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特表2024-545426薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスを用いる用量記録システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスを用いる用量記録システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20241129BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241129BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20241129BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20241129BHJP
   G16H 40/60 20180101ALI20241129BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/20
A61M5/24 502
G16H20/10
G16H40/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532761
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022083754
(87)【国際公開番号】W WO2023099514
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21315263.0
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】トム・アレクサンダー・イアーウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・チャールズ・ガゼレイ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・モヨ・ハーヴィー-クック
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・メレディス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・ロバート・レスター
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・アレクサンダー・シニア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066FF06
4C066QQ22
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ54
4C066QQ79
4C066QQ82
4C066QQ84
5L099AA25
(57)【要約】
本発明は、液剤の用量を設定及び分配するための薬物送達デバイス(1)に関する。デバイスは、ハウジング(10)と、用量設定部材(70)を有する用量設定及び駆動機構とを備える。用量設定及び駆動機構は、少なくとも部分的にハウジング(10)内に配置され、用量設定部材(70)をハウジング(10)に沿って移動させることにより、薬物送達デバイスにより送達される用量を選択するための用量設定動作と、用量設定部材(70)を軸(X)に沿って軸方向に変位させることにより、設定された用量を送達するための用量送達動作とを実行するように構成される。用量設定部材(70)の軸(X)に垂直な最大半径方向延長部は、用量設定部材(70)に隣接して位置するハウジング(10)の領域の最大半径方向延長部よりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤の用量を設定及び分配するための薬物送達デバイスであって、前記デバイスは、ピストンロッド(30)及び用量設定部材(70)を有する用量設定及び駆動機構を少なくとも部分的に包囲するハウジング(10)、好ましくは基本的に円形の断面を有するハウジングを備え、前記用量設定及び駆動機構は、前記ハウジング(10)に対して前記用量設定部材(70)を移動させることにより、前記薬物送達デバイスにより送達される用量を設定するための用量設定動作と、前記ピストンロッド(30)を軸(X)に沿って軸方向に変位させることにより、前記設定された用量を送達するための用量送達動作と、を実行するように構成され、前記用量設定部材(70)の前記軸(X)に垂直な最大半径方向延長部が、前記用量設定部材(70)に隣接して位置する前記ハウジング(10)の領域の前記軸(X)に垂直な最大半径方向延長部よりも小さいことを特徴とする、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記用量設定部材(70)の外径が、前記用量設定部材(70)に隣接して位置する前記ハウジング(10)の領域の内径よりも小さい又は前記内径に等しいことを特徴とする、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記用量設定部材(70)は、別個の取り付け可能モジュール(2)を装着するための取り付け特徴部(76)が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記用量設定部材(70)に、前記用量設定部材(70)の近位端面内に延びる実質的に円形の溝(78)が設けられ、前記取り付け特徴部(76)は前記溝(78)内に又は前記溝(78)に隣接して設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記取り付け特徴部は、前記用量設定部材(70)に設けられた半径方向アパーチャ(76)であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記用量設定部材(70)は、互いに恒久的に固定されて単一構成要素として機能する2つの別個の構成要素(71、72)を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記用量設定部材(70)は、半径方向内向きに延びるクラッチ歯(73)のリング、半径方向内向きに延びるランプ歯(74)のリング、把持面としてのプロファイリング、及び/又は遠位方向に延びるストップ歯(75)のリングを備える管状スリーブ(71)を備えること、及び/又は、前記用量設定部材(70)は、近位端面を有するボタン(72)と、前記端面から遠位方向に延びるステムであって、前記ステムは少なくとも1つの軸方向に延びるスプラインを備える、ステムと、を備えることを特徴とする、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記用量設定部材(70)は、IR吸収性マスターバッチを有するプラスチック材料から作製されること及び/又は光吸収性表面仕上げを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス(1)と、前記薬物送達デバイスの前記用量設定部材(70)に取り付ける電子モジュール(2)とを備える用量記録システムであって、前記モジュール(2)は、
・ センサと、
・ 少なくとも1つの前記センサの動作を制御し、並びに少なくとも1つの前記センサからの信号を処理及び/又は格納するように構成されたプロセッサと、
・ 前記モジュールを前記用量設定部材(70)に取り付けるための取り付け特徴部と、を備える、用量記録システム。
【請求項10】
用量設定部材(70)の最大外径は、前記モジュール(2)の内径に等しい、又は前記モジュール(2)の内径よりも小さい、請求項9に記載の用量記録システム。
【請求項11】
前記モジュール(2)の最大外径は前記ハウジング(10)の外径に等しい、又は前記ハウジング(10)の外径よりも僅かに大きい、請求項9又は10に記載の用量記録システム。
【請求項12】
モジュール(2)は、前記モジュール(2)を前記薬物送達デバイスの近位端に装着するための取り付け特徴部(6)を備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の用量記録システム。
【請求項13】
前記取り付け特徴部は、前記モジュール(2)を前記用量設定部材(70)に軸方向且つ回転方向に固定するための少なくとも1つの可撓性クリップ(6)を備える、請求項12に記載の用量記録システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの可撓性クリップ(6)は、前記モジュール(3)内に収容され、前記センサ及び前記プロセッサを保持するシャーシから実質的に遠位方向に延びている、請求項13に記載の用量記録システム。
【請求項15】
前記用量設定部材(70)は機械式コーディング(79)を備え、前記モジュール(2)は機械式カウンターコーディングを備え、前記機械式カウンターコーディングは、前記モジュール(2)が前記薬物送達デバイス(1)に取り付けられたときに前記機械式コーディング(79)に係合する、請求項9~14のいずれか一項に記載の用量記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、薬物送達デバイスに、並びに薬物送達デバイスと薬物送達デバイスに取り付けられた電子モジュールとを備える用量記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスは、正式な医学訓練を受けていない人による定期的な注射が発生する用途を有する。これは、糖尿病を罹患している患者にとって益々一般的になっており、糖尿病では、自己医療によりそのような患者が自分の疾病の効果的な管理が可能になっている。実際には、そのような薬物送達デバイスは、ユーザが薬剤の複数のユーザ可変用量を個々に選択及び分配することを可能にできる、又は、例えばプッシュプル機構により固定用量を分配するために、若しくは予め選択された用量を選択し分配するために好適であり得る。
【0003】
基本的に、以下の2種類の薬物送達デバイスがある:再設定可能デバイス(すなわち、再使用可能)、及び非再設定可能(すなわち、使い捨て型)。例えば、使い捨て型ペン送達デバイスは、自己完結型デバイスとして供給される。そのような自己完結型デバイスは、取り外し可能な事前充填カートリッジを有していない。むしろ、事前充填カートリッジは、デバイス自体を破壊せずには、これらデバイスから取り外し交換することができない場合がある。したがって、そのような使い捨てデバイスは、再設定可能な用量設定機構を備える必要がない。再利用可能な薬物送達デバイスは、再設定可能な用量設定機構と、補充可能な薬剤容器、例えば、含まれる薬剤カートリッジが空の場合に交換のために設けられた着脱可能カートリッジホルダとを有することが必要である。本発明は、使い捨てデバイスに及び再利用可能デバイスに等しく適用できる。
【0004】
そのような薬物送達デバイスにとって、ダイヤル操作された及び/又はペンから送達される用量を記録する機能は、記憶補助として又は用量履歴の詳細な記録をサポートするため、多種多様なデバイスユーザにとって価値があり得る。したがって、そのような目的のために電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界においても、ユーザ又は患者にも益々人気が高まっている。例えば、薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスに取り外し可能に機械的に連結された電子モジュールとを備える用量記録システムが、国際公開第2021/116387A1号パンフレットから公知である。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0018775A1号明細書は、ハウジングを半径方向に越えて延びる用量ダイヤル部材を有する薬物注入デバイスを開示している。薬物注入デバイスのハウジングに監視モジュールを取り付けることができる。
【0006】
米国特許第11141538B2号明細書は、ハウジング部分と薬剤容器ホルダとの間に挟まれた用量設定部材を有する薬剤送達デバイスを開示している。ハウジングの一端に位置するアクティベータを、薬剤分配のために押すことができる。
【0007】
基本的に丸いハウジングを有する既知の薬物送達デバイス又はペン型注入器では、ハウジングに対して用量設定部材(例えば用量ダイヤルグリップ)を移動させること(例えば、用量設定部材を回転させること又は用量設定部材を軸方向に引っ張ること)により用量が設定される。そのような薬物送達デバイスは、ハウジングに一致する又はハウジングよりも僅かに大きい用量設定部材の直径を有する。この従来の構成は、用量設定部材のグリップ表面へのアクセスを良好にし、ペンに連続的な美的外観をもたらす。しかしながら、ペンが、用量設定部材に付属する別個の取り外し可能モジュールと連係して使用されることが意図される場合、モジュールサイズは、ペンハウジングの直径よりも著しく大きくなければならないことが要求されるため、従来の用量設定部材の幾何学的形状が問題となる。この状況では、従来の用量設定部材の形態を有するペンがモジュールに取り付けられる場合、用量を送達することは、特に、用量が送達されるときに用量設定部材が回転しなければならない場合に、より面倒である。加えて、モジュールが取り付けられたこのようなデバイスは、ポーチ又はキャリーケース内で運ぶ/収容するには、より大きく、嵩張る。更に、モジュールは、意図せずに外れやすく又は損傷しやすく、それがモジュールの正しい機能に影響を及ぼす可能性がある。また更に、モジュールが取り付けられた用量設定部材の比較的大きな半径方向延長部に起因して、ユーザが意図せずにダイヤルストップに過剰なトルクを加えることがより容易であり、これが意図しない損傷を引き起こし、場合によっては用量の間違いにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、上述した従来デバイスの欠点を取り除く、薬物送達デバイス及び用量記録システムに関する改善を提供することである。
【発明を解決するための手段】
【0009】
この目的は、例えば、請求項1で定められる主題により解決される。有利な実施形態及び改良が、従属請求項の対象である。しかしながら、本開示は、添付の特許請求の範囲で定められる要旨に制限されないことに留意すべきである。むしろ、本開示は、以下の説明から明らかとなるように、独立請求項に加えて又は独立請求項の代わりに、改善を含むことができる。
【0010】
本開示の一態様は、液剤の用量を分配するための薬物送達デバイスに関し、デバイスは、ハウジング、好ましくは基本的に円形の断面を有するハウジングと、ピストンロッド及び用量設定部材を有する用量設定及び駆動機構とを備える。一実施例では、ハウジングは、液剤で充填されたカートリッジを含んでもよい。代替として、別個のカートリッジホルダがハウジングに恒久的に又は取り外し可能に取り付け可能であってもよい。用量設定及び駆動機構は、少なくとも部分的にハウジング内に配置されてもよく、用量設定部材をハウジングに対して移動させることにより、薬物送達デバイスにより送達される用量を設定するための用量設定(例えば、ダイヤル操作)動作と、ピストンロッドを軸に沿って軸方向に変位させることにより、設定された用量を送達するための用量送達動作とを実行するように構成されてもよい。好ましくは、軸に垂直な方向への、用量設定部材の最大半径方向延長部が、軸に垂直な方向への、用量設定部材に隣接して位置するハウジングの領域の最大半径方向延長部よりも小さい。例えば、ハウジングが実質的に円筒形の形状を有する薬物送達デバイスにおいて、用量設定部材の最大外径は、用量設定部材に隣接して位置するハウジングの領域におけるハウジングの外径よりも小さい、又は更にはハウジングの最大外径よりも小さい。更には、用量設定部材の最大外径は、用量設定部材に隣接して位置するハウジングの領域の内径より小さくてもよい。このような薬物送達デバイスを用いて、従来のペン型注入器の上述の欠点が、例えば、ペンハウジングの内径、すなわちボアの内径にほぼ一致する外径を有する用量設定部材を提供することにより克服され得る。この結果、モジュールが取り付けられている場合に操作性及びサイズに関して最適化されているが、モジュールが取り付けられずにペンが使用される場合にも良好な機能を保持する形態がもたらされる。
【0011】
薬物送達デバイスにより送達される用量を設定するための用量設定動作は、ハウジングに対して用量設定部材を、例えば螺旋経路に沿って、回転及び/又は並進移動させることを含んでもよいのに対し、設定された用量を送達するための用量送達動作は、ピストンロッドを軸に沿って、好ましくはピストンロッドの中央長手方向軸に沿って、軸方向に変位させることを含んでもよい。任意選択で、設定された用量を送達するための用量送達動作は、ハウジングに対して用量設定部材を移動させること、例えば用量設定部材を軸方向に移動させることを含んでもよい。
【0012】
薬物送達デバイスは、液剤の可変用量を設定及び分配して、ユーザが薬剤の複数のユーザ可変用量を個々に選択及び分配することを可能にすることが好適な場合がある。代替として、薬物送達デバイスは、固定用量デバイス、例えば、事前に定めた固定用量を分配することだけが許容されるプッシュプル型デバイスであってもよい。更なる代替として、薬物送達デバイスは、国際公開第2016/128424A1号パンフレットにて開示されるように、1つ以上の事前設定された用量のうちから選択するのに、例えば閾値を上回る用量又は下回る用量を選択するのに好適な場合がある。したがって、本明細書では、用語「用量設定」、「用量選択」及び「用量ダイヤル操作」は、薬物送達デバイスを特定の動作モードに限定することなく使用される。
【0013】
薬物送達デバイスは、用量設定ドラムを備えてもよい。用量設定ドラムは、用量選択及び/又は用量送達を生じさせることなく単に現在設定されている用量を表示することができる、又は、用量を表示することに加えて用量選択及び/又は用量送達を生じさせることができる(ピストンロッドに力を伝達することにより)。用量設定ドラムは、用量設定動作及び用量送達動作のうちの少なくとも1つの間に、ハウジングに対して用量設定部材と共に移動、例えば回転してもよい。一例では、用量設定ドラムは、用量設定中及び用量送達中に螺旋経路上を回転し、用量設定部材は、用量設定中に螺旋経路上を回転し、用量送達中に回転することなく軸方向に移動する。別の例では、用量設定ドラム及び用量設定部材は、用量設定中及び用量送達中に、ハウジングに対して軸方向に移動することなく一緒に回転する。
【0014】
好ましくは、薬物送達デバイス、例えばペン型注入器は、送達される用量のサイズに関する情報を捕捉するように構成された取り付け可能な電子モジュールと共に使用するのに好適である。モジュールは、薬物送達デバイスから取り外し可能であってもよく、及び/又は薬物送達デバイスに取り付けた後に固定されてもよい。
【0015】
用量設定部材には、薬物送達デバイスに別個の取り付け可能モジュール、例えば、薬物送達デバイスを用いて設定された又は分配された用量を記録するための電子モジュールを装着するための取り付け特徴部が設けられてもよい。用量設定部材には、用量設定部材の近位端面内に延びる少なくとも1つの、例えば実質的に円形の溝が設けられてもよく、溝内に又は溝に隣接して取り付け特徴部が設けられている。用量設定部材には、2つの同心状の溝が設けられてもよい。一例では、取り付け特徴部は、用量設定部材内に設けられた、少なくとも1つの、例えば2つの、対向して位置する、半径方向アパーチャを備えてもよい。アパーチャは、用量設定部材内の溝から半径方向外側に、例えば用量設定部材の近位端面内の2つの同心状の溝の外側の溝内に、設けられてもよい。
【0016】
一例では、用量設定部材は、用量送達デバイスを用いて、用量を設定するためにユーザによって移動される(例えば、回転される)ように、及び用量を送達するためにユーザによって移動される(例えば、押される)ように、設けられてもよい。用量設定部材は、単一の構成要素として機能するように互いに恒久的に固定された2つの別個の構成要素を備えてもよい。これは、製造及び/又は組立ての理由で好まれる場合がある。一例では、用量設定部材は、半径方向内向きに延びるクラッチ歯のリング半径方向内向きに延びるランプ歯のリング、把持面としてのプロファイリング、及び/又は遠位方向に延びるストップ歯のリング、を有する管状スリーブを備えてもよい。加えて又は代替として、用量設定部材はボタンを備えてもよい。ボタンは、近位端面と、端面から遠位方向に延びるステムとを有してもよく、ステムは、少なくとも1つの軸方向に延びるスプラインを備える。ボタンは、薬物送達デバイスの駆動機構を駆動するため又は解除するためにユーザにより押される作動ボタンであってもよい。用量設定部材のこれら例示的なインターフェースは、薬物送達デバイスにより送達される用量を設定するための用量設定動作、及び設定された用量を送達するための用量送達動作を容易にし、薬物送達デバイスの用量設定モードと用量送達モードとの間の切り替えを容易にすることができる。
【0017】
電子モジュールは、薬物送達デバイスの構成要素に回転方向に固定された、被感知要素の回転を検出するための回転センサを備えてもよく、被感知要素は、電子モジュールが取り付けられている用量設定部材に対して用量設定中及び/又は用量送達中に回転する。被感知要素は、用量設定ドラムに固定されてもよい。感知要素は、回転センサにより検出できるパターン(例えば、光学パターン又は磁気パターン)を有するエンコーダリングであってもよい。回転センサは、少なくとも1つの光学センサ及び/又は少なくとも1つの磁気センサを備えてもよい。
【0018】
電子モジュールは、薬物送達デバイス、例えば可変用量注入ペンから送達された用量を検出するための光学IRエミッタ/検出器のセットを使用してもよい。ペンが屋外で使用される場合、例えば、モジュールセンサの正しい性能に干渉し得る、高い周囲光レベルからの迷光IR放射線のレベルを減らすため、ペンの用量設定部材の構成要素は、反射されたIR放射線のレベルを低減/抑制させることを意図した特徴部を有してもよい。具体的には、モジュール構成要素及び/又は用量設定部材は、IR吸収性マスターバッチを含んでもよく、及び/又は放電加工されたテクスチャー状の表面仕上げを有してもよい。
【0019】
本開示による用量記録システムは、本明細書に記載されるような薬物送達デバイスと、薬物送達デバイスの用量設定部材への取り外し可能な又は固定的な取り付けのための、本明細書に記載されるような電子モジュールとを備える。例えば、モジュールは、センサと、少なくとも1つのセンサの動作を制御し、並びに少なくとも1つのセンサからの信号を処理及び/又は格納するように構成されたプロセッサと、モジュールを用量設定部材に取り付けるための取り付け特徴部と、を備えてもよい。モジュールは、用量設定部材の近位端を収容するためのキャップを備えてもよい。用量設定部材の最大外径はキャップの内径に等しくても又はそれより小さくてもよく、それによりモジュールを用量設定部材上に取り付けることが可能になる。モジュールの最大外径は、ハウジングの外径に等しくてもよく、外径と同様であってもよく、又は外径より僅かに大きくてもよく、例えば、ハウジングの外径から約0mm~約5mmだけ超えてもよい。この構成は、用量が送達されるときに用量設定部材が回転しなければならない場合であっても、用量送達動作を妨げることがない。加えて、モジュールが意図せずに外れたり損傷を受けたりするリスクが最小限に抑えられ、用量設定部材の直径が大き過ぎることに起因して意図せずに過大なトルクが加えられることが防止される。
【0020】
用量記録システムの電子モジュールが、薬物送達デバイスへの取り外し可能な取り付けのための再利用可能なモジュールである場合、モジュールは、中央軸線を有する外側キャップ、キャップ内に少なくとも部分的に保持されたシャーシ、並びにメモリ及びプロセッサを備えるPCB又はPCBAを備えてもよい。例えば、PCBA及び電力供給源は、キャップ及びシャーシ内に保持されてもよい。更に、光源及び光学センサは、第1の光源及び第1の光学センサが第2の光源及び第2の光学センサから角度方向にオフセットされて、中央軸線の周囲の円形領域に配置されてもよい。1つ以上のライトパイプがシャーシ内に設けられて、光を光源からエンコーダまで及び/又はエンコーダから光センサまで導いてもよい。加えて、モジュールの状態又は動作モードに関する情報を表示するために、シャーシ内にライトガイドが設けられて、光が内部光源からモジュールの外面まで導かれてもよい。
【0021】
モジュールは、モジュールを薬物送達デバイスの近位端に、例えば、用量設定部材に、ボタンに、又はハウジングの近位端に取り付け可能に装着又は固定するための取り付け特徴部を備えてもよい。例えば、取り付け特徴部は、モジュールを用量設定部材に軸方向且つ回転方向に固定するための少なくとも1つの可撓性クリップを備えてもよい。少なくとも1つの可撓性クリップは、キャップ内に収容されてもよく、シャーシから実質的に遠位方向に延びて、センサ及びプロセッサを保持してもよい。
【0022】
本開示の更なる態様によれば、用量設定部材は機械式コーディングを備えてもよく、モジュールは機械式カウンターコーディングを備えてもよく、機械式カウンターコーディングは、モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたときに機械式コーディングに係合する。これは、整合しないモジュールを薬物送達デバイスに取り付けることを防止することができる。加えて、機械式コーディング及び機械式カウンターコーディングを介して、モジュールから用量設定部材までトルクが伝達されてもよい。
【0023】
用量記録システムの電子モジュールは、薬物送達デバイスから送達される用量を記録するのに好適な、薬物送達デバイスと共に使用する電子システムを備えてもよい。電子システムは、電力供給源、例えば、コインセル型バッテリのようなバッテリと、データを記憶するためのメモリと、電子システムの動作を制御するように構成され、電力供給源及びメモリに結合されたプロセッサとを備えてもよい。加えて、電子システムは、少なくとも1つ、好ましくは2つのセンサを備えてもよく、これは、光学センサユニットであってもよく、例えば、対応する第1の光学センサを有する第1の光源及び対応する第2の光学センサを有する第2の光源であり、これらはプロセッサと通信している。光学センサは、薬物送達デバイスのエンコーダの、具体的には、例えば用量スリーブの、異なる反射率を有するセグメントの移動を検出するのに好適な場合があり、この移動は、ダイヤル操作された(すなわち選択された)及び/又は薬物送達デバイスから送達された用量を表す。光学センサユニットを実装するのに好適ないくつかの異なる方法がある。例えば、光学センサユニットは、電磁放射エミッタ、例えばNIR-LEDなどのIR-LEDのようなLEDと、放射線検出器とを備える、放射線検出器を備えてもよい。エンコーダは、国際公開第2019/101962A1号パンフレットに記載されるように動作することができる。
【0024】
代わりに、電子モジュールは、1つ以上の機械式作動スイッチ、又は薬物送達デバイスにより送達された用量を検出するために提供される少なくとも1つの磁気センサを備えてもよい。
【0025】
一例では、エンコーダ及び光学センサユニットは、直角位相構成にあり、すなわち、それらは4分の1波形だけ位相が外れており、これは、両方の光源が光を同時に放出する場合、分配されたユニットごとに1つのセンサだけが状態を変えることを意味する。例えば、これは、円周方向にn×30°+15°だけオフセットさせた2つの光学センサを提供することにより実現でき、nは整数である。エンコーダ及びセンサユニットが互いに移動するにつれて、以前に光を受光した光学センサのうちの1つが、現在は放出された光を受光せず、逆もまた同様である。これは、選択的に光を反射するエンコーダにより実現できる。例えば、歯のリングは、歯が光を反射する一方で、隣接する歯の間の自由空間が光を反射しないように設けられてもよい。代替として、光を反射する領域と光を吸収する領域とが交互に設けられてもよい。更なる代替形態として、エンコーダは光を選択的に遮断してもよい。他の例では、エンコーダ及び光学センサユニットは、逆相の構成にあってもよい。なお更なる代替形態では、エンコーダ及び光学センサユニットは逆相構成になく、その結果、両方の光源が同時に光を放出した場合、エンコーダの相対的位置に応じて、光学センサは光を検出しない、又は1つだけ若しくは全ての光学センサが光を検出する。
【0026】
用量記録システムの電子モジュールは、注入デバイス用の再利用可能クリップ式モジュールとして構成されてもよい。代替として、電子システムは、注入デバイスに恒久的に取り付けられたユニット又はモジュールであってもよい。電子システム及び(電子)モジュールという用語は、以下では両方の代替形態のために使用される。用量を記録する機能は、記憶補助として又は用量履歴の詳細な記録をサポートするため、多種多様なデバイスユーザにとって価値のあるものであり得る。電子システム、例えば電子モジュールは、用量履歴をシステムから定期的にダウンロードすることを可能にするため、携帯電話などに接続可能となるように構成され得ると想定される。
【0027】
電子用量記録システムは、別のデバイスと通信するための通信ユニットを更に備えてもよい。好ましくは、用量記録システムの電子モジュールは、エネルギー消費がより低い第1の状態からエネルギー消費がより高い第2の状態に電子モジュールを切り替え、それにより通信ユニットが別のデバイスとの通信、例えば同期又はペアリング動作、を確立することを誘導し得るように構成される。電子制御ユニットは、電子用量記録システムの別のユニットに命令、例えば信号を発して、このユニットのスイッチが入るように又は動作可能になるようにしてもよい。このユニットは、別のデバイスと通信するための通信ユニット、例えば、Wi-Fi又はBluetoothなどの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェース、又は更には、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、若しくはマイクロUSBコネクタを収容するためのソケット等の有線通信リンクのためのインターフェースであってもよい。好ましくは、電子用量記録システムは、通信ユニットとして、RF、WiFi及び/又はBluetoothユニットを備える。通信ユニットは、用量記録システム又は薬物送達デバイスと、外部、例えば他の電子デバイス、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ラップトップ等との間の通信インターフェースとして設けられてもよい。例えば、用量データは、通信ユニットにより外部デバイスに送信されてもよい。用量データは、外部デバイスにおいて確立された用量ログ又は用量履歴のために使用されてもよい。
【0028】
本開示のなお更なる態様によれば、電子用量記録システムは、光源が起動していない(電源から電力が供給されていない)休止状態を更に有する。電子用量記録システムは、電子システムの移動を検出するのに好適な少なくとも1つのスイッチ及び/又は運動センサを更に備えてもよい。この例では、プロセッサは、スイッチ起動又は運動が少なくとも1つの運動センサにより検出されない場合に、休止状態を維持し、スイッチ起動又は運動が少なくとも1つの運動センサにより検出される場合に、第1の低消費電力状態又は少なくとも1つの更なる状態に切り替わるように構成されてもよい。一般に、休止状態又はモードは、モジュールの全ての機能が最小限である又は消費電力が実質的にゼロであるが、電子システム(又は薬物送達デバイス)が休止モードから復帰した場合にシステムブートアップを必要としないモードであり得る。
【0029】
本開示は、上述したような電子システムを有する薬物送達デバイスに更に関連し、この薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジを備えてもよい。
【0030】
本明細書では、用語「薬物」又は「薬剤」は同義的に使用され、1種以上の医薬品有効成分又は薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含有する医薬製剤を表す。医薬品有効成分(「API」)は、最も広義には、ヒト又は動物に対して生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は、疾病の治療、治癒、予防、若しくは診断に使用される、又はそうでなければ身体的若しくは精神的快適さを高めるために使用される。薬物又は薬剤は、限られた期間にわたって、又は慢性疾患に対しては定期的に使用され得る。
【0031】
以下で説明するように、薬物又は薬剤は、1つ以上の疾病の治療のために、少なくとも1種のAPI、又はこれらの組み合わせを、様々なタイプの製剤で含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子;ポリペプチド、ペプチド、及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素);炭水化物及び多糖類;及び核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッドDNA及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、又はリポソームなどの分子送達システムに組み込まれ得る。1種以上の薬物の混合物も企図される。
【0032】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスと共に使用するように適合された一次パッケージ又は「薬物容器」内に収容され得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、又は1つ以上の薬物の保存(例えば、短期又は長期の保存)に好適なチャンバを提供するように構成された他の頑丈な若しくは可撓性の器であってもよい。例えば、いくつかの実施態様では、チャンバは、少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)薬物を貯蔵するように設計され得る。場合によっては、チャンバは、薬物を約1ヶ月から約2年間、貯蔵するように設計され得る。貯蔵は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。場合によっては、薬物容器は、投与される医薬製剤の2種以上の成分(例えば、API及び希釈剤、又は2種の異なる薬物)を各チャンバ内に1つずつ別個に貯蔵するように構成された二重チャンバカートリッジであってもよく、又はそれを含んでもよい。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内に分配する前及び/又はその間に、2つ以上の成分間の混合を可能にするように構成されてもよい。例えば、2つのチャンバは、(例えば、2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通するように構成されてもよく、分配前にユーザが所望する場合に2つの成分を混合することを可能にすることができる。代わりに又は加えて、2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内への成分の分配時に混合を可能にするように構成され得る。
【0033】
本明細書に記載される薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防に使用され得る。障害の例としては、例えば、真性糖尿病、又は真性糖尿病に伴う合併症、例えば糖尿病性網膜症、血栓塞栓症、例えば深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症が挙げられる。障害の更なる例には、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症、及び/又は関節リウマチが含まれる。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014の、例えば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬物)又は86(オンコロジー薬物)、及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0034】
1型若しくは2型真性糖尿病又は1型若しくは2型真性糖尿病に伴う合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体アゴニスト、又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/又は交換により、並びに/或いは少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の天然に存在する残基又は純粋合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも称される。特に、「誘導体」という用語は、1種以上の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1種以上に結合している、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択で、天然に存在するペプチドに存在する1種以上のアミノ酸が欠失していてもよい、及び/又はコード不可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されてもよい、又はコード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに付加されてもよい。
【0035】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルジン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0036】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0037】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(Efpeglenatide)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenである。
【0038】
オリゴヌクレオチドの例としては、例えば:家族性高コレステロール血症の治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療用のRG012がある。
【0039】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0040】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリンなどの、下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0041】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリン若しくはそれらの誘導体又は上記多糖類の硫酸化形態、例えばポリ硫酸化形態及び/又は薬学的に許容されるそれらの塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例には、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0042】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えばマウス)抗体、又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクタ機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか、又は結合能がない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支援しないアイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であり得、例えば抗体は、突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0043】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、そのような切断フラグメントに限定されない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、本技術分野において既知である。
【0044】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、且つ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、本技術分野で既知であるように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、又はCDR内の1つ若しくは複数のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0045】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0046】
本明細書に記載されるいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物又は薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0047】
本発明の完全な範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素の修正(追加及び/又は削除)が行われてもよく、本発明が、そのような修正形態及びそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されるであろう。
【0048】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO 11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されているような針ベースの注入システムが含まれ得る。ISO 11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注入システムは、複数回用量容器システム及び単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大別され得る。容器は、交換可能な容器であってもよく、又は一体化された交換不可能な容器であってもよい。
【0049】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、複数回用量容器システムは、交換可能な容器を備える針ベースの注入デバイスを含んでもよい。そのようなシステムでは、各容器は複数回の用量を保持し、そのサイズは固定又は可変であり(ユーザによって事前設定され)得る。別の複数回用量容器システムは、交換不可能な容器が一体化された針ベースの注入デバイスを含んでもよい。そのようなシステムでは、各容器は複数回の用量を保持し、そのサイズは固定又は可変であり(ユーザによって事前設定され)得る。
【0050】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を備える針ベースの注入デバイスを含んでもよい。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送達可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一用量を保持し、これにより、送達可能な容量の一部が排出される(部分排出)。ISO 11608-1:2014(E)にもまた記載されているように、単回用量容器システムは、交換不可能な容器が統合された針ベースの注入デバイスを含んでもよい。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送達可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一用量を保持し、これにより、送達可能な容量の一部が排出される(部分排出)。
【0051】
「軸方向」、「半径方向」、又は「円周方向」という用語は、本明細書で使用する場合、デバイス、カートリッジ/容器、ハウジング、又はカートリッジホルダの主要な長手方向軸、例えば、カートリッジ、カートリッジホルダ、又は薬物送達デバイスの近位端及び遠位端を通って延びる軸、に対して使用される場合がある。
【0052】
ここで、本開示の非限定的な例示的実施形態が添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】薬物送達デバイスの実施形態を斜視図で示す。
図2図1のデバイスの構成部分を示す。
図3a】電子モジュールと共に図1のデバイスを断面図で示す。
図3b】取り付けられた電子モジュールと共に図1のデバイスを断面図で示す。
図4図1のデバイスの用量設定部材ボタンの近位端で見た図を示す。
図5図1のデバイスの近位端で見た図を示す。
図6図1のデバイスの近位端の断面図を示す。
図7図1のデバイスの用量設定ドラムを拡大詳細図と共に示す。
図8図1のデバイスのハウジングを示す。
図9図1のデバイスの用量設定部材スリーブを示す。
図10図9の用量設定部材スリーブの近位端を示す。
図11図7の用量設定ドラムの近位端を図9の用量設定部材と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図中、同一の要素、同一に機能する要素、又は同種の要素に、同じ参照番号が付されている場合がある。
【0055】
以下では、いくつかの実施形態についてインスリン注入デバイスを参照して説明する。しかしながら、本開示は、そうした用途に限定されず、他の薬剤を吐出するように構成された注入デバイス、又は一般に薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイス及び/若しくは注入デバイスと共に、等しく展開することができる。
【0056】
注入デバイスに関する、特に可変用量注入デバイスに関する実施形態が提供され、これらデバイスは、デバイスにより送達される用量に関するデータを記録及び/又は追跡する。これらデータは、選択された用量のサイズ及び/又は実際に送達された用量のサイズ、投与の時間及び日付、投与の継続時間等を含んでもよい。本明細書で説明される特徴部は、感知要素の構成、及び電力管理技術(例えば小型バッテリを可能にするため、及び/又は効率的な電力使用を可能にするため)を含む。
【0057】
図に示される薬物送達デバイス1は、欧州特許第2890434B1号明細書で開示される使い捨て注入ペンと同じ一般的な動作原理に基づいており、これが主要機能及び動作モードに関して参照される。しかしながら、図に示される実施形態は、以下でより詳細に説明するように、いくつかの態様において改善されており、取り付け可能な電子モジュール2と共に使用するように適合されている。そのようなモジュールの非限的な例が、国際公開第2021/116387A1号パンフレット及びPCT/EP2021/060631において開示され、これが電子モジュールの主要機能及び動作モードに関して参照される。
【0058】
欧州特許第2890434B1号明細書において開示されるものと類似の使い捨て注入ペンを参照して説明されるが、本開示は、国際公開第2004/078239A1号パンフレット、同第2014/033195A1号パンフレット、同第2009/132777A1号パンフレット、同第005/018721号パンフレット、米国特許第5693027号明細書、同第6663602号明細書、又は同第7241278号明細書のうちの1つにおいて開示される注入デバイスを含むが、これらに限定されない、他の使い捨て式又は再利用可能な薬物送達デバイスに適用可能である。
【0059】
本明細書では、「遠位」は、薬物送達デバイス若しくはその構成要素の分配端の方に面する若しくは指すように配置された又は配置されることになる、及び/又は近位端とは反対に向いた、反対に面するように配置されることになる、若しくは近位端とは反対に面する、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。他方で、「近位」は、分配端及び/又は薬物送達デバイス若しくはその構成要素の遠位端とは反対に面する若しくは反対に向くように配置された若しくは配置されることになる方向、端部、又は表面を指定するために使用される。遠位端は、分配端に最も近い及び/又は近位端から最も遠い端部であってもよく、近位端は、分配端から最も遠い端部であってもよい。近位表面は、遠位端とは反対に面してもよく、及び/又は近位端に向かって面してもよい。遠位表面は、遠位端に向かって面してもよく、及び/又は近位端とは反対に面してもよい。分配端は、例えば針ユニットがデバイスに取り付けられている又は取り付けられることになる針端部であり得る。
【0060】
図1及び2は、外側ハウジング10、内側ハウジングインサート20、ピストンロッド30、駆動スリーブ40、ナット50、用量設定ドラム60、用量設定部材70、カートリッジ80、及びキャップ90を備える、薬剤送達デバイス又は薬物送達デバイス1を示す。追加の構成要素として、針ハブと、例えば針カバーとを備える針構成(図示せず)が提供されてもよい。
【0061】
外側ハウジング10は、遠位部分であって、カートリッジ80を収容するためのカートリッジホルダ11を形成し、針ハブを取り付けるためのねじ12等が設けられた、遠位部分と、用量設定及び駆動機構の構成要素を収容する近位部分と、を有する概ね管状の要素である。好ましい実施形態では、外側ハウジング10は透明であり、任意選択で近位部分に不透明層が設けられている。ハウジング10は透明な窓13を備える。ハウジング10の断面図が図8に示され、ハウジング10の内面上に形成された一連のカウンターストップ歯14が見える。ハウジング10の中央軸線X、及び外径D図6に示される。
【0062】
内側ハウジングインサート20は、異なる直径領域を有する概ね管状の構成を有する内側本体である。内側ハウジングインサート20は、ハウジング10の近位部分に収容され、その中に恒久的に固定されて、ハウジング10に対する内側ハウジングインサート20のいかなる相対的移動も防止される。内側ハウジングインサート20の外面上に外ねじ21が設けられている。更に、内側ハウジングインサート20の内面上にスプラインが設けられ、その遠位端に内ねじが設けられている。
【0063】
ピストンロッド30は、好ましくは互いに重なり合う反対方向のねじ山を有する、異なるリードを有する2つの外ねじを有する細長い要素である。これらねじ山のうちの1つが、内側ハウジングインサート20の内ねじに係合する。ピストンロッド30の遠位端に円盤状ベアリング31が取り付けられて、ベアリング31とピストンロッド30との間の相対的回転を可能にしてもよい。代替として、ベアリングは、所定の破断点を介して、一体型の構成要素としてピストンロッド30に取り付けられてもよい。
【0064】
駆動スリーブ40は、異なる直径領域を有する概ね管状の要素である。駆動スリーブ40の遠位領域は、外ねじ41を有する。駆動スリーブ40の内面は、ピストンロッド30の外ねじのうちの1つに係合する内ねじを有する。駆動スリーブ40はピストンロッド30を取り囲み、少なくとも部分的に内側ハウジングインサート20内に位置する。駆動スリーブ40は、駆動スリーブ40の裾部にあるU型開口部により形成される可撓性クリッカアームを更に有する。クリッカアームは、内側ハウジングインサート20内の内側スプラインに係合し、駆動スリーブ40と内側ハウジングインサート20との間の相対的回転中に半径方向内向きに湾曲することが可能である。この半径方向への反りは、クリッカアームが用量設定部材70内のポケットに整列している限り許容されるが、クリッカアームが用量設定部材70内のポケットに整列していないときには阻止され、それにより駆動スリーブ40と内側ハウジングインサート20との間の相対的回転が防止され得る。その近位端において、駆動スリーブ40は、用量設定部材70に当接し、用量設定部材70に対して駆動スリーブ40を遠位方向に付勢する、ばねアームを備えてもよい。用量設定部材70のいかなる回転も駆動スリーブ40に伝達されるように、駆動スリーブ40の内部表面には、用量設定部材70上のスプラインに恒久的に係合する少なくとも1つの軸方向に延びる溝が設けられる。
【0065】
ナット50は、内側ハウジングインサート20と駆動スリーブ40との間に設けられる。ナット50の外側リブが、内側ハウジングインサート20の内側スプラインに係合する。ナット50の内ねじが、駆動スリーブ40の外ねじ41に係合する。代替として、スプライン及びリブを、ナット50と駆動スリーブ40との間のインターフェースに設けることができ、ねじを、ナット50と内側ハウジングインサート20との間のインターフェースに設けることができる。更なる代替形態として、ナット50は、例えばハーフナットとして設計されてもよい。更に、ねじ41の近位端における駆動スリーブ40上の対応するストップとの相互作用のために、少なくとも1つの、例えば4つの、回転ハードストップがナット50上に設けられている。
【0066】
用量設定ドラム60は、内ねじが内側ハウジングインサート20の外ねじ21に係合する、概ね管状の要素である。したがって、用量設定ドラム60は、内側ハウジングインサート20とハウジング10との間に挟まれている。用量設定ドラム60の外面上に一連の数字が設けられ、例えば印刷され、これが表示部材を形成している。ハウジング10の窓13を通して1つの数字だけ又はいくつかの数字だけが見えるように、数字は螺旋ライン上に配置されている。以下でより詳細に説明するように、用量設定部材70の対応するクラッチ歯73に係合するため、用量設定ドラム60には、その近位端の近くにクラッチ歯61のリングが設けられている(図7)。更に、任意選択のクリッカアーム62が、用量設定部材70のラチェットプロファイル74に係合するために、例えば用量設定ドラム60の遠位端の近くに設けられてもよい。
【0067】
用量設定部材70は、2つの別個の構成要素、すなわち管状スリーブ71(図9)及びボタン72を備え、これらは互いに恒久的に固定されて単一構成要素として機能する。用量設定部材70の管状スリーブ71は、その近位端の近くにあるクラッチ歯73の内部リングと、ラチェットプロファイル74を形成するランプ歯の内部リングと、ハウジング10のカウンターストップ歯14に係合するための、その遠位端にあるストップ歯75とを備える。ボタン72は、近位端面と、この端面から遠位方向に延びているステムとを備える。図4に示すように、用量設定部材70のボタン72の端面に形成された内側溝79に対して同心状に配置された外側溝78内に、2つの半径方向アパーチャ76及び2つの軸方向アパーチャ77の両方が形成される。ボタン72のステムは、その中に駆動スリーブ40のクリッカアームが湾曲して入ることができるポケットを備え、駆動スリーブ40内に形成された対応する溝に恒久的に係合する少なくとも1つの軸方向に延びるスプラインを備える。
【0068】
図3a及び図6に示すように、用量設定部材70の管状スリーブ71は、プロファイルを有する近位領域を備え、用量設定部材70を把持すること及び回転させることを容易にすることができる。用量設定部材70の、特に管状スリーブ71の最大外径Dは、ハウジング10の外径Dよりも小さい(図6を参照)。より詳細には、用量設定部材70の最大外径Dは、用量設定部材70に隣接して位置するハウジング10の領域の内径にほぼ等しい又はそれよりも僅かに小さい。
【0069】
カートリッジ80は、事前充填された、くびれを有するカートリッジ貯蔵器を含み、これは典型的にはガラスで作製され得る。ゴム系の栓又はストッパがカートリッジ貯蔵器の近位端に位置し、穿刺可能なゴム製シールが遠位の他端に位置する。ゴム製シールを所定位置に保持するため、圧着された環状金属バンドが使用される。カートリッジ80は、ピストンロッド30のベアリング31が栓に当接して、カートリッジホルダ11内に設けられる。
【0070】
図1は、キャップ90のないデバイス1を示す。キャップ90はデバイス1の遠位端に取り付けることができ、したがってカートリッジホルダ11を覆う。キャップ90は、取り外し可能にハウジング10上にスナップ嵌めされてもよく、デバイス1の使用のために取り外すことができる。
【0071】
電子モジュール2は、薬物送達デバイス1の近位端に、例えば用量設定部材70に、取り外し可能に取り付けられるか又は固定されてもよく、それにより用量記録システムが形成される。モジュール2は、プロセッサ及び電池5を有するPCBA 4を保持するカップ形の外側キャップ3を備えてもよい。モジュール2は、プロセッサに接続し用量設定動作及び/又は用量送達動作を示す測定データを生成するように動作可能なセンサ構成を更に備える。この目的のため、センサ構成は、少なくとも1つのLED及び1つ以上の光検出器を備え、これらが一緒に光学センサを形成する。LED及び光検出器に加えて、又はその代替として、代替のセンサタイプを実装することができる。そのような代替のセンサタイプは、光学センサ、音響センサ、静電容量センサ、電気スイッチを含むことができるが、これらに限定されない。PCBA 4は、例えば、プロセッサに接続し、別の(外部の)デバイス、例えばスマートフォンとの通信を確立するように動作可能な無線Bluetooth(登録商標)通信インターフェースを備える通信ユニットを更に備えてもよい又はそれに接続されてもよい。通信ユニットは、前述した他のデバイスにデータ、例えば測定データを伝達するように動作可能である。また更に、電子的ユーザフィードバック生成器が、プロセッサに接続され、ユーザへのフィードバック信号を生成するように動作可能であってもよい。例示的な構成では、電子的ユーザフィードバック生成器は、光学フィードバック信号を生成するためのLEDを備える。LEDに加えて又は代替として、電子的ユーザフィードバック生成器は、音響器及び/又は振動モータを備えてもよい。
【0072】
モジュール2はシャーシを更に備え、シャーシはキャップ3にスナップ嵌めにより係合し、したがってキャップ及びシャーシを軸方向且つ回転方向に拘束する。シャーシは、透明又は半透明であり、ポリカーボネート等から作製されてもよい。シャーシは、PCBユニット4を収容する。更に、シャーシは2つのライトパイプ6を備え、ライトパイプ6は軸方向に延びる、シャーシの突起であり、研磨された側壁と、センサ側端部及びエンコーダ側端部を形成する拡散性の端面とを有する。換言すれば、光は、反対側のセンサ側端部及びエンコーダ側端部においてライトパイプに入ること又はライトパイプから出ることができるが、側壁によって誘導(反射)される。一例では、ライトパイプ6は、互いに回転方向に45°オフセットされていてもよい。ライトパイプ6は、モジュール2が薬物送達デバイス1に取り付けられるときにボタン72内のアパーチャ77のうちの1つに嵌まるか又はそれを通って延びるように構成される。この目的のため、シャーシは、ボタン72内の半径方向アパーチャ76に係合するための、例えば回転方向に180°オフセットされた、2つの可撓性クリップ7の形の取り付け特徴部を更に備える。
【0073】
薬物送達デバイスの用量設定及び駆動機構は、薬物送達デバイスにより送達される用量を選択するための用量設定動作、及び設定された用量を送達するための用量送達動作を実施するように構成される。
【0074】
用量設定動作中、用量設定ドラム60のクラッチ歯61が用量設定部材70のクラッチ歯73に係合する。したがって、用量設定ドラム60、用量設定部材70、及び駆動スリーブ40(用量設定部材70にスプライン結合される)は、回転式に連結されている。ユーザは、用量設定ドラム60、用量設定部材70、及び駆動スリーブ40が、用量設定ドラム60のねじを誘導する内側ハウジングインサート20のねじ21により画定される螺旋経路に沿って回転しながらハウジング10から出るように用量設定部材70の管状スリーブ71を回転させることにより、用量を設定することができる。ピストンロッド30と駆動スリーブ40との間のねじ付きインターフェースのピッチは、内側ハウジングインサート20と用量設定ドラム60との間のねじ付きインターフェースのピッチに対応し、それにより、ピストンロッド30は、そのねじ付きインターフェースにより、内側ハウジングインサート20に静止して保持される。選択された用量はハウジング10の窓13を通して視認できる。ハウジングに対する用量設定ドラム60、用量設定部材70及び駆動スリーブ40のこの回転中に、駆動スリーブ40の可撓性クリッカアームは、内側ハウジングインサート20の内部軸方向スプライン上にスナップ嵌合し、それにより離散的な回転位置が定められる。図示した例示的実施形態では、用量設定部材の一回転が、24回の用量増分に対応する。例えば、注入デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成される場合、用量増分は、いわゆる国際単位(IU)で表示されてもよく、1IUは、約45.5マイクログラム(1/22mg)の高純度結晶インスリンと生物学的に等価である。
【0075】
例えば、80ユニットの最大設定可能用量において、ストップ特徴部が係合して、更なる設定(例えばダイヤル操作)が防止される。更に、用量設定中、駆動スリーブ40は内側ハウジングインサート20に対して回転し、それにより、軸方向に延びるリブ及びスプラインを介して内側ハウジングインサート20に回転方向に固定されたナット50は、駆動スリーブ40のねじ41上を移動する。最後の用量ナット50は、分配されたユニットの数を計数する機能を提供する。ナット50は、寿命末期にデバイス1をロックし、したがって、これ以上の薬物をユーザがダイヤル操作すること又は分配することはできない。設定中の駆動スリーブ40の回転が、ナット50をねじ41に沿って前進させる。ナット50は、常時、内側ハウジングインサート20内を自由に軸方向に摺動でき、それによりナット50の前進が可能になる。寿命末期の状態では、最後の用量ナット50のストップ特徴部は、駆動スリーブ40上の対応する特徴部に接触する。内側ハウジングインサート20とのスプライン式接触は、これらストップ特徴部47により伝達されるいかなるトルクにも反応する。
【0076】
所望の用量がダイヤル操作されると、デバイス1は用量分配の準備ができた状態にある。用量分配は基本的に用量設定部材70を押すことを必要とし、その結果、クラッチ歯61、73の係合解除につながることになる。前述したように、用量を設定する場合、用量設定部材70は、駆動スリーブ40、用量設定部材70、及び用量設定ドラム60を一緒に回転方向にロックして係合する、駆動スリーブ40の可撓性アーム及びクラッチ歯61、73により「バイアスアウト」される。用量設定部材70を押し込んだ時点で、クラッチ歯61、73は係合解除され、用量設定ドラム60と用量設定部材70との間の相対的回転が可能になる。全ての条件において、駆動スリーブ40及び用量設定部材70は、回転方向にロックされたままである。したがって、クラッチが係合解除されると(用量設定部材70が押し込まれると)用量設定部材70、駆動スリーブ40及び用量設定ドラム60は依然として軸方向に連結された状態で、用量設定部材70及び駆動スリーブ40は回転方向に一緒にロックされている。同時に、駆動スリーブ40に対する用量設定部材70の相対的な軸方向移動の結果、ステム上のポケットは可撓性クリッカアームに対してシフトする。したがって、可撓性クリッカアームは、内向きに湾曲することが防止される。ロックアウト特徴部のこの起動は、用量設定部材70が押し込まれたとき、可撓性クリッカアームが内側ハウジングインサート20のスプラインに打ち勝つことを防止する。この状態において、駆動スリーブ40及び用量設定部材70は内側ハウジングインサート20に対して回転方向に拘束され、したがってハウジング10に対するいかなる回転も防止される。
【0077】
所望の用量が設定されると、用量設定部材70を押し下げることができ、ピストンロッド30は前方に駆動されて、カートリッジから薬物が分配される。ピストンロッド30、駆動スリーブ40及び内側ハウジングインサート20の間の嵌合するねじの相互作用が、例えば2:1の機械的利点をもたらす。用量分配の間、用量設定部材70のラチェットプロファイル74及び用量設定ドラム60のクリッカアーム62を伴う分配クリッカが作動される。分配クリッカは、薬物が分配されていることの可聴フィードバックをユーザに提供する。相対的回転は、一方向にのみ許容される。用量送達の間、駆動スリーブ40は、内側ハウジングインサート20に対して回転しない。したがって、用量送達中、ナット50の回転位置は変化せず、ナット50は、用量設定又はダイヤル操作中に設定された駆動スリーブ40上のその位置に残る。
【0078】
用量設定部材70、より具体的には管状スリーブ71は、その遠位端に、軸方向に向いたストップ歯75のセットを有する。これらの歯75は、管状スリーブ71の近位リム上に形成され、用量の送達の終了時に、ハウジング10の内部表面上に形成されたカウンターストップ歯14のセットに係合するように構成される。これらの歯14、75は、各用量の終了時に、ハウジング10及び用量設定ドラム60に対する用量設定部材70の回転位置を制御し「正しく調整」する。用量設定部材70と用量設定ドラム60と間のクラッチ歯61、73が整列されていることを確実にして、用量設定部材70が解除されたときに、それらが正しく再係合するように(その後の用量をダイヤル操作することが可能になるように)することが重要である。更には、各用量の終了時に、用量設定部材70の回転位置が用量設定ドラム60に対して整合していることが、モジュール2の正確な機能にとって重要である。これは、モジュール2が、送達された用量のサイズを決定するために、用量設定部材70に対する用量設定ドラム60上でのクラッチ歯61の相対的な回転運動の全てを正確に検出すること意図しているからである。上述した歯14、75が用量設定部材70とハウジング10との間に存在しないと、用量の終了時におけるこれら2つの部品の相対的回転位置は、ダイヤルクリッカ(駆動スリーブ40の可撓性クリッカアーム及び内側ハウジングインサート20の軸方向スプライン)によって測定されるだけである。しかしながら、ダイヤルクリッカは比較的小さいトルクに屈するように意図的に設計されているので、それは、特に正確な回転データを提供するわけではない。また更に、ペン1が0Uのダイヤル状態にあるときに用量設定部材70が押し込まれた場合、これら歯14、75の係合により、ユーザがハウジング10に対して用量設定部材70を回転させることが防止される。この状態において用量設定部材70を回転させることは、ユーザがピストンロッド30を前進又は後退させるようにペン機構を操作することを可能にし、場合によっては用量の間違いにつながる。
【0079】
薬物送達デバイス1は、モジュール2と共に使用されても又はモジュール2無しで使用されても好適である。モジュール2が用量設定部材70上に嵌まると、可撓性クリップ7がボタン72の半径方向アパーチャ76に係合してその中にスナップ式に嵌まり、一方でライトパイプ6が軸方向アパーチャ78内へと延びる。モジュール2と連係して使用される場合、用量設定ドラム60のクラッチ歯61のリングはエンコーダという追加機能を有する。
【0080】
用量設定ドラム60の近位端において外径に位置する、半径方向外向きに突出したこれらクラッチ歯61は、光学センサにより検出され得る。換言すれば、円形の、例えばリング形のパターンで形成された近位方向に面するエンコーダ特徴部のアレイが、クラッチ歯61のリングによって提供される。図7に示すように、例示的実施形態では、12個だけの等間隔のクラッチ歯61があるが、これらは、用量設定部材70上の24個の嵌合する歯73と組み合わされて、24個の別個の係合位置が提供される(したがって、用量の設定及び送達時に、用量設定部材の1回転ごとに24個の選択可能な用量増分が可能である)。この構成にはいくつかの利点がある。クラッチ歯61は用量設定ドラム60の外径から半径方向に突出しているので、クラッチ歯は、用量設定部材70の内径上に形成された歯73と相互作用して、最大の可能な直径でトルクが伝達される。これは、それらが、ユーザにより印加されるトルクに対してより強く且つより大きな抵抗力を有することを意味する。より少ない数の幅広歯(すなわち、24個の単一幅の歯よりもむしろ12個の「二倍幅」の歯)はまた、用量設定ドラム60から用量設定部材70にトルクを伝達する強力な手段を提供する。より少ない数の幅広歯61はまた、用量設定ドラム60が用量設定部材70に対して回転する場合、個々の反射領域/非反射領域がより広く、(過大な又は過小な移動に対する)角度許容度の変動に対する適応がより良好であるため、モジュール2の光検出器のための遥かに良好なターゲットを提供する。
【0081】
図6に示すように、ペン型注入器1の用量ボタン72は、ペン型注入器1の近位端側部を構成し、その近位端面に形成された2つの同心状の溝78、79を有する。すなわち、溝は近位端面の窪み又は切欠きとして形成されてもよく、遠位方向に延びていてもよい。これら溝78、79は、モジュール2の特徴部を収容して、取付け中に、正しい回転方向への整列を見つけるために、モジュールが用量ボタン72に対して回転することを可能にしている。溝78、79は、ペンの用量ボタン72上に、特徴部のセットを、すなわち、間違ったタイプのモジュール2の取付けを防止する、すなわち専用化特徴部、モジュール2がクリップ特徴部7を介して確実に取り付けられることを可能にする特徴部、及びモジュール2が用量値を検出/符号化することを可能にするペン機構のクラッチ歯61へのアクセスを提供する特徴部を、別々に設ける手段として機能する。前述したように、送達された用量のサイズを検出するためにモジュール2により使用される特徴部は、用量設定ドラム60の近位端における外周の周りに等間隔の特徴部のアレイとして形成されたクラッチ歯61である。これらエンコーダ特徴部はクラッチ歯61である必要は無いかも知れないが、単に用量設定ドラム60と一緒に回転する光学エンコーダシステムのための「フラグ」とすることができ、アパーチャ77の構成は、モジュール2がペン1内に嵌められたときに、そのようなエンコーダ特徴部へのアクセスを可能にするのに有用である。
【0082】
ペン1から送達される用量を符号化するために、モジュール2は光学IRエミッタ/検出器のセットを使用するので、モジュールセンサの正しい性能に干渉し得る屋外でペン1が使用される場合、例えば高い周囲光レベルからの「漏洩」IR放射線のレベルを減らすことが好ましい。用量設定部材70の構成要素は、反射されたIR放射線のレベルを減らす/抑制することを意図した特徴部を有してもよい。具体的には、管状スリーブ71及び/又はボタン72は、IR吸収性マスターバッチを含んでもよく、及び/又は放電加工されたテクスチャー状の表面仕上げを有してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 薬物送達デバイス(ペン)
2 電子モジュール
3 キャップ
4 PCBA(プロセッサ、センサ)
5 バッテリ
6 ライトパイプ
7 可撓性クリップ
10 ハウジング
11 カートリッジホルダ
12 ねじ
13 用量窓
14 カウンターストップ歯
20 内側ハウジングインサート
21 ねじ
30 ピストンロッド
31 ベアリング
40 駆動スリーブ
41 ねじ
50 ナット
60 用量設定ドラム
61 クラッチ歯
62 クリッカアーム
70 用量設定部材
71 管状スリーブ
72 ボタン
73 クラッチ歯
74 ラチェットプロファイル(ランプ歯)
75 ストップ歯
76 半径方向アパーチャ
77 軸方向アパーチャ
78 外側溝
79 内側溝
80 カートリッジ
90 キャップ
X 軸
用量設定部材70の直径
ハウジング10の直径
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】