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特表2024-545131操作可能光モジュールを校正するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】操作可能光モジュールを校正するための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534269
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022084229
(87)【国際公開番号】W WO2023104660
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021214142.0
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】マンガー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】クリスト レギーナ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197CA10
2H197CC14
2H197DA02
2H197DA06
2H197GA01
2H197GA10
2H197GA23
(57)【要約】
マイクロリソグラフィ投影露光装置(110)のための操作可能光モジュール(12)を校正するための方法であって、操作可能光モジュールが、光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイル(18)を設定するための少なくとも1つの操作要素(16)を備える、方法が提供される。本方法は、時間変化励起信号(43)を少なくとも1つの操作要素に印加するステップと、励起信号の変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの局所変化プロファイル(18)を測定する測定デバイス(40)を用いて生測定データセット(62)を決定するステップと、生測定データセットの変化プロファイル(18)における、励起信号(43)の時間変化によって生じた、時間変化スケーリング(73)を推定するステップと、時間変化スケーリング(73)を生測定データセットの変化プロファイル(18)に当てはめることによって光学特性の全効果プロファイル(64)を決定するステップと、全効果プロファイル(64)に基づいて操作可能光モジュールの校正データ(64、66)を決定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための方法であって、前記操作可能光モジュールが、前記光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備え、前記方法が、
- 時間変化励起信号を前記少なくとも1つの操作要素に印加するステップと、
- 前記励起信号の前記変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの前記局所変化プロファイルを測定する測定デバイスを用いて生測定データセットを決定するステップと、
- 前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける、前記励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定するステップと、
- 前記時間変化スケーリングを前記生測定データセットの前記変化プロファイルに当てはめることによって前記光学特性の全効果プロファイルを決定するステップと、
- 前記全効果プロファイルに基づいて前記操作可能光モジュールの校正データを決定するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記時間変化スケーリングが、前記励起信号の前記変化の間の前記異なる時点において生じた前記少なくとも1つの操作要素の前記効果の計算シミュレーションを用いて推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記時間変化スケーリングの前記推定が、以下のステップ:
- 前記生測定データセットに基づいて固有値分解を遂行し、前記プロセスにおいて確認された固有モードを縮約効果プロファイルとして選択することによって、縮約効果プロファイルを確認するステップ、および
- 前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルの、前記励起信号の前記時間変化によって生じた、前記時間変化スケーリングを推定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルから前記測定デバイスによって生じた既知の測定の影響を数学的に除去することによって、補正測定データセットが決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生測定データセットに基づいて実施される前記固有値分解が前記補正測定データセットに対して遂行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルの、前記励起信号の前記時間変化によって生じた、前記時間変化スケーリングの前記推定が、前記補正測定データセットの複数の前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルのそれぞれのプロファイル励起振幅を計算し、前記生測定データセットの、基礎をなす前記変化プロファイルのそれぞれの測定時点に依存する前記計算されたプロファイル励起振幅を前記時間変化スケーリングとして表すことを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記全効果プロファイルを決定するための前記時間変化スケーリングの前記当てはめが、前記変化プロファイルの時間経過にわたる前記生測定データセットの前記変化プロファイル内の複数の場所における前記生測定データセットの前記変化プロファイルへの前記時間変化スケーリングのそれぞれの当てはめにより、前記変化プロファイル内のそれぞれの前記場所について前記変化プロファイルにおける前記時間変化スケーリングのそれぞれの励起振幅を決定することを含み、前記決定された励起振幅全体が前記光学特性の前記全効果プロファイルを形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記全効果プロファイルを前記生測定データセットの適切な変化プロファイルにそれぞれ当てはめることによって、関連のある前記変化プロファイルのそれぞれの効果振幅が確認され、前記校正データが前記効果振幅65と前記励起信号の時間変化パラメータとの間の相関を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記励起信号が、一様な励起信号値を用いた比較測定が前記生データセットの前記変化プロファイルの前記測定の間の異なる時点において実施されるような仕方で構成され、前記適切な変化プロファイルへの前記全効果プロファイルの前記当てはめの前に前記比較測定を用いて前記変化プロファイルから背景ノイズが除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全効果プロファイルが、規定ターゲットプロファイル、および前記操作可能光モジュールの可能な構造的誤差の少なくとも1つの規定感度を含む、プロファイルモデルを用いて当てはめられ、関連構造的誤差のパラメータが当てはめによって確認される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記時間変化励起信号が、基本信号に交番信号を重畳することによって形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記固有値分解が前記縮約効果プロファイルの前記確認の間に前記補正測定データセットに対して実施される、請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記変化プロファイルが前記光モジュールの光学面の変形プロファイルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの操作要素がアクチュエータとして構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータが、前記光学面と平行なその広がりを変更するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記変化プロファイルが光透過性材料内の屈折率の変化を記述する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための装置であって、前記操作可能光モジュールが、前記光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備え、前記装置が、
- 時間変化励起信号を前記少なくとも1つの操作要素に印加するための信号伝送器と、
- 前記励起信号の前記変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの前記局所変化プロファイルを測定することによって生測定データセットを決定するための測定デバイスと、
- 評価デバイスであって、
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける、前記励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定することと、
前記時間変化スケーリングを前記生測定データセットの前記変化プロファイルに当てはめることによって前記光学特性の全効果プロファイルを決定することと、
前記全効果プロファイルに基づいて前記操作可能光モジュールの校正データを決定することと
を行うように構成された、評価デバイスと
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月10日の独国特許出願102021214142.0号の優先権を主張する。同特許出願の開示全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
操作可能光モジュールは、光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための複数の操作要素を備える。変化プロファイルは操作プロファイルとも称され得、例えば、光モジュールの光学面の変形プロファイルまたは光モジュールの屈折率の変化であることができる。操作要素は、例えば、特開2013-161992号に記載されるとおりの、アクチュエータを含むことができる。ウェーハ上へのマスク構造の最も正確な結像を確実にするには、可能な限り低い波面収差を有する投影レンズを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置が必要とされる。したがって、投影レンズは、光学要素の姿勢を変更するためのマニピュレータ、または他のマニピュレータと相互作用して適切な場合、例えば、光学要素の変形による、波面誤差の補正を可能にする上述の操作可能光モジュールを具備する。
【0004】
この目的を達成するために、通例、投影レンズの収差特性が定期的に測定され、適切な場合には、個々の測定の間の収差特性の変化がシミュレーションによって決定される。マニピュレータコントローラは、収差特性から、操作可能光モジュールへ、および、適切な場合には、他のアクチュエータへ伝送される作動信号を確認する。操作可能光モジュールへ伝送される作動信号は、光モジュールによって設定されなければならない変化プロファイルまたは作動プロファイルを指定するか、あるいはすでに設定されている変化プロファイルの補正を指定する。残念ながら、多くの場合、設定された実際の変化プロファイルと作動信号によって指定された変化プロファイルとの間には偏差が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するため、ならびに具体的には、操作可能光モジュールが、高精度および比較的小さい時間消費をもって校正され得ること、ならびに作動信号を用いて指定された、校正されたモジュールの光学特性の変化プロファイルが光モジュール上で高精度で設定され得ることを確実にするために用いられる、上述された種類の方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上述の目的は、例えば、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための方法によって達成され得る。操作可能光モジュールは、光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備える。本発明に係る方法は、時間変化励起信号を少なくとも1つの選択された操作要素に印加するステップと、励起信号の変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの局所変化プロファイルを測定する測定デバイスを用いて生測定データセットを決定するステップと、生測定データセットの変化プロファイルにおける、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定するステップと、時間変化スケーリングを生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることによって光学特性の全効果プロファイルを決定するステップと、全効果プロファイルに基づいて操作可能光モジュールの校正データを決定するステップとを含む。
【0007】
操作プロファイルとも称され得、例えば、光モジュールの光学面の変形プロファイルである、光学特性の局所変化プロファイルは、特に、2次元変化プロファイルである。特に、励起信号は時間変化電圧である。「励起信号の変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの局所変化プロファイルを測定する測定デバイスを用いて」生測定データセットを決定することは、生測定データセットの決定が、少なくとも、光学特性のこれらの変化プロファイルの測定を含むことを意味する。
【0008】
換言すれば、生測定データセットの変化プロファイルは、励起信号の時間変化によって生じ、上述の方法において推定される時間変化スケーリングを包含する。これは、関連のある変化プロファイルは励起信号のそれぞれの値に依存してスケーリングされることを意味する。これは、架空の時間的に一定の励起信号の場合には、時間変化スケーリングは存在しなくなるであろうことを意味する。時間変化スケーリングは、例えば、励起信号の時間変化に依存した変化プロファイルの計算シミュレーションによって決定され得る。代替的に、時間変化スケーリングは、以下においてより詳細に説明されるように、生測定データセットに基づいて固有値分解を遂行することによって決定され得る。
【0009】
プロファイルを測定データに「当てはめること」は、特定の可変パラメータを有するプロファイルを提供し、次に、回帰計算を用いて、プロファイルが測定データに最適に適合されるような仕方で可変パラメータを選択することを意味すると理解される。例えば、プロファイルの平均二乗偏差、または偏差を記述する異なる種類のメトリックを最小化することができる。
【0010】
全効果プロファイルを決定するために本発明に係る時間変化スケーリングを生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることは、時間変化スケーリングに少なくとも1つの可変パラメータが提供され、少なくとも1つの可変パラメータが、時間変化スケーリングが生測定データセットの変化プロファイルに最適に適合されるような仕方で当てはめ法において選択されることを意味すると理解される。
【0011】
全効果プロファイルに基づく校正データの決定は、全効果プロファイルを、直接、校正データとして決定することによって行われ得る。代替的に、または加えて、校正データのさらなる部分を決定するために、全効果プロファイルに基づいてさらなる計算を遂行することができる。
【0012】
本方法を用いて生成された校正データは、操作可能光モジュールの制御ユニットを校正するために用いることができる。すなわち、校正データに基づいて、作動信号が光学特性の指定された変化プロファイルに高精度で変換されるような仕方で、制御ユニットの特性曲線を設定することができる。
【0013】
生測定データセットを決定するための時間変化励起信号の本発明に係る使用、および変化プロファイルにおける、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングの推定のおかげで、変化プロファイルを測定する際の測定時間を大幅に延長することなく、校正データの決定における静的誤差だけでなく、特に、動的またはランダム誤差をも抑制することが可能である。静的誤差は、例えば、測定デバイスのアライメント誤差によって生じる系統的誤差を意味すると理解され、ランダム誤差は、例えば、検出器ノイズまたは測定デバイスにおける縞によって生じる誤差を意味すると理解される。測定データを平均することによって背景ノイズをN分の1に低減する結果、測定時間がN2倍に延長される従来の測定方法とは対照的に、本発明に係る方法では、励起信号および時間変化スケーリングの使用のおかげで、著しくより少ない時間消費をもってノイズ抑制を達成することができる。
【0014】
一実施形態によれば、投影露光装置は複数の操作要素を含み、校正方法は、操作要素のうちの少なくとも1つを選択するさらなるステップであって、時間変化励起信号が、選択された操作要素に印加される、さらなるステップを含む。
【0015】
さらなる実施形態によれば、時間変化スケーリングは、励起信号の変化の間の異なる時点において生じた少なくとも1つの操作要素の効果の計算シミュレーションを用いて推定される。操作要素の効果は励起信号の変化によって生じる。換言すれば、時間変化スケーリングは、例えば、操作可能光モジュールおよび測定デバイスの先験的知識に基づく、シミュレーション計算によって推定される。それゆえ、シミュレーション計算は、特に、時間変化励起信号に対するマニピュレータの応答を確認する。
【0016】
さらなる実施形態によれば、生測定データセットの変化プロファイルにおける時間変化スケーリングの推定は、以下のステップ:生測定データセットに基づく固有値分解を遂行し、該プロセスにおいて確認された固有モードを縮約効果プロファイルとして選択することによって、縮約効果プロファイルを決定するステップ、および生測定データセットの変化プロファイルにおける縮約効果プロファイルの、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定するステップを含む。時間変化スケーリングを生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることによって決定される、光学特性の全効果プロファイルは、縮約効果プロファイルとは対照的に、「完全効果プロファイル」とも称され得る。
【0017】
生測定データセットの測定された変化プロファイルにおいて、縮約効果プロファイルは、他の成分によって重畳され得る少なくとも1つの成分を表す。変化プロファイルにおける縮約効果プロファイルの、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定する際には、縮約効果プロファイルに対応する成分がその時間変化スケーリングに関して分析される。本文脈において、時間変化スケーリングは時間変化効果信号とも称される。
【0018】
一実施形態によれば、生測定データセットの変化プロファイルから測定デバイスによって生じた既知の測定の影響を数学的に除去することによって、補正測定データセットが決定される。このような測定の影響は、通例、測定結果に対する時間的に変化する影響であり、例えば、測定デバイスの機械的なアライメントドリフトを含むことができる。上述された測定の影響の存在は、通例、測定精度の劣化をもたらす。「生測定データセットの変化プロファイルから測定デバイスによって生じた既知の測定の影響を数学的に除去することによって」補正測定データセットを決定することは、補正測定データセットの決定は、少なくとも、これらの既知の測定の影響を数学的に除去することを含むことを意味する。これらの測定の影響を数学的に除去することは、例えば、傾斜、焦点ぼけ、およびコマなどの、測定デバイスの、または測定機構の1つまたは複数の自由度を生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることによって達成され得る。一実施形態変形例によれば、生測定データセットに基づいて遂行される固有値分解は補正測定データセットに対して行われる。
【0019】
さらなる実施形態によれば、生測定データセットの変化プロファイルにおける縮約効果プロファイルの、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定することは、補正測定データセットの複数の変化プロファイルにおける縮約効果プロファイルのそれぞれのプロファイル励起振幅の計算、および生測定データセットの、基礎をなす変化プロファイルのそれぞれの測定時点に依存する計算されたプロファイル励起振幅を時間変化スケーリングとして表すことを含む。換言すれば、生測定データセットの、基礎をなす変化プロファイルのそれぞれの測定時点に依存する、計算されたプロファイル励起振幅の表現は時間変化スケーリングをもたらす。
【0020】
補正測定データセットの複数の変化プロファイルにおける縮約効果プロファイルのそれぞれのプロファイル励起振幅の計算は、具体的には、縮約効果プロファイルを関連のある変化プロファイルに当てはめることによって行われる。それぞれのプロファイル励起振幅の計算は、一実施形態によれば、補正測定データセットの全ての変化プロファイルについて達成される。計算されたプロファイル励起振幅が表されるそれぞれの測定時点は、生測定データセットからの関連する変化プロファイルの測定時点を意味すると理解される。
【0021】
さらなる実施形態によれば、全効果プロファイルを決定するために時間変化スケーリングを当てはめることは、変化プロファイルの時間経過にわたる生測定データセットの変化プロファイル内の複数の場所における生測定データセットの変化プロファイルへの時間変化スケーリングのそれぞれの当てはめを含む。これから、変化プロファイル内のそれぞれの場所について、時間変化スケーリングのそれぞれの励起振幅が決定される。決定された励起振幅全体は全効果プロファイルを形成する。換言すれば、時間変化スケーリングは、変化プロファイルにおける時間変化スケーリングのそれぞれの励起振幅を決定するために、変化プロファイルの異なる共通場所についての生測定データセットの変化プロファイルに当てはめられ、異なる共通場所について決定された励起振幅全体は光学特性の全効果プロファイルを形成する。
【0022】
時間変化スケーリングを生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることは、スケーリングの少なくとも振幅が当てはめ法における変数として設定され、次に、励起振幅が、回帰計算を用いて、時間変化スケーリングがそれぞれの共通場所における生測定データセットの変化プロファイルに最適に適合されるような仕方で選択されることを意味すると理解される。異なる場所において確認された振幅は合わせて全効果プロファイルを形成する。
【0023】
さらなる実施形態によれば、全効果プロファイルを生測定データセットの適切な変化プロファイルにそれぞれ当てはめることによって、関連のある変化プロファイルのそれぞれの効果振幅がさらに確認される。効果振幅と励起信号の時間変化パラメータとの間の相関が、校正方法によって、好ましくは、完全効果プロファイル自体に加えて、校正データとして提供される。これは、校正データは効果振幅と励起信号の時間変化パラメータとの間の相関を含むことを意味する。時間変化パラメータは励起信号の電圧であることができる。効果振幅は、好ましくは、関連のある変化プロファイルを実質的に取得するために全効果プロファイルに乗算されるべきスケーリング係数を示す。全効果プロファイルを適切な変化プロファイルに当てはめる際には、一実施形態によれば、測定デバイスによって生じる測定の影響が数学的に除去される。
【0024】
上述の実施形態の一実施形態変形例によれば、励起信号は、生データセットの変化プロファイルの測定の間の異なる時点において一様な励起信号値を用いた比較測定が実施されるように構成される。全効果プロファイルを適切な変化プロファイルに当てはめる前に、比較測定を用いて変化プロファイルから背景ノイズが除去される。具体的には、比較測定は、励起信号が値0または固定オフセット電圧を有するゼロ測定として知られるものである。一実施形態変形例によれば、また、現実のゼロ点、すなわち、0Vの電圧値が交番信号内に含まれ得る。これらのゼロ点は規則的な時間間隔を置いて提供され、例えば、操作可能光モジュールのヒステリシス効果の測定に含むためのリセット点の役割を果たすことができる。
【0025】
さらなる実施形態によれば、全効果プロファイルは、規定ターゲットプロファイル、および操作可能光モジュールの可能な構造的誤差の少なくとも1つの規定感度を含む、プロファイルモデルを用いて当てはめられる。当てはめプロセスは1つまたは複数の関連構造的誤差のパラメータを決定する。1つまたは複数の構造的誤差に関して確認されたパラメータは、さらなる光モジュールの製造における同じ構造的誤差を回避するためのプロセスフィードバックの役割を果たすことができる。すなわち、製造プロセスは、後の時点で製造される光モジュールにおいては構造的誤差がもはや生じないか、または低減した程度に生じるように適宜適合され得る。さらなる実施形態によれば、時間変化励起信号は基本信号への交番信号の重畳によって形成される。例えば、基本信号はランプ状であることができる。交番信号は、2つの異なる信号レベルの間で周期的または非周期的にジャンプする、搬送波を形成し、信号レベルは離散値または値の範囲を表すことができる。すなわち、交番信号の上限値および下限値は経時的に固定したままであるか、あるいは上限値または下限値の範囲内で変化することができる。一実施形態によれば、信号レベルのうちの1つは値0を有する。好ましくは、基本信号への交番信号の重畳は乗算重畳である。さらに、乗算重畳の結果得られた信号には、信号レベルのうちの1つに中点値を指定したとき、基本信号によって規定され、中点値によって繰り返し割り込まれる値が励起信号のために生じるよう、オフセットが与えられ得る。
【0026】
さらなる実施形態によれば、縮約効果プロファイルを確認するとき、固有値分解は補正測定データセットに対して実施される。具体的には、主成分分析が補正測定データセットに対して遂行される。
【0027】
さらなる実施形態によれば、変化プロファイルは光モジュールの光学面の変形プロファイルである。一実施形態変形例によれば、少なくとも1つの操作要素はアクチュエータとして構成される。特に、複数の操作要素がアクチュエータとして構成される。アクチュエータは、光学面と平行にその広がりを変更するように構成され得る。代替的に、アクチュエータは、光学面に対して横断方向にその広がりを変更するように構成され得る。代替的な実施形態変形例によれば、少なくとも1つの操作要素は、光学要素のスポット加熱によって光学面の形状を変更するように構成された、加熱要素である。
【0028】
さらなる実施形態によれば、変化プロファイルは光透過性材料内の屈折率の変化を記述する。このような屈折率の変化は、例えば、加熱または冷却要素として構成された対応する操作要素を用いて温度プロファイルを設定することによって達成され得る。代替的に、変化プロファイルは投影露光装置の光学要素内の偏光特性の変化を記述することができる。
【0029】
上述の目的は、さらに、例えば、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための装置であって、操作可能光モジュールが、光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備える、装置によって達成され得る。本発明に係る装置は、時間変化励起信号を少なくとも1つの操作要素に印加するための信号伝送器と、励起信号の変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの局所変化プロファイルを測定することによって生測定データセットを決定するための測定デバイスと、評価デバイスとを備える。評価デバイスは、生測定データセットの変化プロファイルにおける、励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定することと、時間変化スケーリングを生測定データセットの変化プロファイルに当てはめることによって光学特性の全効果プロファイルを決定することと、全効果プロファイルに基づいて操作可能光モジュールの校正データを決定することとを行うように構成されている。
【0030】
時間変化スケーリングはまた、時間変化効果信号とも称され得、時間変化効果信号を用いて、基礎をなす変化プロファイルのそれぞれの測定時点に依存する、計算されたプロファイル励起振幅が表される。
【0031】
本発明に係る方法の上述の実施形態、例示的実施形態、または実施形態変形例等に関して指示された特徴は、対応して、本発明に係る校正装置に適用され得、その逆もしかりである。本発明に係る実施形態のこれらおよび他の特徴は図の説明および請求項において説明される。個々の特徴は、本発明の実施形態として、別個に、または組み合わせて実施され得る。さらに、それらは、独立して保護可能である有利な実施形態を記述することができ、場合によっては、それらの実施形態のための保護は、本出願の依存中または後にのみ主張される。
【0032】
本発明に係る例示的実施形態の以下の詳細な説明において、添付の概略図面を参照しつつ、本発明の上述の、およびさらなる有利な特徴が示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】励起信号を用いて生成された生測定データセットを測定するための測定デバイスと、生測定データセットを評価するための評価デバイスとを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールの本発明に係る校正装置の例示的実施形態を示す図である。
図2】評価デバイス内で行われる、生測定データセットからの時間変化スケーリングの決定を示す図である。
図3】評価デバイス内でさらに行われる、時間変化スケーリングの助けによる生測定データセットからの全効果プロファイルの決定を示す図である。
図4】評価デバイス内でさらに行われる、全効果プロファイルからの操作可能光モジュールの構造的誤差の確認を示す図である。
図5】評価デバイス内でさらに行われる、生測定データセットの変化プロファイルの効果振幅と励起信号の電圧との間の相関の決定を示す図である。
図6】本発明に係る校正装置を用いて実施され得る、操作可能光モジュールを校正するための方法のフローチャートの第1の区分を示す図である。
図7】本発明に係る校正装置を用いて実施され得る、操作可能光モジュールを校正するための方法のフローチャートの第2の区分を示す図である。
図8】操作要素が上に配列された操作可能光モジュールのミラー要素の背面を示す図である。
図9】操作可能光モジュールの一実施形態を断面図で示す図である。
図10】操作可能光モジュールのさらなる実施形態を断面図で示す図である。
図11】操作可能光モジュールのさらなる実施形態を断面図で示す図である。
図12】統合された操作可能光モジュールを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置の本発明に係る一実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
後述される例示的実施形態、または実施形態、または実施形態変形例において、互いに機能的または構造的に同様である要素は、できる限り同じまたは同様の参照符号を与えられている。したがって、特定の例示的実施形態の個々の要素の特徴を理解するには、他の例示的実施形態の説明または本発明の一般的な説明が参照されなければならない。
【0035】
説明を容易にするために、デカルトxyz座標系が図に指示されており、該系から、図に示される構成要素のそれぞれの位置関係が明らかになる。図1において、x方向は図面平面と垂直に後者内へ延び、y方向は上方へ延び、z方向は左方へ延びる。
【0036】
図1は、操作可能光モジュール12を校正するための校正装置10の例示的実施形態を示す。操作可能光モジュール12は、図12に示されるEUVマイクロリソグラフィのための投影露光装置110内など、マイクロリソグラフィ投影露光装置内への設置のために提供される。操作可能光モジュール12は、ここでは変形可能ミラー要素14の形態の、光学要素と、光モジュール12の光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイル18を設定するための複数の操作要素16と、操作要素16を制御するための制御ユニット20と、を備える。図12に係る実施形態では、操作可能光モジュール12のミラー要素14は投影露光装置110の投影レンズ112のミラー要素E1の役割を果たす。この場合には、変化プロファイル18はミラー要素14の反射光学面15の変形プロファイルであり、それゆえ、光学特性は光学面15の表面偏差である。変化プロファイル18は、この場合には、光学面15上の2次元格子の点Pijについて、それぞれの変形値、すなわち、非操作状態において存在する光学面15のターゲット形状からの点Pijにおける光学面15の偏差を指示する、2次元行列Mijによって表される。指数iおよびjはそれぞれxおよびy方向において点Pijに番号を付ける。
【0037】
図12に係る投影レンズ112のミラー要素E1としての実施形態では、非操作状態におけるミラー要素14の反射光学面15は、100nm未満の波長、特に、約13.5nmまたは約6.8nmの波長を有するEUV放射を反射するための球形または非球形表面であり得る。ミラーの非球形表面は、例えば、5μm超の各回転対称非球面からの偏差および少なくとも1mmの各球面からの偏差を有する自由形状表面として形成され得る。
【0038】
操作可能光モジュール12の操作要素16は、図1において両矢印を参照して指示されるように、光学面15の変形プロファイルの形態の1次元または2次元変化プロファイル18が形成されるような仕方で、ミラー要素14の背面17に沿って、1つの次元に沿って、または2つの次元において配列され得る。図8は、アクチュエータの形態の5x5の操作要素16を有する2次元フィールドが変形可能ミラー要素14の背面17に配列されている、操作可能光モジュール12の一実施形態を示す。
【0039】
図9図11は、アクチュエータとして構成された操作要素16が異なる設計を有する、操作可能光モジュール12の異なる実施形態を示す。図9図11では、光モジュール12の上述の制御ユニット20は、図を簡略にする目的のために省略されている。
【0040】
図9に示される、操作可能光モジュール12の実施形態12aでは、ミラー要素14の背面17に装着された操作要素16は、光学面15と平行な、すなわち、ミラー要素14の光軸と垂直なそれらの広がりを変更するように構成されている。この目的のために、操作要素16は、電圧Uを用いて制御ユニット20によって制御される、圧電要素として設計され得る。操作要素16全体は、例えば、圧電マットとして設計され得る。
【0041】
電圧U>U0が操作要素16に印加された場合には、操作要素16は、中間操作要素16mとして示される操作要素を通じて、図9aに示されるように、その横方向の広がり、すなわち、図9の座標系に係るx方向のその広がりを縮める。これで、隣接した操作要素16が操作を受けない状態のままで操作要素16mがより短くなった場合には、ミラー材料は操作要素16mの領域内で圧縮され、それゆえ、これは光学面15上の隆起22aを形成する。電圧U<U0が操作要素16に印加された場合には、操作要素16は、中間操作要素16mを通じて、図9bに示されるように、その横方向の広がりを増大させる。このとき、隣接した操作要素16が操作を受けない状態のままで操作要素16mがその横方向の広がりを増大させた場合には、ミラー材料は操作要素16mの領域内で引き伸ばされる。すなわち、光学面15は操作要素16mに向かって引っ張られ、それゆえ、これは光学面15内のくぼみ22bを形成する。
【0042】
図10は、ミラー要素14が変形可能凹面ミラーとして構成されている、操作可能光モジュール12の第2の例示的実施形態12bを示す。操作要素16は、ミラー要素14の背面17に対して垂直に(すなわち、z方向に)作用する、アクチュエータとして設計されている。このような操作可能光モジュール12bが、例えば、特開2013-161992号に記載されている。ミラー要素14は、その正面上に、反射光学面15を形成するための反射コーティングを有し、ミラーホルダ24によって固定されている。
【0043】
光モジュール12の例示的実施形態12bは、ハウジング25、およびそれに固定された、アクチュエータの形態の多数の操作要素16をさらに含む。各操作要素16は、圧力センサ26、駆動要素27、ばね28、および接触要素29を有する。駆動要素27はy方向に膨張可能であり、収縮可能であるように形成され得、この目的のために、例えば、圧電要素または超音波モータを有し得る。駆動要素27の広がりに応じて、対応する力が、ばね28および接触要素29を介して、ミラー要素14の背面17の接触領域内に作用する。これは反射光学面15の局所変形を生じさせる。作用力は圧力センサ26によって検出され、指定変形を設定するために制御ユニット(図示せず)によって処理され得る。
【0044】
図11は、凹面状の変形可能ミラー要素14を有する操作可能光モジュール12の第3の例示的実施形態12cの概略断面を示す。操作可能光モジュール12cは、反射光学面15を形成する反射コーティング30の下に、圧電層36を包含し、これを用いて、電圧を局所的に印加することによって反射光学面15の局所変形が達成され得る。このような操作可能光モジュール12cが、例えば、独国特許出願公開第102011081603号に記載されている。
【0045】
光マニピュレータ12cは、この場合には、多数の電気線32が上に配置された、凹状基板31を含む。代替的に、基板31は凸状であることもできる。上面図において、各電気線32は基板31の周縁のすぐ近傍において第1の接触面を包含する。さらに、各電気線32は、電気線32の上に設けられた絶縁層33内のビア内に配置された、第2の接触面を包含する。絶縁層33は、貫通孔35を通じて、対応する電気線32にそれぞれ電気接続された、2次元実施形態を有する制御電極34の層を支持する。制御電極34上に、今度は対向電極37を支持する、圧電層36が配置されている。対向電極37は圧電層36全体の上に広がり、保護層38を支持する。
【0046】
最後に、保護層38上に反射コーティング30が配置されている。第1の接触面と対向電極37との間に適切な電圧を印加することによって、関連制御電極34の領域内の圧電層36の局所変形が得られる。それゆえ、制御電極34の各々の領域内の反射コーティング30の局所領域は操作可能光モジュール12cのそれらの光学効果設定可能ゾーン内を個々に表す。それぞれの制御電極34は、圧電層36の隣り合う区分および対向電極37の関連区分と共に、それぞれの操作要素16を形成する。
【0047】
図1に示される校正装置10は、測定デバイス40、信号伝送器42、および評価デバイス44を含む。信号伝送器42は、操作可能光モジュール12の制御ユニット20を介して時間変化励起信号43を1つまたは複数の操作要素16に印加するために用いられる。この場合には、信号伝送器42は励起信号43を直接発生することができ、制御ユニット20は、図1に示されるように、励起信号43を関連操作要素16へ転送することができる。代替的に、信号伝送器42はまた、適切な制御信号を発生することができ、制御ユニット20は、それを用いて、対応する励起信号43を関連操作要素16に印加する。
【0048】
測定デバイス40は、操作可能光モジュール12の、試験対象の役割を果たす、ミラー要素14の反射光学面15の干渉形状測定のために構成されている。具体的には、測定デバイス40を用いて、ターゲット形状からの表面15の実際の形状の偏差を決定することができる。測定デバイス40は、入力波として、特に光の、十分にコヒーレントな測定放射47を提供するための放射源46を含む。この例示的実施形態では、放射源46は、入力波がその起点を有する出射面を有する導波路を含む。導波路48は、例えば、レーザの形態の、放射発生モジュール49に接続されている。例として、この目的を達成するために、約633nmの波長を有するヘリウム-ネオンレーザを提供することができる。しかし、測定放射47はまた、電磁放射の可視または非可視波長範囲内の異なる波長を有することもできる。導波路48を有する放射源46は、測定デバイス40のために用いることができる放射源46の一例にすぎない。代替的実施形態では、導波路48の代わりに、レンズ要素、ミラー要素または同様のものを有する光学機構が、測定放射47からの好適な入力波を提供するために提供され得る。
【0049】
測定放射47は、まず、ビームスプリッタ50を通過し、次に、コリメータ51を通過し、次に、フィゾー面53を有するフィゾー要素52に入射し、フィゾー面53において、参照波54が反射により生成される。それゆえ、図1に係る測定デバイス40はフィゾー干渉計として構成されている。フィゾー要素52を通過した測定放射47は試験波55の役割を果たし、任意選択的に、そのビーム経路内に、その波面を非変形状態のミラー要素14の表面15のターゲット形状に適合させるための回折光学要素56が配置され得る。表面15のターゲット形状が平面形状または球形状と若干異なるのみである場合には、回折光学要素56は省略され得る。より大きい偏差の場合には、例えば、ターゲット形状を自由形状表面として構成するときには、コリメータ51に加えて、またはその代わりに、回折光学要素56が用いられる。
【0050】
試験波55は光学面15において反射され、戻り試験波55rとして、任意選択的に、回折光学要素56およびフィゾー要素52を通り、その後、参照波54と同じビーム経路を進み、ビームスプリッタ50へ至る。後者は、入来測定放射47のビーム経路からの戻り試験波55rおよび参照波54の組み合わせを、試験波55rと参照波54との重畳によって生成された干渉図形を取り込む役割を果たす、観測ユニット57内へ操向する。試験波55rおよび参照波54の収束ビームは観測ユニット57の絞り58およびアイピース59を通過し、最後に、観測ユニット57の2次元分解検出器モジュール60に入射する。検出器モジュール60は、例えば、CCDセンサを含むことができ、干渉波によって生成された干渉図形を検出する。
【0051】
さらに、検出器モジュール60は、検出された干渉図形または複数の検出された干渉図形から光学面15の実際の形状を決定するための評価ユニット(図には別個に示されていない)を含む。この目的のために、評価ユニットは適切なデータ処理ユニットを有し、当業者に周知の対応する計算方法を用いる。光学面15の特定の実際の形状は変形プロファイルの形態の上述の局所変化プロファイル18を呈する。
【0052】
校正装置10によって実施される操作可能光モジュール12を校正するための方法は、以下において、図6および図7に示されるフローチャートを参照して説明され、ステップS1~S11を含む。
【0053】
第1のステップS1において、まず、操作可能光モジュール12の操作要素16を選択し、選択された操作要素16に時間変化励起信号43を印加する。代替的に、クラスタを形成する複数の操作要素16を選択することもでき、次に、それらに対して直交時間変化励起信号43を同時に印加する。これらは直交時間変化スケーリングをもたらす。
【0054】
図1に示されるように、時間変化励起信号43は時間的電圧変化を表す。すなわち、励起信号43は電圧Uを時間変化パラメータとして有する。電圧変化は、連続的に上昇または降下する基本信号43aへの交番信号43bの乗算重畳、ならびにオフセット電圧U0の加算重畳によって形成される。基本信号43aは、図示の実施形態では、直線的に上昇する電圧ランプによって形成される。交番信号43bは、2つの信号レベルの間で周期的または非周期的にジャンプする、搬送波を形成し、信号レベルは離散値または値の範囲を表すことができる。すなわち、交番信号の上限値および下限値は経時的に固定したままであるか、あるいは上限値または下限値の範囲内で変化することができる。
【0055】
交番信号43bの図示の例示的実施形態では、2つの信号レベルは、経時的に固定したままである値1および0によって形成され、交番信号43bはそれらの間でジグザグに往復ジャンプする。代替的に、交番信号43bの正弦波形状も想到可能である。得られた励起信号43は、オフセット電圧U0と、徐々に増大する電圧値との間の規則的な往復ジャンプによって特徴付けられる。一実施形態変形例によれば、また、現実のゼロ点、すなわち、0Vの電圧値が交番信号43内に含まれ得る。これらのゼロ点は規則的な時間間隔を置いて提供され、例えば、操作可能光モジュール12の測定ヒステリシス効果に含むためのリセット点の役割を果たすことができる。
【0056】
ステップS2において、測定デバイス40は、規則的間隔を置いて、具体的には、励起信号43のスパイクの形態の時間的に連続した極値の各々において、操作可能光モジュール12の光学面15のそれぞれの生じた局所変化プロファイル18を決定する。その都度、2次元変化プロファイル18が決定される個々の測定点は、励起信号43の図内で番号を与えられている(#1、#2、#3、・・・)。この場合に決定された変化プロファイル18は生測定データセット62を形成し、そのうち最初の6つの測定(#1~#6)のための変化プロファイル18が図1の下部に示されている。励起信号43の図から同様にうかがえるように、測定#1、#3および#5の変化プロファイル18は、それぞれ、励起電圧U0を用いて生成され、測定#2、#4および#6は、それぞれ、次第に増大する励起電圧U1、U2およびU3を用いて生成された。
【0057】
生測定データセット62から、評価デバイス44は、後述されるステップS3~S10において、光モジュール12の光学特性の全効果プロファイル64、および効果振幅Wと励起信号43の電圧との間の相関66を確認し、これらを校正データとして操作可能光モジュール12の制御ユニット20へ伝送する。校正データは、ステップS11の部分として操作可能光モジュール12を校正するために用いられる。
【0058】
ステップS3において、図2の上部に示されるように、生測定データセット62から補正測定データセット62kを生成する。この目的のために、測定デバイス40によって生じた測定の影響が生測定データセット62の変化プロファイル18の各々から数学的に除去される。本プロセスにおいて取得された補正変化プロファイル18kは補正測定データセット62kを形成する。上述の測定の影響を数学的に除去することは、例えば、傾斜、焦点ぼけ、およびコマなどの、測定デバイス40の1つまたは複数の自由度を生測定データセット62の変化プロファイル18に当てはめること(63)によって達成され得る。ステップS3は任意選択的なものである。ステップS3が省略される場合には、以下のステップにおいて説明される動作が、生測定データセット62に対して実施されるのと同じ仕方で補正測定データセット62kに対して実施されるか、または、適切な場合には、省略される。
【0059】
ステップS4において、図2の下部に示されるように、縮約効果プロファイル70を確認するために、補正測定データセット62kに対して固有値分解に基づく主成分分析68を遂行する。本プロセスにおいて決定された成分のうちの1つ、具体的には、第1成分を縮約効果プロファイル70として選択する。固有値分解において、データセットは、固有モードまたは固有振動とも称される、固有関数のセットに分解され、固有値と称される、スケーリングまたは重み付け係数がそれらに付与される。
【0060】
固有値分解の原理は、また、用語「固有値問題」によって当業者に知られている。しばしば「主軸変換」とも称される、主成分分析の原理は、多変量統計からの当業者に知られている。この場合に実施される主成分分析68では、励起信号43を用いて変調された補正変化プロファイル18kの時間系列に沿って分散が決定される。降順に並べられた、抽出された固有分散および関連主成分ベクトルは、変調系の励起された固有振動を記述する。搬送波の役割を果たす励起信号43による変調が系内の最も大きい振動を表すと仮定すると、第1主成分を、光学特性の変調された変化の縮約表現であると考えることができる。第1主成分は変化プロファイルの次元を有し、したがって、図示の場合には、2次元の値分布であり、上述の縮約効果プロファイル70の役割を果たす。換言すれば、ステップS4は、補正測定データセットに対する主成分分析を用いて固有モードを確認し、確認された固有モードのうちの1つを縮約効果プロファイルとして選択するために用いられる。
【0061】
ステップS5は、補正測定データセット62kの、複数の変化プロファイル18kにおける、特に、全ての変化プロファイル18kにおける縮約効果プロファイル70のそれぞれのプロファイル励起振幅72を計算することを含む。換言すれば、プロファイル励起振幅72は、それぞれの変化プロファイル18kに付与されるスケーリング係数であって、該スケーリング係数により、対応してスケーリングされた縮約効果プロファイル70は関連補正変化プロファイル18kに最適に適合される、スケーリング係数を表す。それぞれのプロファイル励起振幅72の計算は、具体的には、縮約効果プロファイルを関連補正変化プロファイル18kに当てはめること(71)によって実施される。図2に示されるように、プロファイル励起振幅72については、一定値A0が、連続的に増大するさらなる値(A1、A2、A3等)と交番する。さらに、ステップS5において、計算されたプロファイル励起振幅72が、基礎をなす変化プロファイル18kのそれぞれの測定時点の関数として表されることを通して、計算されたプロファイル励起振幅72から時間変化スケーリング73が決定される。それぞれの測定時点は、プロファイル励起振幅72が基づく変化プロファイル18の測定時点を意味すると理解される。この時間変化スケーリング73は、変化プロファイル18kにおける縮約効果プロファイルの、励起信号43の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを表す。
【0062】
一実施形態変形例によれば、ステップS4およびS5は、励起信号の変化の間の異なる時点において生じた局所変化プロファイル18の計算シミュレーションによって時間変化スケーリング73を推定することに置換され得る。換言すれば、この実施形態変形例によれば、時間変化スケーリング73は、操作可能光モジュール12および測定デバイス40の先験的知識に基づくシミュレーション計算によって推定される。
【0063】
以下のステップS6およびS7は、時間変化スケーリングを当てはめることによって全効果プロファイル64を決定するために用いられる。ステップS6において、図3に示されるように、経時的に、変化プロファイル18の共通場所Pijについて、時間変化スケーリング73を、その都度、生測定データセット62の変化プロファイル18に当てはめ、かくして、変化プロファイル18のそれぞれの場所において、時間変化スケーリング73の、参照符号74を与えられた、それぞれの励起振幅Dijを決定する。当てはめは、その都度、異なる変化プロファイル18からのそれぞれの場所Pijについて生じる振幅変化75に対して行われる。スケーリング73を変化プロファイル18に当てはめる際には、少なくともスケーリング73の励起振幅Dijがそれぞれの点Pijにおける変数として設定される。すなわち、スケーリング73および変数励起振幅Dijからの積が当てはめ法のために用いられる。後者において、例えば、励起振幅Dijのための値は、回帰計算を用いて、スケーリング73がそれぞれの共通場所Pijにおける変化プロファイル18に、具体的には、それぞれの場所Pijにおける変化プロファイル18の振幅変化75に最適に適合されるような仕方で選択される。これは点Pijごとの励起振幅Dijの値をもたらす。
【0064】
図3に、例えば、光学面15の変化する変形の領域内の点Pij、および変化する変形が存在しない、光学面15の周辺における点P00についてのスケーリング73の適合が示されている。変化プロファイル18からの、変化する変形の領域内の点Pijにおいて生じる振幅変化75は、測定#1、#3、#5等から生じる一定の振幅値が、測定#2、#4、#6等から生じる変化する振幅値と交番することを特徴とする。当てはめ法において、Dijのための値は、振幅変化75が時間変化スケーリング73に最適に適合されるような仕方で選択される。点P00では、全ての測定について振幅変化75のための一定の振幅値が生じ、その結果、D00のために付与される値は実質的に0である。
【0065】
ステップS7において、励起振幅Dij全体を2次元行列64mとして表すことによって、ステップS6において決定された励起振幅Dijから全効果プロファイル64を決定する。全効果プロファイル64は、操作可能光モジュール12の制御ユニット20へ伝送される校正データの第1の部分をすでに表すことができる。
【0066】
任意選択的なステップS8において、図4に示されるように、プロファイルモデル76を用いて全効果プロファイル64を当てはめ、操作可能光モジュール12の複数の可能な構造的誤差に関して調査する。プロファイルモデル76は、規定ターゲットプロファイル80、および操作可能光モジュール12の可能な構造的誤差78のそれぞれの規定感度77を含む。図4に係る例示的な図では、2次元ガウシアンプロファイルがターゲットプロファイル80の役割を果たす。プロファイルモデル76を用いて全効果プロファイル64を当てはめることによって、構造的誤差78から生じた全効果プロファイル64の変化が確認され、構造的誤差の得られたパラメータがプロセス制御パラメータとして記憶される。プロセス制御パラメータは、さらなる操作可能光モジュールの製造における同じ構造的誤差を回避するためのプロセスフィードバックの役割を果たすことができる。これは、後の時点で製造される光モジュール内には構造的誤差がもはや生じないか、または低減した程度に生じるよう、製造プロセスが適宜適合されることを可能にする。
【0067】
感度は、構造的誤差78の大きさを記述するパラメータ値と、全効果プロファイル64において生じる変化との間の関係を指示する。この生じる変化は全効果プロファイル64の構造的誤差成分とも称される。図4では、全ての変調誤差78から生じた全効果プロファイル64の変化に対応する構造的誤差成分に参照符号79が与えられている。図4は、関連構造的誤差78と、全効果プロファイル64において生じる変化との間の対応する相関を各々指示する、様々な可能な規定感度77を例として示す。
【0068】
例えば、S1xおよびS1yによって示される感度77は、それぞれxおよびy方向における効果プロファイル64の一定の変位を生じさせる構造的誤差78-1に関連する。この構造的誤差78-1は、例えば、変形可能ミラー要素14の背面17における測定の間に促される操作要素16の位置ずれに起因し得る。図8を参照すると、この誤差は、例えば、操作要素16mが、隣接した操作要素16の間のちょうど中心でなく、xまたはy方向に変位した位置においてミラー要素14の背面17に接着接合されているときに生じる。
【0069】
2xおよびS2yによって示される感度77は、それぞれxおよびy方向における効果プロファイル64の拡大、ひいては、円形状から楕円形状へのガウシアン効果プロファイル64の断面の変形を生じさせる構造的誤差78-2を指示する。この構造的誤差78-2は、例えば、図8に係る、操作要素16をミラー要素14の背面17に付着させるために使用される接着剤の不均質性に、ミラー要素14または操作要素16の材料における不均質性に、あるいは様々なクランピング状態に帰せられ得る。
【0070】
3xおよびS3yによって示される感度77は、それぞれxおよびy方向における効果プロファイル64の非対称的拡大、ひいては、円形状から卵形状へのガウシアン効果プロファイル64の断面の変形を生じさせる構造的誤差78-3を示す。この構造的誤差78-3は、例えば、変形可能ミラー要素14の背面17における測定の間に促される操作要素16の下方における気泡の発生によって生じ得る。
【0071】
感度S1x、S1y、S2x、S2y、S3x、およびS3y、ならびに任意の他の感度は、感度行列として知られるものに結合され得る。しかし、構造的誤差の可能性に応じて、より少数の感度が感度行列に結合され得る。プロファイルモデル76において、感度S1x、S1y、S2x、S2y、S3x、およびS3yは、変数としてそれぞれ係数a1x、a1y、a2x、a2y、a3x、およびa3yを伴う線形結合として用いられる。このとき、この線形結合は全効果プロファイル64の構造的誤差成分79になる。プロファイルモデル76は、今や、全効果プロファイル64を、規定ターゲットプロファイル80、構造的誤差成分79、および残余誤差82の和として記述する。
【0072】
当てはめ法の結果は、係数a1x、a1y、a2x、a2y、a3x、およびa3yのための値、ひいては、構造的誤差78から生じた全効果プロファイル64の上述の変化を表す、全体としての構造的誤差成分79を含む。
【0073】
図5に示されるように、ステップS9において、異なる励起電圧値を用いて生成された生測定データセット62のそれらの変化プロファイル18から背景ノイズを除去する。使用プロファイル18nとも称される、これらの変化プロファイル18は、励起電圧U1、U2、U3等を用いて生成されたそれらの変化プロファイル18、すなわち、測定#2、#4、#6等からの変化プロファイルである。対照的に、比較プロファイル18vとも称される、測定#1、#3、#5等からの変化プロファイル18は、一定オフセット電圧U0を用いて生成された。
【0074】
背景ノイズ、および、適切な場合には、絶対誤差を除去するために、使用プロファイル18nの前または後の比較プロファイル18vが関連使用プロファイル18nから減算される。代替的に、関連使用プロファイル18nの前および後の比較プロファイル18vは事前に平均され得る。換言すれば、一様な励起信号値、すなわち、オフセット電圧U0を用いた比較測定が変化プロファイル18nから数学的に除去される。これは、いわゆる調整使用プロファイル18bnをもたらす。図5に係る例では、例えば、(U1)によって示される、調整使用プロファイル18bnを取得するために、測定#2の使用プロファイル18nから測定#1の比較プロファイル18vが減算される。同様に、(U2)および(U3)によって示される調整使用プロファイル18bnは測定#4と#3および測定#6と#5の差から取得される。
【0075】
図5にさらに示されるように、ステップS10において、全効果プロファイル64を調整変化プロファイル18bnの各々に当てはめ、当てはめの結果としてそれぞれの効果振幅65を確認する。効果振幅65は、関連のある変化プロファイル18bnを実質的に取得するために全効果プロファイル64に乗算されるスケーリング係数を示す。全効果プロファイル64を調整変化プロファイルに当てはめる際には、一実施形態によれば、測定デバイス40のアライメント感度が考慮される。換言すれば、ステップS3と同様に、測定デバイス40によって生じる測定の影響が数学的に除去される。
【0076】
図示の実施形態では、値W1、W2、およびW3が、例として、電圧値U1、U2、およびU3に対応付けられる効果振幅65として示されている。例えば、電圧値U1に対応付けられた変化プロファイル18bnを当てはめるとき、効果振幅W1は、全効果プロファイル64と効果振幅W1との積が上述の変化プロファイル18bnに実質的に対応するような仕方で確認される。
【0077】
確認された効果振幅W1、W2、W3等は関連電圧値U1、U2、U3等に対してプロットされる。補間、またはこれらの離散座標点を当てはめることによって、効果振幅65と、励起信号43の時間変化パラメータを表す電圧Uとの間の相関66が確認される。離散座標点は作動モデルを用いて当てはめることができる。
【0078】
ステップS11において、全効果プロファイル64および相関66を校正データとして、操作可能光モジュール12の、図1に示される、制御ユニット20へ伝送し、校正データを用いて操作可能光モジュール12を校正する。これは、反射光学面15の変形プロファイルなどの、光モジュール12の光学特性の所望の変化プロファイルを設定するための制御ユニット20によって、伝送された校正データに基づいて、所望の変化プロファイルが改善された精度で設定されるような仕方で適合されることを意味すると理解される。
【0079】
図12は、操作可能光モジュール12が用いられ得るマイクロリソグラフィ投影露光装置110の本発明に係る一実施形態を示す。本実施形態は、EUV波長範囲内の動作、すなわち、100nm未満の波長、特に、およそ13.5nmまたはおよそ6.7nmの波長を有する電磁放射を用いた動作のために設計されている。全ての光学要素はこの動作波長の結果としてミラーとして具現されている。しかし、本発明はEUV波長範囲内の投影露光装置に限定されない。本発明に係るさらなる実施形態は、例えば、例として、365nm、248nm、または193nmなどの、UV範囲内の動作波長のために設計されている。この場合には、光学要素のうちの少なくとも一部は従来の透過レンズ要素として構成されている。
【0080】
図12に係る投影露光装置110は、露光放射116を発生するための露光放射源114を含む。この場合には、露光放射源114はEUV源として具現され、例えば、プラズマ放射源を含むことができる。露光放射114は、まず、照明システム118を通過し、後者によってマスク120上へ案内される。照明システム118は、マスク120に入射する露光放射116の異なる角度分布を発生するように構成されている。照明システム118は、ユーザによって所望される照明設定に応じてマスク120に入射する露光放射116の角度分布を構成する。選択可能な照明設定のための例としては、いわゆる、二重極照明、輪帯照明、および四重極照明が挙げられる。
【0081】
マスク120は、ウェーハの形態の基板122上に結像されるべきマスク構造を有し、マスク変位台121上に変位可能に装着される。図1に示されるように、マスク120は、反射マスクとして具現され得るか、または、代替的に、それはまた、特に、UVリソグラフィのための透過マスクとして構成され得る。図12に係る実施形態では、露光放射116はマスク120において反射され、それに引き続いて、マスク構造を基板122上に結像するように構成された投影レンズ112を通過する。露光放射116は、ここではミラーの形態の、多数の光学要素によって投影レンズ112内で誘導される。基板122は基板変位台126上に変位可能に装着される。投影露光装置110は、いわゆるスキャナまたはいわゆるステッパとして具現され得る。
【0082】
図12に係る実施形態では、投影レンズ112は4つの光学要素E1~E4を有するのみである。全ての光学要素は可動に支持され得る。この目的のために、光学要素E1~E4の各々はそれぞれのマニピュレータを付与され得る(図には示されていない)。これらのマニピュレータは、付与された光学要素E1~E4のそれぞれの剛体運動を遂行するために用いられる。
【0083】
図示の実施形態における光学要素E1は、校正装置10を用いて校正される上述の操作可能光モジュール12の部分である。
【0084】
投影露光装置10は、操作可能光モジュール12、剛体運動を遂行するための上述のマニピュレータ、および、適切な場合には、さらなるマニピュレータを制御するためのマニピュレータコントローラ124をさらに備える。投影レンズ112の状態特性評価128が波面測定デバイス126からマニピュレータコントローラ124へ伝送される。波面測定デバイス126は基板変位台123内に統合され得る。状態特性評価128に基づいて、マニピュレータコントロール124は、状態特性評価128から明らかである投影レンズ112の結像誤差を補正するために、作動信号130を操作可能光モジュール12の制御ユニット20へ、および任意選択的に、さらなる作動信号をさらなるマニピュレータへ伝送する。
【0085】
例示的実施形態、実施形態、または実施形態変形例の上述の説明は例として理解されるべきである。これらによって達成される本開示は、第1に、当業者が本発明およびそれに付随する利点を理解することを可能にし、第2に、当業者の理解において同様に明白である上述の構造および方法の改変および変更を包含する。したがって、全てのこのような改変および変更は、それらが、添付の請求項における定義に従う本発明の範囲に含まれる限り、ならびに同等物は、請求項による保護の対象とされることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 校正装置
12 操作可能光モジュール
12a 操作可能光モジュールの第1の実施形態
12b 操作可能光モジュールの第2の実施形態
12c 操作可能光モジュールの第3の実施形態
14 変形可能ミラー要素
15 反射光学面
16 操作要素
16m 中間操作要素
17 ミラー要素の背面
18 変化プロファイル
18k 補正変化プロファイル
18n 使用プロファイル
18bn 調整使用プロファイル
18v 比較プロファイル
20 制御ユニット
22a 隆起
22b 陥凹
24 ミラーホルダ
25 ハウジング
26 圧力センサ
27 駆動要素
28 ばね
29 接触要素
30 反射コーティング
31 基板
32 電気線
33 絶縁層
34 制御電極
35 ビア
36 圧電層
37 対向電極
38 保護層
40 測定デバイス
42 信号伝送器
43 励起信号
43a 基本信号
43b 交番信号
44 評価デバイス
46 放射源
47 測定放射
48 導波路
49 ビーム発生モジュール
50 ビームスプリッタ
51 コリメータ
52 フィゾー要素
53 フィゾー面
54 参照波
55 試験波
55r 戻り試験波
56 回折光学要素
57 観測ユニット
58 絞り
59 アイピース
60 検出器モジュール
62 生測定データセット
62k 補正測定データセット
63 測定デバイスの自由度を変化プロファイルに当てはめる
64 全効果プロファイル
64m 2次元行列
65 効果振幅
66 相関
68 主成分分析
70 縮約効果プロファイル
71 当てはめ
72 プロファイル励起振幅
73 時間変化スケーリング
74 励起振幅
75 振幅変化
76 プロファイルモデル
77 感度
78 構造的誤差
79 全効果プロファイルの構造的誤差成分
80 ターゲットプロファイル
82 残余誤差
110 マイクロリソグラフィ投影露光装置
112 投影レンズ
114 露光放射源
116 露光放射
118 照明システム
120 マスク
121 マスク変位台
122 基板
123 基板変位台
124 マニピュレータコントローラ
126 波面測定デバイス
128 状態特性評価
130 作動信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための方法であって、前記操作可能光モジュールが、前記光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備え、前記方法が、
- 時間変化励起信号を前記少なくとも1つの操作要素に印加するステップと、
- 前記励起信号の前記変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの前記局所変化プロファイルを測定する測定デバイスを用いて生測定データセットを決定するステップと、
- 前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける、前記励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定するステップと、
- 前記時間変化スケーリングを前記生測定データセットの前記変化プロファイルに当てはめることによって前記光学特性の全効果プロファイルを決定するステップと、
- 前記全効果プロファイルに基づいて前記操作可能光モジュールの校正データを決定するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記時間変化スケーリングが、前記励起信号の前記変化の間の前記異なる時点において生じた前記少なくとも1つの操作要素の前記効果の計算シミュレーションを用いて推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記時間変化スケーリングの前記推定が、以下のステップ:
- 前記生測定データセットに基づいて固有値分解を遂行し、前記プロセスにおいて確認された固有モードを縮約効果プロファイルとして選択することによって、縮約効果プロファイルを確認するステップ、および
- 前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルの、前記励起信号の前記時間変化によって生じた、前記時間変化スケーリングを推定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルから前記測定デバイスによって生じた既知の測定の影響を数学的に除去することによって、補正測定データセットが決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生測定データセットに基づいて実施される前記固有値分解が前記補正測定データセットに対して遂行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルの、前記励起信号の前記時間変化によって生じた、前記時間変化スケーリングの前記推定が、前記補正測定データセットの複数の前記変化プロファイルにおける前記縮約効果プロファイルのそれぞれのプロファイル励起振幅を計算し、前記生測定データセットの、基礎をなす前記変化プロファイルのそれぞれの測定時点に依存する前記計算されたプロファイル励起振幅を前記時間変化スケーリングとして表すことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記全効果プロファイルを決定するための前記時間変化スケーリングの前記当てはめが、前記変化プロファイルの時間経過にわたる前記生測定データセットの前記変化プロファイル内の複数の場所における前記生測定データセットの前記変化プロファイルへの前記時間変化スケーリングのそれぞれの当てはめにより、前記変化プロファイル内のそれぞれの前記場所について前記変化プロファイルにおける前記時間変化スケーリングのそれぞれの励起振幅を決定することを含み、前記決定された励起振幅全体が前記光学特性の前記全効果プロファイルを形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記全効果プロファイルを前記生測定データセットの適切な変化プロファイルにそれぞれ当てはめることによって、関連のある前記変化プロファイルのそれぞれの効果振幅が確認され、前記校正データが前記効果振幅65と前記励起信号の時間変化パラメータとの間の相関を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記励起信号が、一様な励起信号値を用いた比較測定が前記生データセットの前記変化プロファイルの前記測定の間の異なる時点において実施されるような仕方で構成され、前記適切な変化プロファイルへの前記全効果プロファイルの前記当てはめの前に前記比較測定を用いて前記変化プロファイルから背景ノイズが除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全効果プロファイルが、規定ターゲットプロファイル、および前記操作可能光モジュールの可能な構造的誤差の少なくとも1つの規定感度を含む、プロファイルモデルを用いて当てはめられ、関連構造的誤差のパラメータが当てはめによって確認される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記時間変化励起信号が、基本信号に交番信号を重畳することによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記固有値分解が前記縮約効果プロファイルの前記確認の間に前記補正測定データセットに対して実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記変化プロファイルが前記光モジュールの光学面の変形プロファイルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの操作要素がアクチュエータとして構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータが、前記光学面と平行なその広がりを変更するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記変化プロファイルが光透過性材料内の屈折率の変化を記述する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための操作可能光モジュールを校正するための装置であって、前記操作可能光モジュールが、前記光モジュールの光学特性の少なくとも1次元の局所変化プロファイルを設定するための少なくとも1つの操作要素を備え、前記装置が、
- 時間変化励起信号を前記少なくとも1つの操作要素に印加するための信号伝送器と、
- 前記励起信号の前記変化の間の異なる時点において生じたそれぞれの前記局所変化プロファイルを測定することによって生測定データセットを決定するための測定デバイスと、
- 評価デバイスであって、
前記生測定データセットの前記変化プロファイルにおける、前記励起信号の時間変化によって生じた、時間変化スケーリングを推定することと、
前記時間変化スケーリングを前記生測定データセットの前記変化プロファイルに当てはめることによって前記光学特性の全効果プロファイルを決定することと、
前記全効果プロファイルに基づいて前記操作可能光モジュールの校正データを決定することと
を行うように構成された、評価デバイスと
を備える、装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
ステップS11において、全効果プロファイル64および相関66を校正データとして、操作可能光モジュール12の、図1に示される、制御ユニット20へ伝送し、校正データを用いて操作可能光モジュール12を校正する。これは、反射光学面15の変形プロファイルなどの、光モジュール12の光学特性の所望の変化プロファイルを設定するための制御ユニット20によって生成される電圧信号が、伝送された校正データに基づいて、所望の変化プロファイルが改善された精度で設定されるような仕方で適合されることを意味すると理解される。
【国際調査報告】