(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ポリイソブチレンフェニルアクリレート櫛型コポリマーをベースとする潤滑剤用の粘度指数向上剤
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20241129BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20241129BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20241129BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20241129BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20241129BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20241129BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
C08F290/04
C10M145/14
C08F8/46
C10N40:25
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:04
C10N40:30
C10N40:08
C10N40:20 Z
C10N30:02
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533269
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022083600
(87)【国際公開番号】W WO2023104584
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア カストロ,イヴェッテ
(72)【発明者】
【氏名】コシャベク,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ミスケ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フレッケンシュタイン,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4H104
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4H104CB08C
4H104LA01
4H104LA20
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA20
4H104PA21
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA43
4J100AA06P
4J100BA15H
4J100BC43H
4J100CA01
4J100CA27
4J100CA31
4J100HA62
4J100HB63
4J100HC09
4J100HC34
4J100HE05
4J100JA15
4J127AA04
4J127BA041
4J127BA051
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD031
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127CA02
4J127CB142
4J127CB151
4J127CC011
4J127DA15
4J127EA05
4J127FA58
(57)【要約】
本発明は、重合形態で、式(I)のPIBマクロモノマー及び式(II)のアクリレートモノマーを含む櫛型コポリマーに関する。本発明は更に、式(III)のポリイソブテンフェノールを(メタ)アクリル酸無水物と反応させる式(I)のPIBマクロモノマーの調製方法と;基油、櫛型コポリマー、及び更なる潤滑剤用添加剤を含む潤滑油と;潤滑油の粘度指数を向上させるための櫛型コポリマーの使用とに関する。
【化1】
H
2C=C(R
7)COOR
8 (II)
【化2】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合形態で、
(A)式(I)のPIBマクロモノマー
【化1】
(式中、R
1~R
5は、水素、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-アルキルオキシ、C
8~C
7500-ポリイソブチル及びC
8~C
7500-ポリイソブテニルを含む群から互いに独立して選択され、R
1~R
5のうちの少なくとも1つは、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基であり、
R
6は、水素又はメチルである)と;
(B)式(II)のアクリレートモノマー
H
2C=C(R
7)COOR
8 (II)
(式中、R
7は水素又はメチルであり、R
8はC
1~36アルキルである)とを含む櫛型コポリマー。
【請求項2】
R
1~R
5のうちの1つは、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基である、請求項1に記載の櫛型コポリマー。
【請求項3】
R
3は、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基である、請求項1又は2に記載の櫛型コポリマー。
【請求項4】
C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基ではない部分R
1~R
5は、水素、メチル、又はtert-ブチルの群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の櫛型コポリマー。
【請求項5】
前記アクリレートモノマーは、式(IIa)の疎水性アクリレートモノマー
H
2C=C(R
7)COOR
8a (IIa)
(式中、R
7は水素又はメチルであり、R
8aはC
5~36アルキルである)と、
式(IIb)の親水性アクリレートモノマー
H
2C=C(R
7)COOR
8b (IIb)
(式中、R
7は水素又はメチルであり、R
8bはC
1~4アルキルである)とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の櫛型コポリマー。
【請求項6】
5~60wt%の前記PIBマクロモノマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の櫛型コポリマー。
【請求項7】
25~90wt%の前記アクリレートモノマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の櫛型コポリマー。
【請求項8】
最大75wt%の前記疎水性アクリレートモノマー及び少なくとも5wt%の前記親水性アクリレートモノマーを含む、請求項5又は6に記載の櫛型コポリマー。
【請求項9】
- 5~55wt%のPIBマクロモノマーと、
- 10~85wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 1~50wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である、請求項5又は6に記載の櫛型コポリマー。
【請求項10】
式(I)のPIBマクロモノマーの調製方法
【化2】
(式中、R
1~R
5は、水素、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-アルキルオキシ、C
8~C
7500-ポリイソブチル及びC
8~C
7500-ポリイソブテニルを含む群から互いに独立して選択され、R
1~R
5のうちの少なくとも1つは、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基であり、
R
6は、水素又はメチルである)であって、
式(III)のポリイソブテンフェノール
【化3】
を、(メタ)アクリル酸無水物と反応させる、方法。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル酸無水物は、前記ポリイソブテンフェノールに対してモル過剰で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応に続いて、残りの(メタ)アクリル酸無水物を加水分解して(メタ)アクリル酸を形成する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル酸は、蒸留又は水による抽出によって除去される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)基油と、
(ii)請求項1~9のいずれか一項に記載の、又は請求項10~13のいずれか一項に記載の方法によって得られる櫛型コポリマーと、
(iii)更なる潤滑剤用添加剤とを含む潤滑剤。
【請求項15】
潤滑油の粘度指数を向上させるための、請求項1~9のいずれか一項に記載の、又は請求項10~13のいずれか一項に記載の方法によって得られる櫛型コポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合形態で、式(I)のPIBマクロモノマー及び式(II)のアクリレートモノマーを含む櫛型コポリマーに関する。本発明は更に、式(III)のポリイソブテンフェノールを(メタ)アクリル酸無水物と反応させる式(I)のPIBマクロモノマーの調製方法と;基油、櫛型コポリマー、及び更なる潤滑剤用添加剤を含む潤滑油と;潤滑油の粘度指数を向上させるための櫛型コポリマーの使用とに関する。好ましい実施形態と他の好ましい実施形態との組み合わせは、本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0002】
櫛形ポリマーは潤滑油の有用な添加剤である。ポリイソブチレン(PIB)ベースのマクロモノマーは、櫛型ポリマーにおいて有用なコモノマーである。しかし、これらは合成が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的は、マクロモノマーと櫛型ポリマーの改良された合成と、櫛型ポリマーを含む改良された潤滑剤とを見出すことであった。更なる目的は、ポリマーを含有する潤滑剤を改良することであり、この潤滑剤は、良好なレオロジー挙動、低いポリマー処理率、高い粘度指数、良好な低温性(例えば、低温クランクケースシミュレーション)、過酷な動作条件下での高粘度(例えば、高温高せん断HTHS粘度試験)、及び高いせん断安定性を有する。櫛型ポリマーは、取り扱いが難しい場合が多く、これは櫛形ポリマーが、潤滑剤製造中に適用される温度で非常に高い粘度を示すためである。したがって、取り扱い性能が改善された櫛型ポリマー、例えば100℃未満の温度で低いバルク粘度を持つ櫛型ポリマーも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、重合形態で、
(A)式(I)のPIBマクロモノマー
【化1】
(式中、R
1~R
5は、水素、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-アルキルオキシ、C
8~C
7500-ポリイソブチル及びC
8~C
7500-ポリイソブテニルからなる群から互いに独立して選択され、R
1~R
5のうちの少なくとも1つは、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソ-ブテニル基であり、
R
6は、水素又はメチルである)と;
(B)式(II)のアクリレートモノマー
H
2C=C(R
7)COOR
8 (II)
(R
7が水素又はメチルであり、R
8は、C
1~36アルキルである)とを含む櫛型コポリマーによって解決された。
【0005】
PIBマクロモノマーは、300~10,000g/mol、好ましくは400~5000g/mol、特に800~2500g/molの分子量を有することができる。
【0006】
PIBマクロモノマーの分子量は、ポリスチレン標準物質(例えばDIN 55672-1)を用いたGPCによって測定することができる。
【0007】
好ましくは、R1~R5のうちの1つ(好ましくはR3)は、C8~C7500-ポリイソブチル又はC8~C7500-ポリイソブテニルである。好ましくは、PIBは、R3は、C8~C7500-ポリイソブチル基、又はC8~C7500-ポリイソブテニル基である。好ましくは、C8~C7500-ポリイソブチル基又はC8~C7500-ポリイソブテニル基ではない部分R1~R5は、水素、メチル、又はtert-ブチルの群から選択される。特に、R3は、C8~C7500-ポリイソブチル基、又はC8~C7500-ポリイソブテニル基であり、R1、R2、R4、及びR5は、水素、メチル又はtert-ブチルの群から選択される。
【0008】
R6はH又はメチルであり、メチルが好ましい。
【0009】
PIBマクロモノマーの合成は、例えばK.Maenz and D.Stadermann,Angew.Makromol.Chem.1996,242,183-197“Macromonomers based on low-molecular weight polyisobutenes”から公知である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
櫛型コポリマーは、最大60wt%、好ましくは最大45wt%、特に最大30wt%のPIBマクロモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは最大65wt%、好ましくは最大55wt%、特に最大45wt%のPIBマクロモノマーを含んでいてもよい。
【0011】
典型的には、櫛型コポリマーは、5~55wt%、好ましくは10~45wt%、特に15~25wt%のPIBマクロモノマーを含む。別の形態では、櫛型コポリマーは5~60wt%、好ましくは10~60wt%、特に15~50wt%のPIBマクロモノマーを含む。
【0012】
モノマーのwt%とは、通常、櫛型コポリマー中の全モノマーの重量を基準とした重量%を意味する。櫛型コポリマー中の全モノマー(例えば、PIBマクロモノマー、疎水性モノマー、及び親水性モノマー)の全wt%の合計は、通常100wt%である。
【0013】
アクリレートモノマー中のR7は、H又はメチルであることができ、メチルが好ましい。式(II)、(IIa)及び(IIb)において、R7は異なっていても同一であってもよい。
【0014】
アクリレートモノマー中のR8は、直鎖、分岐又は環状アルキル、好ましくは直鎖又は分岐アルキル、特に分岐アルキルであり得る。
【0015】
R8は、好ましくはC1~18アルキルから選択され、特にC1~14アルキルから選択される。
【0016】
好適なR8は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、2-ブチルオクチル、ノニル、デシル、ステアリル、2-ヘキシルデシル、ラウリル、オクタデシル、ヘプタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチル、ベヘニル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクチデシル、又はそれらの混合物である。好ましくは、R8は、少なくとも2つの異なるアルキル基、例えば2つ又は3つのアルキル基を含む。
【0017】
典型的には、櫛型コポリマーは25~90wt%、好ましくは35~85wt%、特に45~80wt%のアクリレートモノマーを含む。
【0018】
好ましい形態では、アクリレートモノマーは、式(IIa)の疎水性アクリレートモノマー
H2C=C(R7)COOR8a (IIa)
(式中、R7は、水素又はメチルであり、R8aはC5~22アルキルである)と、
式(IIb)の親水性アクリレートモノマー
H2C=C(R7)COOR8b (IIb)
(式中、R7は、水素又はメチルであり、R8b、C1~4アルキルである)とを含む。
【0019】
疎水性アクリレートモノマー中のR8aは、直鎖、分岐又は環状アルキル、好ましくは直鎖又は分岐アルキル、特に分岐アルキルであり得る。
【0020】
好適なR8aは、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、2-ブチルオクチル、ノニル、デシル、ステアリル、ラウリル、2-ヘキシルデシル、オクタデシル、ヘプタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチル、ベヘニル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクチデシル、又はそれらの混合物である。
【0021】
R8aは、好ましくはC6~18アルキル、特にC6~14アルキルである。好ましい形態では、R8aは、直鎖又は分岐C6~14アルキルである。別の好ましい形態では、R8aは、分岐C6~10アルキルである。別の好ましい形態では、R8aは、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ドデシル又はテトラデシル、特に2-エチルヘキシルである。別の好ましい形態では、疎水性アクリレートモノマーは2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0022】
櫛型コポリマーは、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%、特に少なくとも25wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは少なくとも3wt%、好ましくは少なくとも5wt%、特に少なくとも8wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0023】
櫛型コポリマーは、最大90wt%、好ましくは最大80wt%、特に最大75wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは、最大60wt%、好ましくは最大40wt%、特に最大25wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0024】
典型的には、櫛型コポリマーは15~85wt%、好ましくは20~80wt%、特に25~75wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは、3~75wt%、好ましくは5~75wt%、特に10~75wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。更に別の形態では、櫛型コポリマーは、3~60wt%、好ましくは5~40wt%、特に10~25wt%の疎水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0025】
親水性アクリレートモノマー中のR8bは、直鎖、分岐又は環状アルキル、好ましくは直鎖又は分岐アルキル、特に分岐アルキルであり得る。
【0026】
好適なR8bは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルである。
【0027】
R8bは好ましくはメチル又はブチルである。別の好ましい形態では、R8bはメチル又はメチルと少なくとも1つのC2~4アルキルとの混合物である。別の好ましい形態では、R8bはメチルである。別の好ましい形態では、R8bはメチルとブチルの混合物、例えばn-ブチルである。
【0028】
櫛型コポリマーは、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%、特に少なくとも8wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、特に少なくとも35wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0029】
櫛型コポリマーは、最大50wt%、好ましくは最大40wt%、特に最大35wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは、最大75wt%、好ましくは最大65wt%、特に最大55wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0030】
典型的には、櫛型コポリマーは、3~45wt%、好ましくは3~40wt%、特に5~35wt%の親水性アクリレートモノマーを含む。別の形態では、櫛型コポリマーは、3~50wt%、好ましくは5~50wt%、特に8~50wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。更に別の形態では、櫛型コポリマーは、5~75wt%、好ましくは8~65wt%、特に35~55wt%の親水性アクリレートモノマーを含んでいてもよい。
【0031】
典型的には、櫛型コポリマーは15~85wt%の疎水性アクリレートモノマー及び3~45wt%の親水性アクリレートモノマーを含む。好ましくは、櫛型コポリマーは20~80wt%の疎水性アクリレートモノマー及び3~40wt%の親水性アクリレートモノマーを含む。別の形態では、櫛型コポリマーは最大75wt%の疎水性アクリレートモノマー及び少なくとも5wt%の親水性アクリレートモノマーを含む。
【0032】
典型的には、櫛型コポリマーは、
- 5~55wt%のPIBマクロモノマーと、
- 15~85wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 1~50wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である。
【0033】
別の形態では、櫛型コポリマーは、
- 5~55wt%のPIBマクロモノマーと、
- 10~85wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 1~50wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である。
【0034】
別の形態では、櫛型コポリマーは、
- 5~55wt%のPIBマクロモノマーと、
- 5~80wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 8~65wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である。
【0035】
典型的には、櫛型コポリマーは、
- 10~45wt%のPIBマクロモノマーと、
- 20~80wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 3~45wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である。
【0036】
別の形態では、櫛型コポリマーは、
- 5~55wt%のPIBマクロモノマーと、
- 5~35wt%の疎水性アクリレートモノマーと、
- 20~60wt%の親水性アクリレートモノマーとを含み、
すべてのモノマーの合計は100wt%である。
【0037】
櫛型コポリマーは、PIBマクロモノマー、疎水性モノマー又は親水性モノマーとは異なる更なるモノマーを含んでいてもよい。更なるコモノマーとして、以下のものを採用することができる:
- ヒドロキシル-、エポキシ-又はアミノ官能性(メタ)アクリレート、
- ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、又はp-(tert-ブチル)スチレン;
- アクリル酸及びメタクリル酸;
- アクリルアミド及びメタクリルアミド;
- マレイン酸並びにそのイミド及びC1~C10-アルキルエステル;
- フマル酸並びにそのイミド及びC1~C10-アルキルエステル;
- イタコン酸並びにそのイミド及びC1~C10-アルキルエステル;
- アクリロニトリル及びメタクリルアミド。
【0038】
櫛型コポリマーは、最大15wt%、好ましくは最大5wt%、特に最大1wt%の更なるモノマーを含んでいてもよい。別の形態では、櫛型コポリマーは更なるモノマーを含まない。
【0039】
櫛型コポリマーは、10,000~1,500,000g/mol、好ましくは20,000~1,000,000g/mol、特に50,000~200,000g/molの分子量Mnを有していてもよい。
【0040】
櫛型コポリマーは、50,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/mol、特に200,000~600,000g/molの分子量Mwを有していてもよい。
【0041】
櫛型コポリマーは、1.5~5.0、好ましくは2.0~4.5、特に2.9~4.3の多分散指数(PDI)を有していてもよい。
【0042】
櫛型コポリマーの分子量は、ポリスチレン標準物質(例えばDIN 55672-1)を用いたGPCによって測定することができる。
【0043】
基油(例えばNexbase(登録商標)3030)の30wt%溶液中の櫛型コポリマーの100℃における動粘度(KV100、通常ブルックフィールド粘度計で測定)は、600mm2/s未満、好ましくは300mm2/s未満、特に150mm2/s未満であることができる。
【0044】
櫛型コポリマーは、バルク重合又は溶液重合などの従来のフリーラジカル重合によって調製することができ、ここでは溶液重合が好ましい。
【0045】
溶液重合では、反応混合物は、希釈剤、モノマー、重合開始剤、及び任意に連鎖移動剤、及び任意に架橋剤を含んでいてもよい。希釈剤はいかなる不活性炭化水素であってもよい。全モノマーの濃度は、約30~100%の範囲であり得る。本明細書において使用する場合、「全モノマー負荷」とは、初期反応混合物中の全モノマーの合計量を意味する。
【0046】
希釈剤は、任意の不活性炭化水素又はジカルボン酸エステルであってよく、ジカルボン酸エステルは、少なくとも1つの直鎖又は分岐C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1つの直鎖又は分岐C1~C20モノアルコールとのジエステルである。ジカルボン酸エステルは、好ましくは、ジカルボン酸と脂肪族アルコールとの反応から誘導される。好ましいジカルボン酸は、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸、及びそれらの混合物である。ジカルボン酸エステル成分は、好ましくは、このようなジカルボン酸から、直鎖又は分枝であり得る中サイズの脂肪族アルコール、好ましくはC5~C20アルコール、より好ましくはC9~C15脂肪族アルコール、最も好ましくはノナノール、イソデカノール、イソトリデカノール、及び2-プロピルヘプタノールとのエステル化により形成される。希釈剤は、好ましくはジ-(2-プロピルヘプチル)-アジペートである。
【0047】
好ましくは、櫛型コポリマーは、ジカルボン酸エステル、好ましくは少なくとも1つの直鎖又は分岐C2~C20ジカルボン酸と少なくとも1つの直鎖又は分岐C1~C20モノアルコールとのジエステル、特にジ-(2-プロピルヘプチル)-アジペートである希釈剤中に存在する。
【0048】
好適な重合開始剤としては、加熱したときに解離してフリーラジカルを生じる開始剤、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオクトエート及びクメンヒドロペルオキシドのようなペルオキシド化合物;並びにアゾイソブチロニトリル及び2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)のようなアゾ化合物が挙げられる。混合物は、全モノマー混合物に対して約0.001重量パーセント~約5.0重量パーセントの開始剤を含む。例えば、0.02重量パーセント~約4.0重量パーセント、0.02重量パーセント~約3.5重量パーセントが想定される。典型的には、約0.02重量パーセント~約2.0重量パーセントが使用される。
【0049】
好適な連鎖移動剤としては、メルカプタン及びアルコールが挙げられる。例えば、トリデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、及びエチルメルカプタンだけでなく、二官能性メルカプタン、例えばヘキサンジチオールも連鎖移動剤として使用できる。使用する連鎖移動剤の量の選択は、合成されるポリマーの所望の分子量に基づく。連鎖移動剤は、モノマー混合物に対して0.001~3重量%の量で反応混合物又はモノマー供給物に添加されることが多い。
【0050】
全成分を、撹拌棒、温度計及び還流冷却器を備えた反応容器に充填し、窒素雰囲気下で撹拌しながら約50℃から約125℃の温度に約0.5時間~約15時間加熱して重合反応を行うことができる。
【0051】
本発明はまた、式(I)のPIBマクロモノマーの調製方法に関する。
【化2】
式中、R
1~R
5は、水素、C
1~C
20-アルキル、C
1~C
20-アルキルオキシ、C
8~C
7500-ポリイソブチル及びC
8~C
7500-ポリイソブテニルを含む群から互いに独立して選択され、R
1~R
5のうちの少なくとも1つは、C
8~C
7500-ポリイソブチル基又はC
8~C
7500-ポリイソブテニル基であり、
R
6は、水素又はメチルであり、
式(III)のポリイソブテンフェノール
【化3】
を(メタ)アクリル酸無水物と反応させる。
【0052】
式(III)のポリイソブテンフェノールは、国際公開第2018/024563号パンフレットに記載されているように調製することができる。ポリイソブテンフェノールは、300~10,000g/mol、好ましくは400~5000g/mol、特に800~2500g/molの分子量を有していてもよい。
【0053】
(メタ)アクリル酸無水物は、好ましくはポリイソブテンフェノールに対してモル過剰、例えば少なくとも1.1倍、1.5倍又は2倍モル過剰で存在する。
【0054】
ポリイソブテンフェノールと(メタ)アクリル酸無水物との反応は、0~120℃、好ましくは10~100℃の範囲の反応温度で行うことができる。
【0055】
ポリイソブテンフェノールと(メタ)アクリル酸無水物との反応は、炭化水素溶媒などの有機溶媒中で行うことができる。
【0056】
PIB-アミンとメタ)アクリル酸無水物との反応に続いて、通常、残りの(メタ)アクリル酸無水物を加水分解して(メタ)アクリル酸を形成する。(メタ)アクリル酸は、蒸留又は水による抽出によって除去することができる。
【0057】
本発明はまた、
(i)基油と、
(ii)櫛型コポリマー、又は本発明による方法によって得られる櫛型コポリマーと、
(iii)更なる潤滑剤用添加剤とを含む潤滑剤に関する。
【0058】
潤滑剤は、少なくとも0.1wt%、好ましくは少なくとも0.5wt%、特に少なくとも1wt%の櫛型コポリマーを含んでいてもよい。別の形態では、潤滑剤は、0.1~20wt%、好ましくは0.1~150wt%、特に少なくとも0.1~10wt%の櫛型コポリマーを含んでいてもよい。
【0059】
潤滑剤は、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも50wt%、特に少なくとも70wt%の基油を含んでいてもよい。潤滑剤は、30~99.9wt%、好ましくは50~99wt%、特に70~95wt%の基油を含んでいてもよい。
【0060】
潤滑剤は、最大20wt%、好ましくは最大15wt%、特に最大
10wt%の更なる潤滑剤用添加剤を含むことができる。
【0061】
潤滑剤とは通常、機械装置の表面など、表面(好ましくは金属表面)間の摩擦を減少させることができる組成物を意味する。機械装置とは、機械的原理で作動する装置からなる機構であってもよい。好適な機械装置は、ベアリング、ギア、ジョイント、及び誘導装置である。機械装置は、-30℃~80℃の範囲の温度で作動させることができる。潤滑剤は通常、潤滑液、潤滑油、又は潤滑グリースである。
【0062】
潤滑剤は通常、事実上あらゆる種類の機械及び製造プロセス用に特別に配合されている。これらの潤滑剤に使用される基油及び/又は潤滑添加剤の種類及び濃度は、潤滑される機械又はプロセスの要件、機械の製造者及び使用者が求める品質、並びに政府の規制に基づいて選択されてよい。典型的には、各潤滑剤には一連の固有の性能要件がある。機械又はプロセスの適切な潤滑に加えて、これらの要件には、潤滑剤自体の品質の維持、並びに潤滑剤の使用及び廃棄がエネルギー使用、環境の質及び使用者の健康に及ぼす影響が挙げられる。
【0063】
代表的な潤滑剤は、自動車用潤滑剤(例えば、ガソリンエンジンオイル、ディーゼルエンジンオイル、ガスエンジンオイル、ガスタービンオイル、オートマチックトランスミッション液、ギアオイル)、及び工業用潤滑剤(例えば、工業用ギア油、空気工具用潤滑油、高温用油、ガスコンプレッサ油、圧媒液、金属加工油)である。
【0064】
潤滑剤の例は、アクセル潤滑、ミディアム及びヘビーデューティ油、工業用エンジン油、船舶用エンジン油、自動車用エンジン油、クランクシャフト油、コンプレッサ油、冷凍機油、炭化水素コンプレッサ油、超低温潤滑油脂、高温潤滑油脂、鋼索潤滑剤、繊維機械油、冷凍機油、航空宇宙用潤滑剤、航空タービン油、トランスミッション油、ガスタービン油、スピンドル油、スピン油、トラクション液、トランスミッション油、プラスチックトランスミッション油、乗用車用トランスミッション油、トラック用トランスミッション油、工業用トランスミッション油、工業用ギア油、絶縁油、計器油、ブレーキ液、トランスミッション液、緩衝器油、熱分配媒体油、変圧器油、油脂、チェーン油、金属加工作業用の最小量潤滑剤、温間及び冷間加工用油、水性金属加工液用油、ニート油金属加工液用油、半合成金属加工液用油、合成金属加工液用油、地盤調査用掘削剤、圧媒油、生分解性潤滑剤又は潤滑グリース若しくはワックス、チェーンソー用油、離型剤、成形液、銃、ピストル及びライフル用潤滑剤或いは時計用潤滑剤、並びに食品グレード認可潤滑剤である。
【0065】
潤滑剤は通常、少なくとも10、50、100、150、200、300、400、500、600、900、1400、又は2000mm2/sの40℃における動粘度を有していてもよい。別の形態では、潤滑剤は通常、200~30000mm2/s(cSt)、好ましくは500~10000mm2/s、特に1000~5000mm2/sの40℃における動粘度を有していてもよい。
【0066】
潤滑剤は、通常、少なくとも2、3、5、10、20、30、40、又は50mm2/sの100℃における動粘度を有していてもよい。別の形態では、潤滑剤は、10~5000mm2/s(cSt)、好ましくは30~3000mm2/s、特に50~2000mm2/sの100℃における動粘度を有していてもよい。
【0067】
潤滑剤は、少なくとも150、160、170、180、190又は200の粘度指数(VI)を有していてもよい。
【0068】
基油は、鉱油(グループI、II又はIIIの油)、ポリアルファオレフィン(グループIVの油)、重合及び共重合オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステル(グループVの油)からなる群から選択され得る。好ましくは、基油は、APIの定義に従って、グループI、グループII、グループIIIの基油、又はそれらの混合物から選択される。基油の定義は、米国石油協会(API)の刊行物“Engine Oil Licensing and Certification System”,Industry Services Department,Fourteenth Edition,December 1996,Addendum 1,December 1998に記載されているものと同じである。当該刊行物は、基油を以下のように分類している:
a)グループIの基油は、90%未満の飽和物(ASTM D2007)及び/又は0.03%超の硫黄(ASTM D2622)を含有し、80以上120未満の粘度指数(ASTM D2270)を有する。
b)グループIIの基油は、90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIの基油は、90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVの基油はポリアルファオレフィンを含有する。ポリアルファオレフィン(PAO)としては公知のPAO材料が挙げられ、これは典型的には、C2~約C32アルファオレフィンを含むが、これに限定されないアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーを含み、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどのC8~C16アルファオレフィンが好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、及びポリ-1-ドデセンである。
e)グループVの基油は、グループI~IVに記載されていない基油を含有する。グループVの基油の例としては、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0069】
合成基油としては、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル、並びにアルキル化ジフェニルスルフィド及びそれらの誘導体、類似体、及び同族体が挙げられる。
【0070】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されたアルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー並びにそれらの誘導体は、公知の合成基油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、分子量1000を有するメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル又は分子量1000~1500を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);及びそのモノ-及びポリカルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3~C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルを例とする。
【0071】
ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油のようなシリコーン系油は、合成基油の別の有用なクラスを構成する;このような基油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成基油としては、リン含有酸の液状エステル(例えば、トリクレシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)、及び高分子テトラヒドロフランが挙げられる。
【0072】
好適な潤滑剤用添加剤は、粘度指数向上剤、高分子増粘剤、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、染料、摩耗防止添加剤、極圧添加剤(EP添加剤)、耐摩耗添加剤(AW添加剤)、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤から選択することができる。
【0073】
粘度指数向上剤は、高温での油の相対粘度を低温での相対粘度よりも高める高分子量ポリマーを含む。粘度指数向上剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマー、又はポリアルケン、例えば、PIB、スチレン/アクリレートコポリマー、及びポリエーテル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。最も一般的なVl向上剤は、メタクリレートポリマー及びコポリマー、アクリレートポリマー、オレフィンポリマー及びコポリマー、並びにスチレンブタジエンコポリマーである。粘度指数向上剤の他の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、α-オレフィンポリマー、α-オレフィンコポリマー(例えば、エチレンプロピレンコポリマー)、ポリアルキルスチレン、フェノール縮合物、ナフタレン縮合物、スチレンブタジエンコポリマーなどが挙げられる。これらのうち、10000~300000の数平均分子量を有するポリメタクリレート、及び1000~30000の数平均分子量を有するα-オレフィンポリマー又はα-オレフィンコポリマー、特に1000~10000の数平均分子量を有するエチレン-α-オレフィンコポリマーが好ましい。粘度指数向上剤は、単独で、又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して0.05重量%以上20.0重量%以下の範囲内の量で添加し使用することができる。
【0074】
好適な(高分子)増粘剤としては、ポリイソブテン(PIB)、オリゴマーコポリマー(OCP)、ポリメタクリレート(PMA)、スチレンとブタジエンとのコポリマー、又は高粘度エステル(複合エステル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のようなフェノール系酸化防止剤、又は非フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0076】
有用なフェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、無灰(金属を含まない)フェノール系化合物であっても、又はある種のフェノール系化合物の中性若しくは塩基性金属塩であってもよい。代表的なフェノール系酸化防止剤化合物はヒンダードフェノール系であり、これは立体障害ヒドロキシル基を含むものであり、これらにはヒドロキシル基が互いに対してo位又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が含まれる。代表的なフェノール系酸化防止剤としては、6個以上の炭素原子を有するアルキル基で置換されたヒンダードフェノール、及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。この種のフェノール系材料の例は、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2-t-ブチル-4-オクチルフェノール;2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールである。他の有用なヒンダードモノフェノール系酸化防止剤としては、例えばヒンダード2,6-ジ-アルキルフェノールプロピオン酸エステル誘導体を挙げることができる。ビスフェノール系酸化防止剤も本発明と組み合わせて使用することができる。オルト位結合フェノールの例としては:2,2’-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール);2,2’-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール);及び2,2’-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。パラ位結合ビスフェノールとしては、例えば、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-フェノール)及び4,4’メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
【0077】
使用可能な非フェノール系酸化防止剤としては、芳香族アミン系酸化防止剤が挙げられ、これらはそのまま、又はフェノールと組み合わせて使用することができる。非フェノール系酸化防止剤の代表的な例としては:アルキル化及び非アルキル化芳香族アミン、例えば、式R8R9R10Nの芳香族モノアミン(式中、R8は脂肪族、芳香族又は置換芳香族基であり、R9は芳香族又は置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリール、又はR11S(O)xR12であり、R11は、アルキレン、アルケニレン又はアラルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、又はアルケニル、アリール、又はアルカリル基であり、xは、0、1、又は2である)が挙げられる。脂肪族基R8は、1~約20個の炭素原子を含んでいてもよく、好ましくは約6~12個の炭素原子を含む。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、R8及びR9は両方とも芳香族基又は置換芳香族基であり、芳香族基はナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8及びR9は、Sなどの他の基と一緒に結合していてもよい。
【0078】
典型的な芳香族アミン系酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は約14個より多い炭素原子を含まない。本組成物に有用なアミン酸化防止剤の一般的な種類としては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル、及びジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。2種以上の芳香族アミンの混合物も有用である。高分子アミン系酸化防止剤も使用できる。本発明に有用な芳香族アミン系酸化防止剤の具体例としては:p,p’-ジオクチルジフェニルアミン;t-オクチルフェニル-アルファナフチルアミン;フェニル-アルファナフチルアミン;及びp-オクチルフェニル-アルファナフチルアミンが挙げられる。硫化アルキルフェノール及びそのアルカリ又はアルカリ土類金属塩も有用な酸化防止剤である。
【0079】
腐食防止剤としては、種々の酸素含有材料、窒素含有材料、硫黄含有材料及びリン含有材料を挙げることができ、金属含有化合物(塩、有機金属など)及び非金属含有又は無灰材料を挙げることができる。腐食防止剤としては、例えば、ヒドロカルビル-、アリール-、アルキル-、アリールアルキル-、及びアルキルアリール型の洗浄剤(中性、過塩基性)、スルホネート、フェネート、サリチレート、アルコレート、カルボキシレート、サリキサレート、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、アミン、アミン塩、アミンリン酸塩、アミンスルホン酸塩、アルコキシル化アミン、エーテルアミン、ポリエーテルアミン、アミド、イミド、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアドール(benzothiadole)、メルカプトベンゾチアゾール、トリルトリアゾール(TTZタイプ)、複素環アミン、複素環スルフィド、チアゾール、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、ジメルカプトチアジアゾール(DMTDタイプ)、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ジチオベンズイミダゾール、イミダゾリン、オキサゾリン、マンニッヒ反応生成物、グリシジルエーテル、無水物、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ポリグリコールなど、又はそれらの混合物などの添加剤タイプを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0080】
洗浄剤としては、汚れの粒子に付着し、それらが臨界表面に付着するのを防止する清浄剤が挙げられる。洗浄剤はまた、金属表面自体に付着して、金属表面を清浄に保ち、腐食の発生を防ぐこともできる。洗浄剤としては、マグネシウム、バリウム又はナトリウムのような代替金属イオンを使用した、カルシウムアルキルサリチレート、カルシウムアルキルフェネート及びカルシウムアルカリルスルホネートが挙げられる。使用できる洗浄剤及び分散剤の例としては、中性及び塩基性のアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ土類金属サリチレートのような金属系洗浄剤、アルケニルスクシンイミド及びアルケニルスクシンイミドエステル及びそれらのホウ素水素、フェネート、サリエニウス(salienius)錯体洗浄剤、並びに硫黄化合物で改変された無灰分散剤が挙げられる。これらの作用剤は、単独で、又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して0.01重量%以上1.0重量%以下の範囲内の量で添加し使用することができ、これらはまた、高全塩基価(TBN)、低TBN、又は高/低TBNの混合物であることができる。
【0081】
分散剤は、臨界表面上へのスラッジ、ワニス、及び他の付着物の形成を防ぐのを助ける潤滑剤用添加剤である。分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えば、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、マンニッヒ分散剤、エステル含有分散剤、脂肪ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミン若しくはアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル-アミン分散剤、ポリエーテル分散剤、又はポリエーテルアミン分散剤であってもよい。一実施形態では、スクシンイミド分散剤としてはポリイソブチレン置換スクシンイミドが挙げられ、ここでは、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、約400~約5000、又は約950~約1600の数平均分子量を有し得る。一実施形態では、分散剤としてはボレート化分散剤が挙げられる。典型的には、ボレート化分散剤としては、ポリイソブチレンスクシンイミドをはじめとするスクシンイミド分散剤が挙げられ、ここでは、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、約400~約5000の数平均分子量を有し得る。ボレート化分散剤については、上記の極圧剤の記載の中でより詳細に記載されている。
【0082】
消泡剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択されてもよい。本明細書に記載される潤滑剤組成物中の消泡剤の量は、配合物の総重量に対して0.001wt%以上0.1wt%以下の範囲であってもよい。更なる例として、消泡剤は、約0.004wt%~約0.008wt%の量で存在してもよい。
【0083】
好適な極圧剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、ポリスルフィド、又はそれらの混合物であってもよい。硫化オレフィンの例として、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導される硫化オレフィン;有機スルフィド及び/若しくはベンジルジスルフィドを含むポリスルフィド;ビス-(クロロベンジル)ジスルフィド;ジブチルテトラスルフィド;ジ-三級ブチルポリスルフィド;並びにオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールス-アルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N-ジアルキルジチオカルバメート;又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、硫化オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、又はそれらの混合物から誘導される硫化オレフィンが挙げられる。一実施形態では、極圧添加剤の硫黄含有化合物としては、ジメルカプトチアジアゾール若しくは誘導体、又はそれらの混合物が挙げられる。ジメルカプトチアジアゾールの例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール又はヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、又はそれらのオリゴマーなどの化合物が挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位間に硫黄-硫黄結合を形成して当該チアジアゾール単位のうちの2つ以上の誘導体又はオリゴマーを形成することによって、形成される。好適な2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導化合物としては、例えば、2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、又は2-tert-ノニルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのヒドロカルビル置換基の炭素原子の数は、典型的には、1~30、又は2~20、又は3~16が含まれる。極圧添加剤としては、ホウ素及び/又は硫黄及び/又はリンを含有する化合物が挙げられる。極圧剤は、潤滑剤組成物の0wt%~約20wt%、又は約0.05wt%~約10.0wt%、又は約0.1wt%~約8wt%で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0084】
耐摩耗添加剤の例としては、有機ボレート、有機ホスファイト、例えばジドデシルホスファイト、有機硫黄含有化合物、例えば、硫化マッコウクジラ油又は硫化テルペン、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、亜鉛ジアリールジチオホスフェート、ホスホ硫化炭化水素、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0085】
摩擦調整剤としては、金属含有化合物若しくは材料、及び無灰化合物若しくは材料、又はそれらの混合物を挙げることができる。金属含有摩擦調整剤としては、金属塩又は金属配位子錯体が挙げられ、ここでは、金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移族金属を挙げることができる。そのような金属含有摩擦調整剤はまた、低灰特性を有してもよい。遷移金属としては、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどを挙げることができる。配位子としては、アルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾール、及び有効量のO、N、S、又はPを単独で、又は組み合わせて含有する他の極性分子官能基のヒドロカルビル誘導体を挙げることができる。特に、Mo含有化合物、例えば、Mo-ジチオカルバメート、Mo(DTC)、Mo-ジチオホスフェート、Mo(DTP)、Mo-アミン、Mo(Am)、Mo-アルコレート、Mo-アルコール-アミドなどが特に有効であり得る。
【0086】
無灰摩擦調整剤としては、有効量の極性基を含有する潤滑剤材料、例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル基油、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体などを挙げることができる。摩擦調整剤中の極性基としては、有効量のO、N、S、又はPを単独で、又は組み合わせて含有するヒドロカルビル基を挙げることができる。特に有効であり得る他の摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸の塩(灰分含有及び無灰誘導体の両方)、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪エステル、ヒドロキシル含有カルボキシレート、及び同等の合成長鎖ヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレートなどが挙げられる。場合によっては、脂肪有機酸、脂肪アミン、及び硫化脂肪酸が、好適な摩擦調整剤として使用されてもよい。摩擦調整剤の例としては、脂肪酸エステル及びアミド、有機モリブデン化合物、モリブデンジアルキルチオカルバメート、並びにモリブデンジアルキルジチオホスフェートが挙げられる。
【0087】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4-又は5-アルキルベンゾトリアゾール(例えばトリアゾール)及びその誘導体、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール、及び5,5’-メチレンビスベンゾトリアゾール;ベンゾトリアゾール又はトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1-[ビス(2-エチル-ヘキシル)アミノメチル)トリアゾール及び1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール;並びにアルコキシアルキルベンゾトリアゾール、例えば、1-(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1-(1-シクロヘキシルオキシブチル)トリアゾール、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤の更なる非限定的な例としては、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、例えば、3-アルキル(又はアリール)-1,2,4-トリアゾール、及び1,2,4-トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチ1-1,2,4-トリアゾール;アルコキシアルキ1-1,2,4-トリアゾール、例えば、1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール;並びにアシル化3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4’-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール)及びビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]-カルビノールオクチルエーテル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤の更なる非限定的な例としては、硫黄含有複素環化合物、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、及びその誘導体;並びに3,5-ビス-[ジ(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-1,3,4-チアジアゾリン-2-オン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤の更に非限定的な例としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン、及びその塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤は、組成物中の量に特に制限はないが、典型的には、組成物の重量に対して、約0.01~約0.1、約0.05~約0.01、又は約0.07~約0.1wt%の量で存在する。或いは、1種以上の金属不活性化剤は、組成物の重量に対して、約0.1wt%未満、約0.7wt%未満、又は約0.5wt%未満の量で存在してもよい。
【0088】
流動点降下剤(PPD)としては、ポリメタクリレート、アルキル化ナフタレン誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一般的に使用される添加剤、例えば、アルキル芳香族ポリマー及びポリメタクリレートもこの目的に有用である。典型的には、処理率は、ベースストックの重量に対して0.001wt%以上1.0wt%以下の範囲である。
【0089】
解乳化剤としては、トリアルキルホスフェート、並びにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの種々のポリマー及びコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
本発明は更に、櫛型コポリマー、又は潤滑剤の粘度指数を向上させるための本発明による方法によって得られる櫛型コポリマーの使用に関する。
【実施例】
【0091】
実施例1
ポリイソブチレンフェノール(「PIB-フェノール1000」)を、国際公開第2018/024563号パンフレットに従って、ポリイソブテン(Mn1000g/mol)及びBF3-フェノール錯体により触媒されるフェノールから調製した。これは、水素化高イソパラフィン系炭化水素溶媒(KV100 3.0mm2/s、VI 111、流動点-30℃)中の70wt%溶液として得られ、平均分子量は1350g/mol(OH数OHNから計算)、平均イソブテン単位数は22.5であった。
【0092】
907gのPIB-フェノール1000、0.39gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールBHT、67.6gのメタクリル酸無水物MAAhを86℃に加熱した。4時間後、0.5gのNaOH(水中50wt%)を加えた。12時間後、更に23.1gのMAAhを加えた。合計16時間の反応時間後、150gの水を加え、95℃の浴温で11時間撹拌した。過剰のMAAh及び水を真空中で蒸留除去した。922gの生成物溶液が得られた。変換は、1H NMRによって測定したように定量的であった。MAAhもメタクリル酸MAAも確認できなかった。
【0093】
実施例2
ポリイソブチレンフェノール(「PIB-フェノール2300」)を、国際公開第2018/024563号パンフレットに従って、ポリイソブテン(Mn2300g/mol)及びBF3-フェノール錯体により触媒されるフェノールから調製した。これは、無溶媒で得られ、平均分子量は3300g/mol(OHNから計算)、平均イソブテン単位数は57.1であった。
【0094】
277gのPIB-フェノール2300、119gの水素化高イソパラフィン系炭化水素溶媒(実施例1参照)、0.12gのBHT、及び16.5gのMAAhを85℃に加熱した。1.4時間後、0.13gのNaOH(水中50wt%)を加えた。合計9時間の反応時間後、50gの水を加え、95℃の浴温で19時間撹拌した。その後、浴温を70℃に下げ、相分離後に水相を廃棄した。
【0095】
更に50gの水を加え、混合物を5分間撹拌した。相の分離後、水相を廃棄した。過剰のMAA及び水を真空中で蒸留除去した。382gの生成物溶液が得られた。変換は、1H NMRによって測定したように定量的であった。MAAhもMAAも確認できなかった。
【0096】
実施例3
反応器に以下を加えた:
- 71.4gの実施例1のPIBマクロモノマー(70wt%溶液)
- 175gのEHMA 2-エチルヘキシルメタアクリレート、
- 25gのMMA メチルメタクリレート
- 0.20gのTDDM tert-ドデシルメルカプタン
- 145gのNexbase(登録商標)3030
【0097】
モノマー重量%は以下の通りである:20wt%のPIBマクロモノマー、70wt%のEHMA、10wt%のMMA。
【0098】
混合物を窒素下で撹拌しながら95℃に加熱した。95℃に達するとすぐに、開始剤であるテルブチル-ペルオキシエチルヘキサノエートTBPEHの全溶液の1/3を5分以内に加えた(29.64gのCatenex T121中の3gのTBPEHが全溶液である)。この混合物を更に10分間撹拌した。その後、TBPEH溶液の2/3を3時間の間に3回に分けて加えた:1回目=1g、2回目=2g、3回目=2g。その後、混合物を95℃で1時間処理した。5.56gのTBPEHの9%溶液を最後に加え、混合物を95℃で更に1時間撹拌する。
【0099】
1時間後、408.3gのNextbase(登録商標)3030(水素化高イソパラフィン系炭化水素ベースストック、Neste社製、KV40 12mm2/s、KV100 3.0mm2/s、VI 111)を加え、全ポリマー量を約30%にした。混合物を30分間撹拌して均一にした。
【0100】
分子量は、ポリスチロール較正を用いたGPCで測定した:Mn 108,000g/mol、Mw 392,000g/mol、PDI3.6。
【0101】
適用試験結果は以下の通りである:
KV100:357mm2/s(30wt%ポリマー溶液)
KV40:36.95mm2/s(5wt%の30wt%ポリマー溶液)
KV100:7.7mm2/s(5wt%の30wt%ポリマー溶液)
VI:186
【0102】
潤滑剤の100℃における動粘度(KV100)はASTM D445/446に従って測定した。粘度指数VI(DIN ISO2909)が高ければ高いほど、動粘度に対する温度の影響は小さくなる。
【0103】
実施例4
反応器に以下を加えた:
- 132.2gの実施例1のPIBマクロモノマー(70wt%溶液)
- 52.6gのEHMA 2-エチルヘキシルメタアクリレート、
- 21.5gのMMA メチルメタクリレート
- 60.5gのNBMA n-ブチルメタクリレート
- 23.8gnoLMA ラウリルメタクリレート
- 0.15gのTDDM tert-ドデシルメルカプタン
- 127gのNexbase(登録商標)3030
【0104】
ラウリルメタクリレートは、主にC12/C14メタクリレート(70~75%のC12、24~30%のC14、少量のC10及びC16)を含む技術混合物である。
【0105】
モノマー重量%は以下の通りである:37wt%のPIBマクロモノマー、21wt%のEHMA、8.5wt%のMMA、24wt%のNBMA、及び9.5wt%のLMA。
【0106】
モノマーは実施例3に記載したように重合した。
【0107】
分子量は、ポリスチロール較正を用いたGPCで測定した:Mn 135,000g/mol、Mw 562,000g/mol、PDI 4.2。
【0108】
適用試験結果は以下の通りである:
KV100:402mm2/s(30wt%ポリマー溶液)
KV40:35.6mm2/s(5wt%の30wt%ポリマー溶液)
KV100:7.5mm2/s(5wt%の30wt%ポリマー溶液)
VI:186
【0109】
実施例5
反応器に以下を加えた:
- 142.9gの実施例2のPIBマクロモノマー(70wt%溶液)
- 37.5gの2-エチルヘキシルメタアクリレート、
- 12.5gのメチルメタクリレート
- 100.0gのn-ブチルメタクリレート
- 0.04gのtert-ドデシルメルカプタン
- 123.9gのYubas(登録商標)3(水素化軽質パラフィン系鉱油、SK Lubricants社製、韓国、CAS 64742-55-8)
【0110】
モノマー重量%は以下の通りである:40wt%のPIBマクロモノマー、15wt%のEHMA、5wt%のMMA、40wt%のNMBA。モノマーは実施例3に記載したように重合した。最後にYubas(登録商標)3を加え、全ポリマー含量を約30%にした。
【0111】
分子量は、ポリスチロール較正を用いたGPCで測定した:Mn 146,000g/mol、Mw 387,000g/mol、PDI 2.6。
【0112】
適用試験結果は以下の通りである:
KV100:519mm2/s(30wt%ポリマー溶液)
KV100:6.8mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
KV40:6.88mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
VI:177
【0113】
Chevron(登録商標)150Rは、グループIIのパラフィン系基油であり、KV40は29.4mm2/s、KV100は5.25mm2/s(ASTM D445)、VIは112である。
【0114】
せん断安定性は、CEC L-14-93に従ってBoschのディーゼル噴射ポンプで30サイクル測定すると、1未満であった。これにより、櫛型ポリマーの高せん断安定性を実証した。
【0115】
実施例6
反応器に以下を加えた:
- 142.9gの実施例2のPIBマクロモノマー(70wt%溶液)
- 37.5gの2-エチルヘキシルメタアクリレート、
- 12.5gのメチルメタクリレート
- 100.0gのn-ブチルメタクリレート
- 0.04gのtert-ドデシルメルカプタン
- 123.9gのSynative(登録商標)ES2810(脂肪酸のトリメチロールプロパンエステル、KV40 19.1mm2/s、KV100 4.4mm2/s、BASF SEから市販)
【0116】
モノマー重量%は以下の通りである:40wt%のPIBマクロモノマー、15wt%のEHMA、5wt%のMMA、40wt%のNBMA。モノマーは実施例3に記載したように重合した。最後にSynative(登録商標)ES2810を加え、全ポリマー含量を約30%にした。
【0117】
分子量は、ポリスチロール較正を用いたGPCで測定した:152,000Mn g/mol、378,000Mw g/mol。
【0118】
適用試験結果は以下の通りである:
KV100:650mm2/s(30wt%ポリマー溶液)
KV100:6.88mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
KV40:31.7mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
VI:186
【0119】
せん断安定性は、CEC L-14-93に従ってBoschのディーゼル噴射ポンプで30サイクル測定すると、1未満であった。これにより、櫛型ポリマーの高せん断安定性が実証された。
【0120】
実施例7
反応器に以下を加えた:
- 142.9gの実施例2のPIBマクロモノマー(70wt%溶液)
- 37.5gの2-エチルヘキシルメタアクリレート、
- 12.5gのメチルメタクリレート
- 100.0gのn-ブチルメタクリレート
- 0.04gのtert-ドデシルメルカプタン
- 123.9gのYubase(登録商標)4(水素化軽質パラフィン系鉱油、CAS 64742-54-7、SK Lubricants社製、韓国)
【0121】
モノマー重量%は以下の通りである:40wt%のPIBマクロモノマー、15wt%のEHMA、5wt%のMMA、40wt%のNBMA。モノマーは実施例3に記載したように重合した。最後にYubase(登録商標)4を加え、全ポリマー含量を約30%にした。
【0122】
分子量は、ポリスチロール較正を用いたGPCで測定した:153,000Mn g/mol、371,000Mw g/mol。
【0123】
適用試験結果は以下の通りである:
KV100:677mm2/s(30wt%ポリマー溶液)
KV100:6.81mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
KV40:32.5mm2/s(Chevron(登録商標)150R中の5wt%)
VI:175
【0124】
せん断安定性は、CEC L-14-93に従ってBoschのディーゼル噴射ポンプで30サイクル測定すると、1未満であった。これにより、櫛型ポリマーの高せん断安定性を実証した。
【国際調査報告】