(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高濃度電解質と、金属基材及び保護層を有する負極とを含む電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241128BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241128BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241128BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/134
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535286
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022085526
(87)【国際公開番号】W WO2023110820
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・トンプソン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ13
5H029CJ02
5H029EJ03
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB12
5H050DA03
5H050EA11
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA04
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、高濃度電解質と、金属基材、及びその金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された保護層を含む電池のための負極とを含む電池であって、保護層は、2つ以上のモノマー間の反応によって得ることができるコポリマー、フルオロポリマー添加剤、及びリチウム塩を含む、電池に関する。本発明者らは、電解質と負極との組み合わせが電池内の抵抗の低下をもたらすことを実証した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.負極であって、
金属基材と、
前記金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された保護層であって、
式(I)
【化1】
(式中、R
1=H又はCH
3であり、R
2は、C
2~6アルカンジイルであり、前記アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
3から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
3は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
1=NH又はOであり、nは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される第1のモノマーと、
式(II)
【化2】
(式中、R
4=H又はCH
3であり、R
5は、C
2~6アルカンジイルであり、前記アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
6から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
6は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
2=NH又はOであり、X
3=SH、NH
2又はOHであり、mは、1~10、好ましくは1~5から選択される整数であり、より好ましくはm=1である)によって表される第2のモノマーとの間の反応によって得ることができるコポリマー、及び
第1のリチウム塩を含む保護層と
を含む負極と、
b.正極と、
c.電解質組成物であって、
i.第2のリチウム塩を含む有機非フッ素化液体と、
ii.フッ素化液体と
を含み、
前記第2のリチウム塩対前記フッ素化液体のモル比が1対2~1対0.15(mol/mol)である、電解質組成物と、
を含む、電池。
【請求項2】
前記第2のリチウム塩対前記有機非フッ素化液体のモル比が、1対3~1対0.5(mol/mol)、好ましくは1対2~1対0.60(mol/mol)、より好ましくは1対1.60~1対0.80(mol/mol)、最も好ましくは1対1.50~1対10である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記有機非フッ素化液体対前記フッ素化液体のモル比が、1対2~1対0.10(mol/mol)、好ましくは1対1.50~1対0.20(mol/mol)、より好ましくは1対1.20~1対0.25(mol/mol)、更により好ましくは1対1~1対0.30(mol/mol)、最も好ましくは1対0.85~1対0.30(mol/mol)である、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記負極が、請求項1に記載の保護層と、フルオロポリマー添加剤とからなる導電層を含み、前記フルオロポリマー添加剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレンコポリマー、プロピレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン-ペルフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレンコポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記フルオロポリマー添加剤が、ポリフッ化ビニリデン又はポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)であり、最も好ましくはポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)である、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記コポリマー対前記フルオロポリマー添加剤の重量比が、1対10~10対1(w/w)、好ましくは1対5~8対1(w/w)、より好ましくは1対2~5対1(w/w)、更により好ましくは1対2~4対1(w/w)、最も好ましくは2対1~4対1(w/w)である、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記第1のリチウム塩が、Li
2CO
3、Li
2O、Li
2C
2O
4、LiOH、LiX
7、R
13OCO
2Li、HCOLi、R
13OLi、Li
2O、Li
2C
2O
4、(ROCO
2Li)
2、(CH
2OCO
2Li)
2、Li
2S、LiSCN、LiN(CN)
2、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2F)
2、LiSbF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiPF
3(CF
3)
3、LiB(C
2O
4)
2(式中、R
13=炭化水素及びX
7=F、Cl、I又はBr)及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、LiSCN、LiN(CN)
2、LiClO
4、LiI、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3(SO
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2F)
2、LiSbF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiPF
3(CF
3)
3、LiB(C
2O
4)
2及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、前記リチウム塩が、LiN(SO
2CF
3)
2又はLiN(SO
2F)
2であり、最も好ましくは、前記リチウム塩が、LiN(SO
2F)
2である、請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記第1のモノマーが、式(III)
【化3】
(式中、oは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される、請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記第2のモノマーが、式(IV)
【化4】
によって表される、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記第1のモノマー対前記第2のモノマーの重量比が、1対20~20対1(w/w)、好ましくは1対10~14対1(w/w)、より好ましくは1対5~12対1(w/w)、更により好ましくは1対3~10対1(w/w)、最も好ましくは1対2~2対1(w/w)である、請求項1に記載の電池。
【請求項10】
前記コポリマーが、光開始剤の使用による前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとの反応によって得られる、請求項1に記載の電池。
【請求項11】
前記コポリマーが、熱アニーリング工程に供される、請求項1に記載の電池。
【請求項12】
前記第2のリチウム塩が、Li
2CO
3、Li
2O、Li
2C
2O
4、LiOH、LiX
8、R
14OCO
2Li、HCOLi、R
14OLi、Li
2O、Li
2C
2O
4、(ROCO
2Li)
2、(CH
2OCO
2Li)
2、Li
2S、LiSCN、LiN(CN)
2、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2F)
2、LiSbF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiPF
3(CF
3)
3、LiB(C
2O
4)
2(式中、R
14=炭化水素及びX
8=F、Cl、I又はBr)、好ましくは、LiSCN、LiN(CN)
2、LiClO
4、LiI、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3(SO
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2F)
2、LiSbF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiPF
3(CF
3)
3、LiB(C
2O
4)
2及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、前記リチウム塩が、LiN(SO
2CF
3)
2又はLiN(SO
2F)
2であり、最も好ましくは、前記リチウム塩が、LiN(SO
2F)
2である、請求項1に記載の電池。
【請求項13】
前記有機非フッ素化液体が、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、アリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、ブチルジグリム、ポリエチレングリコール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、チルメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,4-ジオキサン、リン酸トリメチル(TMPa)、リン酸トリエチル(TEPa)、ジメチルメチルホスホネート(DMMP)、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記有機非フッ素化液体が、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、アリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ブチルジグリム、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ジメチルメチルホスホネート、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,2-ジメトキシエタン又は1,2-ジエトキシエタンからなる群から選択され、最も好ましくは、前記非フッ素化有機液体が、1,2-ジメトキシエタンである、請求項1に記載の電池。
【請求項14】
前記フッ素化液体が、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、メトキシノナフルオロブタン(MOFB)、エトキシノナフルオロブタン(EOFB)、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(DTFEC)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)オルトホルメート(THFiPO)、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルトホルメート(TDFEO)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルオルトホルメート(BTFEMO)、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)オルトホルメート(TPFPO)、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)オルトホルメート(TTPO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記フッ素化液体が、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)又は1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)であり、最も好ましくは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)である、請求項1に記載の電池。
【請求項15】
前記正極が、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物、リチウムニッケル-マンガン酸化物、リチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸コバルト鉄リチウム、硫化リチウム、硫黄及びアルミニウムからなる群から選択される正極材料を含み、好ましくは、前記正極材料が、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物又はリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物である、請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材及びその金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された保護層を含む負極と、高濃度電解質とを含む電池に関する。
【背景技術】
【0002】
小型軽量の電子製品、電子デバイス、通信デバイスなどの開発が急速に進行し、環境問題に対する電気自動車の必要性が大きく台頭するにつれて、これらの製品のための電源として使用される二次電池の性能向上が求められている。中でも、リチウム金属二次電池は、エネルギー密度が高く、参照電極電位が高いため、高性能電池として脚光を浴びている。
【0003】
リチウム金属の高い反応性のために、リチウムと液体電解質との間の副反応が、電池の充放電中に起こり、それによって電解質の分解が促進される。加えて、様々な理由により、電池作動中にリチウム金属表面上で電子密度の不均一化が発生し得る。その結果、電極表面上に樹枝状のリチウムデンドライトが生成され、電極表面が非常に粗くなり、セパレータの損傷を引き起こす可能性がある。これらの副反応は、リチウム金属電池のクーロン効率及び/又は電気化学的安定性を低下させ、リチウム電池の寿命の減少を引き起こす。
【0004】
したがって、リチウム金属を安定化させ、電解質とリチウム金属との副反応を防止又は減少させるための様々な試みが行われている。
【0005】
韓国特許出願公開第20030042288(A)号には、リチウム金属の表面上に形成された架橋ポリマー保護膜によってリチウム金属負極の表面上のデンドライト成長を抑制することができるリチウム二次電池が記載されており、そのポリマーは、架橋1,6-ヘキサンジオールジアクリレート又は1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとオリゴエチレングリコールジアクリレートとのコポリマーである。その電池は、更に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)中1MのLiClO4の混合物からなるゲル電解質ポリマーを更に含む。
【0006】
米国特許出願公開第2016/0372743(A1)号は、リチウム金属と揮発性液体電解質との直接接触を防止するために、リチウム金属アノード上にコーティングを有する電池に関する。コーティングは、PVDFホモポリマー、イオン液体及びLiFSIからなる単層ポリマー、又はPVDF、イオン液体及びLiFSIの第1の外層と、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)及びLiFSIの第2の内層とを有する二重層ポリマーコーティングのいずれかからなる。電池は、エチレンカーボネート中の2MのLiFSIからなる電解質を更に含む。
【0007】
米国特許第6,902,848(B1)号は、ゲル電解質で積層されている負極と、γ-ブチロラクトン中の1.5~6MのLiBF4からなる液体電解質とを含むリチウム電池を開示している。ゲル電解質は、架橋ポリ(エチレングリコール)系アクリレートモノマーからなる。
【0008】
しかしながら、アノードを保護層でコーティングすることの欠点は、電池内に追加の抵抗源が導入されることである。ポリマーでコーティングされたアノードは、増加した抵抗、特に、増加した未補償抵抗Ru及び/又は増加した電荷移動抵抗Rctを示す。この増加した抵抗は、電池の動作中に電圧降下を引き起こし、それはまた、廃熱として有用なエネルギーの一部をも消費する。
【0009】
したがって、負極の周囲に保護層を有する電池を実現すると同時に、電池の抵抗の増加を最小限に抑える必要がある。
【0010】
本発明の目的は、金属基材の周囲に保護層を有する金属基材を有する負極を、高濃度電解質と組み合わせて含む電池を提供することにある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、
a.負極であって、
金属基材と、
当該金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された保護層とを含み、
当該保護層はコポリマー及び第1のリチウム塩を含む、
負極と、
b.正極と、
c.電解質組成物であって、
i.第2のリチウム塩を含む有機非フッ素化液体と、
ii.フッ素化液体と
を含む電解質組成物と、
を含む電池を提供することによって達成される。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、負極の金属基材上に配置されたコポリマーを含む保護層と、第2のリチウム塩、有機非フッ素化液体及びフッ素化液体を含む電解質との組み合わせが、添付の実施例において実証されるように、電池の抵抗の低下、特に、未補償抵抗Ruの低下及び電荷移動抵抗Rctの低下をもたらすことを見出した。特に、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)とN-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)との間の反応によって得られるコポリマーを含む負極は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)などのフッ素化液体を含む電解質の存在下において、未補償抵抗Ruの低下及び電荷移動抵抗Rctの低下を示す。更に、本発明者らは、驚くべきことに、添付の実施例において実証されるように、本発明による保護層が自己修復ポリマー膜として機能することを見出した。本発明による保護層は、自己修復特性も有する機械的に強固なポリマーであり、ポリマー鎖移動度と、水素結合モチーフの量と、架橋度との間の注意深いバランスの結果である。
【0013】
当業者によって理解されるように、金属リチウムは、電解質溶媒及び塩アニオンと自発的に反応して、固体電解質界面(solid electrolyte interface、SEI)として知られる不動態化層を形成する。SEI層は、組成、形態及びイオン伝導性において本来不均一であり、デンドライトの形成及び成長をもたらす(これは安全性の問題及び不十分な電池性能につながる)。このSEI層は、液体電解質との反応に起因して成長し続け、厚く高抵抗の層をもたらす。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、金属基材上の本発明の保護層が、膜を通してのリチウムイオン伝導性を維持しながら、高反応性金属リチウムを電解質から物理的に分離し、それによって固体電解質界面(SEI)層の形成を制限すると考える。したがって、保護層は、電解質と金属基材との間の接触を防止することによって層の連続的な成長を防止し、より低い抵抗を有するより薄いSEI層をもたらす。
【0014】
自己修復ポリマー(例えば、I.Gadwal,Macromol2021,1,18-36を参照されたい)及びヒドロフルオロエーテルで希釈された高濃度リチウム系電解質(例えば、S.Lin et al.,ACS Appl.Mater.Interfaces2020,12,30,33710-33718を参照されたい)は、当業において知られているが、本発明者らは、自己修復特性を有する本発明による保護層と、フッ素化液体を含む本発明による電解質との組み合わせが、抵抗の低下を示す電池をもたらすことを最初に実証している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】3つのポリマー配合物1-a、1-b及び1-c(表1を参照されたい)の各々のSEM(走査型電子顕微鏡)画像。
【
図2】DME中4.5MのLiFSI電解質における、保護されていないリチウムアノード及びポリマー配合物1-a、1-b及び1-cを使用している保護されたアノードのセル構築後20時間にわたる各Li-Li対称コインセルについて測定された未補償抵抗(R
u)。
【
図3】DME中4.5MのLiFSI電解質における、保護されていないリチウムアノード及びポリマー配合物2-a、2-b、2-c及び2-dを使用している保護されたアノードのセル構築後20時間にわたる各Li-Li対称コインセルについて測定された未補償抵抗(R
u)。
【
図4】様々な量のHEAAを含有するポリマー膜のSEM顕微鏡写真であり、各ポリマー膜をメスで切断し、撮像し、次いで、DME中の4.5MのLiFSIに一晩(16時間)浸漬した後、純粋なDMEですすぎ、再び撮像した。
【
図5】様々なPEG対HEAA比を有する保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの総比放電容量(サイクル方式(cycling regime)はC/3~D/1であり、電位は充電の最上部及び最下部にて保持した)。
【
図6】様々なPEG対HEAA比を有する保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルのクーロン効率(サイクル方式はC/3~D/1であり、電位は充電の最上部及び最下部にて保持した)。
【
図7A】(a)熱アニーリングが施されていない場合の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、v/v)中のポリマー膜伝導率(b)熱アニーリングが施されている場合の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、v/v)中のポリマー膜伝導率
【
図7B】(a)熱アニーリングが施されていない場合の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、v/v)中のポリマー膜伝導率(b)熱アニーリングが施されている場合の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、v/v)中のポリマー膜伝導率
【
図8】熱アニーリングを施した、様々なPEG対HEAA比を有する保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの総比放電容量(サイクル方式はC/3~D/1であり、電位は充電の最上部及び最下部において保持した)。
【
図9】熱アニーリングを施した、様々なPEG対HEAA比を有する保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルのクーロン効率(サイクル方式はC/3~D/1であり、電位は充電の最上部及び最下部において保持した)。
【
図10】電解質組成物中に様々な濃度の電解質を有する保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルのクーロン効率。
【
図11A】保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの温度に対するクーロン効率。
【
図11B】保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの温度に対するクーロン効率。
【
図11C】保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの温度に対するクーロン効率。
【
図11D】保護されたアノードを含有するLi-NMCパウチセルの温度に対するクーロン効率。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実行を可能にするために、図面及び以下の発明を実施するための形態において、好ましい実施形態を詳細に記載する。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態を参照して記載されているが、本発明は、これらの好ましい実施形態に限定されないことが理解されよう。反対に、本発明は、以下の詳細な記載及び添付の図面を考慮することで明らかになるように、多数の代替物、改変及び均等物を含む。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素又は工程を排除するものではない。それは、言及された通りの記載された特徴、整数、工程、又は成分の存在を明記するものとして解釈される必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは成分、又はこれらの群の存在若しくは追加を排除するものではない。したがって、「成分A及びBを含む組成物」という表現の範囲は、成分A及びBのみからなる組成物に限定されるべきではない。それは、本発明に関して、組成物の唯一の関連成分がA及びBであることを意味する。したがって、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、より限定的な用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象又は状況が、起こってもよく、又は起こらなくてもよいことを意味し、その記載は、当該事象又は状況が起こる場合、及び当該事象又は状況が起こらない場合を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、当技術分野で概ね理解されている最も広い意味を有し、直鎖若しくは分岐鎖、又はこれらの組み合わせである部分を含み得る。特に、「アルキル」という用語は、単独で又は組み合わせて、直鎖又は分岐鎖アルカン誘導基を意味し、例えば、CF~Gアルキルは、F~G個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を定義し、例えば、C1~4アルキルは、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、1 5 -ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル(tert-ブチル)、2-メチル-1-プロピル(イソブチル)などの1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を定義する。
【0020】
「アルカンジイル」という用語は、単独で又は組み合わせて、直鎖又は分岐鎖アルキル由来の二価の基を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「未補償抗(Ru)」という用語は、セル抵抗及び任意のわずかな追加の抵抗を含む抵抗値として定義される。セル抵抗への主な寄与は、例えば、液体電解質のイオン伝導性及び/又はポリマー保護層のイオン伝導性に由来する。小さな抵抗寄与は、例えば、ケーブル/接点などの金属部品である。
【0022】
本明細書で使用される場合、電荷移動抵抗(Rct)は、電気化学的に活性な材料で起こる酸化還元反応速度の尺度である(例えば、1つの原子又は化合物から別の原子又は化合物への電荷移動プロセスに関する制限プロセスであり、電極-電解質界面での電子抵抗及びイオン抵抗に由来する電子の移動速度)。
【0023】
電池
上記のように、本発明の第1の態様は、
a.電池のための負極(すなわち、アノード)であって、
金属基材と、
当該金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された保護層であって、
式(I)
【0024】
【化1】
(式中、R
1=H又はCH
3であり、R
2は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
3から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
3は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
1=NH又はOであり、nは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される第1のモノマーと、
式(II)
【0025】
【化2】
(式中、R
4=H又はCH
3であり、R
5は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
6から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
6は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
2=NH又はOであり、X
3=SH、NH
2又はOHであり、mは、1~10、好ましくは1~5から選択される整数であり、より好ましくはm=1である)によって表される第2のモノマーとの間の反応によって得ることができるコポリマーであって、
第1のモノマー対第2のモノマーの重量比が1対5~8対1(w/w)である、コポリマー、及び
第1のリチウム塩を含む、保護層と、
を含む、電池のための負極(すなわち、アノード)と、
b.正極と、
c.電解質組成物であって、
i.第2のリチウム塩を含む有機非フッ素化液体と、
ii.フッ素化液体と
を含み、
第2のリチウム塩対フッ素化液体のモル比が1対2~1対0.15(mol/mol)である、電解質組成物と、
を含む電池を提供することである。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明は、導電層を提供し、導電層は、本発明による保護層と、フルオロポリマー添加剤とからなる。当業者によって理解されるように、本発明の電池は、
a.負極であって、
本発明による金属基材と、
本発明による保護層及びフルオロポリマー添加剤からなる導電層と
を含む負極と、
b.本発明による正極と、
c.本発明による電解質組成物と、
を含む。
【0027】
金属基材
本発明の一実施形態は、金属基材を含む本発明による負極である。好ましい実施形態では、金属基材は、導電性金属、好ましくはステンレス鋼、銅、ニッケル、鉄、コバルト、リチウム、リチウム合金又はこれらの組み合わせ、より好ましくはステンレス鋼、銅、ニッケル、リチウム、リチウム合金又はこれらの組み合わせを含む。より好ましい実施形態では、金属基材は、リチウム金属基材又はリチウム金属合金基材、好ましくはリチウム金属基材である。当業者によって理解されるように、金属基材は、ステンレス鋼、銅、ニッケル、鉄、コバルトなどの支持箔上に堆積された金属、又は、箔として若しくは表面上に堆積された層として作製されたリチウム層若しくはリチウム合金層であり得る。
【0028】
フルオロポリマー添加剤
上記のように、本発明による導電層は、本発明による保護層及びフルオロポリマー添加剤からなり、導電層は、金属基材の少なくとも一部の上に直接配置され、フルオロポリマー添加剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレンコポリマー、プロピレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン-ペルフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレンコポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、フルオロポリマー添加剤は、ポリフッ化ビニリデン又はポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)であり、最も好ましくはポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)である。
【0029】
好ましい実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、導電層の総重量に基づいて75重量%未満、好ましくは導電層の総重量に基づいて50重量%未満、最も好ましくは20重量%未満の量で存在する。好ましい実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、導電層の総重量に基づいて0.05重量%を超える、好ましくは導電層の総重量に基づいて5重量%を超える、最も好ましくは10重量%を超える量で存在する。好ましい実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、導電層の総重量に基づいて0.05重量%~75重量%、好ましくは導電層の総重量に基づいて5重量%~50重量%、より好ましくは、10重量%~20重量%の量で存在する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、コポリマー対フルオロポリマー添加剤の重量比は、1対5~8対1(w/w)、好ましくは1対2~5対1(w/w)、より好ましくは1対2~4対1、最も好ましくは2対1~4対1である。
【0031】
本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、1,000g/molを超える、好ましくは10,000g/molを超える、より好ましくは100,000g/molを超える、最も好ましくは300,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する。本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、1,000,000g/mol未満、好ましくは800,000g/mol未満、より好ましくは750,000g/mol未満、最も好ましくは600,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する。本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、1,000g/mol~1,000,000g/mol、好ましくは10,000g/mol~800,000g/mol、より好ましくは100,000g/mol~750,000g/mol、最も好ましくは300,000g/mol~600,000g/molの重量平均分子量Mwを有する。フルオロポリマー添加剤、特にポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)の好ましい例は、約400,000g/molの重量平均分子量又は約455,000g/molの重量平均分子量Mwを有する。ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)などのフルオロポリマー添加剤は、Sigma-Aldrichなどの供給業者から商業的に購入することができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、250g/molを超える、好ましくは2,500g/molを超える、より好ましくは25,000g/molを超える、最も好ましくは75,000g/molを超える数平均分子量Mnを有する。本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、250,000g/mol未満、好ましくは200,000g/mol未満、より好ましくは190,000g/mol未満、最も好ましくは150,000g/mol未満の重量平均分子量Mnを有する。本発明の一実施形態では、フルオロポリマー添加剤は、250g/mol~250,000g/mol、好ましくは2,500g/mol~400,000g/mol、より好ましくは25,000g/mol~190,000g/mol、最も好ましくは75,000g/mol~150,000g/molの重量平均分子量Mnを有する。フルオロポリマー添加剤の好ましい例、特にポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)は、約130,000g/molの数平均分子量Mn又は約110,000g/molの数平均分子量Mnを有する。ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)などのフルオロポリマー添加剤は、Sigma-Aldrichなどの供給業者から商業的に購入することができる。
【0033】
本発明者らは、添付の実施例において実証されるように、フルオロポリマー添加剤を添加すると、導電層の伝導性が向上し、導電層の濡れ性が改善され、導電層の均質な膜の印刷が可能になることを見出した。
【0034】
コポリマー
本発明の一実施形態は、
式(I)
【0035】
【化3】
(式中、R
1=H又はCH
3であり、R
2は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
3から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
3は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
1=NH又はOであり、nは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される第1のモノマーと、
式(II)
【0036】
【化4】
(式中、R
4=H又はCH
3であり、R
5は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
6から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
6は、水素又はC
1~4アルキルから選択され、X
2=NH又はOであり、X
3=SH、NH
2又はOHであり、mは、1~10、好ましくは1~5から選択される整数であり、より好ましくはm=1である)によって表される第2のモノマーとの間の反応によって得ることができるコポリマーである。
【0037】
本発明の一実施形態は、式(I)(式中、R1は、H又はCH3であり、好ましくはHであり、R2は、C2~6アルカンジイル、好ましくはC2~4アルカンジイル、より好ましくはC2アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C1~4アルキル、CF3又はOR3から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R3は、水素又はC1~4アルキルから選択され、X1=NH又はO、好ましくはOであり、nは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される第1のモノマーである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による第1のモノマーであり、第1のモノマーは、式(III)
【0039】
【化5】
(式中、oは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)によって表される。特に、式(III)によって表される第1のモノマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による第1のモノマーであり、第1のモノマーは、50g/molを超える、好ましくは100g/molを超える、より好ましくは200g/molを超える、更により好ましくは550g/molを超える、最も好ましくは700g/molを超える数平均分子量Mnを有する。本発明の好ましい実施形態は、本発明による第1のモノマーであり、第1のモノマーは、20,000g/mol未満、好ましくは7,000g/mol未満、より好ましくは4,000g/mol未満、更により好ましくは2,000g/mol未満、最も好ましくは1,000g/mol未満の数平均分子量Mnを有する。本発明の好ましい実施形態は、本発明による第1のモノマーであり、第1のモノマーは、50g/mol~20,000g/mol、好ましくは100g/mol~7,000g/mol、より好ましくは200g/mol~4,000g/mol、更により好ましくは550g/mol~2,000g/mol、最も好ましくは700g/mol~1,000g/molの数平均分子量Mnを有する。特定の例は、250g/mol、575g/mol、700g/mol、4,000g/mol又は6,000g/molの平均Mnを有するPEGDAである。本発明による第1のモノマーの好ましい例は、250g/mol、575g/mol又は700g/mol、好ましくは700g/molの数平均分子量Mnを有するPEGDAである。PEGDAは、Sigma-Aldrichなどの供給業者から商業的に購入することができる。
【0041】
以下の実施例において実証されるように、本発明による第1のモノマー、特にPEGDAは、本発明によるコポリマー、本発明による保護層及び/又は本発明による導電層のLiイオン伝導性を改善する。
【0042】
本発明の一実施形態は、式(II)によって表される第2のモノマーであり、式中、R4=H又はCH3、好ましくはHであり、R5は、C2~6アルカンジイル、好ましくはC2~4アルカンジイル、より好ましくはC2アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C1~4アルキル、CF3又はOR6から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R6は、水素又はC1~4アルキルから選択され、X2=NH又はO、好ましくはNHであり、X3=SH、NH2又はOH、好ましくはOHであり、mは、1~10、好ましくは1~5から選択される整数であり、最も好ましくはm=1である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による第2のモノマーであり、第2のモノマーは、式(IV)
【0044】
【化6】
によって表され、特に式(IV)によって表される第2のモノマーは、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)である。HEAAは、Sigma-Aldrich及びTCI Chemicalsなどの供給業者から商業的に購入することができる。
【0045】
以下の実施例において実証されるように、本発明による第2のモノマー、特にN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)をコポリマーに導入すると、コポリマーの自己修復特性が得られる。本発明による第1のモノマーは、水素結合受容体、例えば、式(I)によって表される第1のモノマーのカルボニル官能基、好ましくは式(III)によって表される第1のモノマーのエステル官能基を含む。本発明による第2のモノマーは、水素結合受容体、例えば、式(II)によって表される第2のモノマーのカルボニル官能基、好ましくは式(IV)によって表される第2のモノマーのアミド官能基を含む。本発明による第2のモノマーは、水素結合供与体、例えば、式(II)によって表される第2のモノマーの置換基X3に存在する水素、例えば、チオール、アミノ又はヒドロキシル官能基、好ましくは式(IV)によって表される第2のモノマーのヒドロキシル基の水素を含む。本発明者らは、第2のモノマー中に存在する水素結合供与体が、本発明の更なる第2のモノマー中に存在する水素結合受容体及び/又は本発明の第1のモノマー中に存在する水素結合受容体と水素結合を形成することができると考えている。本発明者らは、コポリマーの水素結合特性が、コポリマー及び/又は保護層の自己修復特性をもたらすと考えている。本発明によるコポリマー中に存在する水素結合は、比較的弱い結合強度(1.9~6.9kcal.mol-1)を有し、これは、それらが周囲温度で破壊され、再形成される可能性があることを意味している。
【0046】
当業者によって理解されるように、本発明によるコポリマーは、対応するビニルモノマー、例えば、本発明による第1のモノマー及び本発明による第2のモノマーの架橋工程(すなわち、ラジカル重合)によって得ることができる。本発明の実施形態では、ラジカル重合のために使用され得る開始剤は、架橋反応に応じて異なり、周知の光開始剤又は熱開始剤は、全て使用することができ、好ましくは光開始剤が使用される。光開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アルファメチルベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、ベンゾフェノン、p-クロロベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンゾイルベンゾエート、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-モルフォリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(Darocure 1173)、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン(Irgacure 907)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184)、ミヒラーケトン、ベンジルジメチルケタル、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、ベンジルジスルフィド、ブタンジオール、カルバゾール、フルオレノン、アルファアシルオキシムエステル及びこれらの組み合わせを挙げることができ、熱開始剤の例としては、ペルオキシド(-O-O-)系列、ベンゾイルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシドなどを挙げることができ、アゾ系化合物(-N=N-)系列、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスオバレロニトリルなどが使用されてもよい。本発明の好ましい実施形態では、光開始剤は、フェニルビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Irgacure 819)又は2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン(Irgacure 907)であり、好ましくはIrgacure 819である。
【0047】
開始剤の含有量は、本発明において特に限定されないが、好ましくは、電池に存在する本発明によるコポリマー、電極及び液体電解質の特性に影響を及ぼさない範囲である。本発明の実施形態では、開始剤は、導電層の総重量に基づいて1重量%~15重量%の範囲で、好ましくは導電層の総重量に基づいて1重量%~5重量%の範囲で、より好ましくは2重量%~4重量%の範囲で使用される。
【0048】
本発明の実施形態では、本発明によるコポリマーを与える架橋工程は、本発明による第1のモノマー、本発明による第2のモノマー及び/又は本発明によるコポリマーを溶解することができる有機液体中で行われる。好ましくは、有機液体は非水性有機液体である。この場合、非水系有機液体としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系又は非プロトン性液体などの周知の液体が使用され得る。例えば、非プロトン性有機液体は、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。有機液体の好ましい例は、アセトニトリル又はテトラヒドロフランである。
【0049】
本発明の実施形態では、架橋工程は、熱を適用すること又は活性エネルギー線を照射することを含み、熱による架橋は、加熱のための方法を使用してもよく、活性エネルギー線は、遠赤外線、紫外線又は電子ビームを照射することによるものであってもよい。
【0050】
本発明の実施形態では、架橋工程は、熱架橋又は光架橋、好ましくは光架橋によって行われる。本発明の実施形態では、熱架橋は、50℃~200℃の温度で、好ましくは80℃~110℃の温度で行うことができ、架橋のための加熱時間は、30分~48時間、より好ましくは8時間~24時間である。加熱温度及び時間が上記範囲未満であると、架橋が十分に形成され難く、加熱温度及び時間が上記範囲を超えると、副反応が起こる可能性があり、又は材料安定性が低下する可能性がある。本発明の好ましい実施形態では、活性エネルギー線照射を含む光架橋は、10秒~5時間、好ましくは1分~1時間、最も好ましくは2分~10分間行われる。本発明の好ましい実施形態では、光架橋は、5℃~60℃、好ましくは10℃~50℃、最も好ましくは20℃~40℃の温度で行われる。活性線照射の時間が上記範囲未満であると、架橋が十分に形成され難く、上記範囲を超えると、副反応が起こる可能性があり、又は材料安定性が低下する可能性がある。
【0051】
当業者によって理解されるように、コポリマーは、式(I)によって表される第1のモノマー及び式(II)によって表される第2のモノマーである少なくとも2つのモノマーの反応によって得ることができるが、2つの異なるモノマーのみの間の反応によって得ることができることに限定されず、例えば、3つのモノマー、特に本発明による第1のモノマー、本発明による第2のモノマー、及び式(V)又は式(VI)によって表される第3のモノマーの間の反応によって得ることもでき、第3のモノマーは、第1のモノマー及び第2のモノマーとは異なる:
【0052】
【化7】
(式中、R
7は、H又はCH
3であり、R
8は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
9から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
9は、水素又はC
1~4アルキルから選択されX
4=NH又はOであり、pは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数である)又は
【0053】
【化8】
(式中、R
10は、H又はCH
3であり、R
11は、C
2~6アルカンジイルであり、アルカンジイルは、ハロゲン化物、C
1~4アルキル、CF
3又はOR
12から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されており、R
12は、水素又はC
1~4アルキルから選択されX
5=NH又はOであり、X
6=SH、NH
2又はOHであり、qは、1~10、好ましくは1~5から選択される整数であり、より好ましくはq=1である)。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、最大2つのモノマー間の反応によって得ることができるコポリマーであり、2つのモノマーは、式(I)によって表される第1のモノマー及び式(II)によって表される第2のモノマーである。
【0055】
本発明の非常に好ましい実施形態は、最大2つのモノマー間の反応によって得ることができるコポリマーであり、2つのモノマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートである第1のモノマー及び2-ヒドロキシエチルアクリルアミドである第2のモノマーである。
【0056】
好ましい実施形態では、第1のモノマー対第2のモノマーの重量比は、1対5~8対1、好ましくは1対3~7対1、より好ましくは1対2~5対1、最も好ましくは1対2~2対1である。
【0057】
好ましい実施形態では、コポリマーは、導電層の総重量に基づいて20重量%を超える、好ましくは導電層の総重量に基づいて30重量%を超える、最も好ましくは50重量%を超える量で存在する。好ましい実施形態では、コポリマーは、導電層の総重量に基づいて80重量%未満、好ましくは導電層の総重量に基づいて75重量%未満、最も好ましくは70重量%未満の量で存在する。好ましい実施形態では、コポリマーは、導電層の総量に基づいて20重量%~80重量%の範囲、好ましくは導電層の総重量に基づいて30重量%~75重量%の範囲、より好ましくは50重量%~70重量%の範囲の量で存在する。
【0058】
好ましい実施形態では、コポリマーは、保護層の総重量に基づいて20重量%を超える、好ましくは保護層の総重量に基づいて30重量%を超える、最も好ましくは35重量%を超える量で存在する。好ましい実施形態では、コポリマーは、保護層の総重量に基づいて80重量%未満、好ましくは保護層の総重量に基づいて75重量%未満、最も好ましくは50重量%未満の量で存在する。好ましい実施形態では、コポリマーは、保護層の総量に基づいて20重量%~80重量%の範囲、好ましくは保護層の総重量に基づいて30重量%~75重量%の範囲、より好ましくは35重量%~50重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
本発明によるコポリマーの特定の例は、式(VII)
【0060】
【化9】
(式中、oは、5~150、好ましくは8~100、より好ましくは10~50から選択される整数であり、r、s及びtは、1~10、好ましくは2~8、最も好ましくは3~6から独立して選択される整数である)によって表される。しかしながら、当業者によって理解されるように、本発明によるコポリマーは、式(VII)に限定されず、例示的な実施形態として示される。
【0061】
本発明の非常に好ましい実施形態では、本発明によるコポリマー、したがって本発明による保護層及び本発明による導電層は、以下の実施例で実証されるように、自己修復特性を有する。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、本発明によるコポリマー、保護層及び/又は導電層は、熱アニーリング工程に供される。当業者によって理解されるように、熱アニーリングは、応力を緩和し、均一性を改善し、基材との接触を向上させるために材料化学において使用される一般的なプロセスである。特に、熱アニーリングは、コーティングによってコーティングされた部品の温度Tを、最初に室温から最大(操作)温度Tmaxまで、好ましくは本発明によるコポリマー及び/又は本発明による保護層の再結晶化温度を超える温度Tに上昇させ、その後、操作(例えば、切断)終了後に、温度を下げて室温に戻すプロセスである。非常に好ましい実施形態では、熱アニーリング工程は、コポリマーのUV硬化後に、40℃~100℃の範囲、好ましくは50℃~90℃の範囲、より好ましくは60℃~80℃の範囲の温度で行い、及び/又は熱アニーリングの持続時間は、5分~10時間、好ましくは15分~5時間、最も好ましくは30分~90分である。非常に好ましい実施形態では、本発明による熱アニーリング工程は、乾燥空気中で行う。本発明者らは、驚くべきことに、熱アニーリング工程がコポリマーの伝導性を改善することを見出した。加えて、熱アニーリング工程に供された各コポリマーは、より均質に見え、Li表面とのより良好な接触を有する。更に、本発明者らは、熱アニーリング工程後に、本発明による負極の電荷移動抵抗(Rct)が低下することを見出した。
【0063】
第1のリチウム塩
上記したように、本発明による保護層は、第1のリチウム塩を含む。
【0064】
本発明の一実施形態では、第1のリチウム塩は、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX7、ROCO2Li、HCOLi、R13OLi、Li2O、Li2C2O4、(R13OCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiSbF6、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2(式中、R13=炭化水素及びX7=F、Cl、I又はBr)及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、Lil、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3(SO3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiSbF6、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、第1のリチウム塩は、LiN(SO2CF3)2又はLiN(SO2F)2であり、最も好ましくは、第1のリチウム塩は、LiN(SO2F)2である。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、第1のリチウム塩の量は、導電層の総重量に基づいて5重量%を超える、好ましくは導電層の総重量に基づいて10重量%を超える、最も好ましくは導電層の総重量に基づいて40重量%を超える。本発明の好ましい実施形態では、第1のリチウム塩の量は、導電層の総重量に基づいて70重量%未満、好ましくは導電層の総重量に基づいて65重量%未満、最も好ましくは60重量%未満である。本発明の好ましい実施形態では、第1のリチウム塩の量は、導電層の総重量に基づいて5重量%~70重量%、好ましくは導電層の総重量に基づいて10重量%~65重量%、より好ましくは40重量%~60重量%である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、第1のリチウム塩の量は、保護層の総重量に基づいて10重量%を超える、好ましくは保護層の総重量に基づいて40重量%を超える、最も好ましくは保護層の総重量に基づいて50重量%を超える。本発明の好ましい実施形態では、リチウム塩の量は、保護層の総重量に基づいて70重量%未満、好ましくは保護層の総重量に基づいて65重量%未満、最も好ましくは60重量%未満である。本発明の好ましい実施形態では、リチウム塩の量は、保護層の総重量に基づいて10重量%~70重量%、好ましくは保護層の総重量に基づいて40重量%~65重量%、より好ましくは50重量%~65重量%である。
【0067】
本発明者らは、リチウム塩を添加すると、保護層及び/又は導電層のLiイオン伝導性が改善され、保護層及び/又は導電層が電解質中に存在するリチウムイオンを枯渇させることを防止することを見出した。更に、より高いリチウム塩含有量を保護層に添加すると、未補償抵抗Ruが低下する。
【0068】
保護層
本発明の一実施形態では、保護層は、1μm~10μm、好ましくは2μm~7μm、より好ましくは3μm~6μmの厚さを有する。
【0069】
本発明の一実施形態では、保護層は、金属基材の少なくとも一部の上に直接配置され、好ましくは、保護層は、金属基材の表面全体の上に直接配置される。当業者によって理解されるように、本発明による負極は、本発明による保護層を含み、保護層は、金属基材上に外層を形成する。言い換えれば、保護層は、金属基材の表面の一部にコーティングされる、すなわち、保護層は、金属基材の表面の一部に、好ましくは金属基材の表面全体に、コーティングを形成する。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による保護層は、0.01mS/cmを超える、好ましくは0.015mS/cmを超える、より好ましくは0.05mS/cmを超えるイオン伝導率を有する。本発明の好ましい実施形態では、保護層は、0.5mS/cm未満、好ましくは0.2mS/cm未満、より好ましくは0.1mS/cm未満のイオン伝導率を有する。本発明の好ましい実施形態では、本発明による保護層は、0.01mS/cm~0.5mS/cmの範囲、好ましくは0.015mS/cm~0.2mS/cmの範囲、最も好ましくは0.05mS/cm~0.1mS/cmの範囲のイオン伝導率を有する。保護層のイオン伝導率は、対称Li-Liセルにおける電子インピーダンス分光法(electronic impedance spectroscopy、EIS)による未補償抵抗Ruの定量化によって測定され、イオン伝導率は、セル構築後に(例えば、本発明による負極及び電解質組成物を含む電池においてを意味している)測定される。
【0071】
本発明の更なる態様は、本発明による保護層を調製するための方法であって、以下の工程:
i)上で定義した第1のモノマー、上で定義した第2のモノマー、上で定義した開始剤、及び上で定義した第1のリチウム塩を、上で定義した有機液体に添加する工程と、
ii)工程i)で得られた混合物を、上で定義した架橋工程に供する工程と、
iii)任意選択的に、工程ii)の架橋混合物を、上で定義した熱アニーリング工程に供する工程と、
を含む。
【0072】
本発明の更なる態様は、本発明に従う保護層を調製するための方法によって得ることができる保護層である。
【0073】
導電層
本発明の一実施形態では、導電層は、1μm~10μm、好ましくは2μm~7μm、より好ましくは3μm~6μmの厚さを有する。
【0074】
本発明の一実施形態では、導電層は、金属基材の少なくとも一部の上に直接配置され、好ましくは、導電層は、金属基材の表面全体の上に直接配置される。当業者によって理解されるように、本発明による負極は、本発明による導電層を含み、導電層は、金属基材上に外層を形成する。言い換えれば、導電層は、金属基材の表面の一部にコーティングされる、すなわち、導電層は、金属基材の表面の一部に、好ましくは金属基材の表面全体に、コーティングを形成する。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による導電層は、0.005mS/cmを超える、好ましくは0.01mS/cmを超える、より好ましくは0.015mS/cmを超えるイオン伝導率を有する。本発明の好ましい実施形態では、保護層は、1.5mS/cm未満、好ましくは1.2mS/cm未満、より好ましくは1mS/cm未満のイオン伝導率を有する。本発明の好ましい実施形態では、本発明による導電層は、0.005mS/cm~1.5mS/cmの範囲、好ましくは0.01mS/cm~1.2mS/cmの範囲、最も好ましくは0.015mS/cm~1mS/cmの範囲のイオン伝導率を有する。保護層のイオン伝導率は、対称Li-Liセルにおける電子インピーダンス分光法(EIS)による未補償抵抗Ruの定量化によって測定され、イオン伝導率は、セル構築後に(例えば、本発明による負極及び電解質組成物を含む電池においてを意味している)測定される。
【0076】
本発明の更なる態様は、本発明による導電層を調製するための方法であり、以下の工程:
i)上で定義した第1のモノマー、上で定義した第2のモノマー、上で定義した開始剤、上で定義したリチウム塩及び上で定義したフルオロポリマー添加剤を、上で定義した有機液体に添加する工程と、
ii)工程i)で得られた混合物を、上で定義した架橋工程に供する工程と、
iii)任意選択的に、工程ii)の架橋混合物を、上で定義した熱アニーリング工程に供する工程と、
を含む。
【0077】
本発明の更なる態様は、本発明に従う導電層を調製するための方法によって得ることができる導電層である。
【0078】
負極
本発明の更なる態様は、本発明による負極であり、
a.金属基材、
b.金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された本発明による保護層を調製するための方法によって得ることができる保護層、及び/又は金属基材の少なくとも一部の上に直接配置された本発明による導電層を調製するための方法によって得ることができる導電層、
を含む。
【0079】
本発明の更なる態様は、以下の工程:
i)上で定義した第1のモノマー、上で定義した第2のモノマー、上で定義した開始剤、上で定義したリチウム塩及び、任意選択的に、上で定義したフルオロポリマー添加剤を、上で定義した有機液体に添加する工程と、
ii)工程i)で得られた混合物を、金属基材の少なくとも一部、好ましくは金属基材の表面全体にコーティングする工程と、
iii)工程ii)のコーティングされた金属基材を、上で定義した架橋工程に供する工程と、
iv)任意選択的に、工程iii)の架橋されたコーティングされた金属基材を、上で定義した熱アニーリング工程に供する工程と、
を含む、電池用の負極を調製するための方法である。
【0080】
本発明の一実施形態では、固体の量(すなわち、第1のモノマー、第2のモノマー、開始剤、リチウム塩及びフルオロポリマー添加剤の合計)は、固体と液体との総重量に基づいて、1重量%を超える、好ましくは固体と液体との総重量に基づいて2重量%を超える、最も好ましくは3重量%を超える。本発明の一実施形態では、固体の量(すなわち、第1のモノマー、第2のモノマー、開始剤、リチウム塩及びフルオロポリマー添加剤の合計)は、固体と液体との総重量に基づいて、10重量%未満、好ましくは固体と液体との総重量に基づいて8重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。本発明の一実施形態では、固体の量(すなわち、第1のモノマー、第2のモノマー、開始剤、リチウム塩及びフルオロポリマー添加剤の合計)は、固体と液体との総重量に基づいて、1重量%~10重量%、好ましくは固体と液体との総重量に基づいて2重量%~8重量%、最も好ましくは3重量%~5重量%である。
【0081】
コーティング工程は、当業者によって理解される従来の湿式プロセスにおいて使用される方法を使用して、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ディップコーティングで行われ得る。
【0082】
任意選択的に、コーティング工程の後に乾燥工程が行われる。乾燥工程は、有機液体の沸点以上の温度で、かつ、本発明によるコポリマー及び/又は本発明による保護層のガラス転移温度Tg以下の温度で、適切に行われ得る。乾燥工程はまた、金属基材の表面上に残っている液体を除去し、同時に本発明によるコポリマー及び/又は本発明による保護層の接着性を改善するためにも行われ得る。
【0083】
本発明の更なる態様は、本発明による電池用の負極を調製するための方法によって得ることができる負極である。
【0084】
電池
本発明の更なる態様は、
a.本発明による負極、又は本発明による電池用の負極を調製する方法によって得ることができる負極と、
b.正極と、
c.好ましくは正極と負極との間に配置される電解質組成物と、
d.任意選択的に、セパレータと、
を含む電池である。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、電池は、リチウム金属電池、好ましくはリチウム金属二次電池である。
【0086】
正極
正極(すなわち、カソード)の材料は、特に限定されず、その例としては、リチウムイオンを拡散することができる構造を有する遷移金属化合物、又はその特化した金属化合物、及びリチウムの酸化物が挙げられる。特に、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO4、LiFePO4などを挙げることができる。好ましい正極材料は、リチウム、ニッケル、並びに任意選択的にマンガン、コバルト及び/又はアルミニウムを含む混合金属酸化物である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、正極は、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物、リチウムニッケル-マンガン酸化物、リチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸コバルト鉄リチウム、硫化リチウム、硫黄及びアルミニウムからなる群から選択される正極材料を含み、好ましくは、正極材料は、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物又はリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物である。
【0088】
正極は、既知の伝導性補助剤若しくはバインダーと共に上記に列挙した正極材料を、又は既知の伝導性補助剤若しくはバインダーと共に正極活物質を、ピロリドンなどの有機液体中にプレス成形することによって形成することができる。これは、混合物を適用し、それをアルミニウム箔などの集電体に塗布し、続いて乾燥させることによって得ることができる。
【0089】
電解質組成物
本発明の一実施形態では、本発明による電池は、電解質組成物、好ましくは液体電解質組成物を含む。好ましい実施形態では、電解質組成物は、正極と負極との間に配置される。
【0090】
本発明の一実施形態では、電解質組成物は、
i.第2のリチウム塩を含む有機非フッ素化液体と、
ii.フッ素化液体と、
を含む。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体は、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、アリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、ブチルジグリム、ポリエチレングリコール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、チルメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,4-ジオキサン、リン酸トリメチル(TMPa)、リン酸トリエチル(TEPa)、ジメチルメチルホスホネート(DMMP)、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、有機非フッ素化液体は、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、アリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ブチルジグリム、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ジメチルメチルホスホネート、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,2-ジメトキシメタン又は1,2-ジエトキシエタンからなる群から選択され、最も好ましくは、非フッ素化有機液体は、1,2-ジメトキシメタン又は1,2-ジメトキシエタンである。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、第2のリチウム塩は、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX8、R14OCO2Li、HCOLi、R14OLi、Li2O、Li2C2O4、(R14OCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiSbF6、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2(式中、R14=炭化水素及びX8=F、Cl、I又はBr)、好ましくは、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiI、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3(SO3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiSbF6、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(CF3)3、LiB(C2O4)2及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、リチウム塩は、LiN(SO2CF3)2又はLiN(SO2F)2であり、最も好ましくは、リチウム塩は、LiN(SO2F)2である。
【0093】
非常に好ましい実施形態では、上記した第1のリチウム塩、及び第2のリチウム塩は、同じリチウム化合物である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体中の第2のリチウム塩の濃度は、1Mを超える、好ましくは2Mを超える、最も好ましくは3Mを超える。本発明の好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体中の第2のリチウム塩の濃度は、10M未満、好ましくは8M未満、最も好ましくは6M未満である。本発明の好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体中の第2のリチウム塩の濃度は、1M~10Mの範囲内、好ましくは2M~8Mの範囲内、最も好ましくは3M~6Mの範囲内である。
【0095】
一実施形態では、フッ素化液体は、フッ素化エーテル、フッ素化カーボネート又はフッ素化芳香族化合物である。好ましい実施形態では、フッ素化液体は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、メトキシノナフルオロブタン(MOFB)、エトキシノナフルオロブタン(EOFB)、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(DTFEC)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)オルトホルメート(THFiPO)、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルトホルメート(TDFEO)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルオルトホルメート(BTFEMO)、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)オルトホルメート(TPFPO)、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)オルトホルメート(TTPO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、フッ素化液体は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)又は1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)であり最も好ましくは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)である。
【0096】
好ましい実施形態では、第2のリチウム塩対有機非フッ素化液体のモル比は、1対3~1対0.5(mol/mol)、好ましくは1対2~1対0.60(mol/mol)、より好ましくは1対1.60~1対0.80(mol/mol)、最も好ましくは1対1.50~1対10である。
【0097】
好ましい実施形態では、第2のリチウム塩対有機非フッ素化液体のモル比は、1対2~1対0.15(mol/mol)、好ましくは1対1.85~1対0.25(mol/mol)、より好ましくは1対1.70~1対0.35(mol/mol)、更により好ましくは1対1.50~1対0.35(mol/mol)、最も好ましくは1対1~1対0.40(mol/mol)である。
【0098】
好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体対フッ素化液体のモル比は、1対2~1対0.10(mol/mol)、好ましくは1対1.50~1対0.20(mol/mol)、より好ましくは1対1.20~1対0.25(mol/mol)、更により好ましくは1対1~1対0.30(mol/mol)、最も好ましくは1対0.85~1対0.30(mol/mol)である。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、有機非フッ素化液体対フッ素化液体の体積比は、6対1~1対2(vol/vol)、好ましくは5対1~1対1(vol/vol)、最も好ましくは4対1~2対1(vol/vol)である。
【0100】
当業者によって理解されるように、本発明による有機液体は、本発明によるコポリマーを与える架橋工程において使用される液体であり、一方、本発明による有機非フッ素化液体は、本発明による電解質組成物中に存在する液体である。
【0101】
当業者によって理解されるように、本発明によるフッ素化液体は、少なくとも1つのフッ化物置換基を含むが、有機非フッ素化液体は、フッ化物置換基を有しない。
【0102】
セパレータ
正極と負極との間の短絡を防止するために、通常は、カソードとアノードとの間にセパレータが挿入される。セパレータの材料及び形状は特に限定されないが、電解質組成物を容易に通過させ得ること、及びセパレータが絶縁体であり化学的に安定な材料であることが好ましい。その例としては、様々なポリマー材料で作製された微多孔質フィルム及びシートが挙げられる。ポリマー材料の具体例としては、ポリオレフィンポリマー、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。電気化学的安定性及び化学的安定性の観点から、ポリオレフィンポリマーが好ましい。
【0103】
その他
本発明の好ましい実施形態では、本発明の電池は、少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%のクーロン効率を有する。クーロン効率は、以下の一般式を用いて評価される:
【0104】
【0105】
使用
本発明の更なる態様は、電池の未補償抵抗Ruを低下させるための本発明による電池の使用を提供することである。
【0106】
本発明の更なる態様は、電池の電荷移動抵抗Rctを低下させるための本発明による電池の使用を提供することである。
【実施例】
【0107】
本発明を以下の実施例において更に例示する。
【0108】
セル調製物及び試験方法の説明
試験したコインセルは、全てCR2032型であった。正極ケーシング、正極(電解質中に予浸漬)、Cellguardセパレータ、50μLの電解質液滴、負極、スペーサ、波形バネ及び負極ケーシングをその順序で上に積み重ねて、セルを調製した。MTI社製の手動圧接機を用いて、80kg/cm2の圧力で圧接を行った。
【0109】
Li-Liパウチセルを、以下の事項に従って調製した:フォーマット=1Li(58×58mm)/1Sep(62×62mm)/1Li(50×50mm)、「公称容量」=0.1Ah、セパレータ=アルミナコーティングされたTargray SH220W22、リチウム=100μm厚(コーティング又は非コーティング)、電解質添加量(electrolyte loading)=3.00μL mAh-1(すなわち、0.3mL)、Cレート=C/5 D/5(標準レジーム)又はC/3 D/1、電位保持あり(新しいレジーム)、サイクル温度=25℃。
【0110】
Li-NMCパウチセルは以下の事項に従って調製した:フォーマット=3Li(58×58mm)/4Sep(62×62mm)/2NMC(56×54mm)、公称容量=0.48Ah(カソード表面容量を4mAh cm-2であると仮定)、セパレータ=アルミナでコーティングされたTargray SH220W22、リチウム=100μm厚電解質添加量=2.00μL mAh-1(すなわち、0.97mL)又は1.75μL mAh-1すなわち、0.85mL)、Cレート=C/5 D/5(標準レジーム)又はC/3 D/1、電位保持あり(新しいレジーム)、サイクル温度=25℃。NMCカソードは、正極活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、カーボンブラック及びPVDFを92対4対4の重量比で含む。
【0111】
未補償抵抗Ruは、保護層でコーティングされている又はコーティングされていないリチウム金属アノードを含有するLi-Li対称コインセルの電気化学インピーダンス分光法(ナイキスト線図)によって測定する。試験では、1MHz~1Hzの周波数を印加した。
【0112】
電荷移動抵抗Rctは、保護層でコーティングされている又はコーティングされていないリチウム金属アノードを含有するLi-Li対称コインセルの電気化学インピーダンス分光法(ナイキスト線図)によって測定する。試験では、1MHz~1Hzの周波数を印加した。
【0113】
保護層のイオン伝導率は、対称Li-Liセルにおける電子インピーダンス分光法(EIS)による未補償抵抗Ruの定量化によって測定し、イオン伝導率は、セル構築後に測定する。
【0114】
保護層の断面は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して分析した。JEOL製ベンチトップSEMを使用した(試料はSEM内で真空下で画像化した、二次電子画像化、プローブ電流は標準に設定、SEMカラムの加速電圧)。
【0115】
ポリマーで保護されたアノードは、モノマー、リチウム塩、開始剤及びフルオロポリマー添加剤を、以下の表において明らかにした量で有機液体中に添加することによって、調製する。これらの混合物をアノード上にコーティングし、光開始剤としてIrgacure 819を用いて5分のUV硬化時間でUV硬化に供する。任意選択的に、ポリマーの熱アニーリングは、ポリマーで保護されたアノードを70℃で1時間UV硬化させた後に行う。
【0116】
実施例1
フルオロポリマー添加剤の量の影響を評価するために、以下のポリマー配合物1-a、1-b及び1-cを調製した(表1を参照されたい、PEGDA=700g/molのMnを有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、LiTFSI=LiN(SO2CF3)2、PVDF-HFP=ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)、THF=テトラヒドロフラン)。
【0117】
【0118】
図1は、ポリマー配合物中のフルオロポリマー添加剤の重量%の減少が膜の連続性に対して及ぼす影響を示しており、配合物1-a及び1-bのコーティングがリチウム基材上に均質な膜を形成するのに対して、PVDF-HFPの量を過度に減少させると(9対1、配合物1-c)、はるかに低い未補償抵抗(R
u)を示す不連続かつ斑状の膜が生じることを例示している。
図2は、伝導率に対する効果を実証しており、最適なPEG対PVDF-HFP比は3対1で、連続ポリマー膜を提供し、配合物1-aと比較するとR
uが低下している。
【0119】
実施例2
リチウム塩の効果を評価するために、以下のポリマー配合物2-a、2-b、2-c及び2-dを調製した(表2を参照されたい、PEGDA=700g/molのMnを有するポリ(エチレングコール)ジアクリレート、LiTFSI=LiN(SO2CF3)2、LiFSI=LiN(SO2F)2、PVDF-HFP=ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)、THF=テトラヒドロフラン)。
【0120】
【0121】
表2のポリマー配合物の各々からの伝導率データを
図3に示す。ポリマー配合物中の低い膜塩含有量(10重量%)の問題は明らかであり、なぜなら、最初の20時間にわたり、抵抗性ポリマー配合物が電解質から塩を吸収するにつれてLi-LiコインセルのR
uが低下しているからであり、このプロセスは阻止されるべきものである。ポリマー配合物の塩含有量を、配合物の総重量の10重量%から50重量%に増加させると、各例におけるポリマー膜の改善された伝導性に起因するセルの各々のR
uの低下がもたらされる(配合物2-b及び2-dは、約45~47Ωの同様の未補償抵抗を示す)。50重量%の塩を含有する膜の0~60時間のR
uの安定性は、ポリマー膜と電解質との間のイオンの移動がセル構築から平衡状態にあり、電解質塩の枯渇が回避されることを示している。
【0122】
実施例3
N-ヒドロエチルアクリルアミドモノマーの効果を評価するために、以下のポリマー配合物4-a、4-b、4-c及び4-dを調製した(表3を参照されたい、PEGDA=700g/molのMnを有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、HEAA=N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、PVDF-HFP=ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)、THF=テトラヒドロフラン)。
【0123】
【0124】
各配合物の保護層をリチウム基材上にコーティングし、硬化させ、そのコーティングされた表面を横切るようにメスを引くことによって切断した。切断した試料をSEMによって撮像し、次いで、試料を1,2-ジメトキシエタン(DME)中4.5MのLiFSIに一晩(16時間)浸漬した。膜を純粋なDMEですすぎ、過剰のLiFSI塩を除去して、より明確なSEM顕微鏡写真を可能にしてから、乾燥させ、SEM下で観察した。表3のポリマー配合物の各々に関する結果を
図4に示す。
【0125】
予想通りに、配合物4-a(0重量%のHEAA)(1対0)は、水素結合供与体がないため、自己修復特性を示さない。最低量のHEAAを含有する保護剤(配合物4-b)もまた、これらの条件下で自己修復の証拠を示していない。HEAA含有量をPEGDA対HEAAの重量比3対1まで増加させると、作られた切開部位でポリマー膜が再シールされる結果となる。最後に、配合物4-d(PEGDA対HEAAの重量比1対1 w/w)もまた、実質的な自己修復特性を示している(
図4を参照されたい)。加えて、配合物4-dは、他の配合物と比較して、SEM下で観察すると、Li金属表面へのより良好な接着性を有するように見えることは注目に値する。
【0126】
次いで、各ポリマー配合物を、Li-NMCセルにおいて、参照セル(ポリマーなし)に対して試験した。1.75μL mAh
-1の添加量の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、vol/vol、TTE=1,1,2,2-テトラ-フルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル)を有するセルを、C/3~D/1のサイクル方式で、発泡体(80×80mm)を使用して、0.06MPaの固定体積圧力下でサイクルした。各ポリマー保護セルは、参照セルと同様に機能した(
図5及び
図6を参照されたい)。
【0127】
次の工程において、熱アニーリング(乾燥空気中70℃で1時間)の前後に各ポリマー配合物の伝導率を評価した。その結果をそれぞれ
図7(a)及び
図7(b)に示す。明らかに、熱アニーリングは、ポリマー膜の伝導性を改善する。約0.1mS cm
-1の最小閾値まで膜伝導率を増加させることは、アノード保護の成功に不可欠であると考えられる。より高い伝導性は、ポリマー膜の下のめっきに対するより低いエネルギー障壁をもたらし、これは、デンドライト浸透を低下させ、デッドリチウムの量を低減し、電解質及びリチウムアノードの機能性を延長するのに役立つ。また、各ポリマー配合物がより均質に見え、リチウム表面とより良好に接触していることも観察された。
【0128】
次いで、アニーリング後の各ポリマー配合物を、参照セル(ポリマーなし)に対してLi-NMCセルにおいて試験した。1.75μL mAh
-1の添加量の(DME中4.5MのLiFSI)対TTE(3対1、vol/vol、TTE=1,1,2,2-テトラ-フルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル)を有するセルを、C/3~D/1のサイクル方式で、発泡体(80×80mm)を使用して、0.06MPaの固定体積圧力下でサイクルした。各熱アニールされたポリマー保護セルは、同様に機能し、参照セルと比較して最大20%良好であった(
図8及び
図9を参照されたい)。
【0129】
実施例4
電解質の系統的スクリーニングを実施し、DME中5.23MのLiFSI溶液(LiFSI対DMEのモル比=1対1)を、様々な体積比のTTEで希釈した。パウチセルを、25℃で3.0V~4.3Vの電圧ウィンドウにおいて、C/10~D/10のより遅いレートでの初期サイクルを含むC/5~D/5の標準方式にて試験した。電解質比は、2μL mAh
-1において維持した。
図10に示すように、TTEの添加なし(DME中5.23MのLiFSI)又は大量のTTEの添加((DME中5.23MのLiFSI)対TTE 1対2 vol/vol)は、他の希釈((DME中5.23MのLiFSI)対TTE 3対1、2対1及び1対1 vol/vol)と比較してサイクル寿命の減少を示す。((DME中5.23MのLiFSI)対TTE 3対1 vol/vol)についての不完全な結果は、不良なセル構築に起因している。
【0130】
実施例5
ポリマーでコーティングされていない(裸の(むき出しの)Li)リチウム金属基材、又は配合物4-a、4-b及び4-cでコーティングされたリチウム金属基材に関する電荷移動抵抗R
ct及び未補償抵抗R
uを、異なるサイクル温度で測定し(
図11を参照されたい)、評価した。TTEを含むDME中4.5MのLiFSI((DME中4.5MのLiFSI)対TTE 3対1 v/v)の存在下では、主鎖により多くのHEAAを含むポリマーフィルムは、電解質組成物中にTTEが存在しないポリマーで保護されたアノードと比較して、電荷移動抵抗R
ctの低下及び未補償抵抗R
uの低下を示す。
【国際調査報告】