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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-10
(54)【発明の名称】環状運動が強化されたイオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20241203BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20241203BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534481
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022051139
(87)【国際公開番号】W WO2023113995
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/551,849
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュンユン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジニョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ギョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】クー, ボンウォン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101DD03
5C101DD22
5C101DD25
5C101DD30
(57)【要約】
高いプラズマ電位を有するIHCイオン源が開示される。特定の複数の実施形態では、より高いプラズマ電位を実現するために、抽出プレートがアークチャンバの本体よりも高い電圧でバイアスされる。シールド電極を利用して、バイアスされた抽出プレートとプラズマとの間の相互作用を除去することができる。アークチャンバの断面は、チャンバ内での電子の回転を容易にするために、円形又は略円形であってよい。別の一実施形態では、バイアスされた電極が、チャンバ内で高さ方向において抽出開口の両側に配置され得る。幾つかの実施形態では、電極の一方のみがアークチャンバの本体よりも高い電圧でバイアスされる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバを備えるイオン源であって、前記チャンバは、
第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、
前記チャンバの前記第1の端に配置された間接加熱カソード、
イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含む抽出プレートであって、前記抽出プレートは前記本体から電気的に絶縁され、前記本体と前記抽出プレートとは閉じた空間を形成する、抽出プレート、
前記抽出プレートに隣接して、前記抽出プレートに物理的に接触しないように前記閉じた空間内に配置された1以上のシールド電極であって、前記本体に電気的に接続された1以上のシールド電極、並びに
前記抽出プレートに通じている抽出電源であって、前記抽出プレートは前記本体に対して正にバイアスされている、抽出電源を備える、イオン源。
【請求項2】
前記1以上のシールド電極は、前記抽出開口の前記幅に沿って前記抽出開口の上方及び下方に配置されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記1以上のシールド電極の内面が湾曲している、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記底部と前記複数の壁とは、湾曲した内面を有する一体型部品であり、それによって、前記一体型部品と前記1以上のシールド電極との前記内面は、前記チャンバの一部分に沿って前記チャンバ内に円形又は略円形の断面を形成する、請求項3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記円形又は略円形の断面は、前記抽出開口の前記幅に沿って延在する、請求項4に記載のイオン源。
【請求項6】
前記底部と前記複数の壁とは、別個の部品であり、前記イオン源は、前記底部と各壁との間で形成された角部内に配置された湾曲した電極を更に備え、前記湾曲した電極は、前記本体に電気的に接続されている、請求項3に記載のイオン源。
【請求項7】
前記底部、前記複数の壁、前記湾曲した電極、及び前記1以上のシールド電極の内面の露出された部分は、前記チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する、請求項6に記載のイオン源。
【請求項8】
前記円形又は略円形の断面は、前記抽出開口の前記幅に沿って延在する、請求項7に記載のイオン源。
【請求項9】
前記抽出プレートは、前記本体の電圧よりも10Vから100V高い電圧でバイアスされている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項10】
請求項1に記載のイオン源、
質量分析器、及び
加速/減速段を備える、イオン注入システム。
【請求項11】
チャンバを備えるイオン源であって、前記チャンバは、
第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、
前記チャンバの前記第1の端に配置された間接加熱カソード、
前記本体に電気的に接続された抽出プレートであって、前記抽出プレートは、イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含み、前記本体と前記抽出プレートとは、閉じた空間を形成する、抽出プレート、
前記閉じた空間内で前記抽出プレートに隣接して配置された2つの電極であって、一方の電極は、高さ方向において前記抽出開口の上方に配置され、他方の電極は、前記高さ方向において前記抽出開口の下方に配置されている、2つの電極、並びに
前記2つの電極のうちの第1の電極に通じている電極電源であって、前記第1の電極は、前記本体から電気的に絶縁され、前記本体に対して正にバイアスされ、第2の電極は、前記本体に電気的に接続されている、電極電源を備える、イオン源。
【請求項12】
前記2つの電極は、平面的な内面と平面的な裏面とを有するプレートであって、前記抽出プレートに平行に配置されたプレートを備える、請求項11に記載のイオン源。
【請求項13】
前記2つの電極は、平面的な内面と平面的な裏面とを有するプレートであって、前記抽出プレートに対してある角度で配置されたプレートを備える、請求項11に記載のイオン源。
【請求項14】
チャンバを備えるイオン源であって、前記チャンバは、
第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、
前記チャンバの前記第1の端に配置された間接加熱カソード、
前記本体に電気的に接続された抽出プレートであって、前記抽出プレートは、イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含み、前記本体と前記抽出プレートとは、閉じた空間を形成する、抽出プレート、
前記閉じた空間内に配置された1以上の電極であって、高さ方向において前記抽出開口の上方と前記抽出開口の下方とに配置された1以上の電極、並びに
前記1以上の電極のうちの少なくとも1つに通じている電極電源を備え、前記1以上の電極の内面は湾曲し、前記1以上の電極は、前記本体と前記抽出プレートとの間の接合部において形成された角部内に又は前記角部に隣接して配置されている、イオン源。
【請求項15】
前記底部と前記複数の壁とは、湾曲した内面を有する一体型部品であり、それによって、前記一体型部品と前記1以上の電極との前記内面は、前記チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する、請求項14に記載のイオン源。
【請求項16】
前記底部と前記複数の壁とは、別個の部品であり、前記イオン源は、前記底部と各壁との間で形成された角部内に配置された湾曲した電極を更に備え、前記湾曲した電極は、前記本体に電気的に接続されている、請求項14に記載のイオン源。
【請求項17】
前記底部、前記複数の壁、前記湾曲した電極、及び前記1以上の電極の内面の露出された部分は、前記チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する、請求項16に記載のイオン源。
【請求項18】
前記1以上の電極は2つの電極を含み、前記2つの電極は異なる電圧でバイアスされている、請求項14に記載のイオン源。
【請求項19】
請求項14に記載のイオン源、
質量分析器、及び
加速/減速段を備える、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月15日に出願された米国特許出願第17/551,849号の優先権を主張し、該米国特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は、イオン源に関し、特に、プラズマ電位が上昇するように、少なくとも1つのバイアスされた構成要素がチャンバ内に配置された間接加熱カソードイオン源に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な種類のイオン源を使用して、半導体処理装置で使用されるイオンを生成することができる。例えば、間接加熱カソード(IHC)イオン源は、カソードの背後に配置されたフィラメントに電流を供給することによって動作する。フィラメントは熱イオン電子を放出し、それらの電子がカソードに向かって加速してカソードを加熱し、今度は、カソードにイオン源のアークチャンバの中へ電子を放出させる。カソードは、アークチャンバの一端に配置される。反射電極(repeller)が、カソードに対向するアークチャンバの端に配置され得る。カソード及び反射電極は、電子を反発させ、それらをアークチャンバの中心に向かって戻すようにバイアスされ得る。他の複数の実施形態では、冷陰極(cold cathode)が、アークチャンバの反対側の端に配置され得る。幾つかの実施形態では、電子をアークチャンバ内に更に閉じ込めるために、磁場が使用される。アークチャンバの2つの端を接続するために、複数の側面が使用される。
【0004】
アークチャンバの中心に近接し、これらの側面のうちの1つに沿って、抽出開口が配置され、その抽出開口を通して、アークチャンバ内で生成されたイオンが抽出され得る。
【0005】
IHCイオン源には、様々な関心のあるパラメータが存在する。これには、抽出ビーム電流、ドーパントフラクショナリゼーション、及びプラズマ安定性が含まれる。しかし、これらのパラメータの全てを最適化することは困難な場合がある。例えば、高い抽出電流はプラズマ安定性を低下させ得る。
【0006】
したがって、これらの問題を克服するIHCイオン源があれば有益であろう。特に、高い抽出電流でも改善されたプラズマ安定性を有するIHCイオン源が存在すれば有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
高いプラズマ電位を有するIHCイオン源が開示される。特定の複数の実施形態では、より高いプラズマ電位を実現するために、抽出プレートがアークチャンバの本体よりも高い電圧でバイアスされる。シールド電極を利用して、バイアスされた抽出プレートとプラズマとの間の相互作用を低減させることができる。アークチャンバの断面は、チャンバ内での電子の回転を容易にするために、円形又は略円形であってよい。別の一実施形態では、バイアスされた電極が、チャンバ内で高さ方向において抽出開口の両側に配置され得る。幾つかの実施形態では、電極の一方のみがアークチャンバの本体よりも高い電圧でバイアスされる。
【0008】
一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、チャンバを備える。該チャンバは、第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、チャンバの第1の端に配置された間接加熱カソード、イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含む抽出プレートであって、該抽出プレートは本体から電気的に絶縁され、本体と抽出プレートとは閉じた空間を形成する、抽出プレート、抽出プレートに隣接して、抽出プレートに物理的に接触しないように閉じた空間内に配置された1以上のシールド電極であって、本体に電気的に接続された1以上のシールド電極、及び、抽出プレートに通じている抽出電源であって、抽出プレートは本体に対して正にバイアスされている、抽出電源を備える。幾つかの実施形態では、1以上のシールド電極が、抽出開口の幅に沿って抽出開口の上方及び下方に配置される。幾つかの実施形態では、1以上のシールド電極の内面が湾曲している。幾つかの実施形態では、底部と複数の壁とが、湾曲した内面を有する一体型部品であり、それによって、一体型部品と1以上のシールド電極との内面が、チャンバの一部分に沿ってチャンバ内に円形又は略円形の断面を形成する。幾つかの実施形態では、円形又は略円形の断面が、抽出開口の幅に沿って延在する。特定の複数の実施形態では、底部と複数の壁とが、別個の部品であり、イオン源は、底部と各壁との間で形成された角部内に配置された湾曲した電極を更に備える。その場合、湾曲した電極は、本体に電気的に接続されている。幾つかの実施形態では、底部、複数の壁、湾曲した電極、及び1以上のシールド電極の内面の露出された部分が、チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する。幾つかの実施形態では、円形又は略円形の断面が、抽出開口の幅に沿って延在する。幾つかの実施形態では、抽出プレートが、本体の電圧よりも10Vから100V高い電圧でバイアスされる。
【0009】
別の一実施形態によれば、イオン注入システムが開示される。イオン注入システムは、上述されたイオン源、質量分析器、及び加速/減速段を備える。
【0010】
別の一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、チャンバを備える。該チャンバは、第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、チャンバの第1の端に配置された間接加熱カソード、本体に電気的に接続された抽出プレートであって、該抽出プレートは、イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含み、本体と抽出プレートとは、閉じた空間を形成する、抽出プレート、閉じた空間内で抽出プレートに隣接して配置された2つの電極であって、一方の電極は、高さ方向において抽出開口の上方に配置され、他方の電極は、高さ方向において抽出開口の下方に配置されている、2つの電極、及び、2つの電極のうちの第1の電極に通じている電極電源を備える。その場合、第1の電極は、本体から電気的に絶縁され、本体に対して正にバイアスされ、第2の電極は、本体に電気的に接続されている。幾つかの実施形態では、2つの電極が、平面的な内面と平面的な裏面とを有するプレートであって、抽出プレートに平行に配置されたプレートを備える。幾つかの実施形態では、2つの電極が、平面的な内面と平面的な裏面とを有するプレートであって、抽出プレートに対してある角度で配置されたプレートを備える。
【0011】
別の一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、チャンバを備える。該チャンバは、第1の端、第2の端、底部、及び複数の壁を備える本体、チャンバの第1の端に配置された間接加熱カソード、本体に電気的に接続された抽出プレートであって、該抽出プレートは、イオンが抽出される幅と高さとを有する抽出開口を含み、本体と抽出プレートとは、閉じた空間を形成する、抽出プレート、閉じた空間内に配置された1以上の電極であって、高さ方向において抽出開口の上方と抽出開口の下方とに配置された1以上の電極、及び、1以上の電極のうちの少なくとも1つに通じている電極電源を備える。その場合、1以上の電極の内面は湾曲し、1以上の電極は、本体と抽出プレートとの間の接合部において形成された角部内に又は角部に隣接して配置されている。幾つかの実施形態では、底部と複数の壁とが、湾曲した内面を有する一体型部品であり、それによって、一体型部品と1以上の電極との内面が、チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する。幾つかの実施形態では、底部と複数の壁とが、別個の部品であり、イオン源は、底部と各壁との間で形成された角部内に配置された湾曲した電極を更に備える。その場合、湾曲した電極は、本体に電気的に接続されている。幾つかの実施形態では、底部、複数の壁、湾曲した電極、及び1以上の電極の内面の露出された部分が、チャンバの一部分に沿って円形又は略円形の断面を形成する。幾つかの実施形態では、1以上の電極が2つの電極を含み、2つの電極は異なる電圧でバイアスされる。
【0012】
別の一実施形態によれば、イオン注入システムが開示される。イオン注入システムは、上述されたイオン源、質量分析器、及び加速/減速段を備える。
【0013】
本開示をより良く理解するために、参照により本明細書に援用される添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態による間接加熱カソード(IHC)イオン源である。
図2A】一実施形態による図1のIHCイオン源の斜視図を示す。
図2B】別の一実施形態による図1のIHCイオン源の斜視図を示す。
図3A図3A図3Bは、2つの実施形態による図1のIHCイオン源の断面図を示す。
図3B図3A図3Bは、2つの実施形態による図1のIHCイオン源の断面図を示す。
図4】別の一実施形態による間接加熱カソード(IHC)イオン源である。
図5A図5A図5Eは、様々な実施形態による図4のIHCイオン源の断面図を示す。
図5B図5A図5Eは、様々な実施形態による図4のIHCイオン源の断面図を示す。
図5C図5A図5Eは、様々な実施形態による図4のIHCイオン源の断面図を示す。
図5D図5A図5Eは、様々な実施形態による図4のIHCイオン源の断面図を示す。
図5E図5A図5Eは、様々な実施形態による図4のIHCイオン源の断面図を示す。
図6図1又は図4のIHCイオン源を利用するイオン注入システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
プラズマ電位が操作されるIHCイオン源の様々な実施形態が開示される。プラズマ電位は、プラズマに曝露されるアークチャンバ内の1以上の構成要素を、アークチャンバの本体の残りの部分よりも高い電圧でバイアスすることによって高められ得る。
【0016】
図1は、一実施形態によるIHCイオン源10を示す。IHCイオン源10は、アークチャンバ100を含む。アークチャンバ100は、2つの対向する端、及びこれらの端を接続する底部と壁101とを備える、本体を有する。2つの対向する端同士の間の方向は、X方向と呼ばれる。壁101同士の間の方向は、Y方向と呼ばれる。底部と抽出プレート103との間の方向は、Z方向と呼ばれる。アークチャンバ100の端と壁101とは、導電性材料で構築されてよく、互いに電気的に通じていてよい。幾つかの実施形態では、壁101のうちの1以上に近接して、ライナが配置されてよい。カソード110が、アークチャンバ100の第1の端104においてアークチャンバ100内に配置される。フィラメント160が、カソード110の背後に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と通じている。フィラメント電源165は、電流をフィラメント160に流すように構成されている。それによって、フィラメント160は熱電子を放出する。カソードバイアス電源115が、フィラメント160をカソード110に対して負にバイアスする。したがって、これらの熱電子は、フィラメント160からカソード110に向けて加速され、これらの熱電子がカソード110の裏面に当たると、カソード110を加熱する。カソードバイアス電源115は、例えば、カソード110の電圧よりも負に200Vから1500Vの間にある電圧を有するように、フィラメント160をバイアスし得る。次いで、カソード110は、その前面の熱イオン電子をアークチャンバ100の中に放出する。
【0017】
したがって、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。カソードバイアス電源115は、フィラメント160をバイアスする。それによって、フィラメント160はカソード110よりも負になる。その結果、電子はフィラメント160からカソード110に向けて引き寄せられる。特定の複数の実施形態では、カソード110が、バイアス電源111などによって、アークチャンバ100に対してバイアスされてよい。他の複数の実施形態では、カソード110が、アークチャンバ100の壁101と同じ電圧になるように、アークチャンバ100に電気的に接続され得る。これらの実施形態では、バイアス電源111が採用されなくてもよく、カソード110は、アークチャンバ100の壁101と電気的に接続され得る。特定の実施形態では、アークチャンバ100が、電気的に接地される。
【0018】
第1の端104に対向する第2の端105には、反射電極120が配置されてよい。反射電極120は、反射電極バイアス電源123によって、アークチャンバ100に対してバイアスされてよい。他の複数の実施形態では、反射電極120が、アークチャンバ100の壁101と同じ電圧になるように、アークチャンバ100に電気的に接続され得る。これらの実施形態では、反射電極バイアス電源123が採用されなくてもよく、反射電極120は、アークチャンバ100の壁101に電気的に接続され得る。更に他の複数の実施形態では、反射電極120が採用されない。
【0019】
カソード110と反射電極120は、各々、金属又はグラファイトなどの導電性材料で作製される。カソード110の中心と反射電極120の中心とは、中心軸108に沿って配置されている。
【0020】
アークチャンバ100の本体を構成する部品は、全て電気的及び機械的に互いに結合されている。言い換えると、第1の端104、第2の端105、底部、及び壁101は、全て同じ電位にある。
【0021】
特定の複数の実施形態では、磁場190が、X方向と平行にアークチャンバ100に沿って印加される。この磁場190は、電子を1つの方向に沿って閉じ込めることを目的とする。磁場190は、通常、第1の端104から第2の端105まで、壁101に平行に通っている。例えば、電子は、カソード110から反射電極120までの方向(すなわち、X方向)に平行なカラム内に閉じ込められてよい。したがって、電子は、X方向に移動する電磁力を全く受けない。しかし、他の方向における電子の移動は、電磁力を受ける可能性がある。
【0022】
更に、IHCイオン源10はまた、イオン化される供給ガスがアークチャンバ100に導入され得るガス入口106も備える。
【0023】
アークチャンバ100の片側は、抽出プレート103と呼ばれる。抽出プレート103は、抽出開口140を含む。図1では、抽出開口140が、X‐Y平面に平行な(ページに対して垂直な)側面に配置されている。抽出プレート103は、金属又はグラファイトなどの導電性材料で作製されている。特定の複数の実施形態では、抽出開口140が、その高さ(すなわち、Y方向)よりもかなり大きい幅(すなわち、X方向)を有し得る。
【0024】
抽出プレート103は、絶縁体141を使用することによってアークチャンバ100の本体から電気的に絶縁されている。言い換えると、第1の端104、第2の端105、底部、及び壁101は、共通の電位に維持されている。これは、接地されているかもしれない。しかし、他の複数の実施形態では、これらの部品が、電源を使用してバイアスされ得る。
【0025】
上述されたように、抽出プレート103は、絶縁体141を使用することによってアークチャンバ100の本体から電気的に絶縁されている。特に、絶縁体141は、抽出プレート103を、2つの壁101、第1の端104、及び第2の端105から分離し得る。これらの絶縁体141は、窒化ホウ素(BN)やアルミナ(Al2O3)などの誘電材料で構築され得る。
【0026】
アークチャンバ100の内部と抽出プレート103との間には、1以上のシールド電極150が配置されている。1以上のシールド電極150は、抽出プレート103に隣接してよいが、抽出プレート103に物理的に接触しているわけではない。このやり方では、1以上のシールド電極150が、抽出プレート103の一部分がプラズマに曝露されることを阻止し得る。
【0027】
図2Aで見られるように、1以上のシールド電極150は、Y方向において抽出開口140の上方及び下方に配置され得る。1以上のシールド電極150は、抽出開口140の幅全体に延在し得る。幾つかの実施形態では、1以上のシールド電極150が、X方向において抽出開口140を越えて延在し得る。図2Aで示されている一実施形態では、2つのシールド電極150が存在し得る。すなわち、高さ方向において抽出開口140の両側に1つずつ配置されている。図2Bで示されている別の一実施形態では、シールド電極150が、抽出開口140に対応する開口部を有する一体型部品であり得る。
【0028】
上記の開示は、高さよりもかなり大きい幅を有する抽出開口を説明しているが、他の抽出開口も可能である。例えば、抽出開口140は、丸い開口部であってもよい。この実施例では、図2Aの1以上のシールド電極150が、高さ方向において抽出開口140の両側に依然として配置され得る。一実施形態では、2つのシールド電極150が存在し得る。すなわち、高さ方向(すなわち、Y方向)において抽出開口の両側に1つずつ配置されている。これらのシールド電極150は、X方向において丸い開口部を越えて延在し得る。別の一実施形態では、シールド電極150が、一体型部品であり得る。その場合、抽出開口140に対応する孔が、図2Bで示されているものと同様である。例えば、一体型部品は、丸くてよく、正方形状であってよく、菱形であってよく、矩形状であってよく、又は孔を有する任意の他の形状であってよい。
【0029】
1以上のシールド電極150は、アークチャンバ100に面する湾曲した内面を形成するように成形され得る。湾曲した内面は凹面であってもよい。更に、シールド電極150は、1以上のシールド電極150と抽出プレート103との間の絶縁体143又は間隙を使用することなどによって、抽出プレート103から電気的に絶縁される。これらの絶縁体143は、窒化ホウ素(BN)やアルミナ(Al2O3)などの誘電材料で構築され得る。
【0030】
1以上のシールド電極150は、高融点金属から構築されてよく、導電性である。1以上のシールド電極150は、アークチャンバ100の本体と同じ電位でバイアスされ得る。特定の複数の実施形態では、アークチャンバ100が組み立てられると、1以上のシールド電極150が、アークチャンバ100の本体に接触する。「アークチャンバの本体」という用語は、第1の端104、第2の端105、底部、及び壁101を指す。1以上のシールド電極150は、本体と同じ電圧を有するように、本体と物理的及び/又は電気的に接触し得る。一実施形態では、1以上のシールド電極150が、本体と物理的に接触している。別の一実施形態では、図3A及び図3Bで示されているように、1以上のシールド電極が、ワイヤー又は導電性材料144などによって、本体に電気的に接続されている。
【0031】
図2A図2B、及び図3Aで示されているものなどの特定の複数の実施形態では、本体の一部分、特に底部や複数の壁が、底部(抽出プレート103に対向する)及び2つの壁を有する一体型部品151を構成する。底部と抽出プレート103との間の方向は、Z方向と呼ばれる。この実施形態では、一体型部品151が、U形状内面を有し得る。
【0032】
組み立てられると、図3Aで示されているように、一体型部品151のU形状内面とシールド電極150の内面とが、アークチャンバ100の一部分に沿ってY‐Z平面内に円形又は略円形の断面を形成し得る。この円形又は略円形の断面は、抽出開口140の幅全体についてX方向に沿って延在し得る。「略円形」という用語は、中心軸108から一体型部品151又はシールド電極150の内面上の任意のポイントまでの最短距離が30%未満の差を有する構成と規定される。
【0033】
図3Bは、第2の構成を示す。この実施形態では、壁101が、底部152や2つの壁153などの別個の部品から構築され得る。円形又は略円形の断面を生成するために、湾曲した電極154が、底部152と壁153の各々との間の角部内に配置され得る。湾曲した電極154の内面は凹面であってよい。湾曲した電極154は、底部152と壁153とに電気的に接続され得る。一実施形態では、湾曲した電極154が、底部152及び/又は壁153に対して寄りかかり得る。別の一実施形態では、図3Bで示されているように、湾曲した電極154が、ワイヤー又は導電性材料144などによって本体に電気的に接続されている。
【0034】
湾曲した電極154は、第1の端104から第2の端105へ延在し得る。別の一実施形態では、湾曲した電極154が、抽出開口140の幅全体に延在する。湾曲した電極154は、アークチャンバ100の本体に電気的に接続され得る。
【0035】
底部152、壁153、湾曲した電極154、及び1以上のシールド電極150の露出された部分は、アークチャンバ100の一部分に沿ってY‐Z平面内に円形又は略円形の断面を形成する。この実施形態では、「略円形」という用語が、中心軸108から底部152、壁153、湾曲した電極154、又はシールド電極150の露出された内面上の任意のポイントまでの最短距離が30%未満の差を有する構成と規定される。
【0036】
動作中、組み立てられると、アークチャンバ100の抽出プレート103と本体とは、閉じた空間を形成する。供給ガスが、ガス入口106を介して閉じた空間に入る。IHCイオン源10の中に導入された供給ガスは、イオン化されてプラズマを生成する。このプラズマは、プラズマ電位と呼ばれる電位を有し、該プラズマ電位は、閉じた空間を形成する壁の電位に関連する。
【0037】
この実施形態では、抽出プレート103が、抽出電源145を使用して、独立してバイアスされる。特定の複数の実施形態では、抽出電源145が、アークチャンバ100の本体を基準とする。抽出電源145は、アークチャンバ100の本体に対して正の電圧を抽出プレート103に供給することができる。これらの電圧は、5Vと100Vの間だけ本体よりも正であってよいが、他の値も可能である。
【0038】
アークチャンバ100の本体に対して正にバイアスされた抽出プレート103は、より高いプラズマ密度での効率的なイオン源の動作を提供する。このモードでは、抽出プレート103が、アークチャンバ100の本体よりも高い電位にバイアスされるため、プラズマ電位は、アークチャンバ100の本体のものよりも高い電圧になる。特に、抽出開口140付近では、プラズマ電位が、抽出プレート103に印加される電圧以上になり得る。中心軸108に沿って、プラズマ電位は、アークチャンバ100の電圧よりも高く、抽出プレート103に印加される電圧の概ね50%から75%であり得る。
【0039】
これにより、中心軸108から径方向外向きに延在するアークチャンバ100内の電界が生成される。言い換えると、プラズマ電位は、アークチャンバ100の本体及びシールド電極150の電圧よりも高いので、径方向において電圧の勾配が存在する。更に、前述されたように、中心軸108に平行な磁場190が存在し得る。
【0040】
径方向の電界と軸方向の磁場190とは、図3A図3Bの矢印によって示されている回転力をもたらす。この回転力は、プラズマに曝露され本体よりも高い電圧にある内面の表面積を最小化することによって最適化され得る。したがって、1以上のシールド電極150の使用は、2つの機能を果たす。先ず、1以上のシールド電極150は、アークチャンバ100の一部分に沿ってY‐Z平面内にアークチャンバ100の円形又は略円形の断面を形成するのに役立つ。次に、1以上のシールド電極150はまた、プラズマに曝露されアークチャンバ100の本体とは異なる電位を有する内面の表面積を減少させる。特定の複数の実施形態では、プラズマに曝露されるアークチャンバ100内の全表面積に対するプラズマに曝露される抽出プレート103(アノードとして作用する)の表面積の比を最小化することが有利であり得る。図3Aで示されている一実施形態では、この全表面積が、1以上のシールド電極150の露出された内面、一体型部品151の露出された内面、第1の端104、第2の端105、及び抽出プレート103の露出された部分を含む。図3Bで示されている一実施形態では、この全表面積が、1以上のシールド電極150の露出された内面、湾曲した電極154の露出された内面、壁153の露出された内面、底部152の露出された内面、第1の端104、第2の端105、及び抽出プレート103の露出された部分を含む。特定の複数の実施形態では、アークチャンバ100内の全表面積に対するプラズマに曝露される抽出プレート103の表面積の比が、0.01と0.3の間であり得る。特定の複数の実施形態では、この比が、0.01と0.2の間であり得る。幾つかの実施形態では、この比が、0.01と0.1の間であり得る。
【0041】
図4は、別の一実施形態によるIHCイオン源10を示す。この図では、図1と同一の構成要素には、同じ参照番号が付されている。この実施形態では、抽出プレート103が、アークチャンバ100の本体に電気的に接続されている。抽出開口140は、その高さよりもかなり大きい幅を有するスリットであり得る。
【0042】
したがって、プラズマ電位を高めるために、1以上の電極300が、アークチャンバ100内に配置されている。この実施形態では、電極300が、電極電源310を使用してバイアスされ得る。特定の複数の実施形態では、電極電源310が、アークチャンバ100の本体を基準とする。電極電源310は、アークチャンバ100の本体に対して正の電圧を電極300に供給することができる。これらの電圧は、5Vと100Vの間だけ本体よりも正であってよいが、他の値も可能である。このやり方では、電極300の1以上がアノードとして働き得る。
【0043】
1以上の電極300は、アークチャンバ100内の様々な異なる場所に配置され得る。各場所は、抽出プレート103の少なくとも一部分に隣接している。図5A図5Bで示されているように、1以上の電極300は、高さ方向において又は幅方向において抽出開口140の両側で抽出プレート103に隣接して配置され得る。特定の複数の実施形態では、電極300が、抽出プレート103の内面表面積の3%と50%の間のプラズマに曝露される表面積を有し得る。幾つかの実施形態では、プラズマに曝露される電極300の表面積が、抽出プレート103の内面表面積の3%と30%の間であり得る。幾つかの実施形態では、プラズマに曝露される電極300の表面積が、抽出プレート103の内面表面積の3%と20%の間であり得る。幾つかの実施形態では、プラズマに曝露される電極300の表面積が、抽出プレート103の内面表面積の3%と10%の間であり得る。アークチャンバ100の本体は、図5Aで示されているように、一体型部品151であり得る。代替的に、アークチャンバ100の本体は、図5Bで示されているように、底部152と壁153とを構成する別個の部品を含み得る。電極300は、プラズマに面する平面的な内面と抽出プレート103に面する平面的な裏面とを有するプレートであり得る。これらの実施形態では、電極300が、抽出プレート103と平行に配置され得る。
【0044】
図5Cは、電極300用の別の位置を示す。この実施形態では、上述されたように、電極300がプレートである。更に、電極300は、抽出プレート103に対してある角度で配置されている。一実施形態では、電極300が、抽出プレート103と45度の角度を形成し得るが、他の角度も可能である。電極300のこの位置は、図5Cで示されているように、一体型部品151と共に使用され得るか、又は図5Bで示されているように、別個の部品から構成されている本体と共に使用され得ることに留意されたい。
【0045】
図5D図5Eは、電極300が、本体と抽出プレート103との間の接合部、より具体的には、壁と抽出プレート103との間の接合部において形成された角部内に又は角部に隣接して配置されている、複数の実施形態を示す。更に、電極300はまた、湾曲した内面も有し得る。この湾曲した内面は凹面であってもよい。図5Dで示されている一実施形態では、底部と壁とが、一体型部品151である。それによって、一体型部品151と電極300とは、アークチャンバ100の一部分に沿ってY‐Z平面内に円形又は略円形の断面を形成する。「略円形」という用語は、中心軸108から一体型部品151又は電極300の内面上の任意のポイントまでの最短距離が30%未満の差を有する構成と規定される。図5Eで示されている一実施形態では、アークチャンバ100の本体が、底部152や壁153などの別個の部品から形成されている。この実施形態では、本体に電気的に接続された湾曲した電極154が利用され得る。このやり方では、アークチャンバ100の断面が、アークチャンバ100の一部分に沿ってY‐Z平面内において円形又は略円形である。この実施形態では、「略円形」という用語が、中心軸108から底部152、壁153、湾曲した電極154、又は電極300の露出された内面上の任意のポイントまでの最短距離が30%未満の差を有する構成と規定される。この円形又は略円形の断面は、抽出開口140の幅全体に沿って延在し得る。
【0046】
図5D図5Eで示されている複数の実施形態では、図1のIHCイオン源の動作と同様に、湾曲した内面が電子の回転を促進する。
【0047】
図5D図5Eで示されている複数の実施形態では、1以上の電極300が、Y方向において抽出開口140の上方及び下方に配置され得る。電極300は、抽出開口140の幅全体に延在し得る。幾つかの実施形態では、電極300が、X方向において抽出開口140を越えて延在し得る。一実施形態では、2つの電極300が存在し得る。すなわち、高さ方向において抽出開口140の両側に1つずつ配置されている。電極が共通にバイアスされる別の一実施形態では、電極300が、抽出開口140に対応する開口部を有する一体型部品であり得る。
【0048】
図5D図5Eで示されている複数の実施形態では、1以上の電極300が、共通の電極電源310を使用してアークチャンバ100の本体に対して正にバイアスされ得る。別の一実施形態では、2つの電極300が利用され、2つの電極300のうちの一方のみがバイアスされてよく、他方はアークチャンバ100に電気的に接続される。別の一実施形態では、2つの電極300が、2つの異なる電極電源を使用してバイアスされ得る。例えば、第2の電極は、第1の電極と同じ電圧、第1の電極よりも大きい電圧、又は第1の電極よりも小さい電圧でバイアスされ得る。更に、特定の複数の実施形態では、電極300の一方が、アークチャンバ100に対して負にバイアスされ得る。特に、電極300の1以上が、本体とは異なる電圧でバイアスされる場合、間隙の使用によって又は絶縁体142の使用によって、抽出プレート103から電気的に絶縁され得る。特に、絶縁体142は、電極300から抽出プレート103を分離してよく、又は電極300から本体を分離してよい。これらの絶縁体142は、窒化ホウ素(BN)やアルミナ(Al2O3)などの誘電材料で構築され得る。電極300のうちの一方が、本体と同じ電圧である場合、図5D及び図5Eで示されているように、ワイヤー又は導電性材料144などによって、本体又は抽出プレート103に物理的及び/又は電気的に接触し得る。
【0049】
湾曲した電極154は、底部152と壁153とに電気的に接続され得る。一実施形態では、湾曲した電極154が、底部152及び/又は壁153に対して寄りかかり得る。別の一実施形態では、図5Eで示されているように、湾曲した電極154が、ワイヤー又は導電性材料144などによって本体に電気的に接続されている。
【0050】
上記の開示は、高さよりもかなり大きい幅を有する抽出開口を説明しているが、他の抽出開口も可能である。例えば、抽出開口140は、丸い開口部であってもよい。この実施例では、図5A図5Eの1以上の電極300が、高さ方向において抽出開口140の両側に依然として配置され得る。一実施形態では、2つの電極300が存在し得る。すなわち、高さ方向(すなわち、Y方向)において抽出開口の両側に1つずつ配置されている。これらの電極300は、X方向において丸い開口部を越えて延在し得る。電極300が共通にバイアスされる別の一実施形態では、電極300が、抽出開口140に対応する孔を有する一体型部品であり得る。例えば、一体型部品は、丸くてよく、正方形状であってよく、菱形であってよく、矩形状であってよく、又は孔を有する任意の他の形状であってよい。
【0051】
特定の複数の実施形態では、アークチャンバ100内の全表面積に対する、正にバイアスされプラズマに曝露される1以上の電極300の表面積の比が、0.01と0.3の間であり得る。特定の複数の実施形態では、この比が、0.01と0.2の間であり得る。幾つかの実施形態では、この比が、0.05と0.2の間であり得る。
【0052】
図6は、図1又は図4のIHCイオン源10を使用するイオン注入システムを示す。図1及び図4で示されているように、IHCイオン源10の抽出開口の外側及び近傍に、1以上の抽出電極200が配置されている。1以上の抽出電極200は、電極電源201を使用してバイアスされ得る。
【0053】
抽出電極200から下流には、質量分析器210が配置されている。質量分析器210は、磁場を使用して、抽出されたイオン1の経路を導く。磁場は、それらのイオンの質量と電荷に従ってイオンの飛行経路に影響を与える。分解開口(resolving aperture)221を有する質量分解デバイス(mass resolving device)220が、質量分析器210の出力部(すなわち、遠位端)に配置される。磁場を適切に選択することによって、選択された質量及び電荷を有するイオン1のみが、分解開口221を通して導かれることとなる。他のイオンは、質量分解デバイス220又は質量分析器210の壁に衝突し、システム内でそれ以上移動することができないことになる。
【0054】
コリメータ230が、質量分解デバイス220から下流に配置され得る。コリメータ230は、分解開口221を通過したイオン1を受け入れ、複数の平行な又は略平行なビームレットから生成されるリボンイオンビームを生成する。質量分析器210の出力部(すなわち、遠位端)と、コリメータ230の入力部(すなわち、近位端)とは、一定の距離だけ離隔し得る。質量分解デバイス220は、これら2つの構成要素間のスペースに配置される。
【0055】
コリメータ230から下流に、加速/減速段240が配置されてよい。加速/減速段240は、エネルギー純度モジュールと呼ばれ得る。エネルギー純度モジュールは、イオンビームの偏向、減速、及び集束を独立して制御するように構成されたビームラインレンズ構成要素である。例えば、エネルギー純度モジュールは、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)又は静電フィルタ(EF)であってよい。加速/減速段240から下流に、ワークピース250が配置されている。
【0056】
本出願において上述された複数の実施形態は、多くの利点を有し得る。図3A図3B及び図5A図5EのIHCイオン源は、回転方式で電子のE×Bドリフトを可能にする。これにより、アークチャンバ100の本体に失われる電子の数が減る。利用可能な電子の数を増やすことによって、より多くのイオン化が行われ得る。したがって、プラズマ密度は、従来のIHCイオン源と比較して高められ得る。更に、各実施形態では、プラズマ電位が上昇する。プラズマ電位が上昇すると、結果として、より大きなプラズマ密度が生じ得る。ある実験では、10Vでバイアスされた電極300又は抽出プレート103の使用によって、中心軸108に沿ったプラズマ電位が、従来のIHCイオン源と比較して約7V増加した。その結果、中心軸108に沿って約300%のプラズマ密度の増加がもたらされた。プラズマ密度が高いほど、高い抽出電流、良好なフラクショナリゼーション、及び低いプラズマノイズがもたらされ得る。
【0057】
本開示は、本明細書で説明される特定の複数の実施形態による範囲には限定されない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正例が、前記載及び添付図面から当業者には明らかだろう。このため、そのような他の実施形態及び修正例は、本開示の範囲内に含まれると意図される。更に、本明細書では、本開示を、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様の文脈で説明したが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下で説明される特許請求の範囲は、本明細書に記載した本開示の範囲及び精神を最大限広く鑑みた上で解釈されたい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
【国際調査報告】