(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】瞳偏光フィルタリングのための波長板
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20241128BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241128BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G02B5/30
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579168
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022052063
(87)【国際公開番号】W WO2023114056
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ グオヘン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトサイド ブレット
【テーマコード(参考)】
2G051
2H149
2H249
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA05
2G051BB01
2G051BB05
2G051CA04
2G051CB05
2G051CC07
2H149AA22
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA23
2H149EA02
2H149FC09
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA45
2H249AA50
2H249AA68
(57)【要約】
光学検査システム100は、ターゲット102から散乱された光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換するための1つ以上の回折格子114を含む。一部の実施形態では、1つ以上の回折格子114は、単一材料回折格子である。一部の実施形態では、1つ以上の回折格子114は、反射性基板1602上に少なくとも1つの回折格子1600を含む。1つ以上の回折格子114は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。光学検査システム100は、直線偏光された光をフィルタリングするための直線偏光子116も含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットから散乱された光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、前記収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換するための1つ以上の単一材料回折格子であって、前記楕円偏光に従って前記収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する、1つ以上の単一材料回折格子と、
前記直線偏光された光をフィルタリングするための直線偏光子と、
を備えることを特徴とする、光学検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記ターゲットが半導体ウエハであることを特徴とする、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記半導体ウエハがパターニングされていないことを特徴とする、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記パターニングされていない半導体ウエハが研磨されていることを特徴とする、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記光が紫外線であることを特徴とする、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記1つ以上の単一材料回折格子が第1の回折格子および第2の回折格子を備え、
前記第1および第2の回折格子が1次元である、
ことを特徴とする、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が前記収集瞳にわたって一定の深さを有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって一定の深さを有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が均一なデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および均一な配向を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項10】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が第1の基板上にあり、
前記第2の回折格子が前記第1の基板とは異なる第2の基板上にある、
ことを特徴とする、システム。
【請求項11】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が基板の第1の側にあり、
前記第2の回折格子が前記第1の側とは反対側の前記基板の第2の側にある、
ことを特徴とする、システム。
【請求項12】
請求項6に記載のシステムであって、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が同一のレイアウトを有することを特徴とする、システム。
【請求項13】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化する別個の配向を有し、
前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が実質的に等しい位相遅延を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項14】
請求項6に記載のシステムであって、前記ターゲットから散乱された前記光に対して均一な位相遅延を与えるための均一波長板をさらに備えることを特徴とする、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が前記均一波長板と前記直線偏光子との間に配置されていることを特徴とする、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、前記1つ以上の単一材料回折格子が溶融シリカ基板、サファイア基板、およびフッ化カルシウム(CaF
2)基板から成る群から選択される基板上の回折格子を備えることを特徴とする、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムであって、前記1つ以上の単一材料回折格子が2次元回折格子を含むことを特徴とする、システム。
【請求項18】
ターゲットを照明することと、
前記照明されたターゲットから散乱された光を収集することであって、前記照明されたターゲットから散乱された前記収集された光が収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する、収集することと、
1つ以上の単一材料回折格子を使用して、前記収集された光の前記偏光を、前記収集瞳にわたって空間的に変化する前記楕円偏光から、前記収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換することであって、前記1つ以上の単一材料回折格子が前記楕円偏光に従って前記収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する、変換することと、
直線偏光子を使用して、前記収集瞳にわたって均一に配向された前記直線偏光を有する前記光をフィルタリングすることと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記ターゲットが半導体ウエハであることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記半導体ウエハがパターニングされていないことを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記パターニングされていない半導体ウエハが研磨されていることを特徴とする、方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、前記光が紫外線であることを特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法であって、
前記1つ以上の単一材料回折格子が第1の回折格子および第2の回折格子を備え、
前記第1および第2の回折格子が1次元である、
ことを特徴とする、方法。
【請求項24】
請求項18に記載の方法であって、前記1つ以上の単一材料回折格子が2次元回折格子を含むことを特徴とする、方法。
【請求項25】
ターゲットから散乱された光の前記偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、前記収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換するための1つ以上の回折格子であって、
前記楕円偏光に従って前記収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有し、
反射性基板上に少なくとも1つの回折格子を含む、
1つ以上の回折格子と、
前記直線偏光された光をフィルタリングするための直線偏光子と、
を備えることを特徴とする、光学検査システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムであって、前記ターゲットが半導体ウエハであることを特徴とする、システム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムであって、前記半導体ウエハがパターニングされていないことを特徴とする、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、前記パターニングされていない半導体ウエハが研磨されていることを特徴とする、システム。
【請求項29】
請求項25に記載のシステムであって、前記光が紫外線であることを特徴とする、システム。
【請求項30】
請求項25に記載のシステムであって、
前記1つ以上の回折格子が第1の回折格子および第2の回折格子を備え、
前記第1および第2の回折格子が1次元であり、
前記第1の回折格子が第1の反射性基板上にあり、
前記第2の回折格子が第2の反射性基板上にある、
ことを特徴とする、システム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が前記収集瞳にわたって一定の深さを有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって一定の深さを有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項33】
請求項30に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子が均一なデューティサイクル、および前記収集瞳にわたって空間的に変化する配向を有し、
前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化するデューティサイクル、および均一な配向を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項34】
請求項30に記載のシステムであって、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が同一のレイアウトを有することを特徴とする、システム。
【請求項35】
請求項30に記載のシステムであって、
前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が前記収集瞳にわたって空間的に変化する別個の配向を有し、
前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が実質的に等しい位相遅延を有する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項36】
請求項30に記載のシステムであって、前記ターゲットから散乱された前記光に対して均一な位相遅延を与えるための均一波長板をさらに備えることを特徴とする、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムであって、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が前記均一波長板と前記直線偏光子との間に配置されていることを特徴とする、システム。
【請求項38】
請求項25に記載のシステムであって、前記1つ以上の回折格子が反射性基板上に2次元回折格子を含むことを特徴とする、システム。
【請求項39】
ターゲットを照明することと、
前記照明されたターゲットから散乱された光を収集することであって、前記照明されたターゲットから散乱された前記収集された光が収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する、収集することと、
1つ以上の回折格子を使用して、前記収集された光の前記偏光を、前記収集瞳にわたって空間的に変化する前記楕円偏光から、前記収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換することであって、
前記1つ以上の回折格子が前記楕円偏光に従って前記収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有し、
前記1つ以上の回折格子が反射性基板上に少なくとも1つの回折格子を含む、
変換することと、
直線偏光子を使用して、前記収集瞳にわたって均一に配向された前記直線偏光を有する前記光をフィルタリングすることと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記ターゲットが半導体ウエハであることを特徴とする、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記半導体ウエハがパターニングされていないことを特徴とする、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、前記パターニングされていない半導体ウエハが研磨されていることを特徴とする、方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法であって、前記光が紫外線であることを特徴とする、方法。
【請求項44】
請求項39に記載の方法であって、
前記1つ以上の回折格子が第1の回折格子および第2の回折格子を備え、
前記第1および第2の回折格子が1次元であり、
前記第1の回折格子が第1の反射性基板上にあり、
前記第2の回折格子が第2の反射性基板上にある、
ことを特徴とする、方法。
【請求項45】
請求項39に記載の方法であって、前記1つ以上の回折格子が反射性基板上に2次元回折格子を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月14日に出願された米国仮特許出願第63/289,258号に対する優先権を主張するものであり、この仮特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により援用される。
【0002】
本開示は、波長板に関し、より詳細には、検査ターゲット(例えば、半導体ウエハ)からの表面散乱を抑制するために波長板を使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
通過する光に対して位相遅延を与える波長板は、水晶などの複屈折材料を用いて作ることができる。90度の位相遅延を有する波長板(すなわち、1/4波長板)または180度の位相遅延を有する波長板(すなわち、1/2波長板)は、光学部品供給業者から一般に入手可能である。これらのタイプの波長板はモノリシックであり、構成部品の有効開口全体にわたって均一な位相遅延を有する。
【0004】
しかしながら、ウエハ検査用途では、ウエハ表面散乱をより効率的に抑制することができるように、構成部品の有効開口にわたって位相遅延が変化することが望ましい。位相遅延の任意の制御を達成するために、断片状の石英または石英の厚さを変化させた自由曲面形状のいずれかを使用することによって、空間的に位相遅延を変化させた波長板を製造するための様々な方法が提案されている。
【0005】
表面散乱の強い抑制(すなわち、強いヘイズ抑制)には、位相遅延の正確な制御が必要である。高い散乱角での表面散乱の偏光は楕円である。高度の抑制を達成するためには、表面散乱の偏光を均一に線形化する必要がある。従来の波長板を用いてこのような正確な位相遅延制御を達成することは困難である。例えば、自由曲面研磨を用いて表面形状の波面誤差を高精度に制御することは困難である。従来の複屈折材料を波長板として使用するもう1つの課題は、光軸角が固定されているため、複数のセグメントを使用して偏光楕円率および偏光の配向の両方を変換していることである。複数のセグメントをつなぎ合わせることで、光軸の配向をある程度制御できるが、細かく制御するには、多数のセグメントが必要となり、高い波面品質を維持しながら一体化するのは困難である。
【0006】
位相遅延は、回折格子などの異方性構造が、透過するゼロ次光の2つの直交する電界(例えば、回折格子線に平行な電界と垂直な電界)間に位相差を導入する現象である形態複屈折を使用して達成することもできる。形態複屈折を使用する波長板は市販されており、しばしばフォトニック結晶と呼ばれる。このような波長板の回折格子は、溝が刻まれた波型基板上に共形の多層薄膜を堆積させることによって製造される。光軸角は、溝(すなわち、基板に刻まれたトレンチ)の配向によって制御され、位相遅延は、多層膜によって制御される。その後、モノリシック基板上に小型部品をパターニングすることによって空間的に変化する波長板を作ることができる。各部品が数ミクロン程度と小さい場合、このようなピクセル化されたデバイスは、ほぼ連続的に空間的に変化する波長板をエミュレートすることができる。特定の単純なパターンに限定されるが、光軸の配向も連続的に変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0364177号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0139771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなデバイスには限界がある。第1に、このようなデバイスは、薄膜コーティングプロセスによって製造される。このようなデバイスの製造に使用される薄膜は、一般に、非常に短い波長では透明ではない。第2に、多層薄膜(例えば、このような波長板のために典型的に使用されるような、約100層の)は、層厚および層間形状または形態を正確に制御する必要があるため、製造するのが困難である。
【0009】
一般に波長が短いほどは検査感度が高くなるため、紫外光を使用してターゲットを検査することが望ましい場合がある。アモルファスSiO2は、130nmの波長まで透明である。電子ビームリソグラフィおよびウェットエッチングを用いて、SiO2基板上に製造された形態複屈折1/4波長板が実証されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光軸と位相遅延の両方を制御できる空間的に変化する波長板は、光学検査システムにとって貴重な技術である。これらの技術は、短い(例えば、深紫外線(DUV)または真空紫外線(VUV)などの紫外線)検査波長において特に価値がある。このような波長板は、一部の実施形態によると、単一材料回折格子および/または反射性基板上の回折格子を用いて達成される形態複屈折を使用して実装され得る。
【0011】
一部の実施形態では、光学検査システムは、ターゲットから散乱された光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換するための1つ以上の単一材料回折格子を含む。1つ以上の単一材料回折格子は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。光学検査システムは、直線偏光された光をフィルタリングするための直線偏光子も含む。
【0012】
一部の実施形態では、方法は、ターゲットを照明することと、照明されたターゲットから散乱された光を収集することとを含む。照明されたターゲットから散乱された収集光は、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する。本方法はまた、1つ以上の単一材料回折格子を使用して、収集光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換することを含む。1つ以上の単一材料回折格子は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。本方法は、直線偏光子を使用して、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光を有する光をフィルタリングすることをさらに含む。
【0013】
一部の実施形態では、光学検査システムは、ターゲットから散乱された光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換するための1つ以上の回折格子を含む。1つ以上の回折格子は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。1つ以上の回折格子は、反射性基板上に少なくとも1つの回折格子を含む。光学検査システムは、直線偏光された光をフィルタリングするための直線偏光子も含む。
【0014】
一部の実施形態では、方法は、ターゲットを照明することと、照明されたターゲットから散乱された光を収集することとを含む。照明されたターゲットから散乱された収集光は、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する。本方法は、1つ以上の回折格子を使用して、収集された光の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換することも含む。1つ以上の回折格子は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。1つ以上の回折格子は、反射性基板上に少なくとも1つの回折格子を含む。本方法は、直線偏光子を使用して、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光を有する光をフィルタリングすることをさらに含む。
【0015】
記載される様々な実施態様をより良く理解するために、以下の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一部の実施形態による光学検査システムの一部の断面図である。
【
図2】一部の実施形態による、
図1の光学検査システムにおける回折格子の一例の断面図である。
【
図3A】
図2の回折格子の位相遅延が回折格子のピッチ、深さ、およびデューティサイクルにどのように依存するかを示すグラフである。
【
図3B】
図2の回折格子の位相遅延が回折格子のピッチ、深さ、およびデューティサイクルにどのように依存するかを示すグラフである。
【
図3C】
図2の回折格子の位相遅延が回折格子のピッチ、深さ、およびデューティサイクルにどのように依存するかを示すグラフである。
【
図3D】
図2の回折格子の位相遅延が回折格子のピッチ、深さ、およびデューティサイクルにどのように依存するかを示すグラフである。
【
図4A】収集瞳にわたる表面散乱偏光の一例のマップである。
【
図4B】
図4Aの表面散乱偏光をx偏光に変換する回折格子を有する波長板の光軸の収集瞳にわたるマップである。
【
図4C】
図4Bの波長板の位相遅延の収集瞳にわたるマップである。
【
図4D】表面散乱によって生成された散乱光が
図4Bおよび
図4Cの波長板を通過した後の出力偏光の収集瞳にわたるマップである。
【
図4E】
図4Aの表面散乱偏光をy偏光に変換する回折格子を有する波長板の光軸の収集瞳にわたるマップである。
【
図4F】
図4Eの波長板の位相遅延の収集瞳にわたるマップである。
【
図4G】表面散乱によって生成された散乱光が
図4Eおよび
図4Fの波長板を通過した後の出力偏光の収集瞳にわたるマップである。
【
図5】
図4Bおよび
図4Cの波長板の収集瞳にわたるデューティサイクルの変化のマップである。
【
図6A】
図4Bおよび
図5のマップのための回折格子の一部の平面図であり、収集瞳内の3つのそれぞれの位置における回折格子配向およびデューティサイクルを示す。
【
図6B】
図4Cおよび
図5のマップのための回折格子の一部の平面図であり、収集瞳内の3つのそれぞれの位置における回折格子配向およびデューティサイクルを示す。
【
図6C】
図4Dおよび
図5のマップのための回折格子の一部の平面図であり、収集瞳内の3つのそれぞれの位置における回折格子配向およびデューティサイクルを示す。
【
図7】一部の実施形態による、波長板として作用する2つの回折格子を有する光学検査システムの一部の断面図である。
【
図8】一部の実施形態による、別個のそれぞれの基板上の2つの1次元回折格子の断面図である。
【
図9】一部の実施形態による、同じ基板上の2つの1次元回折格子の断面図である。
【
図10】一部の実施形態による、光学検査システムにおいて波長板として使用される一対の回折格子の、収集瞳にわたって空間的に変化する回折格子配向を示す図である。
【
図11】一部の実施形態による、光学検査システムにおいて波長板として使用される一対の回折格子の、収集瞳にわたって空間的に変化する回折格子配向を示す図である。
【
図12】一部の実施形態による、2つの空間的に変化する回折格子に加えて、均一な回折格子を有する光学検査システムの一部の断面図である。
【
図13】一部の実施形態による、光学検査システムにおいて均一波長板とともに波長板として使用される一対の回折格子の、収集瞳にわたって空間的に変化する回折格子の配向を示す図である。
【
図14】一部の実施形態による、光学検査システムにおいて均一波長板とともに波長板として使用される一対の回折格子の、収集瞳にわたって空間的に変化する回折格子の配向を示す図である。
【
図15A】一部の実施形態による、2D回折格子の平面図である。
【
図15B】
図15Aの2D回折格子のx方向のライン幅とy方向のライン幅の組合せに対するシミュレートされた位相遅延の値を示すグラフである。
【
図15C】
図15Aの2D回折格子によるx方向ライン幅とy方向ライン幅の組合せに対するシミュレーションされた透過率を示すグラフである。
【
図16】一部の実施形態による、反射性基板上の回折格子の断面図である。
【
図17】一部の実施形態による、光学検査システムの一部の断面図である。
【
図18】一部の実施形態による、光学検査システムのそれぞれの部分の断面図である。
【
図19】一部の実施形態による、光学検査システムのそれぞれの部分の断面図である。
【
図20】一部の実施形態による、ターゲットを検査しながら表面散乱からの光をフィルタリングする方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
同様の参照番号は、図面および明細書全体を通して対応する部分を指す。
【0018】
次に、様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の詳細な説明では、説明される様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、説明される様々な実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成部品、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0019】
図1は、一部の実施形態による光学検査システム100の一部の断面図である。光学検査システム100は、ターゲット102の欠陥(例えば、ターゲット上の粒子)を検査するために使用される。一部の実施形態では、ターゲット102は半導体ウエハ(例えば、パターニングされていない半導体ウエハ)である。例えば、ターゲット102は、半導体デバイスが製造されることになっているが、まだ製造されていない研磨された半導体ウエハである。研磨された半導体ウエハは、製造プロセスが始まる前に、光学検査システム100を使用して欠陥を検査することができる。ターゲット102は、検査のためにプラットフォーム104上(例えば、ウエハチャック上)に取り付けられる。
【0020】
検査中、光源(図示せず)からの光106は、ターゲット102を斜めの角度で照明する。一部の実施形態では、光106は紫外線である。例えば、光106は、深紫外線(すなわち、200~280nmの波長を有する)または真空紫外線範囲の上側部分(例えば、100~200nmの波長を有する)である。
【0021】
光106の一部は、反射光108としてターゲット102によって反射される。しかしながら、光106の一部は、散乱光110としてターゲット102によって散乱される。例えば、ターゲット102の表面上の欠陥(例えば、粒子)は、光106を散乱光110として散乱させる。しかしながら、欠陥がない場合でも、光106の一部の表面散乱(例えば、ターゲット102の表面粗さに起因する)が発生し、散乱光110が生成される。様々な散乱角でターゲット102の表面から散乱する散乱光110は、対物レンズ112によって収集される。散乱光110は、収集瞳内に収集される。欠陥による散乱とは対照的に、表面散乱に起因する散乱光110は、光学検査システム100による欠陥検出の信号対雑音比を低下させる雑音源である。したがって、表面散乱に起因する散乱光110が欠陥検出に使用される検出器120に到達する前に、この散乱光をフィルタリングすることが望ましい。
【0022】
対物レンズ112によって収集される表面散乱に起因する散乱光110は、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する。楕円偏光は、収集瞳にわたって大きさと配向の両方が変化することがある。しかしながら、所定のタイプのターゲット102に対しては、楕円偏光は、ターゲット102ごとに(すなわち、ターゲット102の異なるインスタンス間で)(少なくとも配向において)大きく変化しない。したがって、特定のタイプのターゲット102は、収集瞳内の所定の点において実質的に同じ配向の楕円偏光を有する表面散乱からの散乱光110を有するが、楕円偏光(その配向を含む)は、ターゲット102の収集瞳にわたって空間的に変化する。例えば、ターゲット102が特定のタイプ(例えば、特定のサイズ、材料、および/または製造業者)の半導体ウエハ(例えば、研磨された半導体ウエハ)である場合、表面散乱からの散乱光110の楕円偏光は、半導体ウエハのすべてに対して収集瞳内の所定の点において実質的に同じ配向を有する。
【0023】
対物レンズ112は、散乱光110をコリメートし、回折格子114に導く。回折格子114は、ターゲット102からの表面散乱によって生成された散乱光110の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換する。回折格子114は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有することによって(すなわち、散乱光110に与えることによって)、この結果を達成する。回折格子114は透過型の光学部品であり、回折格子114を透過した散乱光110は、回折格子114によってその偏光が変換される。
【0024】
回折格子114は、対物レンズ112によって収集されコリメートされた散乱光110の光軸に沿って、対物レンズ112と直線偏光子116との間に配置されている。直線偏光子116は、回折格子114によって提供される均一に配向された直線偏光を有する散乱光110をフィルタリングし、その直線偏光に垂直な偏光を有する光を透過させることを可能にする配向を有する。欠陥(例えば、粒子)によって散乱された光110は、表面散乱によって生成された光110とは異なる偏光状態を有する。したがって、直線偏光子116は、ターゲット102からの表面散乱によって生成された散乱光110をフィルタリングする一方で、ターゲット102上の欠陥からの散乱によって生成された散乱光110の少なくとも一部を透過させる。後者の散乱光110は、チューブレンズ118によって、欠陥検出に使用される検出器120(例えば、デジタルカメラ)上に集束される。直線偏光子116は、散乱光110の光軸に沿って、回折格子114とチューブレンズ118との間に配置されている。チューブレンズ118は、散乱光110の光軸に沿って、直線偏光子116と検出器120との間に配置されている。光学検査システム100は、他の光学部品(図示せず)(例えば、光を方向付けおよび/または集束させるための)を含むこともできる。
【0025】
図2は、一部の実施形態による回折格子114(
図1)の一例である回折格子200の断面図である。一部の実施形態によると、基板202上にある回折格子200は、形態複屈折に基づく位相遅延を有する波長板であり、回折格子200は、形態複屈折を有する人工的な異方性構造であるのに対し、基板202は複屈折ではない。回折格子200は、基板202上に一連のライン204を含む。一連の連続するライン204は、それぞれのトレンチ206によって分離されている。ライン204およびトレンチ206は、
図2のページから出る(または等価的にページに入る)方向に延在する。したがって、ライン204およびトレンチ206は、
図2のページに垂直な軸に平行であり、
図2の水平軸に垂直である。したがって、回折格子200は1次元回折格子である。
【0026】
連続するライン204間の距離(すなわち、間隔)は、ピッチ208である。ライン204は、ライン幅210を有する。トレンチ206は、深さ212を有する。
【0027】
ライン204は、単一の材料(例えば、ガラス)で構成されており、基板202と同じ材料であってもよい。回折格子200は、基板202にトレンチ206をエッチングすることによって、または基板202上にライン204を選択的に成長させることによって形成することができる。ライン204および基板202は、散乱光110の波長に対して透明な任意の材料であってもよい(例えば、散乱光110の波長に対して透明な絶縁体、したがって誘電体材料であってもよい)。一部の実施形態では、ライン204の単一の材料は、SiO2(すなわち、二酸化ケイ素)(例えば、溶融シリカ)であり、基板202もSiO2(例えば、溶融シリカ)であってもよい。一部の他の実施形態では、ライン204の単一の材料はサファイアであり、基板202もサファイアであってもよい。サファイアは、SiO2よりも高い屈折率を有し、したがって、SiO2よりも小さい深さ212でより強い位相遅延を提供する。さらに一部の他の実施形態では、ライン204の単一の材料はフッ化カルシウム(CaF2)であり、基板202もCaF2であってもよい。
【0028】
ライン204およびトレンチ206に平行な電界に対する実効誘電率は、
【数1】
であり、ライン204およびトレンチ206に垂直な電界に対する実効誘電率は、
ε
⊥=fε
1+(1-f)ε
0 (2)
であり、ここで、ε
1は、ライン204の誘電率であり(基板202の誘電率であってもよい)、ε
0は、トレンチ206の(例えば、空気の)誘電率であり、fは、回折格子200のデューティサイクルである。デューティサイクルは、ピッチ208に対するライン幅210の比に等しく、したがって、デューティサイクルは、ライン204がない場合にはゼロに等しく、トレンチ206がない場合には1に等しい。したがって、これらの2つの直交偏光間の屈折率の差(すなわち、ε
||とε
⊥との差)は、ε
1およびfの関数である。この差は、デューティサイクルが約50%(例えば、
図3Dに示されるように、40%と50%との間)のときに最大に達する。
【0029】
ε
||およびε
⊥がわかれば、周知の物理学を用いて回折格子200の位相遅延を計算することができる。
図3A~
図3Dは、266nmの光に対して、回折格子200の位相遅延302がピッチ208、深さ210、およびデューティサイクルfにどのように依存するかを示すグラフである。
図3Aは、ピッチ208および深さ212の関数として位相遅延302の変化を示すグラフ300である。
図3Bは、ピッチ208の異なる固定値について深さ212の関数として位相遅延302の変化を示すグラフ310である。
図3Cは、深さ212の異なる固定値についてピッチ208の関数として位相遅延302の変化を示すグラフ320である。
図3Dは、ピッチ208および深さ212の固定値についてデューティサイクル332(すなわち、デューティサイクルf)の関数として位相遅延302の変化を示すグラフ330である。
【0030】
回折格子200のこれらの2つの直交偏光間の屈折率(すなわち、ε
||とε
⊥との間)の差は、典型的には、自然複屈折材料の直交偏光の屈折率の差よりもはるかに大きい。したがって、回折格子200を用いて特定の位相シフトを達成するための深さ212は、その位相シフトを達成する自然複屈折波長板の厚さよりもはるかに小さい。1/2波長位相シフトを達成するための(すなわち、回折格子200を使用して1/2波長板を実装するための)深さ212は、回折格子ピッチ208と比較して、依然としてかなり大きい。例えば、光106および散乱光110の波長が266nmの場合、基板202およびライン204として溶融シリカを使用すると、1/2波長板の深さ212は約1.4μmとなる。ピッチ208は、伝搬次数の生成を回避するのに十分に小さくすべきであり、すなわち、波長を基板202の屈折率(すなわち、誘電率の平方根)で割った値よりも小さくすべきである。
【数2】
DUVからVUV波長における180°位相遅延の最小アスペクト比は、16:1である。最小アスペクト比も、波長に依存し、波長が短くなるとともに減少する傾向がある。
【0031】
楕円偏光散乱光110の偏光を線形化するために回折格子200(
図2)を使用して実装される波長板の光軸角(すなわち、配向)および位相遅延の閉形式解は、ジョーンズ行列を使用して導出することができる。任意の光軸角および位相遅延を有するこのような波長板は、ジョーンズ行列によって記述される。
【数3】
ここで、φは位相遅延であり、θは波長板の光軸角(回折格子のライン204に平行と定義される)である。光軸角は、回折格子200の配向を示す。振幅比rおよび位相差δを有する任意の入力偏光(すなわち、波長板に入射する光の偏光)は、波長板によって異なる偏光状態に変換される。
【数4】
【0032】
任意の散乱偏光をx偏光に(したがって直線偏光に)変換するために、光のy成分をゼロに設定する。
【数5】
ここで、x成分は入射面に平行であり、y成分は入射面に垂直である。波長板の光軸角および位相遅延は、次式によって与えられる。
【数6】
【0033】
rおよびδは両方とも、散乱角とともに変化する。したがって、これらは収集瞳位置の関数である。光軸角および位相遅延も、収集瞳位置の関数である。
【0034】
同様に、光のx成分をゼロに設定することによって、任意の散乱偏光をy偏光に(したがって直線偏光に)変換することができる。
【数7】
波長板の光軸角および位相遅延は、次式によって与えられる。
cot2θ=-rcosδ (9a)
【数8】
【0035】
式7a~式7bおよび式9a~式9bは、回折格子200(
図2)に基づく単一ピースの波長板について、局所的な光軸(したがって回折格子配向)および位相遅延を適宜揃えることによって、収集瞳にわたって任意に分布した楕円偏光を均一な直線偏光に変換するための閉形式解を提供する。どちらの解も、収集瞳にわたって変化する楕円偏光を収集瞳にわたって均一な直線偏光に変換するという同じ効果を達成する。しかし、表面散乱の偏光分布に依存して、一方の解は、最大位相シフトに関してもう一方の解よりも要求が低く、したがって、製造するのがより容易な場合がある。
【0036】
図4Aは、収集瞳にわたる表面散乱偏光の一例のマップ400である。
図4Aが示すように、表面散乱偏光は、その配向を含めて、収集瞳にわたって空間的に変化する。
図4Bは、式7aに基づいて決定された、
図4Aの表面散乱偏光をx偏光に(したがって、収集瞳にわたる均一な直線偏光の一例に)変換する回折格子200を有する波長板の光軸の収集瞳にわたるマップ410である。
図4Bの回折格子の光軸(したがって、回折格子の配向)は、図示するように、収集瞳にわたって空間的に変化する。
図4Cは、式7bに基づいて決定された
図4Bの波長板(すなわち、回折格子200)の位相遅延422の収集瞳にわたるマップ420である。収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延422は、度単位でグレースケールのカラーバーを使用して
図4Cに示されている。位相遅延422は、位相遅延302(
図3A~
図3D)の一例である。
図4Dは、表面散乱によって生成された散乱光110(
図1)が
図4Bおよび
図4Cの波長板(すなわち、回折格子200)を通過した後の出力偏光(すなわち、散乱光110の偏光)の収集瞳にわたるマップ430である。式7aおよび式7bによって示されるように、出力偏光は、収集瞳にわたるx偏光(すなわち、x方向の均一な偏光)であり、したがって、均一に直線的である。
【0037】
同様に、
図4Eは、式9aに基づいて決定された、
図4Aの表面散乱偏光をy偏光に(したがって、収集瞳にわたる均一な直線偏光の別の例に)変換する回折格子200を有する波長板の光軸の収集瞳にわたるマップ440である。
図4Eの回折格子の光軸(したがって、回折格子の配向)は、図示するように、収集瞳にわたって空間的に変化する。
図4Fは、式9bに基づいて決定された、
図4Eの波長板(すなわち、回折格子200)の位相遅延452の収集瞳にわたるマップ450である。収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延452は、度単位でグレースケールのカラーバーを使用して
図4Fに示されている。位相遅延マップ450からπの位相シフトが減算されている(すなわち、位相遅延452の値が180°減算されている)。位相遅延452は、位相遅延302(
図3A~
図3D)の一例である。
図4Gは、表面散乱によって生成された散乱光110(
図1)が
図4Eおよび
図4Fの波長板(すなわち、回折格子200)を通過した後の出力偏光(すなわち、散乱光110の偏光)の収集瞳にわたるマップ460である。式9aおよび式9bによって示されるように、出力偏光は、収集瞳にわたるy偏光(すなわち、y方向の均一な偏光)であり、したがって均一に直線的である。
【0038】
図4Cと
図4Fを比較すると、
図4Aの表面散乱偏光では、偏光をx偏光に変換する方が、偏光をy偏光に変換するよりも必要とする最大位相シフトが小さいことがわかる。より低い最大位相シフトを使用することは、製造が容易になるため有利である可能性がある。
【0039】
回折格子200(
図2)によって提供される位相遅延は、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、回折格子の深さ212とともにほぼ直線的に増加する。回折格子の深さ212(
図2)は、収集瞳内の位相遅延の範囲の中央に対応する固定値に(すなわち、回折格子200全体に対して一定の深さに)設定することができる。この固定の深さ212は、全収集瞳にわたって一定の位相遅延を提供する。より一般的には、回折格子200の回折格子の深さ212は、波長板全体に対して固定値に(すなわち、収集瞳にわたって一定の深さに)設定されてもよく、したがって、収集瞳にわたって一定の(すなわち、均一な)位相遅延を提供する。このような実施形態では、収集瞳にわたる位相変化(すなわち、位相遅延の変化)は、収集瞳にわたって空間的に変化する(例えば、一定のピッチ208を有する)回折格子のデューティサイクルf(例えば、デューティサイクル332、
図3D)によって制御される。デューティサイクルの値は、(例えば、
図3Dのように)位相遅延のデューティサイクル依存性のシミュレーションに基づいて計算することができる。
図5は、1750nmの深さ212および0.975の開口数を仮定した場合の、マップ420(
図4C)の位相遅延422を達成するための収集瞳にわたるデューティサイクル502の変化のマップ500である。デューティサイクル502の値は、グレースケールのカラーバーを使用して
図5に示されている。
【0040】
回折格子200を有するこのような波長板の設計パターンは、空間的に変化する回折格子配向(例えば、
図4Bまたは
図4Eのような)および回折格子デューティサイクル(例えば、
図5のような)の両方を有する。
図6A~
図6Cは、
図4A~
図4Dおよび
図5のマップのための回折格子200の一部の平面図である。
図6A~
図6Cは、収集瞳内の3つのそれぞれの位置600、610、および620における回折格子の配向およびデューティサイクルを示す。位置600、610、および620は、マップ410(
図4B)および500(
図5)においてラベル付けされている。位置600は収集瞳の中心にあり、位置610は収集瞳の右側にあり、位置620は収集瞳の右上にある。中心位置600は、
図6Aに示すように、水平の回折格子配向、64nmのライン幅210、および64%のデューティサイクルを有する。右の位置610は、
図6Bに示すように、水平の回折格子配向、96nmのライン幅210、および96%のデューティサイクルを有する。
図6Cに示すように、右上の位置620は、-40°の回折格子配向、60nmのライン幅210、および60%のデューティサイクルを有する。3つの位置600、610、および620のすべて、ならびに回折格子200全体のピッチ208は、100nmである。したがって、回折格子200は、均一な深さ212に加えて均一なピッチ208を有する。他の例では、ピッチ208および/または深さ212は、回折格子200に対して均一(したがって、収集瞳にわたって均一)であるが、異なる値を有してもよく、または回折格子200にわたって(したがって、収集瞳にわたって)変化してもよい。
【0041】
所望の位相遅延を達成するために、波長板として使用される単一の回折格子200は、少なくとも一部の位置について高いアスペクト比を有することができる。例えば、DUVからVUVの光に対して1/2波長位相遅延を達成するために(すなわち、1/2波長板を実装するために)、アスペクト比は約16:1である。アスペクト比を低下させ、製造を容易にするために、単一の回折格子200の代わりに複数の回折格子200(例えば、2つの回折格子200)を使用してもよい。それぞれが別個の波長板である複数の回折格子200は、ターゲット102からの表面散乱によって生成された散乱光110の偏光を、収集瞳にわたって空間的に変化する(配向の変化を含む)楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に共同で変換する。一部の実施形態では、複数の回折格子200のそれぞれは、1次元回折格子である。アスペクト比に対する、したがってデューティサイクルに対する要件が緩和されることに加えて、複数回折格子設計により、回折格子の製造をさらに容易にすることができる他のパラメータの選択も可能になる。
【0042】
図7は、一部の実施形態による光学検査システム700の一部の断面図である。単一の回折格子114の代わりに、光学検査システム700は、対物レンズ112と直線偏光子116との間に配置された第1の回折格子114および第2の回折格子714を含む。2つの回折格子114および714は一緒になって、ターゲット102からの表面散乱によって生成される散乱光110の偏光の所望の均一な線形化を提供する。光学検査システム700は、その他の点では、光学検査システム100(
図1)について説明したように機能する。
【0043】
図8は、一部の実施形態による2つの1次元回折格子802および806の断面図である。第1の回折格子802は、第1の回折格子114(
図7)の一例であり、第2の回折格子806は、第2の回折格子714(
図7)の一例であり、逆もまた同様である。第1の回折格子802は第1の基板804上にあり、第2の回折格子806は、第1の基板804とは異なる第2の基板808上にある。第1の回折格子802は、第1の基板804と同じ材料であってもよい単一の材料から構成されている。第2の回折格子806も、第2の基板808と同じであってもよい単一の材料から構成されてもよい。第1の回折格子802および/または第1の基板804は、第2の回折格子806および/または第2の基板808と同じ材料で構成されていてもよい。第1の回折格子802、第1の基板804、第2の回折格子806、および/または第2の基板808の材料の例には、限定ではないが、溶融シリカ、フッ化カルシウム、またはサファイアが含まれる。
【0044】
図9は、一部の実施形態による、同じ基板904上の2つの1次元回折格子902および906の断面図である。第1の回折格子902は、第1の回折格子114(
図7)の別の例であり、第2の回折格子906は、第2の回折格子714(
図7)の別の例であり、またはその逆である。回折格子902および906は、基板904の両側にあり、第1の回折格子902は、基板904の第1の側(例えば、対物レンズ112に面する側、
図7)にあり、第2の回折格子906は、基板904の第2の側(例えば、直線偏光子116に面する側、
図7)にある。第1の回折格子902および/または第2の回折格子906は、基板904と同じ材料であってもよい単一の材料で構成されている。したがって、第1の回折格子902、基板904、および第2の回折格子906はすべて、同じ単一の材料で構成することができる。第1の回折格子902、基板904、および/または第2の回折格子906の材料の例には、限定ではないが、シリカまたはサファイアが含まれる。2つの回折格子902および906は、両面回折格子を効果的に構成する。両面回折格子は、反射防止コーティングを使用することなく低反射という利点を有する。
【0045】
一部の実施形態では、複数の回折格子は、同一のレイアウトを有する。例えば、2つの回折格子802および806(
図8)、または2つの回折格子902および906(
図9)は、各回折格子802および806、または902および906が、2つの回折格子によって提供される全位相遅延の半分を提供するように、同一のレイアウトを有することができる。2つの回折格子802および806のそれぞれ、または2つの回折格子902および906のそれぞれの回折格子の深さ212は、所望の位相遅延のための全深さの半分であってもよく、したがって、各回折格子のアスペクト比を2分の1にすることができる。回折格子の深さ212は、2つの回折格子802および806のそれぞれ、または2つの回折格子902および906のそれぞれにわたって均一(すなわち、一定)であってもよい。
【0046】
代替として、複数の回折格子は、異なるレイアウトを有する(が、依然として、各回折格子にわたって均一であってもよい、同一の深さ212を有することができる)。例えば、第1の回折格子802(
図8)または902(
図9)は、そのデューティサイクルが回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)一定となるように、均一なデューティサイクルを有し、その配向(したがってその光軸)が収集瞳にわたって空間的に変化するように、変化する配向を有する。しかし、第2の回折格子806(
図8)または906(
図9)は、そのデューティサイクルが回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)空間的に変化するように、変化するデューティサイクルを有し、その配向(したがってその光軸)が回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)同じとなるように、均一な回折格子配向を有する。第1の回折格子802または902の均一なデューティサイクルは、均一な深さ212と組み合わされて、均一な位相遅延(例えば、1/2波長またはほぼ1/2波長)をもたらす。第1の回折格子802または902の配向を変化させる(したがって光軸角を変化させる)ことにより、楕円偏光の長軸が平行になるように偏光が回転する。第2の回折格子806または906のデューティサイクルを変化させることにより、第2の回折格子806または906にわたって、したがって収集瞳にわたって位相遅延が変化する。第2の回折格子806または906の配向(すなわち、光軸角)は均一であるが、位相遅延を変化させることで、楕円偏光が線形化される。表面散乱によって生成された光110は、回折格子に到達する前であっても、収集瞳の大部分にわたってほぼ直線偏光されている(すなわち、わずかに楕円のみである)場合があり、その結果、第2の回折格子806または906の大部分について、位相遅延がほぼゼロになり、回折格子のライン幅210がほぼゼロになる。
【0047】
レイアウトが異なる複数の回折格子の別の例では、第1の回折格子802(
図8)または902(
図9)は、回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)空間的に変化するデューティサイクルと、回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)空間的に変化する配向(すなわち、光軸角)とを有する。第2の回折格子806(
図8)または906(
図9)も、回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)空間的に変化するデューティサイクルと、回折格子にわたって(したがって収集瞳にわたって)空間的に変化する配向とを有する。第1の回折格子802または902は、回折格子にわたって(したがって、収集瞳にわたって)均一な(すなわち、一定の)深さを有し、第2の回折格子806または906は、回折格子にわたって(したがって、収集瞳にわたって)均一な深さを有する。これらの2つの深さは等しくてもよい。
【0048】
レイアウトが異なる複数の回折格子のさらに別の例では、第1の回折格子802(
図8)または902(
図9)および第2の回折格子806(
図8)または906(
図9)は、回折格子にわたって(したがって、収集瞳にわたって)空間的に変化する別個の配向を有し、したがって、異なる光軸角配向を有するが、(例えば、製造公差の範囲内で)実質的に等しい位相遅延も有する。このようなレイアウトにより、エッチング深さの要件が緩和される同時に、所望の均一な直線偏光を達成するための柔軟性を高めることができる。位相遅延が90°の2つの回折格子のレイアウトは、以下の数学に基づいて決定することができる。
【0049】
2つの異なる光軸角θ
1およびθ
2を有する2つの1/4波長板回折格子のジョーンズ行列は、次のようになる。
【数9】
これら2つの回折格子によって(すなわち、これら2つの1/4波長板によって)提供される偏光変換は、以下のように表される。
【数10】
ここで、α=θ
1-θ
2、β=θ
1+θ
2である。
【0050】
散乱偏光を均一なy偏光に(したがって均一な直線偏光に)変換するために、x成分はゼロに設定される。
Ex’=[1-cos(2α)+rcosδsin(2α)+rsinδ(2sinβcosα)]+j[2cosβcosα+rcosδ(2sinβcosα)-rsinδsin(2α)]=0 (12)
x成分の実部と虚部の両方がゼロに設定される。
[sin2α+rcosδsinαcosα+rsinδsinβcosα]=0 (13a)
[cosα(cosβ+rcosδsinβ-rsinδsinα)]=0 (13b)
【0051】
式13aおよび式13bを数値的に解いて、第1の回折格子802または902(すなわち、第1の1/4波長板)の光軸角θ
1および第2の回折格子806または906(すなわち、第2の1/4波長板)の光軸角θ
2のレイアウトを導出することができる。
図10および
図11は、収集瞳にわたって、θ
1およびθ
2の値の空間的変化をそれぞれ示すマップ1000および1100である。
図10および
図11の光軸角は、両方の回折格子について、深さ212を700nm、ピッチ208を100nm、デューティサイクルを50%と仮定して、式13aおよび式13bに従って計算される。
図10および
図11の回折格子は一緒になって、斜め照明による楕円偏光された表面散乱を均一に配向された直線偏光された光に変換する。
図10および
図11の回折格子は、光軸角(すなわち、回折格子の配向)が回折格子の中心を通る水平軸および垂直軸にわたって不連続になるように、1/4ごとに連続した設計となっている。
【0052】
図12は、一部の実施形態による光学検査システム1200の一部の断面図である。光学検査システム1200は、光学検査システム700と同様に配置された光学検査システム700の要素を含み、均一波長板1202をさらに含む。均一波長板1202は、均一な位相遅延を有し、したがって、ターゲット102から散乱された光110に対して、収集瞳にわたって均一な位相遅延を提供する。一部の実施形態では、第1の回折格子114および第2の回折格子は、均一波長板1202と直線偏光子116との間に配置されている。均一波長板1202は、対物レンズ112と第1の回折格子114との間に配置されてもよい。第1の回折格子114および第2の回折格子714は、回折格子802および806(
図8)または902および906(
図9)であってもよい。
【0053】
一部の実施形態では、光学検査システム1200の2つの回折格子114および714(
図8の別個の基板804および808上、または
図9の単一の基板904上のいずれか)は、異なるレイアウトおよび異なる光軸角配向を有するが、同様の位相遅延を有する。均一波長板1202と組み合わせて使用される2つの回折格子114および714のレイアウトは、以下の数学に基づいて決定することができる。
E’
x=[1-cos(2α)+rcos(δ+δ’)sin(2α)+rsin(δ+δ’)2sinβcosα]+j[2cosβcosα+rcos(δ+δ’)(2sinβcosα)-rsin(δ+δ’)sin(2α)] (14)
【0054】
x成分の実部と虚部の両方がゼロに設定される。
[sin2α+rcos(δ+δ’)sinαcosα+rsin(δ+δ’)sinβcosα]=0 (15a)
[cosα(cosβ+rcos(δ+δ’)sinβ-rsin(δ+δ’)sinα)]=0 (15b)
【0055】
式15aおよび式15bを数値的に解いて、2つの回折格子114および714のそれぞれの光軸角θ
1およびθ
2のレイアウトを導出することができる。
図13および
図14は、θ
1およびθ
2の値の空間的変化をそれぞれ示すマップ1300および1400である。
図13および
図14の光軸角は、
図10および
図11と同じ深さ212、ピッチ208、およびデューティサイクルを仮定し、均一波長板1202(
図12)によって提供されるy方向のπ/15の余分な位相遅延を仮定して、式15aおよび式15bに従って計算される。
図13および
図14の回折格子は一緒になって、斜め照明による楕円偏光された表面散乱を均一に配向された直線偏光された光に変換する。
図13および
図14の回折格子は、光軸角(すなわち、回折格子配向)が回折格子の中心を通る水平軸にわたって不連続であるが、回折格子の中心を通る垂直軸にわたって連続であるように、半連続設計を有する。したがって、均一波長板1202の追加により、両方の回折格子114および714の光軸角が瞳の半分にわたって連続する設計が可能になる。このような設計は、収集瞳上の波面の中断が少ないため、ターゲット102上の欠陥(例えば、粒子)の画像の画質への影響が少ない。
【0056】
一部の実施形態では、ターゲット102からの表面散乱によって生成された楕円偏光110を均一に配向された直線偏光に変換する1つ以上の回折格子のうちの1つとして、空間的に変化する位相遅延を有する2次元(2D)回折格子が使用される。2D回折格子の使用は、ゼロに近い位相遅延を達成するための製造を容易にするもう1つの方法である。1次元(1D)回折格子のほぼゼロの位相遅延は、ほぼ0%または100%のデューティサイクルを伴うことがあり、結果として高いアスペクト比を得ることができる。代わりに、x方向とy方向のデューティサイクルが等しい2D回折格子を使用することで、ほぼゼロの位相遅延を達成することができる。2D回折格子は、位相遅延を変えることなく透過率を向上させることもできる。
【0057】
図15Aは、一部の実施形態による2D回折格子1500の平面図である。2D回折格子1500は、回折格子114(
図1)の一例であってもよい。2D回折格子1500は、x方向およびy方向の両方においてトレンチ1504によって分離されたポスト(例えば、矩形)1502を有し、連続するポスト1502は、x方向およびy方向の両方においてそれぞれのトレンチ1504によって互いに分離されている。ポスト1502は、x方向ピッチ1506(すなわち、x方向の連続するポスト1502間の間隔)、x方向ライン幅1508、y方向ピッチ1510(すなわち、y方向の連続するポスト1502間の間隔)、およびy方向ライン幅1512を有する。2D回折格子1500は、x方向ピッチ1506に対するx方向ライン幅1508の比に等しいx方向デューティサイクル、およびy方向ピッチ1510に対するy方向ライン幅1512の比に等しいy方向デューティサイクルも有する。x方向および/またはy方向のデューティサイクルは、2D回折格子1500にわたって、したがって収集瞳にわたって空間的に変化してもよい。例えば、x方向ライン幅1508および/またはy方向ライン幅1512は空間的に変化する一方で、x方向ピッチ1506およびy方向ピッチ1510は2D回折格子1500にわたって、したがって収集瞳にわたって均一であるため、x方向および/またはy方向デューティサイクルは、2D回折格子1500にわたって空間的に変化する。一部の実施形態では、トレンチ1504の深さは、2D回折格子1500にわたって、したがって収集瞳にわたって均一である。
【0058】
ポスト1502は、単一の材料(例えば、ガラス)で構成され、この材料は、ポスト1502が配置される基板と同じ材料であってもよい。2D回折格子1500は、基板にトレンチ1504をエッチングすることによって、または基板上にポスト1502を選択的に成長させることによって形成することができる。ポスト1502および基板は、散乱光110の波長に対して透明な任意の材料であってもよい(例えば、散乱光110の波長に対して透明な絶縁体、したがって誘電体材料であってもよい)。一部の実施形態では、ポスト1502の単一の材料はSiO2(例えば、溶融シリカ)であり、基板もSiO2(例えば、溶融シリカ)であってもよい。一部の他の実施形態では、ポスト1502の単一の材料はサファイアであり、基板もサファイアであってもよい。サファイアは、SiO2よりも高い屈折率を有し、したがって、SiO2よりも小さい深さ212でより強い位相遅延を提供する。さらに一部の他の実施形態では、ポスト1502の単一の材料はフッ化カルシウム(CaF2)であり、基板もCaF2であってもよい。
【0059】
図15Bは、x方向のライン幅1508とy方向のライン幅1512の組合せに対するシミュレートされた位相遅延値を示すグラフ1520である。グラフ1520を生成するために使用されたシミュレーションは、x方向ピッチ1506およびy方向ピッチ1510が両方とも100nmに等しいと仮定している。グラフ1520の領域1524は、ほぼゼロの位相遅延1522を有する。
図15Cは、x方向のライン幅1508とy方向のライン幅1512の組合せに対する2D回折格子1500によるシミュレートされた透過率を示すグラフ1540である。約99.6%の最大透過率が達成されている。
【0060】
上述の実施形態では、回折格子および対応する基板は透過性である。代替として、回折格子の基板は反射性であってもよい。
図16は、一部の実施形態による反射性基板1602上の回折格子1600の断面図である。回折格子1600は、回折格子200(
図2)と同様に、形態複屈折に基づく位相遅延を有する波長板である。回折格子1600は、基板1602上に一連のライン1604を含む。一連の連続するライン1604は、それぞれのトレンチ1606によって分離されている。ライン1604およびトレンチ1606は、
図16のページから出る(または等価的にページに入る)方向に延在する。したがって、ライン1604およびトレンチ1606は、
図16のページに垂直な軸に平行であり、
図16の水平軸に垂直である。回折格子1600は、1次元回折格子である。
【0061】
連続するライン1604間の距離(すなわち、間隔)は、ピッチ1608である。ライン1604は、ライン幅1610を有する。トレンチ1606は、深さ1612を有する。一部の実施形態では、回折格子の深さ1612は、固定値に(すなわち、回折格子1600全体に対して一定の深さに)設定されてもよい(例えば、収集瞳内の位相遅延の範囲の中央に対応する)。
【0062】
反射性基板1602は、金属または別の反射性材料で構成されている。ライン1604は、単一の材料(例えば、ガラス)で構成されてもよい。単一材料の例としては、SiO
2(例えば、溶融シリカ)、サファイア、またはCaF
2が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、ライン1604は、異なる層がそれぞれ異なる材料から構成された複数の層を有してもよい。一般に、基板1602は反射性であるが、ライン1604は、散乱光110の波長に対して透明である1つ以上の材料で作られてもよい(例えば、散乱光110の波長に対して透明である絶縁体、したがって誘電体材料であってもよい)。反射性基板1602以外は、回折格子1600は、回折格子200(
図2)について説明したように設計されてもよい。
【0063】
図17は、一部の実施形態による光学検査システム1700の一部の断面図である。光学検査システム1700は、光学検査システム100(
図1)に対応し、回折格子114が反射性基板上の回折格子1702に置き換えられている。回折格子1702およびその反射性基板は、回折格子1600および反射性基板1602(
図16)の例である。回折格子1702は、散乱光110の経路に沿って対物レンズ112と直線偏光子116との間に配置されている。回折格子1702の反射性基板は、対物レンズ112からの散乱光110を直線偏光子116に向ける。回折格子1702は、一部の実施形態によると、回折格子114について(例えば、回折格子200について)説明したようなレイアウトを有することができる。
【0064】
反射性基板上の単一の回折格子1702の代わりに、光学検査システムは、それぞれの反射性基板上に複数の回折格子(例えば、それぞれの反射性基板1602上の複数の回折格子1600、
図16)を有してもよい。例えば、光学検査システムは、2つのこのような回折格子を有してもよい。
【0065】
図18および
図19は、一部の実施形態による、光学検査システム1800/1900のそれぞれの部分の断面図である。光学検査システム1800/1900は、光学検査システム700に対応し、第1の回折格子114および第2の回折格子714は、反射性基板上の第1の回折格子1802および反射性基板上の第2の回折格子1804と置き換えられている。第1の回折格子1802およびその反射性基板は、第2の回折格子1804およびその反射性基板と同様に、回折格子1600および反射性基板1602(
図16)の例である。反射性基板を有する第1の回折格子1802および反射性基板を有する第2の回折格子1804は、散乱光110の経路に沿って対物レンズ112と直線偏光子116との間に配置されている。第1の回折格子1802の反射性基板は、対物レンズ112からの散乱光110を第2の回折格子1804に向ける。第2の回折格子1804の反射性基板は、第1の回折格子1802からの散乱光110を直線偏光子116に向ける。光学検査システム1800および1900は、それぞれの基板上に配置された第1の回折格子1802および第2の回折格子1804がシステム内に位置する角度が異なる。第1の回折格子1802および第2の回折格子1804は、第1の回折格子802および第2の回折格子804について説明したようなそれぞれのレイアウトを有してもよい(例えば、第1の回折格子802および第2の回折格子804について説明した同一のレイアウトまたは異なるレイアウトのうちのいずれかを有してもよい)。
【0066】
一部の実施形態では、ターゲット102からの表面散乱によって生成された楕円偏光110を均一に配向された直線偏光に変換する1つ以上の回折格子のうちの1つとして、空間的に変化する位相遅延を有し、反射性基板上に配置された2D回折格子が使用される。例えば、2D回折格子1500(
図15A)は、透過性基板の代わりに反射性基板上に配置されてもよい。
【0067】
複数の回折格子を有する光学検査システムは、透過性基板を有する1つ以上の回折格子と、反射性基板を有する1つ以上の回折格子とを混在させることができる。反射性基板上に少なくとも1つの回折格子を有する光学検査システムはまた、散乱光110に対して均一な位相遅延を提供する均一波長板(例えば、
図12の均一波長板1202)を有してもよい。
【0068】
図20は、一部の実施形態による、ターゲットを検査しながら表面散乱からの光をフィルタリングする方法2000を示す流れ図である。方法2000は、光学検査システム100(
図1)、700(
図7)、1200(
図12)、1700(
図17)、1800(
図18)、または1900(
図19)を使用して実行することができる。方法2000のステップは特定の順序で説明されているが、それらは進行中に同時に実行されてもよい。
【0069】
方法2000では、ターゲット(例えば、ターゲット102、
図1、
図7、
図12、または
図17~
図19)が、(例えば、斜めの角度の光106で、
図1、
図7、
図12、または
図17~
図19)照明される(2002)。一部の実施形態では、ターゲットは、紫外光を使用して照明される(2004)。例えば、ターゲットは、波長130nm以上の紫外光(例えば、DUVまたはVUV光)で照明される。一部の実施形態では、ターゲットは半導体ウエハ(例えば、パターニングされていない半導体ウエハ)である(2006)。例えば、ターゲットは研磨された半導体ウエハであってもよい。
【0070】
照明されたターゲットから散乱された光(例えば、散乱光110、
図1、
図7、
図12、または
図17~
図19)が収集される(2008)。例えば、散乱光110は、対物レンズ112(
図1、
図7、
図12、または
図17~
図19)を使用して収集される。照明されたターゲットから散乱された収集光は、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光を有する。楕円偏光の空間的変化は、その配向の空間的変化を含むことがある。
【0071】
1つ以上の回折格子を使用して、収集光の偏光は、収集瞳にわたって空間的に変化する楕円偏光から、収集瞳にわたって均一に配向された直線偏光に変換される(2010)。1つ以上の回折格子は、楕円偏光に従って収集瞳にわたって空間的に変化する位相遅延を有する。空間的に変化する位相遅延を有する1つ以上の回折格子に加えて、均一波長板(例えば、均一波長板1202、
図12)が使用されてもよい。
【0072】
一部の実施形態では、1つ以上の回折格子は、少なくとも1つの単一材料回折格子(例えば、回折格子114、
図1、1つ以上の回折格子200、
図2)を含む(2012)。例えば、すべての回折格子が単一材料回折格子であってもよい。1つ以上の回折格子は、第1の単一材料回折格子および第2の単一材料回折格子(例えば、回折格子114および714、
図7または
図12)を含むことができる(2014)。第1および第2の回折格子は、1次元であってもよい(例えば、回折格子802および806、
図8、回折格子902および906、
図9)。1つ以上の回折格子は、2次元の単一材料回折格子(例えば、2D回折格子1500、
図15A)を含んでもよい(2016)。
【0073】
一部の実施形態では、1つ以上の回折格子は、反射性基板上に少なくとも1つの回折格子(例えば、1つ以上の回折格子1600、
図16、回折格子1702、
図17、回折格子1802および1804、
図18~
図19)を含む(2018)。例えば、すべての回折格子が反射性基板上にあってもよい。1つ以上の回折格子は、第1の反射性基板上に第1の回折格子および第2の反射性基板上に第2の回折格子を含むことができる(2020)。第1および第2の回折格子は、1次元であってもよい。1つ以上の回折格子は、反射性基板上に2次元回折格子を含むことができる(2022)。
【0074】
実質的に直線偏光された光は、直線偏光子(例えば、直線偏光子116、
図1、
図7、または
図12)を使用してフィルタリングされる(2024)。こうして、方法2000は、ターゲット上の表面散乱によって生成された散乱光をフィルタリングすることによって、ターゲット上の欠陥検出(例えば、粒子検出)のための信号対雑音比を改善する。散乱光は一種のヘイズ(haze)であり、フィルタリングされないままにしておくと、光学検査システムの画質を劣化させる。
【0075】
前述の記載は、説明のために、特定の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、上記の例示的な説明は、網羅的であること、または特許請求の範囲を開示された厳密な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に鑑みて、多くの変形およびバリエーションが可能である。実施形態は、特許請求の範囲の基礎となる原理およびそれらの実際の適用を最もよく説明し、それによって、当業者が、企図される特定の使用に適するように様々な変形とともに実施形態を最もよく使用できるようにするために選択された。
【国際調査報告】