(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エアバッグ用シリコーンコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20241128BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20241128BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241128BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241128BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20241128BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241128BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241128BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241128BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241128BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20241128BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20241128BHJP
C09D 183/02 20060101ALI20241128BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C09D183/04
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/36
C08K5/54
C08L83/05
C08L83/04
C09D7/61
C09D7/63
C09D183/05
C09D183/07
C09D183/02
B60R21/235
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527812
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022049525
(87)【国際公開番号】W WO2023091347
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】サントス、エリザベス エム.
(72)【発明者】
【氏名】アン、ドンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベケマイヤー、トーマス ディ.
(72)【発明者】
【氏名】シュタルケ、トッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】秋友 裕司
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 智子
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン、グレン
【テーマコード(参考)】
3D054
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
3D054CC26
4J002CP033
4J002CP042
4J002CP141
4J002DJ016
4J002EX067
4J002FD016
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4J002GH02
4J002GJ00
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4J038DL021
4J038DL031
4J038DL041
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4J038GA01
4J038GA15
4J038HA446
4J038JC32
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038NA09
4J038NA12
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC03
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
本開示は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物の硬化生成物でコーティングされた一体型織エアバッグ、及び当該一体型織エアバッグをヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物でコーティングするためのプロセスに関する。ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物の硬化生成物でコーティングされた、得られた一体型織エアバッグは、標準的なより厚いコーティングでコーティングされた以前の一体型織エアバッグの特性を維持しながら、低減された平均乾燥コート重量のものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するコーティングを含む一体型織エアバッグであって、このコーティングが、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化エラストマー生成物であり、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、一体型織エアバッグ。
【請求項2】
ISO 3801に従って決定された、50~62g/m
2の前記平均乾燥コート重量、請求項1に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項3】
前記一体型織エアバッグが、本明細書の実施例に記載される試験方法を使用して、展開から6秒後に保持された60%を超える内圧保持特性も有する、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項4】
成分(e)が、シルセスキオキサン又はMQシリコーン樹脂から選択される非官能性シリコーン樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項5】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、式:
(R
4
3SiO
1/2)
u(SiO
4/2)
v
を有するMQシリコーン樹脂であり、
式中、R
4が、脂肪族不飽和を含まないC
1~C
10炭化水素基であり、uが、0.3~0.6であり、vが、0.4~0.7であり、u+vの値が、1.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項6】
前記一体型織エアバッグが、カーテンエアバッグである、請求項1~5のいずれか一項に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項7】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、アルケニル基及び/又はアルキニル基並びにSi-H結合を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項8】
コーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法であって、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分を混合することと、
硬化時に、前記一体型織エアバッグが、ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するように、前記一体型織エアバッグをコーティングすることと、を含み、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書の実施例に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、方法。
【請求項9】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、シルセスキオキサン又はMQシリコーン樹脂から選択される、請求項8に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項10】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、式:
(R
4
3SiO
1/2)
u(SiO
4/2)
v
を有するMQシリコーン樹脂であり、
式中、R
4が、脂肪族不飽和を含まないC
1~C
10炭化水素基であり、uが、0.3~0.6であり、vが、0.4~0.7であり、u+vの値が、1.0である、請求項8又は9に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項11】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、アルケニル基及び/又はアルキニル基並びにSi-H結合を含まない、請求項8、9、又は10に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項12】
接着促進剤(f)が、典型的には、前記組成物の約0.3~6重量%の(f)(i)、(ii)、及び(iii)の累積量で、前記組成物中に存在する、請求項8、9、10、又は11に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項13】
テキスタイルが、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラによるコーティング、ナイフオーバーエアによるコーティング、パディング、浸漬、及びスクリーン印刷によってコーティングされる、請求項8、9、10、11、又は12のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物で前記テキスタイルをコーティングする、方法。
【請求項14】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の使用であって、組成物が、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含み、
ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するコーティングされた一体型織エアバッグの生成において、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、使用。
【請求項15】
前記一体型織エアバッグが、本明細書に記載される方法に従って、展開から6秒後に保持された60%を超える内圧保持特性も有する、請求項14に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物の硬化生成物でコーティングされた一体型織エアバッグ、及び当該一体型織エアバッグをヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物でコーティングするためのプロセスに関する。ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴムコーティング組成物の硬化生成物でコーティングされた、得られた一体型織エアバッグは、標準的なより厚いコーティングでコーティングされた以前の一体型織エアバッグの特性を維持しながら、低減された平均乾燥コート重量のものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグは、概して、テキスタイルバッグ(クッションと呼ばれることもある)、センサ、及び膨張手段からなる。センサが衝突を検出する場合、インフレータは、エアバッグの効果的な即時の膨張を引き起こす。事故の場合には、車両内のセンサが異常な減速を測定し、インフレータを引き起こす。充填物からの膨張ガスは、導管を通って移動し、エアバッグを充填し、エアバッグは、典型的にはガスの放出による車の内部との有害な衝撃から運転手及び乗員を保護するために、運転手及び乗客の前方で即座に膨張する。エアバッグ及び/又はエアバッグ布地は、合成繊維、例えば、ナイロン-6,6などのポリアミド、又はポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルで作製された織布又はニット布地から作製され得る。それらは、十分な機械的強度を提供するためにコーティングされ、次いで一緒に縫製された平坦な布地片から作製され得るか、又は一体的に織布シームで一体に織り上げられ得る(一般に、「一体型織」と呼ばれる)。縫製された平坦な布地エアバッグは、一般に、エアバッグの内側でコーティングされた布地表面と共に組み立てられる。一体型織エアバッグは、エアバッグの外側にコーティングされ、展開後にガス圧をより良好に保持することができ、したがって、衝突などの後により長い期間膨張したままであるように設計されたエアバッグ、例えば、サイドカーテンエアバッグに使用される傾向がある。
【0003】
様々なエアバッグが、膨張式安全拘束装置として利用されており、衝突状況において、最も顕著には車両において膨張し展開するように設計されている。今日、衝突の際に乗員に安全を提供する手段として、車両内にいくつかのエアバッグを有することが一般に義務付けられている。それらとしては、フロントエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、サイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグ、胸部エアバッグ、及び/又は膝部エアバッグが挙げられる。典型的には、エアバッグは、通常の車両操作中に見えないように車両トリム内に隠される。例えば、フロントエアバッグは、車の運転席側のステアリングホイール及び車の助手席側のダッシュボードに設置され得る。それらは、特に車両の前部又は後部との衝突時に、衝撃点でクッションとして作用するように提供される。それらは、比較的高い空気透過性を示し、膨張したエアバッグが最初の衝撃後に急速に収縮することを可能にする。典型的には、これらのエアバッグは、互いに縫い合わされた平坦な布地片である。
【0004】
サイドカーテンエアバッグがますます利用されており、これらは、ドア及び窓の上のヘッドライナ内に取り付けられることが最も多く、車両乗員を側面衝突及びその結果生じる転覆事故(車両がその側面に転倒するか、上下逆になるか、又は2回以上反転する)から保護するために、天井の近傍からサイドウィンドウに沿って展開する。しかしながら、サイドカーテンエアバッグは、主に、長い持続時間にわたってそれらの膨張状態を保持する(例えば、高圧膨張の5秒後に初期圧力の少なくとも50%の保持を示す)ことによって、転覆衝突中に乗員を保護するように設計されており、一般に、自動車のサイドウィンドウに沿ってルーフライン内に格納されたパッキング容器から展開する(したがって、後側及び前側のみを有する)。したがって、サイドカーテンエアバッグは、クッション効果を提供するだけでなく、割れたガラス及び他の破片からの保護も提供する。したがって、上記のように、サイドカーテンエアバッグは、衝突から生じる転覆期間の終わりまでの数秒間膨張したままであることが必要不可欠である、すなわち、それらは、潜在的な転覆全体のより長い期間にわたって、大量のガス並びに高いガス圧力を保持する必要がある。縫製又はシールされた織ブランクを含むサイドカーテンエアバッグ布地は、特に継ぎ目及びその周りで潜在的に高いガス漏れを被り、したがってこれを達成するために、それらは、非常に大量のシリコーンシーリング材料でコーティングされる。
【0005】
一体型織タイプのエアバッグは、平坦な布地で縫製されたエアバッグと同程度の漏れを被る傾向がなく、したがって、サイドカーテンエアバッグに必要な低い透過性(したがって、より長いガス漏れ時間)を提供するために、シリコーンシーラントコーティングと組み合わせてサイドカーテンエアバッグに現在通常使用されている。一体型織(one-piece woven、OPW)タイプのエアバッグの使用は、織継ぎ目を有する複雑なサイドカーテンエアバッグ構造が、パターン及び設計を作成する際に大きな可撓性を伴って製造されることを可能にする。例えば、側方衝突によって活性化されるサイドカーテンエアバッグは、それらが取り付けられる特定の車の内部輪郭に従って成形される。このようなエアバッグの製造方法並びにそれらの形状及び構造は、製織段階で作成される。その結果、その後の縫製操作が不要となる。転覆状況において乗員を効果的に保護するために、OPWサイドカーテンエアバッグは、数秒間膨張したままでなければならない。しかしながら、一体型織(OPW)タイプのエアバッグであっても、これを達成するためには、一般に、65g/m2以上の平均乾燥コート重量を有するシリコーンコーティングを必要とする。
【0006】
シリコーンコーティングは、空気漏れを防止するように設計されているだけでなく、エアバッグを可撓性に保ち、温度変動、老化、及び摩耗に対して耐性に保つようにも設計されている。それらは、例えば、衝突が展開を引き起こす前に、エアバッグが長期間未使用のままであり得るため、そのような特性を必要とする。これには、エアバッグが固着するのを防ぎ、長年経った後であっても円滑な展開を確保するために、シリコーンコーティングが経時的に非常に安定している必要がある。更に、インフレータが、通常、膨張中に非常に高温のガスを放出するように設計されており、それらは、良好な熱安定性を必要とし、そうでなければ乗員に火傷を引き起こし得、コーティングがコートされている布地が乗員に燃え移る可能性を防止又は少なくとも著しく低減する。残念ながら、シリコーンエアバッグコーティングは、低い透過特性のために、低い付加コーティング重量、すなわち、標的エアバッグ布地表面上の前述の65g/m2未満では効果がないことが証明されている。更に、伝統的に利用されているシリコーンエアバッグコーティングは、優れた耐久性、老化、及び加工性の利点を提供するが、それらはまた、非常に厚いコーティングを利用しなければ、高圧膨張に容易に耐えられない非常に低い引張強度及び破断点伸び特性を示す傾向がある。
【0007】
また、一体型織エアバッグを使用することによって、個々の布地パネルの表側及び裏側の両方にコーティングする可能性が排除された。したがって、このような物品の外側パネル(すなわち、前部)のみに比較的薄いコーティング層を形成する必要性がより大きく存在し、このことは、このような重いコーティングなしでは、エアバッグがあまりにも急速に収縮し、したがって転覆衝突中に適切に機能しない可能性が高いことを当業界に理解させている。これらの重いコーティングは、エアバッグの全体的な製造に多大なコストを加える。しかしながら、カーテンエアバッグの軽量化及び低コスト化を目的として、従来から既知の織布コーティング用硬化性シリコーンゴム組成物を使用して、織布に塗布される硬化性シリコーンゴム組成物のコーティング量を低減させる場合、エアバッグの膨張持続時間が過度に短くなるという問題が存在する。
【0008】
したがって、必要とされるシリコーンコーティングの量の低減に起因して、製造者の所有の全体的な総コストを減少させることを可能にするために、展開時に適切に機能するために必要な老化、湿度、及び透過特性を失うことなく、より安価な(すなわち、より低い平均乾燥コート重量の)シリコーンエアバッグコーティングを有するシリコーンエアバッグコーティングを使用し、一方で、既存の材料と同様に、十分に長い膨張時間を持続する能力を有し、エアバッグが衝撃の持続時間を通して乗員を保護することを可能にする、一体型織エアバッグを製造する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書では、ISO 3801に従って試験された45~62g/m2の平均乾燥コート重量を有するコーティングを含む一体型織エアバッグであって、このコーティングが、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化エラストマー生成物であり、
当該コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率が、
本明細書に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、一体型織エアバッグが提供される。
【0010】
本明細書の上に記載されたコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法であって、組成物が、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分を混合することと、
硬化時に、当該一体型織エアバッグが、ISO 3801に従って決定された45~62g/m2の平均乾燥コート重量を有するように、一体型織エアバッグをコーティングすることと、を含み、
当該コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率が、
本明細書の実施例に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、方法も提供される。
【0011】
好ましくは、上記の各場合において、当該一体型織エアバッグは、コーティングされた場合に、Microsys Technologies Inc.から市販されているエアバッグが固定される所定の体積のガス又はガスのブレンドを予備的に保持することが可能である冷ガス膨張システムを使用して決定される展開から6秒後に保持される60%を超える内圧保持特性も有する。試験開始時に、保持された圧力が保持リザーバからバッグ内に解放される。圧力解放後に測定された最高圧力応答は、エアバッグ内で達成される「ピーク」圧力と考えられる。試験開始(POsec)から目標試験持続時間までに観察される圧力の差は、通常「圧力保持」と呼ばれ、標準的な試験持続時間として6秒(P6sec)が使用される。
【0012】
本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化生成物で、本明細書で上に記載されたようにコーティングされた一体型織エアバッグは、ISO 3801に従って決定された45~62g/m2、50~62g/m2の平均乾燥コート重量を有する一体型織エアバッグにおいて、重量及びコスト低減の目的で織布に塗布される組成物のコーティング量が低減される場合でも、膨張した一体型織代替的にエアバッグの膨張時間を長く維持することが可能である。更に、液状硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物でコーティングされた一体型織エアバッグは、カーテンエアバッグの生成に優れている。当該組成物の硬化生成物の損失正接(tanδ)値が、成分(e)を充填していない類似体の損失正接(tanδ)値より大きいという事実は、それがより堅牢であり、したがって、これがエアバッグの展開時に受ける損傷の量を低減し得ることを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
コーティングを作製するために利用される組成物は、以下の成分を含む。
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分(a)は、25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有する1つ以上のオルガノポリシロキサンポリマーであり、不飽和基は、アルケニル基又はアルキニル基から選択される。成分(a)の各オルガノポリシロキサンは、式(I)の複数のシロキシ単位を含む:
R’aSiO(4-a)/2(I)
下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0014】
シロキシ単位は、R’が上記の通りであるか、代替的にアルキル基、典型的にはメチル基である場合、略記(省略)命名法、すなわち「M」、「D」、「T」、及び「Q」によって記載され得る。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、R’3SiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、R’2SiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、R’1SiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。成分(a)のオルガノポリシロキサンポリマーは、実質的に直鎖状であるが、分子内に(先に記載された)T単位の存在に起因してある割合の分岐を含有し得、したがって構造(I)のaの平均値は、約2である。
【0015】
成分(a)の不飽和基は、オルガノポリシロキサンポリマーの末端若しくはペンダントのいずれかに、又は両方の位置に位置し得る。成分(a)の不飽和基は、上記のようにアルケニル基又はアルキニル基であり得る。各アルケニル基は、存在する場合、例えば、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、代替的に2~10個、代替的に2~6個の炭素原子を含み得る。存在する場合、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、及びヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。各アルキニル基は、存在する場合、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、2代替的に~10個、代替的に2~6個の炭素原子を有し得る。アルキニル基の例は、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。成分(a)の不飽和基の好ましい例としては、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリル、及び5-ヘキセニルが挙げられる。
【0016】
式(I)中、上記の不飽和基以外の各R’は、独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、置換脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族基、又は置換芳香族基から選択される。各脂肪族ヒドロカルビル基は、基1つ当たり1~20個の炭素、代替的に基1つ当たり1~15個の炭素、代替的に基1つ当たり1~12個の炭素、代替的に基1つ当たり1~10個の炭素、代替的に基1つ当たり1~6個の炭素を有するアルキル基、又はシクロヘキシルなどのシクロアルキル基によって例示され得るが、これらに限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基、代替的にメチル基及びエチル基を挙げることができる。置換脂肪族ヒドロカルビル基は、好ましくは、非ハロゲン化置換アルキル基である。
【0017】
脂肪族非ハロゲン化オルガニル基は、アミド基、イミド基等の好適な窒素含有基等の置換基を有する上記のアルキル基;ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基によって例示されるが、これらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられ得る。芳香族基又は置換芳香族基の例は、フェニル基及び上記の置換基を有する置換フェニル基である。
【0018】
成分(a)は、例えば、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はこれらのコポリマー(アルキルに言及する場合、任意の好適なアルキル基、代替的に2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)から選択され得るが、ただし、各ポリマーは、オルガノポリシロキサンポリマー(a)の粘度を有し、それは、25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)であるべきである。
【0019】
したがって、成分(a)は、例えば、以下のものであってもよい:
ジアルキルアルケニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、ジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマー、ジアルキルビニル末端メチルフェニルポリシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、又はトリメチル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン。
【0020】
各場合において、成分(a)オルガノポリシロキサンポリマー(a)の粘度は、25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)、代替的に25℃で1000~150,000mPa.s、代替的に1000mPa.s~125,000mPa.s、代替的に25℃で1000mPa.s~70,000mPa.sであるべきである。別段の指示がない限り、与えられた全ての粘度測定値は、粘度-剪断速度曲線が速度非依存性である限りにおいて、低剪断速度で取られた値をゼロに外挿すること(又は単に値の平均を取ること)によって得られるゼロ剪断粘度(ηo)値であり、これは、好適で適切に動作するレオメータが使用されるという条件で、試験方法に依存しない値である。例えば、25℃での物質のゼロ剪断粘度は、トランスデューサのトルク限界を超えずに、0.01秒-1、0.1秒-1、及び1.0秒-1などの一連の低剪断速度で適切なトルク信号を生成するのに好適な直径のコーン及びプレート固定具を装備したAnton-Parr MCR-301レオメータ又はTA Instruments AR-2000レオメータなどの市販のレオメータを使用することによって得られ得る。代替的に、粘度測定値は、TA Instrumentsから市販されているARES-G2回転レオメータを使用して、25mmのコーン及びプレート上で0.1~10秒-1の定常速度掃引を使用して得られ得る。ゼロ剪断プラトー領域が、レオメータ又は粘度計に利用可能な剪断速度で観察され得ない場合、本発明者らは、25℃で0.1秒-1の標準剪断速度で測定された粘度を報告する。
【0021】
典型的には、ポリマーのアルケニル及び/又はアルキニル含有量、例えばビニル含有量は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含有する各オルガノポリシロキサンについて成分(a)の0.01~3重量%である、代替的に成分(a)の0.01~2.5重量%、代替的に0.001~2.0重量%、代替的に1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を含有する各オルガノポリシロキサンの成分(a)の0.01~1.5重量%であり、この不飽和基は、成分(a)の1分子当たりアルケニル基又はアルキニル基から選択される。成分(a)のアルケニル/アルキニル含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。
【0022】
成分(a)は、組成物の40重量%~約80重量%、代替的に組成物の45~80重量%、代替的に組成物の50~80重量%の量で組成物中に存在し得る。典型的には、成分(a)は、100重量%と組成物の他の成分/構成成分の累積重量%との差である量で存在する。
【0023】
成分(b)
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分(b)は、ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤である。微細形態のシリカが好ましい。補強性充填剤(b)、例えば、比較的高い表面積、典型的には、少なくとも50m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)を有するシリカ充填剤が利用される。例えば、50~450m2/g、代替的に50~400m2/g m2/g、代替的に50~300m2/g、代替的に100~300m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する充填剤(例えば、ヒュームドシリカ)が典型的に使用される。
【0024】
典型的には、補強性充填剤(b)は、本来親水性(例えば、未処理)シリカ充填剤であり、したがって、それらを疎水性にするためには、処理剤で処理される。これらの表面改質された補強性充填剤(b)は凝集せず、表面処理によって充填剤がオルガノポリシロキサンポリマー(a)によって容易に湿潤することから、以下に記載されるオルガノポリシロキサンポリマー(a)に均質に組み込まれ得る。
【0025】
典型的には、補強性充填剤(b)は、加工中のオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防止するために適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物で表面処理され得る。例えば、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザン、短鎖シロキサンジオール、又は脂肪酸若しくはステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステルを使用して、充填剤を疎水性にすることができ、したがって、取り扱いをより容易にし、他の成分との均質な混合物を得ることができる。具体的な例としては、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチルシロキサン、テトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、シラノール末端MePhシロキサン、各分子中にジオルガノシロキサンの平均2~20個の繰り返し単位を含有する液状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンが挙げられるが、これらに限定されない。加工助剤としてのシリカ処理剤と共に、少量の水を添加してもよい。
【0026】
補強性シリカ充填剤(b)は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物中に導入する前に前処理され得るか、又は充填剤が完全に処理されるまで室温以上でこれらの成分を一緒にブレンドすることによってインサイチュで(すなわち、本明細書のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で)処理され得る。典型的には、未処理の補強性充填剤(b)は、オルガノポリシロキサンポリマー(a)の存在下、インサイチュで、処理剤で処理され、それによって、後で他の成分と混合され得るシリコーンゴムベース材料の調製がもたらされる。
【0027】
補強性充填剤(b)は、組成物の1.0~50重量%、代替的に組成物の1~30重量%、代替的に組成物の5.0~25重量%の量で組成物中に存在する。
【0028】
成分(c)
成分(c)は、架橋剤として機能し、1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物の形態で提供される。成分(c)は、通常、水素原子が成分(a)の不飽和基(アルケニル基及び/若しくはアルキニル基)、並びに/又は組成物の残部と反応して、ネットワーク構造を形成し、それによって組成物を硬化させ得るように、3個以上のケイ素結合水素原子を含有する。代替的に、成分(c)の一部又は全部が、1分子当たり2個のケイ素結合水素原子を有し得る。しかしながら、このような分子が、唯一の架橋剤として使用されるのは、例えば、ポリマー(a)が1分子当たり2つを超える不飽和基を有する場合のみであり、この場合、硬化プロセス中にネットワークが生成され得る。そうでなければ、成分(c)が1分子当たり2個のケイ素結合水素原子を有する分子を部分的に含む場合、当該分子は、鎖延長剤として機能し得る。
【0029】
1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物(c)の分子構成は、特に制限されず、シラン、又は直鎖状、分岐状(T単位の存在を通していくつかの分岐を有する直鎖)、若しくは環状ポリマー、又はシリコーン樹脂ベースであり得る。
【0030】
成分(c)の分子量は特に制限されないが、粘度は、任意の好適な方式で測定され得、上で考察された方法を使用して、ゼロ剪断粘度(ηo)値の観点から特定される。
【0031】
成分(c)において使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基等のアリール基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基によって例示され得、好ましくは1~6個の炭素を有するアルキル基、特にメチル、エチル、若しくはプロピル基、又はフェニル基であり得る。好ましくは、成分(c)において使用されるケイ素結合有機基は、アルキル基、代替的にメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0032】
1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物(c)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e)(CH3)2HSiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f)(CH3)2HSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g)1分子当たり3~10個のケイ素原子を有するメチルハイドロジェンシロキサン環状ホモポリマー、
代替的に、架橋剤である成分(c)は、充填剤、例えば、上記のうちの1つを用いて処理されたシリカ、及びこれらの混合物であり得る。
【0033】
一実施形態では、成分(c)は、両分子末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーから選択される。
【0034】
架橋剤(c)は、一般に、成分(c)中のケイ素結合水素原子と、組成物中のアルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される総不飽和基とのモル比が、0.5:1~20:1となるように、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物中に存在する。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合、加熱された場合に、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。
【0035】
成分(c)のケイ素結合水素原子と、オルガノポリシロキサン(a)中のアルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される総不飽和基とのモル比は、好ましくは少なくとも1:1であり、最大8:1又は10:1であり得る。最も好ましくは、Si-H基と、脂肪族不飽和基とのモル比は、1.1:1~5:1の範囲である。
【0036】
成分(c)のケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定される。本発明において、ケイ素結合水素とアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルとの比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。
【0037】
典型的には、成分(a)及び組成物の残部中の不飽和基の数、並びに成分(c)中のSi-H基の数に応じて、成分(c)は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.1~10重量%、代替的にヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.1~7.5重量%、代替的に0.25~7.5重量%、更に代替的にヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.25重量%~5重量%、代替的にヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.25重量%~5重量%の量で存在する。
【0038】
(d)ヒドロシリル化触媒
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分(d)は、白金族金属若しくはその化合物を含むか、又はそれらからなるヒドロシリル化触媒である。それらは、通常、白金族の金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)、又はこのような金属のうちの1つ以上の化合物の触媒から選択される。代替的に、白金及びロジウム化合物は、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルに起因して好ましく、白金化合物が、最も好ましい。ヒドロシリル化(又は付加)反応において、本明細書の成分(d)などのヒドロシリル化触媒は、不飽和基、通常はアルケニル基、例えばビニルとSi-H基との間の反応に触媒作用を及ぼす。
【0039】
成分(d)のヒドロシリル化触媒は、白金族金属;担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素などの金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭上に堆積された白金族金属;又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。好ましくは、白金族金属は、白金である。
【0040】
好ましい成分(d)のヒドロシリル化触媒の例は、白金系触媒、例えば白金黒、酸化白金(Adams触媒)、様々な固体支持体上の白金、塩化白金酸、例えばヘキサクロロ白金酸(Pt酸化状態IV)(Speier触媒)、アルコール、例えばイソオクタノール又はアミルアルコールの溶液中の塩化白金酸(Lamoreaux触媒)、並びに塩化白金酸とエチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、例えばテトラ-ビニル-テトラメチルシクロテトラシロキサン-白金錯体(Ashby触媒)である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl2.(オレフィン)2及びH(PtCl3.オレフィン)の白金-オレフィン錯体を挙げることができ、この文脈では、エチレン、プロピレン、ブテンの異性体及びオクテンの異性体など、2~8個の炭素原子を有するアルケン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなど、5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtCl2C3H6)2の白金-シクロプロパン錯体、ヘキサクロロ白金酸とアルコール、エーテル、及びアルデヒド、若しくはこれらの混合物との反応生成物、又はエタノール性溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下におけるヘキサクロロ白金酸及び/若しくはその変換生成物とメチルビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル含有シロキサンとの反応生成物である、式(PtCl2C3H6)2の白金-シクロプロパン錯体である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(Ph3P)2PtCl2、及び白金とsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのビニルシロキサンとの錯体(Karstedt触媒)も使用され得る。
【0041】
したがって、好適な成分(d)の白金系触媒の具体例としては、
(i)塩化白金酸の、米国特許第3,419,593号に記載されている、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)(COD)Pt(SiMeCl2)2(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、及び/又は
(v)典型的にはビニルシロキサンポリマー中に、典型的には約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒、が挙げられる。トルエンなどの有機溶媒のような溶媒は、歴史的に代替物として使用されてきたが、ビニルシロキサンポリマーの使用がはるかに好ましい選択である。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。好ましい一実施形態では、成分(d)は、白金の配位化合物から選択され得る。一実施形態では、ヘキサクロロ白金酸及びビニル含有シロキサンとのその変換生成物、Karstedtの触媒、並びにSpeier触媒が好ましい。
【0042】
ヒドロシリル化触媒の触媒量は、概ね、組成物の重量に基づいて百万部当たりの白金族金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、代替的に0.01~5000ppm、代替的に0.01~3,000ppm、代替的に0.01~1,000ppmである。特定の実施形態では、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、代替的に0.01~750ppm、代替的に0.01~500ppm、代替的に0.01~100ppmの範囲に及んでもよい。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、例えば、ポリマー又は溶媒中において触媒が提供される形態/濃度に応じて、存在する成分(d)の量は、組成物の0.001~3.0重量%、代替的に組成物の0.001~1.5重量%、代替的にヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.01~1.5重量%、代替的に0.01~0.1.0重量%の範囲内である。
【0043】
(e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物中の成分(e)の1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物は、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される。
【0044】
MDTQ表記を使用する成分(e)(i)のこのような樹脂は、示されるように、Qタイプ(SiO4/2)シロキサン単位、Tタイプ(R2
1SiO3/2)シロキサン単位、Dタイプ(R2
1SiO3/2)シロキサン単位、及びR2
3SiO1/2(M)シロキサン単位を含む。これらの樹脂は、2つの広いカテゴリー:シルセスキオキサン及びシリケートに分類され得る。シルセスキオキサン又はT樹脂は、主にT単位からなり、アルコキシシラン、クロロシラン、又はこれらの混合物の加水分解及び縮合によって合成され得る。シリケート又はMQ樹脂は、主にM単位及びQ単位からなり、アルコキシシラン及びクロロシランの加水分解及び縮合を通して合成され得る。代替的に、MQ樹脂は、酸の存在下で水性アルカリシリケートの重合、続いてトリオルガノアルコキシシラン、トリオルガノクロロシラン、ヘキサオルガノジシロキサン、又はこれらの混合物との反応を通して合成され得る。
【0045】
典型的には、成分(e)(i)のMQ樹脂は、SiO4/2(Q)シロキサン単位及びR2
3SiO1/2(M)シロキサン単を含み、式中、各2は、同じであっても、又は異なっていてもよく、1~20個の炭素原子、代替的に1~12個の炭素原子を有する炭化水素基から選択される一価の基を示す。好適なR2基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基及びオクタデシル基などのアルキル基;シクロヘキシルなどの脂環式基、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、α-メチルスチリル、及び2-フェニルエチルなどのアリール基が挙げられ、代替的に、R2基は、メチル基、エチル基、又はフェニル基であり、例えば、好ましい非反応性R2
3SiO1/2(M)シロキサン単位の例としては、Me3SiO1/2、PhMe2SiO1/2、及びPh2MeSiO1/2が挙げられ、本明細書の下のMeは、メチルを示し、本明細書の下のPhは、フェニルを示す。Tシリコーン樹脂は、代替的に、シルセスキオキサンと呼ばれ得る。シリコーン樹脂は、単一のシリコーン樹脂、又は各々が上記のような2つ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であり得る。
【0046】
先に特定したように、(e)(i)のシリコーン樹脂は、実質的に非官能性である。実質的に非官能性とは、(e)(i)のシリコーン樹脂が、硬化プロセスに化学的に関与し得る化学的に利用可能な基を有さないことを意味する。したがって、特に、(e)(i)の実質的に非官能性のシリコーン樹脂は、ケイ素結合水素基及びケイ素結合アルケニル基を含まない。最も好ましい実施形態では、(e)(i)の樹脂は、Si1モル当たり0.035モル未満のヒドロキシルを含有し、ケイ素結合水素基及びケイ素結合アルケニル基を含まない。これは、ASTM E168に従って赤外線分析によって確認され得る。(e)(i)のシリコーン樹脂はまた、ケイ素(Si)1モル当たり0.06モル未満のヒドロキシル、代替的にSi1モル当たり0.05モル未満のヒドロキシル、代替的にSi1モル当たり0.04モル未満のヒドロキシル、代替的にSi1モル当たり0.035モル未満のヒドロキシルを含有する、これらは、29Si NMRによって定量化される。存在する任意の残留シラノールは、立体的に近づきにくく、その後の反応に関与しない、その結果樹脂は、配合物中の他の成分又は基材表面に共有結合することができない。
【0047】
(e)(i)の非官能性シリコーン樹脂は、主に、R2
3SiO1/2(M)シロキサン単位及びSiO4/2(Q)単位からなる。加えて、シリコーン樹脂は、残留OZを含有し得、ここで、OZは、水素又はアルキル基を表し得る。OZは、シリコーンMQ樹脂の合成後にQ成分上に残り、OZ含有量がSi1モル当たりの上記ヒドロキシル要件を満たすという条件で、MQ樹脂を生成するための反応中の縮合が不完全であることを示す。残留OZは、MQ樹脂を作製するために利用されるプロセス及び反応に固有のものである。非官能性シリコーンMQ樹脂はまた、残留OZを更に最小化するために、後続のシリル化反応を受けてもよい。
【0048】
シリコーン樹脂(e)(i)は、典型的には炭化水素又はシリコーン溶媒中で供給され、溶媒を含まないシリコーン樹脂は、典型的には固体であるが、本明細書では好ましくは、シリコーン樹脂(e)(i)は、非官能性ポリジメチルシロキサン、例えば成分(e)(ii)、又は例えば本明細書の試料成分(a)などの1分子当たり2つ以上のアルケニル基を含むポリジメチルシロキサンなどのシリコーン溶媒中で供給される。
【0049】
例えば、任意の好適なMQ樹脂は、成分(e)(i)として利用され得る。Mシロキサン単位と、Qシロキサン単位とのモル比は、0.5:1~1.2:1、代替的に0.6:1~1.1:1、代替的に0.8:1~1.1:1、代替的に0.9:1~1.1:1の値を有する。一実施形態では、MQ樹脂(e)(i)は、M単位がSiO4/2シロキサン単位(すなわち、Q単位)に結合しており、Q単位の各々が、少なくとも1つの他のSiO4/2シロキサン単位に結合している樹脂部分を含む。M単位とQ単位とのモル比は、0.5:1~1.2:1、代替的に0.6:1~1.1:1、代替的に0.8:1~1.1:1、代替的に0.9:1~1.1:1である。成分(e)(i)として好適なこのようなMQ樹脂は、2000~50,000g/mol、代替的に3,000~30,000g/molの数平均分子量(Mn)を有し得る。一実施形態では、シリコーン樹脂は、モル分率の観点から、次式を有するMQシリコーン樹脂として記載され得る。
(R4
3SiO1/2)u(SiO4/2)v
式中、R4は、脂肪族不飽和を含まないC1~C10炭化水素基であり、uは、0.3~0.6、代替的に0.37~0.52であり、vは、0.4~0.7、代替的に0.48~0.63であり、u+vの値は、1.0である。
【0050】
シリコーン樹脂の調製方法は、当技術分野で周知である。例えば、それらは、シリカヒドロゾル封鎖プロセスによって生成された樹脂コポリマーを、アルキル及び/又はアルケニル含有末端ブロッキング剤で処理することによって作製され得る。これは、好ましくは、酸性条件下で、シリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン、及びそれらの組み合わせと反応させることと、次いで、ケイ素(Si)1モル当たり0.07~0.2モルのヒドロキシルを含むM(R3SiO1/2)単位及びQ(SiO4/2)単位を有するコポリマーを回収することとを含む。コポリマーを、飽和有機基を含む末端ブロッキング剤と更に反応させて、Si1モル当たり0.06モル未満のヒドロキシルを達成し得る。好適な末端ブロッキング剤としては、シラザン、シロキサン、シラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
(e)(ii)のトリアルキル末端ポリジオルガノシロキサンは、任意の好適な粘度のものであり得、例えば、25℃で1000~100,000mPa.s、代替的に25℃で5000~80,000mPa.s、代替的に25℃で10,000~70,000mPa.sの粘度を有し得る。各アルキル末端基は、同じであっても、又は異なっていてもよく、1~20個の炭素、代替的に1~15個の炭素、代替的に1~12個の炭素、代替的に1~10個の炭素を有する。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基、代替的にメチル基及びエチル基を挙げることができる。好ましくは、それらはメチル基である。(e)(ii)のトリアルキル末端ポリジオルガノシロキサンの有機基は、成分(a)に関して上記の不飽和基を除いてR’と同じである、すなわち、脂肪族ヒドロカルビル基、置換脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族基、又は置換芳香族基から選択される。各脂肪族ヒドロカルビル基は、基1個当たり1~20個の炭素、代替的に基1個当たり1~15個の炭素、代替的に基1個当たり1~12個の炭素、代替的に基1個当たり1~10個の炭素、代替的に基1個当たり1~6個の炭素を有するアルキル基、又はシクロヘキシル等のシクロアルキル基によって例示され得るが、これらに限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基、代替的にメチル基及びエチル基を挙げることができる。置換脂肪族ヒドロカルビル基は、好ましくは、非ハロゲン化置換アルキル基である。先に示されたように、別段の指示がない限り、与えられた全ての粘度測定値は、先に記載されたように測定されたゼロ剪断粘度(ηo)値である。
【0052】
成分(e)は、組成物中に1~60重量%、代替的に1~40重量%の量で存在し得、好ましくは、(e)(i)の場合、MQ樹脂の形態である。
【0053】
成分(a)、(c)、(e)(i)及び(e)(ii)は、常に、異なる重合度、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物からなる。異なるタイプの平均ポリマー分子量が存在し、それらは異なる実験で測定することができる。2つの最重要のものは、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)である。シリコーンポリマー及び/又は樹脂のMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel permeation chromatography、GPC)によって、ポリスチレン較正標準を使用して決定され得る。この技術は標準的であり、Mw、Mn、及び多分散指数(PI)が得られる。重合度(degree of polymerisation、DP)=Mn/Muであり、式中、MnはGPC測定からの数平均分子量であり、Muはモノマー単位の分子量である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによりポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度が高くなる。シリコーン樹脂は、典型的には、2,000~50,000ダルトン、代替的に3,000~40,000、代替的に3,000~30,000、代替的に4,000~30,000、代替的に5,000~25,000の重量平均分子量(Mw)を有し、この分子量は、光散乱検出器、屈折率検出器、及び/又は粘度検出器などのトリプル検出器システム、並びにポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィによって決定される。
【0054】
(f)接着促進剤
一体型織エアバッグ用のコーティングを調製するために使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物は、接着促進剤(f)を追加的に含む。接着促進剤(f)は、エアバッグ上の硬化コーティングの物理特性に有害ではない任意の好適な接着促進剤であり得る。例えば、1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート、又はメタクリレート。実施例としては、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘプタンジオールジアクリレート、オクタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、及び又はウンデカンジオールジアクリレートなどの、C4~20アルカンジオールジアクリレートなどの、ジアクリレートが挙げられてもよい。モノアクリレートの実施例としては、メタクリロキシメチル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-ジメチルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシイソブチル-トリメトキシシラン、又は類似のメタクリルオキシ置換アルコキシシランと、3-アクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-ジメチル-メトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、又は類似のアクリルオキシ置換アルキル含有アルコキシシランと、などの、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシランが挙げられる。
【0055】
接着促進剤として使用され得るエポキシ含有アルコキシシランの実施例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられてもよい。
【0056】
接着促進剤(f)としては、代替的に、メタクリルオキシメチル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-ジメチルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-メチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシイソブチル-トリメトキシシラン、又は類似のメタクリルオキシ置換アルコキシシラン;3-アクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-ジメチル-メトキシシラン、3-アクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、又は類似のアクリルオキシ置換アルキル含有アルコキシシランと、などの、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシランが挙げられ得る。
【0057】
接着促進剤(f)としては、代替的に、
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤が挙げられ得る。
【0058】
このような場合、(f)(i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランであり得、(f)(ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基又はアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーは、例えば、両分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルポリシロキサン、又は両分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサン単位のコポリマーであり得る。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン分子の混合物であり得、そのいくつかは分子鎖両末端にシラノール末端基を有し、そのいくつかは、他の末端単位が例えばジメチルメトキシシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位又はジメチルビニルシロキシ単位であるジメチルヒドロキシシロキシ末端単位など、1つのシラノール基のみを有する。好ましくは、オリゴマーオルガノポリシロキサンの50重量%超、より好ましくは60~100%は、分子鎖両末端にシラノール末端基を有する分子を含む。
【0059】
オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%のビニル基を含有し、最大35又は40重量%のビニル基を含有し得る。最も好ましくは、オリゴマーオルガノポリシロキサンは、5~30重量%のビニル基を含有する。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは1000~10000の分子量を有する。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは0.1~300mPa・s、代替的に0.1~200mPa・s、代替的に1~100mPa・sの粘度を有する。(Brookfield DV 3T Rheometerを使用して、25℃で測定)。成分(f)の(ii)は、組成物の0.1~5重量%、代替的に組成物の0.1~3重量%、代替的に組成物の0.1~2重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0060】
接着促進剤の第3の部分(f)(iii)は、接着促進剤の他の成分、すなわち(f)(i)及び(ii)の反応に触媒作用を及ぼすために使用され得る有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒であり、それらの間の反応を活性化及び/又は加速するために使用される。縮合触媒は、ジルコネート、有機アルミニウムキレート、及び/又はジルコニウムキレートを含む有機金属触媒から選択され得る。
【0061】
ジルコネート系触媒は、一般式、すなわちZr[OR5]4による化合物を含み得、式中、各R5は、同じであっても、又は異なっていてもよく、1~20個の炭素原子、代替的に1~10個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状であり得る一価の、一級、二級、又は三級脂肪族炭化水素基を表す。任意に、ジルコネートは、部分不飽和基を含有してもよい。R5の好ましい実施例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、三級ブチル基及び分岐状二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。各R5が同じである場合、好ましくは、R5は、イソプロピル基、分岐状二級アルキル基又は三級アルキル基、特に三級ブチル基である。具体的な例としては、ジルコニウムテトラプロピレート及びジルコニウムテトラブチレート、テトラ-イソプロピルジルコネート、ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート(ジルコニウムAcAc4と呼ばれることもある)、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオルアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、又は配位子として使用されるβ-ジケトン(それらのアルキル置換及びフッ素置換された形態を含む)を有する類似のジルコニウム錯体が挙げられる。
【0062】
好適なアルミニウム系縮合触媒としては、Al(OC3H7)3、Al(OC3H7)2(C3COCH2COC12H25)、Al(OC3H7)2(OCOCH3)、及びAl(OC3H7)2(OCOC12H25)のうちの1つ以上が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0063】
成分(f)の(iii)は、組成物の0.1~5重量%、代替的に組成物の0.1~3重量%、代替的に組成物の0.1~2重量%の量で組成物中に存在し得る。接着促進剤(f)が(f)(i)、(ii)、及び(iii)の累積量であり、それを含む場合、それは、組成物の約0.3~6重量%、代替的に、組成物の0.3~4重量%を含み得る。
【0064】
接着促進剤は、得られたコーティングと織布を含む布地基材との間に強い結合性能を提供する。
【0065】
追加の任意成分
追加の任意成分は、その意図された最終用途に応じて、前述の液状シリコーンゴム組成物中に存在し得る。このような任意成分の例としては、硬化抑制剤、熱伝動性フィラー、ポットライフ延長剤、難燃剤、潤滑剤、非補強性充填剤、顔料及び/又は着色剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪添加剤、可塑剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
本明細書の上に記載されたヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物を、付加/ヒドロシリル化反応を介して硬化させる場合、抑制剤を利用して、組成物の硬化を抑制し得る。これらの抑制剤は、触媒の活性を遅延させる又は抑制することによって、貯蔵中の早期硬化を防止するために、かつ/又はヒドロシリル化硬化組成物の作用時間若しくはポットライフをより長くするために利用される。ヒドロシリル化触媒(d)の抑制剤、例えば、白金金属系触媒は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、ジブチルマレエートなどのマレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、テトラメチルテトラジニルシクロテトラシロキサンなどのオレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロパーオキシド、ニトリル、及びジアジリジンが挙げられ得る。米国特許第3,989,667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、そのうち、環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0067】
白金触媒(d)などのヒドロシリル化触媒の既知の抑制剤の一種としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレン系アルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0068】
アセチレンアルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-メチルブチノール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。一代替例では、抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、テトラメチルテトラジニルシクロテトラシロキサン、3-メチルブチノール及び/又はマレイン酸ジブチルのうちの1つ以上から選択される。
【0069】
存在する場合、場合によっては、触媒(d)の金属1モル当たり1モルの抑制剤と同程度に低濃度の抑制剤により、十分な貯蔵安定性及び硬化速度がもたらされる。他の場合では、触媒(d)の金属1モル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。本明細書の所与のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、日常的な実験によって容易に決定される。上記の混合物もまた使用され得る。選択された抑制剤が商業的に提供される/利用可能である濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、抑制剤は、典型的に、0.0001~10重量%、代替的に0.001~5%の抑制剤、代替的に組成物の0.0125~5重量%の量で存在する。
【0070】
トリアゾール等の可使時間延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲内で必須であるとはみなされない。したがって、液状硬化性シリコーンゴム組成物は、可使時間延長剤を含まなくてもよい。
【0071】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0072】
潤滑剤の例としては、テトラフルオロエチレン、樹脂粉末、黒鉛、フッ素化黒鉛、タルク、窒化ホウ素、フッ素オイル、シリコーンオイル、二硫化モリブデン、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。組成物中に存在する場合、難燃剤は、典型的には、組成物の0.1~5重量%の量で存在する。
【0073】
非補強性充填剤としては、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、及びカーボンブラック、タルク、ウォラストナイトが挙げられ得る。単独で又は上記に加えて使用され得る他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどの粘土、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、例えば水滑石、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチウム石が挙げられる。
【0074】
他の充填剤としては、酸化アルミニウム、かんらん石族、ざくろ石族、アルミノシリケート、環状シリケート、鎖状シリケート、及び層状シリケートからなる群からのシリケートが挙げられ得る。かんらん石族は、シリケート鉱物、例えばフォルステライト及びMg2SiO4を含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;Mg3Al2Si3O12;緑ざくろ石;及びCa2Al2Si3O12などの粉砕シリケート鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノシリケートは、ケイ線石;Al2SiO5;ムライト;3Al2O3.2SiO2;カイヤナイト;及びAl2SiO5などの粉砕シリケート鉱物を含むが、これらに限定されない。環状シリケートは、非補強性充填剤として利用され得、これらとしては、コージェライト及びAl3(Mg,Fe)2[Si4AlO18]などのシリケート鉱物が挙げられるが、これらに限定されない。鎖状シリケート族は、粉砕シリケート鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO3]を含むが、これらに限定されない。層状シリケートは、代わりに又は更に、非補強性充填剤として使用されてもよく、適切な群は、シリケート鉱物、例えば、雲母;K2Al14[Si6Al2O20](OH)4;葉蝋石;Al4[Si8O20](OH)4;タルク、Mg6[Si8O20](OH)4;蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al4[Si4O10](OH)8;及びバーミキュライトが挙げられるが、これらに限定されない。1つの代替例では、充填剤は、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウム、タルク、雲母、石英、及び酸化アルミニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0075】
顔料の実施例としては、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、酸化鉄、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物に利用され得る着色剤の例としては、顔料、バット染料、反応染料、酸性染料、クロム染料、分散染料、カチオン性染料、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書に記載される二元系湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、必要に応じて添加され得る1つ以上の顔料及び/又は着色剤を更に含み得る。顔料及び/又は着色剤は、有色、白色、黒色、金属効果、及び発光性、例えば、蛍光性及びリン光性であり得る。顔料は必要に応じて利用され、組成物を着色する。本明細書の組成物と適合性がある限り、任意の好適な顔料を利用してもよい。二元系湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物では、顔料及び/又は着色(非白色)充填剤、例えばカーボンブラックを触媒パッケージに用いて、エンドシーラント製品を着色してもよい。
【0077】
好適な白色顔料及び/又は着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、リトポン、酸化ジルコニウム、及び酸化アンチモンが挙げられる。
【0078】
好適な非白色無機顔料及び/又は着色剤としては、針鉄鉱、鱗鉄鉱、赤鉄鉱、マグヘマイト、及びマグネタイト黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄、及び赤酸化鉄などの酸化鉄顔料;青鉄顔料;酸化クロム顔料;カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウム辰砂などのカドミウム顔料;バナジン酸ビスマス及びバナジン酸モリブデン酸ビスマスなどのビスマス顔料;チタン酸コバルトグリーンなどの混合金属酸化物顔料;クロムイエロー、モリブデン酸レッド、及びモリブデン酸オレンジなどのクロメート顔料及びモリブデート顔料;ウルトラマリン顔料;酸化コバルト顔料;チタン酸ニッケルアンチモン;鉛クロム;カーボンブラック;ランプブラック、及び金属効果顔料、例えばアルミニウム、銅、酸化銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、及び黄銅が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
好適な有機非白色顔料及び/又は着色剤としては、フタロシアニン顔料、例えばフタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン;モノアリーリドイエロー、ジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、複素環式イエロー、DANオレンジ、キナクリドン顔料、例えばキナクリドンマゼンタ及びキナクリドンバイオレット;金属化アゾレッド及び非金属化アゾレッド及びその他のアゾ顔料を含む有機レッド、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、イソインドリノン、及びイソインドリン顔料、多環式顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンサントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、及びジケトピロロピロール顔料が挙げられる。
【0080】
典型的には、顔料及び/又は着色剤は、微粒子であるとき、10nm~50μmの範囲、好ましくは40nm~2μmの範囲の平均粒径を有する。顔料及び/又は着色剤は、存在する場合、触媒パッケージ組成物の2重量%から、代替的に3重量%から、代替的に5重量%~20重量%、代替的に触媒パッケージ組成物の15重量%まで、代替的に触媒パッケージ組成物の10重量%までの範囲で存在する。
【0081】
本発明の好ましい実施形態では、顔料及び染料は、成分(a)中に25:75~70:30の比率で分散されて構成される顔料マスターバッチの形態で使用される。
【0082】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物は、熱安定化ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物であり得る。熱安定剤の例としては、金属化合物、例えば、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、銅フタロシアニン、水酸化アルミニウム、ヒュームド二酸化チタン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸セリウム、セリウムジメチルポリシラノレート、及び銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、セリウム、ジルコニウム、チタンなどから選択される金属のアセチルアセトン塩が挙げられ得る。熱安定剤の他の例としては、サリシロイルアミノトリアゾール、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルヒドロシンナモイル)ヒドラジン、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミド、及びN’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジドなどの好適な酸化防止剤又は金属補足剤が挙げられ得る。存在する場合、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物中の熱安定剤の量は、組成物全体の0.01~1.0重量%の範囲であり得る。
【0083】
一実施形態では、ISO 3801に従って決定された45~62g/m2の平均乾燥コート重量を有するコーティングを含む一体型織エアバッグは、
a)以下の粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマー(a)であって、各場合において、成分(a)では、オルガノポリシロキサンポリマー(a)の粘度は、25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)、代替的に25℃で1000~150,000mPa.s、代替的に1000mPa.s~125,000mPa.s、代替的に25℃で1000mPa.s~70,000mPa.sであるべきであり、アルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を、組成物の40重量%~約80重量%、代替的に組成物の45~80重量%、代替的に組成物の50~80重量%の量で有する、オルガノポリシロキサンポリマー(a)と、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤であって、少なくとも50m2/g(ISO 9277:2010に従ったBET法)、代替的に50~450m2/g、代替的に50~400m2/g m2/g、代替的に50~300m2/g、代替的に100~300m2/g(ISO 9277:2010に従ったBET法)の粒径を有し、当該補強性充填剤(b)が、典型的には、それらを疎水性にするように処理され、組成物の1.0~50重量%、代替的に組成物の1~30重量%、代替的に組成物の重量%に基づいて5.0~25重量%の量で存在する、補強性充填剤と、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物であって、好ましくは、成分(c)中のケイ素結合水素原子と、組成物中のアルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される総不飽和基とのモル比が0.5:1~20:1であるか、代替的に成分(c)中のケイ素結合水素原子と、オルガノポリシロキサン(a)中のアルケニル基及び/又はアルキニル基から選択される総不飽和基とのモル比が、好ましくは少なくとも1:1であり、最大8:1又は10:1であり得る、有機ケイ素化合物と、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化エラストマー生成物である。最も好ましくは、Si-H基と、脂肪族不飽和基とのモル比は、1.1:1~5:1の範囲であり、1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する当該有機ケイ素化合物は、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.1~10重量%、代替的に、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.1~7.5重量%、代替的に0.5~7.5重量%、更に代替的に、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.5%~5重量%の量で存在する。成分(c)は架橋剤として機能する。
d)ヒドロシリル化硬化触媒であって、ヒドロシリル化触媒の触媒量が、0.01ppm~10,000の組成物の重量に基づく百万部当たりの白金族金属の重量部(ppm)、代替的に0.01~5000ppm、代替的に0.01~3,000ppm、代替的に0.01~1,000ppm、代替的に0.01~750ppm、代替的に0.01~500ppm、代替的に0.01~100ppmの組成物の重量に基づく金属であり、ここで、触媒が例えばポリマー又は溶媒中に提供される形態/濃度に依存して、存在する成分(d)の量が、組成物の0.001~3.0重量%、代替的に組成物の0.001~1.5重量%、代替的に0.01~1.5重量%、代替的にヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の0.01~0.1.0重量%の範囲にある、ヒドロシリル化硬化触媒;
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択され、
組成物の1~60重量%、代替的に1~40重量%の量の、有機ケイ素化合物;
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)組成物の0.1~5重量%、代替的に組成物の0.5~3重量%、代替的に組成物の0.5~2重量%の量で、分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)組成物の0.1~5重量%、代替的に組成物の0.1~3重量%、代替的に組成物の0.1~2重量%の量で、1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)組成物の0.1~5重量%、代替的に0.1~3重量%、代替的に組成物の0.1~2重量%の量で、有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤;
ここで、接着促進剤(f)は、典型的には、組成物の約0.3~6重量代替的に、組成物の0.3~4重量%の(f)(i)、(ii)、及び(iii)の累積量で組成物中に存在し、組成物は、総重量%が100重量%という条件で、上記範囲の任意の組み合わせであり得る。
【0084】
典型的には、使用前に、一体型織エアバッグのコーティングを作製するために利用される組成物は、成分(c)(架橋剤)及び(d)ヒドロシリル化硬化触媒を別々に保持して、早期硬化を回避するために、2つの部分、A部及びB部で貯蔵される。典型的には、A部組成物は、成分(a)ポリマー、(b)補強性充填剤、及び(d)ヒドロシリル化硬化触媒を含み、B部は、成分(a)、(b)、及び(c)架橋剤、並びに存在する場合は抑制剤を含む。上記成分(e)(i)及び/又は(ii)の両方は、A部及びB部のいずれか又は両方に存在し得る。接着促進剤に関して、(f)(i)、(f)(ii)、及び(f)(iii)の反応生成物を利用する場合、早期反応を防止するために、通常、成分(f)(iii)をA部に、成分(f)(i)及び(ii)をB部に貯蔵する。
【0085】
存在する場合、組成物中の添加剤は、任意の他の成分の特性に悪影響を及ぼさない限り(例えば、触媒不活性化)、A部又はB部のいずれかに存在し得る。本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物のA部及びB部は、使用直前に共に混合されて、全組成物の硬化を開始し、シリコーンエラストマー材料になる。組成物は、任意の好適な比で混合されるように設計され得、例えば、A部:B部は、10:1~1:10、代替的に5:1~1:5、代替的に2:1~1:2の比で共に混合され得、しかし最も好ましくは、1:1の比である。
【0086】
A部及び/又はB部のそれぞれの成分は、個々に一緒に混合されてもよく、又は、例えば、最終組成物を混合しやすくするために、組み合わせて予め調製した状態で組成物に導入されてもよい。例えば、成分(a)及び(b)は、多くの場合、他の成分と添加する前に、一緒に混合されてLSRポリマーベース又はマスターバッチを形成する。これらは次に、直接製造されている部の他の成分と混合されてもよく、又は、業界で通常マスターバッチと呼ばれる予め調製された濃縮物を製造するために使用されてもよい。
【0087】
この場合、成分の混合を容易にするために、1つ以上のマスターバッチを利用して、成分をうまく混合して、A部及び/又はB部組成物を形成し得る。例えば、「ヒュームドシリカ」マスターバッチを調製することができる。これは、効率的には、その場で処理されたシリカを含むLSRシリコーンゴムベースである。
【0088】
組成物のA部及びB部は、それぞれの成分の全てを周囲温度で組み合わせることによって調製され得る。この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技術及び装置を用いることができる。使用される具体的な装置は、成分及び最終組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー、例えば遊星ミキサー、及びニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。混合中に成分を冷却して、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合もある。
【0089】
使用前に、それぞれのA部及びB部の組成を所望の比で一緒に混合する。
【0090】
本明細書の方法の一部として、本明細書で上に記載されたコーティング組成物は、任意の好適な既知の技術によって、布地基材、典型的には一体型織エアバッグ基材に塗布され得る。これらには、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラによるコーティング、ナイフオーバーエアによるコーティング、パディング、浸漬、及びスクリーン印刷が挙げられる。コーティング組成物は、エアバッグを組み立てるために小片に切断され、縫製されるエアバッグ布地に、又は一体型織エアバッグに塗布され得るが、特に、一体型織エアバッグを衝突後数秒間膨張形態に保持するように設計され、したがって、一般に一体型織であるサイドカーテンエアバッグが展開後のガス漏れ/透過性を回避するようにはるかに良好に設計されており、主に車両などの乗員を保護するために衝突直後に重要な数秒間膨張状態に維持されるタイプである当該サイドカーテンエアバッグであることを考えると、使用に最も好適である。
【0091】
織布上に塗布された本発明のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化は、典型的には、組成物を150~200℃の温度で1~2分間加熱することによって実施される。
【0092】
好ましいとは言えないが、組成物を複数の層に塗布することが可能であり、これは合わせて上記の平均乾燥コート重量を有する。必要とみなされれば、例えば、低摩擦を提供する材料の、更なる適合性コーティングをコーティング組成物に適用することも可能である。
【0093】
本開示は、ISO 3801に従って決定された45~62g/m2の平均乾燥コート重量を有するコーティングを含む一体型織エアバッグ、及びコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法を含む。一体型織エアバッグは、任意の好適な織布、特に平織り布地から作製され得るが、例えば、ニット又は不織布であり得る。布地は、合成繊維、又は天然繊維と合成繊維とのブレンド、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル-綿、ポリアクリロニトリル繊維布地、アラミド繊維布地、ポリエーテルイミド繊維布地、ポリスルホン繊維布地、炭素繊維布地、レーヨン繊維布地、及び/又はガラス繊維から作製され得る。例えば、自動車用一体型織エアバッグなどの高強度を必要とする用途には、ポリアミド繊維布地又はポリエステル繊維布地を使用することが好ましい。本発明の液状硬化性シリコーンゴム組成物でコーティングする前に、織布を水洗し、乾燥することが好ましい。
【0094】
一体型織エアバッグ布地として使用するために、布地は、比較的小さな体積に折り畳むことができるように十分に可撓性であるべきだが、また高速、例えば炸薬の影響下での展開にも耐えられる十分な強度を有していなければならない。ポリアミド及びポリエステル繊維は、エアバッグテキスタイルを作製するために特に好ましい。しかしながら、ポリアミド及びポリエステルエアバッグにコーティングを付着させることは困難であり得、したがって、本明細書の上に記載されたコーティング組成物としての上記の組成物中の成分(f)などの付着促進剤の必要性は、平織りナイロン及びポリエステル布地への良好な付着を有する必要がある。したがって、本明細書で記載されるコーティング組成物は、コーティングされている布地の表面上のフィルム形成が均一であるように、布地に接触して直後に特に良好な接着性及びフィルム形成特性を有するように設計されている。好ましくは、それらはまた、少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有する硬化コーティングを予想外に得ながら、ISO 3801に従って決定される通常よりも低い、例えば45~62g/m2、代替的に50~62g/m2の平均乾燥コート重量を達成する能力のために、布地への良好な浸透性も有する。
【0095】
損失正接(tanδ)値は、エネルギーを貯蔵する能力に対する、本明細書に記載される組成物の硬化生成物のエネルギーを放散する能力を表す。硬化コーティングは、粘弾性であるので、剪断のような変形が生じる場合(又はこの場合、エアバッグが衝突に起因して展開される場合)、エネルギーの一部は、弾性的に貯蔵され(G’によって表される)、残りは、熱として放散される(G”によって表される)。より高い損失正接(tanδ)値は、衝撃のエネルギーを吸収して、変形時に受ける損傷の量を低減するのに良好であり、したがって、より散逸性の材料は、一体型織エアバッグの展開時にそれほど多くの損傷を受けない。
【0096】
加えて、好ましくは、このようなエアバッグは、本明細書に記載される組成物を使用してコーティングされた場合、即時の収縮を回避し、上記の試験方法を使用して、展開から6秒後に保持された60%を超える内圧保持特性、代替的に6秒後に保持された62%以上の内圧保持特性を有する。サイドカーテンエアバッグのための従来のコーティングよりも薄いコーティングを一体型織エアバッグ上に有するにもかかわらず、衝突及びその後の転覆後のカーテンエアバッグにおける期間、例えば、約6秒間、低減されたガス透過性及び/又は良好な気密性を保持することができ、したがって、完全な収縮を回避し、衝突後の最初の数秒の重要な期間の間、乗員に保護を提供する。
【0097】
コーティングされていない一体型織エアバッグに、本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物をコーティングすることによって得られたコーティングされた一体型織エアバッグは、本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物からの硬化生成物から形成された少なくとも1つのコーティング層を有する。しかしながら、必要に応じて、1つ以上の追加の層をコーティングされた織布上に提供し得る。このような追加の層は、典型的には、コーティングされた織布の表面の触感を改善するため、コーティングされた織布の表面の耐摩耗性を改善するため、かつ/又はコーティングされた織布の強度を改善するために適用される。追加のコーティング層としては、プラスチックフィルム、織布、不織布、又は本発明の硬化シリコーンゴム以外の弾性コーティング材料から形成されるコーティング層によって例示され得る。好ましくは、追加の層は、必要とされないか、又は望ましくない。
【0098】
この技術は、任意の好適な一体型織エアバッグ用途、特に自動車市場で使用され得るが、また例えば、航空機からの脱出シュートとしても使用され得る。硬化性シリコーン組成物の硬化生成物でコーティングされたエアバッグは、一体型織エアバッグ上にコーティングされた場合、既存の材料よりも低い平均乾燥コート重量でコーティングされ得る。結果として、これは、必要とされるシリコーンコーティングの量の低減に起因して、製造業者の所有の全体的により低い総費用を提供し、並びに車両の軽量化の考慮のために質量の低減を達成する。有利なことには、平均乾燥コート重量の当該低減は、十分に長い膨張時間を持続する能力を有するコーティングされたエアバッグによって達成され、一体型織エアバッグが、例えば車両の転覆事故において遭遇する衝撃の持続時間を通して乗員を保護することを可能にする。
【実施例】
【0099】
以下の実施例において、組成は、特に明記しない限り、重量%(重量%)で定義される。
【0100】
ビニル基及びSi-H基の含有量は、それぞれ炭素二重結合伸縮及びケイ素-水素結合伸縮の標準を使用して、ASTM E168に従って赤外線分光法によって測定した。
【0101】
粘度の決定
別段の指示がない限り、与えられた全ての粘度測定値は、粘度-剪断速度曲線が速度非依存性である限りにおいて、低剪断速度で取られた値をゼロに外挿すること(又は単に値の平均を取ること)によって得られるゼロ剪断粘度(ηo)値であり、これは、好適で適切に動作するレオメータが使用されるという条件で、試験方法に依存しない値である。粘度測定値を、TA Instrumentsから市販されているARES-G2回転レオメータを使用して、25mmのコーン及びプレート上で0.1~10秒-1の定常速度掃引を使用して得た。ゼロ剪断プラトー領域が、レオメータ又は粘度計に利用可能な剪断速度で観察され得ない場合、本発明者らは、25℃で0.1秒-1の標準剪断速度で測定された粘度を報告する。
【0102】
MviQ樹脂が含まれる比較例を調製し、上記の組成物による2つの実施例も表1に提供される組成物を使用して調製した。組成物を二元系組成物として調製した。
【0103】
【0104】
【0105】
ポリマー1は、0.085重量%のビニル含有量及び25℃で57,000mPa.sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサンであった。
ポリマー1中の処理された充填剤は、29.8重量%のCAB-0-SIL(商標)MS-75Dヒュームドシリカ(Cabot Corporationから市販)であり、これは、インサイチュで、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)で処理された。
ポリマー2は、0.42重量%のビニル含有量及び25℃で400mPa.sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサンであった。
ポリマー3は、25℃で60,000mPa.sの粘度を有するトリメチル末端ポリジメチルシロキサンであった。
架橋剤は、0.46重量%のSi-H含有量及び5.3mPa.sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサンであった。
使用された触媒は、Karstedt触媒であった。
ポリマー1中のMviQ樹脂は、ポリマー1中に27重量%のMviQ樹脂を含む混合物中にジメチルビニルM基を有するMQ樹脂であり、ブレンドは、合わせて0.66重量%のビニル含有量を有していた。
ポリマー1中のMQ樹脂は、(モル分率)式:(Me3SiO1/2)u(SiO4/2)vを有する非官能性シリコーン樹脂であり、式中、Meは、メチルであり、uは、0.3~0.6であり、vは、0.4~0.7であり、u+vの値は、1.0であった。MQ樹脂は、ポリマー1との混合物中に45重量%の量で存在した。
接着パッケージ成分1は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであった。
接着パッケージ成分2は、11.2重量%のビニル含有量及び25℃で23mPa.sの粘度を有するジメチルヒドロキシ末端ジメチルメチルビニルシロキサンであった。
接着パッケージ成分3は、ポリマー2中に50重量%のジルコニウムアセチルアセトネートを含む混合物であった。
熱安定化添加剤は、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミドであった。
【0106】
調製プロセス
第1の工程として、表1に示される成分を混合し、残留水及び処理剤を除去することによって、その場で処理されたヒュームドシリカマスターバッチをKneaderミキサーで調製した。次いで、表1に特定される成分を使用して、A部及びB部の各組成物を調製したが、ここでは、追加成分を、ポリマー1中の処理された充填剤のシリコーンゴムベースに導入した。次いで、A部組成物及びB部組成物それぞれを一緒に混合し、得られた組成物を、一体型織エアバッグ上にコーティングするか、又は以下に記載される物理特性試験のために調製した。
【0107】
シリコーンゴムの機械特性を測定するための方法
比較例及び実施例並びに対応する硬化試料の物理特性を調製し、分析し、結果を以下の表2に示す。
【0108】
各場合において、この分析の場合、液状硬化性シリコーンゴム組成物を、120℃、30トンの圧力下で10分間のプレス硬化に供することによって、厚さ2mmの硬化シリコーンゴム試験片を得た。シリコーンゴムの硬度を、ASTM D 2240に従ってショアAデュロメータにより測定した。500Nロードセルを備えた、MTS Systemsから市販されているMTS(商標)Criterion Model C41を使用して、日本工業規格JIS K 6251に従って、ダンベル状試験片(No.7)の引張強度、破断点伸び、及び弾性率の結果を測定し、40mmの初期ゲージ長を基準としたクロスヘッド距離によって公称歪み及び伸びを測定した。
【0109】
【0110】
次いで、損失正接(tanδ)値を各実施例について分析し、各実施例及び比較例のコーティング組成物を、本明細書で上に記載された平均乾燥コート重量をもたらす量で一体型織エアバッグ上にコーティングし、内圧保持特性について分析した。
【0111】
損失正接(tanδ)値を測定するための方法 A部組成物及びB部組成物を、1:1の重量比で、高速ミキサー内で混合した。材料を、25mmアルミニウム平行板を備えたAnton Paar MCR-301レオメータに装填した。温度を、一定の垂直力、0.1%の一定の振動歪み、及び1rad/秒の一定の角振動数の下で、Peltier加熱装置(5℃/分のランプ速度)を使用して23℃から150℃に上昇させた。次いで、温度を20分間保持して、組成物を硬化させた。その後、温度を23℃に低減させ、更に20分間保持した。次いで、周波数掃引工程(0.1%の振動ひずみ及び1rad/秒の角周波数)によって、(0.01rad/秒~500rad/秒)の角周波数の関数として弾性率及びtanδを測定した。
【0112】
内圧保持特性
A部組成物及びB部組成物を、1:1の重量比で、高速ミキサー内で混合した。C.1、実施例1、及び実施例2の最終組成物を各々、ナイフコーティングによって、PET(ポリエチレンテレフタレート織布)から作製された同一の一体型織エアバッグ上にコーティングした。次いで、コーティングされた布地を196℃で1分間硬化させた。
【0113】
次いで、エアバッグを、エアバッグが固定される所定の体積のガス又はガスのブレンドを予備的に保持することが可能である、Microsys Technologies Inc.から市販されている冷ガス膨張システムを使用して試験した。試験開始時に、所定の圧力が保持リザーバからバッグ内に解放される。得られたコーティングされた中空織布の内部空間に、ガス導入口を通して165kPaの圧力下の圧縮ガスを吹き込んで内部空間を膨張させ、内部圧力を70kPaに調整した。圧力解放後に測定された最高圧力応答は、エアバッグ内で達成される「ピーク」圧力と考えられる。試験開始(POsec)から目標試験持続時間6秒(P6sec)までに観察される圧力の差、及びその結果生じる圧力保持力を測定した。結果を表2bに示す。
【0114】
【0115】
本明細書の実施例から、著しく良好な損失正接(tanδ)値が存在することがわかる場合がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するコーティングを含む一体型織エアバッグであって、このコーティングが、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の硬化エラストマー生成物であり、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、一体型織エアバッグ。
【請求項2】
ISO 3801に従って決定された、50~62g/m
2の前記平均乾燥コート重量、請求項1に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項3】
前記一体型織エアバッグが、本明細書の実施例に記載される試験方法を使用して、展開から6秒後に保持された60%を超える内圧保持特性も有する、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項4】
成分(e)が、シルセスキオキサン又はMQシリコーン樹脂から選択される非官能性シリコーン樹脂である、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項5】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、式:
(R
4
3SiO
1/2)
u(SiO
4/2)
v
を有するMQシリコーン樹脂であり、
式中、R
4が、脂肪族不飽和を含まないC
1~C
10炭化水素基であり、uが、0.3~0.6であり、vが、0.4~0.7であり、u+vの値が、1.0である、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項6】
前記一体型織エアバッグが、カーテンエアバッグである、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項7】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、アルケニル基及び/又はアルキニル基並びにSi-H結合を含まない、請求項1又は2に記載の一体型織エアバッグ。
【請求項8】
コーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法であって、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含む、ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の成分を混合することと、
硬化時に、前記一体型織エアバッグが、ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するように、前記一体型織エアバッグをコーティングすることと、を含み、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書の実施例に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、方法。
【請求項9】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、シルセスキオキサン又はMQシリコーン樹脂から選択される、請求項8に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項10】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、式:
(R
4
3SiO
1/2)
u(SiO
4/2)
v
を有するMQシリコーン樹脂であり、
式中、R
4が、脂肪族不飽和を含まないC
1~C
10炭化水素基であり、uが、0.3~0.6であり、vが、0.4~0.7であり、u+vの値が、1.0である、請求項8又は9に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項11】
成分(e)(i)の前記非官能性シリコーン樹脂が、アルケニル基及び/又はアルキニル基並びにSi-H結合を含まない、請求項8又は9に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項12】
接着促進剤(f)が、典型的には、前記組成物の約0.3~6重量%の(f)(i)、(ii)、及び(iii)の累積量で、前記組成物中に存在する、請求項8又は9に記載のコーティングされた一体型織エアバッグを調製する方法。
【請求項13】
テキスタイルが、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラによるコーティング、ナイフオーバーエアによるコーティング、パディング、浸漬、及びスクリーン印刷によってコーティングされる、請求項8又は9に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物で前記テキスタイルをコーティングする、方法。
【請求項14】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の使用であって、組成物が、
a)25℃で100~200,000mPa.s(両端を含む)の粘度、及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、この不飽和基が、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)1つ以上の実質的に非官能性の有機ケイ素化合物であって、
(i)Tシリコーン樹脂(シルセスキオキサン)、DTシリコーン樹脂、MQシリコーン樹脂、MDTシリコーン樹脂、MTQシリコーン樹脂、QDTシリコーン樹脂、若しくはこれらの混合物から選択されるシリコーン樹脂、及び/又は
(ii)トリアルキル末端ポリジオルガノシロキサン、から選択される、有機ケイ素化合物、
f)1つ以上のモノアクリレート、ジアクリレート又はメタクリレート、エポキシ含有アルコキシシラン、メタクリル基又はアクリル基を含有するアルコキシシラン、並びに
i)前記分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物若しくは有機ジルコニウム化合物、又はこれらの混合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物から選択される接着促進剤、を含み、
ISO 3801に従って決定された45~62g/m
2の平均乾燥コート重量を有するコーティングされた一体型織エアバッグの生成において、
前記コーティングが、500rad/秒の角周波数で少なくとも0.175の損失正接(tanδ)値を有し、
tanδ=G”/G’=動的損失弾性率/動的貯蔵弾性率であり、本明細書に開示されるレオロジー試験方法によって決定される、使用。
【請求項15】
前記一体型織エアバッグが、本明細書に記載される方法に従って、展開から6秒後に保持された60%を超える内圧保持特性も有する、請求項14に記載のヒドロシリル化硬化性シリコーンコーティング組成物の使用。
【国際調査報告】