(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241128BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20241128BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241128BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G03F7/004 504
G03F7/004 505
G03F7/038 501
G02B5/20 101
C08L101/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515959
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022081192
(87)【国際公開番号】W WO2023083834
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2021185126
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100210675
【氏名又は名称】下山 潤
(72)【発明者】
【氏名】芝山 聖史
(72)【発明者】
【氏名】横山 大志
(72)【発明者】
【氏名】能谷 敦子
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J002
【Fターム(参考)】
2H148BE36
2H148BF16
2H148BG02
2H148BH00
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC47
2H225AD06
2H225AD34
2H225AM22P
2H225AM32P
2H225AN39P
2H225AP03P
2H225BA32P
2H225CA18
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
4J002AA031
4J002AA051
4J002AA061
4J002BB001
4J002BG011
4J002BG051
4J002BG071
4J002BP032
4J002CH022
4J002CH052
4J002CP031
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4J002CP071
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4J002FD148
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4J002FD313
4J002FD316
4J002FD317
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA05
(57)【要約】
アルカリ可溶性材料含有組成物、硬化膜およびその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)アルカリ可溶性材料と、
(II)第一の界面活性剤と、
(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる組成物。
【請求項2】
(II)第一の界面活性剤が親油性を示す界面活性剤であり、かつ(III)第二の界面活性剤が撥油姓を示す界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(II)第一の界面活性剤と前記(III)第二の界面活性剤の質量比((II)第一の界面活性剤:(III)第二の界面活性剤)が1:1000~99:10である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(II)第一の界面活性剤の含有量が、(I)アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.001~5質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(IV)着色剤をさらに含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(I)アルカリ可溶性材料が、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物および/またはアルカリ可溶性ポリマーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(I)アルカリ可溶性材料が、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物を含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(I)アルカリ可溶性材料が、アルカリ可溶性ポリマーをさらに含んでなる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(VI)溶媒をさらに含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる工程と、
前記塗膜を加熱する工程と
を含んでなる硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法で製造された、または製造され得る硬化膜。
【請求項12】
アルカリ可溶性材料に由来するポリマー(A)と、
第一の界面活性剤と、
第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる硬化膜。
【請求項13】
平均膜厚が0.1~100μmである、請求項11または請求項12に記載の硬化膜。
【請求項14】
前記硬化膜の上部が撥油性であり、下部が親油性である、請求項11~13のいずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の硬化膜を具備してなる、光変換デバイス。
【請求項16】
請求項11~14のいずれか一項に記載の硬化膜、または請求項15に記載の光変換デバイスを具備してなる表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性材料含有組成物に関するものである。また、本発明はそれを用いた硬化膜の製造方法、それから形成された硬化膜、その硬化膜を具備してなる光変換デバイス、および光変換デバイスを具備してなる表示デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示デバイスに使用されるカラーフィルター用のブラックマトリックスは、カーボンブラックなどの遮光性黒色顔料と、アルカリ可溶性樹脂を混合させてレジスト組成物とし、これを塗布して、露光・現像し、パターニングさせて形成される。ブラックマトリックスは、例えば、液晶表示素子では、スイッチングしない画素間からの光漏れを防ぎ、高いコントラストを維持するために用いられる。また、アモルファスシリコンや酸化物半導体は、光が当たると光励起による漏れ電流が発生してしまうため、ブラックマトリックス層が薄膜トランジスタ部分への光を遮ることにより漏れ電流を抑制している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、以下に列挙されるとおり、改善が所望される1以上の重大な課題があることを見出した。
上部が撥油性を示し、かつ下部が親油性を示す硬化膜を形成可能な組成物の提供;
バンク頂部においては撥油性を示し、かつバンク底部においては親油性を示すバンクを作成するためのパターニング可能な組成物の提供;
好ましくは、バンク作成後、バンク頂部においては撥油性を示し、かつバンク底部および開口部のバンク側面部においては親油性を示すパターニング可能な組成物の提供;
バンク開口部においてインクに対して親油性を示し、好ましくはバンク開口部においてインクを隙間なく充填でき、かつバンク頂部においてはインクに対して撥油性を示し、好ましくはバンク頂部においてインクを好適に弾くことができるバンクの提供、および/または当該バンク形成するためのパターニング可能な組成物の提供。好ましくは、上記インクは量子ドット含有インクである、より好ましくは、上記インクはアクリルモノマー含有インクである、さらに好ましくは、上記インクは溶媒を含まない;
従来の組成物より低温条件での硬化、パターニング可能な組成物の提供;
パターニングに悪影響を与えない顔料を含む組成物の提供、好ましくは前記顔料は黒色顔料である;
高解像度でのパターニング可能な組成物の提供;
表示デバイスの隔壁材料としてより厚膜を達成できる組成物の提供;
好ましくは表示デバイスの隔壁材料としてより厚膜を達成できる黒色顔料を含む組成物の提供;
環境負荷に配慮した、有機現像液以外の低濃度アルカリ現像液にて現像可能な組成物の提供。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、
(I)アルカリ可溶性材料と
(II)第一の界面活性剤と、
(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる組成物を見出した。
【0006】
別の側面において、本発明は、
上記の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる工程と、
前記塗膜を加熱する工程と
を含んでなる硬化膜の製造方法に関する。
【0007】
別の側面において、本発明は、上記の方法で製造された、または製造され得る硬化膜、に関する。
【0008】
別の側面において、本発明は、
アルカリ可溶性材料に由来するポリマー(A)と、
第一の界面活性剤と、
第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる硬化膜、に関する。
【0009】
別の側面において、本発明は、上記の硬化膜を具備してなる、光変換デバイス、に関する。
【0010】
別の側面において、本発明は、上記の硬化膜または上記の光変換デバイスを具備してなる表示デバイス、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、以下の1以上の効果を望むことが可能である。
上部が撥油性を示し、かつ下部が親油性を示す硬化膜を形成可能な組成物の提供;
バンク頂部においては撥油性を示し、かつバンク底部においては親油性を示すバンクを作成するためのパターニング可能な組成物の提供;
好ましくは、バンク作成後、バンク頂部においては撥油性を示し、かつバンク底部および開口部のバンク側面部においては親油性を示すパターニング可能な組成物の提供;
バンク開口部においてインクに対して親油性を示し、好ましくはバンク開口部においてインクを隙間なく充填でき、かつバンク頂部においてはインクに対して撥油性を示し、好ましくはバンク頂部においてインクを好適に弾くことができるバンクの提供、および、または当該バンク形成するためのパターニング可能な組成物の提供。好ましくは、上記インクは量子ドット含有インクである、より好ましくは、上記インクはアクリルモノマー含有インクである、さらに好ましくは、上記インクは溶媒を含まない;
従来の組成物より低温条件での硬化、パターニング可能な組成物の提供;
パターニングに悪影響を与えない顔料を含む組成物の提供、好ましくは前記顔料は黒色顔料である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のさらなる利点は、以下の詳細な説明より明らかになるであろう。ただし、以上の概要および以下の詳細は、本発明を説明するためであり、請求項の発明を限定するものではない。
【0013】
[定義]
本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0014】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0015】
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、技術常識に従い、アクリレート、メタクリレート、またはアクリレートとメタクリレートの混合物を意味する。
本明細書において、モノマーとは単量体の事を意味し、他のモノマーと反応することによりポリマー(オリゴマーを含む)を形成できるものを指す。
本明細書において、ポリマーはオリゴマーの形態であってもよく、ポリマーの質量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~100,000であることが好ましく、2,000~30,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるスチレン換算質量平均分子量である。
【0016】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0017】
本明細書において、アリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0018】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0019】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0020】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される形態もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(VI)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0021】
<組成物>
本発明による組成物は、
(I)アルカリ可溶性材料と、
(II)第一の界面活性剤と、
(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる。
本発明の一形態において、本発明は、本質的に上記(I)アルカリ可溶性材料と、(II)第一の界面活性剤と、(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤とからなり、
本発明の別の一形態において、本発明は、上記(I)アルカリ可溶性材料と、(II)第一の界面活性剤と、(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤とからなる。
【0022】
本発明による組成物は、好ましくは膜形成組成物であり、より好ましくは硬化膜形成組成物である。
本発明による組成物は、好ましくは、感光性組成物であり、より好ましくはネガ型感光性組成物である。
好ましくは、本発明による組成物は、
(IV)着色剤(好ましくは有機着色剤および/または無機着色剤であり、より好ましく有機および/または無機の黒色着色剤である)、
(V)重合開始剤、および/または
(VI)溶媒
をさらに含んでなる。
本発明による組成物は、100μm以下の膜を形成する場合であればより良い効果を発揮するが、好ましくは厚膜形成時にさらに効果を発揮する厚膜用ネガ型感光性組成物である。
【0023】
(I)アルカリ可溶性材料
本発明による組成物は、アルカリ可溶性材料を含んでなる。
アルカリ可溶性材料は、アルカリ可溶性モノマー、アルカリ可溶性ポリマーまたはそれらの混合物である。
アルカリ可溶性材料は、好ましくは酸基を有する部分構造を有する。酸基は、酸解離指数(pKa)が7以下である酸基が好ましく、より好ましくは-OH、-COOH、-SO3H、-OSO3H、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2、-SO2NHSO2-であり、特に好ましくは-COOHである。それらの酸基、好ましくはカルボキシ基を有することで、低濃度の現像液に対するアルカリ可溶性材料の溶解性を効果的に向上させることができる。
【0024】
アルカリ可溶性材料がアルカリ可溶性モノマーである場合には、好ましくは、前記アルカリ可溶性モノマーは(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上、さらに好ましくは2つ以上含む化合物である。好ましくは、アルカリ可溶性材料は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物および/またはアルカリ可溶性ポリマーである。
より好ましくは、アルカリ可溶性材料は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物を含んでなり、さらに好ましくはアルカリ可溶性ポリマーをさらに含んでなる。
【0025】
(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物
(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物は、以下、簡単のために(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物ということがある。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基の総称である。この化合物は、アクリロイル基含有化合物やアルカリ可溶性ポリマーなどと反応して架橋構造を形成することができる化合物である。ここで架橋構造を形成するために、反応性基であるアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物が必要であり、より高次の架橋構造を形成するために3つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0026】
このような(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物としては、(α)2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、(β)2つ以上の(メタ)アクリル酸と、が反応したエステル類が好ましく用いられる。
この(α)ポリオール化合物としては、飽和または不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環炭化水素、1級、2級、または3級アミン、エーテルなどを基本骨格とし、置換基として2つ以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。このポリオール化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の置換基、例えばカルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、チオール基、チオエーテル結合などを含んでいてもよい。
【0027】
好ましいポリオール化合物としては、アルキルポリオール、アリールポリオール、ポリアルカノールアミン、シアヌル酸、またはジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ここで、(α)ポリオール化合物が3個以上の水酸基を有する場合、すべての水酸基が(メタ)アクリル酸と反応している必要は無く、部分的にエステル化されていてもよい。すなわち、このエステル類は未反応の水酸基を有していてもよい。このようなエステル類としては、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、反応性および架橋可能基の数の観点から、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。また、形成されるパターンの形状を調整するために、これらの化合物を2種類以上組み合わせることもできる。具体的には、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ含む化合物と(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ含む化合物を組み合わせることが好ましい。
【0028】
このような化合物は、反応性の観点から相対的にアルカリ可溶性ポリマーよりも小さい分子であることが好ましい。このために、分子量が2,000以下であることが好ましく、1,500以下であることが好ましい。
【0029】
この(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物の含有量は、用いられるポリマーやアクリロイルオキシ基含有化合物の種類などに応じて調整されるが、組成物の溶媒を除く総質量を基準として、好ましくは5~99.9質量%、より好ましくは30~70質量%である。アルカリ可溶性ポリマーと組み合わせる場合は、アルカリ可溶性ポリマーとの相溶性の観点から、アルカリ可溶性ポリマーの総質量を基準として、5~1000質量%、より好ましくは10~800質量%であることが好ましい。低濃度の現像液を用いる場合には、30~800質量%であることが好ましい。また、これらの(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
アルカリ可溶性ポリマー
アルカリ可溶性ポリマーは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)等の有機溶剤に溶解し、かつ水溶性を示し、露光前にアルカリ現像液に溶解しするようなポリマーを選択することが望ましい。
好ましくは、アルカリ可溶性ポリマーは酸基を有する構造部分を有し、酸基を有する構造部分と酸基を有しない構造部分を共重合して得られたポリマーであることがより好ましい。
ここで酸基として好ましいものは酸解離指数(pKa)が7以下の酸基が好ましく、より好ましくは-OH、-COOH、-SO3H、-OSO3H、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2、-SO2NHSO2-であり、特に好ましくは-COOHである。それらの酸基、好ましくはカルボキシ基を有することで、低濃度の現像液に対するアルカリ可溶性ポリマーの溶解性を効果的に向上させることができる。
【0031】
本発明に用いられるアルカリ可溶性ポリマー(オリゴマーの形態であってもよい)は、好ましくはアクリロイル基を含んでなる。
好ましくは、アルカリ可溶性ポリマーは、(メタ)アクリルポリマー、シロキサンポリマー、シロキサン(メタ)アクリルポリマー、またはそれらの混合物からなり、また、本発明に用いられるアルカリ可溶性ポリマーは、特に限定されないが、好ましくは、シロキサン結合を主骨格に含むポリシロキサンおよび(メタ)アクリルポリマーから選択される。これらのうち、低温プロセスへ好適に使用できる観点から(メタ)アクリルポリマーを用いることがより好ましい。さらに好ましくはアクリルポリマーである。
【0032】
アルカリ可溶性ポリマーのアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液として0.03質量%KOH(水酸化カリウム)水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
アルカリ可溶性ポリマーをPGMEAに35質量%になるように希釈し、室温でスターラーを用いて1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したアルカリ可溶性ポリマー溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社)で、塗膜の膜厚測定を行う。
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、0.03質量%のKOH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをKOH水溶液に一定時間浸漬した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をアルカリ可溶性ポリマーの溶解速度とする。
好ましくは、アルカリ可溶性ポリマーは、前記アルカリ溶解速度の測定、算出において、ウェハー端部から10mm内側の部分の塗膜が0.03質量%KOH水溶液に10分以内に溶解、消失するものをいう。
【0033】
(ポリシロキサン)
アルカリ可溶性ポリマーは、シロキサン(Si-O-Si)結合を主骨格として含んでもよい。本発明において、シロキサン結合を主骨格として含むポリマーをポリシロキサンという。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、シルセスキオキサン骨格を含む。
ポリシロキサンは一般にシラノール基またはアルコキシシリル基を有するものである。このようなシラノール基およびアルコキシシリル基とはシロキサン骨格を形成するケイ素に直接結合した水酸基およびアルコキシ基を意味する。ここで、シラノール基およびアルコキシシリル基は、組成物を用いて硬化膜を形成させるときに硬化反応を促進する作用があるほか、後述するケイ素含有化合物との反応にも寄与するものと考えられている。このため、ポリシロキサンはこれらの基を有することが好ましい。
【0034】
(アクリルポリマー)
本発明に好適に用いられるアクリルポリマーは、一般的に用いられるアクリルポリマー、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸アルキルなどから選択することができる。一例として、本発明に用いられるアクリルポリマーは、アクリロイル基を含む繰り返し単位を含むことが好ましく、好ましくは、アクリルポリマーは酸基を有する構造部分を有する。
ここで酸基として好ましいものは酸解離指数(pKa)が7以下の酸基が好ましく、より好ましくは-OH、-COOH、-SO3H、-OSO3H、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2、-SO2NHSO2-であり、特に好ましくは-COOHである。それらの酸基、好ましくはカルボキシ基を有することで、低濃度の現像液に対するアルカリ可溶性ポリマーの溶解性を効果的に向上させることができる。
【0035】
酸基を(例:カルボキシ基等)を含む重合単位は、側鎖に酸基を含む重合単位であれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはこれらの混合物から誘導される重合単位が好ましい。
【0036】
アルコキシシリル基を含む重合単位は、側鎖にアルコキシシリル基を含む重合単位であればよいが、以下の式(B)で表される単量体から誘導される重合単位が好ましい。
XB-(CH2)a-Si(ORB)b(CH3)3-b (B)
式中、XBはビニル基、スチリル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であり、RBはメチル基またはエチル基であり、aは0~3の整数、bは1~3の整数である。
【0037】
また、前記重合体には、水酸基含有不飽和単量体から誘導される、水酸基を含む重合単位を含有することが好ましい。
【0038】
本発明によるアルカリ可溶性ポリマー、好ましくはアクリルポリマーの質量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~40,000であることが好ましく、2,000~30,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるスチレン換算質量平均分子量である。また、酸基の数は、低濃度アルカリ現像液で現像可能にし、かつ反応性と保存性を両立するという観点から、固形分酸価は通常40~190mgKOH/gであり、60~150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0039】
また、本発明による組成物が感光性組成物である場合は、基材上に塗布、露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、未露光部における塗膜は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38質量%KOH水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の平均膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたアルカリ可溶性ポリマーを適切に選択すべきである。組成物に含まれる感光剤やシラノール縮合触媒の種類や添加量により異なるが、例えば、平均膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、2.38質量%KOH水溶液に対する溶解速度は50~20,000Å/秒が好ましく、さらに100~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0040】
本発明に用いられるポリシロキサンおよびアクリルポリマーは、特に限定されるものではないが、例えば国際公開第2021/018927号に記載のポリシロキサン、アクリルポリマー等を好適に使用できる。
アルカリ可溶性ポリマーは1種または2種以上の混合物であってよい。アクリルポリマーとポリシロキサンの組み合わせ、2種以上のアクリルポリマー、2種以上のポリシロキサン等も用いることができる。
好ましい一形態において、低温で成膜、硬化膜を作成できる観点から、本発明に用いられるアルカリ可溶性ポリマーは、1種または2種以上のアクリルポリマーの混合物であり、さらに好ましくは2種のアクリルポリマーである。より好ましくはアルカリ可溶性ポリマーはPGMEA等の有機溶剤に溶解し、かつ水溶性を示し、露光前にアルカリ現像液に溶解しするような2種のアクリルポリマーを選択することが望ましく、さらに好ましくは、当該2種のアクリルポリマーはいずれも酸基を有する構造部分を有し、酸基を有する構造部分と酸基を有しない構造部分を共重合して得られたポリマーであることがより好ましい。
ここで酸基として好ましいものは酸解離指数(pKa)が7以下の酸基が好ましく、より好ましくは、低濃度の現像液に対するアルカリ可溶性ポリマーの溶解性を効果的に向上させる観点から-OH、-COOH、-SO3H、-OSO3H、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2、-SO2NHSO2-であり、特に好ましくは-COOHである。
【0041】
(I)アルカリ可溶性材料の組成物における総含有量は、組成物の溶媒を除いた総質量を基準として、好ましくは5~99.9質量%であり、より好ましくは70~90質量%である。
【0042】
(II)第一の界面活性剤
本発明による組成物は、(II)第一の界面活性剤を含んでなる。本発明において(II)第一の界面活性剤は本発明の作用効果の少なくとも一つ以上を実現する限り、特に限定されるものではないが、形成される膜の少なくとも下部が親油性を示す組成物の提供を可能とする、好ましくは少なくともバンク底部或いはバンク底部および開口部のバンク側面部において親油性を示す、パターニング可能な組成物の提供を可能とする観点から、好ましくは(II)第一の界面活性剤は親油性を示す界面活性剤であり、さらに好ましくはフッ素を含まない界面活性剤であり、より好ましくはフッ素を含まない非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物である。
本発明の好ましい一形態において、少なくともバンク底部、またはバンク底部および開口部のバンク側面部において、QDインクに対してより効果的に親油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは(II)第一の界面活性剤はフッ素を含まない非イオン系界面活性剤であり、さらに好ましくは前(II)第一の界面活性剤はポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、有機シロキサン界面活性剤、シリコン系界面活性剤、またはそれらの混合物である。親油性を示す界面活性剤、例えばフッ素を含まない界面活性剤としては、公知の入手可能な材料から好適に選定され得る。そのような公知の入手可能な材料としては、例えば、DIC株式会社製シリコン系界面活性剤、SOILNON AF-800(日華化学)、Glide ZG400(Evonik industries)、AKS-10(信越化学)等が好適に使用され得る。
【0043】
好ましくは、本発明において「バンク」とは、光学表示デバイスの各表示画素の間に配置され、当該表示画素を分割する隔壁、ブラックマトリクスを意味し、例えば特開2021-075660号公報、国際公開第2017/138607号、特開2018-203599号公報に記載されるようなバンク、ブラックマトリクスを意味する。
【0044】
(III)第二の界面活性剤
本発明による組成物は、(III)第二の界面活性剤を含んでなる。本発明において(III)第二の界面活性剤は本発明の作用効果の少なくとも一つ以上を実現する限り、特に限定されるものではないが、形成される膜の上部が撥油性を示す組成物、好ましくはバンク頂部において撥油性を示すパターニング可能な組成物を提供する観点から、好ましくは(III)第二の界面活性剤は撥油性を示す界面活性剤であり、より好ましくはフッ素系界面活性剤或いはフッ素を含む界面活性剤であり、より良い撥油性能の観点から、フッ素を含む界面活性剤がさらに好ましい。さらにより好ましくは、フッ素を含む非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤若しくはそれらの混合物である。当該撥油性を示す界面活性剤、例えばフッ素を含む界面活性剤としは、公知の入手可能な材料から好適に選定され得る。そのような公知の入手可能な材料としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のフッ素含有界面活性剤やパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤であるサーフロン(AGCセイミケミカル株式会社)等が好適に使用できる。
本発明の好ましい一形態において、バンク頂部において、QDインクに対してより効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは(III)第二の界面活性剤はフッ素を含む非イオン系界面活性剤である。
【0045】
理論に拘束されるものではないが、バンク頂部において、QDインクに対してより効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは前記(III)第二の界面活性剤の分子量は(II)第一の界面活性剤や(I)アルカリ可溶性ポリマーに対して分子量が低めであってもよい。
【0046】
(II)第一の界面活性剤および(III)第二の界面活性剤
本発明において本発明による組成物は、(II)第一の界面活性剤と(III)第二の界面活性剤を含んでなり、(II)第一の界面活性剤および(III)第二の界面活性剤は本発明の作用効果の少なくとも一つ以上を実現する限り、特に限定されるものではないが、少なくともバンク底部或いはバンク底部および開口部のバンク側面部において親油性を示し、かつバンク頂部において、撥油性を示すパターニング可能な組成物を提供する観点から、好ましくは前記(II)第一の界面活性剤はフッ素を含まない界面活性剤であり、好ましくはフッ素を含まない非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物であり、(III)第二の界面活性剤はフッ素を含む界面活性剤であり、好ましくは、フッ素を含む非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物であることを特徴とする。
【0047】
理論に拘束されるものではないが、撥油性を示す第二の界面活性剤と親油性を示す第一の界面活性剤の組み合わせを用いることで、組成物を塗布、またはベーク後に膜厚方向に界面活性剤の分布が生じ、それにより膜表面付近には撥油性を示す第二界面活性剤が多く分布し、相対的に膜表面付近以外、例えば膜の基板付近には親油性を示す第一界面活性剤が多く分布すると考えられる。
この膜を所望により露光・現像し、硬化することで、上部(バンク形成時はバンク頂部)は撥油性、下部(バンク形成時はバンク底部)は親油性が発現すると考える。
ここで、好ましい一形態において、少なくともバンク底部或いはバンク底部および開口部のバンク側面部において、QDインクに対してより効果的に親油性を示し、かつバンク頂部において、QDインクに対してより効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは(II)第一の界面活性剤はフッ素を含まない非イオン系界面活性剤であり、さらに好ましくは(II)第一の界面活性剤はポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、有機シロキサン界面活性剤、シリコン系界面活性剤またはそれらの混合物である。
好ましくは(III)第二の界面活性剤はフッ素を含む非イオン系界面活性剤である。
【0048】
本発明の好ましい一形態において、バンク底部、またはバンク底部および開口部のバンク側面部において、QDインクに対してより効果的に親油性を示し、かつバンク頂部において、QDインクに対してより効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは、(II)第一の界面活性剤と(III)第二の界面活性剤の質量比((II)第一の界面活性剤:(III)第二の界面活性剤)が1:1000~99:10であり、さらに好ましくは1:100~5:1であり、よりさらに好ましくは1:50~2:1であり、最も好ましくは1:20~1:1である。前記範囲内とする事で、バンク底部、またはバンク底部および開口部のバンク側面部において、QDインクに対してさらに効果的に親油性を示し、かつバンク頂部において、QDインクに対してさらに効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供することが可能となる。
【0049】
本発明の好ましい一形態において、バンク底部、またはバンク底部および開口部のバンク側面部において、QDインクに対してより効果的に親油性を示し、かつバンク頂部において、QDインクに対してより効果的に撥油性を示すバンクを作成できる組成物を提供する観点から、好ましくは(II)第一の界面活性剤の含有量が、アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.001~5質量%であり、さらに好ましくは0.01~1質量%であり、よりさらに好ましくは0.02~0.5質量%の範囲であり、最も好ましくは0.03~0.3質量%であり、(III)第二の界面活性剤の含有量が、アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.05~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~1質量%の範囲であり、最も好ましくは0.3~0.5質量%の範囲である。
【0050】
本発明において平均膜厚は、ULBAC社触針式表面形状測定器により3~5箇所の膜厚を測定し、その平均値とする。
本発明による組成物の粘度は、好ましくは0.1~10,000cPであり、より好ましくは1.0~8,000cPである。ここで粘度は、回転粘度計により25℃で測定したものである。
【0051】
(IV)着色剤
本発明による組成物は(IV)着色剤を含むことができる。好ましくは、(IV)着色剤が有機着色剤および/または無機着色剤であり、より好ましくは、有機および/または無機の黒色着色剤であり、よりさらに好ましくは有機の黒色着色剤であり、さらに好ましくは着色剤は2つ以上の有機着色剤の混合物からなる黒色着色剤であり、さらになお好ましくは(IV)着色剤は黒色を呈するように混合された赤、青緑有機着色剤の混合物である。
【0052】
本発明に用いられる黒色着色剤が有機着色剤、顔料である場合、2種以上の有機着色剤、顔料を組み合わせることが好ましい。赤、緑、青色等の各色の混合によって、黒色色材とすることができる。
有機着色剤、顔料は、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の構造を有するものから選択される。好ましい顔料の組み合わせとしては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64およびC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選択される1つ以上と、およびC.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントグリーン58からなる群から選択される1つ以上との組み合わせが挙げられ、より好ましくは、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64およびC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選択される1つと、およびC.I.ピグメントブルー60との組み合わせである。この組み合わせに、さらに、他の有機顔料を組み合わせてもよい。
【0053】
(IV)着色剤の含有量は、アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、好ましくは3~80質量%であり、より好ましくは5~50質量%である。
なお、着色剤の含有量は、顔料そのものの質量に基づくものである。つまり、着色剤が、分散剤を用いて分散状態で入手されるケースもあるが、この場合、着色剤の質量には、顔料以外を含めない。
【0054】
本発明に用いられる着色剤は、分散剤と組み合わせて使用することもできる。分散剤としては、例えば、特開2004-292672号公報に記載の高分子分散剤などの有機化合物系分散剤を用いてもよい。
【0055】
(V)重合開始剤
本発明による組成物は重合開始剤を含むことができる。この重合開始剤は、放射線により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤と、熱により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤とがある。本発明においては、放射線照射直後から反応が開始され、放射線照射後、現像工程前に行われる再加熱の工程を省くことができるため、プロセスの短縮、コスト面において前者が好ましく、より好ましくは光ラジカル発生剤が好ましい。
【0056】
光ラジカル発生剤は、パターンの形状を強固にしたり、現像のコントラストをあげることにより解像度を改良することができる。本発明に用いられる光ラジカル発生剤は、放射線を照射するとラジカルを放出する光ラジカル発生剤である。ここで、放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
【0057】
光ラジカル発生剤の添加量は、光ラジカル発生剤が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、アルカリ可溶性ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0.001~50質量%であり、さらに好ましくは0.01~30質量%である。添加量が0.001質量%より少ないと、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、添加効果を有さないことがある。一方、光ラジカル発生剤の添加量が50質量%より多い場合、形成される被膜にクラックが発生したり、光ラジカル発生剤の分解による着色が顕著になることがあるため、被膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると光ラジカル発生剤の熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、被膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0058】
光ラジカル発生剤の例として、アゾ系、過酸化物系、アシルホスフィンオキサイド系、アルキルフェノン系、オキシムエステル系、チタノセン系開始剤が挙げられる。その中でもアルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系開始剤が好ましく、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0059】
(VI)溶媒
本発明による組成物は溶媒を含むことができる。この溶媒は、前記したアルカリ可溶性材料、界面活性剤、および必要に応じて添加される成分を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。これらのうち、入手容易性、取扱容易性、およびアルカリ可溶性材料の溶解性などの観点から、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類またはエステル類と、アルキル基の炭素数4または5の直鎖または分岐鎖を有するアルコール類とを用いることが好ましい。塗布性、貯蔵安定性の観点から、アルコールの溶剤比が5~80%であることが好ましい。
【0060】
本発明による組成物の溶媒含有率は、組成物を塗布する方法などに応じて任意に調整できる。例えば、スプレーコートによって組成物を塗布する場合は、組成物のうちの溶媒の割合が90質量%以上とすることもできる。また、大型基板の塗布で使用されるスリット塗布では通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上である。本発明の組成物の特性は、溶媒の量により大きく変わるものではない。
【0061】
(VII)添加剤
本発明による組成物は、必要に応じて、上記に記載の成分以外の(VII)添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、前記第一および第二の界面活性剤とは異なる第三の界面活性剤、増感剤、架橋剤、硬化剤、またはそれらの混合物の少なくとも一つである。前記現像液溶解促進剤としては例えば4-hydroxybutyl acrylate等が好適に使用できる。
なお、(VII)添加剤の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。好ましい一形態において、(VII)添加剤を含まない、つまり含有量が0質量%である。
【0062】
スカム除去剤は、形成される被膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。クラウンエーテルとして、最も単純な構造を有するものは、一般式(-CH2-CH2-O-)nで表されるものである。本発明において好ましいものは、これらのうち、nが4~7のものである。
クラウンエーテルは、環を構成する原子総数をx、そのうちに含まれる酸素原子数をyとして、x-クラウン-y-エーテルと呼ばれることがある。本発明においては、x=12、15、18、または21、y=x/3であるクラウンエーテル、ならびにこれらのベンゾ縮合物およびシクロヘキシル縮合物からなる群から選択されるものが好ましい。より好ましいクラウンエーテルの具体例は、21-クラウン-7エーテル、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテル、ジベンゾ-21-クラウン-7-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジベンゾ-15-クラウン-5-エーテル、ジベンゾ-12-クラウン-4-エーテル、ジシクロヘキシル-21-クラウン-7-エーテル、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6-エーテル、ジシクロヘキシル-15-クラウン-5-エーテル、およびジシクロヘキシル-12-クラウン-4-エーテルである。本発明においては、これらのうち、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテルから選択されるものが最も好ましい。その含有量はアルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.05~15質量%が好ましく、さらに0.1~10質量%が好ましい。
【0063】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、焼成後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-アミノイミダゾールが好ましく、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0064】
シランカップリング剤は、公知のものが好適に使用され、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はアルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.05~15質量%とすることが好ましい。
【0065】
また、シランカップリング剤として、酸基を有するシラン化合物、シロキサン化合物などを用いることもできる。酸基としては、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基などが挙げられる。カルボキシ基やフェノール性水酸基のような一塩基酸基を含む場合には、単一のケイ素含有化合物が複数の酸基を有することが好ましい。
【0066】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、式(C):
XnSi(OR3)4-n (C)
で表わされる化合物、もしくはそれを重合単位とした重合体が挙げられる。このとき、XまたはR3が異なる重合単位を複数組み合わせて用いることができる。
【0067】
式中、R3としては、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基などのアルキル基が挙げられる。一般式(C)において、R3は複数含まれるが、それぞれのR3は、同じでも異なっていてもよい。
【0068】
Xとしては、ホスホニウム、ボレート、カルボキシ、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、スルホ、およびアルコール基等の酸基を持つもの、ならびに、これら酸基をアセチル、アリール、アミル、ベンジル、メトキシメチル、メシル、トリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロピルシリル、またはトリチル基等で保護されたもの、酸無水物基が挙げられる。
【0069】
これらのうち、R
3としてメチル基、Xとしてカルボン酸無水物基をもつもの、例えば酸無水物基含有シリコーンが好ましい。より具体的には下記式で表される化合物(X-12-967C(商品名、信越化学工業株式会社))や、それに相当する構造をシリコーン等のケイ素含有重合体の末端または側鎖に含む重合体が好ましい。
【化1】
また、ジメチルシリコーンの末端部にチオール、ホスホニウム、ボレート、カルボキシ、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、およびスルホ基等の酸基を付与した化合物も好ましい。このような化合物としては下記式で表される化合物(X-22-2290ASおよびX-22-1821(いずれも商品名、信越化学工業株式会社))が挙げられる。
【化2】
【0070】
シランカップリング剤がシリコーン構造を含む場合、分子量が大きすぎると、組成物中に含まれるポリシロキサンとの相溶性が乏しくなり、現像液に対する溶解性が向上しない、膜内に反応性基が残り、後工程に耐えうる薬液耐性が保てない等の悪影響がある可能性がある。このため、シランカップリング剤の質量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量はアルカリ可溶性ポリマーの総質量を基準として、0.01~15質量%とすることが好ましい。
【0071】
重合阻害剤としては、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンおよびこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その中でもメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、3-メトキシカテコール、フェノチアジン、クロルプロマジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンとして、TINUVIN 144、292、5100(BASF社)、紫外線吸収剤として、TINUVIN 326、328、384-2、400、477(BASF社)が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.01~20質量%とすることが好ましい。
【0072】
消泡剤としては、アルコール(C1~18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および下記に詳細を示す有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.1~3質量%とすることが好ましい。
【0073】
また、本発明による組成物には、必要に応じ増感剤を添加することができる。
本発明による組成物で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、チオピリリウム塩、アセトフェノン類等、具体的には、p-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼン、7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2、7-アミノ-4-メチルクマリン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ピリジルメチルヨージド、7-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、7-エチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルボエトキシキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、3-(2’-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、N-メチル-4-トリフルオロメチルピペリジノ-<3,2-g>クマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ベンゾチアゾリルエチルヨージド、3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、並びに下記化学式で表されるピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。増感色素の添加により、高圧水銀灯(360~430nm)などの安価な光源を用いたパターニングが可能となる。その含有量はアルカリ可溶性材料の総質量を基準として、好ましくは0.05~15質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【化3】
【0074】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。具体的には、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化4】
式中、R
31はそれぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、アリル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、およびハロゲン化アルキル基からなる群から選択される置換基を示し、
R
32はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、およびカルボアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示し、
kはそれぞれ独立に0、1~4から選ばれる整数である。
【0075】
このようなアントラセン骨格を有する増感剤を使用する場合、その含有量はアルカリ可溶性ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0.01~5質量%である。
【0076】
また、本発明による組成物には、必要に応じ架橋剤を添加することができる。架橋剤の例としては、メチロール基、アルコキシメチル基などを持つメラミン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。
架橋剤の具体例のうち、メラミン化合物を具体的に例示すると、イミノ基、メチロール基およびメトキシメチル基等を有しているニカラックMW‐390、ニカラックMW‐100LM、ニカラックMX‐750LM、ニカラックMX‐270、ニカラックMX‐280等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、X-12-9659またはKBM-9659、X-12-9659またはKBM-585(信越化学工業株式会社)が挙げられる。
また、これらの構造を含む重合体、またはこれらの構造の一部がシリコーン基により置換された重合体も好ましいものである。シラン化合物以外にも、カレンズAOI、カレンズMOI-BM、カレンズMOI-BP、カレンズBEI、カレンズMT(昭和電工株式会社)、他、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
架橋剤の含有量は、アルカリ可溶性材料の総質量に対して、好ましくは1~80質量%、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0077】
<硬化膜の形成方法>
本発明による硬化膜の形成方法は、前記した組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる塗布工程と、塗膜を加熱する工程とを含んでなる。本発明において、「基材に」は、組成物を基材に直接塗布するケースや、組成物を1以上の中間層を介して基材に塗布するケースも含むものとする。
好ましくは、硬化膜の製造方法は、塗膜を露光する工程と、塗膜を現像する工程をさらに含んでなる。より好ましくは、本発明による硬化膜の製造方法は、前記した組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる工程と、塗膜を露光する工程と、塗膜を現像する工程と、塗膜を加熱する工程とをこの順に含み、さらに好ましくは前記塗布工程後かつ露光工程前に、プリベーク工程を含む。
本発明の硬化膜の形成方法を工程順に説明すると以下の通りである。
【0078】
(1)塗布工程
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、感光性組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0079】
(2)プリベーク工程
組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、かつ塗膜中の溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に40~150℃、好ましくは50~100℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~300秒間、好ましくは30~120秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0080】
(3)露光工程
塗膜を形成させた後、所望によりその塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2000mJ/cm2、好ましくは10~1000mJ/cm2とする。照射光エネルギーが10mJ/cm2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2000mJ/cm2よりも高いと、露光多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0081】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0082】
(4)露光後加熱工程
露光後、露光個所に発生した反応開始剤により膜内のポリマー間反応を促進させるため、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程(6)とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。したがって、本願発明において必須ではない。
【0083】
露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸が未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウエハ面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸の拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。
【0084】
(5)現像工程
露光後、必要に応じて露光後加熱を行ったあと、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。本発明においては、通常現像液として用いられる2.38質量%TMAH現像液よりも低濃度の現像液を用いて現像することができる。そのような現像液としては、例えば、0.05~1.5質量%TMAH水溶液、0.1~2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.01~1.5質量%水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。現像時間は、通常10~300秒であり、好ましくは30~180秒である。
現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0085】
(6)加熱工程
塗膜を加熱することにより硬化させる。加熱工程に使う加熱装置には、前記した露光後加熱に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、ポリシロキサンを用いる場合にポリシロキサン中のシラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。しかしながら、本発明による組成物は相対的に低温での硬化が可能である。具体的には350℃以下で加熱することで硬化させることが好ましく、硬化後の残膜率を高く保つために、硬化温度は300℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは20分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0086】
このように形成された硬化膜は、平均膜厚が100μm以下の膜であれば本願の効果を発揮し、好ましくは5~100μmの膜である。より好ましくは5~25μm、さらに好ましくは8~20μmである。硬化膜の光学密度(OD)は、波長400~700nmにおいて、平均が1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。ここで、光学密度の測定は、Spectrophotometer CM-5(コニカミノルタ)によって行われる。本発明による硬化膜は、遮光性に優れており、表示デバイスの隔壁材料としてとして使用できる。本発明による硬化膜は厚膜化が可能であるため、より厚い隔壁材料が求められる、量子ドットや有機エレクトロニックルミネッセンスデバイスに好適に用いることができる。
【0087】
別の側面において、本発明は、上記方法で製造された、または製造され得る硬化膜、に関する。
【0088】
別の側面において、本発明は、
アルカリ可溶性材料に由来するポリマー(A)と、
第一の界面活性剤と、
第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる硬化膜、に関する。
好ましくは、この硬化膜は、好ましくはパターニングされており、より好ましくはパターニングされたバンクである。
好ましくは、ポリマー(A)は網目状の架橋構造を有し、より好ましくは前記した(I)アルカリ可溶性材料と、(V)重合開始剤とに由来するポリマーである。
好ましくは、硬化膜は、着色剤をさらに含む。より好ましくは、着色剤は有機着色剤および/または無機着色剤であり、さらに好ましくは着色剤は有機および/または無機の黒色着色剤である。
【0089】
別の側面において、本発明は、硬化膜を具備してなる、光変換デバイス、に関する。
【0090】
別の側面において、本発明は、硬化膜または光変換デバイスを具備してなる表示デバイス、に関する。
【0091】
好ましい実施形態を以下に挙げる。
[実施形態1]
(I)アルカリ可溶性材料と
(II)第一の界面活性剤と、
(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる、
または、本質的に上記(I)アルカリ可溶性材料と、(II)第一の界面活性剤と、(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤とからなる、
または、上記(I)アルカリ可溶性材料と、(II)第一の界面活性剤と、(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤とからなる組成物。
好ましくは、組成物は硬化膜形成組成物である。
好ましくは、組成物は感光性組成物である。さらに好ましくは、組成物はネガ型感光性組成物である。
好ましくは、組成物は、
(IV)着色剤、好ましくは着色剤は有機着色剤および/または無機着色剤であり、さらに好ましくは着色剤は有機および/または無機の黒色着色剤である、
(V)重合開始剤、および/または
(VI)溶媒
をさらに含んでなる。
好ましくは、(I)アルカリ可溶性材料は酸基を有する構造部分を有する。ここで酸基として好ましいものは酸解離指数(pKa)が7以下のものであり、より好ましくは-OH、-COOH、-SO3H、-OSO3H、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2、-SO2NHSO2-であり、さらに好ましくは-COOHである。
【0092】
[実施形態2]
(II)第一の界面活性剤は親油性を示す界面活性剤であり、好ましくはフッ素を含まない界面活性剤であり、さらに好ましくはフッ素を含まない非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物であり、
(III)第二の界面活性剤は撥油性を示す界面活性剤であり、好ましくは撥油性を示すフッ素系界面活性剤またはフッ素を含む界面活性剤であり、より好ましくはフッ素を含む界面活性剤であり、さらにより好ましくは、フッ素を含む非イオン系界面活性剤、フッ素を含むアニオン系界面活性剤、フッ素を含む両性界面活性剤またはそれらの混合物である実施形態1に記載の組成物。
好ましくは(II)第一の界面活性剤はフッ素を含まない非イオン系界面活性剤であり、さらに好ましくは(II)第一の界面活性剤はポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、有機シロキサン界面活性剤、シリコン系界面活性剤またはそれらの混合物である。
好ましくは(III)第二の界面活性剤はフッ素を含む非イオン系界面活性剤である。
【0093】
[実施形態3]
(II)第一の界面活性剤と(III)第二の界面活性剤の質量比((II)第一の界面活性剤:(III)第二の界面活性剤)が1:1000~99:10であり、好ましくは1:100~5:1であり、さらに好ましくは1:50~2:1であり、最も好ましくは1:20~1:1である、実施形態1または2に記載の組成物。
【0094】
[実施形態4]
(II)第一の界面活性剤の含有量が、(I)アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.001~5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.02~0.5質量%であり、最も好ましくは0.03~0.3質量%であり、(III)第二の界面活性剤の含有量が、(I)アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、0.05~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%であり、さらに好ましくは0.2~1質量%であり、最も好ましくは0.3~0.5質量%である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0095】
[実施形態5]
(IV)着色剤をさらに含んでなる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
好ましくは(IV)着色剤は、有機および/または無機の黒色着色剤であり、より好ましくは有機の黒色着色剤であり、さらに好ましくは2つ以上の有機着色剤の混合物からなる黒色着色剤であり、さらにより好ましくは黒色を呈するように混合された赤、青緑有機着色剤の混合物である。さらに好ましく(IV)着色剤は、アゾ類、フタロシアニン類、キナクリドン類、ベンゾイミダゾール類、イソインドリン類、ジオキサジン類、インダンスレン類、およびペリレン類からなる群から選択される有機着色剤の混合物からなる有機の黒色着色剤であり、最も好ましくは有機の黒色着色剤は、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64およびC.I.ピグメントオレンジ72からなる群から選択される1つ以上と、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントグリーン58からなる群から選択される1つ以上とを組み合わされた混合物である。
好ましくは(IV)着色剤の含有量は、アルカリ可溶性材料の総質量を基準として、3~80質量%であり、より好ましくは5~50質量%である。
【0096】
[実施形態6]
(I)アルカリ可溶性材料が、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物および/またはアルカリ可溶性ポリマーである、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組成物。
好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物は、(α)2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、(β)2つ以上の(メタ)アクリル酸と、が反応したエステル類である。
好ましくは、(α)ポリオール化合物は、飽和または不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環炭化水素、1級、2級、または3級アミン、エーテルなどを基本骨格とし、置換基として2つ以上の水酸基を有する化合物である。
好ましくは、(α)ポリオール化合物は、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、チオール基、チオエーテル結合からなる群から選択される1つまたは2つ以上の置換基をさらに含む。
好ましくは、(α)ポリオール化合物は、アルキルポリオール、アリールポリオール、ポリアルカノールアミン、シアヌル酸、およびジペンタエリスリトールからなる群から選ばれる。
ここで、(α)ポリオール化合物が3つ以上の水酸基を有する場合、すべての水酸基が(メタ)アクリル酸と反応している必要は無く、部分的にエステル化されていてもよい。すなわち、このエステル類は未反応の水酸基を有していてもよい。このようなエステル類としては、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートから選ばれる1種または2種以上からなる混合物である。
好ましくは、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、またはこれらの組み合わせである。
より好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ含む化合物と(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ含む化合物の組み合わせである。
好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物の分子量が2,000以下であり、さらに好ましくは1,500以下である。
好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物の含有量が、組成物の溶媒を除く総質量を基準として、5~99.9質量%であり、より好ましくは30~70質量%である。
好ましくは、アルカリ可溶性ポリマーは、(メタ)アクリルポリマー、シロキサンポリマー、シロキサン(メタ)アクリルポリマー、およびそれらの混合物からななる群から選択される。
アルカリ可溶性ポリマーのアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液として0.03質量%KOH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
アルカリ可溶性ポリマーをPGMEAに35質量%になるように希釈し、室温でスターラーを用いて1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したアルカリ可溶性ポリマー溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社)で、塗膜の膜厚測定を行う。
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、0.03質量%のKOH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをKOH水溶液に一定時間浸漬した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をアルカリ可溶性ポリマーの溶解速度とする。
好ましくはアルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ溶解速度の測定、算出において、ウェハー端部から10mm内側の部分の塗膜が0.03質量%KOH水溶液に10分以内に溶解、消失するものをいう。
【0097】
[実施形態7]
(I)アルカリ可溶性材料が、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物を含んでなる、実施形態1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【0098】
[実施形態8]
(I)アルカリ可溶性材料が、アルカリ可溶性ポリマーをさらに含んでなる、実施形態7に記載の組成物。
好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物の含有量が、アルカリ可溶性ポリマーの総質量を基準として、5~1000質量%であり、より好ましくは10~800質量%である。
【0099】
[実施形態9]
(VI)溶媒をさらに含んでなる、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
好ましくは、(VI)溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類のうちの1つ、または複数の組み合わせであり、さらに好ましくは、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、エステル類、アルキル基の炭素数4もしくは5の、直鎖または分岐鎖を有するアルコール類から選ばれる。好ましくは溶媒中にアルコールが5~80質量%含まれる。
【0100】
[実施形態10]
(VII)添加剤をさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
好ましくは、(VII)添加剤は、現像液溶解促進剤(好ましくは水酸基を有する化合物、さらに好ましくは水酸基を有するモノマー、ポリマー若しくはそれらの混合物)、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、第一および第二の界面活性剤とは異なる第三の界面活性剤、増感剤、架橋剤、硬化剤、またはそれらの混合物である。
【0101】
[実施形態11]
実施形態1~10のいずれか一つに記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる工程と、前記塗膜を加熱する工程とを含んでなる硬化膜の製造方法。
好ましくは、硬化膜の製造方法は、前記塗膜を露光する工程と、前記塗膜を現像する工程をさらに含んでなる。より好ましくは、硬化膜の製造方法は、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させる工程と、前記塗膜を露光する工程と、前記塗膜を現像する工程と、前記塗膜を加熱する工程とをこの順に含み、さらに好ましくは前記塗布工程後かつ露光工程前に、プリベーク工程をさらに含む。
【0102】
[実施形態12]
実施形態11に記載の方法で製造された、または製造され得る硬化膜。
【0103】
[実施形態13]
アルカリ可溶性材料に由来するポリマー(A)と、
第一の界面活性剤と、
第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤と、
を含んでなる硬化膜。
好ましくは、アルカリ可溶性材料に由来するポリマー(A)は網目状の架橋構造を有する。
好ましくは、硬化膜はパターニングされている。さらに好ましくは、硬化膜はパターニングされたバンクである。
好ましくは、硬化膜は、着色剤をさらに含む。より好ましくは、着色剤は有機着色剤および/または無機着色剤であり、さらに好ましくは着色剤は有機および/または無機の黒色着色剤である。
さらに好ましくは、ポリマー(A)は
(I)アルカリ可溶性材料と、(V)重合開始剤と
に由来するポリマーである。
【0104】
[実施形態14]
平均膜厚が0.1~100μm、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは1~25μmであり、さらに好ましくは5~20μmである、実施形態12または13に記載の硬化膜。
【0105】
[実施形態15]
硬化膜の上部が撥油性であり、下部が親油性である、実施形態12~14のいずれか1つに記載の硬化膜。好ましくは、硬化膜はパターニングされており、さらに好ましくは硬化膜はパターニングされたバンクである。
【0106】
[実施形態16]
実施形態12~15のいずれか1つに記載の硬化膜を具備してなる、光変換デバイス。
【0107】
[実施形態17]
実施形態12~15のいずれか1つに記載の硬化膜、または実施形態16に記載の光変換デバイスを具備してなる表示デバイス。
【0108】
[実施形態18]
(II)第一の界面活性剤と、
(III)第一の界面活性剤とは異なる第二の界面活性剤との
(I)アルカリ可溶性材料を含んでなる組成物への使用。
好ましくは、組成物は感光性組成物であり、さらに好ましくは、ネガ型感光性組成物である。
好ましくは、組成物は、
(IV)着色剤、好ましくは有機着色剤および/または無機着色剤であり、さらに好ましくは有機および/または無機の黒色着色剤である、
(V)重合開始剤、および/または
(VI)溶媒
をさらに含んでなる。
好ましくは、(II)第一の界面活性剤はフッ素を含まない界面活性剤であり、さらに好ましくはフッ素を含まない非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物であり、(III)第二の界面活性剤はフッ素を含む界面活性剤である。
【0109】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0110】
<比較例1>
アクリルポリマーA(新中村化学工業株式会社)とアクリルポリマーB(ナトコ株式会社)を3:1の質量比で混ぜた混合物100質量部を含むPGMEA溶液に、重合開始剤A(株式会社ADEKA「NCI-831」)と重合開始剤B(IGM Resins B.V.「Omnirad 784」)をそれぞれ3.0質量部、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DPH」)を143質量部、添加剤A(チオールモノマー「KarenzMT PE-1」、昭和電工株式会社)47質量部、着色剤A(黒色着色剤、トーヨーカラー株式会社)39質量部、フッ素含有界面活性剤A(ダイキン工業株式会社)4.5質量部加え、さらにPGMEAを加えて固形分比率が35質量%の溶液に調製し、比較例1の組成物を得る。
【0111】
<比較例2~5>
表1に示す通りの組成に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2~5の組成物を調製する。
【表1】
【0112】
<実施例1~6>
表2に示す通りに組成を変更した以外は、比較例1と同様にして、実施例1~6の組成物を調製する。
【表2】
表1および2中、
(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート「A-DPH」(新中村化学工業株式会社)
アクリルポリマーA: acrylic randam polymer made from carboxyl acid monomer and monomer containing at least one aromatic ring group(新中村化学工業株式会社)。アクリルポリマーB: 2-Propenoic acid, 2-methyl-, polymer with 2-hydroxyethyl 2-methyl-2-propenoate, 2-isocyanatoethyl 2-propenoate and methyl 2-methyl-2-propenoate(ナトコ株式会社)
重合開始剤A:「NCI-831」(株式会社ADEKA)
重合開始剤B: 「Omnirad784」(IGM Resins B.V.)
添加剤A:チオールモノマーA「KarenzMT PE-1」(昭和電工株式会社)。着色剤A:黒色顔料(トーヨーカラー株式会社)
界面活性剤A:フッ素含有界面活性剤(ダイキン工業株式会社)、界面活性剤Aとしては、例えば、パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤であるサーフロン(AGCセイミケミカル株式会社)等も使用できる。
界面活性剤B:シリコン系界面活性剤(DIC株式会社)、界面活性剤Bとしては、例えば、シリコン系界面活性剤SOILNON AF-800(日華化学)等も使用できる。界面活性剤C:「Glide ZG400」(Evonik industries)。
【0113】
(パターン作製)
得られた各組成物を、スピンコート(MS-A100、MIKASA)にてガラス基板上に塗布し、塗布後ホットプレート(HHP-411V、AS ONE)上60℃で90秒間プリベークし、10μmの平均膜厚となるように調整する。i線露光機(NES2W-ghi06、Nikon)を用いて露光し、現像液として、0.03質量%KOH水溶液を用いて、54x160および200x200μmのホールパターンを作製する。パターニングした基板を85℃のオーブン(DP-200、Yamato)に入れ、30分間加熱し、ポリマーの硬化を促進する。パターンは、光学顕微鏡(MX61A、OLYMPUS)とSEM(JSM-7100、JEOL)で、残渣がないことを確かめる。
【0114】
(光学濃度測定)
光学濃度測定のため、パターンなしの基板を準備する。露光の工程では、フォトマスクを使用せず、基板全面を露光する。他の工程はパターン作製と同様のプロセス手順で膜を作製する。分光測色計(CM-5、KONICA MINOLTA)で透過スペクトルを測定し、波長400~650nmの平均のOD値を計算する。
【0115】
(表面自由エネルギー測定)
表面自由エネルギー測定のため、パターンなしの基板を準備する。露光の工程では、フォトマスクを使用せず、基板全面を露光する。他の工程はパターン作製と同様のプロセス手順で膜を作製する。作製した基板を接触角計(DropMaster700、Kyowa)にセットし、蒸留水とジヨードメタン3μLの接触角を測定する。Owens-Wendtの理論式と得られた接触角の値から表面自由エネルギーを計算する。
【0116】
(インクの作成)
インクAは以下の表3に記載の材料を混合して作成される。インクについては例えば国際公開第2021/116139号に記載の材料、方法を用いて作成することもできる。
【表3】
表中、モノマー混合物の作成方法は以下である。
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を使用前に予めモレキュラーシーブを通過させて高純度化処理を行っておく。次に、高純度処理済み2gのHDDAと8gのラウリルアクリレート(LA、粘度:4.0cP、BP:313.2℃)を(HDDA:LA=2:8)ガラスバイアルで混ぜ合わせ、モノマー混合物を得る。
(インクの広がり試験)
サイズ54x160μmのホールパターンに、インクジェットプリンター(Dimatix DMP-2831、FujiFilm)でインクAを1滴入れて、インクの広がりを光学顕微鏡とSEMで評価する。
サイズ200x200μmのホールパターンでは、インクAを10、20、40、60滴入れ、光学顕微鏡(VK-X1000、KEYENCE)、SEM(JSM-7100、JEOL)でインクの広がりを観察する。
表1および2の評価では、パターン上でインクが広がらず液滴形状を維持できている場合(すなわちインクを弾いている場合)は、OK、液滴を維持できなかった場合はNGとする。ホール内では、液滴形状を維持した場合はNG、液滴にならずホール内にインクが広がった場合はOKとする。
【国際調査報告】