内でゾル-ゲル(sol-gel)反応を通じて無機塗膜のメインネットワークを構成する成分である。この時、アルキル基はネットワーク構造に柔軟性を増加させてシラノール間またはシラノールと基材表面の金属酸化(Metal oxide)層との反応時に発生する応力を緩和させることができる。アルキルシランのみを使用する場合、反応に参加するシラノール個数が少なくて、以後フッ素コーティング時に表面エネルギーを下げるのに不利であり、アルコキシシランのみを使用する場合、前述の応力緩和の効果を得にくいことがある。
【0082】
発明の一実施形態によれば、前記テトラアルコキシシランは下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0083】
[化学式2]
Si(R21)(R22)(R23)(R24)
【0084】
上記化学式2中、
R21~R24はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0085】
さらに具体的に、前記、R21~R24はそれぞれ独立して、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、またはペントキシであってもよく、直鎖または分枝鎖であってもよい。
【0086】
具体的に、例えば、前記テトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、およびテトラペントキシシランからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0087】
前記のようなテトラアルコキシシランは、組成物内で前述のシラノール間あるいはシラノールと基材表面の金属酸化(metal oxide)層との反応に参加可能なシラノール基を増加させることができ、これは以後フッ素シランとの反応度を高めて表面エネルギーが低い表面を実現するのに役に立つ。
【0088】
アルキル-トリアルコキシシランとテトラアルコキシシランを適正な割合で混合使用することによって、全体コーティング層ネットワークにクラックが発生する問題を防止し、表面に適切な量のシラノール反応基を備えるようにすることができる。
【0089】
発明の一実施形態によれば、前記有機酸は、炭素数1~5のカルボン酸であってもよい。
【0090】
具体的に、例えば、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0091】
前記のような有機酸は、組成物内でシラン基の加水分解を促進する触媒として使用され、全体ネットワーク構造を決定する役割を果たすことができる。pHが低い酸性条件では加水分解速度が縮合反応速度より優勢であってシランによる結合がリニア(Linear)な構造を形成することになる。反面、塩基性条件では縮合反応速度がさらに速くて逆に粒子状構造を形成することになる。有機酸でない塩酸などの無機酸も使用することができるが、ゲルタイム調節するのにおいて有機酸がより有用に使用できる。
【0092】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング液は、アルキル-トリアルコキシシラン100重量部に対して、テトラアルコキシシラン約1~約50重量部を含むことができる。
【0093】
テトラアルコキシシランを前記のような重量部で使用することによって、適切な表面エネルギーと優れた付着力を達成するのに有利であり得る。
【0094】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング液は、アルキル-トリアルコキシシラン100重量部に対して、有機酸約1~約10重量部を含むことができる。
【0095】
有機酸を前記のような重量部で使用することによって、適切な加水分解速度でリニア構造のネットワークを得ることができ、コーティング層の機械的物性を維持することができる。
【0096】
前記第1コーティング液のpHは約7以下、または約5以下、または約3以下であってもよく、約1以上、または約2以上であってもよい。
【0097】
pHは加水分解速度と縮合反応速度に影響を与えることができ、この二つの反応の速度差によって塗膜の構造が決定され、製造されたコーティング液の保存安定性に影響を与えることになる。
【0098】
このような観点で、前述の範囲のpHを有する酸性条件で安定的な無機塗膜を得ることができる。
【0099】
前記第1コーティング液は、前述の成分以外に、有機溶媒をさらに含むことができる。このような有機溶媒としては、具体的に、例えば、アルコール類、あるいはエーテル類などを含むことができ、有機溶媒の量はコーティング性および塗布以後乾燥などを考慮して適切に選択することができる。
【0100】
基材表面に前記第1コーティング液塗布時、塗布厚さは乾燥および硬化後厚さを基準にして約0.1~約100μm、より好ましくは約1~約50μm、または約2~約10μmであってもよい。第1コーティング層の硬化厚さが前記のような範囲にある時、適切なコーティング硬度を示しながらクラック発生を防止することができる。
【0101】
塗布時、塗布方法は特に制限されず、直接筆などの道具で塗布するか、または粘度を適切に調節した後に噴霧するか、またはバーを用いてコーティングするなど、本発明の属する技術分野で一般に使用される方法を選択することができる。
【0102】
塗布後、常温で約10分~約1時間乾燥を行うことができる。このような乾燥条件は、共に使用した溶媒の種類および量によって変わり得る。
【0103】
乾燥以後、約100~約150℃の温度条件で約30分~約2時間硬化を行うことができる。
【0104】
硬化工程で、前述の第1コーティング液内アルキル-トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシラン化合物内シラン基のゾル-ゲル反応が行われて第1コーティング層が形成できる。
【0105】
発明の一実施形態によれば、前記フッ化ポリエーテルシランは下記化学式3-1~3-4で表される残基(moiety)を含む化合物であってもよい。
【0106】
[化学式3-1]
CF3-
[化学式3-2]
-CF2-CF2-O-
[化学式3-3]
-CF2-CF2-CF2-O-
[化学式3-4]
-Si(R31)(R32)(R33)
【0107】
上記化学式3-4中、
R31~R33はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0108】
前記のようなフッ化ポリエーテルシランは、一末端にフルオロ化カーボンを含み、他の一末端にはアルコキシシラン基を含み、中間にフルオロ化エトキシ、あるいはフルオロ化プロポキシ基を備えた形態の化合物であって、第1コーティング層と直接的に共有結合を形成して硬いコーティング層を形成することができ、多量のフッ素鎖のためにコーティング層の表面エネルギーを極端に下げることができる。
【0109】
第2コーティング液において、前記フッ化ポリエーテルシランは、アルコキシフッ化アルキル系溶媒と共に使用できる。
【0110】
ここに使用されるアルコキシフッ化アルキル系溶媒は、次の化学式4で表されるエーテル化合物であってもよい。
【0111】
CF3-(CF2)n-O-(CH2)m-CH3
【0112】
上記化学式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の整数であってもよい。
【0113】
前記エーテル化合物は、酸素を中心にして一側にはフッ素が置換されていないアルキル基が連結され、他の一側には全ての水素原子がフッ素に置換されたアルキル基が連結される。
【0114】
このようなエーテル化合物は前述のフッ化ポリエーテルシラン化合物と相溶性に優れて、フッ化ポリエーテルシラン化合物を第2コーティング液内で均一に分散させることができる。
【0115】
第1コーティング層が形成された基材表面に前記第2コーティング液塗布時、塗布厚さは乾燥および硬化後厚さを基準にして約1~約100nmであってもよい。具体的に、前記第2コーティング層は、第2コーティング液に含まれているフッ化ポリエーテルシランがほとんど単一分子層(mono-molecule layer)として塗布された状態であってもよい。第2コーティング層の硬化厚さが前記のような範囲にある時、均一なコーティング層と適切な表面エネルギーレベルを維持することができる。
【0116】
塗布時、塗布方法は特に制限されず、直接筆などの道具で塗布するか、または粘度を適切に調節した後に噴霧するか、またはバーを用いてコーティングするなど、本発明の属する技術分野で一般に使用される方法を選択することができる。
【0117】
塗布後、常温で約10分~約1時間乾燥を行うことができる。このような乾燥条件は、共に使用した溶媒の種類および量によって変わり得る。
【0118】
乾燥以後、約100~約150℃の温度条件で約30分~約2時間硬化を行うことができる。
【0119】
硬化工程で、前述の第2コーティング液内フッ化ポリエーテルシランが第1コーティング層内に含まれている官能基との相互作用を通じて第2コーティング層を形成することができる。
【0120】
発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング層の硬化厚さは、約0.1~約100μmであってもよい。
【0121】
そして、前記第2コーティング層の硬化厚さは、約1~約100nmであってもよい。
【0122】
前記のような本発明の一実施形態によって提供された無機塩化物汚染防止コーティング層は前述の式1~3を満足して、無機塩化物溶液の液滴が付着された時、ソルトドーム(salt dome)形態が形成され、このようなソルトドームは除去が容易であって無機塩化物によって発生する表面汚染やファウリング発生を遮断することができ、これによって汚染防止に優れた効果がある多様な物品を提供することができる。
【0123】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例】
【0124】
<実施例>
実施例1
第1コーティング液
アルキル-トリアルコキシシラン成分としてはメチル-トリメトキシシランを5重量部使用し、テトラアルコキシシラン成分としてはテトラエトキシシラン1重量部を使用し、有機酸成分としては水に希釈された6wt%酢酸溶液を4重量部使用して、これらを混合した。(pH約2.3)
【0125】
前記コーティング液100重量部に対して溶媒として約50重量部のイソプロピルアルコールを用いて希釈して第1コーティング液を製造した。
【0126】
第2コーティング液
フッ化ポリエーテルシラン成分としては、Daikin社のペルフルオロポリエーテル-シランであるOptool-DSXを溶媒である3M社のNovec-7200に1wt%濃度で溶解させて使用した。
【0127】
無機塩化物汚染防止コーティング層形成
ステンレススチール材質の基材(Stainless steel 316、10cm×10cm)表面に筆を用いて前記第1コーティング液を塗布し、常温で約30分間乾燥した後、約130℃温度条件で約1時間硬化して、約5μm厚さの第1コーティング層を形成した。
【0128】
ここに再び筆を用いて前記第2コーティング液を塗布し、常温で約30分間乾燥した後、約130℃温度条件で約1時間硬化して、約10nm厚さの第2コーティング層を形成した。
【0129】
実施例2
実施例1の第2コーティング液で、Daikin社のパーフルオロポリエーテル-シランであるOptool-DSXを溶媒である3M社のNovec-7200に0.1wt%濃度で溶解させて使用したことを除いては、実施例1と同一にして無機塩化物汚染防止コーティング層を形成した。
【0130】
比較例1
実施例1と同一のステンレススチール材質の基材のみをそのまま比較例1にした。
【0131】
比較例2
イソプロピルアルコールとアセトンできれいに洗浄したスライドグラスを完全に乾燥した後、20 cst シリコーンオイル(silicone oil)(DMS-T12、Gelest社)を筆を用いてスライドグラス前面に塗布した。垂直に1時間程度立てて表面に過量付着したオイルを除去した後、130℃で24時間反応させた。反応以後残っているシリコーンオイル(Silicone oil)をイソプロピルアルコールとアセトンで洗浄した。
【0132】
比較例3
Sylgard 184 Elastomer Kit(Dow Corning)を用いてベース10重量部、硬化剤1重量部の比率で混合した後、気泡を除去した。ペトリディッシュに厚さが5mmになるように注いだ後、70℃オーブンで3時間硬化させた。
【0133】
比較例4
超撥水商業用コーティング製品であるNeverwetスプレー(Rust-Oleum Corporation)を用いて超撥水コーティングを製造した。Neverwet BaseコーティングをSUS基材に1次コーティング後、常温で1時間乾燥した。Neverwet Topコーティングを1次コーティングの上に塗布した後、70℃で1時間乾燥した。
【0134】
比較例5
韓国公開特許第2015-0033725号の実施例7のS.PDMS1溶液を準備してステンレススチール材質の基材(Stainless steel 316、10cm×10cm)にコーティングした後、120℃で3時間硬化した。
【0135】
比較例6
Dow社のSylgard 184 silicone elastomer kitベース樹脂90.9重量部およびDow社のSylgard 184 silicone elastomer kit架橋剤9.1重量部を混合して気泡を除去した。これをステンレススチール材質の基材(Stainless steel 316、10cm×10cm)表面に塗布し、120℃で3時間硬化した。
【0136】
比較例7
Dow社のSylgard 184 silicone elastomer kitベース樹脂45重量部、Dow社のSylgard 184 silicone elastomer kit架橋剤4.5重量部、およびシリコーンオイル(Gelest社、製品名:DMS-T11)50.5重量部を混合して気泡を除去した。これをステンレススチール材質の基材(Stainless steel 316、10cm×10cm)表面に塗布し、120℃で3時間硬化した。
【0137】
比較例8
比較例7で製造されたサンプルを常温でDMS-T11(Mw:1,250g/mol)シリコーンオイルに24時間浸漬した後、取り出した後、縦に立てて30分間表面残留オイルを除去した。
【0138】
【0139】
表1で、ADVは25℃の温度の水に対する前進接触角(Advancing angle)(単位:°)であり、RECは25℃の温度の水に対する後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)であり、CAHは接触角履歴(Contact Angle Hysteresis)であって、25℃の温度の水に対する前進接触角(Advancing contact angle)(単位:°)と後進接触角(Receding Contact Angle)(単位:°)間の差である。
【0140】
<実験例>
(1)ソルトドーム(Salt dome)形成有無
KCl(99.0%、徳山薬品工業)を蒸留水1kgに400gを80℃の温度で完全に溶かした後、常温25℃に冷まし、KClが析出されて残った溶液をKCl飽和溶液として使用した。KClソルトドーム(Salt dome)評価のためにピペットで50μLのKCl飽和溶液をサンプル表面の上に10個のそれぞれ異なる地点に落とした。60℃オーブンで12時間乾燥させた後、ソルトドーム(Salt dome)形態を確認した。
【0141】
乾燥後表面に、外部半径(Ro)に対するドーム高さの比率が0.5以上であり(h/Ro≧0.5)、ソルトドームと表面の接触面での空いている空間の面積が50%以上(Ri2/Ro2≧0.5)であるソルトドームが形成されるかどうかを観察した。
【0142】
前記条件を満足するソルトドームが形成される場合をOと、ドームが形成されたが前記条件を満足しない不完全なソルトドームが形成されるか、またはドーム形状なく表面に塩化物が広がって付着される場合をXと評価した。
【0143】
(2)ソルトドームまたは塩化物付着有無
(1)のソルトドーム形成を観察した後、表面と地面との角度が45°になるように傾けた時、ソルトドーム(またはソルトドームが形成されなかった場合、塩化物付着物)が表面から脱落する個数を測定して次の通り評価した。
【0144】
O:ソルトドームまたは付着物が4つ以上ついている
△:ソルトドームまたは付着物が1つ~3つ以下でついている
X:ソルトドームまたは付着物が全て脱落する
【0145】
(3)残余物
(2)のソルトドーム付着有無評価後、ソルトドームまたは付着物が脱落した部分の表面に肉眼で観察される残余物がない場合をXと、残余物が残っている場合をOと評価した。
【0146】
(4)耐スクラッチ性
実施例および比較例のコーティング層表面に対して二つの基材表面の間に塩化カリウムを単位面積(cm2)当り0.1gを上げた後、1000N/m2荷重で1cm往復運動100回行った。スクラッチテスト以後、表面に肉眼で観察されるスクラッチが発生しなければOと、スクラッチが発生すればXと評価した。
【0147】
【0148】
表2を参照すれば、コーティング層表面に対して所定の式1~3を全て満足する実施例1~2は、表面に付着された塩化物が乾燥されながらソルトドームが形成され、形成されたソルトドームは過度な外力がなくても容易に脱落しながら残余物が残らなくて塩化物による汚染防止効果が非常に優れていると評価された。
【0149】
反面、式1~3のうちのいずれか一つ以上を満足しない比較例は、実施例と同一の条件でソルトドームが形成されないか(比較例1~8)、または表面に付着物が残って(比較例1、4~8)、塩化物に対する汚染防止効果が殆どなかった。
【国際調査報告】