(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理中に複数の波形信号を供給するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241128BHJP
C23C 16/503 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
H01L21/302 105A
C23C16/503
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533335
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022047677
(87)【国際公開番号】W WO2023107205
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】カワサキ, カツマサ
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084AA08
2G084CC12
2G084CC13
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD38
2G084HH05
2G084HH06
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4K030FA01
4K030JA18
4K030KA14
4K030KA41
4K030KA45
4K030KA46
5F004BA04
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5F004CA06
5F004DB00
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】
本開示の実施形態は、概して、半導体デバイス製造プロセスにおいて使用されるシステムに関する。より具体的には、本明細書で提供される実施形態は、概して、プラズマ処理チャンバ内部の1つ以上の電極へのRFバイアス電圧信号及びパルス電圧波形の供給を同期及び制御するための装置及び方法を含む。本開示の実施形態は、パルス無線周波数(RF)波形をパルス電圧(PV)波形に同期させることで、パルスRF波形がPV波形の第1の段階の間にオンとなり、第2の段階の間にオフとなるようにするための方法及び装置を含む。PV波形の第1の段階は、シース崩壊段階を含む。PV波形の第2の段階は、イオン電流段階を含む。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理のための方法であって、
基板支持体内に配置された1つ以上の電極にパルス電圧波形を適用することであって、前記パルス電圧波形が、第1の段階及び第2の段階を各々が含む一連の電圧パルスを含む、パルス電圧波形を適用することと、
処理チャンバの処理領域内でプラズマを発生させるために、前記1つ以上の電極にパルス無線周波数(RF)波形を適用することと、
前記パルスRF波形を前記パルス電圧波形の各パルスと同期させることで、前記パルス無線周波数(RF)波形のRF波形が、前記パルス電圧波形の各パルスの前記第2の段階の少なくとも一部の間だけ供給されるようにすることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の段階がシース崩壊段階を含み、前記第2の段階がイオン電流段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一連の電圧パルスが100kHz以上の周波数で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パルスRF波形が、前記一連の電圧パルスの前記周波数に等しい周波数で供給される一連のRFパルスを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の電極に前記パルス電圧波形を適用することが、
前記基板支持体内に配置された第1の電極に第1のパルス電圧波形を適用することと、
前記基板支持体に配置された第2の電極に第2のパルス電圧波形を適用することであって、前記第1のパルス電圧波形及び前記第2のパルス電圧波形が各々第1の段階及び第2の段階を有する、第2のパルス電圧波形を適用することと、
前記第1のパルス電圧波形及び前記第2のパルス電圧波形の前記第1の段階及び前記第2の段階を前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ適用することを同期させることと
を更に含み、
前記パルスRF波形を前記パルス電圧波形の各パルスと同期させることが、前記パルスRF波形を前記第1のパルス電圧波形の各パルスと同期させることと、前記パルスRF波形を前記第2のパルス電圧波形の各パルスと同期させることとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電極が前記第2の電極によって囲まれている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パルスRF波形の前記RF波形は、第1の時間遅延が経過した後に供給され、前記第1の時間遅延は、前記パルス電圧波形の各パルスの前記第1の段階の終了時に開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の時間遅延が、前記パルス電圧波形の前記第2の段階の全長の1%と20%との間の長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パルス電圧波形の各パルスの前記第1の段階は、第2の時間遅延が経過した後に開始され、前記第2の時間遅延の前記開始は、前記パルス無線周波数(RF)波形の前記RF波形が前記第2の段階の前記少なくとも一部の間に供給される期間の終了時に開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の時間遅延が、前記パルス電圧波形の前記第2の段階の全長の0.1%と10%との間の長さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の段階がシース崩壊段階を含み、前記第1の段階がイオン電流段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
プラズマ処理システムであって、
第1の電極に接続されたパルス電圧波形発生器と、
第2の電極に接続された無線周波数波形発生器であって、前記プラズマ処理システムの処理空間内部でプラズマを発生させるように構成されている、無線周波数波形発生器と、
前記無線周波数波形発生器と前記第2の電極との間に接続されたインピーダンス整合回路と、
メモリ内部に記憶されたコンピュータ可読命令を実行するように構成されたプロセッサを有するコントローラと
を備え、前記コンピュータ可読命令が、前記システムに、
前記パルス電圧波形発生器の使用により、前記第1の電極にパルス電圧波形を適用することであって、第1の段階及び第2の段階を各々が含む一連の電圧パルスを含むパルス電圧波形を適用することと、
処理チャンバの処理領域内にプラズマを発生させるために、前記無線周波数波形発生器の使用により、前記第2の電極にパルス無線周波数波形を適用することと、
パルス無線周波数(RF)波形を前記パルス電圧波形の各パルスと同期させることで、前記パルスRF波形のRF波形が、前記パルス電圧波形の各パルスの前記第2の段階の少なくとも一部の間だけ供給されるようにすることと
を実行させる、プラズマ処理システム。
【請求項13】
前記パルス電圧波形の前記第1の段階がシース崩壊段階を含み、前記パルス電圧波形の前記第2の段階がイオン電流段階を含む、請求項12に記載のプラズマ処理システム。
【請求項14】
前記一連の電圧パルスが100kHz以上の周波数で供給される、請求項12に記載のプラズマ処理システム。
【請求項15】
前記パルスRF波形が、前記一連の電圧パルスの前記周波数に等しい周波数で供給される一連のRFパルスを含む、請求項14に記載のプラズマ処理システム。
【請求項16】
前記第1の電極及び前記第2の電極が基板支持体内に配置される、請求項12に記載のプラズマ処理システム。
【請求項17】
前記第1の電極が前記第2の電極によって囲まれている、請求項16に記載のプラズマ処理システム。
【請求項18】
前記パルスRF波形の前記RF波形は、第1の時間遅延が経過した後に実行され、前記第1の時間遅延は、前記パルス電圧波形の各パルスの前記第1の段階の終了時に開始する、請求項12に記載のプラズマ処理システム。
【請求項19】
前記第1の時間遅延が、前記パルス電圧波形の前記第2の段階の全長の1%と20%との間の長さを有する、請求項18に記載のプラズマ処理システム。
【請求項20】
前記パルス電圧波形の前記第2の段階がシース崩壊段階を含み、前記パルス電圧波形の前記第1の段階がイオン電流段階を含む、請求項12に記載のプラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、半導体デバイス製造において使用されるシステム及び方法に関する。より具体的には、本明細書で提供される実施形態は、概して、処理チャンバ内部の1つ以上の電極に無線周波数(RF)パルス波形をパルス電圧(PV)波形と同期させるためのシステム及び方法を含む。
【背景技術】
【0002】
高アスペクト比のフィーチャを確実に製造することは、次世代半導体デバイスにとって重要な技術課題の1つである。高アスペクト比のフィーチャを形成する1つの方法は、基板の材料層(例えば、誘電体層)に高アスペクト比の開口部を形成するために、プラズマ支援エッチングプロセス(例えば、反応性イオンエッチング(RIE)プラズマプロセス)を使用する。典型的なRIEプラズマプロセスでは、処理チャンバ内でプラズマが形成され、プラズマからのイオンが基板の表面に向かって加速され、基板の表面に形成されたマスク層の下方に配置された材料層に開口が形成される。
【0003】
典型的な反応性イオンエッチング(RIE)プラズマ処理チャンバは、電力電極にRF電圧を供給する無線周波数(RF)バイアス発生器を含む。容量結合ガス放電では、プラズマは、静電チャック(ESC)アセンブリ内部又は処理チャンバの別の部分の内部に配置される電力電極に接続された無線周波数(RF)発生器を使用することによって生成される。通常、RF整合ネットワーク(「RF整合」)は、50Ωの見かけ上の負荷にRF電力を供給して、反射電力を最小化し電力供給効率を最大化するために、RF発生器から供給されるRF波形を調整する。負荷のインピーダンスがソース(例えばRF発生器)のインピーダンスに適切に整合されていない場合、順方向に供給されたRF波形の一部が、同じ伝送ラインに沿って反対方向に再び反射する可能性がある。
【0004】
多くのプラズマプロセスもまた、処理中の基板上に配置されたプラズマシースを制御するために、DC電圧パルス方式を利用している。動作中、DC電圧パルスにより、生成されたプラズマシースは、厚いプラズマシースを含む状態と、プラズマシースが存在しない状態と、の間で切り替わる。典型的には、DCパルス技法は、50kHzを超える周波数(例えば400kHzを超える周波数)で電圧パルスを供給するように構成されている。供給されるDCパルス電圧波形によるプラズマシースの切り替えにより、プラズマ負荷は時間と共に異なるインピーダンス値を有するようになる。プラズマ処理中に同時に供給されるRF波形とDCパルス電圧波形との間の相互作用により、RF電力供給システムのRF整合部分が、時間と共に急速に変化するプラズマ負荷インピーダンス値を考慮してRF整合点を調整することができないために、プラズマ処理結果が異なる場合があることが判明している。従来のインピーダンス整合部品と整合プロセスは、プラズマ負荷インピーダンスの大きさの急激な変化に追従することができず、そのため、整合によって望ましくない整合点が検出され、通常は、1)RF信号の相互変調歪み(IMD)と、2)駆動RF周波数の高調波(harmonics)に見られる望ましくない高い反射RF電力と、によって、プラズマ負荷に実際に供給されるRF電力の量が変動することになる。RFパルス波形とDCパルス電圧波形との間の相互作用によって生じる相互変調歪みにより、少なくともRF信号の振幅は時間と共に変化する。RFパルス波形とDCパルス電圧波形との間の相互作用又は相互変調により、RFパルス波形又はDCパルス波形のいずれかなどの、相互作用する信号の高調波周波数(即ち整数倍)だけではない周波数で、更に望ましくない波形成分(waveform component)が形成される。電力供給システムにおけるIMD構成要素の生成は、プラズマ負荷に供給される実際の順方向RF電力を減少させる。少なくとも、処理チャンバの電力供給構成の不可避な差異及び電力供給構成要素の差異に起因して、急速に変化するプラズマ負荷インピーダンス値は、単一のプラズマ処理チャンバで見られ、単一の処理システム上の同様に構成された処理チャンバで見られ、また、半導体製造サイト内部の異なるプラズマ処理システム内の同様に構成されたプラズマ処理チャンバで見られる、プラズマ処理の結果に望ましくない差異を引き起こす。更に、生成されたIMD構成要素は、同一又は異なる処理チャンバ内でのプラズマ処理中に発生する可能性のある広範囲の周波数のため、ほとんどの電力供給システムでは容易に考慮されず、したがって、プラズマ処理中にプラズマ負荷に実際に供給される電力に予期せぬ変動を引き起こすことになる。
【0005】
したがって、当技術分野では、少なくとも上記のような問題を解決できるプラズマ処理デバイス及びバイアス方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、基板支持体中に配置された電極に電圧波形を適用することを含むプラズマ処理のための方法に関し、電圧波形は第1の段階及び第2の段階を有し、第1の段階はシース崩壊段階を含み、第2の段階はイオン電流段階を含む。本方法は、処理チャンバの処理領域内でプラズマを発生させるために、反応種にパルス無線周波数(RF)波形を適用することと、パルスRF波形が段階のうちのある1つの間に提供され、その他の段階の間には提供されないように、パルスRF波形を電圧波形に同期させることとを更に含む。1つの実施形態では、パルスRF波形は、第2の段階の間に提供され、第1の段階の間には提供されない。別の実施形態では、パルスRF波形は、第1の段階の間に提供され、第2の段階の間には提供されない。
【0007】
本開示は、概して、基板支持体中に配置された電極に電圧波形を適用することを含むプラズマ処理のための方法に関し、電圧波形は第1の段階及び第2の段階を有し、第1の段階はシース崩壊段階を含み、第2の段階はイオン電流段階を含む。本方法は、処理チャンバの処理領域内でプラズマを発生させるために、反応種にパルス無線周波数(RF)波形を適用することと、パルスRF波形がある1つの段階の間に提供され、その他の段階の間には提供されないように、パルスRF波形を電圧波形に同期させることとを更に含む。
【0008】
本開示は、第1の電極に接続されたPV波形発生器と、プラズマ処理システムの第2の電極に接続されたRF波形発生器であって、処理領域内部でプラズマを発生させるように構成されている、RF波形発生器と、インピーダンス整合回路と、コンピュータ可読命令を実行するように構成されたプロセッサを有するコントローラであって、コンピュータ可読命令が、システムに、PV波形発生器によって生成されたPV波形を適用することと、RF波形発生器によって生成されたRF波形を適用することと、PV波形をRF波形に同期させることとを実行させる、コントローラとを備えるプラズマ処理システムを更に含む。
【0009】
本開示の実施形態は、プラズマ処理のための方法であって、基板支持体内に配置された1つ以上の電極にパルス電圧波形を適用することであって、電圧波形が第1の段階及び第2の段階を有している、パルス電圧波形を適用することと、処理チャンバの処理領域内でプラズマを発生させるために、1つ以上の電極にパルス無線周波数(RF)波形を適用することと、パルスRF波形をパルス電圧波形の各パルスと同期させることで、パルス無線周波数(RF)波形のRF波形が、パルス電圧波形の各パルスの第2の段階の少なくとも一部の間だけ供給されるようにすることとを含む、方法を提供する。
【0010】
本開示の実施形態は、プラズマ処理のための方法であって、基板支持体内に配置された1つ以上の電極にパルス電圧波形を適用することであって、電圧波形が第1の段階及び第2の段階を有している、パルス電圧波形を適用することと、処理チャンバの処理領域内でプラズマを発生させるために、1つ以上の電極にパルス無線周波数(RF)波形を適用することと、パルスRF波形をパルス電圧波形の各パルスと同期させることで、パルス無線周波数(RF)波形のRF波形が、パルス電圧波形の各パルスの第1の段階の少なくとも一部の間だけ供給されるようにすることとを含む、方法を提供する。
【0011】
本開示の実施形態は、プラズマ処理システムであって、第1の電極に接続されたパルス電圧波形発生器と、第2の電極に接続された無線周波数波形発生器であって、プラズマ処理システムの処理空間内部でプラズマを発生させるように構成されている、無線周波数波形発生器と、無線周波数波形発生器と第2の電極との間に接続されたインピーダンス整合回路と、コントローラとを備えるプラズマ処理システムを提供する。コントローラは、メモリ内部に記憶されたコンピュータ可読命令を実行するように構成されたプロセッサを有し、コンピュータ可読命令が、システムに、パルス電圧波形発生器の使用により、第1の電極にパルス電圧波形を適用することであって、パルス電圧波形は、第1の段階及び第2の段階を各々が含む一連の電圧パルスを含む、パルス電圧波形を適用することと、処理チャンバの処理領域内にプラズマを発生させるために、無線周波数波形発生器の使用により、第2の電極にパルス無線周波数波形を適用することと、パルスRF波形をパルス電圧波形の各パルスと同期させることで、パルス無線周波数(RF)波形のRF波形が、パルス電圧波形の各パルスの第2の段階の少なくとも一部の間だけ供給されるようにすることとを実行させる。
【0012】
上記に記載した本開示の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、一部の実施形態が添付図面に示されている。しかし、添付図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載の方法を実行するように構成された、1つ以上の実施形態による処理システムの概略断面図である。
【
図2】1つ以上の実施形態による、処理チャンバ内部の1つ以上の電極へのパルス電圧波形の供給により、処理チャンバの基板支持アセンブリ上に配置された基板において確立される2つの別個の電圧波形を示す。
【
図3A】1つの実施形態による、処理チャンバの1つ以上の電極に接続された伝送ラインに沿って測定された順方向RFバイアス電圧信号及び相互変調歪み(IMD)信号のプロットである。
【
図3B】1つの実施形態による、処理チャンバの1つ以上の電極に接続される伝送ラインを通して供給されるパルス電圧波形に印加されるRFバイアス電圧信号を示す。
【
図4】1つの実施形態による、2つの異なる従来のプラズマ処理チャンバにおいて見られる広帯域反射の割合を示すチャートである。
【
図5A】1つの実施形態による、処理チャンバ内の電極に適用されるパルスRFバイアス電圧信号を示す。
【
図5B】1つの実施形態による、
図5Aに示されるパルスRFバイアス電圧信号及び処理チャンバの1つ以上の電極へのパルス電圧波形の供給によって形成される、パルス電圧波形及びパルスRFバイアス電圧信号の組み合わせを示す。
【
図6】1つの実施形態による、プラズマ処理システムにおけるPV波形及びRFバイアス電圧波形を同期させるための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解が容易になるよう、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すために同一の参照番号を使用した。1つの実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくても、他の実施形態に有益に組み込むことができると考えられる。
【0015】
本開示の実施形態は、概して、半導体デバイス製造プロセスにおいて使用されるシステムに関する。より具体的には、本明細書で提供される実施形態は、概して、プラズマ処理チャンバ内部の1つ以上の電極へのRFバイアス電圧信号及びパルス電圧波形の供給を同期及び制御するための装置及び方法を含む。
【0016】
図1は、本明細書に記載のプラズマ処理方法の1つ以上を実行するように構成されたプラズマ処理チャンバアセンブリ10の概略断面図である。いくつかの実施形態では、プラズマ処理チャンバアセンブリ10は、反応性イオンエッチング(RIE)プラズマ処理などのプラズマ支援エッチングプロセスのために構成される。プラズマ処理チャンバアセンブリ10はまた、他のプラズマ支援プロセス、例えば、プラズマ強化堆積プロセス(例えば、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)プロセス、プラズマ強化物理気相堆積(PEPVD)プロセス、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)プロセス)、プラズマ処理プロセス、プラズマベースのイオン注入プロセス、又はプラズマドーピング(PLAD)プロセスなどにも使用することができる。1つの構成では、
図1に示すように、プラズマ処理チャンバアセンブリ10は、容量結合プラズマ(CPP)を形成するように構成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、プラズマ処理チャンバアセンブリ10の処理領域上に配置された誘導結合源によって、プラズマが生成される場合もある。この構成では、プラズマ処理チャンバアセンブリ10のセラミックリッド(真空境界)の上部にコイルが載置されうる。
【0017】
プラズマ処理チャンバアセンブリ10は、処理チャンバ100、基板支持アセンブリ136、ガス供給システム182、DC電力システム183、RF電力システム189、及びシステムコントローラ126を含む。処理チャンバ100は、チャンバリッド123、1つ以上の側壁122、及びチャンバベース124を含むチャンバ本体113を含む。チャンバリッド123、1つ以上の側壁122、及びチャンバベース124は、集合的に処理空間129を画定する。1つ以上の側壁122及びチャンバベース124は、概して、処理チャンバ100の要素の構造支持体を形成するようにサイズ決定及び形状決定され、かつ処理中に処理チャンバ100の処理空間129内に維持される真空環境内部でプラズマ101が生成される間、それらの要素に適用される圧力及び付加エネルギーに耐えるように構成される材料(アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレス鋼合金など)を含む。基板103は、側壁122の一方の開口部(図示せず)を通して処理空間129内に搬入され、処理空間129から取り出される。開口部は、基板103のプラズマ処理中にスリットバルブ(図示せず)で密閉される。処理チャンバ100の処理空間129に接続されたガス供給システム182は、処理ガス源119と、チャンバリッド123を通って配置されたガス入口128とを含む。ガス入口128は、複数の処理ガス源119から処理空間129に1つ以上の処理ガスを供給するように構成される。
【0018】
処理チャンバ100は、処理空間129内に配置された上部電極(例えば、チャンバリッド123)と下部電極(例えば、基板支持アセンブリ136)を更に含む。上部電極と下部電極は、互いに向かい合うように位置決めされる。
図1に見られるように、1つの実施形態では、無線周波数(RF)源(例えば、RF電力システム189)が下部電極に電気的に接続されている。RF源は、上部電極と下部電極との間にプラズマ(例えば、プラズマ101)を点火し維持するためのRF信号を供給するように構成されている。いくつかの代替構成では、
図1に示すように、RF源(例えば、RF電力システム189)もまた、上部電極に電気的に接続することができる。
【0019】
基板支持アセンブリ136は、基板支持体105、基板支持ベース107、絶縁体プレート111、接地プレート112、複数のリフトピン186、1つ以上の基板電位感知アセンブリ184、及びバイアス電極104を含む。リフトピン186の各々が、基板支持アセンブリ136に形成された貫通孔185を貫通して配置され、基板支持体105の基板受容面105Aとの間での基板103の移動を容易にするために使用される。基板支持体105は、誘電体材料で形成されている。誘電体材料は、バルク焼結セラミック材料、耐腐食性金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO)、酸化イットリウム(Y2O3))、金属窒化物材料(例えば、窒化アルミニウム(AIN)、窒化チタン(TiN))、これらの混合物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0020】
基板支持ベース107は、導電性材料(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス合金)で形成されている。基板支持ベース107は、絶縁体プレート111と、絶縁体プレート111とチャンバベース124との間に介在する接地プレート112とによって、チャンバベース124から電気的に絶縁されている。いくつかの実施形態では、基板支持ベース107は、基板処理中に、基板支持体105と、基板支持体105上に配置された基板103と、の両方の温度を調整するように構成される。いくつかの実施形態では、基板支持ベース107は、冷媒源又は比較的高い電気抵抗を有する基板源などの冷却剤源(図示せず)に流体連通され、流体連結している、内部に配置された1つ以上の冷却チャネル(図示せず)を含む。他の実施形態では、基板支持体105は、基板支持体105及び基板支持体105上に配置された基板103を加熱するためのヒーター(図示せず)を含む。
【0021】
バイアス電極104は、基板支持体105の誘電体材料に埋め込まれている。通常、バイアス電極104は、1つ以上の導電性部品で形成される。導電性部品は通常、メッシュ、箔、プレート、又はこれらの組み合わせを含む。ここで、バイアス電極104は、基板103を基板支持体105の基板受容面105Aに固定する(例えば、静電チャックする)ために使用されるチャック極(即ち、静電チャック電極)として機能する。概して、平行なプレートのような構造は、バイアス電極104、及びバイアス電極104と基板受容面105Aとの間に配置される誘電体材料の層によって、形成される。誘電体材料は、典型的には、約5nFと約50nFとの間の有効容量CEを有しうる。典型的には、誘電体材料(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)など)の層は、約0.03mmと約5mmとの間、例えば約0.1mmと約3mmとの間、例えば約0.1mmと約1mmとの間、更には約0.1mmと約0.5mmとの間の厚さを有する。バイアス電極104は、クランピングネットワークに電気的に接続され、チャッキング電圧を供給する。クランピングネットワークは、DC電圧供給部173とバイアス電極104との間に配置されるフィルタアセンブリ178のフィルタ178Aに接続されるDC電圧供給部173(例えば、高電圧DC供給部)を含む。1つの実施例では、フィルタ178Aはローパスフィルタであり、プラズマ処理中に処理チャンバ100内に見られる他のバイアス構成要素によって供給されるRF周波数及びパルス電圧(PV)波形信号がDC電圧供給部173に到達するのを阻止するように構成されている。1つの構成では、静的DC電圧は約-5000Vと約5000Vとの間であり、電気導体(同軸電力供給ライン160など)を使用して供給される。いくつかの実施形態では、バイアス電極104は、以下で更に詳細に説明するパルス電圧バイアス方式の1つ以上を使用して、プラズマ101に対して基板103をバイアスすることもできる。
【0022】
いくつかの構成では、基板支持アセンブリ136は、エッジ制御電極115を更に含む。エッジ制御電極115は、1つ以上の導電性部品で形成されている。導電性部品は通常、メッシュ、箔、プレート、又はこれらの組み合わせを含む。エッジ制御電極115は、エッジリング114の下方に位置決めされ、バイアス電極104を取り囲み、かつ/又はバイアス電極104の中心から距離をおいて配置される。概して、回路基板を処理するように構成される処理チャンバ100では、エッジ制御電極115が、環形状であり、導電性材料から作製され、バイアス電極104の少なくとも一部を取り囲むように構成されている。1つの構成では、基板支持アセンブリ136の基板支持面を平面図で見たとき、バイアス電極104は、エッジ制御電極115に囲まれる又は外接され(circumscribed)、エッジ制御電極115と直接電気的に接触しない。
図1に見られるように、エッジ制御電極115は基板支持体105の領域内に位置決めされ、パルス電圧(PV)波形発生器175を使用してバイアスされる。ある構成では、
図1に概略的に示すように、エッジ制御電極115は、PV波形発生器175からバイアス電極104に供給される信号の一部を分割することによってバイアスされる。別の構成では、エッジ制御電極115は、バイアス電極104に使用されるPV波形発生器175とは異なるPV波形発生器175(
図1には示さず)を使用して接続されバイアスされる。この構成では、PV波形発生器175から供給される電圧波形信号は別々に調整することができ、したがって異なる波形特性を有するが、同時に、システムコントローラ126、又はRF波形発生器若しくはPV波形発生器の1つから供給される同期信号を使用することによって同期され、PV波形発生器175の各々により供給される同期されたPV波形パルス内の同じ段階でRF波形を供給できるようになる。
【0023】
DC電力システム183は、DC電圧供給部173、PV波形発生器175、及び電流源177を含む。RF電力システム189は、無線周波数(RF)波形発生器171、インピーダンス整合回路172、及びRFフィルタ174を含む。1つの例では、
図1に示すように、電力供給ライン163がRF波形発生器171の出力をインピーダンス整合回路172、RFフィルタ174、基板支持ベース107に電気的に接続する。前述のように、プラズマ処理中、DC電圧供給部173は一定のチャッキング電圧を供給し、その一方で、RF波形発生器171は処理領域にRF信号を供給し、PV波形発生器175はバイアス電極104でPV波形を確立する。本明細書ではRF波形とも呼ばれるRFバイアス電圧信号に十分な量のRF電力が、処理チャンバ100の処理空間129内にプラズマ101を形成させるように電極(例えば、基板支持ベース107)に加えられる。1つの構成では、RF波形は約1MHzと約200MHzとの間、例えば2MHzと40MHzとの間、の周波数範囲を有している。
【0024】
いくつかの実施形態では、DC電力システム183は、DC電力システム183内部に含まれる1つ以上の構成要素を電気的に絶縁するためのフィルタアセンブリ178を更に含む。電力供給ライン160は、DC電圧供給部173の出力をフィルタアセンブリ178に電気的に接続する。電力供給ライン161は、PV波形発生器175の出力をフィルタアセンブリ178に電気的に接続する。電力供給ライン162は、電流源177の出力をフィルタアセンブリ178に接続する。いくつかの実施形態では、電流源177は、PV波形発生器175によって生成された電圧波形の1つ以上の段階(例えば、イオン電流段階)の間、電流源177がバイアス電極104に所望の電流を供給できるように、電力供給ライン162内に配置されたスイッチ(図示せず)を使用することによって、バイアス電極104に選択的に接続される。
図1に見られるように、フィルタアセンブリ178は、電力供給ライン164を介して、各々が出力ノードと電気的に接続される複数の別個のフィルタリング構成要素(即ち、個別のフィルタ178A~178C)を含む。代替的な構成では、フィルタアセンブリ178は、電力供給ライン164を介して出力ノードに電気的に接続された1つの共通フィルタを含む。電力供給ライン160~164は、剛性同軸ケーブルと直列に接続される、フレキシブル同軸ケーブルや、絶縁された高電圧コロナ耐性フックアップワイヤや、裸線や、金属棒や、電気コネクタの形態、または上記の任意の組み合わせの形態をとりえる電気導体を含む。
【0025】
システムコントローラ126は、本明細書では処理チャンバコントローラとも呼ばれ、中央処理装置(CPU)133、メモリ134、及び支持回路135を含む。システムコントローラ126は、基板103を処理するために使用されるプロセスシーケンスを制御するために使用される。CPUは、処理チャンバとそれに関連するサブプロセッサを制御するために、産業環境で使用するように構成された汎用コンピュータプロセッサである。本明細書で説明するメモリ134は、概して不揮発性メモリであり、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、ハードディスクドライブ、又はローカル又はリモートの他の適切な形態のデジタルストレージを含みうる。支持回路135は、従来、CPU133に接続され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源など、及びこれらの組み合わせを含む。ソフトウェア命令(プログラム)及びデータは、CPU133内部のプロセッサに命令するために、メモリ134内部でコード化され記憶されうる。システムコントローラ126内のCPU133によって読み取り可能なソフトウェアプログラム(又はコンピュータ命令)は、プラズマ処理チャンバアセンブリ10内の構成要素によって、どのタスクが実行可能であるかを決定する。
【0026】
典型的には、システムコントローラ126内のCPU133によって読み取り可能なプログラムは、CPU133によって実行されると、本明細書に記載のプラズマ処理方式に関するタスクを実行するコードを含む。プログラムは、本明細書に記載の方法を実行するために使用される様々なプロセスタスク及び様々なプロセスシーケンスを実行するために、プラズマ処理チャンバアセンブリ10内部の様々なハードウェア及び電気構成要素を制御するために使用される命令を含みうる。1つの実施形態では、プログラムは、
図9及び
図10に関連して後述する工程の1つ以上を実行するために使用される命令を含む。
【0027】
図2は、1つ以上の実施形態による、処理チャンバのバイアス電極104へのパルス電圧波形の供給により、処理チャンバの基板支持アセンブリ136の基板受容面105A上に配置された基板103において確立される2つの別個の電圧波形を示す。波形225は、プラズマ処理中に基板103で確立される非補償パルス電圧(PV)波形の例である。波形230は、電流源177を使用してPV波形サイクルの「イオン電流段階」部分の間に処理チャンバのバイアス電極104に負の傾斜波形を適用することにより基板103に確立される補償パルス電圧(PV)波形の例である。代替的には、補償パルス電圧(PV)波形は、PV波形発生器175によって生成されたパルス電圧波形のイオン電流段階の間に負の電圧ランプを適用することによって確立されうる。
【0028】
図2では、波形225と波形230は、イオン電流段階とシース崩壊段階の2つの主要段階を含む。波形225及び波形230の両方の部分(イオン電流段階及びシース崩壊段階)は、プラズマ処理中に基板103において交互に及び/又は別々に確立されうる。イオン電流段階の開始時には、PV波形発生器175によってバイアス電極104に供給されるPV波形の負の部分(例えば、イオン電流部分)の供給により、基板103で電圧が低下し、基板103の上方に高電圧シースが形成される。高電圧シースにより、イオン電流の段階でプラズマ生成された正イオンをバイアス基板に向かって加速することができ、RIEプロセスの場合、プラズマ処理中に基板表面に発生するエッチングプロセスの量と特性を制御することができる。いくつかの実施形態では、イオン電流段階は、概して、
図2に波形230で示すように、段階全体にわたって基板における電圧が安定している又は変動が最小であるパルス電圧波形の領域を含むことが望ましい。波形225の正の傾きによって示されるような、イオン電流段階の間に基板で確立される電圧の著しい変動が、望ましくないことには、イオンエネルギー分布(IED)に変動を引き起こし、よって、RIEプロセス中に基板に形成されるエッチングされたフィーチャの望ましくない特性を引き起こすことに留意されたい。
【0029】
図3Aは、
図1の伝送ライン163又は166などの伝送ラインに沿って測定された順方向RF電圧波形331及び相互変調歪み(IMD)発生RF電圧波形326のプロット301である。1つの例では、プロット301は、RF電力システム189から約40.68MHzの周波数で供給されるRF電圧波形326と、DC電力システム183から供給されるパルス電圧波形と、の間に(これら両方が
図3Bに示されている)生じる供給及び相互作用により、RF電力システム189内部のノードにおいて40MHz±400kHzの周波数で行われた測定値から生成された。プロット301は、順方向RF電圧波形331の包絡線370、及びIMD生成されたRF電圧波形326の包絡線376を含み、これらはすべて、RF電力システム189内部の構成要素から供給されるRFバイアス電圧波形と、DC電力システム183のPV波形生成器から供給されるパルス電圧波形と、の供給間の相互作用によって生成される。
【0030】
処理中、順方向RF電圧波形331は、伝送ライン165(
図1)のような伝送ラインを通して、処理チャンバ100の処理空間129内の負荷(例えば、ガス)に適用される。負荷のインピーダンスがソース(RF信号発生器など)のインピーダンスに適切に整合していない場合、波形の一部が同じ伝送ラインに沿って逆方向に再び反射する可能性がある。したがって、波形の実質的な部分が伝送ラインに沿って再び反射するのを防ぐために、インピーダンス整合回路172による構成要素の1つ以上を調整すること、及び/又は、プラズマ処理中に負荷のインピーダンスをソースに整合させるためにRF波形発生器171によって供給されるRFバイアス波形の周波数を調整することによって、整合インピーダンスを見つける必要がある。インピーダンスを適切に整合させるために、順方向RF電圧と反射RF電圧は、RF電力システム189内部のノードにおいて、駆動RF周波数で測定される。従来のRF電力供給方法を使用した従来のRF電力供給システムを使用して行われた測定により、順方向RF電圧波形331の包絡線370と、駆動RF周波数の調波周波数(harmonic frequenc)の1つではないIMD生成されたRF電圧波形326の包絡線376を形成することができる。
図3Aに示されるように、IMD生成されたRF電圧波形326の包絡線376の大きさは、望ましくないことには、時間と共に変化し、順方向RF電圧波形331の包絡線370の大きさに近い点から、ゼロRF電力に近いIMD生成されたRF電圧波形326の包絡線376の大きさまで変化する。
【0031】
図3Bは、バイアス電極104(
図1)に供給されるパルス電圧波形321と、エッジ制御電極115(
図1)に供給されるパルス電圧波形322とが、ともにパルス電圧波形321及び322の上部に印可される高周波のRF電圧波形326(例えば、40MHzのRF信号)を更に含む例を示している。
図2に関連して上述したように、パルス電圧波形は、イオン電流段階とシース崩壊段階の2つの主要段階を含む。パルス電圧波形の両方の部分(イオン電流段階とシース崩壊段階)は、プラズマ処理中に基板103で確立される。上述のように、RIEプロセスでは、エッチングプロセスは主にパルス電圧波形の第2の段階(例えば、イオン電流段階)中に行われる。パルス電圧波形の両段階の間、
図3Aに見られるようなIMD生成RF電力構成要素の変動は、基板間及び/又はチャンバ間のプロセス結果の変動を引き起こす可能性があり、チャンバ及びRF電力システム189内部のハードウェア構成要素に損傷をもたらす可能性がある。
【0032】
図4は、2つの異なる従来のプラズマ処理チャンバで見られる広帯域反射の割合を示すチャートである。広帯域反射の割合は、プラズマ処理システムに見られるIMD及び調波反射による反射電力量(即ち、負荷に供給されなかった電力の量)対RF源から供給された順方向RF電力量を測定するために使用される。曲線405は、第1の処理チャンバ460内の電極に適用されるパルス電圧波形の大きさの関数として反射RF電力の割合を示す。曲線410は、第2の処理チャンバ470内の電極に適用されるパルス電圧波形の大きさの関数として反射RF電力の割合を示す。ここで、第1及び第2の処理チャンバは実質的に同様に構成され、プロットされた結果は、各処理チャンバにおいて同じプラズマ処理レシピ(plasma processing recipe)を実行することによって作成された。チャート400に示されるように、従来のRF電力供給方法を利用する従来のRF電力供給システムを使用することにより、負荷に供給されるRF電力の割合は、チャンバごとに、特に高いパルス波形電圧で、変化する。
図4に見られるように、パルス電圧波形電圧の電圧レベルが高くなるにつれて、IMDに対するエネルギー損失の割合は増加する。これは、パルス電圧波形のイオン電流段階の間に基板で確立される電圧の大きさによって決定される。曲線405及び410はいずれも、約4kVと8kVとの間で最大パーセンテージまで増加する。この例では、約1500WのRF電力、9mTorrのチャンバ圧力、1000Hzのパルス電圧繰返し周波数、及び59%のDC電力デューティサイクルの供給を含むプラズマプロセスにおいて、第1の処理チャンバ460内のRF電力供給構成要素内で見られるIMDに対するエネルギー損失の割合は、約2kVから約4.5kVのピークまで増加し、その後、4.5kVを超える電圧で低下し始めた。代替的には、同じプロセスレシピを第2の処理チャンバ470で実行した場合、第2の処理チャンバ470で形成される反射RF電力の割合は、約2kVから約6kVまで増加し、その後約7kVで低下する。この例では、第1の処理チャンバ460と第2の処理チャンバ470との間の反射RFの差は、より望ましい高いパルス波形電圧レベルにおいて約8パーセントでありうる。
【0033】
図5Aは、処理チャンバ内に配置された電極に適用されるパルスRF波形501を示す。パルスRF波形501は、RF電力が第1の期間(T
ON)処理チャンバ内部の電極に供給されるRF電力供給段階512と、RF電力が第2の期間(T
OFF)電極に供給されないRF電力「オフ」段階517と、の2つの段階を含む。
図5Bは、1つの実施形態による、
図5Aに図示されるパルスRFバイアス電圧信号の供給とパルス電圧波形521及び522の供給に起因して組み合わされるパルス電圧波形及びパルスRFバイアス電圧信号のプロットを示す。
図3Bのパルス電圧波形321及び322に関連して同様に説明したように、1つの実施例では、パルス電圧波形521及び522は、それぞれ、バイアス電極104及びエッジ制御電極115のような、処理チャンバ内部の1つ以上の電極に供給される。
【0034】
図5A及び
図5Bに示すように、パルスRF波形501は、パルス電圧波形521及び522のうちの少なくとも1つの供給と同期しており、イオン電流段階の間、パルス電圧波形の少なくとも一部と重なる。図示されるように、RF電力供給段階512、よって、インピーダンス整合回路172が、RF波形発生器171から供給されるRF電力を供給するために利用されるのは、供給されるパルス電圧波形の安定部分の間だけである。安定した、RIEエッチングの観点からはエッチングの大部分が行われる重要な段階の間にRF電力を供給することで、負荷のインピーダンスがパルス電圧波形の供給の異なる段階と段階の間及びその段階中に、急速に変化する場合に、インピーダンス整合回路172が整合点を見つけようとするのを防止することになる。RF波形を、イオン電流の段階でオン、シース崩壊の段階でオフにパルス化すること(pulsing)によって、RF電力が処理チャンバ100内の電極に供給されるときにインピーダンス整合回路172によって見られるインピーダンス変動の量を制限することによって、インピーダンス整合回路の性能が向上すると考えられる。したがって、RF電力がパルス化されず、
図3Bに示されるように一定の電力に維持される場合、測定された反射RF電力は、
図3Aに見られるように、シース崩壊段階327とイオン電流段階との間で大きさが変化する。したがって、本明細書で提供される本開示の1つの実施形態では、パルスRF波形501は、パルス電圧波形のイオン電流段階のかなりの部分に提供されるRF信号を含む。いくつかの実施形態では、RF電力供給段階512の持続時間は、イオン電流段階の全長に及ぶように構成される。1つの構成では、RF電力供給段階512の間に供給されるRF電力は、RF電力がイオン電流段階開始332とイオン電流段階終了333との間に延びるパルス電圧波形の領域内部に供給されるように、システムコントローラ126を使用することよって同期化される。1つの構成では、PV波形発生器とRF電源は、マスタースレーブ関係(master slave relationship)で動作する。。ここで、マスターは、スレーブが所望の時間に波形を供給するようにトリガーするタイミング信号(例えば、方形波TTL信号)を提供する。例えば、PV波形の所望の部分の間にRF波形が供給されるように、PV波形発生器がマスターであり、RF電源がスレーブである。例えば、RF波形の所望の部分の間にPV波形信号が供給されるように、RF電源がマスターであり、PV波形発生器がスレーブである。
【0035】
RF波形がシース崩壊段階の間のみ供給されるいくつかの実施形態では、イオンエネルギー分布関数(IEDF)は、RF波形がイオン電流段階の間供給される場合よりも狭くなる。これは、RF波形の供給によってプラズマ中のイオンに与えられるエネルギー幅拡大効果が、シースが形成される間(プラズマ生成イオンが基板表面に向かって加速される段階)には生じないためである。このRF波形供給方法を使用することで、波形パルスのイオン電流の段階の間、イオンエネルギーをより正確に制御することができる。
【0036】
代替的な構成では、パルスRF波形501は、パルス電圧波形521及び522の少なくとも一方の供給と同期しており、シース崩壊段階の間、パルス電圧波形の少なくとも一部と重なる。RF波形を、シース崩壊段階の間オン、イオン電流段階の間オフにパルス化することにより、RF電力が処理チャンバ100内の電極に供給されるときにインピーダンス整合回路172によって見られるインピーダンスの変動量を制限することによって、インピーダンス整合回路の性能が向上するだろう。したがって、本明細書で提供される本開示の1つの実施形態では、パルスRF波形501は、パルス電圧波形のシース崩壊段階のかなりの部分に提供されるRF信号を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、
図5Bに示されるように、RF電力供給段階512の持続時間は、イオン電流段階の持続時間の一部のみを含むように構成される。この場合、RF電力供給段階512は、システムコントローラ126の使用によって同期され、イオン電流段階開始332から第1の時間遅延(T
DELAY)が経過した後にRF電力が供給され、イオン電流段階終了333に到達し、PV波形発生器175によって次のパルス電圧波形が生成され始める前に、第2の時間遅延(T
PD)、即ちRF電力供給後の時間遅延、が経過して停止するようになされる。第1の時間遅延(T
DELAY)は、パルス電圧波形のイオン電流段階の全長の約1%から約20%まで変化し、シース崩壊段階からイオン電流段階への移行中に、パルス電圧波形に見られる自然変動(即ち、「リンギング(ringing)」)に起因する、RF波形の供給中に発生するIMD発生反射電力の変動を低減するのに役立ちうる。第2の時間遅延(T
PD)は、パルス電圧波形のイオン電流段階の全長の約0%から約10%の範囲で変化し、イオン電流段階からシース崩壊段階への移行開始の変動に起因するIMD生成反射電力の変動を低減するのに役立ちうる。1つの例では、第2の時間遅延(T
PD)は、パルス電圧波形のイオン電流段階の全長の0.1%と10%との間である。いくつかの実施形態では、イオン電流段階は、パルス電圧波形の全期間(T
TP)の約30%と約95%との間を占め、典型的にはパルス電圧波形の全期間の約80%を上回る。パルス電圧波形は、100kHz以上、例えば200kHz以上、若しくは400kHz以上、又は100kHzと500kHzとの間の範囲の繰返し周波数で供給される一連の電圧パルスを含みうる。1つの例では、パルス電圧波形の全周期(T
TP)は約2.5マイクロ秒(μs)である。RF波形がシース崩壊段階又はイオン電流段階のいずれで供給されるかにかかわらず、発生器に戻るIMD電力は、例えば5倍以上など、大幅に低減することができ、発生器内部の出力アンプ構成要素に負荷をかける前に、発生器がより高い供給電力に到達できるようにする。
【0038】
図6は、
図1の処理チャンバ100のようなプラズマ処理チャンバにおけるPV波形とRF波形を同期させるための方法を説明する図である。方法600は、PV波形を電極に適用し、パルスRF波形を電極に適用し、パルスRF波形をPV波形に同期させることによって基板を処理する方法を含む。
【0039】
工程602において、方法600は、バイアス電極104などの電極にPV波形を適用することを含む。PV波形は一連の電圧パルスを含みうる。一連のパルスの各パルスは、第1の段階と第2の段階を含む。第1の段階はシース崩壊段階を含み、第2の段階はイオン電流段階を含み、これらは処理中に基板で確立される。
図5Bに記載され、また上述したように、シース崩壊段階は基板で測定される大きな容量を含み、他方で、イオン電流段階は基板で測定される小さな容量を含む。
【0040】
工程604において、方法600は、処理チャンバの処理空間内にプラズマを発生させることを含む。いくつかの実施形態では、パルスRF波形は、処理チャンバ100内部の1つ以上の電極にRF信号を供給することによって、基板支持体の支持面上に配置された基板上にプラズマを形成するために、処理チャンバ100の処理空間129内に流された1つ以上のガス種を点火するために使用される。場合によっては、RF波形501は、1MHzと60MHzとの間の周波数を有するRF信号を含む。1つの例では、RF波形501は、40MHzの周波数を有するRF信号を含む。工程602及び604は、実質的に同時に又は任意の所望の順序で完了しうる。
【0041】
工程606において、方法600は、パルスRF波形をPV波形と同期させることを含む。上述したように、パルスRF波形は、パルスRF波形のRF電力供給段階512がPV波形の少なくとも1つの段階と同期するようにパルス化される。1つの実施形態では、パルスRF波形とパルス電圧波形とを同期させるタスクを実行するために、システムコントローラ126は、RF波形発生器171及びPV波形発生器175に1つ以上の制御信号を供給し、これらの構成要素によって生成される波形の各々の供給タイミングを、
図5A~5Bに関連して上記で同様に説明したように同期させるなど、同期させることができるようにする。代替的には、別の実施形態では、RF波形発生器171がマスタデバイスとして機能し、よってPV波形発生器175に制御信号を送り、これらの構成要素によって生成される各波形の供給タイミングを同期させることができる。別の実施形態では、PV波形発生器175がマスタデバイスとして機能し、よってRF波形発生器171に制御信号を送り、これらの構成要素によって生成される各波形の供給タイミングを同期させることができる。
【0042】
方法600において実行される工程は、望ましいプラズマプロセスがプラズマ処理チャンバ内部に配置された基板上で実行できるように、一定期間、実行されうる。
【0043】
以上の記述は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】