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特表2024-545304低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法
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  • 特表-低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法 図1
  • 特表-低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/443 20060101AFI20241128BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C04B35/443
C04B35/645 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537571
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022076653
(87)【国際公開番号】W WO2023142185
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210094788.1
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510087966
【氏名又は名称】中国科学院上海硅酸塩研究所
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】1295 Dingxi Road, Changning District, Shanghai China
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】章 健
(72)【発明者】
【氏名】劉 梦▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】韓 丹
(72)【発明者】
【氏名】李 貴
(72)【発明者】
【氏名】趙 瑾
(72)【発明者】
【氏名】王 士維
(57)【要約】
本発明は、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法に関し、MgAl24粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現することを含み、前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgAl24粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現し、
前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結を含む、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項2】
MgO粉末とAl23粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現し、
前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結を含む、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムの組成は、Ca10(PO4)6(OH)2、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10-X2X(PO4)6(OH)2、Ca82(PO4)6.52O、CaHPO4・2H2O、CaHPO4、Ca227、CaP27・2H2O、Ca7(P516)2、Ca42620、Ca(H2PO4)2・H2O、Ca(PO3)2の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記無加圧焼結の温度が、リン酸カルシウムを添加しない場合の無加圧焼結の緻密化温度と比較して、40~200℃低下されている、請求項1又は2に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項5】
前記無加圧焼結の温度が1360~1460℃であり、
前記無加圧焼結の時間が20時間を超えない、請求項4に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項6】
前記MgO粉末とAl23粉末のモル比は1:(0.98~2.2)である、請求項2に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項7】
無加圧焼結の前に、原料粉末を成形して素地を作製し、
前記成形方法は、乾式成形又は/及び湿式成形である、請求項1又は2に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項8】
前記マグネシア・アルミニウムスピネルの緻密度は90%以上であり、開気孔率は1%を超えない、請求項1~7のいずれか1項に記載の低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法によって製造されたマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックス。
【請求項9】
請求項8に記載のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを熱間静水圧プレスにより焼結して、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを得る、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスの製造方法。
【請求項10】
前記熱間静水圧プレスの焼結温度が1350~1800℃であり、
前記熱間静水圧プレスの焼結圧力が50~200MPaであり、
前記熱間静水圧プレスの焼結時間が20時間を超えない、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法によって製造されたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス技術分野に属し、透明スピネルセラミックス及び不透明スピネルセラミックス並びにそれらの製造方法に関し、特に、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの無加圧焼結温度を低下させるための焼結助剤に関し、より詳しくは、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピネルセラミックスは、機械的性質、耐食性、耐高温特性に優れており、従来の耐火材料分野で幅広く応用される材料の一つである。透明スピネルセラミックスは、上記の優れた性能に加えて、優れた光学的性能を有する。透明スピネルセラミックスは、紫外から中赤外の波長帯域において高い透過率を持ち、透明装甲、赤外線フェアリング、表面弾性波フィルター、スマートフォンのパネルやカメラの保護窓、高エネルギーレーザー発射窓など多くの分野で幅広く応用されている。
【0003】
しかし、理想的な緻密度を得るために、透明スピネルセラミックスを製造するには比較的に高い焼結温度を採用する必要があり、これは通常非常に大きなエネルギー損失をもたらし、既存の多種の先進的な焼結手段には多くの制限がある。また、既存のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスは焼結プロセスにおいて結晶粒の異常成長現象が発生しやすく、主に機械的性質と光学的性能を含むセラミックス材料の多くの性能に影響する。
【0004】
不透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスに対して、その機械的性質が多くの応用シーンで最も注目されており、そのため、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの結晶粒成長を抑制し、機械的性質を向上させることがとても重要である。透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスに対して、機械的性質と光学的性能の両方も注目されている。そのため、結晶粒径が小さく、光学的性能に優れたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを取得することは、現在の開発における重要なトレンドである。
【0005】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックス原料に焼結助剤を添加することは、焼結を促進し、焼結温度を低下し、結晶粒成長を抑制し、機械的性質、光学的性能及び高温特性を向上させるための常套手段である。数年来、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの焼結温度を低下するために、CaO、CaCO3、LiF、B23、MgF2/AlF3、TiO2、V25、Cr23、Y23、MnO2、ZrO2、CoCO3などの多種の焼結助剤が開発され、一定の効果を示した。同時に、透明セラミックの透過率を向上させるために有効な焼結助剤もいくつかある。しかしながら、一般的には、これらの焼結助剤は多かれ少なかれいくつかの不足があり、焼結温度を低下させる効果がないもの、原料と反応して雑相を生成するもの(例えば、CaO又はCaCO3とマグネシア・アルミニウムスピネルとがCaAl47を生成する等)、含有量を多く添加する必要があり、セラミック材料の固有性能に影響するものなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第107721406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの焼結温度を下げ、結晶粒成長を遅くし、機械的性質と高温特性に優れたマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得るために使える新たな焼結助剤を開発することは、機械的性質、高温特性、光学的性能に優れたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスの取得に対して非常に重要な価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対し、第1の局面において、本発明は、低温無加圧焼結による高密度マグネシアアルミニウムスピネルセラミックスの製造方法を提供しており、MgAl24粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現することを含み、好ましくは、前記リン酸カルシウムの組成は、Ca10(PO4)6(OH)2、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10-X2X(PO4)6(OH)2、Ca82(PO4)6.52O、CaHPO4・2H2O、CaHPO4、Ca227、CaP27・2H2O、Ca7(P516)2、Ca42620、Ca(H2PO4)2・H2O、Ca(PO3)2の少なくとも1つを含み、前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結である。
【0009】
第2の局面において、本発明は、低温無加圧焼結による高密度マグネシアアルミニウムスピネルセラミックスの製造方法をさらに提供しており、MgO粉末とAl23粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現することを含み、好ましくは、前記リン酸カルシウムの組成は、Ca10(PO4)6(OH)2、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10-X2X(PO4)6(OH)2、Ca82(PO4)6.52O、CaHPO4・2H2O、CaHPO4、Ca227、CaP27・2H2O、Ca7(P516)2、Ca42620、Ca(H2PO4)2・H2O、Ca(PO3)2の少なくとも1つを含み、前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結である。
【0010】
好ましくは、前記無加圧焼結の温度は、リン酸カルシウムを添加しない場合の無加圧焼結の緻密化温度と比較して、40~200℃低下されている。焼結助剤を添加しない場合と比較すれば、他の工程が全く同じで同じ焼結効果が得られる無加圧焼結温度の低下が実現される。具体的には、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの開気孔率が1%を超えないことを実現できる無加圧焼結温度は40~220℃、好ましくは70~220℃、最も好ましくは100~220℃低下されている。CaO又はCaCO3を添加する場合と比較すれば、他の工程が全く同じで同じ焼結効果が得られる無加圧焼結温度の低下が実現される。具体的には、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの開気孔率が1%を超えないことを実現できる無加圧焼結温度は20~220℃、好ましくは40~220℃低下されている。
【0011】
好ましくは、前記無加圧焼結温度は1360~1460℃であり、前記無加圧焼結の時間は20時間を超えない。
【0012】
好ましくは、無加圧焼結の前に、原料粉末を成形して素地を作製し、前記成形方法は、乾式成形又は/及び湿式成形である。
【0013】
好ましくは、前記MgO粉末とAl23粉末とのモル比は1:(0.98~2.2)である。
【0014】
第3の局面において、本発明は、上記低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法によって製造されたマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを提供しており、前記マグネシア・アルミニウムスピネルの緻密度が90%以上であり、かつ開気孔率が1%を超えない。
【0015】
第4の局面において、本発明は、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスの製造方法を提供しており、上記のように製造されたマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを熱間静水圧プレスにより焼結して、前記マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを得ることを含む。
【0016】
好ましくは、前記熱間静水圧プレスの焼結温度が1350~1800℃であり、前記熱間静水圧プレスの焼結圧力は50~200MPaであり、前記熱間静水圧プレスの焼結時間は20時間を超えない。
【0017】
第4の局面において、本発明は上記製造方法によって製造されたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを提供している。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、得られたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスは、目に見える欠陥を有さず、且つ当該セラミックスは、厚さが≧3mmである場合、200nm~2500nmの波長範囲内で測定されると、70%、好ましくは80%、より好ましくは85%より高い透過率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】焼結助剤添加量が450ppmのマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックス予備焼結体(無加圧焼結温度:1360℃)の微細構造(SEM)と元素分布図(EDS)である。
図2】焼結助剤中のCa添加量がそれぞれ0ppm、350ppm、15000ppmのマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックス予備焼結体(無加圧焼結温度:1400℃)のX線回折スペクトル(XRD)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記の実施形態を結びつけて、本発明を更に説明する。下記の実施形態は本発明を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0021】
本開示では、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造プロセスにおいて、焼結助剤として500ppm以下のカルシウム元素(例えば、25ppm、50ppm、75ppm、100ppm、150ppm、200ppm、250ppm、300ppm、350ppm、400ppm、450ppm、500ppm等)を導入することにより、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの低温焼結の緻密化を実現する。そのうち、前記カルシウム元素は、リン酸カルシウムの形で存在し、前記リン酸カルシウムの組成は、Ca10(PO4)6(OH)2又はCa3(PO4)2を含むが、Ca4O(PO4)2、Ca10-X2X(PO4)6(OH)2、Ca82(PO4)6.52O、CaHPO4・2H2O、CaHPO4、Ca227、CaP27・2H2O,Ca7(P516)2、Ca42620、Ca(H2PO4)2・H2O,Ca(PO3)2等を含む、他のCa/P比のリン酸カルシウムであってもよい。
【0022】
本発明によれば、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスは、既に相に形成されたマグネシア・アルミニウムスピネル粉末を原料として製造されてもよく、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム粉末を原料として反応焼結により製造されてもよく、製造方法の上記の変更は本発明の実施に影響を及ぼさない。焼結前のマグネシア・アルミニウムスピネルに用いる原料粉末の粒径調整は、本発明の実施に影響を与えない。
【0023】
本発明によれば、前記マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造には、直接乾式プレス成形、冷間静水圧プレス成形等の乾式成形、射出成形、鋳込み成形、テープ成形、加圧補助射出成形、加圧濾過成形等の湿式成形を採用することができ、本発明の実施に影響を及ぼさない。その後は排出プロセスに関連し、排出の温度は300~800℃、時間は0~10時間であってもよい。
【0024】
本発明によれば、前記乾式成形及び冷間静水圧プレス成形プロセスにおける成形工程の調整、例えば、原料に対するか焼、造粒、洗浄等を含む原料粉体の処理、成形圧力の調整等は、本発明の実施に影響を及ぼさない。
【0025】
本発明によれば、前記湿式成形プロセスにおける成形工程の調整、例えば、分散剤の種類、含有量の調整、スラリー固形分の調整、硬化温度及び時間の調整等は、本発明の実施に影響を及ぼさない。
【0026】
本発明によれば、前記スピネルセラミックスの製造方法では、カルシウム元素をセラミックスのスラリー調製又は配合物の準備において導入してもよい。
【0027】
本発明によれば、前記スピネルセラミックスの製造方法では、前記焼結温度の低下は、無加圧焼結温度が220℃以下低下されることを含む。同時に、その後の熱間静水圧プレスの焼結温度の低下も実現している。本発明では、焼結助剤中のCa元素の含有量と無加圧焼結の温度とを調整することにより、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの相対密度が90%より高く、かつ開気孔率が1%を超えないようにする。
【0028】
本発明によれば、得られたマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスは、相対密度が90%より高く、かつ開気孔率が1%を超えない。
【0029】
さらに、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを熱間静水圧プレスにより焼結して、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを得た。
【0030】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスは、厚さが≧3mmである場合、300nm~2500nmの波長範囲内で測定されると、70%より高い透過率を有する。
【0031】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳しく説明する。同様に、以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、本発明の特許範囲を制限するものではない。当業者が本発明の上記内容により行う非本質的な改良及び調整は、共に本発明の特許範囲に属する。下記の例における具体的な工程変量なども適合範囲内の一例に過ぎず、即ち、当業者が本発明の説明に基づいて適当な範囲内で選択できるものであり、下記例の具体的な数値に限定されるものではない。
【0032】
実施例1(25ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、焼結助剤、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.0025wt%、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0033】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0034】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程(discharge)を行った。排出工程の温度は300℃で、時間は20時間であった。
【0035】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉(大気雰囲気、常圧、下記実施例及び比較例が実施例1と同じ)で予備焼結(即ち、無加圧焼結)し、予備焼結温度をそれぞれ1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ91.6%、93.1%、94.5%、95.6%、開気孔率がそれぞれ7.0%、1.8%、0.32%、0.10%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0036】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が3時間、1450℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、300~2000nm波長帯域での透過率はともに80%(厚さ3mm)より高かった。
【0037】
実施例2(450ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、焼結助剤、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.045wt%、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0038】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0039】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0040】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ90.7%、92.3%、93.4%、94.2%、95.0%、95.0%、95.4%、開気孔率がそれぞれ1.9%、0.6%、0.5%、0.5%、0.13%、0.5%、0.4%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0041】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が3時間で、1450℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、得られた透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの200~2000nm波長帯域での透過率はともに80%より高かった。
【0042】
本発明における焼結助剤の極めて低いドープ量を検証するために、本実施例では1360℃で無加圧焼結したセラミック予備焼結体を走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散X線分光法(EDS)を用いて分析し、分析結果を図1に示した。SEMで撮影された微細構造写真によれば、焼結プロセス中に第2相物質が発生しないことが分かった。エネルギースペクトルの結果によれば、本発明のドープされた焼結助剤はEDSエネルギースペクトルの検出限界を下回っており、Mg、Al、Oの3つの元素のみが検出可能であり、焼結プロセス中に新しい物質が発生しないことが分かった。
【0043】
実施例3(350ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、焼結助剤、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.035wt%、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0044】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0045】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0046】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ91.7%、93.3%、94.3%、95.1%、95.9%、96.0%、96.2%、開気孔率がそれぞれ0.5%、0.5%、0.6%、0.4%、0.3%、0.6%、0.4%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0047】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が6時間で、1350℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、得られた透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの200~2000nm波長帯域での透過率はともに80%より高かった。
【0048】
実施例4(100ppm、44vol%、湿式成形)
本実施例6における不透明スピネルセラミックスの製造プロセスは、実施例1を参照したが、焼結助剤Ca3(PO4)2におけるCa元素の(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)質量比が0.01wt%である点のみが異なる。予備焼結温度をそれぞれ1400℃、1420℃、1400℃、1460、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ92.0%、95.0%、96.9%、97.8%、98.2%、開気孔率がそれぞれ6.3%、0.8%、0.4%、0.1%、0.2%の、不透明スピネルセラミックスのセラミックス予備焼結体を得た。
【0049】
実施例5(50ppm、44vol%、湿式成形)
本実施例9における不透明スピネルセラミックスの製造プロセスは、実施例1を参照したが、焼結助剤Ca3(PO4)2におけるCa元素の(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)質量比が0.005wt%である点のみが異なる。予備焼結温度をそれぞれ1400℃、1420℃、1400℃、1460、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ91.8%、93.6%、94.2%、98.1%、98.6%、開気孔率がそれぞれ7.0%、3.1%、0.5%、0.2%、0.2%の、不透明スピネルセラミックスのセラミックス予備焼結体を得た。
【0050】
実施例6(350ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、焼結助剤、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.035wt%、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。焼結助剤はCa10(PO4)6(OH)2であり、粒子径が300nmであった。
【0051】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0052】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0053】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ91.3%、93.5%、94.1%、95.4%、95.6%、96.1%、96.3%、開気孔率がそれぞれ0.3%、0.1%、0.3%、0.6%、0.2%、0.3%、0.4%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0054】
実施例7(350ppm、乾式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、無水エタノール、焼結助剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が10vol%、無水エタノールの体積割合が90vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.035wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径はともに250nmであった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0055】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを乾燥させ、ふるいにかけて、均一に混合された粉末原料を得た。乾式プレス成形と冷間静水圧プレス成形とを組み合わせて成形を行い、冷間静水圧プレスの圧力が200MPaであり、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0056】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地に対して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0057】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ95.8%、97.0%、97.5%、98.1%、98.4%、98.4%、98.7%、開気孔率がそれぞれ0.3%、0.3%、0.5%、0.3%、0.3%、0.4%、0.25%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0058】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が6時間で、1350℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、得られた透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの200~2000nm波長帯域での透過率はともに80%より高かった。
【0059】
実施例8(300ppm、反応焼結)
MgO粉末、Al23粉末(MgOとAl23のモル比は1:1.3)、無水エタノール、焼結助剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が10vol%、無水エタノールの体積割合が90vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.03wt%であった。MgO粉末、Al23粉末の粒子径はともに250nmであった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0060】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを乾式プレス、冷間静水圧プレスで成形し、冷間静水圧プレスの圧力が200MPaであり、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0061】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地に対して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0062】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1410℃、1430℃、1450℃に設定し、相対密度がそれぞれ90.7%、96.1%、97.5%、97.5%、98.2%、99.3%、開気孔率がそれぞれ9.8%、0.02%、0.1%、0.1%、0.02%、0.07%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0063】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が6時間で、1450℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、得られた透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの200~2000nm波長帯域での透過率はともに85%より高かった。
【0064】
実施例9(500ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、焼結助剤、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、(マグネシア・アルミニウムスピネル粉末に対する)焼結助剤のCa元素の質量比が0.050wt%、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。焼結助剤はCa3(PO4)2であり、粒子径が300nmであった。
【0065】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0066】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0067】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃、1500℃に設定し、相対密度がそれぞれ89.1%、90.9%、92.2%、91.2%、91.3%、93.1%、93.7%、93.9%、開気孔率がそれぞれ8.3%、2.8%、2.7%、2.8%、2.95%、0.5%、0.7%,0.4%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が3時間で、1550℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、得られた透明マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの200~2000nm波長帯域での透過率は65%より低かった。
【0068】
比較例1(0ppm、乾式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、無水エタノールをボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が10vol%、無水エタノールの体積割合が90vol%、焼結助剤がなかった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径はともに250nmであった。
【0069】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを乾燥させ、ふるいにかけて、均一に混合された粉末原料を得た。乾式プレス成形と冷間静水圧プレス成形とを組み合わせて成形を行い、冷間静水圧プレスの圧力が200MPaであり、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0070】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地に対して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0071】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃に設定し、相対密度がそれぞれ77.8%、81.1%、83.5%、86.4%、88.5%、91.3%、94.0%、開気孔率がそれぞれ21.4%、18.0%、15.4%、12.7%、6.5%、1.3%、0.2%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0072】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が6時間で、1350℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。
【0073】
比較例2(0ppm、反応焼結)
MgO粉末、Al23粉末(MgOとAl23のモル比は1:1.3)、無水エタノールをボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が10vol%、無水エタノールの体積割合が90vol%であった。MgO粉末、Al23粉末の粒子径はともに250nmであった。
【0074】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを乾式プレス、冷間静水圧プレス(冷間静水圧の圧力が200MPa)で成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0075】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地に対して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0076】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1550℃、1590℃、1600℃、1620℃に設定し、相対密度がそれぞれ87.8%、93.1%、93.9%、97.8%、開気孔率がそれぞれ10.6%、0.5%、0.04%、0.09の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0077】
比較例3(0ppm、44vol%、湿式成形)
マグネシア・アルミニウムスピネル粉末、脱イオン水、分散剤をボールミル中で2時間均一に混合し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスラリーを得た。当該サラリーでは、マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の体積割合が44vol%、脱イオン水の体積割合が56vol%、焼結助剤を添加せず、分散剤の質量比が1.8wt%であった。マグネシア・アルミニウムスピネル粉末の粒子径は250nmであり、分散剤の分子量は350であった。
【0078】
得られたマグネシア・アルミニウムスピネルスラリーを加圧補助射出成形し、マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を得た。
【0079】
マグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素地を乾燥して、排出工程を行った。排出工程の温度は800℃であった。
【0080】
排出工程後のマグネシア・アルミニウムスピネルセラミック素体をマッフル炉で予備焼結し、予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460℃、1480℃、1500℃に設定し、相対密度がそれぞれ82.7%、84.6%、86.4%、87.9%、90.5%、92.1%、93.0%、94.2%、開気孔率がそれぞれ17.1%、14.4%、12.7%、10.9%、8.7%、1.5%、1.6%、0.1%の、不透明スピネルセラミックのセラミック予備焼結体を得た。
【0081】
セラミックス予備焼結体を、圧力が180MPa、保温時間が3時間で、1650℃の熱間静水圧プレス処理を行い、透明なマグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを得た。測定により、200~2000nm波長帯域での透過率はともに80%より高かった。
【0082】
比較例4
本比較例4における不透明スピネルセラミックスの製造プロセスは、実施例6を参照し、その違いは、焼結助剤CaO中のCa元素の添加量が0.010wt%でることのみにあった。予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1400℃、1460、1480℃、1500℃に設定し、相対密度がそれぞれ82.3%、84.2%、85.9%、87.8%、89.1%、91.2%、92.4%、93.2%、開気孔率がそれぞれ17.4%、15.3%、13.4%、11.8%、9.9%、7.5%、2.1%、0.3%の、不透明スピネルセラミックスのセラミックス予備焼結体を得た。
【0083】
比較例5
本比較例5における不透明スピネルセラミックスの製造プロセスは、実施例6を参照し、その違いは、焼結助剤CaO中のCa元素の添加量が0.050wt%であることのみにあった。予備焼結温度をそれぞれ1360℃、1380℃、1400℃、1420℃、1440℃、1460℃、1480℃、1500℃に設定し、相対密度がそれぞれ81.7%、83.7%、85.3%、87.1%、88.6%、90.5%、93.0%、93.6%、開気孔率がそれぞれ17.8%、15.9%、13.9%、12.2%、10.2%、8.1%、0.6%、0.4%の、不透明スピネルセラミックスのセラミックス予備焼結体を得た。
【0084】
検証例(15000ppm、44vol%、湿式成形)
本検証例における不透明スピネルセラミックスの製造プロセスは、実施例1を参照したが、焼結助剤Ca3(PO4)2におけるCa元素の質量比が1.5wt%である点が異なる。予備焼結温度をそれぞれ1400℃に設定し、不透明スピネルセラミックスであるセラミックス予備焼結体を得た。
【0085】
本発明において焼結助剤とマグネシア・アルミニウムスピネルとの反応が不純物相を形成するか否かを検証するために、本検証例において焼結して得られたセラミックス予備焼結体をX線回折法(XRD)により検出した。焼結助剤ドープ量を15000ppmに設定し、目的としては、ドープされた物質含有量をXRDの検出限界よりも高くし、かつ焼結助剤とマグネシア・アルミニウムスピネルとの間で起こり得る反応を十分に進行させた。XRDスペクトルは、図2に示されるように、スペクトルから、セラミックス予備焼結体にマグネシア・アルミニウムスピネルとCa3(PO4)2の2つの物質相のみがあると判断でき、よって、焼結助剤とマグネシア・アルミニウムスピネルとの間に反応が発生することはなく、焼結プロセスに新しい第2相物質が生成しないと結論づけることができた。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgAl24粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現し、前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結を含み、
前記リン酸カルシウムの組成は、Ca 10 (PO 4 ) 6 (OH) 2 、Ca 3 (PO 4 ) 2 、Ca 4 O(PO 4 ) 2 、Ca 10-X 2X (PO 4 ) 6 (OH) 2 、Ca 8 2 (PO 4 ) 6.5 2 O、CaHPO 4 ・2H 2 O、CaHPO 4 、Ca 2 2 7 、CaP 2 7 ・2H 2 O、Ca 7 (P 5 16 ) 2 、Ca 4 2 6 20 、Ca(H 2 PO 4 ) 2 ・H 2 O、Ca(PO 3 ) 2 の少なくとも1つを含み、
前記無加圧焼結の温度が1360~1460℃であり、前記無加圧焼結の時間が20時間を超えない、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項2】
無加圧焼結の前に、原料粉末を成形して素地を作製し、前記成形方法は、乾式成形又は湿式成形である、請求項1に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項3】
得られた高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを熱間静水圧プレスにより焼結して、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを得ることを更に含む、請求項1又は2に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記熱間静水圧プレスの焼結温度が1350~1800℃であり、前記熱間静水圧プレスの焼結圧力が50~200MPaであり、前記熱間静水圧プレスの焼結時間が20時間を超えない、請求項3に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項5】
MgO粉末とAl23粉末を原料粉末とし、リン酸カルシウムを焼結助剤として添加し、リン酸カルシウム中のCa元素が原料粉末の全質量の500ppmを超えないように制御し、さらに無加圧焼結を行うことにより、高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造を実現し、前記無加圧焼結は、常圧焼結又は真空焼結を含み、
前記リン酸カルシウムの組成は、Ca 10 (PO 4 ) 6 (OH) 2 、Ca 3 (PO 4 ) 2 、Ca 4 O(PO 4 ) 2 、Ca 10-X 2X (PO 4 ) 6 (OH) 2 、Ca 8 2 (PO 4 ) 6.5 2 O、CaHPO 4 ・2H 2 O、CaHPO 4 、Ca 2 2 7 、CaP 2 7 ・2H 2 O、Ca 7 (P 5 16 ) 2 、Ca 4 2 6 20 、Ca(H 2 PO 4 ) 2 ・H 2 O、Ca(PO 3 ) 2 の少なくとも1つを含み、
前記無加圧焼結の温度が1360~1460℃であり、前記無加圧焼結の時間が20時間を超えない、低温無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項6】
前記MgO粉末とAl23粉末のモル比は1:(0.98~2.2)である、請求項に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項7】
無加圧焼結の前に、原料粉末を成形して素地を作製し、前記成形方法は、乾式成形又は湿式成形である、請求項に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項8】
得られた高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスを熱間静水圧プレスにより焼結して、マグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを得ることを更に含む請求項5又は7に記載の無加圧焼結による高密度マグネシア・アルミニウムスピネルセラミックスの製造方法。
【請求項9】
前記熱間静水圧プレスの焼結温度が1350~1800℃であり、
前記熱間静水圧プレスの焼結圧力が50~200MPaであり、
前記熱間静水圧プレスの焼結時間が20時間を超えない、請求項に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
の局面において、本発明は上記製造方法によって製造されたマグネシア・アルミニウムスピネル透明セラミックスを提供している。
【国際調査報告】