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特表2024-544836中空コアフォトニック結晶ファイバに基づく広帯域放射ジェネレータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】中空コアフォトニック結晶ファイバに基づく広帯域放射ジェネレータ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20241128BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241128BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20241128BHJP
   G02F 1/365 20060101ALI20241128BHJP
   H01S 3/108 20060101ALI20241128BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20241128BHJP
   G03F 9/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/02 451
G02B6/032 Z
G02F1/365
H01S3/108
H01S3/10 D
G03F9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522634
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022079008
(87)【国際公開番号】W WO2023072687
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21205790.5
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バウアーシュミット,セバスチャン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ピーター,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ウエベル,パトリック,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
2H197
2H250
2K102
5F172
【Fターム(参考)】
2H197EA15
2H197EA18
2H197EB16
2H197EB23
2H197HA03
2H197JA17
2H250AF04
2H250AF28
2H250AH23
2K102AA06
2K102AA10
2K102AA15
2K102AA32
2K102BA20
2K102BA21
2K102BA23
2K102BB03
2K102BC01
2K102BD10
2K102DA06
2K102DD00
2K102EB30
5F172AM08
5F172NR12
5F172NR14
(57)【要約】
あるコア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源のための放射源制御構成であって、少なくとも1つのプロセッサと、パルスポンプ放射を受け取って、ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するべく、このパルスポンプ放射を制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成と、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、放射源の放射源パラメータを設定するように動作可能であり、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償される。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源のための放射源制御構成であって、前記HC-PCFは、あるコア直径を有する中空コアを備え、前記放射源制御構成は、
少なくとも1つのプロセッサと、
ある圧力で前記ファイバの前記中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するべく、パルスポンプ放射を制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成と、を備え、
前記プロセッサは、前記放射源の放射源パラメータを設定するように動作可能であり、前記放射源パラメータは、前記圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、前記チャープされたパルスポンプ放射が前記HC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、前記HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動が補償される、
放射源制御構成。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記スペクトル広帯域化プロセスが変調不安定性プロセスにより支配されるように前記放射源パラメータを設定するように配置される、請求項1に記載の放射源制御構成。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記中空コア内を伝搬する間、前記チャープされたパルスポンプ放射のパルス持続時間が、常に、前記中空コアに入る際の前記チャープされたパルスポンプ放射の初期パルス持続時間の75%よりも広く維持されるように、前記放射源パラメータを設定するように配置される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動に起因した、前記予め定められたスペクトルに対する前記出力放射の前記スペクトルの変化を補償して、前記予め定められたスペクトルを実質的に維持するように、少なくとも前記圧力及び/又は前記パルスチャープパラメータを変動するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項5】
前記予め定められたスペクトルに対する前記スペクトルの前記変化が、ある波長範囲内の1つ又は複数の波長におけるパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、請求項4に記載の放射源制御構成。
【請求項6】
前記予め定められたスペクトルに対する前記スペクトルの前記変化は、ある波長範囲にわたって平均化されたパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、請求項4に記載の放射源制御構成。
【請求項7】
前記波長範囲は400nm~900nmであるように動作可能である、請求項5又は6に記載の放射源制御構成。
【請求項8】
補償の後、前記PSDの残留変化は15%未満である、請求項4~6のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項9】
前記パルスチャープ構成は、前記パルスチャープパラメータが0fs~50000fs、及び/又は0fs~-50000fsの範囲で調整可能であるように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の放射源制御構成と、
前記コア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)と、を備える
放射源。
【請求項11】
前記パルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、前記HC-PCFの前記中空コアを充填するための作動媒体とを更に備え、前記放射源パラメータは、前記パルスポンプ放射及び前記作動媒体のパラメータを更に含む、請求項10に記載の放射源。
【請求項12】
前記パルスポンプ放射は、100fs~500fsの変換限界パルス幅をサポートするスペクトルを含む、請求項11に記載の放射源。
【請求項13】
前記パルスチャープ構成は、前記パルスポンプ放射源内に含まれる、請求項11又は12のいずれか一項に記載の放射源。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の放射源を備えたメトロロジデバイス。
【請求項15】
あるコア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源を制御する方法であって、
ある圧力で前記ファイバの前記中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するようにパルスポンプ放を制御可能にチャープすることと、
前記放射源の放射源パラメータを設定することであって、前記放射源パラメータは、前記圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、前記チャープされたパルスポンプ放射が前記HC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、前記HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動が補償されることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2021年11月1日出願の欧州出願21205790.5の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0001] 本発明は、中空コアフォトニック結晶ファイバに基づく広帯域放射ジェネレータ、特に、集積回路の製造におけるメトロロジ用途に関連する、上記のような広帯域放射ジェネレータに関する。
【背景技術】
【0003】
[0002] リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えば、ウェーハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0003] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている代表的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、及び13.5nmである。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を用いて、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0004] 低k1リソグラフィを使用して、リソグラフィ装置の古くからの解像限界よりも小さい寸法のフィーチャを処理することができる。このようなプロセスでは、解像度の式はCD=k×λ/NAとして表すことができる。ここで、λは使用する放射の波長、NAはリソグラフィ装置の投影光学系の開口数、CDは「限界寸法」(通常、印刷される最小のフィーチャサイズであるが、この場合はハーフピッチ)及びkは経験的な解像度係数である。一般に、kが小さいほど、特定の電気的機能と性能を実現するために回路設計者が計画した形状と寸法に似たパターンを基板に再現することが難しくなる。これらの困難を克服するために、高度な微調整ステップをリソグラフィ投影装置及び/又は設計レイアウトに適用することができる。これらには、例えば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光学近接効果補正(OPC:optical proximity correction、「光学補正及びプロセス補正」とも呼ばれる)などの設計レイアウトのさまざまな最適化、又は一般に「解像度向上技術」(RET:resolution enhancement techniques)として定義されている他の方法が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳しい制御ループを使用して、低k1でのパターンの再現を改善することができる。
【0006】
[0005] メトロロジツールは、IC製造プロセスの多くの側面で使用され、例えば、露光前に基板を適切に位置決めするためのアライメントツール、基板の表面トポロジーを測定するためのレベリングツール、例えば、プロセス制御で露光及び/又はエッチングされた製品を検査/測定するための焦点制御及びスキャトロメトリに基づくツールとして使用される。いずれの場合も、放射源が必要である。測定のロバスト性及び精度など、さまざまな理由から、このようなメトロロジ用途では広帯域又は白色光の放射源の使用が増えている。広帯域放射生成のために現在のデバイスを改善することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0007】
[0006] 本発明の第1の態様では、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源のための放射源制御構成が提供され、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)は、あるコア直径を有する中空コアを備え、この放射源制御構成は、少なくとも1つのプロセッサと、ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するべく、パルスポンプ放射を制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成と、を備え、少なくとも1つのプロセッサは、放射源の放射源パラメータを設定するように動作可能であり、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償される。
【0008】
[0007] 本発明の第2の態様では、あるコア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源を制御する方法が提供され、この方法は、ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するようにパルスポンプ放射を制御可能にチャープすることと、放射源の放射源パラメータを設定することであって、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償されることと、を含む。
【0009】
[0008] 本発明の他の態様は、第1の態様の広帯域光源デバイスを備えるメトロロジデバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0009] 本発明の実施形態は、添付の概略図を参照して、例示のみを目的として説明される。
【0011】
図1】リソグラフィ装置の図式的概観を示す。
図2】リソグラフィセルの図式的概観を示す。
図3】半導体製造を最適化するための3つの主要技術間の連携を表す、全体的なリソグラフィの図式表現を示す。
図4】本発明の一実施形態による放射源を含み得る、メトロロジデバイスとして使用されるスキャトロメトリ装置の図式的概観を示す。
図5】本発明の一実施形態による放射源を含み得るレベルセンサ装置の図式的概観を示す。
図6】本発明の一実施形態による放射源を含み得るアライメントセンサ装置の図式的概観を示す。
図7】一実施形態による放射源の一部を形成し得る中空コア光ファイバの横断面(つまり、光ファイバの軸に垂直な面)における概略断面図である。
図8】広帯域出力放射を提供するための、一実施形態による放射源の図式表現を示す。
図9図9(a)及び9(b)は、スーパーコンティニウム生成用の中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)設計の例の横断面図を概略的に示す。
図10】一実施形態に従い、パルスチャープ制御ユニットを追加で備えた(例えば、図8に示すような)放射源の図式表現を示す。
図11】広帯域出力放射の3つのスペクトルの異なるシミュレーションを説明した、波長λに対する点広がりパワースペクトル密度(PSD)のグラフであって、既存の方法と提案される方法の有効性を比較したグラフである。
図12】広帯域放射源を制御するためのコンピュータシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0010] 本明細書では、「放射線」及び「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、365、248、193、157又は126nmの波長を有する)及びEUV(例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する極端紫外線放射)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含するために使用される。
【0013】
[0011] 本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」又は「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに基板のターゲット部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を付与するために使用可能な一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈され得る。「ライトバルブ」という用語もこの文脈で使用することができる。典型的なマスク(透過型又は反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のこのようなパターニングデバイスの例には、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイが含まれる。
【0014】
[0012] 図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示している。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射又はEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ特定のパラメータに従って基板サポートを正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板サポート(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0015】
[0013] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOから放射ビームを受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、整形し、かつ/又は制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使って放射ビームBを調整すれば、パターニングデバイスMAの平面において放射ビームの断面に所望の空間及び強度分布をもたせることができる。
【0016】
[0014] 本明細書において使用される「投影システム」PSという用語は、使われている露光放射にとって、かつ/あるいは液浸液の使用又は真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁型、及び/又は静電型光学系、又はそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語の使用はすべて、より一般的な「投影システム」PSという用語と同義であると考えるとよい。
【0017】
[0015] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を満たすように、比較的高屈折率を有する液体(例えば水)によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものであってもよく、これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、米国特許第6952253号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
[0016] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWT(デュアルステージとも呼ばれる)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、複数の基板サポートWTは並行して使用してもよく、かつ/あるいは基板Wの後続の露光の準備におけるステップを、基板サポートWTの1つに位置する基板W上で実行しつつ、他の基板サポートWT上の別の基板Wを、他の基板W上のパターンを露光するために使用してもよい。
【0019】
[0017] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含み得る。測定ステージは、センサ及び/又は洗浄デバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するように配置することができる。測定ステージは、複数のセンサを保持することができる。洗浄デバイスは、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように配置され得る。基板サポートWTが投影システムPSから離れているとき、測定ステージは投影システムPSの下に移動することができる。
【0020】
[0018] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスクMA)上に入射して、パターニングデバイス上にあるパターン(設計レイアウト)によってパターン形成される。マスクMAを通り抜けた後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームを合焦させる。第2ポジショナPW及び位置センサIFを使って、例えば、合焦及び位置合わせされた位置においてさまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板サポートWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPM及び場合によっては別の位置センサ(図1には明示的に示されていない)を使い、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と基板アライメントマークP1、P2を使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークP1、P2が専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークP1、P2をターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分Cとターゲット部分Cの間に配置される場合、これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である。
【0021】
[0019] 図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、時にリソセル又は(リソ)クラスタとも称され、しばしば基板W上での露光前及び露光後プロセスを実行するための装置も含むリソグラフィシセルLCの一部を形成してよい。従来、これらは、例えば基板Wの温度を調整するため、例えばレジスト層の溶剤を調整するために、レジスト層を堆積させるスピンコート器SC、露光されたレジストを現像する現像器DE、冷却プレートCH、及びベークプレートBKを含む。基板ハンドラ又はロボットROは、基板Wを入力/出力ポートI/O1、I/O2から取り出し、それらの基板を異なるプロセス装置間で移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを運ぶ。リソセル内のデバイス(しばしば集合的にトラックとも称される)は、通常はトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、TCU自体は監視制御システムSCSにより制御され、SCSは例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAも制御し得る。
【0022】
[0020] リソグラフィ装置LAによって露光された基板Wを正確かつ一貫して露光するために、基板を検査して、後続の層間のオーバーレイエラー、線幅、クリティカルディメンジョン(CD)などのパターン構造の特性を測定することが望ましい。この目的のために、検査ツール(図示なし)をリソセルLCに含めることができる。エラーが検出された場合、例えば、特に同一バッチ又はロットの他の基板Wが露光又は処理されるよりも前に検査がなされる場合には、後続の基板の露光又は基板Wで実行される他の処理ステップを調整することができる。
【0023】
[0021] メトロロジ装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性がどのように変化するか、又は同じ基板Wの異なる層に関連する特性が層ごとにどのように変化するかを決定するために使用される。あるいは、検査装置は、基板W上の欠陥を特定するように構築されてもよく、例えば、リソセルLCの一部であってもよく、又はリソグラフィ装置LAに統合されてもよく、又は独立型(スタンドアロン)デバイスであってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層内の画像)、又は半潜像(ポストベークステップPEB後のレジスト層内の画像)、又は現像されたレジスト画像(レジストの露光部分又は非露光部分が除去された画像)、又はエッチングされた画像(エッチングなどのパターン転写ステップ後)上の特性を測定することができる。
【0024】
[0022] 通常、リソグラフィ装置LAでのパターニングプロセスは、処理における最も重要なステップの1つであり、基板W上の構造について高精度の寸法決め及び配置を要する。この高精度を保証するために、図3に概略的に示すように、3つのシステムをいわゆる「全体的な」制御環境で組み合わせることができる。これらのシステムの1つは、メトロロジツールMT(2番目のシステム)とコンピュータシステムCL(3番目のシステム)に(実質的に)接続されているリソグラフィ装置LAである。そのような「全体的な」環境の鍵は、これら3つのシステム間の連携を最適化してプロセスウィンドウ全体を強化し、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングが確実にプロセスウィンドウ内に収まるようにする厳密な制御ループを提供することである。プロセスウィンドウは、特定の製造プロセスが定義された結果(例えば、機能的半導体デバイス)を生成する一連のプロセスパラメータ(例えば、ドーズ、焦点、オーバーレイ)の範囲を定義するものであって、通常、その範囲内でリソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータの変化が許容される。
【0025】
[0023] コンピュータシステムCLは、パターン化される設計レイアウト(の一部)を使用して、どの解像度向上技術を使用するかを予測し、計算機によるリソグラフィシミュレーション及び計算を実行して、どのマスクレイアウト及びリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスにおける最大の全体的なプロセスウィンドウを達成するかを決定することができる(図3において第1スケールSC1の二本の矢印で示されている)。通常、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの実現性に一致するように構成される。コンピュータシステムCLは、(例えば、メトロロジツールMTからの入力を使用して)プロセスウィンドウ内のどこでリソグラフィ装置LAが現在動作しているかを検出して、例えば次善の処理によって欠陥が存在し得るかどうかを予測するために使用することもできる(図3において第2スケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0026】
[0024] メトロロジツールMTは、コンピュータシステムCLに入力を提供して、正確なシミュレーション及び予測を可能にすることができ、リソグラフィ装置LAにフィードバックを提供して、例えばリソグラフィ装置LAの較正状態において起こり得るドリフトを特定することができる(図3において第3スケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0027】
[0025] リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御及び検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。このような測定を行うためのツールは、通常、メトロロジツールMTと呼ばれる。そのような測定を行うための様々なタイプのメトロロジツールMTが知られており、その中には、走査型電子顕微鏡又は様々な形態のスキャトロメータメトロロジツールMTが含まれる。スキャトロメータは、瞳又はスキャトロメータの対物レンズの瞳との共役面にセンサを有することにより(通常は瞳ベースの測定と呼ばれる測定)、又は像面又は像面との共役面にセンサを有することにより(この場合、測定は、通常、像ベース又はフィールドベースの測定と呼ばれる)、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能とする汎用性の高い機器である。このようなスキャトロメータ及び関連する測定技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、特許出願US20100328655号、US2011102753A1号、US20120044470A号、US20110249244号、US20110026032号又はEP1,628,164A号にさらに記載されている。上述のスキャトロメータは、軟X線からの光及び可視から近赤外の波長範囲の光を使用して格子を測定することができる。
【0028】
[0026] 第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、回折格子の特性を再構築又は計算するために、測定された信号に再構築法を適用することができる。そのような再構築は、例えば、散乱放射とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することで生じ得る。数学的モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が実際のターゲットから観察されたものと同様の回折パターンを生成するまで調節される。
【0029】
[0027] 第2の実施形態では、スキャトロメータMTは分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射源から放出された放射はターゲット上に方向付けられ、ターゲットからの反射又は散乱放射は、正反射した放射のスペクトルを測定する(つまり、波長の関数としての強度の測定)スペクトロメータ検出器に方向付けられる。このデータから、例えば厳密結合波分析と非線形回帰により、又はシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により、検出されたスペクトルを生じさせるターゲットの構造又はプロファイルを再構築することができる。
【0030】
[0028] 第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソメトリックスキャトロメータである。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態の散乱放射を測定することにより、リソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのようなメトロロジ装置は、例えば、メトロロジ装置の照明セクションにおいて適切な偏光フィルタを使用することにより、(直線、円、又は楕円などの)偏光を放出する。メトロロジ装置に適した放射源は、偏光放射も提供し得る。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの様々な実施形態は、米国特許出願第11/451,599号、第11/708,678号、第12/256,780号、第12/486,449号、第12/920,968号、第12/922,587号、第13/000,229号、第13/033,135号、第13/533,110号及び第13/891,410号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
[0029] スキャトロメータMTの一実施形態において、スキャトロメータMTは、反射スペクトル及び/又は検出構成における非対称性を測定することにより、2つの位置ずれした格子又は周期的構造のオーバーレイを測定するように適合され、ここで、非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(典型的には重なり合った)格子構造は、(必ずしも連続した層ではない)2つの異なる層内に付与されてよく、ウェーハの実質的に同位置に形成され得る。スキャトロメータは、例えば共同所有される特許出願EP1,628,164A号に記載されるように、あらゆる非対称性が明確に識別可能であるように、対称検出構成を有し得る。これは、格子内の位置ずれを測定するための直接的な手段を提供する。ターゲットとして周期的構造を含む2つの層間のオーバーレイエラーを測定するための更なる例としては、周期的構造の非対称性を通した測定があり、これはPCT特許出願公開第WO2011/012624、米国特許出願US20160161863で確認することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
[0030] 他の関心対象のパラメータは、焦点とドーズである。焦点及びドーズは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願US2011-0249244に記載されるようなスキャトロメトリによって(あるいは、走査電子顕微鏡によって)同時に決定することができる。単一の構造を使用することができ、この単一の構造は、焦点エネルギマトリクス(FEM-焦点露光マトリクス(Focus Exposure Matrix)とも呼ばれる)の各々の点でのクリティカルディメンション及び側壁角度の測定値の一意的な組合せを有する。これらのクリティカルディメンジョンと側壁角度との一意的な組み合わせが利用可能である場合、焦点及びドーズの値はこれらの測定値から一意的に決定することができる。
【0033】
[0031] メトロロジターゲットは、リソグラフィプロセスによって、大抵の場合はレジスト中に形成されるが、例えばエッチングプロセスの後にも形成される複合格子の組み合わせであってよい。通常、格子内の構造のピッチ及び線幅は、メトロロジターゲットから生じる回折次数を捕捉することができる測定光学系(特に、光学系のNA)に強く依存する。前述したように、回折された信号を使用して、2つの層間のずれ(オーバーレイとも呼ばれる)を決定することができる、又はリソグラフィプロセスによって生成された時点の当初の格子の少なくとも一部を再構築することができる。この再構築を使用して、リソグラフィプロセスの品質の指針を提供することができ、かつリソグラフィ装置の少なくとも一部を制御することができる。ターゲットは、ターゲット内の設計レイアウトの機能的部分の寸法を模倣するように構成されたより小さい小区分を有し得る。この小区分により、ターゲットは、全体的なプロセスパラメータ測定が設計レイアウトの機能的部分により類似するように、設計レイアウトの機能的部分とより類似して挙動することになる。ターゲットは、アンダーフィルモード又はオーバーフィルモードで測定され得る。アンダーフィルモードでは、測定ビームは全体的なターゲットよりも小さいスポットを生成する。オーバーフィルモードでは、測定ビームは全体的なターゲットよりも大きいスポットを生成する。このようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することもできるため、同時に異なる処理パラメータを決定することができる。
【0034】
[0032] 特定のターゲットを使用したリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータを測定するために使用される測定レシピによって少なくとも部分的に決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ又は複数のパラメータ、測定される1つ又は複数のパターンの1つ又は複数のパラメータ、又はその両方を含み得る。例えば、基板測定レシピで使用される測定が回折ベースの光学測定である場合、この測定のパラメータのうちの1つ又は複数は、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の向き等を含み得る。測定レシピを選択する際の判断基準の1つは、例えば、測定パラメータの1つにおける処理のばらつきに対する感度であり得る。より多くの例は、米国特許出願US2016-0161863及び公開された米国特許出願US2016/0370717A1に記載されており、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0035】
[0033] スキャトロメータなどのメトロロジ装置を図4に示す。これは、放射を基板W上に投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射又は散乱された放射は、スペクトロメータ検出器4に送られる。このスペクトロメータ検出器4は、鏡面反射による放射のスペクトル10(つまり、波長の関数としての強度の測定)を測定する。このデータから、検出されたスペクトルを生じさせる構造は、処理ユニットPUによって、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって、又は図3の下部に示すような、シミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、再構築され得る。一般に、再構築では、構造の一般的な形態がわかっており、構造が作成されたプロセスの知識からいくつかのパラメータが想定され、スキャトロメトリデータから決定される構造のパラメータはわずかである。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0036】
[0034] メトロロジターゲットの測定によるリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータを測定するために使用される測定レシピによって少なくとも部分的に決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ又は複数のパラメータ、測定される1つ又は複数のパターンの1つ又は複数のパラメータ、又はその両方を含み得る。例えば、基板測定レシピで使用される測定が回折ベースの光学測定である場合、この測定のパラメータのうちの1つ又は複数は、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の向き等を含み得る。測定レシピを選択する際の判断基準の1つは、例えば、測定パラメータの1つにおける処理のばらつきに対する感度であり得る。より多くの例は、米国特許出願US2016/0161863号及び公開された米国特許出願US2016/0370717A1号に記載されており、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0037】
[0035] IC製造で使用される別のタイプのメトロロジツールは、トポグラフィ測定システム、レベルセンサ又は高さセンサである。そのようなツールは、基板(又はウェーハ)の上面のトポグラフィを測定するために、リソグラフィ装置に統合することができる。基板のトポグラフィのマップは、高さマップとも称され、基板の高さを基板上の位置の関数として示すこれらの測定から生成され得る。この高さマップはその後、基板上の適正な合焦位置でパターニングデバイスの空間像を提供するべく、基板へのパターンの転写の際に基板の位置を補正するために用いられ得る。この文脈において、「高さ」とは、基板に対して概して面外の寸法(Z軸とも称される)を指すことが理解されるであろう。典型的には、レベル又は高さセンサは(自身の光学系に対して)固定された場所で測定を実行し、基板とレベル又は高さセンサの光学系との間の相対移動が基板全体の各場所での高さ測定をもたらす。
【0038】
[0036] 本技術分野において公知のレベル又は高さセンサLSの一例が図5に概略的に示されている。同図は動作の原理のみを図示している。この例において、レベルセンサは、投影ユニットLSP及び検出ユニットLSDを含む光学系を備える。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRによって付与される放射ビームLSBを提供する放射源LSOを備える。放射源LSOは、例えば、スーパーコンティニウム光源のような狭帯域又は広帯域光源、偏光又は非偏光レーザビームのような偏光又は非偏光、パルス又は連続であってもよい。放射源LSOは、複数のLEDなど、異なる色又は波長範囲を有する複数の放射源を含んでもよい。レベルセンサLSの放射源LSOは、可視放射に限定されず、追加的又は代替的にはUV及び/又はIR放射並びに基板の表面からの反射に適した任意の範囲の波長を包含し得る。
【0039】
[0037] 投影格子PGRは、周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1をもたらす周期構造を備える周期的格子である。周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1は、入射基板表面に垂直な軸(Z軸)に対して0度から90度、典型的には70度から80度の入射角ANGをもって、基板W上の測定場所MLOに向けて方向付けられる。測定場所MLOにおいて、パターン形成された放射ビームBE1は、基板Wによって反射され(矢印BE2によって示される)、検出ユニットLSDに向けて方向付けられる。
【0040】
[0038] 測定場所MLOにおける高さレベルを判定するために、レベルセンサは更に、検出格子DGRと、検出器DETと、検出器DETの出力信号を処理するための処理ユニット(図示なし)とを備えた検出システムを備える。検出格子DGRは投影格子PGRと同一であってもよい。検出器DETは、受光した光を示す検出器出力信号、例えば、光検出器のように受光した光の強度を示す、又はカメラのように受光した強度の空間的分布を表す検出器出力信号を生成する。検出器DETは1つ又は複数の検出器タイプの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0041】
[0039] 三角測量技術によって、測定場所MLOにおける高さレベルを判定することができる。検出された高さレベルは、典型的には検出器DETによって測定された信号強度に関係しており、その信号強度は、とりわけ投影格子PGRの設計及び(斜め)入射角ANGに応じて決まる周期性を有する。
【0042】
[0040] 投影ユニットLSP及び/又は検出ユニットLSDは、投影格子PGRと検出格子DGRとの間のパターン形成された放射ビームの経路に沿って、レンズ及び/又はミラーなど、更なる光学素子を含んでいてもよい(図示なし)。
【0043】
[0041] 一実施形態においては、検出格子DGRは省略されてもよく、検出器DETは検出格子DGRがある位置に設置されてもよい。そのような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。
【0044】
[0042] 基板Wの表面を効果的にカバーするために、レベルセンサLSは、測定ビームBE1のアレイを基板Wの表面上に投影し、それによってより大きな測定範囲をカバーする測定エリアMLO又はスポットのアレイを生成するように構成されていてもよい。
【0045】
[0043] 一般的なタイプの様々な高さセンサが、例えば、参照により組み込まれるUS7265364及びUS7646471に開示されている。可視又は赤外放射の代わりにUV放射を用いた高さセンサが、参照により組み込まれるUS2010233600A1に開示されている。参照により組み込まれるWO2016102127A1には、多素子検出器を用いて、検出格子を必要とせずに、格子像の位置を検出及び認識する小型の高さセンサが記載されている。
【0046】
[0044] IC製造で使用される別のタイプのメトロロジツールは、アライメントセンサである。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な態様は、付与されたパターンを、以前の層において(同じ装置又は異なるリソグラフィ装置によって)定められたフィーチャに関して正しくまた正確に配置するための能力である。このために、マーク又はターゲットの1つ又は複数のセットが基板に提供される。各マークは、その位置を、位置センサ、典型的には光学位置センサによって後に測定することが可能な構造である。位置センサは「アライメントセンサ」と呼ばれ、マークは「アライメントマーク」と呼ばれることがある。
【0047】
[0045] リソグラフィ装置は、1つ又は複数の(例えば、複数の)アライメントセンサを含むことができ、それによって、基板上に設けられたアライメントマークの位置を正確に測定することができる。アラインメント(又は位置)センサは、回折や干渉などの光学現象を使用して、基板上に形成されたアラインメントマークから位置情報を取得し得る。現在のリソグラフィ装置で使用されているアライメントセンサの例は、US6961116に記載されている自己参照干渉計に基づいている。例えば、US2015261097A1に開示されているように、位置センサのさまざまな拡張と変更が開発されている。これらすべての文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
[0046] 図6は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS6961116に記載されているような公知のアライメントセンサASの一実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは、1つ又は複数の波長の放射ビームRBを提供し、この放射ビームRBは、誘導(diverting)光学系によって、基板W上に位置付けられたマークAMのようなマーク上へ照明スポットSPとして誘導される。この例では、誘導光学系はスポットミラーSM及び対物レンズOLを含む。マークAMを照明する照明スポットSPは、マーク自体の幅よりもわずかに小さい直径であり得る。
【0049】
[0047] アライメントマークAMによって回折された放射は、(本例では、対物レンズOLを介して)平行化され、情報搬送ビームBになる。「回折」という用語は、マークからの0次回折(反射と呼ばれ得る)を含むことが意図される。例えば、上述したUS6961116に開示されるようなタイプの自己参照干渉計SRIは、ビームIBを当該干渉計自体に干渉させ、その後、このビームが光検出器PDにより受光される。放射源RSOにより複数の波長が生成される場合には、別個のビームを提供するために(図示されない)追加の光学部品を含んでもよい。光検出器は、単一の要素であってもよく、あるいは、必要に応じて多数の画素を含んでもよい。光検出器は、センサアレイを含み得る。
【0050】
[0048] 本例ではスポットミラーSMを含む誘導光学系は、マークから反射した0次放射をブロックするように機能することもでき、それにより情報搬送ビームIBは、マークAMからのより高次の回折放射のみを含むようになる(これは、測定に不可欠ではないものの、信号対雑音比を向上させる)。
【0051】
[0049] 強度信号SIは、処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIにおける光学処理とユニットPUにおける演算処理の組み合わせにより、基準フレームに対する基板上のX位置及びY位置に関する値が出力される。
【0052】
[0050] 図示されるタイプの単一の測定では、マークの1ピッチに対応する特定の範囲内のマークの位置のみが固定される。これと併用して、より粗い測定技術を使用して、正弦波のいずれの周期がマークされた位置を含む周期であるかを識別する。マークを構成する材料や、提供されたマークの上下にある材料を問わない精度の向上のため、及び/又は堅実なマークの検出のために、より粗いレベル及び/又はより微細なレベルでの同一プロセスを異なる波長で繰り返すことができる。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化及び逆多重化すること、及び/又は時分割もしくは周波数分割によって多重化することができる。
【0053】
[0051] この例では、アライメントセンサ及びスポットSPは固定状態のままであり、基板Wが移動する。従ってアライメントセンサは、基準フレームに堅固かつ高精度に搭載されながら、基板Wの移動方向と反対の方向にマークAMを効果的にスキャンすることができる。基板Wは、基板Wが基板サポートに搭載されると共に基板位置決めシステムが基板サポートの移動を制御することによって、このような動きに制御される。基板サポート位置センサ(例えば干渉計)は、基板サポート(図示なし)の位置を測定する。一実施形態において、基板サポート上には1つ又は複数の(アライメント)マークが設けられている。基板サポート上に設けられたマークの位置を測定することにより、位置センサによって決定される基板サポートの位置を(例えば、アライメントシステムが接続されているフレームに対して)較正することができる。基板上に設けられたアライメントマークの位置を測定することにより、基板サポートに対して基板の位置を決定することができる。
【0054】
[0052] 上述したスキャトロメータ、トポグラフィ測定システム、又は位置測定システムなどのメトロロジツールMTは、放射源から生じた放射を使用して測定を実行することができる。メトロロジツールによって使用される放射の特性は、実行され得る測定のタイプ及び品質に影響することがある。一部の用途では、複数の放射周波数を使用して基板を測定するのが有益な場合があり、例えば、広帯域放射が使用され得る。複数の異なる周波数は、他の周波数と全く又はほとんど干渉することなく伝搬し、メトロロジターゲットを照射し、かつメトロロジターゲットから散乱することができる。したがって、異なる周波数を使用して、例えば、同時により多くのメトロロジデータを取得することができる。異なる放射周波数は、また、メトロロジターゲットの異なる特性を調べ、かつ発見することができる。例えば、レベルセンサ、アライメントマーク測定システム、スキャトロメトリツール、又は検査ツールなどのメトロロジシステムMTでは、広帯域放射が有用な場合がある。広帯域放射源はスーパーコンティニウム放射源であってよい。
【0055】
[0053] 高品質広帯域放射、例えばスーパーコンティニウム放射は、生成するのが困難である。広帯域放射を生成する1つの方法として、例えば非線形でより高次の効果を利用して、高パワー狭帯域若しくは単一周波数入力放射、又はポンプ放射を広帯域化することが挙げられる。(レーザを使用して生成され得る)入力放射はポンプ放射と呼ばれ得る。あるいは、入力放射はシード放射と呼ばれることもある。帯域化効果のための高パワー放射を得るために、強力に
局所化された高強度放射が達成されるように、放射は小さいエリア内に閉じ込められ得る。それらのエリアでは、放射は、広帯域化構造及び/又は非線形媒体を形成する材料と干渉して、広帯域出力放射を生成し得る。高強度放射エリアでは、様々な材料及び/又は構造を使用して、好適な非線形媒体を提供することにより放射の広帯域化を可能にする、かつ/あるいは向上させることができる。
【0056】
[0054] いくつかの実施において、広帯域出力放射はフォトニック結晶ファイバ(PCF)内に生成され得る。いくつかの実施では、そのようなフォトニック結晶ファイバは、ファイバコアの周囲にマイクロ構造を有し、ファイバを通って進行する放射をファイバコア内に閉じ込める補助をする。ファイバコアは、非線形特性を有し、かつファイバコア内に高強度ポンプ放射が透過されたときに広帯域放射を生成することが可能な固体材料から作られ得る。固体コアフォトニック結晶ファイバ内で広帯域放射を生成することは実現可能であるが、固体材料の使用にはわずかに不利な点がある場合もある。例えば、UV放射が固体コア内に生成されると、この放射はほとんどの固体材料により吸収されるため、ファイバの出力スペクトル内に存在しないことがあり得る。
【0057】
[0055] いくつかの実施において、図8を参照して後にさらに詳細に説明されるように、入射放射を広帯域化するための方法及び装置は、入力放射を閉じ込めるため、及び入力放射を広帯域化して広帯域放射を出力するためのファイバを使用し得る。このファイバは、中空コアファイバであってよく、ファイバ内で効果的な放射の誘導及び閉じ込めを実現するための内部構造を備え得る。ファイバは、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)であってよく、これは、大部分がファイバの中空コアの内部での強力な放射の閉じ込めに特に好適であり、高い放射強度を実現する。ファイバの中空コアは、入力放射を広帯域化させるための広帯域化媒体として機能するガスが充填されている。このようなファイバ及びガス構成を使用して、スーパーコンティニウム放射源を生成することができる。ファイバへ入力される放射は、電磁放射、例えば、赤外線スペクトル、可視スペクトル、UVスペクトル、及び極端UVスペクトルのうちの1つ又は複数の放射であり得る。出力放射は、本明細書において白色光と呼ばれ得る広帯域放射から成る、あるいは広帯域放射を含むことができる。
【0058】
[0056] いくつかの実施形態は、光ファイバを含む上記のような広帯域放射源の新しい設計に関連する。光ファイバは、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)である。特に、光ファイバは、放射を閉じ込めるための反共振構造を備えたタイプの中空コアフォトニック結晶ファイバであってよい。このような反共振構造を備えたファイバは、反共振ファイバ、管状ファイバ、単一リングファイバ、負曲率ファイバ、又は抑制結合ファイバ(inhibited coupling fiber)として本技術分野で知られている。また、このようなファイバの様々な異なるタイプが本技術分野で知られている。一方、光ファイバはフォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF、例えば、カゴメファイバ)であってもよい。
【0059】
[0057]多数のタイプのHC-PCFは、それぞれが異なる物理的ガイダンスメカニズムに基づいて設計することができる。このようなHC-PCFの2つには、中空コアフォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF)と中空コア反共振反射ファイバ(HC-ARF)が含まれる。HC-PCFの設計と製造の詳細は、米国特許US2004175085A1(HC-PBFの場合)及び国際特許出願WO2017/032454A1(中空コア反共振反射ファイバの場合)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。図9(a)は、カゴメ格子構造を含むカゴメファイバを示す。
【0060】
[0058] ここで、放射源において使用される光ファイバの例について、図7を参照して説明する。図7は、横断面における光ファイバOFの概略断面図である。図7の光ファイバの実施例に類似した更なる実施形態は、WO2017/032454A1に開示されている。
【0061】
[0059] 光ファイバOFは、このファイバOFの一次元において他の二次元よりも長い細長い本体を備える。このより長い次元は、軸方向と呼ぶことができ、光ファイバOFの軸を画定し得る。他の二次元は、横断面と呼ばれ得る平面を画定する。図7は、x-y面と示されるこの横断面(つまり、軸に垂直な面)における光ファイバOFの断面を示す。光ファイバOFの横断面は、ファイバの軸に沿って実質的に一定であり得る。
【0062】
[0060] 光ファイバOFは、ある程度の可撓性を有するため、軸の方向は、一般的には、光ファイバOFの長さに沿って均一ではないことが理解されよう。光軸、横断面等の用語は、局所的な光軸、局所的な横断面等を意味することが理解されるであろう。さらに、コンポーネントが円筒形又は管状として記載される場合、光ファイバOFは撓むので、これらの用語は、歪ませた当該形状を包含するものと理解されるであろう。
【0063】
[0061] 光ファイバOFは任意の長さを有することができ、光ファイバOFの長さは、用途に応じて変わり得るものと理解されよう。光ファイバOFは、1cm~10mの長さを有することができ、例えば、光ファイバOFは10cm~100cmの長さを有し得る。
【0064】
[0062] 光ファイバOFは、中空コアHCと、中空コアHCを囲むクラッド部分と、クラッド部分を囲んで支持するサポート部分SPとを備える。光ファイバOFは、中空コアHCを有する本体(クラッド部分及びサポート部分SPを含む)を備えるものとみなされ得る。クラッド部分は、中空コアHCを通して放射を誘導するために複数の反共振要素を備える。特に、複数の反共振要素は、光ファイバOFを通って伝搬する放射の大部分を中空コアHC内部に閉じ込め、光ファイバOFに沿って放射を誘導するように配置される。光ファイバOFの中空コアHCは、光ファイバOFの実質的に中心領域に配置され得るため、光ファイバOFの軸は、光ファイバOFの中空コアHCの軸も画定し得る。
【0065】
[0063] クラッド部分は、光ファイバOFを通って伝搬する放射を誘導するために複数の反共振要素を備える。特に、本実施形態では、クラッド部分は6つの管状キャピラリCAPから成る単一のリングを備える。管状キャピラリCAPのそれぞれが反共振要素として機能する。
【0066】
[0064] キャピラリCAPは、チューブとも呼ばれ得る。キャピラリCAPは、円形の断面を有しもよく、又は別の形状を有してもよい。各キャピラリCAPは、光ファイバOFの中空コアHCを少なくとも部分的に画定し、キャピラリ空洞部CCから中空コアHCを離隔する略円筒形の壁部分WPを備える。壁部分WPは、中空コアHCを通って伝搬する(かつ、斜入射角度で壁部分WPに入射し得る)放射のための反射防止ファブリ・ペロー共振器として機能し得る。壁部分WPの厚さは、中空コアHC内への反射が概ね増強される一方、キャピラリ空洞部CC内への透過が概ね抑制されることを確実にするために好適であり得る。いくつかの実施形態では、キャピラリ壁部分WPは、0.01~10.0μmの厚さを有し得る。
【0067】
[0065] 本明細書において使用される場合、クラッド部分という用語は、光ファイバOFを通って伝搬する放射を誘導するための、光ファイバOFの一部分(つまり、当該放射を中空コアHC内に閉じ込めるキャピラリCAP)を意味することが意図される。放射は、横断モードの形態で閉じ込められて、ファイバ軸に沿って伝搬することができる。
【0068】
[0066] サポート部分は、略管状であり、クラッド部分の6つのキャピラリCAPを支持する。6つのキャピラリCAPは、内部サポート部分SPの内面に沿って均一に分布され得る。6つのキャピラリCAPは、略六角形の形態に配置されるものとして記載され得る。
【0069】
[0067] キャピラリCAPは、各キャピラリが他のキャピラリCAPのいずれとも接触しないように配置される。キャピラリCAPのそれぞれは、リング構造で、内部サポート部分SPと接触し、隣接したキャピラリCAPとは間隔があけられる。このような配置は、(例えば、キャピラリが互いに接触した配置と比較して)光ファイバOFの透過帯域幅を増加させるため、有益であり得る。その代わりに、いくつかの実施形態では、キャピラリCAPのそれぞれは、リング構造において隣接したキャピラリCAPと接触してもよい。
【0070】
[0068] クラッド部分の6つのキャピラリCAPは、中空コアHCの周りにリング構造で配置される。キャピラリCAPのリング構造の内面は、光ファイバOFの中空コアHCを少なくとも部分的に画定する。中空コアHCの直径d(対向するキャピラリ間の最短距離として定義することができ、矢印dで示される)は、10~1000μmであり得る。中空コアHCの直径dは、中空コアHC光ファイバOFのモードフィールド径、衝突損失、発散、モードの複数性、及び非線形特性に影響し得る。
【0071】
[0069] 本実施形態において、クラッド部分は、(反共振要素として機能する)キャピラリCAPの単一リング配置を備える。したがって、中空コアHCの中心から光ファイバOFの外側への任意の半径方向の線は、1つの中空コアHCのみを通る。
【0072】
[0070] 他の実施形態では、異なる反共振要素の配置が提供され得ることが理解されよう。これらの配置には、反共振要素の複数のリングを有する配置及び入れ子状の反共振要素を有する配置が含まれ得る。図9(a)は、半径方向に積み重ねられたキャピラリCAPの3つのリングを有するHC-PCFの実施形態を示す。本実施形態において、各キャピラリCAPは、同一リング内でも、別のリング同士でも、他のキャピラリと接触している。さらに、図7に示す実施形態は6つのキャピラリから成るリングを含むが、他の実施形態では、任意の数の反共振要素(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個のキャピラリ)を含む1つ又は複数のリングをクラッド部分内に設けることができる。
【0073】
[0071] 図9(b)は、管状のキャピラリの単一リングを有する上述したHC-PCFの変形例としての実施形態を示す。図9(b)の例では、管状キャピラリ21の2つの同軸リングが存在する。管状キャピラリ21の内側及び外側のリングを保持するために、HC-PCFにはサポート管STが含まれ得る。このサポート管はシリカで作られ得る。
【0074】
[0072] 図7並びに図9(a)及び(b)の例の管状キャピラリは、円形の断面形状を有し得る。管状キャピラリとしては、楕円又は多角断面等の他の形状も可能である。それに加えて、図7並びに図9(a)及び(b)の例の管状キャピラリの固体材料は、PMAのようなプラスチック材料、シリカのようなガラス材料、又は軟質ガラスを含み得る。
【0075】
[0073] 図8は、広帯域出力放射を提供するための放射源RDSを示す。放射源RDSは、パルスポンプ放射源PRS、又は所望の長さ及びエネルギレベルの短いパルスを生成することが可能な任意の他のタイプの放射源と、中空コアHCを有する光ファイバOF(例えば、図7に図示されるタイプ)と、中空コアHC内に配置された作動媒体WM(例えば、ガス)とを備える。図8では、放射源RDSが図7に示す光ファイバOFを含んでいるが、代替的な実施形態では、他のタイプの中空コアHC光ファイバOFが使用されてもよい。
【0076】
[0074] パルスポンプ放射源PRSは、入力放射IRDを提供するように構成される。光ファイバOFの中空コアHCは、パルスポンプ放射源PRSから入力放射IRDを受け取り、これを広帯域化して出力放射ORDを提供するように配置される。作動媒体WMは、広帯域出力放射ORDを提供するように、受け取った入力放射IRDの周波数範囲を広帯域化することができる。
【0077】
[0075] 放射源RDSは、リザーバRSVを更に備える。光ファイバOFはリザーバRSV内に配置される。リザーバRSVは、ハウジング、容器、又はガスセルと呼ばれることもある。リザーバRSVは、作動媒体WMを収容するように構成される。リザーバRSVは、リザーバRSVの内部の作動媒体WM(ガスであり得る)の組成を制御、調整、及び/又は監視するための、本技術分野で公知の1つ又は複数の特徴を備え得る。リザーバRSVは、第1の透明窓TW1を備え得る。使用において、光ファイバOFは、第1の透明窓TW1が光ファイバOFの入力端IEに近接して配置されるように、リザーバRSVの内部に配置される。第1の透明窓TW1は、リザーバRSVの壁の一部を形成し得る。第1の透明窓TW1は、少なくとも受け取った入力放射の周波数に対して透明であり得るため、受け取った入力放射IRD(又は、少なくともその大部分)は、リザーバRSV内部に位置付けられた光ファイバOF内に結合されることができる。入力放射IRDを光ファイバOF内に結合させるために光学部品(図示なし)が設けられてもよいことが理解されよう。
【0078】
[0076] リザーバRSVは、リザーバRSVの壁の一部を形成する第2の透明窓TW2を備える。使用において、光ファイバOFがリザーバRSVの内部に配置される場合は、第2の透明窓TW2は光ファイバOFの出力端OEに近接して位置付けられる。第2の透明窓TW2は、少なくとも装置120の広帯域出力放射ORDの周波数に対して透明であり得る。
【0079】
[0077] あるいは、別の実施形態では、光ファイバOFの2つの対向する端部が別々のリザーバ内に設置されてもよい。光ファイバOFは、入力放射IRDを受け取るように構成された第1の端部と、広帯域出力放射ORDを出力するための第2の端部を備え得る。第1の端部は、作動媒体WMを収容する第1のリザーバ内に設置され得る。第2の端部は、同様に作動媒体WMを収容する第2のリザーバ内に設置され得る。これらリザーバの機能は、図8に関連して上述したものであってよい。第1のリザーバは、入力放射IRDに対して透明であるように構成された第1の透明窓を備え得る。第2のリザーバは、広帯域出力広帯域放射ORDに対して透明であるように構成された第2の透明窓を備え得る。第1及び第2のリザーバは、光ファイバOFを部分的にリザーバの内部に、かつ部分的にリザーバの外部に設置することができるようにするための密閉可能な開口部も備え得るため、ガスをリザーバの内部に密封することができる。光ファイバOFは、リザーバ内部に収容されない中間部分を更に含み得る。このような2つの別個のガスリザーバを使用した配置は、光ファイバOFが比較的長い実施形態(例えば、長さが1mを超える場合)に特に好都合であり得る。このような2つの別個のガスリザーバを使用した配置においては、(2つのリザーバ内部のガスの組成を制御、調整、及び/又は監視するための、本技術分野で公知の1つ又は複数の特徴を備えた)2つのリザーバは、作動媒体WMを光ファイバOFの中空コアHC内に提供するための装置を提供するものとみなすことができる。
【0080】
[0078] この文脈において、窓は、この窓に入射する放射の周波数の少なくとも50%、75%、85%、90%、95%、又は99%が当該窓を透過する場合に、その周波数に対して透明であり得る。
【0081】
[0079] 第1透明窓TW1及び第2透明窓TW2は、作動媒体WM(ガスであってよい)がリザーバRSV内に収容され得るように、リザーバRSVの壁内に機密シールを形成してもよい。ガスWMは、リザーバRSVの雰囲気圧とは異なる圧力でリザーバRSV内に収容され得ることが理解されよう。
【0082】
[0080] 作動媒体WMは、アルゴン、クリプトン、キセノンといった希ガス、水素、重水素、及び窒素といったラマン活性ガス、又は、アルゴン/水素混合物、キセノン/重水素混合物、クリプトン/窒素混合物、又は窒素/水素混合物といったガス混合物を含み得る。充填ガスのタイプに応じて、非線形光学プロセスには、変調不安定性(MI)、ソリトン自己圧縮、ソリトン分裂、カー効果、ラマン効果、及び分散波発生(DMG)が含まれ得るが、これらは、WO2018/127266A1及びUS9160137(ともに、参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。充填ガスの分散は、リザーバRSR内の作動媒体WM圧力(つまり、ガスセル圧力)を変えることによって調整することができるため、生成される広帯域パルスダイナミクス及び関連するスペクトル広帯域特性は、周波数変換を最適化するように調節することができる。
【0083】
[0081] 一実施において、作動媒体WMは、少なくとも広帯域出力放射ORDを生成するための入力放射IRDを受け取る間、中空コアHC内に配置され得る。光ファイバOFが広帯域出力放射を生成するための入力放射IRDを受け取っていない間は、中空コアHC内にはガスWMが完全に又は部分的に存在しなくてもよい。
【0084】
[0082] 周波数広帯域化を実現するためには、高強度放射が望ましい場合がある。中空コアHC光ファイバOFを有することの利点は、光ファイバOFを通って伝搬する放射の強力な空間的閉じ込めにより高強度放射を実現することができ、高局所化放射強度を達成することができることである。例えば、受け取った入力放射の高強度により、及び/又は光ファイバOF内部における放射の強力な空間的閉じ込めにより、光ファイバOF内部の放射強度は高くなり得る。中空コア光ファイバの利点は、中実コアファイバよりも広い波長範囲を有する放射を誘導することができることであり、特に、中空コア光ファイバは、紫外線領域内及び赤外線領域内の両方の放射を誘導することができる。
【0085】
[0083] 中空コアHC光ファイバOFを使用する利点は、光ファイバOF内で誘導される放射の大半が中空コアHCに閉じ込められる点であり得る。したがって、光ファイバOFの中空コアHC内部の放射の干渉の大部分は、光ファイバOFの中空コアHC内部に提供された作動媒体WMに対して生じるものである。結果として、放射に対する作動媒体WMの広帯域化効果が大きくなり得る。
【0086】
[0084] 受け取られる入力放射IRDは、電磁放射であってよい。入力放射IRDはパルス放射として受け取られ得る。例えば、入力放射IRDは、例えばレーザによって生成された超高速パルスを含み得る。
【0087】
[0085] 入力放射IRDはコヒーレント放射であってよい。入力放射IRDは、平行化された放射であってもよく、その利点は、入力放射IRDの光ファイバOF内への結合を容易にし、その効率を向上させることであり得る。入力放射IRDは、単一の周波数を含んでもよく、又は狭帯域の周波数を含んでもよい。入力放射IRDは、レーザによって生成され得る。同様に、出力放射ORDは、平行羽化されてもよく、及び/又はコヒーレントであってもよい。
【0088】
[0086] 出力放射ORDの広帯域範囲は、放射の周波数の連続した範囲を含む、連続した範囲であり得る。出力放射ORDは、スーパーコンティニウム放射を含んでもよい。連続した放射は、多数の用途、例えばメトロロジ用途で使用するのに有益であり得る。例えば、連続した周波数の範囲を使用して、多数の特性を調べることができる。連続した周波数の範囲を使用して、例えば、測定された特性の周波数依存性を決定及び/又は排除することができる。スーパーコンティニウム出力放射ORDは、例えば、100nm~4000nmの波長範囲にわたる電磁放射を含み得る。広帯域出力放射ORDの周波数範囲は、例えば、400nm~900nm、500nm~900nm、又は200nm~2000nmであり得る。スーパーコンティニウム出力放射ORDは、白色光を含み得る。
【0089】
[0087] パルスポンプ放射源PRSによって提供された入力放射IRDはパルス状であり得る。入力放射IRDは、200nm~2μmの1つ又は複数の周波数を有する電磁放射を含み得る。入力放射IRDは、例えば、1.03μmの波長を有する電磁放射を含んでもよい。パルス放射IRDの繰り返し率は、およそ1kHz~100MHzの大きさであり得る。パルスエネルギは、およそ0.1μJ~100μJ、例えば、1~10μJの大きさを有し得る。入力放射IRDのパルス持続時間は、10fs~10ps、例えば、300fsであってよい。入力放射IRDの平均パワーは、100mW~数百Wであり得る。入力放射IRDの平均パワーは、例えば、20~50Wであってよい。
【0090】
[0088] パルスポンプ放射源PRSはレーザであってよい。このようなレーザパルスの時空間伝送特性、例えば、光ファイバOFに沿って伝送されるそのスペクトルの振幅と位相は、(ポンプ)レーザのパラメータ、作動コンポーネントWMの変動、及び光ファイバOFのパラメータを調節することで変動及び調整することができる。このような時空間伝送特性は、出力パワー、出力モードプロファイル、出力時間プロファイル、出力時間プロファイルの幅(又は出力パルス幅)、出力スペクトルプロファイル、及び出力スペクトルプロファイルの帯域幅(又は出力スペクトル帯域幅)のうちの1つ又は複数を含み得る。前記パルスポンプ放射源PRSパラメータは、ポンプ波長、ポンプパルスエネルギ、ポンプパルス幅、ポンプパルス繰り返し率のうちの1つ又は複数を含み得る。前記光ファイバOFパラメータは、光ファイバの長さ、中空コアHCのサイズ及び形状、キャピラリのサイズ及び形状、中空コアHCを取り囲むキャピラリの壁の厚さのうちの1つ又は複数を含み得る。前記作動コンポーネントWM(例えば、充填ガス)のパラメータは、ガスの種類、ガス圧力、及びガス温度、のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0091】
[0089] 放射源RDSによって提供される広帯域出力放射ORDは、少なくとも1Wの平均出力パワーを有し得る。平均出力パワーは、少なくとも5Wであってよい。平均出力パワーは、少なくとも10Wであってよい。広帯域出力放射ORDは、パルス状の広帯域出力放射ORDであり得る。広帯域出力放射ORDは、この出力放射の全波長域のパワースペクトル密度が少なくとも0.01mW/nmであり得る。広帯域出力放射の全波長域のパワースペクトル密度は、少なくとも3mW/nmであってよい。
【0092】
[0090] 上述したメトロロジセンサのいずれかのようなメトロロジセンサ/ツールMTで使用される場合、広帯域出力放射ORDは、当該センサの多様な要件を満たすことが望ましい。これらの要件には、広帯域出力放射ORDの空間的特性、時間的特性、及びスペクトル特性に関する要件が含まれ得る。例えば、特定のメトロロジセンサは、広帯域出力放射ORDのパワースペクトル密度(PSD)が最大変動レベルを超えないことを要件とすることがある。言い換えると、PSDは、1つ又は複数の所与の波長で測定される場合、又は特定の波長範囲にわたって平均化される場合のいずれも、所望のPSD範囲又は特定のPSD範囲内に維持されるべきである。
【0093】
[0091] PSD変動に関する厳しい公差は、広帯域放射源の動作パラメータ、つまり、パルスポンプ放射源PRSパラメータ(例えば、ポンプ波長、ポンプパルスエネルギ、ポンプパルス幅、ポンプパルス繰り返し率)、光ファイバOFパラメータ(例えば、光ファイバ長、中空コアHCのサイズ及び形状、キャピラリのサイズ及び形状)、並びに作動媒体WM(例えば、充填ガス)のパラメータ(例えば、ガスの種類、ガス圧力、及びガス温度)のうちの1つ又は複数に対して厳しい境界(又は公差範囲)を課すことがある。その結果、メトロロジツールMTで使用される場合、放射源RDSの動作パラメータは、メトロロジツールMTによって許容可能な特性を有する広帯域出力放射ORDを生成するために、それぞれの公差範囲内に収まるように厳重に制御されるべきである。当業者であれば、上述したすべての動作パラメータが、広帯域出力放射ORDが生成されている間に能動的に調節することができるわけではないことを理解されよう。例えば、光ファイバOFパラメータ(ファイバコア直径)は、ひとたびHC-PCFが放射源RDS内に設置及び位置合わせされると、容易に変更することができない。したがって、光ファイバOFパラメータの変動(例えば、ファイバコア直径の変動)が広帯域出力放射ORD(例えば、広帯域スペクトル)に与える影響は、他の動作パラメータ(例えば、ポンプパラメータ及び/又は作動媒体パラメータ)の調節を通して、受動的に補償され得る。
【0094】
[0092] 光ファイバパラメータの変動は、通常、既存の製造プロセスの制限に起因する。例えば、既存のファイバ引き上げプロセスでは、製造HC-PCFのファイバコア直径は、通常、参照コア直径(例えば、目標又は公称コア直径)から、参照直径の10%ほどもずれることがある。これは、例えば30μmの参照コア直径の場合、製造ファイバのコア直径は、27μm~33μmの間で変動し得ることを意味する。本発明者らは、コア直径の変動が広帯域出力放射に与える影響を把握するために数値シミュレーションを行った。このシミュレーションでは、コア直径を徐々に変動させ(例えば、0.5μmを増分として27μmから33μmまで増加)、広帯域出力放射ORDのスペクトルを監視した。コア直径が変動された時、他の動作パラメータは変更されずに維持された。
【0095】
[0093] 上述したように、広帯域出力放射ORD(例えば、スーパーコンティニウム又は白色光)の生成には多くの非線形光学プロセスを伴う。いずれの非線形光学プロセスが他のプロセスよりも顕著なスペクトル広帯域化効果を有するかは、どのように動作パラメータが設定されたかに依存する。例えば、ポンプパルスがファイバ中を正常分散領域(正の群速度分散(GVD))で伝搬するようにポンプ波長及び/又は光ファイバを選択することにより、自己位相変調が支配的な非線形光学プロセスであり、ポンプパルスのスペクトル拡張の原因となる。しかし、大抵の場合、パルスポンプ放射源PRSによって提供された入力放射IRDのスペクトルの広帯域化は、ポンプパルスが光ファイバOF内を異常分散領域(負のGVD)で伝搬することを要するソリトンダイナミクスによって推進される。これは、異常分散領域では、カー非線形性効果と分散効果とが互いに反対に作用するためである。光ファイバ(例えば、HC-PCF)内に異常色分散で導入されるポンプパルスのパルスパラメータは、ソリトンのパルスパラメータとは正確に一致せず、ポンプパルスは、特定のソリトン次数及び分散波を有するソリトンパルスに進化することになる。
【0096】
[0094] ソリトン分裂及び変調不安定性(MI)は、ソリトン方式の広帯域放射生成におけるスペクトル広帯域化のための2つの主要なメカニズムであることが知られている。これら2つのメカニズムの違いは、ソリトン分裂プロセスが低ソリトン次数に関連する一方、MIプロセスは高ソリトン次数に関連することである。MIは、非線形分散媒質において強力で(MI変調周波数と比較して)狭帯域のポンプパルスのスペクトル側波帯の自発的成長を参照する物理プロセスである。MIは、一般的に、異常分散レジームにおいて発生する。しかし、例えば、高次分散が存在するなどといった特定の要件が満たされる場合、正常分散領域内でも発生し得る。MIプロセス中、例えば、量子ゆらぎなどにより、パルスの電界(又はエンベロープ)内に存在する非常に小さい摂動がカー非線形性の存在下で指数的に増幅される。増幅の量は、MIゲインによって決まる。このようなMIプロセス中、時間的なパルスエンベロープは複数の短い時間的部分構造又は基本ソリトンに分かれ得る。これに並行して、スペクトル側波帯がピークポンプ波長の両側に対称的に生成され、その結果連続した広帯域スペクトルプロファイルが生じる。
【0097】
[0095] 変調周波数は以下の通り表される。
【数1】

そして、対応するMI周期は以下によって得られる。
【数2】

ここで、γは非線形係数を表し、Pはポンプパワーを表し、βはファイバの伝搬定数を表す。MIプロセスが支配的になるには、ポンプパルスはMI周期TMIよりも十分に長くなくてはならない。しかし、ポンプパルス持続時間のみから、ソリトン分裂プロセス又はMIプロセスのどちらが広帯域放射生成におけるスペクトル拡張の支配的なメカニズムになるかを見分けることはできない。これは、ポンプパルス持続時間が、ポンプピークパワーと共に増加し、これが非線形係数に影響し、ひいては変調周期に影響するためである。
【0098】
[0096] パルス持続時間τを有する所与のポンプパルスについて、相当ソリトン次数Nは以下によって得られる。
【数3】
【0099】
[0097] 式[1]において、N=1の場合、ソリトンは基本ソリトンである。N>1である他の全てのソリトンは、高次ソリトンである。上述したように、MIプロセスが支配的なスペクトル広帯域化メカニズムとなるためには、ポンプパルスはMI周期TMI(又は、τ>>TMI)よりも十分に長くなくてはならない。スペクトル広帯域化は、N>>20であるときに典型的にMIプロセスによって支配され、一方、N<<20であるときに典型的にソリトン分裂によって支配される。したがって、MIプロセスを使用する構成では、高ソリトン次数Nを有する入力放射IRDを生成することが望ましい。さらに、式[3]からわかるように、入力放射IRDのソリトン次数は、入力放射IRDのパルス持続時間τに比例する。したがって、MIプロセスが支配的である典型的な従来技術の構成では、入力放射IRDのパルス持続時間τは、通常、100フェムト秒(fs)から10ピコ秒(ps)に及び、パルスエネルギは1マイクロジュール(μJ)から20μJに及ぶ。
【0100】
[0098] 上述したシミュレーションを再度参照すると、ポンプパルスの相当ソリトン次数Nはおよそ50であり、ポンプパルスのスペクトル広帯域化が主にMIプロセスに基づいていることを示している。本発明者らは、コア直径の変動が出力スペクトルに対して以下に示す2つの主要な効果を有することを実証した。第1に、コア直径変動が公称PSDを変化させる。例えば、コア直径が10%変化することにより、800nmにおけるPSDの変化は50%を超える。第2に、コア直径の変動は、スペクトルの青色端を顕著にシフトさせる。例えば、コア直径が10%変化することにより、青色端が50nmよりも大きくシフトする。このような2つの効果は、多くのメトロロジ用途において許容されないことがある。
【0101】
[0099] スペクトル形状(例えば、PSD及び青色端の位置)を回復するための既存の方法は、ポンプパルスエネルギ及びガス圧を調節することであり、エネルギ補償技術とも呼ばれる。当業者であれば、一定のパルス幅Tについて、ポンプパルスエネルギEを変更することで、各ポンプパルスのピークパワーPが関係E=T×Pにより変化するだけでなく、ポンプパルスエネルギEとパルス繰り返し率Fの積(つまりPave=E×F)である平均ポンプパワーPaveも変化することが理解されよう。したがって、ポンプパルスエネルギを変更することで、ガス充填された中空コアHC内のスペクトル広帯域化プロセス(例えば、MIプロセス)の非線形性の変化(主にピーク強度の変更に起因する)が生じ、ひいては、スペクトルの青色端のシフト、及び出力スペクトルのPSDの変化(主に平均ポンプパワーの変化に起因する)が生じることになる。当業者であれば、ガス圧の変化が作動媒体WMの密度を変化させて、それによりガス充填中空コアHC内のスペクトル広帯域化プロセスの非線形性が変化し、ひいてはスペクトルの青色端をシフトさせることが理解されよう。任意の特定の波長又は波長範囲のPSDを所望の/指定されたPSD範囲に戻すためには、下流の(例えば、パワー調整のための)光学部品を据え付けることが必要になり、費用及び体積を増加させる。
【0102】
[00100] 既存の方法を実施する場合、まずHC-PCFのコア直径に従ってガス圧が調節される。ファイバコア直径の増加(減少)は、後続のソリトン進化のために実質的に同一の分散環境を維持するように、ガス圧を減少(増加)することにより補償する必要があることが知られている。ファイバコア直径の減少(増加)及びガス圧の増加(減少)は、いずれもスペクトル広帯域化プロセスの非線形性を増加(減少)させるため、ポンプパルスエネルギは、異なるコア直径に対して実質的に同一の非線形性を維持するように減少(増加)させる必要がある。表1は、異なるコア直径のそれぞれについて、必要とされるガス圧及び相対パルスエネルギを列挙する。例えば、最大許容コア直径である33μm(例えば、製造範囲の上限)の場合、ガス圧は21bar、ポンプパルスエネルギは最大値Ep,maxに設定された。最大ポンプパルスエネルギEp,maxは、例えば、1.0μJ~10.0μJの範囲であってよい。一方、コア直径が27μmで、ガス圧が32.1barの場合、ポンプパルスエネルギはその最大値Ep,maxから67%×Ep,maxまで減少された。本発明者らは、シミュレーションから、既存の方法が、コア直径変動の悪影響を補償するのにある程度有用であることを学んだ。補償効果は、スペクトルのスペクトル形状(例えば、青色端及び赤色端の位置)が実質的に維持されているという事実に反映される。しかし、この改善にもかかわらず、スペクトルのPSDは依然として400nm~900nmの範囲で大きく変動する。例えば、コア直径が10%変化すると、PSDが800nmでおよそ20%変化する。
【表1】
【0103】
[00101] 本発明者らは、既存の方法に固有の上述した問題は、主に、ポンプパルスエネルギを調節することでポンプ平均パワー及びポンプピークパワーが同時に変化するという事実によって生じることを見出した。よって、本開示では、上述した欠点に影響されることなくファイバコア直径の変動を補償することができる方法及び装置が提案される。
【0104】
[00102] 以下に記載する例によって具体化される提案の方法及び装置は、(時間的)チャープをポンプパルスに適用することにより、実質的に同一のスペクトル形状(例えば、スペクトルの端部位置の一方又は両方)を維持しながらPSD変動を顕著に減少させることができるとの観察に基づいている。
【0105】
[00103] ここで、時間的チャープは、レーザパルスの瞬間周波数の時間依存性であると理解される。短いレーザパルスが分散性媒質中を進行するとき、成分周波数は時間的に分離されることが知られている。分散媒質を横断する間、レーザパルスの中心は真空内を進行するパルスと比較して遅延する。これは、通常、群遅れ(GD)と呼ばれる。加えて、分散媒質はパルスに周波数掃引又はチャープも加える。具体的には、アップチャープの場合、瞬間周波数は、レーザパルスの立ち上がりから立下りまで線形に増加する一方、ダウンチャープの場合、瞬間周波数は時間とともに減少する。
【0106】
[00104] チャープの効果についてより深く理解するために、周波数ωの関数として位相シフトφ(ω)を検討することが一般的である。
【数4】

ここで、φ’はGDであり、φ’’は群遅れ分散(GDD)又は二次分散であり、φ’’’は三次分散(TOD)であり、φ’’’’は四次分散(FOD)である。ガウス変換限界パルス(つまり、所与の帯域幅において可能な最短のパルス幅)に対して、GDD項からの寄与のみを前提とすると、(分散媒質を横断した後の)出力パルス幅τoutは、(分散媒質に入る前の)入力パルス幅τinと比較して、係数γだけ広帯域化されるか、又は伸長される。
【数5】

パルスチャーピング及びパルス幅管理の詳細なレビューは、R.A. Meyers編の分析化学百科事典(Encyclopedia of Analytical Chemistry)に含まれるGavinD. Reid及びKlaas Wynne著「超高速レーザ技術及び分光法(Ultrafast Laser Technology and Spectroscopy)」、13644~13670頁、ジョン・ワイリーアンドサンズ、チチェスター、2000年により提供され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
[00105] 非線形チャーピングは、本明細書に開示される構想にも適用可能かつ有用であり得るが、以下に示す実施形態は線形チャーピングに関して記載される。なお、アップチャープを有するパルスは、正チャープパルスとも呼ぶことができ、ダウンチャープを有するパルスは負チャープパルスとも呼ぶことができる。
【0108】
[00106] (アップチャープ又はダウンチャープのいずれの場合も)時間的チャープの量及び大きさは、チャープパルスを最短パルス幅に圧縮するために必要なGDDの量(平方秒(S)又は平方フェムト秒(fs)の単位で)特徴付け又は定量化することができる。本発明者らは、提案される方法及び装置を、入力放射IRD(又はポンプパルス)のスペクトル広帯域化が主としてMIプロセスによって得られるHC-PCFベースの放射源RDSにおいて実施することが好ましいことを見出した。しかし、これにより、広帯域出力放射ORDが異なる非線形光学プロセスによって生成される他の放射源におけるそれら方法及び装置の適用を除外すべきではない。
【0109】
[00107] 数値シミュレーションを通して、本発明者らは、所与のファイバコア直径及びガス圧力において、ポンプパルスTが時間的に伸長される間にポンプパルスエネルギEを同じ割合で増加することができることを見出した。例えば、ポンプパルス幅が10%増加すると、実質的に一定のパルスピークパワーを維持しつつ、ポンプパルスエネルギを10%増加させることができる。このポンプパルスエネルギE及びポンプパルス幅Tの比例的変化は、P=E/T=一定であるために、ポンプピークパワーが変化しないままであることを意味する。ポンプピークパワーに影響することなくポンプパルスエネルギを変更することが可能であることで、1つのコア直径に最適な同一ポンプパルスエネルギを1つ又は複数の異なるコア直径に使用することが可能となる。
【0110】
[00108] 例として、表1を再度参照すると、コア直径33μmである既存のファイバを、コア直径がより小さい27μmである新しいファイバと交換する場合、既存の方法では、最適化されたポンプパルスエネルギ(つまり、最大ポンプパルスエネルギEp,max)を67%×Ep,maxまで減少させることが必要となり、それにより、(上述したような)望ましくない影響を出力スペクトルにもたらすことになる。それに対し、本開示の実施形態によると、コア直径が33μmから27μmに小さくなる場合でも、ポンプパルスエネルギをEp,maxに維持することが可能になる。これは、基本的に、27μmのコア直径に対する最適パルスエネルギを67%×Ep,maxから100×Ep,maxに増加させることを意味する。ここで、最適ポンプパルスエネルギは、目標の又は予め定められた広帯域スペクトルに最も近い広帯域出力スペクトルをもたらすエネルギ値を指す。このような所与のコア直径におけるポンプパルスエネルギの増加は、ポンプパルスをポンプパルスエネルギと同じ割合で時間的に伸長させるように、好適な量のチャープ又はGDDをポンプパルスに適用することで可能になる。したがって、広帯域スペクトルの形状(例えば、端部位置の一方又は両方)を(一定のポンプパルス幅により)実質的に影響されずに維持する一方で、広帯域スペクトルの絶対PSDレベルはポンプパルスエネルギ(又は平均パワーに相当)と共に増加し得る。本発明者らは、広帯域出力放射の生成のためにファイバの長さを横断する間、時間的に伸長されたポンプパルスのパルス幅が実質的に変化せずに維持され得ることも見出した。これは、MIプロセスが支配的なスペクトル広帯域化メカニズムである場合に特に当てはまる。例えば、ファイバの中空コアを通って伝搬する間、チャープされたパルスポンプ放射のパルス持続時間は、常に、ファイバの中空コアに入る際のチャープされたパルスポンプ放射の初期パルス持続時間の75%よりも広いことがある。
【0111】
[00109] 図10は、追加の放射源制御構成を備えた(例えば、図8に示すような)放射源の図式表現である。放射源制御構成は、少なくとも1つのプロセッサ(図示なし;少なくとも1つのプロセッサは、放射源又はそれ以外のプロセッサを含み得る)と、パルスポンプ放射IRDを受け取って、ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射IRD-Cを出力するべく、パルスポンプ放射IRDを制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成(例えば、パルス-チャープ制御ユニットCU)と、備え得る。ここで、少なくとも1つのプロセッサは、放射源の放射源パラメータを設定するように動作可能であり、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償される。参照コア直径は、例えば、目標又は公称コア直径、つまり、HC-PCFの製造中の目標直径であってよく、実際のコア直径はこの参照コア直径からずれることがある。
【0112】
[00110] 図面からわかるように、放射源RDS-Cは、図8に示す放射源RDSと多くの共通の部品又はコンポーネントを共有し得る。したがって、同一の部品又はコンポーネントを示すために同一の参照番号が使用されている。2つの放射源(RDS及びRDS-C)間の主な違いは、放射源RDS-Cの追加の放射源制御構成にある。パルス-チャープ制御ユニットCUは、レーザパルスを受け取り、その後、パルス-チャープ制御ユニットCUを励起したときに、レーザパルスの時間プロファイルが変化する(例えば、伸長される)ように、固定量の分散又は調整可能な量の分散のいずれかをレーザパルスに対して適用するように構成され得る。パルス時間プロファイルがどのように変更され、またどの程度変更されるかは、例えば、レーザパルスの帯域幅及び波長、レーザパルスの既存のチャープ(例えば、量及び符号)、並びにパルス-チャープ制御ユニットCUによって提供される分散の量及び符号などの多くのパラメータに依存し得る。いくつかの好適な実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、ポンプパルスが、パルス-チャープ制御ユニットCUを出る際に、常に正又は負にチャープされ、それにより所望のパルス幅に時間的に伸長され得るように、十分な、線形の、正又は負のチャープをポンプパルスに提供するように構成され得る。
【0113】
[00111] パルス-チャープ制御ユニットCUは、時間的に広帯域化されたパルスを得るようにレーザパルスに所望のチャープを適用することが可能な任意のタイプのパルスチャーピング(例えば、パルス伸長及び/又は圧縮)デバイスであってよい。例えば、上記の(Gavin D. Reid及びKlaas Wynneによる)参考文献は、超高速レーザ物理学の分野において一般的に使用されるいくつかのパルス伸長/圧縮技術を記載している。いくつかの実施形態において、パルス-チャープ制御ユニットCUは、1つ又は複数の(反射型又は透過型)格子と、任意で他の光学要素(例えば、光学ミラー、光学レンズ)を含む第1のタイプの伸長器を備え得る。別の実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、1つ又は複数のプリズムと、任意で他の光学要素(例えば、光学ミラー、光学レンズ)を含む第2のタイプのパルス伸長器を備え得る。別の実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、1つ又は複数の格子と、1つ又は複数のプリズムと、任意で他の光学要素(例えば、光学ミラー、光学レンズ)を含む第3のタイプのパルス伸長器を備え得る。上述した3つのタイプのパルス伸長デバイスのそれぞれは、所望量のチャープをレーザパルスに選択的に適用することができる範囲のパルスチャープを提供することができる。多くの場合、チャープ調整は完全に自動であってよい。これは、パルス-チャープ制御ユニットCUの一部のコンポーネントを1つ又は複数のアクチュエータ(例えば、電動アクチュエータ)に取り付けることにより、かつアクチュエータの移動範囲にわたりチャープを正確に較正することにより実現することができる。他の実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、固定量のパルスチャープをレーザパルスに提供するように構成された1つ又は複数の高分散要素(例えば、高分散ガラスのブロック)を備えてもよい。
【0114】
[00112] いくつかの実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、ポンプ放射源PRSと中空コアHC光ファイバOF(例えば、HC-PCF)との間に設置され得るスタンドアロンデバイスであり得る。別の実施形態では、パルス-チャープ制御ユニットCUは、単一の筐体を共有するように、ポンプ放射源PRSに一体化されてもよい。他の実施形態では、ポンプ放射源は、チャープパルス増幅(CPA)システム(例えば、イッテルビウムCPAシステム)であってよく、CPAシステムの既存のパルス圧縮器がパルス-チャープ制御ユニットCUとして使用されてもよい。
【0115】
[00113] ポンプ放射源PRSから放出された入力放射IRDは、第1の透明窓TW1を介して中空コアHC光ファイバOF(例えば、HC-PCF)内に直接的に結合される代わりに、まず、パルスチャープ(又はパルス伸長)のためにパルス-チャープ制御ユニットCU内に誘導され得る。時間的に伸長されたポンプパルスIRD-Cは、続いて、広帯域出力放射ORDを生成するために光ファイバOFのコア内に結合される。上述したように、時間的に伸長されたポンプパルスIRD-Cのパルスエネルギは、実質的に同一のパルスピークパワーを維持するように、パルス伸長と比例して増加され得る。これは、ポンプパルスエネルギが低エネルギレベルから増加していく(以下で詳細に説明される)初期最適化プロセスにおいて有用であり得る。
【0116】
[00114] いくつかの実施形態において、放射源RDS-Cは、広帯域出力放射ORDを測定及び/又は監視するように構成された1つ又は複数の光学測定デバイス(図示なし)を更に備えてもよい。1つ又は複数の光学測定デバイスは、例えば、広帯域出力放射の平均パワー及びスペクトル(又はPSD)をそれぞれ測定するように構成されたパワー測定デバイス及びスペクトル測定デバイスを含み得る。光学測定デバイス(例えば、スペクトル測定デバイス)は、測定されたデータ(例えば、測定されたスペクトル)を目標データ(例えば、目標スペクトル)と比較して、誤差信号を生成し得る。このような誤差信号は、パルス-チャープ制御ユニットCUの更なる最適化のためのフィードバック信号として使用することができる。
【0117】
[00115] 例えば、一実施形態において、誤差信号は、放射源のコンポーネント(例えば、光学測定デバイス)から受け取った情報を処理して(予め定められた及び/又はユーザ入力)タスクを実行するように構成された放射源RDS-Cの処理ユニット(図示なし)に送信され得る。一実施形態において、処理ユニットは、放射源制御構成のプロセッサを備え得る。別の実施形態では、処理ユニットは、放射源制御構成のプロセッサと通信可能に連結されてもよい。別の実施形態では、処理ユニットは、放射源制御構成のプロセッサであり得る。
【0118】
[00116] 誤差信号を分析すると、処理ユニットは、(例えば、1つ又は複数のアクチュエータの動作を介して)入力放射IRDに適用されるチャープを変更する(例えば、増加する)ように、第1の制御信号を生成してパルス-チャープ制御ユニットCUに送信し得る。処理ユニットは、任意で、チャープと同一の割合でポンプパルスエネルギを変更する(例えば、増加する)ように、第2の制御信号を生成して、ポンプ放射源PRSに送信してもよい。ポンプパルスチャープ及びポンプパルスエネルギに加えられる同一割合の変更は、広帯域出力放射、ひいては測定されたデータに変化を引き起こす一方で、パルスピークパワーを実質的に同一に維持することができる。これは、異なる(例えば、より小さい)コア直径を有する新しいファイバが使用される時に、ポンプパルスエネルギが異なる(例えば、より低い)最適値に自動的に設定された場合(例えば、表1に示す)に、特に好適であり得る。パルス-チャープ制御ユニットCUがポンプ放射源PRSに一体化されている場合では、第1の制御信号及び第2の制御信号の両方がポンプ放射源PRSに送信されてもよい。
【0119】
[00117] 上述した最適化プロセスは、測定されたデータと目標データとの差が実質的に小さくなるまで、例えば、所与の閾値よりも小さくなるまで続けられ得る。この差は、1つ又は複数の予め定められた波長(例えば、800nm)のPSD及び/又は予め定められた波長範囲(例えば、400nm~900nm)にわたって平均化されたPSDにおける差を含み得る。PSD差の閾値は、例えば、±15%未満、±10%未満、±5%未満、±1%未満であってよい。パルスチチャープ制御ユニットが調整可能なチャープを提供するように構成されている場合、このチャープは、例えば、-50000fs~0fs及び/又は0fs~50000fsの範囲、-40000fs~0fs及び/又は0fs~40000fsの範囲、-30000fs~0fs及び/又は0fs~30000fsの範囲、又は-20000fs~0fs及び/又は0fs~20000fsの範囲であり得る。パルス-チャープ制御ユニットが固定の調整可能なチャープを提供するように構成される場合、チャープは、例えば、10000fs、20000fs、30000fs、40000fs、又は50000fsであってよい。結果として得られるパルス伸長率(つまり、チャーピング前のパルス幅に対するチャーピング後のパルス幅の比率)は、例えば、100%、75%、50%、又は25%ほどもあってよい。いくつかの実施において、パルスポンプ放射は、1000nm~1100nm、例えば、1030nmの重心波長を含み得る。いくつかの実施では、パルスポンプ放射は、100fs~500fsの変換限界パルス幅をサポートするスペクトルを含み得る。
【0120】
[00118] (例えば、図10に示すような)多くのHC-PCFベースの広帯域放射源RDS-Cは、例えばファイバの劣化及び/又は汚染による寿命の問題を抱え得る。時折、既存の光ファイバOF自体又は当該ファイバを含むリザーバRSV全体のいずれかの交換を要する場合がある。異なるコア直径を有する新しい光ファイバOFが放射源RDS-Cに据え付けられると、放射源RDS-Cの処理ユニットは、目標広帯域スペクトルを生成するために必要な分散環境を確立するように、新しいコア直径に従って作動媒体WMの圧力を調節し得る。処理ユニットは、例えば、一定範囲のコア直径に対する最適なガス圧を含む予め定められた参照表を参照することにより、異なる圧力値を得ることができる。その後、処理ユニットは、ポンプパルスチャープの調節が必要かどうかを決定し得る。
【0121】
[00119] 一実施形態において、ポンプパルスエネルギは、コア直径(例えば、27μm~33μmの上方範囲に対して、33μm)のための製造範囲(例えば、公称コア直径から観察又は予想される変動をカバーする範囲)の上限から目標スペクトルを生成するために最適なより高いレベルで固定又は維持され得る。そのような場合、広帯域放射源RDS-C内に据え付けられる新しいファイバのコア直径は、その上限のコア直径と同一か、又はそれよりも小さいかのいずれかとなる。上限コア直径の場合、パルス-チャープ制御ユニットCUのチャープは、ゼロに設定されるか、又はゼロに実質的に近く設定されることができ、これは、ポンプパルスが変換限界パルスであるか、それに実質的に近いことを意味する。より小さいコア直径を有する新しいファイバが使用される場合、維持されたポンプパルスエネルギは、もはや目標広帯域スペクトルを生成すには最適でないか、又は高すぎる場合があるため、処理ユニットは、パルス-チャープ制御ユニットCUに対して、ポンプパルスを時間的に広帯域化するように好適な量のチャープを適用するよう指示し得る。チャープの量は、数値シミュレーションによって予め決められ得る。任意で、又はそれに加えて、パルス-チャープ制御ユニットCUは、(上述したように)1つ又は複数の光学測定デバイスからのフィードバックに基づいてチャープの微調整を可能にし得る。チャープの微調整の目的は、測定された出力スペクトル(例えば、PSDレベル)と目標スペクトルとの間の差を減少するか最小化することであり得る。
【0122】
[00120] 一実施形態において、放射源は、上述した参照表の情報を保持し、処理ユニットによって読み取られ得るメモリデバイスを備え得る。参照表内の情報は、例えば、リザーバRSV内に据え付けられたファイバのコア直径に応じて必要なガス圧、ポンプパルスエネルギ、ポンプパルスチャープであってよい。パラメータは、シミュレーションから事前に計算されてもよく、実験から事前に決められてもよい。パラメータを取得すると、処理ユニットは、放射源RDSの異なるコンポーネント及び/又はユニット(例えば、パルス-チャープ制御ユニットCU、作動媒体制御ユニット)のそれぞれに制御信号を送信し得る。
【0123】
[00121] 以下の表2は、30μmファイバの公称コア直径及び27μm~33μmの製造公差範囲を有するHC-PCFのための複数の例示的なパラメータセットを示す。表からわかるように、より小さいコア直径(例えば、27μm)のファイバを使用してより大きいコア直径(例えば、33μm)のファイバと交換する場合、ガス圧はより低いレベル(例えば、21.0bar)からより高いレベル(例えば、32.1bar)へと増加されて、実質的に同一の分散環境が維持され得る。その後、パルス幅を(例えば、250fsから372fsに)時間的に広帯域化するように正又は負のチャープ(25000fs)をポンプパルスに適用することができる。一方、ポンプパルスエネルギは、製造公差範囲の全てのコア直径に対して(例えば、6.4μJに)維持される。
【表2】
【0124】
[00122] 図11は、波長λに対する点広がりパワースペクトル密度(PSD)のプロットであって、広帯域出力放射の3つのスペクトルの異なるシミュレーションを示す。スペクトルC1-UCは、30μmの初期コア直径及びEp,initialの初期ポンプパルスエネルギを使用したベースライン状況に対応する。スペクトルC2-UCは、ファイバが27μmのコア直径を有するファイバと交換されて、既知のエネルギ補償を使用して補償を行い、新しいポンプパルスエネルギ81%×Ep,initialが得られた状況に対応する。このエネルギ補償技術を使用すると、(例えば、同様の青色端部を有するために)ポンプパルスエネルギは初期パルスエネルギレベルであるEp,initialから81%×Ep,initialまで減少させる必要があり、例えば400nm~900nmの範囲にわたる顕著な公称PSDの変化が生じることになる。比較して、スペクトルC2-Cは、やはりファイバが27μmのコア直径を有するファイバと交換されるものの、本開示の構想に従って、約10000fsの追加のチャープが初期エネルギレベルEp,initialを持つポンプパルスに適用された状況に対応する。図からわかるように、(C1-UCとC2-C間で)絶対PSDレベルの整合を大幅に改善することができる。
【0125】
[00123] 図12は、本明細書に開示された方法及びフローを実施するための支援をし得るコンピュータシステム1400を図示するブロック図である。コンピュータシステム1400は、バス1402又は情報を通信するための他の通信メカニズムと、情報を処理するためにバス1202と連結されたプロセッサ1204(又は、複数のプロセッサ1204及び1205)と、を備える。コンピュータシステム1200は、プロセッサ1204によって実行される情報及び命令を記憶するためにバス1202に連結された、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的ストレージデバイス等のメインメモリ1206も備える。メインメモリ1206は、プロセッサ1204によって実行される命令の実行中に、一時的数値変数と他の中間的な情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム1200は、さらに、プロセッサ1204のための静的情報及び命令を記憶するためにバス1202に連結された、リードオンリーメモリ(ROM)1208又は他の静的ストレージデバイスを更に備える。磁気ディスク又は光ディスクなどのストレージデバイス1210は、情報及び命令を記憶するために提供され、バス1202に連結される。
【0126】
[00124] コンピュータシステム1200は、バス1202を介して、コンピュータユーザに対して情報を表示するための陰極線管(CRT)又はフラットパネル又はタッチパネルディスプレイ等のディスプレイ1212に連結され得る。英数字キー及び他のキーを含む入力デバイス1214は、プロセッサ1204に対して情報を伝達し、かつ選択を命令するためにバス1202に連結される。別のタイプのユーザ入力デバイスとして、プロセッサ1204に対して方向情報を伝達し、かつ選択を命令するため、及びディスプレイ1212上のカーソル動作を制御するための、マウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのカーソルコントロール1214がある。この入力デバイスは、通常、第1の軸(例えば、x)及び第2の軸(例えばy)の2つの軸方向に2つの自由度を有し、デバイスが平面内の位置を特定することを可能にする。タッチパネル(スクリーン)ディスプレイもまた入力デバイスとして使用することができる。
【0127】
[00125] 本明細書に記載される1つ又は複数の方法は、プロセッサ1204がメインメモリ1206内に含まれる1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを実行したことに応答して、コンピュータシステム1200によって実行され得る。このような命令は、ストレージデバイス1210等の別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ1206内に読み込まれ得る。メインメモリ1206内に含まれる命令のシーケンスの実行により、プロセッサ1204が本明細書に記載のプロセスステップを実行する。マルチ処理構成内の1つ又は複数のプロセッサもまた、メインメモリ1206内に含まれる命令のシーケンスを実行するために採用することができる。代替的な実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに、又はソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用されてもよい。したがって、本明細書の記載は、ハードウェア回路とソフトウェアのいずれの特定の組み合わせにも限定されるものではない。
【0128】
[00126] 本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ1204に命令を提供することを担うあらゆる媒体を指す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体を含むが、これらに限定されない多くの形態を取ることができる。不揮発性媒体は、例えば、ストレージデバイス1210のような光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ1206のような動的メモリを含む。伝達媒体は、バス1202を備えたワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含む。伝達媒体は、無線(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成されるような、音波又は光波の形態を取ることもできる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光媒体、穿孔カード、紙テープ、任意の他の孔パターンを有する物理媒体、RAM、PROM、及びEROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、下記に記載する搬送波、又はコンピュータが読み取りを行うことができる任意の他の媒体が含まれる。
【0129】
[00127] 1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを実行のためにプロセッサ1204に搬送する際には、多様な形態のコンピュータ可読媒体が関与し得る。例えば、最初に、命令がリモートコンピュータの磁気ディスク上に記録され得る。リモートコンピュータは、その動的メモリに命令をロードし、モデムを使用して電話線を介して命令を送信することができる。コンピュータシステム1200にローカルなモデムは、電話線を介してデータを受け取り、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バス1202に連結された赤外線検出器は、赤外線信号内に搬送されるデータを受け取り、バス1202上にデータを置くことができる。バス1202はこのデータをメインメモリ1206に搬送し、プロセッサ1204はメインメモリ1206から命令を取り出し、実行する。メインメモリ1206によって受け取られた命令は、任意で、プロセッサ1204による実行の前又は後にストレージデバイス1210に記憶されてもよい。
【0130】
[00128] コンピュータシステム1200は、バス1202に連結された通信インターフェース1218も含むことが好ましい。通信インターフェース1218は、ローカルネットワーク1222に接続されたネットワークリンク1220に連結された二方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース1218は、対応するタイプの電話線にデータ通信接続を提供するための統合サービスデジタル網(ISDN)又はモデムであってよい。別の例として、通信インターフェース1218は、互換性のあるLANにデータ通信接続を提供するためのローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってよい。ワイヤレスリンクも実施されてもよい。そのような実施のいずれにおいても、通信インターフェース1218は、多様なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気、電磁、又は光信号を送信及び受信する。
【0131】
[00129]
ネットワークリンク1220は、通常、1つ又は複数のネットワークを介して他のデータデバイスにデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク1220は、ローカルネットワーク1222を介して、ホストコンピュータ1224又はインターネットサービスプロバイダ(ISP)1226によって稼働されるデータ機器に接続を提供し得る。ISP1226は、次に、現在では、通常「インターネット」1228と呼ばれるワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを介してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク1222及びインターネット1228は、共に、デジタルデータストリームを搬送する電気、電磁、又は光信号を使用する。コンピュータシステム1200からの及びコンピュータシステム1200へのデジタルデータを搬送する、多様なネットワークを介した信号、及びネットワークリンク1220上で通信インターフェース1218を介した信号は、情報を運ぶ搬送波の例示的な形態である。
【0132】
[00130] コンピュータシステム1200は、(複数の)ネットワーク、ネットワークリンク1220、及び通信インターフェース1218を介して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信し得る。インターネットの例では、サーバ1230は、インターネット1228、ISP1226、ローカルネットワーク1222、及び通信インターフェース1218を介してアプリケーションプログラムのための要求されたコードを送信するかもしれない。例えば、そのようなダウンロードされた1つのアプリケーションは、本明細書に記載される技術のうちの1つ又は複数を提供することができる。受信したコードは、受信時にプロセッサ1204によって実行されてもよく、かつ/あるいは、後に実行するためにストレージデバイス1210又は他の不揮発性ストレージに記憶されてもよい。このように、コンピュータシステム1200は、搬送波の形態でアプリケーションコードを取得することができる。
【0133】
[00131] 更なる実施形態を、以下に示す番号付き条項のリストにおいて開示する。
1.中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源のための放射源制御構成であって、HC-PCFは、あるコア直径を有する中空コアを備え、放射源制御構成は、
少なくとも1つのプロセッサと、
ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するべく、パルスポンプ放射を制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成と、を備え、
プロセッサは、放射源の放射源パラメータを設定するように構成され、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償される、
放射源制御構成。
2.少なくとも1つのプロセッサは、スペクトル広帯域化プロセスが変調不安定性プロセスによって支配されるように放射源パラメータを設定するように配置される、条項1に規定の放射源制御構成。
3.少なくとも1つのプロセッサは、中空コア内を伝搬する間、チャープされたパルスポンプ放射のパルス持続時間が、常に、中空コアに入る際のチャープされたパルスポンプ放射の初期パルス持続時間の75%よりも広く維持されるように、放射源パラメータを設定するように配置される、条項1~2のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
4.少なくとも1つのプロセッサは、参照コア直径に対するコア直径の変動に起因した、予め定められたスペクトルに対する出力放射のスペクトルの変化を補償して、予め定められたスペクトルを実質的に維持するように、少なくとも圧力及び/又はパルスチャープパラメータを変動するように構成される、条項1~3のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
5.予め定められたスペクトルに対するスペクトルの変化が、ある波長範囲内の1つ又は複数の波長におけるパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、条項4に規定の放射源制御構成。
6.予め定められたスペクトルに対するスペクトルの変化は、ある波長範囲にわたって平均化されたパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、条項4に規定の放射源制御構成。
7.波長範囲は400nm~900nmであるように動作可能である、条項5又は6に規定の放射源制御構成。
8.補償の後、PSDの残留変化は15%未満である、条項4~6のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
9.補償の後、PSDの残留変化は10%未満である、条項5~7のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
10.補償の後、PSDの残留変化は5%未満である、条項5~7のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
11.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが0fs~50000fs、及び/又は0fs~-50000fsの範囲で調整可能であるように構成される、条項1~10のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
12.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが0fs~40000fs、及び/又は0fs~-40000fsの範囲で調整可能であるように構成される、条項1~10のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
13.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが0fs~30000fs、及び/又は0fs~-30000fsの範囲で調整可能であるように構成される、条項1~10のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
14.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが0fs~20000fs、及び/又は0fs~-20000fsの範囲で調整可能であるように構成される、条項1~10のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
15.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが-40000fs~40000fsの間の値に固定されるように構成される、条項1~14のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
16.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが-30000fs~30000fsの間の値に固定されるように構成される、条項1~14のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
17.パルスチャープ構成は、パルスチャープパラメータが-20000fs~20000fsの間の値に固定されるように構成される、条項1~14のいずれか一項に規定の放射源制御構成。
18.条項1~17のいずれか一項の放射源制御構成と、
コア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)と、を備える
放射源。
19.パルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、HC-PCFの中空コアを充填するための作動媒体とを更に備え、放射源パラメータは、パルスポンプ放射及び作動媒体のパラメータを更に含む、条項18に規定の放射源。
20.パルスポンプ放射源は1000nm~1100nmの重心波長を含む、条項19に規定の放射源。
21.パルスポンプ放射は、100fs~500fsの変換限界パルス幅をサポートするスペクトルを含む、条項19又は20に規定の放射源。
22.パルスチャープ構成は、パルスポンプ放射源内に含まれる、条項19~21のいずれか一項に規定の放射源。
23.作動媒体は、希ガス及び分子ガスのうちの少なくとも1つを含む、条項19~22のいずれか一項に規定の放射源。
24.作動媒体は、HC-PCFの中空コア内に異常分散を生成する、条項19~23のいずれか一項に規定の放射源。
25.出力放射は、少なくとも500nm~900nmの波長を含む、条項18~24のいずれか一項に規定の放射源。
26.条項18~25のいずれか一項に規定の放射源を備えたメトロロジデバイス。
27.スキャトロメータメトロロジ装置、レベルセンサ、又はアライメントセンサを備える、条項26に規定のメトロロジデバイス。
28.条項1~17のいずれか一項に規定の放射源制御構成を備えた、又は条項18~25のいずれか一項に規定の放射源を備えた、又は条項26又は27に規定のメトロロジデバイスを備えた、リソグラフィ装置。
29.条項28に規定のリソグラフィ装置を備えた、及び/又は条項1~17のいずれか一項に規定の放射源制御構成を備えた、又は条項18~25のいずれか一項に規定の放射源を備えた、又は条項26又は27に規定のメトロロジデバイスを備えた、リソグラフィセル。
30.あるコア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源を制御する方法であって、
ある圧力でファイバの中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するようにパルスポンプ放射を制御可能にチャープすることと、
放射源の放射源パラメータを設定することであって、放射源パラメータは、圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、チャープされたパルスポンプ放射がHC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、参照コア直径に対するコア直径の変動が補償されることと、を含む、
方法。
31.放射源パラメータは、スペクトル広帯域化プロセスが変調不安定性プロセスに支配されるように構成される、条項30に規定の方法。
32.放射源パラメータは、ファイバの中空コア内を伝搬する間、チャープされたパルスポンプ放射のパルス持続時間が、常に、ファイバの中空コアに入る際のチャープされたパルスポンプ放射の初期パルス持続時間の75%よりも広く維持されるように構成される、条項30又は31に規定の方法。
33.参照コア直径に対するコア直径の変動に起因した、予め定められたスペクトルに対する出力放射のスペクトルの変化を補償して、予め定められたスペクトルを実質的に維持するように、圧力及び/又はパルスチャープパラメータを変動することを更に含む、条項30~32のいずれか一項に規定の方法。
34.圧力及び/又はパルスチャープパラメータを変動するステップは、圧力を変動して、パルスチャープを変動する前のスペクトル広帯域化プロセスのための予め定められた分散環境を確立することを含む、条項33に規定の方法。
35.出力放射のスペクトルの変化を測定することと、
補償後のスペクトルの残留変化が閾値レベルを下回るまでパルスチャープパラメータを変動することと、
を更に含む、条項34に規定の方法。
36.測定された変化に応じて誤差信号を生成して、誤差信号に応じてパルスチャープパラメータを変動することを更に含む、条項35に規定の方法。
37.予め定められたスペクトルに対するスペクトルの変化は、ある波長範囲の1つ又は複数波長におけるパワースペクトル密度(PSD)の変化を含む、条項33~36のいずれか一項に規定の方法。
38.予め定められたスペクトルに対するスペクトルの変化は、ある波長範囲にわたって平均化されたパワースペクトル密度(PSD)の変化を含む、条項33~36のいずれか一項に規定の方法。
39.波長範囲は、400nm~900nmである、条項37又は38に規定の方法。
40.PSDの変化の閾値レベルは15%である、条項35~39のいずれか一項に規定の方法。
41.PSDの変化の閾値レベルは10%である、条項35~39のいずれか一項に規定の方法。
42.PSDの変化の閾値レベルは5%未満である、条項35~39のいずれか一項に規定の方法。
43.新しいHC-PCFを放射源内に据え付けることと、
新しいHC-PCFのために設定ステップを実行することと、
を含む、条項30~42のいずれか一項に規定の方法。
【0134】
[00132] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が他の用途を有し得ることが理解されるべきである。他の用途として考えられるものには、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターン及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0135】
[00133] 本明細書では、リソグラフィ装置との関連で本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置で使用されてもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、あるいはウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)などの物体を測定又は処理する任意の装置の一部を形成することができる。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0136】
[00134] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、光リソグラフィに限定されず、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよい。
【0137】
[00135] 本発明の特定の実施形態が上記で説明されたが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源のための放射源制御構成であって、前記HC-PCFは、あるコア直径を有する中空コアを備え、前記放射源制御構成は、
少なくとも1つのプロセッサと、
ある圧力で前記ファイバの前記中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するべく、パルスポンプ放射を制御可能にチャープするように構成されたパルスチャープ構成と、を備え、
前記プロセッサは、前記放射源の放射源パラメータを設定するように動作可能であり、前記放射源パラメータは、前記圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、前記チャープされたパルスポンプ放射が前記HC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、前記HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動が補償される、
放射源制御構成。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記スペクトル広帯域化プロセスが変調不安定性プロセスにより支配されるように前記放射源パラメータを設定するように配置される、請求項1に記載の放射源制御構成。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記中空コア内を伝搬する間、前記チャープされたパルスポンプ放射のパルス持続時間が、常に、前記中空コアに入る際の前記チャープされたパルスポンプ放射の初期パルス持続時間の75%よりも広く維持されるように、前記放射源パラメータを設定するように配置される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動に起因した、前記予め定められたスペクトルに対する前記出力放射の前記スペクトルの変化を補償して、前記予め定められたスペクトルを実質的に維持するように、少なくとも前記圧力及び/又は前記パルスチャープパラメータを変動するように構成される、請求項1に記載の放射源制御構成。
【請求項5】
前記予め定められたスペクトルに対する前記スペクトルの前記変化が、ある波長範囲内の1つ又は複数の波長におけるパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、請求項4に記載の放射源制御構成。
【請求項6】
前記予め定められたスペクトルに対する前記スペクトルの前記変化は、ある波長範囲にわたって平均化されたパワースペクトル密度(PSD)の変化を含むように動作可能である、請求項4に記載の放射源制御構成。
【請求項7】
前記波長範囲は400nm~900nmであるように動作可能である、請求項5又は6に記載の放射源制御構成。
【請求項8】
補償の後、前記PSDの残留変化は15%未満である、請求項4~6のいずれか一項に記載の放射源制御構成。
【請求項9】
前記パルスチャープ構成は、前記パルスチャープパラメータが0fs~50000fs、及び/又は0fs~-50000fsの範囲で調整可能であるように構成される、請求項1に記載の放射源制御構成。
【請求項10】
請求項1に記載の放射源制御構成と、
前記コア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)と、を備える
放射源。
【請求項11】
前記パルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、前記HC-PCFの前記中空コアを充填するための作動媒体とを更に備え、前記放射源パラメータは、前記パルスポンプ放射及び前記作動媒体のパラメータを更に含む、請求項10に記載の放射源。
【請求項12】
前記パルスポンプ放射は、100fs~500fsの変換限界パルス幅をサポートするスペクトルを含む、請求項11に記載の放射源。
【請求項13】
前記パルスチャープ構成は、前記パルスポンプ放射源内に含まれる、請求項11又は12のいずれか一項に記載の放射源。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか一項に記載の放射源を備えたメトロロジデバイス。
【請求項15】
あるコア直径を有する中空コアを備えた中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)を備えた放射源を制御する方法であって、
ある圧力で前記ファイバの前記中空コア内に含まれる作動媒体を励起するためのチャープされたパルスポンプ放射を出力するようにパルスポンプ放を制御可能にチャープすることと、
前記放射源の放射源パラメータを設定することであって、前記放射源パラメータは、前記圧力及びパルスチャープパラメータの一方又は両方を含み、前記チャープされたパルスポンプ放射が前記HC-PCF内でスペクトル広帯域化プロセスを経ることにより、前記HC-PCFの参照コア直径について予め定められたスペクトルを有する出力放射が生成され、前記参照コア直径に対する前記コア直径の変動が補償されることと、を含む、方法。
【国際調査報告】