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  • 特表-前駆体および関連方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】前駆体および関連方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20241128BHJP
   C08G 83/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07F7/10 F
C08G83/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535317
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 US2022052998
(87)【国際公開番号】W WO2023114391
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,119
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ミンソク
(72)【発明者】
【氏名】リー, サンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, イェリム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク, キジン
【テーマコード(参考)】
4H049
4J031
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP03
4H049VP04
4H049VQ80
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR51
4H049VU24
4H049VU36
4J031BA11
4J031BA17
4J031BC07
4J031BD23
4J031BD24
4J031BD26
(57)【要約】
いくつかの実施形態は、気相堆積ための前駆体を含む前駆体に関する。前駆体は、脂肪族炭化水素および少なくとも1つのジシリルアミン基を含む。少なくとも1つのジシリルアミン基は、脂肪族炭化水素に結合されている。少なくとも1つのジシリルアミン基は、シラニド基を含まない。一部の実施形態は、前駆体を作製する方法に関する。この方法は、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを塩基の存在下で反応させて、気相堆積に有用な前駆体を形成することを含む。いくつかの実施形態は、前駆体を用いてケイ素含有膜を形成するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体であって、
少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、
少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、
前駆体。
【請求項2】
脂肪族炭化水素がC~C10アルカンを含む、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
脂肪族炭化水素が直鎖のC~C10アルカンを含む、請求項1に記載の前駆体。
【請求項4】
脂肪族炭化水素が分枝のC~C10アルカンを含む、請求項1に記載の前駆体。
【請求項5】
少なくとも1つのジシリルアミン基が以下の化学式:
[式中、
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する、請求項1に記載の前駆体。
【請求項6】
脂肪族炭化水素に結合している少なくとも1つのシリルアミン基をさらに含む、請求項1に記載の前駆体。
【請求項7】
少なくとも1つのシリルアミン基が以下の化学式:
[式中、
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する、請求項6に記載の前駆体。
【請求項8】
前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項9】
前駆体が、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物との反応生成物である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項10】
前駆体が次式
の化合物である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項11】
前駆体が室温で液体である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項12】
ケイ素含有膜を形成するための方法であって、
脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体を得ることであって、
少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、
少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、
前駆体を得ることと;
前駆体を気化させて気化した前駆体を得ることと;
気化させた前駆体を気相堆積条件下で基板と接触させて、基板上にケイ素含有膜を形成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
気相堆積条件が原子層堆積条件を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
気相堆積条件がプラズマ強化原子層堆積条件を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
気相堆積条件が熱原子層堆積条件を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ケイ素含有膜が、SiO、SiN、SiOC、SiCN、SiOCNまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前駆体が次式
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前駆体が次式:
の化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前駆体を作製する方法であって、
ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを塩基の存在下で反応させて、脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む気相堆積のための前駆体を形成することであって、
少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、
少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、
前駆体を形成することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本開示は、2021年12月17日に出願された米国特許仮出願第63/291,119号の優先権を主張するものであり、当該の米国仮特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、気相堆積の前駆体および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造プロセスでは、シリコン膜を形成するための気相堆積プロセスにおいてシリコン源試薬を利用する。シリコン源試薬の一例は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。TEOSからシリコン膜を形成するには、TEOSを気化させて基板上に堆積させる。
【発明の概要】
【0004】
一部の実施形態は、前駆体に関する。一部の実施形態では、前駆体は、脂肪族炭化水素および少なくとも1つのジシリルアミン基を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのジシリルアミン基は、脂肪族炭化水素に結合している。一部の実施形態では、少なくとも1つのジシリルアミン基は、シラニド(silanide)基を含まない。
【0005】
一部の実施形態では、脂肪族炭化水素はC~C10アルカンを含む。
【0006】
一部の実施形態では、脂肪族炭化水素は直鎖のC~C10アルカンを含む。
【0007】
一部の実施形態では、脂肪族炭化水素は分枝のC~C10アルカンを含む。
【0008】
一部の実施形態では、少なくとも1つのジシリルアミン基は、以下の化学式:
[式中、
、RおよびRは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する。
【0009】
一部の実施形態では、前駆体は、脂肪族炭化水素に結合した少なくとも1つのシリルアミン基をさらに含む。
【0010】
一部の実施形態では、少なくとも1つのシリルアミン基は以下の化学式:
[式中、
、RおよびRは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する。
【0011】
一部の実施形態では、前駆体は次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である。
【0012】
一部の実施形態では、前駆体は、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物との反応生成物である。
【0013】
一部の実施形態では、前駆体は次式の化合物である。
【0014】
一部の実施形態では、前駆体は室温で液体である。
【0015】
一部の実施形態は、ケイ素含有膜を形成するための方法に関する。一部の実施形態では、ケイ素含有膜を形成するための方法は、以下の1つまたは複数の工程、少なくとも1つのジシリルアミン基は脂肪族炭化水素に結合しており、少なくとも1つのジシリルアミン基はシラニド基を含まない、脂肪族炭化水素および少なくとも1つのジシリルアミン基を含む前駆体を得る工程と;前駆体を気化させて気化させた前駆体を得る工程と;気化させた前駆体を基板と気相堆積条件下で接触させて、基板上にケイ素含有膜を形成する工程と、を含む。
【0016】
一部の実施形態では、気相堆積条件は原子層堆積条件を含む。
【0017】
一部の実施形態では、気相堆積条件はプラズマ強化原子層堆積条件を含む。
【0018】
一部の実施形態では、気相堆積条件は熱原子層堆積条件を含む。
【0019】
一部の実施形態では、ケイ素含有膜は、SiO、SiN、SiOC、SiCN、SiOCN、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
一部の実施形態では、前駆体は次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である。
【0021】
一部の実施形態では、前駆体は次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である。
【0022】
一部の実施形態では、前駆体は次式の化合物である。
【0023】
一部の実施形態は、前駆体を作製するための方法に関する。一部の実施形態では、前駆体を作製するための方法は、以下の工程、塩基の存在下で、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを反応させて、脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体を形成する工程、の1つまたは複数を含み、ここで少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない。
【0024】
本開示の一部を構成し、本明細書に記載される材料および方法が実施され得る実施形態を例示する図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一部の実施形態による、前駆体を作製する方法のフローチャートである。
図2】一部の実施形態による、ケイ素含有膜を作製する方法のフローチャートである。
図3】一部の実施形態による、プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書で使用される場合、「脂肪族炭化水素」という用語は、一価または多価の脂肪族炭化水素基を指す。この用語は、例えば、限定されないが、一価アルキル基、多価アルキル基、一価アルケニル基、多価アルケニル基、一価アルキニル基、多価アルキニル基、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。多価という用語は、例えば、限定されないが、他の多価基の中でも、二価基、三価基、四価基、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、一価アルキル基、二価アルキル基、三価アルキル基、または四価アルキル基のうちの少なくとも1つが挙げられる。一部の実施形態では、脂肪族炭化水素は、ヘテロ原子を含まない。一部の実施形態では、脂肪族炭化水素は、例えば、限定されないが、シクロアルカンなどの環式化合物を含まない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~30個の炭素原子を有する一価または多価の炭化水素鎖基を指す。n個の炭素原子を有するアルキルは、「Cアルキル」として指定され得る。例えば、「Cアルキル」は、n-プロピルおよびイソプロピルを含み得る。例えば、1~30個の炭素原子などの炭素原子の範囲を有するアルキルは、C~C30アルキルとして指定され得る。一部の実施形態では、アルキルは直鎖状である。一部の実施形態では、アルキルは分枝状である。一部の実施形態では、アルキルは置換されている。一部の実施形態では、アルキルは非置換である。一部の実施形態では、アルキルは、C~C10アルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~C10アルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、またはそれらの任意の組合せ、の少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシルまたはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、単結合を介して結合し、環中に3~8個の炭素原子を有する非芳香族炭素環基を指す。この用語には、単環式非芳香族炭素環および多環式非芳香族炭素環が含まれる。例えば、多環式非芳香族炭素環を得るために、2つ以上のシクロアルキルを縮合させてもよく、架橋させてもよく、または縮合させ架橋させてもよい。一部の実施形態では、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、炭素原子および水素原子を含む芳香族環を指す。アリールの例としては、限定されないが、フェニル、ビフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「サイクルあたりの成長」または「GPC」という用語は、堆積のサイクルあたりの膜の厚みの増分を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ケイ素含有膜」は、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む膜を指す。例えば、ケイ素含有膜は、SiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiOCN膜、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態では、ケイ素含有膜は、20Å~2000Åの厚さを有する。
【0032】
考察
一部の実施形態は、前駆体および関連する方法に関する。これらの実施形態の少なくともいくつかは、半導体デバイスなどを含むマイクロエレクトロニクスデバイスの製造に有用な前駆体に関する。例えば、前駆体は、1つまたは複数の堆積方法によってケイ素含有膜を形成するために使用することができる。堆積方法の例としては、限定されないが、化学気相堆積(CVD)プロセス、デジタルまたはパルス化学気相堆積プロセス、プラズマ強化周期性化学気相堆積プロセス(PECCVD)、流動性化学気相堆積(FCVD)、原子層堆積(ALD)プロセス、熱原子層堆積、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)プロセス、有機金属化学気相堆積(MOCVD)プロセス、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)プロセス、またはその任意の組合せを、挙げることができる。
【0033】
一部の実施形態では、例えば、シリコン前駆体が提供される。シリコン前駆体は、従来のシリコン前駆体に比べて多くの利点を示すことができる。例えば、前駆体は、高い成長/サイクル(GPC)、高い熱安定性、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを示すことができる。前駆体の少なくとも1つの利点は、原子層堆積などの堆積プロセスにおける高いGPCが、アミンの窒素に結合したシリル基の数が増加するにつれて増加することである。少なくとも別の利点は、シリルアミン基および/またはジシリルアミン基のケイ素-窒素結合の強さがシリコン前駆体に高い熱安定性を付与しており、一方、アミン基がケイ素の反応性を増加させている。さらに、前駆体は液体の形態で提供することができる(例えば、液体シリコン前駆体として)。これらの利点は、多数の他の利点が本明細書に記載されているか、またはそうでなければ本開示から明らかであるため、限定的なものではない。
【0034】
前駆体は、脂肪族炭化水素、少なくとも1つのシリルアミン基、少なくとも1つのジシリルアミン基、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。一部の実施形態では、前駆体は、少なくとも1つのジシリルアミン基に結合した脂肪族炭化水素を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。脂肪族炭化水素に結合したジシリルアミン基の数は特に限定されない。例えば、1~20個のジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合していてもよい。一部の実施形態では、脂肪族炭化水素には、少なくとも1つのシリルアミン基が結合しているか、またはさらに結合している。脂肪族炭化水素に結合しているシリルアミン基の数は特に限定されない。例えば、1~20個のシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合していてもよいか、またはさらに結合していてもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つのシリルアミン基および/または少なくとも1つのジシリルアミン基は、窒素原子が脂肪族炭化水素の末端炭素原子に結合した末端基である。
【0035】
一部の実施形態では、ジシリルアミン基は、以下の化学式:
[式中、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ベンジルまたはそれらの任意の組合せを含む]
で表される。
【0036】
一部の実施形態では、シリルアミン基は、以下の化学式:
[式中、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ベンジルまたはそれらの任意の組合せを含む]
で表される。
【0037】
一部の実施形態では、前駆体は、次式
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ベンジルまたはそれらの任意の組合せを含む]
の化合物を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0038】
一部の実施形態では、前駆体は、アミン化合物とハロゲン化シリル化合物との反応生成物である。
【0039】
一部の実施形態では、アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンである。一部の実施形態では、アミン化合物は、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ペンタアミンなどの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、アミン化合物は、ポリアミン化合物である。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、メチルペンタンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,3-ジアミノブタン、2,3-ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2,4-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、ヒドラジン、テトラ(アミノメチル)メタン、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、N-メチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、トリメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、トリエチルエチレンジアミン、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、トリス(2-アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、N′,N′-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、1,2-エタンジアミン;1,2-プロパンジアミン;1,3-プロパンジアミン;1,4-ブタンジアミン;1,6-ヘキサンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン;2,2(4),4-トリメチルヘキサンジアミン;2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
一部の実施形態では、ハロゲン化シリル化合物は、次式:
[式中、
Xはハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である。
【0041】
一部の実施形態では、ハロゲン化シリル化合物は、ジアルキルハロゲン化シリル、トリアルキルハロゲン化シリル、モノアルキルジアリールハロゲン化シリル、トリアリールハロゲン化シリル、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ハロゲン化シリル化合物は、ジクロロシラン、トリクロロシラン、トリエチルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルクロリド、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、テトラメチルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。
【0042】
一部の実施形態では、前駆体は次式の少なくとも1つの化合物である。
【0043】
前駆体は、95%以上の純度レベルを有することができる。例えば、一部の実施形態では、前駆体は、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、99.9%~100%、99.99%~100%、99.999%~100%、または99.9999%~100%の純度レベルを有する。
【0044】
図1は一部の実施形態による、前駆体を作製する方法のフローチャートである。図1に示すように、前駆体を作製する方法は、以下の工程、アミン化合物を得る工程102、ハロゲン化シリル化合物を得る工程104、およびアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを反応させて前駆体を得る工程106、のうちの1つまたは複数を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、塩基の存在下でアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを接触させることにより進行する。一部の実施形態では、反応は、塩基を含む溶媒中で、アミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを接触させることによって進行する。
【0045】
アミン化合物は、1つまたは複数のアミン基を含む化合物を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、アミン化合物は複数のアミン基を含む。例えば、アミン化合物は、ポリアミン化合物であってもよい。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、メチルペンタンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,3-ジアミノブタン、2,3-ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2,4-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、ヒドラジン、テトラ(アミノメチル)メタンまたはその任意の組合せを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、N-メチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、トリメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、トリエチルエチレンジアミンまたはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、トリス(2-アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、N′,N′-ビス(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ポリアミン化合物は、1,2-エタンジアミン;1,2-プロパンジアミン;1,3-プロパンジアミン;1,4-ブタンジアミン;1,6-ヘキサンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン;2,2(4),4-トリメチルヘキサンジアミン;2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
ハロゲン化シリル化合物は、式:
[式中、
Xはハロゲン(例えばF、Cl、Br、またはI)であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。
【0047】
一部の実施形態では、ハロゲン化シリル化合物は、ジアルキルハロゲン化シリル、トリアルキルハロゲン化シリル、モノアルキルジアリールハロゲン化シリル、トリアリールハロゲン化シリル、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。一部の実施形態では、ハロゲン化シリル化合物は、ジクロロシラン、トリクロロシラン、トリエチルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルクロリド、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、テトラメチルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、それらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。
【0048】
塩基は、アミン化合物のアミンを脱プロトン化し、かつハロゲン化シリル化合物のハロゲンを置換することができる化合物を含むことができる。例えば、塩基は、非求核性有機アミンを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。一部の実施形態では、塩基は、トリメチルアミン;トリエチルアミン;ジイソプロピルエチルアミン;ピロリジン;テトラメチルグアニジン;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)(CAS番号3001-72-7);4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(CAS番号1122-58-3);1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン;(TBD)(CAS番号5807-14-7);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、(CAS番号6674-22-2)またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。
【0049】
溶媒は、反応に関与しないか、またはそうでなければ反応を妨害しない極性非プロトン性溶媒を含み得る。溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(EtO)、トルエン、ジクロロメタン(CHCl)、n-ヘキサン、酢酸エチル(EtOAc)、またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0050】
一部の実施形態では、シリコン前駆体は、以下の反応スキーム:
[式中、
nは0~10であり、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含み、
XはF、Cl、Br、またはIであり、
塩基は、トリメチルアミン;トリエチルアミン;ジイソプロピルエチルアミン;ピロリジン;テトラメチルグアニジン;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)(CAS番号3001-72-7);4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(CAS番号1122-58-3);1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン;(TBD)(CAS番号5807-14-7);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(CAS番号6674-22-2);またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み、
溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(EtO)、トルエン、ジクロロメタン(CHCl)、n-ヘキサン、酢酸エチル(EtOAc)、またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み、
rtは、室温(例えば、周囲温度、例えば、20℃~30℃の温度(例えば、約25℃))である]
に従って調製される。
【0051】
一部の実施形態では、シリコン前駆体は、以下の反応スキーム:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含み;
XはF、Cl、Br、またはIであり;
塩基は、トリメチルアミン;トリエチルアミン;ジイソプロピルエチルアミン;ピロリジン;テトラメチルグアニジン;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)(CAS番号3001-72-7);4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(CAS番号1122-58-3);1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)(CAS番号5807-14-7);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(CAS番号6674-22-2);またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み、
溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(EtO)、トルエン、ジクロロメタン(CHCl)、n-ヘキサン、酢酸エチル(EtOAc)、またはその任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み;
rtは、室温(例えば、周囲温度、例えば、20℃~30℃の温度(例えば、約25℃))である]
に従って調製される。
【0052】
図2は、一部の実施形態による、ケイ素含有膜を作る方法のフローチャートである。図2に示すように、ケイ素含有膜を作製する方法は、以下の工程、前駆体を得る工程202、少なくとも1つの共反応物前駆体を得る工程204、前駆体を揮発させて気化した前駆体を得る工程206、少なくとも1つの共反応物前駆体を揮発させて少なくとも1つの気化した共反応物前駆体を得る工程208、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを、気相堆積条件下で基板と接触させて、基板上にケイ素含有膜を形成する工程210、のうちの1つまたは複数を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。
【0053】
工程202は、前駆体を得ることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。前駆体は、本明細書に開示される前駆体のうちの任意の1つまたは複数を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。得ることは、前駆体を含む入れ物または他の容器を得ることを含んでもよい。一部の実施形態では、前駆体は、前駆体が気化される入れ物または他の容器に入った状態で得られてもよい。
【0054】
工程204は、少なくとも1つの共反応物前駆体を得ることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は、酸化性ガス、還元性ガス、炭化水素、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらを含む群から選択される。少なくとも1つの共反応物前駆体は、特定のケイ素含有膜を得るために選択することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は、N、H、NH、N、CHHNNH、CHHNNHCH、NCH、NCHCH、N(CHH、N(CHCHH、N(CH、N(CHCH、Si(CHNH、ピラゾリン、ピリジン、エチレンジアミン、それらの基、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は、H、O、O、HO、H、NO、NO、NO、CO、CO、カルボン酸、アルコール、ジオール、それらの基、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。得ることは、少なくとも1つの共反応物前駆体を含む入れ物または他の容器を得ることを含んでもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は、少なくとも1つの共反応物前駆体が気化される入れ物または他の容器に入った状態で得られてもよい。一部の実施形態では、本方法は、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つなどの不活性ガスをさらに含む。
【0055】
工程206は、気化した前駆体を得るために前駆体を揮発させることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。揮発させることは、気化した前駆体を得るために前駆体を十分に加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、前駆体を含む入れ物を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、気相堆積プロセスが行なわれる堆積チャンバ内で前駆体を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、前駆体、気化された前駆体、またはそれらの任意の組合せを、例えば堆積チャンバに送出するための導管を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、前駆体を含む蒸気送出システムを作動させることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、気化した前駆体を得るために前駆体を気化させるのに十分な温度に加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、前駆体、気化した前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つの分解温度未満の温度に加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、前駆体は気相中に存在してもよく、この場合、工程206は任意であり、必須ではない。例えば、前駆体は、気化した前駆体を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。
【0056】
工程208は、少なくとも1つの蒸発した共反応物前駆体を得るために少なくとも1つの共反応物前駆体を揮発させることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体を得るのに十分な、少なくとも1つの共反応物前駆体を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの共反応物前駆体を含む入れ物を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、気相堆積プロセスが行なわれる堆積チャンバ内で少なくとも1つの共反応物前駆体を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの共反応物前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せを、例えば堆積チャンバに送出するための導管を加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの共反応物前駆体を含む蒸気送出システムを作動させることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体を得るために、少なくとも1つの共反応物前駆体を気化させるのに十分な温度に加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、揮発させることは、少なくとも1つの共反応物前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つの分解温度未満の温度に加熱することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの共反応物前駆体は気相中に存在してもよく、この場合、工程108は任意であり、必須ではない。例えば、少なくとも1つの共反応物前駆体は、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。
【0057】
工程210は、気化された前駆体および少なくとも1つの気化された共反応物前駆体を、基板の表面上にシリコン含有膜を形成するのに十分な気相堆積条件下で、基板と接触させることを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。接触は、例えば、特に、限定されないが、堆積チャンバを含む気相堆積プロセスに適した任意のシステム、装置、デバイス、アセンブリ、そのチャンバ、またはそのコンポーネントにおいて行うことができる。気化された前駆体および少なくとも1つの共反応物前駆体は、同時にまたは異なる時間に基板と接触させてもよい。例えば、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、および基板のそれぞれは、同時に堆積チャンバ内に存在してもよい。すなわち、一部の実施形態では、接触は、気化された前駆体および少なくとも1つの気化された共反応物前駆体と基板との同時期接触または同時接触を含んでよい。あるいは、気化された前駆体および少なくとも1つの気化された共反応物前駆体のそれぞれは、異なる時間に堆積チャンバ内に存在してもよい。すなわち、一部の実施形態では、接触は、1つまたは複数のサイクルにおいて、気化した前駆体を基板と接触させ、続いて少なくとも1つの気化した共反応物前駆体を基板と接触させる、交互および/または逐次接触を含んでもよい。
【0058】
気相堆積条件は、堆積温度を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。堆積温度は、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つの熱分解温度未満の温度であってもよい。堆積温度は、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つの凝縮を低減するか、または回避するために十分に高くてもよい。一部の実施形態では、基板は堆積温度に加熱されてもよい。一部の実施形態では、基板が気化した前駆体および少なくとも1つの気化した共反応物前駆体と接触させられるチャンバまたは他の容器は、堆積温度に加熱される。一部の実施形態では、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つが、堆積温度に加熱されてもよい。
【0059】
堆積温度は、200℃~2500℃の温度であってもよい。一部の実施形態では、堆積温度は500℃~700℃の温度であってもよい。例えば、一部の実施形態では、堆積温度は、500℃~680℃、500℃~660℃、500℃~640℃、500℃~620℃、500℃~600℃、500℃~580℃、500℃~560℃、500℃~540℃、500℃~520℃、520℃~700℃、540℃~700℃、560℃~700℃、580℃~700℃、600℃~700℃、620℃~700℃、640℃~700℃、660℃~700℃、または680℃~700℃の温度であってもよい。他の実施形態では、堆積温度は、例えば、限定されないが、400℃~2000℃、500℃~2000℃、550℃~2400℃、600℃~2400℃、625℃~2400℃、650℃~2400℃、675℃~2400℃、700℃~2400℃、725℃~2400℃、750℃~2400℃、775℃~2400℃、800℃~2400℃、825℃~2400℃、850℃~2400℃、875℃~2400℃、900℃~2400℃、925℃~2400℃、950℃~2400℃、975℃~2400℃、1000℃~2400℃、1025℃~2400℃、1050℃~2400℃、1075℃~2400℃、1100℃~2400℃、1200℃~2400℃、1300℃~2400℃、1400℃~2400℃、1500℃~2400℃、1600℃~2400℃、1700℃~2400℃、1800℃~2400℃、1900℃~2400℃、2000℃~2400℃、2100℃~2400℃、2200℃~2400℃、2300℃~2400℃、500℃~2000℃、500℃~1900℃、500℃~1800℃、500℃~1700℃、500℃~1600℃、500℃~1500℃、500℃~1400℃、500℃~1300℃、500℃~1200℃、500℃~1100℃、500℃~1000℃、500℃~1000℃、500℃~900℃、または500℃~800℃などの200℃~2500℃を超える温度であってもよい。
【0060】
気相堆積条件は、堆積圧力を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。一部の実施形態では、堆積圧力は、気化した前駆体、少なくとも1つの気化した共反応物前駆体、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つの蒸気圧を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、堆積圧力は、チャンバ圧を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になってもよい。
【0061】
堆積圧力は、0.001Torr~100Torrの圧力であってもよい。例えば、一部の実施形態では、堆積圧力は、1Torr~30Torr、1Torr~25Torr、1Torr~20Torr、1Torr~15Torr、1Torr~10Torr、5Torr~50Torr、5Torr~40Torr、5Torr~30Torr、5Torr~20Torr、または5Torr~15Torrの圧力であってもよい。他の実施形態では、堆積圧力は、1Torr~100Torr、5Torr~100Torr、10Torr~100Torr、15Torr~100Torr、20Torr~100Torr、25Torr~100Torr、30Torr~100Torr、35Torr~100Torr、40Torr~100Torr、45Torr~100Torr、50Torr~100Torr、55Torr~100Torr、60Torr~100Torr、65Torr~100Torr、70Torr~100Torr、75Torr~100Torr、80Torr~100Torr、85Torr~100Torr、90Torr~100Torr、95Torr~100Torr、1Torr~95Torr、1Torr~90Torr、1Torr~85Torr、1Torr~80Torr、1Torr~75Torr、または1Torr~70Torrの圧力であってもよい。他のさらなる実施形態では、堆積圧力は、1mTorr~100mTorr、1mTorr~90mTorr、1mTorr~80mTorr、1mTorr~70mTorr、1mTorr~60mTorr、1mTorr~50mTorr、1mTorr~40mTorr、1mTorr~30mTorr、1mTorr~20mTorr、1mTorr~10mTorr、100mTorr~300mTorr、150mTorr~300mTorr、200mTorr~300mTorr、または150mTorr~250mTorr、または150mTorr~225mTorrの圧力であってもよい。
【0062】
基板は、Si、Co、Cu、Al、W、WN、WC、TiN、Mo、MoC、SiO、W、SiN、WCN、Al、AlN、ZrO、La、TaN、RuO、IrO、Nb、Y、酸化ハフニウム、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、ケイ素含有膜は、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素、またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になってもよい。一部の実施形態では、基板は、例えば、ポリシリコン基板、金属基板、および誘電体基板のうちの1つまたは複数などの他のシリコンベースの基板を含んでもよい。
【0063】
一部の実施形態は、基板の表面上のケイ素含有膜に関する。一部の実施形態では、ケイ素含有膜は、本明細書に開示される方法に従って形成される任意の膜を含む。一部の実施形態では、ケイ素含有膜は、本明細書に開示される前駆体から調製される任意の膜を含む。
【0064】
態様
以下に様々な態様について説明する。以下の態様に記載される特徴のいずれか1つまたは複数を、いずれか1つまたは複数の他の態様と組み合わせることができることを理解されたい。
【0065】
態様1。前駆体は、脂肪族炭化水素および少なくとも1つのジシリルアミン基を含み、ここで、少なくとも1つのジシリルアミン基は、脂肪族炭化水素に結合しており、少なくとも1つのジシリルアミン基は、シラニド基を含まない。
【0066】
態様2。脂肪族炭化水素がC~C10アルカンを含む、態様1に記載の前駆体。
【0067】
態様3。脂肪族炭化水素が直鎖のC~C10アルカンを含む、態様1から2に記載の前駆体。
【0068】
態様4。脂肪族炭化水素が分枝のC~C10アルカンを含む、態様1から3に記載の前駆体。
【0069】
態様5。少なくとも1つのジシリルアミン基が下記化学式:
[式中、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する、態様1から4に記載の前駆体。
【0070】
態様6。脂肪族炭化水素に結合している少なくとも1つのシリルアミン基をさらに含む、態様1から5に記載の前駆体。
【0071】
態様7。少なくとも1つのシリルアミン基が以下の化学式:
[式中、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
を有する、態様1から6に記載の前駆体。
【0072】
態様8。前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、態様1から7に記載の前駆体。
【0073】
態様9。前駆体が、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物との反応生成物である、態様1から8に記載の前駆体。
【0074】
態様10。前駆体が次式:
の化合物である、態様1から9に記載の前駆体。
【0075】
態様11。前駆体が室温で液体である、態様1から10に記載の前駆体。
【0076】
態様12。ケイ素含有膜を形成するための方法であって、少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体を得ることと;前駆体を気化させて気化した前駆体を得ることと;気化した前駆体を気相堆積条件下で、基板と接触させて基板上にケイ素含有膜を形成することと、を含む、方法。
【0077】
態様13。気相堆積条件が原子層堆積条件を含む、態様12に記載の方法。
【0078】
態様14。気相堆積条件がプラズマ強化原子層堆積条件を含む、態様12から13に記載の方法。
【0079】
態様15。気相堆積条件が熱原子層堆積条件を含む、態様12から14に記載の方法。
【0080】
態様16。ケイ素含有膜がSiO、SiN、SiOC、SiCN、SiOCNまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む、態様12から15に記載の方法。
【0081】
態様17。前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、態様12から16に記載の方法。
【0082】
態様18。前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、態様12から17に記載の方法。
【0083】
態様19。前駆体が次式:
の化合物である、態様12から18に記載の方法。
【0084】
態様20。前駆体を作製する方法であって、ポリアミン化合物とハロゲン化シリル化合物とを塩基の存在下で反応させて、少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む気相堆積用前駆体を形成することを含む、方法。
【実施例
【0085】
シリコン前駆体1
シリコン前駆体1(上記)を調製するために、トリエチルアミン(TEA、276.8mL、2.0mol)およびエチレンジアミン(33.4mL、0.5mol)を、ジクロロメタン(1.5L)を充填した火炎乾燥した容器に加えた。次いで、クロロジメチルシラン(CDMS、217.7mL、2.0mol)を、ゆっくり滴下した。反応混合物をN雰囲気下で16時間、50℃に還流した。反応により白色の沈殿物が生じたので、n-ヘキサンを用いてセライトパッドで濾過し、反応を停止させた。ろ液を50℃、250torrで濃縮した。80℃、1torrでの分別蒸留による精製により、目的の生成物(118g、収率81%)を無色液体として得た。H NMR (CDCl): δ 4.44 - 4.41 (m, 4H), 2.73 (s, 4H), 0.16 (d, J = 0.1 Hz, 24H) ppm. 図3を参照。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体であって、
少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、
少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、
前駆体。
【請求項2】
脂肪族炭化水素が直鎖のCアルカンを含む、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
前駆体が次式:
[式中、
nは0~10であり;
、RおよびRは、独立して水素、C~C10直鎖アルキル、C~C10分枝アルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルを含む]
の化合物である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項4】
前駆体が次式
の化合物である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項5】
ケイ素含有膜を形成するための方法であって、
脂肪族炭化水素と少なくとも1つのジシリルアミン基とを含む前駆体を得ることであって、
少なくとも1つのジシリルアミン基が脂肪族炭化水素に結合しており、
少なくとも1つのジシリルアミン基がシラニド基を含まない、
前駆体を得ることと;
前駆体を気化させて気化した前駆体を得ることと;
気化させた前駆体を気相堆積条件下で基板と接触させて、基板上にケイ素含有膜を形成することと、
を含む、方法。
【国際調査報告】